「no」と一致するもの

青海省の青海塩業 (Qinghai Salt Lake Industry) はこのたび、年産16万トンのPP計画でDowのUNIPOL法を採用した。
ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコポリマーを製造する。

UNIPOL法PPは今回が中国での8つ目のライセンスとなる。

青海塩業は中国最大の塩湖資源利用企業で、食塩等を生産しており、子会社のQinghai Salt Lake Potash (Sinochemも出資)で塩化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、カリウム金属などを生産している。

食塩等の生産は茶卡盐湖 (Chaka Salt Lake)などを中心に行っている。
塩化カリ等の生産は
察尔汗盐湖 (Qarhan Salt Lake)で行っている。

PP計画は青海省ゴルムド市の察尔汗盐湖での同社の金属マグネシウム・石炭化学統合コンプレックスの一環である。

金属マグネシウム・石炭化学統合コンプレックスの概要は以下の通り。

マグネシウムの製法には電解法(Dow法、IG Farben法など)やPidgeon法などがあるが、同社は電解法を採用した。
塩水からとった水酸化マグネシウムを無水塩化マグネシウムとし、これを電解して生産する。

これには塩素を使用するため、塩湖の塩水の電解で塩素と苛性ソーダを生産するが、塩素を利用してPVCの生産を行う。
PVC生産にはエチレン法とアセチレン法を併用、エチレンと塩素、及びアセチレンと塩素でPVCを生産する。

このため、石炭からメタノールを生産し、MTOプロセスでエチレンとプロピレンを生産、別途、石炭からコークスをつくり、これと生石灰でカーバイドを生産し、アセチレンをつくる。

今回のPPはMTOのプロピレンを使用する。

青海塩業は2010年7月に第一期計画を着工した。2013年下半期に生産開始の予定。

能力は以下の通り。(単位:千トン/年)
今回第一期のPPが決まったが、第二期でのプロピレンの用途は未定。

製品 第一期 最終
金属マグネシウム 100 400
メタノール 1,000  2,400
MTO エチレン 165 400
プロピレン 165 400
PP 160 160
PVC 500 2,000
苛性ソーダ 1,000 2,000
コークス 2,400 2,400
カーバイド 800 2,000
二塩化カルシウム 100 100
Source: ASIACHEM Consulting


 

ロシアのRosneft本年1月、BPとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。

しかし、BPのロシアのJVTNK-BPの株主のAlfa Access Renovaを構成する4人の新興財閥が、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主契約に違反するとして 反対した。

BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

2011/5/18 BPRosneft との提携、白紙に 


RosneftはBPに代わる提携先を探していたが、8月30日にRosneftとExxonMobilは両社が北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意したと発表した。

両社はStrategic Cooperation Agreementを締結したが、ロシア、米国、その他世界中での石油資源の共同探査・開発と探査開発技術の共有化をうたっている。両社はPutin首相が同席する中で調印した。

(1) ロシア

Rosneft が66.7%、ExxonMobilが33.3%出資するJVが北極海と黒海で事業を行う。投資額は32億ドルと見込まれる。

 ① ロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区East Prinovozemelskiy License Block 1,2,3)の開発
     2010年に
Rosneftが権利を取得したもので、South Kara Seaの深さ 50~150m126,000km2にわたるもの。

 ②黒海のTuapse Blockの開発
   深さ 1,000~2,000m の11,200
km2の地域

両社は2011年1月にこの開発で合意している。
 
2011/2/5 RosneftExxonMobilとも海底油田開発で合意

(2) その他の探査・開発

Rosneft はExxonMobilの多くの開発計画に参加する権利を得た。
これには、メキシコ湾の深海油田、テキサス州のタイトオイル、その他海外での開発を含む。

両社はまた、西シベリアのタイトオイル開発の検討を共同で行うことでも合意した。

Tight Oil は孔隙率および浸透率の低い油層からの原油で、Shale gasと同じ手法で採掘する。
米国北部からカナダにかけて分布するBakken Shaleが代表的。

