2022年2月アーカイブ

米英独仏イタリア、カナダの6カ国と欧州委員会は2月26日、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網 SWIFTから排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。数日中に実行する。

SWIFTからの排除の対象になるのは、これまで金融制裁の対象となっていたロシアの大手銀行のほか、必要に応じてほかのロシアの銀行も追加する。

制裁にはロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれ、外貨準備を使って金融制裁全体の効果を弱められないようにする。

Joint Statement by European Commission, France, Germany, Italy, the United Kingdom, Canada, and the United States

First, we commit to ensuring that selected Russian banks are removed from the SWIFT messaging system. This will ensure that these banks are disconnected from the international financial system and harm their ability to operate globally.

Second, we commit to imposing restrictive measures that will prevent the Russian Central Bank from deploying its international reserves in ways that undermine the impact of our sanctions.

ロシアの全銀行を対象にしたSWIFTからの排除は、欧州経済への影響が大きすぎるため見送った。

また下記の通り、ロシアの天然ガスを欧州に輸入できない場合、他ソースからの補填はできず、欧州経済が大混乱に陥ることは必至である。

このため、エネルギー関連については対象外にするという考えが出ていると報道されている。


SWIFTから排除されたロシアの銀行は、世界での金融取引の大半ができなくなり、ロシアの輸出入を効果的に止めることになる。

SWIFTは世界中の銀行が出資する民間の非営利団体 Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationが運営するシステムで、金融機関同士の決済や送金指示といった情報をやり取りする国際インフラである。


SWIFTから排除されてもメールやファクスで送金情報を連絡できるが、セキュリティーが不完全なうえ、膨大なデータを手作業で送信することになり、極めて脆弱になる。

SWIFTは全世界で1日あたり4200万件の送金情報を扱っており、このうちロシアの金融機関は2020年時点で1.5%(約63万件)を占めている。

ーーー

付記

SWIFTから排除された場合の抜け穴が2つある。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、SWIFTからのロシア排除案が浮上したのを機に、「SPFS」(FINANCIAL MESSAGING SYSTEM OF THE BANK OF RUSSIA)と呼ばれる独自の銀行間決済ネットワークを開発した。
現在、約400の金融機関などが利用しており、ロシア国内のSWIFT加盟数を上回っているが、ほとんどがロシア国内での利用にとどまっている。


http://www.cbr.ru/Content/Document/File/72210/pres_11102021.pdf


中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS :Cross-Border Inter-Bank Payments System)を導入した。

主な機能は、クロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資、個人送金など)にかかる顧客送金およびインターバンク決済となっている。

・直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス、中継銀行を介さず、中国人民銀行と決済することができる。
・間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加

中国や欧米の大手金融機関のほか、日本勢からも三菱UFJ銀行とみずほ銀行の中国法人が同システムに接続しており、中継銀を介さず、直接、人民銀と決済できるようになった。
中国は人民元建ての投資や貿易決済にCIPSを使うよう促しており、CIPSを使う取引は拡大傾向が続く公算が大きい。

ーーー

SWIFTからの遮断は「核兵器オプション」と呼ばれ、最終手段と位置付けられている。ロシアを追い詰める一方で、ロシアとの貿易が切れると欧州も大きな影響を受ける。

これまで欧州がこれに反対してきた理由である。

もし、ロシアの天然ガスが完全に遮断されると、現在高騰している価格が更に上がるほか、全体を他のソースに切り替えることは不可能である。欧州経済への影響は膨大である。

天然ガス価格の推移は下図の通り。これまでは欧州価格は米国のHenry Hub でのパイプライン渡し価格とほぼ同水準であったが、昨秋から欧州市況は急騰した。

欧州の天然ガスの4割はロシアからパイプラインで供給されている。

2021年夏のヨーロッパは風が弱く、各国の風力発電は軒並み不調に陥った。このため、ガス発電の比重が高まったが、ロシアが供給を削減した。(ロシアは否定)

このため、天然ガスのスポット価格は急騰した。

天然ガスの価格アップに加え、欧州に海外から天然ガスを供給する場合、液化して船で輸送する必要があり、液化費用と輸送費用がかかる。(試算では100万BTU当たりそれぞれ3ドル程度)

現状で既に、世界各地のLNGプラントから欧州にLNG船が大挙して向かっており、混乱が生じている。

仮にロシア産が輸入できない場合、価格の高騰だけでない。代替は不可能である。

天然ガスそのものの不足、液化設備の能力の不足、輸送船の不足から、ロシアからの輸入全量のカバーは不可能である。


なお、ドイツのショルツ首相は2022年2月22日、事実上の制裁としてノルドストリーム2の認可手続きを停止する考えを表明した。

2021/11/13

これも、場合によっては欧州側に不利に働く可能性もある。ロシア側が他のパイプラインを破壊すれば、天然ガスが受け入れられなくなる。

ウクライナ政府は2月27日、東部ハリコフにあるガスパイプラインがロシア軍の攻撃を受けて爆破したと発表した。

付記 パイプライン自体は破壊されておらず、天然ガスの輸送は行なわれている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Natural_gas_transmission_system_of_Ukraine

ExxonMobil は2月21日、Papua New Guinea 政府との間で、P'nyang LNGプロジェクトの開発案に関するP'nyangガス契約を締結したと発表した。


Papua New Guinea にはExxonMobil 主体のPNG LNGが稼働している。2014年央に生産を開始し、年産800万トン能力で、アジアの需要家にLNGを供給している。

出資は次の通り。

ExxonMobil 33.2%
Oil Search Ltd 29%
Kumul Petroeum (national oil and gas company) 16.8%
Santos (豪) 13.5%
JX石油開発 4.7%
Mineral Resources Development Co. (政府) 2.8%

Murukガス田のガスを海底パイプラインでPort Moresby近郊のLNGプラントに送り、LNGにしている。


今回のP'nyangガス契約は、Murukガス田の奥地にあるP'nyangガス田のガスを既存のパイプラインに接続し、PNG LNGプラントに送るもので、既存のガス田が枯渇した後に利用する。

このガス田の権利は、ExxonMobilとAmpolex(Papua New Guinea)Ltd が共同で49%を持ち、豪州のSantosが38.5%、JX石油開発が12.5%を所有する。


ExxonMobilは別途、TotalのPapua LNG計画にも参加している。

PNG LNGプラントに隣接して2系列年産560万トンのLNGプラントを建設、Elk/Antelopeガス田のガスをパイプラインで送付する。

Total は2023年に投資の最終決定をしたいとしている。

Elk/Antelopeガス田の権益は、Totalが31.1%、ExxonMobilが28.7%、Oil Searchが17.7%で、政府に22.5%のBack-in rightがある。

ExxonMobilの権益はPapua New Guineaで天然ガス掘削事業を展開するInterOil が所有していた。

ExxonMobilは2016年7月にInterOil を最大36億ドルで買収すると発表した。

2016/7/28 ExxonMobil、パプアニューギニアの天然ガス採掘業者を買収


ExxonMobilの幹部は2021年12月に、パプアニューギニアで同社が権益を保有する
P'nyangガス田と、Totalが進めるPapua LNG液化プロジェクトについて、今後10年で180億ドル以上の投資を予定していると明らかにした。Papua LNG 計画のあとに、P'nyangガス田を開発するとしている。



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バイデン米大統領は2月22日、レアアースなど重要鉱物の国内生産を後押しするための投資計画を発表した。


バイデン米大統領は2021年2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整え、中国依存からの脱却を目指す。

先ず重要4品目の供給網を100日以内に見直す。リスクを調べ、それへの対応策の提案を求める。

担当 品目
商務長官 半導体と先端パッケージング
エネルギー省長官 電気自動車用を含む高容量電池
国防長官
(国家防衛備蓄を担当)
レアアースを含む重要な金属や特定の戦略的物質
保健福祉長官 医薬品及び医薬品有効成分


2021/3/1 米、半導体などの供給網見直し 

これを受け2021年6月8日に報告書が公表された。

国内の投資不足や競合国の不公正な貿易慣行により、米国の供給網が脆弱になっていると指摘している。

国内生産・研究開発支援に少なくとも500億ドルを投じるよう議会に要請したほか、日本や韓国など同盟国を巻き込んで世界的な安定供給体制を目指す「国際フォーラム」を開催する方針を示した。

2021/6/12 米国の重要部材のサプライチェーンの点検結果と対策 

今回、具体的な投資計画を発表した。

北米唯一のレアアース鉱山を米西部カリフォルニア州で運営するMP Materialsに対し、国防総省の支援プログラム(Department of Defense Industrial Base Analysis and Sustainment Program)から3500万ドルを投資し、Mountain Pass鉱山で重希土類元素(HREE) 採掘から分離・精製まで自前でできるようにする。

国防総省は2020年12月にMountain Pass鉱山で軽希土類元素の処理を復活させるため960万ドルを出している。

軽希土類に加え、重希土類の処理が出来ることで、MP Materials は高機能永久磁石を製造するのに必要な全てのレアアースを抽出・精製できるようになる。

Mountain Passでの採掘、処理に加え、MP Materialsは7億ドルを投じ、テキサス州Fort Worthでレアアースメタル、アロイ、磁石を製造するプラントを建設中である。Mountain Passで生産した原料をここで加工し、完全に国産の垂直統合の磁石のサプライチェーンを2024年に完成させる。

2021年12月に同社はGMとの間でGMのEVの電機モーター用にレアアース製品と磁石を供給する契約を締結した。

現在、世界の永久磁石市場の87%を中国が支配している。


バイデン大統領は更に、下記を明らかにした。

  • Berkshire Hathaway Energy Renewables

今春、カリフォルニア州Imperial Countyで、次の5年でリチウム生産に数十億ドルを投資する計画の一環として、地熱塩水からリチウムを抽出する計画の商業的実現可能性のテストのための試験設備建設に着手する。

