2008年5月アーカイブ

チッソの弁明

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チッソのホームページに「水俣病問題への取り組みについて」というページが出来た。
   http://www.chisso.co.jp/topics/minamata/index.html

同社が与党プロジェクトチームの水俣病未認定患者の新救済策を拒否し、解決のメドが立たなくなっているが、これについて過去の経緯の説明と拒否の理由が述べられている。

2007/11/23 チッソ、与党プロジェクトチームの水俣病未認定患者の新救済策を拒否 
            
 

関係者は2008年5月1日の水俣病犠牲者慰霊式までの新救済策合意を目指し、4月24日に鴨下環境相、4月28日に熊本県知事が後藤会長と会談したが、チッソ側は拒否した。

 

水俣病については、チッソは、
①認定患者対しては、
1973年の協定により継続的に補償を実行した。
   2,268名の認定者に対し
、合計1,390億円

補償協定の概要
項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700      +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170~67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
            年間補償金支払額 約27億円

②非認定者(公的機関により水俣病ではないとされた患者及び審査の結論が出ていない患者)に対しては、1996年の和解にて解決を図った。

約1万人の未認定患者を対象に、四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」、感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付。
医療手帳はチッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給。
保健手帳は医療費自己負担分などを上限付きで支給してきたが、関西訴訟最高裁判決後に医療費自己負担分は全額支給に改めた。

同社によると、水俣病関連損失の累計は以下の通りとなっている。

水俣病関連損失累計(2007/9/30現在、億円)
項目 既支払額
補償金   1,393
公害防止事業     310
解決一時金    317
債務免除    -270
漁業補償等      62
県債金利   1,028
合計   2,840

チッソは1973年の補償協定締結後に認定申請者が急増し、77年度には364億円の累積赤字を計上した。
そのため、熊本県が県債を発行してチッソに融資する金融支援が閣議了解された。

水俣湾のヘドロ立て替え県債、未認定患者への一時金支払いの貨し付けなど、公的債務は99年に1,257億円にまで増加した。

チッソの返済が困難となり、県の負担が問題になったため1999年6月、関係閣僚会議申合せ「平成12年度以降におけるチッソ㈱に対する支援措置」が提示された。
これに基づいてチッソは金融機関に支援を要請、2000年1月、再生計画を発表した。

   2006/5/1 水俣病50年

ほとんどの患者が和解に応じ裁判を取り下げたが、唯一「関西訴訟」の原告だけが行政の責任を問い続け、2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
また、最高裁も原告の主張を認め、県と国の法的責任が確定した。

これによって、
行政責任を不問にした「和解」の前提が強く揺さぶられる事態を迎えた。

最高裁判決が一部国の責任を認めたことで、公害健康被害者補償法上の認定を申請する患者が急増したが、熊本、鹿児島、新潟3県の認定委員会は、認定基準が変わらない以上、多くは不認定となる可能性は高く、不認定になった人たちを手当てする何らかの受け皿的措置がなければ認定を再開することが難しいとして、判定されないままになるという異常事態が生じた。

このため公明党が20064月に新救済案の提言をまとめ、それを基に与党PTを設置し、紆余曲折の結果、新救済策を決定した。

ーーー

チッソの拒否理由は以下の通り。

(1)解決への展望が持てない
    新たな訴訟の提起
    96年に全面解決した。今後も繰り返される懸念

(2)訴訟上の主張と矛盾する
    訴訟では個々人毎の明確な立証を求めており、本案の受諾は訴訟にマイナスの影響を及ぼす。

(3)支払能力上の問題
    更なる借入は後の世代に現状以上の負担を残すこととなり、今後の展望が描けない。

(4)株主をはじめ従業員や金融機関などに説明ができない。

 

チッソの最近の連結決算は以下の通り。(億円)
2008年3月期は、液晶、電子部品など機能材料事業が液晶ディスプレイ市場の成長により引続き好調に推移し、営業損益、経常損益ベースでは4期連続の増益となった。

  売上高 営業
 損益
経常
 損益
特別損失のうち 法人税
   等
当期
 損益
水俣補償 公害防止
事業費負担
減損損失
05/3  1,507   121   124   -45   -12     22    42
06/3  1,996   161   170   -43   -15   -121   -0    1
07/3  2,170   188   191   -42    -9     31   123
08/3  2,697   208   202   -40    -8     46   108

2008/3/末 未処理損失 -1,169億円(資本金 78億円、資本勘定 -991億円
* 累積損失は大きいが、5年の損失繰越期限があるため、法人税は支払っている。

現時点では、労務費も金利も支払い、補償金も支払い、法人税も支払った後で、高収益をあげている。
要は「支払能力」がないのではなく、この利益を借金の早期返済や新規事業に回して将来の発展を期すのか、患者に支払うのか、の問題である。

同社は最後に以下の通り述べている。

「これまで半世紀を越える長期間、必死に、誠実に補償責任を果たし、96年には水俣病問題の早期解決、最終的全面的解決のために思い切った解決努力を払いました。こうした経緯の上に立った現在、水俣病発生の「原因者だから」といった単純な理由だけで、この種の支出に応じることはできないことをご理解いただきたいと思います。」

ーーー

今も苦しむ患者やその家族、遺族側の立場で考えると、チッソの「努力」は当たり前のことであり、水俣病発生の「原因者だから」といった単純な理由だけで、この種の支出に応じることはできないとのチッソの主張は到底理解できないであろう。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


中国国家税務総局は5月26日、エチレン、芳香族炭化水素原料用のナフサに係わる消費税を免除すると発表した。輸入ナフサも免税の対象で、輸入を促進させることでエチレン大増設による国内のナフサ不足を補う狙いがある。
ナフサの消費税は 0.2元/リットル(約3円)となっている。
2008年1月1日から遡及適用され、2010年末までとなっている。

同局が発表した管理規則によると、ナフサメーカーは、税務当局が発行する「ナフサ使用管理証明書」を需要家が所持していれば、消費税を徴収しない。ナフサメーカーはその後、同証明書に基づき、税務当局に消費税免除を申請する。

エチレン、芳香族炭化水素の原料以外の目的でナフサを販売する際は、従来通り消費税を徴収する。

中国ではエチレンの原料となるナフサの需要が急速に高まっている。

ナフサ不足といいながら、2007年には輸入量より輸出量の方が多い。
  輸入:1,068千トン(うち、韓国 993千トン)
  輸出:1,739千トン(うち、日本 914千トン、韓国 767千トン)

2008年には輸入量が輸出量を上回ると予想されている。

ーーー

中国の消費税は日本の消費税とは異なる。

日本の消費税に相当するのは増価税(VAT=Value Added Tax)で、農産品等一部が13%で、一般製品は17%となっている。

  詳細は 2006/9/26 中国、輸出増価税リベート変更 後半
        

ーーー

中国の消費税 (Consumption Tax) は、高級消費財、贅沢品、高級サービスの消費行為にかかる税金で、中国は1994年に煙草、酒・アルコール製品、化粧品、スキン・ヘアケア製品、貴金属・アクセサリー、爆竹・花火、ガソリン、ディーゼルオイル、自動車タイヤ、自動二輪車、自動車の11項目を消費税の課税対象に定めた。

2006年3月20日に「消費税政策の調整及び整備に関する通知」が公布された。消費税について社会の実態に合わせて税目及び税率を調整したもので、4月1日より施行された。

① 新設
  ゴルフボール及びゴルフ用品  10%
  高級腕時計  20%
  ヨット  10%
  木製割り箸  5% (天然資源保護)
  天然木床板  5% (同上)

  ナフサ  0.2元/リットル
  溶剤油  0.2元/リットル
  潤滑油  0.2元/リットル 
  燃料油0.1元/リットル 
   (以上4品目は
暫定的に本来納付すべき税額の30%で消費税を徴収、2008/1/1より法定税率適用)
  航空用ガソリン0.1元/リットル
   (但し、消費税の徴収を暫定的に見合わせ)

②廃止
  スキンケア・ヘアケア商品(一般日常用品化)
   (高級スキンケア類は化粧品として課税)

③税率見直し
  乗用車、オートバイ、自動車用タイヤ、蒸留酒
    ラジアルタイヤは消費税の徴収を免除

2008年1月、財政部と国家税務総局は消費税政策の健全化を図り、税収制度面の統一と公平を促すため、『一部製品油の消費税政策の調整に関する通知』を出し、暫定的に本来納付すべき税額の30%で消費税を徴収しているナフサ、溶剤油、潤滑油、燃料油に対して、1月1日から法定税率に基づいて消費税税率を適用することとした。

今回は、1月に税率を法定税率に引き上げたばかりのナフサについて、エチレン、芳香族炭化水素原料用を免税とするもの。

中国は上記の輸出増価税リベート変更や、輸出税の賦課など、状況に応じた政策実現のため、弾力的に税制を利用している。

    2006/11/4 中国、エネルギー・天然資源関連製品に輸出税 


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経済産業省は5月23日、「世界の石油化学製品の今後の需給動向」を発表した。

  世界の石油化学製品の今後の需給動向(平成19年度版)
  
国別データシート
  2012年までの新増設計画
  
商品別データシート 

エチレン系製品でみると、アジア地域が年平均+6.7%程度の伸びで、特に中国の需要増が大きく、中国1ヶ国のみで、2006年から2012年までの間に13.2百万トンの需要増があるとみている。

中国の需給は以下の通り。

相変わらず、中国の需要を今後も右肩上がりでみていること、2010年以降の能力を逆に横ばいでみていることが問題である。

能力については現時点で公表された計画のみに限っているだけであり、実際には更なる増設が行なわれることは間違いない。

2006年2月の記事で以下の通り書いた。

仮に(中国の広東、長江デルタ、渤海湾の)三大エリアの3億人が日本並み、残り10億人がフィリッピン並みに消費するとすれば、中国の需要は2000万トンにしかならず、本年にも頭打ちとなることとなる。

  既報 2006/2/21  中国バブル説  

この時点での中国のエチレン換算の需要はアセチレン法PVCについてもエチレン需要に計算していたため過大となっていた。
グラフの通り、いよいよ需要は2000万トンとなる。

日本、韓国、台湾はいずれも中国の需要に依存しており、加えてシンガポール、中東諸国が大増設をしている。
中国の需要の右肩上がりの予想が狂うと大変なことになる。

ーーー

各国(地域)の需給は以下の通り。(生産と需要の差が輸出)

 

参考

昨年の記事  2007/4/27 世界の石油化学製品の今後の需給動向
        
2007/4/28 
「世界の石油化学製品の今後の需給動向」-アジアの状況
         2007/4/30 
「世界の石油化学製品の今後の需給動向」-中東の状況


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517日、ブラジルのBraskemPetrobras とペルー国営のPetroPeru はアメリカ大陸西海岸最大の石油化学コンプレックスのFS実施の契約を締結した。大統領宮殿での調印式には両国の大統領が出席した。

ペルーのエチレンリッチ(
10%超)の天然ガスを利用して年産70万トン~120万トンのポリエチレンを生産する計画。

3社はCamisea 天然ガスコンソーシアムを運営するアルゼンチンのPluspetrol とエタン供給の交渉を行なう。
Camisea
consortium ペルー南東部のアマゾンのジャングルのガス田を開発している。
  既報 
2007/10/19 ペルーでブラジル、インド、韓国の3社が石油・石化事業構想 参照
    

本事業は樹脂加工産業への投資を呼び込み、ペルーの経済的、社会的発展に寄与する。

製品の販売先としてはアメリカ大陸の西海岸(米国、ペルー、チリ、エクアドル、コロンビア)を中心とし、アジアへの輸出も狙う。

Petrobras は既にペルーに進出しており、本年1月には他社と共同で重要なガス田を発見している。
同社は
20069月に PetroperuPerupetro との間でペルー国内の炭化水素資源の開発や工業化など分野での協力・提携に関する覚書に調印している。 既報 上記参照

