「no」と一致するもの

武田薬品工業は2月26日、糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)について、帝人ファーマに販売を移管するとともに、日本における製造販売承認及びこれに関連する資産を譲渡することを決定し、帝人及び帝人ファーマとの間で資産譲渡契約を締結した。

武田薬品は以下の戦略で事業体制の変革を実行している。

- グローバル戦略に沿って主要な5つのビジネスエリア(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンス)にさらに注力、ターゲットを絞った革新性の高い医薬品に集中

- 「戦略投資の加速化」、「機動性のある組織の構築」、「変革を支えるための組織力の向上」を3つの柱に改革を進める

- 主要な5つのビジネスエリアに資源とリソースを集中し、患者のアンメット・メディカル・ニーズにさらに貢献

同社は、Shire買収と同時に、債務圧縮のために計100億ドル規模の資産売却方針を掲げ、武田薬品とShireのノンコア事業の売却を進めてきたが、2020年8月には「アリナミン」などの一般用医薬品事業を扱う完全子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンド大手 The Blackstone Groupに売却することを発表した。新社名は「アリナミン製薬」となる。

2020/8/21 武田薬品、大衆薬事業を米投資ファンドに売却へ

2019年1月以降現在まで、今回の件を含め12案件で合計最大約129億米ドルの売却について公表しており、100億米ドルの売却目標額をすでに上回っている。


今回の糖尿病治療薬は、今後も患者のニーズを満たす重要な役割を担うものの、同社の長期的成長を牽引する主要ビジネスエリアの製品には該当しないため、売却する。

譲渡の概要は下記の通り。

 譲渡品目:糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)

    国内外で多くの2型糖尿病の患者の治療使用されている。
    
2020年3月期における日本国内における売上高 308億円

 譲渡価額:1,330億円 (製品在庫の譲渡価額を含む)
       当期の株主帰属利益で約900億円の増益となる。

 譲渡相手:帝人ファーマ

 譲渡日:2021年4月1日(予定)

 その他:両社間で製造供給契約を締結し、武田薬品が製品を製造し帝人ファーマに供給、流通は武田薬品が担当。
     当面の間、製品の製造販売承認権は武田薬品が引き続き保有し、承継時期については今後決定する。
     人員の移管は伴わない。

武田薬品は得られる売却代金は負債の減額に充て、2021年度から2023年度に純有利子負債/調整後EBITDA倍率を2倍にする目標に向け、レバレッジ低下を加速させる。

一方、帝人は、企業理念「Quality of Lifeの向上」を原点に、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」のつのソリューションを中心とした価値を社会に提供し、「未来の社会を支える会社」になることを目指しており、ヘルスケア事業では、高齢化最先進国の日本において「少子高齢化・健康志向ソリューション」の提供に取り組んでいる。

「代謝・循環器領域」を注力疾患領域のつとしている帝人ファーマにおいて、ブランド力のある武田の糖尿病治療薬4剤の承継は、将来の事業拡大のための事業基盤の維持・強化を可能とするものとなる。

また、糖尿病治療剤を主要製品としてラインナップに加え、事業基盤を維持・強化することで、疾病治療への取り組みのみならず、生活習慣病予防や重症化予防に貢献するサービスの拡大を加速できるとしている。

米民主党の議会指導部は2月27日未明、1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案を下院で審議し、同党単独で可決した。


バイデン(次期)大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

2021/1/18 バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

米連邦議会上院は2月5日、今会計年度予算の修正の大枠となる予算決議案をハリス副大統領の決定票で51対50の賛成多数で可決した。

通常、上院の決議は野党のフィリバスターを避けるため、60票の賛成が必要であるが、予算決議の形をとることで単純過半数で通すことができる。

予算決議案

連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。

予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。

予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。

予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。

審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスター財政調整法には適用されない。

今回の経済対策は年度予算ではないが、例外的に予算決議案を通じて、民主党の賛成多数で通す予定。


上院では与野党は50/50だが、この場合のみ、上院議長を兼ねる副大統領が投票して決着させることができる。

2021/2/9 米議会、予算決議案可決、1.9兆ドル刺激策へ前進

今回の下院の議決は下記の通りで、民主党から2議員(Kurt Schrader of Oregon & Jared Golden of Maine)が反対票を投じた。最低賃金の15ドルへの引き上げに反対とされる。

