「no」と一致するもの

2009年のイグ・ノーベル賞の授賞式が10月1日、ボストン近郊のハーバード大学で行われた。

パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量する研究で、北里大学の田口文章名誉教授と共同研究の北里大の大学院生だった中国人留学生2人(宗国冨 Song Guofu、張光磊 Zhang Guanglei 両氏)が生物学賞を受賞した。

2007年は山本麻由さんが「牛糞からバニラの芳香成分vanillin の抽出」で化学賞を受賞したが、本年はパンダのフンである。

パンダが消化しにくいササを主食にすることに注目、フンを生ゴミに入れたところ、通常の倍のスピードで分解したことから、パンダの体内に分解菌がいることを発見、この菌を分離し、生ゴミを分解して減量できることを実証した。

授賞式に出席した田口名誉教授は「パンダは見かけもユーモラスだが、ふんもほかの動物のふんとはかなり違う。主食のササがほとんど消化されずに出てくるので、実は悪臭はない。実験は面白い経験でした」と述べた。

「パンダから分離した耐熱性酵素群を産生する高温細菌による生ゴミ処理の試み」

To establish an efficient method for the microbial treatment of kitchen refuse, experiments were performed to isolate heat-stable multi-enzyme-producing thermophilic bacteria and to verify functional activities of the isolates for the complete decomposition of kitchen refuse.

Five Bacillus strains - B.amyloliquefaciens FTP148, B.amyloliquefaciens FTP2414, B.subtilis FTP237, B.Licheniformis FTP136, and B.licheniformis FTP2530 - were successfully isolated from feces of the Giant Panda.

Using a commercial waste-treatment device, kitchen refuse was treated with the five strains with the following results. When 1 kg per day was treated for 4 weeks, a total of 24 kg of mixed refuse consisting of green vegetables and fish remains as well as raw and/or fried potatoes was reduced to only 0.98 kg and a final digestive rate of 96% was obtained. It is noteworthy that the internal temperature of the compost mass reached a peak of 72.

These results indicate that the novel thermophilic bacterial strains isolated from Giant Panda feces may be useful for high-performance waste treatment.

(生物工学会誌 79(12) pp.463-469 2001/12/15)

その他の受賞者は以下の通り。

獣医学賞 Catherine Douglas
Peter Rowlinson
(Newcastle University, UK)
名前をつけた乳牛の方が、名前のない乳牛よりも多くの乳を出すことを調べた。
平和賞      Stephan Bolliger
Steffen Ross
Lars Oesterhelweg
Michael Thali
Beat Kneubuehl
(University of Bern, Switzerland)
頭を殴るのに、ビールの入ったビール瓶か、空のビール瓶のどちらがよいかの研究。
経済学賞 破綻したアイスランドの4銀行
Kaupthing Bank, Landsbanki,
Glitnir Bank,
Central Bank of Iceland
)の役員
小銀行がいかにして急速に大銀行になるか、また、その逆の研究。
同様のことが国の経済にも当てはまることも調べた。
化学賞 Javier Morales
Miguel Apátiga
Victor M. Castaño
(Universidad Nacional Autónoma de México)
液体、特にテキーラからのダイヤモンドの製法
薬学賞 Donald L. Unger
(USA)
指の関節炎の原因を調べるため、左手の指の関節を60年にわたり毎日、ポキッと鳴らした。(右手の指の関節は鳴らさず)
物理学賞 Katherine K. Whitcome
(University of Cincinnati)

Daniel E. Lieberman
(Harvard University)
Liza J. Shapiro
(University of Texas)
妊娠女性は何故 転倒しないのかの分析
文学賞 アイルランド警察 ポーランド語の「運転免許証」のPrawo Jazdyを人の名前と勘違いし、この名前で50枚以上の交通違反切符を切った。
公衆衛生賞 Elena N. Bodnar
Raphael C. Lee
Sandra Marijan
(USA)
緊急時に2つのガスマスクになるブラジャーの発明
(1枚は本人用、他は近くにいる人用)
数学賞 Zimbabwe準備銀行頭取 1セントから100兆ドルまでの紙幣を発行し、国民に日常、小さな数字から膨大な数字までを扱えるようにした。

参考

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞

付記

公衆衛生賞のGas-Mask BraはTime 誌の2009の5つの最悪の発明の4位に選ばれた。

1位はオムロンが開発した笑顔をチェックするシステム「スマイルスキャン」。
接客サービスの向上などが狙いのシステムで、カメラ映像の中から顔を認識して「笑顔度」を0~100%で測定する。オムロンによると、鉄道会社の駅員や病院の看護師らに利用が広がっている。

Time's 5 Worst Inventions:
1.
"Smile Checks"
2.
小説 "Pride and Prejudice and Zombies"
  Jane Austen の小説 Pride and Prejudice の登場人物と舞台だけを借りて、ゾンビアクションにした小説
3. 犬用のSnuggie
  (Snuggie:フリース素材のブランケットに袖が付いた今アメリカで超話題商品)
4. The Gas-Mask Bra
5.
自動的に生徒の作文を採点する英国で使われているコンピュータ。
  


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Abbott Laboratories929日、Solvayの医薬品事業を現金45億ユーロで買収することで合意したと発表した。
これにより、
30億ドル以上の売上高が加わる。

