「no」と一致するもの

米製薬大手のPfizerはこのたび、自社製品が死刑執行に使われないよう、流通を規制すると発表した。

「当社の製品の死刑での使用についての見解」というタイトルで、要旨は次のとおり。

Pfizerの使命は健康と福祉の向上であり、当社の製品の死刑での使用に強く反対する。

死刑に使われる製品について、流通を制限する。

対象製品は、臭化パンクロニウム、塩化カリウム、プロポフォール、ミダゾラム、ヒドロモルフォン、臭化ロクロニウム、臭化ベクロニウムで、これら7 製品については、刑務所に死刑用に再販売しないという条件で、特定の業者にのみ販売する。

政府機関が購入する場合は、医療用に使用し、死刑には使わないということを確認する。また第三者に転売しないことの確認をする。

Pfizerはこれら7つの製品の流通を絶えずチェックし、ルールに従わないのを見つけた場合は対応する。
このシステムで、これらの薬に頼っている患者が薬を入手できることが重要である。

Pfizer は昨年、同業の米 Hospira, Inc.を170億ドルで買収した。

Hospiraはジェネリック注射剤を製造し、医療施設で広範囲に利用されている。またバイオ後続品の販売や開発も手がける。

2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収 

これらの医薬品はHospiraが生産しているもので、Hospira自身、自社製品の死刑での使用を禁止しているが、昨年、Arkansas で死刑に使われた薬品のラベルが明らかになり、Hospira製の塩化カリウムであることが分かった。

Hospiraを買収したPfizer として立場を明らかにしたもの。

ーーー

米国では、麻酔薬などの注射による死刑執行が一般的だが、死刑を廃止している欧州との関係などから製品の使用を拒む製薬会社が相次いでいる。

死刑に反対する人権組織によると、米国で死刑に使われる医薬品を製造する世界の25のメーカーが死刑用の使用を禁止した。ニューヨーク・タイムズによると、通常の流通ルートで執行のための薬物を購入することはできなくなる。

昨年は6つの州で28人が死刑となっており、本年はこれまでで5つの州で14人の死刑が執行された。

2014年1月に1人の死刑を執行したオハイオ州は、薬の入手のため、何度も執行を遅らせた。現在、執行日時が決まっている囚人が20人以上いるが、薬を入手できていない。

テキサスなどいくつかの州では、FDAの承認を受けていない複合薬を使っているという。テキサス州は医薬品の供給者を明らかにしておらず、死刑に反対する弁護士から訴えれている。

ユタ州は昨年、医薬品の入手が出来ない場合、銃殺することを認めた。オクラホマ州は窒素ガスでの執行を認めた。テネシー州は2014年に医薬品が見つからない場合、電気椅子の使用を認める法律を通した。バージニア州も同様の法律を検討している。



東芝は5月11日、米国大手エンジニアリング会社の CB&I と締結していた米国の原発建設計画(South Texas Project 3、4号機)におけるEPC契約および改良型沸騰水型原子炉(ABWR) 原子力発電所の海外建設協力等の一連の契約について、契約解除をすることを合意したと発表した。

これにより、CB&IはEPC契約者としてSouth Texas Project から撤退するとともに、South Texas Project およびABWR事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に対し保持している債権を放棄する。

ーーー

東芝は2008年3月26日、米総合発電事業会社のNRG Energy が米テキサス州で推進する原発の建設計画 South Texas Project で、原子力発電プラント2基の主契約者に選定されたと発表した。

東芝はまた、NRGが設立した South Texas Projectの事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に3億ドル、12%分を出資することも併せて発表した。

NRG Energyはテキサス州 Houston 郊外で South Texas Projectを共同で推進しており、東芝が受注したのは、3号機と4号機。
具体的には、改良沸騰水型(ABWR)の原子炉2基や蒸気タービンなど主要機器の納入や建設、エンジニアリング業務を受注した。
事業費は8,000億円規模とみられ た。
2012年ごろに着工し、2015年から16年の運転開始を目指した。 

Reactor type Capacity Commercial operation
South Texas-1 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1988/8/25
South Texas-2 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1989/6/19
South Texas-3 ABWR 1350 MW
South Texas-4 ABWR 1350 MW

東芝は2010年11月29日、米国大手エンジニアリング会社 The Shaw Group Inc.との間で、今後東芝が海外で受注するABWR型発電所の建設関連作業について協力する契約を締結した。

Shaw は東芝との協力関係に対して 2.5億ドルを投資する。
まず1億ドルを Nuclear Innovation North America 経由でSouth Texas Projectに融資する。

Shaw はSouth Texas Project で主に建設工事を担当する。
Shaw は子会社に原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster を持つ。

東芝とShaw Group はともにWestinghouse Electric の株式を保有し、Westinghouse の最新鋭原発 AP1000 の建設でも協力関係にある。

元々の Westinghouse Electric は 1995年に放送会社 CBC を買収、その後、防衛産業部門をNorthrop Grummanに、原子力以外の発電事業をSiemens になど、次々に売却し、1997年に CBC Corporation に改称した。


最後まで残っていた商業用原子力部門を1998年に英国核燃料会社(BNFL) に売却した。
これが現在のWestinghouse Electric である。

CBCは1999年に Viacom, Inc. に吸収合併された。

2005年7月、英国核燃料会社はWestinghouse Electricの売却を計画、各社が関心を示したが、2006年10月16日に54億ドルで東芝が購入した。東芝は77%を保有し、Shaw Group が20%、IHIが3%を保有することとなった。

2007年8月に東芝は株式の10%をカザフスタンの国営ウラン採掘企業 Kazatompromに売却した。

South Texas Project については2012年ごろの着工、2015年から16年の運転開始を目指した が、2011年3月の福島原発事故で状況が急変した。