Petrobras Petroperu はメタンを原料とする肥料(硫安、燐安、青酸ソーダ)生産計画のパートナーを探している。

Braskem はさきにベネズエラのPequiven との間で、米国や欧州向けを目指した PE、PPの2つの50/50合弁会社設立を決めたが、これに続く原料立地への進出となる。
   既報 
2007/12/20 Braskem Venezuela 国営Pequiven、石化JV設立 
      


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カリフォルニア州の BioArts International “Best Friends Again” プロジェクトを始める。21日のNew York Times が伝えた。

人間のベストフレンドである犬のクローンの作成を、110万ドルからのスタートで、6月18日からネットオークションで募集する。(スタート値であって、最低価格ではない)

BioArts はクローン羊Dolly の特許ライセンスを受けており、韓国の黄禹錫(Hwang Woo Suk)元ソウル大教授が率いるSooam Biotech Research Foundation と提携した。

黄禹錫博士はヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の研究を世界に先駆け成功させたと報じられ、韓国人で自然科学部門では初のノーベル賞を期待され、「韓国の誇り」と称された。
しかし、2005年末にヒト胚性幹細胞捏造事件が発覚し、失脚した。

博士は2005年にオスのアフガン犬のクローンをつくり、Snuppy (Seoul National University puppy) と名付けている。

BioArts の経営者 Lou Hawthorne Texas A & M University と組んで、Missyplicity Project Missy再生計画)という犬猫のクローン計画を始め、2001年に世界で初めて猫のクローンをつくった。
MissyはApollo Group
会長の Dr. John Sperling の愛犬で1/2がCollie、1/2がSiberian husky会長は1997年に370万ドルを出してクローン作成を依頼した。(同会長はその後、下記の2社に出資している。)

Hawthorne は2000年に Genetic Savings & Clone を設立し、2004年に猫のクローンの商業生産を始めたが、技術が未熟で、申し込みが集まらず事業の採算が取れないとして、2006年に閉鎖した。

2006年末にBioArts を設立し、犬のMissy のクローンを始めた。Missyは2002年に15歳で死んだが、遺伝子のサンプルを保存していた。
昨年8月に
韓国のSooam Biotech Research Foundation と提携し、クローンを依頼した。

クローンはSomatic Cell Nuclear Transfer method で行なわれ、昨年12月に第1のクローン Mira が、本年2月に Chin-Gu Sarang の2匹が生まれた(その後更に2)。遺伝子検査専門機関のカリフォルニア大学獣医科学部遺伝子検査研究所(Veterinary Genetics Laboratory) のテストでクローンであることが証明されたという。

Mira は韓国語「ミル(竜)」から、Chin-Gu はチング(友)、 Sarang はサラン(愛)。

同社はクローン技術は完成したとし、顧客の愛犬のクローンをつくるサービスを行なう。

愛犬とクローンが似ていることを保証し、クローンがまるで双子のように元の愛犬に似ていない場合には返金に応じるとしている。またクローン犬の健康を1年間保証し、引渡し前に獣医が確認する。

 


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第一三共は5月21日、癌及び抗体事業の強化の一環として、ドイツのU3 Pharma AG の全株式を取得すると発表した。
取得額は150 百万ユーロ(約245 億円)で、買収後は完全子会社とする。

U3 Pharma 2001年設立で、ドイツの有力研究機関であるMax Planck 研究所と提携し2 つの有望な癌領域抗体(抗HER-3 抗体:Amgen との共同開発、及び抗HB-EGF 抗体)を開発中である。

第一三共は癌領域において画期的な治療薬を提供することを中長期な目標の一つとしている。
同社はパイプラインに3つのモノクローナル抗体を持ち、また、本年3月にはドイツ
MorphoSys社との抗体ライブラリーに関する共同研究を拡大している。

今回の買収で、臨床試験入り間近の2つの有望な癌領域抗体を獲得すること、および、Max Planck 研究所との提携を通じて癌領域の創薬研究力を強化することにより、当社の癌領域ポートフォリオの拡充を図る。

ーーー

国内製薬大手は抗体医薬技術の取り込みを狙うM&Aを加速している。

抗体医薬をめぐる各社の動きは以下の通り。

2007/3 エーザイが米Morphotek Inc.を買収

買収価額は純現預金差し引き後で 325百万ドル。

Morphotek は、抗体医薬の研究開発を専門とするバイオベンチャー企業で、独自の完全ヒトモノクローナル抗体産生と最適化技術を使用し、各種がん、関節リウマチ、感染症などの疾患に対する抗体治療薬の開発に取り組んでいる。

現在、卵巣がんと膵臓がんを対象とした臨床試験に入っているほか、前臨床段階にある候補品目を複数保有している。

2007/7 第一三共が米Amgenから骨粗鬆症薬の国内開発販売権を取得

完全ヒト型モノクローナル抗体Denosumab の日本国内での開発・販売のライセンス契約を締結した。
Denosumab は骨粗鬆症や癌の骨転移を含むさまざまな骨関連疾患の治療・予防薬として開発されている。

条件は①一時金 2,000万ドル、②日本国内で自社が行う開発費用をすべて負担、③2009年までAmgenが実施するグローバル開発費用のうち、およそ1.5 億ドルを負担、④国内純売上高に対するロイヤリティ支払い、となっている。

2007/10 キリンの医薬品事業と協和発酵が統合

2007/10/25 協和発酵とキリンファーマの統合 

協和発酵とキリンファーマは、ともに抗体医薬技術などを中心としたバイオテクノロジーを強みを持っている。

2007/11 アステラス製薬が米Agencys, Inc.を買収

Agencys, Inc.は癌領域の抗体医薬を専門とするバイオベンチャーで、買収価格は 387百万ドル(純現預金 30百万ドル含む)。株主は他に、milestone 達成に伴い最大150百万ドルを受け取る。

2008/2 武田薬品が米Amgenの日本法人、抗がん剤の国内開発販売権取得

2008/2/11 武田薬品、アムジェンとの提携を発表

抗癌剤の Motesanib diphosphate と、Panitumumabを含む 12品目の抗体医薬などのバイオ医薬品(うち1品目は、今後、最終的に契約対象とするかどうかを決定)の合計13の品目が契約対象となっている。
同時に
日本の100%子会社であるアムジェンK.K.の株式譲渡契約を締結した。

2008/5 第一三共がドイツ U3Pharma を買収 (上記)

 


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原油価格高騰続く

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原油価格の高騰が止まらない。

ニューヨークの WTI原油先物相場は本年初日(1月2日)に一時100.00ドルを付け、その後一旦下落したが、3月13日に110ドル超え、5月6日に120ドルを超えてからは急上昇で5月21日には一時135.04ドルを記録した。5ヶ月弱で35%の上昇となった。

5月16日にサウジがブッシュ大統領の要請を受けて原油生産を日量30万バレル増やし、945万バレルにすることを明らかにした。
また、同日、ブッシュ大統領の方針転換を受けて、米エネルギー省が戦略石油備蓄の積み増しを停止すると発表した。
しかし、これらは原油価格に全く影響を与えなかった。

最近の上昇には、OPECのハミリ議長(UAE石油相)が9月のOPEC総会までは増産はしない意向を示したことや、ヘッジファンドを運営するブーン・ピケンズ氏が経済専門テレビ局のインタビューで、年内に150ドルをつける可能性を示したのも理由となっている。

経済産業省は2007年度エネルギー白書の原案で、2007年に投機マネーの流入などで30ドル/バレル以上の押し上げが働いたと指摘している。
2007年後半の価格を
需給分が50-60ドル/バレル、投機マネーや地政学リスクが30-40ドル/バレルとみている。
最近の投機マネーの影響はもっともっと大きい。


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1.米国西海岸の燃料用エタノールのメーカーであるPacific Ethanol が話題になっている。

Microsoft Bill Gates の個人投資会社 Cascade Investment が、Pacific Ethanol 2005年11月に西海岸に工場を建設するのを手助けするため、84百万ドルを投資、優先株を所有していたが、昨年11月に優先株を普通株式 1050万株に転換し、順次売却すると発表した。

本年55日のSECへの報告では1050万株から950万株に(持株比率は21%から18.5%)減ったが、その後、516日のPlatts記事では、140万株まで減少した。

米国の燃料用エタノールは急激な能力増加による供給増加で価格が25%ダウンした上、コーンの価格が高騰しているため、採算が悪化、各社の株価は下がっている。

2007年の米国の生産量は6,499百万ガロン、それに対し2008年4月時点の能力は8,522百万ガロン、建設中・拡張中の能力が5,084百万ガロンで、合計 13,606百万ガロンもある。

参考 2007年の燃料用エタノール生産量

   米国     6,499百万ガロン  
   ブラジル     5,019百万ガロン  
    EU      570百万ガロン  
   中国      486百万ガロン  
   世界計    13,102百万ガロン  

 

Pacific Ethanol の業績は以下の通り。(単位:千ドル)

  2005 2006 2007
売上高   87,599  226,356  461,513
当期損益   -9,923    -142  -14,400

Pacific Ethanol の株価は20065月には40ドルをつけたが、1年前は15ドル、最近はそれが 3ドル程度となっている。昨年11月の売却発表で20%以上下落した。
(同社は
519日に第1四半期の結果を発表したが、一時的な徐却損を除くと黒字になったため、株価は反転し、5ドル強に上がった。)

Cascade Investment は同社に84百万ドルを投資したが、昨年8月以降で60百万ドルを失ったと言われている。

ーーー

Pacific Ethanol の能力は以下の通り。(単位:百万ガロン/年)

  立地 能力 建設中
Pacific Ethanol Madera, Calif.    40  
Boardman, Oregon    40  
Burley, Idaho    60    
Stockton, Calif.       50
(Total)   (140)    (50)
Front Range Energy Windsor, Colorado    48  

* Burley, Idaho は本年4月末に操業開始
 Front Range Energy Pacific Ethanol 42%を保有

参考:ほとんどの工場はトウモロコシ産地の中西部にある。
 No.1メーカー POET  能力1,253百万ガロン、建設中
282
 No.2メーカー Archer Daniels Midland 能力1,070、建設中 550

資料:Renewable Fuels Association
     統計 http://www.ethanolrfa.org/industry/statistics/
     能力 http://www.ethanolrfa.org/industry/locations/

ーーー

2.米国エネルギー省は2008年1月、Pacific Ethanol を含む4社の小規模バイオリファイナリー計画に、4年間で最大 114百万ドルの助成を行うことを発表した。

2012年までにコスト競争力のあるセルロース系エタノールを製造するというブッシュ大統領の目標を達成するため、商業規模の1/10 サイズのバイオリファイナリーで様々な原料を使用して新規変換技術をテストする。

1)Pacific Ethanol :助成予定額 最大2,430万ドル
 Boardman, Oregon のコーンベース工場に、BioGasol 社が独自開発した変換プロセスを用いて農業残渣物と森林残渣物をエタノールに変換する設備を増設。

2)ICMColwich, Kansas):DOE の助成予定額 最大3,000 万ドル
 St.Joseph Missouri に農業残渣物(トウモロコシの繊維や茎葉、スイッチグラス、ソルガムなど)原料の工場を建設。

3)Lignol InnovationsBerwyn, Pennsylvania):DOE の助成予定額 最大3,000 万ドル
 
Commerce City, Coloradoの石油精製工場に、「biochem-organisolve」と呼ばれる溶剤を使用して、硬木や軟木の廃材をエタノールや市販製品に変換する工場を併設。

4)Stora Enso North America(Wisconsin Rapids, WI):DOEの助成予定額 最大3,000 万ドル
 Wisconsin Rapids, WIで、森林廃棄物を用いて Fischer-Tropsch 法によるディーゼル燃料への変換を計画。

ーーー

3.米国のEd Schafer 農務長官は5月19日の会見で、食糧高騰に対してエタノール増産を擁護した。

世界中で穀物の価格が高騰し、暴動まで起こっている。米国は世界一のトウモロコシ生産国だが、本年のトウモロコシの収穫の1/3がエタノール生産に使われる予想で(昨年は25%)、これによるトウモロコシの値上がりが食糧高騰の要因の一つという批判が出ている。