(3) Arctic Research and Design Center for Offshore Developments

深海油田開発のための研究センターをSt. Petersburgに設立する。
両社の研究員が参加し、両社の技術を持ち寄り、北極海の共同事業と他のRosneft の開発事業のための新技術を開発する。

(4) その他

技術及び経営のスタッフの交換計画


ExxonMobil は、今回の合意はサハリン1プロジェクトでの15年にわたる関係がもとになっているとしている。

サハリン1プロジェクト
事業主体 Exxon Neftegas
 (ExxonMobil子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:
SODECO
 (石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資
30%)
ONGC Videsh(インド、20%)
Sakhalinmorneftegaz-Shelf(ロシア、11.5%)
Rosneft-Astra(ロシア 8.5%)                
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

日本各社やBASFが高吸水性樹脂の増強を行う中、日本触媒やBASFとトップを争うEvonik(旧 Degussa)も高吸水性樹脂の増強を決めた。MMAについてもドイツ、米国、中国の工場の増強を決めた。

2010/12/22 BASF、高吸水性樹脂を増強
2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強

Evonikは8月17日、サウジのNational Industrialization Company (Tasnee) とSahara Petrochemicalsのアクリル酸系製品の統合会社の Saudi Acrylic Acidとの間で、高吸水性樹脂を製造するJVのSaudi Acrylic Polymersを設立する契約に調印した。
出資比率は明らかにされていない。
(他のJVの例からみると、Evonikの出資比率は25%か?)
       Tasnee、Sahara及び両社のポリオレフィン計画については、下記参照。
    
2006/5/13 サウジの民間ポリオレフィン計画

工場はAl Jubail chemical parkのTasneeの工場に立地し、能力は年産80千トン。2013年下期のスタートアップを目指す。

同地にはTasneeとSaharaの競争力のあるプロピレンと、それを使ったアクリル酸のプラントがあり、新会社は低コストのアクリル酸を使い、高吸水性樹脂を生産する。

これは中東で最初の高吸水性樹脂で、Evonikでは、成長の著しい中東市場への進出の第一歩とするとともに、高吸水性樹脂の世界のリーダーとしての地位を更に高めるとしている。

Tasnee とSaharaのアクリル酸コンプレックスは以下の通り。

製品 エチレン、プロピレン、PE 持株会社 アクリル酸 高吸水性樹脂
社名 Saudi Ethylene and Polyethylene
 (SEPC)
Saudi Acrylic Acid  Saudi Acrylic Monomer

(SAMCO)
Saudi Acrylic Polymers
出資 Tasnee & Sahara Olefins 75%
LyondellBasell            25%
Tasnee
Sahara
Saudi Acrylic Acid      75%
Rohm & Haas(Dow)  25
%
Saudi Acrylic Acid
Evonik
能力 エチレン   1,000千トン
プロピレン    285千トン
HDPE     400千トン
LDPE     400千トン
  アクリル酸  250千トン 高吸水性樹脂 80千トン
原料ソース     SEPCのプロピレン SAMCOのアクリル酸


なお、TasneeとSaharaはSEPC設立以前に、それぞれ、LyondellBasellとの間でPPのJVを設立している。

製品 プロパン脱水素とPP プロパン脱水素とPP
社名 Saudi Polyolefins Al-Waha Petrochemical
出資 Tasnee                75%
LyondellBasell 25%
Sahara               75%

LyondellBasell 25%
能力 プロピレン 450千トン
PP        485千トン
           現在 720千トン
プロピレン 467千トン
PP        450千トン

 

ーーー

Evonik は8月25日、需要増大に対応するため、MMAモノマーの増強を行うと発表した。

2011年と12年に、ドイツWormsとWesseling、米国ルイジアナ州 Fortier及び上海工場のデボトルネッキング等により、合計約50千トンの能力増を行う。