福島原発事故を受け、米原子力規制委員会(NRC)は稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定、新規原発の認可も棚上げとなった。

このため、South Texas Project の主体のNRG Energyは、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定した。

米国では外資100%出資の原発建設には制限があるため、東芝はNRG Energy に代わるパートナーが必要だが、見つけられていない。

立地のテキサス州は天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因である。

参考 

2012/7/31  原子力発電の正当化困難にーGE会長
2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ
2012/10/26 米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定

ーーー

東芝とShaw Group との関係も変化した。 

2012年7月に米国大手エンジニアリング会社のCB&I が Shaw Group を買収することで合意、2013年2月に買収した。

東芝は 2012年10月10日、Westinghouseの株式 20%を Shaw Groupから取得すると発表した。Shawが当初の株式取得時のオプションを行使するもの。

これにより持株比率は87%に高まるが、東芝は50%超を保持して残りを売却するとしている。

Shaw との関係では、受注済みの案件については予定通り工事完成に向けて取り組むことで合意した。
今後は案件ごとに最適なパートナーを選定する方針。

Westinghouse は2015年12月31日、Shaw Group子会社で原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster をCB&I から229百万ドルで買収した。

Shaw Group を買収したCB&I が原子力関係事業からの撤退を決めたもので、Westinghouse とStone & Webster は米国で建設中のボーグル発電所とV.Cサマー発電所向けにAP1000原子力発電所の設計、エンジニアリング、調達及びサポートを提供しており、買収により米国プロジェクト全体の一元管理・遂行が行える推進体制を構築する。

CB&Iが原子力関係事業からの撤退を決めたことから、CB&I からのSouth Texas Project への融資が見込めなくなったこともあり、 今回、CB&I と締結していたSouth Texas Project におけるEPC契約および改良型沸騰水型原子炉(ABWR) 原子力発電所の海外建設協力等の一連の契約について、契約解除をすることを合意したもの。

CB&Iとは火力事業を中心に引き続き重要なパートナーとして、今後も協力関係を維持していくとしている。

上記をまとめると次のとおりとなる。

ーーー

South Texas Projectの事業開発会社 Nuclear Innovation North America は2016年2月9日、米国原子力規制委員会(NRC)から、South Texas Project 3・4号機建設の建設運転一括許可(COL)の承認を受けた。ABWRとしてCOLが承認されたのは今回が初めて 。

新型加圧水型原子炉「AP1000」では、Vogtle原子力発電所3・4号機向け、Virgil C. Summer 発電所2・3号機向けにCOLが発給されている。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

現在電力価格が低迷していることから、今後電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始の判断をすべく、協議するとしている。

しかし、原発の優位性はなくなっており、パートナーがすぐに出てくる可能性は少ない。

東芝はNuclear Innovation North America について、2013年度で310億円、2014年度で410億円の減損損失を計上している。

2016年3月決算では、Westinghouse のノレン代減損損失 2600億円を計上した。

2015/12/8 東芝の原子力事業 の付記参照

 

宇部興産、 JSR、三菱レイヨンの3社は5月9日、3社のABS事業の統合で基本合意に達したと発表した。

現在、JSRは完全子会社のテクノポリマーで、宇部興産と三菱レイヨンは折半出資のUMG ABSで事業を行っている。

今後もさらに厳しさを増す国内外のABS樹脂事業を取り巻く環境下で、オペレーションの最適化、製造効率とコスト競争力の確保を目的として、2016年10月31日を目処に契約を締結、2017年10月1日に両社を合併することを目指す。 詳細は今後詰める。

合併で能力は366千トンとなり、第2位の日本A&Lの100千トンを大きく上回る。
しかし、世界最大手の台湾の奇美実業の生産能力は年185万トン、2位の韓国LG化学も年156万トンで、大きく引き離されている。

新会社は国内に3カ所ある工場の生産体制を見直し、コスト減を進めるとともに、高機能品の生産に特化するなどして、海外の巨大メーカーとの差異化を図る。

ーーー

テクノポリマー

1996年7月にJSRと三菱化学のABS事業を統合(JSR 60%、三菱 40%) してテクノポリマーがスタートした。
当時、JSRは日本のABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループで、統合したテクノポリマーは奇美実業、Bayer、GE(Borg Warnerを買収)に次ぐ世界4位であった。

奇美実業は当時、台湾で100万トンのABS樹脂を生産していたが、三菱化学は奇美に10%の資本参加をし、奇美製品の日本での販売(2万トン程度)を扱っていた。
このため、公取委がこの合併を問題視したため、三菱から、奇美との提携の解消を含めて措置をとるとの返事があり、公取委はこの措置を前提に承認した。

2002年10月、特殊ABS樹脂の業容拡大を目指すテクノポリマーと、コア事業への集中による事業基盤の再構築を進めたい鐘淵化学の意向が一致し、鐘淵化学から超耐熱・耐熱ABS樹脂の営業権を譲り受けた。鐘淵化学は高砂のプラントを他製品に転用した。

なお、2002年の新聞報道では、東レもテクノポリマーへの事業統合参加を検討しているとされたが、実現しなかった。

その後、三菱化学は戦略事業分野への集中的な投資を加速するとともに、事業の集中と選択を推進、2009年3月にテクノポリマーから離脱し、プラントを停止した。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

UMG ABS

1963年に宇部興産 51%、Borg Warner Chemical 49% 出資で宇部サイコンが設立された。
1988年9月にGE PlasticsがBorg Warnerの化学部門を買収し、GE Japanが株主となった。

2002年4月、宇部サイコンと三菱レイヨンがABS事業を統合し、UMG ABS としてスタートした。
この時点では、
宇部興産 42.7%、三菱レイヨン 42.7%、GE 14.6% の出資比率であったが、その後、GEが離脱し、宇部と三菱レイヨンの 50/50JVとなった。

宇部サイコンは宇部に年産110千トン、三菱レイヨンは大竹に同66千トンのABS樹脂設備をもち、合計176千トンと、テクノポリマーに次いで第2位メーカーとなった。

2015年3月期の売上高は下記の通り。
 テクノポリマー  42,662 百万円
 UMG ABS    42,349 百万円


ABS業界の推移は下記の通り。(能力は推定)

2006/10/9 日本のABS業界の変遷


旭化成は水島地区のエチレンセンター集約時の
国内石油化学事業の基盤強化の一環でABSプラントを停止した。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意


日本のABSの需要は下記の通り。輸出は、海外進出の日本企業への供給が多い。

  2000年 2015年 増減
国内 410 230 -180
輸出 184 128 -56

....

