「no」と一致するもの

阪大微生物病研究会 (BIKEN財団) は9月4日、㈱ BIKENが田辺三菱製薬の出資を受けて9月1日付で操業を開始したと発表した。

BIKEN財団のワクチン製造技術と、田辺三菱製薬の医薬品生産・管理システム技術を融合してワクチンの供給拡大を図る。

概要:

(1) 名称 :㈱ BIKEN
(2) 所在地 :香川県観音寺市瀬戸町
(3) 事業内容 :ワクチンを含む生物学的製剤の製造及び供給
(4) 操業開始 :2017年9月1日
(5) 出資比率 :BIKEN財団 66.6%、田辺三菱製薬 33.4%
(6) 従業員数 :553人

ワクチンの製造販売元として、国内で最も多くの量を供給しているBIKEN財団と、その販売元として50年以上相互連携してきた田辺三菱製薬は、2016年11月、ワクチンのさらなる供給拡大に対応するため、合弁会社を設立することに基本合意した。

BIKEN財団のワクチン製造技術を基軸として、田辺三菱製薬の医薬品生産に関するシステムや管理手法等を融合し、生産基盤の強化を加速させることで、ワクチンのさらなる安定供給を目指すもの。

両者は2017年5月1日、合弁会社「㈱ BIKEN」の設立に最終合意し、これを受けて、5月9日、BIKEN財団の100%出資で ㈱BIKEN が設立された。

BIKEN財団は9月1日、㈱BIKENの株式33.4%を田辺三菱製薬に売却し、両者の合弁会社として操業開始した。

BIKEN財団と㈱BIKENから成る「BIKENグループ」は、ワクチンを中心とした生物学的製剤に特化したバイオ・スペシャリティ・ファーマとして、80年以上のワクチン開発、生産で培った独自のバイオ技術、アカデミアとの連携を活かしたオープンイノベーションで、世界中の人々の大切な命を守るための日本発・世界初の画期的なワクチンの開発をめざすとしている。

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日本の感染症対策が発展途上にあった1930年代に細菌学者 谷口腆二博士は「日本国民を感染症から守るためには、海外の西の門戸である大阪にも伝染病に関する研究機関が必要だ」と考え、奔走した。
1934年、山口玄洞氏の篤志を基金に 財団法人 阪大微生物病研究会(BIKEN財団)が誕生した。

微生物病の基礎研究は研究所(現在の大阪大学微生物病研究所)が行い、その応用研究とワクチン等の製造・検査、供給をBIKEN財団が担うという 「大学発ベンチャー」であった。

戦後間もない1946年には、発しんチフスワクチン供給のニーズに応えるべく、香川県に観音寺研究所を設立 し、1961年に完成した不活化ポリオワクチン国産第一号をはじめ、多くの国産第一号のワクチンを開発し、世に送り出した。中でも水痘ワクチンは、日本発・世界初のワクチンとな った。

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関連記事


日東電工は2016年11月2日、阪大微生物病研究会と共同で、季節性インフルエンザHAワクチン舌下錠の第Ⅰ相臨床試験を開始したと発表した。
阪大微研がワクチンのもとになる抗原を担当、日東電工がアジュバンド(薬物の作用を増強する目的で併用される物質・成分)を担当する。

2016/11/7 日東電工、世界初の革新的なワクチン投与のプラットフォーム構築 

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田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダの医薬品会社 Medicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン

東芝は8月24日、社内外の取締役が出席する経営会議を開き、東芝メモリ売却について、協業先のWestern Digital との交渉加速を確認した。

東芝は8月30日の定時取締役会で東芝メモリの売却を決める予定であったが、Western Digital との協議がまとまらず、またBain Capital が新提案を行ったこと、台湾の鴻海精密工業も新たな提案をする意向を示したことから、決定を見送った。

この結果、①Western Digitalの企業連合(Western Digital と産業革新機構、政投銀、KKR)に加え、②革新機構、 政投銀、Bain Capital、SK Hynix+新規にAppleからなるコンソーシアム、③台湾鴻海精密工業を含む企業連合 の3陣営との交渉を継続し、可及的速やかに株式譲渡契約の締結を目指すとした。

各国の独禁当局の審査は半年はかかることから、銀行団は8月中の合意を要求したが、決められなかった。時間切れにより上場廃止となる可能性が強まった。

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3陣営の提案概要と問題点は下記の通り。

Western Digitalの企業連合 (億円)

この場合、Western Digitalは法的措置を取り下げる。

出資 転換社債 融資 合計
Western Digital 1,550
KKR 3,000
産業革新機構 3,000
政策投資銀行 3,000
(一部優先株)
東芝 2,000
郵貯銀行ほか 450
銀行団 7,000
合計 11,450 1,550 7,000 20,000


Western Digital は、当初は議決権を持た ないこと、将来にわたって議決権は3分の1未満とすることも容認したとされる。

3年後をメドに株式公開する点で一致している。

しかし、東芝はWestern Digitalの議決権の割合を10年間にわたって15%にとどめるよう要求、Western Digitalを上回る2千億円を自ら出資し、雇用維持などで発言権を残す。
これに対し、Western Digitalは第三者による取得を防ぐため、議決権比率を33.3%まで引き上げることを主張した。

