「no」と一致するもの

昨日の記事の通り、欧州の塩ビ業界は供給過剰による困難に直面しており、塩ビ業界での名門のSolvayが将来の撤退を前提にINEOSとの塩ビ事業統合を決めたが、TotalグループのArkemaは2012年7月 に塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した 。

 2011/11/30 Arkema、塩ビ関連事業を売却

Klesch Groupは1990年にスイスで設立されたコモディティ事業の企業で、メタルと石油を扱う。
メタル部門はオランダに精錬能力165千トンのDelfzijl BV (ALDEL)を持つ。

プラントはリストラなしで移管、従業員はそのままとし、Arkemaから経営陣を派遣、Klesch Group の下でこれを欧州の塩ビ産業のリーダーとするとしていた。

この取引では赤字の事業をリストラなしで引き取ってもらうため、売る側のArkemaが買い手のKlesch Groupに100百万ユーロを支払う。
これを含めてArkemaは2011年に470百万ユーロの費用を計上した。

Arkemaは残る2つのスペシャルティ部門(Industrial Chemicals、Performance Products)に集中する。

新しいPVC会社はKEM ONEと名付けられた。

Klesch Group は同社を電解~PVCまでのKem One SASと、コンパウンド、窓枠、塩ビ管を扱うKem One Innovative Vinyls SASの2社に分離した。

同社の概要は以下の通り。

能力(千トン)
塩素 660
苛性ソーダ 730
VCM 870
PVC 870
コンパウンド 170
窓枠 35
塩ビ管 45

 

  Vauvertで岩塩から塩水をつくり、近くのFos-sur-Mer とLavéraにダクトで送る。

Fos-sur-MerとLavéraで塩素/ソーダ、VCMを製造、BalanとSaint-AubanでPVCを製造する。

他に、下記にコンパウンドや塩ビ安定剤の工場を持つ。

 メキシコ   Resinoplast North America
 埼玉   昭島化学工業
 江蘇省常熟市
    Changshu Resichina Engineering Polymers
 Vietnam 
     Resinoplast Vietnam

 



本年3月、Klesch Group はArkemaに対し、310百万ユーロの損害賠償を求めた。

塩ビ事業の売買に当たり、PVC資産について正しい財務情報を開示しなかったというもの。

塩ビ事業を取得し8か月経つが、取引に際してArkemaが開示した財務情報と現在の状況に著しい差が見付かったとし、これらが分かっておれば、あの条件での取引はなかったとしている。

またArkemaが経営陣を派遣するとしていたが、すぐ辞めてしまったとしている。

その後、これまで数か月交渉したが効果がなかったとし、310百万ユーロの賠償を求め、正式に調停を申請した。

3月27日、上流のKem One SASが親会社の Klesch の要請で破産申請した。
下流のKem One Innovative Vinyls SASは"satisfactory".とされている。

ArkemaはKleschの主張を全て否定した。

数か月交渉したという事実も無く、交渉段階でKleschは全ての情報にアクセスできた。
取引は完全な透明性のもとで行われ、証明できる。

問題はKleschがKem Oneを上流と下流の2つの企業に分断したことにあるとし、以下の通り述べている。

塩ビ事業を売却する際には、電解、VCM、PVCからコンパウンド、窓枠、塩ビ管までのパッケージとした。
一貫して運営することがKem Oneの将来の成功のためのキイであった。

スタート時にはKem Oneは健全なバランスシートで、借入金はなく、100百万ユーロの現金の寄付もあった。
KleschはKem Oneのニーズに合った資金計画作成を約束していた。

しかし、Kleschは一方的に上流と下流に分断し、必要な資金を供給しなかった。

Arkemaには現時点でKem Oneへの債権が65百万ユーロと、第三者への保証債務 60百万ユーロ、合計125百万ユーロが残っている。


ArkemaはKleschに赤字事業を押し付けた積りであったが、高くつく恐れがある。

ーーー

欧州塩ビ業界では他に、投資会社のAdvent International が塩ビ子会社 Vinnolit の売却先を探す努力を続けている。
欧州の住宅建築のスローダウンで窓枠やドア材などの塩ビ製品の販売が停滞しているのが理由。

Vinnolit はHoechst とWacker のJVであったが、2000年にAdvent International が買収した。

2007年にVinnolitはINEOSから
ペーストPVC(Emulsions-PVC)事業を 買収した。
英国のHillhouseとドイツのSchkopauのペーストPVC工場を買収するとともに、INEOSのイタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量の引取り権も得た。

Vinnolit の状況は以下の通り。

能力(千トン):

PVC 780
VCM 665
Caustic soda (100%) 475

工場:

立地 製品   VCM
ドイツ Cologne Microsuspension (paste) PVC
Suspension PVC
Wacker Chemie工場内 鉄道輸送
Knapsack 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Hoechst 工場内 自製
Gendorf 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Emulsion PVC
  自製
Burghausen Suspension PVC
Emulsion PVC
Wacker Chemie工場内 Gendorf からパイプ輸送
Schlopau Emulsions-PVC Dow ValuePark内
(旧INEOS)
Dowからローリー輸送
英国 Hillhouse Emulsions-PVC
Microsuspensions-PVC
(旧INEOS) INEOSのRuncornからローリー

 

 

SolvayとINEOSは5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。
今後、従業員の代表と協議した後、正式契約を締結する。

この覚書には将来のSolvayのJVからの撤退について記載されている。JV設立から4年から6年の間にINEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするというもの 。

