2011年11月アーカイブ

Arkemaは11月23日、労使協議会に塩ビ関連事業の売却を説明した。

概要は以下の通り。

・塩ビ事業をコモディティ製品に特化しているKlesch Group に売却
・Klesch Group の下で、これを欧州の塩ビ産業のリーダーとする。
・Arkemaから経営陣を派遣
・プラントはリストラなしで移管、従業員はそのまま

・Arkemaは残る2部門(Industrial Chemicals、Performance Products)に集中する。

事業ごとに異なった戦略が必要なためで、塩素化学-PVC-川下製品の事業は明確な戦略、計画、きっちりしたバランスシートを持つ新しいストラクチャーのもとで展開すべきとしている。

Arkemaは欧州3位の塩素化学メーカーで、電解からVCM、PVC、加工品(異形押出、パイプ、コンパウンド)まで一貫生産している。

PVCについては、フランスに4工場(Balan、Berre、Saint-Fons、Saint-Auban)とスペインのHernani 工場を持つ。

ArkemaはSolvin (Solvay 75%/BASF 25%のJV)との間で3つのJVを持っていたが、2010年7月1日にJVを解消した。

スペインのVinilis (VCM/PVC:Solvin 65%)はSolvinが引取り。
フランスのVinylFos(VCM:Arkema 79%)とVinylBerre(PVC:Arkema 65%)はArkemaが引き取った。

Jarrie工場はジクロロエタンプラントを閉鎖するため、移管しない。Saint-Auban工場はペースト塩ビプラントのみを移管。Balan工場のEVAは移管対象外となる。

ArkemaはTotalグループの化学部門の一つで、同グループの概要は以下の通り。

Chemical Intermediates
Plastics
Arkema Vinyl Products
 
Chlorine / Caustic Soda
Pipes and Profiles (Alphacan)
PVC
Vinyl Compounds
Industrial Chemicals Acrylics
Arkema Coating Resins
Cray Valley &Cook Composite Polymers
Fluorochemicals
Hydrogen Peroxide
Photocure Resins (
Sartomer)
PMMA (Altuglas International) & Methacrylics
Specialty Acrylic Polymers (Coatex)
Thiochemicals
Performance Products Functional Additives
Specialty Chemicals (Ceca)
Technical Polymers
石油化学 Total Petrochemical  
肥料 Grande Paroisse  
Specialties Adhesives Bostik  
Electroplating Atotech  
Elastomer Hutchinson  
 

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買収するKleschグループは子会社を通じ、以下の事業を行っている。

 Basemet :欧州でアルミ精錬及びメタル関連事業
 Panther Trading:コモディティ
 Swiss Oil Trading and Supply:グループの製油所Heide Raffinerieの運営、エネルギー関連の取引

宇部興産は11月24日、中国の蘇州工業園区の工商行政管理局がNovolyte Technologies (Suzhou) に対し、宇部興産の 商標権の侵害行為の停止を命じ、罰金を科すという内容の行政処罰決定を行ったと発表した。

宇部興産はリチウムイオン電池用電解液で世界トップレベルのシェアを持ち、中国内でも広く「PURELYTE」の商標で拡販中だが、Novolyte は自社の電解液に「PUROLYTE」の商標を使用している。

宇部興産によると、本年夏に工商行政管理局から、Novolyteが「PUROLYTE」の商標を使用しているが、宇部興産の知的財産権の侵害にならないかとの問い合わせがあった。
宇部興産ではこの事態を知らなかったが、「E」が「O」となっているだけで、わずか1字しか違わず、明らかに商標権侵害と断定できたため、直ちに当局に対し侵害行為の停止を求める手続きを行なった。

当局側はこれに基づき、侵害行為の停止を命じ、罰金を科すとの行政処罰を決定した。

罰金額は
不明だが、宇部に対する損害賠償ではなく、当局に入るという。侵害に対する損害賠償には司法処理が必要。

中国では商標権侵害が広く行われているが、被害者からの要請に基づくのではなく、当局側が調べて当事者に連絡し、摘発するというのは日本でも考え難く、珍しい。罰金稼ぎかとも邪推される。

Novolyte Technologies (Suzhou) は、米国のArsenal Capital Management LPの子会社でリチウムイオン電池用電解液と高機能溶剤のメーカーのNovolyte Technologiesの中国子会社。

Novolyteは2008年10月に、コンパウンドメーカーのFerro Corporation からファインケミカル事業(電解液、溶剤、ホスフィンなど)を買収した。Baton Rougeに電解液の工場を持つ。
蘇州の中国子会社もFerroが設立したもので、「PUROLYTE」の商標は米国、中国ともにFerroが取得している。

このため、本件は模倣ではなく、たまたま両社が似た商標を取っていたもの。

なお、中国での商標登録申請は宇部の方が早く、宇部にとって有利だが、米国での申請はFerroの方が早い。

    中国での申請   米国での申請
宇部興産のPurelyte   2000-9-26     2006年
FerroのPurolyte   2004-2-1    2002年

このため、宇部が米国に輸出する場合には逆にやられる可能性もある。       

 

 

 

Kohlberg Kravis Roberts(KKR)は11月23日、伊藤忠商事などとともに、米エネルギーグループのSamson Investment Co.を72億ドルで買収すると発表した。

KKR、伊藤忠と米国の投資ファンドのNatural Gas PartnersとCrestview Partnersの4社のグループが同日、私企業としては米国最大の石油開発・生産会社の一つであるSamson Investment を買収する契約を締結した。

KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementCrestview Partnersが残り15%を出資する。
買収完了後はSamson Resourcesに改称する。

Samsonは1971年設立で、米国で1万以上の油田の権益を所有し、そのうち、4000以上を運営している。

近年は非在来型資源権益を競争力のある価格で取得し、石油と天然ガスのバランスのとれた資産を保有しており、今後はこれらの開発を促進して2021年には日産16億立方フィート(天然ガス換算)への生産拡大を計画している。

主なものは以下のガスシェールと油田。

シェール:Bakken(下図)、Powder River(ワイオミング州北東、モンタナ州南東)、Green River(下図)、
      Cana Woodford(下図)、Haynesville/Bossier(下図)
油田:Granite Wash(北テキサス)、Cotton Valley(東テキサス)

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伊藤忠も11月24日発表した。

同社ではSamsonの25%株式を10.4億米ドルで買収するとしている。

KKR発表の72億ドルの25%は18億ドルで、差はSamsonの借入金の肩代わりか?

伊藤忠は長期保有を目的とした戦略的投資としており、同時に Samsonが生産する天然ガスの出資比率に応じた引き取り権(LNG換算年間100万トン:ピーク時)を確保し、米国に持つガストレード会社の販売拡大に加え、米国シェールガスの国際競争力に注目し、将来のアジア向けLNG輸出ビジネスも視野に入れた取り組みを行うとしている。

伊藤忠商事は、持分権益数量を現在の3万4千バレル/日から2015年迄に7万バレル/日以上に積上がる計画で、今回の買収を通じてこの目標達成を図る。

同時に、非在来型資源開発事業への参画を強化し、オペレーター機能も備えた本案件を北米における天然ガス事業の中核と位置付け、天然ガス・LNGトレード機能の拡充を目指す。

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伊藤忠は2010年10月、米国のエネルギー・電力・建設関連複合企業 MDU Resources Group Inc.の子会社で石油天然ガス開発会社のFidelity Exploration & Production Company との間で、米国ワイオミング州Niobraraエリア約88,000エーカーの石油ガス鉱区権益の25%を取得し、シェールオイル開発事業に参画する契約を締結している。

2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

北米のシェールガス開発では、日本の各社が開発に参加している。各社のシェール開発状況

 

付記 

国際石油開発帝石(INPEX)は11月29日、日揮と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。
(40%を取得するINPEX Gas British Columbia にはINPEXが82%、日揮のカナダ子会社が18%を出資する)

このうち、Horn River地域の鉱区では、既に原油換算で日量約 8千バレルの生産を開始している。

今後、Horn River、Cordova両地域の鉱区で本格的な開発作業を進め、両鉱区合計で原油換算で日量約 200千バレル)規模の生産を目指し、Liard地域の鉱区についても、シェールガス開発生産に向けて作業を進める。

Nexenは元Canadian Oxydentalで、石油・天然ガス(北海、西アフリカ、メキシコ湾など)、オイルサンド(カナダのアルバータ州のAthabasca oil sands開発及びThe Syncrude Project への参加)とこのシェールガスを主たる事業としている。


   


 

「オマハの賢人」と称される米国の投資家Warren Buffetが11月21日、福島県いわき市の超硬工具大手のタンガロイのインサート(刃先交換チップ)の新工場の竣工に出席した。
3月に予定されたが、震災と原発事故で延期となっていた。

タンガロイは1929年に芝浦製作所と東京電気が日本初の超硬合金を開発し、「タンガロイ」と称して市販したのが始まりで、1934年に共同出資で「特殊合金工具」を設立した。
その後、「東芝タンガロイ」と称していたが、2004年にMBOにより独立し「タンガロイ」に改称した。

タンガロイは現在は、イスラエルに本社を置く超硬切削工具メーカーのイスカル(ISCAR)を中核とする切削工具メーカーグループIMCグループ(International Metalworking Companies B.V.)に帰属する。

グループにはISCAR、タンガロイのほか、米・独のIngersoll Cutting Tools Ltd.、韓国のテグテック(Taegutec Ltd.)など10社以上によって構成されており、超硬切削工具業界では世界第2位の売上高を誇る。

IMCは事業拡大のためにM&Aを必要としたが、資金がないため、Buffettの投資を求めた。
BuffettはIMCの会長の「小さな家族主義」経営に惚れ込み、2006年5月に50億ドルでIMCの80%を取得した。

その後もBuffettはIMCの経営は経営陣に任せた。

IMCはリーマン・ショック直後の2008年11月、主力顧客の自動車業界が設備投資を一斉に凍結したため大赤字に転落したタンガロイを買収した。
そのような状況下で2009年春、IMCはタンガロイ社長が温めていた100億円強の新工場の建設計画の実行を指示した。

今回の竣工式は、「タンガロイ復活の象徴」のイベントである。

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来日に際してのWarren Buffettの記者会見での発言は以下の通り。

・日本は何があっても前進をやめない国だと改めて確信した。

・持続的に成長できて、競争力があり、欠かせない事業を持つ企業に投資する。

BuffettのBerkshire Hathawayの主な投資先は以下の通り。  

  Coca Cola   132 億ドル
  Wells Fargo  111  
  IBM 107  
  American Express 65  
  Procter & Gamble  47  
  Kraft Foods  31  
  Johnson & Johnson 28  

 

Buffettは11月14日、IBMの株式約5.5%を取得したと発表した。
これまで「ハイテク株はわからない」として、IT株への投資を控えていた。
IBMの成長性や事業戦略に注目しているとした。

・オリンパス問題は大きな驚きだったが、こういうことは米国(エンロン事件など)でも欧州でもどこでも起こる。

・欧州政府への信認が低下している。

「各国が個別通貨を持っていないことが解決の妨げ」
「リーマン・ショックより危機が深刻」

・米国でもかなりの割合の人びとが、所得・資産の格差拡大に不満を持っている。

Buffettは本年8月、米紙の意見欄への寄稿で、富裕層の課税率は中間所得層よりも低く米国の税制は不公平となっているとの見解を表明した。

昨年の課税所得はほぼ4000万ドルだったと公表、納税が690万ドル、所得税率は17.4%で、「秘書の税率よりも低い」とした。
株式の配当やキャピタルゲインは15%の上限税率が適用される)

これを受け、オバマ大統領は、高所得層向け増税提案を「バフェット・ルール」と呼んだ。

 

 

上海市工商行政管理局は11月16日、日本から進出している味千ラーメンがカルシウム含有量について虚偽の広告を行っていたとして不当競争防止法に基づき、20万元(約240万円)の罰金支払いを命じた。

熊本市に本店を置く重光産業が経営する味千ラーメンは、台湾出身の創業者が久留米を発祥とする豚骨ラーメンにニンニクの風味を加えたもので、日本国内で約100店(約7割が熊本県内)、海外では中国や東南アジアを中心に約400店舗を営業している。

本年
夏に味千ラーメンは2つの点で中国メディアの大バッシングを受けた。

あるメディアが、「味千ラーメン」がPRしている煮込み豚骨スープは店舗で煮込んだものではなく、濃縮スープを希釈している」と報じた。1食分のコストはわずか数毛(1毛は1元の10分の1、約1.2円)であるとの報道もある。

味千(中国)公司によると、店舗で使われる豚骨スープの原液は、山東省泰安市にある日本の独資企業「泰安京日丸善食品工業有限公司」で生産され、西蓋米食品(上海)有限公司で日本独特の処理を経て味が調えられた後に、高温殺菌処理等を施して「味千千味スープ」として配送され、各店舗へ希釈して使用している。

これらの工程において国が定める関係法規の条件を全て満たしており、各工場も関係部門の発行する生産許可証をそろえている。

チェーン店では一般的なやり方であり、同社でも、各店舗で豚骨スープを煮込んでいるとはPRしていない。

問題は含有カルシウムの量である。

同店の公式サイトの「スープに含まれる栄養素」には、「中国農業大学食品科学・栄養工程学院の栄養・分析研究室」の分析結果を紹介し、以下の通り述べていた。

「コクと風味の高い同店ならではの豚骨ラーメン1杯(360 ミリリットル)当たりに含まれている栄養素のうち、最も突出しているのはカルシウムで1600ミリグラム。これは肉類の10倍以上、牛乳の4倍に値する」