Abbott 2008年の売上高は295億ドル(うち医薬品は167億ドル)で、神経系治療薬などが柱。主力製品の特許切れが今後相次ぐため、商品群の拡充を模索していた。

買収をテコにSolvayが得意とする循環器治療薬やホルモン治療薬を取り込む。東欧やアジアなどにSolvayが展開する販売網を使い、新興国での販売拡大を狙う。

取引条件は現金での45億ユーロの支払いのほか、2011年から2013年の期間に一定の目標を達した場合に追加で3億ユーロが支払われる。このほか、一定の債務が引き継がれるが、Solvay では4億ユーロとみており、Solvay側は52億ユーロの取引とみている。

なお、現在AbbottSolvayの高脂血症治療薬 fenofibrate の米国での販売権をもらってロイヤリティを払っているが、全世界の権利を引き継ぐ。

また、Solvayの年間5億ドルのR&D投資を引き継ぐこととなり、この後のAbbottの成長に資する。

Solvayは本年4月に外部報道を受け、医薬事業についていろいろのオプションを検討している旨の発表をしていた。

ーーー

Solvay の医薬品事業の2008年の業績は、売上高が2,699百万ユーロ、税、金利控除前経常損益(REBIT)は509百万ユーロとなっている。

医薬品事業の内容は以下の通り。(百万ユーロ)

分野 2008年
売上高
備考
Cardiometabolics
 心臓血管分野
     812 2005年に買収したFournier Pharma 高脂血症治療薬fenofibrateが中心
Neuroscience
 神経科学
     411 抗うつ薬 fluvoxamine
Parkinsons
病治療薬 DUODOPA
インフルエンザワクチン   137  
膵酵素   217  
消化器病治療薬   243  
男性及び女性ホルモン   648  
その他   231  

地域別

欧州  46%
NAFTA  40%
Mercosur   2%
アジア太平洋   8%
その他   4%

ーーー

Solvay 2008年実績は以下の通り。(百万ユーロ)

  Sales REBIT* 同左2007
Pharmaceuticals  2,699  509  457
Chemicals  3,096  238  345
Plastics  3,695  264  441
Corporate    -46  
Total  9,490  965  

 *REBITRecurrent Earnings (経常損益)Before Interest and Tax

医薬品事業は売上高で全社の28%を占める。
利子・税金控除前の経常損益では、2008年は特に化学品、合成樹脂の損益が悪化したため全社の53%を占める。

この医薬品事業の売却理由として、同社は次のように説明している。

外部要因
 ・業界の急速な変化
   承認プロセスが複雑で費用がかかる
   医療コストに対する圧力、etc

内部要因
 ・3部門全てで多額の投資が必要
 ・化学品、合成樹脂部門で持続可能性の改善が必要
 ・医薬部門は環境変化に対応するだけのサイズ以下

これらを検討した結果、Solvay事業(医薬及び非医薬)にとって医薬部門売却がベストと判断検討した。

他のオプション(全て問題あり)
・現状維持 
・上場
・買収
・合併

http://www.solvaypress.com/static/wma/pdf/1/6/5/0/6/20090928_Presentation.pdf

Solvay では売却収入を化学品と合成樹脂部門での高付加価値分野、戦略計画に再投資するとしているが、それについては検討中としているのみである。

同社の化学品部門は4つに分かれる。
1)Minerals
   ・ソーダ灰、誘導品
   
Advanced Functional Minerals
2)Electrochemistry, fluorinated products
   ・苛性ソーダ、エピクロルヒドリン
   ・フッ素製品
3)Oxygen
   
Hydrogen peroxide
   
Persalts
4)Organic (Molecular Solutions)

合成樹脂部門は2つ。
1)Specialties
   
Specialty Polymers
      high and ultra-high performance polymers like fluorinated Polymers,
            elastomers and fluids, barrier materials, polyarylamides,
            polysulfones, high performance polyamides, liquid crystal polymers
   
Inergy Automotive Systems (50/50 JV with Plastic Omnium)
2)Vinyls
    ・電解、VCM、PVC、コンパウンド
   
Pipelife (50/50 JV with Wienerberger)


中規模の医薬事業が大変であることは事実だが、化学品、合成樹脂でどの分野に投資するのであろうか。
医薬事業の穴を埋められるだろうか。


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スペインと中国のJVのGanzi Atlantic Silicon Industry920日、四川省の甘孜(Ganziカンゼ)・チベット族自治州の州都・康定(Kangding ダルツェンド)県で金属シリコンの第一期の起工式を行った。

Ganzi Atlantic Silicon はスペインのFerroatlantica (Atlantic Ferroalloy)75%、現地のGanzi Shunda Silicon Industry25%出資する。

820百万ユーロを投じる事業は2期に分かれる。
第一期は金属シリコン
50千トンで、第二期は金属シリコン50千トンと太陽電池用ポリシリコン10千トンとなっている。
水力発電所も建設する。
5,600人の雇用が生まれる。

合計100千トンの金属シリコンと10千トンのポリシリコンプラントは2011年に完成するが、2013年の発電所完成後に本格商業生産を開始する。

20076月にスペインのカルロス国王が参加し「四川ースペイン経済交流」が開催され、その席でFerroatlanticaJuan Miguel Villar Mir 社長が四川省に世界最大の金属シリコン工場を建設すると発表、その後立地を探していた。(当時は能力150千トンとしていた)