EvonikのMMA事業の元はドイツのRoehmで、(更にその元はRohm & Haas で、第一次世界大戦の敗戦で米国子会社が分離独立した)1989年にHulsに買収された。
Hulsは1899年にDegussaと合併してDegussa-Hulsとなり、その後、Degussaに、更にEvonikに改称した。

米国のCyroは、当初はRoehmの米国再進出のため、CytexとのJVとして設立されたが、現在は100%子会社となっている。

2009年11月、上海ケミカルパークの同社のMMAコンプレックスが商業生産を開始した。

 イソブチレン 105千トン
 MMA    115千トン
 メタクリル酸  15千トン
 ブチルメタクリレート 20千トン
 PMMA    40千トン

Degussa の欧・米のMMAはともにACH法であるが、今回の上海のMMA計画遂行に当たり、同社は日本メーカー(名前を明らかにせず)から直酸法の技術を導入した。

 

BP本年1月、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。

Putin首相と腹心のIgor Sechin副首相がこれをバックアップした。

Rosneft BPの株式5%を購入、見返りにBPRosneft株式 9.5%を購入する。
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区
EPNZ 1,2,3)を共同で開発する。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携 

しかし、これに対し、BPのロシアのJVTNK-BPの株主のAlfa Access Renova (AAR)を構成する4人の新興財閥が、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主契約に違反するとしてロンドンの高等法院に訴えた。
BPが株主契約に基づき、ロシアではTNK-BPを通して活動することを求めた。

TNK-BPはBPとAAR45%ずつ出資、残り5%が一般株主となっている。
AARの構成は以下の通り。

Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman German Khan 50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。

21日、裁判所は調停での問題解決を命じた。

調停委員会は201151日、下記の決定を下した。
  ・
TNK-BPRosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
  ・これを条件に、
BPRosneftの株交換を認める。

これに対しRosneft TNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、
AARの持ち株をBPRosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

2011/5/18 BPRosneft との提携、白紙に 

 

AAR側は4月の時点で、BPの行動により TNK-BPが北極海開発の機会を失ったとして、100億ドルの損害賠償を求める意向を明らかにした。

この対抗策として、BPは8月5日、AARのメンバーのRenova Holdingに対し、調停の通知を行った。
RenovaがIES Holding Ltdを通じて大規模な天然ガス、燃料事業を行い、株主契約に違反しているとする。

Renova側はTNK-BP の株主契約になんら違反しないとし、AARが予定している仲裁を遅らせることを狙っていると批判した。

この直後の8月10日にTNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが TNK-BPの役員でもあるBPの役員Peter Charrow と Richard Sloanを訴えた。
BPとRosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、
TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとしている。

このAndrei Prokhorovはごく少数の株を持っているだけで、AARの利益を代表しているとみられている。

ロシア紙によると、西シベリアのTyumen仲裁裁判所が9月21日にヒアリングを予定している。既にTNK-BPとBPに資料提出を求めている。BP はこの訴えは根拠がないとし、徹底的に争うとしている。

付記
ロシアの司法当局は8月31日、モスクワのBPの事務所を家宅捜索を行った。

裁判所が派遣した捜査員や武装警官、訴訟原告の代表者など二十数人が到着、Rosneft
との提携交渉やTNK-BPに関連した書類を 調べた。

その後、BPはこの家宅捜査を法律違反であるとして取り消しを求め、連邦執行局(Federal Bailiff Service)は9月10日まで執行を延期した。


AARは8月15日、Stockholm仲裁パネルに、BPがRosneftとの提携によりTNK-BPの株主契約を破ったかどうかの審理を求めた。

AARでは損害賠償についての判断は求めていない。
損害賠償はAARとBPとのストックホルムでの調停ではなく、TNK-BPとBPの間の英国での裁判でやる必要があるとしている。

 

5月の調停では、Rosneft の同意を前提にTNK-BPが北極海開発に参加するとし、これを条件にBPRosneftの株交換を認め た。
BPとAARの株主契約を尊重したものであり、調停ではBPが株主契約を破ったとの判断が下される可能性がある。