これに対し長官は、バイオ燃料エタノール増産でトウモロコシの価格が5割アップしても、国内の食糧高騰に与える影響は1%未満、と語り、「エしタノール悪玉論」やバイオ燃料促進計画の変更を求める動きに反論した。

農務長官の発言: 
・バイオ燃料の需要は食糧価格に影響は与えるが、重要な要素ではない。
・再生可能燃料基準の変更、エタノール生産減税、エタノール輸入関税撤廃にはメリットはほとんどない。

 これらは食糧品の価格に影響を与えない。
・バイオ燃料政策は、短期的には少々のデメリットはあっても、長期的にメリットがある。

農務省では本年の食糧価格は、エネルギー価格を含むコストアップ分の転嫁で、1990年の5.8%アップに続く、5%の値上がりになると予測している。

欧州委員会は5月20日、食糧・農産品価格の高騰を受け、減反政策(耕作地の10%が対象)を廃止するとともに、バイオ燃料用作物に支払われていた1ヘクタール当たり45ユーロの奨励金を2010年までに廃止するなどの共通農業政策改革案を加盟27カ国に提示した。


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クウェートとサウジで大型製油所計画が発表された。

クウェートでは国営石油会社(KNPC)が、国内の電力需要増加に対応すべく、クウェート市の南85kmの Al-Zour 地区に日産615千バレルの製油所を建設する。
当初予算は63億ドルであったが、現在の予算は140億ドルに膨れ上がっている。
当初2010完成を予定していたが、現在では20125稼動とみている。

クウェートの原油生産量は現在、日産 255バレルで、3つの製油所に合計 930千バレルの精製能力を持っている。
本計画の完成後は、
200千バレルのShuaiba 製油所を停止する。

KNPCはこのたび、工事を5つに分け、そのうち4つを日韓の企業に発注した。

パッケージ 発注先 予算
原油蒸留設備(日産 205千トンx 3基)、
常圧残渣油脱硫装置
(日産 330バレル)など
日揮及び韓国 GS エンジニアリング 40億ドル
水素設備 韓国 SKエンジニアリング 26.24億ドル
用役、付随設備 未定  
タンク 韓国 大林産業 11.84億ドル
海上設備 韓国 現代エンジニアリング 11.2億ドル

日揮は常圧残渣油脱硫装置、残渣油冷却設備、オフガス回収設備などを建設、受注分は2,000億円以上。

同社は、1980年代に建設したクウェートのMina Al-Ahmadi 製油所をはじめ、これまで47件の新設製油所プロジェクトを遂行し、近年ではオマーンのソハール製油所を手掛けている。

ーーー

Saudi Aramco とフランスのTotal 5月14日、Jubail に日産400千バレルの製油所を建設することを発表した。
Arabian Heavy 原油を精製し、高品質の石油製品を製造する。2012稼動の予定。

ディーゼルとジェット燃料の生産を最大化することを狙っており、これに加え、パラキシレン(年産70万トン)、ベンゼン(同14万トン)、ポリマーグレードプロピレン(同20万トン)を生産する。

本年第3四半期に合弁会社を設立する。
当初は
Saudi Aramco 62.5%、Total 37.5%出資とし、認可を得られれば25%分を公募し、両社は37.5%ずつとなる。

生産物は両社で分け合う。

両社は2009年中に設備を発注する。

総投資額は明らかにしていないが、同地区の建設費は高騰しており、100億ドル規模になる可能性がある。

ーーー

付記

Saudi Aramco ConocoPhillips 516日、これまで検討してきた新製油所計画の実施を決めたと発表した。

Yanbu Industrial City に日産40万バレルの重質油完全改質製油所を新設する。
2013年スタート予定で、50/50JVで運営する。

 


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帝人の決算は増収減益となった。

合成繊維・化成品を中心に増収となったが、営業損益は化成品(PC、ポリエステルフィルム等)の減益やコーポレート研究費増により減益となり、更に海外のポリエステルフィルム合弁会社の減損損失増加によって営業外損失と特別損失が大幅に増加した。

連結決算    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3   10,096    751    605    341   10.00
08/3   10,366    652    463    126    8.00
増減     270    -99   -142   -215   -2.00

セグメント別営業損益は以下の通り。(単位:億円)

  06/3 07/3 08/3 増減   09/3予想
合成繊維   145   173   244   71 ポリエステル繊維分野が大幅に改善、
高機能繊維分野(アラミド繊維、炭素繊維)好調
  240
流通・リテイル    53   54   53   -1      55
化成品   410   339   202  -137 樹脂事業(PC-85
フィルム事業 -51 (特に米国のフィルム分野)
  115
医薬医療   193   212   217    5     220
IT・新事業    38   43   35   -8      25
全社   -71   -71  -100   -29 コーポレート研究費が増加   -125
営業損益計   768   751   652   -99     530

営業損益の増減理由をみると、原燃料価格のアップが-200億円に対して販売価格変動は +30億円に過ぎない。
販売数量増による利益が+90億円。コスト削減が +140億円あったが、先行投入費用等
-140億円、税制変更による償却費増 -20億円で消された。

同社では2009年3月期予想でも、米国フィルム合弁苦戦、原燃料上昇・為替影響で樹脂続落とし、営業損益は更に半減する。

営業損益での減益に加え、米国及びルクセンブルグでのポリエステルフィルム合弁会社の固定資産の減損処理を実施したため、当期損失は大幅減益となった。
需要低迷や原燃料価格の高騰により、特に米国のフィルム事業を取り巻く経営環境は厳しく、急速な業績回復は難しい状態となったのが理由で、当期損益ベースで130億円の処理となった。

ポリエステルフィルム合弁会社の固定資産減損損失
  処理科目 損失 当期損失
米国 連結子会社 特別損失  -244億円   -85億円
ルクセンブルグ 持分法適用関連会社 営業外費用   -45億円   -45億円
合計      -130億円

ーーー

帝人はポリエステルフィルム分野では、世界6カ国で米国デュポンと合弁事業を行っている。
今回の減損処理はこのうちの、米国とルクセンブルグのJV。

両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。
日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立されており、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売している。
インドネシアは帝人子会社、中国は
DuPont JVで、それぞれを両社のJVに移した。

 国  社名   出資比率 %  備考
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム  50.1  49.9    
米国 DuPont Teijin Films U.S.  49.9  49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0  50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg  50.0  50.0    
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films  50.1  49.9   元は帝人100%P.T.Indonesia Teijin Films
中国 DuPont Hongji Films Foshan
(佛山杜邦鴻基薄膜)
中国JV 51 (*2) 49 *2 佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
DuPont
持株をDuPont Teijin Films China に移管
(49.0) (51.0)

設立時にはこのほか、オランダに50/50DuPont Teijin Films Netherlands があった。


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医薬大手の3月決算がまとまった。
多くの会社で、研究開発費の影響で損益が大きく動いている。

各社の連結営業損益は以下の通り。(単位:億円、中外製薬のみ12月決算)

武田薬品については既報の通り。

   2008/5/13 
2008年3月期 注目会社決算 武田薬品工業

研究活動の強化、開発活動の進捗に、米国アムジェンが保有する癌、炎症、疼痛などの疾患領域における臨床開発品目に関するライセンス料も加わり、研究費が前年比 836億円の増加となり、久しぶりの減益となった。
なお、次年度は買収するミレニアムや
100%子会社化するTAPファーマシューティカルのインプロセス研究開発費が加わるため、研究費は2,092億円も増加する。

連結損益                    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
07/3 13,052 4,585  (1,922 ) 5,850 3,358 128.00
08/3 13,748 4,231  (2,758 ) 5,364 3,555 168.00
前年比 696 -354  ( 836 ) -486 196 40.00

アステラス製薬の営業利益は、売上高の増加、製品構成の変化による原価低減、研究開発費の減により前年比44.8%の大幅増益となった。

連結損益                    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
07/3   9,206   1,905  (1,679)   1,978   1,313    80.00
08/3   9,726   2,759  (1,345)   2,842   1,774   110.00
前年比    520    854   (-335)    864    461    30.00

第一三共は経営統合によるコストシナジーが顕在化し、増益となった。
売上高の減少は、経営統合に伴う非医薬品事業のグループ外自立化、海外子会社の決算期変更といった特殊要因によるもの。

連結損益                    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
07/3   9,295   1,363  (1,707)   1,521   785   60.00
08/3   8,801   1,568  (1,635)   1,691   977   70.00
前年比    -494    205  ( -72)    170   192   10.00

中外製薬の営業損益は実質は前年比マイナス。
2007年12月期より特許権等収入を売上高に計上した。
このため、売上高及び営業損益は、前年比で 119億円増加している。

連結損益                    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
06/12   3,261   583   (546)   609   384   30.00
07/12   3,448   667   (542)   677   401   30.00
前年比    187    84   (- 4)    68    16    -

田辺三菱製薬2007年10月に発足した。
前年と上期は三菱ウェルファーマ分で、下期は旧田辺製薬分が加わった田辺三菱製薬のもの。

前年比では141億円の増となるが、比較のため、田辺製薬の前年分、上期分を加えると前年と余り変わらない。
(2009/3月期はこれがベースとなる。)    

田辺三菱製薬 営業損益 単位:億円 
   07/3   08/3 増減
上期 下期
田辺製薬  305  184  ー  
ウエルファーマ
→田辺三菱
 400   540    141
合計  704   725   21

大日本住友製薬は研究開発費が64億円増大し、減益となった。
次年度の研究開発費も更に92億円増大する予想。

連結損益                  単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 研究費 経常損益  当期損益  年間配当
07/3  2,612   456  (409)   432   226   14.0
08/3  2,640   398  (473)   377   256   18.0
増減    28   -58   (64)   -55    30    4.00

 

大正製薬は増収増益だが、これは2007年3月期が、主力のドリンク剤の異常気象などにともなう市場の落ち込みが響き、医療用医薬品も引き続き厳しい事業環境で大幅減益となったため。

連結損益               単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  年間配当
06/3   2,714   464   497   359   30.0
07/3   2,421   224   249   154   27.0
増減    -293   -240   -248   -205    -3.0
08/3   2,497   370   419   250   27.0
増減     76   146   170    96   ー

エーザイは大幅減益となったが、これは積極的な研究開発活動への資源投入に加え、MGI Pharma, Inc.買収に伴うインプロセス研究開発費 874億円などを計上したため。
インプロセス研究開発費は税務上の費用とならないことから当期損益もそのまま悪化した。

エーザイは2007年12月、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業であるMGI PHARMA, INC を総額約39億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結した。

連結損益                  単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 研究費 経常損益  当期損益  年間配当
07/3   6,741   1,053  (1,083)   1,105    706   120
08/3   7,343    177  (2,254)    189   -170   130
増減    602    -875  (1,171)    -916   -876    10
MGI Pharma 買収に伴う企業結合会計特有の処理を除外した場合
08/3     1,108  (1,380)   1,119    707  

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化学会社の決算がほぼ出揃った。

各社の営業損益(3期対比)の対比は以下の通り。医薬専業は明日掲載。
うち昭和電工は12月決算)

 

2008年3月期は増益会社と減益会社が入り混じっている。

次ぎの各社については既報参照。なお、帝人については5月22日に掲載。

  信越化学   2008/5/2 2008年3月期決算 信越化学 好調
   
  三菱ケミカル   2008/5/12 2008年3月期 注目会社決算 三菱ケミカルホールディングス
   
  住友化学、三井化学、東ソー、旭化成
    2008/5/14 2008年3月期 注目会社決算 石油化学各社
   
  三菱レイヨン   2008/5/16 2008年3月期 注目会社決算 住友ベークライト 
   

       退職給付会計の数理計算差異が影響  

     

ーーー 

営業損益変動の主な例は以下の通り。(問題製品を含む事業部門の営業損益、単位:億円)

中国向け中心のPTA、VCM、PVCなど値下がり+原料価格高騰
 
  部門 05/3 06/3 07/3 08/3
三菱化学 石油化学(PTA、 エチレングリコール等)
   08/3  火災事故の影響 
-82 含む
 586  309  282