  • Redwood Materials

Ford とVolvoと組んで、ネバダの施設で使用済みリチウムイオン電池からリチウム、コバルト、ニッケル、黒鉛を回収するパイロットプラントを検討する。

ーーー

米国ではMolycorpがCaliforniaのMountain Passでレアアースの採掘と生産を行っていた。

同社は2015年6月25日、連邦破産法11条の適用を申請した。

2017年にMP Materials がMountain Pass鉱山と他のMolycorp の資産を買収し、2019年に凍結していた精製設備を再稼働することを決めた。

MP Materials は2020年7月31日、国防総省との間で米国でのHeavy Rare Earths 生産再開で契約を結んだと発表した。

2020/7/31 米国防総省、レアアース事業へ資金支援 


Mountain Pass全景


国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題になっている。


日本で洋上風力発電の導入が進んでいなかったのは、①海域の占用に関する統一的なルールがない、②先行利用者との調整の枠組みが存在しないのが問題である。

これらの課題の解決に向け、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)が成立、2019年4月に施行された。
選ばれた事業者はその区域内で最大30年間の占用許可を得る。

 政府による基本方針の作成→「促進区域」の指定→公募による事業者選定→固定価格買取制度(FIT)→占用許可(最大30年間)

「促進区域」: 自然的条件が適当であること、漁業や海運業等の先行利用に支障を及ぼさないこと、系統接続が適切に確保されること、等の要件に適合した一般海域内の区域のこと

現在、促進区域に5か所が指定され、それぞれ入札により4か所の事業者が選定された。 

選定事業者
促進地域 ①長崎県五島市沖 1.7万kw 戸田建設グループ
②秋田県能代市・三種町・男鹿市沖 47.88万kw 三菱商事連合 @13.26 (次点 @18.18)
③秋田県由利本荘市沖 81.9万kw 三菱商事連合 @11.99 (次点 @17.00)
④千葉県銚子市沖 39.06万kw 三菱商事連合 @16.49 (次点 @22.59)
⑤秋田県八峰町・能代市沖 36万kw
有望な区域 ⑥長崎県西海市江島沖 30万kw
⑦青森県沖日本海(南側) 60万kw
⑧青森県沖日本海(北側) 30万kw
⑨秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 21万kw
⑩山形県遊佐町沖 45万kw
⑪新潟県村上市及び胎内市沖 35 & 70万kw
⑫千葉県いすみ市沖 41万kw
一定の準備段階に進んでいる区域 ⑬北海道檜山沖
⑭北海道岩宇及び南後志地区沖
⑮北海道島牧沖
⑯青森県陸奥湾
⑰北海道松前沖
⑱北海道石狩市沖
⑲岩手県久慈市沖
⑳福井県あわら市沖
福岡県響灘沖
佐賀県唐津市沖

②~④の公募入札で2021年12月、三菱商事を中心とする企業連合がすべてを勝ち取った。上の表のとおり、最安値は11.99円/kWhで、次点とは5円程度の差があった。

小泉進次郎前環境相は「運転開始時期が早いことはどのくらい評価されたのか」と疑問をぶつけた。2月3日の自民党の会合で河野太郎前規制改革相が「明らかに配点がおかしい」と経済産業省幹部に詰め寄った。

入札応募は供給価格評価120点、事業実現性評価120点の合計240点満点で順位が付けられる。

供給価格評価は、最低価格/入札価格 x 120 で、最低価格業者は120点を獲得する。

事業実現性評価は次の通りで、各項目で、トップランナーは10割、ミドルランナーは7割、最低限3割は必要



   

②~④の入札結果は次の通りであった。

  https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0284.html

小泉進次郎前環境相の質問に対し、経産省の幹部は「早い方がいいし、点数もつけた」と説明した。

しかし、240点満点のうち120点が電気の供給価格で、運転開始時期は事業能力80点のうち「事業計画の実現性」20点分の一部(点数不明)に過ぎない。

価格は最も安ければ自動的に120点を獲得できるが、運転開始はどれだけ早めても最大20点までしかとれない。 (「最も確実に事業を実現」が20点で、「早く」は評価するのか不明)

三菱商事側は2028~30年の運転開始を掲げたが、数年早い計画を提案した企業連合もあったという。自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟は「今のままでは運転開始を早めても評価されない。より安く入札するために後ろにずらそうとするだろう」と問題視している。

金銭では解決できない立地地域の地元対応が大変だが、点数は小さい。「今後、地元調整など定性面へリソースを割きにくくなる。合理的な考えにならざるを得ない」との声がある。

今後、経産省は有識者会議でルールの見直しを検討するという。

LG Energy Solutionは2月15日、米国のNEC Energy Solutionsの買収が完了したと発表した。買収額は非公表。
買収は2021年9月に明らかになっていたが、
各国の規制当局の承認など必要な手続きの終了を条件としていた。

LG Energy SolutionsはLG化学の電池事業を引き継ぐ形で2020年12月に設立された100%子会社で、電気自動車、モビリティとITアプリケーション、蓄電システム向けのリチウムイオン電池事業を主な事業内容とする。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社化 


日本電気は2021年9月3日、100%出資の米子会社 NEC Energy Solutions, Inc.の全ての株式を LG Energy Solutionに譲渡することを決めたと発表した。


NEC Energy Solutionsは、電力向け大規模蓄電システムおよび産業用高性能リチウムイオン電池ALMシリーズの設計・製造およびシステムインテグレーションを行うメーカー。

同社は下記の歴史を持つ。

2006年に米国電池メーカ A123Systems のPack & System部門としてA123 Energy Solutionsが発足した。

独自のオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)ベースの正極材料「Nanophosphate」を使ったリチウムイオン電池や、蓄電技術/制御/設備を含めたパッケージ提供で実績のある電力会社向け蓄電システム「Grid Storage Solution」によるSI技術、および顧客の課題を解決する優れたシステム提案力が特徴。

2012年10月に連邦破産法11条の適用を申請した。同年12月に行われた同社の資産売却の入札で、NECと 中国の万向集団(Wanxiang Group)が競合し、最終的には万向集団が2億5660万米ドルで落札した。

NECは2014年3月、その万向集団(Wanxiang Group)からA123 Energy Solutionsを約1億米ドルで買収すると発表した。
スマートエネルギー事業と統合してNEC Energy Solutions社として再出発した。

万向集団は、売却収入で、経営破綻した米国の高級プラグインハイブリッド車(PHV)メーカーFisker Automotive Inc.の資産を買収した。

その後、再生可能エネルギーの普及にともない、蓄電システム市場は拡大しているものの市場競争が激化しており、NEC Energy Solutionsは売上高が増加する一方で大規模な損失を改善できていなかった。

売上高 営業損益
2019年3月期 7700万米ドル -4,310万米ドル
2020年3月期 1億5240万米ドル -9,100万米ドル
2021年3月期 2億0730万米ドル -5,720万米ドル

NEC は2020年6月に、新規受注を停止し契約済プロジェクトの遂行および保守のみ継続することを決定した。

その後、事業収束プロセスと並行して株式譲渡の選択肢も検討した結果、LG Energy Solution への株式譲渡を決定した。

ーーー

LG Energy Solutionは買収したNEC Energy Solutionsを社名変更し、LG Energy Solution Vertech. Inc. とする。 競争力を強化するためシステムインテグレーション能力の内在化が必要だと判断し、買収した。

今回の買収をもとに、単純なバッテリー供給を超えてシステムインテグレーションまで提供する完結型事業とする。

ESS(エネルギー貯蔵)事業企画、設計、設置、メンテナンス等をすべて行う計画で、バッテリー、電力変換装置(PCS)を含めた必須資材などを統合し、ESS事業の最適化に至るまですべてのサービスを提供する。既存のバッテリー生産能力に、ESSシステム統合の管理力量が加われば、十分なシナジー効果が出せると判断した。

「今回の買収を通じ、顧客別の要求事項にオーダーメードで対応できるESS統合ソリューションの競争力を確保することになった」とし「差別化された技術と品質競争力をさらに強化し、世界のESS市場を主導していく」としている。

DuPontは2月18日、Celanese Corporationとの間でMobility & Materials segment の大半を売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、Engineering Polymers 事業と、Performance Resins and Advanced Solutions business lines のなかの特定の製品ラインで、売却額は現金で110億ドルとしている。取引は2022年末頃に完了する予定。

これらの事業の2021年の売上高は約35億ドルで、EBITDA(税引前利益+支払利息、減価償却費)は8億ドルであった。

Mobility & Materials segmentのなかの Auto Adhesives, Multibase and Tedlar® product lines は対象に含まれていない。

DuPont は別途、某社とアセタールホモポリマーのDelrin® businesss の売却を進めている。

Mobility & Materials segment の製品で売却対象と対象外は下図のとおり。

今回の発表にはないが、DuPont Teijin Films JV も売却対象に挙がっている。(後記)


DuPontは2021年11月2日に「戦略的レビュープロセス」を発表した。

1)Rogers Corporation 買収

DuPontはエンジニアリング素材メーカーの米Rogers Corporation を約52億ドルで買収することで合意した。

Rogersは電気自動車(EV)や高速通信規格「5G」関連機器向けの高周波用プリント基板材料など、高機能・高付加価値の先端電子部材に特化し、北米、欧州、アジアに計14カ所の生産拠点を持つ。2021年通期の売上高見通しは約9億5000万ドル。

DuPontはEV向け部材など高付加価値製品を成長分野と見なし、事業シフトを進めている。

2) Mobility & Materials segmentの大半の事業の売却=今回発表

今回のCelanese向けの売却のほか、Delrinの売却交渉を行っているが、11月の発表では DuPont Teijin Films joint ventureの持分の売却も挙げている。(上図にも記載)

帝人は2017年10月10日、DuPontと共同で、米国、欧州及び中国のポリエステルフイルム事業の合弁会社4社の所有持分全てをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。

DuPontは、Dowとの統合により、本事業から完全撤退、帝人は、2016年にDuPontから持分を買い取った日本とインドネシアの事業の更なる高機能化に資源を集中的に投入する予定であった。

実際には、この売却が頓挫した。この結果、Indoramaに売却する予定であった4か国のJVだけが、いまだに帝人とDuPontの事業として残った形となっている。

2020/2/1 デュポンと帝人、フィルム合弁を再び売却へ

3) これらにより、electronics, water, protection, industrial technologies and next generation automotiveに焦点を当てた高成長、高収益市場での位置を高め、収益向上を図る。

