2018年8月アーカイブ

韓国 POSCOは8月27日、豪州の資源開発企業 Galaxy Resources Limited との間でアルゼンチンのSalar del Hombre Muerto(オンブレ・ムエルト塩湖)の鉱業権売買契約を締結したと発表した。POSCOはこのプロジェクトを「Sal de Oro(黄金の塩)」と名付けている。2億8000万米ドルを投資する。

Galaxy Resourcesは、豪州、カナダ、アルゼンチンでリチウム探査と開発事業を手掛けている。

POSCOが鉱業権を確保したのは、オンブレ・ムエルト塩湖の北部地域で、1万7500ヘクタール規模。POSCOはここで2021年から20年間、毎年2万5000トンのリチウム生産を見込んでいる。1回の充電で走行距離320キロ以上の高性能電気自動車約55万台のバッテリーを生産できる量である。

POSCOはリチウムなど二次電池の素材について従来の主力産業の鉄鋼を上回る「未来産業」と判断し、2010年から注力してきた。研究開発と生産工場の設立などにすでに1000億ウォン(9千万米ドル)以上を投資している。

しかしその間、原料の確保に苦戦し、大きな成果にはつながらなかった。2013年にはチリのマリクンガ塩湖でリチウムを生産しようとしたが契約に至らず、2015年から昨年まで毎年、別のアルゼンチンの塩湖を確保しようとしたが途中で座礁した。

このため、塩水の代わりに鉱石のリチウム精鉱からリチウムを抽出する技術と廃バッテリーからリン酸リチウムを抽出する技術を開発した。

POSCOは世界で唯一、リチウムを3つの方法で抽出できる企業となった。
 △塩湖に溶けている炭酸リチウムから抽出、
 △鉱山での採掘と加工されたリチウム精鉱から抽出、
 △捨てられた廃二次電池から抽出など。

POSCOは本年2月、豪州の鉱山開発企業Pilbara Mineralsから年間3万トンのリチウムを生産できる分量の毎年最大24万トンのリチウム精鉱(自然鉱石加工品)の供給を受ける長期契約を締結した。

そして今回、塩湖の権益確保に至った。

POSCO関係者は「世界で唯一、3つの方式のリチウム通出技術を保有することになった」とし「原料の需給問題が完全に解消しただけに、今後は二次電池素材事業の競争力がさらに強まるだろう」と述べた。

川下でも事業を拡大している。

POSCOは亀尾(クミ)工場を増設する予定であり、光陽(クァンヤン)には新工場を建設している。

POSCOは本年1月、中国の華友鈷業(華友コバルト)との浙江省での2つのJV設立を発表した。リチウムイオン電池材を生産する。

前駆体の合弁生産会社には、コバルトなど原材料を供給する華友鈷業が60%、POSCOが40%出資する。
陽極材を生産する合弁会社には生産技術のあるPOSCOが60%、華友鈷業が40%出資する。

合弁会社は年産4600トン規模で2020年下期からの生産開始を目指す。

POSCOは本年3月、バッテリーメーカーのSamusung SDI と共同で、チリに575億ウォン(約58億円)を投じ、EV向けリチウムイオン電池の主要部材となる正極材の生産工場を設けることを決めた。

チリの産業振興公社(CORFO)が実施する両極材の生産プロジェクトの入札で、POSCOと Smsung SDIのコンソーシアムが事業者として選定された。入札には米国や中国、ロシアなど7カ国12社が参加した。

チリ北部に位置するメヒヨネスに生産合弁会社を設立する。2021年下期から年間3,200トン規模のEV用正極材を生産する。




日本たばこ産業(JT)は8月27日、米
Gilead Sciencesからのライセンスに基づき日本で子会社の鳥居薬品を通じ販売している抗HIV薬6製品について、日本国内ライセンス契約の解消に向けGilead Sciencesと協議を開始すると発表した。


JT と Gilead は、2003 年に「ビリアード錠 300mg」「エムトリバカプセル 200mg」「ツルバダ配合錠」、2010 年に「スタリビルド配合錠」、2011 年に「ゲンボイヤ配合錠」「デシコビ配合錠 LT/HT」の日本国内における独占的開発・商業化権に関する契約を締結している。

また、JT と鳥居薬品は、当該薬品の日本国内における独占的販売権に関する契約を締結し、日本国内での販売は鳥居薬品が行っている。

鳥居薬品は、1872年に鳥居徳兵衛が横浜市に洋薬輸入商「植野屋」を創立したのを始めとする。
1921年に鳥居商店を設立、1949年に鳥居薬品とした。
1998年にJTが子会社とした。(53.46%所有)
1999年にJTとの間で、医薬品の営業機能は鳥居へ統合、R&D機能はJTへ集中することとし、2006年にはJTの医薬品製造拠点を鳥居の佐倉工場に統合した。

今般、Gilead が、①同社創製の新規抗HIV 薬 Biktarvyの 日本国内での承認取得及び販売を同社子会社であるギリアド・サイエンシズを通じて行うと決定した旨の連絡と、②上記 6薬品の日本国内における独占的ライセンス契約の解消に関する提案を受けた。

Biktarvyは2月に米国、6月に欧州で承認された。2018年第2四半期売上は1億8300万ドル。
日本では承認申請準備中で、年内中の申請を目指す。

抗HIV薬はGilead の最重点領域であり、日本でも自社販売体制を整え、事業を強化したい考え。

JT と Gilead 社との間で協議を開始するとともに、JT と鳥居薬品との間で日本国内における独占的販売権に関する契約の解消に向けた協議を開始する。

今後、JT と Gilead との間ではライセンス契約解消の対価を含む諸条件、JT と鳥居薬品との間では販売契約解消の補償を含む諸条件について協議をし、契約締結に向けそれぞれ最善の努力を行う。

JTとの契約に基づき国内販売している鳥居薬品は、年間製商品売上高の1/3を抗HIV薬が占め、ライセンス解消となれば、事業に与える影響は大き い。

鳥居薬品 売上高(億円)

2016/12月期 2017/12月期 2018/12月期(予)
全社 602 641 607
デシコビ配合剤 - 92 136
ゲンボイヤ配合剤 19 63 73
ツルバタ配合剤 128 39 4
スタリビルド配合剤 24 1 0
他2剤 1 3 1
(HIV感染症領域 計) 172 198 214
全社 当期利益 28 47 26

「デシコビ配合錠」は、国内では2017年1月に発売された。本配合錠は、「ツルバダ配合錠」の2つの有効成分のうち、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩をテノホビル アラフェナミドに置き換えた配合錠。

「ゲンボイヤ配合錠」は、国内では2016年7月に発売された。本配合錠は、「スタリビルド配合錠」の4つの有効成分のうち、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩をテノホビル アラフェナミドに置き換えた配合錠で、1日1回1錠の服薬で治療を行う抗HIV薬。

「ツルバダ配合錠」は、国内では2005年4月に発売された。ツルバダ配合錠に含まれる2つの抗HIV薬は、いずれもHIV逆転写酵素を特異的に阻害することによりHIVの増殖を阻害する薬剤。

「スタリビルド配合錠」は、国内では2013年5月に発売された。抗HIV薬を含む4成分を含有するスタリビルド配合錠の発売により、国内では初めて、1日1回1錠の服用でHIV感染症の治療が可能になり、患者の服薬利便性を改善することで長期的な服薬アドヒアランスの維持・向上が期待できる。

福島第一原発の放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水は、事故後は構内にため続けており、今年2月時点で約105万トンあるタンク貯蔵水のうち約85万トンを占めている。
タンクの容量は現状で約110万トンで、東電は2020年までに137万トンまで増設を計画しているが、それ以降については未定。

経済産業省は放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水の処分方法をめぐり、公聴会を開く。
富岡町では、8月30日午前10時~午後0時半、郡山市では31日午前9時半~正午に開く。31日午後には東京都内でも開かれる。

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トリチウムは、質量数が3、すなわち原子核が陽子1つと中性子2つから構成される水素の放射性同位体である。半減期は約12年。
(水素は陽子1つのみ、重水素は陽子1つと中性子1つ)

通常の水とトリチウム水には化学的な差がほとんどなく分離が難しい。

日本ではこれまでは、排水の一部として海に流されていた。

1979年の米国のThree Mile Island原発事故では、トリチウム水が9000トン発生した。これは放出基準を満たしていたが、内陸のため、下流域で飲料水を取水する都市が反対した。
このため、1991年から1993年にかけて大気中
に蒸発させて処理した。

福島第一原発の廃炉作業について3回目の調査を行っていたIAEA(国際原子力機関)の調査団は2015年2月17日、調査報告書を発表した。そのなかで、汚染水を処理したあとのトリチウムを含んだ水について、国の基準以下まで薄めて海に放出することも含め検討する必要があるという考えを示した。

調査団のJuan Carlos Lentijo団長は記者会見で、汚染水対策が直近の課題だとした上で、以下のとおり述べた。

環境への影響がほぼ無視できることが確認されれば、管理した上で(国の基準以下まで薄めて) 海へ放出することは、福島第一原発の状況を大幅に改善できる有力な選択肢だ 。
海洋放出は(人や環境に)ほとんど影響しない。
濃度が国際的な基準値以下のトリチウム水を海に流すことは世界中の多くの原発で行われている。

実際の海洋放出にあたっては、漁業関係者や地元住民による受け入れや丁寧な放射能モニタリングが欠かせない。

原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)は2013年9月2日、日本外国特派員協会で講演し、汚染水問題への対応で、放射能濃度を許容範囲以下に薄めた水を海に放出する必要性を強調した。

2015/2/20 IAEA調査団の福島第一原発・廃炉作業の調査報告書 

ここにきて、第一原発の汚染水を処理した後の水にトリチウム以外の複数の放射性物質が残留していることが報道された。

8月19日に共同通信が取り残しを報じた後、8月23日には河北新報が、2017年度のデータを検証したところヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

東京電力福島第1原発の多核種除去設備(ALPS)で汚染水の浄化後に残る放射性物質トリチウムを含む水に、他の放射性物質も除去しきれず残っている問題で、排水の法令基準(1リットル当たり9ベクレル)を超えるヨウ素129の検出が2017年度に約60回あったことが分かった。2018年度も既に10回を超え、同様のペースで起きている。

原子力規制庁も実態を把握しており、フィルターの性能低下の可能性を指摘する。

東電は既設、増設、高性能の各ALPSの処理水の放射性物質濃度を定期的に測定。2017年度のヨウ素129の測定結果は1リットル当たり40ベクレル以上が9回あった。9月18日に採取した処理水は62.2ベクレルに上った。

東電は、能力に問題はないとして「ALPSの運用継続による汚染水処理を優先している」などと説明。基準超えが続いても「敷地境界の空間放射線量の目標値(年間1ミリシーベルト未満)には影響がないように運用している」と強調する。 

原子力規制庁の担当者は「基準超えの頻度増加は把握している。フィルターの性能低下が原因なら、交換で回復できるのではないか。ただ汚染水の放射性物質濃度は低減されており、直ちに問題とは言えない」と話した。

原子力規制委員会が認可した福島第1原発の実施計画では、ALPSの設置目的はトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げることと明記している。

付記

東京電力は9月28日、福島第1原発の汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとしている。


これについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は22日、トリチウム以外についても希釈して法令基準濃度を下回れば海洋放出を容認する考えを示した。(東京新聞 8月23日)

更田委員長は、汚染水を浄化するALPSの運用開始当初から残留を認識していたとして「希釈すれば法令基準を下回るのは明白なことで、大きく問題にすることがなかった」と説明。汚染水の処分方法としての海洋放出に関し「現実的な唯一の選択肢」との考えを改めて示した。

委員長が、委員会が承認したALPS設置での「トリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げること」の条件に違反して当初から他の放射性物質が残っていることを知っており、これを明らかにしなかったことは問題である。政府、委員会、東電の説明の信頼性が失われる。

福島県の内堀雅雄知事は20日の記者会見で、次の通り述べた。

現在保管されているトリチウム水の状況は非常に重要です。トリチウム水の今後の取扱いについては、現在、国において、社会的な影響も踏まえた議論がなされているところであり、今月末には広く国民から意見を聴く公聴会が開催されます。国及び東京電力においては、こうした現在のトリチウム水の状況というデータも含めて、環境や風評への影響などを国民や県民に丁寧に説明し、慎重に議論を進めていただきたいと考えております。

(海洋放出について)
科学的なデータももちろん重要ですが、一方で、社会的な影響、特に風評の問題をどのように勘案していくか、あるいは対応していくかが、福島県全体にとって重要であると考えております。

あの震災と原発事故から7年5か月が経過しておりますが、我々は依然として、風評に苦しめられております。例えば、海外では福島県産の農産物等に輸入規制をかけている国がまだ20数か国に及ぶのが現実です。こういった社会的影響への対応が一つの重要な側面でもありますので、国及び東京電力に対しては、環境や風評への影響などについて、しっかりと議論を進めて、丁寧に説明し、慎重に対応していくことを求めてまいりたいと考えております。

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別途、6月29日に、大学プレスセンターが、汚染水からトリチウム水を取り除く技術の開発を発表した。

近畿大学工学部教授 井原辰彦、近畿大学原子力研究所、東洋アルミニウムおよび近大発のベンチャー企業である株式会社ア・アトムテクノル近大らの研究チームが、「トリチウム水」を分離・回収する方法及び装置を開発した。

研究チームは、多量の小さな穴を持つ構造「多孔質体」と、「毛管凝縮」に着目し、この現象を除染技術に応用するため研究を進めてきた。

完成した多孔質体は、直径5nm以下の大きさの微細な穴「細孔」を有し、毛管凝縮によって細孔内に水とトリチウム水を取り込んだ後、トリチウム水を細孔内に保持したまま、水だけを放出する機能があ る。
この多孔質体を格納したフィルターによって、汚染水からトリチウム水を高効率に分離することができる。

また、多孔質体を加熱することで、細孔内に残ったトリチウム水を放出し回収することができ る。装置は繰り返し利用できるため、低コストでのトリチウム除染が可能となる。

ベーマイト処理済み(アルミニウムに熱水処理を施すことで、アルミニウム系酸化皮膜を形成)のアルミニウム粉末焼結多孔質フィルターを格納した本発明装置を用いて、実証実験を行 った結果は下図の通り。いずれも処理量が増加するにつれて除染率は低下するが、ベーマイト処理を行ったフィルターでは初期段階で、ほぼ100%除染されていることを確認した。


