「no」と一致するもの


九州大学発のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」は10月1日、体長約1ミリの線虫を使って、尿1滴でがんの有無を8割以上の高確率で判定できるという安価な検査法「N-NOSE(エヌノーズ)」を、来年1月から実用化すると発表した。検査費用は1回9800円。健康診断への導入を希望する企業や医療機関、自治体の申し込みを受け付けている。


実用化への最終調整として、福岡県久留米市と小郡市の職員から希望者約120人を対象に検査し、運用の流れを確認すると明らかにした。

同社は2016年に、当時九州大助教だった広津崇亮社長が設立。福岡県と久留米市の支援を受け開発を進めた。

がんの1次スクリーニング検査『N-NOSE』は、線虫C. elegans の化学走性(好きな匂いに近づき、嫌いな匂いから遠ざかる)を指標にした、これまでにない全く新しいタイプのがん検査。

線虫の嗅覚研究をしてきた広津氏が、ある条件下において、線虫が人の尿中からがんの匂いを検知して、がんに罹患している人とそうでない人を高精度に嗅ぎ分けることを発見し、これを "線虫の鼻"(Nematode NOSE)を意味する『N-NOSE』と名付けた。

線虫は土壌などに生息する微小生物で、犬より優れた嗅覚で、がん患者の尿に含まれる特有のにおいに近づき、健康な人の尿からは逃げる性質を利用して判定する。


がん患者1400人に実施した検査では的中率は約85%に上り、特にステージ0~1の患者は87%で判定できた。一般的ながん検査「腫瘍マーカー」よりかなり高確率という。

従来の腫瘍マーカーは早期がんに対して感度が低い欠点があったが、『N-NOSE』は早期がんでも感度が変わらない。

反応するのは胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、子宮、前立腺など15種のがん。

現時点では検査でがんの部位までは判明しないが、今後は特定も目指す。

がん探知犬の研究結果より、がんの種類によって匂いが異なる可能性が示唆されている.

特定のがん種の匂いにだけ反応しない線虫株を作製(例:特定のがん種の匂いの受容体を欠損した変異体)


当面は尿を都内にある同社の検査施設に持ち込んで解析する。結果報告まで1週間から1カ月ほどかかる。
1年目は25万人分の解析が可能で、既に約10万人分の検査が予定されている。

広津社長は「技術的な検証はほぼ終わった。がんの検診率を上げるには画期的な技術が必要。特に子育てや仕事で検診率が低い若い女性の検診率アップにつなげたい」と話した。

ーーー

癌検査については、東レが血液1滴から様々な癌を発見する検査キットについて、2019年中に厚生労働省に製造販売の承認を申請する。

高い精度でがん患者と健常者を識別でき、1次スクリーニングの検査方法として有用であることが示された。

2019/6/13 東レ、血液による癌検査キットを承認申請へ

ロシアが主導し、旧ソ連の5カ国で構成する自由貿易圏「ユーラシア経済同盟 (EEU)」は10月1日、シンガポールと自由貿易協定(FTA)を締結した。

ロシアのプーチン大統領は「シンガポールは信頼できる安定したパートナーだ」と協力拡大に意欲を見せた。シンガポールのリー・シェンロン首相は保護主義に対抗するためにもFTAが重要だとの認識を示した。

東南アジアとのFTAはベトナムに次いで2カ国目となる。


ユーラシア経済連合(EEU)は2019年5月17日、イランとの時限的自由貿易協定(FTA)、中国との貿易経済協力協定に調印した。カザフスタンの首都アスタナで開催されているアスタナ経済フォーラムに併せて調印式が行われた。

イランの3年間限定での時限的FTAは10月27日に発効する。

優遇税率の対象品目について、EEU側は食肉、油脂製品、菓子、金属製品、化粧品、電気・機械設備を、イラン側は野菜・フルーツやドライフルーツなどの食品、建材、食器、じゅうたん、非鉄金属を挙げている。工業製品の平均関税率について、EEUは8%から4.7%に、イランは22.4%から15.4%に軽減し、農産品はそれぞれ9.6%から4.6%、32.2%から12.2%に引き下げる。


中国との貿易経済協力協定に関して、EEUを主導するロシア政府は「EEU・中国との協力の法的な基礎になるもの」と説明している。

今回の協定締結で関税の引き下げ・撤廃は発生しない。衛生・植物検疫、通関手続き、電子商取引、知的財産保護、政府調達、反独占・競争政策など幅広い分野での協力や、中国政府が主導する「一帯一路」政策とEEUとの連携、技術・資源・資本分野などでの共同事業の創設が想定されている。


ロシアのウラジミール・プーチン大統領と中国の習近平国家主席は2015年5月8日、ユーラシア経済連合と中国の一帯一路構想を連携させるとする共同声明を発表した。

2015年5月29日にはユーラシア経済連合は初の自由貿易協定をベトナムと締結した。

2013年3月にロシア、ベラルーシ、カザフスタン3ヵ国の関税同盟との間で交渉が開始され、2014年12月の第8回交渉で妥結した。
2015年1月のEEU発足に伴いアルメニア、キルギスが加わり、同年5月、両国が正式署名した。

同年10月5日に発効した。ベトナムとEEU双方は品目ベース、貿易額ベースともに約90%の関税が撤廃される。


EEUは、
エジプトやインド、イスラエルなどともFTAを交渉中。

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ロシア、カザフスタン、ベラルーシの首脳は2011年11月18日、ユーラシア経済同盟に関する文書に調印した。

ユーラシア経済同盟は、2012年3月のロシア大統領選に立候補を表明し大統領職復帰が確実視されているプーチン首相が10月に創設を提唱、まず3カ国で経済統合を進め、旧ソ連中心の地域統合「ユーラシア同盟」につなげようとのプーチンの長期的外交戦略実現の第一歩になる。

最終的には統一経済圏の創設へと移行する。

2012年1月1日から3国の圏内では、統一経済圏を形成する17の合意が発効するが、それとともに関税タリフ政策、関税調整がスタートする。
共通の国境を形成するなかで、具体的なタリフ政策、自然独占、通貨および信用貨幣政策の調整が新たな方向性となってくる。