BPは北極海開発での将来の利益を失ったうえに、多額の損害賠償を求められる可能性があり、メキシコ湾原油流出事故に続く大きな負担となる

 

ーーー

BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

Rosneft は8月30日、北極海大陸棚などでの油田探査・開発に関し、ExxonMobilと業務提携することで合意した。

対象はロシア北部の北極海と、ロシア南部の黒海の深海油田で、Rosneft が66.7%、ExxonMobilが33.3%のJVで油田のほか、ガス田の開発を行う。

ーーー

BPは2011年2月、インドの石油精製・石油化学最大手のReliance Industries と提携し、インドでの石油・ガス開発を拡大すると発表した。
両社はロンドンで枠組み協定に調印した。

BPRelianceが操業しているベンガル湾のKrishna Godavari (KG)海盆のKG D6 blockを含む23の鉱区(総面積27km2)の石油・ガス権益の30%を取得する。
また
50/50JVを設立し、インド市場でのガス販売の市場調査などを実施する。
JVはまた、インドで天然ガスの受け入れ、輸送、販売のためのインフラ作りに努力する。

2011/2/28 BP、インドでのガス・石油開発でRelianceと提携 

両社は2011年8月30日、正式契約に調印した。
BPは対価として72億ドルを支払うが、実績に応じて追加で最高18億ドルを支払う。

 

大阪府の泉南地域の石綿紡織工場の元労働者や元周辺住民ら29人が石綿肺や肺がんなどになったのは、国がアスベスト(石綿)の規制を怠ったのが原因だとして、国に計9億4600万円の賠償を求めた訴訟の判決が2010年5月19日、大阪地裁であった。


小西義博裁判長は「石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」とし、
賠償金を支払うよう命じた。
勝訴したのは26人で、賠償額は1人あたり 687万円~4,070万円で総額は
約4億3500万円

工場近くで石綿粉じんにさらされたとして「近隣暴露」を訴えた元周辺住民の請求は退けた。

2010/5/22  アスベスト被害で国の責任認定

これに対し、厚生労働省と環境省は控訴を断念する方向で調整に入っていたが、政府は関係閣僚会議を開き、控訴する方針を決めた。

仙谷国家戦略相は、「短時間でこの問題を確定させてしまえば、後々出てくる問題点について合理的な解決策を示す余地がなくなる。全体的な解決策を、裁判所に入っていただくこともありうる前提で検討する」と述べた。


この控訴審判決が8月25日、大阪高裁であった。

三浦潤裁判長は、国の不作為責任を初めて認めた1審判決を取り消し、原告側逆転敗訴の判決を言い渡した。
「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」と、国の責任を否定した。

裁判長は、「過去に吸い込んだアスベストによって深刻な被害が現実化していることを考えると、長期的な危機管理として必ずしも十分でない部分があったことは否定できない」とも述べた。

最近の訴訟では国の不作為責任を認める司法判断の流れが続いており、1審判決もこの流れに沿ったものであったが、控訴審は逆の判断を示した。

原告団と弁護団は「泉南地域の被害と国の加害の事実から目をそむけ、国民の生命、健康よりも経済発展を優先させた国の責任を不問に付すもので、信じがたい暴挙。直ちに上告し、引き続き泉南アスベスト被害の全面解決を求めて最後まで闘い抜く」との声明を出した。

ーーー

1審の大阪地裁と今回の高裁の判決理由はそれぞれ以下の通り。

1960年時点で石綿肺防止のための省令を制定しなかったこと

 地裁:違法

石綿肺の医学的知見が1959年におおむね集積され、被害の防止策を総合的にとる必要性も認識していた筈。

この時点で省令を制定せず、71年に旧特化則(特定化学物質等障害規則)で粉じんが飛散する屋内作業場に排気装置を設置することが義務付けられるまで、対策をとらなかった。