チームは今後、福島県内の企業などと協力し、原発の汚染水処理ができる実用機器の開発を進めるという。

処理すべき水は大量であり、実用までには時間がかかると思われ、政府、東電がそれを待つとは考え難い。

Bayerは2016年9月14日、Monsantoの買収で合意したと発表した。

債務を含む買収総額は約660億ドル、債務除きでは570億ドルの買収で、2017年末までに完了する見通しとしていた。

2016/9/19 Bayer、Monsantoを買収 

しかし、買収によって農薬や種子などの分野で、競争が損なわれる恐れがあるとみなされ、各国の独禁当局が問題ありとした。

Bayerは2017年10月13日、Monsanto買収を進めるため、特定の Crop Science事業をBASFに59億ユーロで売却すると発表した。

2017/10/16 Bayer、Monsanto買収の独禁法対策で、BASFに一部事業を売却

EUは当初2018年1月8日までに買収を承認するかどうか判断するとしたが、これを3月12日に延ばし、更に4月5日に延ばした。両社の種子、殺虫剤、デジタル農業での重複が問題となった。

EUは2018年3月21日、両社の種子、殺虫剤、デジタル農業での重複の解決を条件に買収を承認すると発表した。

バイエルは2018年4月26日、2017年10月のBASFとの合意内容に加え、BASFに事業と資産を 17億ユーロで売却することで合意した。 (合計76億ユーロ≒ 90億ドル)
新たに追加されたのは以下の事業で、EUや他の諸国の独禁法当局との約束を満たすための処理。

  • Nunhems®ブランドで世界的に販売されているすべての野菜種子事業
  • Poncho®、VOTiVO®、COPeO® 、ILeVO®の各ブランドで販売されている種子処理製品
  • 小麦交配種の研究開発プラットフォーム
  • 最新のデジタル農業プラットフォーム、xarvioTM

米国は5月29日、条件付きで承認した。

これで全ての条件が整い、6月7日に買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。

2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認


8月10日にBayer の株価は急落した。

カリフォルニアの陪審員が8月10日に、モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。このニュースが伝わり、株価が下落した。

Roundup については、全米で7月末で約 8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。

原告は学校の校庭の管理人で、30年以上にわたって除草剤を扱ってきたが、非ホジキンリンパ腫にかかっており、医者は2020年まではもたないだろうとしている。
原告の病状を鑑み、審理を早めた。

陪審員は3日間の審議で、Monsantoが原告や他の消費者に除草剤の発癌リスクを伝えなかったとし、損害賠償として39百万ドル、懲罰的損害賠償として250百万ドルの支払いを命じた。

原告弁護士は、今回初めて会社の内部資料が出され、Monsantoが何十年にわたり、glyphosate除草剤、特にRoundupが癌を生む可能性があることを知っていたことが明らかになったと述べ、消費者の安全よりも利益を重視していると非難した。

これに対し、Monsantoは控訴すると述べた。glyphosateは世界で最も広く使用されている除草剤で、発癌性はなく、何十年もの研究が人体に安全であることを示しているとしている。

和解は考えておらず、他の訴訟も含め、精力的に戦うとしている。

付記

San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。

しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

付記

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」を長年使用し、喉に悪性リンパ腫を患った男性がモンサント側を相手取って訴えていた裁判で、ラウンドアップががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。

Edwin Hardeman(70)は1980年から2012年にかけ、カリフォルニア州北部Sonoma郡の自宅でラウンドアップを定期的に使用。その後、がんの一種である非ホジキンリンパ腫と診断された。

陪審は3月27日、80百万ドルの賠償を命じた。被害に対して5百万ドル、懲罰的賠償が75百万ドル。

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日本でラウンドアップを扱う日産化学は8月15日、下記の発表を行った。

本訴訟は2015年に国連の世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が、ラウンドアップの有効成分であるグリホサートをグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類したことに基づいて起こされたものと思われます。

グリホサートの安全性については、IARCと同じ国連のFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)が2016年5月に「食を通じてグリホサートがヒトに対して発がん性のリスクとなるとは考えにくい」と発表しました。

農薬に関しては、日本を含む各国の規制当局が、発がん性を含む様々な項目についての適正なガイドラインに沿った多数の試験成績を基に、継続的かつ厳正に審査したうえで使用を認可しています。

日本では内閣府食品安全委員会が2016年7月に「神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」と結論付けた評価書を発表しています。


また、欧州では欧州食品安全機関(EFSA)が2015年11月に「グリホサートは発がん性または変異原性を示さず、受精能、生殖、胚発生に影響する毒性を持たない」、欧州化学物質庁(ECHA)が2017年3月に「グリホサートは発がん性物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類する基準に合致しない」という見解を示しました。

さらに、米国では米国環境保護庁(EPA)が2017年12月に「グリホサートはヒトに対して発がん性があるとは考えにくい」と結論付けた評価書案を公表しました。

当社はこの判決が農薬規制当局の従来の判断に影響を与えるものではないと考えております。

WHOのIARC (国際がん研究機関) 人の非ホジキンリンパ腫に対して限られた根拠があり、さらに動物実験では発がん性の明白な根拠がある」としている。
非ホジキンリンパ腫とglyphosateの年間使用日数に「相関関係」
が見られたというもので、原告が30年以上扱ってきたという事実には合致する。

昭和シェル石油は8月24日、日本政策投資銀行との合弁会社(RS Global Capital Investment LLC)を介し、オハイオ州における天然ガス火力発電事業に参画 すると発表した。九州電力、四国電力も参画する。

各社が参画するのは、ボストンに本拠を置くAdvanced Powerの子会社 South Field Energy で、米国オハイオ州Columbiana Countyにおいて出力約1,182MWのコンバインドサイクルの天然ガス火力発電所を建設し、2021年に商業運転を開始する。発電する電力は、北米最大のPJM卸電力市場を通じて、米国北東部地域 で販売する。
燃料の天然ガスは、米国内のシェールガス田から調達する。

昭和シェルは、「中期事業戦略」においてアジア太平洋/北米地域における天然ガス火力発電への参画を掲げていて、本件はその第一歩となる。国内ガス火力発電での知見を活かして米国市場へ参画し、先鋭的なマーケットの知見を吸収して国内電力事業への還元を目指 す。

日本政策投資銀行は、日系企業の海外発電事業分野への進出を支援すると共に、電力自由化で先行する米国にて本件に参画することで、自由化市場でのファイナンスにかかる知見を獲得し、今後自由化が加速するわが国電力市場への還元を目指す。

本プロジェクトのスキームは次の通り。

出資社は次の通り。

RS Global Capital Investment 昭和シェル / 日本政策投資銀行 約27.2%
九州電力 約18.1%
四国電力 約 8.9%
(日本企業合計) 約 54.2%
Advanced Power 親会社
NH-Amundi Asset Management 韓国農協銀行の資産管理会社
PIA Investment Management 韓国の投資会社
Bechtel Development 子会社

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日本の商社や電力会社は海外の電力事業に相次いで参加している。

州電力にとっては、米国における3件目の発電事業となる。他の事業は次の通り。

事業 Birdsboro Gas-Fired Power Clean Energy Gas
立地 ペンシルバニア州 コネチカット州
運転開始 2019年 2011/7
方式 ガスタービンコンバインドサイクル ガスタービンコンバインドサイクル
出力 48.8万kW 62万kW
売電先 PJM 米国最大の卸電力市場 ISO-NE 北東部6州の卸電力市場
出資社 九州電力 11.1% (双日から)
双日   22.2%
東京ガス 33.3%
Ares EIF 33.3%
九州電力  20.25%
双日  20.25%
大阪ガス 24.30%
中国電力 16.20%
既存出資者 19%

その他地域での事業:

同社は、2030年までに海外の発電事業持分出力を500万kWへ拡大する目標を掲げている。

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四国電力にとってはカタールのRas Laffan C 発電・造水プロジェクト(5%出資)、オマーンでのBarka 3 & Sohar 2
発電プロジェクト(いずれも 7.15%出資)、チリ共和国におけるHuatacondo
太陽光発電事業(30%出資) に次ぐ5件目の海外発電事業であり、北米では初の案件となる。

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東京電力と中部電力が既存の火力発電事業等を統合して2015年4月に発足した JERAについては、下記の通り。


 2018/8/16 JERA、米国北東部での天然ガス火力発電事業への参画

 

米共和党の重鎮のJohn McCain III上院議員が8月25日、死去した。81歳だった。

地元のアリゾナ州で脳腫瘍の治療を続けていたが、24日に治療を打ち切っていた。

ベトナム戦争に空母艦載機のパイロットとして派遣され、1967年にハノイ上空で撃墜されて捕虜となった。約5年半にわたる捕虜生活で北ベトナム兵から激しい拷問を受け、腕が肩より上に上げられなくなる障害を負ったが、釈放されるまで虐待に屈せず、「英雄」として帰還した。

退役後は政界に転じ、1982年に下院選で当選した後、1986年から上院議員を務めた。移民制度改革法案を民主党議員と共同提出するなど、内政問題ではリベラル寄りの立場を示した。

2000年大統領選では共和党の指名候補争いでBush(子)元大統領に敗北。2008年の大統領選でObama前大統領に敗北した。

昨年7月に脳腫瘍と診断されてからも議員活動を続けたが、今年は議会には行かず、地元アリゾナ州で闘病を続けていた。


上院の議席は、共和党が51、民主党が47、無所属2で、与党 51:野党49であった。

マケイン議員の死亡で与党は50となるが、アリゾナ州知事(共和党)は後任に共和党員を任命すると思われ、体制は変わらない。

辞任や死亡により上院議員の欠員が発生した際には、選出州において補欠選挙を行い、欠けた議員の残りの任期を務める議員を選出する。
但し、補欠選挙の開催時期は州に任せられており、州議会は補欠選挙までの期間に置かれる臨時の議員を指名する権限を州政府に与えることができる。


上院では、数週間後に最高裁判事の指名承認が行われる。

2018/7/10 トランプ大統領、最高裁判事を指名

中国人民銀行(中央銀行)は8月24日遅く、銀行各行が人民元の中心レート設定において「反循環的」要因を再導入したことと明らかにした。

2017年5月末に変動の抑制、高値誘導のために導入したが、元急落や資金流出への懸念が薄らぎ、2018年1月初めに廃止していた。

しかし、6月頃から急落、最近では2017年1月の最安値に近づいている。

米国の中国からの輸入品への制裁関税に対応するため、中国政府が元安を支持してるのではとの推測も行われていた。

人民元の対ドルでの下落は、8月22~23日に米国で開いた米中の貿易問題を巡る事務レベル協議でも議題の1つになっていた。

米中の貿易摩擦に早期終結の兆しが見られない中、人民銀行が通貨を支える行動に出たことを示唆している。

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中国人民銀行(中央銀行)は2017年5月26日、人民元の対米ドル取引の基準値の決定に新たな手法を導入すると発表した。

新たに反循環的要因(counter-cyclical factor:中国語で「逆周期因子」)を勘案する。counter-cyclical factorとは変動抑制を意味し、前日の相場が大きく変動した場合でも、基準値の変動を緩やかに抑える仕組みとされる。

  「逆周期因子」:

前日の相場変動のうち、どれだけが実需による値動きかを算出する。実需に拠らない変動は除外する。

実需による値動きに「マイナス3分の2」をかけたものが激変緩和要素となる。

従来は実需の値動きをほぼそのまま反映させていたが、今後は実需の値動きの1/3だけを反映させる。

架空の例で、基準値6.70元/$に対し、実績が6.60元と、0.10元の元安となったとする。
従来なら、6.60元近くに設定していたが、今後は差の1/3だけを反映させ、6.733元とする。

2017/6/5   中国、人民元の中心レート設定方法を変更

2017/6/26  新しい人民元基準値の設定方法

中国人民銀行は2018年に入り、2017年から実施してきた人民元の高値誘導を緩和したことがわかった。元取引の基準となるレート「基準値」の算出法を修正し、元安に振れるのを抑制する特殊な操作を停止する。基準値の算出を事実上、以前の方法に戻す。
好調な輸出を背景に元急落や資金流出への懸念が薄らぎ、管理色が強いとの批判があった措置を見直した。

最近の急激な元安に対応し、再度、このシステムを復活させる。


日本発の自動車向け急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」の普及を担うチャデモ協議会は8月22日、中国の 規格「GB/T」を推進する中国電力企業連合会と新たな規格作りに乗り出すと発表した。8月28日に北京で覚書を結ぶ。


現在の日本の充電器は出力約150キロワット、中国は約50キロワットだが、2020年をめどに同一規格で最大900キロワットの充電器の開発を目指す。充電時間も現在の30~40分から、最短で10分以下に短縮される。 充電器と車をつなぐコネクターや充電を制御するソフトウエ
アなどの仕様を統一する。

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電気自動車は世界で普及が進み始めているが、急速充電器とクルマをつなぐ充電口の形状などの規格は、各国や地域で異なっている。

画像ソース http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1407/02/news014.html

日本の自動車メーカーや電力会社などが開発したCHAdeMO方式 の充電器は、国内や欧米で約18千台、中国が日本の技術をベースに開発したGB/Tは中国国内で約220千台設置されている。

これに対し、欧米のCombined Charging System(Combo、CCS) は約7千台設置されている。

Combined Charging Systemは、日本のCHAdeMOに対抗するものとして、2012年に米国とドイツの大手自動車メーカー8社(GM、Ford、Chrysler、BMW、Daimler、Volkswagen、Audi、Porsche)が規格作りを発表したもの。

普通充電と急速充電の両方を1個の充電コネクタでカバーすること、直流電力を使った充電にも対応するのが特徴。

なお、Teslaは独自の充電器Superchargerを使っているが、最新のModel S、Model X は中国市場向けにGB/T も使えるようにしている。

日本のCHAdeMO と中国のGB/Tは通信プロトコルにController Area Network(CAN) を使い、欧米はHomePlug Green PHY (HPGP) を使用している。

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日本と中国が同一の通信プロトコルを使っていることが、今回の共同規格作りにつながった。

