「no」と一致するもの


Ford Motor は1月3日、メキシコでの工場新設(投資額 16億ドル)をとりやめ、代わりに米ミシガン州 Flat Rock工場で7億ドルを投じて電気自動車と自動運転車をつくると発表した。700人を雇用する。
ミシガン州から補助金が出るとみられる。


Trump次期大統領はメキシコ計画に強く反対していた。

しかし Ford のMark Fields CEOは、メキシコ計画取止めは北米での小型車需要の低迷によるもので、Trump氏が大統領選に勝ったためではないと述べた。選挙結果に関係なく、自動車メーカーなら同じ決定をするだろうとしている。

方で、もう一つの要素として、Trump次期大統領のもとでのこれまでよりも好ましい事業環境や次期大統領の話している成長政策があるとしている。

Trump次期大統領はtwitterで早速これを取り上げた。

"Ford to scrap Mexico plant, invest in Michigan due to Trump policies"

同時に、GMがChevy Cruzeをメキシコで生産し、無関税で米国に輸入しているとし、米国で生産するか、高関税をはらうかどちらかだと脅かしている。

"General Motors is sending Mexican made model of Chevy Cruze to U.S. car dealers-tax free across border. Make in U.S.A. or pay big border tax!"

これに対しては、GMは声明を発表した。
「米国で売られている
Chevrolet Cruze のセダンはすべてオハイオ州の Lordstownで生産されている。メキシコでは海外向けのChevrolet Cruzeのハッチバックを生産しており、米国ではごく少量が販売されているに過ぎない」

なお、米航空機エンジン・機械大手 United Technologies 傘下の空調大手 Carrier は11月30日、メキシコに移転予定だったインディアナ州のIndianapolis 工場の1,000人の雇用を維持することで、Trump 次期大統領と Pence 次期副大統領(同州知事)と合意したと発表した。

2016/12/6 Trump 次期大統領、米空調大手のメキシコ移転阻止

Trump氏はtwitterで、約束した雇用を既にもたらしていると述べた。

"Trump is already delivering the jobs he promised America"

引用している記事では、Trump氏と会談した孫正義氏のソフトバンク傘下のSprintが5,000人、出資を決めた衛星通信ベンチャーのOneWeb が3,000人の雇用増を行うこと、Carrierの移転阻止で1,000人の雇用が維持されることを報じている。

付記 Trump氏は1月5日のtwitterでトヨタのメキシコを取り上げた。米国に工場をつくるか、それとも多額の国境税を払えとする。

"Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S.
NO WAY!
Build plant in U.S. or pay big border tax."

トヨタのメキシコ新工場は総投資額が約10億ドルで、現地で約2千人を雇用し、2019年から年間約20万台のカローラを生産する。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、その直前に、「工場建設はひとたび決めた以上は雇用と地域への責任がある。現地に行く以上はそこで貢献したい。決断はしっかりやりながら、動き出してからは粘り強くやる」と述べ、現時点で見直す予定はないという考えを示し ていた。

なお、トヨタの工場はBaja California州ではなく、Guanajuato州に建設中で、カナダから生産を移す。

ーーー

Ford は2016年4月5日、メキシコのSan Luis Potosi に小型車の工場を新設すると発表した。投資額は16億ドル で2018年に生産を始める。
夏に着工し、2020年までに直接雇用だけで2,800人分を創出する。

米国と比べ低い人件費であることがメキシコを選んだ理由で、北米自由貿易協定(NAFTA) を活用し、米国に低関税で輸出できる。

Trump大統領候補はこれを「全くの恥」と呼び、「私が大統領になったら、こうした雇用をつぶすばかげた取引を認めるつもりはない」と表明した。

米フォード・モーターのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)は15日、中西部ミシガン州からメキシコに小型車生産を移管する計画を引き続き進めると表明した。ロイター通信が報じた。

 米国内の雇用を奪うとしてフォードの計画を再三批判してきたトランプ氏が大統領選に勝利してから、この問題でCEOの発言が公になるのは初めて。



ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20161117/k00/00m/020/036000c#csidx4a9583912160e8d90c1c93ae3b9e906
Copyright 毎日新聞

米フォード・モーターのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)は15日、中西部ミシガン州からメキシコに小型車生産を移管する計画を引き続き進めると表明した。ロイター通信が報じた。

 米国内の雇用を奪うとしてフォードの計画を再三批判してきたトランプ氏が大統領選に勝利してから、この問題でCEOの発言が公になるのは初めて。



ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20161117/k00/00m/020/036000c#csidx4a9583912160e8d90c1c93ae3b9e906
Copyright 毎日新聞
しかし、Ford は9月14日、米国での小型車生産を全面的にメキシコの工場へ移管すると発表した。

コスト競争の厳しい小型車をメキシコに移管し、収益の改善につなげる。
他方、収益性の高いピックアップトラックやSUVの生産は米国に集約し、雇用を維持する。

Ford は、Trump の大統領選勝利後の11月15日にも、米国からメキシコに小型車生産を移管する計画を引き続き進めると表明していた。

ーーー

今回、Fordは次の点を明らかにした。

1) 世界で13の電気自動車を計画しているが、そのうち7つを発表した。

時期 生産工場 販売先
all-new fully electric small SUV
(最低300マイル走行)
2020 Flat Rock Plant 北米、欧州、アジア
high-volume autonomous vehicle 2021 Flat Rock Plant 北米
hybrid version of F-150 pickup Dearborn Truck Plant 北米、中東
hybrid version of Mustang 2020 Flat Rock Plant 北米
Transit Custom plug-in hybrid 2019 欧州
hybrid police vehicle(2種) 北米

