「no」と一致するもの

産業革新機構(INCJ)は1月4日、素材・化学産業における新事業創出プラットフォームの確立を目指すVenture Capitalの設立を発表した。

1) Venture Capital ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI) を設立(2,000万円を上限とする出資)

2) UMIがUMI 1号投資事業有限責任組合(UMI 1号ファンド)を設立

   INCJが60億円を上限とする戦略的LP投資
   宇部興産、積水化学工業、デクセリアルズ、DIC、日本触媒がLP出資
   その他の日本の大手素材・化学企業からもLP出資を受け入れる予定

UMI 1号ファンドは、素材・化学産業の大企業やベンチャー、アカデミアが保有する優れた技術や事業に着目し、これらの受け皿となり積極的な事業化の支援を行う新事業創出プラットフォームの確立を目指す。

テーマの発掘には INCJと協力関係にある素材・化学分野に強いアカデミアを中心に、大企業やベンチャー企業との幅広いネットワークを活用するほか、INCJが相互協力の覚書を締結している物質・材料研究機構 (NIMS)や、同様にINCJと相互協力協定を締結している科学技術振興機構(JST)、産業技術総合研究所(AIST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)、さらに素材・化学分野に強い大学などの各アカデミア関連機関とも連携していく。
出資企業のデクセリアルズ (DexterousとMaterialsとを組み合わせた造語) の前身はソニーケミカルで、
2000年1月にソニーの完全子会社となり、上場廃止
2006年7月1日にソニー宮城と合併し、ソニーケミカル&インフォメーションデバイスと改称
2012年9月にVGケミカル(日本政策投資銀行 60%、ユニゾン・キャピタルの投資ファンド 40%)に売却され現社名に変更

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産業革新機構(Innovation Network Corporation of Japan : INCJ)は2009年7月に産業競争力強化法(平成25年法律第98号)に基づき設立された。

我国と日本企業にとって、「オープンイノベーション(今まで慣れ親しんできたビジネスモデルに拘ることなく、従来の業種や企業の枠にとらわれずに、その発想と行動において自己変革と革新を推し進めていくこと)」が重要な鍵となるとの考えに基づき、次世代の国富を担う産業を創出するため、産業界との連携を通した様々な活動を行う。

東芝は2015年12月21日、画像診断装置などを手掛ける全額出資子会社の東芝メディカルシステムズを売却する方針を明らかにした。「少なくとも50%以上、場合によっては100%の株式売却も考える」としている。売却額は数千億円規模になる見通し。

同社は2014年2月のヘルスケア事業戦略説明会では、東芝の目指す姿として、「エネルギー」「ストレージ」に加え「ヘルスケア」を第3の柱としてスマートコミュニティを実現するとしていた。

しかし、今後は原子力事業やNAND型フラッシュメモリーに経営資源を集中させる方針で、ヘルスケアは売却による財務体質の改善を優先させる。

同社の室町社長は「メモリーは今の市況は厳しいが、将来は成長する。原子力発電所も世界ではある程度、新設が進む」と説明した。

半導体事業について分社化で収益力強化を図る考えがあることを改めて示唆した。原発事業のうち国内向けが中心の沸騰水型軽水炉(BWR)については他社との連携の可能性は排除しない」としつつも、「まだ白紙だ」と述べるにとどめた。

  参考 2015/12/8 東芝の原子力事業 

東芝メディカルシステムズはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)、超音波診断装置などに強みを持ち、画像診断機器全体の国内シェアは28%で首位、世界でもシェア12%で4位となっている。

2016年3月期の売上高は4400億円、営業利益は150億円を見込む。

関係者によると、ソニー、キャノン、富士フィルム、英GE Healthcare などが候補に挙がっており、Kohlberg Kravis Roberts (KKR) などのファンドも関心を寄せている。

東芝では今後入札を実施し、速やかに売却を完了させたい意向で、2016年1月の早い時期に売却条件などの情報を開示するとしている。

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東芝が売却を富士フイルムホールディングスに打診していることが分かった。

富士フイルムは健康・医療部門などに注力しており、デジタルX線画像診断や超音波診断装置など比較的小型の医療機器に強みを持っている。東芝側は大型機器に強く、事業統合による相乗効果は大きい。

 

富士フィルムのヘルスケア部門

2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入 、メディカル・ライフサイエンス事業拡大
2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す
2010/2/22 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入
2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携 (再生医療)
2011/2/28 富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収
2011/8/2 富士フィルム、ジェネリック医薬品のDr. Reddy's Laboratories と業務提携 
2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意
2014/10/31 富士フィルム、ワクチン受託製造市場へ参入
2014/11/18 富士フイルム、PET検査用の放射性医薬品市場に参入
2015/7/27 富士フイルム協和発酵キリン、バイオシミラー医薬品の開発・販売で AstraZeneca と提携
東芝メディカルシステムズは、富士フイルムとのつながりが深 い。

2002年3月に富士フイルムグループのフジノン(旧富士写真光機)と東芝メディカルシステムズが「フジノン東芝ESシステム」(富士フイルム60%、東芝メディカル40%)を設立し、東芝グループの内視鏡事業の一部を継承した。

東芝は内視鏡事業から全面撤退を発表、2009年3月末にフジノン東芝ESシステムの株式をフジノンに売却した。

富士フイルムは内視鏡事業をメディカル・ライフサイエンス事業の中でも重点分野として位置付け、2008年10月にフジノンより富士フイルムメディカルに移管し て開発・製造・マーケティング機能を強化しており、2009年4月にフジノン東芝ESシステムを富士フイルムメディカルと統合した。

また、富士フィルムと東芝のメインバンクは三井住友銀行である。

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日立製作所も東芝メディカルシステムズの買収を検討している。

