「no」と一致するもの

NOVA ChemicalsとINEOS は22日、NOVAの北米のSM、PS事業を両社の欧州の50/50JVのNOVA Innovene に移管することで合意したと発表した。今後手続きを経て、第3四半期に拡大JVが発足する。

移管するのはNOVAの子会社STYRENIXで、テキサスとカナダのオンタリオにあるSM事業、米国とカナダのPS事業のほか、PS系のポリマーのNASR) Styrene Methylmethacrylate copolymer)ZYLARR)(NASの 耐衝撃性改質グレード)、DYLARKR) スチレン-無水マレイン酸共重合体)を含む。

現在の能力は以下の通り。(単位:千トン)

  SM PS
Montréal, Quebec, Canada     55
Sarnia, Ontario, Canada   432  
Bayport, Texas, USA   568  
Belpre, Ohio, USA    145*
Channelview, Texas, USA   182#  
Chesapeake, Virginia, USA (閉鎖)    136*
Decatur, Alabama, USA    193
Monaca, Pennsylvania, USA    198*
Painesville, Ohio, USA     39
Indian Orchard, Massachusetts, USA    150*
合計  1,182  916

 * は特殊品を含む。
 # は持分(今回の移管の対象外)

ーーー

NOVAのCEOは以前から、「米国のスチレン業界は設備を廃棄し、統合を検討し、赤字垂れ流しを止めるために動き出す必要がある」と述べており、2006年1月にはバージニア州のチェサピーク工場を閉鎖すると発表し、6月にStyrenix事業部を別会社にすると発表した。

NOVAは事業を「エチレン & PE」、「発泡PS & 機能製品」、及び「Styrenix」の3つに区分しているが、Styrenixはコア事業ではなく、将来、売却するか、スピンオフすると見られていた。
  2006/7/27 「
欧米でもPS事業は苦境」 

StyrenixのEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)は赤字となっている。(単位:百万ドル)

  2005 2006
SM   -61   -17
PS   -18   -39
Nova Innovene   -64   -18
Styrenix   -143   -74

米国ではダウも基礎部門の中のポリスチレン(とポリプロピレン)について分社化して他社とのJVにすることを検討していると発表している。(その後、基礎部門全体のJV化の噂も)
 2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討」  
 2007/3/19 「Dow JV 

ーーー

NOVA Innovene2005年にNOVAが欧州のPS事業を出してBPとの50/50JVとして設立したその後、BPが分離したInnoveneをIneosが買収した。

現在のNOVA Innoveneの能力は以下の通り。(千トン)

  PS EPS
Breda (オランダ)   90   90
Marl (ドイツ)  180   85
Ribecourt (フランス)  -   90
Trelleborg (スウェーデン)   85  -
Wingles (フランス)  185   85
合計  540  350

2006年にフランスBerreのEPS(65千トン)を閉鎖、また2002年10月以降停止していた英国 CarringtonのEPS(75千トン)を閉鎖
2007/2 EPS能力をデボトルで合計410千トンに増やすことを発表

 

今回の移管により新しいNOVA Innovene の北米、欧州、全世界でのシェアは以下の通りとなる。

  North America Europe Global
Styrene No.1 No.5
Solid Polystyrene No.1 No.2 No.2
Expandable Polystyrene No.1 No.4

INEOSは欧州のSM事業(工場はドイツのMarl )をJVには出さず自社で運営している。
INEOSは米国のTexas City にもSMプラントを所有している。
NOVAの発泡PS事業は「Styrenix」ではなく、「発泡PS & 機能製品」部門に属しており、JVには出さず自社で運営する。

 

ブラジル国営石油会社PetrobrasUltra GroupBraskemの3社が共同で、同国の石油精製・販売、石油化学の老舗のIpirangaを買収する。19日、Petrobrasが発表した。

70年の歴史を持つIpirangaの主要株主の5家族がブラジルの石油・石化大手に持株を売却したいとしたのに各社が対応するもの。

Ipirangaは1937年にブラジルの実業家がウルガイの投資家と組んで、Ipiranga河沿いに製油所を建設したのを始めとする。

同社の事業は以下の通り。
Companhia Brasileira de Petróleo Ipiranga (CBPI)
Distribuidora de Produtos de Petróleo Ipiranga (DPPI)
Refinaria de Petróleo Ipiranga S.A. (RPISA)
Ipiranga Petroquímica (石油化学)

