「no」と一致するもの

Braskem721日、砂糖キビエタノールからのグリーンプラスチックに次いで、2003年から新しい原料、廃プラからつくったナフサを使用開始すると発表した。

このナフサは、カナダのWastechグループの子会社で、ブラジルBahia州で廃棄物処理を事業とするNovaenergiaが同州に建設する最新技術によるリサイクル工場で製造する。

工場では毎日
450トンの廃棄物を処理し、廃プラを合成石油に変換する。
36トンの廃棄物から30キロリットルの軽油を製造、これからナフサ、燃料油、低硫黄ディーゼル油を製造する。
この処理と、工程での他のリサイクル物質回収により、ゴミの埋め立て量が
50%減少する。

Braskemは当初、廃プラからのナフサを年間140万リットル購入し、Camaçari Complexで使用する。

Novaenergiaのリサイクル工場建設の投資額は約1600万ドルで、2012年末に完成する。

Braskemでは本件は、持続可能性へのコミットメントと、環境に優しい技術を求める戦略に合致するものとしている。

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Wastech グループはこの技術を2008年にドイツのClyvia Technologyから導入した。

廃棄物からディーゼル油を製造するのが目的で、同社ではこれを'liesel'と呼んでいる。Clean(ポルトガル語でlimpardiesel から作った語で、環境をcleanにする意味。
契約ではブラジルで
5年の独占権があり、50までのリサイクル工場を建設できる。

2011年7月9日、南スーダン共和国:Republic of South Sudanが分離・独立した。首都はジュバ(Juba)。
アフリカ大陸では
54番目の国。
国連は7月14日、国連加盟を承認した。
193番目の国となる。

22年間続いた南北間の対立が「南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)」によって終わり、1月に行われた国民投票の結果、南部が独立することが決まった。

2011/2/12 スーダンと中国

しかし、まだ多くの問題が未解決で、南北スーダン間で継続交渉中である。

1)Abyei暫定統治地域

南北の境界付近にあり石油資源が豊富なAbyeiでも住民投票が行われる予定だったが、南北が対立し、投票は無期限延期された。
CPAでは特別地域とされ、南北双方の軍の侵入が禁じられている。

北部政府軍は5月21日、Abyeiに進攻し、南部のスーダン人民解放軍との激しい戦闘の末、同地を掌握した。
国連安全保障理事会は翌22日、北部政府軍の即時撤退を求める声明を出した。

2)南スーダン産出石油の収益の南北利益配分

南部には油田の4分の3が集中するが、精製施設や輸出港へと続くパイプラインは北部にしかない。

2005年の和平合意に基づき、南北は石油収入を暫定的に折半してきたが、南部独立に際し、北部は引き続き「折半」もしくはそれに相当する「パイプライン使用料」を要求し、支払わなければパイプラインを封鎖するとしている。

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南スーダンからケニアへのパイプライン計画が注目されている。

この計画は2つの計画を結合するものである。
一つは南スーダンの石油の輸出であり、もう一つはウガンダの石油の輸出である。

1)南スーダン石油の輸出

これが完成すると、北スーダンのGreater Nile Oil Pipelineを経由せずに、南スーダンの石油を輸出できるようになる。
南スーダンの首都
JubaからケニアのLamu島までの1400kmのパイプラインで、Lamu島に輸出ターミナルを建設する。

2010年3月の外電は、豊田通商がこれを計画していると報道した。

それによると、能力は日量45万バレルで、建設費は15億ドル、20年後にケニアと南スーダン政府に引き渡されるとされた。

2)ウガンダの石油の輸出

ウガンダではLake Albert Rift Basinで石油が発見されている。

英国の石油・ガス探査会社のTullow Oil PLC331日、ウガンダに保有する鉱区のBlock 123Aの権益の3分の1ずつを中国海洋石油(CNOOC)とフランスのTotalに譲渡すると発表した。売却金額は合計で29.33億ドル。

Tullow Oil PLCHeritage Oil PlcLake Albert Rift Basin鉱区のBlock 1及び3A(埋蔵量合計35億バレル)の権益を50%ずつ保有していたが、20107月にHeritage の権益を買収した。
しかし、開発権の取得に対するキャピタルゲイン課税をめぐってウガンダ政府と折り合いがつかず、
2鉱区の開発は事実上、棚上げとなっていた。

