2007年8月アーカイブ

日本触媒は22日、130億円を投じてアクリル酸工場を再編すると発表した。
愛媛工場が老朽化していることと、高吸水性樹脂を中心とするアクリル酸誘導品の増強を見据え、愛媛工場を閉鎖し、姫路製造所で増強を行う。

同社は昨年末に姫路で160千トンのプラントの生産を開始し、同地での能力を380千トンとしている。
愛媛の80千トンは2002年にMMAとの事業交換で譲り受けたものだが、老朽化により修繕費用が年々増加しているため、約15億円をかけて解体撤去する。
  
2006/4/13  MMA事業の拡大 

他方、姫路で115億円を投じて、2009年末完工予定で年産80千トンのプラントを建設する。
完成後の国内能力は愛媛停止前の460千トンに戻る。

同社はこのほか、米国、インドネシア、シンガポールに合計160千トンの能力を持っており、世界全体の能力は620千トンとなる。

  社名   能力
  (持分)
備考
米国 テキサス州  American Acryl L.P. 120千トン
(60千トン)
NA Industries (日触 100%) 50%
Atofina 50% 〔ブチルアクリレート用〕
インドネシア 西ジャワ州
アニール
PT.Nippon Shokubai
Indonesia
60千トン
(60千トン)
日触 93.8% 旧 PT Nisshoku Tripolyta Acrylindo
アクリル酸エステル 100千トン
シンガポール Sakra島 Singapore Acrylic 75千トン
(40千トン)
日触 51%、東亞合成 40%、住化 9%
住化/日触のアクリル酸/MMA事業交換     
 合計 (160千トン)  

同社では世界シェア20%強を占める首位の独BASFを追撃すべく、2006年5月作成の新中長期経営計画では2010年頃に国内で更に160千トンの新設を折り込んでいる。(グラフは同社資料を編集)

Rohm & Haas はテキサスで165千トンを生産するとともに、Stockhausen との 50/50 JVStoHaas Monomer(ドイツ)で430千トンを生産している。
Stockhausen (Degussa 子会社)はこれを高吸水性樹脂用に使用する。同社はJV設立の見返りにアクリル酸の商権をR&H に譲渡した。

日本の他のアクリル酸メーカーは次の通り。

  千トン 備考
三菱化学 四日市  110 南アにJV Sasol Dia Acrylates (South Africa) 80千トン
大分ケミカル 大分   60 東亞合成90%、昭和電工10%
日昭化薬日本化薬/昭和電工 83/5停止)からアクリル酸事業引き継ぎ
出光興産 愛知   50  

   2006/4/24  アクリル酸業界 

ーーー

アクリル酸の主要用途の高吸水性樹脂(SAP)では同社は更なる新増設を検討している。
同社の2007年末の全世界能力は410千トンだが、新中長期経営計画では2010年頃に90千トンの新増設(場所未定)を折り込んでいる。

同社の場所別能力は以下の通り。(グラフは同社資料を編集)

  2007年末 備考
日本  260千トン 2007年60千トン増強
米国  テキサス州 パサデナ市   60千トン NA Industries, Inc,(日触 100%) 
ベルギー アントワープ   60千トン NIPPON SHOKUBAI EUROPE N.V.
中国 江蘇省張家港   30千トン 日触化工(張家港)有限公司
 合計  410千トン  

BASFは1998年にClariantの事業を買収、2000年には米国 AMCOLの子会社 Chemdal の事業を買収した。
2001年にはタイ、2002年にはアントワープ工場が完成、ブラジルでPetrobrasとのJV計画もある。

Degussa(当時はHuls)は1991年にStockhausen を買収した。米国とドイツに合計160千トンの能力を有している。

2006年2月にDegussa はDowの高吸水性樹脂事業を買収した。Dowのドイツのプラント(80千トン)を取得、米国のプラント(75千トン)では製造委託を行う。更に原料精製アクリル酸の長期供給契約を締結した。

同社は更に、ドイツのStockhausenの工場を本年中に増設する。(能力は発表していない)
原料のアクリル酸は上記の
StoHaas Monomerの増設で賄うとしている。

日本の吸水性樹脂工業会メンバーは日本触媒のほか、サンダイヤポリマー(San-Dia)、住友精化、花王、荒川化学の4社。
サンダイヤポリマーは三洋化成60%/三菱化学40%のJV。
なお、東亞合成が10千トン設備を有していたが、撤退した。

  日本 海外
日本触媒  200
(+60)
3カ国(上記)  150
サンダイヤポリマー
    
名古屋  105 三大雅精細化学品(南通)    20
(+30)
大垣   20
 125
住友精化 姫路   55
(+30)
Sumitomo Seika Singapore   55
花王     10    
合計    390
(+90) 
   225
(+30)

日本の需給は以下の通り。(METI発表)

 

中国のPVC業界の状況

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本年8月13日に 滄州化工Cangzhou Chemical Industrial は河北省滄州市の合計290千トンのPVCプラントを停止すると発表した。

同社は60千トンのカーバイド法プラントと、別会社・滄井化工(Cangjing Chemical Industry)でVCM 240千トン、PVC 230千トンを有していた。
滄井化工はEDCを輸入しており、コストアップと資金不足から昨年プラントを休止した。
カーバイド法については本年6月に環境と安全性の問題でプラントを休止した。
(滄井化工でEDCからVCMを製造する際に発生する塩酸をカーバイド法PVC製造に使用していた)

滄井化工には三井物産が25%出資していた。
当初は2つのJV、VCM製造の華井化工(Huajing Chemical Industry:能力150千トン)とPVC製造の滄井化工(Cangjing Chemical Industry:能力150千トン)に分かれていたが(物産はそれぞれに25%出資)、2000/6に両社を統合して滄井化工有限公司とし、増設で能力をVCM 240千トン、PVC 230千トンとした。

原料のEDCは三井物産が供給した。

その後2002年頃、滄州化工ではVCMPVC400千トンの新設を計画、VCMTechnip 技術、PVCはチッソ技術に決定した。
しかし、新計画については出資者が決まらず、資金の調達のため、滄州化工は債権者間契約(inter-credit agreement を結んだが、これを証券取引所に報告しなかったこと(違法)が問題となり、更に債権者の1社が破産したことから、資金調達ができなくなり、新計画は潰れた。

その後、滄井化工はエチレン価格アップなどで赤字となり、資金不足と赤字で、2006年にプラントを休止した。
三井物産は事業方針の観点から既に撤退を決めており、手続き中とのことである。

今回のカーバイド法停止で、滄州化工は塩ビ事業から撤退する。

なお、三井物産は三菱商事、丸紅とともに、東ソーの広東省広州市南沙経済開発区のPVC製造子会社東曹(広州)化工有限公司に出資している。

ーーー

2006年末の中国の能力は9,779千トン。(METI 「世界の石油化学製品の今後の需給動向 2007/3」)
2006年実績は生産が8,240千トン、輸入が1,150千トン、輸出が460千トンで、差引需要は8,930千トンであった。

なお、2006年の生産量のうち、
73%がカーバイド法であった。
エチレン価格の上昇により、カーバイド法がエチレン法よりも有利になっている。

既に能力過剰であり、最近は輸出増値税還付率の引き下げと、トルコとインドのアンチダンピング調査により輸出が激減しているが、依然として新増設が続いている。新増設のほとんどがカーバイド法である。

本年になって報道された新増設計画は次の通り。

2007/2
 : Inner Mongolia Linhai Chemical Industry  カーバイド法塩ビ増設完成
  立地:内モンゴル自治区Bayannaoer(バヤナオル)市
 
  苛性ソーダ PVC  
第一期   60千トン   60千トン  
第二期   60   60 今回完成
   
2007/6
  Jiangsu GPRO Beifang Chlor-Alkali corporation カーバイド法塩ビ計画建設開始
  立地:江蘇省Xuzhou(徐州)市 
 
    苛性ソーダ PVC  
新計画 第一期  200千トン  200千トン 2007/6 建設開始、2008/下期完成
他に、エピクロルヒドリン、クロロ酢酸も
第二期  200  200  
既存プラント  100  100  
 
GPRO Beifang (金浦北方)クロルアルカリ:
   当初名は江蘇北方クロルアルカリ、
   2007年2に江蘇金浦集團(GPRO)に買収され、改称

* 江蘇金浦集團:
   プロピレンオキサイド、ポリエーテル、PP、ガソリン添加剤、潤滑油、酸化チタン等を生産。
   2005年に揚子石化金浦橡膠(YPC-GPRO Rubber)を設立
    同社40%/Sinopec揚子石化 60%
    南京ケミカルパークにSBR プラントを建設中
     (第1期 100千トン、計画では第2期として+100千トン)
   2006年11月南京GPRO錦湖石化設立
    韓国の錦湖石化との50/50合弁会社
    塩素法PO100千トン、PPG 50千トン、苛性ソーダ 100千トンのプラントの建設を開始

   
2007/7
  Jiyuan Fangsheng Chemicals カーバイド法塩ビ 第二期建設開始
  立地:河南省Jiyuan(済源)市
 
  苛性ソーダ PVC  
第一期   45千トン   50千トン 2005/7 試運転スタート
第二期  120  120 今回着工
   
2007/8
  Haiji Chlor-Alkali Chemical  カーバイド法塩ビ 2期計画 建設開始
  立地:内蒙古自治区Wuhai (烏海)市 Wuda Industry Park
 
  カーバイド 苛性ソーダ PVC  
全体計画  1,000千トン  400千トン  500千トン 西部開発計画の化学品計画
第一期    90   60   60 2004/9スタート
第二期   360  180  200 今回着工

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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

(南沙 リファイナリー/エチレン計画)

2006年7月、SINOPECとクウェート国営石油会社(KPCの石油精製プロジェクトが国家発展改革委員会の承認を受けた。
SINOPECの広州石油化工がKPCとのJVを設立し、
広州市南沙経済開発区で年間1,200万トンの石油精製を行うもの。

事前報道では15百万トンの石油精製と100万トンのエチレンコンプレックスと伝えられた。
直前の7月18日の報道では、SINOPEC、KPCのほか、ダウともう1社欧米の石油会社が交渉に加わっているとされていた。

  2006/8/1 クウェートの中国進出

このSINOPECKPC50億ドルの製油所/エチレンJV計画(精油能力12百万トン、エチレン能力100万トン)は、現在、Shell Dow Chemical の参加について交渉していることが明らかとなった。

両社を引き込む考えは、この計画の決定に主導権を有するKPCが主張している。
同社は原油は持つものの、精油技術や計画のマネジメント能力を欠いており、
ShellBPのような企業の参加を要請している。
SINOPECとしては原油供給をKPCに依存するため、KPCの意向を無視できない状況にある。KPCが交渉の窓口となっている。

Shell は製油所とエチレンの両方への参加を計画している。
CNOOC との50/50JVの中海シェル石油化学広東省恵州市大亜湾800千トン)がShellの中国のエチレン計画への参加の第1号であるが、同社はリファイナリーへの参加として、本計画への参加を希望している。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2 

同社は昨年、同地でのCNOOC恵州製油所計画への参加を断っている。
しかし現在では、同社は中国の石油事業の将来や石油製品の価格制度改革に以前より楽観的になったと見られている。