買取価格はREBITDA(経常損益+支払利息+減価償却・減耗費)の平均の5.5倍となっており、SolvayはJV発足時に前渡し金として250百万ユーロを受け取る権利を持つ。

2012年実績ベースでは合計のREBITDAは257百万ユーロとなっており、この5.5倍では1,414百万ユーロとなる。

欧州の塩ビ事業は2007年以来、需要が30%も下落し、輸出も今後減少する見込みで、大幅な供給過剰が予想されており、シェールガス革命の恩恵を受ける米国との原料価格差も今後拡大する。

このため、2012年にTotalグループのArkemaが塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した。本件のその後は別記。

そのなかで Solvayは2011年にRhodiaの友好的買収を行い、スペシャルティ化を推し進めており、これはその一環である。
今後、石油・ガス用の特殊ポリマー、水及び健康分野、消費者用化学品(肌ケア、毛髪ケア)などに投資する。

ーーー

統合対象は欧州のクロルアルカリと塩ビ事業で、詳細は下記の通り。

  2012年売上高 対象 対象外
Solvay 19億ユーロ Solvin
(Solvay 75%, BASF 25%)
・塩化ビニリデン
RusVinyl(ロシアのSiburとのJV)
Solvayのクロルアルカリプラント Povoa、Bussi、Torrelavega
製塩プラント(Tavaux、Martorell、 Jemeppe)  
欧州の塩素誘導品
(エピクロルヒドリン、CLM、塩酸、Hypo)
 
フランスFevzinのエチレンの42.5%
(残りの出資はTotal)
 
Ineos 24億ユーロ Kerling
(Ineos ChlorVnyl)
ノルウェー Rafnesのエチレンの50%
(残りはIneos)

Solvayの統合対象は欧州の塩ビ事業だけであり、アルゼンチンとブラジルに工場を持つ子会社のSolvay Indupa とタイのJVのVinythaはSolvayに残る。

KerlingはINEOSの塩ビ事業子会社。

1986年にICIとEniChemが50/50の塩ビ事業JVのEVCを設立した。
2001年にINEOSがEVCの過半を買収、更にICIから塩素化学事業を買収した。
2005年にEVCを100%子会社とした。
  
2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社

INEOS は2007年にNorsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を買収し、INEOSの塩ビ事業をKerlingとした。

INEOSは2011年にベルギーのTessenderloに本拠を置く Tessenderlo Groupから塩ビ関連事業(LVM)を買収した。
 

 統合により、2012年の決算数値ベースでJVの売上高は43億ユーロとなり、PVC能力で信越化学に次ぐ世界第二位となる。


 

 



旭化成

ケミカルズは減益とはなったが頑張っており、住宅と医薬・医療が好調で、若干の減益で止まった。

2014年3月期については、ケミカルとエレクトロニクスの増益を見込む。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 15,984 1,229 1,182 603 5 6
2012/3 15,732 1,043 1,076 558 7 7
2013/3 16,666 920 951 537 7 7
前年比 934 -123 -124 -21    
2014/3 18,910 1,300 1,300 770 7 7

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト差
ケミカルズ 644 445 229 430 -216 -59 -53 -104
住宅 365 463 543 600 79 27 91 -39
医薬・医療 70 88 159 205 71 -29 162 -62
繊維 42 31 40 70 9 6 -9 11
エレクトロニクス 143 64 28 100 -36 -59 -40 63
建材 21 18 40 55 21 3 7 12
クリティカルケア     -37 -40 -37     -37
その他 17 30 22 15 -8   -8  
全社 -72 -97 -105 -135 -8     -8
合計 1,229 1,043 920 1,300 -123 -111 150 -164

 


同社の医薬・医療事業の概要は以下の通り。

医療用医薬品 1954年に日本初の国産の抗生物質を開発して以来、独創性の高い新薬を継続して提供している。
骨粗しょう症治療剤「エルシトニン」、排尿障害改善剤「フリバス」錠、抗うつ剤「トレドミン」、血液凝固阻止剤「リコモジュリン」など
診断薬 独自の酵素利用技術を活用した診断薬で健康維持に貢献
ヘルスケア製品 高濃度流動食や粘度調整流動食、栄養補給ゼリーなどの多彩な栄養補給製品を提供
透析 膜分離技術をもとに、人工透析に用いられる中空糸型人工腎臓を開発
アフェレシス
(血液浄化療法)
膜分離技術、吸着技術を用いた各種製品の開発から装置操作、高度な血液浄化治療システムの開発まで積極的に取り組む。
「プラノバ」 ウイルス除去フィルター
血しょう分画製剤やバイオ医薬品の製造工程でウイルスなどの病原物質を除去
輸血用
血液フィルター
超極細繊維の白血球除去フィルター


2012年4月に
米国の救命救急医療機器大手のZoll Medicalの買収を完了した。
同社関連の業績を、「クリティカルケア」セグメントで開示。

2012/3/19 旭化成、米国ZOLL Medical Corporationを買収

ーーー

日本触媒

2012年9月29日、姫路製造所のアクリル酸のタンクが爆発した。

ほとんどのプラントが停止、12月に一部プラントの使用停止命令が解除されたが、アクリル酸とそれを使ったアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)は下期全期間停止し、現在もまだ停止している。
メタアクリル酸およびメチルメタアクリレートについては、2013年4月30日に一時使用停止命令が解除された。

