「no」と一致するもの

Sanofi-Aventis216日、遺伝性疾患治療薬で世界最大手の米Genzyme Corporation を現金約201億ドル(174ドル)で買収する契約を締結した。

株主は現金に加えContingent Value Right (CVR:不確定価額受領権) を受け取り、新薬Lemtradaの開発が進んだ場合、または2011年に他の2つの新薬の生産数量が一定レベルに達した場合に、追加の支払いを受ける。

合計6つの基準があり、1株当たり1ドルが2件、2ドルが1件、3ドルが2件、4ドルが1件となっている。
権利は、2020年末か、4つの基準が達成された時の、いずれか早い時期に終了する。
権利は売買可能となっている。

取引は両社の取締役会の承認を受けており、第2四半期中に完了する見込み。

既にEUと米国の独禁法当局から承認を得ている。

ーーー

Sanofi-Aventis 20108月29日、Genzymeに対する185億ドル(1株当たり69ドル)の買収提案を公表した。

Sanofi-Aventisは7月29日にGenzymeに対し非公開で買収を提案した。
しかし、協議に入れないため、
Genzymeの株主に提案を説明するため公開したとしている。

買収を完了させるために「あらゆる選択肢を検討する」としており、敵対的買収も辞さない構えを示した。

2010/9/2 Sanofi-aventis、米Genzymeへの買収提案を公表

ーーー

Genzyme は業績が悪化しており、人員削減や事業売却を行っている。

9月13日にはGenetic Testing 事業(Genzyme Genetics)を925百万ドルで Laboratory Corporation of America (LabCorp) に売却する契約を締結した。 

1118日には積水化学に対し、Genzymeが展開している検査薬事業を売却する契約を締結した。

2010/11/24  積水化学、米国Genzyme Corporation の検査薬事業を買収

同社ではこれら事業売却で得た資金での自社株買いで、買収防衛対策をとった。

ーーー

Sanofi-Aventis は10月4日、1株69ドルでGenzyme の全株のTOBを開始した。

Genzyme118Sanofi Aventisに対し、取締役会が満場一致で169ドルの提案価格が安過ぎると考えていること、株主はこれを支持していること、Genzymeの価値を評価したものなら交渉するとしたレターを出している。

Sanofi-Aventisは、TOBに期限を12月10日としていたが、不成功に終わり、2011年1月21日まで延長した。
Genzyme
TOB不成功を受け、自社の主張が正しかったと述べている。

その後、両社は話し合いを続けた。

2011年1月に入り、両社の評価額の差を解決するための手段としてContingent Value Rightを採用する可能性の検討を始めている。

131日はGenzymeSanofi-Aventisに対して、due diligenceの実施を認めた。


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PetroChina210日、カナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドル(54.3億米ドル)で買収することで合意したと発表した。

British ColumbiaAlberta両州にまたがるCutbank Ridge事業を50/50JVとする。
Cutbank Ridgeでは2010年に400MMcf/d(日量4億立法フィート)の天然ガスの生産をしているが、新たなMontneyを加えると、約700MMcf/dとなる。
資産は
130万エーカーの土地、3,400kmのパイプライン、Hythe地下ガス貯蔵タンクを含む。

当面はJVの運営委員会の指揮下で、Encana が操業と製品販売を行う。

両社は20106に、EncanaHorn RiverGreater SierraCutbank Ridgeなどでの天然ガスのJV化の検討を行う覚書を締結し、交渉を続けていた。

Encanaはカナダと北米に以下の拠点を持っている。(緑は新開発地域)

既報の通りPetroChinaはスーダンで活動している。

PetroChinaは2010年7月にShellと共同で豪州の炭層メタン生産会社を買収した。

2010/3/12 PetroChinaShellと共同で豪州炭層メタン生産会社に買収提案

 

中国勢の北米進出状況は以下の通り。

2005/4   中国海洋石油カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2005/6   Sinopecカナダのアルバータ州のNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2009/9/10   PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 (Athabasca Oil Sands)
2010/4/16   Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 (ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada)
2010/10/18   CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加 Niobrara shaleを追加

 


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Merckは2009年11月3日にSchering-Plough の買収を完了した。