ウガンダ政府は本年に入り、CNOOCTotal2社を参加させることを条件に両鉱区及びBlock 2の開発を認可した。

ウガンダ国内に製油所を建設し石油を供給するが、残りは輸出する予定。

このため、南スーダンからケニア向けのパイプラインに繋ぎ、ウガンダの原油も輸送する構想が生まれた。

 

なおスーダンでは、PetroChinaが油田の権益の40%を獲得し、開発を手掛けており、スーダンの石油の60%が中国に輸出されている。

Greater Nile Oil PipelineにはPetroChinaが40%を出資し、運営を担当している。

2011/2/12 スーダンと中国

中国海洋石油(CNOOC)は、破綻したカナダのオイルサンド開発会社OPTI Canadaを現金と債務合わせ21億米ドルで買収することで合意した。

OPTI Canada1999年にイスラエルの石油会社Ormat IndustriesがカナダのSuncor Energyとの50/50JVとして設立し、アルバータ州のLong Lakeでオイルサンドの試掘を始めた。

しかし、
Suncorが撤退、OPTIは上場と借入で資金を集め、カナダのNexenと組んで商業生産を開始した。
現在、
OPTIが権益の35%Nexen65%を保有し、Nexenがオペレーターとなっている。

Long Lake Project SAGDSteam Assisted Gravity Drainage)によるビチュメン採掘の設計能力が日量72千バレルで、Upgrade設備はOrmat Industriesが開発したOrCrude法(ガス化設備と水素化分解設備を一体化)を使用し、主として低硫黄分のPremium Sweet Crudeを日量58.5千バレル生産する予定。
(現在のビチュメン生産は
28,300バレル/日)

これに続き南に隣接するKinosis鉱区の開発を計画している。SAGDを先行させるが、ビチュメン日量14万バレルの認可を得ており、まず4万バレルでスタートする。これが成功し、採算が取れるようなら Upgrade設備を建設する。

将来はCottonwood鉱区、Leimer鉱区も手掛ける。

OPTIは資金繰りが悪化、債権者との交渉を続けていたが、話し合いがまとまり、713日に Albertaの裁判所で再建計画手続きを開始したばかり。
再建計画では新株を発行して債務と交換することとなっている。

720日のOPTI発表によると、CNOOCによる21億ドルの買収額の内訳は以下の通り。
 ・第二抵当の債権
1,750百万ドルを1,179百万ドルで取得
 ・全株式を
34百万ドルで取得(10.12ドル)
 ・第一抵当の債権
825百万ドルを引き継ぐ
 ・その他の債権
37.5百万ドルを引き継ぐ

取引成立には第二抵当債権の債権者の過半の承認を要する。
9月に会合を開く。株主総会の承認は不要。
カナダと中国の当局の承認と
Albertaの裁判所の承認が必要。

仮にこの取引が成立しない場合は、
713日に開始した再建計画手続きを進めることとなる。

ーーー

中国勢の北米のエネルギーへの進出状況は以下の通り。

2005/4   CNOOCカナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2005/6   Sinopecカナダのアルバータ州のNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2009/9/10   PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 (Athabasca Oil Sands)
2010/4/16   Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 (ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada)
2010/10/18   CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加 Niobrara shaleを追加
2011/2/16   PetroChina、カナダの天然ガス権益取得  Encana Corporation から天然ガスの権益の50%を買収

三井物産は720日、Dow全額出資のSanta Vitória Açúcar e Álcool LtdaSVAA)の株式50%を増資引受にて取得すると発表した。
ブラジルでサトウキビ農園運営からバイオポリエチレン等、バイオ化学品製造までの一貫事業を合弁で行う。

ミナスジェイラス州に2013年以降、年産能力24万klのバイオエタノール工場を複数建設する。
2015年にはこのエタノールを原料に年産35万トンの植物樹脂工場を建設する。植物樹脂工場としては世界最大規模。

名称 Santa Vitória Açúcar e Álcool Ltda
Santa Vitória Sugar and Ethanol Inc.)
所在地 ブラジルMinas GeraisSanta Vitória
事業内容 サトウキビ農園運営、化学品原料としてのバイオエタノール製造事業。
バイオエチレン、バイオポリエチレン及びバイオマス資源からの化学品製造販売事業へ順次拡大予定。
出資比率
(出資後)
Dow50%
三井物産:50%
三井投資額 2億米ドル