日立はヘルスケア事業を成長戦略の柱と位置付けており、東芝メディカルを取り込み、事業を拡大したい考え。

日立は子会社の日立メディコがMRI やCT を手がけているが、世界シェアは数%にとどまり、GEや独Siemens、オランダのPhilips などの後塵を拝している。
東芝メディカルの買収により、3強を追い上げる考え。

日立は2014年度で3,379億円だったヘルスケア事業の売上高を2018年度には6千億円に引き上げる計画で、診断機器事業の拡大を図るとしている。

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2015年12月30日、新元素113、115、117、118 を公式に認めた。発見者に命名権が与えられる。

新元素113(仮の名称 ununtrium=Uut) は理研チームが発見者と認定され、命名権が与えられた。
周期表に日本発の名前を、アジアの国として初めて書き加えることとなる。

1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム(Nipponium: Np)と命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。

今回の113には、一度間違いとされた元素名ニッポニウムは使用できない。

新元素115 (仮の名称 ununpentium=Uup) 、117(ununseptium=Uus)、118(ununoctium=Uuo) はロシアのDubna研究所とアメリカのLawrence Livermore National Laboratory及びOak Ridge National Laboratoryの共同研究グループが発見者と認められた。

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現在、原子番号1 番の水素(H)から112 番のコペルニシウム(Cn)までと、114 番フレロビウム(Fl)、116 番リバモリウム(Lv)の計114 種類が認定されている。

自然界には92番ウランより重い原子が存在しない。93 番以降は人工的に合成され、最近では2011年6月に114 番と116 番についてロシアと米国の共同研究グループが存在を報告、元素発見の優先権について国際的な認定を受けている。

93以上の原子番号の原子核は短い時間で崩壊し、安定な別の原子核へと変化してしまう。このため、新元素の合成を証明するには、その元素が崩壊連鎖を起こして既知の原子核に到達することが重要となる。

ロシアと米国の共同研究グループは、カルシウム(Ca)のビームを、アメリシウム(Am)やバークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)に照射して113、115、117、118 番を合成し、その発見を主張した。

113番元素については、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表したが、崩壊後に既知の原子核に至っていない。

理研の森田浩介准主任研究員(現 グループディレクター、九州大教授)らは理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、2003年9月から亜鉛(Zn)のビームをビスマス(Bi)に照射し、新元素の合成に挑戦してきた。

2004年7月に初めて原子番号113の元素合成に成功し、その後、2005年4月にも合成に成功した。

しかし、113 が崩壊してできたボーリウム(Bh)が1例の報告しかなく既知核と確定できないこと、また、観測数が 2個と少ないことを理由に認定されなかった。

その後、研究グループは、2008~2009 年にボーリウム(Bh)を直接合成し、既知核への到達が確かであることを実験的に示した。

2012年8月12日、3 個目の113 の合成に成功し、これまでの4 回のアルファ崩壊に続き2 回のアルファ崩壊を観測、最後は原子番号101 のメンデレビウム(Md)になったことを確認した。

この113 は、これまでに理研が確認した2個とは異なる新たな崩壊経路をたどったため、113 番元素の合成をより確証づけるものとなる。

Db は、自発核分裂かアルファ崩壊で崩壊することが知られている。
前回は自発核分裂を起こしたが、今回はアルファ崩壊でLrとなり、両方を観測したこととなる。

2012/10/1 新元素 113 

IUPAPが推薦する委員で組織された合同作業部会は、両研究グループの研究結果が認定基準を満たしているかを審議し、森田グループが観測した113番元素は確実に既知の原子核につながっているなどの理由から、森田グループが113番元素の発見者であるとIUPACに報告し、IUPACがそれを認めた。




 

2011年4月にAppleが米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害したとして提訴した裁判が今も続いている。

経緯は後述するが、上記裁判についての本年5月18日の連邦控訴裁判所の判決を受け、本年12月3日に、Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金を払うことで両社が合意し、12月14日に支払が行われた。

しかし、Samsung は12月14日、米最高裁判所に上告し、同社とAppleとの間で争われている知的財産侵害訴訟の判決を見直すよう求めた。

最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、 その後は扱っていない。
(その当時の訴訟は、スプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものだった。)

Samsungは最高裁に対し、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示 すことを求めており、最高裁が上訴を受理した場合、最高裁の最終判断がハイテク業界や消費者の購入できるすべてのガジェット類に波及的な影響を及ぼす可能性がある。

Samsungは、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている。

一方、Appleは12月23日、2012年にSamsungによる特許侵害を認めた陪審判決が出た後に販売された分に関連して、「付随的賠償および利子」名目でさらに180百万ドルの支払いをSamsungに請求 する訴訟をカリフォルニア州北部の連邦地裁に起こした。

両社の争いは2016年も続くこととなった。

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2011年4月にAppleが米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害したとして提訴した。

陪審団は2012年8月24日、SamsungがAppleの一部特許を侵害したとして、1,050百万ドルのAppleの損害を認定した。

陪審団は、Samsungのスマートフォンの大半は、Appleの技術特許3件とデザイン特許4件のうちの3件(合計7件のうち6件)を侵害したと認めた。
このうち、指の動きをタッチパネルが感知する技術など5件はSamsungが「故意に侵害」したと認定した。

技術特許 
  Bounce back ('381):ページの端をスクロールしたとき跳ね返る機能
  Single Scroll, Pinch to Zoom ('915):1本指でスロール、2本指でピンチ、ズーム
  Tap to Zoom ('163) :画面タップにより文書を拡大
     
デザイン特許
  iPhone Front (D'677) :Galaxy Ace以外が侵害
iPhone Back (D'087):Galaxy S, the Galaxy S 4G, Vibrantが侵害
iPhone Home Screen (D'305):13機種全てが侵害
iPad Design (D'889) :侵害無し

