2016年4月アーカイブ

米国司法省は4月27日、日立化成が司法取引を行ったと発表した。
米国子会社が2002年から2010年の間、米国その他で電解コンデンサの価格でカルテルを結んだことを認め、罰金を支払うとともに、調査に協力することを約束した。

日立化成も4月28日、これを発表した。司法省と日立化成ともに、罰金額については明らかにしていない。

司法省は、これが本件で有罪を認めた2つ目の司法取引で、カルテルに加わった他の業者を引き続き追及するとしている。

コンデンサのカルテルでは、2015年9月2日に NEC TOKIN が罪を認め、1380万ドルの罰金を支払うことで合意している。
これとは別に、2015年3月12日に大陪審は日本のコンデンサメーカー(Company A とし、社名を明らかにしていない)の前事業部長のT. I. 氏をカルテルに参加したとして起訴した。

日立化成もNEC TOKINも調査の協力を約束しており、今後も摘発が続くと思われる。

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公取委 は3月29日、家電や自動車に使われる2種類のコンデンサーの価格でカルテルを結んだとして、独禁法違反で、ニチコン、日本ケミコン、ルビコン、松尾電機、NECトーキンのメーカー5社に計約67億円の課徴金納付命令を出した。

自主申告したため課徴金を免除された日立AICは日立化成の子会社。 

台湾の公平交易委員会(公取委に相当)は2015年12月9日、スマートフォンなどに使う電子部品のコンデンサーについて、日本ケミコンなど日本企業とその海外子会社10社が価格カルテルを結んでいたとして、総額約215億円の課徴金を科すと発表した。台湾でのカルテルに対する課徴金としては過去最高額。

    日本 
(2016/3/29)
台湾
(2015/12/19)

千円

減免 排除命令

百万円

アルミ電解
 コンデンサー
日本ケミコン 1,435,240   8,307
ルビコン 1,067,740   4,618
エルナー 283
三洋電機 3,115
ニチコン 3,362,230   412
日立AIC 0

免除

 
小計 5,865,210   3社 16,735
タンタル電解
 コンデンサー
NECトーキン 127,150 50% 4,507
ニチコン 277,950    
ビシェイポリテック 0 免除 115
松尾電機 427,650   90
小計 832,750  

3社

4,712
合計 6,697,960  

6社

21,447


2016/4/2 公取委、コンデンサーメーカーに課徴金納付命令
 


トヨタ自動車は4月21日、高い耐油性、耐熱性が必要な特殊ゴム製部品であるエンジン・駆動系ホースに、バイオ合成ゴム(バイオヒドリンゴム)を世界で初めて採用すると発表した。

国内生産車種のバキュームセンシングホース(エンジン吸気系部位に使用)に2016年5月から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予定。
今後、ブレーキ系ホース、燃料系ホースなどの特殊ゴム部品にも採用拡大を目指す。

このバキュームセンシングホースは、トヨタと日本ゼオンおよび住友理工が共同開発した。

住友理工は旧称 東海護謨工業で、自動車用防振ゴム・ホース部門の国内トップメーカー。
1937年に住友グループに入った。2014年に現社名に改称した。

ヒドリンゴム(エピクロルヒドリンゴム)は耐油性、耐熱性、耐熱老化性、耐オゾン性、ガス透過性に優れ、ホースなどに使われる。
エピクロルヒドリンの単独重合体(略称 CO)と、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体(略称 ECO)がある。

バイオヒドリンゴムは、ヒドリンゴムの原料の一部であるエピクロルヒドリンを植物由来のバイオ原料に替えて製造したもので、ライフサイクルでCO2排出量を約20%抑制可能とする。

今回、植物由来原料を分子レベルで石油由来原料と結合させ合成ゴムへ変換する技術など、様々な複合化技術を駆使することにより、バキュームセンシングホースに求められる耐油性、耐熱性、耐久性は同等レベルを確保した。
さらに部品製造においても、従来の石油系ヒドリンゴムを用いた場合と同等の品質と量産性を確保し、市販車への採用を可能としている。


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Solvayは2007年4月、同社技術での菜種油からのバイオディーゼル生産時の副生グリセリンを原料とするエピクロルヒドリンの生産をフランスのTavauxで開始したと発表した。
当初の能力は年10千トンで、需要に応じて簡単に拡張できる。
グリセリンはバイオディーゼル生産時の副産物で、1トンのバイオディーゼルに対して100kg のグリセリンが副生する。

Solvay のEpicerol プロセスは、グリセリンと塩酸から中間体のジクロロプロパノールを直接合成し、次の脱塩化水素工程でエピクルヒドリンを生成する。
塩素と水が少なくて済み、廃液も少ないのが特徴で、20以上の特許を取った。

2007/4/13 Solvay、バイオディーゼル副生グリセリンを原料とするエピクロの生産開始

Solvayは2007年9月、タイのMap Ta Phut にEpicerol®法による年産10万トンのエピクロルヒドリン工場を建設すると発表した。

生産開始後、Solvayはこの事業をPVCのJVのVinythai に移管した。

2007/9/11 Solvay、タイでエピクロルヒドリン生産

Dow もバイオディーゼル副生のグリセリンからエピクロ生産の独自の技術を持っており、Dow Epoxyが上海ケミカルパークで初めて工業化をした。

年産10万トンの液体エポキシ樹脂とともに、グリセリンからの年産 15万トンのエピクロルヒドリンのプラントを建設した。

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日本ゼオンの米国子会社Zeon Chemicals は2013年2月、ミシシッピー州の Hattiesburg 工場で椰子油や植物性油から作ったエピクロルヒドリンを使ってHydrinゴムを開発していると発表した。




三菱商事は4月25日、インドネシアのWeda Bay Nickel 鉱山の開発権益を事業パートナーであるフランスのEramet S.A. に売却すると正式発表した。
保有していた30%分の権益を月内にすべて手放す。売却額は約100億円の見込み。

三菱商事は2016年3月期決算で4300億円の減損損失を計上するが、本件はすでに減損処理を済ませており、決算予想の見直しはない。

三菱商事とともに3.4%の出資をしていた太平洋金属も同様に売却した。

操業に向けて準備してきたが、ニッケルの国際価格が2011年と比べて約3分の1 に下落し、今後、事業を継続しても採算がとれないと判断した。
三菱商事では、「事業化要件が満たされなかった為、今般株主間協定書に基づき売却する」としている。

この計画は、世界有数の金属原料・高性能合金生産者のEramet がインドネシアのハルマヘラ島のWeda Bay の世界有数の大規模ニッケル鉱床を開発するもので、同鉱床の資源量はニッケル純分ベースで630万トンと見込まれ、Erametの開発したニッケル湿式精錬法を採用し、年産6.5万トンのニッケルを生産するもの。

三菱商事は2009年2月に同プロジェクトに33.4% 参画し、これまで事業化調査を進めてきた。2011年12月に太平洋金属が三菱商事から持分3.4%の譲渡を受け、参加した。

太平洋金属は、旧称 日曹製鋼 で、フェロニッケルとフェロニッケルスラグ加工品を生産している。低品位ニッケル鉱石からの製錬技術を生かした、ごみ焼却灰などの再資源化システムの事業も展開している。


この計画の運営形態は下記の通り。

10%出資するPT Antamはインドネシア政府が株式65%所有する国営の資源大手で、世界最大級のニッケル生産企業。

ーーー

住友商事は2016年1月13日、マダガスカルで進めてきたニッケル採掘・精錬の「Ambatovy Nickel Project」に関してニッケル価格の下落を理由に約770億円の減損損失を計上すると発表した。


足元のニッケル価格の下落を踏まえ、中長期価格の見通しを見直した結果、プロジェクト会社が保有する固定資産の簿価を全額回収することは困難と判断したとしている。

2016/1/19 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上  

住友金属鉱山は2016年3月29日、ニューカレドニアのGoro Nickel Cobalt Project を進めているVale Nouvelle Calédonie S.A.Sの全株式をVale Canada Limitedに譲渡する売買契約を締結した。譲渡金額は約80億円。
共同で出資する三井物産も同様に売却した。

住友金属鉱山と三井物産は、SUMIC Nickel Netherlands(住友 52.38%、三井 47.62%)を設立して2005年よりGoro Nickel Cobalt Projectに参加しているが、2015年12月末までに商業生産目標を達成できない場合には、株式をVale Canadaに売却することとしており、商業生産条件を達成することができなかったため、撤退する。

2016/4/6 住友金属鉱山と三井物産、ニューカレドニアのニッケル事業から撤退 

アルゼンチンとヘッジファンドとの15年に及ぶ争いが終結した。

アルゼンチン政府は2月28日夜、2002年のアルゼンチン国債のデフォルトに対する2004年12月の債務再編案(民間保有の国債の75%をカット)を拒否していたElliott Management など複数のファンド("holdout" 債権者)に対し、世界各国の訴訟で和解するため46億5300万ドルを支払うことで合意した。これは、ヘッジファンドが主張していた債務全額の約75%に相当する。

2015年12月に就任したマクリ大統領は経済再建のために外資の流入が不可欠だと考えており、債務問題の解決を重要視した。
2016年1月からニューヨークで交渉を再開し、すでに複数の欧米のファンドとは合意に達していた。

アルゼンチンの経済財務相は「15年間で初めて、アルゼンチンはデフォルトからの脱却を開始した」と述べた。

2016/3/4 アルゼンチンとヘッジファンドとの15年に及ぶ争いが終結

その後、残る債権者の大半とも和解した。

アルゼンチンの上院は3月31日、米投資ファンドとの返済和解案を承認した。

アルゼンチンと"holdout" 債権者の合意を受け、マンハッタン連邦地裁のThomas Griesa判事は3月2日、2012年に出したアルゼンチンの債務支払いの一時停止命令を解除する判決を下した。

2012年の判決は下記の通りで、これによりアルゼンチン政府は新債券保有者に対し利息を払えなくなり、デフォルトとなり、国際金融市場から締め出された。

アルゼンチンが債務再編に応じた新債券保有者に支払いを続けるのであれば、"holdout"債権者の保有債券についても、全額支払わねばならない。
もし"holdout"債権者に支払わない場合は、米国の金融機関はアルゼンチン政府から新債権保有者への支払い手続きをしてはならない。
(複数の債権者に対し返済の優先劣後を設けないとするPari Passu 条項:債権者平等条項を適用)

米連邦高裁は4月13日、地裁の判断を支持した。

これを受け、アルゼンチン政府は4月19日、165億ドルの債券を米国市場で発行したと発表した。
2001年にデフォルトに陥って以来、約15年ぶりに国際金融市場に復帰した。

アルゼンチン政府は4月22日、20のヘッジファンドなどに対して62億ドルを返済し、2月に合意した返済案を実行した。
遅れて和解した他の債権者に支払うため、Bank of New York に31億ドルを寄託した。


なお、"holdout" 債権者との和解条件が2004年12月の債務再編案に応じた債権者を優遇するとして訴訟が行われており、全面解決ではない。



タイ最大の石炭メーカーのBanpu Pcl は4月20日、米国ペンシルバニア州のシェールガス開発のChaffee Corners Joint Exploration Agreement の29.4%の権益を112百万ドルで取得したと発表した。

Marcellus Shale belt の北東部分にあり、Repsolが買収した Talisman Energy Inc が65.4%の権益をもって運営し、残り5.2%の権益をPassive Investorが持つこととなる。

Banpuの持分ベースで、確認埋蔵量はドライ天然ガス 156Bcf で、2016年の目標生産量を日量21百万cf としている。
天然ガスは全量米国市場(主に発電用)に販売する。

これはBanpuにとって最初の米国の天然ガス事業で、これまでアジア市場が中心であったのを是正する戦略の一つである。

Banpuでは、PTT Exploration and Productionの前CEOを取締役に起用し、上流のガス戦略についてアドバイスを受ける。

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Banpuは1983年にタイで設立されたタイ最大の石炭採掘会社だが、国内の炭鉱が枯渇したため、採掘は国外が中心である。
2001年以降、アジア太平洋地域で石炭をベースとするエネルギー企業となると決めた。