 

プロジェクト概要

三井物産とDowにとり、これは北米の電解事業に続く戦略的パートナーシップの第2号案件となる。

2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 

ーーー

SVAAの歴史は20077月に遡る。

Dowは2007年7月、ブラジルのバイオエタノール大手のCrystalsev と共同で、ブラジルでサトウキビからワールドクラスのLDPE工場の建設計画を明らかにした。

Crystalsev はサンパウロ州の砂糖とエタノール製造の9社の販売を担当する会社で、エタノールの輸出ではブラジル最大。
Crystalsevの親会社が
Santelisa Valeである。

MOUによれば、両社はブラジルで合弁会社SVAAを設立して、Minas Gerais州のSanta Vitoria 350千トン能力のLDPE工場を建設、2011年に生産を開始する。
DowのPE技術(DOWLEXT法)とCrystalsev のエタノールのノウハウと経験を統合し、Dowのブラジルの需要家に供給、輸出も考えるとした。

2007/7/27 Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造

しかし、Santelisa Valeの経営が悪化、DowSantelisa Vale20092月、この計画の延期を発表した。

200910月にフランスのコモディティ企業のLouis Dreyfus CommoditiesがSantelisa Vale を買収した。

Louis Dreyfus は自社の子会社のLDC BioenergiaとSantelisa Vale を統合し、新会社LDC-SEVを設立、13の砂糖とエタノールの工場(圧搾能力 40百万トン)を引き継いだ。
Louis Dreyfusが
60%、 Santelisa Vale株主が18%、他出資者が9%、Goldman Sachsと現地銀行が13%を出資する。

20106月に、DowSVAAの旧Santelisa Valeの持分を買収し、100%子会社としたが、Dowにとっては当初の提携相手で原料供給元を失ったこととなる。

このため、単独で農場経営~バイオ化学品事業を行う資金負担、リスクを避けるため、三井物産と提携したと思われる。

 

 

ConocoPhillipsの取締役会は714日、同社をスピンオフにより Exploration & Production事業とRefining & Marketing事業の2つの独立した企業に分割し、それぞれを上場する計画を承認した。

これにより、競争力があり、多様化したソースを持つ専業のExploration & Production会社が誕生する。
また下流の
Refining & Marketing会社は更なる合理化を進める。

分割には株主の承認は不要で、2012年の上半期に完了する予定。資産負債の分割や経営陣の布陣、具体的手続きは直ちに検討を開始する。  

付記

ConocoPhillipsの取締役会は2012年4月4日、分離を承認した。
Exploration & Production会社がConocoPhillipsの名称を引き継ぎ、下流のRefining & Marketing会社はPhillips 66となる。Phillips66は上場する。

4月30日に、株主は2株につきPhillips66の株1株を交付される。

新しいConocoPhillipsはPhillips66の株を持たない。
 

ConocoPhillips2002年にPhillips PetroleumConocoが合併して誕生した。

それ以前の20007月に、PhillipsChevronが石化部門を分離して50/50JVChevron Phillips Chemicalを設立しており、現在はConocoPhillips50%株主となっている。

ーーー

1)ConocoPhillips Exploration & Production事業

分割により、専業としては米国最大のE&P companyとなる。

2010年生産量(原油換算 日量千バレル)

 米48州   440
 アラスカ   240
 カナダ   270
 北海   350
 ロシア/カスピ海   50
 アジア太平洋   280
 中東/アフリカ   120
 合計   1,750

今後の成長のベースは以下の通り。

アジア太平洋:Australia Pacific LNG 50%出資)、マレーシア、インドネシア
北海:
Jasmine, Clair, Ekofisk, Eldfisk
カスピ海:Kashaganガス田
       
EniShellTotalExxonMobilKazMunayGas 16.81%
       ConocoPhillips 8.40%Inpex 7.55%
48州:オイルシェール(Eagle Ford, Bakken, Barnett, Permian
カナダ:
SAGD法によるオイルサンド
      
