「no」と一致するもの

東芝株式は8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。大手電機では2016年のシャープに次ぐ2例目。

2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。来年3月末までに債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

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東京証券取引所は6月23日、東芝株式を8月1日付で東証1部から2部へと指定替えすると発表した。2017年3月末時点で「債務超過の状態であることが確認されたため」とした。

東芝は2017年3月期決算について監査法人の承認が得られておらず、株主総会で報告していないほか、有価証券報告書の提出も延期している。

同社は、監査法人の承認を得られないまま、76月23日に同社としての「2016年度業績見通し」を発表した。

当期純損益

-9,952億円

期末株主資本 -5,816億円

今後の上場継続の条件は下記の通り。

債務超過の解消

増資は考えられないため、東芝メモリの売却益を計上することが唯一の方法である。

来年3月末までに、現在交渉中の東芝メモリの売却がまとまり、各国の独禁法当局の承認を得て、代金決済が完了することが必要となる。

しかし、交渉相手先の日米韓連合にはSKハイニックスが議決権を求めている問題があり(この場合、独禁法審査が長引く)、売却対象に含まれるNAND型フラッシュメモリ合弁事業の相手のWestern Digital が対抗措置をとることが必至のため、見通しが立たない状況にある。

2017/7/31 東芝メモリ売却に関する米での訴訟で合意

中国の独禁法審査には6カ月はかかるとされ、8月末が期限となる。

東芝メディカルシステムズ売却で使った奇手は使えない。

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東芝は2016年3月の東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却の場合は、独禁法を審査を後回しにして、先に売却し、売却益を計上するという奇手を使った。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手

しかし、公取委からは、本件については承認するものの、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあるとして、異例の注意を受けた。公取委はこの方法を実質的に禁止した。

2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認

中国商務部は、独占禁止法に基づく買収の事前届け出義務違反を問題とし、キヤノン (佳能)に30万元(約500万円)の 罰金を科した。

2017/1/6 中国、東芝メディカル買収でキヤノンに罰金の行政処分

更に、欧州委員会はキヤノンに対し、承認前に買収をした疑いで異議告知書を送付した。今後の検討で問題だと認定した場合、罰金支払を命じるが、罰金は世界全体でのキヤノンの年間売上高の最大10% (3,400億円)にもなる。

2017/7/7 EU、キヤノンの東芝メディカル買収で異議告知書

有価証券報告書での適正意見

2017年3月期の有価証券報告書の提出期限は8月10日だが、監査法人のPwCあらた監査法人との間では見解が相違したままとされる。

東芝の監査は2017年3月期から従来の新日本監査法人からPwCあらた監査法人に変更になった。Westinghouse自体の監査は提携するPricewaterhouseCoopers(PwC)になった。

東芝は2016年12月27日、前年末のStone & Webster 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。

PwCとPwCあらたは、巨額損失が突如分かったのは不自然だとし、2016年3月以前に損失を認識できたのではとみている。(その場合、新日本監査法人が承認した2016年3月期の決算変更も必要となる)
これに対し東芝は、何度も調査したが、2016年12月以前の損失の認識はなかったとして、対立が続いている。

現在に至るも、問題の解決が見られず、監査法人が「不適正」の意見を出す可能性が出てきた。

なお、本ブログは2016年7月以前にWestinghouseが損失の存在を知っていたとみている。

Westinghouse がCB&I からS&Wの無償での買収を決めたが、運転資本額を調整する条項がある。
CB&Iは運転資本の算定の結果として基準を428百万ドル上回るとし、返却を求めたのに対し、Westinghouseは2,150百万ドル不足であるとし、支払いを求めた。
CB&I は2016年7月21日に、第三者会計士へ判断を委ねることの差し止めを求める訴訟をデラウエア州公衡平法裁判所に行った。

2,150百万ドル不足というのはである。この時点以前にWestinghouseが損失の存在を知ったと思われる。

デラウエア州最高裁は2017年6月27日、CB&Iの主張を認めた。

2017/6/29 Westinghouse、Stone & Websterの売却価額清算をめぐる CB&Iとの裁判で敗訴 

特定注意市場銘柄指定解除

東証は2015年9月15日、有価証券報告書に虚偽記載を行い、内部管理体制などについて改善の必要性が高いと判断し、東芝を特設注意市場銘柄に指定した。
同時に、上場契約違約金 9,120万円の支払いを命じた。

東芝は、工事進行基準に係る会計処理について調査を要する事項が判明したため、2015年3月期の有価証券報告書の提出を延期した。

同社は、2回の延期を経て2015年9月7日に2015年3月期の有価証券報告書を提出するとともに、2010年3月期から2015年3月期第3四半期までの期間における有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書を提出した。

2009年3月期から2015年3月期第3四半期にかけて損失の先送り等の不正会計が行われ、継続事業税引前利益が累計で2,248億円、当期純利益が累計で1,552億円過大に計上されていたこと等が判明した。