業界団体と乗用車だけでなくバスやトラックに対応する高出力の規格を2020年に決める。日中で規格を統一すればシェアは9割を超え、電気自動車を充電する規格の国際標準になる可能性がある。

新規格が実用化するとトラックやバスなど車体が大きい商用車に使う大容量電池を容易に充電できるようになる。既にある日中のEV乗用車にも使え、複数の車両を同時に充電できる。電池の改良が進めば充電の時間も減らせる。

規格作りは中国側が主導してとりまとめる。日本側は充電器の技術やノウハウを提供する。2020年に新規格を策定し、中国側は対応した充電器を同年に設置したい考え。準備が整い次第、日本も導入する。

チャデモ協議会の事務局長は、「欧米勢が参加を望み、譲歩をするのであれば、枠組みに入っていただけることは歓迎だ」と述べている。




ADEKAは8月21日、日本農薬を子会社化すると発表した。 総額約250億円を投じ、TOBや第三者割当増資を通じて、持ち株比率を現在の24%から51%に引き上げる。

第三者割当増資 140億円
公開買付    108.5億円

ADEKA(旧社名 旭電化工業)は樹脂添加剤や情報・電子化学品、機能化学品や 、マーガリン類などの食品が主力事業で、新領域として再生医療などライフサイエンス分野に取り組んでおり、日本農薬が持つ合成技術が生かせると判断した。

ADEKAは現在、子会社分を合わせ日本農薬の株式の24.21%を所有し、持分法適用関連会社としている。

今回、日本農薬の第三者増資の引き受けと公開買い付けを組み合わせ、出資比率を51%とし、連結子会社とする。

なお、今後も日本農薬の社名で東証第一部への上場を維持する。

両社は以下の内容の業務提携を行う。

(ア) 研究開発領域の相互補完による開発スピードの向上
 1)ライフサイエンス分野の強化
 2)化合物データベースの活用

(イ) 生産技術・プロセス化学の相互活用による生産性の向上

(ウ) グローバル・ネットワークの相互活用による販売チャネルの拡大

(エ) 合成反応、分散技術、分析技術等の技術提供による高機能化合物の開発

(オ) 多分野の知見を有する研究員の交流


社は古河グループに属し、日本農薬はADEKA(旧社名 旭電化工業)の農業薬品部門であった。

旭電化は1915年に古河合名会社が中心となって設立し、電解法による苛性ソーダを製造した東京電化工業所が祖である。それまで輸入に頼っていたソーダ製品を国産化することが狙いである。

1917年に株式会社組織に改め、旭電化工業してスタート、1919年に水素利用による硬化油の製造を開始して、ソーダと油脂の二本柱による化学工業への展開を確立した。その後、マーガリンの製造で食品に進出し、現在、「化学品」と「食品」という2つのコアビジネスを基盤としている。

1920年代初頭に古河電気工業が、古河鉱山の銅精錬の副産物利用の研究を足掛かりに、農業用薬品の研究開発を行った。
この事業は旭電化で事業化された。

1928年に旭電化の農業薬品部門と藤井製薬が合併し、我が国初の農薬専業メーカー 日本農薬が誕生した。
現在では、
農薬以外の化学品分野(医薬品・医薬部外品・動物用医薬品等)において、豊富な品目ポートフォリオを構築している。

この経緯で、ADEKAは長年に亘って出資を行っており、役員派遣をはじめとする人材交流や、研究開発部門・生産部門における情報交換を実施する等、長年に亘って良好な関係を構築してきた。

朝日新聞は8月17日、「日立の英原発建設、米大手が外れる方向 建設費の高騰で」と報じた。

北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で、建設工事の中核から米建設大手 Bechtelが外れる方向になった。建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためで、原発建設のノウハウに乏しい日立には痛手となるとしている。

付記

日立は2019年1月17日、Horizon Projectを凍結すると発表した。民間企業としての経済合理性の観点から、判断したとしている。
減損損失等 約3000億円を計上する予定。

2017年11月には、東芝が、英国における原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、連結子会社のNewGeneration (NuGen)を解散すると発表している。

 2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

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日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON 及び RWE から、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を買収する契約を締結した。

2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2~3基)を建設する。

2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力 

日立は、まずAnglesey島 Wylfa Newydd 原発2基の建設に向け、約2000億円を投じて工事の準備を進めてきた。

Horizon Nuclear Powerは2016年5月、日立ニュークリア・エナジー・ヨーロッパとBechtelと日揮の3社が設立したコンソーシアム「Menter Newydd」(ウェールズ語で「新しいベンチャー」を意味)をEPC契約締結までのエンジニアリング業務を遂行するサプライヤーに指名した。

日立製作所は2017年6月8日、投資家向けイベントで、英国で進めている原発の新設計画について、「リスクを最小化するベストな体制を敷いている」と説明した。

出資比率 パートナーを募り、連結子会社から外せない場合は計画を中止する。
出資パートナー候補との本格交渉はこれから。 
採用技術 稼働実績が豊富な日立GEニュークリア・エナジー のABWR技術

GE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。 

建設リスク 最強のパートナーが一体感を持って取り組む

Bechtelと日揮と組み、工事遅延などで損失が発生する場合は個社の過失を問わず、事前に決めた割合で全社が責任を負う 。

2017/6/12 日立の英国の原発事業の戦略 

英政府は2018年6月4日、北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で日立製作所と基本合意に至ったと発表した。

これまでの交渉では、日立、日本政府・企業、英国政府・企業が3千億円ずつ出資、残り約2兆円を融資で賄まかなう案が検討されてきた。 融資には、日本から三菱UFJ銀行など3メガバンクと政府系の国際協力銀行が参加する予定で、従来は政府全額出資の日本貿易保険が融資を債務保証する計画だった。

2018年4月下旬に英国側は支援策の一環で、英政府が日英双方の銀行融資を全額債務保証する意向を日立側に示したという。日本政府が債務保証する場合に比べて日立の負担が直ちに減る。

2018/6/8  日立、英の原発計画で英政府と基本合意 

但し、日本側も英国側も出資の目途はたっていない。
また、完成した場合の電力の買い取り価格も決まっていない。これについては、英国政府は最近、
「RAB(Regulated Asset Base:規制資産基盤)」という新しいモデルを導入することにした。

2018/8/4 東芝の英国原発計画の現状 の文末

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Horizon Project は、福島第一原発の事故の後に世界的に強化された安全基準への対策費などがかさみ、総事業費は最大で3兆円程度になる見通しとされる。

関係者によると、ベクテルの建設費の見通しは日立より高く、工事の価格で折り合えなくなった。ベクテルは建設を直接担わず、コンサルティング(助言)事業として計画にかかわる方向になったという。

この結果、建設工事の中核で、建設リスクを分担する筈であったBechtel が、建設を直接担わず、助言のみの関与にとどまる方向になっている。

日立は海外の原発向けに発電用タービンなどの機器を納めた実績はあるが、原発を丸ごとつくる形の輸出は初めてで、工事の中核が消えることとなる。

現時点で中止すれば、最大で約2700億円の損失が生じる見通しで、他社からの出資の集まり具合などをもとに、着工の可否を決める。

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東芝は英国の原発事業の売却を交渉している。

参考 2018/8/4 東芝の英国原発計画の現状 

別途、三菱重工業とFramatome(旧社名Arevaとの折半出資の合弁会社ATMEAがトルコで新型原発 (Sinop原発:110万kW 4基)の開発を進めている。

2017/7/14 三菱重工業、フランスのアレバ原子炉事業に出資 後半部分参照

しかし、安全対策費を含む総事業費は当初計画の2倍を超える5兆円規模に達する見通しとなり、今後の交渉は難航することが予想される。

伊藤忠商事は 15%の出資を予定していたが、建設費高騰を受け、既に撤退を決めている。


政府は海外での原発計画をバックアップしているが、総倒れとなる可能性がある。


Tesla, Inc.のCEOのElon Muskがツイッターで株式非公開化の方針を公表した情報開示の手法をめぐり、米証券取引委員会(SEC)が同社に証言や書類提出を求める召喚状を送ったことが分かった。米メディアが8月16日に一斉に報じた。

Teslaの初の量産車「モデル3」の生産が遅れており、今年4~6月期の最終赤字が7億1750万ドルとなった。前年同期の3億3640万ドルの赤字の2倍で、7四半期連続赤字となった。
取引先の部品メーカーなどに、支払い済みの代金の一部を返還するよう求めたとされ、資金繰り不安も指摘されている。

Elon Musk CEO はNew York Times のインタビューで、「過去1年は、私のキャリアのなかで、最も困難で苦痛な1年だった」と語り、「耐えがたいほどだった」と心情を明かした。

初の量産車「モデル3」の生産が遅れ、CEOは市場からの厳しい批判にさらされてきた。多忙さとプレッシャーとが、本人を追い込んでいることがうかがえると報じられている。

付記

Tesla は8月24日、株式非公開化の計画を撤回すると発表した。

Elon Musk CEO は、株式非公開化について「当初予期していたよりもはるかに時間がかかり、混乱を招くことが明らかになった」と指摘。「モデル3を普及させ、収益を改善することに注力する上で問題になる」と撤回の理由を説明した。

情報開示の手法についてSECが調査を始めているほか、「資金は確保した」というCEOの投稿内容が虚偽であるなどとして、米国では一部の投資家が訴訟を始めている。


付記  2018/9/30 Tesla のMusk CEO、米SECと和解、制裁金支払・会長退任


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Elon Muskは、投資家から四半期決算など短い期間で好業績を出すように圧力がかかることを嫌っているとされるが、8月7日に突然ツイッターで「1株当たり420ドルでTeslaを非公開にできないか考えている。資金は確保した」と発信した。

Am considering taking Tesla private at $420. Funding secured.

株式市場は一時騒然としTesla株は前日比11%高となった。

仮に1株あたり420ドル(20%のプレミアムを乗せた価格)で既存株主から全株式を買い取るとすると、総額で700億ドル(7兆7000億円)の資金が必要になる。

これについては、Elon Muskは、安定株主には非公開化の後も、特別目的ファンドをつくるなどで、株を持ち続けて欲しいとしている。

同日のツイッター:

My hope is *all* current investors remain with Tesla even if we're private.
Would create special purpose fund enabling anyone to stay with Tesla. Already do this with Fidelity's SpaceX investment.
(彼の宇宙船開発会社 SpaceX :
Space Exploration Technologies Corp.は2015年にGoogleとFidelityから10億ドルの出資を受けている。)

Shareholders could either to sell at 420 or hold shares & go private.

Elon Muskは同日、Teslaの従業員に送付したメールを公表した。

最終決定はまだだが、Teslaがうまく機能する環境作りが目的である。公開会社では、株価の変動が激しく、従業員持ち株に影響を与える。また四半期報が必要なため、長期的には望ましくなくても、短期の利益を考えるようプレッシャーを与える。空売りで儲けようとする輩が多数生まれる。

全員が長期の視点で考えるのがよい。SpaceXが良い例で、非公開のため、非常にうまくいっている。

考えているのは下記の通り。

株主は非公開の後も株を持ち続けてもよいし、420ドルで売っても良い。
従業員は株を持ち続けてほしい。
SpaceX と Teslaの統合は考えていないが、SpaceXのシステムを採用したい。
SpaceXでは外部株主と従業員はほぼ6カ月ごとに株を売ったり買ったりする機会を与えられている。
自身は約20%を持っているが、この比率を変えることは考えていない。

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場企業のトップが重要な経営事項をツイッターで明らかにするのは異例で、SECは情報開示の経緯に関心を持っているとみられる。

「資金は確保した」との発言も、サウジの政府系ファンドとの交渉 での感触によるものであることが分かり、SECの調査では発言時点での情報の真偽も焦点となるとみられる。

なお、報道によると、サウジの政府系ファンド Public Investment Fund (PIF) は、これについて協議を行っており、同社株をさらに買い増すかや、その場合の規模について確定的な結論には至っていないものの、協議は続いているという。

PIFはTesla への投資を、サウジ経済の原油依存をヘッジするための戦略的手段の一つと見なしている。

 

Saudi Aramco は8月15日、取締役会がサウジと米国での石油化学計画を承認したと発表した。

1) サウジのTotal とのJV SATORP の精油所での石油化学計画

SATORPはフランスのTotal とのJV (Saudi Aramco 62.5%、Total 37.5%)で、Jubail に日産40万バレルのワールドクラスの製油所を建設(2014年の手直し増設で現在能力は44万バレル)、Arabian Heavy 原油を精製して、高品質の石油製品を製造する。世界でも最も効率のよい製油所の一つと見られている。

ディーゼルとジェット燃料の生産を最大化することを狙っており、これに加え、パラキシレン(年産70万トン)、ベンゼン(同14万トン)、ポリマーグレードプロピレン(同20万トン)を生産する。

当初は 25%分を公募し、両社は37.5%ずつとなる予定であったが、公募増資を取り止め、当初比率で倍額増資をしている。

2009/6/22 Saudi Aramco、製油所建設を再開

今回の石油化学計画は、4月10日にサウジ皇太子のパリ公式訪問中にAramcoとTotalが覚書を調印した。

精油所に隣接して、ワールドクラスの混合ガス(エタンが50%、製油所のオフガス が50%)スチームクラッカーを建設し、年産150万トンのエチレンを生産する。

投資額は約50億ドル程度で、両社は2018年第3四半期にfront-end engineering and design (FEED)を開始する。

エチレンは、第三者が建設する誘導品工場に供給する。これらの投資額は40億ドル程度を見込む。

 

2) 米国の製油所子会社 Motiva Enterprises での化学品製造計画

Motiva Enterprises は2002年以降、ShellとSaudi Aramco の50/50JVとして運営されてきたが、2016年3月に資産を分離する覚書を締結したと発表した。

AramcoはMotiva の社名と、Port Arthur, TXの製油所、26のガソリンターミナルを引き継いだ。

Aramco Shell
社名(Motiva)
製油所 Port Arthur, TX
(元 Texaco )
米国最大の精油所(60万バレル)
単一工場で米国最大の潤滑油プラントを持つ。
Norco, LA
(元 Shell)
能力 23.5万バレル
隣接してShellの石化コンプレックス
 エチレン 2系列 計 150万トン
 ブタジエン 26万トン