プラント停止に伴う減収減益と、他の製品の原料・製品の価格差等で大幅な減益となった。
なお、停止期間中の固定費は特別損失に振り替えている。

停止期間中の固定費を含む爆発火災事故に係わる損失(減収損失を除く)8,882百万円を特別損失に計上した。
保険金8,231百万円が入り、特別利益に計上している。

大幅減益となるため、法人税等は74億円減少となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 2,883 298 310 211 10 12
2012/3 3,207 311 331 213 11 11
2013/3 2,695 100 138 84 11 5
前年比 -512 -211 -193 -129 0  -6 
2014/3 3,000 150 180 120 8 8

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
基礎化学品 140 134 21 -113 150
機能性化学品 133 165 68 -97
環境・触媒 24 17 14 -2
全社 1 -5 -3 2
合計 298 311 100 -211 150

基礎化学品:アクリル酸、アクリル酸エステル、EO・EG、高級アルコール、その他
機能性化学品:高吸水性樹脂、無水マレイン酸、不飽和ポリエステル樹脂、その他

 

2014年3月期については、下期には姫路製造所の稼働が回復し、生産活動が本格化すると見込み、増収増益を予想している。

ーーー

帝人

炭素繊維を中心とする高機能繊維・複合材料と電子材料・化成品が赤字に転落、大幅減益となった。
ヘルスケアのみが好調で、全社の損益を支えている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 8,157 486 503 252 2 3
2012/3 8,544 340 343 120 3 3
2013/3 7,457 124 98 -291 2 2
前年比 -1,087 -217 -245 -411 -1  -1 
2014/3 8,300 250 230 80 2 2


特別損失に減損損失294億円を計上した。内訳は以下の通り(億円)

炭素繊維 日本・ノレン -173
ドイツ・機械装置 -31
米国・機械装置 -19
ヘルスケア 米国・ノレン等 -54
その他   -17

炭素繊維のうち、ノレンは2007年に東邦テナックスを100%子会社化した際の「のれん代」

長期化する景気低迷、またスポーツ・レジャー用途を中心とした競合激化の状況を踏まえ、将来キャッシュフロー予測に基づく回収可能性を慎重に検討して減損処理した。

2013/4/6    帝人、炭素繊維関連で減損処理

ヘルスケアは米国で在宅医療事業を営むBraden  Partners L.P. を2008年に114百万ドルで買収した際ののれん等の未償却残高の一部で、米国での医療制度改革で保険価格が大幅に引き下げられたこと等の環境変化で買収時に想定した収益性が見込めなくなった。
 
その他は2001年の洪水で被災したタイの子会社の工場の固定資産の一部等の減損損失。

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
高機能繊維・複合材料 44 72 -47 -119 35
電子材料・化成品 234 37 -19 -57 10
ヘルスケア 229 259 248 -11 250
製品 77 66 47 -19 50
その他 31 37 42 5 40
全社 -131 -131 -148 -16 -135
合計 486 340 124 -217 250


同社のヘルスケア部門には「医薬品」と「在宅医療」がある。

 医薬品:

骨粗鬆症治療剤は後発品を含む他社新薬の伸張で厳しい状況が続く。

そのなかで、痛風・高尿酸血症治療薬「フェブキソスタット」が国内・海外共に順調に販売を伸ばしている。

 在宅医療:

国内外で約40万人の患者にサービスを提供している。

 在宅酸素療法(HOT)用酸素濃縮装置
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療器:携帯電話網でモニタリング
 補助換気療法機器
 超音波骨折治療器 など

 

 

 

三菱ケミカルホールディングス

営業損益は前年比で403億円の減益となったが、石油化学(ケミカルズ、ポリマーズ)がほぼ同額の減益で、ともに損益ゼロとなっている。

製品と原料の価格差が1000億円もあり、石油化学がそのうち700億円。(ケミカルズでは主としてテレフタル酸関係)

エレクトロニクスアプリケーションズは前年に引き続き赤字。

ヘルスケアが好調で、全営業利益の80%強を占める。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 31,668 2,265 2,239 836 5 5
2012/3 32,082 1,306 1,336 355 5 5
2013/3 30,886 902 871 186 6 6
前年比 -1,196 -403 -466 -169 1  1 
2014/3 35,700 1,580 1,430 510 6 6

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト
削減
その他
ケミカルズ 530 148 -2 145 -150 -289 113 34 -8
ポリマーズ 550 238 1 225 -237 -429 73 82 37
エレクトロニクス
アプリケーションズ
10 -53 -51 -10 2 -45 -15 62 0
デザインド
マテリアルズ
365 256 225 450 -31 -62 -30  87 -26
ヘルスケア 851 764 749 800 -15 -194 153 6 20
その他 45 61 65 50 4   0 13 -9
全社 -86 -108 -85 -80 23     12  11
合計 2,265 1,306 902 1,580 -403 -1,018 294 296 25

注 エレクトロニクス・アプリケーションズ:記録材料、電子関連製品、情報機材
   デザインド・マテリアルズ:食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、
                   複合材、無機化学品、化学製品


2014年3月期については、円高の修正による増益効果と、機能商品・素材分野における需要回復と拡販による増益を見込む。


田辺三菱製薬の業績は以下の通りで、薬価改定の影響はあったが、新製品6品目の伸びが大きく、純利益では5期連続の最高益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2012/3 4,072 690 688 390 15 20
2013/3 4,192 690 694 419 20 20
前年比 120 -1 6 29 5 0 
2014/3 4,170 700 715 440 20 20


三菱ケミカルホールディングスの田辺三菱製薬持分は56.34%であるため、営業損益、経常損益は全額が連結決算に反映されるが、当期損益ベースでは少数株主利益が控除され、持株比率分しか反映されない。

