住友化学と Trinseo は1月26日、両社のポリカーボネートの50/50合弁会社「住化スタイロンポリカーボネート」について、住友化学が Trinseoの持ち株を買い取る契約を締結した。
2017年1月31日に取引完了の予定で、社名を「住化ポリカーボネート」と改称する。
住化スタイロンPC(→住化PC)は、愛媛県新居浜市に年産55千トンのPCプラントを持ち、日本およびアジアを中心に事業を展開している。
株式譲渡後も住化PC はTrinseo のパフォーマンスプラスチック事業向けにPC樹脂を継続して供給することで合意しており、今後とも戦略的関係を維持する。
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住化スタイロンPCは旧称 住友ダウで、住友化学とDow Chemical のJVであった。
Dow Chemical は2010年3月、スチレン系事業のStyronを投資会社Bain Capital Partnersに16.3億ドルで売却する契約を締結した。
6月17日に取引が完了、新会社 Styron となった。
スチレン系のほか、ポリカーボネートや合成ゴムも売却対象に含まれた。
含まれる製品は以下の通り。
PS、ABS、SAN、EPS
エマルジョンポリマー(styrene butadiene latex, terpolymer, acrylic latex)
PC、PCコンパウンド
合成ゴム(Low Cis BR、High Cis BR、E-SBR、S-SBR) メタロセンEPDM (Nordel)は売却せず。
自動車用プラスチック
スチレンモノマー(数工場)2007年にChevron Phillipsと設立したSM/PSの50/50JVの Americas Styrenicsの持分を含む。
これにより、住友ダウのDow Chemical 持ち分も2010年10月にStyronに売却された。
なおDowは、韓国のPCのJV LG Dow Polycarbonate についてはStyronへの売却ではなく、2010年10月にLG Chem に売却している。
2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了
Bain Capital Partnersは買収した事業会社をとりあえずStyron としたが、SMやPS以外にも事業を展開するため、社名をTrinseoと改称することとし、2011年末に改称した。
TrinseoはIntrinsic(「固有の」、「本質的な」、「内在する」)から取った。
同社の製品や技術が、需要家の製品にintrinsic な役割を果たし、需要家の成功に不可欠なものになるという意味。
PSの商標は従来通り Styron を使用する。
Styronは米国とドイツのDowのPC事業と、住友ダウへの持ち分を引き継いだが、韓国のJV持ち分については、恐らくLGの要望を受け、LGに譲渡した。特にPC事業に固執はしていなかった模様。
今回の住友化学への売却については、環境に優しいタイヤに経営資源を集めることとし、住友化学に持ち掛けたとされる。
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住友化学のPC事業の歴史は次の通り。
1980年代後半にPCの需要は増大し、住友化学はPCへの進出を検討した。
当時、Bayer とGE Plastics が世界のPC市場を支配していたが、Dow Chemical は、PC事業の拡大を図り、日本と韓国への進出を考え、相手を探していた。
韓国では1999年にLGとのJVのLG Dow Polycarbonate を設立、2001年に生産を開始した。
2010年10月にLG 100% となった。
その時点ではDowはPCとABSの合剤が有望であると考えていたため、ABSを持つ住友化学を相手として選んだ。
(住友化学は1963年にUS Rubber とのJVの住友ノーガタックを設立、ABSとSBRラテックス事業を始めたが、1980年に住友化学の100%子会社とした。)
1988年7月にDowは住友ノーガタックに35%出資した。
住友化学は見返りに、発泡PS事業を行っているダウ化工に35%出資するとともに、原料PSの75%の納入権を得た。(それまでは全量を旭化成が供給)
住友化学は昭和電工とのPSのJV 日本ポリスチレン工業を持っていたが、これを材料に千葉でのGPPS 40千トン/ HIPS 30千トンプラント建設案を昭和電工に提案、最終的に住友化学が千葉に、昭和電工が川崎にそれぞれPSプラントを建設することとなる。
その後、日本ポリスチレン工業は解散、昭和電工は旭化成に商権を譲渡し、撤退。住友化学は三井化学とPS事業を統合して新しく日本ポリスチレン㈱を設立した。しかし、これも2009年9月末に操業を停止し、解散した。
2006/10/7 日本のPS業界の変遷
2009/4/4 日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ
住友ノーガタックは1992年4月にDow Chemical の出資を50%とし、社名を住友ダウに改称した。
1995年4月にPC年産40千トンプラントが完成した。
この時点で、DowはPCとABSの合剤の考えを改めた。このため、Dowにとっては住友ダウのABSとラテックス事業は意味を持たなくなった。
このため、1995年末に住友ダウはABSとラテックス事業を分離し、この事業は住化エイビーエス・ラテックスとして独立した。
1999年7月に三井化学のABS事業と統合し、日本エイアンドエルとなった。
Dow Chemical は2010年6月、スチレン系事業のStyronを投資会社Bain Capital Partnersに16.3億ドルで売却 した。
住友ダウのDow Chemical 持ち分も2010年10月にStyronに売却され、住友ダウは住化スタイロン ポリカーボネート と改称した。
今回、住友化学100%となり、住化ポリカーボネートと改称する。
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Dowのアジア進出検討時には、GE Plastics とBayerが圧倒的な力を持っていた。
GEは2007年8月にGE Plastics をSABICに売却、SABICはこれをSABIC Innovative Plastics と改称した。
2007/9/4 SABIC、GE Plastics の買収完了
BayerはPC事業を含むMaterial Science 部門を2015年9月にCovestro として分離独立した。
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