民主党 共和党 合計
賛成 219 219
反対 2 210 212
棄権 1 1
合計    221 211 432

法案は上院に回され、一部修正される見込み。

民主党は、修正分の下院議決を含め、3月中旬までに法律としたいとしており、1月20日に発足したバイデン政権にとって最初の大型経済対策となる。

トランプ大統領が昨年12月27日の夜サインした9千億ドルの新型コロナウイルス追加景気対策予算案では失業保険の上乗せを3月14日までとなっており、民主党はその期限までに延長を決めたい。

今回の法案には失業保険の積み増しを8月末まで延長する措置が含まれる。

下院が通した法案には、最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、上記の通り、今回は「予算決議」の下での法案となり、法案の内容が限定される。

これについては上院の議事運営専門員(Parliamentarian)が判断することになるが、2012年からこの職にあるElizabeth MacDonough 弁護士が「最低賃金引上げ」は対象外であると判断した。
下院が議決した法案のうち、この部分は修正が必要となる。

サキ大統領報道官は、バイデン大統領はこれを法案に盛り込めないとの判断に「失望している」とコメント。大統領は「今後の最善の道筋を探るために議会指導部と取り組む。フルタイムで勤務しているのに貧困生活を送る人がこの国にいるべきではないからだ」とした。但し、大統領は今回の判断を尊重し、経済対策の早期成立が必要だと訴えていると説明した。
 

最低賃金引き上げをめぐっては、議会予算局が15ドルになれば140万人の雇用が失われると試算、民主党内にも反対が強く、今回の2名の反対票を生んだ。

連邦政府が定める最低賃金は2009年以降、時給7.25ドルである。(但し、州法では10ドル以上が10州以上ある。)

今回の法案とは別に、個別に最低賃金引上げ法を通すことは可能で、共和党の上院議員は時給10ドルへの引き上げを提案している。民主党内部では、15ドル以下の最低賃金の企業に罰金を科す案など も検討されている。


厚労省は2020年6月、新型コロナウイルスワクチンの国内における早期供給を促すため、ワクチン生産体制等緊急整備事業の公募をおこない、6社に対して総額最大約900億円の助成を決め、複数のワクチンを国内で生産する体制を整えるとした。

2020/8/23 新型コロナウイルスワクチンの日本における生産体制の構築

その時点での情報をもとに、現状をまとめた。

現時点では国内ワクチンの承認がいつになるか予想できない。

ワクチンのPhase Ⅲ治験では、多数の人を対象に、ワクチン接種者と偽薬接種者での発症者比率を比較するが、日本では感染者が少ないため、偽薬接種者の発症率も低くなり、ワクチンの効果が判定できない。

接種が始まったPfizerのワクチンは、米国での承認をもとにした特例承認によるものである。

特例承認は、①疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、②当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、③海外(日本と同水準の国)で販売等が認められている、という要件を満たすもので、法律では、
対象品目は「新型インフルエンザのワクチンと新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」で、
「日本と同水準の国」は「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみである。

注 「新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」はレムデシビルの承認申請を見越して追加された。 当初は「英国、カナダ、ドイツ、フランス」だけだったが「米国」を追加した。

中国やロシアで承認されても、日本では特例承認の対象にはならない。

特例承認されたワクチンであれば、国内での製造承認は比較的容易に得られると思われる。

既報の通り、世界保健機関は新型コロナウイルスワクチンの生産量を増やすため、生産能力に余裕がある製薬会社は他社のワクチンを作るよう呼びかけており、フランスは国を挙げて他国のワクチンの国内生産に注力しているが、日本では動きが遅い。

2021/1/8 新型コロナワクチンの委託生産 広がる


  厚労省助成金
2020/8



海外

ワクチン

武田薬品工業 約301億円

Novavax(下表⑤)が開発中のワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップ
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年250百万回分以上を生産

別途、Moderna (下表⑥)ワクチンの日本でのPhase Ⅰ/Ⅱ 臨床試験開始
2021年前半より5000万回の接種分を輸入し、国内供給

付記

デング熱ワクチン候補の製造委託先 IDT Biologik の設備を3か月間 J&Jのワクチン製造に供与

英 AstraZeneca
下表④
約162億円 日本に1億2千万回分供給で最終合意
25%分は輸入し、75%の9千万回分を日本で委託生産
原液

① 輸入、② JCRファーマに製造委託

バイアル充填 第一三共バイオテック KMバイオロジクス
保管・流通 第一三共 Meiji Seika ファルマ

2021/1/30 アストラゼネカ、ワクチンを日本で製造委託 

JCRファーマ AstraZenecaワクチン製造受託

希少疾患を対象としたバイオ医薬品の開発・製造
細胞培養の技術に強く、原液製造用の大型タンクなどの培養設備保有

KMバイオロジクス 約 61億円 明治ホールディングスの連結子会社 
AstraZeneca 原液製造に係る既存設備の改造、精製・ユーティリティ設備の整備、原材料保管・品質管理作業に係る設備の新設等
(原液製造はJCRファーマに決まった。)

