「no」と一致するもの

欧州委員会は518日、レジ袋 (plastic carrier bags) の使用減少についての意見聴取を発表した。
   
IP/11/580 Commission seeks views on reducing plastic bag use 

レジ袋有料化やレジ袋税が有効か、又は、EU全体でのレジ袋禁止のような他の案がベターか、更に、生分解性の包装材を増やし、包装材として生分解性製品を義務付けるのがよいのか、に関して8月まで意見を聴取する。

EUでは毎年、一人当たり500枚のレジ袋を使用し、ほとんどが使い捨てである。2008年の生産量は340万トンで、軽量小サイズのレジ袋は多くは処理されず、海に流れ、環境を汚染する。
プラスチックの袋は分解しないため、地中海だけで
2500億枚、重量で500トンのプラスチックが漂っており、間違って飲み込んだり、エサと間違って飲み込んだ海洋生物を窒息させる。

EUのいくつかのメンバー国では既に規制が行われている。

2011/1/8 イタリア、レジ袋禁止

2009/9/28 アイルランド、レジ袋税を2倍に

しかし、これまではEU全体では規制は存在していない。本年3月にEU諸国の環境大臣がレジ袋の環境への影響を議論し、EUとしての有効な対策が必要と結論付けた。

現在の
EUの「包装及び包装廃棄物指令(1994/12) における「生分解性(biodegradability)」と「堆肥化(compostability)」についても意見を求める。

指令では自然の環境で生分解する生分解性製品と、産業用堆肥化設備でのみ生分解する堆肥化製品との間に明確な区分がない。
実際には自然の環境で生分解しないのに生分解製品として広告し、結果としてゴミをまき散らすことになる。

包装での表示などを含め、包装材の「生分解性」要件を変更することについての環境、社会、経済的影響について、意見を求める。


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


DuPont516日、Danisco1700DKKでのTOBが成功裏に完了したと発表した。買収額は64.9億ドルとなる。

513日にTOBを終了し、発行済み株式の92.2%が応募した。

ーーー

DuPont19日、デンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを現金58億ドル(1DKK 665)と5億ドルの債務引き受けの合計63億ドルで買収する提案を行ったと発表した。
この買収により、工業用バイオ技術のリーダーになるとした。

2011/1/19  DuPontDaniscoを買収へ 

DuPont121日にTOBを開始した。

合併の独禁法審査は、415日の中国商務部の承認ですべて完了した。

しかし、このTOBに反対してきた米ヘッジファンドのElliott AssociatesDanisco株の買い増しを行い、持株率を5%から10.2%とし、年金基金ATP5.1%を抜いて最大株主となった。
これにより、
DuPontの買収計画は暗礁に乗り上げたかと思われた。

DuPont429日に以下の発表を行った。
 ・買収価格を従来の
1DKK 665からDKK 700に引き上げる。
 ・
TOB期間を513日に延長
 ・買収最低株数を従来の
90%から80%に引き下げる。

買収提案価格の引き上げで、Danisco役員会とデンマークの年金基金ATPやElliott Associatesなど広範な株主が買収賛成に回った。

ーーー

DuPontEllen Kullman会長兼CEOは、「Daniscoの食品添加剤事業と工業用酵素事業(Genencor部門)のDuPontへの統合は、Dupont自体のNutrition & HealthApplied BioSciences部門と相補い、工業用バイオサイエンス、栄養、健康分野で業界のリーダーになれる」と述べた。

DuPontGenencorは1995年に、コーンスターチからBio-PDOプロパンジオールを生産する発酵生体触媒を開発する目的で提携した。DuPontはテネシー州にあるDuPont Tate & Lyle Bio ProductsBio-PDOの商業生産を行っている。

DuPontGenencorは2008年に50/50 JVDuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLC を設立した。
次世代バイオ燃料であるセルロース系エタノールの生産に取り組むもので、まずトウモロコシの茎や芯とサトウキビバガスを原材料とする。将来は、麦わら、様々なエネルギー作物、他のバイオマスを含
む多数のリグノセルロース系原料をターゲットとする。

DuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLCは20102テネシー州Vonoreでセルロース系エタノール実証施設の開所式を行った。