経営陣から事業部門に対して、通常の事業活動を進めていく中では達成困難と考えられる損益改善要求が行われており、事業部門ではそれに応える形で不正会計が実施されていたことが認められた。
また、同社において業務執行の監督又は監査の役割を担うべき取締役会や監査委員会は、不正会計を是正させる行動をとることがなく、業務実態の把握及び事業部門との情報連携が不十分であったことが認められた。
加えて、財務部や経営監査部等のモニタリング機能を発揮すべき部門がその機能を十分に発揮していなかったこと、及び全社的に適正な会計処理を行うことに対する意識が希薄であったこと等が認めらた。
なお、水増し利益をもとに3000億円超の社債を発行したため、金融庁から、金商法に基づき2%超73億7350万円の課徴金納付命令を受けた。

2016年12月、指定から1年を経過した後に同社から提出された内部管理体制確認書の内容等を確認したところ、全社的に改善に向けた取り組みが行われていることが認められたが、なお、問題が見られ、確認する必要があると判断し、特設注意市場銘柄指定を継続することにした。

当該指定から1年6か月を経過した日(2017年3月15日)以後に、同社から再提出される内部管理体制確認書の内容等を確認し、内部管理体制等について改善がなされなかったと認められた場合は、同社株式は上場廃止となる。


日本取引所グループの清田CEOは6月16日の定例記者会見で東芝の特設注意市場銘柄の指定解除の審査について「有価証券報告書が出ないうちに一方的に結論を出すのは難しい」との見方を明らかにした。

監査法人から「適正」意見が出れば、③は解決するが、①の問題は残る。
逆に「適正」意見が出なければ、上場廃止となる。

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上場廃止が回避できたとして、1部復帰の道は険しい。

東証は1部指定の条件に「最近5年間の有報に『虚偽記載』なし」 がある。東芝は2013年3月期の有価証券報告書で虚偽記載があったため、時間がかかる。

シャープは2016年3月末時点で債務超過に転落、同年8月に東証2部に指定替えになった。その後、台湾の鴻海精密工業が買収し、債務超過は解消、経営再建を進めている。2017年6月30日、東証1部への復帰を東証に申請した。早ければ2017年中の1部復帰を目ざす が例外である。

他に債務超過を理由に東証1部から2部に降格された例は過去10数年間で11社で、1部に復帰したのは信販大手のオリエントコーポレーションのみ。今も2部に残るのはチューナー製造のピクセラ と富士通傘下の電池メーカーFDK の2社で、残り8社は全てが上場廃止となっている。

石油資源開発(JAPEX)は7月26日、子会社の JAPEX Montney Ltd.を通じてカナダのブリティッシュ・コロンビア州で検討を進めていたPacific Northwest LNGプロジェクトについて、事業会社のPacific NorthWest LNGが7月25日に事業化を進めないことを決定しと発表した。

本プロジェクトへの参画を決定した時点に比べて、LNGを取り巻く環境は大きく変化しており、現時点でPNW事業を進めないことは合理性があると考えとしている。

Petronasも、長引く価格下落とエネルギー産業でのシフトによるものとしている。

一方、上流事業については、石油資源開発もPetronasも、上流事業価値の最大化を目指すとしている。

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石油資源開発は2013年3月4日、マレーシアの国営石油会社 Petronasとの間で、Petronasが推進するカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

同州 North Montney地域におけるシェールガス鉱区の10%権益を取得するとともに、同州西海岸におけるPacific Northwest LNG Project(生産量1,200万トン/年)の10%権益と同権益比率相当のLNG(120万トン/年)を引き取る権利を併せて取得する。

シェールガス開発は、North Montney地域のAltares、Lily、Kahta鉱区。当初、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し、年末に取得した。

LNG計画は、Petronasが計画したもので、Prince Rupert 市のLelu島で年1,200万トンプラントを建設する。上記の鉱区からガスパイプラインで結ぶ。

2013/3/7 石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画 

Petronasはその後も参加者を募り、2013年12月にPetroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。
2014年3月にはインド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) が10%の参加を決めた。

2014/3/15 Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加

2014年4月にSinopec とパートナーの中國華電集團(China Huadian Corporation)の出資が決まった。

三菱ガスは2014年12月19日、JAPEX Montneyに10%出資することで Pacific Northwest LNG Project に参画すると発表した。

JAPEX MontneyはJAPEX 45%、JOGMEC 45%、三菱ガス子会社 MGC Montney Holdings が10%の出資となる。


2014/5/6 
Sinopec、Petronas のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画に参加

2014/12/23 三菱ガス化学、カナダのシェールガス・LNGプロジェクトに参画 

石油資源開発 は、このLNGを2018年3月からの運用開始を予定している相馬LNG基地を通じて国内に供給する予定であった。同社では、昨今のLNG市況などを踏まえると、当面はLNGの調達については十分な選択肢があると判断している。

石油資源開発では、今回の処理により、約900kmのパイプライン建設計画の解約費用約 65百万カナダドル(日本円約55億円)を特別損失に、またPacific NorthWest LNGに係る持分法による投資損失約37百万カナダドルを営業外費用に、それぞれ計上することにより、合計約1億2百万カナダドル(日本円約87億円)の損失が発生する見込みとしている。

 