一方 、陪審団は、「Appleが自社の特許を侵害した」とするSamsungの主張は一件も認めなかった。

'516 特許 wireless technology
'941 wireless technology
'711 to play music while using other apps
'893 to scroll through the photo gallery, switch to the camera to take a pic, and then return to the same point
'460 to take a photo, preview it immediately, and email it off seamlessly

この裁判の裁判官は韓国系のLucy Kohで、当初は韓国企業と米国企業の裁判に韓国系の判事ということで話題となったが、訴訟指揮は高く評価された。

2012/8/28 Apple、Samsungとの特許係争で勝訴

これに対し、Lucy Koh判事は2013年3月1日、「1次評決で陪審員団が算定した1,050百万ドルの賠償金のうち43%に当たる450.5 百万ドルを削減する」と判決し、この部分について、新たな陪審員団に知的財産侵害の損害を再算出するよう命じた。

陪審員による賠償金額の算定方法に2つの法的な誤りが見つかったとしている。

①実用特許権の侵害に関する賠償金算出の際に、Samsungの利益に基づいて計算が行われた点で、このような計算方法は意匠権の侵害 の場合のみに適用される。

②賠償責任の対象となるのは、特許権が侵害されていると考えられる旨の通知をAppleがSamsungに対して行った後に発生した売上に限られる。
  2010年8月にサムスンと面談した際に示した特許権は1件のみ。
  その他の特許権は2011年4月に、また一部端末は同年6月以降に追加された。

2013年4月に同判事は、さきに削減したうち、Galaxy SII AT&T に関する賠償金 40百万ドルを承認した。

2013年11月21日、削減した分についての算出を担当する新しい陪審員は、Samsungに290 百万ドルの支払いを命じた。

この裁判では、Appleは380百万ドルを求め、Samsungは52百万ドルを主張していた 。

この結果、当初の1,050百万ドルの賠償金は、929百万ドルとなった。 (1,050ー451+40+290)

Samsungは控訴し、特許訴訟を専門に扱う米連邦巡回区控訴裁判所 (CAFC) は2015年5月18日、SamsungがAppleの複数の特許を侵害したと認定した が、賠償の一部は無効と判断した。

一般に認識されているiPhoneの特徴的な外観やデザインをSamsung がまねたとする「Trade dress」については、この点に関するAppleの主張は米商標法の保護対象にならないiPhoneの機能的要素に基づくものだと判断損害賠償額を見直すように、下級審に差し戻した。

日本でも、ある商品に必ずある機能的な形状、例えば、髭剃りは基本的にT字型、は立体商標として登録されないし、無効理由になる(商標法4条1項18号)。

Trade dressに違反する項目としては、四隅が均等に丸みを帯びた長方形の形状、製品の前面を覆うフラットでクリアな表面、そのクリアな表面の下のディスプレイ画面などが挙げられている。

判決では、「四隅が均等に丸みを帯びた」形状はポケットに入りやすく耐久性がある、「長方形」は表示を最大化する、というSamsungの主張を受け入れ、Appleはその主張を支える十分な証拠を示さなかったと述べた。

Trade dress 分は382百万ドルで、これを除くと548百万ドルとなる。

Samsungはデザイン特許等の侵害に対する賠償額の算定がおかしいとして、異議を申し立てたが、控訴裁は8月13日、異議申し立てを却下する決定を下した。

これに対し、Samsungは8月19日、控訴裁の判断の見直しを求め、最高裁に上告する方針を発表した。(上記の通り12月14日に上告)

Samsungは最高裁に上告する一方で、 Appleに548百万ドルの損害賠償金を払うこととした。

Samsung は、Apple が侵害だと主張する特許に無効などの措置が取られた場合には、支払った賠償金の一部または全額の返還を受ける権利を留保すると主張しているが、Apple 側はこのような権利を認めていない。


田辺三菱製薬は、12月21日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(一般名:Infliximab)について、既存治療では効果不十分な川崎病の急性期に対する効能・効果追加の承認を取得したと発表した。

生物学的製剤として、世界で初めての「川崎病」の効能・効果の承認取得となる。

川崎病の急性期では、冠動脈病変(冠動脈の拡大や瘤の形成)の発生を抑えるために、発熱などの急性期症状を早期に鎮静化することが治療目標とされているが、実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在し、そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もあることから、新たな治療薬の開発が望まれていた。

この高い医療ニーズを受け、同社は既存治療に効果不十分な急性期の川崎病患者を対象とした国内臨床試験を実施し、その結果、レミケード®の有効性ならびに安全性が認められた。

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川崎病は1967年に川崎富作博士が、小児の「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」として発表し、現在は「川崎病」という病名になった。

川崎病は主に4歳以下の乳幼児に発生し、次の6症状のうち、5つを満たせば川崎病と診断する。

1. 5日以上続く発熱(38℃以上)
2. 発疹
3. 両目の充血
4. 唇が赤くなり、舌の表面に苺のようなブツブツができる(いちご舌)
5. 初期に手のひらや足裏がはれあがったり、赤くなったりする。熱が下がってから指先や手全体の皮がむけることがある。
6. 首のリンパ節がはれる。


最も問題になるのは、冠動脈に炎症が起きて、冠動脈瘤ができてしまうこと。

原因が不明のため根本的な治療法はないが、症状を軽くしたり、冠動脈瘤ができないようにするために、いくつかの治療が行われている。

(1) 急性期
 a.アスピリンの内服
 b.γ‐グロブリン療法:冠動脈瘤をつくりにくくさせる
   γ‐グロブリンが効かない重症の場合は、ステロイド薬の投与や血漿交換療法を行うこともある。

 ◎実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在、
  そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もある。

  今回の承認取得により、既存治療では効果不十分な川崎病患者の治療選択肢が拡大した。

(2) 急性期以後
 冠動脈瘤ができた場合: こぶの程度に合わせてアスピリンの内服を続ける。
   巨大なこぶの場合、アスピリンに、別の抗凝固薬の内服を加える。

 血管が詰まってしまう可能性が高い人:
  血管バイパス手術や、カテーテルを血管に入れ、風船をふくらませて押し広げたり、
  血管の壁が厚くなって内腔が狭くなっているところを削る治療も行われている。