また、東芝はKKRが将来、株式をWestern Digitalに直接譲らず、市場で売却するよう求めているが、自由に売りたいKKRは難色を示している。

Western Digital の業界シェアが上がることで、各国の独禁法審査が長引く可能性がある。


革新機構、政投銀、Bain Capital、SK Hynix+新規にAppleが参加

東芝は6月に「日米韓連合」を優先交渉先に選定した。

当初の構想は下記のとおりであったとされる。(億円

普通株 優先株 融資 合計
産業革新機構 50.1% 3,000 3,000
日本政策投資銀行 16.5% 1,000 2,125 3,125
Bain Capital 33.4% 2,000 6,375 8,375
SK Hynix
銀行団 5,500 5,500
6,000 8,500 5,500 20,000


問題は次の2点

SK Hynixの経営参加要求 
  SKは最大33%の株式取得を要求したとされる。東芝は独禁法対策で経営に参加しないことを求めている。

・ 革新機構、政策投資銀行は、東芝とWestern Digitalの紛争解決を条件としている。


今回、次の修正案を提出した。(億円)

Western Digital との係争解決を前提条件にしていない。これを問題とする革新機構と政策投資銀は当面外し、問題解決後に加える。

Appleは、東芝メモリと合わせるとWestern Digitalの市場シェアが36%に迫り、市場シェア35.6%のサムスン電子と2強体制を形成する のを恐れる。
また、安定したNAND型フラッシュメモリーの供給源を確保するためにも出資を決めた。

普通株・優先株 融資 合計
産業革新機構 *2
日本政策投資銀行 *2
Bain Capital 47% 5,700
SK Hynix *1
東芝 47% 2,000
Apple 4,000
Kingston Technology 1,000
日本企業 6% 300
銀行団 7,000
100% 13,000 7,000 20,000


*1 SK Hynixは将来
、優先株を普通株に転換。議決権は最大18%。

*2 革新機構、政策投資銀行は、東芝とWestern Digitalの紛争解決後にBain、SKから株式を取得。

SK Hynix の将来の議決権所有が特に中国の独禁法で審査が長期化する可能性がある。
(中国政府は半導体メモリーに強い関心を持ち、自国に有利にとの思惑のもとで独禁法審査を行う可能性が指摘されている。)


③台湾鴻海精密工業を含む企業連合

シャープを表に出してMETIの中国への技術流出懸念を排除、ソフトバンクグルプなどと連携し、2兆円を上回る資金を用意する動きを見せた。

中国の独禁法審査を通りやすいが、安全保障に関わる技術の中国への流出を懸念する日本政府が、外為法に抵触すると判断する可能性がある。

米国のバイオテクノロジー企業 Gilead Sciences は8月28日、がん治療のバイオテク企業 Kite Pharma を119億ドルで買収することで同社と合意した。本年第4四半期に取引完了を目指す。

Gilead はKite株1株につき180ドルを全て現金で支払う。これはKiteの8月25日終値を29%上回る水準。

Gilead Sciences は今回の買収で、勢いを失いつつあるC型肝炎治療薬から他の分野へと多様化を進める。

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Kite Pharmaは、カリフォルニア州サンタモニカに本社を置き、体が持つ免疫システムを用いて抗腫瘍効果を得る癌免疫療法のリーダーである。

下図のように、患者自身の免疫細胞を使って癌を攻撃する療法である。

癌のタイプにより、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor :CAR)とT細胞受容体(engineered T cell receptor )療法がある。

同社の最新のCAR-T療法と呼ばれる治療法では、患者からT細胞を採取し、 遺伝子操作により、B 細胞リンパ腫および白血病細胞表層に発現しているCD19 抗原を標的とするキメラ抗原(CAR)受容体を発現させ、癌細胞を死滅させる治療法である。主作用が暴走すると重篤なサイトカイン放出症候群を引き起こすため、これを抑える「安全装置」の開発が成功のカギとされている。

Kiteは本年3月31日にFDAに対し、この療法の候補 KTE-C19 (axicabtagene ciloleucel :axi-cel) についてBiologics License Applicationを提出した。化学療法が無効な びまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(DLBCL)、形質転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B 細胞性リンパ腫のサブタイプからなる非ホジキンリンパ腫の治療用として最初の販売が期待される。

Kite Pharma とAmgen は2015年1月、CAR-T療法の開発に向けて、戦略的共同研究契約とライセンス契約を締結した。

Amgen はがんに対する広範なデータを、KiteはCARのプラットフォーム、研究開発と製造能力、専門技術を生かし、臨床開発と実用化に向けて取り組む 。

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Kite Pharmaは2017年1月9日、開発中のKTE-C19の日本における開発並びに商業化に関して、第一三共と戦略的提携契約を締結したと発表した。

第一三共は日本におけるKTE-C19 の開発ならびに商業化を行う。Kite は契約の一環として第一三共に技術供与を行い、更に第一三共はKITE-718 を含め、Kite が今後3年以内に米国にINDを提出するその他の開発候補品のライセンス権利を有 する。


Gilead Sciences は、KTE-C19 は米国では
Priority(最優先) Review、EUではExpedited (優先)Review の状況にあるとし、Gilead の技術とKiteの幅広いパイプラインを使い、直ちに細胞療法のリーダーになるとしている。

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Novartisは8月30日、再発・難治性(r/r)B 細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者を対象とするCAR-T療法の CTL019(商品名 Kymriah)が米FDAの承認を得たと発表した。

本年3月29日に、優先審査品目に指定されていた。

同社は薬価を治療1回当たり 475千ドル(約5200万円)と決めた。

同社は"indication-based pricing" システムを取る予定で、癌の種類によって価格を変えるというもの。今回の認可の対象にはKymriah は非常に効果的で、高い価格となったが、テスト中の他の癌には同様の効果が見られず、承認を得た場合、価格を下げるとみられる。