石炭採掘と石炭火力発電が中心だが、最近は太陽光発電にも乗り出し、日本にも進出している。

現在の石炭採掘事業の概要は下記の通り。

モンゴリアでは2011年にHunnu Coal Limited を買収した。

中国には2003年に子会社 Banpu Investment (China) (BIC) を設立し進出した。現在、Gaohe 鉱山を運営するShanxi Gaohe Energy に45%出資、またHebi鉱山を運営するHebi Zhong Tai Mining に40%出資している。

インドネシアには1991年に進出、同社の主力基地となっている。子会社のIndo Tambangraya Megah Tbk がカリマンタンで6つの炭鉱を運営している。

豪州では、2010年に9つの炭鉱を運営するCentennial Coal Companyを買収した。


発電事業の概要は次のとおり。

タイでは、Map Ta Phut コンビナートで1,434MW の石炭火力発電所を運営するBLCP Power の50%の権益を有する。
ラオスでは現地の電力会社や国営企業と合弁でHongsa Power Plant を完成させた。

中国では子会社BICを通じ2006年に火力発電に進出した。
現在、河北省に2つ、山東省に1つの発電所を持つ。
更に、山西省でShanxi Lu Guang Power Project を進めている。Banpuが30%出資し、山西潞安礦業と
格盟国際能源が35%ずつ出資する。

Banpuは2020年までに発電能力を3割増の240万キロワットに引き上げ、そのうちの2割を太陽光など再生可能エネルギーとする方針である。

日本でも太陽光発電事業に参入し、現在7箇所で事業を行っている。
2020年までに合計20万キロワット規模の発電能力を目指す。

むかわ:北海道鵡川町
ナリ会津:会津若松市の会津カントリーゴルフクラブのコース跡などに設置
Olympia:群馬県のパチンコ機製造のオリンピア伊勢崎三和工場

付記 日経(2016/4/30)によると岩手県一関市に25MWを建設する。

同社は2015年7月に子会社 Banpu Power 設立を発表した。

Power Business の日本関連の構造は下記の通り。


ブラジル鉄鋼大手のUsiminas は4月18日、臨時株主総会を開き、10億レアル(約300 億円)の増資を承認した。

1株 5レアルの普通株を2億株発行、株数は 505百万株から705百万株となる。他に約20億円の優先株を発行する。
既存の株主に新株優先引受権があり、4月22日から5月23日まで申し込みを受け付ける。

新日鉄住金は他の株主が引き受けない場合、増資額の全額にあたる10億レアルを引き受ける意向だが、共同出資するTechint Groupの鉄鋼大手Ternium がどの程度の出資に応じるかが焦点となる。

Techint Groupは、アルゼンチン、イタリアを拠点とする財閥。鉄鋼、鋼管、石油、ガス、建設、産業機械、ヘルスケアなどの事業を手掛ける。
イタリアの市民権をもつ Rocca 一族が、オランダの財団を通じて各グループ企業を支配している。
傘下に鉄鋼メーカーTernium、鋼管メーカーTenarisを持つ。

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ブラジルの経済低迷を受け、Usiminasの2015年12月期の連結純損失は36億8500万レアル(約1200億円)で運転資金が不足しており、3月中旬が期限の借入金を返済すれば資金ショートする状況であった。

金融機関は借入金の返済猶予の条件として、主要株主の追加出資を求めた。

しかし、Usiminasの協定株主で、ともに3割弱の議決権を保有する新日鉄住金などの日本グループとTerniumは、再建方法を巡って対立してきた。

ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができる。
Usiminasの協定株主は、議決権の過半数を確保した上で、株主総会、経営協議会(取締役会に相当)において議決権を統一的に行使することを取り決めている。

現状は下記の通りで、詳細は後記の通り。

議決権 協定内
日本グループ合計 29.45 46.12
Ternium Group 27.66 43.31
Usiminas従業員年金基金 6.75 10.57
協定株主計 63.86 100.00

新日鉄住金とTerniumは1年以上にわたり、Usiminasの経営をめぐって意見が対立しており、2月に行われた前回の取締役会も増資について合意せずに終わっている。

新日鉄住金は大幅増資を主張したのに対し、Terniumは、限定的な増資 は受け入れるが、Usiminasの鉄鉱山会社 Mineração Usiminas S.A.(MUSA) のキャッシュの一部を流動性改善に充てるよう求めた。

MUSAについては 2010/10/4 住友商事、ウジミナスの鉄鉱山子会社に出資

Usiminasが3月11日に開いた経営審議会(取締役会に相当)で、新日鉄住金が提案した既存株主への新株2億株の割り当てによる総額10億レアルの増資が承認され、別の増資案を提示するよう求めたTerniumの要請を拒否した。
(4月18日の株主総会で、この増資案を決議した。)

両社は経営の重要事項を事前協議し、経営審議会や株主総会で協調する協定を結んでおり、採決での決着は異例 。

経営審議会での増資決議を受け、Usiminasは主要債権者との間で 4カ月間の債務支払い猶予で合意した。

新日鉄住金は翌12日、Usiminasが実施する増資 について、最大10億レアル全額を引き受けると発表した。他の株主が株式を引き受けない場合、代わりに引き取る もの。
仮に 全株を取得すれば、日本グループのUsiminasへの出資比率は現在の29.45%から5割に高まることになる。

株主協定では、協定期間中、比率は一定だが、増資の場合は反映させるとなっている。

また、 各株主はこれ以外に株を買うことは可能だが、その分については協定株主として決めた結論に従って投票する。

新日鉄住金は協定外で約 1.33%を保有している。

Ternium グループは2014年10月、ブラジル銀行年金基金から株式の10.2%を買い取り、持ち株比率を27.66%から37.86%に増やした。
株主間協定では、新たに購入した株を協定に盛り込むには、両社の合意が必要だが、新日鉄住金側は応じておらず、協定上の比率は変わらない。

2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社 Usiminasを巡る争い

新日鉄住金が全株を引き受けた場合の議決権は次のとおり。(株数は比率からの逆算による概数)
実際には、交渉による株主協定の改定が必要となる。

  Case 1  新日鉄住金が増資全株を引き受け
  Case 2  上記に合わせ、協定枠外の持株も協定内に組み入れ

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ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができる。

Usiminasの協定株主は、議決権の過半数を確保した上で、株主総会、経営協議会(取締役会に相当)において議決権を統一的に行使することを取り決めている。

Usiminasの株主協定の推移は下記の通り。

当初、日本グループとV/Cグループ及び従業員年金基金が株主協定を結んでいた。

2011年2月18日に、従業員年金基金を含めた協定は2016年11月に終了し、以降は新比率とする ことに決めた。

2006/11~2016/11

2016/11~2031/11

議決権 協定内 議決権 協定内
新日鉄住金・日本Usiminas 26.1 26.1
三菱商事・メタルワン 1.6 1.6
日本グループ合計 27.8 43.5 27.8 51.7
Votorantim 13.0 13.0
Camargo Correa Group 13.0 13.0
V/Cグループ合計 26.0 40.7 26.0 48.3
従業員年金基金 10.1 15.9 - -
協定株主計 63.9 100.0 53.7 100.0

直後にブラジル鉄鋼大手のCSNがUsiminas株買取を提案した。

2011/9/24 ブラジル鉄鋼大手CSN、Usiminas株買い取りを提案

CSNはその後の買い増しで議決権株の16%とした。

ブラジル司法省はCSNに対して、Usiminas株の買い増しを禁止する通達を出した。
一部製品での両社のシェアは7割を超えており、寡占状態を防ぐための措置との見方が多い。

これに対し、新日鉄は2011年11月28日、協定株購入に関する契約および同社に関する新たな株主間協定を締結したと発表した。

1) 新日鉄が、Usiminasの従業員年金基金から、全議決権の約1.69%相当を購入。
2) 中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium Groupが、VotorantimとCamargo Correa及び従業員年金基金から全議決権の約27.66%相当を22億ドルで購入。
3) 新日鉄グループ(新日鉄、日本Usiminas、三菱商事グループ)、テルニウム・グループ、従業員年金基金の間で、新たな株主間協定を締結。

2006/11~

株売買 2012/1/16施行
議決権 協定内 議決権 協定内
新日鉄住金・日本Usiminas 26.1 27.83
三菱商事・メタルワン 1.6 1.62
日本グループ合計 27.8 43.5 +1.69 29.45 46.12
Votorantim 13.0 -
Camargo Correa Group 13.0 -
V/Cグループ合計 26.0 40.7 -26.0 0 0
Ternium Group - - +26.00
+1.66
27.66 43.31
Usiminas従業員年金基金 10.1 15.9 -1.69
-1.66
6.75 10.57
協定株主計 63.9 100.0 63.86 100.00

新体制下で、新日鉄住金とTerniumの間には経営方針を巡る対立が起こった。

2012年1月に社長に就いたTernium出身のEguren氏は、投資と経費の削減、生産性向上、資産売却、人員整理など経営再建に努め、業績は目立って改善されてきた。

新日鉄住金は自動車用鋼板など高級品で収益拡大を目指しているのに対し、Terniumはコスト圧縮による短期収益改善と南米での自社販売網を活用した汎用品の販売拡大を狙っているとみられる。

Usiminasの経営審議会は2014年9月26日、Terniumグループ出身のJulián Eguren社長と子会社社長、製造担当取締役の3人の解任を発表した。

Terniumは、事前協議がなく、株主間協定に違反するとしたが、日本側が押し切った。
経営審議会で賛否は5対5だったが、議長の判断で解任が決まった。

これは法廷闘争となったが、ブラジルの裁判所は2015年5月5日、解任を支持する判断を下した。

2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社 ウジミナスを巡る争い

今回の資金不足対策についても、両者の方針が異なり、混迷した。

ーーー

増資に関しては、2011年にUsiminasの買収を提案したブラジル鉄鋼大手のCSNも反対を表明した。

報道では、CSN は現在、Usiminasの普通株を14.1 %、議決権のない優先株を 20.7% 保有している。

同社はまず、Ujiminasに鉄鉱山子会社のMUSAにある現金9億レアルを使うよう命じること地方裁判所に求めたが、これは却下された。

更に、増資は少数株主の権利を希薄化し、有害であるとして、増資案を無効とするよう訴えた。1株5レアルは安すぎるとしている。

同社の株価推移は下記の通り。

 



ーーー

今回の増資が実施されても、当面の借入金返済資金ができるに過ぎない。

大株主同士で経営に対する意見が異なるなかでの同社の再建は大変である。

MT映像ディスプレイと海外子会社3社による価格カルテルに関する審決取消請求事件について、東京高裁は4月13日、原告の請求を棄却した。

海外の取引であり、日本の独禁法の対象外であるとする訴えに対し、取引自体は需要家の海外の子会社が行ったとしても、日本の親会社と海外子会社が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、日本の親会社を需要家と認め、日本の独禁法上の「不当な取引制限」に当たるとした。

公取委は2009年10月7日、外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。

公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。

各社は、日本のブラウン管テレビ製造販売業者(オリオン電機、三洋電機、シャープ、日本ビクター、船井電機)の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。

外国法人間の取引では日本の独禁法は適用できないが、公取委は今回、日本の電機大手の親会社がブラウン管の購入価格などを交渉していたため、日本の親会社と現地製造子会社は一体だとして、日本の市場にも悪影響を及ぼしたと認定、同法が適用できると判断した。

  価格
決定
出荷   排除措置
命令
課徴金納付
命令
 
MT映像ディスプレイ     大阪府   ○   -  
 MT Picture Display (Malaysia) Sdn. Bhd. 子会社   Malaysia   -   650,830千円 清算手続き中
 PT. MT Picture Display Indonesia 子会社   Indonesia   -   580,270 清算手続き中
 MT Picture Display (Thailand) 子会社   Thailand   -   566,140 清算手続き中
Samsung SDI     Korea   ○   -  
 Samsung SDI (Malaysia) BERHAD 子会社   Malaysia   -  1,373,620  
LG Philips Displays Korea   Korea   -   151,380 事業譲渡
 P.T. LP Displays Indonesia     Indonesia   - *(10億円以上)
→ 
932,680
 
Chunghwa Picture Tubes     Taiwan   ー   - 自主申告
 Chunghwa Picture Tubes (Malaysia) Sdn Bhd. 子会社   Malaysia   ー   -  
Thai CRT   Thailand   -   - 解散消滅
合計          2  4,254,920  