2010/2/10 DuPont、セルロース系エタノールの高性能生産施設をオープン

DuPont519日、Danisco統合の組織改編を発表した。

新組織 売上高 従来組織
DuPont Danisco
Industrial Biosciences   $1 billion  Applied BioSciences  Genencor enzyme
Nutritional & Health  $3 billion Nutrition & Health Food Ingredients

 


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


 

SABICSinopec517日、天津の両社の50/50JVSinopec SABIC Tianjin Petrochemical Company (SSTPC)でポリカーボネート(PC)を生産すると発表した。

能力は年産26万トンで、Sabic Innovative Plastics のホスゲンと溶媒塩化メチレンを使わない最新技術を使用する。2015年の完成を目指す。

下記は旭化成技術だが、他の各社も最近、ジフェニルカーボネートとビスフェノールAの反応による製法を採用している。   

従来法のホスゲンは強い毒性があり、塩化メチレンは環境負荷とヒトへの毒性の懸念から化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)で利用と廃棄が管理されている。   

SSTPC200910月に両社のJVとなり、2010年から商業生産を開始している。

エチレン100万トンで、誘導品は以下の通り。PCについてはこれまでFSを行っていた。

 エチレン 100万トン
 Gasoline Hydrogenation 65万トン
 
LLDPE 30万トン       
 
HDPE 30万トン(INEOS Innovene S Process
 
PP 45万トン(LyondellBasell Spherizone PP) 
 
EOG 42万トン(Dow技術)
 フェノール 
35万トン/アセトン
 ブタジエン 
20万トン
 
MTBE 12万トン
 ブテン
-1 5万トン

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

SABIC会長は、このPCプロジェクトと、上海とインドのTechnology & Innovation Centerを挙げ、アジアでの存在を更に高めるとのコミットを強調した。

上海の
T&IセンターにはSABICの中国本部を置き、アジアでの石油化学の販売、マーケティング、R&Dを統括する。
インド
Bangalore T&Iセンターは幅広い開発を担当する。
ともに
2013年稼働の予定。

SABICは現在、アジアの13の主要市場で、41事務所、10製造工場、5Technology & Innovation Centerを有し、2桁の成長を誇っている。


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


 

2011年3月期決算が出揃った。

化学会社(医薬を除く)の営業損益対比 (2011年3月期の営業損益の順)

 

三菱ケミカルHDの営業損益の金額、伸びは驚異的。
三菱レイヨンの買収の影響も大きい。

信越化学は2008/3月期、2009/3月期の営業損益に大きく未達で、三菱に抜かれた。

信越化学を除く全社で2009/3、2010/3月期を上回っているが、2008/3月期には未達の会社がほとんどである。

2008/3月期にほぼ達したのは、
  
旭化成、東レ、ダイセル

2008/3月期を上回ったのは、
  三菱ケミカル、クラレ、積水化学、日本ゼオン、日本触媒、
チッソ
  (住友ベークライトも上回っているが、これは退職給付会計の数理計算差異によるもの)

クラレはポバール、エバール等機能樹脂の利益が大きい。
 
積水化学は高機能プラスチックスが好調を維持、住宅の利益が増大した。
 
日本ゼオンは合成ゴムの数量増による利益増が大きい。
 
日本触媒は高吸水性樹脂が好調を続け、アクリル酸などの基礎化学品損益が増大した。

2008年3月期はリーマンショック以前で、中国バブルの最盛期である。このような好況の再現は、現状では考えにくい。
むしろ、今期の状況は出来過ぎかも分からない。

ーーー

医薬会社の営業損益対比


各社の増減益の主たる理由は以下の通り。

武田   米国で特許切れのプレバシドの大幅減収、円高影響(-607億円)など
     
アステラス   円高影響(-473億円)、OSI買収による無形資産償却(-200億円
     
エーザイ   前期発生のAkaRx買収に伴うインプロセス研究開発費、ファイザーに対する提携費用の減少
     
第一三共   ランバクシーの営業損益 63億円→277億円
     
田辺三菱   研究開発費減(172億円):前期に一時金100億円あり。
     
中外   タミフル出荷大幅減
     
大正   売上総利益増 83億円、研究費減44億円
     
大日本住友   Sunovion Pharmaceuticalsの特許権等償却増(-242億円105億円→347億円)、武田からの一時金100億円

 