世界経済の低迷が続くなか、各国とも財政政策も金融政策も限界があることから、ヘリコプターマネーが注目され出した。

1969年に経済学者のMilton Friedmanが発表した概念で、需要喚起のために国民に対し直接紙幣のばら撒きを行う、という考えである。

2003年に"Ben" Bernankeが日本の需要低迷と物価下落への対策として提案した。

2001年3月からの日銀の量的金融緩和政策は中途半端であり、物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷り続け、さらに日銀が国債を大量に買い上げ、減税財源を引き受けるべきだ。(「日本の金融政策に関する若干の考察」)

紙幣を刷って配る(政府が無利子の永久国債を発行して日銀が引き受ける)ため、実質的に国の債務を増やさずに需要を喚起できる。
但し、カネの価値を暴落させ、ハイパーインフレを招きかねないとされる。


2008年から2013年まで英国の金融行政の監督機関FSA長官を務めたAdair Turner が2015年10月に出版した著書 "Between Debt and the Devil:Money, Credit, and Fixing Global Finance" でヘリコプターマネーの導入を説いている。


日経ビジネスOn Line (2016年5月2日) がインタビュー記事「日本はヘリコプターマネーを本気で検討せよ  英金融サービス機構元長官、アデア・ターナー氏の警鐘」を掲載している。

世界経済の低迷の理由は2つ。需要不足過剰債務の問題に尽きる。
多くの先進国が、金融危機後に抱えた巨額債務の反動で財政規律重視の傾向が強まり、思い切った財政政策を打てず、経済の停滞につながっている。

期待されたのが中央銀行の金融政策だが日本の経験で明らかになったのは、金融緩和策の限界だった。
マイナス金利政策も、個人的には銀行の経営を圧迫 する以上のプラス効果は見込めないと見る。むしろ経済に対する不透明感が高まり、企業が投資を手控えたり、個人がタンス預金を増やしたりと需要喚起とは正反対の状況に陥りかねない。

しかし、まだ施策は残されている。「マネーファイナンス」の導入だ。
マネーファイナンスの最大のポイントは国民に現金を配り、家計を直接刺激することにある。
具体的には、国民の銀行口座に現金を入れたり、あるいは特別な商品券を配布したりする形が考えられるだろう。配布した商品券などには有効期限を設定し、使わないと価値を失う仕組みを作ってもいいだろう。

マネーファイナンスでは、新たに創造するマネーは中央銀行から与えられる。すなわち、国の実質的な債務を増やさずに済む。
減税は結局、将来の増税という形で需要を先食いしているに過ぎないが、マネーファイナンスの場合はそうした懸念もない。消費は間違いなく増え、物価は上昇する。

運用次第でハイパーインフレのリスクは十分管理できる。

日本は過去20年以上、非伝統的金融政策を使っても思うように物価が上がらなかった。意思決定の仕組みが複雑な欧州に比べれば、はるかに実施できるチャンスはある。政府や日銀はあらゆる可能性を排除すべきではない。

池田信夫ブログ(5月3日)「ヘリコプターマネーは日本を救うか」 はこれを取り上げ、黒田総裁の裁量で日銀のオペとして実行できる(国会決議は必要)ので、財政危機を「ハードランディング」させるには、いちばん簡単な方法だとしている。

銀行を通さないで、国民に直接カネを配るのだ。期限つきデビットカードを推薦したい。

「定額給付金」のように数兆円ぐらいでは効果がないので、思い切って100兆円ぐらいばらまいたらどうだろうか。1人80万円だから、車1台ぐらい買える。預金しておくと1年後にはゼロになるので、急いで使うだろう。

これによってGDPが100兆円増えることも確実なので、安倍首相の「名目 GDP 600兆円」も実現できる。

マネタリーベースは一挙に30%ぐらい増えるので、物価は2倍ぐらいになるだろう。

これで政府の実質債務は半減する。
年金生活者の所得は半減し、国民の金融資産も半減するが、その60%は60歳以上がもっているので、世代間格差も解消する。
もちろん財政は破綻し、日本経済はめちゃくちゃになるが、1年たてば正常化するだろう。あの石油ショックで物価が2倍になったときも、5年でもとに戻った。

財政法第5条では、国会の議決を経た場合は日銀による国債引き受けが可能である。

第5条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。
但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

しかし、黒田日本銀行総裁は4月20日の衆院財務金融委員会の日銀半期報告の質疑で、景気刺激策の財源を中央銀行の紙幣増刷で賄う いわゆるヘリコプターマネー政策は「全く考えていない」と述べた。同時に、物価安定目標達成のために必要なら追加緩和を行う姿勢をあらためて示した。

ヘリコプターマネーは金融政策と財政政策を一体的に行うものとの認識を示した上で、財政は政府と議会、金融政策は政府や議会から中立的な中央銀行が行うので、「一体としてやるのは法的枠組みと矛盾する」と指摘。これまでに「具体的に検討したこともない」と重ねて否定した。