本年4月に四川省成都市で開催された中国・スペインフォーラム第5回会合で調印された。

ーーー

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Ferroatlantica はスペインの建設・エネルギーなどの総合事業大手Grupo Villar Mir に帰属する。
スペインに Cee、Dumbria、Sabon、Boo の4工場を持ち、金属シリコン、フェロシリコン、フェロマンガン等を製造販売している。

1998年にベネズエラのCVG-Fesilvenの80%を取得、社名を Ferroven に改称した。

Grupo Villar Mir2005年にPechiney Électrométallurgieとフランスの子会社Invensil 及び南アのシリコン精錬所を買収、 2006年にPechiney ÉlectrométallurgieFerro Pem と改称した。
フランスに
AnglefortChateau FeuilletLaudunLes ClavauxMontricherPierrefitte 6工場、南アにPolokwane工場を持つ。 

現在のグループのこの事業関連の能力は以下の通り。(単位:トン)

  Ferro Atlantica Ferroven  Ferro Pem TOTAL
Silicon 40,000   183,000    223,000
Ferrosilicon 79,000 96,000 20,000 195,000
Silicomanganese 218,000     218,000
Ferromanganese 221,000 38,000   259,000
CaSi     18,000 18,000
Inoculants and nodulisants     69,000 69,000
Pulverised and Passived 10,000     10,000
Paste of electrodes 6,000 14,000   20,000
Microsilica (Silica Fume) 32,000 22,000 80,000 134,000

 

参考 日本の多結晶シリコンの状況


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2007年2月15日に中国のPTAと原料パラキシレンの状況を報告した。

2006年末の中国のPXの能力は3,830千トン、それに対し需要は4,360千トンだが、PTAの伸びで2007年には需要は6,150千トンに増大する。

PTA/PET業界の急成長に伴う原料PX不足に対応するため、中国政府は6つの大規模PXプラントの新設と、4つの増設計画を承認している。ウルムチ石油化学は増設で一気に100万トン体制となる。

PX新増設計画(単位:千トン)
  社名 立地 能力
新設 福建聯合石油化工(ExxonMobil/Aramco/Sinopec) 福建省泉州    700
金陵石油化学  江蘇省南京   600
茂名石油化学 広東省茂名   600
大連福佳大化石油化工 遼寧省大連   450
中国海洋石油(CNOOC)/Kings Group (60/40JV) 広東省恵州   800
騰龍アロマティックス(Dragon Aromatics) 福建省厦門   800
合計    3,950
増設 ウルムチ石油化学     930
天津石油化学、揚子石油化学、上海石油化学     900
合計    1,830
総合計    5,780

シノペック上海石油化学は915日、上海市金山地区でパラキシレン起業の試運転を開始した。

30億人民元を投じたもので、能力はパラキシレンが60万トンにベンゼンが28万トン。20082月に建設を開始したもので、技術はUOPからライセンスを受けた。原料ナフサは自給、製品は主に市場に販売する。
同社は既に
25万トンのパラキシレン、40万トンのPTA28万トンのベンゼンをもっており、パラキシレン能力は85万トンとなる。

本年2月に中国政府は経済危機に対応して石油化学部門の景気振興策を発表したが、本計画はそれに含まれている。

このほか、上記の計画のうち、福建聯合石油化工(70万トン)、金陵石油化学(60万トン)、大連福佳・大化石油化工( 45万トン→70万トン)、CNOOC/Kings Group(80万トン)が既に完成している。

福建聯合石油化工(Fujian Refining & Petrochemical
 
 出資:ExxonMobi 25%
   
  Saudi Aramco 25% 
      
Fujian Petrochemical  50%(Sinopec 50/Fujian Government 50)

金陵石油化学:Sinopec Jinling Petrochemical

大連福佳・大化石油化工:大連福佳企業集団(Fujia)と大化集団(Dahua)JV (PTAも)

CNOOC/Kings Group
  中国海洋石油(CNOOC)60%/Kings Group 40%
  PX 80万トン、ベンゼン 105千トン(2009年6月スタート) 

騰龍アロマティックスは公害問題で福建省厦門から古雷半島に移転することとなり、2年遅れで本年に建設を開始した。
   
2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める

ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っている。

なお、茂名石油化学は環境面の承認待ちとなっている。

この結果、2007年1月に総能力は383万トンであったが、本年9月末現在では723万トンに拡大し、ウルムチが完成すれば800万トンを超えることとなる。

2008年のパラキシレンの輸入は3,404千トン、輸出は448千トンでネットで2,956千トンの輸入となっている。
生産量は370万トン程度とみられており、消費量は合計670万トン程度となっている。

このため、現時点で既に供給能力が需要を超えている。今後は輸入は大幅に減少すると思われる。

ウルムチ石油化学は既存能力6万トンを100万トンにする工事を行っており、年末にスタートする予定だが、経営陣は操業開始を出来るだけ遅らせることを主張し、地元の景気刺激と雇用のため早期操業開始を主張する地元政府と争っている。