2) ミシガンFlat Rockの組み立て工場を7億ドルで拡張、700人を直接雇用する。

 これは2020年までに電気自動車に45億ドルを投資する計画の一部である。

3) メキシコのSan Luis Potosi での新工場建設計画は取りやめる。

 ただし、メキシコの既存のHermosilloで次世代のFocusを生産する。
 現在 Focusを生産するMichigan組み立て工場では2種の新しい車種を生産し、3,500人の雇用を維持する。

 
  

ーーー

メキシコには日本の完成車、部品メーカーも多数進出している。

Trump次期大統領が、高関税をかけると脅して米国のメーカーの進出をやめさせた以上、本当に関税を上げなければならなくなったのではなかろうか。

日本のメーカーの業績に影響がでる恐れがある。


付記 日本の自動車メーカーのメキシコ進出

アベノミクスは「デフレは貨幣現象である」という考えに立ち、「三本の矢」を基本方針とした。
(1) 大胆な金融政策
(2) 機動的な財政政策
(3) 成長戦略

2013年3月に就任した黒田東彦・日銀総裁は、デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、無制限の量的緩和を行った。目標の達成期限は「2年程度を念頭に置く」とした。

量的緩和だけでは効果が出ないため、日本銀行は2016年1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定、2月16日から金融機関が保有する日本銀行当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用した。

しかし、CPIの状態は次の通りで 、2016年11月の生鮮食品を除くコアCPIが-0.4%で、生鮮食品とエネルギーを除く日銀コアコアで +0.2に過ぎない。
目的の「2%の物価安定目標の早期実現」の兆しは見えない。

逆にマイナス金利の悪影響はいろいろ出ている。

2016/8/17  マイナス金利の影響 

ーーー

ここにきて、アベノミクスの理論的支柱である浜田宏一・内閣官房参与が変身し、「デフレはもっぱら貨幣的現象であり、金融政策によって影響できる」との考えが変わったことを認めた。

アベノミクスが実質的に始まった2012年11月16日の衆院解散から4年がたった2016年11月15日付の日本経済新聞に浜田宏一・内閣官房参与のインタビューが載った。

「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」

「クリストファー・シムズ米プリンストン大教授が8月のジャクソンホール会議で発表した論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。もちろん、ただ歳出を増やすのではなく何に使うかは考えないといけない」

浜田氏は文芸春秋 2017年1月号に、「アベノミクス」私は考え直した というタイトルで寄稿した。

2013年4月、日本銀行の黒田東彦総裁は前年比 2%というインフレ目標を掲げ、量的・質的金融緩和(QQE)を打ち出しました。アベノミクスの「第一の矢」です。

QQEは当初、抜群の効果を発揮しました。

民主党政権時代8千円台だった日経平均株価はグングン伸びて、15年7月には15年ぶりに2万585円に到達しました。

効果は実体経済にも波及し、雇用者は第二次安倍政権発足後3年間で約150万人増。

15年4~6月期の企業収益は過去最高を更新。そして、16年度の政府の税収は約58兆円と、バブル期の1991年度(約60兆円) 以来の高水準になる見通しです。

そして私も、「デフレはもっぱら貨幣的現象であり、金融政策によって影響できる」と説明してきましたし、アベノミクス発足当初は、金融政策という"薬"だけで日本経済は立ち直ると思っていました。

ところが、昨年末から「QQEは頭打ちになっているのではないか」と思える事態が次々と起こり始めました。

QQEの効果に翳りが出てきたのです。また、14年の消費増税の消費抑制効果によるQQEの効果が出ていない期間は、予想を超える長さで続いています。

さらに、金融政策の効果を緩める現象が二つ起こりました。

一つ目が、外為市場でおこった異変です。ドナルド・トランプ氏が米大統領選挙で当選するまでの1年間はQQEの結果、日本の金利が下がっても円安にならなくなっていたのです。

二つ目が、日銀が16年1月に導入したマイナス金利政策の効果が出ていないことです。

ブリンストン大学教授のクリストファー・シムズの論文を読み、衝撃を受けました。「金融政策はなぜ効かないのか」という問いに、明快な答えを与えていたからです。シムズ氏は「金融政策が効かない原因は『財政』にある」というのです。

つまり、私は「(人々の)資源配分を改善するような政府支出や減税などによる財政政策を、金融緩和の手助けに使ったほうが良い」という点で考えを変えたわけです。

留保した利益を投資に回した企業を減税する、あるいは内部留保そのものに課税するなど、財政政策で工夫すれば良いわけです。

インフレ目標と消費増税は"2つで1つ"と考えて、連動させるのです。例えば、食料とエネルギーを除くコアコアCPI(消費者物価指数)が目標の2%を達成できた場合に限り、消費税を年々1%ずつ段階的にあげる。逆に、目標を達成できない場合、消費増税はずっと凍結し続ける、といった具合です。

現在のように、インフレ目標は金融政策だけで目指して、増税だけあらかじめ時期を決めてしまうのでは金融と財政の足並みは揃いません。

ーーー

浜田氏は、当初QQEが抜群の効果を示したとして株価、雇用増、企業収益などの改善を挙げている。

竹中平蔵氏は講演での笑い話で、浜田氏がアベノミクスのなかの金融政策を高く評価していることを示した。

アベノミクスの理論の柱で内閣官房参与の浜田宏一教授がアベノミクスを採点した。米国式に5段階評価である。

第一の矢の金融緩和は成功 A
第二の矢の機動的財政政策は、短期の財政拡大は出来たが、中長期の財政再建は駄目なため B
第三の矢の成長戦略は全く駄目で E


即ちABEノミクス。

しかし、これらはアベノミクスにより需要が増えたためではない。

(企業収益)
政府と日銀が、デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、無制限の量的緩和 を行うと表明すれば、トレーダーが円を売るのは当然であり、円安はその結果である。