味千ラーメンを展開する重光産業が提示した中国農業大学の「食品成分検査報告書」には、「豚骨ラーメンに含まれているカルシウムは100グラム当たり485ミリグラムで、牛乳の4倍、普通の肉類の10倍以上」となっている。

ただし、この検査に使われたサンプルは「濃縮スープ」となっており、店で実際に提供している希釈スープではない。
通常1リットルの濃縮スープでラーメン100杯分のスープが作れるという。

味千側は1杯に1600ミリグラムといった説明が誇大だったことを認め、メニューやウェブサイトでの宣伝を撤回して消費者に謝罪した。中国農業大学にも謝罪した。

上海市工商局は、味千ラーメンに対し、この点が「誤解を与える虚偽の宣伝」だったとして、罰金20万元を支払うよう通達した。

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なお、7月26日付の人民網日本語版は、「味千ラーメン 大陸部でのみ品質問題が発生したのはなぜ?」との記事で、以下の通り述べている。

同じ味千ラーメンでも、日本やシンガポールなどではこのような問題は発生していない。

これは大陸部における「特殊」な食品業経営状況又はビジネス環境と無関係ではないだろう。

まず第一に、誠実と信用を守るという意識に欠け、倫理・道徳観念が低く、金銭的利益の追求が良心・人品の追求に勝り、誇大宣伝が横行している。国外ブランドを笠に着て中国製の家具をイタリア製として売り出したダビンチ家具や各種の食品品質問題などがいい例だ。

次に、監督管理メカニズムが弱く、処罰・損害賠償制度はお世辞にも整っているとは言えない。消費者権利の保護の道は暗く、違約などの代償が小さ過ぎる。高額の賠償なしに、マクドナルドが自主的にコーヒーの温度を下げるとは思えない(*1)。
中国大陸部でのみ味千ラーメンの「体質が変わった」のはある意味、「南橘北枳*2」ということではないだろうか。

*1 1992年にニューメキシコ州のマクドナルドでコーヒーをこぼして火傷をした事件。
  64万ドルの損害賠償の判決が出た(最終的に和解で解決)。 
  これ以降、VERY HOT! の表示をしている。

*2 南橘北枳
  中国江南で産する橘はたいへんな美味であるが、淮水以北に植えると橘は枳(からたち)となり、
  味が全く異なってしまう。環境が変われば性質も変わってしまう、という意。

  出典
『晏子春秋』雑下

 

 

 

韓国与党ハンナラ党は11月22日、国会で韓米FTA批准案を強行可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

米国側は10月12日に議会が可決している

李明博大統領は29日にも批准案に署名する方針で、関係閣僚会議で来年1月1日の発効を目指す準備の徹底を指示した。
野党は強行採決に猛反発し、予算案の審議拒否など対決姿勢を強めている。

政府側は米韓FTAによる農業分野などの被害対策の再点検に乗り出し、反対派への配慮を示す。

ーーー

韓米FTA交渉は2007年4月2日に妥結した。最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。
なお、コメについては対象外となっている。(現在も)

2007/4/4 米韓FTA妥結 

しかし、自動車関連などで米国内の反対が強く、批准されないままとなっていた。

2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、米国でもムードが変わり、争点を話し合うための通産相会議が11月に行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

両国は
・米国の韓国産自動車関税撤廃期間の延長
・自動車セーフガード
・自動車部品関税払い戻し上限制の導入
・韓国の米国産自動車安全基準自己認証の拡大--などをめぐり、かけ引きを行ってきた。

また米国は、
米国産牛肉の輸入範囲を「生後30ヶ月以上」にも拡大すること、検疫条件を緩和することを要求した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂 

李大統領は交渉は決裂していないと強調、オバマ大統領もと早期の最終決着を目指す意向を表明した。

最終的に、米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れ、その代わり、韓国は自動車で大きな妥協を行い、2010年12月3日に交渉が妥結した。

韓国は米国での韓国製自動車の関税撤廃ペースを遅らせ、非関税障壁とされた安全基準、燃費基準でも妥協した。
韓国内の反発に対応して、韓国政府は韓国側が得た成果を強調した。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

米上下両院は2011年10月12日、韓国とのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。

2011/10/14 米議会、韓米自由貿易協定を可決 

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韓国では農業団体などは当初から強硬に反対していたが、韓国野党は、追加交渉で利益の均衡が崩れたとして反対している

特に、野党や一部市民団体は「ISD条項」が、韓国の国益を著しく損ねるとして批判している。(末尾の付記参照)

ISD(Investor State Dispute Settlement:投資家対国家紛争仲裁制度)は、投資家が相手国政府の政策により被害を受けた際、当該政府を国際投資紛争センターに提訴できる制度。

野党などは、同センターが世界銀行のもとで設置され、米国の影響が強いなどとして「韓国には一方的に不利な条項」と批判している。

付記 本条項は最初から入っていた。

李明博大統領は11月15日、行事以外では就任以来初めて韓国の国会を訪問した。
与野党の代表との会談で大統領は、ISD条項について、「国会が米韓FTAを批准したら、3カ月以内に米政府にこの条項の改定について米国と交渉する」と約束した。

韓国紙は、問題は「米韓FTA」が政治問題化してしまったことだとしている。

韓国では2012年春に総選挙、12月に大統領選挙が実施される。
2つの選挙が同じ年に実施されるのは20年に1度のことで、与野党間の対立が激しくなっている。

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韓米FTAでは、市場開放による打撃を受けるのは農漁業と製薬業とされる。

農林水産食品部は、韓米FTAの発効により、農業被害が15年間で約8200億円、水産業への被害は約300億円と推定する。
農業で被害が最も大きいのは畜産業で、15年間に約4900億円で、韓牛(韓国在来種の肉牛)の生産が大きく減少する見通し。
コメについては対象外となっている。 

 

韓国政府は農漁業への被害を軽減するため、2010年8月に農漁業分野に約1兆4800億円を投入すると発表した。国会の韓米FTA批准案の審議の過程で、与野党が対策の強化で合意しており、関連予算はさらに膨らむ見通し。

韓国政府はまた、農漁業従事者に対する被害補填給付金の給付基準を緩和した。
今後は農作物価格が平均価格の85%程度に下落すれば、給付金を支給する。

畜産業を発展させるためには、10年間で約1700億円規模の畜産業発展基金を創設する。

製薬業界が懸念するのは「医薬品許可・特許連係制度」の導入で、多国籍製薬会社が韓国の製薬会社の後発医薬品や改良新薬をめぐり、特許侵害訴訟を起こせば、直ちに許可手続きを中断しなければならない。
このため、韓国の製薬会社は後発医薬品、改良新薬の製造が難しくなる。

逆に、自動車部品に対する関税(米国で最大4%)が即時撤廃され、米自動車メーカーに対する輸出が増えると期待される。
自動車と関連部品の輸出増大効果は年間約7億2000万ドル前後と予想される。

繊維業界は平均13.1%の米国側の輸入関税廃止で、中国、インドに比べ、価格競争力が大きく改善すると期待される。

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韓国はTPP交渉国のほとんどとFTAを締結済または交渉中で、現在のところ、TPPへの参加の意向はない。

  締結済み:EU、欧州自由貿易連合(EFTA)、ASEAN10ヵ国、シンガポール、インド、米国、チリ、ペルー

  交渉中:カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、GCC(湾岸協力会議)、コロンビア、トルコ

なお、日本と韓国との交渉は7年前から中断している。 

韓国は中国とのFTA交渉を進める方針。

 

付記

11月25日付の河野太郎ブログはISD条項について述べている。

この条項は、海外に投資している日本企業の利益を守るのに役立つので、1978年の日本エジプト投資協定以降に結ばれた25本の投資協定では、日本フィリピンEPAを除き、全てにおいて投資家対国家の紛争手続(ISDS)規定が含まれている。

現実に、日本政府が訴えられたことはなく、日本企業が外国政府を訴えたことはある。

NAFTAでのメキシコ政府が訴えられた例は、メキシコ政府が外資企業を差別的に取り扱ったケースであり、カナダの例も、規制が外国企業に一方的に負担を強いるものであっただけでなく、カナダ連邦政府の規制そのものが国内の手続違反だとして連邦政府が州政府に訴えられて敗訴している。

ISDS条項は、日本がTPP交渉に参加することを妨げるものではまったくない。

 

東電と政府は、福島第一原発で新たに事故が起きた場合の損害賠償に備え、東電が1200億円を供託する方向で検討している。
事故に備えた従来の損害保険の契約が来年1月15日で切れるが、損保各社が契約更新をしない可能性が高く、「無保険」状態では、廃炉に向けた作業もできなくなるため。

原子力損害の賠償に関する法律では、原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならないとなっている。

一般の原子力損害については損害保険会社の原子力損害賠償責任保険契約に入り、責任保険契約によつては埋めることができない原子力損害(=地震、噴火、津波の自然災害)は政府が補償する原子力損害賠償補償契約を締結し、1工場当たり1200億円を賠償に充てることとなっている。

  原子力損害の賠償に関する法律

第三条 (無過失責任、責任の集中等)
 
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
 ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
 

第六条(損害賠償措置を講ずべき義務)
  原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。

第七条(損害賠償措置の内容)
  損害賠償措置は、・・・原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、・・・1工場当たり1200億円を原子力損害の賠償に充てる

第八条 (原子力損害賠償責任保険契約)
 原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を損害保険会社がうめることを約し、
・・・

第十条 (原子力損害賠償補償契約) 
  責任保険契約によつてはうめることができない原子力損害を
・・・政府が補償することを約し、・・・

今回の事故に関しては、地震や津波によるため原子力損害賠償責任保険契約の対象にはならず、原子力損害賠償補償契約により11月21日付で文部科学省から東電に1200億円が支払われた。

東電の中間決算では特別損失に損害賠償として-8,909億円が計上されたが、これは賠償見込み額 10,100億円から賠償補償の1,200億円を控除したもの。

現在の原子力損害賠償責任保険契約は来年1月15日に期限が来るため、通常なら契約を更新する。

しかし、福島第一原発は事故で設備が大きく破壊されているため、損保23社でつくる「日本原子力保険プール」は、「原発事故後の契約はリスクが高い」として、民間保険契約を更新しない方向で検討している。

原子力損害の賠償に関する法律第六条では「原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない」となっており、廃炉へ向けた核燃料の取り出し作業などが認められない可能性がある。

運転等とは、原子炉の運転、 加工、再処理核燃料物質の使用使用済燃料の貯蔵、 「核燃料物質等」の廃棄

このため、第七条で規定する損害賠償措置のうちの「供託」により、1工場当たり1200億円を原子力損害の賠償に充てるもの。
東電は1200億円の現金や有価証券を法務局に供託し、事故が起きた場合にはこれを賠償に充てることとなる。

東電は通常なら保険料を支払うだけで済むところを、1200億円全額の支出が必要となる。

 


 

Sinopecは11月11日、ポルトガルの石油大手Galp Energia のブラジル子会社Petrogal Brasil の30%を48億ドルで取得したと発表した。加えて、Petrogal BrasilのGalp Energia からの借入金の13億ドルの30%分を肩代わりする。

Sinopecでは、今後の開発投資の30%も含めると、最終的な投資は51.8億ドルになるとみている。

Petrogal Brasil はブラジルでPetrobras と組んで、21のプロジェクトに参加している。その中でSantos Basinのpre-salt層(深海の海底の岩塩層の更に下の層)にあるLula油田が最も重要である。

1974年の革命で国有化されたポルトガルの4社、SACOR、CIDLA、SONAP、PETROSULが1976年に合併してGALPが設立された。
1999年にポルトガル唯一のリファイナリーを持つGALPと、天然ガスの輸入・販売会社の
Gás de Portugalが合併し、Galp Energiaとなった。2006年に上場。

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CNOOCが50%出資するBridas CorporationがBPからアルゼンチンのPan American Energyの60%持分を買収して100%子会社にする計画は取りやめになったが、これは買い手側になんらかの思惑があってのことと思われる。

2011/11/14 BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し

これは別として、中国勢の南米の資源を求めての動きは続いている。

  Sinopec によるOccidental Petroleum からのアルゼンチンの石油権益買収

2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収

  SinochemによるStatoilからのブラジル油田権益買収

2010/5/28 中国中化集団、ブラジル油田に30億ドル出資

  CNPC によるベネズエラのOrinoco地区の油田権益40%取得(9億ドル)

2010/2/15 国際石油開発帝石と三菱商事、ベネズエラで石油開発に記載

 

 

イラク政府は11月27日に、Shellと三菱商事との間で、イラク南部の3つの油田で随伴ガスを収集する契約を締結する。

イラク国営のSouthern Gas Companyが51%出資するBasra Gas Company を設立、Shellが44%、三菱商事が5%を出資する。契約期間は25年間。