 Shell は1995年にPPプラントをUnion Carbide (Dow) に売却
 2000年にResinプラントを現在のMomentiveに売却
Convent, LA
(元 Texaco )
1967年にTexacoが建設
1979年に増設し、能力23万バレル
ガソリンターミナル 26 9

2016/3/25 Shell とAramco、米国のJVのMotivaを分離 

Aramco は本年4月、Honeywell UOP 及びTechnip FMC との間で、Port Arthur 製油所に建設を検討している化学プラントで使用する技術について研究するための覚書を締結した。


検討している化学プラントは次のとおり。

Port Arthur製油所の能力は603,000 b/d である。

まず、ガソリン生産の副産品であるベンゼンとパラキシレンを、Honeywell UOPの技術でエチレンの原料に変換する。

次に、これを原料に、Technip FMCの技術で年産200万トンのエチレンを生産する。

今回、Aramco取締役会はこのプロジェクトを検討することを承認した。

なお、Motivaでは現在、精製能力を現在の603,000 b/d から100万~150万 b/d に増やす検討を行っている。これが実施できれば、世界最大の精油所となる。

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Saudi Aramco は事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

Saudi Aramco は住友化学との石油化学 JVのPetro Rabigh を持つ。

2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ 

2018/1/10 PetroRabigh 第2期の完工間近 → 完工

Saudi Aramco はDowとのJVのSadara Chemical を設立し、2016年8月にクラッカーをスタートさせ、2016年11月30日に開業式を行っている。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定の付記

Saudi Aramco とSABICは共同で、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex ) 設立の検討を進めている。

2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude Oil-to-chemicals JVのMOU締結

サウジ政府はSaudi Aramco に対し、SABICのPIF所有分のほとんどor 全てを購入することを求めているという。
実現すれば、Saudi Aramcoは巨大な石油精製・石油化学企業となる。

2018/8/9 Saudi Aramco、SABICの株式購入と上場問題 

毎日新聞夕刊(2018/8/15)の「憂楽帳」は、「仁科博士」という題で下記の通り書いている。

物理学で我が国最高の栄誉である仁科記念賞に名を残す仁科芳雄博士(1890~1951年)。東京都文京区にある空襲を免れた執務室が再来年、建物の老朽化で取り壊される。(中略)

ここで、ノーベル賞学者の朝永振一郎氏ら物理学者はもちろん、長く日本医師会長を務めた武見太郎氏も教えを受けていた。死後も執務室が残ったのは、薫陶を受けた各界のリーダーが、博士の人柄や業績を知る大切な場所と考えたからだという。

約40平方メートルの室内に残る木製の机や棚、黒電話などは別の場所で保管される見通しだ。(後略)


写真は、Livedoor News 「知られていない日本の原爆開発。太平洋戦争中の極秘作戦「ニ号研究」の歴史」から


仁科博士の執務室は、文京区本駒込の旧理化学研究所の37号館の2階にある。(写真左下) (初めの場所が間違っており修正しました。)
現在は、日本アイソトープ協会のなかに仁科記念財団が保存している。 2階には3つの窓があったが、真ん中の窓は後に埋められた。左端が執務室。

財団法人理化学研究所は、1917年3月、我国の産業の発展に資することを目的に、皇室からの下賜金、政府からの補助金、民間からの寄付金を基に東京・文京区駒込 (現在の本駒込)の地に設立された。

残っていた⑥の43号館は数年前に解体され、賃貸マンションとなっている。

写真ソース  仁科博士とその時代 理化学研究所の歩みー駒込時代ー 


仁科博士の執務室は上図の右上⑤の37号館の2階にある。(下図ので囲った場所)

その左の⑦はサイクロトロン跡で、1937年に仁科博士がわが国初のサイクロトロン(26インチ 28トン)を作製したが、1945年に連合軍が原発開発とみなし、破壊、東京湾に投棄した。
ニューヨーク・タイムズは「米国の科学者らは...サイクロトロンは研究機器であって、原爆製造機械ではなく...この略奪行為に責任のある公務員は懲罰を受けるべきである」と報じた。

1958年10月に特殊法人理化学研究所が設立された。(2003年に独立行政法人理化学研究所になり、2015年に国立研究開発法人理化学研究所に変更した)

1966年に現在の和光地区に移転を開始した。1974年に移転を完了した。

駒込の跡地には科研製薬があったが、約20年前に文京グリーンコートとして再開発された。正面の緑が一部 残されている。


外国企業の対米投資を審査する米国の独立機関、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する条項を加えたJohn McCain 国防権限法(NDAA)案が8月13日成立した。


これまでのCFIUSの審査対象は、安全保障に係るものと大統領が判断した買収に限られた。

今回、米国企業の買収を狙いとする取引に限らず、合弁会社設立や、米国の重要な技術やインフラ、個人情報に関わる少額の出資なども審査の対象とする。米政府施設に近い土地取得など不動産取引も含める。

中国が対米投資を通じて技術やノウハウを盗み出し、軍事技術に流用するのを食いとめたい考えだが、審査は外資すべてを対象としており、中国企業だけでなく、日本企業にも影響が出そうだ。

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米国は外国からの米国内直接投資を歓迎するが、国家安全保障を保護するための例外を設けている。
CFIUSが審査を行い、投資内容が米安全保障にかかわるものと大統領が判断した場合には究極的には買収案件を拒否できる。

これまでの例:

2012/10/4  オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

2015/11/10 中国の三一重工、米国での風力発電買収阻止事件で米政府と和解、実質勝利

2016/12/7  米政府、中国企業による独社の米子会社買収を禁止

2017/9/18  

2018/3/14   米大統領、BroadcomによるQualcomm買収禁止命令

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中国のEコマース企業阿里巴巴集団(Alibaba Group)の金融関連子会社で、QRコードを使った非接触型決済サービスのAlipay を運営する螞蟻金融服務集団(Ant Financial)は2017年4月に国際的送金ネットワークのサービスを行う米国のMoneyGramを12億ドルで買収すると発表した。ライバルのEuronetに打ち勝ったもの。

この実現に向け、Alibabaの馬雲(Jack Ma)会長は就任直前のトランプ大統領と会談し、買収が成立すれば米国で100万人の雇用創出につながると訴えていた。

しかし、CFIUSから承認を得られず、2018年1月初めに断念した。

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ソフトバンクは2017年2月、世界的な規模で多角的にグローバル投資を行う世界有数の投資ファームのFortress Investment Groupを共同投資家とともに約33億米ドルで買収する契約を締結した。

この買収は2017年12月に完了したが、発表では、Fortressは現経営陣が独立して経営を行い、リーダーシップ、ビジネスモデル、ブランド、人材、プロセス、企業文化を維持していくとしている。

これについて、英Financial Timesは4月6日、CFIUSから投資会社の業務運営への関与に制限を受けていたと報じた。ソフトバンクは業務に影響を及ぼすことが制限され、Fortressの所有にとどまっているという。

ソフトバンクは、Alibaba Groupの筆頭株主である。

2016/12/7  ソフトバンク孫社長、米に500億ドル投資

トランプ大統領は鴻海精密工業が開いた米国新工場の着工式で、「マサさんに感謝したい」と話し、壇上に呼んだ。そんな孫社長の事業でも中国がからむと駄目なようだ。


米国は中国の
Made In China 2025計画を懸念している。 

Made In China 2025計画は、2025年までに世界の製造業大国となり、建国100周年の2049年までに製造強国の先頭グループになるという計画である。

Made In China 2025の概要は https://www.knak.jp/blog/2018-5-1.htm#us-china の文末参照

巨額の補助金で自国の企業を育てるとみられ、米国のIT企業などは、半導体などの基幹部品の自給で米企業が締め出されかねないとの懸念を持つ。

米国は交渉で中国2025の補助金の即時停止を求めたが、中国には事実上の計画停止を意味し、中国商務省の関係者は「絶対に受け入れられない」と憤る。

米政府は中国が技術やノウハウを盗み出すのを防ぐため、中国企業の対米投資を厳しく制限する方法を検討した。

トランプ大統領は6月27日、中国企業の対米投資の制限案について、米財務省などが管轄するCFIUSを活用する考えを示唆した。

現行のCFIUSによる審査は安全保障にかかわるものに限られるため、これを改正し、これまで抜け穴となっていた少額出資なども審査対象に加え、投資制限を強めるものである。

ーーー

今回成立したJohn McCain 国防権限法(NDAA)では、2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の国防予算は総額7160億ドルと、この9年間で最大規模に積み増した。
国防費の増強で中国やロシアに対抗する姿勢を鮮明にした。

米国では、議員が通したい法案を、重要法案に追加して合わせて通す慣習がある。

今回の国防権限法では、上記のCFIUSの権限強化条項は政府の要望で追加したものだが、中国に関連して、議員側の意向で追加した項目、追加しようとした項目がある。

米商務省は6月7日、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対する制裁の見直しで同社と合意したと発表、7月13日に制裁を解除した。

2018/6/8 米政府、中興通訊(ZTE)の事業再開認める

しかし、安全保障上の観点からZTEの制裁解除には米議会の反発が強い。 

米上院は6月18日、2019会計年度の国防権限法案を賛成85、反対10で可決した。トランプ大統領が求める軍の強化を後押しするものである。
しかし、上院はこの法案に、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対する制裁措置の緩和を認めず、米製品の販売を引き続き禁止する条項を盛り込んだ。

下院は既に5月24日に国防権限法案を通している。この時点では制裁見直しは行われておらず、法案にはZTE制裁措置の緩和を認めない条項はない。

上院と下院の法案をすり合わせ、一本化する必要があるが、米上院の与野党議員らは、トランプ政権の圧力に屈せず支持するよう下院議員らに呼び掛けた。圧力に屈すれば、経済と国防両面で米国の安全保障が損なわれ、ZTEが米国民に「スパイ行為」を働くことになると警告した。

2018/6/22 米上院、中興通訊(ZTE)に対する制裁の見直しに反対

その後、上下院が協議を進め、7月23日に一本化で合意した。

大統領は議会に法案からZTE に関する条項を外すよう要請、その結果、ZTEへの米製品の販売を引き続き禁止する条項は削除された。

その代わりに、安全保障上の懸念を理由に、米政府機関が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(Huawei Technologies)の技術を利用することを禁じる項目が盛り込まれた。

JERAは8月10日、Starwood Energy Groupが所有するMarcus Hook発電所(出力:79.0万kW)、Dighton発電所(出力:17.3万kW)、Milford発電所(出力:16.0万kW)の3つの発電所の事業権益を50%取得すると発表した。

各発電所で発電した電力は、主に米国北東部の電力市場(PJM、ISO-NE)に販売するとともに、Marcus Hook発電所については、配電会社と長期容量契約を締結し、それぞれの地域における電力の安定供給に貢献している。

権益取得後は、JERA Americasを通じて、運営会社 NatGas Holdings 2, LLC に50%出資し、発電所の事業運営に関与していく。

本事業への参画により、北米において、日系企業でトップクラスとなる約354万kW(持分出力)の発電所を保有することとなる。

同社の発電所は下記の通り。

Country Location Power Generation Output

JERA's Output Share

Power
Generation
Method
Start of
Operation
USA Marcus Hook Pennsylvania 790MW 395MW Combined-cycle 2004 2018/8
Starwood Energy Group
権益50%

Dighton Massachusetts 173MW 87MW Combined-cycle 1999
Milford Massachusetts 160MW 80MW Combined-cycle 1993
Linden New Jersey 972MW 486MW
Combined-cycle,
Gas turbine
Unit 1-5: 1992
Unit 6: 2002
2017/10
JERA 50%
Oaktree 25%、Ares 25%
Carroll County Ohio 702MW 140MW Combined-cycle 2018 中部電力から移管
Cricket Valley New York 1,100MW 420MW Combined-Cycle 2020 (Planned) 2017/1
JERA
Virginia Virginia 885MW 155MW Combined-Cycle 2004 Tenaska Gas Thermal IPP Project

中部電力から移管

Gateway Texas 845MW 94MW Combined-Cycle 2001
Kiowa Oklahoma 1,220MW 214MW Combined-Cycle 2003
Alabama II Alabama 885MW 155MW Combined-Cycle 2003
Georgia Georgia 945MW 165MW Gas turbine 2001, 2002
Canada Goreway Ontario 875MW 438MW Combined-Cycle 2009 中部電力 50%、豊田通商 50%
Mexico Valladolid Yucatan 525MW 260MW Combined-Cycle 2006 中部電力 50%、三井物産 50%
Saltillo Coahuila 248MW 49.6MW Combined-Cycle 2001 MT Falcon Holdings Company
JERA(20%)
三井物産(40%)
東京ガス(30%)
東北電力(10%)
Rio Bravo II Tamaulipas 495MW 99MW Combined-Cycle 2002
Rio Bravo III 495MW 99MW Combined-Cycle 2004
Rio Bravo IV 500MW 100MW Combined-Cycle 2005
Altamira II 495MW 99MW Combined-Cycle 2002
Total 12,310MW 3,536MW


米国の他の発電所については、下記に記載している。

2017/10/19 JERA、米のガス火力発電事業を拡大

カナダ:Goreway Gas Thermal IPP Project

中部電力と豊田通商が2009年9月に共同でSithe Global Powerが保有する本プロジェクトの出資権益100%のうち25%ずつを取得し、続いて2011年3月にSithe が保有する出資権益50%の25%ずつを追加取得、これにより、本プロジェクトは両社が50%ずつ出資する合弁事業となった。

2016年7月にJERAが中部電力から事業を承継した。

メキシコ:Valladolid ガス火力IPP事業

中部電力が、三井物産ならびにCalpine Corporation(米)と共同で2003年に事業会社に出資し、事業権益27.5%を取得、2006年4月には、中部電力および三井物産が各々50%ずつ出資する事業となった。2016年7月に中部電力から事業を承継した。

メキシコ:Falconガス火力IPP事業

2010年に三井物産(70%)と東京ガス(30%)がJVのMT Falcon を設立、事業会社群を買収、三井物産が持分の一部を中部電力、東北電力に譲渡した。
JERAは2016年7月に中部電力から事業を承継した。



カスピ海に面するロシアとイラン、アゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンの5カ国は8月12日、「カスピ海の法的地位に関する協定 Convention on the Legal Status of the Caspian Sea 」に署名した。