2011/12/2 ユーラシア経済同盟 

ロシアのプーチン大統領は2014年5月29日、カザフスタンとベラルーシ両国の首脳とともに「ユーラシア経済同盟 Eurasian Economic Union」を正式発足させる条約に署名した。
1億7000万人以上を抱える貿易圏を通じ、米国やEUに挑む。

ユーラシア同盟は2015年1月に発足するが、2014年10月10日、アルメニアの参加が正式に決まった。
キルギスタンも2014年12月に参加した。

国名 署名日
ロシア 2014年 5月29日
ベラルーシ 2014年 5月29日
カザフスタン 2014年 5月29日
アルメニア 2014年10月10日
キルギス 2014年12月23日


トランプ米大統領は9月27日、米連邦政府の支出を2019年のレベルで11月21日まで手当てするつなぎ予算に署名した。9月末の期限を迎える前に暫定予算が成立したことで、政府機関の一部閉鎖は当面避けられる。

しかし、米下院がトランプ大統領の弾劾への調査に着手したため、11月21日までに予算がまとまる可能性は少ない。


10月1日から始まる2020会計年度の予算は、トランプ大統領が選挙公約に掲げる「国境の壁」の建設費などで妥協点を見いだせておらず、進展がない。

このままではまた、政府閉鎖となる。

下院は政府機関閉鎖を回避するため、11月21日までのつなぎ予算を9月19日に301対123の賛成多数で可決した。

共和党全体の約6割に相当する119議員と民主党議員3人、無所属(共和党から離党)1人が反対票を投じた。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 76 225 301
反対 119 3 1 123
棄権 4 6 10
欠席 1 1
合計 199 235 1 435

参考 下院の議員に以下の異動がある。 下院議決は9月19日でDuffy議員辞職前。

  共和党 民主党 無所属 未確定 合計
2019/1 199 235 1 435

North Carolina-No.9 未確定

7/4 198 235 1 1 435

Justin Amash議員 共和党離党

9/10 199 235 1 0 435 North Carolina-No.9 共和党 Dan Bishop当選
9/23 198 235 1 1 435   共和党 Sean Duffy議員 辞職


これを受け、上院は9月26日、賛成81、反対16 (共和党)で可決した。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 37 43 1 81
反対 16 16
棄権 2 1 3
合計 53 45 2 100


もう一つの政府機関閉鎖の原因となる債務上限については引き上げ済みである。

トランプ大統領は7月22日、今後2年間の連邦政府の歳出と債務の上限について与野党で合意したとツイッターで発表した。

2020会計年度(2019年10月~20年9月)と21会計年度の歳出上限を計3200億ドル引き上げるほか、債務上限については、2021年7月末まで2年間棚上げする。

2019/7/25 米 歳出上限と債務上限を引き上げ 


最近の予算審議の状況は下記の通りで、最近は期限までに予算が通ったことがない。

  大統領 当初  
  Obama
(2009/1~
   2017/1)
 

オバマ政権は成立以来、予算案と債務上限問題で苦しんだ。
本予算が期限に一度も通らず、それまでの支出のペースを維持する短期の暫定予算をつないだ。

背景については 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 

2012/10~2013/9 暫定予算 2013年3月、政府機関の閉鎖回避のための年度末(9月30日)までの暫定予算案を承認
  2013/3/25 米議会が暫定予算可決
2013/10~2014/9 暫定予算 17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖
  
2013/10/1 米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖

2014年1月16日に、2014年9月30日までの歳出法案を可決

2014/10~2015/9 暫定予算 米上院本会議は12月13日深夜、2015年9月までの包括的歳出法案を可決した。
移民制度改革(不法移民の大量受け入れ)の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、2015年2月までとされた。
  
2014/12/18 米国、包括的歳出法案が可決するも、問題を残す
  2015/3/6 米、国土安保省の予算可決 
2015/10~2016/9 暫定予算 米議会下院と上院は2015年12月18日、1兆1500億ドル規模の予算法案を可決した。
  2015/12/21 米議会、予算案を可決
2016/10~2017/9 暫定予算 2016/12/10 米国議会、来年4月28日までの暫定予算を可決

米議会共和党と民主党は2017年4月30日夜、2017年9月末までの資金を手当てする約1兆ドル規模の予算案について合意した。

2017/10~2018/9 Trump
(2017/1~
暫定予算 2018年3月23日の暫定予算期限が近づく中、共和・民主両党の議会トップ4人は3月21日夜、10月までの政府予算を手当てする歳出法案で合意した。
  
2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認

その後、つなぎ予算を延長したが、2018/1/19に4度目の延長に失敗、時間切れで政府機関の閉鎖
  2018/1/20 米政府機関、閉鎖 
  
2018/1/23 米国、政府機関閉鎖解除へ 
  2018/2/10 米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除
  2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認

2018/10~2019/9

一部暫定予算 米連邦予算法案が9月28日にトランプ大統領が署名し、成立した。
国防省等については正式予算、メキシコとの間の壁
の建設を担当する国土安全保障省等については12月7日までの「つなぎ予算」とする異例の形となった。
  
2018/10/2 米国、10月からの政府閉鎖回避

米議会上院の与野党は12月21日午後8時30分に、新たなつなぎ予算案を可決することなく22日正午まで休会に入った。国土安全保障省、司法省、住宅都市開発省など、連邦政府の約4分の1にあたる機関では午前0時に予算が失効した。
  
2018/12/31 米政府機関の一部閉鎖、年明けまで続く

トランプ米大統領は2019年1月25日、連邦政府の一部閉鎖を2月15日まで3週間解除することで与野党と合意したと発表した。 野党・民主党に譲歩し、「国境の壁」建設費を含まないつなぎ予算を容認する。
   2019/1/26 米国、政府閉鎖を一時解除

米与野党の議会指導部は期限が迫る2月11日、「つなぎ予算」としていた国土安全保障省等について新たな予算案で基本合意した。

  2019/2/18 米国予算案 成立、大統領は同時に非常事態宣言で他予算を壁建設に流用へ
  
2019/4/8 米下院、国境の壁建設は憲法違反として提訴

民主党が主導権を握る 米下院情報特別委員会は9月26日、トランプ大統領が来年の米大統領選での再選を視野にウクライナに圧力を掛けたとされる疑惑を巡り、当局者の内部告発文を入手し、公表した。