2015年5月22日の審決で、MT映像ディスプレイ及び
Samsung SDI について、排除措置命令を取り消した。
排除措置命令時において既に独禁法違反の行為がなくなっていると認められた。

2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令

MT映像ディスプレイは旧松下東芝映像ディスプレイ(松下/東芝JV)で、同社と海外子会社3社は、以下の理由で審決の取り消しを求めた。

ブラウン管を使用したのは日本のメーカーの海外子会社であり、日本のブラウン管テレビ製造販売業者ではない。

日本(親会社)

海外

出荷 購入
ブラウン管供給 MT映像ディスプレイ 
   
MT Malaysia
MT Indonesia
MT Thai 
ブラウン管購入 オリオン電機
三洋電機
シャープ
日本ビクター
船井電機
各社の
海外子会社


ブラウン管の需要者は我が国には所在せず、「一定の取引分野」における競争を実質的に制限するものとは認められない。

今回の判決理由は下記の通り。

本件ブラウン管の取引条件を決定していた我が国ブラウン管テレビ製造販売業者とその現地製造子会社等とは、両者が一体不可分となって本件ブラウン管の供給を受けたものと合理的に評価することができ、我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が需要者に該当するとした認定は、実質的証拠に基づくものということができる。

(1) 独占禁止法3条後段(不当な取引制限)

独占禁止法が、我が国における自由競争経済秩序の維持をその直接の目的としていることに照らせば、
日本国外において、他の事業者と共同して「不当な取引制限」に及んだ場合であっても、
一定の取引分野における我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであるときには、適用される。

(2) 独占禁止法2条4項1号にいう「需要者」について

需要者が供給を受けるに当たり、
意思決定者と、供給を受けこれを使用収益する者とが異なる場合であっても、
両者が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、意思決定者についても需要者として認めることができる。

ショーワは4月4日、カナダにおける自動車用部品(ピニオンアシストタイプ電動パワーステアリング製品)の価格カルテルで、オンタリオ州の裁判所で4月1日に13百万カナダドル(約11億円)の罰金支払を命じられたと発表した。

同社は2014年4月に米国でも価格カルテルで有罪を認め、罰金1990万ドルの支払いに同意した。
また、2014年10月には本件で
ショーワの元役員が起訴されている。

ショーワは1938年に昭和航空精機として設立、航空機部品を製造した。
戦後、1946年に昭和製作所と改称し、自動車部品の製造を開始した。

1993年に精機技研工業と合併し、ショーワに改称した。

ーーー

自動車部品カルテルを巡っては、米国ではこれまでに37社(日本企業32社、外国企業5社)が合計2,629百万ドルの罰金を支払っている。

また、日本人54名と外国人1名の55名が起訴され、うち30人(うち外国人1名)が禁固刑と罰金刑を受けている。

最終リスト


カナダでも摘発が続いており、今回で7社となる。

対象製品 裁判所 罰金(C$)
古河電工 2013/4/4 自動車部品 オンタリオ州 500万
矢崎総業 2013/4/18 ワイヤーハーネス オンタリオ州 3,000万
ジェイテクト 2013/7/12 ホイールハブユニットベアリング ケベック州 500万
日本精工 2014/1/31 自動車用軸受 ケベック州 450万
パナソニック 2014/2/20 自動車部品 オンタリオ州 470万
デンソー 2014/8/20 ボデーECU
電装品や電源を制御するコンピュータ部品)
オンタリオ州 245万
ショーワ 2016/4/1 電動パワーステアリング製品 オンタリオ州 1,300万
合計 6,465万

現在の1C$は約85.5円のため、罰金合計は約55億円となる。



丸紅は4月18日、2016年3月期の連結最終損益予想を大幅に引き下げた。
株主帰属当期損益を前回予想比1200億円減の600億円とする。

三井物産、三菱商事、住友商事が大幅な特別損失を計上するなか、同社は2月の第3四半期決算発表では、前期比70.4%増の1800億円とする予想を据え置くとしていた。
北海やメキシコ湾での原油開発にからみ減損損失を計上するが、電力や環境インフラなどの増益でカバーするとしていた。

損益予想の引き下げ理由は下記の通り。

事業分野 内容 当期損益
税引き後    
資源 チリ銅事業 減損損失 -350億円
豪州鉄鉱石事業 減損損失 -200億円
米国等石油・ガス事業 減損損失 -150億円
市況悪化 -50億円
非資源 海外プラント案件 損失引当 -200億円
その他 一過性の要因 -150億円
穀物事業及び鉄鋼製品事業等での減益 -100億円
合計 -1,200億円

同社は2015年3月期にも1,200億円の特別損失を計上している。

減損損失 主な理由 損益
資源 北海の油ガス 5鉱区群 原油価格下落、開発コスト増加 -600億円
メキシコ湾沿岸(1鉱区) 原油価格下落 -175億円
米シェールオイル -175億円
チリ銅事業の減損損失 銅価格下落 -100億円
豪州石炭事業の減損損失 石炭価格下落 -50億円
非資源 Gavilon社「のれん」の減損損失 計画未達による計画見直し -500億円
合計 -1,600億円
税効果 400億円
損益合計 -1,200億円


この時点では、豪州鉄鉱石事業については、高いコスト競争力があり、高品質の鉱石が期待できるため、減損不要と判断したが、今回は減損計上した。

2015/1/29 丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上

2015年3月期では丸紅が2013年に買収した米穀物大手Gavilonの「のれん」の半分の500億円を減損処理したが、Gavilonの損益は当初予定の半分にとどまっている。

今回の発表に当たり、国分社長は、「ガビロンの収益貢献は当初の計画を下回った。3年前に買収してから毎年、計画未達が続いており、このまま手をこまねいているわけにはいかない。現地に経営を任せてきたが、今は経営陣を入れ替え、我々の意思でリストラなどができる体制に変えた」と述べた。

買収に際し、中国商務部から厳しい条件を付けられた。
2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。

この結果、買収で目標とした中国市場でシナジー効果を出せない状況にある。

2013/4/26 中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認

ーーー

丸紅は世界でも有数の銅生産会社のAntofagasta と組み、チリで事業を行っている。

1997年にAntofagastaが60%の権益を保有するLos Pelambres鉱山の権益(現持分35千トン)を取得した。

2008年4月には、Antofagastaが間接的に100%の権益を保有する Esperanza及び El Tesoroのプロジェクトの各30%の持分(前者が60千トン、後者が30千トン)を取得した。
Esperanza鉱山に隣接するTelégrafo鉱山も開発が予定されている。

更に2011年12月には、Antofagastaが100%の権益を保有するAntucoya鉱山プロジェクトに30%の参加を決めた。24千トンの銅地金を引き取る権利を持つ。



これにより、同社のチリで銅地金換算で150千トンの権益を持つこととなった。

ーーー

チリの銅事業では、2016年3月期に、三井物産が1,150億円、三菱商事が2,800億円の特別損失を計上している。

両社はAnglo American Surに出資しているが、大幅な銅価格の下落を理由にしている。

2016/3/28 三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ

九州大学の研究成果を活用したベンチャーで、「究極の有機EL発光材料」を開発する ㈱ Kyulux は4月6日、総額15億円の出資を得て本格稼働したと発表した。

㈱ Kyulux は九州大学の安達千波矢主幹教授が内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)で開発に成功した第三世代有機EL発光材料(TADF材料)の実用化を担うスタートアップ企業で、2015年3月9日に設立された。

増資にあわせ、実用化に伴う技術の特許に関して権利者である九州大学らと実施許諾等を締結、本技術を世界中で実用化できる体制を構築した。
(2015年4月に基本特許の実施許諾契約を締結しているが、今般、基本特許以外の特許についても、契約を締結した。)

2018年に予定している製品化に向けた活動の加速が期待される。

今回出資に応じたのは、次の各社:
 Samsung Display
 LG Display

 ジャパンディスプレイ(ソニー、東芝、日立の中小型液晶ディスプレイ事業を統合)
 JOLED (ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合)

 
他に
 産学連携機構九州(九大TLO)
 出資型新事業創出支援プログラム
 ベンチャーキャピタル(西日本シティ銀行等が出資するQBキャピタル、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル、
               SMBCベンチャーキャピタルなど)               

  九州大学は特許に関する契約の対価として株式を取得し、資本参加する。

韓国紙は、長年のライバルである両社が「共通の敵」である中国の台頭に危機感を覚えての「呉越同舟」だとしている。
金額は公表されていないが、両社がそれぞれ3億-4億円ほど出資したとみられる。

韓国が主導するテレビ用大型液晶パネル分野では中国メーカーの攻勢にさらされており、両社はこれに対し、有機ELパネルで対抗する考えだが、有機ELパネルは製造コストが高いのが難点となっている。

Kyuluxは、レアメタルのイリジウムを使わず、有機ELの製造コストを下げる技術を開発しており、Samsung Display とLG Displayは今後、Kyuluxの技術を使用して有機ELの性能向上に取り組む。

ーーー

安達教授は2012年12月に第三世代の有機EL発光材料であるTADF(熱活性化遅延蛍光)材料の開発に成功した。

TADFは、第1世代の発光材料である蛍光材料と同等の低コスト(レアメタル不使用)と、第2世代のリン光材料と同等の発光効率を同時に達成する画期的な第3世代の発光材料で、100%の内部量子効率を達成した。

同じく九州大学で発明されたHyperfluorescence はTADFと第1世代の発光材料である蛍光材料を組み合わせることで、高効率発光、低コストに加え高純度な発光色を実現した。

TADFとHyperfluorescence の組み合わせで、高効率、低コストのみならず、高純度の発色と高強度のEL発光を実現できる。その結果、日中屋外でも視認性の良い鮮やかな映像を楽しむことができ、モバイルディスプレイの性能向上だけでなく、屋外での新しい用途の開発につながる。
また、省エネ効果が上がり、携帯機器の長時間使用を可能にする。

有機ELの発光材料は、発光の原理的な違いによって蛍光材料とリン光材料に分けられる。

蛍光材料は、励起子が「一重項状態」というスピンの状態を経由する場合にだけ発光する。
リン光材料は、一重項状態に加えて、三重項状態というスピン状態からでも発光する。 レアメタルを使用する。

一重項状態と三重項状態は1:3 の割合で発生するため、蛍光材料の内部量子効率は最大で25%、リン光材料は同100%と考えられていた。

TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence) は励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動を熱活性化によって生じさせ、蛍光発光に至る現象を示す。
三重項経由で発光が生じるために一般に寿命の長い発光が生じることから遅延蛍光と呼ばれる。

電子を光へほぼ100%の効率で変換でき、低コスト・高効率発光を可能とし、また、無限の分子設計の自由度を最大限生かせる夢の発光材料の創出と位置付けることができる。
また、蛍光分子からのEL発光効率を究極の100%まで向上させることに成功した。

一重項と三重項の励起エネルギー差(ΔEst)の極めて小さな分子設計によって三重項励起子を一重項励起状態にアップコンバージョンさせる。
有機ELデバイスの発光層の大部分を占めるホスト材料にTADFと蛍光材料を分散させ、励起エネルギーの生成をTADFが行い、そのエネルギーを蛍光材料に遷移させ、発光させることで、これまでの蛍光材料に比べ4倍の発光効率を実現した。

これまでは内部量子効率が高い材料は、イリジウムなどのレアメタルを利用するリン光材料に限られていたが、新材料ではレアメタルは利用しない。

高効率、低コスト、高純度発光色の全てを実願する究極の発光メカニズムである。

経済産業省は4月15日、2015年末時点の我が国の主要石油化学製品生産能力調査の結果を発表した。
(単位:千トン)

  2014年末 2015年末 増減 内訳
エチレン 定修年 6,903 6,588 -315

住友化学千葉停止

-380
定修スキップ年 7,658 7,317 -341 -415
LDPE 合計 2,310 2,218 -92
(うちLLDPE) 1,046 954 -92