ーーー

三井化学

減収で大幅減益となった。

2012年4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発・火災事故が発生した。
レゾルシンは再建を断念し、事業撤退、メタパラクレゾールその他が長期休止した。

これによる販売減少が448億円ある。

営業損益は基礎化学品の交易条件差、数量差が大きく、大幅減益となった。

特別損益は事故損失49億円、事業再構築の減損損失56億円、関連事業損失41億円などがあり、受取保険金55億円などがあったが、差引100億円の損失となっている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 13,917 405 389 249 3 3
2012/3 14,540 216 229 -10 3 3
2013/3 14,062 43 92 -81 3 3
前年比 -478 -173 -137 -71 0  0 
2014/3 16,000 280 230 50 3 3

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 交易
条件 
数量差  固定費
石化 128 89 77 160 -12 -68 10 46
基礎化学品 204 86 -189 -140 -275 -247 -83 55
ウレタン -90 -146 -26 70 119 92 10 18
機能樹脂 72 82 84 105 2 -40 18 24
(加工品) 14              
機能化学品 100 116 124 155 7 -16 21 2
フィルム・シート   2 -33 -20 -35 -37   2
その他 1 1 -6 -50 -7     20
全社 -25 -15 12 27    
合計 405 216 43 280 -173 -316 -24 167


三井化学は機能化学品部門にヘルスケア材料事業部を持つが、三菱ケミカルの田辺三菱製薬、住友化学の大日本住友製薬のように損益に貢献するには至っていない。

同社では景気変動の影響を受けにくいヘルスケア材料事業の拡大を目指しており、本年4月に歯科材料事業を543億円で買収した。




TDKは4月26日、中国・広東省梅州市の梅州高新技術産業園区に希土類磁石の製造合弁会社を設立することを決めたと発表した。

同社は、自動車向けをはじめ、IT 機器などの各種エレクトロニクス機器、産業用機器向けに各種磁石を製造している。
特に、自動車、家電等、省エネ、環境対応が重要視されることに伴って「希土類磁石」の需要が世界的に急増すると見込まれる。

資源的にも限られている希土類材料の、より一層の安定供給を確保するため、中国に磁石製造の合弁会社を設立する。

社名 広東東電化広晟稀土高新材料有限公司
出資 TDK 59%
広晟有色金属 37%  希土類、タングステン製品の製造、販売
東海貿易 4%


エコカーなどのモーターには、高性能なネオジム磁石が使われている。
ネオジム磁石は日立金属
社員が発明した。

佐川眞人氏:大同特殊鋼顧問
ネオジム磁石のアイデアを見出し研究中の1982年に富士通を退社、住友特殊金属(現、日立金属)に移籍し1982年5月ネオジム磁石を作り上げた。



同磁石の世界需要は年1万~1万3000トンで、日立金属、TDK、信越化学工業の3社でシェアを独占している。
現在は3社とも日本だけで生産している。

ネオジム磁石は高温になると磁力が落ちる弱点があり、ジスプロジウム(Dy)を添加する必要がある。
ジスプロは中国でしか産出せず、高価である。

また、ネオジム磁石の基本特許は 20147月に期限切れを迎える。
ジスプロシウムの価格高騰と特許期限切れのダブルパンチにより、このままではネオジム磁石の国際競争力を失うことは必至である。

TDKは、中国がレアアースの輸出制限を始めたため、中国での磁石製造に踏み切ったが、以下の経緯がある。

ーーー

2012年4月に、日本経済新聞はTDKと昭和電工が中国で高性能磁石の合弁事業を検討していると報道した。

第1段階として昭和電工が計画する中国で3カ所目のレアアース合金工場の建設運営にTDKと現地の資源会社を加えて、5月にJVを設立する。

昭和電工は磁石の原料のレアアース合金を製造している。

2002年12月、中国のレアアースメーカーとのJVの包頭昭和稀土高科新材料有限公司を設立した。

社名 包頭昭和稀土高科新材料有限公司
所在地 内蒙古自治区包頭稀土高新技術産業開発区
出資比率 昭和電工 60%
東海貿易 5%
内蒙古包鋼稀土高科技股イ分有限公司 30%
中国冶金進出口総公司  5%
能力 年産1,000トン


2006年8月、中国のレアアースメーカーとのJVで贛州昭日稀土新材料有限公司を設立した。

社名 贛州昭日稀土新材料有限公司
所在地 江西省贛州経済技術開発区
出資比率 昭和電工 80%
東海貿易 10%
贛州虔東実業集団有限公司 5%
贛県紅金稀土有限公司  5%
能力 年産2,000トン(2007/9)⇒3,000トン(2011/7)


後者の増設完了で、秩父事業所(5,000トン)を合わせ、年産9,000トン体制を確立した。
同社では、今後の需要動向を睨み、年産10,000トン体制の構築を検討するとしていた。

第二段階はTDKの主導で高性能磁石の新工場をレアアース合金 工場に併設し、原料から製品までの一貫生産体制を作る。

総投資額は100~200億円で、具体的な内容は年末までに詰めるとしていた。

ーーー

しかし、経済産業省が2012年8月1日に輸出貿易管理令を改正し(7月13日議決定、高性能磁石とその製造装置、関連部品を規制対象に加え た。
輸出企業は磁石がミサイルなど大量破壊兵器に利用されないことを証明する必要がある。