省令を制定・改正し、排気装置の設置を義務づける規定を設けなかったのは、著しく合理性を欠き、違法 。

 高裁:違法でない

当時は排気装置の設置が、技術的に確立していなかったうえ、コストの高さもあって工場が導入に積極的ではなかった。
1971年に設置を義務づけるまで国の対策が遅れたとは言えない。

国は、1947年に制定された旧労働安全衛生規則で、アスベストも規制の対象にして事業者に排気装置の設置や防じんマスクの着用などの適切な措置を指導するとともに、その後も法整備や行政指導を順次行ってきた。
日本がアスベストを禁止した時期も、海外に比べて特に遅れたとは言えない。

1972年時点で国が石綿肺防止の省令を制定しなかったこと

 地裁:違法

石綿粉じんと、肺がんと中皮腫発症の関連性があるという医学的知見は、1972年におおむね集積された。
粉じん測定機器としてメンブランフィルター法も実用化され、一般の事業所で粉じん濃度の測定ができるようになった。
特化則により、石綿を製造し、取り扱う屋内作業場で6カ月以内ごとに1回、定期的に粉じん濃度を測定、記録することが義務付けられた。

測定結果の報告などを義務づける必要があったが、国はこれを怠った。これは著しく合理性を欠き、違法。

省令制定権限不行使の違法と石綿粉じん暴露による損害との因果関係

 地裁:

国の省令制定権限不行使の違法と、60年以降に石綿粉じんに暴露し石綿関連疾患になった労働者の原告、またはその相続人らの損害には、相当因果関係がある。

・規制権限のあり方

 高裁:

化学物質の危険性が懸念されるからといって、ただちに製造、加工を禁止すれば産業社会の発展を著しく阻害しかねない。

規制の判断要素になる医学的知見などは変化するため、権限行使の時期や内容は大臣によるその時々の高度に専門的で裁量的な判断に委ねられている。

健康被害が発生した場合も、規制権限の不行使がただちに違法にはならない。
許容される限度を逸脱して、著しく合理性を欠くときに限り違法

 

ーーー

労災認定の時効(死後5年)を理由に補償請求権を失ったアスベスト(石綿)関連患者の遺族らの救済措置を復活、延長する改正石綿健康被害救済法は8月26日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。
救済措置が当面10年間延長される。近く施行される見通し。

現行の石綿救済法は2006年3月27日(同法施行日)までに死亡した住民らの遺族に特別遺族弔慰金など(約300万円)を支給しているが、今年3月末から新たな時効の救済が打ち切られていた。

このため改正法は、施行日から10年が経過する2016年3月27日前までに死亡した被害者に拡大する。(請求期限は2011年3月)

韓国の李大統領は8月21日からモンゴル、ウズベキスタン、カザフスタンを訪問し、資源・エネルギー分野の協力強化で合意した。

モンゴルでは、両国の関係を「善隣友好協力パートナー関係」から「包括的パートナー関係」に格上げし、レアアースなどの確保に向けたエネルギー・資源分野の戦略的協力了解覚書も締結した。

ウズベキスタンで41億6千万ドル規模のSurgil ガス田開発プロジェクト、カザフスタンでは石炭火力発電所とLG化学の石油化学JVなど80億ドル規模の契約を結んだ。

1)モンゴル

李明博大統領は8月22日、エルベグドルジ大統領と会談し、2006年に締結した「善隣友好協力パートナー」関係を1段階高い包括的パートナー関係に引き上げることで合意した。韓蒙間の「中期協力行動計画」もまとめた。

中期行動計画には、埋蔵量世界2位の銅、4位の石炭、14位のウラン、鉄などの原料加工分野に対する韓国企業の投資を増やすための政府間協力を進めるという内容が盛り込まれた。
また、豆満江開発事業(韓国、北朝鮮、中国、ロシア、蒙古の5カ国共同の地下資源・植物・地質などの探査)のために努力し、大陸鉄道網連結のための共同研究も進めることにした。