条文は http://en.kremlin.ru/supplement/5328

会議には、ロシアのプーチン大統領やイランのロハニ大統領のほか、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンの各首脳が出席した。

カスピ海は地下資源に恵まれ、領有権などをめぐって20年以上にわたり協議が難航していた。今回の決着の背景には、最近のイランと米国との関係悪化もあるとみられる。

議長国カザフスタンのナザルバエフ大統領は、協定は「カスピ海における憲法のようなもので、地域の安全と安定を保証する」と評価した。
プーチン大統領は「合意は価値あるものだ」と強調した。イランのロハニ師も「イランは貿易促進のために重要な役割を担う」と語った。

各国の沿岸15カイリ(約28キロ)を領海と定め、同25カイリを排他的な漁業水域と定めたほか、第三国の軍の活動を禁止した。地下資源の分割については隣国との協議で解決を目指すとしている。



カスピ海は当初はソ連とイランに囲まれていたが、1991年のソ連崩壊後、ロシアとイラン、アゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンに囲まれることとなり、1996年に領有権問題などを解決する協議が始まった。

カスピ海は世界最大の湖であるが、湖と海では資源配分などをめぐる法的な枠組みが異なる。

イランは最も沿岸線が短いため、「湖」として5カ国等分の権利を求めた。
他方、ソ連の構成国だった4カ国は「海」として沿岸線に応じた領海設定を主張してきた。

海の場合は「海洋法に関する国際連合条約」が適用され、他国もその資源にアクセスすることが可能で、軍艦も含め航行の自由が保証される。

今回、「海」とも「湖」とも定義せず、「特別な法的地位」に位置づけた。

各国の沿岸15カイリ(約28キロ)を領海と定め(Article 7)、同25カイリを排他的な漁業水域と定め(Article 9)、4カ国の主張に沿った形になった。
他方、「海」の場合に保障される航行の自由を認めないこととした。
 Article 3  6) Non-presence in the Caspian Sea of armed forces not belonging to the Parties

イランでは、政府がカスピ海を「売り払った」と非難する声が上がったが、あらゆる武力のカスピ海への設置を沿岸5カ国以外に禁じる条項を協定に盛り込め 、米艦船の排除に成功したたことで、政治的な利益を得た。

ロシア外務省高官は「カスピ海は内陸にあるが、湖とするには巨大だ」と話した。

カスピ海の海底には、500億バレル相当の石油と8兆4000億立方メートル近くの天然ガスが眠っていると推定されている。
海底資源の所有権については、国際法に基づいて当事国同士の合意で確定することとした。(Article 8)
イランやアゼルバイジャン、トルクメニスタンには油田やガス田の帰属をめぐる争いがあり、完全決着にはさらに時間がかかる可能性もある。

パイプライン設置も当事国同士の合意で認めると定めた(Article 14)。
カスピ海の法的地位をめぐる不一致は、トルクメニスタンとアゼルバイジャンを結ぶ天然ガス・パイプラインの敷設を妨害してきたが、今後、トルクメニスタンやカザフスタン産の天然ガスをカスピ海経由でアゼルバイジャンまで運び、さらに欧州まで輸送する計画の進展につながりそうだ。

カスピ海には様々な種類のチョウザメが生息している。 世界を流通するキャビアの80~90%がカスピ海産だが、ここ数十年で生産量が減少している。
カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、今回の合意で漁業に関する各国の割り当てが可能になったと話した。



東京電力と中部電力のJVのJERAは8月7日、Abu Dhabi Gas Liquefaction Company Limited(ADNOC LNG)とのLNG長期購入契約の更新で基本合意に至ったと発表した。

前身の東京電力は1977年から長期契約でLNGを購入しており、その契約が2019年3月で終了する。このたび、新しい契約で基本合意した。

現契約は25年契約で、年間数量430万トンであるが、今回の契約では3年間で年間最大50万トンと大幅減となっている。

契約期間 期間 年間数量 条件
当初契約(東電) 1977年~1994年 17年 430万トン DES   仕向け地変更不可
更新契約(東電) 1994年~2019年 25年
今回契約(JERA) 2019年~2022年 3年 50万トン DES 仕向け地変更可 (?)


停止中の原発が再稼働すればLNG火力の稼働率は下がるが、原発再稼働の見通しが不透明なため、今回の契約では売買期間を3年に大幅短縮 した。

今後、LNGを安定調達するため、(1)柔軟な取引条件の獲得(2)スポット取引による調達拡大――などにより、最適なLNG調達ポートフォリオの構築によって、事業環境の変化への柔軟な対応と、競争力ある調達に努める。

今回の契約もDES(本船持込渡し)でLNGの運搬船はアビダビ側が用意するが、仕向け地を変更できる柔軟な取引条件で合意した模様で、次の通り述べている。

本契約は、2017年6月に公正取引委員会が公表した液化天然ガスの取引実態に関する報告書に沿った内容となっております。これは、LNG需要変動への対応に貢献するだけでなく、結果として、当社のLNG運用の最適化にも資するものです。

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公取委は2017年6月28日、液化天然ガスの取引実態に関する調査の発表を行った。

競争政策上の考え方 として、仕向け地制限 を問題としている。

米国のシェールガスからのLNGはFOB契約で、他社への転売は自由であるが、これまでの長期契約は全て仕向け地制限がついており、発電所の操業上、余剰となっても転売できない仕組みとなっている。

FOB契約 DES契約
仕向け地条項 拘束条件付取引として問題 不可欠
変更制限 同上 必要性・合理性あるのに拒否は拘束条件付取引となる恐れ
競争制限的条件は拘束条件付取引となる恐れ

2017/7/7 公取委、LNGの取引実態調査

今回の契約更改で、米国以外のLNG長期購入契約で初めて仕向け地変更が可能になった模様。

なお、下記のとおり、JERAは米国のFreeport LNGとの間で長期契約を締結している。

ーーー

JERAのADNOC LNG以外のLNG長期契約は次の通り。

LNG能力 生産開始 権益比率 LNG購入契約
豪州 イクシスLNG 890万トン 2018年 0.735% 年間 154万トン
Wheatstone LNG 890万トン 2017年 下記 権益分 70万トン(20年間)
東京電力:他株主より 350万トン(20年間)
中部電力:他株主より 100万トン(20年間)
Darwin LNG 371万トン 2006年 6.13% 東京電力 200万トン(17年間)
(東京ガスは100万トン)
Gorgon LNG 1560万トン 2016年 0.417% 年間 144万トン (25年)
USA Freeport LNG 464万トンx3 (大阪ガス 10%) 中部電力 220万トン
(大阪ガスも220万トン)


Wheatstone LNG

ガス田鉱区 LNG
Chevron 80.17% 64.136%
PE Wheatstone
(右図)
10% 8%
KUFPEC
(Kuwait Petroleum)
8% 13.4%
九州電力 1.83% 1.464%
Woodside 13%
合計 100% 100%
九州電力は、権益分として13万トン、他株主より70万トンのLNGを購入。


Darwin LNG

昭和電工が8月8日に発表した中間決算は、当期損益が前期比 7.4倍の大増益となった。

年間では、営業損益 1700億円、当期損益 1150億円を予想する。

単位:百万円 (配当:円)
売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
17/6中間 3,722 350 222 78 0
18/6中間 4,558 781 778 581 20
増減 837 431 556 503 20
16/12 6,712 421 387 123 0 30
17/12 7,804 778 640 335 0 50
18/12 9,850 1,700 1,670 1,150 20 70

  

営業損益は下記の通りで、無機セグメントが前期1億円の黒字が583億円となり、年間では1180億円を予想する。
黒鉛電極の市況が急上昇したこと、
2017年10月2日付でドイツのSGL GE SHOWA DENKO CARBON と改称)を買収 し、同事業の規模が倍増したことが貢献した。

無機セグメントには他に、セラミックス(アルミナ、研削研磨材)、ファインセラミックスがある。アルミナについては、インドネシアから撤退した。

営業損益推移(億円)

15/12 16/12 17/12 17/6 18/6

増減

18/12予
増減 内訳
石油化学 105 207 334 162 74 -87 数量差  -27
価格差  533
cost down 36
その他 -111
200
化学品 107 138 165 69 78 9 180
エレクトロニクス 175 139 219 121 56 -65 150
無機 -12 -58 71 1 583 582 1,180
アルミニウム 26 44 67 32 27 -6 60
その他 13 18 6 1 13 12 30
全社 -79 -68 -84 -36 -50 -14 -100
合計 335 421 778 350 781 431 431 1,700

同業で、昭和電工のSGL買収に当たり、米国司法省の指示でSGLの米国事業の譲渡を受けた東海カーボンの営業損益も同様に急増している。

2018/6の黒鉛電極の営業利益は前年比で208億円増えているが、そのうち、数量差は50億円、マージン差は158億円となっている。

ーーー

昭和電工は2016年10月、ドイツのSGL Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbH買収すると発表した。

ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。
(事業価値を350百万ユーロとしたが、後述の通り、米司法省の指示で米国工場を東海カーボンに129億円で売却し、昭電の買収価額を156億円とした。)

他方、昭電は、大町、 米国South Carolina(Showa Denko Carbon)、中国四川(四川昭钢炭素)に製造拠点を持つ。

黒鉛電極は、電気炉による製鋼でスクラップを溶かして鉄へリサイクルするときに、導電体としてなくてはならない中心的素材で、約1600℃の高温になってスクラップを溶かす。
鉄1トンをつくるのに2キログラム弱の黒鉛電極を使う。

コールタールを原料として製造されるニードルコークスとピッチを捏合したのちに成形する。

この時点では、 同社では、世界の鉄鋼需要について今後も年率1%程度の低成長が続くと予想され、需要の低迷と競争の激化 で価格が低下し、厳しい事業環境が継続すると見ていた。

上記の通り、2015年12月期、2016年12月期で、黒鉛電極の属する無機部門は営業利益が赤字である。

東洋経済(2016/10/26)は「昭和電工、黒鉛電極で『逆張り買収』の勝算」と題する記事を書いている。

この黒鉛電極の産業は近年厳しい事業環境にあり、大手から下位まで軒並み赤字に陥っている。高炉を中心とする中国鉄鋼メーカーの過剰生産で、電炉の操業度が世界的に低下し、消耗品である黒鉛電極の需要も細っているからだ。需給の悪化により、足元の黒鉛電極の販売価格は5年前の半値程度にまで落ち込んでいる。

こうした中、最大手の米GTIは業績不振で投資ファンドの傘下に入った。また、独SGLグループは昨年、利益が出なくなった黒鉛電極を非コア事業に格下げし、本体から分社化。事業の将来性に見切りをつけ、複数の企業と売却に向けた交渉を進めていた。

SGLから事業を買い取る昭和電工にしても、黒鉛電極の赤字は経営の大きな重荷となっている。同製品を柱とする無機部門はかつて200億円規模の利益を稼ぐほどだったが、2013年に赤字転落して以降、前期まで3年連続で赤字を計上。今2016年12月期は出荷数量、販売価格とも一段と落ち込み、部門赤字が50億円超(前期赤字額は12億円)にまで膨らむ見通しだ。

にもかかわらず、その赤字事業で買収に踏み切るのはなぜかーー。会見した市川秀夫社長によると、今回の買収は必ずしも規模拡大を目的としたものではなく、一番の狙いは「再編による徹底的なコスト削減」にある。

昭和電工が日本と米国、中国の3工場で黒鉛電極を生産しているのに対し、SGL GEは欧州や米国、豪州など5カ国で計6工場を操業している。昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算しており、2019年での事業黒字化を目指すという。

赤字事業での買収だけにリスクは否めないが、市川社長は「全社が赤字になっているような異常な状況は長く続かない。少なくとも、市況がこれ以上悪くなる事態は考えにくく、統合効果で黒字化は十分可能」と事業の建て直しに自信を見せた。

不振が続く黒鉛電極事業での生き残りに向け、買収という逆張り戦略に打って出た昭和電工。果たして、その経営判断は吉と出るのかーー。逆張り戦略の成否に注目が集まる。

昭和電工は、手続きを進め、201710月に買収を完了して完全子会社化SHOWA DENKO CARBON Holding GmbHと改称した。

この過程で、米国司法省からSGLの米国事業を東海カーボンに譲渡するという付帯条件が付いたため、2017年11月に129億円で売却した。


昭和電工にとって幸運なことに、買収完了の頃から状況が一変した。

中国には地条鋼という違法鉄鋼が流通していた。

鉄スクラップなどを中周波誘導電気炉と呼ばれる電炉で溶かして製造した、成分や品質の安定しない、環境にも悪影響を与える粗悪な鉄鋼・鋼材で、地条鋼の生産能力は2015年末時点で1億トン程度とされ(違法なため統計には含まれない)、これは日本の粗鋼生産能力とほぼ同じである。

中国の2015年末の粗鋼生産能力は11.3億トン、生産は8億トンで、3億トン超が過剰生産能力のため、中国政府は2016年以降の3年~5年で1.4億トンの削減する計画をたてた。

この枠外にある違法な地条鋼については、政府は2017年6月末までに全て閉鎖することを決めた。

その結果、それまで安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。

さらに、EVに使用されるリチウムイオン電池の負極材としてニードルコークスが使用され始めたことも、ニードルコークスの需給逼迫に追い打ちをかけた。

原料のニードルコークスの価格急騰もあり、黒鉛電極の価格も急騰した。

2016年に3000ドル程度まで下がっていた国際価格は2018年には10,000ドル前後まで上がっている。

この結果、昭和電工の2018年の無機部門の営業損益は、前年比で1000億円強増加し、SGL GE の買収価額156億円は、あっという間に回収した。東海カーボンも同様である。

東洋経済のいう逆張り戦略は完全に吉と出た。昭電としては、こんな変化を予想していなかったため、笑いが止まらないだろうし、昭和電工の買収を助けるためSGLの米国事業を129億円で買収した東海カーボンも同様である。逆に、SGL Carnbon GmbH としては低価格での売却に株主から批判が出ているかも知れない。

短期間でのこんな大きな変化は考えられない。

但し、こんな状況はいつまでも続くとは思えない。

中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産する計画があるほか、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和する見通しで、価格も元に戻る可能性がある。


オランダのHeinekenは8月3日、
雪花ビールで知られる中国最大手の華潤ビール(China Resources Beer)と資本業務提携すると発表した。競争が激しい中国市場で事業拡大を目指す。