当初、ウルムチ石油化学はNDRCPTAプラント建設の申請を行った。しかし建設費が40億人民元以上かかることが判明した。
工場から最も近い
PTAプラントは河南省洛陽で、1900kmも離れている。
PetroChinaではPXを生産しても、どうしたらよいのか分からない状況だという。

中国のパラキシレンの能力は以下の通り。(単位:千トン)

Producer Location 2007/1
能力
2009/9
能力
Sinopec 上海石油化学 上海  250  850
Sinopec 揚子石油化学 江蘇省南京  800  800
CNOOC/Kings Group (60/40JV) 広東省惠州    800
青島麗東石油化学 山東省青島  700  700
PetroChina 遼陽石化化繊 遼寧省遼陽  700  700
大連福佳・大化石油化工 遼寧省大連    700
福建聯合石油化工 福建省泉州市    700
Sinopec鎮海煉油化工 浙江省寧波  650  650
Sinopec金陵石油化学 江蘇省南京    600
Sinopec 天津石油化学 天津  390  390
Sinopec 洛陽石油化学 河南省洛陽  215  215
Sinopec 斉魯石油化工 山東省Zibo  65  65
PetroChinaウルムチ石油化学  新疆ウイグル自治区ウルムチ  60  60
Total  3,830  7,230

 青島麗東石油化学は韓国のGS Aromatics 60%、オマーン石油 30%Red Star Chemical Group 10%のJV。
   
2006/11/3 韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始


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LGグループは9月23日、京畿道坡州(Paju)市の月籠産業団地で「LG坡州先端素材団地」の起工式を開いた。
2018年までに4兆ウォン(約2950億円)を投資し、面積84万平方メートル規模の素材専門産業団地を建設する。

坡州市は軍事境界線を隔てて北朝鮮と接する最前線で、市域に非武装地帯がある唯一の市で、板門店は同市にある。

坡州市月篭地域にはLG Display (旧称 LG Philips LCD)の産業団地がある。
173万平方メートルの敷地で、8000人を雇用し、地域経済活性化に寄与している。

LG Displayは本年3月、Pajuの第8世代(2200×2500mm)LCD工場が量産を開始したと発表した。
6月には、同地に500億ウォンを投じ、
2009年後半に太陽電池研究開発用のパイロットラインを建設する他,屋外にテスト用の発電施設を建設すると発表した。

LCDプラントから6km離れた新しい先端素材産業団地では、LG化学とLG Innotekが2018年までに総額4兆ウォンを投資する。

LG化学は2018年までに3兆ウォン(約2210億円)を投資し、液晶パネル用ガラス基板の生産ライン7本を建設し、年5000万平方メートルのガラス基板生産を見込む。LG化学はガラス基板事業を偏光板、二次電池に続く成長源として育成していく方針を立てている。
同社の当初の計画では4300億ウォンを投資するというものであったが、大幅に拡大した。

LG化学の金磐石副会長は、今回の投資について、「未来の成長産業分野で市場支配力を高めることが狙いだ」と話した。
液晶パネル用ガラス基板は、液晶パネルの生産原価の20%以上を占める重要部品。

LG Innotekも2012年までに1兆ウォン(約740億円)以上を投資し、発光ダイオード(LED)によるバックライトユニット、照明用LEDパッケージの生産ラインを建設し、来年5月から本格生産に入る。
同社は2012年に1兆5000億円の売り上げを達成し、世界のLEDパッケージ市場で10%以上のシェアを獲得したいとしている。

LG Innotek 1970年にGoldstar-Alps Electronics として設立され、1995年に LG Electro-Componentsと改称、1999年にLG Precisionと合併し、20005月に LG Innotekと改称した。

現在、次の8つのコア事業をもっている。
  
TunersMotorsPower modulesLCD modulesCamera modules
  
LEDsMCMs(Multi Chip Modules)Car Electronic Components

 


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Clariant はこの1年半で中国で1億ドルの投資を行っている。

同社は9月15日、広州の南の大亜湾にエトキシレート工場を建設すると発表した。2011年初めに稼動の予定で、年産50千トン。
同社にとってエトキシル化は主要技術で、50年以上の歴史があり、欧州、北米、ラテンアメリカに生産拠点を持つが、大亜湾はアジアで初めての工場となる。
隣接する中海シェル石油化学(
CNOOC/Shell)との間で原料のエチレンオキサイドの長期購入契約を締結した。

917日、同社は江蘇省鎮江市で界面活性剤工場をスタートさせた。
最新の
5m2の工場は年22千トン以上の能力をもち、既存工場を補完する。 

本年3月、Clariant 杭州百合化工とのJVの杭州百合科莱恩顔料Hangzhou Baihe Clariant Pigments)が浙江省杭州市で赤色高級有機顔料のキナクリドンの生産に乗り出すと発表した

JV20066月に赤色、黄色の高機能有機顔料を生産する6ラインの稼働を始めた。

同じく3月、五酸化リンの製造のため、雲南省昆明にJV Lufeng Clariant Chemicals を設立した。
JV相手は原料の黄燐の輸出業者のKunming GaoHeng Huagong Chemical Industry
と、長年 Clariantの物流を担当しているPanchem International Trading and Industrial 2社である。2010年初めに稼動の予定。