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抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(REMICADE、一般名:Infliximab)は、Johnson & Johnson の子会社 Janssen Biotech(旧 Centocor Biotech) が創製した関節リウマチ等の治療薬で、1993年に田辺製薬が、日本及びインドネシア、台湾における本剤の開発・販売に関する契約を締結し、2002年にクローン病治療薬として日本での販売を開始した。
(田辺製薬は2007年10月1日に三菱ウェルファーマと合併し、田辺三菱製薬となった。)

田辺三菱製薬は、Unmet medical needs に応えるため、稀少疾病を含めた各種難病に対するレミケードの開発と適応性の拡大に取り組んでおり、今回の川崎病を含め13の適応症を有している。

適応症 承認時期
クローン病 2002年1月
関節リウマチ 2003年7月
べーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎 2007年1月
尋常性乾癬 2010年1月
関節症性乾癬
膿疱性乾癬
乾癬性紅皮症
強直性脊椎炎 2010年4月
潰瘍性大腸炎 2010年6月
腸管型ベーチェット病 2015年8月
神経性ベーチェット病
血管性ベーチェット病
川崎病(急性期) 2015年12月


なお、本剤は2012年に「難治性川崎病」に対して希少疾病用医薬品に指定されている。

希少疾病用医薬品は、次の指定基準に合致するものとして指定される。
希少疾病用医薬品の指定が、直ちに製造販売承認に結びつくものではない。

  1. 当該医薬品の用途に係る対象者の数が、本邦において5万人未満であること。

  2. 医療上の必要性
     
    • 代替する適切な医薬品・医療機器又は治療法がないこと。
    • 既存の医薬品・医療機器と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。
  3. 対象疾病に対して当該医薬品を使用する理論的根拠があるとともに、その開発に係る計画が妥当であると認められること。


Samsung BioLogicsは12月21日、韓国Incheon Free Economic ZoneのSongdo(松島)で同社3番目となるバイオ医薬品受託生産プラントの起工式を挙行した。
起工式には、サムスン電子の李在鎔副会長ら500人以上が参加した。

第3プラントは総投資額8500億ウォンをかけ、生産能力(18万リットル)と生産効率の両面で世界をリードする設備になる。
同プラントは2017年までに完成する予定で、検証後、2018年の第4四半期に操業を開始する。

同プラントが操業を開始すれば、Samsung BioLogicsの総生産能力は36万リットルとなりスイスのLonza(26万リットル)、ドイツのBoehringer-Ingelheim(24万リットル)を抜き、世界最大のバイオロジクスの受託生産機関(CMO)になる 。

第1プラント 3万リットル 最近米FDAから正式に生産認可
第2プラント 15万リットル 2016年3月に操業開始の予定
第3プラント 18万リットル 2018年の第4四半期に操業を開始
合計 36万リットル


第1プラントでは、FDAから品質安全性など3つの核心基準ですべて「無欠点」通知を受けた。

同社のCEOは、「われわれは、飛躍的に成長している市場であるバイオ医薬品の安定供給を行うため、そして世界のバイオ医薬品会社からの生産需要に応えるため、第3プラントに投資している。世界最大の生産能力と年中無休の稼働能力によって、この第3プラントは世界クラスの品質と生産性を誇ることになるだろう」と語った。

第3プラントが全面稼動すれば、年間売上高2兆ウォン、営業利益1兆ウォンを達成できるとみている。
同社は長期的には、さらに第4、第5プラントに投資することによりCMO事業を継続的に拡大していく計画である。

Samsungによると、第3プラント着工を決めたのは、「半導体成功神話」をバイオ医薬品受託生産分野で再現できるという自信からという。

「30年前にサムスンが半導体投資決定をした当時、主要電子企業が自主的に半導体を生産していたため成功するかどうか心配されたが、結局、世界市場はサムスン電子など専門企業中心に変わった。」

この4年間、バイオシミラー(バイオ後続品)開発などを通じて、「ライバル企業が追うことができない果敢な攻撃投資で後発企業をかわした半導体の成功方程式がバイオ医薬品でも可能だ」という結論を出した。

半導体プラントの設計と建設で得たノウハウをバイオ工場に移植した。

今回の第3 プラント(18万リットル)の建設費は8500億ウォンで工事期間は35ヶ月。
これに対しAmgen
は9万リットル規模で10億ドル(約1兆1000億ウォン)、41ヶ月。
1リットル当たりの建設費は40%弱で、工事期間も短い。


第3 プラントはバイオ医薬品工場では初めて365日稼働が可能なシステムを整える。

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三星グループは2010年5月11日に新事業戦略を発表した。

2010年3月に経営の第一線に復帰した李健煕会長主宰で新事業関連社長会議を開き、確定したもので、未来の新事業は、太陽電池、自動車用電池、発光ダイオード(LED)、バイオ製薬、医療機器の5つ、2020年まで23兆3000億ウォン(約1兆9000億円)を投資するというもの。(うち、バイオ医薬には2兆1000億ウォン)

  2010/5/12 三星グループの新事業戦略

三星グループは2011年2月25日、遺伝子組み換え技術などを使うバイオ医薬品事業に新規参入すると発表した。

第1弾として受託生産事業に乗り出すため、米Quintiles Transnational Corp. のJVのSamsung BioLogicsを設立した。
サムスン電子とグループの持株会社
Samsung Everlandが40%ずつ出資し、Samsung C&TとQuintilesが各10%出資した。

2011/3/7  サムスン・グループ、バイオ医薬品事業に進出

Samsung Everland は2015年9月1日に三星物産と合併し、三星物産となった。

現在のSamsung BioLogics の出資比率は、サムスン電子が46.8%、三星物産が51.0%、Quintiles Transnationalが2.2%となっている。