輸出産業にとっては円安は大きな恩恵であり、輸出製品の採算は向上している。
しかし、輸出数量は増えていない。赤字輸出が黒字になり、企業採算が向上しただけである。

2013年10月の貿易統計によると、貿易収支は1兆907億円の赤字で、貿易赤字は16カ月連続で、1979年以降で最長を更新した。
輸入の方が輸出より多いため、円安は全体としては不利であり、非輸出産業や家計にとっては影響が大きい。

(株価)
2012年11月からの株高は、円安と同時に始まったもので、ほとんど円ドル相場と連動しており、
外人投資家によって日本株が買われているだけである。
円安になれば、日本の株価はドル建てでは下がることになり、外人株主の買いが増え、値上がりする。日本の経済が活況になることによって株価が上がっているのではない。

東京証券取引所によると、2012年11月第2週からの1年間で、外国人の累計買越額は12兆7500億円になった。
12カ月ベースでは過去最高で、この間に日経平均株価が7割近く上昇するけん引役になった。

投機マネーが日本に流れ込むか、それとも出ていくかだけの違いである。

(雇用)
雇用数は確かに増えているが、雇用増の大半は非正規雇用である。需要が増えていないため、正規雇用は増えていない。

結果としては、経済実態はよくなっていない。良くなったといっている部分の大半は円安によるもので、「為替操作」ギリギリである。

今回、浜田氏は、「(人々の)資源配分を改善するような政府支出や減税などによる財政政策を、金融緩和の手助けに使ったほうが良い」という点で考えを変えた 。

留保した利益を投資に回した企業を減税する、あるいは内部留保そのものに課税するなど、財政政策で工夫すれば良いとする。

しかし、企業の内部留保は、需要がないために投資ができないからであり、個人預金は、将来の不安と、買いたいものがないということのためである。政府が課税などの脅しをしても、投資や消費は増え ない。

また、政府が公共投資をしても、その金がまわるの企業や個人は金を使わないため、効果は限られ、財政赤字が増えるだけである。

ーーー

浜田氏は当初、デフレは貨幣現象であるとし、量的緩和で解決するとした。現在は、それに財政政策を加えるべきだとするが、財政政策も既に実施して効果がなかった。

根本的な問題点は、需要と供給を、アダムスミスの時代の需要と供給で考えていることである。

商品Aが余り、商品Bが不足すると、Aの価格が下がり、Bの価格が上がるため、職人はAの生産を減らし、Bの生産を増やす。
需要と供給は「神の見えざる手」で一致する。

この時代であれば、潜在需要と供給は一致しているため、たまたま資金不足で需要が不足しておれば、金融緩和により需要と供給は一致する。
もし、買い控えがあれば、金融緩和による将来の値上げ予想で需要が顕在化し、需要と供給は一致する。

しかし、今の時代では、「見えざる神の手」は十分には機能しない。

生産や販売のためには、膨大な投資、組織、体制が必要で、商品Aが余り、商品Bが不足しても、企業は簡単にはAの生産を減らし、Bの生産を増やすことは出来ないし、しない。
既存勢力は政治と結びつき、古い体制を守ろうとし、新勢力の進出を規制により邪魔をする。

これが需要と供給のアンバランスを生んでいるのであり、この解決には昔の解決法では無理である。

現在の需要不足は、買い手の資金不足ではない。膨大な個人預金、企業の内部留保があり、金融緩和は意味がない。

短期の需要不足なら、デフレでの今後の値下がりを予想しての買い控えもありうるが、10年以上にわたる買い控えなどありえない。また、2%程度のインフレ予想で需要が増えるとも思えない。

実際には、デフレは貨幣現象ではなく、需要の変化に供給が対応できないためである。

白川前日銀総裁は2012年11月12日に「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」という講演で、次のように述べている。

日本でも、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって、新しいタイプの需要が潜在的にはどんどん生まれていると考えられます。例えば、医療・福祉産業では、高齢化により潜在需要が急拡大しているにもかかわらず、各種の規制や現場の人手不足などから、需要に見合うサービスが提供できていないとの声が多く聞かれています。また最近注目が集まっている高齢者の消費についても、所得、健康状態、嗜好の違いなどから若年層の消費よりも個別性が強く、供給者サイドの工夫如何でさらに拡大する余地があることが指摘されています。

いずれにせよ、こうした未充足の需要、すなわち成長分野における「供給不足」は、需給ギャップにカウントされていません。
本来「需給のミスマッチ」と認識すべき部分まで、「需要不足」という形で示されているということです。

持続的に需給ギャップを改善していくためには、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要です。

2013/1/5  日銀総裁の変心?

政府も自民党も政治献金をしている財界(大部分が需要が減った産業を代表)を保護し、代替しようとする新興産業を規制して おり、結果として、需要の減った産業が残り、新しい需要に対応する供給が増えない。

米国の場合、新規事業への規制は少なく、古い事業から新しい事業に資金や人の移動が行われる。
また、上場会社であれば、将来性のない事業を続けておれば、経営者は確実に首になる。だから改革が進む。

しかし、日本の場合はそれがない。
長年にわたる規制で供給と実需要の差がどんどん広がっていった。

この解決には、需要のなくなった産業への保護をやめ、新しい需要に対応する産業への規制をやめて、供給構造を改変するしかない。

しかし、現在の規制改革会議のように、政財界や官庁が中心となる「規制改革」では効果はないが、抜本的な改革は日本では期待できない。

例えば、古い体制を保護している一つが租税特別措置法である。本来は一時的措置である筈が延々と継続している。
農業改革も、税制改革も、中途半端である。
選挙に影響すれば、取りやめられる。・・・・

最高裁の判例で、解雇が実質的に禁止されているのも障害になる。企業は本来やめるべき事業でも、雇用の維持のため、事業を継続する。
その結果、新産業に人が移動せず、資金も固定されてしまっている。

孫正義氏は1000億ドルのファンドをつくり、米国に500億ドルの投資を約束し、英国でもアームを240億英ポンド(約3兆3千億円)で買収し、英首相に雇用の倍増を約束した。
日本で大きな投資をしないのは規制のせいだろう。