内部告発書は、トランプ大統領がウクライナを米大統領選に介入させようとしたと指摘。「米国の国家安全保障への脅威」との懸念を表明し、「緊急を要する懸案」に当たるとした。 内部告発者の身元は明かされていない。

情報当局者は監察官に内部告発した。米連邦法は監察官が告発内容について「緊急の懸念だ」などと判断した場合には議会に対して7日以内に報告する義務がある。監察官は告発内容が議会報告に値すると判断している。

しかし、国家情報長官代行が内部告発の内容について報告を拒否した。

民主党のペロシ下院議長は報告拒否を「法律違反だ」と断じ、最終責任はTrump大統領にあるとしている。

トランプ大統領やホワイトハウスは、内部告発者は党利党略のために動く民主党支持者だと反論していたが、26日の下院情報委員会の公聴会でマグワイヤ国家情報長官代行が宣誓証言し、その中で、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べた。

長官代行は証言で、自身のデスクに置かれた告発書が「前例のないもの」だったとし、伏せる必要のある大統領の保護された会話に関わるかどうか見極めるため、議会には送付せずホワイトハウスの法律顧問らと協議したと述べた。また、告発内容が本当に議会送付が法律上必要とされるものに当たるかどうか司法省にも助言を求め、犯罪捜査当局に送ったことも明らかにし、「誰からも指示を受けなかった」と付け加えた。


内部告発書の主な要点は以下の通り。

・ トランプ大統領が2020年の大統領選挙で外国からの介入を求めるため大統領の権限を利用しているとの情報を職務の一環として米当局者から受け取った。

In the course of my official duties, I have received information from multiple U.S. Government officials that the President of the United States is using the power of his office to solicit interference from a foreign country in the 2020 U.S. election.

・ 外国からの介入には、トランプ大統領の「国内の主要な政敵」の一人を調査するよう外国に圧力をかけることが含まれていた。

This interference includes, among other things, pressuring a foreign country to investigate one of the President's main domestic political rivals.

介入に関する報告では、トランプ大統領の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏が中心的人物であり、バー司法長官も関与している模様。

The President' s personal lawyer, Mr. Rudolph Giuliani, is a central figure in this effort. Attorney General Barr appears to be involved as well.

・ これは深刻な問題で、違法である。このため、告発する。米国の国家安全保障への脅威となり、米国の選挙に対する外国の介入を阻止し、対抗する取り組みを損なうと懸念する。

I am deeply concerned that the actions described below constitute "a serious or flagrant problem, abuse, or violation of law or Executive Order" that "does not include differences of opinions concerning public policy matters," consistent with the definition of an"urgent concern" in 50 U.S.C. §3033(k)(5)(G). I am therefore fulfilling my duty to report this information, through proper legal channels, to the relevant authorities.

I am also concerned that these actions pose risks to U.S. national security and undermine the U.S. Government's efforts to deter and counter foreign interference in U.S. elections.

・ 7/25 の電話で大統領はウクライナ大統領にBiden前副大統領と息子の活動についての調査を進めるよう圧力をかけた。

According to the White House officials who had direct knowledge of the call, the President pressured Mr. Zelenskyy to, inter alia: initiate or continue an investigation into the activities of former Vice President Joseph Biden and his son, Hunter Biden

The Ukrainian side was the first to publicly acknowledge the phone call. On the evening of 25 July, a readout was posted on the website of the Ukrainian President that contained the following line:
"Donald Trump expressed his conviction that the new Ukrainian government will be able to quickly improve Ukraine's image and complete the investigation of corruption cases that have held back cooperation between Ukraine and the United States."

ホワイトハウスの上層部がこの電話に関する全ての記録へのアクセス制限をおこなった。重要性を認識していたものと考える。

In the days following the phone call, I learned from multiple U.S. officials that senior White House officials had intervened to "lock down" all records of the phone call, especially the official word-for-word transcript of the call that was produced -- as is customary -- by the White House Situation Room.

This set of actions underscored to me that White House officials understood the gravity of what had transpired in the call.


安倍晋三首相とトランプ米大統領は9月25日、ニューヨークでの首脳会談に合わせ、新たな日米貿易協定の合意文書にあたる共同声明に署名した。

1 我々、安倍総理大臣とトランプ大統領は、日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定に係る最終合意を確認し、歓迎する。我々は、今後、可能な限り速やかにこれらの協定の署名を行い、それぞれの国内手続が完了した後、早期に発効させることを共に望む。
2 日米貿易協定は、世界のGDPの約3割を占める日米両国の二国間貿易を、強力かつ安定的で互恵的な形で拡大するために、一定の農産品及び工業品の関税を撤廃又は削減する。日米デジタル貿易協定は、この分野における高い水準のルールを確立し、日米両国がデジタル貿易に関する世界的なルールづくりにおいて引き続き主導的な役割を果たすことを示している。
3 こうした早期の成果が達成されたことから、日米両国は、日米貿易協定の発効後、4か月以内に協議を終える意図であり、また、その後、互恵的で公正かつ相互的な貿易を促進するため、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題についての交渉を開始する意図である。
4 日米両国は、信頼関係に基づき、日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定を誠実に履行する。日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。また、日米両国は、他の関税関連問題の早期解決に努める。
5 我々は、これらの成果を、日米関係の力強さの具体的な証左として歓迎する。

その後の双方の発表による合意内容は次の通り。

(アメリカからの輸入)

日本政府の資料によると、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワインについてはTPPと同等の関税撤廃もしくは削減が実施される。
一方、コメについては無関税枠をゼロとした。脱脂粉乳やバターなど乳製品の輸入枠も設けられない。

トランプ大統領によると、日本は70億ドル相当の米農産物について市場を開放し、米産牛肉や豚肉、小麦、チーズ、トウモロコシ、ワインなどへの関税が大幅に引き下げられるか、撤廃される。
USTRによると、日本に輸出される米農産品の約90%が免税か優遇措置の対象になるという。