92

三井化学 基礎化学品(PTA、PET、フェノール、ビスフェノールA、EO/EG)  360  219  110  ー
   分類変更 基礎原料(エチレン、プロピレン等)含む      531  334
東ソー 基礎原料(苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント)  204   56   61   27
 
信越化学は米国の Shintech が 住宅不振の影響で 2007年度は前年比で経常損益が125億円減少した。
 
部門  06/3  07/3  08/3
塩ビ系   380   420   315
   
住友化学は、石化が原料価格高騰のほか、4年に一度の大型定期修繕の影響で大幅減益となった。
 
部門  06/3  07/3  08/3
石油化学   179   236    45
   
   
コエンザイムQ:競争激化による大幅な減収、減益
 
  部門 06/3 07/3 08/3
カネカ ライフサイエンス  190   57   53
   
液晶フィルム値下がり
 
  部門 06/3 07/3 08/3
住友化学 情報電子化学  217   35  28
   
上記の各製品の状況は一時的なものでなく、今後も回復の可能性は少ない。

特に石油化学製品についてはナフサの高騰が続いており、これまで出来ていた製品価格への転嫁が難しくなりつつある。
中国についても相変わらず大型増設が続いており、輸出採算の回復は難しい。

円高も輸出採算悪化につながる。

次期の損益は各社とも厳しいものになると思われる。

三菱ケミカルホールディングスは5月13日に発表した 中期経営計画「APTSIS 10」の策定 で、
2008年3月に終了した前中期計画での営業利益の目標収益未達の理由の一つにテレフタル酸事業環境悪化を挙げている。(他に、鹿島火災事故、機能商品市場の立上り及び開発の遅れ)
新中期計画では化学品分野の戦略を “高機能化へのシフトと事業基盤強化” とし、これまで目玉事業であったテレフタル酸事業を「再編・再構築事業」とし、「構造改革(他社との連携・協業)、合理化」を進めるとし、今年中には対応を考えると述べた。

   
   
逆に、半導体シリコンのように大増益の部門もある。
 
  部門 05/3 06/3 07/3 08/3
信越化学 電子材料
(半導体シリコンなど)
 537  653

1,066

1,621

トクヤマ

特殊品
(多結晶シリコンなど)

92

161

258

305

 
  部門 04/12 05/12 06/12 07/12

旭硝子

電子・ディスプレイ
(FPD用ガラス基板、電子部材 好調)

 709

 609

 792

1,182

 


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競泳用水着の闘い

| コメント(1)

北京オリンピックを目前にして日本の競泳界で水着が大問題となっている。

英国のSpeedo 社が今年2月発表した水着 LZR RACER (レーザー・レーサー) の着用選手が世界新記録を相次ぎ樹立している。

しかし、日本水泳連盟は、国内メーカー3社(ミズノ、デサント、アシックス)から多大の協力を得てきたことから、2017年3月までの12年間の五輪での水着提供契約を結んでおり、日本選手は Speedo 社の水着を着用できない。
(ミズノはSpeedo社と1965年から契約を結んでいたが、昨年5月末に関係を解消した。)

これに対して、大阪の山本化学工業が同社のバイオラバースイムの採用を3社に呼びかけた。
山本社長は、「絶対的に英国製より優れていると確信している。ぜひオリンピックの選手にこの素材の水着を着てもらいたい」と語っている。

今回、連盟は3社に対して水着の改良を求めた。バイオラバースイムが採用される可能性も出てきた。

付記

日本水連は5月30日、ミズノ、デサント、アシックスから改良水着の説明を受けた。
スピード社製も含めて代表選手が試し、日本水連は6月10日に着用水着の結論を出す。

ミズノは従来と比べて2~4倍締め付ける素材を使った。東レとの共同開発素材。
山本化学工業の素材は、デサントとアシックスが部分的に使用したタイプをつくった。

付記

6月3日、アシックスとデサントの2社の五輪用水着に素材が採用された山本化学工業が報道各社に直筆のファクスを送付。(1)2社に意見や提案を聞いてもらえない(2)素材を全身に使用した水着(ニュージーランド製)を試してほしいが、どの選手が試着を希望しているか情報がもらえない-と打ち明けた。

6月6日のジャパン・オープンで決勝10種目中5種目で日本新が出たが、全てLZR RACER 着用であった。
7日もLZR RACER 着用で 5種目で日本新。
8日には北島康介が男子200m平泳ぎでLZR RACER 着用で 、2分7秒51の世界新記録をマークした。他に4人がLZR RACER 着用で 日本新を出した。

なお、男子50メートル背泳ぎ予選で古賀淳也が日本記録をマークした。ミズノ社製の従来品で、今大会、LZR RACER以外の日本記録達成は初めて。

日本水泳連盟は8日、日本代表が北京五輪で着用する水着について、英スピード社を含むすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めた。 契約するミズノ、デサント、アシックスの国内3社以外の水着着用を認める日本水連の方針を、3社側からも同意を得た。

ジャパンオープンで、世界記録連発で注目された英スピード社製水着を着た日本選手が世界新記録1、日本新記録延べ15をマーク。選手から「スピード社製水着を着たい」との声が強まり、国内メーカー側も認めざるを得ない状況となった。

ーーー

Speedo社は世界最大の売り上げシェアを誇る水着ブランド。オーストラリアが発祥で、90年代に英国に本社を置いた。

LZR RACER (レーザー・レーサー)は米航空宇宙局(NASA)をはじめとする国際的な研究開発期間の専門家や技術協力を経て、3年以上の歳月をかけて開発した水着。

新素材「LZR Pulse」をベースとし、抵抗の大きい胸、腹、尻には水を吸わないポリウレタン皮膜の「LZR Panels」 を組み合わせ、抵抗の少ないストリームラインを維持し、全身が圧縮された形になる。

LZR Pulseは耐塩素加工を施したスパン繊維と超極細ナイロン繊維で織られた特殊素材。強い着圧で、筋肉の振動と肌の波打ちを抑制する。

LZR Panelsは超薄型でパワフル、かつ抵抗が少ないポリウレタン素材で、分析結果に基づいた最適なポジションに配置することにより、理想的なストリームラインを形成し抵抗を軽減する。

水着1枚分の生地パーツが3つしかなく、継ぎ目を超音波で溶着した縫い目がない世界初の無縫製競泳水着で、スリーピースの3D構造と共に、第2の肌の様にぴったりとスイマーのボディーにフィットする。

国内メーカーの水着は、最大20を超える生地パーツを縫い合わせており、継ぎ目が微妙な抵抗を生む。
Speedo社によると、無縫製設計よって、従来のステッチ型水着に比べ表面摩擦抵抗が6%低下する。1日70着しか生産できないという。

国際水泳連盟もいったん「浮力」の疑念を抱いて調査に乗り出したが、問題なしとした。

ーーー

山本化学工業

社名 山本化学工業株式会社 YAMAMOTO CORPORATION
設立年月日 昭和39年5月1日
本社 大阪市生野区
業種 複合特殊ゴム製品製造
資本金 1,000万円
従業員 60名
取扱品目 ダイビング及びウィンドサーフィン用ウエットスーツ素材
メディカル用及びスポーツ用サポーター素材
バイオラバー素材
サバイバルスーツ用素材(米国UL認定)
耐放射線防護用素材(厚生省認可)
誘電性発泡体ゴム素材
各種超軽量発泡体グリップ
独立発泡体化粧用パフ

同社の前身は戦後、国産原料からできるラバーの研究を開始。1956年には消しゴム付き鉛筆を開発し、特許を取得、ヒット商品となった。
1964年に山本化学工業として会社を設立。もっと自在に動ける水着が欲しいという海女たちの要望に応えてウエットスーツを開発した。
トライアスロンやオープンウオーター(遠泳)の世界では知られている。

1995年にS.C.S(スーパーコンポジットスキン)素材を開発した。

バイオラバースイムS.C.S(スーパーコンポジットスキン)素材を使用するもの。

S.C.S独立気泡のネオプレン・ラバーに特殊表面加工(表面に水分子を集めるミクロ単位のくぼみをつくった半球状の構造を採用)を施したもので、ラバー表面のミセル構造が、空気中では水をはじき、水中では水になじんで流水抵抗を限りなくゼロに近付ける。
表面抵抗値は従来スキンの1/10以下、水中では1/100の超低抵抗になる。

水が全く浸透しないため、水中でも重さが変わらない。

ミセル構造:
界面活性剤のような疎水性基と親水性基の両方をもつ溶質分子が水に溶けたとき、溶質分子が疎水性基同士をつきあわせて親水部のみを外側にした微粒子を形成する。

空気中では疎水性を示し、水を弾く。

既にニュージーランドの水着メーカー Blue Seventyが使用して商品化。国際水連(FINA)の認可も受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


* 総合目次、項目別目次は
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計算方法の影響の例として、住友ベークライトを取り上げる。

同社の営業損益をみると、2006年3月期に急増し、2007年3月期、2008年3月期と急降下している。

しかし、これは計算方法によるもので、実質ベースでは以下の通りとなる。
原材料価格高騰分の製品販売価格への転嫁が遅れたことや半導体業界の伸び悩みから営業利益は減少しているが、上記のような異常な形ではない。

実績と実質ベースは以下の通りとなっている。(億円)

実績                     実質ベース
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
06/3   2,411   272   286   152
07/3   2,554   178   197   119
増減    143   -94    -89   -33
08/3   2,253    90    97    22
増減    -301   -87   -100   -97
 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
06/3   2,411   193   207   105
07/3   2,554    171   191   115
増減    143    -22   -16    10
08/3   2,521   155   165    67
増減     -33    -16   -26   -48

差異の理由の一つは退職給付会計の数理計算差異の扱いで、同社は発生した年度において営業損益で一括処理している。 
数理計算差異は下図の三菱レイヨンの例のとおり、年金資産の評価の影響が大きく、2006年3月期には株式が大幅に上昇したため利益となり、2008年3月期は株式の暴落で下がっている。
この結果、住友ベークライトでは、2006年3月期に79億円の利益、2008年3月期に46億円の損失が営業損益に加わった。

三菱レイヨンの場合は発生した年度の翌年度に営業損益で一括処理している。
このため2006年3月期の株式値上がりが2007年3月期に150億円の益(在庫勘案で営業利益で142億円の益)となっている。
2008年3月期は28億円の損となった。
昨年の株式暴落の影響は2009年3月期に出る。(65億円の損)

差異の理由のもう一つは海外子会社の連結対象期間の変更で、本来は12月決算だが、これまでは本社決算に合わせ4-3月の仮決算で連結していた。
今回、海外子会社の国際財務報告基準での財務諸表作成などの新しい会計制度変更に適切に対応し、より迅速かつ正確な財務報告を行うことを目的とし、12月決算をそのまま採用した。そのため、2008年3月期はこれら各社は9ヶ月分の実績が参入された。

まとめると、住友ベークライトの実績と実質との差異は次ぎのとおりとなる。(億円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
06/3  数理計算差異      79    79    47
07/3 数理計算差異       6     6     4
08/3 数理計算差異      -46    -46    -27
 
08/3 決算期補正   -269    -19    -22    -18
08/3合計     (-269)   (-65)   (-68)   (-45)

 

退職給付会計の数理計算上差異の仕組みは次ぎの通り。

給付債務は当然変動するが、年金資産(信託を含む)の元が大きいため、運用する株式等の評価の変動に大きく左右される。数理計算上差異の大部分は当期の営業実績ではなく、資産評価益であり、差異が大きく出る場合は「営業損益」は歪められることとなる。

住友ベークライトの場合、表示上は営業損益の大幅減となり、株主等への印象はよくないと思われる。

数理計算上の差異は、一括処理も、平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分して処理することも認められており、多くの会社が一定年数での按分処理をしている。(継続処理が必要)   

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


本年1月にダウのダイオキシン問題を報じた。

EPAは昨年6月に本件をミシガン州環境局(Michigan Department of Environmental Quality)から肩代わりしたが、EPAは1月4日、汚染のクリーンアップに関して、これまでダウとの間で続けてきた話し合いを取り止めると発表した。