政府のスポークスマンは11月15日、内閣がこれを承認し、170億ドルの計画に青信号を与えたと発表した。

JVはイラク南部の3つの油田、Rumailah、Zubair、West Qurna 油田から日量20億立方フィート以上の随伴ガスを回収する。

回収したガスを天然ガスやLPGなどに精製するプラント2基を建設、2013年に操業を開始する。 

今後さらに回収量を増やし、イラクにLNG基地を建設し、日本を含む世界中に年400万トンを輸出する計画で、プロジェクトの総事業費は170億ドル、 うちLNG輸出のための投資が44億ドル。
日本貿易保険がイラク向けとしては21年ぶりに損害の一定割合を補償する保険を付与する。

これらの油田は第一次開放対象で、状況は以下の通り。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
 開発担当
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
BP/CNPC
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300 ExxonMobil/Shell
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240 Eni/Occidental Petroleum/KOGAS

 


Shellは2008年からイラク政府との間で燃やされている随伴ガスを回収する件で交渉してきた。
本JVに関する予備契約は7月12日に調印された。

イラクは現在、1日当たり500万ドル相当のガスを燃やしてしまっている。
原油生産の増加に伴い、フレアする随伴ガスは1994年の30億m3 から100億m3 にまで増加している。

 

 

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用死を巡り、患者3人の遺族が輸入販売を承認した国と輸入販売元のAstraZenecaに賠償を求めた訴訟の15日の控訴審判決で、東京高裁は遺族側主張を全面的に退けた。

イレッサ(一般名はGefitinib)は英国のAstraZenecaが開発した肺がん治療薬

厚生労働省は2002年7月、世界に先駆けて、申請から半年で輸入承認した。
2002年8月に発売され、2カ月の間に、1万人以上の患者に投与された。

がんの増殖、転移に関係する分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」で、正常細胞を傷つける抗がん剤より副作用が軽いと期待されたが、市販開始直後から間質性肺炎などによる副作用死が相次いだ。

販売を始めた2002年7月には添付文書の「重大な副作用」の4番目に致死性の肺炎が記されていたが、副作用死が相次いだため、厚労省は同年10月、全国の医療機関に緊急安全性情報を出し、肺炎の副作用を「警告欄」に記載するよう改めた。

これまでの多くの研究・調査の結果から、以下のことが明らかになっている。
・ゲフィチニブは上皮成長因子受容体に特定の遺伝子異常を有する人に対して高い有効性を示す。
・日本人肺癌患者の約30~40%程度にこの遺伝子異常が認められる。

2011年3月末時点での死亡者数は,報告されているだけでも825人にも上っている。

ーーー

これまでに大阪地裁と東京地裁で裁判があった。

両地裁は和解勧告を行ったが、原告・被告共に和解を拒否した。

両地裁は、厚生労働省がイレッサを承認し、同社が販売を始めた2002年7月から、同省が「緊急安全性情報」を出した同年10月15日にまでに服用し、副作用で間質性肺炎を発症した患者5人(うち4人死亡)について、国と同社には救済する責任があるとの見解を出し、原告らへの和解金支払いを提示した。和解金の額は示されていない。

2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

大阪地裁は2011年2月25日に以下の判決を下した。

アストラゼネカ:警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
    緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
    原告9人に計6050万円の賠償。2002/10以降服用し死亡した男性の請求は棄却。

政府:添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
    国家賠償法上の違法はない。

原告側は国の責任に関して控訴した。

東京地裁は2011年3月23日に以下の判決を下した。

患者2人について国とア社の責任を認め、計1760万円の支払いを命じる。
死亡患者3人のうち1人については、発売3カ月後に説明書の「警告」欄で副作用が注意喚起された後に服用しており、請求は退けられた。

裁判長は「国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識していた」と指摘した。
そのうえで「安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある」との見解を示し、間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応を違法と結論付けた。

原告・被告ともに控訴した。

2011/3/26 イレッサ訴訟、東京地裁は国の責任も認める

今回は東京地裁の判決に関する控訴審の判決である。
高裁は、9月の第1回口頭弁論から計2回のスピード審理で判決を言い渡した。

判決骨子◆
日本人に間質性肺炎の発症率が高く、死亡もあり得るという副作用を考慮しても、イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

・イレッサが治療困難な肺がん患者に専門医が処方する薬剤だった
・専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識できた
・国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない
 (がんの進行による死亡の可能性もある)

アストラゼネカに欠陥ある薬を輸入販売した責任はなく、国の不作為責任は論じるまでもなく認められない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない

ーーー

今回の判決での国の責任に関しては「患者の保護」「予防原則」の観点から厳しい批判がある。

「予防原則」は、サリドマイドなどの薬害や水俣病などの公害を教訓に確立された。

薬の副作用や公害の健康被害は、因果関係が科学的に解明されるまで時間がかかる場合が多いため、因果関係がはっきりしない段階でも、行政や企業は予想される最悪のケースを念頭に対策を講じることが重要との考え方。

東京高裁の判決は、添付文書への副作用の記載が違法かどうかについては、臨床試験で起きた有害事象と薬の投与との間に「因果関係がある」のか、「疑いがある」というレベルなのかを厳密に区別して判断すべきだとした。

 

なお、大阪訴訟の控訴審は10月に第1回口頭弁論が開かれ、12月15日に第2回弁論がある。

 

 

 

米国務省は11月10日、カナダ・アルバータ州の原油を米南部テキサス州などの製油所に運ぶパイプライン計画 Keystone XL を2012年の大統領選挙後まで凍結すると発表した。 

付記

オバマ大統領は2012年1月18日、これを認可しないと発表した。
安全性や環境保全などが完全には保証できないとの見解を示した。


オバマ大統領は3月22日、CushingからGulf Coastまでのパイプラインの建設の推進を決め、関係する役所にすみやかに認可するよう指示した。
 共和党の
ベイナー下院議長は「大統領の認可さえ必要としないパイプラインの部分で功績を上げようとしている」と批判した。

中西部ネブラスカ州の水源地帯を経由することなどから環境団体が計画中止を要求しており、オバマ政権はSand Hills地域を避ける新ルート検討も進める。

今後の計画は2013年以降に決定される。大統領は「米国民の健康や安全、環境への影響に懸念があり、疑問に答える時間が必要だ」とした声明を発表した。

大統領はこのパイプライン計画で、石油の安定的なソースと数千人の雇用を求める声と、大統領がこれを認めた場合には来年の大統領選では支持しないとする環境保護団体のおどしの挟み撃ちとなった。

オバマ大統領は大統領選の争点となりそうな問題を多数、凍結している。

・スモッグの基準のレビューを2013年まで
・北極海の深海油田のリースを少なくとも2015年まで
・発電所の石炭灰の新基準を取りやめ

TransCanada 社が建設計画中のKeystone XL パイプラインは、カナダのオイルサンドを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、現在検討中のKeystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。

このうち、Phase 4が問題となっている。

ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。

ネブラスカ州の責任者や住民はSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表していた。

 

オイルサンドについては 2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」

TransCanada は国務省と共同で新ルートを探すが、遅延の結果、計画が中止となり、数万人の建設従業員その他の仕事がなくなり、数十億ドルの税収入がなくなるかもしれないとし、その場合、大量の石油を輸入せざるを得なくなると述べた。

 

なお、TransCanadaは、Cushingから メキシコ湾岸に延長するKeystone XL Phase Ⅲについて、政府の認可次第で来年初めには建設できるとの見通しを示している。

ーーー

カナダのEnbridge Energy Partners もカナダの石油をシカゴ経由でCushingまでパイプラインで運んでいる。


同社はConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得した。

残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたることになるが、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していたSeaway Pipelineを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送する。

2011/11/17 WTI原油価格急騰

 

 

 

 

 

 

東京電力は11月4日、中間決算を発表した。
今回初めて、損害賠償額が計上されたが、年度合計では支援機構からの支援で全額が相殺される。

(単位:百万円、配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 2,710,744 235,808 201,381 92,288 30  
11/9 2,502,752 -60,600 -105,748 -627,299 0  
増減 -207,992 -296,408 -307,129 -719,587 -30  
             
10/3 5,016,257 284,443 204,340 133,775 30 30
11/3 5,368,536 399,624 317,696 -1,247,348 30 0
12/3 5,315,000 -305,000 -400,000 -600,000 0 0


経常損益では前期比で約3100億円の減益となったが、主な内訳は以下の通り。

電気料収入減  ...... -2,200億円
燃料費増   -2,100億円
購入電力増ほか   -400億円
固定費減    1,500億円
その他収入増   100億円
合計   -3,100億円

特別損益は-5,078億円となった。

・災害損失    -1,850億円   前年度 -10,205億円、累計 -12,055億円)
         
・損害賠償    -8,909億円   (見込み額 10,100億円 マイナス 賠償補償* 1,200億円)
・支援機構より     5,436億円    
 (差し引き)   -3,473億円)   この額について支援機構が11月4日に資金交付決定、下期に特別利益
(下記参照)   
         
・有価証券売却益      245億円    
         
差引合計    - 5,078億円     

* 通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(発電用原子炉の場合は通常1200億円)まで保険金が支払われる。
 地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われる

ーーー

枝野経済産業相は11月4日、東京電力の合理化策を盛り込んだ緊急特別事業計画を認定した。

これで事故の賠償費用として、東電が原子力損害賠償支援機構から8909億円の資金支援を受けることが決まった。
東電は社員やOBの年金削減などで10年間に2.5兆円を超える経費を削減、発電施設を含む資産売却を進める。

来春をメドに、より抜本的な「総合特別事業計画」に改定する。
電気料金値上げの是非、廃炉への対応、東電の資本増強といった懸案は総合計画に盛り込む。

要旨は以下の通り。

【原子力損害の賠償】

  東電は要賠償額の見通しを1兆1010億円とし、保険収入を控除した残り 8,909億円の資金援助を申請した。
  損害状況把握の進展など状況が変化した場合は、要賠償額見通しを変更申請する。

【東電の事業運営に関する計画】

(1)事業および収支の中期的な計画

 東電は「改革推進チーム」を編成。機構は東電社内の常駐スペースに職員を派遣する。
 機構・東電のトップが参加する「経営改革委員会」を設置する。

(2)経営合理化

 東電と機構は11月中に「アクションプラン」を策定し、直ちに具体的施策を実行する。

 資材・サービス、燃料などの調達コストや人件費を全面的に見直し、11年度は2374億円のコスト削減を実行。
 人員数は13年度末までに連結で11年度期初比約7400人、単体で同約3600人減らす。
 社員の年収一律減額措置は、管理職25%、一般職20%を当面の間継続。
 確定給付企業年金は現役1.5%、受給権者(OB)2.25%以下に再評価率の下限を引き下げる。
 終身年金も30%削減に向けて取り組み、12年度中の新制度実施を目指す。

 原則3年以内に不動産は2472億円相当、有価証券は3301億円相当、関係会社は1301億円相当を売却。
 関係会社328億円相当は11年度に売却を目指す。

(3)賠償資金確保のための協力要請

 総合特別事業計画認定までの間、全取引金融機関に対して本計画認定時の与信を保つことを要請。
 日本政策投資銀行に賠償金支払いのため3000億円の短期融資枠設定を要請。
 主要取引行には震災後の緊急融資1兆9650億円の資金使途追加を要請。

(4)円滑な事業運営

 電力供給力不足に対応するため、11年度は緊急電源設置などで7199億円の設備投資を実施。

(5)経営責任明確化

 役員報酬の減額措置を継続。
 総合特別事業計画では、役員退任や退職慰労金放棄などさらなる経営責任明確化のための方策について結論を得る。

【資金援助の内容】

(1)東電に対する資金援助の内容および額

 機構は8909億を、損害賠償の履行に充てる資金として今年度交付。

(2)国債の交付希望額

 11年度第3次補正予算が成立した場合、合計5兆円の国債交付を希望。

 

 

中国国家発展改革委員会(NDRC)は11月14日、独禁法違反で製薬会社2社に合計で約110万ドルの罰金を科したと発表した。

摘発されたのは、山東省の濰坊順通医薬有限公司濰坊華新医薬貿易有限公司の2社。

NDRCによると、両社は6月9日に、高血圧治療薬の原料の塩酸プロメタジンのメーカー2社とエージェント契約を締結した。
契約では原料メーカーに両社の了承なしに第三者に原料を販売することを禁止している。中国には他にこれのメーカーはない。

この契約締結後に、両社は原料の価格を200人民元から1,350人民元に大幅値上げした。
多くの高血圧治療薬メーカーは、原料価格の大幅アップを受け、生産を止めざるを得なくなった。

そして原料独占の結果、この治療薬は需給がタイトとなった。

NDRCは両社に対し、違法行為を止め、原料メーカーとの契約を解消することを命じた。

ーーー

中国の反壟断法(独占禁止法)は2008年81日に施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

執行機関は中国国家発展改革委員会、商務部、工商行政管理総局の3つとなっている。

発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当

商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
       参考 
2011/10/21 中国の企業統合に関する独禁法施行状況

工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行
      (価格独占を除く)

反壟断委員会(公正取引委員会に相当)は2008年8月1日の施行日当日になって、ようやく設立が発表された。
委員会は国務院直属の組織で、業務は、独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整となっている。

10月12日の公取委競争政策研究センターセミナーで時建中・中国政法大学教授は以下の通り述べた。

執行を3機関が行うのは妥協の産物である。
実際には事業結合も独占も値上げの弊害が問題となるため、分けるのは不合理。
3機関に分かれるため、それぞれの人員も少ない。
早く
反壟断委員会の執行に切り替えるべきだ。