5月には広州で新しいマスターバッチ(着色及び添加剤)の生産を開始した。
Clariant Guangzhou Masterbatch Ltd, 1995年に設立された。

ーーー

Clariant 1995年夏にSandoz の化学品部門がスピンオフして設立された。

Sandoz はその後19971月にCiba-Geigy と合併し、Novartis となった。
Novartisは同年3月にはCiba-Geigy の化学部門を分離し、Ciba Specialty としている。

Clariant1997年にHoechstからHoechst Specialty Chemicals を買収。
1998年にはCiba Specialty との合併の合意をしたが、破断した。

2000年には英国のファインケミカルのメーカー、BTP Plc.2006年にはCiba Masterbatchesをそれぞれ買収した。
2008年7月に米国を基盤とした
Rite Systems 社とRicon Colors 社を買収・統合したことにより、マスターバッチビジネスにおける世界リーダーとしてのポジションを強化した。

2008年の同社の売上高は8,071百万スイスフラン(7,150億円)。売上高構成は以下の通り。

部門   内訳
Textile, Leather & Paper Chemicals  25% Textile  14%
Leather  5%
Paper  6%
Pigments & Additives  24% Coating business  7%
Plastics business  4%
Special inks, flame retardants, etc  10%
Publication inks, polymer additives, etc  3%
Masterbatches  16%    
Functional Chemicals  35% Oik services, mining services  8%
Personal care, industrial applications,
industrial & home care, etc
 17%
Detergents & intermediates  10%

中国については前身のSandozが1995年に天津第5染料化学工場との間で2つのJVを設立した。

第一はSandoz Chemicals (Tianjin) で、現在はClariant Pigments (Tianjin) となっている。
Clariant 60.0%の出資。

第二は天津華士化工(Tianjin Hua Shi Chemicals)で、Clariant25%出資している。

現在、Clariant は台湾、香港を含むGreater China 13箇所の施設(製造、研究、販売)を持ち、1300人以上のスタッフを雇用している。

 


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花王は916「エコナクッキングオイル」をはじめとするエコナ関連製品の一時販売自粛・出荷停止を行うと発表した。

欧州を中心に、油脂中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters )の安全性について議論がなされていることを受け、2009年6月中旬に分析を行った結果、「エコナクッキングオイル」に、グリシドール脂肪酸エステルが含まれていることを確認した。
油脂の製造工程における一般的な脱臭の過程で副生されるもので、パーム油等の精製植物油にも含まれている。
(エコナクッキングオイルには、グリシドール脂肪酸エステルが一般の油よりも10~182倍 多く含まれると報道されている。)

同社としては、現時点までの情報、調査からは、安全性への懸念を明確に示す報告はないが、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減できるまで、当該製品の一時販売自粛・出荷停止を行うもの。

また、エコナクッキングオイルを使用した缶詰(シーチキンLほか)を販売する「はごろもフーズ」も販売自粛・出荷停止を行う。

ーーー

一般の食用油の主成分はグリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロール (TAG:triacylglycerol) で、中性脂肪の1つ。

これに対して、エコナにはグリセリンに2分子の脂肪酸がエステル結合したジアシルグリセロール (DAG:Diacylglycerol) が約80%含まれている。
TAGと比べて小腸で吸収されたのちに油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくく、体に脂肪が付きにくいとされている。

「健康エコナクッキングオイル」は厚生省より食用油として初めて特定保健用食品の許可を受けた。

特定保健用食品:
からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。

エコナの売上高は年間200億円で、食用油市場のシェア首位。

ーーー

ドイツのChemical and Veterinary Test Agency (CVUA) Stuttgart はパーム油ベースの精製植物性油脂にグリシドール脂肪酸エステルglycidol fatty acid esters)が含まれていることを見つけた。現在の分析では正確な量は測定できない。

グリシドール脂肪酸エステルは体内でグリシドール(Glycidol:2,3-Epoxy-1-Propanol)に変わる可能性がある。
これは遺伝毒性を持つ発がん物質である(IARC 分類 2A 群)。

Federal Institute for Risk Assessment (連邦リスクアセスメント研究所:BfR)は、発癌性の可能性と、精製油脂がマーガリンや乳児用粉乳のような製品に使用されるため、グリシドール脂肪酸エステルについて初期評価を行った。

その結果、1kgの油脂が1mgのグリシドールを含み(実際にどれだけ含まれているのか不明のため、架空のケース)、粉乳だけを与えられるという最悪ケースの場合で、乳児に影響があることが分かった。

このため、メーカーに対し、グリシドール脂肪酸エステルの量を出来る限り減らすよう要請した。

また、グリシドール脂肪酸エステルの測定方法の確立、体内でのグリシドール脂肪酸エステルからグリシドールへの転換についての研究が必要としている。

BfR Opinion No. 007/2009, 10 March 2009

ーーー

日本の食品安全委員会の専門調査会は8月24日、グリシドール脂肪酸エステルの安全性を検討することを決めた。

付記

韓国CJ第一製糖は9月22日、グリシドール脂肪酸エステルを含む食用油「ライトラ」の販売を一時中断し、自主回収を実施すると発表した。「有害性の有無の真偽とは関係なく、消費者の不安を解消するため、先手を打ったものだ。安全性が確実になるまで販売を中止する」と説明している。