ーーー

ヘリコプターマネーの導入で本当に需要が喚起されるであろうか。

1999年に地域振興券が配布された。

15歳以下の子供のいる世帯主、老齢福祉年金等々の受給者、生活保護の被保護者等、満65歳以上で市町村民税の非課税者等を対象に、
財源を国が全額補助することで日本全国の市区町村が発行し、
地域振興券を1人2万円分、総額6,194億円を贈与という形で交付した。

交付開始日から6ヶ月間有効で原則として発行元の市区町村内のみで使用でき、
釣り銭を出すことが禁止され、額面以上の買い物をすることを推奨した。

内閣府経済社会総合研究所は2002年4月にこの効果を分析したレポート 「地域振興券の消費刺激効果」 を出している。

個票データに基づく推計結果を見ると、地域振興券はその配布時点において半耐久財、とりわけアパレル品等、を中心に消費を拡大させ、振興券配布月内で評価した限界消費性向は0.2~0.3 程度であった。

(経済企画庁は振興券を受け取った中の9,000世帯に対してアンケート調査を行い、振興券によって増えた消費は振興券使用額の32%であったとしている。)

一方、地域振興券の消費刺激効果は時間とともに減衰し、最終的な限界消費性向は0.1に低下している。これは、一旦拡大した半耐久財の消費が異時間代替の形でその後若干減少したことによる。

保有資産が少ない世帯ほど振興券受領に応じ消費を拡大する傾向が見られた。

まず、受け取ったカネの7割~8割が貯蓄に回された。(振興券がなくても行われた消費に使われる場合、本来使うはずのカネは貯蓄に回る)
また、消費のうち、半耐久財の場合は将来需要の先食いが含まれ、翌年以降の需要が減少する。

この結果、ネット需要増は配布されたカネの1割だけとなり、非常に効率が悪いことが分かった。

カネがないから消費できない人には有効だが、実際には、カネがないから消費しないのではなく、欲しいものが無いから、または将来に不安があるから消費しない人が多いのが現状で、ヘリコプターマネーの大半は貯蓄に回るであろう。
期限付きの商品券を配るとしても、その使用によって、本来使うはずのカネが貯蓄に回れば消費は増えない。

金額が大幅に増えても同じであろう。




Paris, April 28, 2016 - Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies' shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation's two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

Paris, April 28, 2016 - Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies' shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation's two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

製薬大手の仏 Sanofi は4月28日、米国の製薬会社Medivation Inc. に対し現金での1株52.50ドル、総額93億ドルでの買収提案を行ったと発表した。過去2ヶ月の平均株価に対し50%以上のプレミアムとしている。

Sanofi は2015年11月に中期戦略を発表しているが、バイオ医薬品部門で最大でかつ伸びの高い癌治療分野での再構築をうたっており、すぐれた前立腺癌治療薬を持つMedivation との組み合わせは患者に役に立つとともに、両社の株主に利益をもたらすとしている。

Medivationは4月29日、提案はMedivationの価値を低く見ており、同社と株主の利益に反するとしてこれを拒否したと発表した。

Sanofi はこれに対し、引き続き買収の実現を目指すとし、Medivationの株主に直接説明したいと述べた。敵対的買収にも含みを残す。

さらに、AstraZeneca、Pfizer、Novartis AG などが買収の検討を始めたと報じられている。

ーーー

Medivationは、本社を米国カルフォルニア州に置くバイオ医薬品会社で、がん治療薬の開発・販売を手がけており、前立腺がん治療薬 XTANDI ( 一般名Enzalutamide、開発コードMDV3100)を実用化している。

XTANDI は、第二世代のアンドロゲン受容体拮抗薬で、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に適応を持つ。

Medivation は2009年10月、アステラス製薬との間でXTANDI の全世界での開発・商業化に関する契約を締結した。

アステラス製薬は契約締結一時金として110百万ドルを支払い、開発マイルストン達成に伴う総額 335百万ドルの一時金支払いのほか、売上達成に応じて最大320百万ドルの追加一時金を支払う。

両社はXTANDI の広範囲な開発プログラムを共同で進め、米国における商業化を共同で行なう。

米国を除く全ての地域については、アステラス製薬が独占的開発・販売権を有し、アステラス製薬はMedivationに対し米国以外の全地域の売上に応じて漸増する2桁台のロイヤリティを支払う。

アステラス製薬は、過活動膀胱治療剤「ベシケア」や前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤「ハルナール」のグローバルでの販売に加えて、前立腺がん治療剤では「エリガード」を欧州で販売するなど、泌尿器領域において既に強固な事業基盤を構築している。
また、がん領域をフォーカス疾患のひとつに位置づけ経営資源を集中している。

アステラス製薬はこの契約締結により、泌尿器領域並びにがん領域における事業基盤を強化した。


FDAは2012年8月、転移性去勢抵抗性前立腺癌向けにXTANDI を承認、アステラス製薬は同年9月に米国で発売した。

2013年6月には欧州委員会から承認を得て、同年7月にまず英国で発売した。

アステラス製薬は2014年3月24日、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤「イクスタンジ®カプセル 40mg」について、去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で製造販売承認を取得した。

アステラス製薬のXTANDIの売上高は下記の通り。(単位:億円)

2014/3 2015/3 2016/3
(1Q-3Q)
米国 443 857 1,129
日本 149 202
米州(米国以外) 8 26 34
欧州 95 334 507
アジア・オセアニア 0 6 17
合計 546 1,372 1,888