ーーー

2017年9月1日にDowとDuPontが合併し、DowDupontとなった。

2019年4月1日にMaterial Science事業をDowとして分離、6月1日に農業部門をCorteva, Inc.として分離し、残ったSpecialty Productsの会社をDuPont de Nemours, Inc. に改称した。

2019/6/12 DowDupont 分離完了 

DuPontは、Electronics & Industrial, Mobility & Materials, Water & Protection を3つの柱としていたが、今回、Mobility & Materialsの大半を売却する。

なお、Water & Protection は下記分野を扱う。

high-performance fibers and foams
aramid papers
non-woven structures
water purification technologies
protective garments

神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種同種 iPS 細胞由来 RPE 細胞凝集紐移植に関する臨床研究」が2月17日の厚生科学審議会 再生医療等評価部会で了承されたと発表した。

ーーー

同病院は2021年3月12日、網膜色素上皮((RPE)不全症の患者にiPS細胞を含む液体を移植する手術(同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植)を行い、成功したと発表した。

RPE細胞は視細胞の外側にあり、視細胞を保護する役目を持つ。

RPE不全症、RPE細胞の遺伝子に異常があったり、近視がとても強かったり、加齢によるストレス、または炎症が起きたりすることでRPE細胞が働かなくなり、続いて、RPEに保護されなくなった視細胞も働かなくなるために、目が見えにくくなってしまう、いろいろな種類の病気が含まれる。

この臨床研究では、RPEシートの移植ではなく、他家(他人の細胞)のiPS細胞より作製したRPE細胞を含む液体(懸濁液)を、RPE不全症の患者に移植した。

2021/1/27 網膜色素上皮不全症に対するiPS細胞由来RPE細胞懸濁液の移植

ーーー

今回は、移植細胞の生着の更なる向上が期待できる剤型へ変更、他家(他人の細胞)の iPS 細胞より作製したRPE細胞を紐状に連なった状態に加工し、患者に移植する。

本研究での目標症例数は 50例、移植後の観察期間は1年間を予定している。

なお、細胞調製作業の一部に汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」を利用する。

汎用ヒト型ロボット LabDroid「まほろ」安川電機の子会社のロボティック・バイオロジー・インスティテュートにより開発された生命科学実験用のヒューマノイドロボットシステム。
安川電機の産業用 7 軸双腕ロボットの周辺に、人間が実験で用いるものと同じ実験器具を配置することで、ピペット操作などの従来人間が手で行っていた実験操作が実行可能になった。

バイデン大統領は2月18日、前回のつなぎ予算の期限切れの当日、3月11日までの短期のつなぎ予算案(Continuing Resolution )にサイン、政府機関の閉鎖を避けた。


本年度(2021年10月~2022年9月)の予算案は与野党で合意できず、議会はまず2021年
12月3日までのつなぎ予算を、更に、翌日で期限切れとなる12月2日 にこれを2022年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。

2021/12/4 米議会、つなぎ予算案を可決 

その後、本予算(2021年10月~2022年9月)成立に向け、与野党で協議を続けてきたが、あと少し時間がかかるため、短期のつなぎ予算を作成した。

まず下院が3月11日に賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 51 222 272
反対 161 1 162
合計 212 222 434 1

続いて上院が3月17日深夜、共和党からの19議員の賛成を得て、必要賛成票(60)を超える賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 44 2 65
反対 27 27
棄権 4 4 8
合計 50 48 2 100


本人や家族の病気などで欠席者が相次ぎ、一時は民主党内で可決できないのではとの懸念が出た。

しかし、与野党ともに秋の選挙を控え、かつ、コロナ問題やウクライナ問題でのロシアとの対立の時期に政府機関の閉鎖は政治的にダメージがあるとの判断が働いた。

与野党は今後、3月11日までに本予算を通す必要がある。

報道では、予算規模は1兆5,000億ドル程度で与野党間で合意しているとされているが、国防費と非国防費の割合や非国防費における個別分野の予算配分については各委員会などで調整する必要がある。
また、バイデン政権は新型コロナウイルス対策資金が払底してきているとして、本予算に追加で300億ドルを要求しているとされており、新たな調整事項も生じている。

Venture Global LNG社のCalcasieu Pass LNGが2月中にも稼働する。ルイジアナ州のLake Charlesの南のCalcasieu Lake南岸にあり、年産能力は公称1000万トンで、最大1100万トンとされる。
同社は、「1月29日に最初のLNGを生産した」と発表している。

正式稼働すれば、米国で7番目の大規模LNG輸出基地になる。

同社はルイジアナ州Plaquemines Parishのミシシッピー川沿岸のPlaquemines LNGで年産2000万トンのプラントを建設中。

さらにPlaquemines LNGの近辺で年産2000万トンのDelta LNG を開発しているほか、2021年12月にCalcasieu Pass LNGに隣接して年産2000万トンのCP2 LNG計画を発表した。

すべてが完成すると、能力は年産7000万トンとなる。

立地 公称能力
Calcasieu Pass LNG south of Lake Charles City 10 MTPA 2022/2稼働
CP2 LNG 上記に隣接 20 MTPA 2021/12 計画発表
Plaquemines LNG Plaquemines Parish 20 MTPA 建設中
Delta LNG 上記の近辺 20 MTPA 開発中
合計 70 MTPA

.

同社のプラントは、1体 626千トンの液化プラントモデュールを外部で組み立て、テストを行い、現場に輸送して組み立てる。

今回稼働するCalcasieu Pass, LLCは、9つの区画に18のモデュールを設置している。(計算上は11.27 MTPAとなる)


同社は Shell、BP、Edison、Galp、Repsol、PGNiG、Sinopec、CNOOCとの間で供給契約を締結している。

2016年2月にShellと年間100万トン、20年間の契約を締結

2018年5月、BPと年間200万トン、20年間の契約を締結

2018年9月、Repsolと年間100万トン、20年間の契約を締結

2021年9月にポーランド石油・ガス(PGNiG)と契約(2018年の契約を修正)
 Calcasieu Pass LNGから150万トン、Plaquemines LNGから400万トン、合計550万トン、各20年間。

2021年11月にSinopecと年間400万トン、20年間の契約を締結、別途Sinopec子会社UNIPECが短期的に350万トンを購入する。

2021年12月にCNOOCと年間200万トン、20年間の契約を締結(Plaquemines LNGから)
 他に、Calcasieu Pass LNGから短期間、150万トンのLNGを購入

  2021/11/11 Sinopec、米企業と20年間のLNG売買契約に調印 

国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)が2月17日に発表した今年1月時点の円の「実質実効為替レート」(2010年=100)は67.55 となり、2015年6月の67.63を下回り、1972年6月(67.49)以来の円安水準となった。

BIS effective exchange rate:Real (CPI-based), Broad Indices Monthly averages; 2010=100

最高値の1995年4月(円相場が初めて1ドル=70円台に突入)の150.85 の半分以下(44.8%)に過ぎない。

実質実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートとは異なり、総合的な通貨の実力をみる指標で、BISは約60カ国・地域の為替レートや貿易量に、物価変動なども加味して算出した。(ユーロ圏でも国により異なる。)

高いほど対外的な購買力があり、海外製品を割安に購入できることを示す。 実質実効レートの低下は円安と物価低迷が相まって円の対外的な購買力が下がっていることを示す。


アベノミクスは「デフレは貨幣現象である」という考えに立ち、「三本の矢」を基本方針とした。
(1) 大胆な金融政策
(2) 機動的な財政政策
(3) 成長戦略

2013年3月に就任した黒田東彦・日銀総裁は、デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、無制限の量的緩和を行った。目標の達成期限は「2年程度を念頭に置く」とした。

政府・日銀主導の円安政策により円の実質実効為替レートは急降下し、その後、低迷が続いている。

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各国・地域の「実質実効為替レート」(2010年=100)の推移は下記の通り。

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EUの最高裁判所に当たる欧州司法裁判所は2月16日、加盟国が「法の支配」の原則を順守しない場合、資金の支払いを停止できるとの規定は合法との判決を下した。

法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドの異議申し立てを退けた。両国は強く反発している。

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EU首脳会議は2020年7月17~21日、90時間以上にも及ぶ連続協議の末、「歴史的」とも評される復興パッケージ(新型コロナウイルスで傷んだ経済の再生を目指す復興基金と中期予算)に合意した。

中期予算計画(多年度財政枠組み)の議論で、予算の主要拠出国だった英国のEU離脱を受けて大幅な歳入減となる中、復興パッケージの予算規模などをめぐって加盟国間の対立が先鋭化していた。

復興基金の総額のうち返済が不要な補助金が3900億ユーロ、残り3600億ユーロが低利融資となる。 

さらに「倹約4カ国」(スウェーデン、デンマーク、オーストリア、 オランダ)に、EU予算に拠出した分担金を払い戻す「リベート」の金額の積み増しを行なう。この結果、気候変動対策や技術革新などに割り当てられるはずだった分は削られた。

2020/7/23 EU、新型コロナ復興基金案で合意 

しかし、復興基金案の成立が遅れた。

ハンガリーとポーランドは11月16日、大使級会合でこの基金を組み込んだ次期中期予算(2021~2027年)案の承認手続きへの同意を拒んだ。
権力の乱用を防ぐため「法の支配」が順守されているかどうかを資金配分の条件とする仕組みに反発した。

ハンガリーやポーランドの政権は近年、国民の反移民・反難民感情やEU内経済格差への不満を背景に、権威主義的な体制を強めている。両国の司法介入がEUの基本価値に違反するとして問題になっている。

EU基本条約第7条に基づく制裁手続きについて、加盟国の権利停止につながる重大且つ持続的な基本価値違反があるかの決定には、問題国を除く加盟国による全会一致の同意が必要となる。これを特定多数決(国数で55%以上、人口規模65%以上)の投票に基づき決定することが可能になるように変更しようとしているため、両国は拒否権を発揮した。