外国為替及び外国貿易法の第48条は、
国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
としている。

今回、輸出貿易管理令別表第一の16(1)に、「焼結磁石等」を加えた。
なお、核兵器等の開発等のために用いられることがない場合は、許可が不要となる。

同省では、「国際的な合意を踏まえた安全保障上の見直しで、貿易制限が目的ではない」と説明する。

しかし、この時点での「焼結磁石等」の追加は、中国での合弁を止めさせるのが狙いである。

日本企業の動きに神経をとがらせ、中国企業との合弁は中国の「思うつぼ」であるとして、中国進出を思いとどまるよう、各社を説得したとされる。

それとともに、2012年3月13日に米国・EUとともに中国によるレアアースの輸出制限についてWTOに提訴した。
提訴対象にはレアアースのほか、タングステンとモリブデンも含まれる。

しかし、各社の動きが止まらないため、輸出貿易管理令に踏み切った。

磁石メーカーは、許可が得られない場合、「仮に装置を現地調達して工場をつくったとしても、顧客の開拓や設備の保守ができず操業できない」としている。

この結果、TDKと昭和電工は計画を断念した。

日立金属も別途検討していた計画を断念した。

輸出貿易管理令の改正に中国側は反発を強めているとされ、日本企業から中国への磁石半製品等の輸出が事実上のストップをうけていると報じられた。

ーーー

昭和電工の市川社長は2012年12月に開催した事業説明会で、レアアース合金事業のビジネスモデルを大きく見直す方針を示した。

中国磁石合弁工場は建設の見通しが立たず、日本向け輸出もままならないため、「2013年以降は中国で生産した合金は現地で販売したい」と語った。

日本経済新聞は、昭和電工のレアアース合金を使って高性能磁石を生産してきたTDKが、昭和電工に「それは裏切り行為だ」と食ってかかったと報じている。

これらの経緯を経て、TDKは今回、昭和電工とのJVではなく、独自での中国進出となる。

なお、同社は日中両国政府から合弁会社の設立、運営に必要な許認可が得られなければ「今回の合弁会社を解散する場合もある」としている。

これに対する経産省の対応が注目される。

ーーー

なお、高性能ネオジムは日立金属、信越化学、TDKの3社がシェアを独占しているが、この磁石の原料となる高品位のレアアース合金も、昭和電工、信越化学、三徳、中電レアアース の4 社が世界生産を独占している。

昭和電工は上記の通り、中国の2工場と秩父事業所(5,000トン)を合わせ、年産9,000トン体制を確立した。

ーーー

信越化学は合金と高性能磁石を武生工場で一貫生産している。

同社は2012年3月、中国福建省にレア・アースマグネットの中間原料であるマグネット用合金を製造する新会社、「信越(長汀)科技有限公司」を信越化学100%により設立した。投資額は15億円、生産能力は年産3,000トン。

生産する全量を日本に持ち込み、ハイブリッド車向けに需要が急増する高性能磁石の原料にする予定。

ーーー

三徳は早くも1948年にレア・アース分野に乗り出し、現在、原料から高純度化合物、各種合金まで一貫生産するレア・アース総合メーカーとして世界をリードする存在に成長した。

製造品目は、ネオジム磁石合金、サマリウム磁石合金、水素吸蔵合金、負極コイル、マグネシウム・リチウム合金、その他。

内蒙古・包頭市稀土高新技術産業開発区に包頭三徳電池材料、江西省ガン州市香港工業園に五鉱三徳ガン州希土材料有限公司を持っている。

2011年4月に米国アリゾナ州の子会社 Santoku America, Incを現金1750万ドルでMolycorpに売却した。

ーーー

中電レアアースは中央電気工業の100%子会社。

1990年に住友金属工業が米国のMolycorpとのJVで、住金モリコープを設立、Molycorpの日本のソールエージェントとなり、同社製品の輸入販売を開始した。
1992年に和歌山事業所を建設し、希土類磁石合金の製造、販売を開始した。

2007年に日立金属、アドバンスト マテリアル ジャパン及び中国の有研稀土新材料(66%)との合弁で、北京郊外にレアアース合金製造販売の廊坊関西磁性材料を設立。

2009年にはミクニ総業、エムアプリ他と合弁で(72%出資)、ハノイ近郊に Vietnam Rare Earth を設立した。
ベトナムでは、レアアース磁石製造工程で発生するスクラップから得た酸化物を電解してメタルとしている。

2009年12月に中央電気工業の100%子会社となり、中電レアアースに社名変更した。

同社は本年3月1日、Molycorpと磁石合金用レアアース酸化物の調達及び磁石合金用レアアースメタル委託製造に関する合意書に調印した。
Molycorpの酸化物をベトナムでレアアースメタルに加工する。一部はMolycorpからの受託となる。


BPは5月2日、同社主導のShah Deniz コンソーシアムがアゼルバイジャンのカスピ海沖のShah Deniz ガス田第2期のガスの欧州向け輸送ルートについて、2つのパイプライン会社からの正式提案の検討を開始したと発表した。

Shah Deniz ガス田第2期は世界最大級の天然ガス開発計画で、新設する4,000kmの南部ガス回廊(Southern Gas Corridor)を経由して欧州に送り、欧州のエネルギー安全保障に貢献する。

Shah Deniz コンソーシアムのメンバーは以下の通り。

BP 25.5% Operator
Statoil 25.5% ノルウェー
SOCAR 10.0% State Oil Company of Azerbaijan Republic
Total S.A. 10.0%  
LukAgip 10.0%  Eni & LUKoil (ロシア) JV
NIOC 10.0% National Iranian Oil Company
TPAO 9.0% Turkish Petroleum
 