1976年にHoechst、Petroquisa、Ipirangaの3社合弁のPolisul が設立され、石油化学を始めた。1992年にHoechstとIpirangaの50/50JVとなったが、1997年にHoechstが離脱し、Ipiranga100%のIpiranga Petroquimica となった。
南部の
Triunfo にCopesulに隣接して5工場を持つ。同社の能力はPP150千トン、HDPE3プラント計 400千トン、HDPE/LLDPE 150千トンとなっている。

同社はまた、エチレン専業メーカーのCopesul (エチレン 1,135千トン)に出資している。
 
Ispiranga29.46%
 
Braskem:29.46%
 Petroquisa
Petrobras子会社):15.63%

ーーー

買収総額40億ドルで、Ultra Groupは自社株発行で買収し、Petrobrasは13億ドル、Braskemは11億ドルを出す。

まず、Ultra GroupがIpiranga の大株主から株を買取り、他の株主からTOBで株を買い、100%子会社とした上で、事業を以下のように、PetrobrasBraskemに配分する。

石油精製:Rio Grande do Sul の製油所はPetrobrasUltra GroupBraskemが均等に出資し、事業を継続する。

石油販売:ブラジル南部、南東部は
Ultra Groupが引き受け、引き続きIpirangaのブランドで販売する。
      北部、北東部、中西部は
Petrobrasが引き受け、5年の間に自社ブランドに順次変更する。

石油化学:Braskemが資産の60%を引き受け、Petrobras40%を引き受ける。
       エチレンJVのCopesul
は上場廃止とし、Braskemが支配権を得る。

ーーー

Ultra GroupUltrapar にはLPGで24%のシェアを持つ Ultragaz、ブラジル最大のスペシャルティケミカルのメーカーで唯一のEOのメーカーのOxiteno、化学品や燃料の輸送関連のUltracargo などがある。

参考:ブラジルの石化会社関連図 

Brazil1kanrenzu_2  

Braskemとブラジルのエチレンメーカーについては
2006/4/21
ブラジルのブラスケム、住化などからポリテーノを買収 参照

20日午後4時25分ころ、新潟県上越市の信越化学 直江津工場で爆発があった。3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。
出火場所の4階にはメチルセルロース製造過程でパルプと薬品を反応させる機器などがあった。

爆発事故の原因は現在不明で、警察、消防などの現場検証を受けながら究明する。

同社は安全性が確認されるまで工場全体の操業を停止する方針で、「セルロース誘導体」の生産再開のめどがたたない状況。

セルロース誘導体は、建材用途や医薬用途に添加剤として用いられる水溶性高分子で、主原料のパルプのほか、メチルクロライドやプロピレンオキサイドなどを原料としている。 

信越化学の生産拠点は国内では直江津工場しかなく、あとはドイツに拠点があるだけ。今後の供給体制について同社は「ドイツからの輸入や競合他社への肩代わり依頼を検討している」という。

同社のセルロース事業については 
  2006/10/10  「
信越化学、ヨーロッパのメチルセルロース能力増強完了」 参照

セルロース事業ではダウが信越化学と首位争いをしている。
  2006/12/26 「
ダウ、Bayerからセルロース事業を買収」 参照 

ーーー 

なお、直江津工場は敷地面積が約56万平方メートルで、従業員数は約千人。1973年にも爆発事故があり、死傷者が出ている。

以下 信越化学社史より:

1973年10月28日午後3時30分ころ、直江津工場の東側、ほぼ中央にある塩ビモノマー工場で爆発事故が発生し、火煙が十数mに達した。破壊されたタンクなどから流出したモノマーガスや溶剤に引火して爆発を繰り返した。
当日は日曜日であったが、直ちに自営および公設の消防車が出動して消火に当たった。しかし、火勢が強いため火元付近には近寄れず、事務室、分析室を焼いたあと火は計量タンクや球形モノマータンクに移り、2日後の30日午後1時になって鎮火した。
この事故により従業員1人が死亡、6人が重傷を負ったほか、近隣住民11人を含む17人の軽傷者があった。また、公共建物、民家約660戸の窓ガラスが割れ、瓦が落ちるなど被害範囲は半径2.2㎞にわたった。 