国産

ワクチン

KMバイオロジクス 独自ワクチン  前臨床段階 
国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との協業による不活化ワクチンの開発
2020年度内の国内臨床試験開始を目標
アンジェス
 下表①
約 94億円 Phase Ⅱ/Ⅲ段階

ワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を 図るための事業
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ

タカラバイオがその製造を担い、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造で協力体制に加わった。

塩野義製薬
 下表③
約223億円 組換えタンパクワクチン感染研/UMNフ ァーマ/塩野PhaseⅠ/ Ⅱ段階

遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤

第一三共 約 60億円 メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンDS-5670  前臨床段階 
  付記  3月下旬に国内で152人を対象に初期段階の治験実施

第一三共バイオテックの工場での生産体制整備

IDファーマ/感染 アイロムグループのIDファーマ  前臨床段階
コロナウイルスの遺伝情報を
持ったセンダイウイルス(仙台の東北大で発見)投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される

GMPに準拠したベクター製造施設・細胞培養加工施設(CPC)を保有

海外
生産
Medicago
 下表②
田辺三菱製薬のカナダ子会社

2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表

合計 約901億円  

WHO リスト

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
Osaka University/ AnGes/ Takara Bio DNA AG0301-COVID19 2 0, 14 IM Ⅱ/Ⅲ
Medicago(カナダ 田辺三菱製薬) VLP Coronavirus-Like Particle COVID-19 (CoVLP) 2 0, 21 IM Ⅱ/Ⅲ
Shionogi Protein subunit Recombinant protein vaccine S-268019 (using Baculovirus expression vector system) 2 2,21 IM Ⅰ/Ⅱ
AstraZeneca + University of Oxford Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S- (AZD1222) (Covishield) 1-2 0, 28 IM

UK 2020/12/30
EU 2021/1/29
WHO 2021/2/15

Novavax(米) Protein Subunit SARS-CoV-2 rS/Matrix M1-Adjuvant (Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M) 2 0, 21 IM

Moderna/NIAID米国立アレルギー感染症研究所) RNA mRNA -1273 2 0, 28 IM

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6

Pfizer/BioNTech
+ Fosun Pharma
上海復星医薬
RNA BNT162 (3 LNP-mRNAs ) 2 0, 28 IM

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

厚労省は2月9日、ファイザーのワクチンについて、1つの小瓶から6回分の接種ができることとなっていたが、国内の注射器では5回しかできないことを明らかにした。

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶5回が正しい。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。 日本でも一部使われているが、非常に少ない。

一般の注射器

Loaded type

2021/2/16 ファイザーワクチン「5回」問題 

日本ではニプロがLoadedタイプ注射器をタイで製造しているが、 製造能力は月50万本である。同社では4~5カ月かけてタイの工場の設備を増強し、製造能力を 数百万本に引き上げるが、増産分は9~10月ごろに国内に届く見通し。

世界最大の注射器メーカー米国のBecton Dickinsonは、このような注射器は「ニッチな製品」であり、需要は「伝統的に最小限にとどまっている」ため、「このような製品の生産能力は限られており、生産能力を高めるには時間がかかる」としている。


この特殊注射器が韓国では中小企業の3社で大量につくられており、日本から約8000万個の購入要請があったと報じられている。Poonglim Pharmatechは、世界20カ国から2億6千万個以上の注射器購入の要請を受けたと伝えられた。日本から約8000万個の購入要請があったとされる。

昭和電工は日立化成株式に対する公開買付けを行ない、2020年4月28日に87.61%を取得、同社を連結子会社とし、6月23日に完全子会社化した。2020年10月1日付で「昭和電工マテリアルズ」に商号変更した。決算では、2020年6月末を「みなし取得日」として計算している。

2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

2020年12月決算では、日立化成の買収で売上高は増加したが、黒鉛電極の無機部門の営業損益が前年比で1,216億円の減益となり、株主帰属損益は前年比1,494億円悪化の763億円の赤字となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
17/12 7,804 777 639 -133 374 0 5.0
18/12 9,921 1,800 1,788 -333 1,115 2.0 10.0
19/12 9,065 1,208 1,193 -214 731 5.0 8.0
20/12 9,737 -194 -440 -243 -763 0 6.5
増減 672 -1,402 -1,633 -29 -1,494