Shah Deniz ガス田第1期は年産90億立方メートルだが、現在、第2期(年産160億立方メートル)の設計(FEED)段階にある。

2010年6月、トルコとアゼルバイジャンがこの天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
トルコが60億立方メートルを購入するのに加え、残り100億立方メートルを欧州など他国へ再輸出する権利を持つ。

本年3月末に2つのコンソーシアム、Nabucco Gas Pipeline International &Trans Adriatic Pipeline (TAP) から提案を受けた。この提案は現在は正式提案となっており、Shah Deniz コンソーシアムは南部ガス回廊のルートを2013年6月末に最終決定する。

トルコへの輸出開始は2018年、欧州へは2019年を予定している。

現在、欧州の15社以上の需要家から年300億立方メートル以上のオファーを受けており、今後販売先を決定する。

パイプラインルートついては、Shah Deniz コンソーシアムの基本構想は以下の通り。

1)South Caucasus Pipeline (SCP)

Azerbaijan とGeorgiaをつなぐSouth Caucasus Pipeline (SCP) に56インチのパイプラインを増設する。

2)Trans Anatolian Pipeline (TANAP)

トルコ国内はトルコ政府とアゼルバイジャン政府の交渉で新しくTrans Anatolian Pipeline (TANAP) 運営会社が設立された。
BPはこれを強く支持しており、TANAPに12%出資することを決めた。

トルコからは新設の2つのパイプラインで欧州に送り、既存のパイプラインに接続する。

3)Nabucco Gas Pipeline

Nabucco Gas Pipeline の建設計画は2002年に始まり、2009年7月13日には、トルコ、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、オーストリアの5カ国間で合意書に署名がなされた。
この5カ国にドイツを加えた6カ国のコンソーシアムであるNabucco Gas Pipeline Internationalが開発事業者である。

下記6社が各々16.67%の株式を保有する。

OMV オーストラリア
FGSZ ハンガリーMOLの100%子会社
Transgaz ルーマニア
Bulgarian Energy ブルガリア
Botas トルコ
RWE ドイツ


なお、Shah Deniz コンソーシアムがNabucco 採用を決めた場合、Shah Deniz コンソーシアムのメンバーのBP、SOCAR、Statoil、Totalの4社がNabuccoに合計で50%迄出資するオプションが与えられている。

南部ガスライン計画にはEUがバックアップするNabucco計画とロシアのSouth Stream計画が争っていた。


Nabucco計画は当初、トルコ東端から欧州までつなぐ計画であった。

現在はTrans Anatolian Pipelineができるのを勘案し、トルコとブルガリアの国境を起点とするNabucco West を検討している。


 

 

4)Trans Adriatic Pipeline (TAP)

 ギリシャからアルバニアを経由、アドリア海を渡ってイタリアに通じる全長800kmのパイプライン計画。

Trans Adriatic Pipeline (TAP) AG の株主は以下の通り。

EGL(Axpo子会社) 42.5% スイス
Statoil 42.5% ノルウェー
E.ON Ruhrgas 15% ドイツ


なお、Shah Deniz コンソーシアムがTAP 採用を決めた場合、Shah Deniz コンソーシアムのメンバーのBP、SOCAR、Statoil、Totalの4社がTAPに合計で50%迄出資するオプションが与えられている。

 

 

 


経産省は4月30日、「世界の石油化学製品の今後の需給動向」(対象期間2004~2017年)を発表した。

 

主要製品の状況及びそのうちの日本と中国の状況は以下の通り。

エチレン系製品合計
ーーー
エチレン需給
ーーー
 付記
 
   中国についてはLDPEの生産が能力を上回るという状況になっている。
これについて、 当方からの質問に対しMETIは以下の通り述べている。

LDPEとHDPEのスイングプラントについて、生産能力の比率を1:1にしています。
仮に、あるプラントのLDPEとHDPEの生産実績が7:3だとしても、生産能力を1:1にしています。
生産能力は、各社の公式資料を基本にしています。
プラントの運転方法を改善する等で、生産実績が公称の生産能力を超える場合があるようですが、各社の公式資料を基本にしております。

ーーー
ーーー
ーーー
ーーー
ーーー
ーーー

 

 

 4月28日の香港証券取引所への届出によると、シノペック冠德、中国海運集団、商船三井(Mitsui O.S.K. Lines)の3社出資の合弁会社が滬東中華造船Hudong-Zhonghua)と中国造船に6隻のLNG船を発注した。

シノペックが49%、中国海運が51%出資でChina Energy Shipping Investment を設立、同社が80%、商船三井が20%出資で6つの合弁会社を設立した。6隻のLNG船それぞれの輸送業務を行う。

商船三井は現在、69隻のLNG船を保有しており、約2割の世界シェアを持つ。
中国側は商船三井のLNG船輸送のノウハウを必要としたとみられる。

建造費合計は15.1億ドルで、その20%は出資金、80%が中国EXIM銀行、中国工商銀行、中国銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行の日中6行のシンジケートローンでまかなう。

2016年4月から2017年11月までに順次引き渡される。
2016年から20年間、年760万トン(中国輸入量の約5割、世界需要の3%)のLNGをオーストラリアから運ぶ。

輸送するLNGはシノペックも出資するAustralia Pacific LNG Project のもの。

Australia Pacific LNG ProjectはオーストラリアのQueenslandでコールシームガス(Coal seam gas:CSG) を採掘、パイプラインで輸送し、Gladstone沖のCurtis IslandのLNG施設でLNGを生産するもの。2系列で合計年間900万トンのLNGを生産する。