  2008/1/10 ダウのダイオキシン問題

この問題はこのたび、異例の展開をみせた。

5月1日、この問題でダウと争ってきたEPA中西部支部のヘッドのMary A. Gade がブッシュ政権からの圧力で辞職した。

彼女は2006年にブッシュ大統領の指名でこの職についたが、EPA長官の補佐官が彼女の支部長の権限を剥奪し、辞職するか、さもなければ解雇すると伝えたという。
新聞に対し、彼女は、「ダウの問題に間違いない。私も部下もするべきことをやった、誇りに思っている」と述べた。

 

昨年夏に、Gade はダウに対してMidland工場の近くの最もダイオキシン汚染のひどい3箇所のクリーンアップを命じた。11月にはSaginaw park160ppt という米国で過去最高値のダイオキシン汚染が見つかり、追加の浚渫を要求した。
EPA のダイオキシン限度は1,000pptで、ミシガン州の環境基準限度は90ppt となっている。

この時点でダウはGadeに対し、期限を少なくとも2010年まで延ばすよう求めたが、Gade14日に上記の通り、話し合いの取り止めを発表した。

これに対して、ダウはワシントンに訴えたとされる。

EPA報道官は単にGadeは休暇中で、休暇明けの61日に辞職するとだけ述べた。
また、ダウは、
Gadeの辞職に同社はなんら関係していないと述べた。

200611月に土壌で69,00087,000ppt のダイオキシンが見つかった。
ダウではダイオキシンがみつかった土壌の深さから、汚染は1世紀以上前のもので、ダウの廃棄物とは関係ないと主張している。

ダウの報道官は2日、ダイオキシンについて次ぎのように述べた。
「ダイオキシンがあるからといって、健康にすぐに影響する訳ではない。調査の結果ではダイオキシン汚染土壌は人間の身体の汚染物質のレベルに影響を与えておらず、健康面、環境面で切迫した問題ではない。」

本件はブッシュ政権が大企業のために、科学やEPAの規則に政治介入する最新の事例であるとの報道が多い。

これに関して上院議員が議会で、この問題を非難し、「詳細は分からないが、政権が米国民の利益より政権の利害を重視する姿勢がまた出てきたように見える」と述べた。

住民側はテストを何度も行なっているが、一体いつになったらダイオキシンを除去してくれるのかと不安感を示している。

 


* 総合目次、項目別目次は
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石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、旭化成を除き、減益となっている。

今後更にナフサ価格の高騰が続けば、一層厳しくなる。

ーーー

三菱化学  2008/5/12記事参照 

ーーー 

住友化学

増収だが、損益面では石油化学部門の落ち込みが大きく、減益となった。

経常損益が652億円減益となったのに対し、当期損益が308億円の減に止まっているのは、特別損益にサウジのペトロラービグの新規株式公開に伴う持分変動利益288億円があったため。(住友化学とアラムコの出資比率はそれぞれ 50%から37.5%になる)

連結決算           単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3  17,900  1,396  1,580   939   14
08/3  18,965  1,024   928   631   18
増減   1,065   -372   -652  -308    4
09/3予  20,800   950  1,000   550   18
増減   1,835   -74    72   -81    0

法人税法の改正に伴う影響:
  有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
  償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 17億円減少

セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

  06/3 07/3 08/3 増減 増減理由
基礎化学   100   135   106   -29 原料価格高騰の影響固定費増
石油化学   179   236    45  -191 原料価格高騰、4年に一度の大型定期修繕の影響
精密化学    98   131   114   -17 原料価格高騰の影響
情報電子化学   217    35    63   28 偏光フィルム価格の大幅減(中間決算赤字)、生産能力の向上でカバー
農業化学   166   233   209   -23 住化武田農薬との統合に伴う一時的な費用の発生
医薬品   383   562   465   -98 研究開発費増大(来期も)*
その他    58    80    37   -43  
全社    7   -15   -15    0  
合計  1,208  1,396  1,024  -372  

* 大日本住友製薬 研究開発費
    2007/3    409億円
    2008/3    473億円(+64億円)
    2009/3予想 565億円(+92億円)
 

情報電子化学部門の2006/3月期からの損益の落ち込みは非常に大きい。

ーーー

三井化学

増収減益となった。

連結決算           単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3  16,881   917   955   523   10
08/3  17,867   772   661   248   12
増減    986   -145   -293   -275    2
09/3予  19,000   660   640   290   13
増減   1,133   -112    -21    42    1

法人税法の改正に伴う影響:
  有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 18億円減少
  償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 10億円減少
 
なお、同社は2006年3月期に建物を除き定率法に変更している。

セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

  2007/3 2008/3 増減 売価差 変動費差 差引 数量差 固定費差他
機能材料   259   359   100   299   -165   134   11    -45
先端化学品   117   108    -9    -4    -39   -43  -46    -12
基礎化学品   531   334  -197  1,059   -1,205  -146  -21    -30
その他    36    34    -2         -1    -1
全社   -26   -63   -37            -37
合計   917   772  -145  1,354  -1,409   -55   35   -125

 

なお特別損失は、
・固定資産整理損・売却損 54億円、
・関連事業損失等 32億円(
GEMPCなど)
・事業撤退損失 26億円(プラズマディスプレイパネル用光学フィルター事業終息)
・環境対策費用 117億円(
三西化学工業 農薬製剤工場跡地環境対策等)
などにより 244億円となっている。
(特別利益は 29億円)

ーーー

東ソー

増収減益となった。

連結決算           単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3   7,813    603    580    285    8
08/3   8,274    591    525    252    8
増減    460    -12    -55    -33    0
09/3予   9,000    480    470    260    8
増減    726    -111    -55      8    0

法人税法の改正に伴う影響:
  有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 15億円減少
  償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 34億円減少

セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

  2005/3 2006/3 2007/3 2008/3 増減
石油化学   107   128   140   150    10
基礎原料   204    56    61    27   -34
機能商品   227   266   372   380    9
サービス    30    24    30    34    4
合計   569   475   603   591   -12

オレフィン、PE、クロロプレンゴム等の石油化学部門は増益となったが、VCMやPVCが中心の基礎原料部門は減益となった。

基礎原料部門のうち自社分が19億円の悪化、関係会社分(大洋塩ビ等)が18億円の悪化(調整が+3億円)となっており、おそらくVCMとPVCがともに減益となっているとみられる。

同部門の最盛期(2005/3)からの損益の落ち込みは非常に大きい。

なお、同社は2009年3月期の営業損益を当期比 111億円減の 480億円とみている。

ーーー

旭化成

増収で、損益面ではほぼ前期並みとなった。

連結決算           単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3  16,238   1,278   1,265    686    5
08/3  16,968   1,277   1,205    699    6
増減    730     -1    -61     14    1
09/3予  18,100   1,280   1,250    750    7
増減   1,132     3     45     51    1

法人税法の改正に伴う影響:
  有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
  償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 19億円減少

セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)

  2007/3 2008/3 増減 増減内訳 2009/3
予想
増減
数量差 売価差 コスト差
ケミカルズ    520    652    87    24   484   -422   600   -52
(Life & Living)    46
ホームズ    275    214   -61   -74   154   -141   260    46
ファーマ    139    127   -12    56   -16    -52   160    33
せんい    42    72    31    9    52    -30    60   -12
エレクトロニクス    226    222    -4    24   -55    27   205   -17
建材    50    28   -23   -23    5    -5    40    12
Service & Eng.    39    52    13    15   ー    -2    45    -7
全社    -58    -90   -32   ー   ー    -32   -90    0
合計  1,278  1,277    -1    31   625   -657  1,280    3

ケミカルズ:
<モノマー系事業>
 原燃料価格高騰の影響を受けたが、堅調な需要を背景に市況が高騰したアクリロニトリル(AN)などを中心に、前期比増収、増益となった。
<ポリマー系事業>
 合成ゴムなどが堅調に推移し前期比増収となったが、原燃料価格高騰の影響を受け、営業利益は前期並となった。
<高付加価値系事業>
 リチウムイオン2次電池用微多孔膜が旺盛な需要を背景に販売量を伸ばしたことや、イオン交換膜法食塩電解プラント及びイオン交換膜の販売が好調に推移したことなどから、前期比増収、増益となった。


* 総合目次、項目別目次は
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売上高は増加したが、営業損益、経常損益は減少した。配当は増加。
税引前損益は前年度の6,254億円から5,768億円に485億円減少したが、前年度に
移転価格税制に基づく更正処分追徴税 571億円を計上したことから、当期損益は結果として増益となった。

  2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4 

連結損益                    単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 (研究費) 経常損益 当期損益 年間配当
07/3 13,052 4,585  (1,922 ) 5,850 3,358 128.00
08/3 13,748 4,231  (2,758 ) 5,364 3,555 168.00
前年比 696 -354  ( 836 ) -486 196 40.00
09/3予 15,700 2,400  (4,850 ) 2,600 1,600 170.00
前年比 1,952 -1,831  (2,092 ) -2,764 -1,955 2.00

売上高は国内外における糖尿病治療薬、高血圧症治療薬が伸長し、前年比696億円増の13,748億円となった。

売上総利益は707億円増の10,962億円となったが、販売費一般管理費が1,060億円増加し、営業利益は354億円の減益となった。

販売費一般管理費のうち、研究費は836億円の増加となっている。

研究開発費は研究活動の強化、開発活動の進捗に、米国アムジェンが保有する癌、炎症、疼痛などの疾患領域における臨床開発品目に関するライセンス料も加わった。 
     2008/2/11
武田薬品、アムジェンとの提携を発表 

なお、特別利益に関係会社株式売却益 386億円を計上した。
  ワイス(米国ワイスに)、武田キリン食品(麒麟麦酒に)、ハウスウェルネスフーズ(ハウス食品に)、
  住化武田農薬(住友化学に)譲渡
  

前年度も関係会社株式売却益で171億円、事業譲渡益で190億円を計上している。
  ワイス(一部)、三井武田ケミカルの株式
  武田食品工業(ハウスとのJVに)

ーーー
2009年3月期予想に関し、同社は大幅減益になると発表した。

売上総利益は増加するが、ミレニアム社の子会社化に伴う研究開発費や無形固定資産の償却費等の負担により、営業損益で1,831億円、当期損益で1,955億円の減となる。  

研究開発費が前年度に比較し、2,092億円も増加する。
買収するミレニアム(下の図参照)や100%子会社化するTAPファーマシューティカルの開発中の新薬候補の価値を「仕掛中の研究開発費」(IPR&D)として一括計上するもの。(但し、金額は今後、外部専門家の評価、会計監査人による監査により最終決定する。)                    

同社は3月19日、Abbott Laboratories との50/50JVのTAP Pharmaceutical Products Inc. を均等な価値で会社分割を実施することでAbbottと合意した。同社を100%子会社とする。

      2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編 

また、4月10日、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticals, Inc. を約88億ドルで買収することを発表した。
同社は5月9日、91.9%の応募を受け、本TOBが成立したと発表した。

Millennium社概要

・1993年創立
・癌領域におけるリーディングカンパニー
  優れた研究開発力
  高い米国販売プレゼンス
  ブロックバスター候補の癌治療薬を持つ
・グルーバルなバイオ企業の中で、時価総額で上位10社にランクイン
・2007年12月期売上高:528百万ドル、純利益:14.9百万ドル
・癌領域および炎症疾患領域において有望なパイプラインを保有
・研究~開発~販売までに至る質の高いフルライン機能


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2008年3月期には、三菱ケミカルホールディングスにはいろいろなことが起こった。

2007年10月に田辺製薬と三菱ウエルファーマが合併して田辺三菱製薬となり、三菱化学、三菱樹脂、田辺三菱製薬の3社体制となった。(三菱樹脂は更に本年4月に再編)

三菱化学では鹿島で火災事故が発生、長期間操業を停止した。
田辺三菱製薬では薬害肝炎問題で補償の交渉を続けている。
三菱樹脂が塩ビ管・継手のカルテル問題で公取委の強制調査を受けた。
(決算短信の「追加情報」で、本件により排除措置命令、課徴金納付命令等を受ける可能性があるとしている。)