 


目次、項目別目次

  https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


 

復旧作業が難航している東京電力の福島第一原発をめぐり、東京都内の元技術者が独自に「暴発阻止行動隊」として高齢者に作業への参加を呼びかけている。

代表者は山田恭暉氏。
1962年に東京大学工学部冶金学科を卒業、住友金属工業に入社、1989年に退社し、ボランティア活動をしている。

汚染された環境下での設備建設・保守・運転のためには、数千人の訓練された有能な作業者を用意することが必要で、現在のような下請け・孫請けによる場当たり的な作業員集めで、数分間の仕事をして戻ってくるというようなことでできる仕事ではない。

このため、身体の面でも生活の面でも最も放射能被曝の害が少なくて済み、しかもこれまで現場での作業や技術の能力を蓄積してきた退役者たちが力を振り絞って、次の世代に負の遺産を残さないために働くことができるのではないかとしている。

「決死隊」という見方は否定、被曝を最小限に抑えて作業したい、としている。

原則として60歳以上、現場作業に耐える体力・経験を有するいう条件で行動隊参加者を募集しており、5月23日時点で行動隊に165人の応募があり、賛同・応援者は796人、カンパ1,843,200円が集まっているという。

東電側や国会議員らにも接触している。

プロジェクトのホームページは http://bouhatsusoshi.jp/、各国語のページもある。
この提案文を多くの方に転送してほしいとのこと。

これについて政府・東電統合対策室事務局長の細野豪志首相補佐官は、「非常にありがたい、献身的な行動で、気持ちは受け止めたい」と述べ、「シニアの皆さんの活躍の方法はないか」ということを東京電力に投げかけていることを明らかにした。
ただ、「原発の中の経験があって、すぐに働ける人でないと難しい」とも発言。現段階では必要性を否定した。
(朝日新聞)

 

付記

  発起人の1人で東京海洋大学名誉教授の塩谷亘弘氏のインタビュー
    
http://news.livedoor.com/article/detail/5581575/

 

付記

  福島原発行動隊に関する書籍が発行された。   

 


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


 

ソフトバンクの孫正義社長は4月20日、太陽電池など環境エネルギーの普及を促進するため、「自然エネルギー財団」を設置すると発表した。世界中の科学者ら約100人に参加を促し、政府への政策提言などを行う。

福島第1原発の事故を受け、自然エネルギーへの転換を主張。東日本大震災の被災地域を中心に「東日本ソーラーベルト」を作る構想などを提案したほか、普及促進策として自然エネルギーで発電された電力の全量買い取り制度の導入も求めた。

「太陽電池の輸出国として世界最大のソーラーベルトを作ろう。もう一度日は昇る。希望あふれるビジョンを作ろう」と語った。

ーーー

ソフトバンクは大規模太陽光発電所(メガソーラー)を全国に10か所建設する計画を検討している。

一般家庭6万世帯分の電力をまかなう計200メガワット規模のメガソーラーを開業させる。
シャープなどが太陽光パネルを供給。総額約800億円を見込む建設費用はソフトバンクが大半を負担するが、自治体に各1億円程度を出資してもらうことも検討するという。

埼玉県の上田清司知事は5月21日、ソフトバンクが79億円、県が1億円を拠出して県内に建設する方針で調整を進めていることを明らかにした。

関東地方知事会には5月25日に説明する。
関西広域連合は、大阪府の橋下徹知事の仲介で、5月26日に大阪市内で開かれる広域連合の会合に孫社長を招き、協議する。

ーーー

これとは別に、孫正義氏は個人的に、東日本大震災の被災者支援や復興資金として100億円を寄付する。

このうち40億円は、ソフトバンクや被災自治体が6月上旬に設立する公益法人「東日本大震災復興支援財団(仮)」に寄付し、震災遺児や被災地の非営利組織(NPO)活動の支援などに使ってもらう。