FCCL Partnership(Cenovus Energy との50/50JV)、Surmont(Totalとの50/50JV

2)ConocoPhillipsRefining & Marketing事業

 

グローバルな精製能力は日量 2.4百万バレルで、米国内は2.0百万バレル。

 

 

宇部興産とDow Chemicalは7月6日、リチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。

・社名 : Advanced Electrolyte Technologies LLC
・所在地 : 米国ミシガン州
・代表者 : 宇部興産から派遣
・設立 : 設立の認可が取れ次第ただちに
・出資比率 : 宇部興産(米国子会社) 50%、Dow 50%

宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。
電解液事業については、高純度電解液に添加剤を加えることで電池性能を向上させるというコンセプトのもと製品を拡充した。

宇部興産はグローバルな生産・販売体制を早急に構築することが不可欠であると判断し、Dowとの折半出資により合弁会社を設立する。

Dowにとってはエネルギー貯蔵関連の製品群に電解液事業を加えることで、Energy Materials事業の成長戦略を強化する。
JVの製品はDowのリチウム電池JVのDow Kokamなどに供給する。

代替エネルギーはDowの戦略の中心の一つで、住宅の屋根に設置するDow Powerhouse solar shingle(太陽光発電屋根)を第4四半期に発売する計画。

合弁会社は今後順次、米国・中国・欧州に年産5000~1万トンの電解液の製造設備を有する子会社を設立する予定だが、Dowでは最初のプラントはMidlandに建設し、2012年にスタートアップするとしている。

宇部興産は、電解液の技術を合弁会社にライセンス供与する。

ーーー

電池材料は、宇部興産が最重点事業とする4つの事業領域(医薬・電池材料・ファインケミカル・ポリイミドチェーン)の一つ。

本年2月にLiB用の電解液とセパレーターの両事業を統合し、「機能電池材料ビジネスユニット」を新設するとともに、両事業に関わる開発機能を統合する組織として「先端エナジーマテリアル開発センター」を新設した。

別途、欧州及び北米におけるLiBの需要拡大に対応するため、欧州製造拠点のスペインのUBE Chemical Europeに自動車や電力貯蔵用途の大型電解液開発体制を整備した。

今回のJVで、日本と欧州に開発拠点、日本と米国及び中国・欧州に製造拠点を持ち、自動車メーカー、電池メーカーに供給する。

同社の電池材料の戦略は以下の通り。

 電解液事業
  ・高性能電池向けの高機能電解液では技術開発力トップの地位を維持
  ・コスト競争力の強化とさらなるシェアの拡大
  ・車載・電力貯蔵LIB電解液の積極的展開

 セパレーター事業
  ・伸長する中国市場におけるデファクトスタンダードの堅持
  ・生産技術の高度化と増産設備の立上げ
  ・車載・電力貯蔵LIBセパレーター拡販
  ・宇部マクセル社での開発促進

宇部興産と日立マクセルは本年1月リチウムイオン電池用塗布型セパレーターの製造および販売等を行う合弁会社を設立することで合意した。(宇部 51%、日立マクセル 49%)

宇部興産はPEとPPの積層膜に均一な微細孔構造を形成する乾式プロセス技術でセパレーターを量産しているが、この積層膜に、マクセルの分散塗布技術を利用して無機微粒子によるコーティング膜を形成することで、高温耐熱性をさらに高め、異常発熱時の熱収縮を小さく抑え電池内部での短絡を防ぐもの。 

社名:宇部マクセル株式会社
所在地 京都府乙訓郡大山崎町

付記

宇部興産は2012年4月、車載用リチウムイオン二次電池向けなどでの需要増大に対応するため、堺工場で新たにセパレーター製造設備を増強することに着手した。

現在、セパレーターを宇部ケミカル工場のみで生産しているが、堺工場でも2013年度初めより生産開始し、段階的に能力増強を実施する計画で、2014年度末には2工場合わせた生産能力を2億m2に拡大する。 

付記

宇部興産は2012年4月、中国に炭酸ジメチル製造のJV設立を決めた。
COを原料としてDMCを製造する宇部興産独自の気相ナイトライト技術を使用するもので、宇部興産は、合弁会社からDMCを購入し高純度化することで電解液用途での自家消費や外販を行う。

