2013年11月アーカイブ

住友化学は11月25日、シンガポール法人が2006~2010年にカンボジア政府の幹部2人に対し、契約受注の見返りに256,471ドルを支払う不正取引があったと発表した。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(
Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が11月14日に発表した調査報告で明らかになった。

基金の援助で行ったマラリア感染防止用の同社の防虫剤入り蚊帳 Olyset Net の契約を受注するたびに、架空のコンサルタント会社を経由して手数料名目で個人口座に見返り金を振り込んでいた。
2006~10年の間に計7回、カンボジア政府のマラリア対策組織(National Centre for Parasitology, Entomology and Malaria Control )の高官2人に対し、蚊帳の受注額の2.25~6.5%を渡した。

同社によると、不正にかかわったのは日本人ではない部長級マネジャーと部下の社員で、内部調査に対し不正な資金供与を認めたため、懲戒解雇した。

基金の発表では、住友化学シンガポールのほかに、スイスに拠点を置き、蚊帳("PermaNet")や水の濾過フィルター("LifeStraw")など緊急事態や病気に対応する製品に特化した企業のVestergaard Frandsenの不正が判明した。
同社は154,241ドルを支払っていた。

両社の支払った合計410,712ドルのうち、National CentreのDirector が350,904ドル、Deputy Directorが59,809ドルを受け取っていた。

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本件で何故、住友化学が賄賂を払ったのか、不思議である。

先ず、カンボジアは基金の支援を受けて蚊帳を購入することは決まっており、供給メーカーは多くないし、Olyset NetはWHOからも使用を推奨されていることもあり、賄賂を払わなくても採用されるのはほぼ確実であろう。

Olyset Netは多くの国で採用されていることから、基金は価格を分かっているはずで、賄賂分を価格に上乗せすることは不可能と思われ、賄賂分は持ち出しになる。

 その意味では、「不正行為」であることは間違いないとして、基金に損失を与えてはいないと思われる 。
基金も "all the mosquito nets procured by that grant were provided as intended" としている。

もしかすれば、カンボジアでは、インドネシアなどと同様に、賄賂なしでは物事が動かないということなのかもしれない。 (言い訳にはならないが)

インターネットでは、カンボジアへの入国の際に賄賂がいるとか、「(交通違反の罰金の代わりの)ワイロを受け取らない交通整理員」としてプノンペン市内の男性公務員を紹介した動画が、カンボジアのフェイスブックで人気となっているとの記事が出ている。

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Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malariaは世界で毎年合計600万人以上の命を奪っているエイズ・結核・マラリアに立ち向かうために、国や政治を越えて新しい資金調達の方法を作ろう、と、2002年に設置された世界基金(本部 :ジュネーブ)で、この3つの病気に関する治療・ケア&支援、予防の各プログラムに資金を配分している。

2000年の九州・沖縄サミットでわが国が初めて感染症対策を主要議題に取り上げ、それがきっかけで設立された。

また、アナン国連事務総長が2001年4月に "call to action"を発表し、世界に行動を起こすよう呼びかけた。

これまでに151か国の1000件を超える事業に資金供与を承認しており,2012年には約33億ドルを実際に供与した。
世界基金の支援により,設立以来約870万の命が救われている。

我が国は世界基金に対し,これまで17.4億ドルの拠出を行っており,米国,フランス,英国,ドイツに次いで第5位の拠出国である。

2009年末の基金のレポートは次の通り述べている。

2009 年12月までに、発展途上国のエイズ・結核・マラリア対策への支援として承認された金額は総額192億ドル、そのうち100 億ドルが支出ずみ。

設立以来の僅か8 年間で、世界基金はグローバル・ヘルス( 地球規模の保健医療課題)に対する重要な多国間援助機関となった。基金を通じた支援は、発展途上国の結核対策、マラリア対策に対する国際援助総額の3分の2、エイズ対策では5分の1を占める。

2009 年12 月までに490万人の命が救われたと推計されている。そして、世界で3300万人 のHIV 陽性者、何百万人ものマラリア患者や感染リスクにある人々、年間940万人の結核患者が、生きる望みを取り戻すことに役立っている。

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11月14日のレポートで基金は以下の通り述べている。

基金は不正行為を一切許さないzero toleranceである)。
積極的に調査を行って不正を暴き、不正に使われた資金を取り戻す。調査結果は透明性の観点から公表する。

今回、2006年から2011年の間に、国際企業の2社がカンボジアの役人2名に、マラリア予防のための殺虫剤練り込み蚊帳の供給契約を得る見返りに約41万ドルのコミッションを支払ったことが判明した。

このため、基金は2社(Vestergaard Frandsen とSumitomo Chemical Singapore)との契約を一時停止する。

両社は調査にフルに協力し、関係した従業員に対する処分を行い、将来のための予防措置を講じた。

基金はカンボジアでのAIDS、結核、マラリアと戦うため2003年以降331百万ドルを投じ、マラリアでの死亡を80%減らし、結核では45%、AIDSでは50%減らした。