鉱物資源の探査・開発を強化するという了解覚書も締結された。特にレアアースとウランでの協力を強化する。


2)ウズベキスタン

ウズベキスタンのアラル海に近いSurgil ガス田を開発し、ガス化学プラントを建設する総額41億6千万ドル規模の超大型プロジェクト契約が8月23日に締結された。

2006年に韓国ガス公社(KOGAS) とウズベキスタン国営ガス公社(UNG) が了解覚書を締結し、2008年に双方が50%ずつ出資する合弁会社(UZ-KOR) を設立し交渉を続けてきた。

UZ-KOR 株主

ウズベキスタン Uzbekneftgaz(UNG)     50.0%
韓国 韓国ガス公社(KOGAS) 17.5%
湖南石油化学
(当初は子会社のロッテ大山石化)
17.5%
STX Energy(双竜グループ) 5.0%
LG International 5.0%
SK Gaz 5.0%

今回、GS Engineering & Construction、Samsung Engineering、Hyundai EngineeringとUNG、UZ-KORがガス田開発とパイプライン建設に対する契約を結んだ。韓国3社はまた、ガス設備、エタン分解設備、エチレン製造工場、付帯設備などの契約文書に署名した。

Surgil のガス埋蔵量は1300億立方メートルで、液化天然ガス換算で9600万トン、原油換算で8億3000万バレルに上る。

 

 


3)カザフスタン

李大統領は中央アジア歴訪最終日の8月25日、カザフスタンで政府間協定を含め80億ドル規模の事業権関連契約を締結した。

知識経済部とカザフスタン産業技術省は、Balkhash石炭火力発電所事業権を韓国コンソーシアムに与える内容の政府間協定を締結した。

Balkhash湖の南西部沿岸に45億ドルで66万kw規模の石炭火力発電所2基を建設し今後20~30年間にわたり運営する。
韓国側からは韓国電力 (35%) とSamsung C&T (35%) が、カザフスタンからは国営電力会社のSamruk-Energo (25%) とカザフスタン資源大手のKazakhmys (5%) が参加する。


LG化学と国営企業のKazakhstan Petrochemical  (KPI) はAtyrau石油化学団地建設と関連の合弁契約に署名した。
50/50JVを設立し、カスピ海近くのTengiz油田から出るエタンガスを活用してエチレン、ポリエチレンを製造する。
LG化学が工場建設・運営・製品販売を担当する。

KPIは国営石油会社KazMunaiGasが51%、私企業のSAT & Co が49%を保有する。

能力はエチレンが84万トン、PEが80万トン。
投資額は40億ドルで、両社が6億ドルずつ出資、残り28億ドルはプロジェクトファイナンス。2016年の生産開始を目指す。

LGでは低コスト原料の海外石化基地を確保でき、将来的に中東と競合する地位を得たとしている。

なお、KazMunaiGasのAtyrau 製油所では石化コンプレックス計画第一期としてSinopec Engineeringが芳香族工場の建設を請け負っている。
ベンゼン 133千トン、パラキシレン 496千トンで、2013年に生産開始の予定。

今回のLGの計画はAtyrauの石化コンプレックス計画の第二期になる。

 

LGとGMは8月25日、LGによるChevrolet Volt やOpel Ampera用のバッテリー供給での協力関係を拡大し、電気自動車を共同で開発すると発表した。

GMとLGの提携関係は、2009年にLG化学がGMの電気自動車シボレー・ボルト用バッテリーの単独供給メーカーに選定されたことから始まった。

2009/1/17 LG化学、GMに電気自動車用バッテリー独占供給へ

今後GMが製造する次世代電気自動車向けのバッテリーやモーター、車内冷暖房システムなど主要部品や中核ソリューションなどの開発をGMと共同で進める。

GMは今後、LGのバッテリーやその他のシステムを利用することにより製造販売する電気自動車の数と種類を増やし、LGはこれにより自動車部品メーカーとしての製品種類を広げる。

GMでは、この協力関係により、将来のニーズがより早く解決できるようになるとしている。需要家は最新の省エネ技術をより早く利用でき、我々は開発段階での時間と費用を節約できると述べた。