-6.5

21/12予 12,800 450 350 -140 0 6.5
                             株式併合のため、実際の配当は10倍


昭和電工マテリアルズの売上高は2020年(半年)が3,027億円、2021年予想は6,100億円。

営業損益

17/12 18/12 19/12 20/12 増減 増減理由 20/12予
石油化学 334 203 172 49 -123

受払差、タイムラグ -45

115
化学品 165 174 137 135 -2 155
エレクトロニクス 219 124 49 91 43 125
無機 71 1,324 893 -323 -1,216 黒鉛電極低価法 -172 30
SDKマテリアルズ -63 -63

ノレン等償却 -280

100
アルミニウム 67 49 17 4 -13 35
その他 6 29 18 12 -6

新型コロナウイルス関連合計として全社で -186

10
全社 -84 -104 -78 -100 -22 -120
合計 778 1,800 1,208 -194 -1,402   450


なお、昭和電工マテリアルズの営業損益は-63億円だが、のれん償却と棚卸資産調整を除くと、実質ベースでは218億円程度の益である。

無機部門の中心は黒鉛電極である。

この部門は従来赤字を続けていたが、2017年度に若干の黒字となり、2018~2019年度は一転大幅黒字となった。

昭和電工は2016年10月に、ドイツのSGL Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbHを買収すると発表した。 ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。米司法省の指示で米国工場を東海カーボンに129億円で売却した。
昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算し、2019年での事業黒字化を目指した。

直後に状況が一転した。中国で地条鋼という違法鉄鋼が禁止となり、安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。

これが2018年12月期に売上高、営業利益が急増した理由である。

しかし、中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和し、価格は下落した。

昭和電工でも2019年下半期より顧客である電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が継続し、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じた。

同社は2020年2月5日、電気炉製鋼用の黒鉛電極の世界生産能力を削減すると発表した。

2020/2/15 昭和電工、黒鉛電極の生産能力を削減

今回、黒鉛電極の低価法による簿価切り下げで172億円の営業損失を計上、他に特別損失として、黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で51億円の損失を計上した。

電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が長引き、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じており、ドイツ・マイティンゲンにある生産拠点の閉鎖について労使協議で合意に達した。全体の生産能力は、年産4万t 減の21万tになる。

昭和電工がSGL GE を買収した2016年10月時点では合理化による黒字化を目指しており、その後の好況は「想定外のバブル」である。現状が本来の姿である。
同社もそれを自覚しており、バブル利益を利用して日立化成を買収し、今後の体制を整えた。

ーーー

昭和電工マテリアルズ(旧称 日立化成)の統合関連費用として389億円を計上した。

営業費用として弁護士費用や統合プロセス関連費用で82億円、営業外費用として資金調達、登録免許税等で212億円、非支配株主への優先株配当で88億円等である。

昭和電工は買収資金9700億円を次により手当てした。

昭電 みずほ銀行からの融資 2,950億円
HCホールディング みずほ銀行、日本政策投資銀行にA種優先株を発行 2,750億円
みずほ銀行からノンリコースローン 4,000億円
合計 9,700億円

この優先株に対し、88億円の配当をおこなったもの。
但し、これは少数株主持分の利益のなかから控除されるため、株主帰属損益には影響しない。

日立化成買収によるのれん代(買収額と買収先の純資産の差額)の償却が長期的な負担となる。

(億円) 総額 償却期間

償却額

2020年 2021年
無形
固定資産 
顧客関連 1,549 20年 39 77
技術関連 571 7年 41 82
その他 39 20年 1 2
合計 2,159 81 161
のれん 3,651 20年 91 183
小計(営業費用) 5,810 172 344
投資有価証券(営業外) 449 20年 11 22
合計 6,259 183 366


本年度には半年分として営業内で172億円、営業外で11億円、計183億円を計上した。2021年予想には366億円が含まれる。

このほか、棚卸資産については時価評価で受け入れ、通常は数年間で償却する。 

昭電は2020年度に棚卸資産ステップアップ調整として109億円を計上した。2021年予想では、「ステップアップ調整は一過性のため解消」としており、2020年度で一括償却したとみられる。

のれん等の償却の年間366億円のうち、82億円でも7年、残り284億円は20年負担が続く。

日立化成の当初の簿価に対し、6千億円も上乗せして買収したためであり、シナジー効果でよほど増益を図らないと苦しいことになる。

出光興産は2月16日、石油精製を手掛ける子会社、東亜石油に対する株式公開買い付け(TOB)が成立しなかったと発表した。

TOBに応募した株式数は約47万株で、成立の下限とした約205万株を大幅に下回った。

東亜石油は、出光興産と経営統合した旧昭和シェル石油系で、川崎市で製油所を運営している。(経緯は下記)