なお、独禁法の前に、中国には価格カルテルを禁止するPrice Law of China が制定されている。

その第4条は次の通り規定している。
 事業者は合意、決議、調整その他不正な方法で価格を決めたり、維持したり、修正したりしてはならない。

その第14条は以下のような異常な価格設定を禁止している。
 ・他と共謀して価格コントロールを行い、他の事業者や消費者の利益を損なうこと
 ・価格を過度に上げるために、値上げ情報をでっち上げたり、広めること
 ・法や規則に反して暴利をあげること
 ・その他 

2011/5/10 中国、値上げ計画の情報流布でUnileverに罰金 

実際には、独禁法施行までは、業界で価格を決め、更にそれを発表する慣行があったという。

NDRCは2007年に、中国ラーメン麺協会の価格カルテルを有罪とした。

ラーメン麺協会は原料の油や小麦の値上がりを受け、2006年から2007年の6ヶ月間に3回の会議を行い、統一した値上げを決めた。
協会はその業界誌に会議の議事録を掲載、値上げのニュースが消費者にパニックを起こし、ラーメン麺の大量買い占めが起こったという。

独禁法施行後は、発表はなくなったが、業界での価格決定は行われている模様。

なお、中国の独禁法でもLeniency制度があるが、第一通報者は100%、第二は50%以上、第三は50%以下の減免を与えることが出来るという規定だけで、具体的な細則はなく、実際に減免が与えられるかどうか不明なため、実効はない模様。

 

 

WTI原油価格が高騰している。

10月4日に本年最安値の75.67$/bbl をつけた後、上昇に転じ、10月14日には90$を超えた。
11月7日には95.52$、15日には99.37$となり、16日に100$を超え、一時102.89$を付け、終値は102.59$となった。
 (その後の時間外取引で103.37$となった。) 

付記 その後、17日は98.82$、18日は97.41$と下落。
   Cushing の余剰在庫解消(下記)が期待したほどは見込めないのではないかとの懸念。

他方、北海ブレントは北海油田のトラブル、リビア紛争による軽質・低硫黄の高品質原油の途絶で急騰し、WTIとの格差は6月央には22$、10月央には一時28$近くにまでなった。

しかし11月16日は、欧州債務問題への懸念やリビアの石油生産増の期待で、終値は111.88$に下がり、WTIとの格差は9.29$にまで縮まった。

最近までの北海ブレントとWTIの価格差にはいろいろの理由がある。
基本的には米国経済の低迷があるが、WTI原油の受渡し制度の問題や、欧州と異なり、リビア原油の影響がほとんどないことなどである。

WTI(West Texas Intermediate)は、米国テキサス州で産出される原油。
生産量は多くないが、米国の石油先物市場であるNYMEXが一日数億バレル の取引を行っているため、世界の指標となっている。

WTI原油の市場取引の大部分は売買差額のみの決済で、現物の受け渡しはほとんど発生しないが、現物はオクラホマ州Cushingにある貯蔵庫のみで受渡がされることとなっている。

付記

20世紀の初め、Cushingは近辺の油田の開発・製造の中心で、2つの製油所が稼働していた。

その後、油田が枯渇し、重要性は低くなったが、無数のパイプラインや石油タンク群が残っており(市のニックネームは "Pipeline Crossroads of the World")、このためNYMEXが1983年にWTI原油の公式受け渡し場所とした。

CushingにはWTI原油のほか、ノースダコタ州のオイルシェールなどが集まり、更に、カナダ・アルバータ州の原油やオイルサンドを処理した合成原油が下記の Keystone XL PipelineやEnbridge Energyのシカゴ経由のパイプラインで運ばれている。
 (なお、Keystone Pipeline はCushingの北のネブラスカ州Steel Cityから分岐して東のイリノイ州Patokaにも伸びている。)

他方、Cushing から大需要地かつ輸出基地のあるメキシコ湾岸地域に送り出すパイプラインは存在しないため、割高なタンクローリーや列車、バージを利用するしかない。

昨年末からCushing
の在庫が積みあがっており、投機家の思惑も重なって売り浴びせられていた。

なお、米国の石油在庫は現在減少基調にあり、Cushingの在庫は、4月に付けた史上最高水準から25%も減っている。 これが最近の価格上昇の一つの理由である。

11月16日のWTI原油価格の急騰の理由に、Cushingの在庫に影響を与える発表があった。

カナダのパイプライン運営会社 Enbridge Energy Partnersは11月16日、米石油大手ConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得することで合意したと発表した。
残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたる。

Seaway Pipeline はこれまで、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していた。

EnbridgeとEnterprise Productsは同日、このパイプラインを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送すると発表した。

Seaway Pipelineの輸送能力は当初は15万bbl/dだが、2013年には40万bbl/dに拡大する。

更に、カナダからのKeystone Pipelineを運営するTransCanadaも、Cushingからメキシコ湾岸に延長する Keystone Pipeline (Phase 3)について、政府の認可次第で来年初めには建設できるとの見通しを示した。

これらの措置が実現すれば、WTIの価格圧迫要因となっているCushingの余剰解消につながるとしてWTI価格が急騰した。

付記

11月25日の日本経済新聞はConocoPhillipsがSeaway Oil Pipelineの権益を売却した背景について述べている。

Seaway Oil Pipelineの逆送を期待する声は以前から多かったが、ConocoはWTI価格が安い方が精製マージンが大きいため、これに難色を示していた。
しかし、
TransCanadaのKeystone PipelineのPhaseⅢ(Cushing→Gulf Coast)が完成するとSeaway Oil Pipelineの資産価値が低下する恐れ(6.7億ドルとの試算)があるため、高値で売り抜けた。

 

 

11月13日午後3時24分ごろ、東ソー・南陽事業所(山口県周南市)構内にある第二VCMプラント(年産能力55万トン)で爆発・火災が発生、社員1人が死亡した。
14日午後3時30分に消防が鎮火宣言した。

同工場では13日6時頃、EDCプラント不具合が生じ稼働を停止、点検中だった。
10人が午前6時ごろから、不具合箇所から約100メートルの場所で、塩ビモノマーなどを貯蔵タンクに一時抜き出す移液作業をしていたという。
塩ビモノマーを精製する工程に直径10メートルの空洞ができており、ここで爆発が起きたとみている。

2次災害を防ぐためなどとして、同事業所全体の約8割のプラント稼働を緊急停止した。

 付記

東ソーは11月18日、南陽事業所の排水口からの排水に含まれるEDCが排水基準値を超過していることが判明したと発表した。
漏えいしたEDCが冷却用散水とともに流出したと推測される。
同社では冷却用散水を停止し、土嚢を構築してプラント外への流出を防止する。

同社はわが国最大のVCMメーカー。
PVCでは大洋塩ビに属し(ペーストは東ソーとして製造販売)、各工場にVCMを供給するとともに、隣接する徳山積水にも供給するほか、中国や東南アジア子会社向けを含め、大量の輸出を行っている。

能力は以下の通り。(単位:千トン)

VCM     PVC
南陽 No.1 250
No.2 550
No.3 400
小計  1,200
四日市 254
合計 1,454

 

 
大洋塩ビ
  東ソー     68%
  三井化学 16%
  電気化学 16%
電気化学・千葉          90 VCM
京葉モノマーとスワップ
(パイプ)
東ソー・四日市 310 東ソー四日市からパイプ
三井化学・大阪 158 南陽からタンカー輸送
小計 558  
東ソー
(ペースト塩ビ)
南陽 28 パイプ
徳山積水工業
  積水化学 70%
  東ソー    30%
南陽 114 東ソー南陽からパイプ
合計 700  

事故を起こした第二VCMは、山口県などから停止命令を受けた。

残る2基も法定の定期修理などで現在は停止しており、国内PVCの減産は必至で、海外のPVC子会社も原料調達で対応を迫られる。

 

 


 

宇田川社長は記者会見で、「損失額はまだ計算できないが、業績の下方修正を行う可能性がある」とした上で、100億円単位の復旧費用がかかる見通しを示した。

東ソーは11月15日に取締役会を開催し、今回の事故による当期の業績が不透明であることから、第2四半期決算発表で3円とした中間配当を無配とし、同じく3円としていた期末配当は未定に修正した。

 

ーーー

付記 11月18日夜 発表

同事業所内の塩ビモノマー設備は現在、1-3号機すべてがなお停止している。
第一塩ビモノマー設備(年産25万トン)は定修のため停止中。
第三塩ビモノマー設備(40万ン)は、火災事故の原因特定が必要なことから自主的に停止している。

同事業所のその他のプラントでは、東ソー・エスジーエムの石英ガラス工場に建屋・設備損傷の被害が生じ、現在運転停止中。

また、二次災害防止のため、以下の製造設備、連結子会社工場が現在自主的に停止している。今後、安全を確認し次第、順次再開する。

【停止中】
・ ポリエチレン(LDPE)
・ クロロプレンゴム(CR)
・ クロロスルフォン化ポリエチレン(GSM)
・ ペースト塩ビ
・ ジルコニア
・ 一酸化炭素
・ アニリン
・ 日本ポリウレタン工業

【稼動中】
・ 電解(最低ロードで稼働中)
・ 動力
・ セメント
・ 重曹
・ 臭素
・ エチルアミン
・ ハイシリカゼオライト
・ 東ソー ・ ファインケム
・ 東ソー ・ エフテック
・ 東ソー有機化学
・ 東ソー ・ シリカ
 

付記 ペースト塩ビは12月後半に生産開始した。 

なお、同社が2012年2月3日に発表した損益予想では、
 第二・第三VCMは3月末まで停止
 プロセスの異なる第一VCMは3月1日の運転再開
を想定している。
 


 


 

野田首相は11月13日、APEC首脳会議でTPP交渉への参加を表明した。カナダやメキシコも参加の意向を示した。

TPP(Trans-Pacific Partnership)はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国(通称 P4)が域外への経済的影響力を向上させることを戦略的な目的として締結し、2006年5月に発効した。

他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定しているが、実際は下記のとおり順次撤廃する。

ブルネイ チリ ニュージーランド シンガポール
発効時 92% 発効時 89.39% 発効時 96.5% 発効時 100%
2010年 残り1.7% 2009年 残り0.94% 2008年 残り0.03%  
2012年 残り1.1% 2011年 残り0.29% 2010年 残り1.54%  
2015年 残り5.2% 2015年 残り0.12% 2015年 残り1.92%  
  2017年 残り9.26%    

4か国に加え、米、豪、マレーシア、ベトナム、ペルーの合計9か国が交渉を行っており、既に市場の相互開放に向けた大枠を確認した。

今回の参加表明に当たり、野田首相は「TPPはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の基礎となる」と強調した。

FTAAPはアジア太平洋経済協力(APEC)の加盟国全域(21カ国:下図の赤字表示)において、自由貿易圏を構築する構想の名称。

2010年のAPECの首脳宣言「横浜ビジョン」では、下記のように記載されている。
「我々は、APECの地域経済統合の課題を進展させるための主要な手段であるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けて具体的な手段をとる。
FTAAPは,中でもASEAN+3ASEAN+6及び環太平洋パートナーシップ(TPP)協定といった、現在進行している地域的な取組を基礎として更に発展させることにより、包括的な自由貿易協定として追求されるべきである。」

 

関係各国の立場は以下の通り。

TPP交渉参加国 

ASEAN 10か国

 

中国は米国に対抗するため、ASEANを核とする自由貿易圏の構築で巻き返しを図る。
 中国はASEAN+3のFTA締結を主張しているが、日本は中国を警戒、ASEAN+6を主張している。

ASEAN+6のFTA締結状況は以下の通り。

  ASEAN 日本 中国 韓国 インド 豪州 NZ
ASEAN ーーー
日本 ーーー        
中国   ーーー      
韓国     ーーー    
インド   ーーー    
豪州         ーーー  
NZ         ーーー

             * 韓国は米国(及びEU、EFTA)とFTAを締結している。

 

TPP協定交渉では、21分野が交渉対象となる。

(1)物品市場アクセス

(作業部会としては、農業、繊維・衣料品、工業)
物品の貿易に関して、関税の撤廃や削減の方法等を定めるとともに、内国民待遇など物品の貿易を行う上での基本的なルールを定める。

参考 2010/11/10  TPP参加と農業問題 

(2)原産地規則 関税の減免の対象となる「締約国の原産品(=締約国で生産された産品)」として認められる基準や証明制度等について定める。
(3)貿易円滑化 貿易規則の透明性の向上や貿易手続きの簡素化等について定める。
(4)SPS(衛生植物検疫)
Sanitary and Phytosanitary Measures
食品の安全を確保したり、動物や植物が病気にかからないようにするための措置の実施に関するルールについて定める。

参考 WTO/SPS協定

(5)TBT(貿易の技術的障害)
Technical Barriers to Trade
安全や環境保全等の目的から製品の特質やその生産工程等について「規格」が定められることがあるところ、これが貿易の不必要な障害とならないように、ルールを定める。