日本ポリエチレン鹿島停止

-92
HDPE 1,143 1,142 -1
PP 2,883 2,874 -9
EO 921 921 0
SM 2,667 2,255 -412

日本オキシラン停止 

-412
PS 816 816 0
VCM 2,774 2,774 0
PVC 2,009 1,929 -80

新第一塩ビ千葉停止

-80
アセトアルデヒド 289 289 0
アクリロニトリル 496 496 0
合成ゴム SBR 608 611 3
BR 296 296 0
IR 72 74 2
MMAモノマー 547 547 0
BTX ベンゼン 6,034 5,666 -368

出光 -247、住友化学 -122

トルエン 2,667 2,606 -61

住友化学 -61

キシレン 8,507 8,487 -20

住友化学 -28

パラキシレン 3,682 3,682 0


1.エチレン 

住友化学千葉工場のエチレンが停止し、定修スキップ年で 7,317 千トンとなった。
2015年のエチレン換算内需量は4,892千トン)

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退

なお、三菱ケミカルと旭化成の両社は、2016年4月1日に「三菱化学旭化成エチレン」でエチレン1基体制による運営を開始 した。

旭化成の50万トンは2月中旬に停止した。三菱化学の50万トンは57万トンに増強する。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意 


2.ポリエチレン 

日本ポリエチレンが2015年3月に鹿島のLL 92千トンを停止した。


3.PP  

 

4.EO  

5.SM

住友化学は千葉のエチレン停止に合わせ、日本オキシランのハルコン法のPO/SM併産設備(SM:412千トン、PO:181千トン、PG:100千トン)を停止した。

2013/11/29  住友化学、エチレン停止に合わせ日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止

6.PS    

7.VCM 

8.PVC    

トクヤマは塩化ビニル事業の抜本的な収益構造の改革を行うため、新第一塩ビの千葉工場(80千トン)を停止した。

2014/11/5  トクヤマ、新第一塩ビ千葉工場を停止 

なお、東亞合成はヴイテック解散時に川崎工場を引取り、カネカから製造を受託している。

9.アセトアルデヒド


10.アクリロニトリル

11.合成ゴム

12.MMAモノマー

13.BTX  

2014年末 2015年末 増減

内訳

ベンゼン 6,034 5,666 -368

出光 -247、住友化学 -122

トルエン 2,667 2,606 -61

住友化学 -61

キシレン 8,507 8,487 -20

住友化学 -28

     住友化学はエチレン停止により、全停止。

14.パラキシレン



米国の石炭最大手 Peabody Energy Corporation は4月13日、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請した。

前例のないほどの業界の停滞のなかで負債を減らし、流動性を高める手段として自発的に米国のほとんどの事業についてChapter 11を申請したとし、更生手続きのなかで、裁判所の保護のもとで操業を継続しつつ、全体の負債レベルを引き下げ、固定費を減らし、キャッシュフローを改善するとしている。

豪州の事業は申請の対象外となっている。

Citigroup主導の債権団から8億ドルのつなぎ融資(Debtor-in-possession:DIP)を受ける。

韓国の東亜ST(Dong-A ST) は4月11日、米国の製薬会社Tobira Therapeutics に新薬Evogliptin の開発・販売の権利を供与すると発表した。
東亜は逆にTobiraからTobira のcenicriviroc (CVC) の韓国での開発・販売権を受ける。

東亜STはEvogliptin を開発、これを主成分とするType 2 の糖尿病の治療薬 Suganon を3月に韓国で発売している。

CVC はTobira の主力製品候補で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とHIVの治療薬として開発中。

Tobiraでは現在、NASH と肝繊維症、HIVの患者を対象にグローバルでPhase IIb 研究を実施中。

両社は両剤の組み合わせで、先ず、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬を開発する。
両社はまた、CVC単剤でのNASH治療を行うグローバルなPhase III 計画を進める。
ある調査では、2020年には世界のNASH治療剤市場が17億ドルを超える。

第一のライセンス契約では、東亜はEvogliptin を米国、カナダ、欧州、豪州で単剤又はCVCとの合剤ですべての治療薬として開発・販売する独占権をTobiraに供与し、対価として6,150万ドル以上を受け取る。

一時金として150万ドル、最初の医薬品承認で2,500万ドルを受け取り、販売のマイルストーンを達成すれば更に3,500万ドルを受け取る。
新しい用途での医薬品承認で追加の1,000万ドルを受け取る。

第二のライセンス契約で、東亜はTobiraからCVCを韓国内で単剤又はEvogliptin との合剤ですべての治療薬として開発・販売する権利を取得し、対価として一時金50万ドル、用途ごとにマイルストーン達成で250万ドルを支払う。

両社は上記に加え、売上高に応じて所定のランニングロイヤリティを支払う。それぞれのテリトリーでの開発費は自己負担となる。

東亜はEvogliptinの原料もTobiraに輸出する計画で、東亜STでは、「今後、様々な治療剤を開発できる新薬成分を開発して、海外進出を増やしていきたい」と している。

ーーー

東亜STは持株会社東亜Socio Holdingsの医療用医薬品事業部門。
1932年設立の東亜製薬は2013年に持株会社体制に移行し、事業部門を東亜STと一般用医薬品を扱う東亜製薬に分割した。

Tobira Therapeutics はHIV感染症治療の開発・販売に特化したバイオ製薬企業で、2006年にlife sciencesのベンチャーキャピタルDomain Associate のEckard Weber氏により設立された。

武田薬品は2007年8月に同社に、武田薬品が創製したHIV感染症治療薬TAK-220およびTAK- 652について、全世界を対象とした独占的開発・製造・販売権を供与している。



スイスの高級時計「FRANCK MULLER」のパロディー商品「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた訴訟の判決が4月12日、知財高裁であった。
  
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/085835_hanrei.pdf

「フランク三浦」の権利者は、株式会社ディンクスで、2012年3月に商標出願 を行い、2013年8月に商標登録がなされた。(商標5517482)

これに対し、FRANCK MULLERが2015年4月に商標無効審判請求を行い、特許庁は2015年9月に無効審決を行った。

ディンクスは2015年10月、知財高裁に無効の取り消しを提訴したもの。
裁判で
MULLER側は、「語感が極めて似ている」「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」などと主張した。


鶴岡裁判長は「イメージや外見が大きく違う。呼称は似ているが、外観で明確に区別できる」と指摘。「多くが100万円を超える高級腕時計と、4千~6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」として、「三浦」側の勝訴とする判決を言い渡した。

判決の結果、「フランク三浦」の商標は有効となった。


両社の販売する時計は全くそっくりである。

しかし、今回の問題は「商標」であり、商品そのものよりも、「商標」が類似したり混同するかどうかで判断される。


商標 商標番号 分類 登録年

2701710 時計 1994
4978655

 (浦の字の上の「」がない)
5517482 時計 2013/8

特許庁の審決は次のとおりであった。

呼称は似ている
パロディであっても「ただ乗り」であることは間違いない。
パロディとして認識し、模した商品を製造・販売しているから、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的で使用するものと認められる。

商標4条1項19号
「全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」で、「不正の目的をもって使用をするもの」は無効となる。


しかし、知財高裁の判断は以下の通り。

呼称は似ているが、商品の出所に誤認混同が起こらない。
・前者は英語かカタカナ(標準文字)、後者はカタカナと漢字(手書き風の字体)で、
外観で明確に区別できる。
・「三浦」で日本、日本人の観念が生じるが、前者では生じない。

前者が100万円程度、後者が4000円~6000円の商品(「とことんチープにいくのがコンセプト」としている)で、指向性をまったく異にする。需要家が混同するとは考えられない。

商標を模倣する意図があっても、直ちに商標の類否判断に影響しない。

商標そのものが類似するとはいえないから、不正の目的かどうかに関係なく、商標4条1項19号に該当しない。

ーーー

今回は商標法の問題であるが、不正競争防止法違反(他人の商品と混同を生じさせる行為)で製造販売を差止められる可能性はある。


Kinder Morgan は4月5日、IHI E&C との間で、ジョージア州 SavannahのElba Island での天然ガス液化計画(Elba Liquefaction Project)の設計・購買・建設・試運転・スタートアップのEPC契約を締結したと発表した。


IHI E&C International は2012年7月にIHI が米国大手エンジニアリング会社のKvaerner Americas から 陸上EPC事業を買収したもの。

今回は同社にとって2件目のLNGプロジェクトで、同社は2013年4月にKiewit Energy と共同で
Dominion 社のCove Point LNG 計画(年産525万トン)のEPC契約を締結している。

Kiewitは、そのルーツは1884年にまでさかのぼり、現在では従業員所有企業として米国、カナダおよび諸外国で事業展開をしている。交通、水処理、大型建設工事、発電、石油・ガス・化学工業、ビル建設および鉱業等における建設および設計業務を得意としている。

Elba Liquefaction Project は総額20億ドルの計画で、能力はLNG年産250万トン。

Shell 技術の年産25万トンの小規模液化設備(Movable Modular Liquefaction System )10系列からなる。

既存の再ガス化ターミナルでは、改造やLNG輸出用のポンプ新設などを行う。

Movable Modular Liquefaction System は貨物車と同じ大きさで、次の設備を含む。

   simple inlet separation facility、amine system、dehydration unit、trace contamination removal equipment、
   cold box、cold separator and demethanizer、refrigerant compressors、LNG storage、flare system
  

必要に応じて、acid removal、LPG fractionation、inlet compression を追加できる。

システムは工場で組み立て、現場で接続する 。他のサイトへの移設も可能。

Shellでは、投資決定から操業開始まで2年以内にできるとし 、これが競争力を生むとしている。今後、更なる短縮を狙う。

ーーー

Kinder MorganとShellは2013年1月28日、JVを設立して、ジョージア州Savannahの近くのKinder Morgan子会社のEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに天然ガス液化プラントを建設すると発表した。

Kinder Morgan子会社のEl Paso Pipeline 社のElba Express PipelineとElba Island LNG Terminal を改造し、ターミナルに天然ガスを送り、液化し、輸出用に船積みする。
(既存のLNG Terminal は海外からLNGを輸入し、再ガス化して天然ガスを国内に供給する設備で、米国でのシェールガス生産でLNG輸入が激減し、休止中)

El Paso Pipeline 社はJVの51%を所有して、設備の運営を担当する。
ShellはJVの49%を所有し、液化能力の100%の権利を得る。

液化設備はShellの画期的な小規模液化ユニットを既存の設備に統合することで、早期の完成を目指した。

当初は第1期で6基、第2期で4基を設置するとしていた。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設

その後2015年7月にKinder Morgan がShellから持分を買い取り、100%とした。Shellは引き続き、全量を引き取る。

Elba Island LNG Terminal は2012年6月にエネルギー省からFTA締結国に年間400万トンのLNGを輸出する認可を取得した。
同社は同年8月、エネルギー省に対し、非FTA締結国に年間400万トンまでのLNGを輸出する申請を提出した。

ーーー

Kinder Morganは2016年2月1日に、BP Products North America から米国の15の精製製品ターミナルを350百万ドルで 買収する契約を締結した。

BPとKinder Morgan はJV(Kinder Morgan 75%,、BP 25%) を設立し、このうちの14のターミナルを所有、残り1つはKinder Morganが所有する。
全てのターミナルの運営はKinder Morganが行う。

BPはターミナルの所有権は渡すが、長期契約を締結して自社の製品の貯蔵を委託する。

食品包装向け樹脂フィルム国内最大手のフタムラ化学は4月11日、同業の英国のInnovia Group からセルロースフィルム事業を買収することで合意したと発表した。6月末に完了する予定。

フタムラは二軸延伸PPフィルムをはじめとする食品包装用プラスチックフィルムのトップメーカーで、また、植物性原料から生産するセルロースフィルムで世界第二のシェア(約3割)を持つ。

Innoviaはセルロースフィルムでは世界第一位のシェア(約4割)で、プラスチック紙幣や二軸延伸PPフィルムも生産している。

Innoviaは2004年10月に英国のコンソーシアムがベルギーのUCB Group から、Films の二軸延伸PPフィルムとセロファンフィルム事業(UCB Films) を買収して設立された。

UCB Filmsは1996年にBritish Cellophaneを買収、Cellophaneの商標を取得している。

フタムラはセルロースフィルムを大垣工場のみで生産しており、事業継続に課題を抱えており、設備の老朽化もあり、生産体制の再構築が必要となっている。

今回、Innoviaの英国( Wigton)と米国(Tecumseh, Kansas)のセルロースフィルム工場、メキシコのセルロースフィルム加工工場、セルロースフィルムのR&D部門と、全世界を網羅する営業ネットワークを傘下に加える。