その後、交渉が続き、EU首脳会議は12月10日、復興基金と中期予算を7月の案のままで合意した。承認を拒否してきたハンガリーとポーランドが妥協に応じた。

基金の分配条件として権力の乱用を法で縛る「法の支配」を条件としたが、ポーランドとハンガリーに配慮し、同メカニズムの対象や条件を明確にしたガイドラインを作成するほか、両国が同規則案の適法性に関してEU司法裁判所へ付託した場合に、その判断を待った上で運用を開始するとした。

2020/12/21 EU、コロナ復興基金と中期予算でようやく合意 


ポーランドとハンガリーは2021年3月、条件の無効を求め、EU司法裁に提訴した。(今回、これに対する判決があった。)

その後、欧州委員会と欧州司法裁判所は両国の行為を問題視した。

欧州委員会は2021年7月15日、ハンガリーとポーランドでLGBTQ(性的少数者)市民に対して差別的とされる措置が導入されたことを受け、両国の保守政権に対する法的措置を開始した。
欧州委員会はEU加盟国に対し、違反手続きを開始する権限を持っており、最終的には欧州司法裁判所への提訴と経済制裁につながる。

ハンガリーは前週、EU指導部や加盟各国の首脳からの警告を押し切り、「反小児性愛法」を施行し、未成年者に対して同性愛や性別移行を「助長」する行為などを禁止した。
ポーランドでは、国土の3分の1ほどを占める約100の自治体が「反LGBT」決議を採択している。

欧州委員会は2021年9月7日、ポーランドが導入した裁判官の懲戒制度をめぐり、同国に制裁金を科すようEU司法裁判所に請求すると発表した。 

「司法の独立性侵害」として制度の停止を迫った司法裁の命令にポーランドが背いたと判断した。

欧州司法裁判所は2021年7月20日、ポーランド南西部トゥルフの褐炭鉱山について、5月に下した操業停止命令に従うまで1日50万ユーロの制裁金を欧州委員会に支払うようポーランド政府に命じた。

環境悪化を懸念する隣国チェコが2021年2月に、ポーランドが適切な環境アセスメントを経ずに操業延長を承認しEU法に違反したなどとして提訴し、司法裁は判決まで操業を停止させる仮処分措置を決定したが、ポーランドは抵抗してきた。

ポーランド憲法裁判所は2021年10月、「EU司法裁判所による同国の司法制度への介入はポーランド憲法の優越性の原則に違反する」と判断した。

「EU法が加盟国の法律に優先される」とするEUの原則に反しており、欧州統合の基盤が揺らぐ事態となった。欧州委員会委員長は、「ヨーロッパの法秩序の一体性に真っ向から挑戦するものだ」と指摘した。

EU司法裁判所は2021年10月27日、EUが求めた裁判官の懲戒制度の中止にポーランドが応じていないとして、同国に1日あたり100万ユーロの制裁金の支払いを命じた。

欧州委員会は2021年12月22日、ポーランドの憲法裁判所がEU法の一部を「違憲」と判断した問題などをめぐり、EU法違反だとして法的措置に着手すると発表した。
ポーランドが2カ月以内に十分な回答をしなければ、EU司法裁判所に提訴する。

今回、欧州司法裁判所は「法の支配」を無視するポーランドとハンガリーに対する資金提供の停止を合法とする判決を下した。

EUは、両国が司法やメディアを政治支配し国民の権利を制限することで、欧州の法の支配に違反していると主張しており、順守しない場合には、両国への資金提供を停止する方針を示していた。
両国は異議を申し立てていたが、司法裁がこれを退けた。

EUの欧州委員長は、「EUが正しい軌道に乗っていることが確認された」と歓迎、欧州委員会が数日中に対応を決めると述べた。

両国に対する数十億ユーロの資金提供停止に道が開かれたが、両国は強く反発しており、EU内部の対立が強まる恐れもある。

神戸大学大学院理学研究科の研究グループは2月9日、AGCと協力して、光で酸化したクロロホルムを使って、ポリウレタンやその原料となるイソシアネート、および尿素誘導体の合成に成功したと発表した。


イソシアネートは、毒性が高く危険なホスゲン(COCl2)を用いて製造されているが、本合成法では、必要な時、必要な量だけ、溶媒のクロロホルム中に光でホスゲンを任意に発生させて、それを溶液から出さずにそのまま次の合成に用いることができるため、安全性が高い。

  • 高価で特殊な装置や薬品が不要であり、安全で簡単にオン・サイト、オン・デマンド合成が可能となった。
  • 汎用のポリウレタンに加え、ポリマー主鎖にフッ素原子を組み込んだ機能性フッ素化ポリウレタンの合成に成功した。これらは撥水性、耐候性、耐摩耗性、摩擦特性、摺動性、非粘着性、非誘電特性などの高い材料としての利用、更なる性能・機能の向上が期待される。

クロロホルムは高い化学的安定性、揮発性を持ち、多くの有機化合物を溶解させることができる汎用の有機溶媒で、世界中で大量に生産・消費されている。

クロロホルム:CHCL3

製法:
 CH4 + Cl2 → CH3Cl + HCl
 CH3Cl + Cl2 → CH2Cl2 + HCl
 CH2Cl2 + Cl2CHCl3 + HCl

分解すると、その分解物には人体に極めて有害なホスゲン、一酸化炭素、塩素、塩化水素などが含まれていることが知られている。クロロホルムを効率良く分解する方法は確立されておらず、含まれるこれらを実用的な有機合成に利用した例はこれまでなかった。

研究グループは、フッ素化学品およびその原料としてのクロロホルムの製造企業であるAGCとの産学共同研究に取り組み、クロロホルムを原料として、ポリウレタンやその原料となるイソシアネート、および尿素誘導体の合成に成功した。

(1) 尿素誘導体

アミンと触媒を溶解させたクロロホルム溶液に紫外光を照射するだけで、それらが化学反応を引き起こし、簡単かつ高収率で尿素誘導体を合成できることを発見した。

アミンと有機塩基を含むクロロホルム溶液に、酸素バブリングしながら、20〜40℃の反応温度で低圧水銀ランプから紫外光を照射して尿素誘導体を合成した。

(2) イソシアネート

あらかじめクロロホルム溶媒のみを低温で光酸化して、クロロホルムのホスゲン溶液を調製し、そこにアミンと触媒を添加すると、イソシアネートが高収率で合成できることを確認した。

クロロホルム溶媒に、酸素バブリングしながら、0 ℃で低圧水銀から紫外光を照射してクロロホルムを光酸化して、その溶液にアミンと有機塩基を順次注入する 2 段階のプロセスを経て、イソシアネートを高収率で合成できた。

具体的には、下記のイソシアネートの合成に適用できることを確認した。

ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、3-(トリアルキルシリル)プロピルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアナート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)など

さらに、それらにアルコールを添加することによってワンポットで(容器を変えずに)相当するポリウレタンを合成できることを確認した。

さらに、この新たな方法を応用して、フッ素化ポリウレタンの合成に成功した。
フッ素原子を主鎖に組み込んだ機能性ポリウレタンは、高い撥水性、耐候性、防汚性、および低誘電性などの性質を持つ機能性プラスチック材料などとしての利用が期待されている。

台湾積体電路製造(TSMC)は2021年11月9日、日本で初めてとなる工場をソニーグループと共同で熊本県に建設すると発表した。

子会社 Japan Advanced Semiconductor Manufacturing (JASM)を熊本県に設立、ソニーセミコンダクタソリューションズは約5億米ドルを資本金として出資し、20%未満の株式を取得する。

22/28nmプロセスを皮切りとした半導体の製造受託サービスを提供する。当初の設備投資額は約70億米ドルで、2022年の建設開始を予定しており、2024年末までに生産開始を目指す。

2021/11/10 TSMCとソニー、半導体ファウンドリ計画を発表 


今回(2月15日)、デンソーの少数持分出資と生産計画の変更が発表された。

当初発表 今回追加、変更
少数持分出資 ソニーセミコンダクタソリューションズ
 約5億米ドル(20%未満)
デンソー  追加
 約3.5億米ドル(10%超)
製品 22nm、28nm半導体 12nm、16nm半導体追加
(高度は演算処理に使用)
月間生産能力 45,000枚(300mmウェーハ換算) 55,000枚(300mmウェーハ換算)
当初設備投資 約70億米ドル 約86億米ドル


注)
TSMCは米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。
台湾では台南で3、5nmの工場を建設中で、新竹では2nmの新工場を計画している。
今回の日本での生産は最先端のものではない。

ーーー

先端半導体工場の新増設を支援する改正法が2021年12月20日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

高速・大容量通信規格「5G」のシステム構築に不可欠な「特定半導体」を製造する事業者が対象で、継続的な生産、需給逼迫時の増産対応などを条件とし、工場の新増設にかかる設備費用の最大半額を補助する。(その後、最低10年間は生産を続けることを求めることとした。)

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に設置する基金から複数年にまたがって拠出する。2021年度補正予算でまず6170億円を計上した。

東芝は2月7日、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とする と発表した。

株主還元は当初案より増やした。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し 

3分割案、2分割案には一部の大株主から反対の声が上がっているが、東芝は2月14日、分割案について株主の意向を確認するための株主総会を3月24日に開催すると発表した。

株主の意向確認に加え、株主の3D Investment Value Master Fundからの株主提案も付議する。

同社はシンガポール拠点の日本特化型の独立系資産運用会社で、東芝への出資比率は7.57%とされる。

本株主提案は1月6日付で行われており、「3分割案」を前提にしている。但し、内容としては「2分割」の場合にも当てはまるものである。

なお、臨時株主総会について、会社法第 306 条第1 項に基づき、東京地方裁判所に対して、株主総会検査役の選任の申立てを行うとしている。

株主提案などの場合、後日、株主総会決議取消訴訟や決議不存在確認訴訟等が提起され、決議の有効性が争われることがあるため、そのような事態に備えるため、裁判所に検査役の選任を申し立てることがある。

会社法第306条
① 株式会社又は総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。


議案は次の通りで、株主提案の第2号、第3号議案には会社側は反対している。

第1号議案(会社提案) 戦略的再編の検討を進めることに関する株主の皆様のご意見確認の件

今回の戦略的再編の検討を進めることについて株主の意見を確認することを目的としており、法的拘束力を有するものではない。本議案の決議要件は普通決議(過半数の賛成で可決)とする。