参考 貿易の技術的障害に関する協

(6)貿易救済(セーフガード等) ある産品の輸入が急増し、国内産業に被害が生じたり、そのおそれがある場合、国内産業保護のた
めに当該産品に対して、一時的にとることのできる緊急措置(セーフガード措置)について定める。
(7)政府調達 中央政府や地方政府等による物品・サービスの調達に関して、内国民待遇の原則や入札の手続等のルールについて定める。
(8)知的財産 知的財産の十分で効果的な保護、模倣品や海賊版に対する取締り等について定める。
(9)競争政策 貿易・投資の自由化で得られる利益が、カルテル等により害されるのを防ぐため、競争法・政策の強化・改善、政府間の協力等について定める。
サービス (10)越境サービス 国境を越えるサービスの提供(サービス貿易)に対する無差別待遇や数量規制等の貿易制限的な措置に関するルールを定めるとともに、市場アクセスを改善する。
(11)商用関係者の移動 貿易・投資等のビジネスに従事する自然人の入国及び一時的な滞在の要件や手続等に関するルールを定める。
(12)金融サービス 金融分野の国境を越えるサービスの提供について、金融サービス分野に特有の定義やルールを定める。
(13)電気通信サービス 電気通信サービスの分野について、通信インフラを有する主要なサービス提供者の義務等に関するルールを定める。
(14)電子商取引 電子商取引のための環境・ルールを整備する上で必要となる原則等について定める
(15)投資 内外投資家の無差別原則(内国民待遇、最恵国待遇)、投資に関する紛争解決手続等について定める。
(16)環境 貿易や投資の促進のために環境基準を緩和しないこと等を定める。
(17)労働 貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める。
(18)制度的事項 協定の運用等について当事国間で協議等を行う「合同委員会」の設置やその権限等について定める。
(19)紛争解決 協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続きについて定める。
(20)協力 協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うこと等について定める。
(21)分野横断的事項 複数の分野にまたがる規制や規則が、通商上の障害にならないよう、規定を設ける。

 

 

 

電気化学は11月8日、Sinochemに対し乾式アセチレン発生技術を供与したと発表した。
Sinochemは、この契約に基づき、平煤神馬集団に同技術のサブライセンスを行った。
他に中国の数社より当技術の引合いがあり、順次対応する予定。

Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業。

平煤神馬集団は、河南省、湖北省、江蘇省、上海、陜西省をはじめ、中国全土で事業展開している大型国有企業グループで、主要事業は石炭、ナイロン66、塩ビ、苛性ソーダなど。

中国石炭工業協会が2010年11月に発表した「中国石炭企業ベスト100」ランキングでは、
 第1位は神華集団
 第2位は河南煤業化工集団
 第3位は平煤神馬エネルギー源化工集団となっている。

乾式アセチレン発生設備は、粉砕したカーバイドと必要最小量の水を反応させてアセチレンガス発生させ、副生する消石灰を数%の水分を含む乾燥状態で排出することを特色とした設備。

  カーバイド法アセチレン

石灰石を焼いて生石灰に還元。CaCO3→CaO+CO2
生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、電極放電で得られる2,000度C以上の高温下でカーバイドを製造。 CaO+3C→CaC2+CO
カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造。 CaC2+2HO→C2H+Ca(OH)2

中国ではアセチレン法塩ビ生産の拡大で、カーバイドの生産量も増加している。

しかし、中国のカーバイドメーカーは年産5万トンに満たない企業が殆どで、その多くが非効率な小規模設備で生産しており、環境問題や電力不足の要因となっている。

中国政府は2004年以降、過剰能力、廃棄物対策、公害防止などの理由で、小規模設備の規制を続けてきた。

2006年5月、カルシウム・カーバイド工場について、年1万トン以下の炉、開放型の炉、環境基準に満たない炉は停止。
2010年8月、4万トン以下の多数の老朽カーバイド工場に停止命令が出された。

アセチレン法PVCについては、2004年5月に年産8万トン以下の新設を禁止、2005年12月にはこれを12万トン以下に変更した。

2008年11月に行われた第3回日中省エネルギー・環境総合フォーラムで、中国カーバイド工業協会から日本カーバイド協会に対して、環境・省エネ対策について打合せしたいとの申し入れがあったことがきっかけとなり、その後の工業会等での協議を経て、電気化学の乾式アセチレン発生設備の実績が認められた。

電気化学では、今般の技術供与が、同社が日本のカーバイド化学のパイオニアとして果たすべき社会的責任であると認識しているとしている。

中国ではカーバイド法PVCは70%以上を占めている。

なお、中では、2000-05年の5カ年計画で水銀法電解は廃止され、現在は使われていない。
 

 

 

BPは11月7日、Bridas CorporationからPan American Energy の持株60%の購入契約を終了するとの通知を受け取ったと発表した。

BPは2010年11月28日、アルゼンチン最大の原油輸出企業のPan American Energyの持株(60%)を、残り40%を保有するBridas Corporationに売却する契約を締結したと発表した。

Bridasは対価として70.6億ドルを現金で支払う。うち35.3億ドルを前払いとして12月に2回に分けて支払い、残りを2011年前半に予定される取引完了時に支払う予定であった。

Bridas CorporationはアルゼンチンのCarlos Bulgheroni氏傘下のBridas Energy Holdings が50%、中国のCNOOCが50%を保有している。

  2010/12/1 BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却

現時点でアルゼンチンと中国の独禁法当局の承認が得られていない。
契約では全ての条件が満たされない場合は、2011年11月1日以降、双方はいつでも契約を終了できることとなっている。

BPは、前受金として受け取り、 (売却益ではなく)短期債務として処理している35.3億ドルを11月14日に返金する。

BPは長期に保有してきた貴重な資産を取り戻してhappyとしており、当面は資金確保の必要がないため、非戦略的資産の売却のみとし、この売却の代わりに追加で資産を売却する計画はないとしている。

当初予定していた450億ドルの資産売却を2013年末までに延長する。

BPはまた、契約上、当局から独禁法上の認可などを得る責任はBridas Corporationのみにあるとし、Bridas を非難した。

CNOOCでは、Bridas Corporationは今後、これまで通り、40%株主としてPan American Energy に参加を続けるとし、CNOOCはBridas Energy Holdingsとのパートナーシップを強化し、アルゼンチンでの活動を更に拡大すると述べた。 

ーーー

本件は非常に不思議な話である。

当初は2011年前半に取引完了が予定されていたが、今まで延び延びとなった。
しかもその理由が、アルゼンチンと中国の承認が得られていないことという。

両国が何かを問題として認めなかったという事情はなさそうである。

通常は
なにかが問題の場合は、企業と当局が交渉して問題の解決を図るが、その動きもない。

この程度の買収が競争制限を起こすとみなされるとは考えにくい。
CNOOCのアルゼンチンでの活動の拡大を中国が承認をしないというのは理解できない。

買い手側が契約後に何らかの理由で解約を図り、解約料の支払いを避けるために、契約の期限が来るまで引き延ばした可能性がある。


ーーー

これは中国の石油会社が本年に買収に失敗した二番目のケース。

本年2月にPetroChinaがカナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドルで買収することで合意したと発表したが、6月に条件が折り合わず、交渉を中止している。

2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

 


 


 

 

 

三菱商事は11月10日、英国のAnglo American plc から同社が100%保有するチリの銅資産権益を保有するAnglo American Sur S.Aの株式24.5%を53.9億米ドルで買収すると発表した。 

Anglo American から打診を受けたものとされるが、Anglo American は別途、チリの国営資源大手チリ銅公団(CODELCO:Corporacion Nacional del Cobre de Chile)に株式の49%購入のオプションを与えており、三井物産がこの資金を供給する契約を締結している。今後、紛争を引き起こす可能性がある。(後述)

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。
現在の銅の生産量は年間約26万トンで、Los Bronces銅鉱山の拡張後(2012年フル操業)は合計生産量は年間約44万トンとなる。

Los Bronces銅鉱山:現在生産量 22万トン2012年 40万トン
   近隣にLos Sulfatos鉱区及びSan Enrique Monolitoト鉱区の有望未開発鉱区が存在

El Soldado銅鉱山:生産量 4万トン

Chagres銅製錬所:年間約14万トンの銅アノードを生産

ーーー

チリ銅公団(CODELCO)によると、同公団はAnglo American Surの株式の49%を取得する権利を有しており、そのために三井物産との間で短期つなぎ融資の契約を締結した。

三井物産の発表(10月12日)によると、三井物産はCODELCOとの間で、CODELCOによるAnglo American Surの最大49%の株式取得資金に関し、67.5億米ドルを上限とする短期つなぎ融資契約を締結した。

また、CODELCOが取得したAnglo American Sur 株式の半分を譲渡することによって返済する権利を借主に与える契約も締結した。

さらに、両社の多面的な関係を構築する一環として、両社は下記の銅売買契約を締結した。

銅売買契約
(1)期間   10年間 (2012年~2021年)
(2)年間平均買取数量   銅精鉱 65,000 DMT
銅地金 12,000 MT
合計  30,000 MT(銅地金換算)
(3)買取価格   市場価格及び市場取引条件により決定


Anglo Americanは
今回の売却に当たり、CODELCOへの売却はAnglo Americanの持分の49%であり、三菱商事への売却部分は除かれるとしている。

これに対しCODELCOは株式取得の権利を確保するための法的措置を模索しているとし、「われわれの権利は明確だ。49%の株式を取得する」と主張した。
そのうえで、
CODELCOの株式取得権利を侵害しない限り、Anglo Americanが残りの株式を売却するのは自由だ、と語った。 

付記

サンティアゴの裁判所は11月15日、CODELCOの求めに応じ、Anglo American に対し、Anglo American Surの株式の追加売却を禁じる命令を下した。三菱商事が取得した株式には影響しない。 

2012年1月2日、CODELCOはAnglo American Surに対し、49%の株式を取得する権利を行使すると発表した。株式取得のため「あらゆる手段を講じる」としている。
Anglo Americanは月末までに回答する方針。

 

ーーー

三菱商事は他に、チリ国で以下の権益を保有している。

1)Escondida 銅鉱山プロジェクト(8.25%)   

チリ北部にある世界最大の銅鉱山で、2009年の年間銅生産量は約110万トン。
日本側3社は二回にわたりIFCから権利を取得した。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

  当初 1988 2010/6
BHP Billiton 57.50 57.50 57.50
Rio Tinto 30.00 30.00 30.00
International Finance
 Corporation (IFC)
12.50 2.50 -
三菱商事 -  7.00 8.25
三菱マテリアル -  1.00 1.25
日鉱金属 -  2.00 3.00
合計 100.00 100.00 100.00

2)Los Pelambres銅鉱山プロジェクト(5%)

露天堀の銅鉱山としてはチリ国内最大級の生産規模を持つ銅鉱山。チリの首都Santiagの北約200kmの位置にある。銅の副産物としてモリブデンも採掘される。

英国Antofagasta PLC(事業はチリ主体)が所有しており、日本側は1997年5月に同社から取得した。
このプロジェクトには日本輸出入銀行が多額の融資を行っている。

2009年の生産量は銅量で323千トン。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

Antofagasta PLC   60.00
Nippom LP
 Resources
日鉱金属 15.00
三井物産 1.25
丸紅 8.75
MMLP
 Holding
三菱マテリアル 10.00
三菱商事 5.00
合計 100.00

3)鉄鉱石生産販売会社 Compañía Minera del Pacifico(CMP)(25%)

チリに本社を置く同国内最大の鉄鉱石生産企業で、チリの年間鉄鉱石生産量のほとんどを占める。
チリの資源大手
CAP(旧Compañía de Acero del Pacífico S.A. de Inversiones)が所有していたが、2010年に三菱商事が株式の25%を取得した。

取引は2つに分かれる。
・三菱商事とチリの鉄鉱石生産会社
Compania Minera del PacificoのJVのCompañia Minera HuascoがLos Colorados鉄鉱山を運営していたが、JVの50%持分と交換にCMPの15.9%を取得
・三菱商事は401百万ドルの増資に応じ、合計25%とする。
・三菱商事の取得価額は合わせて924百万ドルとなる。

 

参考 最近、商社が相次いで資源への投資を行っている。 

2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加 (住友金属鉱山と住友商事)

2011/11/3  丸紅と三菱商事、石炭事業を拡大  丸紅(カナダ)、三菱商事(豪州クイーンズランド州)

ーーー

2011/6 伊藤忠、コロンビアの炭鉱に出資

伊藤忠は米国Drummond Company との間で、同社グループが100%保有しているコロンビアで操業中の炭鉱及び輸送インフラ資産に20%出資する契約を締結したと発表した。

約15.235億米ドル(約1,265億円)で取得すると共に、同炭鉱から産出される一般炭の日本向け独占販売権を獲得する

炭鉱は露天掘りで埋蔵量は19億トン、生産数量は25百万トン/年。
インフラは40.96%出資の鉄道会社と100%保有の貨車及び専用積出港。

中国国家統計局は11月9日、10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ5.5%上昇したと発表した。
伸び率は7月の6.5%をピークに3カ月連続で鈍り、5カ月ぶりに5%台に低下した。

一時は前月比50%を超える上昇を示していた豚肉は38.9%の伸びにとどまった。

  '11/5 6 7 8 9 10
CPI 5.5 6.4 6.5 6.2 6.1 5.5
うち食品 11.7 14.4 14.8 13.4 13.4 11.9
   (豚肉) (40.4) (57.1) (56.7) (45.5) (43.5) (38.9)
      非食品 2.9 3.0 2.9 3.0 2.9 2.7
             