本の紹介 - 化学業界の話題

本の紹介 「日本人ビジネスマン、アフリカで蚊帳を売る: なぜ、日本企業の防虫蚊帳がケニアでトップシェアをとれたのか? 」 

   浅枝 敏行 著 東洋経済新報社 (2015/7/17)   右上の本の紹介参照

住友化学のOlyset Net はピレスロイド系殺虫剤を練り込んだポリエチレンで作った長期残効型防虫蚊帳で、マラリア対策用にWHOからも使用を推奨されている。

本書は第1部でオリセットの開発とWHOなどの国際機関の援助資金による販売、第2部でレーマンショックによる援助資金減少を受けてのアフリカでの小売事業への進出を扱っている。後半が本書の中心である。

第1部 オリセットの誕生と躍進
 第1章 オリセット誕生前夜
 第2章 動き始めたオリセット・ビジネス

   第2部 小売への参入ー消費者マーケティングへの挑戦
    第3章 競争と変革への備え
    第4章 新たな事業を「始める」
    第5章 BOP市場へのマーケティング
     (
BOPとは「Bottom Of Pyramid」の略で、経済的に社会の底辺の貧困層)

筆者は外部コンサルタントだが、実質的にヘッドとなって小売事業を推進した。

日本でも小売をしていない住友化学が、アフリカで小売事業を行う。考えられないことがどうして出来たのか。

本書は、筆者以外は全て実名で、ストーリー仕立てで解説している。

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以下の話も紹介されている。

2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。

ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。

2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。

2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。工場見学後にBushは、「なぜ、このような工場がアメリカの企業ではなく日本の企業に、先に成し遂げられているのか? 本音ではうらやましく感じる」と述べた。

2013/6/8 住友化学のOlyset Net


参考 2014/12/20 WHOの"World Malaria Report 2014"

    2015/8/22 「世界モスキート・デー」

    2017/7/18 BASF、マラリア対策の長期残効型の防虫処理蚊帳を開発


付記

外資系企業から途中入社し、この事業部門のトップとなった水野達男氏は現在 NPOのMalaria No More Japan の専務理事をしているが、自身の経験から

「人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。――第2の人生 マラリアに挑む 」(英治出版 2016/1/22) を書いている。



7月21日に博多港アイランドシティにあるコンテナ置き場でヒアリが発見された。ヒアリの発見は6都府県で8例になった。

ヒアリ(Red imported fire ant)は、学名 Solenopsis invicta で、南米大陸原産のハチ目(膜翅目)・アリ科・フタフシアリ亜科に属するアリ。

アメリカでは1930年ごろにヒアリの侵入が確認され、船荷に伴って持ち込まれたと考えられている。

近年、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、台湾、中国南部など環太平洋諸国に急速に分布を拡大している。

ニュージーランドは世界で唯一、ヒアリの根絶に成功したとされる国とされる。

2001年にオークランドの空港の近くでヒアリの巣が発見されたものの、現場周辺で徹底したモニタリングを実施するなどの対策を講じ、2003年までに根絶宣言を出した。

その後、2004年(Napier港)と2006年(WhirinakiのPan Pac Forest Products 社)でも ヒアリの侵入が確認されたが、駆除に成功している。

Whirinakiでは3万匹のヒアリの巣を処理した後、巣から半径2kmのエリアを3年間 徹底的に調査(90万以上の餌入りの容器を回収してチェック、近寄れない場所はベイト剤を散布)し、2009年に根絶を確認した。http://b3.net.nz/gerda/refs/14.pdf

ニュージーランド第一次産業省担当者は、「早期発見が成功の主な要因だ。監視プログラムが2度目のヒアリ発見につながった」と述べている。


住友化学は7月20日、 国内関係機関によるヒアリの侵入および定着阻止の各種取り組みに役立てるために、海外で展開するヒアリ対策剤「Esteem®」を日本に導入すると発表した。

まず環境省などに無償で提供して効き目を確かめてもらい、需要が見込めれば業務用販売も検討するとしている。

「Esteem®」は、同社の100%子会社のValent U.S.A.がEPA登録を取得している製品で、米国国内で販売されてい る。

(販売元は、住友化学が包括的業務提携契約を結んでいる豪州の農薬メーカー Nefarm の米国子会社)

そのほか、ヒアリの問題が顕在化したオーストラリア、ニュージーランド、台湾のヒアリ根絶プロジェクト等、各国の行政当局でも使用されている実績を持ち、高い評価を得てい る。

オーストラリア、ニュージーランドでは「Distance®」の商標で登録、販売されている。

「Esteem®」は、Valent U.S.A.が開発した誘引ベイト剤で、主に餌剤と有効成分ピリプロキシフェン(Pyriproxyfen)から構成された顆粒剤が、ヒアリによって巣に運ばれ摂食された後、有効成分の作用によって女王アリの産卵および幼虫の成虫化を抑制する効果がある。

本剤が使用された国では、処理後3~4週間で巣が衰退し、 8週間後にはヒアリが駆除され、防除に役立つことが確認されているという。

ピリプロキシフェンは、1981年に住友化学により開発された4-フェノキシフェノキシ構造を有する殺虫剤で、昆虫体内で幼若ホルモンとして作用し、胚仔の発育阻害による殺卵作用、蛹化または成虫化を阻害することによる変態阻害作用等により作用すると考えられている。