Heinekenが華潤ビールの親会社にあたる華潤集団の株式40%を約243億香港ドル(約3500億円)で取得する。


他方、華潤集団に6割出資する華潤創業がHeinekenに42億香港ドルを出資(出資比率 0.9%) するとともに、Heinekenの中国事業を23億香港ドルで買収する。

2社は中国事業を統合し、Heinekenは華潤に対し中国本土、香港、マカオでの独占的なブランド使用を認める。

中国では非常に高い酒か、非常に安い酒が売れるとされる。

華潤の雪花ビールは世界で最も多く売られているビールで、華潤ビールのシェアは26%に達するが、安価なビールのイメージが強く、利益率は低く、伸びも小さいとされる。
このため、海外ブランドと提携を模索していた。華潤ビールのCEOは「中国の高級ビール市場の開拓は避けて通れない」と強調した。

雪花ビールは華潤創業が51%、SABMillerが49%の合弁会社が生産していたが、Anheuser-Busch InBevがSABMillerの買収を決めたことから、中国政府の指導を受け、SABMillerが持分を華潤に譲渡した。

2016/3/5 SABMiller、華潤雪花ビールを売却 

Heinekenは中国で苦戦しており、同社の中国でのシェアは0.5%に過ぎない。華潤との提携を足がかりに、華潤の流通ルートを利用し、中国市場の攻略をめざす。
同社のCEOは、「成長する高級ビール市場で勝利するコンビネーションとなる」との声明を出した。


あるコンサルタントはこの提携を「弱者連合」とみている。
中国ではプレミアム化が進み、富裕層は
マイクロブルワリーやスペシャルビールを好む傾向があり、HeinekenやCorona やCarlsbergなどは好まれない。これからも大変だろうと見ている。

ーーー

アサヒグループホールディングスは2017年12月20日、保有する青島ビール株式19.99%の全てを中国複合企業、復星集団(Fosun International)などに売却する契約を結んだ。

ベルギーのビール会社 InBev によるAnheuser Busch 買収に際し、中国商務部は「青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない」等の条件を付け た。このため、アサヒビールは2009年1月、統合した Anheuser-Busch InBev SA が保有する青島ビールの株式の一部、約19.99%を約6億6,650万米ドルで取得する契約に調印した。

これを全て売却するもの。

同社は、SABMiller の西欧事業、中東欧事業を取得するなど、国際事業の成長エンジン化を推進するとともに、資産効率を重視した事業ポートフォリオの再構築に取り組んでおり、中国のビール事業への投資を再検討した結果、青島ビールの持ち株の売却の検討をしていた。

2017/10/20 アサヒビール、青島ビールの持ち株を売却へ

 


マレーシアの民間医療企業IHH Healthcareがインドの同業のFortis Healthcare の買収を進めているが、これについて、第一三共がデリー高等裁判所に差し止めを求める訴えを起こした。

第一三共は、元のRanbaxy Laboratoriesの株主であるMalvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟に損害賠償金350億ルピー(550百万ドル)の債権を持つが、兄弟はこれを支払っていない。
兄弟は昨年、裁判所に対し、200億ルピー相当のFortis Healthcare の株を持っており、支払いに問題はないと証言している。

第一三共としては、損害賠償金の支払いの前にFortis Healthcare の株式を売却されては困るため、買収そのものの差し止めを求めたもの。

ーーー

IHH Healthcare Berhad は、マレーシアに本部を置くアジア最大の民間医療企業で、アジア、中東欧・中東・北アフリカ地域での病院経営、運営受託、及び医科系教育機関経営等のヘルスケア関連事業を行っている。シンガポール、ブルネイ、中国、香港、マケドニア、マレーシア、インド、イラク、トルコ、ベトナム、UAEにおいて民間病院を運営し、25,000以上を雇用している。

当初はマレーシアの政府系投資会社のKhazanah Nasional Berhad が全額出資していたが、三井物産が2011年に総額924億円を投じ、30%を取得した。

その後、上場し、2016年9月時点では三井物産は20.1%を出資していたが、9月27日 に一部をCiti Group に売却、現在の出資は18.1%となっている。

付記

三井物産は11月29日、IHH Healthcare Berhad の株式16%を取得する契約を締結したと発表した。これにより32.9%保有の筆頭株主となる。


インドのFortis Healthcareは、第一三共が2008年に買収した製薬大手
Ranbaxy Laboratoriesの創業者一族であるMalvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟が経営している(していた?)インド国内最大手の医療チェーンである。

2001年にデリーで創業し、インドのほかシンガポール、ドバイ、モーリシャス、スリランカで運営する医療施設は65施設にのぼり、ベッド数は10,000床を超える。今後は人口50万人規模の地方都市を中心に低価格の医療を提供する25の医療施設を新たに建設するとしている。

インドのManipal Health Enterprisesが米国の投資会社TPG Capital の支援を受け、Fortis Healthcareの買収を提案、両社を統合する考えを示した。

これに対抗し、Fortis Healthcareの取締役会はIHH Healthcareを選んだ。

IHH Healthcareはまず、7月13日に株式の31.1%の買収を行い、これを基に追加26%分の公開買付を9月7日から9月24日まで行い、合計57.1%を取得する。
更に、
Fortis Healthcareの上場子会社である Fortis Malar Hospitalの株式26%の公開買付も行う。

ーーー

第一三共は2016年5月6日、2008年にRanbaxy Laboratoriesの株式を第一三共に譲渡した元株主Malvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟を相手としたシンガポールでの国際商業会議所国際仲裁裁判所の仲裁判断を発表した。

4月29日付の仲裁判断は下記の通り。

元株主は第一三共に下記の金額を支払う。

損害賠償金 25,627.8 百万インドルピー 41,004百万円
損害遅延金 8,510.7百万インドルピー 13,617百万円
弁護士費用 14,549.7千米ドル 1,557百万円
仲裁費用 599.3千米ドル 64百万円
合計 56,242百万円

しかし、Malvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟が支払わないため、第一三共は訴訟に持ち込んだ。

Delhi High Courtは2018年1月31日、兄弟に35 billion rupees ($550 million) の支払いを命じた。

2016/5/10 第一三共、Ranbaxy Laboratories の元株主を相手とする仲裁裁判所の判断を発表 

上述の通り、 兄弟は裁判所に対し、200億ルピー相当のFortis Healthcare の株を持っており、支払いに問題はないと証言している。

ーーー

デリー高等裁判所は8月1日、兄弟に出頭を命じた。賠償金の支払いは問題ないとした兄弟の証言を確認するのが目的。

裁判官は兄弟の弁護士に対し、賠償金を支払う金がなければ、破産となり、牢獄に行くことになると伝えた。

実際には、兄弟の持ち株はもっと少ないとの話や、これまで明らかにしていない不動産をこっそり売却しようとしているなどの噂があり、裁判官は兄弟に不信感を抱いている。

Fortis Healthcareは、現在は兄弟とは何の関係もないとしている。

現在のところ、第一三共が求めた買収の差し止めについては命令がでておらず、Fortis Healthcareは8月13日の臨時株主総会に公開買付の件を諮る。

Saudi Aramco は7月19日、同社がSABICの経営権取得に興味を示しているとの報道に対し声明を発表した。

同社は事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

これに伴い多くの買収や株式取得などの可能性を国内、海外で検討しおり、その一環としてサウジアラビアの政府系ファンドである Public Investment Fund (PIF)との間で、同ファンドが保有するSABIC株の取得について、きわめて初期段階の交渉を持っていることを認める。

交渉が初期段階にあるため、今後株式取得が具体化しない可能性もある。
またSABICの公開株を取得する考えはない。

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Saudi Aramco とSABICは共同で、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex ) 設立の検討を進めている。

2017/11/30 Saudi AramcoとSABIC、Crude Oil-to-chemicals JVのMOU締結


SABICの株の評価額は1040億ドルで、このうち70%をPIFが所有しており、残り30%はTadawul (Saudi Stock Exchange ) に上場されている。

ここにきて、Saudi AramcoがSABICの政府持分(70%)全てを買収するのではとの情報が流れている。

サウジ政府がSaudi Aramco に対し、国内及び海外での社債発行と銀行借り入れで資金を調達し、SABICのPIF所有分のほとんどor 全てを購入することを求めているという。
70%全てを購入すると、PIFは約700億ドルを入手することとなる。

Saudi Aramco は株式の5%を内外市場で公開し、1000億ドルの資金を調達する予定だが、遅れている。

このため、SABICの持ち株売却で700億ドルを入手し、つなぎとするのではと見られている。

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ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はサウジ経済の改革も担当している。

サウジアラビアの公的投資基金 (PIF) は1971年の設立以来、サウジ財務省が管轄し 、石油精製、肥料、石油化学、電力などの大事なプロジェクトのファイナンスを担ってきたが、2015年3月からは、新皇太子が率いるCouncil of Economic and Development Affairs (CEDA) へ移管され、皇太子はPIF のチェアマンを務める。

2016年3月に、Saudi Aramcoの所有権が政府から PIFに移管された。SABICの70%もPIFが所有する。

CEDA は、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を作成、サウジ政府は2016年4月25日、国王主宰の閣議でこれを承認した。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。

公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。

目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。

2017/6/29 サウジ、副皇太子が皇太子に昇格、副首相に就任、国防相などのポストは継続

サウジアラビア政府は2018年1月1日付で、国営石油企業 Saudi Aramcoの企業形態を、年内の部分上場に備え、株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。
これにより、サウジ政府以外の投資家がAramco の株主になることができる。

世界最大の石油企業である同社は2018年下半期に株式の5%を内外市場で公開する予定 であった。
同社の時価総額は2兆米ドルに達する可能性があり、5%の売却で1000億ドルの資金を調達出来る可能性がある。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

しかし、サウジアラビアはSaudiAramco の新規株式公開(IPO)を巡る積極姿勢を後退させている。

海外市場での上場で、訴訟を巡るリスクがあることや、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出ることが障害となっている。

当面、海外での上場をやめ、サウジ証券取引所(Tadawul)のみで上場する方向で進んでいる。年内とされていたが、2019年4月になると報道されている。

2018/5/4 SaudiAramcoの上場問題 


上場による資金調達の遅れが
「ビジョン2030」の遂行の支障となることを懸念し、SABICの売却を考えたのではないかとされる。

PIF子会社のSaudi Arabia が借入(社債発行と銀行借り入れ)で同じPIF子会社のSABICの株式を購入するため、実質的にはPIFが借り入れをするのと同じことではある。

トランプ米政権は8月2日、オバマ前政権下で定められた自動車の燃費基準を撤回すると発表した。
カリフォルニア州などが独自に定めていた燃費規制も廃止に向けた交渉を始める。

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米国では、2011年1月に、2016 Model Year の Light-duty vehicleのCO2排出量を250g/mile、CAFE燃費を35.5 mpg(15.1km/L)とする規制が発効した。

オバマ政権は2012年8月28日、54.5 mpg の燃費規制を正式に発表した。

Combined Cars & Trucks 燃費 mpg

2011/1規制

2012 2013 2014 2015 2016
30.1 31.1 32.2 33.8 35.5

2012/8規制

2020 2021 2022 2023 2024 2025
40.0 41.7 46.8 49.4 52.0 54.5

なお、Clean Air ActによりEPAは米国の燃費の基準を決めるが、カリフォルニア州はEPAにより適用除外(waiver)が認められており、連邦政府の燃費規制よりも厳しい基準をを決める権限を与えられている。

また、カリフォルニア州など約10州は、販売台数の一定比率を電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など排出ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)にしなければならないとする「ゼロエミッション車(ZEV)規制」を採用している。

カリフォルニア州では、これまでは州内の販売台数が年産6万台以上のメーカーが対象であるが、2017年からは2万台以上が対象となった。これにより、 これまでのGM、フォード、クライスラー、トヨタ、日産、ホンダの6社に加えVW、メルセデス、BMW、ヒュンダイ・キア、マツダ、スバルが規制対象にな った。

米国の自動車業界は、連邦政府と州政府の「二重基準」の達成に苦しみ、見直しを求めていた。

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米 EPAと米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は8月2日、2021年以降の基準値を撤回し、新しい基準値を策定すると提案した。
一定割合のEVなどの販売を義務付けるカリフォルニア州等の「ゼロエミッション車(ZEV)規制」なども廃止を求めて各州と協議に入る。

カリフォルニア州のブラウン知事は、「トランプ氏の行いは裏切りで、米国人の健康を脅かす」と述べ、燃費規制緩和の方針に反対する声明を出した。
同州に同調する他州とともに、あらゆる法的手段を使ってトランプ政権と争う考えも示した。

連邦政府と州政府が法廷で争う形になった場合、同様の規制を課すニューヨーク州なども同調する見通しで、問題が長期化する可能性もある。

 

中国人民銀行(中央銀行)は8月3日、人民元相場の安定化に向け、市中銀行に義務付ける為替フォワード取引の準備金要件を週明け6日から20%に引き上げる方針を発表した。

これは、前回元安が進んでいた2015年8月31日付で中国人民銀行が交付した『外貨予約マクロプルーデンス管理の強化に関する通達』に基づくものである。

外国為替市場におけるドル買い元売りの強い元安圧力を緩和する狙いから、顧客向けに外貨予約(外貨買い人民元売り予約)を取り扱う金融機関に対し、2015年10月15日より中国人民銀行に外貨リスク準備金を預け入れるよう求めた。

外貨リスク準備金率は20%で、専用口座で金利ゼロで 1年間凍結される。このため、外貨リスク準備金の預入は、外貨予約取扱に係るコストの上昇に直結する。

中国人民銀行は2017年夏に元高基調に戻ったのを受け、2017年9月11日以降、元の為替フォワードのポジションを決済する金融機関に適用する所要準備をゼロとし、事実上撤廃していた。

今回、元安の進行を受け、8月6日以降、所要準備を 0%から 20%に引き上げる。

米中貿易摩擦がエスカレートする中、オンショア人民元が対ドルで14カ月ぶり安値を更新していたことが背景にある。

投資家の元売りコストを増やして元急落を抑制するもので、直接的な元買い・ドル売り介入ではないため、効果は未知数である。
(前回も、2015年10月15日の施行以降、2016年末まで急下降が続いた。)