PPI 6.8 7.1 7.5 7.3 6.5 5.0
 
 

他方、10月の工業生産や社会消費品小売総額は、前年同月比の増加率がいずれも9月を下回った。 

欧州債務危機や米経済の不振を背景に、中国の輸出の伸びの鈍化が鮮明になっている。

 

最大の輸出先である欧州の債務危機が広がりをみせるなか、景気の下振れ懸念は根強い。

温家宝首相は10月6日、「国内の物価水準は10月以降、明らかに下落している」と表明、インフレが終息に向かいつつあるとの認識を示し、マクロ経済政策を機動的に「微調整」する方針を表明した。

 

 

10月14日のMichael Woodward社長解任、その後の同氏による問題指摘に端を発したオリンパス事件は、11月8日に会社側が事実を認め、過去の損失先送りの穴埋め策であったことが明らかになった。

事実関係は以下の通り。

1)Gyrus社買収   

買収額  935百万ポンド(約2,117億円)

ファイナンシャルアドバイザーへのフィー
 (日本の証券会社出身者が代表を務める米国のAXESとケイマン諸島のAXAMインベストメント)

基本報酬   500万ドル 2006/6
成功報酬
 買収金額の5%
現金15%
 (上限1200万ドル)
1200万ドル 2007/11
株式オプション85%   優先株発行
ワラント付与
 →買取

5000万ドル

2008/9
優先株買い取り
(再上場断念により
 買取請求を受ける)
オプション分 1億7700万ドル 2008/9
優先株値上り分 4億4300万ドル 2010/3
 「価値上昇」
 「第三者への売却阻止」
合計 6億2000万ドル  
総合計 6億8700万ドル  

Gyrusの元最高幹部は、「AXESやAXAMという名前は聞いたこともなく驚きだ。オリンパスのアドバイザーとは接触したことも、電話を受けたこともない」と証言している。

 

2)子会社買収

いずれも2006年に40%を買収し、2008年4月に追加買収で100%とした。
 (オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社から買収)
 

 半年後の2009年3月に減損処理した。

社名 事業 買収金額 減損処理
アルティス 環境ソリューション  28,812百万円  19,614百万円
NEWS CHEF フードキット 21,408百万円 17,699百万円
ヒューマラボ 健康食品・化粧品販売 23,199百万円 18,370百万円
合計   73,419百万円 55,683百万円

3) 含み損  1千数百億円とされる。 

バブル時の財テク失敗による金融商品の含み損は1990年代に1千数百億円あり、「飛ばし」で社外に移した。
2000年頃には相場の回復で含み損は500億円程度に減ったが、処理を先送りした結果、再び1千数百億円になった。

 

不思議なのは、Gyrus社買収での多額のフィーの支払いや国内3社の買収と直後の減損処理等について、全国紙が報道したのはWoodward社長の問題指摘(および同氏が英米の監督官庁に資料を渡したとの報道)があってからである。
 

しかし、この問題は元日本経済新聞の論説委員兼編集委員で、月刊誌「選択」編集長もしていた阿部重夫氏が発行する月刊誌FACTAが早くに取り上げている。

7月15日のFACTA Online「オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」では、3子会社の買収金額と直後の減損処理、ジャイラスの買収での優先株などについてオリンパスに質問している。(同社への質問がゼロ回答のため、公開した。)

FACTAの8月号は「オリンパス 『無謀M&A』 巨額損失の怪」を掲載、詳細に問題点を示した。

問題の3子会社は「オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社が05年ごろに休眠会社を業態転換させて活動を再開させたり、新規に立ち上げたりして、08年にオリンパスに売却した」としている。

ジャイラスについては、「製造業でありながら、総資産の半分以上をのれん代(買収された企業の時価評価純資産と買収価額との差額)が占め」、「株式市場は『買収価格は株価に40%ものプレミアムを上乗せしていて割高な買収』と冷ややかな目で見ていた。にもかかわらず、10年3月期にはさらに599億円出して優先株まで買い取った。この優先株取得についても、いったい誰から取得したのか不明で、『情報開示の面で大きな問題』と指摘するアナリストもいる。」

更に「コンサル会社との怪しい関係」について説明している。

Woodward氏は次のように述べている。

すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。

今回明らかになった過去の損失先送りについては10月24日のFACTA Online 「野村の元オリンパス担当、S氏の独り言」が、「闇株新聞」なるブログを紹介し、次のように述べている。

S氏は、90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。

バブル期の1980年代から延々と、トップ主導で、財務担当役員やごく一部の財務担当者の間でひそかに「処理」され続けてきた。
これらの「損失先送り」などの処理も、ごく少数の「長い付き合い」の外部の人間にだけ相談されていたのです。

* 10月23日のNew York Times はファイナンシャルアドバイザー2名の名前を挙げている。

ーーー

何よりも、損失隠しが20年間も続いていたのに、取締役会も監査法人も問題視しなかったのは不思議である。

また、3子会社の買収価格の異常さやGyrus買収の際のフィーの異常さについて問題視しなかったことも同様である。

アナリストや経済紙がこれまで問題視しなかったのも不思議だし、FACTAが取り上げて以降も最近まで、各紙がこれを取り上げなかったのも不思議である。

 

付記

朝日新聞によると、オリンパスはあずさ監査法人から不正があると指摘され、直後に解約していた。

あずさ監査法人は2009年に、オリンパスがジャイラスを買収したときに支払った助言会社への報酬の大きさを不審に思い、理由や決算への反映の仕方でオリンパス側と意見が対立した。

また、ベンチャー3社買収で、3社にはそれだけの価値はないと指摘し、買収額と実際の企業価値の差額を損失計上するよう要求、オリンパスは2009年3月期決算で、あずさ監査法人の指摘を反映する形で損失を計上した。

監査法人は2010年3月期からは新日本監査法人に変更された。 

(含み損失隠しについては監査法人は見抜けなかったのであろうか?)

 

付記

警視庁はオリンパスに経理資料の提出を求めるなど、捜査に向けた情報収集を開始した。
証券取引等監視委員会も、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に当たる可能性があるため、すでに調査を始めている。
 

 

武田薬品の中間決算は、売上高が円高の影響(-287億円)と米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の減収などにより、全体として減収となり、これが影響して減益となった。

 

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 714,025 221,619 225,473 144,211 90.0  
11/9中 702,502 211,046 209,551 135,660 90.0  
増減 -11,523 -10,573 -15,922 -8,551    
             
11/3 1,419,385 367,084 371,572 247,868 90.0 90.0
12/3(7/29) 1,450,000 390,000 395,000 250,000 90.0 90.0
12/3予(今回 1,540,000 270,000 270,000 170,000 90.0 90.0
同 増減 90,000 -120,000 -125,000 -80,000    

 

2012年3月期の損益予想については、今回、7月29日発表のものから大きく下方修正した。

武田薬品は本年9月末に、スイスのチューリッヒに本社を置く Nycomed96億ユーロでの買収を完了し、100%子会社とした。

2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収

武田薬品「ナイコメッド社について」  http://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/j02_47220_3.pdf

同社では、米国での糖尿病治療薬の伸び悩みに加え、この買収の影響と為替レートの見直しを加味して、前回発表の予想から修正した。

営業損益の下方修正の内訳は以下の通り。(億円)

Nycomed 買収
   の影響
Nycomedの営業損益(下期)  120
無形資産、ノレンの償却 -200
棚卸資産の時価評価 -570
小計 -650
糖尿病治療薬等の販売減 -390
円高の影響 -160
合計    -1,200

Nycomed買収の会計処理については、買収後1年以内に会計監査人による監査を経て確定する。
このため、現時点での予想値は同社による見通しで、確定額ではない。

なお、米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の販売状況は以下の通り。(億円)

  2007 2008 2009 2010 上期 2011
年間予想
前年比
2010 2011 増減
糖尿病治療薬
(ピオグリタゾン)
3,186 3,017 2,974  3,062 1,551 1,394 -157 2,610 -452
消化性潰瘍治療剤
(ランソプラゾール)
452  1,731 1,190 428 315 140 -175 235 -193

 ーーー

武田薬品は11月4日、移転価格税制の適用による二重課税の排除を求め、2008年7月に国税庁に対し米国との相互協議を申し立てたが、国税庁から、相互協議が合意に至らず終了した旨の通知を受領したと発表した。

2006年6月に、米国アボットとの50:50の合弁会社であったTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP:その後会社分割)との間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。

これに対し、武田薬品は、
①TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
②価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない、
として、徹底抗戦の構えで、追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上した。

2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正

米国側との相互協議は、日本で更正した額を輸出価格の値上げとして米国で追加でコスト算入して利益を減らし、米国での税金を減らすというもの。

武田の主張の通り、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されないため、米国側が応じないのは当然である。

同社は相互協議の申請に伴って一旦中断していた異議申し立て手続きにつき大阪国税局へ再開を申し入れる。

 

移転価格税制では、信越化学が2008年に約110億円の追徴課税を受けていた問題で、還付加算金を含めて日米合計で約119億円が還付された。

2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ 

この2件については、国税庁の認識が明らかにおかしい。

 

 

総合化学5社と信越化学の中間決算及び通期予想は以下の通り。

業績の明暗を分けたのは液晶関連と円高。
 住友化学は液晶ディスプレー用偏光フィルムの価格下落が響いた。
 円高の影響は住友化学が年間で240億円程度、三菱ケミHDも140億円程度とされている。

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

震災による鹿島地区の停止の影響が上期で146億円(通期で170億円)あり、これを除くと前期(前年)比の減益幅は縮まる。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
10/9中間 1,564,658 111,393 106,388 43,976 5.0
11/9中間  1,570,197 95,686 92,885 37,504 5.0 ー 
増減 5,539 -15,707 -13,503 -6,472    
             
11/3 3,166,771 226,493 223,899 83,581 5.0 5.0
12/3 3,350,000 200,000 195,000 77,000 5.0 5.0

                                                         

営業損益推移(億円)

  10/3 11/3 12/3  増減   10/9 11/9 増減
ケミカルズ 69 530 410  -120   219 194 -25
ポリマーズ -225 550 470  -80   243 233 -10
エレクトロ -14 10 10  0   32 -12 -44
デザインド 133 365 360  -5   208 173 -35
ヘルスケア 710 851 770  -81   446 397 -49
その 62 45 60  15   6 16 10
全社 -73 -86 -80  6   -41 -45 -4
合計 663 2,265 2,000  -265   1,114 957 -157
震災影響     -170  -170     -146  
震災影響なし 663 2265 2,170  -95   1114 1,103 -11

グループ企業別の営業損益は以下の通り。(億円)

三菱レイヨンの貢献が大きい。

  10/9 11/9 増減
三菱化学グループ 446 295 -151
田辺三菱製薬グループ 402 361 -41
三菱樹脂グループ 91 88 -3
三菱レイヨングループ 142 229 87
調整 33 -16 -49
合計 1,114 957 -157

ーーー

住友化学

情報電子化学(液晶フィルムなど)の価格下落の影響が大きい。

経常損益の減少は持分法投資損益の減少が大きい。(10/9 75億円→11/9 10億円)
PetroRabighは長期の定修が終わり、現在はフル稼働。

特別損失に豪州の株式市況低落による豪州農薬会社Nufarmの株式評価損 289億円を含む。
(前年上期にも計上しているが、2011年3月末には株価が回復し、下期に取り消している。)

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9中間 989,245 53,043 52,107 2,515 3.0  
11/9中間 998,281 54,035 48,993 -2,713 6.0  
増減 9,036 992 -3,114 -5,228 3.0  
             
11/3 1,982,435 87,957 84,091 24,434 3.0 6.0
12/3 2,020,000 75,000 72,000 10,000 6.0 6.0


営業損益推移(億円)

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
net
価格差
数量差 コスト
基礎化学    206 170 -36   118 125 8 10 -22 20
石油化学   11 150 39   58 78 20 45 -35 10
情報電子化   261 130 -131   171 101 -71 -185 29 85
健康農業関連   233 290 57   144 148 4 -25 4 25
医薬品   287 200 -87   147 155 8   33 -25
その           9 35 26   26  
全社   -219 -190 29   -115 -101 14   4 10
 515 879 750  -129   530 540 10 -155 39 125

ーーー

三井化学

増収増益となった。フェノールなど基礎化学品が好調。ウレタンは赤字増。
当期損益の減益は、前期に退職給付引当金戻入額14,618百万円の益があったため。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 672,823 17,357 14,604 17,126 3.0  
11/9 755,764 28,748 27,888 13,365 3.0  
増減 82,941 11,391  13,284 -3,761     
             
11/3 1,391,713 40,548 38,851 24,854 3.0 3.0
12/3 1,510,000 50,000 51,000 26,000 3.0 3.0

 

営業損益推移(億円)  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
net
価格差
数量差 コスト
石化  -34  128 130 2    62  65 4 24 -11 -10
基礎化学品 -48 204 240 36   65 183 118 92 25 1
ウレタン -21 -90 -120 -30   -43 -71 -28 -43 -10 25
機能樹脂 -44 72 105 33   45 47 2 -4 2 6
加工品 8 14 40 26   12 22 9 -2   10
機能化学品 74 100 120 20   45 55 10 -6 12 4
その 11 1   -1   1 -6 -7     -7
全社 -41 -25 -15 10   -13 -8 6     5
合計 -95 405 500   95    174  287  114 61 18 34