ピリプロキシフェン はハエ、蚊、ゴキブリなどの衛生害虫に成長抑制剤として機能する。WHOの評価書 Pyriproxyfen in Drinking Water において、ジカ熱、デング熱、黄熱病等の感染症を媒介する蚊防除に有効な薬剤とされている。

農業・園芸分野では、カイガラムシ、コナジラミ、アメリカタバコガ、ヨコバイ、アブラムシ、ヨトウムシなどの駆除に使われている。


登録にあたり、哺乳動物に対する膨大な安全性試験が実施され、発がん性や催奇形性等の悪影響がないことを確認しており、また、世界保健機関(WHO)、EPA、欧州食品安全機関(EFSA)においても同様の評価が与えられて
いる。

一時、ブラジルにおける蚊幼虫駆除剤としての使用と小頭症発生の因果関係を示唆する報道があったが、ブラジル保健省は、ピリプロキシフェンと小頭症の関連を示す科学的根拠はないことを明らかにした。幼虫駆除剤を使用していない地域からも小頭症患者が確認されているとしている。

米上院共和党による医療保険制度改革(オバマケア)改廃への取り組みは、7月17日夜に新たに党内から2人の造反が出たことで頓挫した。

上院議員は現在、共和党52、民主党46、無所属(民主系)2 となっている。

共和党では既に2人の議員が反対を表明しており、与党造反が合計4人となって、賛成票は過半数に届かない。

オバマケア撤廃という共和党の7年越しの悲願は再び暗礁に乗り上げた。

ーーー

Trump大統領はオバマケアの廃止を公約としていた。

米上院は1月12日、オバマケア撤廃に向けた法案の策定を各委員会に指示する決議案を可決した。翌13日に下院も賛成多数で決議した。

大統領は1月20日の就任当日に最初の大統領令を出し、オバマケアの撤廃に向け、各省庁に現行制度による経済的負担を軽減するよう指示した。

米下院の共和党議員らは3月6日、低所得者向け医療費補助制度の拡張などを含む医療保険制度改革法(オバマケア)を廃止する法案を発表した。

民主党は、税金廃止や税額控除で富裕層が恩恵を受け、数百万人の中低所得者層から保険を奪うとして反対を表明した。

共和党保守派は代替案をオバマケアの「焼き直し」などと批判、オバマケアの完全な廃止を求めた。

超党派の議会予算局(CBO)は3月13日、法案が成立すれば保険加入者数は2018年に現行より約1400万人、2026年には約2400万人減るとの見通しを発表し、ショックを与えた。

共和党は3月24日の採決を予定したが、可決の見通しが立たず、トランプ米政権は同日、オバマケアを見直す代替法案の下院本会議での採決を見送り、法案を事実上撤回すると表明した。

2017/3/27 オバマケア代替法案撤回

その後、共和指導部は、病歴のある加入希望者に保険会社が割増保険料を請求することを認める一方、既往症のある人に保険料補助を出すなど、保守派、穏健派双方の議員に配慮して法案を修正した。 

米議会下院は5月4日の本会議で、共和党が提出した医療保険制度「オバマケア」の廃止と、これに替わる制度の創設を盛り込んだ法案(American Health Care Act )を賛成217、反対213の僅差で可決した。共和党からは20人が造反した。

2017/5/9 オバマケア代替法案 米下院が可決 (法案内容も) 


オバマケア代替法案を巡り、上院共和党では穏健派が無保険者の増加につながると懸念する一方、保守派はオバマケア廃止には不十分と主張し、見解が割れている。

上院案は下院案をおおむね引き継ぎつつも、低所得者の民間保険への加入を促すための支援策を手厚くした。

トランプ大統領は6月27日、52人の共和党上院議員全員をホワイトハウスに呼び、今後の対応について協議した。

しかし、過半数の賛成は見込めず、米共和党上院トップのマコネル院内総務は同日、党内の支持を増やすため、採決を先送りすることを決定した。

米議会予算局(CBO)は6月29日、米上院の代替法案が施行された場合、2026年までに無保険者がオバマケアに比べて2200万人増えるという試算を発表した。

2026年の無保険者は推定4900万人に達し、現行法の約2800万人に比べて大幅に増える見通し。

試算では、同法案によって財政赤字は今後10年で3210億ドル削減できるとした。(現行法ではメディケイド向け支出が今後20年にわたり年間 5.1%拡大すると試算。一方、上院の法案が施行されれば、2026年までは年間 1.9%のペースで拡大、その後の10年は年3.5%拡大する。)

共和党のマコネル上院院内総務は7月11日、上院の修正案を7月13日に発表し、審議を開始し、7月18日の週に採決すると発表した。修正案の内容は明らかにしなかった。

しかし、7月17日夜に新たに党内から2人の造反が出て、反対が4人となったことで今回も頓挫した。

トランプ大統領は同日、ツイッターへの投稿で「共和党はオバマケアを単に撤廃し、白紙の状態から新たな医療保険制度を作り出すべきだ。そうすれば民主党も参加する」と呼びかけた。

Republicans should just REPEAL failing ObamaCare now & work on a new Healthcare Plan that will start from a clean slate. Dems will join in!