社名:河南碳一新能源有限公司(Henan Tanyi New Energy Co., Ltd.)
場所:
河南省濮阳市
出資者:
中原大化 51%、宇部興産 24.5%、ハイケム 24.5%
能力:10万トン

宇部興産は宇部に15,000t/年のプラントを有している。

宇部興産はリチウムイオン二次電池と電解液で重要な特許群を保有しており、パテント・リザルトの2010年の有機電解液に関わる調査では、特許の質と量から総合的に見た評価で総合力1位にランキングされている。

同社はこのたび、TDKが2005年に買収したポリマーリチウム電池製造販売会社Amperex Technology(本社:香港、中国・東莞市に製造拠点)に、特許の一部をライセンスし、ビジネス関係を強めていくことで合意した。

宇部興産では、ライセンス供与により、"機能性電解液"を通じて、リチウムイオン二次電池市場でのプレゼンス強化を図ると共に、ATLと友好的な関係を構築していくとしている。

ーーー

電解液の世界シェアは以下の通りとされる。(テクノ・システム・リサーチ 2010年数量ベース)

  宇部興産 24%
  三菱化学 17%
  PANAX ETEC(韓国) 13% (第一毛織から事業譲渡を受ける)
  
Techno Semichem(韓国) 9%
  電池メーカー自製 13%
  その他 24%

三菱化学はリチウムイオン二次電池の主要四部材(正極材、負極材、電解液、セパレーター)の全てを扱っており、同社によると電解液の2009年のシェアは25%で、英国、米国での新設を合わせ2015年には40%に引き上げるとしている。 

2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

インドのコンツェルン Aditya Birla Group(世界4位のカーボンブラックメーカー)は621日、米国のカーボンブラックメーカーのColumbian Chemicalsを買収する契約を締結したと発表した。

買収価額は875百万ドルで、買収によりAditya Birla Group はカーボンブラックの能力が90万トンから200万トンとなり、世界一のカーボンブラックのメーカーとなる。

Aditya Birla インド、タイ、中国、エジプトの4か国6プラントに、Columbian Chemicals の米国、カナダ、ブラジル、ドイツ、ハンガリー、スペイン、イタリー、韓国、中国の9か国11プラントを加え、12か国に17の工場を持つこととなる。

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Aditya Birla GroupBirla 一族が支配するコンツェルンで、金融、IT/ITアウトソーシング、アパレル、絶縁体、カーボンブラック、肥料等のAditya Birla Nuvo、アルミ産業のHindalco-Novelis、携帯電話通信のIdea Cellular、 セメント及び繊維産業のGrasim Industries などインド経済において重要な位置を占める。

Hindalco-Novelis はアルミ圧延では世界一、精錬ではアジアでトップ3社の一つで、銅の精錬では一工場では最大。
2007年にNovelis Inc.を買収した。

カーボンブラックでは世界4位、ビスコースステープル繊維で世界一、アクリル繊維で世界5位、セメントで世界8位となっている。

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Columbia Chemicalの歴史はカーボンブラックが産業用に初めて利用されるようになった1860年に遡る。
1922年にいくつかの小さなメーカーが合併してColumbian Carbon Companyが設立された。

1986年に同社は鉱山会社のPhelps Dodge Corporation に買収され、以降20年余で、欧州に事業を広め、南米とアジアの事業を買収した。

なお、Phelps Dodge 2007年にFreeport-McMoRan に買収され、Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc.と改称した。

20063月に同社は韓国の東洋製鉄化学(DC Chemical)とJPMorgan Chase子会社の投資会社One Equity Partners.6億ドル(負債込み)で買収された。前者が67%、後者が33%を保有した。

DC Chemical2001年に設立された化学品商社で、化学品ではベンゼン、トルエン、TDIを生産している。

中国に山東
DC Chamicalを設立した。
Shandong Haihua Coal ChemicalとのJV。ピッチ、カーボンブラックオイル、ナフタレン、コールタールを生産)

2005年にSodiff Advanced Materialsを買収、ポリシリコンの製造を開始した。
2009年にOCIに改称した。

DC Chemical 2009年にポリシリコンに事業を集中することを決め、Columbia Chemicalの持分をOne Equity Partners に売却した。