ーーー

(青島製油所計画)

SaudiAramco はSinopecの山東省青島の製油所に参加する予定であった。
Sinopecは青島製油所(第一期の能力10百万トン)の持分の25%をSaudiAramcoに譲渡するといわれていた。
本年4月に両社は、Aramcoが2010年まで、100万バレル/日の原油を毎年Sinopecとその子会社に供給する覚書を締結している。

  2007/5/29 SABICとARAMCOの中国進出 

当初、2006年5月に建設を開始した製油所は本年末のスタートの予定であったが、来年9又はそれ以降に延期されることが明らかになった。

延期の理由としては下記の推定がなされている。
1)6月のSinopec会長の突然の交代が影響(前会長は汚職容疑で調べられているとの情報)
2)新会長が、本計画が厳しくなった環境基準に合致しているかどうか、確認を求めた。

また、Aramcoとの合弁契約での出資比率がまだ決まっておらず、原油供給契約での供給数量もまだ確定していないと言われている。

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(河北省唐山市曹妃甸地区)

本年8月、河北省の開発改革委員会はSinopecとの間で、唐山市曹妃甸(Caofeidian)地区での製油所・石化計画の契約を締結した。
計画では年産10百万トンの製油所と年産100万トンとエチレンを建設する。
NDRCの認可が得られ次第、建設を開始したいとしている。

本年5月には、CNPCPetroChina)が唐山市曹妃甸地区で大規模製油所を建設する計画であることが報じられている。
曹妃甸地区は同社が最近発見した南堡
Nanbao)油田に近いというのが理由である。
CNPCは河北省で他に2つの油田、華北(Huabei)油田と大港(Dagang)油田を操業している。

NRDCが両方を認可することはあり得ないとみられている。

Sinopec の曹妃甸地区の原油輸入桟橋計画は昨年11月にNRDCの認可を得ている。
年間
20百万トンの原油を扱うことができる300千トンの原油タンカーバースをつくる。
また桟橋は天津市に年間
20百万トンを送油可能な原油パイプラインに繋がっている。

他方、NRDCは年間 6百万トンを扱うLNG桟橋しか建設していない。

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GE・三井化学・長瀬産業の323日GEのプラスチック事業のSABICへの売却に伴い、3社の合弁会社の日本ジーイープラスチックス(GEPJ)とジェムピーシー(GEMPC)について、発展的な合弁解消の合意に達したと発表した。

GEはGE Plastics をSABICに売却することに合意している。
本年第3四半期にこの売却完了予定で、新事業名は
SABIC Innovative Plastics となる。
(→2007/8/31に完了を発表した)

  2007/5/22 速報 GEGE PlasticsをSABICに116億ドルで売却 

GEPJは1989年1月に設立された。GE 51%、三井化学 41%、長瀬産業 8%を出資している。
ポリカーボネート(PC)、変性PPOや、各種エンプラのコンパウンドを開発、製造、販売している。

コンパウンドの工場は
栃木県真岡市の真岡工場にあり、同工場内には2006年11月に総合技術研究所を開設している。

総合技術研究所GEの世界で7つあるGlobal Application Technology Centerの一つとなり、自動車分野、エレクトロニクス分野などの技術拠点としての役割を担うと同時に、プラスチックスの新製品開発を行い、材料開発と用途開発が一体となった「総合技術」サービス拠点となっている。

PCとその原料のビスフェノールAはGEMPCで製造している。
GEMPCはGE 50%、三井化学 42%、長瀬産業 8% の出資で、三井化学の市原工場内にプラントを有している。
ビスフェノールAの能力は90千トン、PCの能力は45千トンで、自消分以外のビスフェノールAは三井化学に販売を委託している。

ーーー

今回、以下の点が発表された。

1.GEMPCGE 50%、三井化学 42%、長瀬産業 8%)

 ・GEは長瀬産業の持株を買取り、GE 58%/三井化学 42% とする。
 ・プラントは2008年3月末まで操業、その後JVを清算する。
 ・PCは(プラントを廃棄し)GEの海外拠点の製品に順次切り替える。

 発表にはないが、PC原料のビスフェノールAについては、三井化学への売却を交渉中とのこと。

2.GEPJ (GE 51%、三井化学 41%、長瀬産業 8%)

 ・GEは、GEPJの株式を三井化学と長瀬産業から買い取り、GE 100%とする。
 ・同社の運営には変更なし。
 ・
長瀬産業はGEPJを含むGEプラスチックスの中国・東南アジアの販売代理店としてビジネスを継続。

 

変性PPOの原料となるポリフェニレンエーテル(PPE) と、その原料の2,6-キシレノール、副産品のオルソクレゾール(ICの封止用原料)は以前はジェムポリマーで製造していた。
ジェムポリマーはGE 51%、三井化学 49%のJVで、三井化学泉北工場内にPPE 11.3千トンのプラントがあった。

ジェムポリマーは2002年にプラントは撤去し、会社も解散した。

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GE Plastics PCについては、日本のほか、米国(2工場計 510千トン)、オランダ(170千トン)、スペイン(260千トン)と合計100万トンの能力を持っている。

同社は中国のPetroChina とワールドスケールのPCの製造JVの設立交渉を行っていたが、他社の増設で利益率が下がり、現時点では投資を正当化できないとして、この計画を延期することを決めている。(その後、SABICは本計画に関心なしとしている)

  2007/2/13 GE Plastics、中国のPC計画延期 

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本年6月に、中国のPVCの輸出が急拡大しており、近いうちに輸出量が追い抜き、中国がネット輸出国になるのは間違いないと述べた。

    2007/6/5 中国のPVC輸出急拡大 

その後、事態は大きく変わった。4月に88,095トンとなった輸出は、5月 65,351トン、6月 46,159トン、7月 45,733トンと減少に転じた。
特に、インド向けが激減し、4月の48千トンが、7月には6千トンとなっている。
(代わって、4月に3千トンに過ぎなかったロシア向けが12千トンに増えている)

輸出減少の主な理由は輸出増値税還付率の引き下げである。

中国政府は6月18日に「一部商品の輸出増値税還付率の引き下げに関する通知」を発表した。7月1日から実施されるが、製品によっては前倒しで実施されると伝えられた。

  2007/6/28 中国、輸出抑制のため輸出増価税還付率を引き下げ 

中国国内ではPVCやVCMの取引には17%の増価税(付加価値税)がかかる。
国内メーカーは原料の購入時に取引価額の17%の増価税を含めて支払うが、PVC販売時に販売価額の17%を含めて需要家に請求し、徴収増価税と支払増価税の差額を納付する。メーカーの損益には直接影響はない。

しかし、輸出の場合は異なる。
輸出の際には増価税はかからない。但し、製品(or 原料)の購入時に支払った増価税分はその内の一部しか還付されない。
PVCなど合成樹脂の場合は、これまでは11%相当が還付されたが、今回これが5%に引き下げられた。

このため、輸出業者は引き下げられた6%相当分が負担増となる。

例えば(単純化すれば)VCMを800$で購入してPVCを生産し、輸出する場合、800$x6% の48$が追加負担となる。
カーバイド法のPVCメーカーも原料や用役の購入金額の6%分がコスト増となる。

薄利の輸出取引でこれをメーカーが負担するのは難しく、値上げするしかないが、中国の需給バランス悪化でインドや中近東に輸出先を求める韓国や台湾のメーカーに加え、米国の塩ビ需要の減少で輸出に注力している米国メーカーとの競争の下で、このコスト増を値上げで転嫁するのは非常に困難で、これが輸出減少の原因と思われる。

ーーー

インド向け輸出の減少にはインドによるアンチダンピング調査の影響が大きい。

インド政府は昨年6月28日に、台湾、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、タイ、米国からの輸入PVC(サスペンジョン品)に関してアンチダンピング調査の開始を発表した。
Indian PetrochemicalsDhargandhra Chemical & WorksChemplast SanmarDCM Shriram Consolidated の4社の申請を受けたもの。

上のグラフで昨年の第4四半期に急減しているのは、このためにインド向け(及びトルコ向け)輸出が激減したことが響いている。
一時はインドで品不足になったと伝えられ、本年1~4月のインド向け輸出は復活していたが、再度激減した。
トルコは昨年、320ドル/tのアンチダンピング保証金を課しており、本年に入っても輸出は復活していない。

二大輸出先のインドとトルコのアンチダンピング調査の影響を受けた中国のクロルアルカリ協会では、容易に諦める訳にはいかないとして、これに対抗することを決めている。
インド向けでは該当する12の輸出メーカーのうち、11社が争う姿勢を示している。
同時にインドだけでは十分な量を供給できないとするインドの加工業界とも連携を深めている。

特にインドの場合は、中国を「非市場経済国待遇」をしており、中国国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないとして、台湾のコスト構造を使っているのを批判している。
台湾のエチレン法PVCと異なり、中国でははるかに安いカーバイド法であり、台湾のコストを使うのはアンフェアだとしている。

  非市場経済国待遇については2006/2/27 EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税
   

中国の業界はまだ、インドとトルコの市場を諦めてはいない。

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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

シャープが太陽光発電システムのコマーシャル、「イギリス・環境庁」篇をやっている。
吉永小百合さんがナレーターをしている。

                     シャープのコマーシャルから

これは英国環境庁(Environment Agency)のWest Area 本部 の3階建てオフィスで、Red Kite (赤鳶)House と呼ばれる。
Oxfordshire
Wallingford Howbery Parkにある。
同地の
8箇所のビルに分散していたが、効率化のため、このオフィスを新築した。(開発業者からのリース)
新築に当たり、環境に優しいオフィスとした。

このオフィスは以下のシステムを導入している。

 ・自然の風による冷却システム

   建物にカーブをつけて、風が通るような設計
   手で開けられる窓
   各階のコンクリートの天井は放熱板となり、夜は各階のモーターで動く
100の窓を通して入る空気で冷却
   夏に最も熱せられる最上階では天井のタービンが窓から風を入れる
  
 ソーラーコントロールガラスで自然光を最大にしながら、夏の暑さを低減
   南側の張り出し屋根が特に最上階に陰をつくる

 ・太陽光発電
   
Sharp 80W PV modules を南側に合計316 枚設置

 ・
太陽光温水パネルによる温水

 ・雨水貯水と再利用
   必要な水の
40%をこれで供給

 

英国環境庁はこの効果とそれによるCO2削減を以下の通りとしている。

  年間節約 年間CO2削減
太陽光発電  23,000 kwH   12トン
Solar panels   3,100 kwH    1.6
Natural ventilation
(エアコン対比)
  7,500 kwH    4
雨水貯水  水 240 kl   N/A
Total  33,600 kwH
 水 240 kl
  17.6

 

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安倍首相とインドネシアのユドヨノ大統領は8月20日、ジャカルタの大統領宮殿で首脳会談を行い、地球温暖化対策とエネルギー分野の協力強化に関する共同声明を発表するとともに、インドネシアからの安定的な液化天然ガス(LNG)の供給確保を可能とする条項が盛り込まれた日インドネシア経済連携協定(EPA)に署名した。