2009/3/11 Merck、米Schering-Plough を買収

2月3日に発表した2010年の決算では、Schering-Plough の売上高をフルに反映し、前年比で1.68倍となった。

しかし、税引後損益は前年の12,899百万ドルから、861百万ドルに激減した。

2009年には以下の特別利益107億ドルを含む。

Schering-Ploughの合併により、以前からのMerck/Schering-Plough Cholesterol Partnership の100%がMerckのものとなった。 このため、従来の持分をfair valueで評価替えした。→75億ドルの益
また、Merial Limited の50% をSanofi-aventisに40億ドルで売却→32億ドルの益

他に、無形固定資産の一時償却、退職金、停止設備の加速償却など、48億ドルの費用を落とした。

税引前で59億ドル、税引後では55億ドルの利益増となっており、これらの特別処理がなければ、74億ドルの利益となり、2008年とほぼ同じ水準であった。 

2010年では、主として合併に伴い、特別損失として11,896百万ドルを計上した。

無形固定資産一括処理、在庫評価損など  6,566百万ドル
In-process R&D 償却  2,441百万ドル
リストラ費用(退職金、停止設備の一括償却など) 1,986百万ドル
統合費用 396百万ドル
その他 507百万ドル
(合計) (11,896百万ドル)
税引き後 9,854百万ドル

この処理がない場合は税引き後損益は10,715百万ドルとなり、前年の実質ベースを45%上回ることとなる。

 

1兆円に近い額を一気に損に落として次期以降に備えられるのは、合併による収益力の急増があってのことである。


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GlaxoSmithKline23日、2010年の決算を発表した。(単位:百万ポンド)

  2008 2009 2010
売上高 24,352 28,368 28,392
 
一般営業損益 9,493 10,441 9,794
Legal charge -611 -591 -4,001
Major restructuring -1,118 -832 -1,345
本社損益ほか -623 -593 -665
営業損益合計 7,141 8,425 3,783
 
税引後損益 4,602 5,531 1,634

2010年の売上高は、2009年とほぼ同じで、通常の営業損益も若干の減少であるが、40億ポンドの法務費用を計上したため、リストラ費用と法務費用、本社費用を控除したネットの営業損益は前年の8,425百万ポンドから3,783百万ポンドに55%の減となった。この結果、税引き後損益も前年の5,531百万ポンドから1,634百万ポンドへと激減した。

同社はProduct liability、知財、税務、独禁法、販売慣行に関する米国政府の調査等、多くの法的問題を抱えている。

法務費用は2008年の611百万ポンド、2009年の591百万ポンドから、2010年は4,001百万ポンド(約5300億円)へと急増した。
2010年第4四半期に22億ポンドを引き当てた。

主たるものは、米国での販売慣行に関する米司法省コロラド支部の調査と、2型糖尿病治療薬rosiglitazone(商品名:Avandia)のproduct liabilityに関するものである。

司法省は、同社の安値販売(nominal pricing)について、Medicaid関連法に違反するかを調査している。

1990 Medicaid Drug Rebate Programでは最低価格の報告を義務付けているが、チャリティや政府施設への安値販売(nominal pricing)は除外される。
これを利用して、秘密裏に(報告なしの)安値販売をしてシェアを拡大する慣行が問題視された。

2008年にMerckは違反を認め、650百万ドルを支払った。

Avandia に関してはProduct Liability 訴訟が続出している。

2007年に医学雑誌に、Avandiaが心循環リスクを増加させるとの論文が掲載された。

欧州医薬品庁(EMA)は2010年9月、Avandiaの回収を命じた。FDAも同日、Avandiaの販売を厳しく制限する方針を発表、これを受け、グラクソは、すべての市場でAvandiaの販売促進活動を停止すると表明した。

同社は2010年10月、プエルトリコ工場での欠陥薬品製造問題で有罪を認め、7億5000万ドルを支払って和解することで米司法当局と最終合意した。

プエルトリコ・シドラ工場で2001~05年に抗うつ剤パキシルなどの欠陥品を生産したことによる。
この工場で生産されたパキシル(錠剤)は割れたり、有効成分の量が不適切だったりして、患者の命にかかわる危険性があった。同社は同工場を閉鎖した。7億5000万ド ルのうち約1億5000万ドルは罰金。