2011年5月に松島に生産施設と研究センターの建設に着工した。

2013年に、Bristol-Myers Squibb とRoche との間でバイオ医薬品の製造受託契約を締結した。

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Samsung BioLogicsは2011年12月、バイオシミラー(バイオ医薬品後発薬)の生産のため、米国のBiogen と合併会社 Samsung Bioepis 設立の契約を締結した。

出資比率はSamsung BioLogicsが85%、Biogen が15%であったが、現在はそれぞれ 91.28%と8.8%となっている。2016年から大量生産する予定。

同社はMerck とも開発で提携しており、両社は2015年9月8日、TNFα阻害薬「ブレンザイス」(一般名=エタネルセプト)が韓国で承認を取得したと発表した。

韓国のSK証券はBioepisの売上高が2022年に1兆2000億ウォン、営業利益は5400億ウォンになると見込んでいる。

厚生労働省は12月18日、顔料の原料を製造する国内の化学メーカーの工場従業員と退職者の計5人が膀胱癌を発症したと発表した。

問題の工場は三星(みつぼし)化学工業の福井工場で、12月3日、工場の従業員約40人のうち47〜56歳の男性4人と、約12年前に退職した43歳の男性1人が 膀胱癌を発症したと労働局に報告した。5人の勤務歴は7年半〜24年で、2014年2月〜2015年11月の診察で判明した。


工場では膀胱癌を引き起こすとの指摘があるオルト−トルイジンのほか、発がん性が指摘されるオルト−アニシジン、2、4−キシリジン 、パラ−トルイジン、アニリンの計5種類の芳香族アミンを使用、ドラム缶に入った芳香族アミンの液体をポンプを使って反応器に移し、他の物質と合成して 染料や顔料の中間体を製造していた。

厚労省によると、「芳香族アミンには、問題が起きて製造禁止になっている物質もあるが、オルト―トルイジンなど5物質については、国内でがんの報告は初めて。」

同社ではこの物質の危険性を認識し「防じん・防毒マスクはして換気もしていた」と説明しているが、厚労省は「どこかで漏れがあったと判断せざるを得ない」としている。5人には労災申請を勧めている。

福井新聞によると、一人の男性は、18年余り、福井工場に勤務。オルト―トルイジンからつくった粉末状の物質を袋詰めする作業や、機器の修理の際に機器にこびりついた粉末の結晶をへらで落とす作業に従事し 、「作業が終わると顔が(粉で)真っ白になった」と振り返る。

工場では、芳香族アミンの動物への発がん性を指摘する文書が約4年前に従業員に配布され、この男性は「みんなびっくりした」と話し、「そのときから粉じんにさらされていることを上司に言い続けてきたが、会社は『今まで通りやれ』と言うだけだった」と憤った。

作業実態や発生原因について所轄の労働局・労働基準監督署及び労働安全衛生総合研究所で調査を行っている。


厚労省は、予防的観点から、12月18日、日本化学工業協会及び化成品工業協会に対して、芳香族アミンによる健康障害の防止対策の適切な実施を要請した。

また、緊急対応として、当該事業場で取り扱われている芳香族アミンのうち、膀胱癌との関連があるとされているオルト-トルイジンを取り扱う事業場として厚労省が把握している 約40事業所を対象に、防毒マスクの着用など労働者のばく露防止と健康管理の徹底が図られるよう、労働局・労働基準監督署による調査・指導を実施する。

ーーー

三星化学工業は1953年設立で、有機顔料中間体をコア事業とし、医農薬中間体や写真薬、機能性色素など様々な分野に事業を展開して いる。

福井のほか、相馬、埼玉に工場を持つ。

福井工場 アセト酢酸アニライド系化合物の製造 (有機顔料中間体)
相馬工場 アミノベンゼン系化合物、フタルイミド系化合物、アセト酢酸アニライド系化合物の製造
埼玉工場 顔料、写真薬、医薬、農業等の中間体の開発、製造

福井工場で取り扱う芳香族アミンは下記の通り。

用途

有害性情報

IARC(国際がん研究機関) 日本産業衛生学会 ACGIH(米国産業衛生専門家会議)
オルト-
トルイジン
染料・顔料の中間体原料、エポキシ樹脂硬化剤原料 グループ1
(ヒトに対して発がん性がある)
発がん分類 2A
(ヒトに対しておそらく発がん性がある)
許容濃度 1ppm
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
TLV-TWA 2ppm
オルト-
アニシジン
染料中間体 グループ2B
(ヒトに対する発がん性が疑われる)
発がん分類 2B
(ヒトに対する発がん性が疑われる)
許容濃度 0.1ppm
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある) 
TLV-TWA 0.5mg/m3
2, 4-
キシリジン
染料・顔料中間体 グループ3
(分類できない)
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
※Xylidine(異性体混合物)について
p-トルイジン 顔料中間体・農薬合成原料 評価なし 発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
TLV-TWA 2ppm
アニリン ウレタン中間体合成原料、染料・ゴム製造用薬品・医薬・農薬合成原料 グループ3
(分類できない)
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある) 
TLV-TWA 0.5ppm skin


安衛法上の位置付けは、いずれもSafety Data Sheet 交付対象物質で、当該物質を取り扱う事業者は、労働安全衛生法第28 条の2に基づき、化学物質による危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)等の実施に努めること、労働安全衛生規則に基づく一般的健康障害防止措置を講ずることが求められる。


Dow Chemical と DuPontは12月11日、対等で経営統合すると発表した。

Dow も DuPont も、物言う株主から事業分割などドラスティックな手段による企業価値の向上の要求を受けていた。

両社とも、不採算事業のみならず、儲かってはいるが将来の成長が見込めない等の事業についても売却したり、スピンオフしてきたが、経営改革を迫る「物言う株主」から対応が遅いと批判されていた。