残りの60億円の寄付先は、日本赤十字社と中央共同募金会に10億円ずつ、日本ユニセフ協会など震災遺児への支援を行う公益法人に計6億円、岩手、宮城、福島3県には10億円ずつ、茨城、千葉両県には2億円ずつとなっている。

ーーー

孫正義氏は4月22日、ソフトバンク本社で行われた自由報道協会主催の会見で構想を明らかにした。 

   会見の詳細 http://news.livedoor.com/article/detail/5514784/ 
   
説明資料   エネルギー政策の転換に向けて

概要は以下の通り。

  日本はまさに国難の時

震災が起きる前は、原子力発電について、賛成、反対の意見も持っていなかった、考えたこともなかった。恥ずかしい話だが、電気はあって当たり前だと思っていた。

ちょうど1年ほど前、運転開始から40年を迎える福島第一原発1号機について、さらに20年間安全に運用できると東電が判断、国に受理された。--- その時に運転を止めていれば、今回の事故は起こらなかった。

今後は稼動40年で原子炉を廃炉していくとして、原発の新規建設も凍結するとなれば、当然、電力は足りなくなる。その代替エネルギー案を考えなければ、建設的な議論はできない。

国のエネルギー白書には原子力の発電コストがKw当たり5~6円で一番安いと書いてあるが、原発の設置許可申請書に書かれた発電原価は15円前後。これは電力会社が申請した数字だ。矛盾している。

今回の事故を受けて保険コストも跳ね上がる、地域対策費も上がる。原子力発電は割高な発電方法なのだ。

  

  エネルギー政策転換の年

2011年をエネルギー政策転換の年と位置付け、個人としての寄付10億円で自然エネルギー財団を設立する。

これはスタートの原資として、世界100名のトップ科学者との意見交換の場を作る。シンクタンクのようなもの。
自然エネルギー発電にはいろいろある。どれがいいのかはこれから勉強して行く。

   太陽光発電

太陽光発電を否定する意見の多くは、曇りや雨のとき、発電出来ないというもの。しかし、天気の悪いときには、火力発電を使えばいい。バッファとして考えている。

他国では太陽光発電がどんどん伸びている。なぜか。それは電力会社が作った電気を買い取るから。政府の方針で、電力会社に買取の義務を負わせた。作った電気を全て買い取る、全量買取制度の制定が今何より優先されなければいけない。

   風力発電

世界では伸びている。日本ではまったく伸びない。
これも、電力の買い取り価格を低く設定し、採算が合わないようにしている電力会社の思惑のせいだ。

北海道や東北、九州の潜在的発電能力は、日本全国の電力需要を満たすほどの量がある。


   地熱発電

世界の地熱発電設備の75%は日本製。なのに日本で地熱発電が進まないのも、電力会社の買い取り価格が不当に安いため。

地熱資源地の82%は国立・国定公園内にあり、自然公園法で開発を制限している。国がその気になれば、開発はすぐに始められる。

-----

自然エネルギー財団では、日本の風土に一番合った発電方法を精査し、提言して行く。

「40円/Kwhでの電力の買取を20年間の全量買取。」
この1行の法案で、日本の電力は解決する。

2011年エネルギー政策転換の年、批判に終わらない、建設的な議論をしましょう。

ーーー

なお、説明資料のなかに、原発と太陽光発電のコストが逆転との図がある。

出典 John O. Blackburn and Sam Cunningham,
Solar and Nuclear Costs - The Historic Crossover - Solar Energy is Now the Better Buy, NC WARN, (July 2010)

これについては池田信夫氏がブログで批判している。(再生可能エネルギーは原発の代わりにはならない

彼の引用しているNC WARNなる反原発団体のパンフレットの数字には、何の客観性もない。
たとえばアメリカのエネルギー省の予測では、2016年でも太陽光(Solar PV)のコストは原発(Advanced Nuclear)のほぼ2倍だ。

しかもこれはワットアワーの比較である。原子力はコンスタントに電力を供給できるが、太陽光発電の稼働率は12%。今回の計画停電のような 夜間のピークには役に立たない。

したがって孫氏の話の前提が間違っているのだが、かりにそれが正しいとしても、アメリカで起こったことが日本で起こる保証はない。再生可能エネルギーには 広い土地が必要で、日本の面積はアメリカの1/25。しかも平地がその3割しかなく、アメリカのような砂漠はない。