粗塩ビモノマーに含まれる不純物を除去するストレーナー(濾過器)の清掃が10日ごとに行われるが、事故はその作業中に起こった。このストレーナーは本来2系列あり、清掃ごとに交互に使用していたが、修理のため1系列で運転されていたことも不運につながった。清掃作業は予定通り行われたものの、作業員がストレーナー内に残留したモノマーガスを気化放散したところで、粗モノマータンク側のバルブからガスが漏洩していることに気がついた。このため作業員はバルブの締め方が不十分と考えて鉄製のハンドルまわしで力を加えたところ、バルブのヨーク部が切断されてバルブは全開状態となり、タンク内にあった粗モノマー約4トンが噴出してガスとなった。このガスは空気より重いため地上をはうようにして塩ビ工場一帯に拡散した。ガス噴出は3時15分ごろである。その後の15分間に危険を感じた塩ビ工場の作業員ができる限りスイッチを切って退去したあと3時半ごろに爆発が起こった。この時、現場確認のために戻った作業長が殉職した。

参考 2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果」 
(30数年後に似たような事故が発生した)

1978年3月の新潟地方裁判所一審判決は、当社にとって厳しいものであった。現場作業員の器具取り扱いに対する過失とともに、保安・安全管理責任者としての課長および工場長の業務上過失責任を認めて、3人に対し禁固1年執行猶予2年の判決が示された。このなかで、管理者は現場の不完全な状態を予見し、作業員の安全数育を行う義務があり、安全装置の設置などにより予想される危険を回避すべき義務があることが指摘されている。

ーーー

付記 今回の事故の現場

Naoetsu_2

2007/3/21発表

セルロース誘導体全製品の出荷を22日から当分の間、停止

セルロース誘導体製品(メトローズ、hiメトローズ、土木関連製品、TC-5、HPMCP、信越AQOAT、L-HPC)の今後の製造・出荷に関しては、製造設備の一部が焼失しており現時点では製造再開の目処がたっていない。
また製品倉庫も隣接している為、出荷の早期な再開も難しいと判断。

2007/3/28発表

出荷再開について:
※ すでに製造済みの在庫品については、3/27(火)より一部の出荷を再開致しましたが、一部の倉庫が損傷していること、工場内の一部に立入り制限がかかっていること、また当面の間、一件一件在庫の状態と品質を確認しながらの出荷となりますことから、非常に限られた出荷となっております。
※新規のご注文は全て保留とさせて頂いております。

 

武田薬品は12日、1999年にケンブリッジ大学の研究者により設立された創薬研究のバイオベンチャーのParadigm Therapeutics を買収する契約で合意したと発表した。100%子会社とする。

Paradigm社は、遺伝子組み換え技術を基盤として、世界的レベルの創薬ターゲット同定・評価能力を有しており、疼痛、中枢神経系疾患、前立腺ガン・乳ガンなどのホルモン依存性疾患、糖尿病・高脂血症・肥満などの代謝性疾患を重点領域と位置付け、アンメット・ニーズを満たすため新規創薬ターゲットおよび化合物の創製に取り組んでいる。

武田薬品は同社と同社のシンガポール子会社をそれぞれ、「武田ケンブリッジ株式会社」、「武田シンガポール有限会社」と改称する。

ーーー

Paradigm Therapeutics のこれまでの主株主はBio*One Capital Avlar BioVenturesMerlin Biosciences の投資会社3社である。
後の2社は英国の投資会社だが、最初のBio*One Capital
はシンガポール政府の経済開発局(EDB)の投資部門である。

Bio*One Capital はシンガポールのバイオ・医薬事業を推進するため、シンガポールで研究開発や製造や事業を行ってくれそうな会社に投資をしている。
投資対象は次の分野である。
 ・
Small Molecule Drug Discovery & Development
 ・
Biologics & Cell Therapy
 ・
Medical Tools and Technologies

同社の投資先は以下のような会社である。(青字はシンガポール進出会社)
Drug Discovery/Development Companies :
 Addex Pharmaceuticals SA、Aderis Pharmaceuticals Inc、
CombinatoRx Singapore Pte Ltd
 Cyclacel Ltd、Idenix Pharmaceuticals Inc、Kadmus Pharmaceuticals Inc、Kalypsys Inc、
 
Maccine Pte Ltd、Merlion Pharmaceuticals Pte Ltd、Microbia Inc、
 Neuromolecular Pharmaceuticals、
Paradigm Therapeutics Ltd、

 Perlegen Sciences, Inc、Renovis Inc、
S*Bio Pte Ltd、U3 Pharma AG、Vanda Pharmaceuticals Inc
Biologics and Cellular Therapy :
 