このほか、2社が同社の特許を無効として、後発薬の申請を行い、同社が訴訟を起こしている。


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エジプト国営テレビによると、2月5日、同国北部のシナイ半島のElArishで、エジプトからヨルダンとイスラエルに天然ガスを輸出するパイプライン基地で爆発があった。
テロ行為が原因としているが、事故との情報もある。

エジプト当局はヨルダン向けとイスラエル向けのガス供給を停止した。

イスラム系過激派組織はイスラエル向けの供給に反対しており、インターネット上でパイプラインへの攻撃を呼びかけていた。

ーーー

エジプトのシナイ半島のEl-Arishにはヨルダン向けとイスラエル向けのパイプライン基地がある。

ヨルダン向けはシナイ半島を南下し、アカバ湾の北岸のTabaへ、Tabaから海底パイプでAqabaへ、そこからAmmanに通じる。
ヨルダンは電力需要の8割でエジプト産ガスを燃料としている。

イスラエル向けはEl-ArishとイスラエルのAshkelonを海底パイプラインで結ぶ。
エジプトはイスラエルの天然ガスの1/3を供給している。

なお、エジプトでは1月28日以降、SuMed石油パイプラインを守るためエジプト軍が動員されている。

SuMed (Suez-Mediterranean) Pipelineは200マイルで、超大型タンカーはスエズ運河を通れないため、地中海への石油輸送に使用されている。 

原油は2009年では、スエズ運河経由で1日約100万バレル、パイプライン経由で110万バレル(2007年は230万バレル)が送られた。

スエズ運河とSuMedパイプラインが閉鎖された場合、欧州向けタンカーはアフリカ南端の喜望峰を回らなくてはならず、運航距離が1万キロ増加することになる。

(このリスクもあって、北海ブレント原油の価格は高騰している。他方、WTI原油は米国の原油・石油製品の在庫が多いことから上昇が鈍く、北海ブレントと逆転した。)

エジプトのEGPCが50%、Saudi Aramco 15%、UAEIPICが15%、カタールのQGPCが5%、クウェートの3社が5%ずつ計15%を出資するJVのArab Petroleum Pipeline Company/Sumed Companyが運営している。


イスラエル向けのパイプラインを運営する
East Mediterranean Gas Co. (EMG)2000年に設立された。

2007年11月にタイの国営PTT PLC487百万ドルで同社の株式25%Mediterranean Gas Pipeline から買収、現在の株主は以下の通り。

Mediterranean Gas Pipeline  28 %
Merhav Group (Israel) 25  
PTT Public Company Ltd. (Thailand) 25  
EMI-EGI LP 12  
Egyptian General Petroleum /Egyptian Natural Gas 10  

East Mediterranean Gas Co.  株主でもあるEgyptian General PetroleumEgyptian Natural Gas との間で、日量677百万立方フィートを15年間購入する契約を結んでいる。

天然ガスの主な需要家は Israel Electric Corporationで、15年間、日量206百万立方フィート購入の契約を締結している。

イスラエル政府が出資する石油精製会社Oil Refineries Ltd.は昨年12月、East Mediterranean Gasとの間で、同社と同社子会社のCarmel OlefinsGadiv Petrochemical Industries向けの天然ガス購入の契約を締結した。

また、PotashCorpが出資するカリのメーカーのIsrael Chemicals (ICL)、同じくカリのメーカーのDead Sea Works、ガス発電会社のOPC Rotemの各社も購入契約を締結した。

 


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Rosneft127日、ExxonMobilとの間で黒海の海底油田開発で合意した。
スイスのDavosで開かれているWorld Economic Forumで、ロシア副首相でRosneft 会長のIgor Sechinが発表した。 

RosneftはBPとの間でSouth Kara Seaの共同開発を含むグローバルな戦略的提携で合意したばかり。

但し、BPのロシアのJVの株主が交渉取りやめの訴訟を起こし、裁判所が仲裁にかけるよう命じた。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携