決算では売上高は大きく増加、営業損益、経常損益は減少したが、当期損益は大幅増となっている。配当も増やした。
しかし、これにはいろいろの要素がある。
特別利益に田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円含まれており、これを除くと実質は減益である。

連結決算 単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 年間配当
07/3 2,622,820 128,589 141,296 100,338 14.00
08/3 2,929,810 125,046 128,885 164,064 16.00
増減 306,990 -3,543 -12,411 63,726 2.00
09/3予 3,340,000 158,000 166,000 70,000 16.00
増減 410,190 32,954 37,115 -94,064 0.00

法人税法の改正に伴う影響:
  有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 30億円減少
  償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 88億円減少

部門別営業損益は以下の通りとなっている。(単位:億円)

  07/3 08/3 増減
石化 282 92 -190
機能化学 350 361 11
機能材料 243 192 -51
ヘルスケア 396 572 176
サービス 106 131 26
全社 -92 -99 -7
営業損益合計 1,286 1,250 -35

1)石化

 原材料価格高騰によるスプレッドの縮小が160億円、償却制度変更が40億円と、悪化要因となっている。
 このほか、鹿島の事故の影響を営業損益に82億円折り込んでいる。

 同社は2008年度を含めた事故の影響額を-47億円とみている。(損失 -187億円、保険金 140億円)
 2008年3月期には営業損益で -82億円、特別損失で -30億円、合計 -112億円を計上している。

    鹿島事故損失予想(億円)

  2008/3 2009/3 合計 科目
減産、減販、代替品調達  - 82  -55  -137 営業損益
プラント停止・低稼働    -20  - 20 営業外費用
 - 30    - 30 特別損失
合計  -112  -75  -187  
保険金    140   140 営業外収入
差引合計  -112   65  - 47  

なお、運休している鹿島の第2エチレンプラントの第6ナフサ分解炉の稼動が間もなく再開できる見通しとなった。
これが再稼動すると合計8炉のうちの6炉が復帰、第2エチレンプラントのの82%までカバーされる計算となる。
第7号炉(分解能力は年7万トン)の稼動再開が認められるのは、今年秋から年末までの間となる見通しで、最新の第8炉はダメージが大きく再稼動のめどは立っていない。

2)ヘルスケアでは2007年10月から田辺三菱製薬が発足し、旧田辺製薬分が加わった。

 三菱ケミカルの連結損益には、上期はウエルファーマ分、下期は合併した田辺三菱製薬の分が入っている。
 連結調整前では営業損益は 540億円となり、前年比では141億円の増となる。

 比較のため、田辺製薬の上期分を加えると725億円となり、前年と余り変わらない。(2009/3月期はこれがベースとなる。)
  

    田辺三菱製薬 営業損益(億円) 

   07/3   08/3 増減
上期 下期
田辺製薬  305  184  ー  
ウエルファーマ
→田辺三菱
 400   540    141
合計  704   725   21

ーーー

当期損益の内訳は以下の通りとなっている。(億円)

  07/3 08/3 増減
経常損益  1,413  1,289   -124
特別利益   114  1,233  1,119
特別損失   -149   -344   -195
税引前損益  1,378  2,178   800
当期損益  1,003  1,641   637

特別利益のうち、田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円と大半を占めるが、これは連結決算作成上の計算手続である。

特別損失には上記の鹿島事故損失 30億円、田辺三菱製薬の合併関連費用 49億円が含まれている。

なお、田辺三菱製薬では、薬害肝炎被害者を救済するための救済法が施行されたことを踏まえ、同社負担の見積り額 91億円を特別損失に計上した。

本件では被害者と政府の和解は順次行なわれているが、メーカーとの間は依然交渉中である。
費用のメーカー負担額については政府との交渉で決定することとなっているが、まだ決まっておらず、見積り額は今後の協議の結果で変動の可能性があるとしている。

舛添厚生労働相は1月の薬害肝炎救済法成立時点で、費用負担については、これまでの薬害事例などを参考に「国が3分の1、企業が3分の2という比率になる」と説明している。

サリドマイド訴訟、キノホルム(スモン)訴訟、薬害ヤコブ訴訟での和解では国が1/3、企業が2/3(66.7%)となっている。
但し、田辺三菱製薬の元のミドリ十字が係わったHIV訴訟では国が40%、企業が60%となっている。

 2008/1/24 資料 薬害エイズ事件 


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SABIC 2007年決算

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SABIC2007年のAnnual Report を発表した。

売上高は
2006年の86,328百万サウジ・リヤルに対し、126,204百万リヤルと46%増となり、純利益も20,294百万リヤルから27,022百万リヤルに33%増となった。(1サウジ・リヤルは約30円)

純利益は2002年の2,849百万リヤルから、20036,696200414,214200519,160200620,294200727,022百万リヤルと、9.5倍になっている。

損益計算書                          単位:百万サウジ・リヤル
     2006    2007
売上高    86,328  126,204
(営業損益)    30,886   41,047
Income before minority interests and zakat    31,871   42,408
少数株主持分   -10,528  -13,585
Income before zakat    21,344   28,822
Zakat (喜捨:税金)    -1,050   -1,800
(純損益)    20,294   27,022

同社の事業はPetrochemical Segment Metals Segment に分かれる。

Petrochemical Segment にはこれまで、Basic ChemicalsIntermediatesPolymersFertilizers の4つのSBUがあったが、2007年に新たにSpecialty Products がつくられた。またGEからGE Plastics を買収し、SABIC Innovative Plastics とした。
それぞれの製品は以下の通り。

Petrochemical Segment Basic Chemicals SBU Olefins ethylene, propylene, butadiene,butene-1
Aromatics styrene, benzene, pyrolysis gasoline, paraxylene
Oxygenates methanol, crude industrial ethanol, MTBE
Intermediates Fiber Intermediates MEG, DEG, tri-ethylene glycol (TEG), PTA
Industrial gases oxygen, nitrogen
Chemical intermediates EDC, caustic soda, 2-ethyl hexanol, Dioctyl phthalate (DOP),
iso-butyl aldehyde (IBAL), VCM
Linear alpha olefins  
Specialty Products   specialist automotive, catalyst, oilfield and rubber chemicals,
specialty polymers and polymer additives.
SABIC Innovative Plastics    
Polymers   PE, PP, PET, melamine, PVC, PS
Fertilizers   Saudi Arabian Fertilizer Company (SAFCO),
Al-Jubail Fertilizer Company (AL-BAYRONI)
National Chemical Fertilizer Company (IBN AL-BAYTAR)
Metals Segment Saudi Iron and Steel Company (HADEED)
JV 持分  Aluminum Bahrain (ALBA)
       Gulf Aluminum Rolling Mill Company (GARMCO)
       SABAYEK ferroalloy smelter (Al-Jubail)

SABICの子会社、関係会社は以下の通り。 

SBU ABasic ChemicalsBPolymersCIntermediatesDFertilizersESpecialty ProductsFMetalsGSABIC Innovative Plastics

Company SBU Location Partnership Products
ALBA
(Aluminum Bahrain)
F Bahrain SABIC (20%), State of Bahrain (77%),
Brenton Investments, Germany (3%)
Aluminum (liquid metal, ingots, ingots, rolling stabs, billet)
AL-BAYRONI
(Al-Jubail Fertilizer Company)
C D Al-Jubail A 50/50 JV with Taiwan Fertilizer Company Ammonia, urea, 2-ethyl hexanol
AR-RAZI
(Saudi Methanol Company)
A Al-Jubail A 50/50 JV with a consortium of Japanese companies led by Mitsubishi Gas Chemical Chemical grade methanol
GARMCO
(Gulf Aluminum
Rolling Mill Company)
F Bahrain SABIC (31.28%), Kuwait (16.97%),
Bahrain (38.36%), Iraq (4.12%),
Oman (2.06%), Qatar (2.06%) and
Gulf Investment Corporation (5.15%)
Aluminum sheets and can stocks
GAS
(National Industrial Gases Company)
C Al-Jubail SABIC (70%) and a group of Saudi Arabian
Saudi Arabia Industrial Gases Companies (30%)
Hydrogen
Yanbu Oxygen, nitrogen
GPIC
(Gulf Petrochemical Industries Company)
A D Bahrain Joint venture with equal partnership
Petrochemical Industries Company of
Kuwait, State of Bahrain and SABIC
Methanol, ammonia, urea
HADEED
(Saudi Iron and Saudi Arabia Steel Company)
F Al-Jubail A wholly owned affiliate Steel rebar, wire rod hot rolled coils,
cold rolled coils, galvanized cold,
color-coated coils
IBN AL-BAYTAR
(National Chemical Saudi Arabia Fertilizer Company)
D Al-Jubail 50/50 JV with SAFCO Ammonia, urea, compound fertilizer, phosphate, liquid fertilizer
IBN RUSHD
(Arabian Industrial Fibers Company)
A B
C
Yanbu SABIC (47.26%), PIF (33.51%) and a group of Saudi Arabian and regional private sector partners (19.23%) Aromatics (xylenes and benzene),
Purified Terephthalic Acid (PTA),
bottle grade chips, PET, acetic acid
IBN SINA
(National Methanol Company)
A Al-Jubail SABIC (50%), CTE (50% - owned by Elwood Insurance Ltd., 25% and Texas Eastern Arabian Ltd., 25%) Chemical grade methanol, MTBE
IBN ZAHR
(Saudi European Petrochemical Company)
A B Al-Jubail SABIC (80%), Ecofuel-Italy (10%),
Arab Petroleum Investment Corporation APICORP (10%)
MTBE, polypropylene
KEMYA
(Al-Jubail Petrochemical Company)
A B Al-Jubail A 50/50 JV with Exxon Mobil (USA) Polyethylene, ethylene
PETROKEMYA
(Arabian Petrochemical Company)
A B
C
Al-Jubail A wholly owned affiliate Ethylene, polystyrene, butene-1,
propylene, natural gasoline
butadiene, benzene, polyethelene,
PVC, E-PVC, PVC monomer
SADAF
(Saudi Petrochemical Company)
A C Al-Jubail A 50/50 JV with Shell Chemicals Arabia, LLC Ethylene, crude industrial ethanol, styrene, caustic soda, ethylene dichloride, MTBE
SAFCO
(Saudi Arabian Fertilizer Company)
B D Al-Jubail
Dammam
SABIC (42.99%), private sector (57.01%) Ammonia, urea, sulfuric acid,
melamine, urea formaldehyde
SABIC Innovative Plastics G      
SABIC Petrochemicals B.V. A B
C
Geleen
(Netherlands)
A wholly owned affiliate PE (HDPE, LDPE, LLDPE),
PP, ethylene, propylene, butadiene, MTBE/ETBE, benzene, gasoline components, styrene, C9 resin feed, cracked distillate, acetylene, hydrogen and carbon black oil
SABIC UK Petrochemicals Ltd A C Teesside
(UK)
A wholly owned affiliate Ethylene, propylene, benzene, toluene, paraxylene, cyclohexane
SABIC Polimer Industry A.S. B Adana
(Turkey)
SABIC (70%), and Baser Petrokimya Limited Sirketi (30%) General purpose polystyrene (GPPS),
high impact polystyrene (HIPS)
SABIC Polyolefine GmbH B Gelsenkirchen
(Germany)
A wholly owned affiliate PE (HDPE, LLDPE), PP
SAUDI KAYAN
(Saudi Kayan Petrochemical Company)
A B
C E
Al-Jubail SABIC (35%), Al-Kayan Petrochemical Company (20%) public share (45%) Ethylene, propylene, polypropylene,
LDPE, HDPE, ethylene glycol,
acetone, polycarbonate (PC),
ethanolamines (EOA)
SHARQ
(Eastern Petrochemical Company)
C B Al-Jubail A 50/50 JV with a consortium of Japanese companies led by Mitsubishi Corporation ethylene, Polyethylene, ethylene, glycol,
TAYF
(Ibn Hayyan Plastics Products Company)
B C Al-Jubail SABIC (77.73%), Industrial and Commercial Agencies Company - Bin Ladin (16.82%), Saudi Industrial Development Company (TATWEER 5.45%) PVC plastic boards, wall covering,
artificial leather, book binding
UNITED
(Jubail United Petrochemical Company)
A B C Al-Jubail SABIC (75%), Pension Fund 15%),
General Organization of Social Insurance (10%)
Ethylene, polyethylene, ethylene glycol (EG),
linear alpha olefins (LAO)
YANPET
(Saudi Yanbu Petrochemical Company)
A B C Yanbu A 50/50 JV with Mobil Yanbu Petrochemical Company Ethylene, polyethylene, ethylene glycol, polypropylene, pygas
YANSAB
(Yanbu National Petrochemical Company)
A B C Yanbu SABIC (55%), private shareholders (35%),
other companies in the Gulf region (10%)
Ethylene, propylene, ethylene glycol, LLDPE, HDPE, PP, butene-1 and butane-2, benzene, toluene
xylene mixture, MTBE