付記

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」(2009/9/27)に「エコナと発がん物質グリシドール」が出た。

   http://www.yasuienv.net/Glycidol.htm

松永和紀blog (2009/9/28)にも「エコナ問題で思うこと」が出ている。

   http://blog.goo.ne.jp/wakilab/e/58a8165f9b3f9144f36f08a3c053b7b0


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Chevron 9月13日、豪州のGorgon Natural Gas Project 実施の最終決定を行ったと発表した。申請が西オーストラリア州首相により同日承認され、生産ライセンスが与えられた。

豪州北西部沖合にあるバロー島で直ちに年間生産能力1500万トンのLNG工場の建設に着手する。LNG輸出は2014年に開始の予定。

投資額は豪資源関連事業では過去最大となる約430億豪ドルで、大阪ガス、東京ガスなど日本勢が年間生産量の3割弱を受け取る見通し。

豪州北西部沖のGorgon計画は埋蔵量がLNG換算で約8億3千万トン(約40兆立方フィート)と世界最大規模で、最低40年の経済的耐用年数を持つ。

Chevronが50%、エクソンモービルとロイヤル・ダッチ・シェルがそれぞれ25%の権益を持つ。

本計画では発生するCO2の回収・貯留(CCS)技術の事業化に取り組む。
LNG設備の建設地の地下に40年間で約1億2千万トンのCO2を封じ込める計画で、豪政府も資金面などで支援する。

Chevronは本事業で2014年からの25年間、大阪ガスに年間約137.5万トン、東京ガスに110万トンのLNGを供給する。
加えて、大阪ガスはChevronから1.25%の権益を、東京ガスは1%の権益を取得した。両社は権益に応じた投資を行う。

また、中部電力もChevron との間で、年間150万トンの供給で基本合意している。

PetroChinaExxonMobil Shell との間でここからのLNGの購入契約を締結している。
ExxonMobil からは20年間にわたり年間225万トン、Shellからは同じく20年間にわたり年間200万トンを購入する。

ーーー

日揮の参加するKellogg Joint Venture - Gorgon 年産1,500万トン500万トンX3系列のLNGプラント、および豪州国内向けガス出荷設備年産約23億立方メートルに係る設計、機材調達管理、建設工事管理および試運転管理役務を受注した。

JVメンバーは日揮 30%、KBRKellogg, Brown Root) 30%、Clough 20%、カナダ Hatch 20%で、受注額は約27億豪ドル(約2,300億円)を見込んでいる。

ーーー

周辺には多くのガス田がある。

1)North West Shelf

1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された。LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。

日本勢を含めた6社が1/6ずつ参加する。
  
Japan Australia LNG (MIMI) Pty., Ltd(通称MIMIー三井物産・三菱商事の折半出資)
  
BHP Billiton Petroleum
  
BP Developments Australia
  ChevronTexaco Australia
  Shell Development
  Woodside Energy

1984年にコンデンセート販売を開始、1989年からは日本の電力・ガス会社向けにLNG供給を開始、1989年にはWanaea油田、Cossack油田が発見され同油田からの原油及びLPG生産が1995年から開始された。

2004年9月、それまでの計3トレインに加え、第4トレインが運転を開始、その後の増強で総生産量は1,190万トン/年へと拡大した。
2008年の第五系列完成により生産能力は年間
1,590万トンとなる。

2)Pluto

豪州のWoodside20077月、Pluto LNG事業への投資を最終決定した。
東京ガス、関西電力は、同日、
Pluto からのLNG購入に関して最終合意し、またそれぞれ5%の権益を取得して同事業に参加することを明らかにした。

Pluto液化設備能力は480万トン/年であるが、Woodsideはこれを1,200万トン/年までの設備拡張が可能として、液化事業を拡張するPlutoハブ計画を進めようとしている。

液化設備建設場所: Burrup半島のBurrup LNG ParkNWS液化基地に隣接
液化設備能力:
480万トン/年 (1,200万トンまで拡張可能)
ガス田:
PlutoXena
ガス埋蔵量: 5 Tcf Pluto 4.4 Tcf Xena 0.6 Tcf
生産開始時期:
2010年末

年間生産量430万トンのうち、東ガス、関電に合計375万トンを供給する計画。

Woodsideは北西部沖のBrowseと北部沖Greater Sunriseの両事業で、年内にもLNG設備の建設地を選定する。投資額は合わせて600億豪ドルを超えると見られている。

3)Browse

TorosaBrecknockCallianceガス田。
埋蔵量は合わせて
14兆立方フィートのドライガスと370百万バレルのコンデンセート。

Woodside Energyがオペレーターとなり、BHP BillitonBP Developments AustraliaChevron AustraliaShell Development Australia JVに参加している。

4)Greater Sunrise、Bayu-Undan

豪州と東チモールの間にあり、権利関係が問題となっていたが、両政府は2005 年11 月末、両国間の境界問題の解決を50 年間先送りした上で、チモール海における石油ガス収入の分配方法に関して基本合意した。

チモール海共同石油開発海域(Joint Petroleum Development AreaJPDA)のBayu-Undan油・ガス田石油等の生産収入の配分比率(東チモール=90%、豪州=10%)、およびGreater Sunrise ガス田のユニタイゼーション比率(JPDA=20.1%、豪州=79.9%)を従来の合意どおりとした上で、Greater Sunrise ガス田から両国政府が得る収入の配分比率を50%ずつとするというもの。