ExxonMobilはロシアではRosneftと共にサハリン1プロジェクトに参加しているが、今回はそれ以来の最大のプロジェクトとなる。

サハリン1プロジェクト
事業主体 Exxon Neftegas
 (ExxonMobil子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO
 (石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
ONGC Videsh(インド、20%)
Sakhalinmorneftegaz-Shelf(ロシア、11.5%)
Rosneft-Astra(ロシア 8.5%)                
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

両社は黒海の東岸のロシアの石油輸出港Tuapseの沖合にあるTuapse沈降帯(Trough)で共同開発を行う。同地域には石油換算で73億バレルの埋蔵量があると見られている。

ロシア領黒海の深海鉱区開発では、RosneftWest Chernomorsky鉱区の一部のVal Shatskogo鉱区の開発をChevronと、それより陸地に近いTuapse Troughの開発をExxonMobilと交渉してきた。

ExxonMobilは、数年前にRosneftが黒海開発に参加する外国企業を募った際に名乗りを上げた。
Total も検討していたが、 地質的リスクが高いとして断念したとされる。

JOGMEC レポート http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3696/201011_069t.pdf 

共同開発の詳細(出資比率、費用分担など)は明らかにされていない。

BPとの間では、Rosneftは開発JV2/3を所有するが、開発コストの最初の20億ドルはBPが負担する。
また、
Rosneft BPの株式5%を購入、見返りにBPRosneft株式 9.5%を購入する。

ロシアの石油会社は深海での石油採掘の実績がなく、技術を資本を海外の石油会社に依存する必要性を認識しており、今後もこのような提携が行われると見られている。


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BPは2月1日、2010年の決算を発表した。

事故損失を409億ドル計上した結果、37億ドルの損失となった。但し、事故関連を除く損益は243億ドルで、前年を77億ドル上回っている。

合わせて、以下の発表を行った。

・事故を受けて停止していた配当を再開、2010年第4四半期分として1株当たり7セントの配当を行う。
 原油流出前の四半期配当額は、14セントだった。

・今後、安全を優先、改めて、今回の事故及びTexas City 製油所事故の損害賠償責任を果たすことを確認。

・米国の製油所能力の半分を処分する。Texas City Carson(カリフォルニア州)製油所を2012年末までに売却する。

・2011年末までに300億ドルの資産を処分する計画は順調で、2010年末までで220億ドルを処分した。

・一方で、ブラジル、南中国、インドネシア、アゼルバイジャン、英国で新しい鉱区を得た。2011年に入り、豪州と現在認可待ちのアンゴラも)

・1月に入り、ロシアのRosneft と提携した。JVTNK-BPも陸上油田の開発を進める。
TNK-BPのロシア株主がBPRosneftの提携交渉の停止を求めて訴えたことに関し、BPは調停にかけることを考えていると発表した)

2011年の投資は200億ドルを見込む。2009の182億ドルよりも増やす。

決算内容は以下の通り(単位:百万ドル 

  2009 2010 増減
一般 事故 合計 一般 合計
Exploration & Production 24,800 30,886    30,886 6,086 6,086
Refining & Marketing 743 5,555   5,555 4,812 4,812
Others(*) -2,322  -1,516   -1,516 806 806
事故関連      -40,858  -40,858   -40,858
調整 -717 447   447 1,164 1,164
金利・税前損益 22,504 35,372 -40,858 -5,486 12,868 -27,990
金利(net) -1,302 -1,046 -77 -1,123 256 179
税金(Replacement cost base) -7,066 -10,804 12,894 2,090 -3,738 9,156
少数株主持分 -181 -395   -395 -214 -214
Replacement cost 損益 13,955 23,127 -28,041 -4,914   9,172 -18,869
在庫損益 3,922 1,784   1,784 -2,138 -2,138
対応の税金 -1,299 -589   -589 710 710
財務損益 16,578 24,322 -28,041 -3,719 7,744 -20,297
* Others:代替エネルギー、輸送、アルミ、余剰資金運営利息、一般管理費

事故関連損失は以下の通り、引当金を積み増した。(単位:百万ドル)
今までの現金支出は17,700百万ドルとなった。

2四半期  32,192
3四半期   7,656
4四半期 1,010
合計  40,858

上記には昨年616日のオバマ大統領とBP首脳陣の会談で、BPが約束した200億ドルの基金を含んでいる。

同社は米国油濁法(Oil Pollution Act of 1990OPA 90)で決まっている損害賠償の75百万ドルの限度規定を放棄することを発表しているが、現在の判断で、この200億ドルの基金で充当可能とみている。