・ 牛肉は現在38.5%の関税が最終的に9%に引き下げられるほか、豚肉は、価格の安い肉にかけている1キロ当たり最大482円の関税が最終的に50円になる。

・ 小麦もTPP交渉時の合意内容を踏襲し、アメリカ産の小麦には最大15万トンの輸入枠を設ける。

・ コメは、TPP交渉で日本がアメリカに設定した年間7万トンの無関税の輸入枠は設けない。乳製品も、バターや脱脂粉乳などの新たな輸入枠は設けない。

牛肉は、米国からの輸入量が急増した場合にセーフガード(緊急輸入措置)を発動する基準数量を、2020年で242千トンとすることで合意した。

セーフガード数量はTPP参加国は、当初 590千トン、2027まで毎年 2%、2032まで1% up となっている。この数量は当初の米国を含む数量のままで、米国のTPP離脱後も変更されていない。

このままでは米国枠分が二重になり、低価格の輸入牛肉が急増するため、政府はTPP参加国とセーフガード基準数量を再協議する意向だが、難航するとみられる。
(現在のTPP協定は米国離脱判明後に締結したものであり、また、米国はTPPに再参加するわけでなく、日米間の協定に過ぎないため、相手が応じる可能性は少ない。 )

(アメリカへの輸出)

・ 米国は日本からの切り花、しょうゆなどのほか、工作機械、蒸気タービン、自転車などの幅広い工業機器に対する関税を撤廃または引き下げる。

・ 牛肉は、低い関税が適用される枠(年200トン)が実質的に拡大する。

・ 自動車と関連部品の関税の扱いは継続協議となる一方、協定には「さらなる交渉による関税撤廃」と書き込まれ、将来的な関税撤廃が明記された。

TPP合意では、乗用車の関税率(2.5%)は15年目から削減を始め、自動車部品(主に2.5%)は8割以上の品目で即時に撤廃することになっていた。

今回は決まらなかったが、世界貿易機関(WTO)ルールでは貿易協定は貿易額ベースで約9割の関税撤廃が必要と解釈されている。日本から米国への輸出額の約3割を占める自動車の関税について撤廃方針を盛り込む必要があった。

・ 自動車の232条追加関税や数量規制については下記の通り。

共同声明には「協定が誠実に履行されている間、協定や共同声明の精神に反する行動は取らない」と明記され、両首脳は26日の会談で、協定の履行中はアメリカが通商拡大法232条に基づく日本車への追加関税を発動しないことを確認した。

茂木外相は、「この協定に反するような対応がなければ誠実に履行されていると考えるが、その間については、追加関税が課されることはないことを首脳会談で安倍首相がトランプ大統領に確認している」と説明した。

ライトハイザーUSTR代表は、同232条に基づく日本への関税発動は米国の意図するところではなく、両国とも誠意を持って問題に取り組んでいくと述べた。

日本からの自動車の輸出を制限する数量規制については、茂木外務大臣とライトハイザー通商代表との間で、日本には発動されないことを確認した。

(デジタル貿易協定)

国から企業へのアルゴリズムなどの開示要求を禁止など

ーーー

協定の正式な署名は、両国それぞれで法的な確認作業を終えた後に行われる予定で、日本政府は、来月の臨時国会に協定の国会承認を求める議案を提出し、早期の承認・発効を目指す。

米国は、今回の協定内容について議会の承認は必要ない。

米国連邦議会はサービスや知財を含む包括的な自由貿易協定としての日米FTAでないと承認しない姿勢である。

このままでは大統領選挙までに議会承認が得られない可能性が高いため、米国側は関税率5%未満の製品の関税撤廃・削減にとどめることで、議会承認を経ずに協定を発効させる。 (貿易促進権限法:通称TPA法の特例措置)

付記

日本は10月7日、持ち回りの閣議で決定、その後、日米代表の杉山晋輔駐米大使とライトハイザー通商代表が、米ワシントンのホワイトハウスで正式に協定文に署名した。トランプ大統領が同席し、「米国の農家にとってきわめて画期的だ」と成果をアピールした。

政府は来週にも協定の承認を求める議案を国会に提出する。

2020年1月1日の発効を目指す。

付記 11月19日の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、参院に送付された。

付記 日米貿易協定、日米デジタル貿易協定が12月4日午前の参院本会議で、与党などの賛成多数で承認された。2020年1月1日の発効が固まった。



これまでの経緯については 2019/9/18 米、対日貿易協定に署名へ 議会に正式通知

Trump大統領が、2020年の大統領選挙で政敵となる可能性があるBiden 前副大統領の調査をウクライナ大統領に求めたことと、圧力をかけるため(?)同国への軍事支援を止めたことが明らかになった。

米メディアは、米情報機関当局者が8月、Trump氏が海外首脳との電話で「不適切な約束」を交わしていたとの内部告発をしていたと伝えていた。

情報当局者が監察官に内部告発した。
米連邦法は監察官が告発内容について「緊急の懸念だ」などと判断した場合には議会に対して7日以内に報告する義務がある。監察官は告発内容が議会報告に値すると判断している。

しかし、国家情報長官代行が内部告発の内容について報告を拒否した。

民主党のペロシ下院議長は報告拒否を「法律違反だ」と断じ、最終責任はTrump大統領にあるとしている。

Trump大統領は9月24日、7月に行ったウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談前に同国に対する約4億ドル規模の支援を保留するよう指示したことを確認した。
しかし、野党民主党の有力候補と目されるBiden前副大統領に打撃を与えることを目的にウクライナに圧力を掛けたとされる疑惑は否定した。

ペロシ下院議長は24日、下院が大統領の正式な弾劾調査を開始すると発表した。「トランプ大統領はこれまで、著しい憲法違反の行動をしてきた」と述べ、「下院は正式な弾劾調査を進める」と言明した。「トランプ大統領は説明責任を果たさなければならない。誰も法を免れない」とも語った。

これに対し、Trump大統領は、民主党の動きを「魔女狩りのたわ言だ」とツイッターで述べた。

Such an important day at the United Nations, so much work and so much success, and the Democrats purposely had to ruin and demean it with more breaking news Witch Hunt garbage.
So bad for our Country!