ーーー

孫氏は会見ではこの資料には触れておらず、原発と太陽光発電のコストが逆転したとは言っていない。

原子力の発電コストがエネルギー白書にあるKw当たり5~6円ではないのではないか、今回の事故を受けて保険コストも跳ね上がる、地域対策費も上がるため、原子力発電は割高な発電方法なのだとしているだけ。

こんな資料もあるといっているだけではないか。


目次、項目別目次

  https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。

原油、ナフサの価格情報は https://www.knak.jp/


武田薬品は519日、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed A/Sを買収すると発表した。
同社の株式保有者と株式譲渡契約を締結した。両社の取締役会において全会一致で承認されている。

買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(1.1兆円)。
武田の既存事業と重複するため買収対象外の米国の皮膚科事業(
Nycomed US Inc.)の株式を除き、100%取得する。手元資金と借入(60007000億円)により現金で買収する。

規制当局の承認を得て、90120日の間に買収完了、子会社化する。

Nycomedの株主は下記の投資ファンド
 Nordic Capital  41.2%
  DLJ Merchant Banking 25.6%
  Coller International Partners 9.7%
  Avista Capital Partners 8.9%
  Others  14.6%

武田薬品の11年3月期の売上高は1兆4193億円で、世界の製薬業界での順位は16位。
医療用医薬品売上高の5割強を海外で得ているが、海外売上高の内訳では米欧が9割以上を占め、アジアなどの新興国は1割未満にとどまる。

Nycomed を傘下に収めることで武田薬品は世界の製薬12位に浮上するとともに、欧州を強化し、Nycomed強い新興国市場へ本格参入し、欧米の製薬大手を追撃する。

買収により、2015年の武田の地域別シェアは以下の通り変化する。

  2010 2015
日本 40% 35%
北米 42% 23%
欧州 15% 21%
アジア/新興国 3% 21%

ーーー

Nycomed A/Sの概要は以下の通り。

 ・欧州及び新興国におけるリーディングカンパニー

 ・事業構成:
   医療用医薬品
87% ブランド品を中心
   一般用医薬品
13% 新興国でニーズが高い

 ・地域別売上高

 ・最近の業績(百万ユーロ)

  201012月期 200912月期
売上高 3,170.6 3,228.0
粗利益 2,181.7 2,332.7
営業利益 三角44.2 288.0
当期純利益 三角229.1 232.7
調整後EBITDA 850.5 1,074.6

 企業結合会計上の在庫価値差異などを調整した後のEBITDA
 EBITDAearnings before interest, taxes, depreciation, and amortization

売上高の減少は主に、主力の抗潰瘍薬 pantoprazoleが各地で特許切れとなり、米国でジェネリック品が出現したことによる。粗利益減はそれによるpantoprazoleの値下がりの影響が大きい。

2011年予想は、新興国での成長がpantoprazoleの売り上げ減を上回るとみている。

武田では、買収のメリットを以下の通りとしている。

 1)同社の成長戦略への寄与
  ・欧州全域における事業基盤の強化

  ・医薬品市場の成長を牽引する新興国における事業拡大
     
2005-10年の世界の医薬品市場成長の約半分は新興国の成長による。
     
Nycomedは新興国(ロシア、中国、ブラジル、トルコ、メキシコ、他)で前年比約30%の成長を実現
     
2010年ベース新興国向け売上高:武田 178億円、Nycomed 1,248億円 →合計 1,426億円     

  ・欧州および新興国でNycomedのベースを利用した武田の製品・パイプラインの価値向上

  ・
Nycomedの重症慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬Daxas®をドライバーとした力強い成長
     
Daxasは明確な差別化が可能な経口投与薬で、先進国、新興国ともに高いポテンシャル。
     
FDAEMAで販売許可取得済みで、2011年には多くの新興国で承認取得の見込み。
     推定患者数は、米国2800万人、欧州2000万人、ロシア1300万人、中国4100万人、ブラジル1000万人。