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表

欧米では上場企業の経営者は、株主からの更なる成長、更なる収益性の向上による株主価値の増大を常に求められる。
それに対応できない場合、株価が下落するだけでなく、物言う株主からは退任を求められる。

DuPontのEllen J. Kullman 会長兼CEOは10月16日に退陣したが、物言う株主からの事業改革の要求を株主総会で辛うじて退けたが、これまでのやり方で収益が悪化することが分かり、退陣した。

特に、景気変動に影響が受けやすい事業や、石油化学などのように原油価格などの変動で損益が大きく左右されるような事業の継続は、それ相当の理由があり、実際に対応できる案がある場合を除き、正当化されない。

原油価格が上がったとか、不景気で業績が悪化したというのは株主にとっては関係ないこと。
そんな事業はさっさと止めろ。
事業を続ける場合、うまく対応して株主価値を上げるのが経営者の使命であり、それが出来ないなら辞めるべきだという考え方。

このため、欧米の化学会社は抜本的な対策をとってきている。

最も早いのはICIであった。

1997年に同社は事業を化学品のなかでも、付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決めた。1997年7月、ICIは英蘭系Unileverの特殊化学品4社を買収し、同時に既存事業を順次分離・売却していった。

2006/3/7 ICIの抜本的構造改革

2007年8月にAkzoはICIを買収することで合意した。
1926年に設立され、高圧法ポリエチレンを開発した名門 ICI は消え去ることとなった。多岐に亘った事業がバラバラにされ、元のICIは跡形もなくなった。

2007/8/13 Akzo が ICI を買収

Bayerは、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場したが、更に2015年9月1日にMaterial Science 部門をCovestro として分離し、今後は完全にLife Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力することとした。

2014/9/22 Bayer、ライフサイエンス事業に注力、MaterialScienceを分離、上場

2015/9/2 Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立

BASFは2009年にスイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収、今後はスペシャリティケミカル分野を拡大し、主導的地位を高めるとした。
一方で、
Dowとともに世界のリーダーであったポリスチレン事業を
2011年10月に IneosとのJVのStyrolutionに統合、2014年11月にその持分をIneosに売却し、同事業から撤退した。

2009/4/6 BASFCiba買収承認

第二次大戦前に I.G. Farben を構成していた3社のうち、Hoechst は医薬会社のSanofi Aventis となっている。
(買収したCelanese を再度分離し、Rhodia を分離したRhone Poulenc と合併して Aventis となり、フランスのSanofi Synthelaboと合併した。)

石油化学については、Dowだけが他社と異なる政策をとる。

同社は"asset light" strategy (JV化)を採用し、石油化学を継続しながら、そのリスクを軽減する方策をとった。

Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが最初だが、2007年にクウェート国営石化会社 PIC との間でグローバルな石化JVを設立すると発表した。

他方、Saudi Aramco とのJVででサウジのJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設することとした。

その後、米国でのシェールガスの優位性が明確になり、米国については自ら石油化学事業を再興する方策をとった。
安価なコストのエタン、プロパンを原料に、原油価格に左右されない状況が確保できたと考えたもの。

PICとのグローバル石化JVは土壇場でPICが方針を撤回して破断となったが、これが結果としては有利に働いた。
2013年5月に、PICから損害賠償として 22億ドルを受け取ったのに加え、JVに出すはずであった米国事業が原料安で収益性が増大した。

2014/7/2 Dow Chemicl、新エチレン設備の建設着工

Dow を除く多くの企業が石油化学から離脱するなか、IneosBasell (その後 Lyondellと合併し、LyondellBasell)のような個人企業がこれらを取得し、世界中で拡大していった。

株主の意見に左右されないため、購入した企業を担保に新しい企業を購入する形で拡大した。
当然、
グローバルな経済危機の影響を受けると、販売が激減し、借入金の返済が行き詰まり、苦境に陥るが、なんとか、克服してきている。

2009/7/20 Ineos、75億ユーロの借入契約条件変更に成功 

ーーー

日本についてはどうであろうか。

本ブログでは2007年末の「回顧と展望」で、2007年は石油化学業界にとって激動の年であったとし、原料価格の高騰による採算悪化を背景に欧米各社は「選択と集中」を一層進めたが、そのなかで日本のみが、この激動の蚊帳の外であるとした。

「日本の石化事業もガラパゴスのように『危機遺産』とならなけばよいが」としている。
 

2007/12/26 2007年回顧と展望 「ガラパゴス鎖国」論


2015年に住友化学が千葉のエチレンやSM/POなどを停止、京葉エチレン(3月に三井化学が離脱)にエチレンを依存することとした。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退

三菱化学と旭化成は2016年4月に水島地区でのエチレン共同生産の三菱化学旭化成エチレンを設立することを決めた。
旭化成の年産 50万トンのエチレン設備は廃棄し、三菱化学の50万トン設備をを57万トンに増強する。

2015/5/29 水島地区エチレン設備運営会社 

なお、三菱化学は鹿島1の390千トンを2014年の定期修理をもって停止している。

2012/6/27 三菱化学、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革 

しかし、エチレン能力は700万トンを若干切る程度であり、2014年の生産実績を上回り、日本の内需をはるかに上回る。


欧米では、
石油化学は景気変動に影響が受けやすいこと、原油価格などの変動に左右されることが問題視されているが、日本ではこれに加え、次のような問題点がある。

1) コストの高いナフサを原料とし、(原油価格が下がっても)国際競争力はない。

   昭和電工 新中期経営計画


本図は、原油が100ドルから50ドルに下がり、エチレンコストが下がるような印象を与えるが、その保証はなく、仮にこれで意思決定を行うとすれば誤りである。

2) 内需は減少しており、人口減も考えると、さらに減少すると見込まれる。
  他方、中国の増産に加え、サウジなどで汎用品以外の製品も生産を始めるため、輸出も減少する。