大統領は、ウクライナ大統領と行った7月25日の電話会談の全記録を公表するとツイートした。

Secretary of State Pompeo recieved permission from Ukraine Government to release the transcript of the telephone call I had with their President.
They don't know either what the big deal is.

A total Witch Hunt Scam by the Democrats!

ホワイトハウスは9月25日、電話の記録を公表した。Biden親子に言及し、捜査するよう明確に求めている。

(President)

There's a lot of talk about Biden's son, that Biden stopped the prosecution and a lot of people want to find out about that so whatever you can do with the Attorney General would be great. Biden went around bragging that he stopped the prosecution so if you can look into it... It sounds horrible to me.

大統領の弾劾手続きは以下の通り。

下院委員会が証拠があるかどうかを決める。
証拠ありの場合、下院が訴追するかどうかを過半数で決める。
上院で2/3以上の賛成で罷免 
 

共和党 民主党 無所属 未確定 合計
上院 53 45 2 100
下院 198 235 1 1 435

上院無所属は民主系、下院無所属は共和党離脱

参考 下院議員の推移

  共和党 民主党 無所属 未確定 合計
2019/1 199 235 1 435

North Carolina-No.9 未確定

7/4 198 235 1 1 435

Justin Amash議員 共和党離党

9/10 199 235 1 0 435 North Carolina-No.9 Dan Bishop当選
9/23 198 235 1 1 435 共和党 Sean Duffy議員 辞職


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米主要メディアは、Trump大統領が7月25日にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際、同国への軍事支援と引き換えに、来年の米大統領選の民主党の有力候補であるBiden前副大統領の息子、Hunter Biden氏をめぐる疑惑の調査に協力するよう繰り返し要求していたと伝えた。

Trump大統領は、Biden氏が副大統領だった2016年に、息子が役員を務めるウクライナ天然ガス会社の捜査をしていたウクライナの検事総長を解任するよう同国に要請していたと主張している。要請には息子をかばう狙いがあった疑いがあるとし、この疑惑を調査しているTrump氏の顧問弁護士、ジュリアーニ元ニューヨーク市長に協力するよう要求したとされる。

事態は以下の通り。

2014年時点で、当時のBiden 副大統領は、ウクライナの民主政権がロシアの攻勢を防ぎ、不正を撲滅しようとしているのを支援する最前線にあった。

2014年2月に親ロ派のViktor Yanukovych大統領が追放され、オバマ政権はウクライナの新政権との関係を深め、Biden 副大統領はそれを主導した。

Biden 副大統領の息子のHunter Bidenが2014年4月にウクライナの天然ガス会社Burisma Holdings の取締役に就任した。 月収5万ドルもの報酬で、「米政府へのパイプ役を期待してのもの」とも指摘されている。Obama政権は、Hunter Bidenは一般市民であり、利益の相反はないとしていた。

Burisma Holdings はクリミアで天然ガスの掘削をしていたが、クリミヤはViktor Yanukovych大統領の追放後、ロシアに併合された。

Hunter Bidenの就任後、不正追及派の間で Burisma Holdings がオバマ政権の影響力を得ようとしているのではないかとの疑惑が生じた。

しかし、Hunter BidenはBurisma Holdingsのために父親の影響力を使ったことを否定し、2019年初めまで取締役を務めた。

ウクライナでは不正は続いた。本年5月にZelenskiyが新大統領に就任した。政治経験はないが、不正行為を終わらせるという大胆な約束をした。

現在、Joe Biden 前副大統領は2020年の大統領選で民主党の候補のトップを走っている。

Trump大統領は本年7月、ウクライナの大統領にBiden親子に関する不正を調査するのを支援するよう要求した。前のウクライナの検事総長がHunter Bidenを調査していたが、Biden 副大統領が彼をクビにするよう要求したと述べた。

Biden は汚職の捜査に消極的だった検事総長の解任を要求した。当時、欧米各国がこの検事総長を問題視していたとされる。

ウクライナの現在の検事総長は、Biden親子の不正の証拠はないとしている。

大統領個人の弁護士のRudy Giuliani 元ニューヨーク市長もウクライナの役人にBiden親子を調査することを公然と求めた。

8月29日になって、Trump大統領が7月にウクライナ大統領に要求する1週間前に、同国への軍事支援3億9100万ドルを保留するよう首席補佐官代行に求めていたことが明らかにされた。

米議会はウクライナがロシアの侵略行為に抵抗するための支援を承認していたが、政権高官によると、大統領や国防長官や当時のボルトン大統領補佐官らが、政府が精査する間は支援金の支払いを保留する可能性について6月頃から話し合いを始めていた。その後、7月に大統領が大統領首席補佐官代行に支払いの保留を指示したという。

9月に入り、資金はウクライナ側に渡された。

政権高官は支払い保留について、支援金が適切なものか、また同盟国も十分に貢献しているかを巡ってTrump氏が懸念を持ったことが背景にあるとした。

Trump大統領は記者団に対し、対ウクライナ支援保留の決定について「交換条件はなかった」と強調し、米国だけでなく欧州諸国も援助すべきと考えたことが理由と説明した。

一方で記者団に対し、「汚職について取り上げることは極めて重要だ」と述べ、「汚職について話し合わないのであれば、なぜ腐敗していると考えられる国に資金を差し出すだろうか?」と続けた。

別の政権当局者は、支払い保留はウクライナへの支援の広がりが他国に十分に広まっていないことや、同国の汚職問題が理由だと内輪では伝えられていたと述べた。

ウクライナ大統領らと面会した民主党の上院議員は、「彼らは、Biden一家の調査に当時乗り気ではなかったことを理由に、Trump氏がウクライナへの支援を停止していると気をもんでいた」と述べた。

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米上院外交委員会会長(民主党)は行政管理予算局局長に書簡を送り、Trump政権が対ウクライナ支援を保留していた問題の調査に乗り出すよう要求した。ウクライナに対する安全保障に絡む支援の見直しや支援を保留する理由を巡り議会は通知されていないと強調。Trump大統領がウクライナ当局に圧力を掛けていたことが「明白になりつつある」と主張した。