両国間の貿易は以下の通り。

経済連携協定では、両国の往復貿易額(2004/5~2005/4実績)の約92%を無税にするとしている。

 ・インドネシアへの輸出額の約90%(鉄鋼の特定用途免税を含めると実質96%前後)が無税に
  (2004/5~2005/4実績では無税の割合は約34%)
   完成車では3000cc超乗用車(45, 60%)が2012年までに関税撤廃
   その他完成車(含バス・トラック) (5-60%)は大部分が2016年までに5%以下に関税撤廃/削減

 ・インドネシアからの輸入額の約93%を無税に
  (2004/5~2005/4実績では無税の割合は約71%)
   ほぼ全ての鉱工業品の関税を即時に撤廃

エネルギー・鉱物資源では以下の通り決められた。
 1.投資環境の整備
   ・投資環境に影響を及ぼしうる措置の透明性確保・協議
 2.規制措置・輸出許可手続採用時の対応
   ・新たな規制措置導入の際の両国間の通報
   ・規制措置適用時の既存の契約関係をめぐる混乱の回避
   ・輸出許可手続の透明性確保
 3.政策対話の枠組みの構築
   ・EPAの下でエネルギー・鉱物資源小委員会を設置
    (エネルギー安全保障や競争的な市場の発展等に関する討議)
 4.具体的な協力案件の実施
    石炭液化技術、省エネ支援、発電所環境モニタリング他.
 5.環境に対する配慮

日本はLNGの22%、石炭の17.8%をインドネシアから輸入している。(LNGは第一位)

 今回の取り決めで、インドネシア側は日本の投資・協力で投資環境の整備、生産増強および環境対策が進められ、
 日本側は、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保を図る。
 インドネシアが規制措置や輸出許可手続きを採用した場合の対応も決められた。

ーーー

2007年6月にはブルネイ・ダルサラーム国との間で日・ブルネイ経済連携協定が締結されている。

同国からの輸入はLNGと原油で、協定ではエネルギー分野における安定的かつ互恵的な関係を強化することがうたわれている。

(ブルネイからの輸入)
 10年以内に99.9%を無税に
 (2005年 99.9%が無税)
(ブルネイへの輸出)
 10年以内に99.94%を無税に
 (2005年 32%が無税)

  自動車、同部品 3年以内に関税撤廃
   (現状 20%)

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インドネシアとの経済連携協定は8つ目。

これまでの締結国は以下の通り。
 1.シンガポール(2002年11月30日発効)
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/big/jpn-singapore-fta.htm
 2.メキシコ(2005年4月1日発効)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty161_1b.pdf
 3.マレーシア(2006年7月13日発効)
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2006-6-2.htm#fta-malaysia
 4.フィリピン(2006年締結)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/philippines/pdfs/gaiyo.pdf
 5.チリ(2007年締結)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_chile/pdfs/gaiyo.pdf
 6.タイ(2007年締結)
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-04-1.htm#epa-thai

 7.ブルネイ・ダルサラーム(2007年6月締結:上記)
 8.インドネシア(2007年8月締結)

ーーー

付記

日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は8月25日、マニラで経済相会台を開き、経済連携協定(EPA)の締結で最終台意した。

最終含意ポイント
日本は輸入額で90%の物品の関税を即時撤廃。
   3%は10年以内に撤廃。
   1%は自由化の例外で、コメや砂糖など。
インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ブルネイの6カ国は90%の関税を10年以内に撤廃。
ベトナムは15年以内に撤廃。
カンボジア、ラオス、ミャンマーは85%を18年以内に撤廃。
11月の首脳会合で署名。来年4月にも発効。
 

日本企業が薄型テレビの主要部品など高付加価値品を輸出して現地で組み立て、他のASEAN諸国に輸出する場合、これまで高率の関税がかかっていたが、今回の協定でこれがなくなる。日本企業はASEAN域内で一体的な生産ができるようになる。
ASEAN側は日本からの一層の投資拡大を期待している。

Shaw Group15日、天津大沽化工の500千トンのEB/SMプラント建設に関して、技術供与、基礎設計、資材購入、訓練の契約を締結したと発表した。対価は50百万ドル。

プラントは天津の臨港工業区(塘沽)に建設される。
技術はShaw Group ExxonMobil Chemical JVである Badger Licensing, LLC EBMax(SM)技術、SM技術が使用される。

EBMax(SM) はエチルベンゼン製造のための画期的な技術で、Mobil の触媒を使用し、Raytheon Engineers & Contractors Mobil が共同で開発した。

天津大沽は数年前からSMABS等への進出を画策していたが、本年初めにSINOPECの天津エチレン計画(100万トン)へ参画することを決定した。
能力は、
SM 500千トン、ABS 400千トンだが、ABSについては、原料 ANの調達が未定のためSMを先行する。

天津市の浜海新区は渤海湾に面した区域で、塘沽(TangGu)、漢沽(Hangu)、大港(Dagang)の3つの行政区と経済技術開発区(TEDA)、保税区などから構成されている。

今回のSM および LGとのJVは塘沽地区にある。
一方、Sinopec Tianjin Company(既存:Refinery 5,000千トン、エチレン 200千トン、増設:Refinery 7,500千トン、エチレン 1,000千トン)は大港地区。



天津大沽化工(Tianjin Dagu Chemical 天津渤海化工(Bohai Chemical)の子会社で、塩ビチェーンとPOおよびPO誘導品を事業化している。
渤海化工とともに、同じ天津市塘沽で韓国のLG Chem と塩ビのJVを設立している。

  天津LG大沽化工
LG Dagu Chem)
天津LG渤海化工
LG Bohai Chem)
寧波LG甬興化工
Ningbo LG Yongxing Chemical
立地 天津市塘沽 天津市 臨港工業区(塘沽) 浙江省寧波市
出資 LG化学グループ 85%
天津大沽化工  15%
LG化学グループ 75%
LG Dagu      10%
Bohai Chem
    15%
LG化学     75%
寧波甬興化工 25%
能力 PVC 340千トン VCM 350千トン
EDC
 300千トン
ABS 480千トン

天津大沽のSMABS)計画は同社単独の計画で、LG Chem は参加しない。

LG Chem は昨年9月に寧波LG甬興化工の150千トンプラントを新設し、合計能力を480千トンとした。
同社ではこれに加え、広州の中海シェル石油化学CNOOC and Shell Petrochemicals でのABS事業化を計画している。

 LGの中国での活動については
   
2006/9/12 LG Chem、中国で2工場竣工 

ーーー

Shaw Group 2000年に Stone & Webster を買収している。

Shaw Group 14日には、PetroChina との間で2つの800千トンエチレンプラントの技術、設計、資材購入契約を締結したと発表している。
一つは
撫順石化(Fushun Petrochemical )の増設、他は四川省成都市の四川石化Sichuan Petrochemical Company)(新設)である。 

ーーーー

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本年3月にブラジル国営石油会社PetrobrasUltra GroupBraskemの3社が共同で、同国の石油精製・販売、石油化学の老舗のIpirangaを買収することが発表された。

Ipiranga の事業は以下の通り配分される。

  石油精製:Rio Grande do Sul の製油所はPetrobrasUltra GroupBraskemが均等に出資し、
                事業を継続する。

  石油販売:ブラジル南部、南東部は
Ultra Groupが引き受け、引き続きIpirangaのブランドで販売する。
        北部、北東部、中西部は
Petrobrasが引き受け、5年の間に自社ブランドに順次変更する。

  石油化学:Braskemが資産の60%を引き受け、Petrobras40%を引き受ける。
         エチレンJVのCopesul
は上場廃止とし、Braskemが支配権を得る。

南部のTriunfo にCopesulに隣接して5工場を持つ。同社の能力はPP180千トン(手直し後)、HDPE3プラント計 400千トン、HDPE/LLDPE150千トンとなっている。

    千トン Start-up Technology
Plant 1 HDPE  140 1982 Hostalen/Basell
Plant 2 HDPE  120 1990 Hostalen/Basell
Plant 3 HDPE  140 1996 Hostalen/Basell
Plant 4 LLDPE/HDPE  150 1999 Spherilene/Basell
小 計   ( 550)    
Plant 5 PP  180 1999 Spheripol/Basell

なお、PetrobrasIpirangaBraskem が出資し、今後は上場廃止として Braskemが支配権を得るCopesul の能力は以下の通り。(千トン)

エチレン  1,135
プロピレン   581
ベンゼン   265
トルエン    91
m-キシレン    66
ブタジェン   105
MTBE   115

2007/3/23 ブラジルで石油・石油化学業界の再編  

ーーー

8月3日、 Petrobras Suzano Petroquimica を11ドルで買収することで合意したと発表した。少数株主の持分のTOBを含め、100%を取得する。

Suzano Petroquimica PPメーカーで能力は以下の通り。

PP 能力 (千トン)
立地 現状 増強後 増強時期
Maua industrial facility, Sao Paulo  360.0  450.0 2008下期
Duque de Caxias industrial facility, Rio de Janeiro  200.0  300.0 2007
Camacari industrial facility, Bahia  125.0    
Total  685.0  750.0  

これに加え、Suzanoが出資する下記の企業の持分がPetrobras に加わる。

Company Petrobras
 持分
Suzano
 持分
合計
Rio Polimeros RioPol  16.66%  33.33%  50.0%
Petroquimica UniaoPQU  17.5%   6.8%  24.3%
Petroflex  ー  20.1%*  20.1%

但し、Petroflex に関しては、Suzano の株主が変わった場合は、Suzano の持分をBraskem Unipar が購入するオプションを持っており、これに基づき、Braskem 13.4%分を取得し、33.5%とした。
Braskem は将来、これを売却する可能性があるとしている。

各社の製品と能力は以下の通り。( )は新増設中のもの。

Company Product Capacity(千トン)
Rio Polimeros
RioPol
Ethylene    520
LLDPE / HDPE    540
Propylene     75
Petroquimica Uniao
(PQU)
Ethylene    500(→700
Propylene    250
Benzene    200
Solvents    180
Gasoline A    170
Butadiene     80
Petroflex Elastomers    411

ーーー

Petrobras によるSuzano Petroquimica の買収に関しては、民営化から再国営化への変更だと批判する声が出た。

しかし、Petrobras の拡張策はこれにとどまらなかった。

811日、Petrobras União de Industrias Petroquimicas (Unipar) 両社のブラジルの化学品、合成樹脂事業を統合する協議を行っていると発表した。

新会社の名称は Companhia Petroquimica do Sudeste (CPS) で、Uniparが主導権を持つ。
Petrobras は「ブラジルの石油化学は国際的には規模が小さいため、統合してワールドスケールにしたい」としている。

Petrobras による Suzano 買収は年末に完了する予定だが、これにUnipar が加わることとなる。

Company Petrobras
持分
Suzano
持分
合計    Unipar
持分
再計
Rio Polimeros RioPol  16.66%  33.33%  50.0%  33.33%  83.33%
Petroquimica UniaoPQU  17.5%   6.8%  24.3%  51.0%  75.3%
Petroflex  ー  20.1%
6.7%
 20.1%  10.1%  30.2%
16.8%
   