付記

Medicare とMedicaid はこの処方に対し、Novartisに475千ドルを支払うこととなったが、1カ月末までに患者に効果があった時のみ、これを支払う。



米連邦準備理事会(FRB)は2016年12月に1年ぶりに利上げを行い、2017年に入り3月と6月に追加利上げを行った。年内さらに1回を見込んだ。

2017/6/15 米、3カ月ぶり利上げ 


FRBのイエレン議長は7月12日、米下院金融サービス委員会で「経済が想定通りなら、比較的早く保有資産の縮小を開始する」と表明した。「今後数カ月は物価動向を見極める」とも述べ、保有資産の縮小を急ぐ一方で、追加利上げは慎重に判断する考えをにじませた。市場では9月の会合で資産縮小を決めるとの見方が浮かんでいる。

イエレン議長は8月25日、米国ワイオミング州ジャクソンホールで毎年開催される経済政策シンポジウム、ジャクソンホール会議で講演した。
講演では、トランプ政権が掲げる大幅な金融規制緩和をけん制した。FRBの保有資産の縮小開始や追加利上げの時期には言及しなかった。

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2016年12月の利上げ時には、FRBの声明文では「労働環境と物価上昇率の実績と見通しに鑑みて、政策金利を引き上げると決断した」と強調した。

このところ、米国の消費者物価は低迷しており、FRBが重視する米国商務省発表の個人消費支出物価指数(PCE Price Index) は6月に前年比 1.4%で、目標とする2.0%に程遠い。

雇用面では、失業率は4.3%まで下がり、完全雇用水準とされる4.6%を3月以降5カ月連続して下回っているが、平均時給の伸び率は2.53%と低水準に止まっている。
(日本と同様である。)

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FRBは8月3日、これまで発表してきた「労働市場情勢指数」(LMCI:labor market conditions index)の発表を取り止めたと発表した。

LMCIは労働市場関連の19の指標をもとに算出するもので、「雇用者数や失業率といった雇用状況の数だけでなく労働の「質まで加味されている」のが特徴である。

イエレン議長が重視するもので、「イエレン・ダッシュボード(計器盤)」とも呼ばれ、2014年2月のイエレン議長の就任後、2014年10月に過去に遡り、数値が発表された。

過去の指数の動きは不況時期をビッタリ示している。

LMCIの構成要素は次の通り。

算入倍率
(12-month)
失業 失業率 -0.96
労働参加率 0.36
フルタイムでの労働を希望するパートタイマーの数 -0.91
雇用 就業者数 0.91
政府関連雇用者数 0.03
臨時雇用 0.88
労働時間 平均週勤務時間 0.69
週平均労働時間 0.75
賃金 平均時給 0.38
求人 求人誌数(help-wanted index) 0.93
採用 求人倍率 0.78
転換率(失業者から雇用者へ) 0.76
Layoffs 失業保険者率 -0.93
失業5週間以下 -0.77
離職 離職率 0.88
退職5週間以下 0.42
調査 求人多数業種対採用困難業種 0.93
採用計画 0.65
採用困難専門職 0.83


しかし、ここにきてLMCIは低い水準で、最新(最終)の2017年6月は1.5となり、前月の3.3から急低下し、ゼロに接近している。

FRBとしては、これ以上低下すると、「労働環境と物価上昇率の実績と見通し」がいずれもマイナス傾向を示し、保有資産の縮小開始や追加利上げがやり難いと考えたとみられる。

FRBは公表中止の理由を「労働市場の変化をとらえるには、もはや有用ではないと判断した」とし、「平均時給を指標に取り入れても、労働市場と賃金上昇との間に有意義な相関をもたらさなかった」と述べた。

We decided to stop updating the LMCI because we believe it no longer provides a good summary of changes in U.S. labor market conditions.

Specifically, model estimates turned out to be more sensitive to the detrending procedure than we had expected, the measurement of some indicators in recent years has changed in ways that significantly degraded their signal content, and including average hourly earnings as an indicator did not provide a meaningful link between labor market conditions and wage growth.



 

中部電力が石油火力発電所から石炭火力への置き換えを計画する武豊火力発電所(愛知県武豊町)について、環境省は2017年8月1日、「パリ協定」に基づく温室効果ガス削減目標が達成できないとして、再検討を促す内容の意見書を 経産省に提出した。

重油及び原油を燃料種とする発電設備を撤去し、相対的にCO2排出係数が高い石炭を燃料種とする発電設備を設置するもので、バイオマス混焼による削減効果を勘案してもなお、現状より年間200万トン程度増加するものであることから、環境保全面から極めて高い事業リスクを伴う。


石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素(CO2)排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することが重要である。

本事業を実施する場合には、省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、本事業が、今後JERAに移行することも踏まえ、事業者全体として、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、2030年以降に向けて、更なるCO2排出削減を実現する見通しをもって、計画的に実施することを求める。

経緯:

政府は2015年7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

日本では大型石炭火力発電所の建設計画が続出している。

中部電力は2015年2月6日、武豊火力発電所(愛知県武豊町)の建て替え計画を発表した。

運転開始から40年以上が経過している、石油を燃料とする既設の2~4号機を廃止・撤去し、新たに5号機として石炭火力発電所を新設する。
出力は2~4号機の合計とほぼ同じ107万キロワット。
国内最高水準の高効率な発電設備として2021年度の営業運転開始を目指す。