日産自動車は8月3日、 日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision Group
遠景能源集団) に譲渡する契約を締結したと発表した。

売却するのは、日産とNECのJVのAutomotive Energy Supply Corporation AESC)や北米日産が保有するSmyrnaのバッテリー生産事業、英国日産が保有するSunderlandのバッテリー生産事業及び日産の追浜や厚木、座間にあるバッテリーの開発や生産技術部門

NECも同日、同社のNECエナジーデバイスの全株をEnvision Groupに譲渡するとともに、同社及びNECエナジーデバイスが所有するAESCの持ち株を、Envision Groupに譲渡する目的で、日産自動車に譲渡すると発表した。NECエナジーデバイスはバッテリーおよび電極の開発・製造を行っており、AESCに電極を供給している。

売却は2019年3月29日までに完了する見込みで、日産自動車はEnvision Groupが本買収で設立する新会社の株式の25%を保有する。

日産自動車は売却額は公表していない。NECは、NECエナジーデバイス の株式譲渡で約100億円の営業利益、AESC株式譲渡により約100億円の営業外利益を計上する。

Envisonへの経営権移転後も、AESCならびに追浜、厚木、座間にあるバッテリーの開発や生産技術部門、さらに米国Smyrnaと英国Sunderlandバッテリー生産工場に勤務する全従業員は引き続き雇用され る。
また、新会社の本社および開発拠点は引き続き日本に置かれる。

日産自動車は電気自動車への進出に当たり、車載用電池の供給メーカーが限られていたため、2007年にNECとのJVでAESCを設立したが、現在では外部調達に切り替えた方が有利と判断した。
今後は、電気自動車の更なる開発と生産に集中する。

付記

エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は2019年4月1日、同日付で事業を開始したと発表した。
中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団) が80%、日産自動車が20%を出資する。

日産が売却したオートモーティブエナジーサプライ(AESC、同市)を前身とする新会社エンビジョンAESCジャパン、日産がエンビジョングループに譲渡した米英のバッテリー会社や、NECが同グループに売却した電池の電極を製造するNECエナジーデバイスも加わる。

新会社は車載電池のシェアで韓国LG化学(10%)に次ぐ、世界5位のシェア6%を持つ見込み。中国に新工場をつくり、2020年末に稼働させる。

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日産自動車は2017年8月8日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表した。

売却対象のAESCに共同出資するNECも、自社及び子会社のNECエナジーデバイスが所有するAESC 株式を日産に売却したこと、及びNECエナジーデバイスをGSR Capital に譲渡する交渉を行っていることを発表した。 (その後、譲渡契約を締結した。)

2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡

当初は2017年末に取引完了の予定であったが、3回延期したうえで設定した売却完了予定の2018年6月29日に、GSRから「買収に必要な資金が不足している」との連絡があり、両社は、GSR Capitalへの売却を中止した。売却額は非公表だが1000億円前後とみられていた。

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遠景能源は、Lei Zhang(張磊)が2007年に設立した。

再生エネルギーを中心とするスマートエネルギーの管理会社で、中国の最大手の風力発電システムメーカー5社のうちの1社。
中核事業には、スマート風力タービンの設計・製造、スマートエネルギーソフトウエア・サービス、診断・技術サービス、総合プロジェクト管理サービスが含まれる。中国のほか、デンマーク、米国、英国、日本に拠点を持つ。

中国国務院関税税則委員会は8月3日、米国からの輸入品に対する第3弾の関税上乗せ策を実施することを発表した。

    http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201808/t20180803_2980950.html

付記 

米通商代表部(USTR)は、中国の知的財産侵害に対する第一弾500億ドルの制裁関税の残り160億ドル(25%)を8月23日に発動すると発表した。

集積回路などの半導体関連や電子部品、プラスチック・ゴム製品、鉄道車両、通信部品、産業機械などを含む。6月15日に発表した原案からは企業の要請を受けて鉄道コンテナや工作機械など5品目を取り除いた。


これを受け、中国も、残り160億ドルの追加関税の対象製品リストについて相応の調整を行った後、2018年8月23日午後0時1分より25%の追加関税を課すことを決定したと発表した。
6月発表の当初案に含まれていた原油は今回の最終リストからは除外された。ただ、対象品目の数は114から大幅に増加。対象となる輸入品の額は変更されていない。

調整後の品目は 对美加征关税商品清单二.pdf

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トランプ米大統領は6月18日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税を巡り、新たに2千億ドル相当の輸入品に10%の追加関税を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示したと発表した。

米国による500億ドル分への25%の関税に対し、中国が同規模の報復措置を打ち出したのを受けての追加措置。

2018/7/6  米国、対中制裁関税を発動、中国も対応

2018/6/20 トランプ大統領、対中貿易制裁の追加の検討を指示 

中国が7月6日に発動した第1弾の追加関税は545品目、約340億ドル相当で、下記を含む。

大豆、牛肉、豚肉、鶏肉、水産物、じゃがいも、たまねぎ、キュウリ、ホウレンソウ、マンゴー、オレンジ、ブドウ、りんご
ウイスキー、たばこ、綿花、乗用車、電気自動車など

米国産大豆は中国が輸出先の6割を占めており、米国の農業への影響は大きい。

トランプ米政権は7月24日、中国などとの貿易摩擦の長期化を見据え、悪影響が出ている大豆などの農家を救済するための最大で120億ドルとなる農業支援策を発表した。

米農務省によると、報復関税の影響は約110億ドルに及ぶため、これを埋めるため補助金支給や余剰在庫の買い取りなどで対応する。パーデュー農務長官は、「長期的な貿易交渉に取り組むための措置だ」と説明した。

トランプ政権は7月10日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の追加措置案を公表した。衣料品や食料品など2千億ドルに相当する6031品目の輸入に10%の追加関税を課す。発動は9月以降になる見通し。
米通商代表部(USTR)がまとめた品目リストの原案は衣料品やスポーツ用品、かばん、家具、テレビのほか、水産品や農産品などの食料品を盛り込んだ。一般消費者向けの製品が目立つが、携帯電話やパソコンは含めていない。

トランプ米大統領は8月1日、上記の2千億ドル分の中国製品を対象とした第3弾の対中制裁を巡り、関税率を当初の10%から25%に引き上げるよう米通商代表部(USTR)に指示した。


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これを受けて、中国が今回の発表を行ったもので、内容は次の通り。

8月2日、米国は、前述の2000億米ドルの商品に課される関税率を10%から25%に引き上げると発表した。 米国の措置は双方の合意から逸脱しており、中米間の貿易摩擦の激化、世界貿易機関の関連規則の深刻な違反、国益と国民の利益への損害につながっている。

国務院税関関税委員会は、「中華人民共和国貿易法」、「中華人民共和国輸出入関税規則」などの法律や国際法の基本原則に基づき、米国から輸入された5,207品目に関税を課すことにした。

もしも米側が自らの意見を押し通し、追加関税措置を実施するなら、中国側は、上述の追加関税措置をただちに実施する。

対象商品の輸入額は約600億ドルで、税率は25%、20%、10%、5%の4段階で、税率25%は2,493品目、20%は1078品目、10%は974品目、5%は662品目となっている。

追加関税の対象となるのは液化天然ガス(LNG)や、小・中型の航空機やヘリコプター、半導体、鉄鉱石、鉄鋼製品、車のフロントガラス、焙煎コーヒー豆、砂糖、チョコレート、菓子、避妊具など。

具体的には、下記の通り。

1:25%課税対象.pdf2:20%課税対象.pdf3:10%課税対象.pdf4:5%課税対象.pdf

人民網は次のとおり述べている。

中国が追加関税措置を講じるのは、自国の合法的な権益を守り、対抗策を通して貿易摩擦の激化を防ぐためだ。また、関連の対策を通して、中国国内の生産や国民の生活などへの影響を最小限にとどめる方針だ。対抗策実施後、関連当局が社会各界と共にその效果を評価し、中国国内の生産、国民の生活への影響を最小限にとどめるよう取り組む。

一方、ホワイトハウスのサンダース報道官は声明で、「中国は報復するのではなく、自国の不公正な貿易慣行に関する長年の懸念に対応すべきだ」と述べた。

Larry Kudlow 国家経済会議(NEC)委員長は「トランプ大統領を過小評価すべきではない」と警告し、米国がEUと連携し「中国に対する共同戦線を張る」ほか、北米自由貿易協定(NAFTA)再結束に加え、日本やオーストラリアとも協力していく方針を示し、「中国は孤立化し、経済は弱含む」と述べた。さらに「中国による米国の技術盗用は許さない」と言明した。


追加関税の対象にLNG(関税番号 27111100 液化天然気)が含まれ、かつ25%課税となっていることが、中国への拡販を狙っている米国のLNG業界にショックを与えている。

中国は米国のLNGの第3位の輸出先で、2017年の輸出額は20億ドルで、前年から倍増した。

2016年に中国向けに輸出を始めたCheniereや、Driftwood LNG (2760万トン)を推進中のTellurian その他のLNG開発社は、中国の電力会社などにLNG受入タンクの建設費支援を呼び掛けている。

2018/2/14  米国のCheniere Energy、中国CNPCとLNGの長期供給契約締結 

制裁関税で輸出の拡大にブレーキがかかる。Cheniere Energyの株価はこのニュースで下落した。

米石油協会は下記の声明を発表した。

中国の制裁は米国のエネルギー産業に打撃を与える。業界は既に業界にとって必須の特殊鉄鋼や産業製品への米国の追加課税で被害を受けているが、米国の重要な輸出品への中国の追加課税は、エネルギー関連に直接・間接に従事する雇用に悪影響を与える。

中国は米国のLNGの第3位の輸入国だが、中国の供給体制では大きなシェアは占めていない。この貿易紛争は中国よりも米国を傷つける。

政府に対し、米国のエネルギー生産と輸出を最大化する目標に反する通商政策を終わらせるよう要請する。


米国は今後、更なる制裁を実施すると見られている。トランプ大統領は全輸入品への拡大を示唆している。

中国の場合は、米国からの全輸入額が2017年で1,304億ドルしかなく、今回の600億ドルを実施すると、残りはほとんどない。
このため、関税以外で制裁を実施すると思われる。

付記 米通商代表部(USTR)は、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の第2弾(160億ドル、25%)を8月23日に発動すると発表した。



東芝は2017年12月、英国で原子力発電所の新設事業を行うために保有している NewGeneration (NuGen)の株式100%の売却について、韓国電力公社(KEPCO)を優先交渉対象者に選定した。

売却先としては、中国広核集団有限公司も候補に挙がっていたが、英ビジネス・エネルギー・産業戦略省と韓国産業通商資源省は2017年11月28日、NuGen 計画を含めた英国内の新設計画に対する韓国企業の参加支援で、両国政府が協力覚書を締結したと発表していた。

韓国政府は、KEPCOが選ばれたことに関し、「これまでに国内とUAEで同社が発揮した優秀な技術力と施工能力を、原子力先進国である英国で示す可能性が開かれた」と評価した。

NuGenではWestinghouseのAP 1000 を3基建設する予定であったが、KEPCOがNuGenを取得した場合、採用技術はKEPCOの企業連合がUAEで建設中の140万kW級PWR「APR1400」に変更される見通しである。

APR 1400は2017年10月に、欧州の電力16社が原子炉の安全基準として定めた「欧州電気事業者要件(EUR)」をクリアしているが、変更の場合、英国原子力規制庁から包括的設計審査を受ける必要がある。

しかし東芝は本年7月31日、KEPCOにNuGen売却優先交渉先から解除すると通知した。

後述の通り、韓国側はまだ諦めておらず、英政府 が本年6月に原発事業への適用を発表した新たな事業モデルについて、そのリスクや収益性などに関する共同研究を東芝に提案している。

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東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社 NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となった。(GDF Suezは2015年4月24日にEngieに改称した。)

NuGen は、英中部Sellafield で合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。Iberdrola が2012年に事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。

WestinghouseのAP 1000 を3基建設する予定で、原発計画を実際に着工するかどうかは2018年に判断するとしていた。

東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだが、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power の英中部Wylfaの原発計画に加え、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)で計画する原発について言及している。

2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

東芝は2017年4月4日、同社が60% 所有する英国の原発事業会社 NewGeneration (NuGen) の残り40%をフランスのEngieから買収すると発表した。

2017年7月25日に買収が完了した。買収額は158.62億円(108.8百万ポンド)。

NuGen はいったん東芝の完全子会社となるが、東芝はNuGenの完全売却も視野に入れており、「引き続き出資者の募集や持ち分売却を検討する」としていた。

ーーー

この後、上記の通り、株式100%の売却について、韓国電力公社(KEPCO)を優先交渉対象者に選定し、交渉を続けてきた。

当初の優先交渉期限は6月15日で、これをもう一度延長(1カ月)したが、合意に至らず結局、決別した。

他社と交渉の機会を持つというのが東芝側の公式的な立場とされるが、原発業界では、早期売却を目指す東芝が韓国電力との交渉を加速させるため、優先交渉権を解除したとみている。
東芝が韓国電力のほか中国などの事業者と交渉する可能性はあるが、英政府はエネルギー安全保障の面から中国の原発事業参入に消極的とされ、東芝は結局のところ売却先として韓国電力以外の選択が難しいとの見方がある。

韓国側はまだ諦めておらず、韓国産業通商資源部は8月1日、年内に結果を出せるよう英国政府など当事者との交渉を積極的に進めると明らかにした。「英国の電力需給安定、東芝の経営安定、韓国の原発海外進出という(韓英日の)3カ国の利益が達成されるよう、関連国、機関との交渉を積極的に推進する」と述べた。

英政府は本年6月、原発事業に対する新たな事業モデルの適用を発表しており、産業通商資源部はそのリスクや収益性などに関する共同研究を東芝に提案した東芝も共同研究に合意し、7月30日に英ビジネス・エネルギー・産業戦略省などと最初の会議を開催した。

韓国政府は研究結果を踏まえ、年内に買収の可否を最終決定する方針とされる。

当初、英国政府は差額精算型固定買取価格制度(CfD:Contract for Difference) を適用するとしていた。

CfD契約は、発電事業者へ電力の市場価格(reference price)と投資回収に必要な長期的な予想価格(strike price)を支払う、長期的な民法上の契約。発電事業者が電力価格の変動に長期的に晒されることを防ぎ、投資リスクを減らし、消費者への負荷を最小にした上で発電への投資を呼び込むことを目的とする。