Unipar PQU 持分は37.2%であったが、本年6月にDow Brasil から13%強を買収した。

これと同時に
100%子会社のPE会社、Polietilenos UniaoDow Brasil からSao Paulo 州のCubatao にある140千トンのLDPEプラントを買収した。(既存プラントと合わせ、LDPE能力は270千トンとなった)
2008年3Q にはCapuavaプラントの増設完成で能力は500千トンとなる。

Unipar とその(上記以外の)出資会社の製品と能力は以下の通り。( )は新増設中のもの。

Company
(出資比率)
Product Capacity
 (千トン)
Unipar          Cumene    210 (→310
Olefins     27
Isoparaffins     26
Polietilenos Uniao
(100%)
LDPE/EVA  130+140 *
     (
+230
Carbocloro
(50.0%)
Chlorine    255+100
Caustic Soda    283 (+112
EDC    140
HCl    275
Hypochlorite    275
Polibutenos
(33.3%)
Polyisobutenes     16
* Dow より購入(140)

Petrobras では他の会社や投資家(例えばRioPol に出資する国営開発銀行のBNDES)にも新会社への参加を呼びかける。

両社は90日以内に契約を締結し、新会社の運営方法などを決めたいとしている。

各社の関連図は下記の通りとなる。
ブラジルの石化は、実質的に新会社とBraskem の二つとなる。

 

 

Lyondell-BASF裁判

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8月13日、New Jersey州の裁判所で、Lyondellに対して、BASFに170百万ドルを支払えとの判決があった。

Lyondell と BASF(米国)の1998年締結の契約では、酸化プロピレンのBASF向け価格は「最も安いもの」にすることとなっていた。
しかしながら、BASFはLyondellが他の需要家にBASFより安値で販売していたこと、そしてその事実を隠そうとしたことを見つけた。
(通常、これらの契約では相手の帳簿の閲覧までは行わないため、疑心暗鬼になることがある)

両社は交渉を行ったが、決着しなかった。

2005年の4月にLyondell は Pennsylvaniaの裁判所に、酸化プロピレンの販売契約の各条項の解釈について判断を求めた。
これに対し、BASFは直後に
New Jersey
の州最高裁にLyondell を訴え、販売契約違反で100百万ドル以上の賠償を求めた。
BASFの米国の本拠はNew Jerseyにある)

2005年9月にBASFはLyondell の訴え(Pennsylvania)の却下を求める訴えを出し、それが認められた。

今回の裁判では7週間の証言のあと、6人の陪審が3日間議論し、LyondellがBASFに8年間にわたり過剰請求していたと判断した。
詳細は明らかでないが、懲罰的賠償を含んでいると思われる。

裁判で
Lyondell はミスがあったことは認めたが、その額は22.5百万ドルであるとしていた。
BASF側が286百万ドル(最低でも110百万ドル)の賠償を求めたのに対し、Lyondell BASFが同社のミスを材料にボロ儲けをしようとしていると批判した。

Lyondell は控訴を検討している。
Lyondell では今後もBASFPOを供給するとしている。
(商売は商売、訴訟は訴訟という米国流の考え方である)

BASFは酸化プロピレンをPolyol の製造のために使用している。
同社は
LouisianaGeismar での増設と、MichiganWyandotteからGeismarへの移転を実施中で、2008年には現在の250千トン(委託、購入を含む)から350千トンに能力を増加する。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

中国海洋石油CNOOCCChina National Offshore Oil Corporation)は子会社の中海石油化学China BlueChemical Ltd)が生分解性プラスチック製造のためポリプロピレンカーボネート(PPC)プラントの建設を開始したことを明らかにした。

「白い公害」と呼ばれる非分解のレジ袋を減らすとともに、プラスチック製造のための石油やガスの節約にもなるとし、省エネと温室効果ガス減少という政府の求めに応じるものとしている。

PPCは二酸化炭素とプロピレンオキサイドのコポリマー。
海南島東方市の化学産業都市で生分解性プラスチックを年間 3,000トン生産する。
中国科学院・長春応用化学研究所が独自に開発した特許技術を使用している。

2008年6月の生産開始を目指している。

中海石油化学は中国最大級の肥料会社で、海南島東方市に2系列のプラントを有している。
第一系列では尿素 520千トンを、第二系列では尿素800千トンと複合肥料 50千トンを生産する。
また、中海石油化学と香港のラミネート製造会社
Kingboard Chemical Holdings Limited との合弁会社60/40CNOOC Jiantaoでメタノール600千トンを製造している。
いずれも原料の天然ガスを親会社の
CNOOCから供給を受けている。

中海石油化学は20063月に内蒙古の Tianye Chemical 株式の90%を買収した。同社は尿素520千トンとメタノール200千トンのプラントを有しており、同社の尿素製造能力は1,840千トンに増大した。
Tianye Chemical
ではポリアセタールの製造も計画している。

ーーー

二酸化炭素からプラスチックなどの高分子をつくる技術は東京理科大学の井上祥平教授(東大名誉教授:当時、東大助教授)と東大の鯉沼秀臣客員教授(当時、東大大学院生)が約40年前に見つけた。
当時は環境問題や資源問題も今ほど世間の問題意識が高くなく、コストの問題(触媒効率が問題)等で実用化には至らなかった。

2006/5/23の朝日新聞夕刊には「CO2からプラスチック 40年前日本で発見、中国で工業化進む」という記事が載っている。

中国の研究者が触媒の効率を約10倍に改良し、内蒙古の企業が年間1,000トン規模の試験工場で生産していること、「生分解性」の特徴を生かしていることなどが記載されている。
同社の製品には大きく「生物降解」(生分解性)と表示されている。

この内蒙古の企業は蒙西高分子材料有限公司(Inner Mongolia Mengxi High-Tech Group)の全降解塑料分公司。
同社のホームページによると、
長春応用化学研究所からライセンスを受け、内蒙古のオルドス(Erdos:鄂尓多斯)に年産 3,000トンの工場を持ち、2002年12月に販売開始している。元の技術は1969年の S. Inoue の発明によると明記している。

BioCO2TM が商品名で、多種類のコポリマーが生産可能としている。
CO2-POコポリマーと、これにEOを加えたターポリマー、シクロヘキセンオキサイドを加えたターポリマーの3品目の詳細が記載されている。

  BioCO2TM 100 BioCO2TM 200 BioCO2TM 300
Appearance pale yellow or colorless
transparent pellets
pale yellow or colorless
transparent pellets
pale yellow or colorless
transparent particle
Density 1.24g/cm3 1.22-1.32g/cm3 1.22-1.52g/cm3
Package 50kg/ bag 50kg/ bag 50kg/ bag
Component carbon dioxide-propylene oxide
copolymer
carbon dioxide-propylene oxide-
ethylene oxide terpolymer
carbon dioxide-propylene oxide-
cyclohexene oxide terpolymer
Carbon dioxide unit content 4042wt% 4250wt% 31-42wt%
Number average molecular weight 60,000150,000 50,000150,000 30,000150,000
Polydispersity 515 4.013.0 3.013.0
Melt flow index(MFI)
150℃,2.16Kg, 0.1MPa
16-18g/10min 16-26g/10min 3.2-18g/10min
Glass transition temperature 3539 5.2-38 35-125
5weight loss temperature 230-270 180250 180-290
Processing temperature 150160    
Biodegradability biodegradable in 5-60 days
upon forced condition
biodegradable in 5-60 days
upon
forced condition
biodegradablein 5-60 days 
upon forced condition


* バックナンバー、総合目次は 
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サブプライムローンの影響で世界的に株価が急落し、円も急上昇した。

米国の住宅ローン残高は約10兆ドルで、そのうち、サブプライムローンの残高は1兆3千億ドル。
サブプライムローンは証券化され、これをヘッジファンドや多くの金融機関が購入している。

このローンは初めの数年は低利率で、その後非常に高い利率になる。このため、支払不能による損害の予想は難しい。
FRBのバーナンキ議長は7月中旬の議会証言で、これによる金融機関の損失が500億-1,000億ドルに達するとの試算があると指摘した。

2007/8/8 米国の住宅市場調整長引く 

この問題を引き金にした世界的な信用収縮不安で、幅広い層の投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが続いた。

米国の株安を受け、16日の日経平均終値は16,148円となった。円は1ドル=113円台をつけた。

海外投資家は円キャリー取引(低利の円を借り高利のドルなどを購入、新興国の株式などに投資)を行っている。
株価下落で、これを解消するため円の買戻しが行われ、円高となった。

16日の米・ダウ工業株30種平均は12,845ドル78セントと4月19日以来の安値となった。

17日の円相場は一時、1年2カ月ぶりに1ドル=112円台を付ける急激な円高となった。
東京株式市場は円高で輸出の採算悪化を懸念して自動車、電機などの輸出関連株が売られた。日経平均株価は874円安と急落、15
,273円で取引を終えた。下げ幅は今年最大で、2000年4月17日(1,426円)以来の大きさとなった。

韓国の株式市場では16日に過去最大の下落幅、17日も2日連続で暴落した。ウォンは円に対して1年3カ月ぶりの安値水準となった。
他のアジア市場でも軒並大幅に値下がりした。

17日朝(米国時間)、米連邦準備制度理事会(FRB)は信用不安の解消を狙い、公定歩合を6.25%から5.75%に引き下げると発表した。
これを受け、米株式相場は7営業日ぶりに大幅反発し、ダウ工業株30種平均は13,079ドル8セントで終えた。
米国の公定歩合引き下げを受け、17日のニューヨーク外国為替市場で円相場は5営業日ぶりに反落し、1ドル=114円30-40銭で取引を終えた。

ーーー

8月16日に発表された7月の米国の住宅着工件数は1,381千戸(年率)と約10年ぶりの低水準となった。
(数字は遡って見直される)

改善の兆しは全く見られない。

既報の通り、DuPontのHolliday CEO は北米の住宅需要は来年のどこかの時期まで回復を見込めないと述べている。

あるエコノミストは、住宅市場の底入れ時期について、「全米平均で価格が反転するのは2008年の半ば過ぎ。カリフォルニアなどは更に遅れる。住宅建設会社は業績回復までに数年かかる」としている。(日本経済新聞 8/18)

Akzo が ICI を買収

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Akzoは13日、ICIを約80億ポンド(約1兆9000億円)で買収することで合意したと発表した。
1株670ペンスで、これは本年3月にAkzoが医薬事業のOrganon BioSciences 売却を発表し、この代金で事業買収を行うことができるようになった時点のICIの株価と比較し、44%上乗せしたものとなる。

Akzoの最初の買収提案は72億ポンド、2回目の提案は78億ポンドであった。

なお、ICI株主は8月2日に発表された本年1回目の中間配当4.95ペンスを受け取れるほか、7-12月の2回目の中間配当 5ペンスについて、買収有効期間までの部分を受け取る権利を有する。

既報の通り、AkzoはICIの買収後、National Starch 部門(接着剤とエレクトロニック材料事業)を27億ポンドでHenkel に売却する。

ーーー

過去の経緯は以下の通り。

2007/6/19 ICI、Akzo Nobel による買収提案を拒否

2007/7/23 Akzo-ICI 問題のその後 

2007/8/1 ICIAkzo の再提案を拒否 

2007/8/6 速報 AkzoのICI買収が決定か

 