大垣工場については、環境負荷の少ない新製法による製品開発や、ビスコース技術を利用した新たな製品分野の開発などに取り組む。

営業ネットワークは、海外で成長している食品加工用セルロース製品の販売にも活用する。

一方、Innoviaは、プラスチック紙幣事業と二軸延伸PPフィルム事業に集中する。

プラスチック紙幣事業は、偽造を防ぎ、長く使えるためコストを著しく低減する実績から、世界をリードしており、2016年末には世界中の中央銀行向けに500億枚以上のプラ紙幣を供給する。
Wigton新工場ではBank of England 向けに、2016年9月には5ポンド・プラ紙幣、2017年には新しい10ポンド・プラ紙幣を発行する。

二軸延伸PPフィルム事業(マーケットリーダーで独自の'double bubble'プロセスを持つ)では、差別化した製品開発を続ける。

ーーー

フタムラ化学は1947年に二村化学研究所として創設され、醤油着色剤カラメルや水飴の製造を行った。

1950年に二村化学工業が設立され、薬品賦活法活性剤の製造を開始、1952年に大垣工場を建設、セロハンを製造した。

1966年に千葉工場を新設、PPフィルムの製造を開始した。

2004年にフタムラ化学に改称した。

 



日本とタイ両国政府が開発を主導するミャンマーのDawai経済特区に中国の資源商社、広東振戎能源が製油所を建設することが明らかになった。

ミャンマー投資委員会は 3月末に広東振戎能源 (Guangdong Zhenrong Energy) の30億ドルの精油所建設計画を認可した。 日量10万バレルの精油所と石油ターミナル、LPG関連設備、貯蔵設備、流通設備を含むもので、ミャンマーでの最大の海外投資の一つとなる。


広東振戎能源が70%を出資、残り30%はミャンマーの次の3社が負担する。

・ 軍部と関係のあるMyanmar Economic Holdings Limited
ミャンマーのエネルギー省のMyanmar Petrochemical Corp
・ ミャンマーの私企業 HTOO Group of Companies のYangon Engineering Group

HTOO Group of Companiesには、航空会社のAir Bagan、チーク材などを扱うHtoo Wood Products Company、輸出企業のHtoo Trading Companyなどがある。

2019年以降の稼働を目指す。

ミャンマー国内には近代的な製油設備はなくガソリンなど石油化学製品を輸入に頼っていた。広東振戎は製品の大半をミャンマー国内に供給することになる。

広東振戎能源は2002年設立で、中国の国営の4社の石油トレーダーの1社である珠海振戎公司(Zhuhai Zhenrong Corp)が44.3%所有する。2011年に計画を発表し、2014年末に中国政府の承認を得た。

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ミャンマーには、3つの経済特区、北部で中国が開発するチャウピー、日本が担当するヤンゴン南部のティワラ、タイが担当する南部のダウェーがある。

2013/5/29 ミャンマーの経済特区 

Dawei SEZは2008年にミャンマーとタイの両国が開発で合意した。

2010年にタイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) が250平方キロの土地について60年間の事業権利と75年間の租借権を得て、開発に着手したが、実際は1社では開発資金をまかないきれず、地元住民の移転や周辺土地と一部道路の整備程度しか進んでいない。

2012年7月のタイのインラック首相とテイン・セイン大統領との会談で、Dawei 開発の仕切り直しが行われ、両国政府が協力して進めることで合意、土地の開発権と租借権がItalian-Thai Development からDawai 開発の特別目的事業体(SPV)に移管された。

Dawei SEZの開発面積はThilawa SEZの10倍あり、港湾や発電所などのインフラ整備だけで1兆円とされる。

このため、タイ政府とミャンマー政府は日本にも参加を要請した。
但し、
日本はThilawa SEZ 優先ということで合意している。

2013/5/29 ミャンマーの経済特区 

2015年7月4日、東京で第7回日本・メコン地域諸国首脳会議が開催された。
これを機に同日、日本、ミャンマー及びタイの間で、ダウェー開発にあらたに日本が参加することについて覚書が署名された。

初期開発段階で日鉄住金物産のタイ企業とのJVが参加する。

2015/8/18 ミャンマーのDawei 経済特区、ようやく前進

こういう経緯のある「日本・タイ・ミャンマー」主導 Dawei SEZ に中国がくさびを打ち込む形となった。

背景には、3月末に発足したアウン・サン・スー・チー氏主導の新政権の現実路線があ るのではないかと見られている。

同特区の開発事業で商機を探る日本企業は計画練り直しを迫られる可能性がある。



財政再建策の一環として国有資産の売却を進めるギリシャは4月8日、アテネ近郊にある同国最大のピレウス(Piraeus) 港 の売買契約を中国海運大手の中国遠洋運輸集団(
China COSCO Holding)との間で締結した。

国有財産の売却を担当するHellenic Republic Asset Development Fund の会長とCOSCOのCFOがギリシャ首相とCOSCO会長の見守るなか、調印した。

本年1月に、ピレウス港を管理する会社の67%を368.5百万ユーロで買収するとのCOSCOのオファーをギリシャ政府が受け入れたもの。

ピレウス港の入札にはCOSCOのみが応じた。

応札するとみられていたデンマーク海運コングロマリットのA.P.Moller - Maersk見送った。
同社はギリシャ北部に位置するテッサロニキ港への投資を希望しているとされる。

COSCOは先ず、ピレウス港を管理する会社の株式の51%を280.5百万ユーロで取得し、港湾の整備・開発事業への350百万ユーロの投資に着手、5年後に残りの16%を88百万ユーロで取得し、合計で67%の株主となる。

「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)を進める中国は、ギリシャを「欧州の入り口」として重視しており、ピレウス港を世界規模の海運の要衝にしたい考え。
将来的には軍事的拠点としての活用も視野に開発を進める可能性もあるとみられる。

中国の李克強首相は2015年6月、EU首脳との会談後の記者会見で、「中国はこれまでも、ギリシャが危機を抜け出すための要求に応えてきた。問題解決に建設的な役割を果たしたい」と述べ ている。

今回の調印後、李首相はギリシャ首相を中国に招待した。6月に訪中する予定。

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ギリシャの財政改革案に国営事業の民営化が多数含まれるが、そのなかにはピレウス港とテッサロニキ港がある。

ピレウス港については、当初よりCOSCOが有力候補であった。

ギリシャ政府は2008年にCOSCO との間で、ピレウス港の2号・3号コンテナ埠頭の35年間リース契約を締結し、2010年にCOSCOは正式運営を始めた。
COSCOは2015年に入り、3号埠頭の拡張工事に着手している。

年間の貨物取扱量は、当初の 68万5000 TEU (20フィートコンテナ換算) から2014年には298万7000 TEUに拡大している。3号コンテナ埠頭拡張工事が完工すれば、年間の取扱能力は、現在の370万TEUからさらに620万TEUまで膨らむ。

中国製の製品などをピレウス港に運び、そこから鉄道で中欧や東欧各国に輸送する方針で、2012年11月には、COSCOとHewlett-Packard とギリシャ国営鉄道会社Torainose が製品輸送契約を締結した。

アジア諸国の工場で生産されたHewlett-Packard の製品をピレウス港で陸揚げし、新設の17kmの貨物線で貨物ターミナル駅まで運び、そこからマケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリア、チェコなど東欧や中欧の各地に輸送する。

2015年2月には中国の軍艦が寄港している。

2015/7/15 ギリシャへの中国、ロシアの接近

当初は2015年初めの入札を予定したが、就任したチプラス首相が選挙の公約通り、両港など国有資産売却を見送った。

その後の曲折の結果、ユーロ圏首脳会議は2015年7月13日にギリシャへの金融支援を行うことで大筋合意したが、対応策のなかには、「民営化や資産移管による独立基金で500億ユーロを設定する」が含まれている

2015/7/14 ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意 

これを受け、ギリシャ政府は2015年8月、14の地方空港の運営権をドイツの空港運営会社Fraport AGに約1,230百万ユーロで売却することを決めた。

毎年空港の賃貸料として23百万ユーロが支払われる。更に、運営利益の25%が今後40年間ギリシャの民間航空局に支払われる。
Fraportは今後4年間に空港の改善として330百万ユーロの投資を約束しており、最終的に14億ユーロの投資を見込んでいる。

ピレウス港についても入札を実施したもの。

米司法省の反トラスト局は4月6日、米油田サービス会社2位のHalliburton による 同業3位のBaker Hughes 買収 は競争を脅かす恐れがあるとして、Halliburtonを提訴した。 米司法省は1年半近くにわたって競争上の問題がないかを審査してきた。

司法省は、買収は石油探査で使用する23種類の製品・サービスにおいて直接的な競争を失う恐れがあると主張した。
洋上掘削仕上げや油井を強固にする工程などで両社を合わせた市場シェアは5割を超え、首位の
米のSchlumberger を加えると、占有率は99%に達するという。
Halliburtonが対策として提案している事業売却案は不十分であると看做した。

司法長官は「計画されているHalliburton とBaker Hughes の合併は必要不可欠な競争を消滅させ、エネルギー市場をゆがめ、米国の消費者に損害をもたらすだろう」と述べた。

これに対し、Halliburton とBakr Hughes は強く抗議すると発表した。司法省の結論は取引の評価を誤ったものであり、エネルギー産業が直面する問題のもとで反生産的行動であるとしている。

両社の統合は競争を促進するものであり、今よりも柔軟で、イノベーティブで、効率のよい油田サービス会社となり、需要家は高品質で、もっと効率のよい製品・サービスの供給を受け、コストダウンを得られるとしている。

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Halliburton Co は2014年11月17日、Baker Hughes を現金と株式で買収すると発表した。買収総額は346億ドルに上る。

当初、Halliburtonは10月13日に提案したが、協議が難航し、敵対的買収に向けた動きも浮上したが、一転、合意した。

原油安を受けて世界的に石油開発のピッチが鈍化する可能性が出てきており、互いの重複部門を整理するなどしてコスト競争力を高める。年間20億ドルのコストダウンを目指す。

2013年の売り上げ規模は単純合計で518億ドルとなり、1位の米のSchlumberger の453億ドルを上回り業界トップの専業企業となる見通しだが、2社の事業では、少なくとも7つの主要製品ラインが重複している。

独禁法上で問題となるのは確実なため、Halliburton はこれを避けるため、75億ドル相当の事業の売却を行うとした。(但し、当局はこれを大きく下回る事業の売却を求めると想定した。)

Halliburton は、 独禁法をクリアできない場合、Baker Hughes に35億ドルを支払う用意があると表明した。

2015年3月末に両社の株主総会は本件を承認した。

Halliburton は2015年4月7日、ドリルビット掘削(Fixed Cutter and Roller Cone Drill Bits)事業、傾斜掘削(Directional Drilling)事業, 同時測定・掘削工法(Logging-While-Drilling /Measurement-While-Drilling) 事業の3つを個別に売却すると発表した。売却契約の正式成立は、規制当局からBaker Hughesの買収の承認を得た後になるとした。

GE Oil & Gasがこれに 大きな関心を示し、交渉を行ってきたと報じられたが、現時点ではまとまっていない。

米国でもEUでも公取当局の審査は難航した。

両社は米国のシェールオイルからブラジル沖の深海まで、多くの同じ地域で掘削を行っている。両社の事業所は北米、欧州、中国、中東からラテンアメリカまで重複している。

各当局は油田開発・サービスの2位と3位の合併による独禁法上の影響について懸念し、次々と資料を要求した。
対策として
Halliburtonが行う事業売却が、合併で失われる競争を補うことになるのかどうかも疑問視された。

欧州委は2016年1月、合併が「深刻な競争上の懸念」を引き起こす可能性があるとして、本格調査を開始した。

欧州委は、業界の上位4社のうち1社がこの買収で消滅することになると懸念している。(4位は米のWeatherford International)

「EU域内で競争上の選択肢を減らしたり、石油・ガス開発・生産サービスの価格を押し上げたりしない」ようにするため、同合併計画を「注意深く調べる」必要があると述べた。