 2)同社の業績に買収直後から貢献
  ・年間売上高を
30%強改善
  ・買収に伴う特殊要因除きの営業利益を
40%強改善
  ・買収に伴う特殊要因除きの
EPS30%強改善

 3)グローバルでかつ多様な人材が加わることによる企業文化の変革推進

ーーー

今回の武田薬品の1.1兆円の買収は、国内製薬会社による買収では過去最大で、日本企業全体でも上位3位に入る。

日本企業による買収 (日本経済新聞による) 

  買収対象 金額(億円) 時期
日本たばこ産業 ギャラハー(英) 22,530  2007
ソフトバンク ボーダフォン日本法人 19,172  2006
日本たばこ産業 RJRナビスコ米国外事業 9,424  1999
武田薬品工業 ミレニアム 8,998  2008
第一三共 ランバクシー 4,994  2008

ーーー

武田薬品の2010年度を初年度とする「10-12中期計画」では、「過去の成功体験と決別し、新たなタケダへ成長する変革期」と位置付け、さらなる発展に道筋をつけていくとしている。

経営方針の実現するための戦略のなかの「持続的な成長」に「進出地域の拡大」がある。

市場規模が大きな米国、欧州でのプレゼンス向上に引き続き取り組んでいくことに加え、グ ローバルにバランスのとれた売上・利益の地域ポートフォリオを実現するために、新興国を含め、今後、高い市場成長が見込まれる国や地域への進出を加速し、 2012年度までに当社グループの世界市場におけるカバー率約90%を目指していきます。

武田薬品の長谷川社長は以下の通り述べている。

先進国中心の現在の事業だけでは当面、売上高も利益も低下傾向が続く。
一方で新興国市場は急成長しているわけで、ここをギブアップすることは、企業として成長をあきらめる「敗北宣言」と同じだ。

 

IMSの予想によると、先進国の医薬品市場が3-5%の伸長に対し、医薬品新興国は14-15%の伸長が期待されている。


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


住友化学

前年比では大幅な増収増益だが、2008/3月期の損益レベルには達していない。
(最高益の2007/3月期の営業損益は 1,396億円)

単位:億円 (配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 18,965 1,024 928 631 6.0 6.0
2009/3 17,882 21 -326 -592 6.0 3.0
2010/3 16,209 515 350 147 0.0 6.0
2011/3 19,824 880 841 244 3.0 6.0
前年比 3,615 365 491 97 3.0 0.0
2008/3比) (859) (-144) (-87) (-386) (-3.0) (0.0)
2012/3 21,200 800 870 500 6.0 6.0

当初の当期損益予想では、20%出資し豪州農薬メーカー Nufarmの時価が大きく下落したため、のれん相当額を一時償却して特別損失287億円を計上し、25億円の利益としていた。本年に入り、同社の株価が回復したため、評価損を取り消した。

なお、営業外損益に含まれる持分法損益は前年度が70億円の赤字であったが、当期は108億円の利益となり、178億円の損益改善となった。

税引前損益は757億円となったが、繰延税金資産を191億円取り崩して税金に加えたこともあり、税引後は409億円となった。
これから少数株主持分164億円を差し引き、当期損益244億円となった。

なお、2012/3月期で同社及び一部の連結子会社で減価償却方法を定率法から定額法へ変更する予定で、営業利益予想にはこれによる利益250億円が含まれている。

営業損益対比(億円)              全社費用を配賦せず
2008/3 2009/3 2010/3 2010/3 2011/3 増減
基礎化学 106 -153 -27 13 213 200
石油化学 45 -303 -53 -2 111 113
精密化学 114 16 15 36 1 -35
情報電子化学 63 -10 33 63 261 198
農業化学 209 244 259 293 224 -69
医薬品 465 324 293 299 269 -30
その他 37 -79 -5 67 58 -9
全社 -15 -17 -2 -254 -258 -4
合計 1,024 21 515 515 880 365

  区分そのものはほとんど変わらないが、全社費用(主に全社共通研究費)を配賦せず、「全社」に入れた。

2008/3月期対比では基礎、石化の増益は全社費用配賦の影響がかなり大きい。
情報電子化学は実質的にも大増益。
医薬品については下記参照。

大日本住友製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
特許権等
償却費
同左
算入前
算入後 中間 期末
2010/3 2,963 -105 461 356 338 210 9 9
2011/3 3,795 -347 657 310 286 168 9 9
前年比 833 -242 195 -47 -52 -42 0 0
2012/3 3,620 -297 467 170 155 85 9 9