1926年に設立され、高圧法ポリエチレンを開発した名門 ICI は消え去ることとなる。
単に買収されて名前が消えるのではなく、多岐に亘った事業が下図の通り、バラバラにされ、元のICIは跡形もなくなる。

Wall Street Journal 紙は、今回の売却は、英国が製造業からもっとサービス志向の経済に移行していることの結果であり、また英国の解放政策の結果でもあるとしている。

ICI (Imperial Chemical Industries PLC) は1926年に世界の化学会社に対抗するために、英国の化学会社4の合併で設立された。
4
はアルカリのBrunner, MondUnited Alkali、1870年にAlfred Nobel が設立した火薬会社Nobel Industries、及びBritish Dyestuffsで、主な事業は、化学品、火薬、肥料、殺虫剤、染料、非鉄金属、塗料などであった。

その後、同社は世界有数の総合化学会社となったが、同社は1997年に、事業を化学品のなかでも付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決めた。

1997年7月、ICIは英蘭系Unileverの特殊化学品4社、National Starch社(工業用接着剤、レジン、産業用でんぷん)、Quest(香料、乳化剤、芳香剤)、Uniqema(脂肪酸、グリセリン)、Crosfield(シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト:その後売却)を買収した。

同時に同社は上の図のように、既存事業を順次分離・売却していった。

  2006/3/7 ICIの抜本的構造改革  

その結果、ICIはスペシャリティ化学品を中心とした「新生ICI」に生まれ変わった。
塗料のほかは、Unileverから購入したNational Starch、Quest、Uniqemaが中心である。

2006年にはQuest、Uniqema を売却し、売却代金を退職年金不足額の充当と負債の返済に充てた。

  2006/11/30 ICI、Quest部門をGivaudanに売却 

そして今回の買収で、残る塗料事業はAkzoに、National Starch はHenkel に移管される。

ーーー

Akzo Nobel:

1969年に化学繊維を中心とした AKU(Algemene Kunstzijde Unie)と工業用塩など幅広い製品群を販売していた KZO(Koniklijke Zout Organon) が合併し AKZO N.V. となった。

他方、1984年にスウェーデンのBofors と KemaNobel が合併しNobel Industries ABが発足した。

1994年2月に Nobel Industries AB とAKZO N.V. が合併し Akzo Nobel N.V. となった。

その後、1998年にAkzo Nobel は英国の塗料と合成繊維のメーカー Courtauldsを吸収合併したが、1998年に繊維部門 Acordis を CVC Capital に売却している。

Akzo Nobel は医薬品、塗料、化学品の三つの分野で活動している。
そのうち、医薬品では医療用医薬品事業(Organon Biosciences
、動物用医薬品事業Intervet:世界のトップ3の一つ)とバイオ事業(Nobilon International )を持っていたが、本年3月にOrganon Biosciences を Schering-Plough に売却することで合意した。

今回、同社はICIの塗料事業を手に入れるが、独禁法上、自社の塗料事業を手放す必要があるのではと言われている。
Akzoの塗料事業 Crown は英国でのシェアは約14%、これに対してICIのDulux は40%のシェアを持つ。)

ーーー

Henkel:

Henkelは1876年に Fritz Henkel2人のパートナーと Henkel & Cie を設立し、シリカベースの洗剤を販売したのが始まりである。

Henkel は3つの分野(Laundry & Home CareCosmetics / ToiletriesAdhesives Technologies )でグローバルに活動している。
今回のNational Starch 買収は
Adhesives Technologies 事業の強化になる。

PPカルテル審決

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公正取引委員会は8月10日、住友化学、サンアロマー、出光興産、トクヤマに対するポリプロピレン販売価格カルテルの審決(8月8日付け)を発表した。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.august/0708101.pdf

ポリプロピレンの販売分野における競争を実質的に制限していたとし、以下を命じた。

住友化学とサンアロマーは
 ・販売価格引き上げの合意の消滅の確認
 ・合意の消滅と今後は価格を自主的に決めることを取引先に周知徹底
 ・今後、他と共同してPP価格を決めず、自主的に決める。

出光興産とトクヤマ:
 違法行為があったが、現在は消滅
 出光はプライムポリマーに35%出資で、実質的に事業をやってはいないため、
 またトクヤマは現在PP事業をやっていないため、
 格別の措置は命じない

公取委は2000/3/6の部長会で「10円/kg目処の引き上げで合意」したと認識し、上記の判断を下した。
これに対して、企業側は「
合意なし」と主張している。

2000/3/6の部長会に関して、企業側と公取の主張は以下の通り。

企業側
(応諾した)グランドポリマーが「上申書」で、3/6の部長会でPPの値上げにつき7社が合意したことはない旨主張している。
PP市場における大手2社たる日本ポリケムとグランドポリマーが消極的意見を述べ、この意見を他社の出席者が認容している。
合意があったとの供述の間には,いろいろ矛盾があり、各供述には信用性がない。
部長会メンバーの大部分は値上げ決定権限を有していない。そこでの発言は個人としての発言にすぎない。
   
公取
7社の出席者全員が一致した旨の複数の供述調書は、事情聴取の内容を録取した上で供述人にその内容を読み聞かせ及び閲読等させた上で,同人が、誤りがない旨申し立て署名押印したものであり、その作成過程からみても任意性に欠けるところはなく、さらに各供述内容は整合している。

今回の審決で、公取委は次の通り説明している。

独占禁止法第3条において禁止されている「不当な取引制限」は「共同して対価を引き上げる等」となっているが、
「共同して」のためには「
意思の連絡」が必要である。

「意思の連絡」は、一方の対価引上げを他方が単に認識認容するのみでは足りず、対価の引上げを実施することを
認識ないし予測しこれと歩調をそろえる意思があることを意味する。
しかし、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、
相互に対価の引上げ行為を認識して暗黙のうちに認容することで足りる。

その判断に当たっては対価引上げがなされるに至った前後の諸事情を勘案して事業者の認識及び意思がどのようなものであったかを検討し事業者相互間に共同の認識認容があるかどうかを判断すべきである
(東芝ケミカル株式会社審決取消請求事件平成7年9月25日東京高等裁判所判決同旨)。

本件は改正前の独禁法に基づくため、今後の進め方は次の通りとなる。

   応諾する場合
     追って課徴金納付命令
       応諾すれば課徴金納付で完了
       審判請求すれば、審判で新しい課徴金納付命令
   
   応諾しない場合
     東京高裁へ控訴

企業側は「合意はなかった」と主張しており、東京高裁への控訴もありうる。
その場合、最終決定までまだまだ時間がかかる。

以前にも述べたが、こんなに時間がかかるのは問題である。

本件の経緯は以下の通り。

  2006/7/13 ポリプロ価格カルテル事件の現状 

  2007/7/10 ポリプロカルテルのその後 

2000 1 21 部長会で値上げの必要性について意見交換
    2 7 現状のPPの販売価格で採算が取れるナフサ価格の水準 17,000~18,000円/kl で共通認識
(各社:共通認識はない)
    2 21 PPの値上げについて意見の一致をみず
    3 6 4月以降のナフサ価格の見通し 22,000から23,000円/klで一致
10円/kg目処の
引き上げで合意
(各社は「合意なし」と主張)
    3 17 各社の値上げの打出しの内容、対外発表時期等を確認
(各社:値上げ手続き後であり、事前合意がなくとも進捗状況の話はする)
    3 27 各社の責任分担ユーザーを取り決め
(各社:送別会の集まり。酒席で,各社が値上げ交渉に入っている中での難物ユーザーの名を挙げることは、カルテル合意
     の存在を前提としなくても行われ得る)
   4   (4/15~5/1)各社の値上げ実施予定日 →課徴金計算始期
   5 30 公正取引委員会が立入検査   →前日が課徴金計算終期(2007/6/19 審決:日本ポリプロ、チッソ)
  9   チッソ、日本ポリケム、グランドポリマー 
 本件合意から離脱する旨等を他の各社に文書で通知→
課徴金計算終期(2003/3/31納付命令:三井化学
2001 5 30 公取委勧告
 

 拒否:住友化学、サンアロマー、出光石油化学(→出光興産)、トクヤマ
      
2001/6/27 審判開始決定
          9/12 第1回審判
      2006/8/4  第28回審判(審判手続終結)


 応諾:日本ポリケム
(→日本ポリプロ)、グランドポリマー(→三井化学)、チッソ

 ○日本ポリケム:
   勧告を厳粛に受け止めている

 ○グランドポリマー:
   ・
合意が成立など認識と異なる部分もあり、応諾するか否か苦慮
   ・まぎらわしい行為があったことも事実
   ・早く結論を出して欲しいという社員の気持にも配慮し、応諾
   ・認識と異なる点については上申書提出

 ○チッソ:
   早く事業に専念したいため
応諾

2003 3 31 応諾3社に課徴金納付命令
日本ポリケム  8億4517万円 →審判
三井化学
(グランドポリマー)
 7億6008万円 →応諾
チッソ  4億3513万円 →審判
2007 6 19 日本ポリプロ、チッソ審決
日本ポリプロ
(日本ポリケム)
 2億2087万円
チッソ  1億1662万円

課徴金計算終期の見直しで当初の命令より大幅減額

2007 8 8 勧告拒否4社に審決

  結論 独禁法違反あり(各社は否定しているが)

住友化学、サンアロマー 価格引き上げ合意の消滅の確認とその周知徹底等
出光興産、トクヤマ 格別の措置なし(PPの製造販売業を実質的に営んでいない)

 

付記

独禁法
第54条  公正取引委員会は、排除措置命令に係る審判請求があつた場合において必要と認めるときは、
当該排除措置命令の全部又は一部の執行を停止することができる。
   2    前項の規定により執行を停止した場合において、当該執行の停止により市場における
競争の確保が困難となるおそれがあるときその他必要があると認めるときは、

公正取引委員会は、当該執行の停止を取り消すものとする。

今回、公取委が住友化学とサンアロマーに「価格引き上げ合意の消滅の確認とその周知徹底等」を命じたのは上記の「特に必要があると認めるとき」に該当すると認めたためとしている。

その理由として以下の通り述べている。

平然と情報交換した
PP製造販売業者の数は7社から4社に減少したことにより、情報交換をすることがさらに容易になった
PPの値上げについて共通の認識を形成しやすいといえる
(ナフサ価格とPPの価格との連動性)
ポリオレフィン業界においては価格の引上げを行う不当な取引制限が繰り返し行われてきた
とりわけ
住友化学は過去にPPの価格カルテルにつき1回、PEの価格カルテルにつき3回行政処分を受けたこと
   
以上から、今後、本件違反行為と同様の違反行為が再び行われるおそれがあると認めることができる
   
なお、「特に必要があると認めるとき」に該当するか否かの判断については、公正取引委員会の専門的な裁量に委ねられている。
(最高裁判所平成16年(行ヒ)第208号、平成19年4月19日判決)

Plattsは Japan's FTC fears Sumitomo Chem may engage in price fixing again というタイトルで本件を伝えている。      