力業界各社は、2015年7月17日、低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組みを構築するとともに、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定した。

容は下記のとおりで、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすというもの だが、参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集するというだけで、具体的な「実行計画」はない

2030年度に排出係数 0.37kg-CO2 / kWh 程度(使用端)を目指す。

 2030年度CO2排出量(3.6億トン-CO2) / 電力需要想定(9.808億kWh) = 0.37kg-CO2/kWh

2013年度比 ▲35%程度相当と試算

火力発電所の新設等にあたり、BAT(Best Available Technology) を活用すること等により、最大削減ポテンシャルとして約1,100万トン-CO2の排出削減を見込む。

環境省は2015年8月14日、中部電力が愛知県武豊町で2022年の運転開始を目指す大型石炭火力発電所について、また、8月28日、九州電力・東京ガス・出光興産の3社が設立した「千葉袖ケ浦エナジー」が千葉県袖ケ浦市で計画している大型石炭火力発電所の建設について、「環境影響評価(アセスメント)法に基づき「現段階では是認できない」とする意見書を経済産業 省に提出した。

上記の「電気事業における低炭素社会実行計画」で公表した二酸化炭素削減目標は実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

2015/8/20 環境相、中部電力の石炭火力計画 是認せず 


しかし、丸川環境大臣は2016年2月8日、林経済産業大臣と会談し、石炭火力発電所の新設を容認する方針を伝えた。

環境省と経産省の合意内容は下記の通り。

・火力発電の効率に数値目標を設定、効率の悪い設備や休廃止
・再生可能エネルギーと原発を合わせた非化石電源の利用を合計で原則44%以上にするよう電力会社に求める
・発電所のCO2排出量などの情報の開示
・電力業界は削減計画を誠実に実行

今回、環境省は武豊火力発電所について、再検討を 求めたもの。

これを受け、経産省は8月18日、武豊火力発電所の建設計画について、二酸化炭素(CO2)排出削減を講じるよう勧告した。

効率が低い既存の火力発電所を休廃止したり、稼働を抑制したりすることで中部電全体としての排出量を抑制するよう求め ている。

(1)石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し、本事業を検討すること。

(2)このような国内外の状況を踏まえた対応の道筋を描くことにより本事業を実施する場合には、ベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、本事業が、今後JERA (
東京電力と中部電力の火力発電事業のJV)に移行することも踏まえ、事業者全体として、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、2030年以降に向けて、更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって、計画的に実施すること。

(3)本事業の工事の実施及び施設の供用に当たっては、二酸化炭素の排出削減対策をはじめ、排ガス処理設備の適切な運転管理及び騒音・振動の発生源対策等による大気環境の保全対策、排水の適正な処理及び管理による水環境の保全対策等の環境保全措置を適切に講ずること。

今回の経産省の勧告について、環境省幹部は「石炭火力が地球温暖化対策に与える影響を経産省としても重く見た内容になっており、画期的だ」と評価している。

中部電力は、「すでに低効率火力の休廃止の検討を進めており、大きな影響はないが、勧告を真摯に受け止め計画を進めていく」としている。

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エネルギーの使用合理化等に関する法律(省エネ法)の平成20年度改正により、「ベンチマーク制度」が導入され、平成23年度より報告結果が公表されている。

特定の業種・分野について、当該業種に属する事業者の省エネ状況を業種内で比較できる指標(ベンチマーク指標)を設定し、省エネの取組が他社と比較して進んでいるか遅れているかを明確にし、非常に進んでいる事業者を評価するとともに、遅れている事業者には更なる努力を促すための制度。

「電力供給業」のベンチマーク制度は次のとおり。

ベンチマーク指標 目指すべき水準
熱効率標準化指標 当該事業を行っている工場の火力発電設備における定格出力の性能試験により得られた発電端熱効率を定格出力の設計効率で除した値を各工場の定格出力によって加重平均した値

100.3%
以上
火力発電熱効率 当該事業を行っている工場の火力発電設備における発電端電力量の合計値を、それを発生させるのに要した燃料の保有発熱量(高位発熱量)で除した値 未設定


資源エネルギー庁は2017年5月、ベンチマーク指標報告結果(平成28年度定期報告分)を発表した。

電力供給業
目指すべき水準:100.3%以上

平均値:99.1%

達成事業者数/報告者数:1/11達成事業者:電源開発のみ)

米ホワイトハウスは8月18日、トランプ米大統領の最側近である Steve Bannon首席戦略官・上級顧問が同日付で退任すると発表した。

大統領はこの数日、Bannon氏へのいら立ちを内々に吐露していた。

Bannon氏は米メディアThe American Prospect とのインタビューで、

ホワイトハウス内で対立するGary Cohn 国家経済会議(NEC)委員長らの名前を挙げながら「毎日が闘いだ」と政権内の確執を暴露。
("That's a fight I fight every day here," he said. "We're still fighting. There's Treasury and Gary Cohn and Goldman Sachs lobbying.")