逆に、アベノミクスのようなやり方でデフレ体制を結果として継続し、古い体制が破たんするのを待つのも一策かもわからない。


付記 
小宮山宏氏との対談でコマツの坂根相談役が次のように述べている。(小宮山宏・山田興一 「新ビジョン2050」)

「コマツの場合、1回大きな構造改革をして人を減らし、グローバルで1,2位を目指せない事業は撤退して、今はIoTを積極的に活用して新しい事業の進め方をしている。

デフレ脱却というのは、こういうことなんです。政府日銀がいくら金融緩和しても民間が当事者意識を持ってこういう動きをしない限り、絶対に脱却できない。」




東芝は12月27日、同日の日本経済新聞の報道を受け、昨年末のStone & Webster (S&W) 買収で数十億ドル規模の 「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。

影響額の確定を待たずに、とりあえず発表した。

ーーー

東芝の米国子会社のWestinghouse は2015年12月31日、Shaw Group子会社で原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster をCB&I から229百万ドルで買収した。

東芝は買収金額を公表していないが、米国証券取引委員会に提出された資料によると2億2900万ドルである。

Shaw Group を買収したCB&I が原子力関係事業からの撤退を決めたもの。

CB&I はEPC契約者としてSouth Texas Project から撤退するとともに、South Texas Project およびABWR事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に対し保持している債権を放棄する。

2016/5/16 東芝、米国大手エンジニアリング会社との原発建設に関する協力関係を解消 

この売買契約について、東芝は8月12日の発表で2つの問題を挙げている。

1) 売買契約には「価格調整条項」があるが、CB&Iは7月21日に 、株式購入契約において合意していた法的手続きを無効にする申し立てをデラウエア州公衡平法裁判所に行った。第三者会計士へ判断を委ねることの差し止めを求めた。

購入契約上、CB&Iは S&B の運転資本額として1,174百万ドル相当額を計上した状況で株式を譲渡する義務を負う。

買収完了後に運転資本額を精査し、運転資本額がこれを下回った場合は、差額をCB&Iが支払い、
逆に、上回った場合は、差額をCB&Iに支払うこととなっている。

見解に相違があった場合は、第三者の会計士が判断する。

Westinghouse では、これに基づく算定結果を含む書面をCB&Iに提出していた 。

2) 「のれん」の金額

米国会計基準に従い、算定中で、年末までに確定する。
この時点では87百万ドルと想定している。

ーーー

買収額は229百万ドルで、これと資産価値との差を87百万ドルとみていた。これは極めて妥当である。

しかし、現時点でこれが数十億ドルになるという。 買値が2.29 億ドルのため、資産価値が仮にゼロであったとしても、「のれん」は2.29億ドルで、買値の10倍の赤字など考えられない。

S&B に数十億ドルもの損失(または潜在的な損失)が隠されており、それを知らずに買収したのかも分からない。通常は契約でそんな損失は負担しないようにしている筈であり、当然、相手方に損失を負担させるはずである。

それなのに、東芝が「のれんが数十億ドル規模にのぼる」可能性があるとするのは、契約上、負担せざるを得ないようになっているのかも分からない。

きわめて不可解であり、それが東芝トップにごく最近に報告されたというのも不可解である。

ーーー

不適切会計問題で揺れた東芝に、2015年11月、新たに原子力事業での赤字隠蔽疑惑が発生した。

11月12日の日経ビジネスオンラインが、「スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損」という記事を掲載した。

東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった

東芝は、原子力事業全体では減損処理が不要なため、WHの減損処理を発表しなかったと弁明した。

2015/12/8 東芝の原子力事業 

東芝が2016年2月4日に発表した2016年3月期の損益予想は7100億円の赤字で、何もしなければ債務超過となる。

東芝は3月17日に、実質的には独禁法に違反する奇手で、キヤノンに医療機器子会社 東芝メディカルシステムズを6655億円で売却し、債務超過を逃れた。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手 

公取委は6月30日、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認したが、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、両者に対し異例の注意を行った。

また、今後、企業結合を計画する者が仮にこのようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められるとした。

2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認


東芝は2016年4月26日、改めて原子力事業の減損チェックをした結果を発表した。

原子力事業の事業性に変更はないが、資金調達コストの上昇を受け、割引率を見直した結果、減損処理を行うとし、現段階で約2600億円を見込むとしている。

2016/5/12 発表(5/23 修正)の決算では、原子力事業の一時的費用として下記を計上した。 

ノレン減損  -2,476億円
構造改革費用 -40億円
その他  -90億円
合計  -2,606億円

   

ーーー

東芝の2016年9月中間決算での連結資本勘定は3,632億円しかない。この時点での2017年3月末の年間純損益予想は1,450億円で、上期損益は1,153億円のため、下期損益は297億円に過ぎない。

損失額によっては債務超過に陥る恐れもある。

既に東芝メディカルなど、目ぼしい子会社は売却済みであり、一般投資家への増資も難しい。

東芝は2015年9月に東京証券取引所から特設注意市場銘に指定されたが、東証は12月19日、指定期間を延長すると発表した。
上場廃止の恐れが生じたものの、取引所の審査の結果、影響が重大とはいえないと認められて上場廃止に至らない場合で、かつ内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められる場合に指定される。

S&Pは12月28日、東芝の長期会社格付けを「B-」に、1段階引き下げたうえで、格下げ方向の「クレジット・ウォッチ」に指定したと発表した。

ムーディーズ・ジャパンは12月28日、東芝のシニア無担保債務格付けを「B3」から「Caa1」に格下げすると発表、さらに格下げ方向で見直すとした。

このため、東芝は主力取引銀行と金融支援に向けた協議に入ったが、銀行側にも東芝への不信感が強く、難航するとみられる。

上海市政府は12月23日、独占禁止法に違反したとして米自動車大手のGMの中国合弁会社に対し201百万元(約34億円)の罰金を科すと発表した。

上海市政府の物価管理当局が、GMと中国自動車大手の上海汽車集団(SAIC) との合弁会社であるShanghai General Motors(GM 49%、SAIC 51%)に対し、中国で販売するCadillac、Chevrolet、Buick などの一部車種について、販売会社に対し最低価格を指示したとして、年間販売額の4%の罰金額を設定した。