下図の通り、実際の電力価格(市価)に関係なく、Strike Priceで電力代が得られる。

英国政府とEDFは、原子力発電での電力のStrike Price(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入

しかし、これが高すぎるとして猛烈な批判が起こった。

このため、NuGenの場合はこれよりかなり下げざるを得ないが、NuGenにとってはリスクが大きくなることとなる。政府にとって苦痛の種であった。

今回、英国政府は「RAB(Regulated Asset Base:規制資産基盤)」という新しいモデルを導入 することにした。

これは、ロンドンで建設中のスーパー下水道 Thames Tideway Tunnel で使われている方式である。

このプロジェクトはテームズ川の地下に全長25キロメートルの下水路を敷設するもので、既存の下水道網は処理能力が限界に達しているため、テームズ川に放出される年間数千万トンの廃水を削減することが期待されている。

工費は42億ポンドに上る。英政府と英水道最大手のThames Waterが設立した新会社Tidewayが建設・運営を手掛ける。
下水路は西ロンドンから東部ライムハウスまでをテムズ川に沿う形で敷設され、ストラットフォード近くのアビー・ミルズ揚水所からベクトン下水処理所までを専用トンネルでつなぐ。

Thames Waterは水道料金を引き上げて建設費の3分の1を負担し、残りはTidewayが民間出資を募って負担する。Tidewayは、Thames Waterと125年契約を交わし、利用者から月額料金を直接徴収した上で、下水道サービスを提供する。

原発の場合、CfDは事業者が建設の責任を負い、30-40年間にわたりStrike Priceで発電料金を受けて回収する方式である。

これに対し、RABの場合は、政府が建設費を支援した後、運営にもある程度関与し、投資について、安定的かつ上限のある投資収益をもたらしているかどうかを監督 する。

韓国産業部の関係者は「CfDに比べて収益性は低いかもしれないが、英国政府の保証がありリスクを分散する効果がある 。数十年間にわたる事業であるだけにプラスになるかもしれない」と話している。


三菱商事は7月27日、ペルー共和国ケジャベコ(Quellaveco)銅鉱山プロジェクトの開発意思決定を行ったと発表した。

本プロジェクトは、三菱商事は英国のAnglo American plc とともに、合弁会社のAnglo American Quellaveco S.A.を通じて推進しており、Anglo American もプロジェクト推進を決めた。

三菱商事の持分比率は19.1%であるが、本年6月14日に持分を19.1%から40%に増やすことで合意した。Anglo Americanが21.9%分を6億ドルで売却し、持ち株比率を60%とする。

6億ドルの支払いは、取引完了時に5億ドルとし、生産量が日量15万トンになった時点で50百万ドル、18万トンになった時点で残り50百万ドルとする。

追加取得に関する手続きが完了する2018年8月より、開発に向けた建設を開始し、2022年中の生産開始を予定している。


Anglo American plc は世界各国で銅、PGM(PlatinumGroupMetal)、ダイヤモンドを主力として鉱山事業を展開する資源メジャーの1社で本社をロンドンに置く。

計画概要は下記の通り。

所在地
埋蔵量 銅分換算 約7.5百万トン : 世界最大規模の未開発銅鉱山
年産量 約30万トン (生産開始後 10年間平均)
山命 約30年
生産開始予定 2022年

総開発費は、50~53億米ドルを見込んでおり、三菱商事は持分比率である40%分を拠出する。

銅は新興国での電力を含めたインフラ整備や、中国・欧州を中心としたEVシフト等により、世界的に堅調な需要の増加が見込まれて いる。

三菱商事は、資源量、品位、拡張余力等の観点で優位性の高い銅鉱山に出資しており、銅事業を資源分野の中核のひとつと位置付けてい る。
本プロジェクトの推進を通じ、銅の安定供給を実現することで、社会のニーズやあらゆるステークホルダーの期待に応え、 経済価値・社会価値・環境価値の三価値同時実現による持続的成長を目指すとしている。

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三菱商事は2016年3月期決算で1,494億円の純損失を計上した。
チリの銅事業で2710億円の減損損失を計上したのが響いた。

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。
三菱商事はこれに20.4%出資している。(三井物産も9.5%出資)

同社の参加時点での銅の価格は8,800$/ton程度であったが、4,400$/ton程度に下落、 急回復は見込めないとして、減損損失を計上した。
同時に中長期の価格見通しを6,600$/tonに引き下げた。

2016/3/28 三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ


その後の価格推移は下記の通り。

三菱商事の金属セグメントの連結損益は次の通り。

2015/3 2016/3 2017/3 2018/3
金属セグメント 139億円 -3,607億円 1,479億円 2,610億円
うち 銅関連 72億円 378億円
チリ銅事業評価減 -2,710億円


ドイツ政府が中国企業 煙台台海 (Yantai Taihai) 集団による独の精密機械メーカー Leifeld Metal Spinning の買収を却下することとなった。

Leifeld Metal Spinning は独西部アーレンに本社を置く 従業員は約200人の会社で、金属加工のための精密機械を製造する。同社の技術はNASAのロケットにも使われている。

この買収について審査していた独経済省が「安全保障を脅かす」と判断したという。

ドイツ政府が8月1日に正式決定すると報じられたが、この報道を受け、煙台台海は買収を取り消した。

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Leifeld Metal Spinning は、Integrally Stiffened Cylinder の開発メンバーとしてNASAから2017年のGroup Achievement Award を受けている。
他の開発メンバーは、Lockheed Martin、MT Aerospace、European Space Agency、German Aerospace Center、International Technologies で、機械メーカーはLeifeld Metal Spinning のみである。

開発したのは Integrally Stiffened Cylinder の製法で、溶接を削減することで、コストが大幅に低減される。
アルミ製の母材をローラーで伸ばしながら成形する。

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欧米諸国では最近、中国側による企業買収や投資で軍事や航空宇宙関連の技術が流出する可能性に懸念が強まっている。

2016年の美的集団によるドイツ最大の産業ロボットメーカーKUKAの買収は、独と米の政府が承認し、成立したが、先進技術が奪われる懸念高まった。

福建芯片投資基金によるドイツの半導体製造装置メーカーAixtron 買収については、ドイツ政府は一旦は承認したが、米国が問題にしたため、承認を取り消した。
米政府はAixtron の米国子会社について、米の安保の脅威の可能性があるとして買収を禁止、これを受け、
福建芯片は買収を諦めた。

EUの欧州委員会は2017年、国家安全保障の観点から海外企業による投資について審査を厳格化する計画を打ち出した。

ドイツはこれを支持しており、2017年に独が外国企業による買収規制を強化した。

(従来) EU域外の企業がドイツ企業の株式の25%超を取得する場合、それが公の秩序や国家の安全を脅かすものなら政府が阻止(主に防衛部門の取引)

(改正後)適用範囲は先端防衛技術産業に加え、電力、水道、病院、交通等の基幹インフラに携わる企業にまで拡大

ドイツのMinistry of Economic Affairs and Energyは本年4月26日、中国の安泰科技によるCOTESA GmbHの買収を承認した。法改正後の最初の承認となった。

COTESAは炭素繊維複合材料部品のメーカーで、顧客にはエアバスやボーイングが名前を連ねる。

今回は法改正後の最初の不承認である。

買収 被買収企業 買収企業 政府の対応 反応
KUKA
(ドイツ最大の産業ロボットメーカー)
美的集団
(家電メーカー)
独:2016/8不介入
  安全保障に危険及ぼさない
米:
2016/12/31承認
先進技術が奪われる懸念高まる。
以降、類似取引の調査の厳格化
Aixtron
(ドイツの
半導体製造装置メーカー、米に技術拠点)
福建芯片投資基金 独:2016/9承認
  2016/10 承認取消、審査再開
米:
2016/12 米子会社の買収禁止
 軍事利用可能技術で米の安保の脅威に
2016/12 福建芯片が買収取り止め(米拠点除外、独承認不明)
 2016/12/7 米政府、中国企業による独社の米子会社買収を禁止 

買収規制強化

COTESA GmbH
炭素繊維複合材料部品を供給
安泰科技
中国鋼研科技集団の子会社
独:2017/12 Ministry of Economic Affairs and Energyが介入、審査
→2018/4 承認
 2018/5/5 ドイツ政府、中国企業によるドイツの航空・自動車部品メーカー買収を承認
今回
Leifeld Metal Spinning 煙台市台海集団 独:不承認

会計検査院は7月27日、会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への「石油・天然ガスの探鉱等に係るリスクマネーの供給について」と題する随時報告を行った。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、石油・天然ガスの探鉱等に係るリスクマネーの供給に係る業務として、我が国企業の出資先である石油・天然ガスの探鉱等を行う開発会社に対して原則50%以内で出資を行うとともに、開発会社が開発等のために市中から調達する資金について債務保証を行っている。

今回、リスクマネーの供給に係る予算の執行等、リスクマネーの供給を受けた自主開発権益の状況等について検査を実施し、その状況を取りまとめた。

このなかで、液化設備がないガス田に関する権益を取り上げている。

開発した天然ガスを日本に輸入するには、液化してLNGにした上で我が国に持ち込む必要があるが、天然ガスの権益に係るプロジェクト3件(出資額計802億円、債務保証実行額計1476億円)について、2件がLNG計画を取り止め、1件が遅延していることが分かった。このため、現時点では、緊急時も含めて当該天然ガスを直接我が国に持ち込むことができない状況となっている。

企業の場合は、仮にLNG計画が中止になっても、天然ガスを現地のパイプラインで輸送し、販売すればよいが、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の出資や保証は、石油・天然ガスの自主開発比率引き上げが目的である。

このため、緊急時に我が国に持ち込むためには、スワップを円滑に行うことができるようにすることが必要としている。

東京ガスは、英エネルギー大手 Centrica のトレーディング事業会社であるCentrica LNG社と、「相互協力に関する協定」を締結したと発表した。第一歩として、LNGのスワップを行い、「LNGの輸送効率向上を通じたコスト削減を目指す枠組み」の実現を目指すことに合意した。

東京ガスが米国産LNGを欧州に供給する一方、Centrica はこれまで英国に輸送していたマレーシアのLNGを日本に供給する。

2016/11/22 東京ガス、英のCentrica とLNGをスワップ

上の例は、それぞれの輸送コストを大幅に削減できるが、このようなケースは少ない。

問題の3件はいずれもカナダの西海岸の天然ガス計画である。このガスとのスワップで(コスト差を負担するとしても)LNGを供給してくれる相手が見つかるであろうか?

スワップも出来ない場合、出資や保証を引き上げることを求めるのだろうか?


問題とされた計画は次の通り。

1) INPEX Gas British Columbia Ltd. (2012年度出資 399億9999万余円)

国際石油開発帝石(INPEX)は2011年11月29日、日揮と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。

その後、JOGMECが参加を決めた。

3社は2013年11月、BC州西部の太平洋岸Grassy Pointにおいて、シェールガスプロジェクトから産出されたガスを原料とした陸上ガス液化プラント(LNGプラント)建設の可能性を検討する調査権をBC州政府より取得した。(その後、LNG計画取り止め)

権益保有比率

Nexen Inc. 60% (オペレーター)
INPEX Gas British Columbia 40% 国際石油開発帝石:45%
日揮子会社:10%
JOGMEC:45%

2) JAPEX Montney (2013年出資 401億9999万余円、2014年債務保証実行額320億3238万余円)

石油資源開発は2013年3月4日、マレーシアの国営石油会社 Petronasとの間で、Petronasが推進するカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

同州 North Montney地域におけるシェールガス鉱区の10%権益を取得するとともに、同州西海岸におけるPacific Northwest LNG Project(生産量1,200万トン/年)の10%権益と同権益比率相当のLNG(120万トン/年)を引き取る権利を併せて取得する。
LNG計画は、Petronasが計画したもので、Prince Rupert 市のLelu島で年1,200万トンプラントを建設する。上記の鉱区からガスパイプラインで結ぶ。

その後、JOGMECが出資と保証を行った。

権益保有比率

Progress Energy Canada
(Petronas子会社)
62% (オペレーター)
Sinopec Huadian Montney 15%
JAPEX Montney 10% 石油資源開発 45%+1株
JOGMEC 45%-1株
MGC Montney(三菱瓦斯化学)10%
INDOIL MONTNEY 10%
Petroleum BRUNEI Montney 3%

石油資源開発(JAPEX)は2017/7月26日、子会社の JAPEX Montney Ltd.を通じてカナダのブリティッシュ・コロンビア州で検討を進めていたPacific Northwest LNGプロジェクトについて、事業会社のPacific NorthWest LNGが7月25日に事業化を進めないことを決定しと発表した。

本プロジェクトへの参画を決定した時点に比べて、LNGを取り巻く環境は大きく変化しており、現時点でPNW事業を進めないことは合理性があると考えとしている。

2017/8/2 石油資源開発が参加のカナダブリティッシュ・コロンビア州におけるLNGプロジェクト 取りやめ

3) Cutbank Dawson Gas Resources (2012年度債務保証実行額1155億2063万余円)

カナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2012年2月17日、British ColumbiaCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で三菱商事と提携したと発表した。

Cutbank Ridge Partnershipが保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれている。

今後5年間でPartnershipとして総事業費約60億カナダドル以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進める。
生産期間は50年以上で、今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指す。

カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。(しかし、現在も進展していない。)

2012/2/21 三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加 

三菱商事は新たに子会社Cutbank Dawson Gas Resources を設立し、29億カナダドルを投じて40%の権益を取得し、Cutbank Ridge 埋蔵エリア(Play)の409千エーカーのMontney層天然ガスランドの開発を行う

契約ではEncanaはCutbank Ridge Partnershipの60%、三菱商事は40%の権益を持つ。

その後、JOGMECがCutbank Dawson Gas Resourcesに26.26%出資し、合わせて上記の保証を行ったが、2016年5月に三菱商事の要請を受け、出資を解消した。このため、現在は保証のみ。

権益保有比率

Encana Corporation 60%
Cutbank Dawson Gas Resources 40% JOGMEC 26.26%→2016/5 売却
三菱商事 73.74%→ 100%

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