GMが開発を進める次世代EVは早ければ4‐5年後、市場に登場するものと予想されている。
GMのパートナーとなったLGは今後一定期間、主要部品をGMに独占的に供給する可能性が高い。

LGではこれまで、エネルギー、LivingEco、ヘルスケアを3大次世代成長エンジンとし、電気自動車事業をエネルギー部門の下位単位に分類してきたが、今回、電気自動車を加えて4大次世代成長エンジンとして育成する。

LGではLG電子がスマートホン時代に一歩遅れて対応したため不振に陥っており、LGディスプレーも液晶表示装置(LCD)市況の悪化に悩む。

このためLGはグループを挙げて電気自動車事業に「全てをかける」ことにした。
LG化学のバッテリー、LG電子のエアコンおよび換気システム、LGイノテックのモーター、LG CNSの充電インフラ、V-ENSの自動車部品設計など、系列会社を総動員して電気自動車事業に本格的に参入する計画。

このため、LGは大規模な電気自動車研究施設を設立することにし、今年初めから仁川市と用地選定について協議を行っている。

ーーー

自動車向け二次電池ではLGがトップを切っているが、その素材の大部分を日本からの輸入に頼っている。

2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 (後半に各部品のシェア)

このため韓国政府は2010年7月、二次電池(充電式電池)を次世代の基幹産業に育てる2020年までの長期計画をまとめた

2010/7/15 韓国、「二次電池の競争力強化に向けた統合ロードマップ」を確定

今回のLGのように最終の自動車を抑えた上で、上流に遡られると、電池部品での日本の優位も危うくなる。

年間最大550億立方メートルのシベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまで供給するNord Stream Pipelineがこのたび、OPAL natural gas pipeline(Baltic Sea Pipeline Link)と接続した。

Nord Stream Pipelineは、20059月、ロシアのGazpromとドイツの電力会社E.On、及びBASFのエネルギー分野の子会社Wintershall3社が設立し、 その後、オランダのNederlandse GasunieとフランスのGDF SUEZが参加した。
現在の出資比率は、
Gazprom 51%、Eon 15.5%、Wintershall 15.5%、Gasunie 9%、 GDF SUEZ 9%となっている。

なお、BASFのエネルギー分野の子会社Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意している。
  2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

 

OPALは全長470kmのパイプラインで、Nord Stream がドイツのLubminで地上に出たところからドイツとチェコの国境のOlbernhau まで南下する。

OPALはWINGAS Group が80%、E.ON が20%出資する。
WINGAS GroupはWintershallが50%+1株、ロシアのGazpromが50%-1株を所有する。

OPALと既存の欧州のガスパイプラインとの接続も検討されている。

OPALは既に完成しており、第4四半期にもロシアの天然ガスが欧州に流れる。

 

8月17日午後、韓国蔚山のSKの石化コンビナートでHyundai EP(旧称 Hyundai Engineering Plastics)のポリスチレン工場で爆発事故が発生した。

12日から16日まで操業を停止して整備しており、再稼働の過程で火災が発生、爆発した。作業員8人が重軽傷を負った。
 

Hyundai EP は1988年にHyundai Development Co. の石化部門として設立された。

1991年にSolvay Engineered Polymers((2008年にLyondellBasellに買収された)から技術を導入した。
1994年に工場を完成、Hyundai Motorにバンパーや内装材を供給した。

2000年にHyundai Engineering Plastics としてスピンオフし、2006年に現在のHyundai EP に改称した。

現在、自動車向けのPPコンパウンドを中心に、下記の製品を扱っている。
  PP Compound
  PE Compound
  Engineering Plastics (Nylon compounds, PBT compounds, PC
/ABS and PC/PBT alloys, m-PPO alloys)                            
  PS
/EPS  
  PB Pipe (Basell の高品質Polybutylene-1 のパイプ)