GM は声明で、事業を行っている国の法律、規則を尊重するとし、本件で適切な対応をすべく、中国のJVの支援を行うとしている。

これまでにも多くの自動車メーカーが摘発されている。

2014/9/15 中国、Volkswagen と Chrysler に独禁法違反で罰金 

これまでにもあった単なる独禁法違反事件であり、Trump次期大統領の反中国姿勢に対する反応とは見えないが、米国の対応により米中経済戦争につながる恐れがある。


本件に関しては、中国の英字紙 China Dailyは今月中旬、国家発展改革委員会の幹部の発言として、米自動車メーカーに制裁金を科す考えだと伝えていたが、Trump 次期大統領の政権移行チームの広報担当者は「Trump は米企業や雇用のために戦うと明言している」と強調していた。

12月21日には米通商代表部(USTR)が中国の電子商取引大手 アリババ集団のネット通販サービス淘宝網などを偽造品市場のブラックリスト(Notorious markets list」に組み入れた。4年前にリストから外した経緯があり、アリババ側は「政治的な意向が働いている」と反発。米中双方を代表する企業を狙った報復合戦の様相を呈している。

アリババグループの総裁は、「4年前、USTRは当社の名前をこのリストから削除した。それから4年間、当社はブランド所有者や法執行機関と共に、模倣品や海賊版を販売している業者に対する処罰を実際に展開し、先進的な方法で効果的に知的財産権の保護業務を展開してきた。それにもかかわらず、USTRは当社を再びリストに入れた。当社は、これが本当に事実に基づいた決定なのか、今の政治的雰囲気の影響を受けているのではないかと、疑いをかけざるを得ない」とすぐにコメントを出し、失望感を示した。

Trump次期大統領は12月21日、ホワイトハウス内に国家通商会議(National Trade Council)を新設し、トップに対中強硬路線を唱える Peter Navarro を指名した。「国家通商会議の創設は、米製造業を再び偉大にし、すべての米国民にきちんとした職で妥当な賃金を得る機会を提供するとの次期大統領の決意をあらためて示している」としている。

Peter Navarro 教授は、"The Coming China Wars"、"Crouching Tiger:What China's Militarism Means for the World"、"Death by China"などの著書が世界で注目された。

"Death by China"では、中国共産党政権の下での環境汚染、資源の略奪、毒食品、政治腐敗、軍事拡張、為替操作など多くの面において、世界にとって脅威となっていると批判した。2012年に同著書のドキュメンタリー映画も製作された。




BPは12月17日、アブダビ政府とアブダビ国営石油(ADNOC) との間で、BPがAbu Dhabi Company for Onshore Petroleum Operations Limited(ADCO) に10%の出資をすることと、ADCOが保有する陸上権益の10%を取得する契約に調印したと発表した。見返りにアブダビ政府はBPに2%出資する。

ADCO鉱区は4つの地域に分かれている。

1)SE Hub (South East Asset)

Asab 油田 
Sahil 油田 
   
Shah 油田    
Qusahwira 油田
Mender 油田  開発中、2017年生産開始予定

2)Bab Asset

3)Bu Hasa/Huwaila/BQ Assets

Bu Hasa 油田  
Huwaila 油田   
Bida Al-Qemzan (BQ) 油田 

4) North East Bab (NEB)

Dabbiya 油田
Rumaitha 油田
Shanayel 油田

 


アブダビの陸上油田は1939年以降、外国の石油会社に採掘権を与えられてきた。
1971年の独立を機に、Abu Dhabi National Oil Company
(ADNOC)が参加し、Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations (ADCO)を設立した。

当初 ADNOCの出資比率は15%であったが、1974年に60%となった。
他のメンバーは以下の通り。

BP、Shell、Exxon Mobil、Total  各9.5%、計38%
PortugalのPatex Oil and Gas 2% (
Mr. 5% と呼ばれた石油商人 Calouste Gulbenkian の権益を引き継ぐ)

これら各社の権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。

新しく40年間の権益が与えられることとなり、各社が応札した。

先ず2015年1月1日付けでフランスのTotal が10%の権益を取得した。

国際石油開発帝石(INPEXは2015年4月27日 、アブダビ首長国の陸上のADCO鉱区の5%の参加権益を取得し2015年1月1日からの40年間を契約期間とする利権契約を同国政府及びアブダビ国営石油会社(ADNOC)と締結したと発表した。

2015/4/29 国際石油開発帝石、アブダビ首長国の陸上ADCO鉱区の権益取得

その後、韓国のGS Energyが3%を取得している。

今回、BPが10%の権益を取得するとともに、ADCOそのものに10%の出資を行う。

今後ADNOCは海外パートナーに割り当てられた40%の権益の残り12%分について、パートナーを探す。

見返りにアブダビ政府はBPに2%出資する。

BPは 3億9,290株の新株を1株あたり4.47ポンドでアブダビの政府系投資会社 Mubadala Development Company に発行する。12月16日のBP株価4.90ポンドで計算すると19.2億ポンドとなる。


日英両政府は12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。世耕弘成経済産業相が同日、来日したGreg Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相 と会談し、 覚書を結んだ。

・Decommissioning and Decontamination 廃炉、除染での協力
・Research and Development
・Global safety and Security Practices
・Nuclear New Build

覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
(In particular, both sides note the proposals for nuclear power stations in the UK put forward by Japanese companies, namely the Horizon project at Wylfa in Anglesey and the NuGen project at Moorside in Cumbria. Both sides note the progress made to date by the developers and welcome the opportunity to continue to discuss the development of their proposals.)