OCIは現在、ポリシリコン第3期のデボトルネッキング中で、能力は2011年末に42千トンとなる。
更に第
420千トンを建設中で、2012年末に完成するが、本年4月に第5期の建設を発表した。能力は1系列では世界最大の24千トンで、2013年末の完成時には合計能力は86千トンとなる。

中国国家統計局は7月9日、6月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で6.4%上昇したと発表した。

内訳は、全体の3割を占める食品が前年同月比14.4%、食品以外は3.0%の上昇だった。

最近、中国の食卓に欠かせないブタ肉価格が季節的要因に反して大幅に上昇している。(5月は前年同月比で40.4%、6月は57.1%上昇した。豚肉のウェイトは消費の3%、食料の約1割を占めるとされる。)
また、南部地域で日照りや洪水が発生し、野菜の生産量が減少したことにより、野菜価格の低下傾向にストップがかかっている。

食品価格の上昇は低所得層の生活を直撃し、生活苦で暴動が起きる事態になっている。

また、6月の工業生産者出荷価格指数(PPI)は前年同月に比べ7.1%上昇した。

中国政府は経済政策の最優先課題として「インフレ抑制」を掲げ、今年の通年のCPI上昇率を「4%程度」とする目標を掲げたが、目標達成は困難な情勢。

このため、景気には減速感も表れているが、中国人民銀行は当面、物価抑制に軸足を置いた金融政策運営を続ける。

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中国人民銀行は6月14日、預金準備率を50ベーシスポイント引き上げた。預金準備率の引き上げは昨年10月以降で9度目、年初から6度目で、今回の引き上げで預金準備率は過去最高の21.5%となる。

 

付記
中国人民銀行(中央銀行)は11月30日、預金準備率を12月5日から50ベーシスポイント引き下げると発表した。欧州債務危機が輸出と成長を脅かす中で、2008年以来で初めての引き下げで、21.0%となる。

中国人民銀行は7月6日、金融機関の預金と貸出の基準金利(期間1年)をそれぞれ0.25%幅引き上げると発表した。
利上げは今年3回目、昨秋からの引き締め局面で5回目で、預金が3.50%、貸出が6.56%となる。

 
    金利率 
 預金   貸出
2010    
 10/20  2.50  5.56 
 11/26  2.75  5.81
2011    
  2/9  3.00  6.06
  4/6  3.25  6.31
  7/6  3.50  6.56

 

 

Sinopecはこのたび、江蘇省政府との間で連雲港市の徐ウ新区に年産32百万トン製油所を建設することで合意した。

投資額は1000人民元(155億ドル)を超えると見られており、これが完成すると中国で初めて能力が30百万トンを超える製油所となる。 

計画は2期に分かれ、第一期(2013年建設開始、2016年完成)では年産12百万トンの製油所と年産100万トンのパラキシレン、第二期(2016年建設開始、2020年までに完成)では20百万トンの製油所と年産100万トンのエチレンを建設する。

Sinopecと連雲港港口集団(Lianyungang Port Group)は30万トンの原油桟橋の建設契約を締結した。Sinopec70%、港口集団が30%を出資するJV2013年に建設を開始する。

シノペックの上級幹部によると、シノペックは多国籍企業と協力し、共同で誘導品を生産することを検討している。

中国の石油需要は2020年末までに昨年のレベルから55%増えると見込まれており、この計画はこれに対応するもの。


徐ウ新区は江蘇沿岸部開発戦略を実施するために設立した開発区。

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連雲港市は新ユーラシア・ランド・ブリッジの東側の橋頭堡で、中部と西部の一級行政区に連絡している。東部は海をはさんで日本や韓国などの北東アジア諸国を望んでおり、中部地区と西部地区が最短距離で海に出る重要な拠点であり、対外開放の重要な拠点でもある。

中国国務院は5月31日、江蘇省連雲港市に「国家東・中・西部地域協力モデル地区」を設立することを認可した。

モデル区は、徐ウ新区、連雲港経済技術開発区、連雲港国際ビジネスセンター、連雲港区、連雲港保税物流センターからなっており、計画では徐ウ新区をパイロット地区として、地域協力モデルの刷新を図る。