ーーー

旭化成

住宅が好調。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 764,794 63,521 59,586 28,464 5.0  
11/9 802,168 63,768 62,136 38,214 7.0  
増減 37,374 247 2,550 9,750 2.0  
             
11/3 1,598,387 122,927 118,219 60,288 5.0 6.0
12/3 1,684,000 124,000 125,500 74,500 7.0 7.0

 

営業損益推移(億円)  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
売価差 うち
為替差
数量差 コスト
ケミカルズ  261  644 580 -64    373  341  -32 173 -91 2 -207
住宅 253 365 470 105   101 179 78     78  
医薬医療 40 70 85 15   42 56 14 -14 -3 36 -7
繊維 -28 42 35 -7   23 21 -2   -11 2 -3
エレクトロニクス 72 143 120 -23   107 70 -37 -109 -20 45 27
建材 12 21 25 4   11 8 -3 -2   -4 2
その 18 17 25 8   8 12 4     3 1
全社 -53 -72 -100 -28   -30 -50 -20       -20
合計 576 1,229 1,240    11   635 637 2 48 -125 162 -207

ーーー

東ソー

増収・増益。

  単位:百万円(配当:円)
 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 322,135 10,056 7,119 2,437 3.0  
11/9 367,740 21,663 18,632 9,930 3.0  
増減 45,605 11,607 11,513 7,493    
             
11/3 684,398 33,531 29,821 10,014 3.0 3.0
12/3 730,000 41,000 36,000 17,000 3.0 3.0


営業損益推移(億円)
 

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 79 104 151    47    28 79 51 16 15 20
クロルアルカリ -143 -35 15 50   -56 1 57 19 -2 40
機能商品 148 203 171 -32   106 100 -6 24 -21 -8
エンジニアリング 20 36 46 10   10 22 11 12   -1
その 26 27 27 0   12 14 2 1   1
合計 130 335 410 75   101 216 115 72 -8 52

ーーー

信越化学

半導体デバイスメーカーの在庫調整等で減収となった。
当期損益の減は、前年に過年度法人税等戻し入れが10,698百万円あったため。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 532,562 76,143 81,203 62,342 50.0  
11/9 521,368 80,411 84,330 51,040 50.0  
増減 -11,194 4,268 3,127 -11,302    
             
11/3 1,058,257 149,221 160,338 100,119 50.0 50.0
12/3 1,065,000 155,000 165,000 102,000 50.0 50.0


営業損益推移(億円)
  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減
ビ・化成品 196 197       93 134 41
シリコーン 249 341       175 174 -1
機能性化学品 139 129       60 70 10
半導体シリコン 226 389       210 211 1
電子機能材料 307 361       180 187 7
その 68 73       42 27 -14
全社 -13 3       2 0 -1
合計 1,172 1,492 1,550 58   761 804 43

なお、Shintechの損益は前期比では増益(ドル建では90→130百万ドルと大幅増)だが、過去の実績からは大きく下回っている。

ーーー

各社の営業損益と当期損益対比

三菱ケミカルと住友化学の当期損益は、高収益の医薬子会社の少数株主持分控除が大きいため、営業損益、経常損益と比較し、大きく減少する。

 

 

日経ビジネス11月7日号 「TPP亡国論のウソ」

「農業の守り方を間違った」 高木勇樹・元農林水産事務次官(現・日本プロ農業総合支援機構副理事長 

高木氏は、これまでの農業保護のあり方は間違っていたと自らの過去も含めて批判する。反対派の議論とは全く逆に、日本の農業再生のために、TPP交渉に参加する必要があると説く。

記事全文 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111104/223609/?P=1
 

参考 2010/11/10  TPP参加と農業問題

 

 

 

 

2010年にギリシャ危機の原因とEU緊急首脳会議によるギリシャ(第一次)支援策について述べた。
EU・ユー口圏首脳会議では欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)、欧州金融安定基金
European Financial Stability Facility:EFSF)の設立も決まった。

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

事態はその後、混迷を深めた。

ユーロ圏の債務危機リスクの再燃でアイルランド、ポルトガルなどの国債のデフォルト(債務不履行)保証コストが上昇、EFSFなどは2010年11月にはアイルランド、2011年5月にはポルトガルへの支援を行った。

2011年7月にはギリシャへ第二次金融支援が決まった。1090億ユーロの公的支援に加え、民間金融機関もギリシャの新旧の国債交換、国債の再投資を通じ、損失(21%)を負担した。

しかし、支援の条件となったギリシャの改革は国民の反対を受け、進まない。

10月に入り、2011年7月に欧州銀行ストレステスト(健全性審査)に合格したばかりのフランス・ベルギー系大手銀行 Dexia がギリシャやイタリアの国債を大量に保有することから、資金の調達が出来ず、あっけなく破綻、欧州ソブリン債への積極投資で痛手を受けた米国のMFGlobal HoldingsmもChapter 11を申請した。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ  「欧州金融安定化メカニズム」(EFSM)
 最大合計 7500億ユーロ
2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担)
2011/10 フランス・ベルギー系大手銀行 Dexia 解体決定
米国 MF Global Holdings、Chapter 11申請

 

ギリシャの破綻が他のPIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン)に波及してEU全体、更には世界の金融に悪影響を与えることが懸念された。

ギリシャの政府債務は過去にデフォルトしたロシアやアルゼンチンに比べ、はるかに大きく、両国はその後、資源価格の上昇で経済は回復したが、ギリシャの場合は資源も大きな産業もない。

ギリシャと同様に政府債務のGDP比率が高いイタリアの場合は更に影響が大きくなる。 

1998 ロシア デフォルト総額
   727億ドル
石油、天然ガス価格アップで回復
2001 アルゼンチン デフォルト総額
   823億ドル
穀物価格アップで回復
今回 ギリシャ 政府債務
  4,822億ドル 
うち国債残高   資源なし
 3,838億ドル
イタリア 政府債務
    3兆ドル
 
 

危機に対応するため、EUは6月にEFSFの拡充を決定した。これは加盟国全部の承認を得ることが必要だが、最後のスロバキアが10月に一旦は反対を決め、その後賛成し、成立した。
(自国よりも恵まれているギリシャ救済のために資金を出すことに抵抗を示した。)

2010年5月に設立されたEFSF はユーロ圏各国の政府保証を受けて4400億ユーロの債券発行が可能だが、最上級の格付けを維持するためには、そのうち格付けが最上級(AAA)の6か国の2550億ユーロしか貸し出すことができない。

今回、融資可能金額を引き上げることを目的に、ユーロ圏各国が政府保証をつける金額を7800 億ユーロに引き上げることとした。(結果、6か国の合計は4515億ユーロとなった。なお、総額から既に支援を受けているギリシャ、アイルランド、ポルトガル分を除外すると726,000百万ユーロとなる) 

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(100万ユーロ)

  保証負担額 拡大後
オーストリア 12,241    21,639
フィンランド 7,905 13,974
フランス 89,657 158,488
ドイツ 119,390 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947
オランダ 25,144 44,446
AAA格付 6か国
  合計
255,439 451,540
その他 184,561 328,243
合計 440,000 779,783

フランスが自国の格付けダウンを恐れるのは、債券発行限度が減少するため。

10月に入り、上記のEFSF拡充が全加盟国で承認されたのを受け、EUは10月27日未明、欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意した。

「包括戦略」内容:

EFSF強化 一部損失補てんの債務保証
特別目的会社(SPC)活用

AAA格付け6か国分は4500億ユーロあるが、EFSFはすでに欧州の銀行の資本増強向けに最高1000億ユーロを、またギリシャ、アイルランド、ポルトガル向け支援に約1000億ユーロを充てることにしている。

残りのうち2000億ユーロ程度を元手に、IMFや政府系ファンド(SWF)、民間投資家などに投資要請し、実質1兆ユーロ規模に拡大 する。

資金ソースにより、低リスク低リターン、中リスク中リターン、高リスクに分けて使用する。

ギリシャ問題 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
欧州銀行の資本増強 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
銀行資産を狭義の中核的自己資本の比率で9%を基準に再評価、来年6月までに資本増強
試算では資本増強に1064億ユーロ(約11兆円)が必要
今後の危機対応 EUの基本条約「リスボン条約」の改正を検討、
財政・経済統合案を12月に中間報告、来年3月に最終報告
ユー口圏は(各国財政の点検のため)少なくとも年2回の首脳会議を開催
イタリアに対し財政健全化のための構造改革求める
同国は13年までに財政均衡、26年までに年金支給開始年齢引き上げを公約

 

しかし、ギリシャ国民は前提条件の改革案に反発、ストが相次いだ。

ギリシャのパパンドレウ首相は10月31日、ユーロ圏各国がまとめた支援策を受け入れるかについて、国民投票を行う意向を表明した。

国民投票で受け入れ反対が多数を占めれば、国家破綻(デフォルト)や、ユーロ圏からの離脱の可能性も出てくるため、ギリシャ国内外で大問題となった。

最終的にEUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回する意向を明らかにし、ギリシャは「包括戦略」を受け入る方向となった。

 G20首脳会議は11月4日、以下の内容の首脳宣言を採択した。

欧州危機で金融市場の緊張が高まり、新興国経済に成長鈍化の兆し

・世界経済が直面する喫緊の課題に協調して行動

・EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

・イタリアが財政健全化に向けてIMFの監視を受け入れたことを歓迎

・通貨安競争の回避に向け、市場で決定される為替制度への迅速な移行を確認

・IMFの資金基盤強化の検討を各国財務相に指示

・行動計画で、日本は2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げると明記

ーーー

とりあえず前向きに進み出したが、ギリシャの改革案が予定通り行われる保証はなく、財政赤字の抑制が出来るかどうか、不明である。 (おそらく出来ないだろう。)

欧州の金融機関はギリシャ国債の50%カットの穴埋めとして資本増強が必要だが、貸しはがしなどで信用収縮が拡大、景気に悪影響を与える可能性がある。

EFSFの資本増強のため、EUは中国などに資金提供を求めているが、進展はない。 

中国は受諾するとしても、人民元切り上げ問題や市場経済国待遇問題を条件にすると思われる。
 (人民元切り上げ問題は米国が了承する筈がない。)

イタリアやスペインに飛び火した場合、EFSFも資金不足となる。 

ギリシャの次はイタリアとの見方が強く、イタリア国債は既に市場の狙い撃ちに遭っている。
4%台後半であった10年物国債の利回りは6%以上となっている。

IMFはイタリアに440億ユーロの支援を提案したが、首相が拒否、最終的に3か月ごとに財政状況を審査し、計画の遅れがあれば勧告するシステムを呑ませた。

イタリアの付加価値税は20%から21%に引き上げられたが、増税は一部にとどまり、年金受給開始時期のの67歳への引き上げも妥結しておらず、改革は進んでいない。

IMFの支援は拒否したが、IMFの監視を受け入れたことは、イタリアが危機に面していることを明確にしたこととなる。
 

そもそも、余りにも国力が違う国々が単一通貨ユーロを採用し、危機時に通貨切り下げも金利引下げも出来ないというのは無理がある。

欧州統合に懐疑的なチェコのクラウス大統領は、「ギリシャ危機は通貨を4割り引き下げれば解決する」と述べ、危機の原因は自国通貨の切り下げができないユーロの仕組みにあると指摘したとされる。

これまでに、単一通貨ユーロを、第一ユーロと第二ユーロに分けるという案や、弱い国を切り離すと案が取りざたされていた。(逆に、ドイツの離脱によるユーロ崩壊も市場でささやかれていた。)

しかし、仮にこの時点でギリシャがユーロから離脱したとしても、デフォルトは必至であり、問題解決にはならない。
ユーロ圏EUが抱え込んでいくしかない。
 

今後も世界的な金融危機に波及するおそれは続く。

 

 

EUは10月19日、テレビやコンピュータに使われるブラウン管(CRT)用ガラスのカルテルで3社に128.736千ユーロの制裁金を科した。

カルテルは1999年2月から2004年12月まで続き、欧州経済領域(EEA)での販売価格を調整していた。
EUによる調査は2008年末から始まった。

韓国Samsung Corning Precision Materials は最初にカルテルの存在を報告して制裁金を全額免除された。
日本電気硝子は調査に協力して50%の免除を受けた。

また、各社とも、カルテルの存在について争わない「同意決定手続き」に応じたため、制裁金は10%減額された。

  Leniency
 減額
協力
 減額
同意決定
  減額
制裁金
(千Euro)
Samsung Corning Precision Materials 100%   10% 0
日本電気硝子 50%   10% 43,200
Schott AG   18% 10% 40,401
旭硝子     10% 45,135
合計       128,736

「同意決定手続Cartel Settlement Procedure)」は2008630日に制定され、同年71日から運用された。
裁判所への控訴による長期の争いを避け、他の事件の摘発に要員を向けることが目的。

適用の第1号は2010年5月のDRAMカルテル。
2010/5/21
 EUDRAMカルテルに制裁金、「同意決定手続き」初適用

その後、飼料カルテル家庭用洗剤カルテルで適用があり、今回は4例目。

 