また、原子力の研究開発や、福島第1原子力発電所の廃炉や除染などでも協力を深めることを確認した。

日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、まず、国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行を活用したHorizonへの投融資の検討作業を英国側と進める。
原発稼働後の電力の買い取り価格や買い取り期間、事故が起きた場合の賠償の仕組みなどについても英政府と協議し、持続可能な枠組みづくりをめざす。

支援総額は1兆円規模になる公算が大きく、2017年中にも大枠を固める。

Clark 氏は会談の中で、原発の新増設について「英国の産業戦略、クリーンなエネルギー開発を考える上で非常に重要だ」と指摘した。

安倍政権には、新興国での初の原発受注で、インフラ輸出に弾みがつくと期待していたベトナムでの原発計画が中止になり、あせりがある。

2016/11/14  ベトナムの原発建設計画 中止へ

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英国では19基の原発が稼働しているが、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。

稼働中 廃止 政府案
Dounreay 実験炉
(Scotland 北端)
2基 
Hunterston  2基   2基 
Torness  2基 
Chapelcross  4基 
Calder Hall  4基 
Braystones
Sellafield
(Moorside)
Windscale(Sellafield)  1基 
Kirksanton
Hartlepool  2基 
Heysham  4基 
Wylfa  2基 
Trawsfynydo  2基 
Sizewell  1基   2基 
Berkeley  2基 
Bradwell  2基 
Oldbury  2基 
Hinkley Point  2基   2基 
Dungeness  2基   2基 
Winfrith SGHWR  1基 
合計  19基   26基 



しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

安倍首相は日本の原発の新規制基準は「世界一厳しい基準」と自画自賛している。

しかし、英国のHinkly Point やSizewellで計画中で、フランスのフラマンビル、フィンランドのオルキルオト、中国の台山で建設中の欧州加圧水型原子炉(EPR) は日本よりもはるかに厳しい基準であり、これが建設費高騰の理由である。

安全システムは日本の2系統に対し、4系統あり、飛行機の衝突や内圧に耐える合計の厚さが2.6mの2層のコンクリート壁 を持つ。

事故で炉心溶融が起きても溶け落ちた核燃料は「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な受け皿に流れ込む仕組みを備える。その上部にある貯水タンクは高温になると蓋が自動的に溶けて弁が開き、その結果コアキャッチャーを水が満たして溶け落ちた燃料(デブリ)を冷やす機能がある。

新規制基準制定時のパブリックコメントではコアキャッチャーの義務化を求める意見があったが、無視された。

しかも、日本との違いは、これらは地震の恐れのないところで建設される。地震のない所でも日本よりはるかに厳しい基準が求められている。

http://maptd.com/map/earthquake_activity_vs_nuclear_power_plants/

地図を拡大すると、日本以外の原発のほとんどが地震発生の歴史がないことが分かる。米国西海岸の原発はほとんど停止した。

各社の撤退を受け、英国政府は原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基 総出力320万kWを建設することで合意した。(追加2基も計画)
中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資する。

英国政府とEDFは今回、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

* この計画については、英国新政権が中国の進出を懸念し、7月29日に「待った」をかけたが、9月15日に承認した。

2016/8/4 フランスと中国の企業による英国Hinkley Point C 原発計画に黄信号

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日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEからHorizon 全株式を買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2~3基)を建設する。

2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力 

2020年代前半の稼働を目指すが、2基にかかる総事業費を現時点で約190億ポンド(約2.6兆円)と想定。日立が総事業費の1割程度、英国政府が25%以上を出す案が出ている。

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東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。

NuGen は、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。

Westinghouse Electric のAP 1000 を3基建設する予定。東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

日ロ経済協力 - 化学業界の話題

12月16日の 日ロ首脳会談にあわせて、8項目の経済協力プランに沿って、両国の企業の間でエネルギー分野を中心に当初の見込みの2倍近い68件のプロジェクトの覚書などが交わされた。

政府関係者によると、日本側の総額は約 3000億円規模となる見通しだという。

8項目の経済協力プラン:

(1)健康寿命の伸長
(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り
(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大
(4)エネルギー
(5)ロシアの産業多様化・生産性向上
(6)極東の産業振興・輸出基地化
(7)先端技術協力
(8)人的交流の抜本的拡大

主な内容は次の通り。

エネルギー関連:

1) Gazprom 下記の契約を締結

① 三井物産

Sakhalin II 拡張、LNG bunkering (船舶へのLNG燃料供給)を含む戦略的協力協定

② 三菱商事

Sakhalin II LNG plantの第3系列追加を含むLNG部門での協力についての戦略的協力協定
また、現在のLNG計画に限らず、いろいろな事業分野での協力拡大も。

(三菱商事発表)
これまでの両社の信頼関係をさらに発展させ、エネルギー事業分野での協業のみならず、資機材調達など幅広い分野を対象に、更なる協業を検討

 国際協力銀行(JBIC)

日本企業が参加する Gazpromの計画への資金確保の原則の覚書


参考 Sakhalin II
プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%→12.5%
・三菱商事 20%→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出  

2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

2) Rosneft と 丸紅、国際石油開発帝石、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

ロシア・サハリン島南西海域における炭化水素の共同での探査・開発及び生産に係る協力基本合意

経済産業省資源エネルギー庁が所有する物理探査船「資源」を本海域の一部において活用することや、JOGMECの「知見活用型構造調査」のスキームを活用することも検討。

地質調査や探鉱を進め、2020年代後半以降の本格生産開始を目指す。サハリン北東部のSakhalin II と並ぶ大型のLNG事業に育つ可能性がある。

日本勢は最終的に上流権益への出資比率を3分の1程度確保したい考え。


3) 丸紅、三菱重工、Rosneft

極東でのワールドクラスのガス化学設備建設のFS実施の協力協定

4) 丸紅、Novatek(ロシア民間最大のガス生産販売会社)