病気静養中の共和党重鎮のマケイン上院議員は、声明を発表し、米国民に質が高く手の届く医療保険制度を提供するため、超党派で取り組んでいくべきだとの考えを示した。



付記

米上院は7月25日、オバマケア見直しの法案審議を開始することを承認した。脳腫瘍と診断されアリゾナ州の自宅で療養中のジョン・マケイン上院議員も出席、採決は50対50の同数だったため、上院議長であるペンス副大統領の判断で可決した。
ただ与党・共和党内の対立で法案の内容は固まっておらず、法案成立につなげられるかどうかは不透明。

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同日行われた第1弾の包括的な代替法案である通称"Trumpcare 3.0"の採決では、共和党から9人の造反が出て43対57の反対多数で早くも否決された。

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上院は7月26日、オバマケア廃止法案(2年後に廃止する、それまでに代替案を検討するという案)を採決し、45対55の反対多数で否決した。与党・共和党(52人)から、手術から復帰したばかりのマケイン上院議員を含む7人が反対した。

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上院は7月28日、与党共和党執行部が作成したオバマケアを限定的に廃止する法案を賛成49対反対51の僅差で否決した。

"Skinny(骨と皮ばかり)"と呼ばれる法案で、個人の保険加入義務や医療機器メーカーに対する課税などオバマケアの一部だけを廃止する内容。しかし、米議会予算局の試算では、今後10年間で1600万人が保険を失うとされ、共和党からマケイン上院議員と他の2人が反対した。

この法案は共和党内で「最後の妥協案」とも言われていた。

トランプ大統領はツイッターで「3人の共和党議員と48人の民主党議員がアメリカを落胆させた(3 Republicans and 48 Democrats let the American people down.)」と強い不満を示した。

日銀は7月20日の金融政策決定会合で、2%の物価上昇目標の達成時期をこれまでの「2018年度ごろ」から「2019年度ごろ」に先送りした。物価目標達成の先送りは6回目になる。

会合後に会見した黒田東彦総裁は、デフレマインド的な慣行が根強くあるとあらためて指摘。何回も先送りになるのは残念としながら「企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重だが、物価上昇モメンタムは維持されている」と語った。

日銀は「経済・物価情勢の展望」で、以下の通り述べている。

消費者物価(除く生鮮食品)は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格上昇の影響を除くと弱めの動きとなっている。 これに伴って、中長期的な予想物価上昇率の高まりもやや後ずれしている。

もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も上昇するとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。

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2012年12月26日に第二次安部内閣がスタートした。

アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の「三本の矢」を基本方針とした。

2013年3月20日に黒田東彦氏が日銀総裁に就任した。

黒田総裁は就任直後の2013年4月に大規模緩和に踏み切り「2年程度で2%の物価上昇を達成する」と宣言した。

しかし、その後の状況は下記の通り。


日銀は
物価目標達成の先送りを続け、今回は6回目になる。2014年度末には達成するとしたのが、2019年ごろとなっている。

仮にこれが達成できたとしても、早くても、黒田総裁の任期が終わって1年後となる。

しかし、そもそも、「デフレはもっぱら貨幣的現象であり、金融政策によって影響できる」との安倍、黒田理論が誤りであり、このまま金融緩和を続けてもデフレが解消できるとは思えない。

実際には、デフレは貨幣現象ではなく、需要の変化に供給が対応できないためである。

この解決には、需要のなくなった産業への保護をやめ、新しい需要に対応する産業への規制をやめて、供給構造を改変するしかない。

詳細は下記参照  

2017/1/4 アベノミクス4年

BASFは7月13日、WHOから農薬クロルフェナピル(Chlorfenapyr)をベースとした長期残効型防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)の推奨を受けたと発表した。

クロルフェナピルを使ったもう一つの製品の室内残効性スプレー(Sylando® 240SC)もWHOで評価の最終段階にある。

Innovative Vector Control Consortium (IVCC) とロンドン大学衛生熱帯医学大学院の10年に及ぶ協力を得て、BASFは農薬のクロルフェナピルを蚊帳用に使用するのに成功し、WHOの公衆衛生用の厳しい基準に合格した。

IVCCは、画期的な製品の開発を通じて蚊が媒介する疾病(マラリア、デング熱、デング出血熱等)の感染を減らすことなどを目的として、2005年にBill & Melinda Gates Foundationの支援を受けて設立された非営利団体。


ロンドン
大学衛生熱帯医学大学院は、公衆衛生学研究で世界トップレベル。

マラリアは、マラリア原虫に感染した蚊に刺されることにより人に感染し、世界では、毎年約2億人がマラリアを発症し、約63万人が亡くなっていると言われている。うち、子供は2分に1人が亡くなっている。 WHOのマラリア対策は、予防、治療、およびこれらに寄与する研究を重要視しており、効果的な感染予防の手段として、長期残効型防虫処理蚊帳などとともに、室内残効性スプレーの使用が推奨されている。