戦略的再編の実施について法的拘束力のある株主総会決議については、再編の内容を最終的に確定させたうえで、別途、2023年に開催する株主総会に上程する

しかし、過半数の賛成を得られるかどうかは不透明で、仮に過半数の賛成が得られなければ、計画は見直しを迫られる。綱川智社長は14日の会見で、否決の場合は「会社分割の内容を修正するか、まったく別の選択肢にするか再度検討する」と話した。


第2号議案(株主提案) 
定款一部変更の件(定款変更は「特別決議」事項で、可決には3分の2以上の賛成が必要)

以下の章を新設

第6章 戦略的再編の実施

32 当会社は、2021625日に設置された戦略委員会が策定し、取締役会が承認した戦略的再編について、会社法その他の適用法令の要請に従って、取締役会が決定した方法により、取締役会が決定した時期に実施することとする。20211112日に当会社が公表した当社グループを 3つの独立した会社とする戦略的再編は本条の適用を受ける戦略的再編に該当する。

会社側は次の理由でこれに反対している。

・後日法的拘束力のある決議を得る予定であること: 現時点においては、本戦略的再編に関する法的拘束力のある決議を行うことは適切でない

定款に馴染まないこと

極めて異例な提案であること-提案者ですら反対していること:提案者は、自らは反対の議決権行使をする意向を示している。

3D Investment Value Master Fundは、「莫大な経費が必要な3社分割案は、臨時株主総会における3分の2以上の株主の賛成を得ずして、推進すべきではありません」とし、「この議案に反対する」が、「すべての株主が、東芝が3社分割案を真に進めるべきかについて、投票を行う機会を得るべきであるため、今回の株主提案に至った」としている。

付記 第2号議案については、東芝は当該株主から撤回する旨の書面を2月21日付受領した。


第3号議案
(株主提案)  戦略委員会及び取締役会における戦略の再検討の件

すべての企業価値向上策既に推奨されている戦略的再編と比較・評価するため、検討手続を継続する。

(i)非公開化又はマイノリティ出資に関して積極的に検討を行い、
(ii)べての検討内容、受領した提案及び検討結果の詳細を株主に対して定期的に報告する

3D Investment Value Master Fundは「3分割案」(「2分割案」も同様と思われる)に反対している。

「東芝は、東芝の全部又は一部の事業の売却に関する提案を募集しませんでした。また、潜在的な戦略的買収者と協議することはありませんでした。更に、大規模なマイノリティ出資に関するPEファンドとの協議についても、十分に行うことなく打ち切りました」とし、非公開化又はマイノリティ出資等に関して積極的に検討を行うことを求めている。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案したが、東芝は4月20日、買収交渉の中断を発表した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案


会社側は次の理由でこれに反対している。

会社は本戦略的再編が最善の方策であると考えていること

他の戦略的選択肢を排除していないものの、このような選択肢をどの程度検討するかは経営判断に委ねられていること

情報の全面開示は当社及び株主の利益に反する


なお、会社側は非公開化、マイノリティ出資に関しても、これまで検討を行っており、11月の「3分割案」発表時に説明を行っている。

https://www.global.toshiba/jp/news/corporate/2021/11/news-20211112-06.html


「物言う株主」は、所有株を高く売ることが目的である。

上述のCVC Capital Partnersの買収提案では、前日の終値に約30%のプレミアムを加えるものであった。

1株5000円での購入で、前日の時価総額 1兆7437億円に対し、2兆3,000億円弱での購入となる。数日後に株価はこれに近いところまで上昇した。
しかし、3分割発表、2分割発表で、株価は上昇していない。

株価が大幅に上がる案でないと、物言う株主の賛成を得るのは難しいだろう。

WHOは2月11日、中外製薬の抗リウマチ薬tocilizumab(製品名「Actemra」、EU販売名「RoActemra」をCOVID-19治療薬として「事前認証」したと発表した。(中外の親会社のRocheを申請企業 originator companyとしている。)

発表の概要:

トシリズマブは世界の約120か国で主に関節炎の治療薬として認可されている。

トシリズマブはインターロイキン-6(IL-6)受容体を阻害するモノクローナル抗体で、インターロイキン-6は炎症反応を誘発し、COVID-19に重症の患者に高レベルで見られる。

静脈内投与されたトシリズマブは、重症で、急速に悪化し、酸素需要が増加し、重大な炎症反応を示すCOVID-19の特定の患者の死亡を減らすことが、臨床研究で示されている。WHOは、重症または重症のCOVID-19と診断された患者にのみトシリズマブを推奨している。

特許は切れているが、バイオシミラーは少なく、価格が高い。WHOは現在、Roche との間で低・中所得国向けに安価に供給できるよう交渉している。(Roch発表では原価で供給)

「事前認証」は、WHOが医薬品などの品質や安全性、効果を審査する制度で、認証されると、国連機関や医療支援の国際団体の調達の対象となる。多くの国が医薬品やワクチン、診断器具などの大量購入時の参考にしている。 (末尾の図を参照)

COVID-19治療薬としては副腎皮質ステロイド薬デキサメタゾンが事前認証されている。 (今回で 2薬品が事前 認証となった。)  

なお、WHOはGilead Sciencesの抗ウイルス薬「レムデシビル」を事前認証したが、2020年10月に「死亡率の低下などにつながる重要な効果はなかった」として、 「症状の軽い重いにかかわらず、入院患者への投与は勧められない」とする指針を公表し、事前認証から除外した。

2020/11/20 WHO、Remdesivirは「治療効果なく推奨せず」


アクテムラは、炎症を起こす蛋白質の働きを阻害する抗体医薬品。抗リウマチ薬としては各国で承認済み。新型コロナへの効果も期待されるとして、多くの臨床現場で使用されている。

中外製薬は2021年6月25日、「アクテムラ(tocilizumab)」が、新型コロナウイルスの治療薬として、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を取得したと発表した。

中外製薬の親会社Rocheの100%子会社のGenentechがFDAから緊急使用許可を取得した。

厚生労働省は2022年1月21日、新型コロナウイルス感染症の治療に使うことを承認した。

2021/6/28 中外製薬の抗リウマチ薬「アクテムラ」、FDAが新型コロナウイルス治療薬として緊急使用許可 


別途、WHOはCOVID-19治療薬の推奨、非推奨を行なっている。(下表)

WHOは1月14日にバリシチニブとソトロビマブを推奨したが、発表文のなかでこれらを「事前承認」に申請するよう求めているとしている。

https://www.who.int/news/item/14-01-2022-who-recommends-two-new-drugs-to-treat-covid-19

メーカー 日本
バリシチニブ(オルミエント) Eli Lilly 2022/1/14 重症患者に強く推奨 2021/4/27 承認
モノクローナル抗体ソトロビマブ GlaxoSmithKline 非重症患者に条件付き
回復期患者血漿 2021/12/7 推奨せず(強く)
カシリビマブ / イムデビマブ Regeneron、Roche / 中外製薬 2021/9/24 非重症患者に条件付き 2021/7/19 承認
アクテムラ Roche / 中外製薬 2021/7/6 重症患者に強く推奨 2022/1/21 承認
サリルマブ Sanofi
イベルメクチン Merck(MSD) 2021/3/31 研究開発のみ

ヒドロキシクロロキン

2020/12/17 推奨せず(強く)
ロピナビル・リトナビル AbbVie 推奨せず(強く)
レムデシビル Gilead Sciences 2020/11/20 条件付きで推奨せず 2020/5/7 承認

副腎皮質ステロイド薬

2020/9/2 重症患者に強く推奨

青字は事前認証   赤字は事前認証取り消し

詳細 https://apps.who.int/iris/rest/bitstreams/1405287/retrieve (2022/1/14発表分は上記発表文を参照)
ーーー


認証手続き


https://kyokuhp.ncgm.go.jp/library/tenkai/2020/tenkai200212.pdf



塩野義製薬は2月7日、COVID-19治療薬「S-217622」に関する説明会を開き、Phase 2/3試験 Phase 2a partの結果を速報した。

対象患者は、軽症中等症および無症候軽度症状のみの感染者で、11回を5日間 経口投与した。

結果は次の通り。

抗ウイルス効果:プラセボと比較して有意に優れた抗ウイルス効果を示した
 >
速やかにウイルス力価およびウイルスRNA量を減少
 >
4 日目(3回投与後)にはウイルス力価陽性患者割合をプラセボ群と比較して約6080%減少
 >
ウイルス力価が陰性になるまでの時間の中央値を、プラセボに対して2日短縮

臨床症状に及ぼす影響:COVID-19に特徴的な臨床症状の改善傾向を確認した
 >
プラセボ群における重症化症例は2例存在したが、S-217622投与群ではいずれの群においても認められなかった

安全性
 -
高度、重篤ならびに治験中止の原因となる有害事象は見られなかった
 -
ほぼ全ての有害事象は軽度であり、副作用も全て軽度であった

2月14日の週あるいはその次の週というタイミング、2月中には間違いなく結果とともに承認申請というようなプロセスを取るべく準備。

対象は12 歳以上だが、小児の開発はどうしてもしなければいけないと思っている。

3月までに100万人分の提供体制構築完了、4月以降は1,000万人分以上/年の生産予定

https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/investors/ir-library/presentation-materials/fy2021/20220207_3.pdf


政府はこれについて、最終段階の治験完了前の実用化を可能とする「条件付き早期承認制度」の適用の検討に入った。

条件付き早期承認は、医療上の有用性は高いが、患者が少ないなどの理由から最終段階の治験の早期完了が難しい医薬品について、一定の安全性・有効性の確認と、実用化後のデータの追加提出などを条件に、治験の途中段階での申請・承認を認める既存の制度。

希少疾病やがん治療薬などを念頭に置いたものだが、厚生労働省は新型コロナの治療薬も対象となり得るとみている。

ーーー

塩野義製薬は経口投与の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬(開発番号:S-217622)の国内第2/3相臨床試験を2021年927日に開始した。