同社では権益保有2Anadarko Petroleum と三井石油開発子会社のMOEX Offshore 2007 LLC に対して事故損失の負担を請求している。
今回の発表で、125日現在で2社に60億ドルを請求していると述べている。

三井物産は昨年10月に、子会社の三井石油開発(の子会社MOEX)BPから請求されている費用が1,898百万ドルであることを明らかにした。
これに基づくと、Anadarko分と合わせると、求償額は6,643百万ドルとなる。

付記
三井石油開発は2月2日、昨年12月末までの事故関連費用のうち、本事故に関連して支出された、同社権益相当分費用は約1,600百万ドルと想定していると発表した。上記三井物産発表との関連は不明。

今回の事故に関する事実関係・背景について多くの調査が現在も進行中であり、現時点で支払い義務を負うことになるか否かは明らかでないため、BPが求める支払いを留保しており、今後も、これらの状況が続く間は、BPに対する支払 いを留保し続けることになろうとしている。

BPは2社は現在支払いを保留しているが、契約上、回収可能と見ている。

なお、BPの決算では、事故損失 40,858百万ドルに対して12,894百万ドルの税金減免を計算している。
即ち、全額を損金とみなし、一般の利益(及び将来の利益)の税金を減らしている。

2四半期決算で同様の処理をしていたが、これに対し米国の議員が、罰金を損金として税金を減らすのを批判した。

少なくとも、
Clean Water Actに基づく罰金(流出量400万バレルとすると、過失なしで44億ドル、過失ありで172億ドル)については問題となろう。


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INEOS Sinopecはこのたび、南京に年産40万トンのフェノール工場を建設するJVについての覚書を締結した。

INEOS Phenol Sinopec Yangzi Petrochemical (揚子石化)が南京の南京化学工業区にフェノールとアセトンのJVのフレームワークで覚書を結んだもの。

両社は200912月にJV設立を検討する覚書を締結しており、今後、JVの詳細を協議する。

2010/1/7  INEOSとシノペック、南京にフェノールJV設立を検討

JVSinopecの原料とINEOSのフェノール技術を利用する。
能力はフェノールが
40万トン、アセトンが25万トンで、中国最大のプラントとなる。
南京は中国のフェノールとアセトン双方の最大の市場。
現在のところ、
2013年末の完成を目指している。

ーーー

INEOS Phenol2001年にPhenolChemie を買収して改称した。

PhenolChemie 1952年にドイツに設立された。
 株主は
Bergwerksgesellschaft Hibernia AGScholven Chemie AGRütgerswerke AGBakelite GmbH 4社。
 前
2社は1961年にVEBA Chemie AGに統合された。

1979年にVEBAは持株(50%) Hüls AGに譲渡。

1994年にHüls AGPhenolChemie100%子会社とした。
Hüls AG1998年に Degussa AGと合併、Degussa-Hüls AGとなる。その後、Evonikと改称。)

同社の能力は以下の通り。 

立地 Phenol 原料 Cumene 副産品AMS
(
αMethyl-Styrene)
Gladbeck, Germany 650千トン
1系列で最大)
1954年スタート
(8千トン)
    60千トン
Marl, Germany     250千トン  2005年買収
(BPから)
 
Antwerp, Belgium 680千トン
(世界最大)
1993年スタート
(200千トン)
     
Mobile, Alabama 540千トン 2000年スタート
(400千トン)
     
Port Arthur, Texas     500千トン  2005年買収
Chevron Phillipsから)
 
Total 1,870千トン
(アセトン
1,150 千トン)
  750 千トン   60 千トン
南京 400千トン
(アセトン 250千トン)
       
再計 2,270千トン
(アセトン 1,400千トン)
       

