Wall Street Journalは8月25日、米半導体大手Western Digitalが、同業のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)を買収する交渉が大きく進展していると報じた。
買収額は200億ドル(約2兆2000億円)規模で、早ければ9月中旬にも合意する可能性があるとしている。
ただ、キオクシアが株式上場を選択したり、別の企業に買収されたりする可能性も残っているとしている。
Wall Street Journalは、2021年3月にも、Micron TechnologyとWestern Digitalがそれぞれ個別にキオクシア買収を検討していると報じた。
キオクシアは昨年、上場を図った。
東証は2020年8月27日、上場を承認した。同社は10月6日上場を予定し、時価総額は2兆円を超えるとみられた。
しかし、直前に大口取引先である中国の華為技術(Huawei)に対する米政府の取引規制で 収益性の急激な低下が予想され、先行きへの不透明感が高まったため、上場を延期し、上場の時期を慎重に検討することとした。
2020/8/31 キオクシア、10月に上場
キオクシアは再申請を目指しており、8月27日の取締役会で東京証券取引所への上場申請を諮る予定だったが、見送った。
同社は、上場案のほかに、他の選択肢、Western Digitalとの合併も視野にいれていると見られる。Western Digital との協議がこの数週間で加速したと報じられている。
付記
「WDとの合併について、経済産業省からは容認論が出ている」との報道があるが、中国が合併を承認しないだろうとの見方が強い。
一方、「中国企業はWestern Digitalやキオクシアのメモリチップを必要としており、中国政府がノーということはない」との見方もある。
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キオクシアとWestern Digital は日本でNAND型フラッシュメモリーの生産を共同で行っている。
NAND型フラッシュメモリーの世界のシェアは下図の通り。今年1~3月の トレンドフォースのデータでは、両社を合わせると、トップのSamsung電子に肉薄する。
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キオクシアとWestern Digital は日本でNAND型フラッシュメモリーの生産を共同で行っている。
発端は1999年の東芝と米国のSanDiskとのNAND型フラッシュメモリ事業に関する提携の基本合意である。
2000年5月にNAND型フラッシュメモリの製造合弁会社の設立
社名:FlashVision LLC
立地:バージニア州(東芝子会社Dominion Semiconductor内に700億円の設備投資)
出資比率、製品引取比率:50/502002年4月に「フラッシュビジョン(旧:Flash Vision LLC)」を東芝四日市工場内に移転
以降、順次増設、両社の出資比率はたびたび変更
詳細は 2017/4/14 東芝の半導体売却に新たな難問
Western Digial はハードディスクドライブ(HDD) 専業メーカーで、2011年に日立から事業を買収して大きくなった。
Western Digital は2015年10月21日、SunDisk を190億ドルで買収すると発表、2016年5月12日、買収手続きを完了した。
2017/5/5 Western Digital の歴史
経営再建中の東芝は2017年4月に半導体のメモリー事業を分社化し、買収を前提に新会社「東芝メモリ」を発足させた。SunDiskとのJV持ち分も移管した。
これに対し、Western Digitalがクレームを付けた。
2017/5/15 東芝の半導体事業売却、Western Digital が差し止め申し立て
以降、下記の推移:最終的に東芝メモリとWestern Digital は和解し、このあとも共同で日本での生産を行っている。
2017/7/17 東芝とWestern Digital の法廷闘争
2017/8/8 東芝、東芝メモリの増設を単独実施
2017/9/7 東芝メモリの売却、9月13日に決定(岩手県北上市に新規拠点)
2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表
2017/12/14 東芝、Western Digital と和解
東芝メモリとWestern Digital は、係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化することで合意した。
建設中の最先端メモリ製造棟である四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について共同で実施する。両社は2019年5月、北上市に東芝メモリが建設中の北上工場第1製造棟において両社共同で設備投資を実施する正式契約を締結した。
2018/9/21 東芝メモリ 四日市工場 第6製造棟およびメモリ開発センターの竣工
2019/7/19 東芝メモリ、「キオクシア㈱」に改称
2020/10/29 キオクシア、四日市工場で新製造棟 を建設
キオクシアの当初の出資者は下記の通りで、SK Hynix は将来の事業参加を狙っている(契約上、いろいろな制限を付けられている)が、他の海外株主は上場を通じて高値での売却を狙っている。
東芝も元々は売却を狙ったが、それまでの事業運営上、40%の出資を続けている。
SK Hynix を除く各株主は、売却価格次第では、売却に賛成すると思われる。
(単位:億円)
出資 | 議決権 | 転換社債 | 議決権なし | |||
東芝 | 3,505 | 40.2% | 1,096 | 2,409 | ||
HOYA | 270 | 9.9% | 270 | 0 | ||
(日本側計) | (3,775) | (50.1%) | ||||
Bain | 2,120 | 49.9% | 1,361 | 759 | ||
SK Hynix | 3,950 | 15% | 1,290 | 2,660 | ||
(Bain/SK) | (6,070) | |||||
Apple | 4,155 | 4,155 | ||||
Seagate | ||||||
Kingston Technology | ||||||
Dell Technologies Capital | ||||||
合計 | 14,000 | 2,727 | 1,290 | 9,983 |
両社は、生産は共同で行っているが、販売は完全に別の法人としてやっており、統合には各国の独禁当局の承認が必要である。
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