アステラス製薬ではXTANDIについて、販売地域の拡大(新興国を中心に)、適応拡大(より早期の前立腺癌、乳癌、肝細胞癌など)を図る。

Medivationでは、XTANDI のほか、乳がん治療薬のTalazoparib、白血病治療薬のPidilizumab(白血病)でも開発を進めている。

欧州連合は2月19日夜、ブリュッセルで開いた首脳会議で、英国のEU離脱を回避するためにCameron英首相が求めているEU改革案を巡って全会一致で合意した。

合意を受け
Cameron首相は、6月23日に国民投票を実施することを決め、自らはEU残留を訴えていく考えを明らかにした。

2016/2/22 EU首脳会議、英離脱回避へ改革案合意


経済協力開発機構(OECD)は4月27日、英国がEUを離脱した場合の影響分析:The Economic Consequences of Brexit : A Taxing Decision を発表した。
英国(Britain) のEU離脱(exit ) は Brexit と呼ばれる。

OECDのAngel Gurría 事務総長は同日、これについて ロンドンでスピーチ(タイトルは To Brexit or not to Brexit: A Taxing Decision )を行った。

OECDの分析によると、英国が6月23日の国民投票でEU離脱を選択した場合、2020年の英国のGDPは加盟を継続した場合より3.3%少なく、これは1 世帯あたり 2,200ポンド(約34万円)の損失に相当するという。

長期的には、2030年時点でGDPの減少幅は5.1%に広がると推計する。(楽観ケースでは2.7%減、悲観ケースで7.7%)
1 所帯当たりでは3,200ポンド(約50万円)の損失。(楽観ケースでは1,500ポンド、悲観ケースでは5,000ポンドの損失)

事務総長は、離脱による損失を英国民にとっての「離脱税 ( Brexit tax)」と呼び、これは、一般の税金とは異なり、公共サービスに使われるのでも財政赤字の穴埋めに使われるのでもなく、純粋な超過負担(pure deadweight loss)で経済的利便のないコストであるとしている。しかもこれは一回限りのものではなく、英国民は何年にもわたり払い続けることとなる。

このため、離脱は「やっかいな決定(taxing decision) 」であるとする。

6月23日の国民投票でEU離脱を選択した場合、直ちに交渉を始め、正式離脱は2018年の終わりと予想する。
2019から2023年にかけてEUとの新しい貿易交渉を行い、移民を減らす方策を採用することとなる。

事務総長は以下の通り述べている。

短期的な影響として、経済的な不確実性が高まり、ひどい影響が出る。資産の投売りが起こり、リスクプレミアが大きく高まる。消費が減り、投資が減り、成長が落ちる。
離脱により
、EUとの貿易協定を結ぶ必要がある。EUへのアクセスが自動的に止まるだけでなく、EUが貿易協定を結んでいる53カ国・地域とも同様である。

今よりもよい貿易関係を結べるとの意見は妄想で、新しい交渉には長い時間がかかり、膨大なエネルギーを要する。ゼロからの交渉となる。オバマ大統領が述べたとおり、米国にとって英国は貿易交渉の最優先国ではなく、英国にとり有利な交渉は期待できない。

長期的にはサプライサイドで影響を受ける。

英国は現在、欧州で最大の海外からの直接投資対象国であるが、EU単独市場にアクセスできない英国の魅力は縮小する。
EU市場にアクセスするために英国に拠点を置いた企業は移転を考えるだろう。英国の多くの多国籍企業も同様である。
海外からの直接投資の減少は全体の投資、イノベーション、生産性に悪影響を与え、貿易不均衡を生む。

資金の流出、流入減が起こり、GDPの7%にも達する経常収支赤字の補填が難しくなる。

投資の減、モノと人の流入の減、信用コストのアップ、海外からのアイディアとスキルの流入減は、最終的に英国の生産性を弱め、長期的な経済力を弱める。

他のいろいろな調査でもBrexitの影響はマイナスである。

OECDの結論は、英国は欧州の一員としてより強くなり、欧州も英国が先頭を切ることでより強い。

------

事務総長のスピーチには入っていないが、報告書は移民について次のように述べている。

2005年以降、英国への移民は200万以上の職を創り出し、英国のGDPの伸びの半分を占めている。EUからの労働力の自由な流入の制限と離脱後の英国経済の弱体化によって英国への移民のインセンティブが次第に減り、英国経済にとって負担となる。

英国が現在問題にしているのは、EUの拡大の結果、東欧諸国からの移民の大量流入で、低賃金層の英国人の職が奪われる点と、公的医療などの社会保障の費用が増えることである。

金融分野や企業誘致による知的労働層の移民は英国経済に大きく貢献しており、これが減ると、英国経済に悪影響を与える。上の表のImmigration はこの影響を表している。

フランスのマクロン経済相は、英国が離脱するならば、「ロンドンの金融街シティーからの帰還者を受け入れることになるだろう」と語った。

オーストラリアのモリソン財務相は4月29日、中国の上海鵬欣集団(Shanghai Pengxin)の傘下企業による 豪州の巨大牧場の所有者の S. Kidman & Co 買収 を、「国益に反する」として認めない予備決定を下した。

S. Kidman & Co はオーストラリア史に残る牧畜王のSidney Kidman の一族が所有する。
Kidman が100年以上前に始めた牧場は
現在、総面積は約10万平方キロ、国土の1.3%に及ぶ。(イングランド全土の3/4の大きさで、北海道や韓国よりも広い。)

買収額は約3億7000万豪ドル(約310億円)で、財務相は、「規模が大きすぎ、豪企業が応札できない」ことを理由に挙げた。農地などへ中国からの投資が拡大し、安全保障上の懸念が浮上していることが背景にある。

Kidman は10箇所の 牛の牧場、1箇所の種牛飼育場を持ち、185千頭の牛を飼育している。


2015年に 3億2500万ドルで売却に出されたが、全世界から多数の応札が入った。

中国からは上海鵬欣集団のほか、東淩糧油 Donlinks Grain and Oil) 、浙江日發 (RIFA Holding)、大康牧業旗下的鵬欣集團(Dakang Pasture Farming's PengXin)、寧波先鋒新材料(Ningbo Xianfeng)等が応札した。