両社は2015年12月15日、司法省の懸念事項に対応するため、合併の完了時期を2016年4月30日に延期すると発表した。

Halliburtonは2016年1月、米司法省に新しい計画を提出したと説明したが、売却を計画する資産の内容は明らかにしていない。

両社は、Halliburton案は司法省の競争面での懸念を解決するには十分すぎるものだとしているが、司法省の今回のHalliburton提訴は、Halliburton案が十分納得できる案でないことを示している。

両社は今後、司法省が、油田サービス事業の競争性が高いこと、統合計画の多くのメリット、事業売却案が十分なことを過小評価していることを示していきたいとしている。

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油田サービス業界で2位のHalliburton と3位のBaker Hughes の合併が難航する一方で、1位のSchlumberger は掘削機材メーカーのCameron International の買収に成功している。

Schlumberger は2015年8月26日、掘削機材メーカーのCameron International を約127億4000万ドルで買収すると発表した。

Cameron株主は1株につき現金14.44ドルとSchlumbergerの0.716株を受け取り、統合後の会社の約10%を握ることとなる。

2015/9/1 油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron International を買収

こちらについては独禁法上で問題とされず、Schlumbergerは本年4月1日にCameron買収を完了したと発表し た。

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HalliburtonとCameronはともに、2010年4月20日に発生した海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig の爆発事故に関与している。 

Deepwater Horizon rig 関連

  ・設計:R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:Transocean(R&B Falconを買収)
  ・リース:BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    Transocean:掘削作業
    Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
     M-I SWACO(SchlumbergerとSmith InternationalのJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor の製造:Cameron International

  2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担 


Halliburton:

2014年9月、同社に対する一般及び漁業者からの損害賠償の訴訟で、11億ドルの支払で合意した。

BPはHalliburtonに対し、不適切かつ不注意に作業を行い、これが爆発の原因になったとして、民事訴訟を行ったが、2015年5月21日、和解した。

Clean Water Actによる罰金は、BPは55億ドル、Transoceanは10億ドルとなったが、Halliburtonについては、政府から訴えられていない。

Cameron:

2011年12月16日、BPに250百万ドルを支払うことで和解した。

刑事面では機器の欠陥を理由にいくつかの罪を問われたが、全てのクレイムで免責となった。

事故に伴い油井に関する新しい規則が出て石油会社が機器を更新したため、同社は恩典を受けている。

 


ムンディファーマは3月31日、Meiji Seikaファルマより殺菌消毒薬「イソジン®」ブランド製品の一般用医薬品について、承継(製造販売承認の移管)を完了したと発表した。明治への「イソジン」商標ライセンス契約も終了する。
「イソジン」は4月からシオノギヘルスケアが国内における販売・流通を行う。

なお、医療用医薬品の承継は2016年8月1日に行う。(動物用医薬品については、詳細を協議中)

4月の発売時点では、現存のイソジンブランドのイメージを踏襲したパッケージで展開するが、秋の新製品発売に合わせ、8月末までにキャラクターを変更する。

これまで、医療用医薬品はMeiji Seikaファルマが、一般用医薬品については㈱明治が販売してきたが、明治も4月1日から、同社が商標登録するキャラクターである「カバくん」を用いたパッケージで、「明治うがい薬」をはじめとするポビドンヨード製剤16品目を発売した。

ムンディファーマと明治は、それぞれ東京地方裁判所に不正競争行為等の差止仮処分命令申立を行っていたが、3月18日に円満な合意に至り、和解によって解決したことを受けたもの。

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イソジン®は、グローバルに展開する製薬企業 Mundipharma が所有する殺菌消毒薬のブランドで、海外では主にBetadine®として販売されている。

ポリビニルピロリドンとヨウ素の化合物のポビドンヨードを有効成分とするもので、ポビドンヨードは1952年、ポリビニルピロリドンの解毒力に注目したアメリカのShelanski により特許申請された。(1956年に登録)
1955年にMundipharmaが世界で初めてBetadineとして製品化した。

日本では1961年に明治製菓がMundipharmaと技術提携し、殺菌消毒剤及びうがい薬として医薬品としての承認を取得、Mundiの商標「イソジン」で販売を開始した。(当初はMundipharmaが有効成分の供給を行った。)

また、一般家庭への普及を目的に、薬局薬店向けのOTC医薬品としてうがい薬を開発し、1983年1月に発売した。
1985年からは明治製菓の登録商標のマスコットキャラクターの「カバくん」の使用を開始した

明治製菓は明治乳業と統合し、2011年に事業再編で食品事業の㈱明治と薬品事業のMeiji Seika ファルマが設立された。

1895
大日本製糖設立
1996 
大日本明治製糖
三菱商事全額出資子会社で、明治ホールディングスとの関係はない。
1906
明治製糖設立
  

  

1916
東京菓子設立
→1924 明治製菓 2009
共同持株会社
明治ホールディングス設立
2011 事業再編 食品事業「㈱明治」
1917
極東練乳設立
→1940 明治乳業 薬品事業「Meiji Seika ファルマ」


現在、Meiji Seikaファルマが製造し、医療用医薬品ではMeiji Seika ファルマが、一般用医薬品(OTC)では㈱明治が販売している。

他方、Mundipharmaはそれ以来、塩野義製薬など、日本の製薬企業との提携を通じて、さまざまな製品を供給してきた。
1991年に日本法人ムンディファーマが設立された。

「疼痛」、「がん」、「コンシューマーヘルスケア」をムンディファーマの三つの事業の柱ととらえ、更にパイプラインの充実や活動の拡大を計画している。

ーーー

数年前にムンディファーマと明治の契約更新のタイミングを迎え、明治側は長期的な提携関係の維持を望んでいたが、2015年3月にムンディファーマがイソジンブランドのライセンス契約解消の通知を出し、同年8月に明治がそれを了承した。

Mundipharmaは慢性腰痛やがんに伴う痛みの治療薬などを欧米中心に販売してきたが、昨年から日本を重点地域に定め、積極投資を開始している。その一環で、日本市場に浸透したイソジンブランドの自社展開を決断した。

ムンディファーマは販売・流通に塩野義製薬を起用することとし、塩野義はこれを機にヘルスケア事業を分割し、コンシューマーヘルスケア事業を行うシオノギヘルスケアを設立した。

しかし、明治がこれまでの「明治イソジンうがい薬」と同じデザインの「明治うがい薬」を発売することとし、ムンディファーマ/シオノギが「カバくん」に似たキャラクターを使った「イソジンうがい薬」を発売することが分かり、紛糾した。

明治は「イソジン」の商標は返還したが、新しく販売する製品の名称を「明治うがい薬」とし、これまで使ってきたキャラクターの「カバくん」は自社の登録商標であるため、引き続き使用することとした。

これに対し、ムンディファーマ(販売元シオノギヘルスケア)は「カバくん」に似たキャラクターを使用した。



これまでのもの (明治 2016/4/1~) (ムンディ 2016/4/1~)

明治側は、ムンディに対し、明治グループが長期にわたり使用し、商標登録している「カバくん」に類似したキャラクターを使用した商品の製造販売を行わないように求めたが、ムンディとの2度にわたる書面でのやりとりを通じても、申し入れは実現されないと判断し、2月9日にムンディファーマとシオノギヘルスケアに対し、不正競争行為差止等仮処分命令の申立てを行った。

これに対しムンディ側は、「提携関係を終了するにあたり、認識のちがいが生じた場合には信義誠実の原則にもとづき、話し合いで解決することを合意している」として、明治の申立に反発、2月26日に不正競争防止法に基づく差止請求、契約に基づく競業行為差止請求、商標権に基づく差止請求等で仮処分命令の申立てを行ったもの。

和解の内容は発表されなかったが、結果として、明治は当初の案をそのまま使用、ムンディ/シオノギ側は当初の案は8月末までの使用に限り、それ以降は新しいデザインに変更する。

経緯まとめ:

明治 ムンディ
2015/12/9 「イソジン®」に関する提携関係を解消
「イソジン®」製品の一般用医薬品製造販売承認を2016/3/31にムンディファーマに移管
医薬用医薬品については2016/8/1に移管。
一般用医薬品「明治うがい薬」を、2016年4月1日から全国で発売すると発表
(新包装を発表)
「イソジン®」の一般用医薬品について、塩野義と日本国内における独占的な販売提携契約を締結
(新包装を発表)
2015/12/21 医療用医薬品についても、塩野義と日本国内における独占的な販売提携契約を締結
シュガーパスタ軟膏は2016/2/12、その他は2016/8/1以降
2016/1/15 塩野義製薬、シオノギヘルスケアを設立
2016/2/9 ムンディファーマとシオノギヘルスケアに対し、東京地裁に不正競争行為差止等仮処分命令の申立て
2016/2/26 明治に対し、東京地裁に仮処分申立
2016/3/18

各申立てが和解によって解決

なお、ムンディファーマは4月4日から10日まで、新宿歌舞伎町の「新宿東宝ビル」の8階テラスにそびえるゴジラを使用した「イソジン」のPRを行った。

 

政府は4月5日の閣議で関税定率法の政令改正を決めた。5月にも実施する。

反ダンピング課税の申請が出来るのは、一定条件を満たす生産者とその団体であるが、団体についての要件を変更する。

この改正により、団体による申請がし易くなるとしている。

ーーー

反ダンピング課税は、関税定率法の第八条で規定されているが、その第四項では、次のとおりとなっている。

本邦の産業に利害関係を有する者は、ーーー 当該貨物に対し不当廉売関税を課することを求めることができる。

不当廉売関税に関する政令の第五条では、「利害関係を有する者」を以下の通りとしている。

1) 生産企業で、生産高が日本の総生産高の1/4 以上

2) 生産企業の団体で、メンバーの過半数がその製品を生産、生産高合計が日本の総生産高の1/4以上



1) の場合は、生産高が日本の総生産高の1/4 以上という条件を満たすよう、企業が集まる必要がある。

これまで、TDIと電解二酸化マンガンは実質1社で申請できたが、カットシート の場合は8社、ポリエステル短繊維の場合は5社が集まる必要があった。

2) の場合、例えば石油化学工業協会や日本化学工業協会の場合、対象製品を「構成員の過半数」が生産しているケースは少なく、協会として「利害関係を有する者」になれるケースは少なかった。

経済産業省によると、申請段階でこうした厳しい条件を設けている国はないという。

今回の改正により、ハードルを海外並みに下げ、被害を受ける企業が業界団体の一部にとどまる場合でも、業界団体として申請ができるようになる。

政府は、反ダンピング措置をできるだけ取らずにきた従来の方針を転換し、中国などから安い製品の輸出攻勢を受ける鉄鋼や化学業界に活発な利用を促す。

申請手続きの面でも、日本の場合は複雑であった。

このため経済産業省は昨秋、必要な申請書類をこれまでの4分の1に減らすほか、書類の記入例を明示して企業や業界団体が申請しやすくした。
申請に必要な費用を約10分の1に軽減するほか、審査期間も従来の14カ月間から10カ月間に短縮した。

ーーー

政府は4月5日、韓国と中国原産の水酸化カリウムに対して暫定的な不当廉売関税を賦課する政令を閣議決定した。

2015年4月にカリ電解工業会から申請を受け、5月から調査を実施してきた。この結果、本年3月5日に日本産業への実質的損害等の事実を推定する仮決定を行った。
4月9日から8月8日までの間、暫定的な不当廉売関税が課せられる。

しかし、これを含めても、1993年以降で反ダンピング調査を行ったのは7件で、うち1件はシロとなっている。

製品 対象国 申請者 調査開始 仮決定 最終決定 税率 終了
水酸化カリウム 韓国
中国
カリ電解工業会 2015/5/26 2016/4/5 仮 韓国 49.5%
  中国 73.7%
TDI 中国 三井化学 2014/2/14 2014/12/25 2015/4/25 69.4% 2020/4/24
カットシート インドネシア 製紙 8社 2012/6/29 2013/6/26 賦課せず
電解二酸化マンガン
スペイン
中国
南ア
東ソー
東ソー日向
2007/4/27 2008/6/14 2008/9/1