3) そのなかで、過剰能力を抱え、過当競争が行われている。

4) 輸入品の圧力で、アルミやメタノールがずっと昔に全滅したが、PEやPPのような合成樹脂はいまだに存続している。
 これは、競争力があるためではなく、余りにも不合理な慣習のため、輸入品では採算が取れず、海外から入ってこないだけである。

・需要家の必要とする機能を満たすため、高機能化を推進しており、自動車初め、需要業界に大きな貢献をしている。

 しかし、欧米と異なり、高品質化のための追加コスト(開発費等)を請求できていない。
 グレード数が大幅に増え、頻繁なグレード切替(切替時にオフスペックが発生)で製造面でもコスト高となっている。
 連続生産による大量生産のメリットが得られていない。

・米国では前月に注文を受け、連続生産し、90トンローリー貨車で輸送するのが一般的で、包装品や小口輸送はコンパウンダーが行う。
日本ではJust-in-time 方式が普通で、前日に注文を受け、ほとんどが包装品をトラックで輸送している。


このような状況下で、株主に対し、石油化学事業への注力をどのように説明できるのか。

三菱ケミカルは12月9日の説明会で国内の石油化学の方針を次のように述べている。

  石化原料:

• 2016年の水島エチレンセンター統合によりクラッカー構造改革を実施
• 国内需要規模に応じた供給体制を構築し、長期的な安定収益事業体質へ改善
• ユーティリティーの構造改革推進によりコストダウン実現

 要は縮小生産であり、更なる需要減もありうるし、コストダウンにも限界がある。

 ポリオレフィン:

• 生産の合理化を進めコスト削減
• 製品の高機能化を推進し、高付加価値製品の比率UP

各社とも同様であり、欧米なら、この説明で納得する株主はいないであろう。

日本の化学企業のうち、住友化学だけは石油化学の日本での継続について絵を描いている。

住友化学は千葉のエチレンを停止したが、今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とし、千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していくという方針で、不採算の誘導品は大胆に停止した。

高機能化で競っている日本はマザー工場としては最適である。

三菱ケミカルの小林社長(当時)は社長就任後の2008年7月の欧米での会社説明会で、「石油化学をなぜ止めないのか」と聞かれたという。
しかし、その後も株主を納得させる回答を行っていない。

実際に各社の株価は低迷している。

 三菱ケミカル発足時と同じ水準である。三菱化学2株を1株に変換しているため、実質ベースでは実際の株価の半値である。

 三菱(医薬あり)、住化(医薬、農薬あり)と異なり、石油化学品の比重が高い。株価は低迷。

 両社よりも上がっているが、下の日触と比べると、上昇率は低い。

 2003年比で4倍近い値上がりとなっている。


石油化学と同様に、
産業競争力強化法第50条に基づいて、調査報告がなされた石油精製産業では、出光興産と昭和シェルJXと東燃ゼネラル石油の統合が決まり、後者の場合は大胆な設備廃棄が想定されている。

医薬業界でも各社は大胆な対応をしており、武田薬品は売上高で大きな比率を占める「長期収載品」をTeva とのJVに出す。

日本の化学会社も、日本での石化原料や汎用樹脂などをどうするか、戦略を考える時期に来ているのではないか。

東京理科大学の伊丹敬之教授が述べている通り、日本の産業はエレクトロニクスから化学に、産業科学は物理学から化学に転換し、化学反応(例えば燃料電池)や化学素材(デジタル電子機器のフィルター、導光板、偏向膜など)が必須の部分として使われるようになっている。

論文 日本産業の化学化 参照

今後とも、各社が注力する高機能製品の原料として石化原料は必要だが、今のように各社が石化原料から一貫で生産する必要はない。


日本化学工業協会の小林喜光会長(三菱ケミカルホールディングス会長)は、12月22日の定例会見で、「海外ではダウとデュポンの合併やファイザーのアラガン社買収など、ダイナミックな動きが見られる。日本の各社も今の好業績に満足することなく、将来の発展に向けて、さらなる新陳代謝が必要だ」と力を込めた。


英製薬大手 GlaxoSmithKlineの子会社でPfizer と塩野義製薬が出資するViiV Healthcareは12月18日、米国のBristol-Myers Squibbから、開発中のHIV治療薬(最終開発段階のものと、臨床試験前の研究段階の一連のもの)を最大15億ドルで買収する契約を締結した。

最終段階の治療薬は下記を含む。
 現在、患者を対象とした
phase III 開発段階にある阻害薬 fostemsavir (BMS-663068) (2018年に承認申請予定)
 phase IIb 段階の成熟抑制剤BMS-955176
 予備の成熟抑制剤 (BMS-986173)

研究中のもの
 成熟抑制剤、アロステリック
インテグラーゼ阻害剤、キャプシド禁止剤の3つの機能を併せ持つ生物剤
(BMS-986197)

ViiV HealthcareはBristol-Myers Squibb の研究員も受け入れる。

買収対価は、最終段階のものが一時払い 317百万ドルで、商業販売開始後に最大 518百万ドル+ロイヤリティ。
研究段階のものは、一時払いが33百万ドルで、販売開始後に最大587百万ドルとなっており、将来の販売実績によっては更なる支払もある。

 
今回の取引で、GlaxoSmithKlineは過半数株を保有するHIV事業の合弁会社、ViiV Healthcare のパイプラインを拡充できるようになる。
ViiVはHIV治療薬の市場シェアで米バイオ医薬品会社 Gilead Sciences Inc に次ぐ2位。

ViiV Healthcare は下記の変遷を経ている。

塩野義は2001年9月に、GlaxoSmithKline (GSK) との間で、両社の所有する複数の疾患領域における開発化合物を開発・販売することを目的とした合弁会社Shionogi-GSK Healthcare を設立した。