3CLプロテアーゼ阻害薬で、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。

2021/7/28 塩野義製薬、COVID-19治療薬の臨床試験開始





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塩野義製薬と島津製作所は2月9日、下水モニタリングを始めとする公衆衛生上のリスク評価を目的とした折半出資の合弁会社、 ㈱AdvanSentinelを設立したと発表した。

今回設立したAdvanSentinel社は、塩野義製薬の強みであるサイエンスを活かした新規分析手法の開発力や島津製作所の強みである環境中の分子測定技術などに加え、両社が培ってきた下水モニタリングを通じたネットワークを持ちよることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にとどまらない、次なるパンデミックや公衆衛生上のリスク把握などに向けたオールジャパン体制の構築を目指す。

ーーー
両社は2021年6月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含む感染症領域の下水モニタリングの早期社会実装を目指した業務提携に関する基本合意書を締結した。


欧米では、都市の下水中の新型コロナウイルスを定期的にモニタリングすることで、流行状況の早期検知や収束判断などを行うほか、施設の下水のモニタリングにより、クラスター感染の早期検知を行っている。両社は、PCR検査などによる下水モニタリングの早期社会実装を目指し、共同事業体の設立の協議を進めるとしていた。

(島津製作所)

島津テクノリサーチを通じて、2021年5月に下水のPCR検査によって対象集団における新型コロナウイルスの感染状況を監視し、陽性反応がある場合にはヒト検査で感染者を特定する検査システム「京都モデル」の受託検査事業を開始した。高齢者施設や学校など教育機関、宿泊施設、保育所といった個別施設に向けてサービスを提供する。

「京都モデル」については京都大学、金沢大学、富山県立大学の技術指導を受けて、京都府・京都市の協力による実証試験においてその有効性を確認した。

2021年4月中旬まで約1カ月かけて京都府・京都市の協力のもとに、中等症患者が入院する医療機関および軽症患者が滞在する療養施設で実証実験を行った。
その結果、島津テクノリサーチが独自で開発した「PoP-CoVサンプラー」をマンホールに設置し、採取した下水試料から陽性反応を捉えられた。

さらに個別施設(111名が利用するオフィスビル)の下水PCR検査から陽性反応を捕捉した追加実験では、後日実施された行政のヒト検査において利用者1名が新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。

下水PCR検査の実施が発症日(陽性確定日の4日前)あるいはその前日であり、「建物単位での下水PCR検査が感染の早期発見に有効」であることを示せた。

下水PCR検査は、ポリエチレングリコール沈殿法で試料を濃縮したうえで、島津製作所製の「新型コロナウイルス検出試薬キット」を使用して実施した。今後、島津テクノリサーチは「変異株の検出」や「高感度・ハイスループットな前処理方法」について検討を重ねる。

(塩野義製薬)

日本においては、人口当たりの感染者数が少なく、下水中のSARS-CoV-2濃度が低いため、都市の下水からウイルスを検出するためには、感度の高い検出法が必要とされる。

北海道大学及び塩野義製薬は、これらの課題を克服し得る下水中SARS-CoV-2の高感度検出技術を共同開発するとともに、検出工程の自動化を実現した。

また、下水疫学調査の社会実装にあたっては、採取した下水をハイスループットで解析する体制の構築が急務で、このため、国産汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」によりSARS-CoV-2 RNAの検出・定量及び次世代シークエンス(NGS)解析の前処理(ライブラリ調製)を自動化する技術を持つロボティック・バイオロジー・インスティテュート、及び、大規模NGS解析によりゲノム情報(ウイルス変異状況等)の把握を可能にする㈱ iLACを加えた体制を構築した。

塩野義製薬は2021年4月からは、大阪府の協力のもと、本検出技術を活用し、下水処理場の流入下水を使用したSARS-CoV-2の定量的モニタリングに取り組み、SARS-CoV-2の定量的検出が可能であることを確認した。

2021年6月14日より、本検出技術を用いた各自治体の下水処理場への流入下水を対象としたサービス提供を開始した。

下水疫学調査の結果は、個人が特定されない形で地域のSARS-CoV-2の感染拡大や収束の傾向を把握できることから、各自治体が感染拡大予防策を講じる際の1つの客観的な指標として活用されることが期待される。



三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)は1994年3月1日に三菱ガス化学と三菱化成(現三菱ケミカル)の折半出資によって設立された。

両社が従来行ってきたエンジニアリングプラスチックス事業を継承し、一体化することを目的とした会社で、5大エンジニアリングプラスチックスをすべて網羅する。

ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、高性能ポリアミド樹脂(PA樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)及び変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)

ーーー

三菱ガス化学と三菱ケミカルは2月8日、MEPの改組を発表した。

1.MEPの出資比率の変更

2023年4月3日付で、三菱ガス化学 75%、三菱ケミカル 25% とする。

これにより、MEP が 60%を出資するタイの THAI POLYCARBONATE CO., LTD.は三菱ガス化学の連結子会社に該当することとなる。

2.MEPをPC 製品の開発・製造・販売会社とし、他の製品は親会社が引き取る。(吸収合併する。)

ポリカーボネート樹脂(PC樹脂) 三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP
特殊PC(XANTAR™を含む) 三菱ケミカル
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)
ポリアセタール樹脂(POM樹脂) 三菱ガス化学→グローバルポリアセタール(GPAC)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)
高性能ポリアミド樹脂(PA樹脂)コンパウンド

三菱ケミカルは福岡事業所にて高品質 PC 製品の製造を受託する。


なお
三菱ガス化学は2月8日、同社のポリアセタール樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂・高性能ポリアミド樹脂コンパウンドの販売・研究及び統括管理に関する事業を2022年4月1日付で完全子会社であるグローバルポリアセタール(GPAC)へ承継することを決めたと発表した。

グローバルポリアセタール㈱は2020年12月25日付で三菱ガス化学 100%出資で設立

三菱ガス化学は、ポリアセタール(POM)事業を「差異化事業」に位置付け、競争優位性のある事業として更に強化していく方針だが、POM 事業体制を更に見直し、完全子会社である GPAC に POM 事業の統括機能を付与し、グループの POM 事業に係る生産・販売・開発を一体的に運営する。

なお、POM事業の合理化の一貫として、既に下記を実施している。

1) 韓国ポリアセタール事業再編 (2020年12月9日 発表)

三菱ガス化学とCelanese Corporationは、ポリアセタールを中心とするエンジニアリングプラスチックスの製造販売のJV 韓国エンジニアリングプラスチックス(KEP)を再編し、運営体制を見直すことについて合意した。

出資比率:三菱ガス化学 40%、三菱商事 10%、Celanese 50%(1999年に暁星から取得)
能力:三菱ガス化学技術による
世界最大規模のPOM生産能力(年間生産能力14万トン、全6系列)

このたび、KEPをPOMの製造を主として行う製造会社とし、三菱ガス化学とCelanese Corpが出資比率に応じてKEPから製品を引き取り、両社がそれぞれ全世界向けに販売する。

三菱ガス化学はKEP製品を販売する新会社を韓国に設立する。

2) 四日市工場におけるポリアセタール生産停止(2021年6月1日発表)

2023年9月末を目途として、四日市工場におけるポリアセタール(POM)の生産(年間2万トン)を停止する。

四日市工場では、1981年以来、40年にわたってPOMを生産してきたが、プラント規模が小さく設備の老朽化が進む中で、厳しい採算を余儀なくされていることから、タイ拠点に生産を集約する。

三菱ガス化学は、四日市工場のほか、タイ・韓国(上記)・中国に生産拠点を有している。

タイ:Thai Polyacetal Co,. Ltd.Map Ta Phut

出資:三菱ガス化学 73.55%、TOA Chemical 26.45%
能力:
100千トン

中国:宝泰菱工程塑料(南通)有限公司

出資:ポリプラスチックス 70.1%、三菱ガス化学、韓国Engineering Plastics、チコナ 計29.9%
能力:60千トン

ソフトバンクグループ(SBG)とNVIDIA Corporationは2月8日、NVIDIAがSBGからArm Limitedの株式を取得する契約を解消したと発表した。
取引完了のために誠意を持って取り組んできたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至ったとしている。

SBGは、Armの技術やIPが今後もモバイルコンピューティングと人工知能の発展の中心であり続けると確信しており、2023年3月期中に同社の株式上場の準備に入る。「ナスダックを中心に米国での上場を考えている」としている。

当初の契約の条項に基づき、SBGはNVIDIAが前払いした12.5億米ドルを保持し、利益計上する。NVIDIAは20年間のArmライセンスを保持する。

ーーー

ソフトバンクグループは20169月に日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(310億米ドル)英半導体設計会社 Arm LimitedArmを買収した
(このうち24.99%をソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管した。)

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の Arm Limited の全株式を米国の半導体メーカーであるNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。取引は、英国、中国、EU及び米国を含む必要な規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を条件とし、完了までに18カ月かかる見込んでいる。

Armの事業のうちIoTに関連するサービス事業のInternet-of-Things Services Group本取引の対象外で本取引の完了までにArmから分離され

2020/9/15 ソフトバンク、Arm LimitedをNVIDIA に売却

これを受け、Google、Microsoft、Qualcomm などが規制当局に苦情を申し立てたと報じられた。

EUの欧州委員会は2020年10月27日、本買収について競争法(独占禁止法)に基づく本格調査に入ったと発表した。ArmがNVIDIAの傘下に入ることで価格の上昇などを招く可能性があると懸念している。

米FTCは2020年12月2日、反トラスト法に基づき、買収差し止めを求める訴訟を起こした。「この垂直取引により、最大のチップ企業の1社が、競合企業が独自の競合チップを開発するために依存する技術と設計を制御できるようになる」としている。NVIDIAの競合企業もArmの技術に依存しており、買収を認めれば、技術支配力を利用して競合他社を弱体化させるとした。
裁判は2022年8月9日に開廷の予定であった。

英政府も安全保障の見地から調査するよう英競争・市場庁(CMA)に指示するなど規制当局からの認可取得は難航していた。 

今回、孫社長は、IT業界や「各国政府の強い動きで断念した」と説明した。背景には「シリコンバレーのほとんどが直接的、間接的にArmの製品を使っているからだ」との認識を示した。