出光興産は2020年12月15日、子会社の東亜石油にTOBを実施すると発表した。
買い付け期間は12月16日から21年2月2日まで、買い付け価格は1株2,450円。最大約150億円を投じて、残り全株の取得、完全子会社化を目指した。

出光興産は東亜石油の株を50.12%保有している。TOBの下限は205.9万株(これにより出光興産は2/3以上を確保)とし、これ以下の場合はTOBは成立しない。

発行済み株数 12,443,500
うち自己株式 3,591 (12,439,909)
出光保有 6,234,425 50.12%
残り 6,205,484 49.88%
買付下限 2,058,875 16.55% (66.67%)

TOBが成立した場合、東亜石油は2021年4月26日に上場廃止となる。

出光興産は東亜石油を完全子会社化することで、グループの一体経営を図り、経営の効率化及び最適化、意思決定の柔軟化及び迅速化を実現し、国内石油製品需要の減少、脱炭素社会に向けた動きへ対応していくとしていた。

出光興産は2021年1月29日、東亜石油株のTOB期限を当初の2月2日から2月15日まで延長したと発表した。
東亜石油が2021年3月期業績予想の修正を発表し、買付届出書の記載を変更する必要が生じたためとしている。

出光興産の2,450円でのTOB発表直前の12月15日の東亜石油株価終値は2,229円であったが、その後、株価は上昇し、TOB価格を上回った。

米ファンドのCornwall Capital Management LP が 東亜株を買い増しており、2021年1月28日の関東財務局への届出書によると、12月11日が226万株であったのが、その後買い増しを続け、1月28日には318万株になっている。

TOB最終日の2月15日の終値は3,010円で、TOB価格をはるかに上回る。

結局、TOBに応募したのは470,668株にとどまり、下限の205.9万株には達せず、不成立となった。

出光興産ではこれを受け、TOB価格については、公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置を実施の上、決定したとし、不成立に終わったことを踏まえて、今後は、従来と同様、グループの企業価値向上を目指すとしている。

ーーー

出光興産は2016年12月19日、公取委の承認を受け、シェルから昭和シェル株式 31.3% を158,978百万円(1株当たり1,350円)で取得した。

2016/12/20 出光興産、シェルから昭和シェル株式取得

出光興産は2018年7月10日、創業家(持株28.48%)のうちの、長男の出光正和氏(同1.16%)と同氏が社長を務める資産管理会社の日章興産(同13.04%)との間で統合等に関する合意書を締結したと発表した。

出光興産は同日、昭和シェル石油との間で、2019年4月に株式交換を通じて経営統合する合意書を締結した。

出光興産と昭和シェル石油は12月18日、それぞれ臨時株主総会を開き、経営統合について株主から承認を得た。2019年4月の統合が最終決定した。

2018/7/11 出光と昭和シェル、来年4月に統合 

各社の製油所とトッパー処理能力は下記の通り。(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

当初 高度化法

*

昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 65
昭和シェル 扇町 120 0 0
昭和シェル合計 515 445 440
出光興産 北海道 140 160 150
千葉 220 220 190
愛知 160 175 160
徳山 120 0
出光興産 合計 640 555 500

  * 残油処理装置の装備率の改善後能力

厚労省は2月9日、ファイザーのワクチンについて、1つの小瓶から6回分の接種ができることとなっていたが、国内の注射器では5回しかできないことを明らかにした。

現在、1つの容器で6回の接種を前提にしているため、計画されている供給量で接種を受けられる人数は2割近く減ると騒ぎになっている。

実は、ファイザーとの基本合意では1瓶5回を前提に6000万人分、1億2000万回分の供給を受けるとなっていた。

製品は、小瓶に1.8 mlの塩化ナトリウムを加えて希釈し、注射剤2.25 mlが得られる。
各患者に与える注射は0.3mlとなっている。

計算上では2.25 ml ÷ 0.3ml で、7回の投与すら可能である。

しかし、ファイザーは当初、1つの容器で5回の接種を前提にしていた。 下記の通り、注射器によって0.3ml以上使わざるを得ないものがあるため、安全を見て、全体をそれに合わせたと思われる。

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。 残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶5回が正しい。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。日本でも一部使われている。