このうち、PSとEPSは2010年4月に東部韓農(Dongbu HiTek、旧称Dongbu Hannong Chemical)から買収した。

東部韓農は蔚山のSKコンプレックスに、SM 270千トン/PS 100千トン/ EPS 50千トンを持っていたが、PS/EPSを売却した。  

 なお、大山のHyundai Petrochemical はLG Chemと湖南石化に買収され現在は両社の工場となっている。
 2006/4/12 韓国の石油化学-3

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蔚山では過去に多くの事故が発生している。

2010年7月に砂糖メーカーの三養社の子会社三養ジェネクスで砂糖製造反応器が爆発
2011年2月 
タンクが爆発。
 同社では2004年に水素低圧タンクが爆発して3名死亡している。

2011年5月と6月に三養社サイロが爆発。

2011年2月 大韓油化のPP工場で爆発、1名死亡、2名負傷。
残留ガスを取り出した後、タンク内壁のスラッジをウォータークリーニング作業している間、原因不明の火災が発生しタンクが爆発した。

蔚山消防本部によると、これまでの発生数は2007年が38件、08年が44件、09年が31件、10年が33件。11年はすでに26件発生しており、人命被害は、2007年が1人死亡、5人負傷、09年が9人負傷、10年が1人死亡、9人負傷、11年は1人死亡、7人負傷だった。

聯合ニュースでは、大多数の石化プラントが建設されて30年を越えるなど施設が老朽化したためと、各企業が安全管理を徹底的にしなかったためと分析している。

 

 

厚労省は8月19日、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金の第2次交付事業について4事業者が応募した事業を採択したと発表した。

対象事業は 細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業で、平成24年度までにワクチン生産のための実生産施設の構築・治験の実施等を行い、平成25年度の実用化を目指す。

昨年の第1次交付事業では細胞培養法開発事業の実験プラント整備等を補助対象にしており、今回、実生産工場整備等のための公募がなされた。

目標は全国民分の新型インフルエンザワクチンを約半年で生産可能な体制を平成25年度中を目処に構築することで、
現在の鶏卵培養法では1年半~2年を要するが、細胞培養法を開発することにより、半年に短縮する。

これにより、日本で大流行が起きた際に、これまでのように輸入ワクチンに頼らずに済む体制が整う。

6事業者から応募があり、4事業者が選ばれた。

事業者 基準額 ワクチン生産量
(製造後半年の量)
化学及血清療法研究所  23,984百万円 4000万人分以上
北里第一三共ワクチン 29,959百万円 4000万人分以上
武田薬品工業 23,984百万円 2500万人分以上
阪大微生物病研究会 23,984百万円 2500万人分以上

報道では他に、アステラス製薬と技術提携している医薬品ベンチャーのUMNファーマと、スイスのノバルティスの日本法人が応募したとされる。UMNファーマは第1次では選ばれて実験プラント整備事業を行ったが、今回は選ばれなかった。

付記

北里第一三共ワクチンは、第一三共(51%)と北里研究所(49%)の合弁によるワクチン専門の開発・製造発売会社で、2011年4月に発足した。

4事業者は交付金を活用して最先端ラインを整備し、新型インフルエンザ専用ラインとするが、新型インフルが流行していない時期には季節性インフルや他の感染症向けワクチンの生産に利用でき、他社と比べ優位な地位を得たことになる。

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なお、第一次交付事業は2010年7月に下記の各事業者が選ばれている。

予算額は細胞培養法開発事業が127,700百万円、その他が164百万円となっている。

  事業者
細胞培養法開発事業
(実験プラント整備事業、増殖性試験実施事業等)
化学及血清療法研究所
北里研究所
武田薬品工業
UMNファーマ
鶏卵培養法生産能力強化事業 化学及血清療法研究所
「第3世代ワクチン」等
開発推進事業
皮内投与デバイス及び
皮内投与ワクチンの開発
テルモ
経鼻投与式細胞培養新型
インフルエンザワクチンの開発
阪大微生物病研究会

 

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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