東芝は、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とする。2月7日に発表した。

背景は下記の通り。

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

戦略委員会があらゆる選択肢を検討し、東芝と株主にとり最善となるスピンオフ計画を提案、取締役会が全会一致で承認した。

戦略委員会の委員は全員が社外取締役である。

 智 会長、社長CEO
Paul J. Brought 社外 元 KPMG 委員長
Ayako Weissman 社外 元 投資会社 委員
Jerry Black 社外 イオン顧問 委員
George Zage Ⅲ 社外 元 投資銀行 委員
畑澤 守 代)副社長
綿引 万里子 社外 元 裁判官
橋本 勝則 社外 元 デュポン

委員


2つの会社をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有する。

1) インフラサービス Co.:カーボン・ニュートラルの目標の達成およびインフラレジリエンスの向上に貢献する会社

2023年度には2兆2,300億円となる見込み。営業利益率は同期間に5.1%から5.2%に伸長する見込み。

2) デバイス Co.:社会・ITインフラの進化を支える会社

2023年度には8,800億円となる見込み。
 注力領域であるパワー半導体は、2021年度950億円を2023年度には1,200億円に
 ニアラインHDDは、2021年度2,000億円を、2023年度2,800億円に大きな成長を見込む。
営業利益率は2021年度の7.1%から、2023年度には6.1%となる見込み。


2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編


しかし、「モノ言う株主」(海外の資産運用会社)が「結論に至るプロセスが透明性に欠ける」、
「収益向上の機会が何ら見られない」「"小さな東芝"を3つ生み出す」などと分割案に反対の声が上がっており、実現が不透明な情勢となっている。

ーーー

東芝は2017年12月に約6000億円の第三者割当による新株式の発行をおこなった。

公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行った。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。「物言う株主」も多い。

これにより2期連続の債務超過による上場廃止を回避することができた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

しかし、この後、現在に至るまで、「物言う株主」に振り回されることとなった。

現在の主な株主は次の通り。(日経報道、Quickファクトセット調べ 2022/1月末)

Effissimo Capital Management 旧村上ファンドの幹部3人がシンガポールで設立 10.41%

3D Investment Partners

シンガポール拠点 日本特化型の独立系資産運用会社 7.57%
Farallon Capital Management 米国の資産運用会社 6.75%
BlackRock Inc. 世界最大の資産運用会社 3.08%
Vanguard Group 世界最大規模の資産運用会社 2.65%


2021年3月の臨時総会で、定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決

  調査の結果、東芝は経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘された。

同臨時総会で、Farallon Capital Managementは東芝の新経営方針をめぐり、定款の変更などを求めた。(賛成少数で否決)

2021年6月の株主総会で、株主の反対で、当初取締役候補とした2人を撤回したが、総会で永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。

2022年1月、3D Investment Partnersは3社分割案に反対し、臨時株主総会を要求 。

ーーー

「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、東芝 は一転してこの3分割の方針を見直した。

具体的には、東芝グループから半導体などのデバイス事業だけを切り離して新たに上場させる一方、分割するとしていたインフラサービス事業は東芝本体に残す。



キオクシアに対し、できるだけ早期のIPOを正式に要請した。

当初の「インフラサービスCo.」のうち、ビルソルーション東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリア) 、及び当初の「東芝本体」の東芝テックは、注力事業との関係性が弱く、「非注力事業」とした。

ビル3社については、成長ポテンシャルを実現できるパートナーとの再編や外部資本の導入によって価値を顕在化すべきと判断した。
うち、空調の東芝キャリアについては下記の通り、売却した。残り2社は2022年度中の売却契約締結を目指す。

東芝テックについては、同社自身の中長期の成長プランを促進すべく、実務上可能な限り短期のうち同社と協働する。

両社の事業計画(億円)

2021年度 22年度 23年度 25年度
東芝/インフラサービス 売上高 15,200 15,400 16,100 18,700
営業利益 540 650 900 1,200
デバイス Co. 売上高 8,600 8,600 9,100 10,100
営業利益 550 560 600 800

本事業計画の円滑な遂行を前提に、今後2年間で3,000億円の株主還元を想定した。


果たしてこの案で「物言う株主」を満足させられるであろうか。

会社分割は、株主総会で2/3以上の賛成が必要な「特別決議」が必要だが、東芝は産業競争力強化法の特例措置を申請する方針で、認められれば取締役会で決められる。

東芝では株主総会に諮るとしているが、「特別決議」か、「普通決議」(多数決)かを決めていない。

ーーー

なお、同社は空調子会社の東芝キヤリアについて、JV相手の米空調大手Carrier Corporation に保有する株式60%のうち55%を2月7日に譲渡した。保有比率は5%になる。

同社の空調事業の価値を顕在化するためには、その成長ポテンシャルを最大化できる強いパートナーとの再編が最善との結論に達したとしている。

売却額は約1,000億円。

東芝は1998年に世界最大の空調設備機器メーカーである米国Carrier Corporation との間で、 空調設備機器分野におけるグローバルな戦略的事業提携を行ない、1999年4月に東芝60%、米社40%出資で日本に東芝キャリアを設立した。

Carrier CorporationはUnited Technologies Corporationの空調設備事業部門会社で、 世界最大の空調設備機器メーカーとして、大型空調設備機器やコールドチェーン製品等を主製品とする。
東芝は小型エアコンや業務用マルチエアコン等を空調設備機器の主製品としていた。




付記 東芝のRestructuring 推移

米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

下院民主党が1月25日に公表した法案で、上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

2021/6/11 米上院、対中包括法案を可決

2022/2/1  米下院、半導体補助金法案を公表

いずれも、中国政府が巨額の産業補助金を投じるハイテク産業政策「中国製造2025」(末尾参照)に対抗するもの。

   

上院は超党派で可決したが、下院では民主党が賛成、共和党が反対した。(共和党1議員が賛成、民主党1議員が反対)

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 1 221 222
反対 209 1 210
棄権 2 2
合計 212 222 434 1

* 昨年来の欠員1名は1/11の補選で民主党が確保。別途、1/1に共和党員が辞職(6/7に補選)

国内の半導体生産支援に約520億ドルを充てる。半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発のための施設・装置の建設・拡充などを財政支援する。
上院が2021年6月8日に異例の超党派で可決した United States Innovation and Competition Act と同様である。

商務省は1月24日、これら半導体産業振興策の承認を見越し、支援枠組みの設計・運用について利害関係者からのコメント募集を始めている。
米国で最先端半導体の工場を建設する台湾積体電路製造(TSMC)やIntel、韓国サムスン電子などに配る。

加えて、米国のサプライチェーン強化に重点を置き、米国の経済・安全保障にとって重要な製品の供給不足を防ぎ、それら重要製品の国内生産を促すための補助金やローンに450億ドルを拠出する。
重要製品には、公衆衛生や情報通信技術、エネルギーや交通、食糧などが挙げられている。

2021/6/12 米国の重要部材のサプライチェーンの点検結果と対策

また、エネルギーやバイオテクノロジーなど先端技術のR&Dを支援、5年間で133億ドルを投じる。

バイデン大統領は、中国や世界との競争における米国経済のエンジンを再活性化すると指摘、両院が示した国内産業支援策が米国に製造業の雇用を取り戻し、半導体などのサプライチェーンの目詰まり解消に寄与する、と評価し、早期の法案可決に期待を示した。

今後、上下両院で法案の一本化を目指すが、共和党は下院案に盛り込まれた気候変動対策などに反発しており、調整作業の難航が予想されている。

ーーー

参考 中国製造2025 Made in China 2025)

2015年5月に公表された。

ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし,
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。


韓国で、半導体に続き「第2の産業のコメ」と呼ばれるバッテリー産業で、技術流出を巡る懸念が高まっている。


GMは1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

これに関し、LG Energy Solutionは年明けに、GMから困難な要求を受けた。バッテリーの安全性確認を理由に、バッテリーの実験結果など、敏感な技術情報を要求されたという。


Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

3つの電池工場については設立を交渉中のFord とSK InnovationのJVのBlueOvalSKが建設、運営する。今後詳細を詰め、所定の手続きを経て設立する。

バッテリー工場に両社がそれぞれ44億5000万ドルずつを投資し、組立工場にはFord単独で25億ドルを投資する。

2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

FordもSK側にバッテリー内部の充填材の密度に関する技術情報の共有を要求した。Ford側が韓国政府に対し、該当技術が流出禁止となっている国の中核技術に当たるかどうかを確認する過程で明らかになった。


米国の新興電気自動車(EV)メーカーのRivian Automotive, Incは2021年12月16日、50億ドルを投資してジョージア州East Atlanta Megasite にEV工場を建設すると発表した。

同社は2009年設立の新興EVメーカーで、2021年9月に全米で初となるEVピックアップトラック「R1T」を出荷するなど、Teslaに次ぐ米国発のEVメーカーとして注目されている。

三星SDIは、Rivian Automotiveとバッテリー協力について議論していたところ、技術共有を無理に要求してきたため、議論が決裂したという。

米国の自動車メーカーが今後、「バッテリー内在化」を推進する過程で、こうした技術流出を巡るトラブルが続くものとみられ、韓国の業界の関係者は、「技術流出を巡る懸念はもとより、自動車メーカーのバッテリー内在化の時間を短縮させることで韓国のバッテリー競争力を弱める可能性がある」とし、「流出を予防する法制度の補完が必要だ」としている。


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米中堅シェール開発のChesapeake Energyは1月25日、同業のChief E&D Holdings, LPを買収、Tug Hill, Inc.の未稼働の権益も取得すると発表した。

取得額は総額約26億ドルで、現金20億ドルと残りを同社株式で支払う。

Chief E&D とTug Hillはペンシルベニア州のMarcellus Shaleに注力している。Chief E&D は同地に60万エーカーの資産を持ち、日量10億立方フィート以上の天然ガスを生産している。

Chesapeake Energyは同日、中西部ワイオミング州のPowder River Basin原油事業を4億5千万ドルで同業のContinental Resources, Inc. に売却することも発表した。売却資金はChief E&D の購入代金に充てられる。