付記

韓国の公正取引委員会は12月11日、ブラウン管用のガラスをめぐり、価格や生産量を調整する国際カルテルを結んでいたとして、日韓4社に総額545億ウォン(約37億円)の課徴金を課したことを明らかにした。

サムスンコーニング精密素材、旭硝子の子会社の韓国電気硝子、 日本電気硝子とそのマレーシア法人
  

ーーー

韓国Samsung Corning Precision Materialsは旧称Samsung Corning Precision Glassで、韓国Samsung Electronicsと米Corningの合弁会社。
主にSamsung向けにLCDガラス基板などを供給しているが、社名変更後は無機材料に関する材料メーカーへと業容拡大を狙う。

Schott は、125年以上にわたり、特殊ガラス、特殊素材、部品、システムの開発と製造に従事。

日本電気硝子は1944年に日本電気により設立、1949年に日本電気から分離独立した。

2011年3月にニプロが日本電気硝子の株式の10.62%を取得して主要株主となり、その後、電気硝子もニプロの株式の10.40%を取得している。
2011/7/30 ニプロ、医薬用硝子容器事業で海外展開

旭硝子は、CRT用ガラス事業から既に撤退している。
(過去も欧州において製造拠点を保有していない。)

旭硝子は同事業に関して、韓国の競争法当局からも調査を受けている。
 

なお、旭硝子とPilkington(日本板硝子)などは欧州での板ガラスカルテルで制裁金を科せられている。

2007/3/20 欧州委員会板ガラスカルテルを調査

Ineos Vinyls Italiaは、Ineosが元のオーナーで原料を供給しているEniとの争いで撤退を決め、Safi Spa に売却されてVinyls Italiaとなったが、Eniへのエチレン、塩素代の未払債務問題がこじれ、政府指名の委員の管理下"Controlled Administration")に入った。

2009/2/20 Ineos のイタリアのVCM/PVC事業、破産の危機を脱する  
2009/8/1  Vinyls Italia準破産処理

同社はPorto MargheraRavennaPorto Torres の3か所VCMとPVCの工場(Porto Torresはe-PVC)を持っている。
イタリア唯一のPVCメーカーで、イタリア政府はこの存続に注力してきた。

2年間の"Controlled Administration"の後、本年9月にイタリアの合成樹脂商社のIndustrie Generali spa (IGS) がRavenna 工場買収を決め、その後、Eniも同社に原料を供給することで合意した。

IGSでは年末にもPVCの生産を再開するとしており、初年度は年産140千トンとするが、将来は200千トンに増設する考え。

IGSはArkema、BASF、Carmel Olefins(イスラエル)、Hellenic Petroleum(ギリシャ)などのPE、PP、安定剤、BOPPフィルムなどを扱う商社で、イタリアに20千トンのPVCコンパウンド工場を持つ。
PVCコンパウンドの原料に遡及することとなる。

なお、他の2工場については、以下の通り、非塩ビ事業に転換される。

工場 従来製品 引き受け手 今後の製品
Ravenna VCM, s-PVC Industrie Generali PVC 140,000t→200,000t
Porto Torres VCM, e-PVC Polimeri(Eni)/Novamont Bio-based chemical complex
Porto Marghera VCM, s-PVC Oleificio Medio Piave 小麦粉、植物油

 

1)Porto Torres 

Polimeri Italia (Eni の子会社)とバイオプラスチックのメーカーのNovamontが50/50JVのMatrìcaを設立し、5億ユーロを投じてバイオベースのケミカルコンプレックスを建設する。

Porto TorresにあるVinyls Italiaのプラントを含むEniの全ての石油化学コンプレックスが(NBRを残して)すべて撤去され、植物油を原料とするバイオプラスチック、バイオ潤滑油、エラストマー用のバイオ添加剤などのバイオケミカルコンプレックス(合計能力年産350千トン)が建設される。

Eniは別途、250百万ユーロでバイオマス発電所を建設し、コンプレックスに電力を供給する。

計画では3期に分けて7工場が建設される。
 ・第一期 バイオモノマー、バイオ潤滑油
 ・第二期 合成ゴム用
のバイオ伸展油、バイオフィラー
 ・第三期 第一期プラントの増設、バイオプラスチック

2)Porto Marghera

土地の持ち主のSyndial(Eni子会社)の承認待ちだが、これまでの石油化学とは全く離れ、Oleificio Medio Piaveが小麦粉や植物油の生産を計画している。

丸紅と三菱商事は11月1日、石炭事業についての発表を行った。

1.丸紅、カナダの炭鉱運営会社を中国企業と共同で買収

丸紅は、中国のWinsway Coking Coal Holdings (永暉焦煤股份有限公司と共同で、カナダの炭鉱運営会社Grande Cache Coal Corporationの全株式を買収することでGrande Cacheの取締役会と合意したと発表した。

丸紅が40%、Winsway社が60%出資の合弁会社を設立し、カナダ法のPlan of Arrangementにより、現金総額約983百万カナダドル(約765億円)で友好的買収を行う。

 Plan of Arrangement:
被買収企業の取締役会決議、株主承認決議及び裁判所の承認、その他の条件を満たすことにより成立

Grande Cacheが運営するアルバータ州のGrande Cache炭鉱は、製鉄コークス原料用の強粘結炭の数少ないカナダ供給炭鉱として、1969年以来、操業を続けてきた。
現在年産2百万トンで、今後は3億トンを超える豊富な埋蔵量に下支えられた拡張を計画している。


丸紅は同炭鉱の石炭取引に関し、40年以上日本の鉄鋼メーカーのエージェントであると共に、2004年以降は対日独占販売権を獲得している。

新興国の粗鋼生産増加に伴い、強粘結炭は恒常的な供給不足にあり、同炭種の需要は今後一層強まることが予想される。同社では、本買収は日本への安定供給に貢献すると共に、同社の将来的なカナダにおける炭鉱事業拡大の基盤を築くことにもなるとしている。

Winsway Coking Coalはモンゴル等の原料炭の中国市場への輸送・販売を業とする企業。
モンゴル内陸部を含む陸路及び鉄道による輸送網から構成されるプラットフォームをベースとする。

同社では今回の買収の意義を以下の通り述べている。
・炭鉱の
豊富な埋蔵量
・採炭への最初の垂直統合
・今後のワールドクラス石炭企業へのプラットフォームになる。
・地政学的リスクの多様化
・1960年代からカナダの石炭事業に経験のある丸紅との提携

ーーー

2.三菱商事、豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業の大規模拡張意思決定

三菱商事は、100%出資子会社のMitsubishi Development(MDP)とBHP Billitonの折半出資の豪州クイーンズランド州 BMA原料炭事業の大規模拡張に関する投資意思決定を行ったと発表した。

BMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance)は豪州最大の石炭生産企業で、原料炭の海上輸送シェアは世界一、世界の原料炭海上貿易量の約3割を占める

2001年にMDPがBHP Billitonから権益を取得することにより発足した。

MDPは1968年に、オーストラリア北東部のクイーンズランド州においてアメリカ企業とパートナーシップを組み、原料炭の炭鉱開発を行う目的で設立された。

三菱商事は原料炭需要が将来にわたって継続的に増加するとの判断の下、原料炭の安定供給を確実なものとするため、2001年に従来のマイノリティーとしての権益比率を50%まで引き上げ、世界最大手の資源会社BHP Billitonと対等の立場で石炭合弁事業BMAを立ち上げた。

豪州・クイーンズランド州の大規模石炭埋蔵地域のBowen Basinで21億トンにも上る埋蔵量を保有し、7つの炭鉱で高品位の原料炭を中心に年間約5,000万トンを現在生産している。生産された石炭を出荷するための港湾施設Hay Pointの操業も行う。

製品の大半をHay Point港湾施設より出荷、一部をその近隣のDalrymple Bay港湾施設や南部のGladstoneより出荷している。

 

今回の投資はCaval Ridge炭鉱の新規開発とPeak Downs炭鉱の拡張で、投資のMDP社負担分は約21億豪ドル(約1,700億円)となる。

Caval Ridge炭鉱: 年間550万トンの生産を計画
Peak Downs炭鉱:現行能力から年間250万トンの増産を計画

2014年から約60 年間に亘り、合わせて年間800万トンの輸出用高品位原料炭を増産する。

本年3月にもBMA生産能力拡張に関するMDP社負担分約31億豪ドル(約2,530億円)の投資意思決定を行っている。

Daunia炭鉱の新規開発:2013年より年間450万トンの原料炭を生産
Hay  Point港の第三次拡張(2014年に出荷能力を年間5,500万トンに拡張予定)

 

三菱商事はBMAとは別に、Rio Tinto及びJ-POWER(電源開発グループ)、JCD(石炭資源開発)と共同で、同地区でClermont一般炭炭鉱の開発を行っている。

同炭鉱に隣接するBlair Athol 炭鉱 は1984年から出炭を開始し、以来、年間1,000万トンから1,200万トンを生産し、日本向け電力用海外炭の安定供給に寄与してきた。
このBlair Athol 炭鉱が2010年代に生産終了するのに合わせ、Clermontを開発し、Blair Atholの貨車積み設備、鉄道、港湾等のインフラを利用することとした。

Clermont炭鉱は2006年に開発が決定され、2010年5月には第1船を日本向けに出荷、2010年の生産量は491万トンとなった。
今後、年間1,200万トン規模まで生産を伸ばす。

権益比率は以下の通り。
 MDP :31.4%(当初は34.9%)
 Queensland Coal (Rio Tintoグループ) :50.1%
 J-POWER オーストラリア(電源開発グループ):15.0%
  JCD オーストラリア(石炭資源開発): 3.5%(MDPから譲り受け)

 

 

前回、米国の住宅着工の状況について述べた。
    2011/10/24 最近の米国の住宅着工状況

国土交通省は10月31日、9月の新設住宅着工件数を発表した。
6~8月に3か月続けて前年を上回り、回復の兆しかと思われたが、9月の新設着工戸数は64,206戸で、前年同月より10.8%の減となった。

 

日本の住宅着工は、2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件、耐震偽装)を受けた改正建築基準法が2007年6月20日に施行され、激減した。(2007/10/1 日米住宅着工件数減少

2008年7月になって、ようやく、前年を上回った。しかし、2008年12月には再び前年比ダウンとなり、その後低迷している。

 

この影響を最も受けているのがPVCで、PVCの国内需要は低迷している。

 

6~8月の住宅着工には、次の2つの駆け込み需要が含まれており、9月の減はその反動である。

1)住宅エコポイント

省エネ性能を満たした住宅の新築・改修時に、1戸あたり最大30万円がつく住宅エコポイントが今年7月末の着工分で締め切られた。

2)住宅ローン「フラット35」の1%の金利優遇措置

フラット35は最長35年の中期固定金利の住宅ローンで、住宅金融支援機構が民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、証券化して機関投資家に売却して資金を調達する。

政府は「省エネ」、「耐震」、「バリアフリー」、「耐久性・可変性」のいずれかに優れた住宅向けの「フラット35S]で当初10年間の金利を通常より1%引き下げた。(それまでが0.3%の優遇)

利用者は年1%台前半と、民間の3%前後より割安な金利で借りられる。

三菱総研は、政府の金利優遇によって、2010年の住宅着工戸数を10万~13万戸押し上げたと試算している。
2009年度の着工件数は775千戸、2010年度は819千戸となっている。

国土交通省は、利用が予想以上に多く、予算枠の上限に近づいたため、当初2011年12月末としていた1%の金利優遇措置の申請期限を9月末に前倒しし、 その後は、本来の金利引き下げ幅0.3%に戻った。(2012年3月末には0.3%の優遇もなくなる。→下記)

ーーー

政府が10月21日にまとめた今年度第3次補正予算案で、住宅エコポイントとフラット35Sの金利優遇措置の復活が織り込まれた。

省エネ住宅を新築する場合、被災地は従来と同じ1戸当たり最大30万円相当、その他の地域は半減して15万円相当を付与する。
省エネや耐震化のリフォームは地域を問わず、最大30万円相当とする。
獲得ポイントの半分は、被災地の物産品や義援金などに利用を限定する。

金利優遇措置については対象を限定し、金利優遇幅を下げて復活させる。

  対象:「省エネ」のみ (他は通常の下げ幅0.3%)

  金利優遇:当初5年間 0.7%(東日本大震災被災地は1.0%)
                      6~10年目 0.3%

 

 

第3四半期の輸入価格平均は52,885円/klとなり、国産ナフサ基準価格は54,900円/klとなった。
第2四半期の59,000円/klから4,100円/klの値下がりとなった。

ナフサ輸入価格の推移は以下の通り(単位:円/kl)
国産ナフサ基準価格は、輸入価格の四半期平均(四半期ごとの加重平均価格)に2,000円を加算(10円単位を四捨五入)

  輸入価格 平均価格 基準価格
'10/1  45,470  45,713  47,700
2 46,363
3 45,249
4 47,536 47,650 49,700
5 49,151
6 46,379
7 42,356 40,713 42,700
8 39,989
9 39,715
10 40,712 43,123 45,100
11 42,222
12 46,708
'11/1 49,202 50,382 52,400
2 50,257
3 51,923
4 55,522 56,979 59,000
5 58,400
6 57,299
7 54,425 52,885 54,900
8 52,420
9 51,824

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