一般の注射器

Loaded type

この場合、1回0.3mlでよいため1瓶で5回使っても、まだ余ることとなる。

ワクチンが欧米で投与され始め、貴重なワクチンを捨てることになると、このことが話題になった。

この状況を勘案して、1瓶6回に変更したと思われる。但し、欧米でも全てが Loaded注射器を使っているのではない。

欧州連合(EU)の機関である欧州医薬品庁(EMA)は、1月8日、ファイザー製ワクチンの使用のためのプロトコルを更新したが、この問題について下記のように述べている。

このワクチンの小瓶には、6回分の投与に十分な量が入っていることを認める(1瓶で6回使うことが公式に許可)。
ただし、そのためには、注射器や針の部分にワクチンが残る量が少ないものを使う必要がある。
標準的な注射器と針を使うと、6回分には足りない場合がある。

厚労省とPfizerは2021年1月20日、新型コロナウイルスワクチンについて、日本への供給契約を正式締結したと発表した。2021年に1億4400万回分(1人2回接種の場合7200万人分)が供給される。

しかし、基本合意での1瓶5回を前提にした6000万人分を1瓶6回に置き直しただけであり、供給される量は基本合意と同じである。

厚労省は今になって、国内で用意されている注射器では5回しかできないとするが、上記の事情は知っている筈である(知らなければおかしい)。また、日本にLoaded注射器が十分にないことも知っている筈である。

基本合意時の6000万人分を7200万人分に増やして発表すべきでなかった。但し、Loaded型注射器なら1瓶で6回使用できるとすればよかった。

なお、ニプロでは増産を検討している。


付記

このタイプの注射器を生産している世界最大の注射器メーカーBecton Dickinsonは、このような注射器は「ニッチな製品」であり、需要は「伝統的に最小限にとどまっている」 ため、「このような製品の生産能力は限られており、生産能力を高めるには時間がかかる」としている。

ーーー

これまでの注射器ではワクチンに限らず、貴重な医薬品を必ず無駄にすることになる。

素人の疑問として、ローデッドタイプが発明された後、なぜ、早急に切り替えなかったのだろうか。既存のものに、薬を無駄にすることよりも大きな利点があるのだろうか。

欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ(Mario Draghi)氏は2月13日、イタリア首相 に就任した。
新型コロナウイルス対策と低迷する経済の立て直しを行なう。

ドラギ氏は2011年11月1日から2019年10月31日までECBの第3代総裁を務めた。'Super' Mario と呼ばれる。

連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。

大臣のうち、8人はテクノクラートで、残りは連立の諸党から選んだ。「五つ星」から4人、「民主党」「同盟」「フォルツァ・イタリア」から各3人、「イタリア・ヴィーヴァ」と「自由と平等」から各1人が選ばれた。


イタリアでは以前から経済の立て直しが最優先課題であった。

2018/10/29 イタリア、来年度予算案で欧州委と対決

2019/5/10  イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ

昨年からは新型コロナ問題が発生、対策が急がれるなか、各党が政争を続けて きた。


2018年6月1日に 「五つ星運動」と「同盟」の連立で、法学者で政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。
政治姿勢の異なる2つの党の連立で、当初から早期瓦解の可能性も指摘されていたが、2019年8月に、「同盟」が離脱、連立が崩壊した。

ライバル関係にあった「五つ星運動」と野党の「民主党」、その他が連立を組み、第二次Conte内閣が誕生した。

本年に入り、「民主党」から独立した少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」がConte首相を批判、連立を離脱した。

Conte首相は大統領に辞表を提出、新たな連立政権で第3次内閣を目指したが失敗した。


マッタレッラ大統領は欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏を大統領府に呼び出した。ECB総裁として欧州ソブリン債危機を沈静化させた手腕が高く評価されている。

イタリア最大与党で議席の約3割を握る左派「五つ星運動」は2月11日、ドラギ前総裁を次期首相として支持することを決めた。党員によるオンライン投票で 賛成が59.3%、反対は40.7%だった。

与党の中道左派「民主党」やベルルスコーニ元首相率いる野党の中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」など、極右政党「イタリアの同胞」を除く全ての主要政党から幅広い支持を取り付けた。

ドラギ首相は、コロナ渦からの早期回復計画と、EUから与えれる復興基金(2000億ユーロ以上)をどのように使うかを早急に決めることが求められている。

欧州連合(EU)首脳会議は2020年12月10日、新型コロナウイルスで傷んだ経済の再生を目指す復興基金と中期予算の計約1兆8000億ユーロで合意した。承認を拒否してきたハンガリーとポーランドが妥協に応じた。