石油ガス分野での協力を目的とした覚書を締結。

Novatekがロシア北極圏ギダン半島にて計画する新規の北極 LNG-2プロジェクトの上中流開発、LNG 取引及び輸送、ガス関連インフラの開発、石油製品取引に関する協業機会を検討する。

5) 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) とイルクーツク石油 (Irkutsk Oil)

東シベリア地域における新たな共同探鉱事業創設、油ガス田の生産性向上に資する共同スタディ実施等に向けた覚書

JOGMECは、2003年1月の日露首脳会談で採択された「日露行動計画」、その後2007年6月の日露首脳会談での「極東・東シベリア地域での日露間協力強化に関するイニシアティブ」に基づき、極東・東シベリア地域における探鉱促進による我が国への石油供給源の多様化ならびに日露民間企業の協力促進の一環として、2007年からINKと共同で地質構造調査事業を実施した。

これまでの探鉱作業により、複数鉱区で原油・ガスを確認しており、一部鉱区での発見油田については、テスト生産を経て、現在、開発・生産段階への移行をロシア当局に申請中であり、2016年末までの承認取得を見込んでい る。

今回、隣接地域に連携を広げる。

Irkutsk Oil は、イルクーツク州で最大の上流開発会社で、主な事業は原油・コンデンセートの生産販売。イルクーツク州およびサハ共和国(ヤクーチア)を中心に23の探鉱・生産ライセンスを保有。

6) 日揮

サハリン州政府と超小型 LNG の事業可能性を探る調査に向けて覚書を交わす。
年産12千トンの液化設備をサハリン東部に設け、LNGを同州西部に運んで家庭や産業向けに供給する。
ガスパイプラインの設置が難しい地域もあり、液化して輸送することで、これまでディーゼルや石炭だったエネルギー源を多様化する。


極東地域の産業振興:

1) 双日、日本空港ビルデング、海外交通・都市開発事業支援機構、ロシア連邦ハバロフスク空港会社

ロシア連邦極東地域に所在するハバロフスク国際空港において新旅客ターミナル整備運営事業を共同で実施するための協議を更に推進することを確認した。

2) 北海道銀行などが出資する「北海道総合商事」や、野菜の栽培施設の建設などを手がける「ホッコウ」

極東のサハ共和国の首都ヤクーツクに 1000平方メートルの温室ハウスを建設し、9月からトマトの試験栽培に取り組んできたが、事業化のメドが立ったことから、今の30倍あまりにあたる3.2 ヘクタールのハウスを新たに建設することで合意した 。

医療・健康分野:

1) 三井物産

① ロシアの食糧大手 Rusargo と資本・業務提携をめざす覚書を交わす。出資額は数十億円とみられる。

Rusagro は穀物や食用油、畜産を手がけ、2015年度の売上高は約1400億円 で、ロンドン証券取引所に上場している。

経営ノウハウや日本の農業技術をRusagro に提供し、アジアやロシア国内での販売拡大を後押しする。既に出資するロシアの食用油と穀物を扱う企業との相乗効果も探る。

② ロシアの製薬大手R-Pharm に出資したうえで医薬品の販路拡大などで提携

R-Pharm はインドなどの製薬会社からライセンス供与を受けた医薬品を製造する。

三井物産は150億~200億円を投じて株式の約10%を取得する見通しで、提携によって医薬品の種類を増やし、海外の販路も開拓する。

なお、富士フイルムは、12月14日、ロシア有数の製薬企業であるR-Pharm JSCと、ヘルスケア領域を中心に包括的な事業提携を進めることで合意したと発表した。

先端技術の分野:

1) 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、Ruselectronics(ロシア最大級の国営企業 Rostecの子会社)

リチウム資源開発に関する覚書を締結。

Ruselectronicsのリチウム回収技術を用いて塩湖からリチウムを回収する事業について、JOGMECが日本企業との橋渡し役を務める内容。

2) 富士通、ロシアのソフトウェア大手アビーなど

AI (人工知能) を使った文書管理のシステム開発で協力

中国商務部は12月12日、同国の「市場経済国」認定を見送った米国とEUをWTOに提訴したと発表した。日本に対しても近く提訴に踏み切るとみられる。

WTOの紛争処理手続きに基づく個別協議を米国とEUに要請、協議が平行線をたどった場合、WTOの紛争処理小委員会(パネル)を設置して判断を委ねることになる。

ーーー

中国は2001年12月にWTOに加盟した。

その際、中国以外のWTO加盟国が、中国産品についてアンチダンピング 措置又は相殺措置に係る調査を行う際の価格比較及び補助金額の算定に関し、中国を「非市場経済国 (Non Market Economy)」として扱う特例が、加盟後15年間認められた。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国で、すべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能な価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める」と規定している。

この結果、「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

これまでにロシア、ブラジル、ニュージーランド、スイス、オーストラリアなど81国(2016/2時点)が中国の市場経済国家の地位を認めた。

中国はWTO加盟後 15年が過ぎた12月11日付けで市場経済国に認定される取り決めだと主張してきたが、日米欧は受け入れなかった。

中国は過剰生産設備の解消が遅れ、鉄鋼などのダンピングが世界的に問題視されている。

中国が「市場経済国」になれば、ダンピングの判断は中国の輸出価格が中国国内の価格に比べて安い場合となる。
しかし、国内の設備過剰により鉄鋼製品の国内価格が国際価格よりも大幅に安いため、輸出価格が第三国の国内価格より安くてもダンピングとみなされないこととなる。

中国国内価格 中国輸出価格 第三国国内価格
非市場経済国の場合:

ダンピング認定可

市場経済国の場合:

ダンピングでない

米政府は11月23日、中国を「市場経済国」と認定しない方針を明らかにした。

欧州委員会は11月9日、輸入製品が不当にEU域内で安く販売された場合に適用する、反ダンピング課税の算出に関する制度改正案をまとめた。

WTO上の義務に違反して中国から損害賠償を求められるおそれのある事態を回避し、同時に「市場経済国」として認定することによってもたらされると考えられる安値競争に対抗できなくなるという事態をも回避するために、EU域内での新たな通商上の救済措置を策定することを選択したこととな る。

経済産業省は12月8日、中国のWTOでの立場について、引き続き「市場経済国」と認定しないことを決めたと発表した。

2016/12/1  米、中国の「市場経済国」認定見送り

ーーー

中国のWTO加盟の際の協定の15条でこれに関して規定している。

Article VI of the GATT 1994, the Agreement on Implementation of Article VI of the General Agreement on Tariffs and Trade 1994 ("Anti-Dumping Agreement") and the SCM Agreement shall apply in proceedings involving imports of Chinese origin into a WTO Member consistent with the following:

(a) In determining price comparability under Article VI of the GATT 1994 and the Anti‑Dumping Agreement, the importing WTO Member shall use either Chinese prices or costs for the industry under investigation or a methodology that is not based on a strict comparison with domestic prices or costs in China based on the following rules:

(i) If the producers under investigation can clearly show that market economy conditions prevail in the industry producing the like product with regard to the manufacture, production and sale of that product, the importing WTO Member shall use Chinese prices or costs for the industry under investigation in determining price comparability;

(ii) The importing WTO Member may use a methodology that is not based on a strict comparison with domestic prices or costs in China if the producers under investigation cannot clearly show that market economy conditions prevail in the industry producing the like product with regard to manufacture, production and sale of that product.

(d) Once China has established, under the national law of the importing WTO Member, that it is a market economy, the provisions of subparagraph (a) shall be terminated provided that the importing Member's national law contains market economy criteria as of the date of accession.

      In any event, the provisions of subparagraph (a)(ii) shall expire 15 years after the date of accession. In addition, should China establish, pursuant to the national law of the importing WTO Member, that market economy conditions prevail in a particular industry or sector, the non‑market economy provisions of subparagraph (a) shall no longer apply to that industry or sector.

まとめると次のとおりとなる。

Case 輸出価格との対比
Article VI of the GATT 1994 等の適用 すべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合
(具体的定義なく、各国が判断)
代替国の価格
中国との条約 (a)(i) 明らかに市場経済条件を満たす場合 中国の価格
(a)(ii) 市場経済条件を満たすとは明確にいえない場合 最初の15年間 代替国の価格
15年経過後 ??(規定がexpire)

問題は、 (a)(ii) の条項が expire した場合で、市場経済条件を満たすとは明確にいえない場合にどうするかが明記されていないことである。 (輸入国が、中国の市場経済を認めた場合は、規定(a) は終了するとしている。)

中国の立場は、15年経過で(a)(ii) が規定する「代替国の価格」適用が無くなり、中国の価格との対比とすべきだということになる。

それに対し、日米欧の立場は、原則の代替国価格とすべきだということになる。
(しかし、それなら、
(a)(ii) が15年経過でexpire するという条項を入れる必要はない。)

WTOの紛争処理小委員会の判断がどうなるかで決まる。

なお、米国では、1930年関税法第771条(18)(B)で、ある国が非市場経済国であるかどうかを判断する基準が決められて おり、これに従って判断するとしているが、国内法よりも条約が優先する筈で、WTOの判断が出れば、これに従う必要がある。


米連邦準備理事会(FRB)は12月13-14日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で1年ぶりに利上げを決めた。

政策金利であるFederal Fund 金利(FF金利)の誘導目標を0.25%引き上げ、0.50~0.75%とした。新たな政策金利は15日から適用する。

利上げはイエレン議長ら投票メンバー10人の全員一致で決めた。

さらに今後、2017年に3回、2018年に3回の利上げを見込んだ。

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米国は、金融危機に対応するため、2008年11月~2010年6月に量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )を実施し、1兆7250億ドルが供給された。

米国の景気回復ペースの鈍化を受けて、2010年11月~2011年6月に実施されたQE2では6000億ドルが供給された。

更に、労働市場を刺激して景気を回復させるため、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきた。

2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。

2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響 

その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。

そして、2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識 に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%~0.25% から0.25%~0.50% に引き上げ、2016年中に4回の利上げを予想した。

今後の利上げの条件としては、「雇用情勢」と「物価」を挙げた。

2015/12/17 米国、利上げ

当初、2016年に4回の利上げを想定したが、5回開催された連邦公開市場委員会ではいずれも見送られた。

8月26日にJanet Yellen FRB議長がJackson Hole Economic Policy Symposium での講演で、「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と述べたことで米国の利上げ観測が強まった。

2016/8/29 米国の利上げ観測強まる

9月は利上げを見送ったが、年内の追加利上げに意欲を示した。3人の委員が利上げを主張した。

11月 は利上げの条件は整ってきたとしつつも、米大統領選挙の結果などを見極める考えを示唆した。8名がこれに賛成し、2名が利上げを主張した。

ーーー

今回の声明文では「労働環境と物価上昇率の実績と見通しに鑑みて、政策金利を引き上げると決断した」と強調した。

米国の2016年第3四半期のGDPは、速報では年率 +2.9% であったが、確定値は 3.2% となった。

付記 12/22 発表の最終確定値は更にアップし 3.5%


米労働省が12月2日に発表した11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が 178千人増となった。失業率は4.6%と、約9年ぶりの水準に改善した。

消費者物価指数の動きは下記の通り。11月実績は前年比+1.7%に上昇した。

 

FRBでは、過去のエネルギー・輸入価格の低下による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増すにつれ、中期的に2%に向かって上昇すると予測する。

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