A-Bio Pharma Pte Ltd、Artisan Pharma、Codexis、ES Cell International Pte Ltd
 Five Prime Therapeutics Inc、Kalobios Inc、
Lonza Biologics Tuas Pte Ltd、RenaMed Biologics、
 
Oxygenix Co. Ltd、ProTherapeutics、SingVax Pte Ltd
Medical Technology :
 
Amaranth Medical、Attogenix Biosystems Pte Ltd、Biosensors International Pte Ltd、
 Broncus Technologies Inc、Fluidigm Corp、KOOPrime Pte Ltd、Neurovision INC、
 Merlin MD Pte Ltd、
Metrika Laboratories Inc、Power Paper Ltd、Spine Vision SA
Venture Capital Funds :
 Aravis Ventures I LP、Care Capital LLC、Forward Ventures IV LP、SV Life Sciences、
 MPM Bioventures II LP

ーーー

化学経済 2007
3月号に永尾経夫氏の「日本の化学産業の発展戦略 シンガポールの一生懸命さに習う」が掲載されているが、同氏はその中で、次のように書いている。

「シンガポールの成功の要因は、常に先を読んだ判断(経営判断)と産業構造の変革・高度化をブレないで実行する一生懸命さにある。」

「今シンガポール政府が力を入れ始めているのが医薬・バイオ産業の誘致・育成である。・・・・医薬・バイオ産業こそ、これからのシンガポールの発展にふさわしい将来性のある新規産業と考えたのである。・・・
しかし、当然のことだが、同国には企業家はいない。そこで、世界中の医薬・バイオの会社に進出を呼びかけた。シンガポールの開発部局(EDB:経済開発局)が世界中の会社を熱心に進出を呼びかけた。・・・」

「今や同国には、世界のトップ・テンの医薬会社のうちの6社までが製造設備を持つに至ったのだ。」

 

シンガポールはアジアの石油化学大国だが、バイオ・医薬も同国の基幹産業の一つになっている。

Dow JV説 - 化学業界の話題

2007/3/2 Dow 買収説 で投資会社がDowの買収を計画している、インドのReliance が買収への参加を考えている、との報道があることを報じた。
Dow はこれに対してコメントをしていない。

The Times of India 16日、Dow Reliance Dowの化学品とプラスチック部門を含んだ200億ドルの合弁会社を設立する契約に間もなく調印すると報じた。
合弁会社には
Reliance が約120億ドルを出して59%を保有し、残り41%Dowが保有するとされる。
Dowの基礎部門の2006年の売上高は236億ドルであることから、JVは基礎部門全体ではないのではとの見方もある。

Dowは売却代金でSpecialtyに力をいれるという説や、現在行っている自社株購入を進めて株価の上昇を狙うとの説がある。

 

この報道が真実かどうかは不明だが、これまでの経緯から見ると、決して驚くべきものではない。

Dow側の事情:

Dowの事業のうち、基礎部門の比率が高いが(プラスチックが売上の24%ケミカルズ11%で合計35%)、原料高騰、値下がりにより収益性が低下している。

これに対してDow はJV化による“asset light” strategy を進めている。基礎部門での海外での新規事業を他社とのJVで実施するだけでなく、既存事業を分離して他社とのJVにしようとするものである。

タイのサイアム・セメントとの新規JVは前者の例であり、Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが後者の例である。MEGlobal Kuwait での石化事業での提携の延長である。

ダウの会長兼CEOのAndrew N. Liveris は125、基礎部門の中のポリスチレンとポリプロピレンについて分社化して他社とのJVにすることを検討していると報告している。

GEやハンツマンが、原料高騰の影響を受けやすい汎用製品事業を売却するのに対し、DowはJV化により、関係を残しながら、負担減を図ろうとしている。また、JV相手の力の利用も考えている。

Liveris会長は”Asset Light”のメリットとして以下の点を挙げている。
低コスト原料へのアクセス
パートナーのローカルな力の利用
設備投資減
リスク低減

仮に投資会社がDowを買収するとしても、彼らの思惑は、基礎部門を売却し、その資金でSpecialty事業を強化し、企業価値を高めることにあると思われ、今回の案はこれに反するものではない。

 2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討 参照 

 

Reliance側の事情:

Relianceはグローバルに石油化学、合成樹脂事業を拡大する機会を狙っており、2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。