 

3月決算企業各社の2007年第1四半期(4-6月)決算の発表が出揃った。

各年の4-6月の各社の営業損益対比は以下の通り(億円)

3年間のナフサ価格は以下の通り。

  2005/4-6 2006/4-6 2007/4-6 06/07差異
国産ナフサ価格
    (円
/Kl
 36,900  48,800  57,800   +9,000

ナフサ価格高騰のなかで、国内価格および輸出価格の値上げが行われ、増益の会社が多い。

そのなかで、住友化学は情報電子化学部門が売価の下落に加え、生産能力増強に伴う固定費の増加により赤字となったのが響き、減益となっている。

信越化学は電子材料の増益で前年を大幅に上回ったが、塩ビを含む有機・無機化学品は減益となった。
同社によると、PVCは、北米住宅需要の低迷の影響を受け同業他社が大幅な減益や赤字を計上する中で、シンテックは高水準の操業を継続し、営業利益で前年同期を3割ほど下回る減益に留めた欧州は好調を維持している。
      2007/8/8 米国の住宅市場調整長引く 参照  

東ソーのVCM・PVCを含む基礎原料は前年(30億円の赤字)に対しては大幅増益とはなったが、実績はトントンに近い。

 

好調な各社も、ナフサ価格の上昇局面では収益は厳しくなるとして慎重で、2008年3月期の業績予想は据え置いている。

ーーー

主要各社の部門別営業損益対比は以下の通り。

信越化学  (百万円)

  前年 本年 差異 備考
有機・無機化学品  25,217  24,409  - 808 Shintech 米国住宅不振で3割減益
電子材料  24,457  38,773  14,316  
機能材料その他   7,468   6,330  -1,138  
全社    162    20  - 142  
合計  57,305  69,533  12,228  

 

三菱ケミカル  (百万円)

  前年 本年 差異 備考
石化   1,558   8,051   6,493 在庫受払差益の増加あり *
機能化学   9,319   9,548    229  
機能材料   4,626   4,555    -71  
ヘルスケア  12,950  11,472  -1,478 研究開発費等の販売管理費の増加
その他   2,005   2,216    211  
コーポレート  -1,068  -2,469  -1,401  
合計  29,390  33,373   3,983  

* 棚卸資産評価方法が総平均法のため、ナフサ価格上昇分が一部、先に繰り越され、増益となる。
  (価格下落の局面で、その分が反映され、減益要因となる。)

 

旭化成 (億円)

  前年 本年 差異 備考
ケミカルズ   64  172  108 うち売価差 171
ホームズ  - 37  -28    9 うち売価差 47
ファーマ   47   46   -1  
せんい    5   17   11  
エレクトロニクス   64   58   -7 うち売価差 -15
建材   10   11   0  
サービス・エンジニアリング等   15   4  -11  
全社   -16  -20   -4  
合計  153  259  106  

 

住友化学 (百万円)

  前年 本年 差異 備考
基礎化学品   2,718   4,291   1,573  
石油化学   3,629   2,317  -1,312 原料価格高騰の影響(LIFO法)
精密化学   3,214   3,354    140  
情報電子化学   3,734  -4,069  -7,803 売価の下落に加え、生産能力増強に伴う固定費の増加等
農業化学   4,616   5,405    789  
医薬品  15,283  13,940  -1,343 主力品目以外の販売減少や工業所有権収入の減少等
その他    728    419   -309  
全社     60    - 23    -83  
合計  33,982  25,634  -8,348  

  

三井化学  (百万円)

  前年 本年 差異 備考
機能材料   3,247   8,095  4,848 ウレタン市況の回復ほか
先端化学品
(精密化学品、農業化学品)
  3,227   3,241    14  
基礎化学品
(基礎原料、合繊原料、工業薬品、
 合成樹脂)
 10,002  14,114  4,112 売価差 3,160 原料価格差 -2,690
          LIFO法)
その他    731    707  - 24  
全社   -459  -1,077   -618  
合計  16,748  25,080  8,332  

 

東ソー  (百万円)

  前年 本年 差異 備考
石油化学   1,076   3,300  2,224 昨年度にクラッカーの定期修繕
基礎原料  -3,067    162  3,229 VCMPVC 海外市況上昇
機能商品   6,226   9,907  3,681  
サービス    493    519    26  
合 計   4,728  13,890  9,162  

   ーーー

なお、医薬会社の業績は以下の通り。



* バックナンバー、総合目次は 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

Eastman7月27日、メキシコ湾岸の2つの大きな石油コークスガス化計画で中心の役割を果たす意向を発表した。

Eastman の石油コークス(および石炭)のガス化計画は以下の通り。(同社ホームページより) 

両計画では化学品製造のために天然ガスではなく石油コークスを原料とし、Syngas からアンモニア、メタノールを生産、副産品としてCO2、硫黄を生産する。

Eastman は両計画に出資し、工場運営を担当する。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

1)Louisiana Project

Eastman Faustina Hydrogen Products LLC の計画に25%出資する予定で、工場運営とメンテナンスを受託し、製品のメタノールを長期契約で購買する。

Faustina Hydrogen Products LLCU. S. TransCarbon LLCD.E. Shaw group Goldman, Sachs が石炭と石油コークスガス化のために設立)の子会社で、LouisianaSt. James Parish Mosaic Fertilizer, LLC に隣接してガス化工場を建設する。建設予算は16億ドル。

製造能力はアンモニアが日産 4,000トン、メタノール 600トン、硫黄 450トン、CO2 16,000トンで、本年末か来年早々に建設に着工し、2010年に稼動を予定している。

アンモニアの大半は隣接するMosaic Fertilizer, LLC が既に長期購買契約を締結しており、残りを肥料メーカー大手のAgrium, Inc.が購入する。Mosaic Fertilizerは硫黄も肥料原料として購入する。

メタノールは大手化学会社数社に販売する。

CO2は全量をDenbury Resources Inc. が購入し、古い油田の活性化を図るため、メキシコ湾岸やルイジアナの石油回収に使用する。

2)Texas Project

Eastman Texas Beaumont を拠点とする意向で、地方政府の予備認可を受けている。
Beaumont にあるTerra Industries のメタノール、アンモニア製造設備を含む資産購入のオプションを持っており、この計画と結びつける考えで、2011年稼動を目指している。

Eastman はこれに50%を出資し、運営に当たる考えで、間もなく他の投資家を発表するが、参加予定社には以下の会社が含まれている。
Air Products and Chemicals, Inc.
  水素の長期購入のLOI を締結済みで、合わせてガス化に必要な酸素分離設備(7,000t/d)を建設、運営する。
Fluor Corporation
  設計業務
GE Energy
  ガス化技術供与

 

 参考 2006/11/22 Eastman Chemical、石炭ベースの化学品志向へ 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

ベネズエラの Chavez 大統領は国営石油会社 Pequiven Carabobo Guacara "Petro Casa"(直訳で「石油の家」)工場の開所式に出席し、その意義についてスピーチした。

年間3万トンの塩ビのキットをつくる工場で、これにより年間18千戸の住宅を建設する。基礎からユーティリティ設置まで含めて8日以内で組み立てる。家の中の温度は周辺より4℃は低く、快適であるとしている。

大統領は、同様の工場をベネズエラの他の地域にもいくつかつくり、少なくとも年間100千戸を建設したいと述べた。
強く、100年ももつ立派な家で、通常より建設費は50%は安いとし、これによりスラムを失くしたいとした。
また、一般住宅以外にも、ビルや学校などのインフラにも塩ビを使用したいとしている。

塩ビはOrinocoデルタのOil Belt などに豊富なメタンガスからつくるが、住宅建設に使用するセメントもPequiven が肥料製造の副産品から製造する。同社では"Petrocemento" (石油セメント)と呼んでおり、一般のセメントの15%程度の価格で販売している。

 

モデルハウスではなく、実際の住宅を大量にall PVCで建設するのは初めて。

独裁政権が政府の方針として政府の手で実施するもので、機能面で優れている上に、安価であるため、成功の可能性は高く、他の国にも波及する可能性がある。

ーーー

これとは関係ないが、Solvinの2003年9月の発表にタイの塩ビ製住宅のニュースがある。

柱と床のスチール、コンクリートを除き、2階建ての住宅が塩ビと塩ビコンパウンドで建設された。ドアや窓枠は硬質塩ビが、床から壁、天井から家具に至るまで、木材の代わりに木質塩ビコンパウンドが使用されている。

塩ビ住宅は、概観は周囲と同じ木材住宅風でありながら、塩ビの特徴の耐久性、シロアリや水に強い、軽量、建設が容易などの利点を持つ。好きな色が可能で、塗装が不要である。耐熱性がコンクリートの壁に比べ30%は高い等の利点をうたっている。

 

 

 

 

ーーー

日本でも塩ビ窓枠がかなり普及してきた。

25年ほど前に塩ビメーカーにより技術導入されてから製品開発が進められてきたが、途中からはサッシメーカーも参入して、北海道、東北などの寒冷地を中心に普及が進んでいる。特に北海道では、新築住宅のほぼ全てに塩ビ窓枠が使われている。
優れた断熱効果で関東以南でも採用が増えている。霞ヶ関の環境省(合同庁舎5号館)のオフィスにも、樹脂サッシの内窓が施工されている。

サイディングについては建築基準法が問題となる。
建築基準法では防火地区建築物の密集地域)、準防火地区(都市と郊外の住宅との中間の地域)では外壁に耐火構造、準耐火、防火壁が要求され、サイディング材は使用できない。(準防火地区の1,2階建ては防火構造の認定を受けたものは使用可能)

ただし、それ以外の地域(全戸数の約70%)では、認可を受けたサイディング材は使用が可能であり、徐々に採用されている。

サイディングについては 樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/ 参照。

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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

米国の1-6月の住宅着工件数(季節調節済み)平均は1,461千戸(年換算)となった。
2006年1月に過去最高の2,265千戸を記録した以降、急落し、2000年の平均を下回り、回復の兆しが見えない。

   参考 2007/4/21 ニュースのその後 米国住宅着工件数、低迷続く 

5月の主要20都市の住宅価格は昨年7月をピークに10ヶ月連続で下落している。
住宅販売も低迷し、6月の新築住宅は前年同月比22%減、中古住宅は11%減となった。
在庫比率も拡大し、在庫期間は新築で7ヶ月、中古は8.8ヶ月(過去最悪)となっている。

この数年の米国の住宅好調はバブルであったといえる。

過去12ヶ月以内の支払い遅延や、24ヶ月以内の住居の差し押さえ、収入に対しての過度の債務など、何らかの問題を抱えたクレジットの信用が低い借り手に対してサブプライムローンで住宅を販売した。
借り手は住宅価格の上昇により担保価値が増えると低金利ローンに切り替えができるし、貸し手は返済が滞ると担保を取り上げ売却すると利益が出た。

他方、富裕層は住宅の値上がり益の確保のため、居住目的ではなく転売目的で住宅を購入してきた。

すべてが住宅価格の値上がりを前提にしていた。

バブルの例に漏れず、一旦バブルがはじけると、全て逆転した。

米Moodysは7月10日、ローンの延滞率が予想を上回ったため、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券(RMBS:Residential Mortgage-Backed Securities)399件の格付けを引き下げると発表した。