2015年11月初めに、Kidman は上海鵬欣集団に独占交渉権を与えた。

売却には豪州の外国投資審査委員会(Foreign Investment Review Board)と豪州政府の承認を必要とする。

豪州では2015年9月15日にMalcolm Turnbull 首相の新政権が発足したが、豪州政府は11月19日、安全保障上の理由から売却の承認を拒否した。

安全保障上の懸念があり、国益を損なう可能性があることから、売却を認めるべきでないとする外国投資審査委員会の判断に同意するとの考えを示した。

この判断は Kidman のAnna Creek牧場がウーメラ武器試験場(Woomera Test Range) に隣接していることも影響している。
ウーメラ試験場は世界最大の武器試験場で、最近、英防衛大手BAEシステムズの次世代無人ステルス攻撃機「タラニス」の英防衛関連科学者による試験でも使用された。

付記   「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの砂を入れたカプセルは2010年6月13日、Woomeraに着陸した。

これに対し、2016年4月19日、Kidman と上海鵬欣集団 は問題のAnna Creek 牧場を買収対象から除外して売買契約を結ぶこととした。

発表では、上海鵬欣集団 が支配するベンチャーが80%の権益を購入し、残り20%を豪州のAustralian Rural Capital が購入する。
上海鵬欣集団子会社の湖南大康牧業がベンチャーの51%を出資する。

湖南大康牧業は中国の畜産中堅で、ニュージーランドの3つの牧場を傘下に収めている。


豪州政府は今回、問題とされた「武器試験場に隣接」する牧場を売買対象から外したにも係わらず、これを不承認とした。

国内には、買収後の軍事利用や、牛肉を全て中国に出荷することへの警戒論がある。

Turnbull 新政権は、次期潜水艦建造計画では本命視された日本を選らばず、仏企業を選定し、「日本製採用に反対する中国に配慮した」と噂されるなど、「親中」ととれる政策が続いていたが、今回は厳しい態度で臨んだ。

ーーー

上海鵬欣はニュージーランドでも牧場買収を阻止されている。

上海鵬欣は 2014年8月1日、子会社 Pure 100 Farm Limited を通じ、ニュージーランド北島中部のTaupo の近くの 13,800エーカーのLochinver 農場を購入することで合意した。

同国の海外投資局(Overseas Investment Office)はこの申請を受け付けたが、国民の反発を恐れ、9月20日の選挙が終わるまで秘密にされていた。
しかし、これが保守党党首の選挙演説で暴露された。「国民は裏で何が起こっているか知るべきだ。本件は明らかに選挙の争点だ。ニュージーランドは 'For Sale' の看板を下ろすべきだ」と述べた。

これを受け、上海鵬欣は契約したことを発表、既に購入した農場とのシナジーを求めてのものと述べた。

海外投資局が申請を受け付けるかどうか、注目された。

2014/8/9 中国企業のニュージーランド牧場購入が問題に

ニュージーランド政府は2015年9月17日、上海鵬欣集団による購入計画を承認しないことを決めた。

外資による土地所有への懸念が高まるなか、海外投資局はこれまでの容認姿勢をくつがえす決定を下した。

政府は声明で「ニュージーランドに相当の利益をもたらすこと、またはその公算が大きいことを確信できなかった。この広さの慎重に扱うべき土地に関する申請では重要な要件となる」と述べた。

上海鵬欣集団はこの決定に対する司法審査を求めていたが、2016年4月1日にこれを取り下げた。

上海鵬欣集団はLochinver 農場に隣接するFleming farm の買収交渉も続けていたが、政府によるLochinver 農場買収の不承認を受け、断念した。

米財務省は4月29日、主な貿易相手国・地域の為替政策に関する半年に一度の報告書 Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the UNITED STATES を発表した。

そのなかで、通貨を意図的に安く誘導する為替操作への監視を強化するため、日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5つの国と地域を新たに設ける「監視リスト」の対象にし、動向を詳しく分析し監視していくとした。

これは、本年2月に成立した2015年貿易円滑化・貿易履行強制法案に基づくものである。

オバマ政権はTPPの大筋合意を受けて、米議会で強まる自由貿易協定への反対論を抑えるため、貿易相手国の通貨政策を監視して対抗措置がとれるよう法制度を強化した。

ーーー

オバマ大統領は2月24日、2015年貿易円滑化・貿易履行強制法案 ( Trade Facilitation and Trade Enforcement Act ) に署名し、法を成立させた。

2015年2月に下院に提案され、修正案を含めた最終法案が2015年12月11日に下院を256対 158で通過し、上院は今年の2月11日に75対20で可決した。

これはアンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置が盛り込まれた。

追加された第7章「Engagement on Currency Exchange Rate and Economic Policies」は、提案議員の名前をとって BennetHatchCarper 法と呼ばれるが、第701条と第702条の二つの条文から成る。

第701条は、「米国の主要貿易相手国との為替レートおよび経済政策の取り極めの促進」と題し、次のように規定している。

財務長官はこの法律制定から180日以内に、米国の主要貿易相手各国について、米国との貿易収支、直前の3年間における経常収支のGDP比、外貨準備額の短期債務額比とGDP比を含む報告書を上院財政委員会および下院歳入委員会に提出し、以後半年毎に提出する。

重大な対米貿易黒字実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国については、マクロ経済および為替政策に関する高度な分析を行い、財務長官はこの法律制定から90日以内に、この分析で使用した諸要因を公表する。

上記の高度な分析には、当該国の
 (i)可能な限り詳細な為替介入の推移を含む当該国の為替市場の展開、
 (ii)実質有効為替レートの変化および為替切り下げ度合の変化、
 (iii)資本規制および貿易制限の推移に関する分析、および
 (iv)外貨準備高の傾向を含むものとする。