同社はインド北西部のJamanagar経済特区に新しく年産27百万トンの製油所を建設中で、川下の石化事業を計画しているが、Dowが10億ドルを投じてこれに参加する覚書を締結している。
現在交渉中だが、Dowが正式に参加する場合には、見返りにRelianceがDowの米国の石化事業に参加する可能性がある。

投資会社によるDow買収の噂に対し、同社も参加を希望しているとされている。

一方で同社はダウとの提携がうまくいかない場合の代替案として、GEプラスチック買収に手を上げている。

 2007/1/16 「インドの Reliance Industries 参照   

以上の通り、今回のJV案は両社の事情に合ったものであり、インド計画との関連で、両社の間で本件の交渉があっても決して不思議ではない。

OPECは15日、ウィーンで定例総会を開き、現在の原油生産量である日量2,580万バレルを維持することを決めた。欧米の原油先物相場は1バレル60ドル前後で安定しており、追加減産は必要ないと判断した。

イラクを除くOPEC10カ国の生産枠は2005年7月に 2,800万バレルとなったのをピークに、昨年10月20日に11月以降 2,630万バレルとし、12月14日には本年2月以降2,580万バレルに引き下げた。今回はこれを維持する。

Opecwaku_1

東京市場のドバイ原油価格は昨年8月8日に72.30ドル/bbl となったのをピークに急落し、本年1月19日には48.85ドルまで下がったが、その後持ち直し、最近は60ドル弱で推移している。欧米市場も同様である。

Naphthaoil0703

問題はナフサ価格で、原油価格と同様に昨年7月14日に691ドル/t と最高値を記録し、本年1月17日には503ドルまで急落している。
しかし、その後は上昇を続け、最近は650ドル近辺となっている。(3/16 は630ドル)

原油価格を$/トンで表示すると、原油とナフサの価格は以下の通りとなり、ナフサ価格が異常に高いことが分かる。

    原油   ナフサ  
2006/7/14    656    691    -35
             
2007/1/19    445    513    -68
             
2007/3/13    526    650   -124

これは日本だけの状況ではなく、NY原油(WTI)とシンガポールナフサ価格の対比でもナフサが異常に高くなっている。

Kaigaiprice0703_1 

ナフサ高の特別の理由はなく、投機的なものと見られ、今後ナフサ価格が急落する可能性もある。

20061230日に広西壮族(チワン族)自治区欽洲市でPetroChina広西石油化学」の10百万トンの製油所の鍬入れ式が行われた。
本事業はPetroChinaとSinopecの初の共同事業で、PetroChinaが70%、Sinopecが30%の出資比率となっている。

 2007/1/17 
PetroChina Sinopec の初の合弁製油所が着工」 
   

中国南西部の四川省, 雲南省, 貴州省, 重慶市、広西壮族自治区では市場が拡大しており、石油製品の不足が生じている。Petrochinasouthwest_2

中国ではPetroChinaとSinopecが石油・石化で覇権を争っているが、南西部はもともとSinopecの本拠で、PetroChinaにとって最初の進出となる。

ーーー

PetroChinaは7日、四川省成都市に製油所とエチレンプラントを建設する基本契約を省政府と締結した。
能力は製油所が10百万トン、エチレンが80万トンで、2010年稼動を目指す。
完成すれば中国南西部で供給不足となっているポリエチレンやエチレングリコールを供給できるとしている。

エチレンプラントについては既にNDRCの承認を得ている。
具体的には
四川省成都市の北西約40kmの彭州にエチレン80万トンと誘導品を建設するもので、PetroChina が51%、成都市が49%出資し、投資額は約25億ドルとなっている。
この時点では、原料ナフサは甘粛省、
陜西省の同社の製油所から列車で輸送するとしていた。

製油所の承認はこれからである。

ーーー

PetroChinaはまた陝西省で26億ドルを投じて、100万トンのエチレンを建設する計画を持っている。

ーーー

PetroChinaは昨年、785百万バレル(前年比4.3%増)の原油を処理し、207万トン(同9.5%増)のエチレンを生産した。
同社の親会社のCNPCでは
今後5年間で石油精製と石油化学に 230億ドルを投資するとしている。

産業再生機構は3月15日で解散することが決まった。

産業再生機構は2002年11月の総合デフレ対策で打ち出された期限付きの新組織で、2003年4月10日施行の「株式会社産業再生機構法」に基づき設立され、5月に業務を開始した。
再建可能な企業向けの不良債権を主に主力銀行以外から買い取って、主力銀行と一緒になって経営再建を支援するのが仕事である。
もし、解散時に赤字であれば、国民負担となる。