ーーー

三井化学は2009年11月、シノペックとの間でフェノールの合弁事業に向け基本合意、12月に「フェノール及びアセトンの新設プロジェクトに関する覚書」を締結した。

三井化学 50%Sinopec 50%上海中石化三井化工に、上海中石化高橋分公司のフェノール125千トンを移管するとともに、250千トンのプラントを新設する。

2009/11/4  三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

三井化学はこれにより、誘導品事業(ビスフェノールA、MIBK)を含めたフェノール事業で世界トップを目指すとした。

1位:Ineos Phenol (誘導品なし):187万トン
2位:三井化学:フェノール92万トン、誘導品54万トン、合計146万トン
→184万トン
3位:Solutia:フェノール86万トン、ビスフェノールA 11万トン、合計97万トン 

但し、INEOS Phenolの南京計画が完成すると、また、差がつくこととなる。

三井化学のフェノール能力は以下の通り。

   千トン  
大阪 200  
市原 190  
Mitsui Phenols Singapore 300 三井化学 95%、三井物産 5%
千葉フェノール 230 三井化学55%出光興産45%
合計 920  
上海中石化三井化工 移管 125 三井化学 50%Sinopec 50%
新設 250
合計 375
再計 1,295  


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2010年末時点の中国のエチレン能力は1523万トンとなり、2009年末の1364万トンから159万トン増加した。2008年末からは526万トンの増加である。

2010年の生産量は1422万トンで、2009年の1048万トンに比し374万トンの増となった。
日本の2010年の生産量は701万8,300トンで、中国の生産量は2倍強となった。

中国のエチレン能力(年末時点、単位:千トン) 

    2008
 能力
2009
 能力
2010
 能力
増減  2010
 生産量
PetroChina 大慶石化 黒竜江省 600 600 600 0 544
PetroChina 吉林石化 吉林省 850 850 850 0 834
華錦集団(盤錦エチレン) 遼寧省 160 620 620 0 517
PetroChina 遼陽石化 遼寧省 200 200 200 0 182
PetroChina 撫順石化 遼寧省 150 150 150 0 167
Sinopec 北京東方化工 北京市 150 150 150 0 130
Sinopec 燕山石化 北京市 710 710 710 0 842
Sinopec 天津石化 天津市 200 200 200 0 233
Sinopec 斎魯石化 山東省 840 840 840 0 856
Sinopec 揚子石化 南京市 650 650 650 0 678
Sinopec 上海石化 上海市 850 850 850 0 973
Sinopec 広州エチレン 広東省 200 200 200 0 225
Sinopec 茂名石化 広東省 1,020 1,020 1,020 0 981
Sinopec 中原石化 河南省 180 180 180 0 212
PetroChina 蘭州化学 甘粛省 690 690 690 0 695
PetroChina 新疆独山子 新疆自治区 220 1,220 1,220 0 1,193
瀋陽化工 (残渣油からのエチレン製造) 遼寧省 0 120 120 0 60
YPC-BASF 江蘇省 600 600 740 140 536
SECCO 上海市 900 1,190 1,190 0 1,294
CNOOC-Shell 広東省 800 800 950 150 844
福建連合石油化工 福建省 0 800 800 0 844
Sinopec SABIC (Tianjin) 天津市 0 1,000 1,000 0 820
Sinopec 鎮海煉油 浙江省 0 0 1,000 1,000 522
神華包頭石炭化学 (Coal-to-Olefin) 内蒙古自治区 0 0 300 300 40
合計   9,970 13,640 15,230 1,590 14,222

2009-2010年の能力増は以下の通り。

2009年(367万トン増) 
 詳細は 2010/3/1
中国の2009年末のエチレン能力 1,354万トンに

  華錦化工集団(通称盤錦エチレン):46万トン
    10月初め、遼寧省盤錦で500万トン/年の製油所と46万トン/年のエチレンの操業を開始
     
  PetroChina新彊独山子石油化学:100万トン
    9月にウイグル自治区独山子市で大規模石油・石化コンプレックスをスタートさせた。
     
  瀋陽化工:12万トン
    藍星集団の子会社瀋陽化工は、遼寧省の瀋陽で、50万トンの残渣油の熱分解プラントを稼動した。
12万トンのエチレンは全量、塩ビ用に使用され、併産するプロピレンはアクリル酸用に使用される。
     