さらに「我々は中国と経済戦争中だ。(詳細後記) 北朝鮮問題は余興に過ぎない。軍事的解決などあり得ない。忘れて良い」と述べ、トランプ氏が排除していない北朝鮮問題の軍事的解決を否定した。

8月12日に、白人至上主義団体と反対派の衝突で女性が死亡したが、トランプ大統領の発言に各界から批判が強まり、米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散する事態に発展した。

大統領の本事件についての発言:

8月12日
 「Alt right (alternative right ) を突撃したAlt left はどうなのか?彼らはゴルフクラブを振り回していた。彼らにも問題がある。」 
 「様々な側から(on many sides)もたらされる憎悪、偏見、暴力に、可能なかぎり最も強い言葉による抗議を表明する」

8月14日 上記を批判され、Whitehouseが準備
 「人種差別は悪だ。その名のもとで暴力を振るう者、KKKもネオナチも白人主義者も、そのほかのヘイト・グループを含む人々は、アメリカ人が大切にする全てのものと矛盾している」

8月15日 別件の会見で急に質問され、本音が出た。
 「責任は双方にある」「一方に悪い集団がいて、もう一方にも非常に暴力的な集団がいた。だれも言いたがらないが、私は今ここでそう明言する」

Bannonは白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。Alt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

政権運営の安定化を図るため、人種差別的な言動で知られるBannon氏をKelly 大統領首席補佐官が事実上、更迭した。


右派系ニュースサイトBreitbartNewsは、Bannon氏が会長に復帰したと発表した。

大統領はTwitterで以下の通り述べた。

I want to thank Steve Bannon for his service. He came to the campaign during my run against Crooked Hillary Clinton - it was great! Thanks S

Steve Bannon will be a tough and smart new voice at BreitbartNews ... maybe even better than ever before. Fake News needs the competition!



Bannon氏は経済ナショナリストを自任、政権内のJared Kushner 大統領上級顧問 (Ivanka Trumpの夫)やGary Cohn米国家経済会議(NEC)委員長らの国際協調派と対立していた。
Cohn委員長は退任の噂があったが、残留するとみられる。

Bannon氏は白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。

右派系ニュースサイトBreitbartNewsの会長であったが、大統領選ではトランプ陣営の最高責任者を務め、白人労働者層にしぼった選挙戦術で大統領誕生に貢献した。

経済ナショナリストを自任、メキシコ国境の壁、イスラム圏からの入国禁止、パリ協定離脱などの政策を主導した。NAFTA即時離脱も主張した。

「中国との経済戦争が最も重要」とし、中国に対する301条調査(鉄鋼、アルミ、知財)を主導した。

The American Prospect とのインタビューで、次の通り述べた。

「我々は中国との経済戦争をしている。私には中国との経済戦争が最も重要だ。我々は熱狂的にここに集中しなければならない」とする。
  ("We're at economic war with China. To me the economic war with China is everything. And we have to be maniacally focused on that.)

「米国と中国のどちらかだけが25年か30年後に覇権国家として残ることになるだろう。我々がこの道で倒れたら、中国が覇権国になるだろう」と述べた。
 (One of us is going to be a hegemon in 25 or 30 years and it's gonna be them if we go down this path. )

具体的対策としては、今回の知財、前回の鉄鋼とアルミを対象とする301条調査を挙げた。

ーーー

トランプ政権は発足半年で、政権内の多くが入れ替わった。上記のとおり、Bannon氏と「国際協調派」との政策の争いも激化していた。

Kelly首席補佐官が7月31日に就任、「Whitehouseに規律を取り戻す」とした。今回のBannonの解任で、ようやく落ち着くとみられる。

就任 退任
2/13 Michael Flynn大統領補佐官(国家安全保障担当)辞任
(就任前にロシア駐米大使と協議した疑惑)
2/20 Herbert McMaster 陸軍中将 大統領補佐官(国家安全保障担当) 就任
6/2 Mike Dubke 広報部長辞任(ロシア疑惑)
Sean Spicer 報道官が広報部長兼務
7/21 Anthony Scaramucci (政権移行チームの幹部)、広報部長に就任(広報の経験なし)
Sean Spicer 報道官 辞任(Scaramucci 広報部長に反対)
Sarah Sanders副報道官、報道官就任
7/28 Reince Priebus 大統領首席補佐官 解任
  Scaramucci 広報部長に反対。ホワイトハウス内からの相次ぐリークに関して責任があるとされた。
7/31 John F. Kelly (前国土安全保障長官)、大統領首席補佐官 就任

「Whitehouseに規律を取り戻す」
  大統領執務室への自由な出入りを禁止

Anthony Scaramucci 広報部長解任(就任10日、Kelly首席補佐官が解任)

 退任後、Scaramucciは、Bannon首席戦略官がトランプ大統領のアジェンダ遂行能力を妨げていると批判

8/12 Charlottesville, Virginia 白人至上主義者と反対派の市民との間で衝突、女性死亡。

大統領の発言で、米製造業評議会と戦略・政策評議会から辞任が相次ぐ。

BannonはAlt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

8/16 Sarah Sanders 報道官、暫定広報部長に任命(トランプの企業の広報を担当していた28歳の女性)
8/16 米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散(実際には離脱が相次ぎ、存続不可能であった。戦略・政策協議会は解散を決めていた。)
Twitter : Rather than putting pressure on the businesspeople of the Manufacturing Council & Strategy & Policy Forum, I am ending both. Thank you all!

 
当初はメンバーの辞任に対し、代わりはいくらでもいるとしていた。
 For every CEO that drops out of the Manufacturing Council, I have many to take their place. Grandstanders should not have gone on. JOBS!