 


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4月17日、木屑から発生させたガスでバイオディーゼルを生産する本格的な製油所がドイツ東部で稼働を始めた。記念式典にはメルケル独首相も出席した。
トウモロコシやサトウキビ原料の第一世代のバイオ燃料と異なり、食糧と競合しないため、注目を浴びている。

Choren Industries GmbH が東ドイツSaxony 州の Freiberg Biomass-to-Liquid (BtL) 工場をスタートさせた。
8~12ヶ月でフル稼働(18百万リットル)にする。廃材や木屑など65千トン
(乾燥ベース)を原料とする。

木屑などのセルロースを利用する「第二世代のバイオ燃料」(穀物・油料作物・砂糖作物を原料としないバイオ燃料)であるが、醗酵によるセルロースエタノールとは異なる。

1992年にバイオマスのガス化、精製技術改良を目的に、CHORENの前身のCRG Kohlenstoffrecycling Ges. mbH. が設立された。
創業者の
Dr. Bodo Wolf は光合成で植物に蓄えられたエネルギーの利用:「太陽をあなたの燃料タンクに」を目的とした。

現在の社名のCHOREN は次の意味を持つ。

  • C (carbon),
  • H (hydrogen) and
  • O (oxygen), that in turn we convert into
  • RENewable energy
  • 独自に開発したCarbo-V ® process を使用するもので、Daimler Volkswagen と提携し、両社が燃料のテストを行なった。
    Fischer-Tropsch Synthesis の適用ではShell と提携している。

    製品は非常にクリーンで、Daimler Volkswagen はこれを SunDiesel® と名付けた。通常のディーゼルと比較すると、有害な排出物、汚染物質を30-40% 減らすことができる。芳香族や硫黄分はほとんどゼロ。
    また、これは原料として使われるバイオマスが吸収したCO2と同量のCO2しか排出せず、最初の真のゼロエミッション燃料であるとしている。
    現在及び将来のどんなディーゼルエンジンにも改造なしで使用できる。


    Choren はBrandenburg 州Schwedt で年産能力270百万リットル(200千トン)の本格商業生産プラントを計画している。
    最終決定は2009年でFS次第であるが、実施の場合は2012年か13年スタートとなる。
    しかし、現時点ではコストは化石燃料より高く、使用には税務上のインセンティブが必要となる。
    但し、ドイツでは第二世代のバイオ燃料の免税は2015年までのため、法改正が望まれている。

    なお、同社はCarbo-V ® processを利用した発電の開発を進めている。


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    公正取引委員会は2007年7月、上下水道に使用される塩化ビニル管を巡り違法な価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして強制調査に入った。

    対象となったのは、三菱樹脂、積水化学工業、クボタシーアイ、アロン化成、信越ポリマー、前澤化成工業、ヴァンテック、日本プラスチック工業、ダイカポリマー、日本ロール製造、旭有機材工業のメーカーの11社とクボタシーアイの親会社クボタ、シーアイ化成の計13社。

         2007/7/16 塩ビ管カルテル調査

    公取委はこのたび、本件での刑事告発を見送る方針を固めた。各紙が報じた。

    公取委の強制調査は刑事告発相当事案を担当する犯則審査部が令状に基づき捜索・差し押さえを行なう。

    改正独占禁止法(2006年1月施行で認められた強制調査(家宅捜索)権を行使した事案では、過去3件(2006年の汚泥処理施設談合、07年の名古屋市営地下鉄談合、緑資源機構発注の林道整備調査談合)とも刑事告発していたが、4件目で初めて事件化が見送られることになる。

    今回の件では公取委は、2006年の合意内容が徹底されずカルテルの実効性に疑問があるうえ、一部メーカー関係者が06年のカルテルを否認していることも考慮、告発見送りの方針を固めたとみられる。課徴金減免制度に基づく企業からの自主申告もあったとみられるが、申告企業以外のメーカーを含めたカルテルを認定するには至らなかった模様。

    行政処分とは異なり、個人の刑事責任を問う刑事事件では、法廷で厳密な犯罪立証が求められる。
    刑事事件では公取委が集めた証拠をそのまま使うことはできず、検察は告発を受けると証拠収集を一からやり直す必要がある。

    2000年のポリプロカルテル事件では、公取委は刑事告発しようとしたが、検察が告発を受けないことを決めたという。
    (本件は2001年5月に公取委が勧告を行い、これを拒否した住友化学、サンアロマー、出光興産、トクヤマに対して、公取委は2007年8月、独禁法違反の審決を出した。各社はこれを不服として抗告訴訟をしている。)

    公取委は今後、事案を行政調査部門に移管し、排除措置命令などの行政処分を目指して調べを進める。

    付記
    公正取引委員会の伊東章二事務総長は7日の定例会見で以下の通り述べた。

    塩化ビニル管のカルテル事件については、刑事告発相当の事案に該当し得ると考えて昨年7月から犯則調査を進めてきたが、刑事事件とするには難しい点があるということから告発を見送ることとした。その理由は「立証上の問題」ということで、今後,行政調査を進める。
    行政事件と刑事事件では、立証すべき事項と立証の程度が異なるわけで、刑事事件とするには難しいという判断をした。
    刑事告発については、告発方針を明らかにしており、その中で、例えば、国民生活に重大な影響を及ぼす悪質な事件等の基準を挙げており、そういう基準に該当し得る事件であろうと判断した。それとその事件をどこまで立証できるのか、立証のための証拠をどの程度集められるのかということは、全く別の問題。

    ーーー

    独禁法では行政処分である排除措置命令や課徴金と、刑事罰が併科されている。(財界はこれに反対している)

    当初は「排除勧告」(2006年1月から排除措置命令)と刑事罰の二本立てであったが、制裁効果が薄いため、1977年に課徴金が導入された。
    当時は売上高の1.5%で、1991年に6%に引き上げられた。
    2006年に課徴金の性格を「不当利得の没収」から「違反への制裁金」に変えて10%に引き上げられ、同時に自主の場合の減免制度が導入された。この結果、課徴金=制裁金は「罰金」と同じで憲法の二重処罰禁止に抵触するとの批判が生まれた。

    独禁法第89条では、第3条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者、第8条第1項第1号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの(いずれも未遂を含む)に、3年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する、と規定している。
    第95条では、上記の場合、その法人に対しても、5億円以下の罰金刑を科するとしている。

    企業への罰金は当初500万円であった。1992年12月改正で1億円に引き上げられた。2002年に5億円に引き上げ。

    なお、企業への罰金額が確定すれば、罰金額の半額が課徴金から控除される。
    課徴金納付済みの場合は、審決で課徴金納付命令の額を変更し、還付を行なう。

    これらは公取委が告発することとなっており、第一審の裁判所は、地方裁判所となる。

    当初は第一審は東京高裁。

    独占禁止法の2005年改正により、公取委に従来よりの行政調査権の他に犯則事件についての犯則調査権が与えられることとなった。

    第101条(1)、「公正取引委員会の職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し若しくは置き去った物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し若しくは置き去った物件を領置することができる。」
    第102条(1)、「委員会職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、公正取引委員会の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。」

    ーーー

    刑事告発は1974年に石油闇カルテル事件でなされたが、過去に行政指導で生産調整が行なわれてきた経緯もあり、最終的に生産調整カルテルは無罪、価格協定カルテルも一審では有罪だが、最高裁で一部が無罪となった。
    この後、17年間、刑事告発はなされなかった。

    海部内閣は1990年4月、日米構造問題協議中間報告で、独禁法運用強化を施策として推進すると表明、①独禁法改正で課徴金引き上げ、②刑事告発の積極化を関係機関に指示した。 
    課徴金は1991年4月の独禁法改正で売上高の1.5%から6%に引き上げられた。
    企業への罰金は1992年12月改正で500万円から1億円に引き上げられた。

    公取委は1990年6月、次の場合には積極的に刑事処罰を求めて刑事告発を行う旨を公表した。

    (1) 一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル、供給量制限カルテル、市場分割協定、入札談合、共同ボイコットその他の違反行為であって、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案
       
    (2) 違反を反復して行っている事業者・業界、排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち、公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案

    2005年10月、独禁法改正法の施行に伴い、公取委は以下の方針を発表した。

    法改正後においても、
    国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案、
    違反を反復して行っている,排除措置に従わないなど行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案、
    について,積極的に刑事処分を求めて告発を行うこととする。

    化学業界では過去に次の例がある。

    1991年 ラップフィルム価格カルテル 罰金600万~800万円、懲役6月~1年(執行猶予2年)
    1999 ダクタイル鋳鉄管価格カルテル 罰金3000万~1億3000万円、懲役6月~10月(執行猶予2年)

    1991年のラップフィルム事件は、独禁法での刑事告発としては1974年の石油闇カルテル事件以来17年ぶりのものであった。
    なお、ラップフィルム価格カルテル事件判決で、東京高裁は刑事罰併科について、以下の通り述べている。

    独禁法による課徴金は、一定のカルテルによる経済的利得を国が徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって、社会的公正を確保するとともに、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効性を確保するために執られる行政上の措置であって、カルテルの反社会性ないし反動特性に着目しこれに対する制裁として科される刑事罰とは、その趣旨、目的、手続等を異にするものであり、課徴金と刑事罰を併科することが、二重処罰を禁止する憲法39条に違反するものではないことは明らかである。
    (2006年改正で課徴金の性格が「不当利得の没収」から「違反への制裁金」に変更したため、上記理由の前半は当てはまらなくなった)

    改正独禁法で課徴金減免制度が始まったが、これを受けた場合に、刑事罰についても刑事訴追を免ずる規定はない。

    これについては上記の2005年10月の公取委方針で、調査開始日前に最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の提出を行った事業者(及び調査に協力した個人)については告発を行わないこととするとした。
    (但し、虚偽の報告をしたり、資料提出をしなかったり、他の事業者に対し違反行為をすることを強要したり他の事業者が違反行為をやめることを妨害していた場合は除かれる)

    また、2005年独禁法改正法の国会審議では、法務省刑事局長が質問に対し、「公取委に対しては専属告発制度が認められていることの趣旨を踏まえると、公取委が刑事告発しなかったという事実を検察官は十分考慮することになるので、課徴金減免制度は十分機能することになると思われる」旨の答弁を行っている。

    課徴金減免制度の本来の趣旨は、当局の探知していない談合やカルテルを申請し、摘発につながった見返りに課徴金を減免し、刑事告発を見送るというものであった。

    名古屋市地下鉄談合事件では、既に地検と公取委が合同で捜査を続けていたが、立入調査前にハザマが減免申請した。
    これは制度の本来の趣旨に合わないが、上記方針で減免となった。

     

    参考文献 村山治(朝日新聞記者) 「市場検察」 文藝春秋
             独禁法改正の背景、経緯が詳しく述べられている。


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    本年2月28日、米食品医薬品局(FDA)は、昨年12月以降に米Baxter 製のheparin 製剤を投与された448人がアレルギー反応を起こし、21人が死亡したと発表した。FDAによると、Baxter が仕入れている米国Scientific Protein Laboratories (SPL) と、同社の中国JVのChangzhou (常州SPLの原液を使ったheparin 製剤の一部から不純物が見つかった。