  SECCO増強:12万トン
     
  福建連合石油化工:80万トン
    ExxonMobil とSaudi Aramco が25%ずつ、福建石油化学(シノペックと福建省政府が折半出資)が50%出資する。
     
  Sinopec SABIC (Tianjin) Petrochemical:100万トン
    コンプレックスは1000万トンの製油所と、100万トンのエチレン及び誘導品からなっている。
製油所はシノペック天津石油化工公司が運営、エチレンコンプレックスはシノペックとSABICの50/50JVのSinopec SABIC (Tianjin) Petrochemical :中沙(天津)石化が運営する。
     
2010年(159万トン増)
     
  YPC-BASF:14万トン増
     2008/3/22 BASF-YPC、増設計画の承認を申請
     
  CNOOC-Shell:15万トン増
     2006/4/7  中国のエチレン合弁会社ー2
     
  シノペック鎮海煉油化工:100万トン
     2010/3/4 シノペック鎮海煉油化工、新エチレンセンターのポリプロ工場を先行稼動
     
  神華包頭石炭化学:30万トン
    8月にのcoal-to-olefins 計画(メタノール→エチレン、プロピレン→PE、PP)がスタートした。
     2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート
     

 


 目次、項目別目次

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旭化成は1月25日、韓国におけるアクリロニトリルの増設を発表した。

韓国の100%子会社の東西石油化学の蔚山工場に同社の最新技術プロパン法を採用して245千トンの大型プラントを建設するもので、5月に着工し、2013年1月に商業運転を開始する。

蔚山工場には既存プロセスの230千トンプラントと70千トンのプロパン法の実証プラント(既存プラントを改造)の2プラント合計300千トンの能力があるが、今回の新プラントが完成すると、合計能力は545千トンととなる。

同社のアクリロニトリルの工場は以下の通りで、すべてが完成すると、能力合計は1,195千トンとなり、世界最大のINEOS Nitrilesに迫る。

千トン 製法 備考
水島 300 既存法
川崎 150 既存法
東西石油化学
 
韓国・蔚山
(60) 既存法 ③完成で停止
 70 プロパン法 2007/1 改造してプロパン法実証プラントに
230 既存法 2003/3 200千トン完成、その後増強
245 プロパン法 今回 
(545)
PTT Asahi Chemical
 タイ・マプタプット
200 プロパン法 2011/央 稼働予定
 (旭化成 48.5%、PTT 48.5%、丸紅 3.0%)
合計 1,195

2007/2/7 旭化成、世界初のプロパン法アクリロニトリル工場稼動

旭化成は1998年に、米国ソルーシア社(モンサントのファイバー・化学品部門を中心に分離独立)の250千トンAN建設計画に参画し、年間50千トンの引取権を取得したが、現在は引取をしていない。

なお、旭化成は2012年頃に中東でアクリロニトリルを生産する方針を明らかにしている。

2007/4/10 旭化成、中東でのアクリロニトリル事業化を検討

東西石油化学(Tongsuh Petrochemical )は1969年に、米国スケーリー石油 50%、韓国忠州肥料 50%JVとして設立され、アクリロニトリルの製造販売を行った。
その後、1970~75年に韓一合繊が忠州肥料の持分を、旭化成
がスケーリー石油の持分を買収し、両社のJVとしたが、1998年に旭化成の100%子会社とした。

アクリロニトリルのほか、青化ソーダ(40千トン)、アクリルアマイド(10千トン)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸・2Na・2H2O)(3千トン)を生産している。

ーーー

世界最大のINEOS Nitrilesの状況は以下の通り。

INEOS Nitrilesは旧 Innoveneのアクリロニトリル部門で、2005年にINEOSBPからInnoveneを買収した。
1957年にSohio 法アクリロニトリルが開発されたが、SohioStandard Oil of Ohio)はその後、BPとなった。

能力
(千トン)
米国 Lima, OH  190 1960年スタート
Green Lake, TX 544 1981年スタートで2008年に450千トンから544千トンに増強
ドイツ Koeln 320 元はErdole Chemie
2001
年に Innovene が買収により50%から100%とした。
英国 Seal Sands, Teesside 230 IneosBASFの工場を買収
合計 1,284

2008/3/20 INEOSBASFのアクリロニトリル工場買収

 


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