8/18 Steve Bannon首席戦略官 実質解任


しかし、問題は解決していない。

大統領の支持率は下がったが、30%程度でとどまっているのは、トランプに投票した Alt right や白人労働者などの支持層があったためとされる。これらが離反するリスクがある。

Bannonが去っても、大統領自身の考えが変わらないと、支持率は上がらないだろう。

政界も財界も、大統領と一線を画そうとしている。

とりあえず、9月末までに予算案と債務上限引き上げを通す必要がある。

2017/8/7 混迷の米議会、オバマケア代替法案を決められず、夏季休会入り 


東芝は8月10日、PwC あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。


上場継続の3条件の1つを辛うじて達成した。

債務超過の解消

有価証券報告書での適正意見

特定注意市場銘柄指定解除 東証が今秋をメドに判断

2017/8/2  東芝、東証2部降格   

PwCあらた監査法人は昨年度の決算はおおむね妥当だとする「限定付適正意見」を出した。

東芝の決算をめぐっては、監査法人が、アメリカの原子力事業による巨額の損失をもっと早く認識できなかったか、過去の決算も調べる必要があるとして承認せず、発表が延期されてきた。

東芝は2016年12月に、2015年末の
Stone & Webster 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにしたが、PwCあらたとWestinghouse を監査する米国のPwCは、巨額損失が突如分かったのは不自然だとし、2016年3月以前に損失を認識できたのではとみており、2016年3月期決算(前任の新日本監査法人が適正意見を出している)でその一部を計上しておくべきだと主張している。

今回、PwCあらたは、この主張は取り下げない一方で、現在の財務状況などは適正 であると認め、決算の内容はおおむね妥当だとする「限定付適正意見」を出した。

PwCあらたは2016年4-12月期決算について、「意見不表明」としており、今回もその案があったが、金融庁や公認会計士協会などが、「責任放棄にあたる」とけん制したと報じられている。

決算そのものについて、「不適正」や「意見不表明」となった場合、東証が審査中の解除判断に影響を及ぼし、上場が廃止されかねないとみられていた。


但し、PwCあらたは、東芝社内のチェック体制を示す「内部統制」については、巨額の損失を見過ごすなど問題があるとして、「不適正」とする意見 をつけた。

これについて、東証の審査に影響を与えるのではとの懸念があるが、東芝では、「内部統制に不備があったのはWestinghouseの会計で、損失の計上時期についての一点のみであり、Westinghouseが連結からはずれたことで不備が指摘されたところもなくなった。内部体制を強化しており、不備はないと考えている」としている。

今回の結果を受け、東証は特注銘柄から外すかの判断を出す見通し。


問題は
の債務超過の解消で、東芝メモリの2018年3月末までの売却完了の目途は立っていない。
売却が決まっても、当初予定からどんどん遅れているため、3月末までに各国の独禁法当局の承認を全て得るのは難しくなりつつある。

増資については、特設注意市場銘柄のため公募増資は事実上困難で、第三者割当増資の引き受け手の確保が必要となる。

ーーー

確定した2017年3月期及び2017/4-6月期決算と、現時点での2018年3月期決算予想の概要は次の通り。(億円)

  16/3 17/3 増減 6/23発表
見通し
増減 17/1Q 18/3
売上高 51,548 48,708 -2,840 48,708 0 11,436 49,700
営業損益 -4,830 2,708 7,538 2,708 0 967 4,300
(うち東芝メモリ) (1,100) (1,866) (766) (903) (3,712)
(東芝メモリ以外) (-5,930) (842) (6,772) (64) (588)
非継続事業純損益 -1,298 -12,801 -14,099 -13,065 264
純損益 -4,600 -9,657 -5,057 -9,952 295 503 2,300
株主資本 3,289 -5,529 -8,818 -5,816 287 -5,043 -4,100


東芝メモリ分はストレージ&デバイスソリューションのうち、HDD、デバイスほかを除いた 「メモリ」をとった。
米国原子力事業は、2016/3は継続事業で営業損益に含まれる。2017/3は非継続事業。

東芝が6月23日に監査意見無しで「見通し」として発表したものとほぼ同じで、米電力会社との合意で親会社保証額がほぼ確定した分が差の大部分である。  

親会社保証引当金
確定額 Vogtle 3、4号機 3,680百万ドル 4,129億円
V.C. Summer 2、3号機 2,168百万ドル 2,432億円
その他 316億円
合計 6,877億円
引当額 (2017/6/23 業績見通し) 7,162億円
引当金 減額 益 285億円

2017年3月末時点での株主資本は5,529億円の赤字となった。

2018年3月末までに赤字を解消できなければ、上場廃止となる。

上表の2018年3月期予想(4,100億円の赤)には、東芝メモリの売却益は含んでいない。2兆円とされる売却が実現すれば、赤字は解消する。

なお、2018年3月期予想の営業損益の4,300億円のうち、東芝メモリ以外は588億円しかなく、東芝メモリ売却で上場廃止は免れるが、その後の経営は苦しい。

さらに、追加の損失発生のリスクがある。

東芝はFreeport LNGとの間で年間220万トンのLNGの購入契約を結んでおり、これはTake or Pay の契約であり、市況が下がっても契約価格での引取り、または固定費の支払いが必要である。

計画 立地 生産開始 日本企業 契約数量
Freeport LNG テキサス州 2018 大阪ガス 
中部電力
220万トン
220万トン
2019 東芝    220万トン

東芝では、「LNGの供給事業がリスクだ。全く売れない場合に1兆円を見積もっているが、販売先で決まっているところはある。契約に向けて営業活動をすすめている」と述べている。