WHOの推奨する蚊防除殺虫剤は4つしかなく、そのうちのピレスロイドだけが防虫処理蚊帳用に推奨されている。

住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、2001年にWHOから使用を推奨された。

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、80以上の国々に供給されている。

2013/6/8 住友化学のOlyset Net  

しかし、一部地域では、既存殺虫剤に抵抗性をもつ蚊の発生が確認されている。同一薬剤の継続使用により抵抗性を持つ蚊が現れる。

住友化学は2014年9月、「オリセットRネット」の技術を発展させ、既存の防虫剤の殺虫効果を高める薬剤を加えることにより、抵抗性を有するマラリア媒介蚊にも有効性を示す「オリセットRプラス」を開発し、バングラデシュで販売を開始した。

さらに、住友化学とIVCCは2015年の世界モスキート・デー(8月20日)に、マラリア対策向け新規殺虫成分の現地試験を開始すると発表した。開発中の新規殺虫成分は、こうした抵抗性問題の解決につながることが期待される。

2015/8/22 「世界モスキート・デー」 

BASFの行った西アフリカのベナン共和国、ブルキナファソ共和国、タンザニア、コートジボワール(象牙海岸)での別々の実験で、防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)と室内残効性スプレー(Sylando® 240SC)は薬剤抵抗性の蚊に対し有効であることが証明された。

WHOの推奨を受け、BASFは防虫処理蚊帳(Interceptor® G2)の販売の準備に入った。各国での承認を受け、本年末にも使用される見込み。

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クロルフェナピル(Chlorfenapyr)は有機ハロゲン化合物の一種で、American Cyanamidが開発した殺虫剤。

ピロール系の構造を持ち、果樹・野菜のコナガやハダニの呼吸系を阻害し殺虫効果を現す。日本では1996年4月25日に農薬登録を受け、日本曹達から「コテツ」の商品名で発売されている。

American Cyanamidは1907年設立の米国の総合化学会社であった。設立とともに,ドイツから特許を得て空中窒素の固定,石灰窒素の生産を開始、その後、窒素,リン酸肥料分野へ進出し、合併を繰り返しながら尿素樹脂,タール製品,メラミン樹脂,医薬品分野へ進出した。

事業内容は農業部門 (肥料,殺虫剤,除草剤,飼料など) ,化学部門 (重化学品,水処理薬品,アクリロニトリル,メラミン,爆薬,製紙・鉱業用製品など) ,有機化学部門 (触媒,染料,プラスチック添加剤,合成ゴムなど) ,合繊部門 (アクリル,ポリエステル繊維) など,数千種類の製品に及んだ。

1994年にAmerican Home Products に買収されたが、2000年にBASFに買収された。

フランス電力(Électricité de France:EDF)は7月10日、同国の原子炉製造会社 Areva NPの買収に三菱重工業と地元のエンジニア大手ASSYSTEM が参加すると発表した。

三菱重工業は15%出資するが、出資比率は最大 19.5%になる可能性があるとしている。
ASSYSTEMは5%を出資する。

EDFは2016年11月15日に新しいAreva NP の51%~75%を取得する旨の契約を締結、他の投資家との間で交渉を続けた。

今回の発表によると、新しいAreva NP の買収価額は、25億ユーロと確認された。業績連動型のEarn Out 条項あり。借入金は引き継がない。

三菱重工業の出資額は3.75億ユーロ(最大で4.875億ユーロ)となる。下記の通り、Newcoにも5%(2.5億ユーロ)を出資するため、アレバに最大で1000億円弱の投資となる。

EDFは他の参加者も歓迎するとしている。今後、中国が参加する可能性がある。

核燃料再処理のNewCoへの出資については、中国の原発大手の中国核工業集団(CNNC)も交渉をしていたが破談になった。日本側より多い出資や取締役派遣を求め、フランス側が断ったとされる。安全保障の観点から米国や日本政府が強い懸念を伝えたともいわれる。

しかし、ArevaやEDFには中国の参加を求める声が強い。
今後の原発新設の大部分は中国であり、受注のために関係を良くしたい。またEDFの英国計画は中国との共同事業である。

英国のHinkley Point 原発計画には、中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資する。

EDFが英国のSizewell とBradwellで予定する新規原発建設計画にも中国が参画、後者については欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。

 2015/10/28 中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

手続きは年内に終える予定。 

2001年に発足したArevaはウランの採掘から原子炉の製造、核燃料の再処理まで、原発に関わる一連の分野を手掛ける総合原子力メーカーで、フランス政府が過半を出資する。

フランスの原子力政策はフランス原子力庁 (CEA) が主導し、民間企業のFramatomeが原子炉プラントの製造を、CEA子会社のCogemaが核燃料製造を担当する分業体制であった。
2001年にFramatome はプラント需要低迷に危機を迎えていたドイツ Siemensの原子力部門を買収し、 更にCogema と統合し、Areva となった。

Framatomeと Siemensは1989年から欧州加圧水型原子炉(EPR)の開発で協力していた。

福島第一原発の事故で、欧州の一部の国が脱原発を決めたほか、日本の原発の再稼働が遅れてビジネス機会が減少、更にフィンランドの新型原発の建設で費用が膨らみ、2015年12月期まで5期連続の最終赤字を計上した。2014年には48億ユーロの赤字、2015年には20億ユーロの赤字となった。