海路の利便性向上、協力サービスシステムの構築、産業協力基地の建設、協力体制の刷新に力を入れ、東・中・西部地域の科学的発展を推進する体制づくりに取り組み、10年後をめどに中西部地区の対外開放における重要な窓口、東中西産業提携に向けたモデル地区、地域協力体制に向けた試験地区を完成させる計画。

新ユーラシア・ランド・ブリッジは中国とヨーロッパを鉄道によって結ぶ物流ネットワーク。

アジアとヨーロッパをつなぐ鉄道網にはシベリア鉄道がある。

国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が1960 年代に「Trans-Asian Railway Network 構想」を打ち出した。
シンガポールからイスタンブールまでを結ぶ鉄道網構想で、その後欧州やアフリカへ鉄道網を延伸していくもの。

新ユーラシア・ランド・ブリッジ(第2ユーラシア・ランド・ブリッジ)は中国の連雲港市からオランダのロッテルダム港まで結ぶ鉄道で、山東省、江蘇省、河南省、安徽省、陝西省、甘粛省、山西省、寧夏省、青海省、新疆自治区を通し、ロシアとの国境の阿拉山口で中国を出、その後、三つの路線でオランダのロッテルダム港に繋がる。全長10900キロで、30余りの国や地区に及んでる。

Solvay623日、中国にPVDF(ポリフッ化ビニリデン)Solef(R)、フッ素ゴムTecnoflon(R)、およびそれらの基礎原料のフッ化ビニリデンモノマー VF2 の工場を建設すると発表した。
アジアでのこれら製品の需要の伸びに対応する。

Solef PVDF はリチウムイオン電池、水の浄化用膜、石油・ガス採取などに使用される。

フッ素ゴムTecnoflonは自動車, 航空・宇宙, 石油掘削等の事業で、高度な耐熱性や耐薬品性が求められるシーリング部材の原料として広く使用されている。

工場は江蘇省常熟市の江蘇省常熟新材料産業園(Jiangsu Changshu Advanced Materials Industrial Park)のSolvayの工場内に建設される。

同産業園には、新規材料産業やファインケミストリー、バイ オケミストリー、医薬ケミストリー産業を中心に、Arkema DuPontArkema、ダイキン、台湾の華新麗華、上海の三愛富など国内及び国外の企業が投資している。

Arkema 20109月に、同工場で2011年初めにポリフッ化ビニリデン(PVDF)の生産を開始すると発表している
   
2010/10/20 Arkema、中国でPVDF生産 

Solvay2008年から同地で四フッ化エチレンPTFEの微粉を生産している。
同社では次期計画として
PVDFとそのモノマーを挙げていた。

同社は201010月、同地に高機能コンパウンド工場の建設を発表した。
2012年末のスタートを目標に、Polyphthalamide (PPA)Polyarylamide (PARA)、および変性PARAのコンパウンドを生産する。
これらはバリア性と耐燃料性で優れており、燃料システムに適したプラスチックである。

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Solvayのフッ素化学品事業は子会社のSolvay Solexisで扱っている。

Solvay20027月にMontedisonからフッ素化学品製造子会社のAusimont を買収した。

この買収に際し、米国FTCは、米国には両社とDuPont3社しかないとして、本件買収は競争を実質的に制限するとみなし、米国の事業を180日以内に売却すること、PDVFに関する知財権をライスンスすることを条件とした。

このため、Solvayは米国子会社Solvay Fluoropolymers3M100%子会社のDyneon LLCに譲渡した。
Solvay FluoropolymersDyneon LLCPVDFモノマーの製造のための50/50JV Alventia LLCを持っていたが、この持分もDyneonに譲渡した。

SolvayはこのAusimontを自社のフッ素化学事業のSolvay Fluoropolymersと統合し、200711日にSolvay Solexisとした。
(社名の由来は
SOLvayEXcellence In Scienceを組み合わせたもの)

同社の扱い製品は以下の通り。

パーフルオロポリエーテル(PFPE
  フッ素オイル、フッ素化液、フッ素系表面処理剤および中間体、誘導品
フッ素ゴム:Tecnoflon
四フッ化エチレン樹脂(PTFE
パーフルオロアルコキシ樹脂(PFAMFA)、アモルファス樹脂(TFE/TTD)、
エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂(
ECTFE
ポリビニリデンフルオライド樹脂(PVDF
フッ素系モノマー


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