ーーー

Westinghouseに関しては電力会社に対する親会社保証問題は完了したが、これで負担問題が全て無くなった訳ではない。

それぞれの電力会社は総括原価方式により追加コストを電気料金に転嫁しており、消費者が東芝を訴える恐れもある。

Southern電力は米政府の債務保証で銀行から融資を受けており、これが影響する恐れもある。

ーーー

東芝は2016年3月の東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却の場合は、独禁法審査を後回しにして、先に売却し、売却益を計上するという奇手を使った。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手

これに対し、欧州委員会はキヤノンに対し、承認前に買収をした疑いで異議告知書を送付した。今後の検討で問題だと認定した場合、罰金支払を命じるが、罰金は世界全体でのキヤノンの年間売上高の最大10% (3,400億円)にもなる。

2017/7/7 EU、キヤノンの東芝メディカル買収で異議告知書

どこも取り上げていないが、キヤノンは承認をえてから売却すれば問題ないのに、わざわざこんなリスクのある取引をしたのは、明らかに東芝の要請によるものであり、リスク回避の条項を契約に織り込んでいると思われる。



東京大学発ベンチャーのペプチドリームは8月7日、塩野義製薬、積水化学と共同出資会社を設立すると発表した。

共同出資会社の社名はペプチスター(PeptiStar Inc.)で、「ペプチド医薬品」と呼ばれる次世代医薬品の原薬の合成・製法の研究開発、製造及び販売を実施する。

現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められているが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCMO(医薬品製造受託機関)は世界的に見ても存在していない。 また、これまで広く使われてきたペプチド合成法の生産性は極めて低くその改善が求められている。


ペプチドリーム、塩野義製薬、積水化学の3社は6月1日に、3社を中心に特殊ペプチド原薬の研究開発、製造及び販売を行う新会社を設立することについて、検討を開始したと発表した。

ペプチドリームが保有する特殊ペプチド医薬品の周辺知財及び周辺技術をもとに、オールジャパン体制の構築とさまざまな最先端技術の集約による高品質特殊ペプチド原薬の低コスト且つ安定供給体制の確立について検討を行っており 、3社のほか、大塚化学、キシダ化学、島津製作所、長瀬産業、中村超硬、日産化学工業、浜理薬品工業、マイクロ波化学、渡辺化学工業等が検討に加わっている。

今回、9月1日付で 3社均等出資の資本金1.5億円で設立し、本社と製造工場を摂津市の塩野義製薬の工場内に設置する。
その後、他社も含めて順次増資し、各社20%未満での出資比率に調整する。

早ければ2019年7~9月ごろの工場稼働を予定する。

ーーー

一般的な医薬品は、その多くが分子量500以下の低分子医薬品と呼ばれている。

この対極にあるのが、抗体医薬品などの生物学的製剤で、分子量150,000程度にも及ぶ。これらは、低分子医薬品では制御できない分子標的に作用し薬理機能を発揮できるメリットがある一方で、遺伝子組み換えが必要で、生産管理に手間がかかり、製造コストも高い。

ペプチドは、分子量では低分子医薬品と生物学的製剤の中間で、「中分子医薬品」と呼ばれる。低分子医薬品では標的とすることができないような分子についても薬理作用を発揮することができることに加え、生物学的製剤と異なり、完全に化学合成で製造可能であるという特長 を有している。


 図は http://www.jitsubo.com/jp/business/peptide.html


ペプチド
は、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群である。

特殊ペプチドは、一般的なペプチドが6~50 アミノ酸残基からなるのに対して、天然の 20種類のアミノ酸のみならず、各種特殊(非天然型)アミノ酸(L-アミノ酸誘導体、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、β-アミノ酸等)を組み込んだ6~20 アミノ酸残基からなるペプチドのこと。

特殊ペプチド治療薬は、様々な治療用途に適用可能で、特に、低分子化合物では見出すのが困難だったタンパク質-タンパク質相互作用を阻害する治療薬や、特定の生体内情報伝達経路を活性化するアゴニスト(活性化治療薬)を見出すことが可能で ある。


特殊ペプチド治療薬は細胞外ターゲットに対して有効なアプローチであり、極めて高い薬理活性及び選択性を達成するだけでなく、比較的高い安全性及び忍容性を付与でき、多くの異なる投与経路を選択することが可能。

さらに特殊ペプチド治療薬は、現在使用されている抗体医薬品を中心とする生物学的治療薬に対して、薬品の品質管理や製造コストの面で極めて高い優位性を持ってい る。

しかし現在、特殊ペプチド医薬の市場を形成するのに不可欠な特殊ペプチド原薬の製造供給体制は世界的にも存在していない。

国内に存在する各種最先端技術を戦略的に集約することで特殊ペプチドの原薬製造体制を確立し、世界初・世界最先端の特殊ペプチド原薬 CMO を設立する。

ーーー

ペプチドリームは、東京大学の菅裕明教授が開発した特殊ペプチドを事業化すべく、2006年7月に設立された。

独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS (Peptide Discovery Platform System) により、多様性が極めて高い特殊環状ペプチドを多数(数兆種類)合成し高速で評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製やリード化合物の選択等が簡便に行えるようになる。

ペプチドリームは米Bristol-Myers Squibb や英GlaxoSmithKline、スイスのNovartis、田辺三菱製薬や第一三共 ななど製薬世界大手とも創薬研究の契約を締結している。