フィンランドのオルキルオト原発3号機 はArevaが建設する160万kwの欧州加圧水型原子炉(EPR)で、2005年8月に建設が始まった。当初は2009年に開業予定であったが、 まだ完成していない。
EPRの特徴である二重封じ込め構造の構築にも時間を要しているとされる。

コストは41億ドルの予想が72億ドルに上昇、契約価格は固定されているので、費用の増加分は同社の利益を圧迫する。

Arevaの救済のため、フランス政府は抜本的な同社の構造改革を決めた。2017年に実行される。

仏電力公社(EDF)が原子炉製造を担う子会社 Areva NPの過半数(51%~75%) を握る大株主になる。三菱重工業が出資を検討するとしていた。

フィンランドのオルキルオト原発3号機については、Areva SA に残し、政府が責任をもって完成させる。

燃料再処理部門を分社する(仮称 Newco)。

三菱重工業業は2017年2月3日、Newcoに5%(250百万ユーロ)を出資することで大筋合意したと発表した。
日本原燃も5%出資する。

2017/2/6 三菱重工業、仏原子力大手Arevaの新会社に出資 


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三菱重工業とArebaは、1991年に燃料サイクル分野において合弁会社を設立、2006年には原子力事業でのより広範な協調で合意した。

2007年にArevaとの折半出資による合弁会社ATMEA社を設立、両社技術を融合した電気出力110万kW級の最新鋭の加圧水型軽水炉(PWR)ATMEA 1 を開発した。

ATMEA 1 はトルコのSinop原発で110万kW 4基の採用が決まった。ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発に続くもの。

2013年5月に日本・トルコ両政府は原子力協定と原子力発電所建設の細目を規定した政府間協定に調印したのに続いて2013年10月に商業契約を締結した。

事業主体の国際コンソーシアムには、三菱重工業 15%、伊藤忠商事 15%、GDF Suez(現 Engie)21%、トルコ国営電力会社(EUAS)49%が出資する。

2008年4月11日、両社は新規原子力発電プラントの開発にとどまらず、新たに原子燃料ビジネスにまで協力関係を広げていくことで合意した。

2009年4月1日、三菱重工業と三菱マテリアルの原子燃料事業を移管し、三菱原子燃料㈱が設立されたが、これにArevaが出資した。

設立時の出資比率は、三菱重工業 35%、三菱マテリアル 30%、Areva 30%、三菱商事 5%であった。

2016年3月、三菱重工業が三菱マテリアルと三菱商事の保有する全株式と、Arevaの保有する株式30%のうち25%を取得し、三菱重工業 95%、Areva 5%となった。

Newcoへの出資の際、三菱重工業は次のように述べている。

Arevaグループと原子力発電事業において長年の協力関係を有しており、1991年に燃料サイクル分野における合弁会社を設立して各種再処理関連機器を製造・販売しているほか、2007年にはArevaと当社の最新技術を融合した加圧水型(PWR)原子力発電プラントの開発に着手、電気出力110万キロワットの最新鋭PWRプラント「ATMEA 1」を開発、トルコを始め世界各地での販売活動を展開しています。

当社はNewCoの事業拡大を通じたArevaグループの今後の成長戦略の実現を支援するとともに、従来以上の事業面・技術面での協力関係構築により、2015年10月に日仏両政府間において確認された両国政府および原子力産業界の連携強化にも重要な役割を果たし、原子力事業の世界的なバリューチェーンの強化を目指します。


各国で脱原発の動きが相次ぎ、フランス本国でも原発が一部停止される。東芝は原発建設からは撤退する。

このなかで三菱重工業はフランス政府の救済を受けるAreva に多額の出資を行う。

日揮は7月7日、米国の Kiewit Energy Group および Black & Veatch Constructionと共同で、Jordan Cove LNG社が米国西海岸で計画するJordan Cove LNGプラント建設プロジェクトを受注したと発表した。

プロジェクトの詳細は、下記の通り。

契約先 Jordan Cove LNG LLC
建設場所

オレゴン州 Coos Bay地区

契約

最大で年産780万トン(5系列合計)の天然ガス液化設備、
ガス貯蔵設備、
LNG出荷施設
に係る設計・調達・建設工事(EPC)役務

契約形態 ランプサム契約
受注金総額 非公表

受注総額は6000億~7000億円とみられ、日揮の担当部分は2000億円弱のもよう(日経)。

日程 2024年の生産開始を目指し、2019年を目途に最終投資判断

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米エネルギー省は2014年3月24日、Jordan Cove Energy Project, L.P. に対し、オレゴン州Coos Bay のJordan Cove LNG Terminal からの非FTA締結国向けのLNG輸出を承認した。
承認数量は日量0.8Bcf (年間600万トン)で期間は20年間となっている。

2016年3月22日、東京電力と中部電力が設立した火力発電用の燃料調達会社JERAが年間150万トンの20年契約を締結した。
同年4月8日には、伊藤忠との間で 年間150万トンの20年契約を締結した。

Jordan Cove Energy Project, L.P.はカナダのCalgaryに本拠を置くエネルギー関連インフラ投資会社のVeresen Inc. (旧称 Fort Chicago Energy L.P.)が経営する。