ConocoPhillipsが37.5%、豪州のLNG業者のOrigin が37.5%、シノペックが25%を出資している。

ConocoPhillips は2006年以降、Darwin でLNG施設を所有・運営している。
チモール海共同石油開発海域の Bayu-Undan油・ガス田

OriginはQueensland では30年間活動しており、CSG分野では15年の経験を持つ。

CSGは、Coalbed methane、炭層ガス、炭層メタンなどとも呼ばれ、石炭層を覆っているメタンガス。

石炭層は地下200~1,000mの地層に存在する。
石炭層にメタンが付着しており、炭層の亀裂(Cleats)は水で満たされている。

ポンプで水を汲み上げることで水圧が減り、メタンガスが石炭から分離して水とともに汲み上げられる。
水とガスは分離され、ガスはパイプラインでGladstone沖のCurtis IslandのLNG施設でLNGにされる。

 





 

クラレはポバール製品、積水化学は住宅と世界シェアNo.1の高付加価値製品が数多くある高機能プラスチックが好調で、2014年3月期に経常最高益を見込む。
トクヤマは一時は高収益を誇り、増設中の多結晶シリコンが供給過剰で利益が急減、多額の減損損失を計上した。


クラレ

売価差その他で前年比で若干の減益となったが、ポバール製品等が好調で高水準の利益を継続し、増配した。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 3,690 547 539 315 16.0 17.0
2013/3 3,694 492 486 288 18.0 18.0
前年比 5 -55 -54 -27 2.0  1.0 
2014/3予 4,300 600 585 350 18.0 18.0

一部セグメントを変更
 樹脂 →(改称) ビニルアセテート(ポバール製品群、エバール)
 化学品 →(分割) イソプレン(イソプレンケミカル、セプトン、ジェネスタ)
    機能材料(メタクル、メディカル、クラリーノ)
     
営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3 増減 2014/3予
ビニルアセテート 499 489 -10 540
(化学品) 91   -33
イソプレン   39 75
機能材料   19 30
繊維 11 18 7 20
トレーディング 35 34 -2 35
その他 57 40 -17 40
全社 -145 -146 -1 -140
合計 547   492 -55  600

同社のポバール、エバール事業については下記参照。
  2012/5/7 クラレの2012年3月決算と樹脂事業概況 

ーーー

積水化学

住宅、高機能プラスチックが好調で増収増益となり、来年度も更に大幅増益を予想。
配当は来年度で4年連続の増配となる。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 9,651 546 542 281 7.0 8.0
2013/3 10,324 596 607 302 9.0 9.0
前年比 673 50 65 21 2.0  1.0 
2014/3予 10,780 740 700 350 10.0 10.0

住宅の損益が急上昇、全社利益の半分以上を占める。
高機能プラスチックも好調。

営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3 増減 2014/3予
住宅 311 363 52 400
環境・ライフライン 30 18 -12 70
高機能プラスチックス 206 232 27 300
その他 -2 -7 -5 -15
全社 2 -10 -12 -15
合計 546   596 50  740


高機能プラスチックス部門には、
 車両材料(AT)の高機能中間膜、自動車内装用架橋発泡ポリオレフィン、
 電子材料(IT)の液晶用スペーサー、導電性微粒子、
 メディカル(MD)分野のコレステロール検査薬など
世界シェアNo.1の高付加価値製品が数多くある。


ーーー

トクヤマ

多結晶シリコンの販売数量減、販売価格下落等により減益となった。

特別損失に多結晶シリコンとその併産品の乾式シリカ設備の減損損失や棚卸資産評価損を計上し、当期損益は大幅赤字となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2012/3 2,824 137 115 94 3.0 3.0
2013/3 2,586 68 32 -379 0.0 3.0
前年比 -237 -69 -83 -473 -3.0 -
2014/3予 2,755 140 100 75 3.0 3.0

2009年3月期までは、「特殊品」のみ表示。現在のシリコンと特殊品のほか、他の製品も含まれているが、大勢には影響しない。
一時は300億円もあった営業損益が、前期は100億円になり、それが今期はゼロとなった。

他方、セメントは国内需要の回復に伴う数量増、販売価格是正、合理化によるコストダウンで増益となった。

営業損益対比(億円)
  2012/3 2013/3

増減

2014/3予  
化学 19 4 -15 35

無機、有機、VCM、PVC、PO

特殊品 102 3 -99 25

シリコン、特殊品

セメント 29 53   24 45  
ライフアメニティ
(機能部材)
17 29 12 45

フィルム、樹脂サッシ、医療診断システム、歯科器材、
ガスセンサ、イオン交換樹脂膜

その他 20 26 6 35  
全社 -51 -49 2 -45  
合計 137 68 -69 140  

2014年3月期より、機能部材セグメントをライフアメティティセグメントに改称。
2014年3月期より、各セグメントへの費用負担方法を変更(2013年3月期も変更後の数値とした)

特別損失には減損損失273億円を計上した。

山口県周南市の多結晶シリコンと併産品の乾式シリカプラントの固定資産を回収可能価額まで減額し、266億円の損失を計上。
合わせて、愛媛、山口、北海道、宮崎の遊休土地の簿価を回収可能まで減額し、6億円の損失を計上した。

このほか、特別損失の「その他」として38億円を計上しているが、2月27日の発表では多結晶シリコン用原材料について棚卸資産評価損を約20億円計上するとしており、これが含まれていると思われる。