EU首脳会議は2020年7月17~21日、90時間以上にも及ぶ連続協議の末、「歴史的」とも評される復興パッケージに合意した。
欧州理事会では中期予算計画(多年度財政枠組み)の議論で、予算の主要拠出国だった英国のEU離脱を受けて大幅な歳入減となる中、復興パッケージの予算規模などをめぐって加盟国間の対立が先鋭化していた。

2020/12/21 EU、コロナ復興基金と中期予算でようやく合意 

ーーー

2018年3月4日の総選挙では、パオロ・ジェンティローニ首相の「民主党」が大敗した。

イタリアでは絶対多数を占める政党はなく、多数の政党が乱立する。このため連立政権とならざるを得ないが、政策ごとに主張が異なり、なかなかまとまらない。また、仮に連立が成立しても、特定の政策で譲りあえない場合、離脱の可能性もある。

このため、総選挙後政治の空白が続いていたが、反EUの「五つ星運動」と「同盟」が連立することとなった。

  2018年選挙
元老
(上院)
代議院
(下院)
五つ星運動 112 +58 227 +118
同盟 58 +41 125 +107
(小計) (170)   (352)  
民主党 53 -52 112 -185
フォルツァ・イタリア 57 -41 104 +6
その他 41 -12 62 -46
合計 321   630  
(過半数) (161)   (316)  


2018年6月1日に両党の推す法学者で、政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。

「五つ星運動」と「同盟」は、反EUの立場では同じだが、政治姿勢の異なる2つの党の連立である。連立の早期瓦解の可能性も指摘されていた。

「五つ星」は失業者らへの最低所得保障など「ばらまき型」の経済刺激策を重視する。
同盟」は、EUの移民政策を批判、違法移民の強制送還の強化や、難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務づけたEUのダブリン規則の見直しを強く求める。

2018/6/5 イタリアの混迷 

その後、2019年8月に予想通り 連立が崩壊し、同盟が離脱した。

連立政権を構成する「同盟」党首のサルビーニ副首相が早期の解散総選挙を要求し、内閣不信任案を議会上院に提出した
これを受け、
コンテ首相は辞任の意向を伝えた。

同盟のサルビーニ党首右派ポピュリスト政権の誕生の可能性が生まれたが、五つ星運動と中道左派の民主党はサルビーニ政権誕生阻止することで共闘した。

ライバル関係
にあったこの2党、民主党出身のレンツィ元首相が2019年9月に旗揚げした テクノクラート、民主党内の反レンツィ派が2017年に結党した「自由と平等」を加え、連立組み換えに成功、第二次コンテ内閣が生まれた。

イタリアの連立政権の一角を成す少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」を率いるレンツィ元首相は、新型コロナウイルスによる経済悪化からの復興予算を巡って政府を批判してきた。

レンツィ元首相は2021年1月13日、コンテ首相がイタリアの問題に十分対処できていないと批判、その指示を受けた同党所属の2人の閣僚が辞任し、同党は連立を離脱した。

下院では連立与党は依然として過半を占めるが、上院では定数321のうち、18票減って148議席となり、過半数(161)を割り込んだ。

コンテ首相は議会で信任投票を求めた。1月18日の下院の信任投票では、賛成321、反対259で新任された。1月19日の上院の信任投票では賛成156、反対140の僅差で乗り切ったものの、絶対多数(161)には届かなかった。

コンテ首相は1月26日にセルジオ・マッタレッラ大統領に辞表を提出した。コンテ氏は新たな連立政権の樹立を目指した。

しかし、2度にわたる連立協議を通じて第3次内閣の発足を目指したが、各党派の合意取り付けに至らなかった。



合従連衡の経緯          与党〇、野党X
第一次
コンテ内閣
第二次
コンテ内閣

2021/1

ドラギ内閣
五つ星運動
同盟

 離脱

民主党 民主党  分離
イタリア・ヴィーヴァ

 離脱X

フォルツァ・イタリア
混合会派
自由と平等
イタリアの同胞(極右)

米連邦議会占拠事件を扇動したとして下院に弾劾訴追されたトランプ前大統領の弾劾裁判で上院(定数100)は2月13日、無罪評決を下した。
共和党から7人が有罪を主張したが、有罪評決に必要な出席議員の3分の2に届かなかった。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
Guilty 7 48 2 57
Not Guilty 43 43
合計 50 48 2 100

ーーー

米下院は1月13日、トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂に乱入した事件を巡り、反乱を扇動したとして大統領を弾劾訴追する決議案を討論した。