3月2日のスカイネットアジア航空の支援終了で、同機構が発足以降に手がけた41件の支援はすべて終わり、法律で決められた解散期限より1年早く解散する。
機構はこれまでに約1兆円を企業支援に投じたが、再生後の株式売却益などで300-500億円の利益剰余金が出る予定で、国民負担は生じない。解散時に残った財産は、国庫と出資者である預金保険機構、農林中金に分配されることとなっているが、全額国庫納付とする案が有力になっているという。

対象41社は以下の通り。

支援決定 社名 業種 完了
2003/8/28 うすい百貨店 卸売・小売 2005/11/30
2003/8/28 ダイア建設 建設・不動産 2005/8/10
2003/8/28 九州産業交通 運輸 2005/12/20
2003/9/1 三井鉱山 鉱業 2006/3/17
2003/9/26 マツヤデンキ 卸売・小売 2004/11/10
2003/9/26 明成商会 化学品専門商社 2005/3/31
2003/10/24 津松菱 卸売・小売 2005/5/20
2003/10/31 八神商事 卸売・小売(医療用品) 2005/1/31
2003/12/19 富士油業 鉱業(石油油脂製品販売) 2005/10/3
2004/1/28 金門製作所 ガス・水道メーターほか 2006/3/31
2004/1/28 大阪マルビル 建設・不動産 2004/12/17
2004/2/16 カネボウ   2005/12/16
2004/4/27 フレック 卸売・小売(スーパー) 2004/8/31
2004/5/17 大川荘 観光 2005/4/28
2004/5/20 タイホー工業 工業薬品類 2006/1/25
2004/6/4 ホテル四季彩 観光 2006/4/28
2004/6/4 ミヤノ 工作機械及び機械器具 2006/8/22
2004/6/25 スカイネットアジア航空 運輸 2007/3/2
2004/7/13 アメックス協販等 2006/11/10
2004/7/21 栃木皮革 皮革 2006/10/16
2004/8/6 オーシーシー 通信ケーブル 2006/8/8
2004/8/30 フェニックス 卸売・小売(スポーツ用品) 2005/12/27
2004/8/31 服部玩具 卸売・小売 2004/12/22
2004/9/28 粧連 卸売・小売(化粧品) 2005/1/14
2004/9/28 大京 建設・不動産 2005/4/8
2004/11/26 関東自動車 運輸 2006/5/30
2004/11/30 三景 卸売・小売(服飾服資材卸売) 2005/12/30
2004/12/8 あさやホテル 観光 2006/4/28
2004/12/8 金精 観光 2006/4/28
2004/12/8 田中屋 観光 2006/4/28
2004/12/24 玉野総合コンサルタント 建設コンサルタント 2005/5/31
2004/12/28 ダイエー 卸売・小売 2006/11/10
2004/12/28 ミサワホームホールディングス 建設・不動産 2006/3/31
2005/1/18 オグラ 菓子卸売 2005/6/30
2005/1/18 宮崎交通 運輸 2006/10/27
2005/1/18 鬼怒川グランドホテル 観光 2006/4/28
2005/1/18 鬼怒川温泉山水閣 観光 2006/4/28
2005/1/18 アビバジャパン パソコン教室 2005/2/28
2005/2/3 釜屋旅館 観光 2006/5/29
2005/2/3 金谷ホテル観光 観光 2006/4/28
2005/2/3 奥日光小西ホテル 観光 2005/11/28

中小企業が多く、大口はダイア建設、三井鉱山、カネボウ、大京、ダイエー、ミサワホーム程度である。

このうち、ダイエーは経営陣が最後まで独自の再建案にこだわったが、監査法人の決算不承認通告でようやく再生機構に依頼した。

また、三井鉱山の場合は、機構が大口の支援実績づくりを望んだためか、十分調査せずに支援策を発表し、その後に追加の評価損が出て、新たな支援策を発表するという事態になった。

なお、初めに、国民負担は生じないとしたが、実は政府機関による多額の債権放棄があり、国民負担が生じている。
三井鉱山の100%子会社の三井石炭は1997年3月に三池鉱業所を閉山、国内炭採掘事業から撤退し事業活動を中止していたが、炭鉱閉山に伴う政策的支援として、経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が642億円の融資をしていた。
NEDOは、このうち525億円を債権放棄している。NEDO自体は債権放棄に反対したが、政府系金融機関は再生機構の要請に協力しなければならないという「協力規定」により、最終的に放棄した。

