米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。
米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。
孟副会長は保釈条件の協議のため、1月29日に裁判所に出廷した。裁判所は、米国からの正式引き渡し要請を受け、次回出廷日を2月6日から3 月6日に変更した。
中国政府はカナダ人2人を逮捕するとともに、カナダ政府に圧力をかけているが、司法の場などで争う構えを示しており、手続きの長期化は必至。
カナダ政府は司法の問題としているが、カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、犯罪人引渡条約の対象にならない可能性がある。カナダの裁判所の判断が注目される。
(一般に、引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」がある。また、基本的に他国からの引き渡し請求に応じる義務はない。)
司法省の起訴はは2つの案件で行われた。告発の内容は以下の通り。
1) イランとの取引関係
被告 |
銀行詐欺 |
通信詐欺 |
IEEPA違反 |
資金洗浄 |
司法妨害 |
Huawei Technology |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
Huawei Devices USA |
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〇 |
Skycom Tech |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
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孟晩舟 Huawei副会長 |
〇 |
〇 |
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米国の法律および規制では制裁対象国であるイランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じており、一般的に金融機関は米国の法律や規制を遵守するために、イラン事業に関係がないことを確認する。
IEEPA(International Emergency Economic Power Act :国際緊急経済権限法)により、イランは金融制裁の対象となっている。
Huawei Technologiesはイランとの取引を香港のSkycom Tech(星通技術)を通して行っていたが、米ドルの決済は米国の銀行を通して行っている。
実際にはSkycomはHuaweiの子会社で、イランに事務所を有している。このため、取引はHuaweiによるイランとの取引であり、本来なら米国の銀行は取引ができない。
Huawei および孟晩舟がイラン事業に関して米国の金融機関および米国政府を長期的に欺いたことを訴えの対象とした。
2007年以降、Huaweiの従業員はSkycomはHuaweiの関係会社でないと偽った。更に、Huaweiのイラン取引に関し、米国その他の法律・規則に違反していないと偽った。
2012年終りから2013年に新聞が、HuaweiがSkycomを非公式の関係会社としてイランで使っていること、孟晩舟がSkycomの取締役であることを報じると、Huawei従業員と孟晩舟は取引銀行に対しSkycomとの関係について嘘をついた。Huaweiは2007年にSkycom株を無関係の第三者に売却しており、Skycomは単なる取引相手であり、取引は第三社間の取引であるとした。
実際にはSkycomの売却先のHUA YING MANAGEMENT (華盈管理)はHuaweiが実質的に支配している会社である。
Huaweiによる繰り返しの弁明を信じ、銀行は取引を続けた。ある銀行は2010年から2014年にかけて、Skycom関連で1億ドル以上の取引を決済した。
米国政府からの問い合わせに対しても、繰り返し嘘をついた。例えば、米国議会に対し、同社のイランとの取引が米国法に違反しないと嘘の報告をした。2007年のSkycom株の見せかけの売却の数カ月前にHuawei創業者はFBIに対し、Huaweiはイランの企業と直接取引は行っておらず、米国の輸出に関する法律に違反していないと述べた。
2017年に取引銀行の1行がHuaweiのリスク懸念から取引を止めようとした際に、その情報が他の銀行に伝わるのを防ぐため、他の銀行に偽りの説明をし、Huawei 側がその銀行との取引をやめると伝え、他の銀行との取引継続に成功した。
2017年に米国政府の調査に気づき、Huaweiと米子会社は、関係者を中国に帰国させ、米国にあったイラン関係の書類を処分した。
2) 米企業 T-Mobile からの技術窃取
被告 |
企業秘密窃盗 |
通信詐欺 |
司法妨害 |
Huawei Device |
〇 |
〇 |
〇 |
Huawei Devices USA |
Huawei は2012年に、米国のT-Mobile がスマートフォンの品質検査に用いる「Tappy」と呼ばれるロボットの技術情報を盗むための行動を開始した。
秘密保持契約に違反して、密かにTappyの写真を撮り、部品の寸法を測定し、ロボット1基を盗み、自ら作ろうとした。
T-Mobile がこれを知り、犯罪行為を防ぎ、訴えるぞと脅した。
それに対し、Huaweiは嘘の報告書をつくり、盗みは社内の不良分子が行ったもので、Huaweiの米国および中国の組織がおこなったものでないとした。
捜査中に見つかったメールに、これが同社の会社ぐるみの犯罪であることが示されている。
2013年7月に、Huaweiが世界中の他の企業から盗んだ情報の価値に基づいて従業員にボーナスを払うことを示すメールをFBIが入手している。
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カナダ司法省は12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies )の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。
米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 2018年8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。
2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕
カナダの裁判所は12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。
条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払ったり追跡装置を身につけたりする。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。
カナダの裁判所は来年2月に、米国の正式な要請に基づいて身柄を引き渡すかどうかを別途判断する。
米側は逮捕から60日以内に具体的な証拠を裁判所に示す必要がある。
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付記
カナダ政府は3月1日、米国への身柄引き渡しに関する審理を認めると明らかにした。 カナダと米国の犯罪人引き渡し条約に基づき検討した結果、「手続きを進めるための要件は満たされており、十分な証拠があると確信した」としている。
孟CFOは、3月6日にバンクーバーの裁判所で始まる審理に出廷する。
トランプ大統領は12月11日、ロイターとのインタビューで、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。しかし、米国政府はこれを否定した。
国際シンクタンク The International Crisis Group(ICG)は12月11日、同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官、Michael Kovrigが中国で拘束されたとの情報が入ったことを明らかにした。カナダ外務省は12月13日、カナダ人実業家 Michael Spavor氏が中国の国家安全保障に脅威を与えた疑いで中国当局に拘束されたことを認めた。
カナダのトルドー首相は2019年1月26日、同国のジョン・マッカラム駐中国大使が同日付で辞任したと発表した。首相が辞任を要請した。
マッカラム氏は1月22日に中国語メディアとの会合で孟氏の逮捕にはトランプ米大統領の政治的な意向が反映されていると指摘。逮捕容疑であるイラン制裁違反に関して「カナダは(米国が求める)イラン制裁措置に署名していない」とし、引き渡しが行われない可能性を示唆していた。
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