トクヤマのシリコン事業の概況と現状については
 2013/3/6     太陽電池素材事業、苦境に


2014年3月期については、シリコン関連は依然として販売数量減、操業度減でのマイナスがあるが、設備と原材料を評価減しているため、減価償却費と原料費が減り、増益が見込まれるとしている。

同社では、多結晶シリコンは当面供給能力過剰の状態が続き、コスト競争力が生き残りのカギになるとみている。

中長期的には需要拡大と競争力のないメーカーの生産停止等で、需給ギャップは徐々に縮小し、2015年頃には需要と主要メーカー供給能力はバランスすると予測している。




ヤクルト本社は4月26日、ダノン (Danone) との間の戦略提携契約を解除することを決めたと発表した。
今後の協業関係に関する覚書を締結する。

ーーー

ダノンは2000年までにヤクルト株5%弱を取得した。
当時はヤクルト経営陣のデリバティブ取引による巨額損失(1998年に1057億円の特別損失計上)が発覚し、株価が急落していた。

両社の間に具体的な提携関係に至らないまま、ダノンは2003年に一方的に出資比率を20%に引き上げた。

両社は2004年3月に以下の内容の戦略提携契約を締結した。

食品及び飲料の分野における両社の世界的なリーダーシップを強化し、両社の成長をさらに加速することを目的とする。

この目的を達成するために、両社は、当面は海外プロバイオティクス分野(ヨーグルトや乳酸菌飲料)を中心に、
ヤクルトの技術力及び独創的な販売網と、
ダノンの世界的なプレゼンス及びマーケティング力を活用して、
両社の相乗効果を十分に発揮できる様々な協力を行い、互恵的な提携関係を構築する。

相互に取締役を派遣。

ダノンはヤクルトの独自の文化、ビジネスモデル並びに独立性を尊重し、実質的な支配権を追求しないと確約。
ダノンは契約後5年間は現在の持ち株比率を引き上げず、その後の5年間に付いても、仮に買い増しを行った場合でも、実質的に過半数となるような水準は超えない。

(2004年当時、ヤクルトの株主総会で議決権が行使される比率は全体の7割程度で、35%超の株式を保有することは、「実質的に」議決権の過半数を押さえることになる。)

戦略提携契約に基づき、2005年にインドに50/50JVのYakult Danone Indiaを設立、2006年6月にはベトナムにヤクルト80%/ダノン20%出資でYakult Vietnamを設立した。

2007年5月には買い増しをしない期限を2012年5月まで延長する「休戦協定」を結んだ。

2012年に入り、ダノンは株を35%まで買い増す考えを打診したが、3分の1以上を握れば経営の重要議案を否決できるため、ヤクルトは拒否し、比率を28%にとどめる妥協案も受け入れなかったとされる。

両社はその後も契約改定に関する協議を重ねてきたが、合意に至ることができず、今回、ヤクルトはダノンに対して戦略提携契約の解除を通知した。

ヤクルト会長は会見で「企業文化やマーケティング手法などの違いを縮めることができなかった」と述べた。

これにより、ダノンが現在の持株比率を引き上げないという同契約上の義務も失効した。
今後、ダノンがTOBなどに踏み切るかどうかが注目される。

なお、両社ともに友好的な関係を維持することを希望しており、今後の協業関係に関する了解事項を確認するために覚書を締結した。

 ・両社は、戦略提携契約のもとで協同してきた既存の合弁事業、プロバイオティクス振興活動および研究活動を継続する。
 ・今後も両社にとってメリットのある新たな協業の可能性があれば、これに取り組む。
 ・ヤクルトは今後もダノンから3名の取締役候補の推薦を受け入れる。

ーーー

ダノンは世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した会社である。

ヨーグルトのバクテリア機能はパスツール研究所のメチニコフ所長が解明した。

メチニコフ(1845-1916)はロシア人で、
ヒトデの研究から、細胞性免疫の基礎となる「捕喰細胞」の研究で1908年にノーベル賞を受賞したが、「動脈が硬化するのは腸内の細菌が自家中毒の原因となる毒を作るためである」という「メチニコフの仮説」を考えた。

ブルガリアではブルガリア菌と呼ぶ細菌で作ったヨーグルトを毎日飲んでおり、長生きが多いことを知り、このヨーグルトが大腸内の細菌の繁殖を防ぎ、自家中毒を防ぐと信じた。毎日大量に飲用するとともに、自らヨーグルト製造会社を作って、製造と販売を行った。

1919年、スペインのIsaac Carassoが、パスツール研究所から乳酸菌の株を取り寄せ研究し、世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した。
息子のDaniel の名前をもじり(DAN-ONE)、「DANONE」を商標にし、医師を通じて薬局で販売した。


このDaniel が1929年にフランスでダノン社を創設した

ダノンは、地盤とする欧州の成長が少子高齢化もあって先細りで、この15年余りで欧州の売上高比率は約80%から40%未満へと半減しており、全体の半分以上を新興国とアジア・オセアニアが占める。

このため、ダノンにとっては、ヨーグルト・乳製品部門と新興国市場での販売網を強化するため、アジア展開で成功しているヤクルトと組む効果は非常に大きい。

一方、ヤクルトのアジア・オセアニア事業は増収増益で順調に拡大しており、海外展開において提携のメリットは少ない。

ーーー

ダノンは中国で宗慶後氏のワハハグループとのJV「杭州娃哈哈集団」を設立し、「娃哈哈(ワハハ)」ブランドの炭酸飲料水を売り出したが、ワハハ側との争いの後、撤退している。

2009/10/5 ダノン、ワハハに中国JVの持株売却

 


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