2009年10月に米Sepracor を買収した。(その後 Sunovion Pharmaceuticals と改称)
買収に伴い、特許権(1,197百万ドル)は品目ごとに償却、ノレン(914百万ドル)は20年償却とした。

Sunovion Pharmaceuticalsの当期の業績は、上記の償却費を除くと、営業利益で230億円の益となっている。

2011/3月期には武田薬品との間で締結した非定型抗精神病薬の欧州での開発・販売提携に関する契約に基づく契約一時金100億円を売上高、利益に計上している。

ーーー

三井化学

同様に、前年比では大幅な増収増益だが、2008/3月期の損益レベルには未達。

特別利益に退職給付引当金戻入額 146億円がある。
2010年4月に退職金・年金給付水準の見直しを行い、給付利率の変更等を実施した。

単位:億円 (配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/3 17,867 772 661 248 6 6
2009/3 14,876 -455 -508 -952 6 3
2010/3 12,077 -95 -131 -280 0 3
2011/3 13,917 405 389 249 3 3
前年比 1,840 500 520 529 3 0
2008/3比) (-3,950) (-366) (-273) (0) (-3) (-3)
2012/3 15,500 450 430 210 3 3

営業損益対比(億円)         セグメント変更
2008/3 2009/3 2010/3 2010/3 2011/3 増減 差異内訳
数量差 交易条件 固定費他
基礎化学品 335 -320 -76 石化 -34 128 162 53 30 79
基礎化学品 -48 204 252 39 164 49
機能材料 359 -160 -76 ウレタン -21 -90 -69 22 -103 12
機能樹脂 -44 72 116 64 1 51
加工品 8 14 6 19 -12 -1
先端化学品 108 73 86 機能化学品 74 100 26 10 8 8
その他 34 1 11 その他 11 1 -10 0 0 0
全社 -63 -49 -40 全社 -41 -25 16 - - -
合計 772 -455 -95 合計 -95 405 500 207 88 205
            * 変更前後のセグメント区分(筆者編集)は、必ずしも対応していない。

石化、基礎化学品はほぼ2008/3月期の損益水準に戻った。
機能材料系統(ウレタン、機能材料、加工品など)が2008/3月期比で減益の理由と思われる。


目次、項目別目次

https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


BP2011114日、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意したと発表した。

Rosneft BPの株式5%を購入、見返りにBPRosneft株式 9.5%を購入する。
BPRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。)

両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区を共同で開発する。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携

この契約の有効期限はBPの要請で1か月延長され、2011516日となっていたが、問題点の決着がつかず、期限切れにより白紙となった。

経緯は以下の通り。

BPはロシアではAlfa Access Renova(AAR)との50/50JVTNK-BPを持っているが(付記 正しくは一般株主が5%で、BPAlfa Access Renova group 45%ずつ。)AARを構成する4人の新興財閥が127日、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主協定に違反するとしてロンドンの高等法院(High Court)に訴えた。

AARの株主

Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman German Khan 50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。

4人は、BPが株主契約に基づき、ロシアではTNK-BPを通して活動することを求めている。
Putin首相と腹心のIgor Sechin副首相がバックアップする取引への公然とした挑戦であるとして注目された。

21日、裁判所は調停での問題解決を命じた。BPは同日、調停にかけることを発表した。

調停委員会は201151日、下記の決定を下した。

  ・TNK-BPRosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
  ・これを条件に、
BPRosneftの株交換を認める。
    但し、株交換は投資目的に限られ、議決権は独立の受託者に供託、双方は役員を派遣しない。

これに対しRosneft TNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、
AARが保有するTNK-BP株のBPRosneft による買い取りを軸に和解交渉が進められた。