政敵となる可能性があるBiden氏の調査をウクライナ大統領に求めたことと、その時点で軍事支援を精査するようすでに命じていたことの関連性を巡っては、今後、米議会で激しい追及が繰り広げられるとみられる。

 

上院は9月24日、政権に対し、内部告発の内容を上下両院の情報特別委に直ちに送付するよう求める拘束力を持たない決議を全会一致で採択した。

下院のペロシ議長と民主党院内総務は、内部告発の公表を阻止しようとする政権の取り組みに議会が反対であることを明確にするとともに内部告発者を守る必要性についての決議の採決を25日に行う計画を明らかにした。


英最高裁はジョンソン首相の議会閉鎖問題について、3日間のヒアリングを終え、9月25日 判決を下した。ジョンソン首相による5週間の議会閉鎖は違法とした。

 最高裁長官の説明 https://www.bbc.com/news/uk-politics-49810680

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首相官邸は8月28日、ジョンソン首相がエリザベス女王に9月9日の週から約1カ月間の議会の一時閉会を要請したと発表した。閉会手続きには女王の許可が必要だが、女王はこれを許可し、次の再開日は10月14日となる。

2019/8/30 英ジョンソン政権、異例の議会封じ 

これに反対して、各地で訴訟が行われた。

ロンドンの裁判所は、首相が女王に議会の一時閉会を要請したのは"political"なものであり、裁判所が介入するものではないとし、却下した。裁判所が判断する法的基準はないとしている。

スコットランドの裁判所は、議会の閉会で首相は法を犯しておらず、首相の行動を判断するのは裁判所ではなく、議員と有権者であるとして却下した。

これらに対し、スコットランドの高等裁判所(Court of Session)は9月11日、議会を長期間にわたり閉鎖したジョンソン首相の措置を違法とする判断を示した。提訴した野党議員らの「非民主的だ」という主張を大筋で認めた。

3人の判事は一致して、首相は「議会を妨害する不適切な目的」で動き、女王をミスリードして議会を閉会させたとした。

「このため本裁判所は、首相の女王への助言とそれに基づく議会の閉会は違法であり、無効であると宣言する。」

今回の議会閉会は合法的な権力の使用ではなく、議会を妨害する戦術であるとして、一審の判決に同意しないと述べた。

政府は直ちに上訴する方針を表明。舞台を最高裁に移し、17日にも審理入りする見通し。

2019/9/12  英議会閉鎖は違法、スコットランド裁判所 

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最高裁の11人の判事は満場一致でスコットランドの高等裁判所の判断を支持した。ロンドンの裁判所の判決を破棄した。

これはジョンソン首相にとって大きな敗北で、女王に議会閉会を求めたのは女王に嘘をついたと結論付けた。

政府が特権を行使して、議会が法律をつくる権限を妨げるなら、議会の主権は傷つけられることになるとした。

 本件は裁判の対象か? Yes

The first question is whether the lawfulness of the Prime Minister's advice to Her Majesty is justiciable. This Court holds that it is.

It is necessary to distinguish between two different questions.
The first is whether a prerogative power exists and if so its extent.
The second is whether the exercise of that power, within its limits, is open to legal challenge.

This second question may depend upon what the power is all about: some powers are not amenable to judicial review while others are.
However, there is no doubt that the courts have jurisdiction to decide upon the existence and limits of a prerogative power. This Court has concluded that this case is about the limits of the power to advise Her Majesty to prorogue Parliament.

 政府の権限の限界は? 議会閉会は、「議会の主権」と「議会への説明責任」で制限される。

The second question, therefore, is what are the limits to that power? Two fundamental principles of our Constitution are relevant to deciding that question.

The first is Parliamentary sovereignty - that Parliament can make laws which everyone must obey: this would be undermined if the executive could, through the use of the prerogative, prevent Parliament from exercising its power to make laws for as long as it pleased.

The second fundamental principle is Parliamentary accountability: in the words of Lord Bingham, senior Law Lord, "the conduct of government by a Prime Minister and Cabinet collectively responsible and accountable to Parliament lies at the heart of Westminster democracy". The power to prorogue is limited by the constitutional principles with which it would otherwise conflict.

 本件について:正当な理由なしに議会が憲法で認められた機能を果たすのを妨げる場合、議会閉会は違法である。

For present purposes, the relevant limit on the power to prorogue is this: that a decision to prorogue (or advise the monarch to prorogue) will be unlawful if the prorogation has the effect of frustrating or preventing, without reasonable justification, the ability of Parliament to carry out its constitutional functions as a legislature and as the body responsible for the supervision of the executive. In judging any justification which might be put forward, the court must of course be sensitive to the responsibilities and experience of the Prime Minister and proceed with appropriate caution.

Brenda Hale最高裁長官は、「女王に閉会を求めたのは違法と言わざるを得ず、議会は出来るだけ早く再開すべきだ」と述べた。

「正当な理由なしに、議会が憲法で認められた機能を果たすことを妨げる効果を持つため、違法である」とした。閉会は違法、無効で、議会は閉会されるべきでないと付け加えた。

最高裁は、次にどうするかを決めるのは議会、特に下院議長と上院議長であるとした。


下院議長は、判決を支持し、議会は遅滞なく再開しなければならない」と述べ、
25日に議会を再開すると発表した。

労働党のJeremy Corbyn党首は首相の即時辞任を求めた。

国連総会出席のためニューヨーク訪問中のジョンソン首相は、「明確な判決として敬意を表するとともに司法のプロセスを尊重する」と述べた上で、「司法の判断には強く反対だと言わざるを得ない。正しいとは思わないが、先へと進む。当然のことながら議会も再開する」と言明した。辞任は拒否、離脱を強行する構え。




アスベスト(石綿)関連工場で働き、肺がんを患った80代の男性3人に対し、国が支払う損害賠償で利息に当たる遅延損害金(年5%)の起算時期が争われた訴訟の判決が9月17日、神戸地裁と広島地裁であった。いずれも「肺がんの診断を医師から受けた日」などと認定。診断時より遅い「労災認定時」とする国の主張を退け、救済の道を広げた。