大統領は財務長官を通して、マクロ経済および為替政策に関する高度な分析の対象国と高度な二国間取り極めを開始する。

「高度な二国間取り極め」は、
 (i)当該国通貨の過小評価、大幅な対米貿易および実質的な経常黒字の要因に対処するための政策の実行を当該国に促し、
 (ii)通貨の過小評価と大幅黒字に対する米国の懸念を表明し、
 (iii)当該国が適切な政策を採用しなかった場合は、大統領が取り得る行動を当該国に忠告し、
 (iv)通貨の過小評価と大幅黒字に対処する具体的な行動を伴う計画を作成する、ために行われる。

 (iii)の「大統領が取り得る行動」は次のひとつ以上の行動と規定されている。

(i)海外民間投資公社(OPIC)による当該国に対する新規融資等の禁止、
(ii)連邦政府による当該国からの財・サービスの調達・契約締結の禁止、
(iii)IMF米国代表理事による当該国のマクロ経済および為替政策の厳格な監視および公式協議の要求、
(iv)当該国との二国間または地域間貿易協定の締結または交渉参加の是非の検討。

第702条は、財務長官に政策を諮問するため、「国際為替レート政策に関する諮問委員会」を新設することを規定している。

上院議長、下院議長および大統領が各3名の委員を任命し、合計9名で構成する。

ーーー

財務省は上記②の重大な対米貿易黒字実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った貿易相手国の分析に関し、次の基準で選ぶこととした。

重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上
実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上
外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入

財務省は今回、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、米国の主要貿易国の5カ国が3つの基準のうち2つに該当することを見つけた。このため、新しい「監視リスト」を創設し、この5国を監視していくこととしたもの。

2015年の分析結果は下記の通り。黄色部分が基準にかかっている国。

対米貿易黒字
億ドル
経常黒字
GDP比
net 外貨購入
GDP比

継続

中国 3,657 3.1% -3.9%
ドイツ 742 8.5%
日本 686 3.3% 0.0%
メキシコ 584 -2.8% -1.8%
韓国 283 7.7% 0.2%
イタリー 278 2.2%
インド 232 -1.1% 1.8%
フランス 176 -0.2%
カナダ 149 -3.3% 0.0%
台湾 149 14.6% 2.4%

英国 150 -5.2% 0.0%
ブラジル -43 -3.3% 0.1%
参考 ユーロ計 1,302 3.2% 0.0%

報告では各国について以下の通り述べている。

日本 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字だが、4年間為替介入を行っていない。
中国 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。昨年8月の中国の為替政策変更で急激な人民元安となった後、人民元を守るため強い介入を行った。為替相場の目標についての透明性が高まれば市場は安定する。
韓国 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。2015/7~2016/3に介入した。介入は為替市場が秩序立たない場合のみに限定することと、操作の透明性を求める。
台湾 実質的な経常黒字。2015年を通じ継続して外貨買いをしている。介入は為替市場が秩序立たない場合のみに限定することと、操作の透明性を求める。
ドイツ 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。GDPの8%以上の黒字で、少なくともその一部は、ドイツの国内消費のサポートに使うべきである。


日本については、次のように述べている。

本年1月に日銀はマイナス金利導入で市場を驚かせた。黒田総裁は日銀は2%のインフレターゲット達成のために引き続き何でもやると述べた。
日銀の決定後、数日間は円安となったが、その後、円高に戻り、3月末時点では昨年11月央と比べ8.9%の円高となっている。日本政府は為替の動きを「quite rough」とし、緊張感をもって市場の動きを監視するとしている。

日本はこの4年、介入をしていない。

米財務省としては、 現在のドル・円の為替市場は秩序だっている(orderly) とみており、全ての国が為替政策に関するG-20、G-7のコミットメントを守る必要性を強調する。

G-20、G-7では日本は三本の矢の全てを使うことをコミットし、金融政策だけではバランスのとれた成長は達成できないと認めた。
日本の成長の弱さ、グローバルな需要停滞を考えると、日本政府は、柔軟な財政政策、税制改革・労働市場改革・地方活性化などの野心的な構造改革、TPPや R&Dインフラ強化などの長期的利便のための改革継続など、全てのポリシーレバーを使うことがますます重要となっている。

ーーー

アメリカ大統領選挙に向けて民主党候補への指名がほぼ確実なHillary Clinton 前国務長官はTPP協定について反対だと明言するとともに、中国その他に加え、日本も輸出を有利にするため円安を誘導していると批判し、対抗措置を取る考えを示した。

共和党候補になる可能性が高まった不動産王Donald Trump候補も、日本の円安誘導を批判し、TPPに反対している。

2016/2/25 Hillary Clinton、TPPに反対を表明、日本も為替操作国に含める

円高が進む中、米国がこれを秩序だっていると見ていることから、また為替介入には対抗策を取るとしていることから、日本政府による為替介入は非常に難しくなった。

米国の利上げは遠のいており、暫くは更なる円高が予想される。

麻生財務相は4月30日深夜、海外市場で円相場が 1ドル=106円台と1年半ぶりの円高水準に上昇したことについて「一方的で偏った投機的な動きに極めて憂慮している」と述べた。
「(投機的な動きに)必要に応じて対応する」とも明言し、円売り介入も辞さない姿勢を強調した。



トヨタ自動車は4月21日、高い耐油性、耐熱性が必要な特殊ゴム製部品であるエンジン・駆動系ホースに、バイオ合成ゴム(バイオヒドリンゴム)を世界で初めて採用すると発表した。

国内生産車種のバキュームセンシングホース(エンジン吸気系部位に使用)に2016年5月から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予定。
今後、ブレーキ系ホース、燃料系ホースなどの特殊ゴム部品にも採用拡大を目指す。