報道によると、BPは買い取り価格を当初の200億ドル台後半から320億ドルにまで歩み寄ったが、AARはこれを拒否した。

この結果、時間切れでBPRosneftの契約は白紙となった。

ーーー

BPAAR517日、今後もTNK-BPの成功のため、努力を強めるとの声明を発表した。

両社とも
Rosneftとの話し合いを続けることが重要との認識を示した。

しかし、RosneftBPの代わりにShellExxonと話をしていると述べたとの報道もある。

 


目次、項目別目次

  https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

世界最大の酸化チタンメーカーのDuPont511日、需要増大に対応し、年産35万トンの増設計画を発表した。

1)メキシコのAltamira工場に5億ドルを投じて、年産20万トンのプラントを新設、2014年末の完成を目指す。

2)既存の下記 5工場の手直しで、3年間で年産15万トンの能力増を達成する。
    
ミシシッピー州DeLisle、テネシー州 New Johnsonville、デラウェア州 Edge Moor
    メキシコ Altamira台湾 観音(Kuan Yin
    (これらは全て、塩素法を採用。同社はまた、フロリダ州Starkeで鉱山を運営している。)

DuPont 200511月に山東省東営市の経済開発地区で当初能力年産20万トンの酸化チタンを生産することで地方政府と合意書を締結した。この計画は環境問題で難航しているが、引き続き、推進する。

2010/7/9 ChemChina、山東省で酸化チタン生産開始 

これが完成すれば、55万トンの増強となる。
DuPontの現状の能力不明、ご存じの方がおられれば教えてください)   

付記
   
早速下記の情報をいただきました。

2007年時点で世界の需要が490万トンでその21%DuPontが供給しているとの記述があります。
およそ
100万トンの能力があると思います。

ーーー

世界の他の主要メーカーは以下の通り。

1)Huntsman Pigments7か国に工場、能力56万トン

ICIの酸化チタン事業はポリエステル事業と合わせDuPontへ売却する合意が一旦成立したが、酸化チタン事業については紐余曲折を経た後、19996月末にHuntsmanに売却された。

なお、下記 Tronox 参照

2)National Titanium Dioxide(サウジ):能力77万トン

中東/北アフリカでの唯一のメーカーで、サウジのYanbu Al-Sinaiyah 工場で1991年から生産しており、2002年に3万トン増強して10万トンになった。設計能力は18万トン。

20072月に、Lyondellから旧Millennium Inorganic Chemicalsの酸化チタン事業を負債込みで12億ドルで買収。
Millennium Inorganic Chemicalsは能力67万トンで、世界第2位の酸化チタンメーカー。
米国に2箇所(Ashtabula, OH と Baltimore, MD)、ブラジル(Camacari)、英国(Stallingborough)、フランス2箇所(LeHavre とThann)及び豪州2箇所(Australindに2つ)の工場。

2007/3/5 Lyondell、酸化チタン事業をサウジ社に売却

3)Kronos Worldwide, Inc.5か国6工場で能力53.2万トン、ノルウェーHaugeに鉱山

ノルウェー Fredrikstad、ドイツ Leverkusen、ドイツ Nordenham
ベルギー
Langerbrugge、カナダ Varennes
米ルイジアナ州
Lake Charles HuntsmanとのJVLouisiana Pigment Co.

4)Tronox, Inc.46.5万トン

ミシシッピー州Hamilton 22.5万トン
オランダ
Botlek 9万トン
豪州 
Kwinana 15万トン(最近、4万トン増設が完了した)
     
豪州はTronox と南アのExxaro Resources 50/50JVのTiwest

同社は2006年にKerr-McGee からスピンオフした。(Kerr-McGeeはその後、Anadarkoが買収)
その際に、Kerr-McGeeから環境汚染の復旧費用と訴訟費用などを引き継いだが、これが主因で20091月にChapter11を申請した。

20098月、HuntsmanTronox の主要資産の買収の"stalking horse" 契約を締結したと発表した。
   
2009/9/5 Huntsman、再生法適用の酸化チタンメーカーの資産買収 

しかし、同年末にTronox はこの契約を破棄した。
   
2009/12/25  Huntsman による酸化チタンメーカーTronox の資産買収 破談に

2011214日、Tronox Chapter 11 から離脱、既存事業を再建した。

 

 


目次、項目別目次

 https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