これは、2019年3月12日の福岡地裁小倉支部の判決に続く、2、3例目。

なお、付記の通り、福岡地裁の判決の控訴審で、福岡高裁は「がんの確定診断日」を起算日とした。

付記 

北九州市の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9月27日、福岡高裁であった。(下記)
高裁は一審の福岡地裁小倉支部の判決を一部変更し、遅延損害金の起算日を「肺がんの診断が確定した日」として、国に損害賠償の支払いを命じた。

上告期限となる10月11日、加藤厚生労働大臣は記者団に対し「判決内容を重く受け止め、ほかの損害賠償の起算の考え方などを総合的に判断した結果、今回は上告はしないことを決めた」と述べ上告しないことを表明した。

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アスベストによる健康被害を巡っては最高裁が2014年10月、大阪・泉南地域の訴訟で国の責任を認定 した。 

大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟(大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣)で、最高裁第1小法廷は10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。

1971年の粉じん排気装置の設置義務化に関し、裁判官5人全員一致の意見で、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」とし、国の責任を認めた。

2014/10/10 アスベスト訴訟、最高裁 「国に責任」の判断

国は最高裁判決に基づき、1958年5月~1971年4月に石綿粉じんを吸う作業を担い、肺がんや中皮腫などの関連疾患にかかった患者側が訴訟を起こせば、和解して賠償金を支払う方針で、約1900人を対象に通知した。

アスベスト弁護団によると、発症原因が石綿と気付かずに労災申請が遅れ、認定まで時間を要するケースは多い。ある原告は2012年4月に肺がんの確定診断を受けたが、労災認定までに約3年を要した。

しかし、国側は存命中の患者との和解では「労災認定時」からの遅延損害金を提示した。深刻な病状の患者が生前の解決を望んで渋々和解する例もあり、「国は命を人質にして和解を迫っている」と反発の声が上がっていた。

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北九州市の70代男性は北九州市門司区の建材工場で1960~96年に勤務し、2008年9月に肺がんの疑いと診断され、2010年2月に労災認定を受けた。男性は労災認定を遅延損害金の起算日とする国に対し「労災認定前から闘病で苦しい思いをしてきた」として和解を選ばず、判決を求めていた。

福岡地裁小倉支部は2019年3月12日、賠償の利息にあたる遅延損害金の起算日を、請求通り肺がんの診断日とした上で、国に1265万円と遅延損害金の支払いを命じた。国側は労災認定を起算日と主張していたが、さかのぼって認定された。

弁護団によると、アスベスト国賠訴訟で遅延損害金の起算日を診断日とする司法判断は初めてで「同様の訴訟は全国で十数件あり救済に弾みがつく」と評価した。国は「判決内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。

付記

北九州市の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9月27日、福岡高裁であった。
高裁は一審の福岡地裁小倉支部の判決を一部変更し、遅延損害金の起算日を「肺がんの診断が確定した日」として、国に損害賠償の支払いを命じた。

国が病気と診断された日ではなく、労災と認定された日を基準に金額を決めているのは不当だとして、和解に応じなかったが、1審の福岡地方裁判所小倉支部は男性の訴えを認め、病気と診断された日を基準に金額を決めるべきだとして、国に対し、1265万円の賠償金と利息にあたる遅延損害金を診断日にさかのぼって支払うよう命じ、国が控訴していた。

福岡高裁は「肺がんの確定診断を受けた日に損害が発生したとみるのが相当である」として、利息にあたる遅延損害金は病気の診断を受けた日(癌の疑い)ではなく、およそ1か月後の手術で癌が確定した日を起点とした。

9月17日午前に、アスベスト(石綿)原因で肺がんを発症した患者2人が国に損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は原告の請求通り 、国に2人にあわせて約2300万円の賠償を命じる判決を言い渡した。争点だった賠償金の利息に当たる遅延損害金(年5%)の起算日について原告の訴えを認めて「肺がんと診断された日」とし、「労災認定された日」とする国の主張を退けた。

患者2人は尼崎市の「クボタ」の工場で石綿関係の仕事に従事し、肺がんを発症した。このうち、一人は1964~65年に尼崎市のクボタ神崎工場で下請け会社の従業員として3カ月間、石綿水道管の製造に従事し、2012年4月に肺がんと診断され、2015年6月に労災認定された。2017年7月、慰謝料など1265万円と遅延損害金を求めて提訴 した。判決が確定し、起算日が約3年早まることで、遅延損害金は約200万円増える見込み。

判決で裁判長は「損害の発生は、肺がんの確定診断を受けた日かその前提となった手術を受けた日とするのが相当である」などとして、2人の主張を認めた。

同日午後、アスベストを扱う大阪の工場で1960年からおよそ1年間働いたあと、肺がんを発症した広島市の84歳の男性が救済策の賠償の基準は不当だと訴えた裁判で、広島地方裁判所は男性の訴えを認めて、基準を上回る金額を支払うよう国に命じた。

判決で裁判長は「損害が発生したのは診断の確定日とするのが相当だ」として、男性の訴えを認め、1260万円あまりの賠償金と、利息に当たる遅延損害金を診断日にさかのぼって支払うよう国に命じた。


Google は9月12日、フランスで疑われていた課税逃れを巡り、9億6500万ユーロを支払うことで仏国税当局と和解した。

フランス国内における2005年から2018年にかけての事業活動が対象となるもので、支払いの内訳は罰金5億ユーロ、税金4億6500万ユーロ。

報道ではGoogleは追徴課税13億ドルの支払いが求められていた。有罪を認めることなく起訴を免れる仕組みで、Googleは長引けば企業イメージの悪化につながるとみて、和解を選んだ。「数年続いていたフランスでの見解の違いに終止符を打った」との声明を出した。

法人税率が低いアイルランドに欧州本社の機能を置くことでフランスでの課税を免れたなどとして仏当局が2015年から捜査し、2016年にはGoogleのパリ拠点を家宅捜索していた。

Google は海外事業について、法人税率が12.5%と欧州最低水準のアイルランドに欧州の本社機能を置き、権利(無形固定資産)を安い対価で移している。
さらに、この会社は法人税がゼロのバミューダで管理するため、アイルランドでは非居住者となり法人税が免除される。