米大手証券ベアー・スターンズの傘下のヘッジファンド2社が経営難に陥った。出資金の十数倍の資金を借入れRMBSなどに投資をしていた。

米連邦準備理事会(FRB)は7月17日、サブプライムローンの監督を強化するため、連邦と州の規制当局が試験的に連携すると発表した。

野村ホールディングスはサブプライムローン市場の悪化で、1―6月で累計約720億円の損失を出したと発表した。今後、RMBS事業からの撤退を検討する。
仏保険最大手のアクサもサブプライムローンに絡んだ投資で損失を出した。ドイツ産業銀行も同関連投資240億ドルのうち、20%程度が損失となる見通しで、金融機関が救済に乗り出している。

サブプライムの焦げ付き増加によりローン審査が厳格になり、需要低迷を通じて住宅価格の下落が強まりかねないとみられている。

ーーー

当初は景気全版への影響はないとされていたが、その懸念が出てきた。
ホーム・デポやシアーズなど小売り大手が、住宅需要の冷え込みでリフォームや家電製品の販売不振を理由に、相次いで業績を下方修正した。

DuPontの第2四半期が予想より悪かったとして株価が下落した。米国の住宅と自動車市場の悪化(および好調が期待された農薬の不振)が原因。最終損益は海外市場の好調によりなんとか前年比フラットとなった。
Coatings and colour事業では住宅と自動車用のペイントに使用される二酸化チタン需要の減少が響いた。
住宅用防水シートTyvek (PEの連続性極細繊維に高熱を加えて結合させたシート)や
ユニット・キッチンの天板等に使われる人工大理石Corean も住宅不振の影響を大きく受けている。
Holliday CEO は北米の住宅需要は来年のどこかの時期まで回復を見込めないと述べている。

住宅不振の影響を最も受けているのは塩ビ業界である。
本年上期の窓枠やサイディング(壁板)の出荷は前年比20%減となっている。
(逆にトルコ、西欧、中東、北アフリカの塩ビ需要が好調で、輸出は25%増となっている。)

信越化学の第1四半期の連結営業損益は電子材料の増益で前年を大幅に上回ったが、塩ビを含む有機・無機化学品は減益となった。
同社によると、PVCは、
北米住宅需要の低迷の影響を受け同業他社が大幅な減益や赤字を計上する中で、シンテックは高水準の操業を継続し、営業利益で前年同期を3割ほど下回る減益に留めたとしている。(欧州は好調を維持している。)

信越化学の金川千尋社長は昨年11月の日本経済新聞で、「米国の需給が回復しなければ、米子会社は輸出で補う。中南米、インド、中東に加え、11月からトルコにも出荷を始めた。2007年末には米国で増産設備を稼働させる。売り切るには相当な努力が必要だが、米子会社は最高益となる今期並みの業績を来期も確保したい」としていた。

Shintechの新工場(米国の第3工場)はルイジアナ州イバビル郡プラクミンの南の元アッシュランドケミカルの工場敷地に建設しているもので、総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行うもの。
第一段階として、塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トンを
当初は2006年末に完成させる予定であったが、1年遅らせている。

2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学 
2007/6/1 シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請 

中東やインドには中国の需要の減少を受け、アジア勢が輸出を増やしている。(最近はコンテナーを取りにくい状況にまでなっている)
SolVin
はベルギーの能力増強を決めた。

住宅の回復の兆しが見えないなかで、新プラントの生産スタートは厳しいものとなろう。

Basell 82日、Shell France からマルセイユ近郊の Berre l'Etang の製油所とインフラ設備、事業を買収する提案を行ったと発表した。
Shell も買収提案に応じること、買収額7億ドルで合意したことを発表した。今後手続きを進め、2008年初めに買収が完了する予定。
同製油所ではナフサ、
LPG、各種燃料、アスファルト、灯油などを生産している。

Basell Berre l'Etang にナフサクラッカー(エチレン 470千トン)とブタジェン抽出設備、ワールドスケールのPPPEを有し、近郊の Fos sur Mer にもPEプラントを有しており、現在Shell の製油所の最大の需要家である。

ナフサクラッカーは元々はBasell とShell (元の親会社)との50/50 JVSociete du Craqueur de lAubette あったが、Basell Shell 持分買収の交渉を行い、200512月にBasell 100% とした。同時にBasell は同地のShell のブタジェン事業も買収した。

今回の買収で更に上流を確保することとなる。

ーーー

オレフィン源であったBASFShell から独立したBasell は川上志向を取っており、欧州のPE事業の場合には85%以上のエチレンを自社で確保する希望を持っている。

Basell の欧州のエチレン能力は以下の通り。

フランス Berre   470千トン SHELLとの50/50JV → Basell 100%
ドイツ  Wesseling  1,043千トン 増強(280千トン)計画
ドイツ  Munchsmunster   342千トン Ruhr Oel から買収 Basell 100%

  2006/12/25 Basell、ドイツのナフサクラッカー買収

Basell の欧州の能力はJVを含め、PPは290万トン、PEは260万トン
プラントは以下の各地にある。
  
FranceBerre L’etang, Fos sur Mer, Notre Dame de Gravenchon
   Germany
Frankfurt, Knapsack, Münchsmünster, Wesseling
   Italy
Ferrara, Terni
   The Netherlands
Pernis
   Poland
Plock
   Spain
Tarragona
   United Kingdom
Carrington

ーーー

なお、Basell は7月17日に Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意したと発表した。
2004年12月にLyondell とMilleniumが、両社の合弁会社Equistarとともに合併したもので、合併時の各社の能力は以下の通り。(千トン/年)
その後、酸化チタンは
サウジのNational Titanium Dioxide Company Ltd. 通称 Cristal に売却した。

Lyondell Equistar Millenium
PO  2.050 Ethylene  5,270 TiO2 (売却)
 Chloride
 Sulfate

  515
  155
SM  2,270 Propylene  2,270 VAM   385
MTBE 58,500
 bbl/
Butadiene   545 Acetic Acid   545
PG & PGE   570 EG   455    
TDI   260 EO   500    
Butanediol   180 HDPE  1,450    
    LDPE   640    
    LLDPE   500    

  2007/7/18 Basell が Lyondell を買収 

Basell Polyolefins North America は米国・カナダで最大のPPメーカーで、メキシコでもAlpekとのJVを持っている。

Bayport (Texas 53万トン+22万トン)Lake Charles Louisiana 45万トン)、SarniaOntario 10万トン、2008年休止予定)、VarennesQuebec 18万トン)、TampicoMexico:JV Indelpro 24万トン+35万トンにプラントを持つほかLindenN.J)のConocoPhillips のPP(35万トン)の独占販売権をもっている。

Lyondell 買収でこれにPEが加わることとなる。
(プロピレンは主にPO用に使用されており、
当面はPPの原料遡及とはならないと思われる)

8月6日(現地時間)のWall Street Journal は、Akzo Nobel がICI を80億ポンド(160億ドル)で買収することで仮合意に達したと報じた。

既報(2007/8/1 ICIAkzo の再提案を拒否)の通り、ICI はAkzoによる78億ポンドでの2回目の買収提案を安すぎるとして拒否し、更に値上げをするかどうかの問い合わせをしていた。

AkzoはICIの買収が成功した場合、ICIの接着剤とエレクトロニック材料事業(ICIの価値の1/3に相当) を Henkel KGaA に売却する契約ができている。

現在、AkzoとHenkel はICI のdue-diligence 調査を実施中で、これに数日要するが、Wall Street Journal は結果が満足できるものであれば、英国公開買付パネルが決めた最終日の8月9日までには正式発表があるだろうとしている。

付記
その後の報道ではdue-diligenceに時間がかかるため、ICIがパネルに締切日の延長を申し出る見込み。
8月13日までには決まるだろうとしている。

同紙は、2社が共同で買収し、その後に分割するという今回の方式が今後流行るのではないかと見ている。

また、創業86年の老舗の売却は、外国企業による英国の大企業の買収の最新のものであり、これは英国が製造業からもっとサービス志向の経済に移行していることの結果であり、また英国の解放政策の結果でもあるとしている。

付記
Akzoもこの報道のあと、同社がICI に対して670ペンスでの再々提案をしたことを確認した。総額で約 80億ポンドに相当する。
また、同社はICIの接着剤とエレクトロニック材料事業の
Henkel KGaA への売却額が27億ポンドであることを明らかにした。

ただし、due-diligence 調査の結果次第であるとしている。

Henkel もICIの接着剤とエレクトロニック材料事業(ICI が1993年にUnileverから買収したNational Starch )を27億ポンドで買収する契約を明らかにしている。

Henkel は3つの分野(Laundry & Home CareCosmetics / ToiletriesAdhesives Technologies )でグローバルに活動している。

BASFJurgen Hambrecht CEOは81日の2007年第2四半期の業績発表の席上、 スチレン事業の一部の売却に関して、買い手候補のある1社と極めて建設的な交渉を行っていることを明らかにした。

なお、同社の第2四半期の業績は好調で、スチレン事業が含まれるプラスチック部門は数量の伸びと価格上昇で売上高は10%増加し、利益はスチレン事業の利益が著しく向上した結果、前年同期比15%増大している。

ーーー

同社は本年717日、スチレン事業一部の「戦略的な選択肢」を検討していることを発表した。

効率的な最適化対策と、戦略の微調整により、BASF のスチレン事業の業績は大幅に向上しているが、収益性を適切な水準とするためには、さらなる見直しが求められているとし、他のオプションとともに事業売却も検討するとしている。

既にある社から SMPSSBCABS のビジネスで初期オファーを得ているという。

検討の対象となっているのは、SMPS、スチレンブタジエン共重合体(SBC)、ABSの各事業と、Antwerp (Belgium)Altamira (Mexico) 、 São José dos Campos (Brazil) 蔚山(韓国)、Dahej (India) のプラントが含まれる。
蔚山には
SM 300千トン、ABS 250千トン、PS 320千トン、EPS 65千トンのプラントがある。

売却対象事業は2006 年に約32億ユーロの売上高を計上しており、従業員数は約1,000 人。

BASF のスチレン事業本部プレジデントは、今後も継続する事業は、建設、自動車、包装、スポーツ・レジャー分野を対象とした発泡体とスペシャリティに特化するとしている。(ドイツのLudwigshafen には620千トンのPSプラントを持っている。)

BASFのスチレン事業の2006年の売上高合計は 4,994 百万ユーロで、主な能力は以下の通り。
 SM   2,600千トン
 PS   1,500千トン
 EPS    780千トン
 ABS、同コポリマー及びSAN 760千トン

SMは世界1位、PSは2位、EPSは1位、ABS/SANは3位となっている。(同社ホームページ)

売却対象は売上高ベースで 64% に相当する。

ーーー

PS業界は世界的に過剰設備により採算が苦しくなっている。

Nova Chemicals はバージニア州のチェサピーク工場を閉鎖すると発表したが、同社CEOは「米国のスチレン業界は設備を廃棄し、統合を検討し、赤字垂れ流しを止めるために動き出す必要がある」と述べたと伝えられた。
   2006/7/27 
欧米でもPS事業は苦境  