    厚生労働省は3月10日、血液凝固防止作用があり、透析治療に不可欠なヘパリン ナトリウム製剤について、予防的な措置として、国内メーカー3社が自主回収を始めたと発表した。

        2008/3/14 血液凝固防止ヘパリン製剤 自主回収

    その後米国では785人に重いアレルギーなどの副作用が確認され、少なくとも81人の死亡例がheparin との関連が疑われている。

    Baxter International のRobert Parkinson CEOは4月29日、米下院のエネルギー商業委員会小委員会の公聴会で、同社の血液凝固阻止剤 heparin に不純物が意図的に混入されていたとの見方を示した。
    原料が中国のSPLの工場に到着する前に不純物が混入されていたとしている。

    FDAは3月にheparin に「過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)」が含まれていたと発表した。
    (専門家はheparin に5%から20%含まれるOSCSがアレルギー反応を引き起こしたとの確証は得ていないとしている。)
    FDAの医薬品評価研究センターは「heparin に混入していたOSCSを検査した結果、12社の中国企業に行き着いた」と語った。

    動物軟骨由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチンは軟骨という意味のギリシャ語)は関節炎治療に広く使われているサプリメントで、抗凝血性はないが、分子の改変が抗凝固性をもたらす。
    コンドロイチン硫酸は通常2糖あたり1つの硫酸基を含んでいるが、2つの硫酸基を含む過硫酸コンドロイチン硫酸が見つかっている。一つはサメ軟骨中のコンドロイチン硫酸D、もう一つはイカ軟骨で見つかったコンドロイチン硫酸Eである。
    今回の「過硫酸化型」は化学的に合成された可能性がある。

    Heparin は通常はブタの腸などから製造されるが、OSCSを使用すると安価に製造できるという。増量のためにOSCSを混入したのではないかとみられている。
    heparinのコストが1ボンド当たり900ドルなのに対して、OSCSはたった9ドルといわれる。

    中国当局はOSCSは死亡やアレルギー症状に関係ないと主張している。他の国でもOSCSの混入が見つかっているが、どこでも副作用は報告されていないとしている。

    ーーー

    厚生労働省は3月22日、輸入業者などが保管していた中国SPL社とドイツCKW社の原料に同じ不純物の混入が確認されたことを明らかにした。いずれも製剤にする前で流通はしなかった。

    伊藤ハム子会社伊藤ライフサイエンは4月30日、輸入した原薬から微量
    OSCSが検出されたとして、同社の血液抗凝固剤「パルナパリンナトリウム」約10万本を自主回収すると発表した。対象製品は1~2月に出荷されたが卸業者の倉庫に保管されており、患者への使用はなかった。

    扶桑薬品工業も5月2日、「ヘパリンナトリウム製剤」の自主回収を始めた。米国メーカーから購入した原薬中にOSCSが約0.2%混入していた。
    同社は原薬の調達先がバクスターと同じだったため、3月に予防措置として自主回収し、別のメーカーの原薬で製剤化した製品を代替品として出荷していた。今回、この代替品の原薬から異物が検出された。


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    信越化学工業が4月28日に発表した3月期連結決算は、経常利益が前期に比べ21.5%増加し、当期純利益も19.2%増加した。
    配当は前期の70円を90円に増やした。次期は100円を予定している。

                                       単位:百万円(配当:円)
      売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
    連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末

    07/3

    1,304,695

    697,248

    241,028

    81,200

    247,018

    80,075

    154,010

    51,085

    25.0

    45.0

    08/3

    1,376,364

    708,580

    287,145

    81,931

    300,040

    92,528

    183,580

    50,229

    40.0

    50.0

    09/3

    1,400,000

    730,000

    307,000

    88,000

    320,000

    95,000

    200,000

    61,000

    50.0

    50.0

    セグメント別営業損益は次の通り。(単位:億円)

      07/3 08/3 増減
    塩ビ系 420 315 -105
    シリコーン系 423 431 8
    その他有機・無機 224 249 25
    (有機・無機化学品) (1,067) (995) (-72)
    電子材料 1,066 1,621 555
    機能材料ほか 276 260 -16
    全社 1 -4 -5
    営業損益計 2,410 3,867 1,457

     

    塩ビについては、国内は需要低迷で厳しい状況が続いた。
    オランダのシンエツPVCは欧州の販売が好調で業績を伸長させた。

    米国Shintechは住宅不振が影響し、前年比で経常損益が125億円減少した。
    しかし、同業他社が稼働率を落とし大幅な減益や赤字に転落する中で、長年にわたり培ってきた米国および海外への顧客への販売網を活かした拡販により、フル操業を継続した結果、300億円を超える経常損益を確保した。

    米国の同業他社との対比は以下の通り。(Oxy の2007年下期損益は不明)
    Georgia Gulf と Polyone は年間ベースで前年の黒字から赤字に転落している。

    金川社長は米国の住宅市場は引き続き厳しいとみているが、同社はLouisiana 州 Plaquemine の新工場(塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トン)の第1期(塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トン)を本年5月に稼動させる。
    世界全体の需要開拓で対応し、引き続きフル稼働を狙う。

    ーーー

    半導体シリコンは携帯電話やデジタル家電用などの需要増を背景に好調で、特に300mm ウエハーの出荷が増加し、業績は大きく伸長した。
    信越半導体グループ(信越半導体、SEHアメリカ、SEHマレーシア、SEHヨーロッパ、SEH台湾)の損益推移は以下の通り驚異的である。


    * 総合目次、項目別目次は
       http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


    ホンダが東京国税局の税務調査を受け、2002年3月期以降の収益について中国の四輪事業で総額1,400億円を超える巨額の申告漏れを指摘された。

    国税局は技術移転や設備、部品の販売、日中間の利益配分など事業全面にわたり、問題を指摘した。

       移転価格税制については
         2006/6/29
    武田薬品、移転価格税制に基づく更正 (他の例も記載) 
           

         2008/2/7 
    信越化学の移転価格課税 
         

    これに対し、ホンダは、「中国の合弁会社との取引条件についても、日本・中国両国の法令等を遵守し、適切な取引価格が実現されるよう努め、結果得られる利益に対しては日本・中国両国において適正に納税を行っております」としている。

    中国では多くの産業が、現地との合弁を義務付けられており、ホンダの子会社も地元の有力企業との共同出資である。

    ホンダの中国での活動は以下の通り。

    合弁会社 Honda 提携先 立地 製品 備考
    広州本田汽車 50% 広州汽車 50% 広州市 第一工場 四輪車24万台/年
    第二工場 四輪車12万台/年
    合計 36万台/年
    1999年スタート
    東風本田汽車 50% 東風汽車 50%     (3段階計画)
     東風本田汽車零部件 広東省恵州市 四輪車の部品 1994年スタート
     東風本田発動機 広州市 エンジン 1998年スタート
     東風本田汽車(武漢)* 湖北省武漢市 四輪車 12万台/年 2003年*
    本田汽車(中国) 65% 広州汽車 25%
    東風汽車 10%
    広州経済技術開発区
    輸出加工区
    欧州向け Jazz 5万台/年 輸出専用生産拠点
            (四輪車 合計53万台/年)  
    五羊-本田摩托(広州) 50% 広州摩托集団 50% 広州市 二輪車 100万台 2006年新工場に移転
    新大洲本田摩托 50% 海南新大洲摩托車47.33%
    天津摩托集団 2.67%
    天津市、上海市、海南市 二輪車  
    嘉陵-本田発動機 70% 中国嘉陵工業 30% 重慶市 汎用エンジン、芝刈機、ポンプ  

      *東風本田汽車(武漢):東風の武漢万通汽車の50%をホンダが引受

     

    中国での大規模事業の合弁契約は政府の承認が必要で、政府から条件を付けられることが多い。

    ホンダの場合も政府からロイヤリティの率に制限がつけられ、これが問題になったという。

    米国でProcter & Gamble IRS(国税庁)から移転価格税制(税法482条)で追加課税されたことがある。スペインのEspanaへのライセンスについて、スペインの法律で禁止されていることからロイヤリティを取らなかったのが問題となった。
    この件は裁判になり、スペインの法律の規定が優先され、
    P&Gの勝訴となった。

    今回の場合、国税局はロイヤリティの率制限が「法律」ではなく、「行政指導」であるとして、これを認めなかった模様である。

    しかし、中国政府の条件を呑まなければ事業ができない状況にあることから、これが前例となると、移転価格税制に関する問題が新たな「中国リスク」として浮上する。中国に進出する企業のほとんどが対象となる。

    今回のような場合、もし日本で課税を受ければ、本来は契約を変えてロイヤリティを高くすることになるが、中国がそれを認める筈はなく、結局二重課税となってしまうこととなる。

    もう一つの問題は、ホンダのJVのうちメインの広州本田と東風本田は50/50JVであることだ。

    米国では海外取引だけでなく、国内取引でも移転価格税制が適用される。関係会社との取引価格は第三者との間の取引価格に調整して課税所得を計算する。(税法482条)
    逆に第三者との取引価格はどんなものでも問題ない。利益が対立する第三者との間で、仮に安い価格を決めるとすると、他で何らかのメリットがあるからの筈である。(それがなければ背任となる)
    この意味で、第三者との50/50のJVの場合は、移転価格税制は問題にならない。

    日本の国税局は武田薬品の場合も50/50JVとの取引価格を問題とした。敢えて相手に利益を与える筈はなく、この措置はおかしい。

    ーーー

    別途、中国の法人税が低いことから、ロイヤリティや求償価格を低くすれば、企業にとって有利になるという背景もある。(出資比率による)

    200811から新企業所得税法が施行されたが、それまでは外国企業には優遇税率が適用され、かつ「2免3減制度」で、黒字化から2年間は免税、その後3年間は税率が半分になるという恩典があった。

      一般 輸出比率7割超の企業など
    中央指定の開発区  15%    10%
    地方指定の開発区  24%    12%
     * 黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分

    改正後でも、国内外企業に対する所得税率は25%で、日本よりはるかに低い。 

       2008/1/4 中国、新企業所得税法施行  

    通常は法人税率の低い国で事業をしても、配当を日本で受ける際には、日本の法人税率で課税されるため、メリットはない。
    ただし、開発途上国が産業育成のために税の免除をしているのに、日本で課税されれば目的が果たせないため、途上国の場合は「みなし外国税額控除」を適用し、相手国で日本と同じ税率で納税したとみなす措置が行なわれる。

    日中租税条約では中国の経済開発奨励措置に関する「みなし外国税額控除」の適用を決めているが、中国の所得税法改正後もみなし外国税額控除が適用されることが、日中両国の税務当局間で確認されている。

    国税局がこの視点で企業の行動を見るという可能性もある。

    ーーー

    ホンダは2008年3月期の(米国会計基準に基づく)連結財務諸表で、関連負債および税金費用として800億円を計上した。
    同社は、調査は現在も進行中であり、「あくまでも将来の税金費用の発生を米国会計基準の解釈指針48号に基づき見積もる」という連結財務諸表上の会計処理であるとしている。
    (日本の会計原則にはこの規定はなく、単独決算には反映させていない)

    米国財務会計基準審議会(FASB)は2006年6月に解釈指針第48 号「法人所得税の申告が確定していない状況における会計処理」を発表、2006年12月16日以降開始事業年度から適用することとなり、ホンダは2007年4月1日から適用している。

    従来は法人所得税の不確実性は「偶発事象の会計」でカバーされ、偶発損失は発生可能性が probable(70%程度以上)で、かつ金額の合理的見積が可能な場合に認識することとなっていた。(偶発利益は認識せず)

    新しい指針では、税務当局との論争が最終的に裁判所に持ち込まれた場合、申告通りとなる可能性が「50%を超える」かどうかが基準となる。


    * 総合目次、項目別目次は
       http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


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