各社の支援会社は以下の通り。

ダイア建設 レオパレス21
三井鉱山 大和証券プリンシバル、新日本製鐵、住友商事
大京 オリックス
ダイエー 丸紅、アドバンテッジパートナーズ
ミサワホーム トヨタ自動車、NPF-MG投資事業、あいおい損害保険

カネボウに関しては、2007/3/6 「カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更」 参照

ダイエーについては3月9日、イオンとの提携が決まった。イオンはダイエーの丸紅からダイエー株15%を、ダイエーから食品スーパーのマルエツ株20%取得し資本参加するほか、ダイエーに役員数人を派遣する。

 

インド最大の私企業で石化業界のリーダーのReliance と、石化業界第二位の Indian Petrochemicals Corporation Limited IPCL)の取締役会は10日、それぞれ、Reliance IPCLの統合を承認した。

Reliance は石油・ガス、石油製品、石油化学に多角化し、内外で事業の拡大を図っている。
2002年にインド政府の民営化方針に基づき、IPCLの政府持分26%を買収し、その後、20%を追加取得し、46%を所有している。

同社はまた、
2004年に採算悪化を理由に石油化学プラントの稼働を中止していたNOCIL(National Organic Chemical)から石油化学と樹脂事業を買収した。

海外では2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。
現在、
Jamanagar経済特区に新しく石化コンプレックスを建設することでダウと交渉をしており、ダウが参加する場合には、見返りにダウの米国の石化事業への参加を求めているといわれている。GEプラスチックやダウの買収を狙っているとの噂もある。

 2007/1/16「インドの Reliance Industries 
 2007/3/2 「Dow 買収説

RelianceはJamnagar に製油所、Haziraにナフサクラッカー、NarodaPatalganga に合成繊維等のコンプレックスを持っている。
Haziraのエチレン能力は75万トン。

IPCL Baroda にナフサクラッカー、Gandhar Nagothane にガスクラッカー(合計エチレン 875千トン)を持つ。
同社はまた、
2005年にポリエステルメーカー社を同社に統合し、ポリエステルメーカーになった。

Reliance は統合により、規模拡大を図るとともに、IPCLへの原料(天然ガス、ナフサほか)供給等も行う。

 

統合後の全社能力は下記の通り。 (千トン)

  Reliance IPCL 合計
Ethylene 750 875 1,625
Propylene 365 225 590
Paraxylene 1,856 48 1,904
PP 1,150 195 1,345
PE 450 555 1,005
PVC 325 205 530
PTA 1,350    ー   1,350
Polyester Staple Fibre 550 126 676
Polyester Filament Yarn
Partially Oriented Yarn
523 266 789

ーーー

各コンプレックスの概要 (千トン)

Reliance
  Hazira
ナフサ 
エチレン  750
PE  360
PP  360
Aromatics  350
MEG  340
PVC  160
VCM  160
PTA  700
PET   80
POY  120
PSF  160
PFF   30
 : IPCL
  Baroda 
ナフサ
Gandhar
  (ガス)
Nagothane
  (ガス)
エチレン   175   300   400
ブタジェン    54    
ベンゼン    55    
LDPE    95      80
LLDPE/HDPE       220
HDPE     160  
PP   100      60
PPCP    35    
PBR    60    
PVC    55   150  
VCM     170  
塩素     115  
EO        50
EG        5
ブテン-1        15

Relianceの他の工場の概要は以下の通り。

Jamnagar に新設する製油所の隣には年産27百万トンの製油所があり、石化原料のナフサ、芳香族とPPを生産している。
PPは当初の3系列77万トンに、2006年第4系列28万トンが加わった。
同じく27百万トンの新製油所では100万トンのPPを新設する。

PatalgangaではPTA、ポリエステル繊維、LAB等を生産。
Naroda インドで最も近代的な繊維のコンプレックス。

ーーー

IPCLは
2005年にポリエステルメーカー6社を統合した。

会社 立地 製品  能力(t)
Recron Synthetics Allahabad PFY     66.,000
India Polyfibres Barabanki PSF    40,000
Orissa Polyfibres Dhenkanal PSF    35,000
Appollo Fibres Hoshiarpur PSF    51,681
POY  14,870
PFF (Conjugate)  28,330
PFF (fibrefill)  10,630
Chips  14,600
Central India Polyesters Nagpur POY  45,000
Silvassa Industries Silvassa PFY 141,000
PTT    600