Bayu-Undan

埋蔵量 石油分約4億バレル(コンデンセート・LPG)と天然ガス約3.4兆立方フィート(LNG換算約8,000万t)

  Conoco Phillips  56.72%
  Eni  12.04%
  Santos (豪)  10.64%
  国際石油開発(日)  10.53%
  Tokyo Timor Sea Resources  10.08%
  (東京電力 2 /東京ガス 1  

Greater Sunrise計画は埋蔵量1億6千万トンで、Woodside がオペレーターとなり、大阪ガスを含む次の各社がJVをつくっている。

  Woodside   33.44
  Conoco Phillips   30.00
  Shell   26.56
  Osaka Gas   10.00

5)Ichthys

国際石油開発帝石は北西部沖「イクシス」事業(埋蔵量約26千万トン)で、仏トタルと組み総額2兆円を投じる計画の詰めを急いでいる。約850キロメートルのパイプラインを敷設。北部ダーウィンに建設する設備で15年から年間800万トンを生産、日本への搬出を始める。

プロジェクト参加権益比率(WA-285-P 鉱区参加権益比率)
  インペックス西豪州ブラウズ石油:
76%(オペレーター)
  
Total E&P Australia24

可採埋蔵量:
  天然ガス
12.8 兆立方フィート(含LPG)、コンデンセート5 2,700 万バレル
  (原油換算合計約
30 億バレル)
生産開始(予定):
  
2014 年内乃至2015 年のできるだけ早い時期
生産量(予定):
  
LNG 年間800 万トン超、LPG 年間160 万トンおよびコンデンセート日量10 万バレル(ピーク時)。
    

付記

東京電力は12月5日、Wheatstone LNG プロジェクトの11.25%をChevronから取得したと発表した。
Chevronが中心となって開発中で、同国北西部沖合の海底ガス田で天然ガスを産出、同国内で精製・液化する。2016年度以降操業を開始、年間最大860万トンを生産する計画。

東電がこのプロジェクトで調達を見込む年間LNG量は、権益による確保分と購入分を合わせ、東電が火力発電で年間に消費するLNGの約2割に相当する最大410万トン。 


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太陽電池の世界首位のドイツのQ-Cells 8月13日、大幅な赤字となった上半期決算と、対応策を発表した。

2008年の年間生産量は
 1位:Q-Cells 574.2MW
 2位:米 First Solar,Inc. 503.6MW
 3位:中国 Suntech Power Holdings Co.,Ltd. 497.5MW

上半期決算は以下の通り(単位:百万ユーロ)

  2006 2007 2008   2008/
1-6
2009/
1-6
増減   備考
Sales  539.5  858.9  1251.3    579.5   366.2 -213.3  
(Export ratio)  53.3%  60.7%   70.1%    70.3%  48.9%    
Operating Income
(EBIT)
129.4 197.0 205.1   119.1 -47.6 -166.7 1Q  14.7
2Q
 -62.3
関係会社評価損益         4.1 -418.4 -422.5 うちREC -387.0
株式売却損         0 -211.2 -211.2 REC -211.2
税引前  138.0  209.8   225.2    107.1  -706.2 -813.3  
Net income   97.1  148.4   190.6     82.1  -696.9 -779.0  
                 
生産能力(MWp) 336 616 760   630 760    
実績(MWp) 253.1 389.2 574.2   263.5 272.2    

EBIT の前期比 -166.7 のうち、数量差 -77、価格差 -30、固定費差 -26 となっている。

需要拡大を目指して能力を急拡大したが、上期実績操業度は75%に止まっている。
輸出比率が前年通年が70.1%であったのに対し、本年上期は48.9%に急落した。

能力のWpはWatt Peakで、太陽電池モジュール(パネル)の最大出力を基準状態に換算したもの。
基準状態は、①日射強度
1,000W/m2、②太陽電池モジュール温度25℃(温度が上がると発電電圧が低下)③AM(Air Mass)1.5 と規定される。
AM1.0
とは光の入射角が90 度(真上)から入射した光を意味し、AM1.5 はその通過量が1.5 倍(入射角41.8 度)での到達光を表している。

同社は上半期の状況を以下の通り述べている。

3つの問題で2009年に入り状況が激変した。

スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。
   
金融危機による銀行融資の激減
   
厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。
  スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。
   
この結果、製品チェーン全体で売り手市場から買い手市場に変わった。高純度シリコンのスポット価格は昨年の400$/kgから2009年には100$以下に下がった。 wafer cell の価格も同様である。
   

Q-Cellsは,Si原料メーカーであるノルウェーのREC(Renewable Energy Corporation ASに出資(17.18%)することで,Si原料を安定調達して成長につなげてきた。

Q-Cellsは第1四半期にREC株式の評価減(387.0 百万ユーロ)を行ったが、5月12日に全株を売却し、売却損(211.2百万ユーロ)を計上した。合計で6億ユーロの赤字となる。

「在庫整理にあと3年は必要」との見方もある。政府の補助金頼みの危うさが浮き彫りになった。

Q-Cellsはドイツが2000年に家庭の太陽光発電で生まれた電力を通常の電気料金の3倍で買い取る助成制度を導入したのに乗り、2007年にシャープを抜き、世界首位に躍り出た。