アイルランド会社が事業を行い、ライセンス収入はオランダ子会社経由でアイルランドに移すことで源泉税を免れている。

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Googleは2016年1月22日、英国の税務当局(歳入関税庁)との間で、過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。
2005年以降の追加分として130百万英ポンド(約220億円)を納税、同年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める。

これまでのシステムを変更し、英国での利益について英国で税金を支払うこととした。

2016/1/26 Google、追加納税で英税務当局と合意 

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Google、アップルなど米IT企業は利益の大部分を、低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)にとどめ、実際に利益を上げている消費者のいる国々で十分な税負担をしていないと批判されてきた。

欧州委員会はこれまでも米IT企業の課税逃れに対し、厳しい姿勢で臨んできた。

2016年には米アップルが不公正な税制優遇を受けていたとしてアイルランド政府に追徴課税するように要請 、2018年9月にアイルランド政府は、アップルが追徴課税分と利息を含め総額143億ユーロを支払ったと明かした。

2016/9/1  EU、アイルランド政府にApple への130億ユーロの追徴を命令 及び 付記

日本、中国、インド、英、仏、独など約60カ国は2017年6月7日、グローバル企業による課税逃れを防ぐための新たな多国間協定に パリのOECD本部で署名した。

2017/6/15 課税逃れ防止の多国間協定に60カ国が署名 

20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)はデジタル課税の導入で2020年までの合意を目指している。

欧州委員会は2018年3月21日、デジタル分野における課税に関する指令案を発表した。
2019年3月末までに加盟国でつくる閣僚理事会での合意を目指していたが、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの4カ国が反対、
足並みが揃わず、digital taxの合意を見送った。

2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

このため、フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上のデジタル企業を対象に、対象売上高の3%の課税を行うもので、2019年1月1日に遡及する。

Trump大統領は7月26日、フランス議会が米テクノロジー大手各社へ課税するDigital Services Tax 法案を可決したことを受け、同国に対し「相当な」報復措置を取ると宣言した。フランス産のワインなどに関税をかける構えを示した。

フランスのマクロン大統領は8月26日、フランスの「デジタル課税」を巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。

マクロン大統領は主要7カ国首脳会議(G7サミット)閉幕後、トランプ米大統領と共同会見し、「二国間の取り組みとして多くの作業を行い、両国の不和解消に向け合意を得た」と述べた。

フランスのデジタル課税と経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。

2019/7/31 フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆


今回の和解について専門家の間では「Googleは支払いに応じ、仏当局は米国を刺激しない程度の金額にとどめることで双方妥協した」との見方が出ている。

サウジアラビア内務省は9月14日、Saudi Aramcoの東部の石油施設2カ所が無人機の攻撃を受け、出火したと明らかにした。

攻撃を受けたのはサウジ東部のアブカイク(Abqaiq)、クライス (Khurais)にある施設2カ所。現場近くには世界最大規模の石油処理施設や、油田がある。
15日までに火災は鎮火し、Aramcoは「攻撃にともなう負傷者はなかった」としている。

アブドルアジズ・エネルギー相は、日量570万バレル分の生産が減少したと明らかにした。これは世界最大の石油輸出国であるサウジの生産量のおよそ半分で、世界の石油供給の5%以上に相当する。
天然ガスも通常の生産の約半分に影響が出ている。

英紙はサウジ・エネルギー省に近い人物が「施設を強化し最大の能力まで高めるには数週間かかる」と述べたと報じた。

付記

原油の減産で随伴ガスも減り、サウジの石油化学各社は原料が削減されたと発表した。
SABICは49%削減、Yansabは30%、Saudi Kayanは50%としている。

Petro Rabigh はエタンガスが8%、原油が12.5%カットされたと発表。(西岸のため影響は少ない)

同社は9月24日、原油供給が通常水準に戻ったと発表した。

付記

サウジのエネルギー相は9月17日夜、以下の通り述べた。

・9月末までに日量1100万バレル、11月末までに1200万バレルに回復する。
・輸出には打撃が及ばなかった。
・9月も顧客に契約分を届けられる。

付記

SABICは9月26日、原料供給が通常レベルに戻ったと発表した。当初49%削減されたが、9月18日には30%カットになっていた。

同社は原料カットで損益に影響が出ていないとしている。

付記

サウジのエネルギー相は10月3日、アラムコの生産量が攻撃前の水準に回復したと述べた。


イエメンの親イラン武装組織フーシは、無人機(ドローン)10機によってサウジへの攻撃を実施したと発表した。

ただ、ポンペオ米国務長官は「無人機がイエメンから飛来した証拠はない」と述べ、イランが直接関与した可能性も示唆した。
イラン外務省は関与を否定した。

サウジ東部では8月17日に、サウジ東部シェイバー(Shaybah) 油田に無人機(ドローン)10機で攻撃、天然ガス施設がフーシ派の攻撃を受けたばかり。この時は石油生産に影響は出ていない。

サウジは軍事介入するイエメン内戦でフーシ派の後ろ盾イランと対立、緊張が高まっている。


週明け9月16日の原油市場で、国際指標の北海ブレント原油先物は日本時間同日朝の取引で、期近11月物が一時1バレル71.95ドルと前週末より11.73ドル(19%)上昇した。
ニューヨーク市場でも15日(日本時間16日早朝)の原油先物10月物の価格は1バレル63ドル台前半と先週末の終値より15%あまり上昇した。

トランプ米大統領は9月15日、原油価格への影響を踏まえ「必要なら戦略石油備蓄を放出することを承認した」とツイッターに投稿した。

Based on the attack on Saudi Arabia, which may have an impact on oil prices, I have authorized the release of oil from the Strategic Petroleum Reserve, if needed, in a to-be-determined amount sufficient to keep the markets well-supplied.

I have also informed all appropriate agencies to expedite approvals of the oil pipelines currently in the permitting process in Texas and various other States.

また、犯人は推定できるが、確認できればやっつける準備が出来ているが、サウジからの連絡待ちとしている。

Saudi Arabia oil supply was attacked. There is reason to believe that we know the culprit, are locked and loaded depending on verification, but are waiting to hear from the Kingdom as to who they believe was the cause of this attack, and under what terms we would proceed!

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