採決に入り、232対197の賛成多数で可決した。

共和党からは下院ナンバー3のLiz Cheney下院共和党会議議長を含め、10人が賛成票を投じ 、4名が棄権した。

  賛成 反対 棄権 合計
民主党 222     222
共和党 10 197 4 211
合計    232 197 4 433


トランプ大統領は2回の弾劾訴追を受けた史上初の米大統領となった。

2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

バイデン政権の閣僚指名の承認手続きがほとんど終わっておらず、また経済対策法案の審議も必要であり、これらを優先させる必要があるため、下院は上院への送付を遅らせた。

上院の弾劾裁判は2月9日に審理を開始することで与野党が合意した。

2021/1/24 米上院、トランプ氏の弾劾裁判は2月9日開始



米下院の弾劾管理人は1月25日、トランプ前大統領に対する弾劾条項を正式に上院に送付した。

米上院では1月26日に上院議員100人全員が陪審員役としての宣誓を行った。

共和党のRand Paul 上院議員が、退任して民間人となったトランプ前大統領の弾劾裁判は「違憲」とし、弾劾裁判自体の合憲性を問う動議を提出したが、これを棚上げにする動議が55対45で通り、棚上げとなった。

上院は2月9日、弾劾裁判を開始した。

初日には、検察官役の民主党議員によって、1月6日のトランプ氏支持者による議会占拠の様子やトランプ氏の扇動的な演説の一部をまとめた動画が流された。 「これが罷免に値する行為でなければ、どんな罪も弾劾対象にならない」と述べた。

次いで、既に退任したトランプ氏を裁くことの合憲性を巡り、検察官役の民主党下院議員とトランプ氏の弁護側が討論した。 採決の結果、過半数が合憲と判断した。賛成56票、反対44票。共和党から6人が賛成に回った。

その後、 双方の冒頭陳述と上院議員の質疑応答を行なった。

最終弁論に先立ち、民主党はトランプ氏の弾劾に賛成した共和党の下院議員を証人として招致するよう要求し、いったんは可決した。
その後の調整で、裁判が長期化する展開を懸念し、トランプ氏に不利となる同議員の証言を証拠として採用する代わりに招致は見送ることで合意した。

共和党ボイトラー下院議員によると、共和党下院トップのマッカーシー院内総務が占拠事件当日の1月6日、電話でトランプ大統領に対して支持者の解散を訴えるよう要求したが、大統領は応諾しなかった。事実であれば大統領が暴力を容認したとも受け取れる。

民主、共和両党ともに裁判が長期化する展開を懸念した。

上院民主党には、弾劾裁判を短期間で終わらせ、新閣僚の承認、新型コロナウイルス追加経済対策の審議を急ぎたいとの思惑がある。

2月13日に採決を行い、上記の通り、共和党側の造反議員は7人にとどまり、有罪判決に必要な出席議員の3分の2以上に届かなかった。
退任後の弾劾は違憲としながら、有罪とした議員は一人だけだった。

共和党上院トップのマコネル院内総務は1月19日の上院本会議で、連邦議会議事堂占拠事件について、「トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」と発言した。
「暴徒はウソをすり込まれていた」と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

しかし、採決では同氏は「無罪」にまわった。

トランプ前大統領の支持者は今なお非常に多く、次の選挙への影響を考え、多くの議員が、「退任して民間人となったトランプ前大統領の弾劾裁判の合憲性」を理由に「無罪」に回ったと思われる。

マコネル院内総務はは無罪確定の直後、「彼(前大統領)はテレビで混乱を楽しそうに見ていた。ペンス氏が深刻な危機に直面しても、トランプの横断幕を持つ暴徒が警官を殴打していても、自分の副大統領をツイートで攻撃していた。無法と暴力をあおった責任がある」と述べた。

最近の共和党からの造反は下記の通り。

2020/10
最高裁判事
審議打ち切り
2020/10
最高裁判事
承認
2021/1
弾劾合憲性
審議棚上げ
2021/2
退任後の弾劾の合憲性
2021/2
トランプ弾劾 
Susan Collins Maine  反対  反対  賛成 合憲  有罪
Lisa Murkowski Alaska  反対  賛成 合憲  有罪
Mitt Romney Utah  賛成 合憲  有罪
Ben Sasse Nebraska  賛成 合憲  有罪
Pat Toomey Pennsylvania  賛成 合憲  有罪
Bill Cassidy Louisiana 合憲  有罪
Richard Burr North Carolina  有罪

結論
共和党賛成多数で審議打ち切り 共和党賛成多数で承認 55対45で棚上げ 56対44で合憲 57対43
賛成が2/3(67票)未満で
無罪

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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