Chesapeake Energy は2021年11月1日、Vine Energy Inc. を買収を完了したと発表した。8月に615百万ドル(株式+現金)での買収を発表していた。

Vine Energyはルイジアナ州のHaynesville シェールとMid-Bossier シェールに権益を持つ。


Chesapeake Energyは原油価格の低迷を受けて2020年に経営破綻したが、2021年以降、米国のエネルギー需要が回復するなどして業績が改善している。

Chesapeake Energyは2020年6月28日、連邦破産法11条(Chapter 11) に基づく会社更生手続きをテキサス州南部地区の連邦破産裁判所に申請したと発表した。

新型コロナウイルスの影響による原油相場の下落で経営が悪化した。原油相場下落による破綻としては米国最大の業者である。

2020/6/30 米シェール大手のChesapeake Energy、Chapter 11 申請 


同社は下図の各地に拠点を持つ。

DSMの変身

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オランダのDSMは2021年9月に「Health, Nutrition & Bioscience companyになる」と宣言、エンジニアリングプラスチック等のMaterials 部門については売却を含めて、どうするか検討すると述べた。

ドイツの業界紙は最近、Lanxess(2004年7月にBayerから分離独立)が投資家のAdventと組んで買収するのではないかとの記事を出した。
競合相手として
Celanese や宇部興産、SK Capital やApollo等を挙げている。事業価値としては30億ユーロ程度としている。

ーーー

DSMは1902年にオランダ政府がオランダ国営炭鉱 (Dutch State Mines) を設立したのが起源で、1919年にコークス炉ガスを利用して化学肥料の製造を開始し、その後、カプロラクタム系製品やポリエチレン等のバルクケミカル事業へ進出する一方で、1973年に炭鉱を完全閉鎖、化学会社への転換を果たした。

DSM2007年に新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。下図の緑色の部門を売却し、Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進めるとした。


2007/10/3 DSMの経営方針

具体的には、下記のとおり売却を進めた。

DSM Special Products 2010年に米国のEmerald Performance Materials, LLCに売却
Maleic anhydride事業 長期間、売却を狙ったが成立せず。

2014年にDSM Pharmaceutical Products とPatheon の統合に合わせ、JVのファイン事業子会社としてESIM Chemicals を設立しMaleic anhydride事業を移した。その後、他社に売却。

DSM Elastomers 2010年に熱可塑性エラストマー事業(商標Sarlink)を米国のコンパウンド会社のTeknor Apex に売却
同年、残るEPDM事業をLanxessに売却

2010/12/20  LANXESS、DSM Elastomersを買収

Melamine & Agro 2010年にエジプトのOrascom Construction Industries(OCI)に売却
DSM Energy 2009年に Abu Dhabi National Energy Company (Taqa) に売却

 なお、Performance Materialsに関し、2010年5月に三菱化学との間で、事業の交換(ポリカーボネート事業の売却及びナイロン事業の買収)を実施した。

2010/3/3 三菱化学、DSMとの高機能樹脂事業における事業交換契約に合意

これにより、中核事業をLife Science(Nutrition & Pharmaceutical)とMaterial Scienceとしたが、その後、このうちのPharmaceutical事業を売却した。  

 2011年に抗生物質事業を中国企業・中国中化集団(Sinochem)との合弁会社DSM Sinochem Pharmaceuticalsに移管した。

 2014年にDSM Pharmaceutical Products を米投資会社JLLのカナダの子会社 Patheon と統合し、Patheon (DSM 49%)とした。

なお、これに合わせ、JVのファイン事業子会社としてESIM Chemicals を設立し、DSMのmaleic anhydride事業を移した。

更に2015年7月には、ポリマー中間体事業(カプロラクタムおよびアクリロニトリル)およびコンポジットレジン事業を拠出し、英国の投資顧問会社であるCVC Capital Partners とともに新会社ChemicaInvest を設立(DSMが35%を出資)

ChemicaInvest は、Aliancys(コンポジットレジン)、AnQore(アクリロニトリル)、Fibrant(カプロラクタム)の3つの事業ユニットを持つ。

2016/3/16 DSMの変身


2019年のDSMの事業内容は下記の通りであった。( 百万ユーロ)

  Sales EBITDA 株主帰属
利益
Materials Engieering Plastics 1,406    
Dyneema(超高分子ポリエチレン繊維) 338    
Resins & Functional Materials  1,002    
Total 2,746 493  
Nutrition Animal Nutrition & Health 2,892    
Human Nutrition & Health 2,046    
Personal Care & Aroma Ingredients 425    
Others 665    
Total 6,028 1,224  
Innovation 194 18  
Cooperate 42 -149  
Total 9,010 1,586 764

DSMは2021年9月に「Health, Nutrition & Bioscience companyになる」と宣言したが、実はその前にこの方向で動き出していた。

2020年にResins & Functional Materials事業Covestroに売却している。

2020/10/14 CovestroRoyal DSMコーティング樹脂事業を買収

Materials部門で残るのは、ポリアミドと超高分子ポリエチレン繊維「ダイニーマ」などで、今回、これを売却する。

売却先候補に宇部興産が挙がっているのは同社が 国内外でポリアミド事業に注力しているため。

2016年時点で世界3拠点でナイロン6樹脂を生産、日本(5.3万t/年)、タイ(7.5万t/年)、スペイン(7.0万t/年)の合計19.8万t/年の生産能力を持ち、世界トップメーカーの一角を占める。

上記の通り、DSMは三菱化学(当時)のポリアミド事業を取得している。(ポリカーボネート事業と交換)
日本法人子会社のDSMジャパンエンジニアリングプラスチックスは、ナイロン樹脂の国内シェア約20%を誇る。

EUが半導体最大手の米Intel に科した10億6千万ユーロの制裁金を巡り、EUの一般裁判所(一審)は1月26日、制裁金を取り消す判決を出した。Intelの勝訴となり、EU規制当局にとっては大きな後退となった。

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欧州委員会は、チップ製造でIntelに対抗するAdvanced Micro Devices(AMD)からの訴えを受け、長期間に及ぶ調査を行なったが、2009年5月13日、Intelがx86 CPUと呼ばれるコンピュータチップ市場から競合企業(AMD)を排除するため、違法な反競争的慣習を続けているとして、10億6千万ユーロの制裁金を科した。


Intelは2002年10月から2007年12月にかけて、世界のx86 CPU市場の70%以上のシェアを獲得したが、欧州委員会は、Intelがこの期間中に主に2つの違法な慣習に携わったことが判明したとした。

第一はコンピュータメーカーに対して、x86 CPUをIntelから購入することの見返りにリベートを支払った。主要な小売業者に対しても、直接的に金銭を渡し、Intel製のx86 CPUを搭載したコンピュータのみの在庫を置くように取り計らった。

リベートには消費者向け価格を下げる効果がありうることは認めつつも、リベート支払いに際し、競合する会社の製品の購入を減らす、あるいは完全に取りやめるよう条件付ける行為は不正だと述べている。

第二に、コンピュータメーカーに対し直接的に金銭を渡しつつ、競合企業のx86 CPUを搭載した特定の製品の販売差し止めや発売延期を求め、販売ルートの制限に踏み切る慣習にも手を染めていたとする。

Intelはこれに対し、同社の行為が欧州の法律に違反したとは考えておらず、制裁金については上訴するとした。

一般裁判所は2014年に欧州委のこの決定を支持したが、Intelが上訴し、2017年に欧州の最高裁に当たるEU司法裁判所が一般裁判所に対して再審理するように命じた。

一般裁判所は今回の判決で、EU競争当局の分析を批判して制裁金を無効とし、判決文で「欧州委の分析は不完全であり、問題のリベートが反競争的効果を持つ可能性がある、あるいは持つ可能性が高いということを必要な法的基準で立証していない」と指摘し 、Intelに10億6千万ユーロの制裁金を課した決定全体を無効とした。 

欧州委は判決内容を検討し、可能な次のステップについて検討するとコメントした。欧州委はEU司法裁判所 に上訴することができる。

米議会下院は1月25日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案The America COMPETES Act of 2022 を公表した。

上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

米政府は半導体業界へ計520億ドルの補助金を拠出する方針で、Samsung は補助金支給条件などを確認した上で、新工場建設を決定したという。Intelも補助金を前提にしている。


バイデン大統領は2021年3月31日、2兆米ドルを超えるインフラ投資計画 American Job Planを発表した。

そのうち、R&D、製造近代化、中小企業として5,800ドルが含まれているが、大統領は、この中から米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルを割り当てることを明らかにした。
ホワイトハウスは、「超党派議員グループによって提唱されたCHIPS for America Act、American Foundries Act of 2020 の要望に従い、半導体の製造および研究に資金を投入する指示も出している」と述べた。

2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合 

最終的にこれをAmerican Job Planから外し、上院のInnovation and Competition Act に折り込んだ。

上院のInnovation and Competition Actは、様々な分野で中国の影響力に対抗することが狙いで、「米国のイノベーションを一段と後押しし、今後数世代にわたって我が国の競争優位性を維持する内容」としている。

米国の技術や科学、研究に合わせて5年間で総額2500億ドルを投資する。

米議会が2021年1月に成立させた国防権限法に半導体生産を強化する方針を示したことを受け、半導体・通信機器の生産・研究の強化に約540億ドルを支出する。うち20億ドルは、深刻な供給不足に陥っている自動車向け半導体に充てられる。

政府補助金をてこに国産半導体の育成を急ぐ中国をけん制する狙いがある。

2021/6/11 米上院、対中包括法案を可決

しかし、この法案は「中国対抗法案」との位置づけで、新興技術の研究開発や台湾の支援強化など様々な条項を盛り込んだため、下院との法案すり合わせに時間がかか った。


今回、与党・民主党の議会指導部が公表したAmerica COMPETES Act では、2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で上院と同じ計520億ドルの補助金を出す。

今後は下院の法案可決や上下院による法案の一本化などが必要だが、大統領は「法案の前進に向けて重要な一歩だ」と述べ、早期の議会通過に期待を示した。

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