同社は本年3月、北米のSM、PS事業をINEOSとの50/50JVのNOVA Innoveneに移管することで合意した。
   
2007/3/26 NOVA Chemicals、北米のSM、PS事業をINEOSとのJVに移管 

PSでBASFと首位を争うDowも本年4月、Chevron Phillips Chemical との間で北南米のSM/PSの50/50JV設立のMOU(拘束力なし)を締結したと発表した。
  2007/4/11
Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立 

Dowも昨年、PS業界の長期的な市場状況も考え、カナダのSarnia 工場のPSを閉鎖している。
  2006/9/7 「ダウ、3工場の7プラント閉鎖 

ーーー

日本ではPS業界は再編によりメーカー数が激減した。
   2006/10/7
日本のPS業界の変遷 

メーカー数の減少に合わせ、能力も縮小し、日本の合成樹脂業界では唯一、内需見合いの能力にしている。
(これが理由となって、
2004年6月に発表されたPSジャパンと大日本インキ化学のポリスチレン事業を再編・統合が公取委の反対で潰れた。)

しかし、今回の値上げで需要家の食品容器メーカーが薄肉化やPET樹脂への代替を進めており、さらなる需要減への懸念が広がっている。
(電気・工業用の需要は需要家の海外移転で以前より半減している)

ーーー

参考 BASFの売上高、利益構成 (2006年 単位:百万ユーロ、%)

部門 内訳 売上高 シェア 営業損益 シェア
Chemicals Inorganics   1,134   2.2   1,380   20.4
Catalysts   2,411   4.6
Petrochemicals   5,754   10.9
Intermediates   2,273   4.3
合計  11,572   22.0
Plastics Styrenics   4,994   9.5   1,192   17.7
Performance Polymers   2,932   5.6
Polyurethanes   4,849   9.2
合計  12,775   24.3
Performance Products Construction Chemicals   1,120   2.1    669   9.9
Coatings   2,337   4.4
Functional Polymers   3,387   6.4
Performance Chemicals   3,289   6.3
合計  10,133   19.3
Agricultural Products
& Nutrition
Agricultural Products   3,079   5.9    381   5.6
Fine Chemicals   1,855   3.5
合計   4,934   9.4
Oil & Gas  10,687   20.3   3,250   48.1
Others   2,509   4.7    -122   -1.7
総合計  52,610  100.0   6,750  100.0

Fortune Global 500

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Forutne 誌は711日、例年の通り、2007年のGlobal 500 を発表した。昨年2位のWal-Mart Storesが昨年1位のExxon Mobil を抜いてトップに復帰した。

トップ10には石油関係企業が6社入っている。

2007年のトップ10と50位までのアジア企業は以下の通り。
 売上高、利益は前年のもの (単位:$ millions

Rank 前年 Company Revenues Profits
1 2 Wal-Mart Stores  351,139.0  11,284.0
2 1 Exxon Mobil  347,254.0  39,500.0
3 3 Royal Dutch Shell  318,845.0  25,442.0
4 4 BP  274,316.0  22,000.0
5 5 General Motors  207,349.0   -1,978.0
6 8 Toyota Motor  204,746.4  14,055.8
7 6 Chevron  200,567.0  17,138.0
8 7 DaimlerChrysler  190,191.4   4,048.8
9 10 ConocoPhillips  172,451.0  15,550.0
10 12 Total  168,356.7  14,764.7
17 23 Sinopec  131,636.0   3,703.1
24 39 China National Petroleum  110,520.2  13,265.3
37 31 Honda Motor   94,790.5   5,064.1
40 24 NTT   91,998.3   4,077.4
45 41 Nissan Motor   89,502.1   3,939.6
46 46 Samsung Electronics   89,476.2   8,301.9
48 38 Hitachi   87,615.4   -280.4

 

化学関係 

Rank Company    全順位 前年 Revenues Profits 
 1 BASF   81   94  66,006.8  4,034.0
 2 Dow Chemical  123  114  49,124.0  3,724.0
 3 Bayer  158  163  39,899.2  2,111.6
 4 DuPont  225  205  28,982.0  3,148.0
 5 SABIC  301  307  23,019.0  5,411.3
 6 Mitsubishi Chemical  317  299  22,424.0   857.8
 7 Lyondell Chemical  320  349  22,228.0   186.0
 8 Hanwha  374  381  19,085.5   286.5
 9 Akzo Nobel  424  418  17,235.1  1,446.6
10 Linde Group  485  ー  15,606.6  2,306.0
11 Sumitomo Chemical  489  499  15,304.0   802.5

医薬品関連

Rank Company 全順位 前年 Revenues Profits
 1 Johnson & Johnson  112  104  53,324.0  11,053.0
 2 Pfizer  115  101  52,415.0  19,337.0
 3 GlaxoSmithKline  147  143  42,730.6   9,915.0
 4 Novartis  168  177  37,020.0   7,175.0
 5 Sanofi-Aventis  169  159  36,998.4   5,026.1
 6 Roche Group  188  204  34,702.8   6,285.4
 7 AstraZeneca  252  253  26,475.0   6,043.0
 8 Merck  308  289  22,636.0   4,433.8
 9 Abbott Laboratories  312  283  22,476.3   1,716.8
10 Wyeth  346  343  20,350.7   4,196.7
11 Bristol-Myers Squibb  406  321  17,914.0   1,585.0
12 Eli Lilly  481  464  15,691.0   2,662.7

 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

Dow Solvay730日、タイにHPPO用の過酸化水素(H2O2)プラントを建設するJVの設立で合意したと発表した。

能力は330千トン(100%ベース)と世界最大で、2010年稼動の予定。 Solvay の技術を使用するもので、Dow BASF Thailand がタイのMap Ta Phut で計画しているワールドスケール(390千トン)の過酸化水素POHPPO)用原料として供給する。

Dow BASF はベルギーのAntwerp で、過酸化水素法でPOプラントを建設中。能力は300千トンで、2008年初めにスタートの予定。
BASF が過酸化水素製造のため、 Solvayと提携している。

  POの製法およびHPPOについては 
2006/3/24 ダウとBASF、POを新製法で生産 

タイのHPPO 用の原料プロピレンについては、 Dow Siam Cement Group が建設を発表したRayong の新しいナフサクラッカーから供給する。
11億ドルを投じてを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。OCT(Olefins Conversion Technology) で大量のプロピレンを製造する。
Siam 67%Dow 33%出資し、2010年稼動を目指している。

  タイのクラッカーについては 2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進 
  OCTについては 2006/9/15 
新日本石油化学、OCTプロピレン設備完成  

 



* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

出産時などの止血のために投与された血液製剤でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、患者が国と製薬会社3社を相手取り、総額約6億円の損害賠償を求めた薬害C型肝炎訴訟の判決が7月31日、名古屋地裁であった。
松並重雄裁判長は「感染の危険性などを明確に表示する義務を怠った」として、国と会社に対し、原告9人のうち8人に総額1億3200万円の賠償を命じた。
全国の同様訴訟で初めて、国と製薬会社に責任が生じる時期を
製剤が承認された時点76年とし、投与時期で救済に差を設けなかった。

全国5地裁と3高裁で計172人が係争中の同様訴訟では、大阪地裁、福岡地裁、東京地裁がそれぞれ期間を区切って、国と企業の責任を認めている。 

   2006/6/28 薬害C型肝炎訴訟 

4地裁の判決の対比は以下の通り。

4地裁が認定した国と企業の責任(図は毎日新聞記載分を補正)
       
フィブリノゲン
  三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)と子会社のベネシス
       
  76/4   フィブリノゲンーミドリ製造承認(名古屋地裁:添付文書に注意内容の明確な記載なし→国と企業に責任)
       
  80/11   米国で同製剤の承認取り消し公示(福岡地裁:国と企業に責任)                   
       
  85/8   不活化処理方法の変更(紫外線照射及びBPL併用処理→紫外線照射等) 
 大阪地裁&東京地裁:
    C型肝炎感染の危険性を一層高めた(企業に責任)
    国は変更を知らなかった可能性(国に責任なし)
                                   ↓
  87/4   フィブリノゲンHTーミドリ(加熱)製造承認 
  (名古屋地裁:添付文書に注意内容の明確な記載なし→非加熱・過熱ともに国と企業に責任)
非加熱製剤の適応除外せず。青森県での肝炎集団発生事例の報告等。
  大阪地裁&東京地裁:国に責任
       
  88/6   ミドリ十字、緊急安全性情報を配布し返品要請(以後、販売数量激減)
  東京地裁のみ:国・企業の責任終了
       
血液凝固第9因子複合体製剤(クリスマシンなど)
  三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)と子会社のベネシス、日本製薬  
       
  76/12   第9因子製剤製造承認(名古屋地裁:添付文書に注意内容の明確な記載なし→責任)
                            
  84/1   製薬会社がC型肝炎への感染リスクが高いことを把握
  (東京地裁:企業に責任)

     参考 大阪地裁
          後天性血液凝固第9因子欠乏症の適応除外をせず、これを製造承認し、
          その後の規制権限を行使しなかった厚生大臣の行為に違法はない。
          旧ミドリ十字の安全性確保に関する過失はない。    

 

ICI730日、Akzo Nobel から1650ペンスで買収したいとの再提案を受け、取締役会でICIの戦略的価値からみて安すぎるとしてこれを満場一致で拒否、Akzoに対してこれを伝えるとともに、値上げをするかどうかの問い合わせをしたと発表した。交渉は継続する。

この株価で総額78億ポンドになるが、周辺では81億ポンドでICIは売るのではないかとか、84億ポンドは必要だとの声が出ていた。

ーーー

報道によると、Akzo は6月4日に1600ペンス、総額 72億英ポンド(約1兆7500億円)での買収提案をしたが、ICIは安すぎるとして断ったとされる。

  2007/6/19 ICI、Akzo Nobel による買収提案を拒否 

その後、事態が長引くのを恐れたICIは、この問題を英国公開買付パネル(The Panel on Takeovers and Mergers)に持ち込み、パネルは7月6日、Akzo Nobel に対して、8月9日午後5時までに態度を明らかにするよう命令している。

  2007/7/23 Akzo-ICI 問題のその後 

ーーー

Akzoも同日、同様の発表を行った。

同社は1株650ペンスの株価は、Akzoが医療用医薬品事業のOrganon Biosciences を144億ドルで Schering-Plough に売却(これによりICIの買収が可能となった)すると発表した日の前日、3月9日の終値 464.25ペンスと比較し、40%のプレミアムがついたもので、株主にとり有利なものと主張している。

Akzoは値上げ提案をした背景として、ICIの買収が成功した場合、ICIの接着剤とエレクトロニック材料事業を Henkel KGaA に売却する契約ができていることを明らかにした。Akzo ICIcoatings 事業に魅力を感じており、これにより、AkzoHenkel はともに、それぞれの戦略に合致した最もシナジーの高い事業に特化できるとしている。

同社は今後、更に値上げをするかどうかの検討を行うが、実際にICIに提案できるかどうかは不明であるとしている。

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