中国の第10期全国人民代表大会(全人代)が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した

温家宝総理は政府活動報告を行った。
「2006年は第11次五カ年計画を実施し、かつ良好なスタートを切った1年であり、国民経済と社会の発展は重大な成果を上げた」とし、マクロコントロールの強化と改善、三農(農業、農村、農民)対策の拡充、経済構造調整の加速、改革開放の積極的推進、社会事業の力強い発展、就業・雇用保障対策の着実な実施への努力、民主・法制建設の継続的強化の7方面から、過去1年間の政府の主要活動を総括した。
しかし、「わが国の経済・社会の発展には多くの矛盾と問題がなお存在し、政府活動にもいくつかの欠点と不足があることを、われわれも直視している。第
は経済構造の矛盾が際立っていること、第は経済成長方式の粗放さ、第民衆の利益に関わる際立った問題の解決不十分、第は政府自身の建設にいくつかの問題があることだ」と指摘した。

国家発展改革委員会の馬凱主任は記者会見で、経済社会の発展やマクロ調整などの問題について質問に答えたが、問題点の一つの収入格差問題について、以下のとおり述べた。

全体的にみて、国民の収入水準は向上している。

・収入格差が拡大傾向にあるのは事実だ。都市・農村間、地域間、階層間で収入格差は拡大し、一部では深刻化している。

1978年と2006年とで、都市部住民の一人当たり平均可処分所得は343元から11,759元に増加
農村部住民の一人当たり
平均収入は134元から 3,587元に増加

注 これによれば都市と農村の格差は1978年の2.55倍から2006年は3.28倍に拡大
  但し、都市部住民のは「平均可処分所得」だが、農村部住民のは「平均収入」
   農家では、現金収入の約3分の1を次年度の耕作のための種・肥料等の購入に充てざるを得ない。

「都市と農村の表面的な所得格差は、統計的に3倍程度と公表されているが、実質的な格差は、その10倍、すなわち30倍ほどあると内々報告されている。」 
2006/8/8 
杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」

・これに対して、政府は一連の措置を取ってきた。
 都市・農村間の格差を縮小するために、「三農」(農民、農村、農業)への支援を強化
 西部地域と東部地域との格差を縮小するために、西部大開発などの戦略
 都市部の最低生活保障制度を制定し、最低賃金制度を実施
 過大な収入の調整には、個人所得税の徴収を強化

・ この問題を根本的に解決するためには、次の措置を取るべきだ。
 第一に、順調かつ急速な発展を実現し、国民経済の総量を大きくし、これをしっかりと配分する必要がある。
 第二に、収入分配制度を含むさまざまな改革を深化させ、分配制度を整えると同時に、
      平等な機会、ルール、プロセスを備えた制度・メカニズムを構築する必要がある。
 第三に、低所得層の収入を引き上げ、中間層を拡大し、高所得層を調整するとともに、
      合法的な所得を保護し、違法所得を取り締まる必要がある。

ーーー

7日の新華社は所得格差に関して面白い記事を載せている。

それによると、裕福な都市住民の間で、永年の「一人っ子政策」を無視して、罰金を払って多くの子供をもつ人が増えており、10%のひとは3人も子供を持っていることが、最近のNational Population and Family Planning Commission の調査で判明した。

1970年代に制度が決められた当初は、貧しい農民が制度を守らないのではとの懸念があったが、最近は金でなんでも出来るとする都市の’nouveau riche にわか成り金)が政府の頭痛の種となっている。

政府は違反者に罰金を課し、省によっては罰金は地域の平均年収の6にも達するが、効果は見られず、金持ちの特権として民衆の怒りをかっている。

 

 

付記(2007/3/17補足)

全人代は8日、第二回全体会議を開き、「中華人民共和国企業所得税法(草案)」が正式に審議段階に入った。
16日、閉会。
物権法と企業所得税法は圧倒的多数の賛成で可決された。
胡錦濤国家主席は第62号、第63号主席令に署名し、両法律が公布された。
物権法は2007年10月1日から、企業所得税法は2008年1月1日からそれぞれ施行される

  2006/12/28 「中国、法人所得税率を統一、一律25%へ」参照 

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