豪    29.3%
スペイン  14.0%
中国1社  34.3%
  他 46.5%
南ア  14.5%


2013/8/31

スペイン
中国
南ア
2012/10/30 2014/3/5

2019/3/4

ポリエステル短繊維 韓国
台湾
合繊5社 2001/4/23 2002/7/26 韓国1社 6.0%
 4社  ゼロ
 他  13.5%
台湾  10.3%
2006/8/31 2007/6/29 2012/6/28
綿糸20番手等 パキスタン 日本紡績協会 1994/2/18 1995/8/4 9社  2.1~7.9%
8社  ゼロ
他   9.9%
1999/7/31
フェロシリコマンガン 中国 日本フェロアロイ協会 1991/11/29 1993/2/3 5社 4.4~19.1%
他  27.2%
新規事業者 8.9%
2社 価格約束 
1998/1/31


これに対し、中国は1997年12月10日の第一号の新聞用紙の調査開始以降、91件90品目の調査を行っ ている。

結果は下記の通り。

ダンピング税を徴収  73
  同上のうち、国務院決定で取り消し ( 1
損害なし裁定で調査取り止め   4
提訴取り下げで調査取り止め   8
ダンピング率が2%未満で調査終了   1
調査中:暫定反ダンピング措置   3
調査開始   2
計(ビスフェノールA、提訴取り下げ後、再審)  91

Pfizer は4月6日、Allerganとの合併を両社の合意で中止すると発表した。

米財務省が4月4日、税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」をめぐり追加措置を発表したが、これが合併契約書に規定している「不利な税制変更」に該当すると看做した。

Pfizer はAllergan に対し、取引に関する費用の補償として150 百万ドルを支払う。

PfizerはAllergan買収を通じて本社を税率の低いアイルランドに移す考えだったが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなる。

ーーー

Pfizerとアイルランドに拠点を置く同業のAllerganの両取締役会は2015年11月23日、満場一致で両社の合併を承認した。

株式交換方式で合併する。実質的に、Pfizerによる1600億ドルでのAllergan 買収となる。

形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業は Allergan plc に統合され、アイルランド法での企業となるが、社名を"Pfizer plc" に改称し、New York Stock Exchangeに上場する。
実務上の本拠はNew Yorkに置く。

この買収は過去最大の"inversion"(納税拠点の低税率国への移転)」となる。

米国は連邦法人税率が35%だが、アイルランドは12.5%と低く、形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業 を Allergan plc に統合し、アイルランド法での企業となることで、年間で約20億ドルの節税効果があると言われている。

2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収 

Tax Haven や低税率の国を利用して法人税を回避する動きについては、各国で問題になっていた。

2013年6月に北アイルランドで開かれたG8サミットは、首脳宣言に多国籍企業の税逃れを防ぐための国際協調などを盛り込んだ。
経済協力開発機構(OECD)と連携し、「多国籍企業がどこで利益を生み、税を払っているか」を把握する仕組み作りを進めることで合意した。


米財務省は2014年9月22日、節税のための本社移転の抑制を狙った新規則を発表した。

税率の低い国へ本社を移転する "
inversions" と呼ばれる行為について税制上の恩恵を減らすとともに、新たな本社移転をこれまでよりも困難にするもの。
新規則は即日適用された。

新規制の概要は以下の通り。

1)"hopscotch" loans (石蹴りローン)の禁止

2) "De-controlling" 戦略の禁止

3)抜け道の禁止

4)規定の厳格化による"inversions"の禁止

2004年の改正税法では、海外企業との合併による海外への本社移転を認めているが、その条件として、元の米国企業の株主が新しい海外親会社の80%未満を所有するということになっている。(80%以上の場合は米国の税法を適用する。)

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる  

PfizerはAllergan買収に当たり、Pfizerの株主は誕生する合併企業の株式56%を保有する ため、この新規制をクリアする予定であった。

しかし、米財務省などは4月4日、「インバージョン」を抑制するための新たな措置を発表した。

最近のインバージョン行為に関し、元の米国企業の株主が新しい海外親会社の80%未満を所有するという要件を回避するため大量の米国資産を抱えた外国企業に3年間の制限を課すこととした。

具体的には、課税のために外国企業の規模を判断する際、直近の3年間に行った米企業との合併で得た米国内資産の価値を差し引くこととした。

Allerganの発行済み株式総数は395百万株であるが、同社は最近に買収のため約267百万株を発行している。

Allergan plc は元の社名はWatson Pharmaceuticalsで、Actavis Groupを買収してActavis と改称、2014年11月にAllergan plc を買収してAllerganと改称した。

Actavis は 2013年10月、 Warner Chilcott を買収した。(40百万株を発行)
Actavis は2014年7月にForest Laboratoryを買収した。(99百万株を発行)
2014年11月にAllerganを買収した。(128百万株を発行)

Allerganが直近の3年間で買収のために発行した267百万株が除外されると、残りは128百万株に減ってしまう。

この結果、Pfizerの株主は誕生する合併企業の株式56%ではなく、80%強を保有することになり、新会社は米法の適用を受けることとなる。

AllerganはPfizerとの合併のため、80%ルールに合うよう、3社を買収したのではなく、たまたま3年内に3社を買収したAllergan をPfizerが買収したもの。
新ルールが「3年内」と決めたこともあり、PfizerのCEOは「我々の案件が標的になったようだ」と不満を述べた。

Wall Street Journal より


財務省はまた、米国子会社にかかる関連債務に新たな制限を課すことで、インバージョン後の利益圧縮問題(米国での課税利益を縮小させる幅広い金融取引)に対処することとした。

GlaxoSmithKline (GSK) のCEOのSir Andrew Witty はこのたび、貧困国で医薬品を手に入れやすくするため、特許を申請しない方針を明らかにした。

これにより、他の企業が特許を心配せずにこれらの地域でGSK の医薬品を製造販売し、民衆が手に入れやすくなるのを望むとしている。
アフリカがもっとも恩恵を受けることを望んでいる。

具体的には、下記の方針を決めた。

国連と世界銀行の分類による「後発開発途上国」(LDCs:Least Developed Countries) と「低所得国」(LICs:Low Income Countries) では医薬品の特許を申請しない。
対象となるのは、50カ国で、合計の人口は10億人。

「低中所得国」(LMICs:Lower Middle Income Countries)では特許は引き続き申請するが、ジェネリックメーカーに対し少額のロイヤリティで10年間のライセンスする。
期間中に経済成長で「低中所得国」から独立した国に対しても適用する。

「高中所得国」(UMICs:Upper Middle Income Countries) とその他諸国では、従来どおりフルに特許保護を求める。

特許申請せず LDC 国連開発政策委員会が設定した基準に基づき、国連総会の決議で認定(当該国の同意を条件)
・1999~2000年の1人当たりGNI平均 750ドル以下
・Human Asset Index  55未満 
(カロリー、乳幼児死亡率、教育水準を指標化したもの)
・Economic Vulnerability Index   37超
(輸出集中度、輸出による所得不安定度、農業生産不安定度、GDPに対する製造業・サービス業比率、人口規模を指標化)
LIC 2013年の1人当たり GNI が1,045ドル以下
少額ロイヤリティ LMIC 同 1,046~4,125ドル
UMIC 同 4,126~12,745ドル


具体的には、OECDによる最新のLDC、LIC、LMICのリスト 参照。
リストは3年ごとに更新され、3年連続で一人あたりGNIが上限の基準を超えると除外される。

同社はまた、開発途上国での増大する癌の負担に対応するため、将来の抗がん剤全てを「医薬品特許プール」(Medicines Patent Pool)に入れたいとしている。
「医薬品特許プール」に入れることで、GSK の医薬品のジェネリックの貧困国での生産・流通が可能となる。

医薬品特許プールは世界保健機関(WHO)が採択した「公衆衛生と技術革新、知的財産権に関するグローバル戦略」の一貫として2010年に発足した。
医薬品の特許を所有している企業や大学、研究機関などが、自ら所有する特許権を提供し、第三者による製造や製品改良のための仕組みで、HIVや結核、C型肝炎などの治療
へのアクセスを高めてきた。

特許権の保有者がプールにその権利を提供することで、ジェネリック薬(後発医薬品)のメーカーは特許期間が満期になる以前に対象となる医薬品の開発に着手できる。
また、プールのライセンスが指定した国に対しては、開発した医薬品を輸出することもできる。
特許保有者は利用者から特許権料を受けるが、プールの運営には特許プール管理機構があたり、提供者と利用者の間の使用交渉や特許料の支払い、受け取りの管理を行う。

GSKはPfizer と塩野義製薬とのJVのViiV HealthcareでHIV治療薬を開発しているが、2014年4月2日、医薬品特許プールとの間で HIV治療薬に関する新たなコラボレーションを発表し、成人および小児医療向けの新しい有望な抗レトロウイルス薬(ARV)、ドルテグラビル(DTG)へのアクセス強化に対する2つの契約を結んだ。
この契約によってジェネリック医薬品メーカーは、最も大きなHIV負担国で、HIVにかかった成人の93%、子供の99%が住んでいる発展途上国に向けて、低コストのDTG治療薬を製造することができる。

今後、癌治療薬を加えることでGSKの貢献は高まる。

住友金属鉱山は3月29日、ニューカレドニアのGoro Nickel Cobalt Project を進めているVale Nouvelle Calédonie S.A.Sの全株式をVale Canada Limitedに譲渡する売買契約を締結した。譲渡金額は約80億円。
共同で出資する三井物産も同様に売却した。

住友金属鉱山と三井物産は、SUMIC Nickel Netherlands(住友 52.38%、三井 47.62%)を設立して2005年よりGoro Nickel Cobalt Projectに参加しているが、2015年12月末までに商業生産目標を達成できない場合には、株式をVale Canadaに売却することとしており、商業生産条件を達成することができなかったため、撤退する。

住友金属鉱山は長期ビジョンの中で、ニッケル生産量15万トン/年をターゲットに掲げている。既存プロジェクトの拡張や新規プロジェクトの戦力化等により、ターゲットの達成に向けて引き続き取り組むとしている。

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Goro Nickel Cobalt Project はカナダのInco Ltd が主体となって開発計画を推進してきたニッケル開発事業で、フランス領ニューカレドニア島の南端に位置するGoro地区、Prony地区にある大規模ニッケル酸化鉱床を対象に、高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach=HPAL法)によるニッケル製錬法で、酸化ニッケルおよび炭酸コバルトの生産を計画している。

ニッケル資源量については世界最大規模のものが期待されており、プラント建設工事が完了する2007年秋以降、年間約4百万トンの鉱石採掘・処理を行い、酸化ニッケル約60千トン/年(ニッケル地金換算)および炭酸コバルト約4~5千トン/年(コバルト地金換算)を生産する計画であった。

住友金属鉱山と三井物産は2005年4月8日、Goro Nickel Cobalt Project (当時の総事業費約18.78億ドル)への参画について本契約を締結した。

このプロジェクトへの出資を目的として、オランダに新会社「Sumic Nickel Netherlands b.v.」(住友52.38%、三井47.62%)を設立し、これを通じて運営主体であるGoro Nickel SA に21%出資した。

このプロジェクトへの参加により、住友および三井は、出資比率相当分のニッケルおよびコバルト製品を引き取る権利を保有し、今後発生するプロジェクト開発費もこの比率で負担する。

その後、試運転段階での設備トラブルもあり、本格的な生産開始が遅れ、補修・改良工事の費用が多額に及んだことから、2012年10月に、総事業費46億ドルを超える費用負担のための追加出資に応じないこととし、これにより出資比率は14.5%に低下した。
(プロジェクトへの参加比率は、住友が7.6%、三井が6.9%となる。)

全体の出資の推移は下記の通り。

当初 2005/4 2012/10
Goro Nickel SA 90% 74% 80.5%
Suminic Nickel 21% 14.5%
SPMSC 10% 5% 5.0%
合計 100% 100% 100%

SPMSC (Société de Participation Minière du Sud Calédonien)はニューカレドニア政府の権益で、ニューカレドニア南部州が 50%、北部州が 25%、島嶼州が 25%出資する。

計画主体のカナダのInco Ltd の前身はカナダのSudbury地域でニッケル生産を行う米国企業 International Nickel Companyで、他企業の買収などを通してニッケル・銅・PGM(白金族金属)の生産シェアを拡大し、1961年には米国・マニトバ州のThompson鉱山のフル生産を開始し、ロシアのNorilsk Nickel に次いで世界第2位のニッケル生産企業となった。