Q-Cellsは同時に、経営改善策を発表した。

(1)生産能力調整と製造コスト低減
  独Thalheimの旧式ライン閉鎖と約500名の人員削減
(2)技術開発の強化
  
2011年末までに単結晶セルで変換効率20%(研究開発レベル)を達成
  子会社Solibro(CIGS太陽電池)、Calyxo(CdTe太陽電池)など,薄膜系企業への注力を進める。
(3)中期的な現金準備の確保
  
2010年における投資計画を全面的に見直し,最大3億ユーロの支出削減

カネカは太陽電池の売上高の9割以上が欧州市場だが、8月3日の第1四半期決算発表で、「太陽電池は、欧州での需要が景気低迷の影響により落ち込んだことに加え、競争の激化から販売価格が低下し、減収減益となりました」としている。

ーーー

これに対し、世界第2位の米First Solar は好調である。(単位:百万ドル)

  2009/2Q 2008/2Q 増減
Sales 525.9 267.0  258.9
Operating Income 204.0 88.7 115.3
Net Income 180.6 69.7 110.9

同社は薄膜CdTe(カドミウムテルル化物)太陽電池を生産している。
太陽電池の主流である「結晶シリコン型」よりも製造コストが安いのが武器で、米政府の支援策も追い風となり、事業規模を広げている。

同社の生産は、2006 年の60MWpから、2007 年に206.3MWp2008 年には502.6MWp に達した。
また、
2004 年~2008 年の間に生産コストを$3/Wp から$1/Wp 以下に、2/3 削減することに成功した。

市場調査会社の米DisplaySearchは2009年にFirst Solarが首位になるとみている。

First Solarは2009年9月8日、公式訪米中の中国全国人民代表大会常委会委員長の呉邦国氏との間で、内モンゴル自治区のオルドスに2000MW(2GW)の太陽光発電所を建設することで合意したと発表した。

計画は4段階に分かれる。
・2010年6月1日までに最大出力30MWの実証発電施設の建設を開始
・100MW、870MWの施設をそれぞれ 2014年までに完成
・1000MWの発電施設を2019年までに完成

完成すれば総面積は25平方マイルとなる。

2000MWの太陽光発電を米国で建設すれば50~60億ドルがかかるとされるが、中国ではかなり安くできるとみている。

この計画では固定価格買い取り制度(Feed-in-tariff)により長期間にわたり電力料が保証される。

 

参考 シャープと関西電力の「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」は28MWである。

  堺第7-3区太陽光発電所 堺コンビナート太陽光発電施設
事業者 関西電力 シャープおよび関西電力グループ
場 所 堺第7-3区産業廃棄物埋立処分場
(大阪府から借用)
堺区築港八幡町
シャープ堺コンビナート
発電出力 約10MW 最大 約18MW
当初 約9MW

2008/7/2 シャープと関西電力、「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」を推進


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ダウは910日、Freeport, Texas 工場のSMとエチルベンゼンプラントを年末までに停止すると発表した。
同地の小規模プラントは昨年末に停止している。ダウは能力を発表していないが、業界では合計で
46万トンとみている。

ダウは6月30日の取締役会で下記の設備を停止する石化事業のリストラ計画を承認した。

  立地 能力
エチレン Hahnville, Louisiana  409千トン
EO/EG Hahnville, Louisiana  385/330千トン
EDC/VCM Plaquemine, Louisiana  970/590千トン

2009/7/3 ダウ、石化事業のリストラを継続、藻からのバイオ燃料計画に投資

これにはU.S. Gulf Coast におけるエチレンの自給自足体制(縮小均衡)の確立という狙いがある。
エチレン需要を約
30%減らし、他社から購入しているエチレン(年間約135万トン)をカットし、コストポジションを改善する。

今回のSM停止はこの一環となる。
ダウの
SM供給を米国の需要に合わせるという狙いに加え、エチレン需要減を図る。

Freeport, Texas 工場ではSMStyrofoamlatexABS の原料となっているが、長期契約によるSMの外部購入により原料を確保する。

DowとChevron Phillips Chemical は北南米のSM/PSの50/50JV Americas Styrenics を設立している。
2009年5月1日営業開始)

ダウは北南米のPSとブラジルのSM(2008/1/1に休止)を出したが、米国の3つのSMプラントはJVに出していない。
 ・Midland Michigan):本拠地、事業上の理由で同社で保有
 ・
Pevley (Missouri):同社事業とするStyrofoam の原料
 ・
Freeport (Texas)StyrofoamlatexABS の原料

2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立

JVの米国のSMソースはChevron Phillips 拠出のSt. James, Louisiana 工場だけで、能力が限られており、長期購入契約の相手先は恐らく Lyondell だろうといわれている。

ダウはBasic chemicals"Asset light" 戦略(JV化と縮小均衡)とSpecialty chemicals の推進を急いでいる。

ーーー

ダウは910日、同社の中空球プラスチック顔料事業をOMNOVA Solutions Inc.に譲渡する契約を締結した。

Rohm and Haas買収の条件としてFTCから売却を求められていた。FTCの承認が必要となる。


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