このバキュームセンシングホースは、トヨタと日本ゼオンおよび住友理工が共同開発した。

住友理工は旧称 東海護謨工業で、自動車用防振ゴム・ホース部門の国内トップメーカー。
1937年に住友グループに入った。2014年に現社名に改称した。

ヒドリンゴム(エピクロルヒドリンゴム)は耐油性、耐熱性、耐熱老化性、耐オゾン性、ガス透過性に優れ、ホースなどに使われる。
エピクロルヒドリンの単独重合体(略称 CO)と、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体(略称 ECO)がある。

バイオヒドリンゴムは、ヒドリンゴムの原料の一部であるエピクロルヒドリンを植物由来のバイオ原料に替えて製造したもので、ライフサイクルでCO2排出量を約20%抑制可能とする。

今回、植物由来原料を分子レベルで石油由来原料と結合させ合成ゴムへ変換する技術など、様々な複合化技術を駆使することにより、バキュームセンシングホースに求められる耐油性、耐熱性、耐久性は同等レベルを確保した。
さらに部品製造においても、従来の石油系ヒドリンゴムを用いた場合と同等の品質と量産性を確保し、市販車への採用を可能としている。


ーーー

Solvayは2007年4月、同社技術での菜種油からのバイオディーゼル生産時の副生グリセリンを原料とするエピクロルヒドリンの生産をフランスのTavauxで開始したと発表した。
当初の能力は年10千トンで、需要に応じて簡単に拡張できる。
グリセリンはバイオディーゼル生産時の副産物で、1トンのバイオディーゼルに対して100kg のグリセリンが副生する。

Solvay のEpicerol プロセスは、グリセリンと塩酸から中間体のジクロロプロパノールを直接合成し、次の脱塩化水素工程でエピクルヒドリンを生成する。
塩素と水が少なくて済み、廃液も少ないのが特徴で、20以上の特許を取った。

2007/4/13 Solvay、バイオディーゼル副生グリセリンを原料とするエピクロの生産開始

Solvayは2007年9月、タイのMap Ta Phut にEpicerol®法による年産10万トンのエピクロルヒドリン工場を建設すると発表した。

生産開始後、Solvayはこの事業をPVCのJVのVinythai に移管した。

2007/9/11 Solvay、タイでエピクロルヒドリン生産

Dow もバイオディーゼル副生のグリセリンからエピクロ生産の独自の技術を持っており、Dow Epoxyが上海ケミカルパークで初めて工業化をした。

年産10万トンの液体エポキシ樹脂とともに、グリセリンからの年産 15万トンのエピクロルヒドリンのプラントを建設した。

ーーー

日本ゼオンの米国子会社Zeon Chemicals は2013年2月、ミシシッピー州の Hattiesburg 工場で椰子油や植物性油から作ったエピクロルヒドリンを使ってHydrinゴムを開発していると発表した。




三菱商事は4月25日、インドネシアのWeda Bay Nickel 鉱山の開発権益を事業パートナーであるフランスのEramet S.A. に売却すると正式発表した。
保有していた30%分の権益を月内にすべて手放す。売却額は約100億円の見込み。

三菱商事は2016年3月期決算で4300億円の減損損失を計上するが、本件はすでに減損処理を済ませており、決算予想の見直しはない。

三菱商事とともに3.4%の出資をしていた太平洋金属も同様に売却した。

操業に向けて準備してきたが、ニッケルの国際価格が2011年と比べて約3分の1 に下落し、今後、事業を継続しても採算がとれないと判断した。
三菱商事では、「事業化要件が満たされなかった為、今般株主間協定書に基づき売却する」としている。

この計画は、世界有数の金属原料・高性能合金生産者のEramet がインドネシアのハルマヘラ島のWeda Bay の世界有数の大規模ニッケル鉱床を開発するもので、同鉱床の資源量はニッケル純分ベースで630万トンと見込まれ、Erametの開発したニッケル湿式精錬法を採用し、年産6.5万トンのニッケルを生産するもの。

三菱商事は2009年2月に同プロジェクトに33.4% 参画し、これまで事業化調査を進めてきた。2011年12月に太平洋金属が三菱商事から持分3.4%の譲渡を受け、参加した。

太平洋金属は、旧称 日曹製鋼 で、フェロニッケルとフェロニッケルスラグ加工品を生産している。低品位ニッケル鉱石からの製錬技術を生かした、ごみ焼却灰などの再資源化システムの事業も展開している。


この計画の運営形態は下記の通り。

10%出資するPT Antamはインドネシア政府が株式65%所有する国営の資源大手で、世界最大級のニッケル生産企業。

ーーー

住友商事は2016年1月13日、マダガスカルで進めてきたニッケル採掘・精錬の「Ambatovy Nickel Project」に関してニッケル価格の下落を理由に約770億円の減損損失を計上すると発表した。


足元のニッケル価格の下落を踏まえ、中長期価格の見通しを見直した結果、プロジェクト会社が保有する固定資産の簿価を全額回収することは困難と判断したとしている。

2016/1/19 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上  

住友金属鉱山は2016年3月29日、ニューカレドニアのGoro Nickel Cobalt Project を進めているVale Nouvelle Calédonie S.A.Sの全株式をVale Canada Limitedに譲渡する売買契約を締結した。譲渡金額は約80億円。
共同で出資する三井物産も同様に売却した。

住友金属鉱山と三井物産は、SUMIC Nickel Netherlands(住友 52.38%、三井 47.62%)を設立して2005年よりGoro Nickel Cobalt Projectに参加しているが、2015年12月末までに商業生産目標を達成できない場合には、株式をVale Canadaに売却することとしており、商業生産条件を達成することができなかったため、撤退する。

2016/4/6 住友金属鉱山と三井物産、ニューカレドニアのニッケル事業から撤退 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