1960年代後半にはインドネシアでのニッケル事業に参入し、PT International Nickel Indonesia(PT Inco)を設立。1970年代後半にはニッケル生産を開始し、カナダ以外での主力となった。

1988年にPT Incoの権益20.09%を住友金属鉱山に売却した。(Inco 59.28%、その他 20.63%)

1992年にはニューカレドニアのGoro鉱床の鉱業権を取得した。

2005年にニッケル生産シェアのさらなる拡大を目指し、カナダのニッケル生産大手Falconbridgeに買収を仕掛けたが、交渉が難航している間に複数の他企業から買収提案を受け、2006年にブラジルのValeに買収された。

2007年にはValeの100%子会社となり、社名をVale Incoに改称した。Valeが従来より所有していたブラジルのニッケルプロジェクトも管理下に置く。
ニューカレドニアの運営主体であるGoro Nickel SA もVale Nouvelle Calédonie S.A.Sに改称した。
インドネシアのPT IncoはPT Vale Indonesia となっている。

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住友金属鉱山のニッケル事業については下記参照

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

豪州でただ1社 PVCを生産していたAustralian Vinyls が2月初めに生産を停止した。

メルボルン近郊のLaverton の年産14万トンのプラントで、原料のVCMは輸入しており、年末に輸入したVCMを使い切った段階で停止した。

2015年9月に発表していたもので、塩ビ事業の実績と今後の見通しから戦略的に判断したもの。豪州の需要が減少しつつあるなかで、世界的な供給過剰でレジン価格は下落しており、今後長期的に赤字が続くと予想した。

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Australian Vinyls は化学品、肥料、鉱山関連サービスなど豪州で幅広い事業を展開するCSBP Limited の100%子会社で、苛性ソーダも生産している。(但し、VCMは生産していない)

CSBPは、アンモニア・硫安、青酸ソーダ(金の採掘用)、木材・プラスチックコンポジット(木粉と回収牛乳パックのHDPEでつくる木材代替品)、化学製品などを扱っている。

Australian Vinyls は1997年8月に豪州のPVC メーカー2社(ICI AustraliaとAuseon ) が合併して設立された。

ICI Australia はICIの構造改革の一部として1997年に分離・上場され、Oricaとなった。LavertonにPVC 14万トンプラントを持つ。
Auseon はGeon(当初名 BFGoodrich)の子会社。Altonaに9万トンのプラントを持っていた。
出資比率はICI Australiaが62.6%、Auseonが37.4%であった。

2002年9月に CSBP Limitedが Australian Vinyls を買収、Altonaプラントを停止した。

なお、当初のAustralian Vinyls の事業のうちのPVCコンパウンド事業は、Orica がPolyoneとのJVのメーカーのWelvic Australia で引き継いだ。
Oricaは2003年にPolyoneの37.4%の持分を買収した。

Orica の現在の主事業は鉱山用の火薬や爆破技術である。


IneosのCEOのJim Ratcliffeはこのたび、英紙に対し、3年以内に本社をスイスから英国に戻すと述べた。

多額の負債を抱え再建中であった同社は2010年に本社を英国からスイスのレマン湖沿岸のヴォー州 Rolleに移転した。

当時の英国の法人税率は28%で、増税が検討されており、税金の負担が増えるとし、英国よりももっと低税率の国に本社を置く他の主要化学会社と競争していくためにスイスに本社を移すとし た。

移転により2014年までの間で450百万英ポンドの節税になると見込んだ。

2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討 

その後、英国は法人税率を2013年4月以降に30万ポンド以下の所得について20%に引き下げ、2015年4月以降は課税所得に関わらず20%となった。
更に、2017年4月以降は19%に、2020年4月以降は18%に引き下げられる予定となった。

英国の方が税率が低くなったため、再度英国に本社を移すもの。

各国の実効税率は下記の通り。 スイスの場合、地方税は州により異なるが、 ヴォー州は地区により20.75~23.6%となっている。

日本については、2015/12/7 実効税率の引き下げ 

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Ineosは本社はスイスに移したものの、最近は英国への投資を増やしている。

同社は英国でのシェール開発を拡大している。

2014/8/22  Ineos、スコットランドのシェールガス開発に参加

2014/10/3  Ineos、英国でのシェール開発反対を抑えるため大盤振る舞い

2014/10/18  Ineos、英国で更にシェールガスの権益を取得

LetterOne Groupの子会社のDEA Deutsche Erdoel AGから英国の北海ガス田全ての権益を買収することで合意した。

スコットランドのGrangemouth 石油精製・石油化学基地を含め、全英に4千人の従業員を抱えている。


今回、英国への再移転を決めたが、Ratcliffe は英国の税率に満足しておらず、英国産業の破滅的な没落を避けるため、税負担を更に下げるよう求めている。
英紙への投稿で、保守党に対し、1桁台の税率を導入するよう求めた。現状は英国の製造業の緩やかな死を防ぐために十分ではないとしている。

公取委 は3月29日、家電や自動車に使われる2種類のコンデンサーの価格でカルテルを結んだとして、独禁法違反で、ニチコン、日本ケミコン、ルビコン、松尾電機、NECトーキンのメーカー5社に計約67億円の課徴金納付命令を出した。

日立AICとビシェイポリテックは違反を自主申告したため課徴金を免除された。ビシェイは排除命令は受けている。
なお、NECトーキンは50%の減額措置を受けた。

日本ケミコン、ニチコン、ルビコン、日立AICは、円高で輸出による利益確保が難しくなったため、2010年2月〜2011年11月にアルミ電解コンデンサーの販売価格を値上げすることで合意した。ニチコンとNECトーキン、ビシェイポリテック、松尾電機は、原材料費の高騰を理由に、2010年6月〜2011年10月にタンタル電解コンデンサーで価格カルテルを結んだ。

公取委は2014年6月24日、疑いが強まったなどとして、メーカー10社程度に立ち入り調査を行った。
その結果、2015年12月に、コンデンサー7社の独禁法違反を認定し、うち5社に計約67億円の課徴金の納付を命じる方針を固めていた。

日本 
(2016/3/29)
台湾
(2015/12/19)

千円

減免 排除命令

百万円

アルミ電解
 コンデンサー
日本ケミコン 1,435,240 8,307
ルビコン 1,067,740 4,618
エルナー 283
三洋電機 3,115
ニチコン 3,362,230 412
日立AIC 0

免除

小計 5,865,210 3社 16,735
タンタル電解
 コンデンサー
NECトーキン 127,150 50% 4,507
ニチコン 277,950
ビシェイポリテック 0 免除 115
松尾電機 427,650 90
小計 832,750

3社

4,712
合計 6,697,960

6社

21,447

コンデンサー業界は日本のほか、中国、台湾、米国、韓国でカルテルの調査を受けている。

中国の国家発展改革委員会(NDRC) は2014年、他国の競争当局に先がけてコンデンサーの価格カルテルの調査を開始した。

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台湾の公平交易委員会(公取委に相当)は2015年12月9日、スマートフォンなどに使う電子部品のコンデンサーについて、日本ケミコンなど日 本企業とその海外子会社10社が価格カルテルを結んでいたとして、総額約215億円の課徴金を科すと発表した。台湾でのカルテルに対する課徴金としては過去最高額。

2015/12/15 台湾、日系などのコンデンサーメーカーの価格カルテルに多額の課徴金

ーーー

米当局も現在、キャパシタ(電解コンデンサー)業界のカルテルの調査を行っている。

司法省は2015年9月2日、NEC TOKIN が罪を認め、1380万ドルの罰金を支払うと発表した。
合わせて、同社は今後の調査への協力を約束しており、今後、広がる可能性がある。

ーーー

韓国の公正取引委員会は、2015年秋に、日本のコンデンサーメーカー8社が最大4兆ウォン(約4100億円)台の価格カルテルを結んでいた疑いで調査に入った。

調査対象はパナソニック、ニチコン、日本ケミコン、日立化成、NECトーキンなどの8社。

2015/10/3 韓国公取委、日本のコンデンサーメーカーの価格カルテル調査 

ーーー

各社の概要は以下の通り。

日本ケミコン:1931年 佐藤電気工業所として設立(日本発の電解蓄電器の製品化)

ルビコン:1952年 日本電解製作所として設立、アルミ電解コンデンサ製造開始

エルナー:1929年 本田製作所として創業、1934年 アルミ電解コンデンサの採算・販売

三洋電機:2009年に事業(サン電子で製造)をサン電子に売却

ニチコン:1950年 関西二井製作所設立、1956年 アルミ電解コンデンサ製造開始

NECトーキン:1938年 東北金属工業設立、1988年トーキンに改称、2002年NEC・電子部品事業と統合、改称

日立AIC:1965年に日立化成が神奈川工場を分離、日立コンデンサを設立、のち改称

Vishay Polytec:米のVishay Intertechnologyは2014年に日立コンデンサの三春工場のタンタル・ニオブコンデンサ事業を取得
 (
2010年に台湾の禾伸堂企業が日本に設立したホリストン ポリテック㈱に事業譲渡、ホリストンがVishayに譲渡)

松尾電機:1949年設立

韓国の総合食品メーカーのCJ 第一製糖は3月21日、機能性アミノ酸の製造・開発を手掛ける中国の寧波市鎮海海徳生化科技(Ningbo Zhenhai Haide Biochem)の発行済み株式のすべてを360億ウォン(約34億円)で買収する契約を結んだと発表した。

海徳は 、L-メチオニンやL-アルギニンなど健康食品や化粧品向けなどに使われる約40種の機能性アミノ酸を手掛け、浙江省寧波に2つの工場を持つ。

CJ 第一製糖はこれまで、リシン、トリプトファンなどの飼料用アミノ酸事業に集中し世界1位に立ったが、機能性アミノ酸市場には全く手をつけずにいた。
この分野では味の素、協和発酵などの日本のアミノ酸メーカーが70%以上のシェアを占めている。

今回、世界に約300の顧客ネットワークを有する海徳を傘下に収め、医薬用など事業領域を広げ、全世界で現在1兆ウォン規模とされる機能性アミノ酸事業で2020年には35%のシェア で3位以内に入り、売上高4000億ウォンを目指す。

同社では、「これまで、リシン、メチオニンなどの飼料用アミノ酸事業に集中投資し、後発だが、高速技術開発などで味の素と協和発酵を抜き、世界一となり、5大飼料用アミノ酸を生産する世界初の企業になった。今回の買収で、人類の健康に役立つ機能性アミノ酸市場でも世界的に競争力を持つ企業になれるよう努力する」としている。

リシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニンに続き、2013年に新規飼料用必須アミノ酸で、味の素が唯一のメーカーであった「バリン」の開発に成功、2014年にインドネシアで生産を開始した。

ーーー

CJ 第一製糖は韓国1位の総合食品会社で、CJ グループの食品とバイオテクノロジー事業部門を担当 し、過去60年間、韓国国内食品産業の発展を先導し、バイオテクノロジー産業の発展にも貢献してきた。

CJ 第一精糖(当初、第一精糖)は、1953年にSamsung Group初の製造業として設立された。
その後、
素材食品から始まり、加工食品に事業エリアを拡大してきた。

Samsung の創始者の李孟熙の長男の李在賢が1993年に第一精糖を率いてグループを離脱、第一精糖グループとなった。

2002年にCJ グループと改称、2007年に会社分割で、持株会社をCJ、事業会社をCJ 第一精糖とした。

現在、食品事業部門の加工食品、素材食品事業とバイオテクノロジー事業部門(バイオ、生物資源、製薬事業)で、量的拡大、質的成長を成し遂げている。

2012年以降、M&Aの相手を探しており、本年1月に、中国の食品添加剤メーカーで、グルタミン酸ナトリウム(MSG)で中国でトップシェアの梅花集団(Meihua Group)の買収交渉に入った。

梅花集団が中国のCJ 第一製糖の2工場を買収する見返りに、CJ 第一製糖が梅花集団 の経営支配持分を購入するという構想で、本年第2四半期に実現すべく、梅花集団の大株主との交渉を行っている。



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