2002年8月に、両社はこのJVでHIV インテグレース阻害薬に関する共同研究を開始した。

2009年10月に、GSKとPfizerは両社のHIV 治療薬を供出し、英国にViiV Healthcareを設立した。(GSK:85%、Pfizer:15%)
GSKはShionogi-GSKHealthcareの持分をViiVに譲渡し、名称をShionogi-ViiV Healthcareと改称した。

2012年10月に塩野義はJVの50%持分をViiV Healthcareに譲渡し見返りにViiV Healthcareの10%の権利を取得した。
塩野義は、
知的財産の権利(50%持分)は継続して保持し、ViiV に供与、ドルテグラビル及び関連製品の販売高に応じ、平均10%台後半、一部地域では20%台前半のロイヤリティーを得る。

2012/11/2 塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更


GlaxoSmithKlineの歴史は下記の通り。



SmithKline BeckmanとBeechamが合併して SmithKline Beecham
Glaxo とWellcomeが合併して Glaxo Wellcome

1998年にSmithKline BeechamとAmerican Home Products が合併合意破談
SmithKline Beecham Plc とGlaxo Wellcome Plc が合併合意破談

2000年にSmithKline BeechamとGlaxo Wellcomeが再度合併に合意し、Glaxo SmithKline となる。

2014年1月に、PfizerがAstraZenecaに対する買収提案を行った。

買収目的の一つが買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するという「効果的な租税負担を構築する」ことであった。

これに対しAstraZenecaは、コスト節約と節税という財務面での利点がPfizerの買収の主な動機になっているようだと指摘、戦略上の魅力を感じなかったとして、この提案を拒否、Pfizerは買収断念を発表した。

Pfizerは2015年11月23日、アイルランドに拠点を置く同業のAllergan との合併で合意し、この目的を果たした。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案


AstraZenecaはその後、事業買収や提携で急速に事業を拡大している。

1. AstraZenecaは2015年2月5日、Actavis Plc から米国とカナダの呼吸器疾患薬事業を買収する契約を締結した。
現金6億ドルでの買収で、他に低率のロイヤリティを支払う。

2. 富士フイルムと協和発酵キリンは2015年7月24日、両社の共同出資会社協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)が開発中のバイオ後続品(バイオシミラー)で、英 AstraZeneca と提携すると発表した。


2015/7/27 富士フイルム協和発酵キリン、バイオシミラー医薬品の開発・販売で AstraZeneca と提携
 

3. AstraZenecaは11月6日、米のバイオ医薬品会社 ZS Pharma を27億ドルで買収すると発表した。
主力の高脂血症治療薬
Crestor ®の特許が米国で切れたことを受け、心疾患治療薬のポートフォリオ拡充を目指す。

2015/11/12 AstraZeneca、米製薬会社 ZS Pharma を27億ドルで買収

AstraZenecaは12月16日、中国の医薬品開発受託大手、薬明康徳新薬開發(WuXi AppTec) と提携し、中国でのバイオ医薬品事業を強化すると発表した。

薬明康徳新薬開發(WuXi AppTec) は2000年12月の設立で、中国及びアメリカを拠点とする医薬品・生物医薬品・医療機器業務を取り扱う世界有数の受託会社。技術革新主導型、顧客志向の会社として、創薬研究及び開発プロセスにおける広範で統合型のサービスを提供している。

両社で中国向け製剤を共同開発し、薬明康徳の生産拠点を買収する権利も取得する。
薬明康徳のバイオ医薬品の生産拠点に総額1億ドルを投じる計画

AstraZenecaの米子会社 MedImmune と薬明康徳の合弁会社が開発中の製剤の開発のスピードも上げ、炎症や免疫治療での用途を見込む。

AstraZenecaは2007年4月23日、米バイオテクノロジー会社 MedImmune, Inc.を150億ドル以上で買収することで合意したと発表した。

MedImmune は2012年9月10日、薬明康徳新薬開發との間で、自己免疫疾患と炎症性疾患に用いる新規の生物製剤 MEDI5117 を中国で開発、販売するためのJVを設立すると発表した。

MedImmune は技術開発を担当、薬明康徳新薬開發は登録、臨床試験、製造を担当する。

更に、中国での従来型の低分子医薬品の研究設備にも5千万ドルを充て、競合が激しい同分野で研究開発力を高める。

5. AstraZenecaは12月16日、 武田薬品の呼吸器系疾患領域事業を5億7500万ドルで買収することで合意した。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬ダクサス(一般名:roflumilast、武田が買収したナイコメッドの画期的新薬)、呼吸器疾患治療剤 アルベスコおよびアレルギー用点鼻薬オムナリス(一般名:ciclesonide)を含む呼吸器系疾患領域事業を取得する。

各国・地域で販売されている同領域の製品や複数の前臨床段階にある化合物も移管される。
移管の完了にあたり、一定数の従業員がAstraZenecaに移籍する。

武田は2014年に、消化器系疾患領域、オンコロジー、中枢神経系疾患領域、代謝性・循環器系疾患領域を4つの重点疾患領域と定めている。

なお、AstraZeneca米国でroflumilastを「Daliresp」の商品名で販売している。上記のActavis から取得したもの。

6. AstraZenecaは12月17日、オランダとカリフォルニアに拠点を持ち、癌関連の薬を開発する私企業 Acerta Pharma の株の過半を40億ドルで買収することで合意した。

先ず、Acertaの55%を25億ドルで買収する。
Acertaの開発している血液癌治療用の薬 acalabrutinib が米国で承認された時、又は2018年末に、15億ドルを支払う。

AstraZenecaは更に、欧州と米国での同剤の承認後に、残りの株を30億ドルで買収するオプションを持つ。

同社では、同剤の年間売上高が世界中で50億ドルを超えると期待している。


AstraZenecaはICIから独立したZenecaとスウェーデンのAstraが統合したもの。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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