塩野義製薬は、2016 年2月にペプチドリームと特殊環状ペプチドの創製を目的とした共同研究開発契約を締結した。

同社は2017年6月 に、ペプチドリームのPDPS (Peptide Discovery Platform System) の使用について、日本企業としては初めて、非独占的ライセンス契約を締結した 。ペプチド化合物を起点とし、同社の従来からの強みである低分子創薬力との融合を図ることで、創薬の生産性を画期的に向上させる。

塩野義は、食道癌や膀胱癌の癌ワクチンの開発を行っている。塩野義のワクチンはがん細胞に発生する「ペプチド」を人工的に合成したもので、 患者に投与されたペプチドを樹状細胞が捕捉し、T細胞に抗原を提示する。T細胞は体内を循環し、同様のペプチドを持つがん細胞を見つけて攻撃する仕組み。

2009年にオンコセラピー・サイエンスとがんペプチドワクチンに関するライセンス契約 を結んでいる。

2017年6月に、従来のがん治療薬より効果が高いとされる「がんワクチン」に使う原薬の量産技術を開発した。ペプチドの分子構造を変え、量産しやすいようにした。


積水化学は、 ライフサイエンス分野を戦略分野に位置付けるとともに、グループ外との技術等の融合を図ることで関連事業の強化を目指している。

具体的には、子会社の積水メディカルにおいて検査薬・検査機器を中心とした検査事業、医薬品開発の研究開発支援等の創薬支援事業、医薬品原薬の受託製造等の医薬事業を展開しており、今般のペプチド医薬の受託製造分野への参入は、ライフサイエ ンス分野の強化領域(融合強化)拡大に寄与するものと期待している。

経営不振が続く中小型液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)が、取引銀行に融資を要請 、主力銀行は総額1100億円規模の融資枠を設ける方向で最終的な調整に入った。筆頭株主(35.58%出資)の産業革新機構が債務保証する。

主力のスマートフォン向けの液晶パネルが振るわず、2017年3月期決算の純損益は317億円の赤字で、3年連続の赤字だった。

昨年も資金難に陥り、産業革新機構から750億円の支援を受けたが、すでに底をついている。

国内に6カ所ある生産工場の集約や早期退職者の募集を検討している。財務基盤の改善を急ぐと同時に、生産設備を入れ替えるなどして競争力を高める方針。

中国江蘇省にある工場や石川県能美市の能美工場の生産停止などを検討しており、能美工場の従業員は同県白山市の白山工場に配置転換するとされる。

同社は、「市場の変化に合わせた事業構造・企業体質のさらなる変革が必要と認識しており、抜本的な施策の実施を検討している」とのコメントを発表した。

付記 

同社は8月9日、構造改革計画を発表した。縮小均衡案に過ぎず、抜本策ではない。これだけでは存続さえ、望み難い。(文末参照)

今後、外部企業との連携も模索する。会長は「連携はいろんな形がある。有機ELの設備投資での連携、(資本注入を意味する)財務投資という話もある」と語った。

ーーー

液晶パネルには「2012年問題」があった。中国企業が建設中の大型パネル工場も2012年以降、相次いで稼働するため、世界の液晶パネルは2012年に約1600万台の供給過剰になるとされ、2011年7-9月期に液晶パネルで世界の上位4位を占めるSamsung、LG、友達、奇美の4社が赤字となった。シャープは2012年3月期決算で3761億円の最終赤字を計上した。

これに対し、中小型液晶については日本勢はまだ頑張っていた。しかし、各社が単独で事業を進めた場合、十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高い。

このため官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニーの中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資してテコ入れすることを決めた。その後、日立ディスプレイズも参加を決めた。

ジャパンディスプレイは、日立・ソニー・東芝の液晶事業を統合して2012年に発足し、スマホの上位モデルをターゲットに液晶を供給してきた。

しかし、最大顧客の米アップルが iPhone の新モデルで初めて有機ELを採用、有機ELに強い韓国メーカーを前に競争力を失っている。

ジャパンディスプレイも有機EL事業の進出を図り、 日立製作所から取得した茂原工場に試験設備を設けて研究を進め、2017年夏に有機ELパネルの生産ラインを立ち上げる。(2018年上期の量産開始を目指す。)

それと同時に、2015年1月にソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合し発足したJOLEDに15%を出資したが、2016年12月に51%の出資とすることを決めた。
(しかし、中期経営戦略の見直しに伴い、日程についてペンディングとしている。)


ジャパンディスプレイ概要



国内工場

石川工場 東芝モバイル(松下電器)
能美工場 東芝モバイル(東芝) 今回 停止案
白山工場 ジャパンディスプレイとして新設   2016/12 稼働
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)
東浦工場 ソニーモバイル
茂原工場 日立ディスプレイズ
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖

海外製造子会社

Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州)
Suzhou JDI Electronics 素尼移動顕示器(蘇州)を買収
Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器
Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得
Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子



山形大学の城戸淳二教授の「
大学教授のぶっちゃけ話」(2016/9/12)は「日本の有機ELディスプレイ」で次のように述べている。

間違いなく、確実に、100%の確率で、JDIのお客さんである中国のセットメーカーは3年後には自国パネルメーカーからのパネル調達になるでしょうし、JDIにとって最大の大口顧客のアップルも、液晶から有機ELに舵を切ることから、JDIの客は一気になくなることが予想されます。

ですから、JDIが生き残るためには、一刻も早く有機ELの生産に取り掛からなければならず、それができないと5年後には会社の存続すら難しいでしょう。


このような変化の激しい産業では、状況の変化に機敏に、大胆に対応する必要があり、政府(産業革新機構)主導で再建しようとしても無理である。東芝メモリも同様である。

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