オレゴン州Coos Bay の北方に16万m3のLNG貯蔵タンク2基と年産600万トン(将来900万トンへの拡大予定)の液化設備を建設する。

合わせて、カナダ及びRocky Mountain地区の天然ガスのハブであるオレゴン州Malin とJordan Cove LNG との間にPacific Connector Gas Pipelineを新設し、カナダからのWillimas Northwest Pipeline、TransCanada Pipeline、Rocky Mountain地区からのRuby Pipelineと接続する。

操業時はカナダ産天然ガスが70%、米国産天然ガスが30%で、最終的には比率を 65/35 とする。


今回、日揮はこの計画の建設を行うもので、契約会社の社名、LMG能力が変更されている。

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すでに稼働しているメキシコ湾のプラントからパナマ運河経由で東アジアに運ぶと20日間かかるが、西海岸からは8日しかかからない。

Jordan Coveはアジア太平洋及び南米市場のほとんどに最短で、運賃が最も安いと自負している。

日本向けLNG運賃は以下の通り。

  Jordan Cove &Kitimat   1.24 $/百万BTU 
  US Gulf Coast   2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
         
  Gorgon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  
    
資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25
  



欧州委員会は7月6日、キヤノンによる東芝メディカル買収、独Merck によるSigma-Aldrich の買収、GEによるデンマークの風力発電 LM Windの買収の3件について異議告知書を送付したと発表した。

キヤノンについては承認前に買収をしたこと、他の2件については十分な情報を出さなかったことが理由で、買収自体への影響はないが、今後の検討で問題だと認定した場合、罰金支払を命じる

キヤノンの場合、世界全体でのキヤノンの年間売上高の最大10%にもなる。他の2件の場合はそれぞれ、
独MerckとSigma-Aldrich の世界全体での売上高の1%、GEの世界全体での売上高の1%となる。

ベステアー欧州委員(競争政策担当)は記者会見で「企業は、われわれが適切な決定を行えるよう、十分かつ正確な情報を提供する必要がある」と指摘。「情報には経済への重要性が増す技術革新に対する影響も含まれる。将来的な戦略に関する説明責任は企業側にある」と述べた。

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東芝は2016年3月17日に下記取引で東芝メディカルを売却し、2016年3月期に売却益を計上した。

東芝メディカルを売却  
    A種類株(議決権あり)20株   MSホールディングに譲渡(対価 9万8600円)
         
    B種類株(議決権なし) 1株

キヤノンに譲渡(対価 6655億円)
    新株予約権


日本の独禁法では
新たに20%又は50%を超える場合は公取委の事前承認が必要となっているが、第10条2項の規定は、具体的には、取得後の議決権の数の割合が新たに20%又は50%を超えることとなる場合となっている。
キヤノンには議決権無しの株と新株予約権のみを譲渡しており、表面上は問題ないこととなる。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手 

公取委は2016年6月30日、これを承認したが、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、両者に対し異例の注意を行った。

2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認

中国商務部は2017年1月4日、事前届け出義務違反を問題とし、キヤノン (佳能)に30万元(約500万円)の 罰金を科す「行政処罰決定書」をウェブサイトで公表した。

2017/1/6 中国、東芝メディカル買収でキヤノンに罰金の行政処分

EUは2012年8月12日に買収の通知を受け、9月19日に承認した。

しかし、EUに買収を通知し、承認を受ける前に、第三者を使った2段階の取引の第1段階で既に実質的に買収を実施しており、EUの買収規則に違反しているというのがEUの予備的な結論であり、その旨を通知した。

キヤノンの2016年12月期の連結売上高は 6.3兆円。

ーーー

他の2件の概要は次の通り。

1) Merck/Sigma-Aldrich

取引については下記参照。

 2014/9/25 独Merck KGaA、研究用試薬の米 Sigma-Aldrich を170億ドルで買収


欧州委員会は2015年4月21日に申請を受け、2015年6月15日に承認した。特定の実験用のケミカルを問題とし、Sigma-Aldrichの資産の売却を条件とした。

現在欧州委が問題とするのは、両社が本件に関しての革新的プロジェクトの情報を提出しなかったことで、この情報が提出されておれば、当然それを売却資産に加えていた。
情報提出がなかったため、売却資産は強さや競争力が損なわれたものとなっていた。

最終的にMerckは本件の技術を売却資産を買ったHoneywell にライセンスしたが、ほとんど1年遅れであり、しかも欧州員会が第三者の情報でこれを知ったためである。

2) General Electric/LM Wind

General Electricはデンマークの風力発電用のローターブレードの開発・生産者であるLM Wind Powerを買収した。欧州委員会には2017年1月11日に申請があった。欧州委員会は当時、ドイツのSiemensによるスペインの風力発電業のGamesaの買収の審査も行っていた。

現在問題とされるのは、GEの特定の製品の研究開発に関する情報を提示しなかったことで、この情報は、GEの将来の業界での地位、風力発電タービンの市場の今後の競争状況を正しく評価するのに必要なものであった。

GEは2017年2月2日に買収申請を一旦取り下げ、2月13日にこの情報を加えて、再申請した。これにより、欧州員会は市場について正しい判断を下せるようになった。

欧州委員会は、2017年3月20日にGEによるLM Windの買収を、3月13日にSiemens による Gamesa の買収をそれぞれ承認した。



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