今回のケースはカンボジアのマラリアとの闘いに直接の影響はなかったが、契約の見返りにコミッションを受け取ることは我々の 使命に反する。
調査の結果、コミッション問題はあったが、基金の資金で購入された蚊帳は所期の目的どおり納入されている。


基金の調査報告書は http://www.theglobalfund.org/documents/oig/OIG_GFOIG13050InvestigationCambodia_Report_en/



住友化学は11月27日、60%出資する日本オキシランについて、残り40%を出資するLyondell  Centennialから保有株式40%全てを取得し、住友化学の完全子会社としたあと、2015年5月をめどにSM、PO、PGの製造・販売を終了すると発表した。

住友化学は次の定修時期の2015年にエチレンを停止することを決めており、一部誘導品の停止を含めた最適化を検討してきたが、日本オキシランの工場を停止することを決定した。

停止する工場は以下の通り。

SM:年産425千トン、PO:181千トン、PG:100千トン。

日本オキシランはハルコン法のPO/SM併産法を採用している。

住友化学はこれとは別に自社開発の単産法でPOを生産している。(能力200千トン)
同社では日本オキシラン停止後も、高い コスト競争力と低い環境負荷を実現した千葉工場 の単産法プラントで PO の製造 を継続し、引き続き販売する。

SMについては、住友化学は日本オキシランに加え、電気化学とのJVの千葉スチレンモノマーに参加していた。

電気化学と住友化学は2012年1月、千葉スチレンモノマーを2012年4月末に電気化学の100%子会社とすることで合意したと発表した。

千葉スチレンモノマーは1992年1月に電気化学60%、住友化学40%の出資で設立、電気化学の千葉工場内に年産27万トンのプラントを建設した。
製品の引取は出資比率見合いで、電気化学 162千トン、住友化学 108千トンとなっている。

電気化学は自社プラント(24万トン)と千葉スチレンモノマーのプラント(27万トン)を同社千葉工場に有するが、これを機に自社プラントを停止し、競争力のあるプラントでの集中生産体制を確立、スチレンチェーンの基盤強化を図る。

住友化学は日本オキシランにSM/PO併産設備(SM 412千トン)を有し、千葉スチレンモノマー品の販売を日本オキシランに委託しているが、千葉スチレンモノマーの生産枠(108千トン)の放棄で、競争力が低下している輸出を縮小した。

2012/1/13  電気化学と住友化学、スチレンモノマー事業を縮小 

日本オキシランの工場の停止の結果、住友化学のSMはゼロとなり、POは単産法の20万トンのみとなる。

住友化学は2009年9月末に、三井化学とのJVの日本ポリスチレンの千葉工場の操業を停止し、その後、日本ポリスチレンを解散している。

2009/4/4 日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

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日本オキシランは1972年に設立された。

1967年にアメリカのHalcon International Inc.が、メキシコで開かれた世界石油会議で、塩素を使用せず、過酸化物を種々変えることによってプロピレンオキサイドと各種の併産品を選択的に生産することができる新方法を発表して、俄然注目の的となった。

これはAtlantic Richfield (ARCO  )との共同開発によるもので、両社はJVの Oxirane Chemical を設立、テキサス州ベイポートで、同法の世界最初の工場としてPO 75千トンの工場を建設した。当初はPO/SM、後にPO/TBAも生産した。日本オキシランの名前はこれから取った。

それまでのPOの製法は塩素法であった。

プロピレン+塩素 → クロルヒドリン
クロルヒドリン+苛性ソーダ → PO+塩化ナトリウム

ハルコン法

プロピレン+エチルベンゼン(or イソブタン)→PO+SM (or MTBE)

日本の各社が導入を競ったが、住友化学はAtlantic Richfield と洗剤原料のJVの日本アトランチック(花王を含めたソフト型アルキルベンゼン生産JV)を有しており、Halcon社長と住化の児玉福社長が懇意であったことから、住友化学が技術導入に成功した。
住友化学は当時、昭和電工とPSのJV、日本ポリスチレンを持っていたことから、昭電を含めたJVを設立することとした。

能力はPO 90千トン、SM 225千トンとし、住友化学の千葉製造所に建設することとした。
出資比率はアメリカ側 50%
、住友化学 30%、昭和電工 20%とした。
先ず1972年8月に住友化学と
昭和電工の2社で日本オキシラン設立し、その後、アメリカ側のAtlantic Richfield とHalconが出資した。
1973年に千葉県の認可を受けて着工し、1975年8月に完成した。


1980年にハルコン持分がARCOに譲渡され、ARCOが 50%となった。

その後、採算悪化から1982年に一時的に製造部門を分離してスミアルコを設立(住化 50%/ARCO 50%) したが、1987に日本オキシランがスミアルコを吸収、住化 44.76%、昭電 5.24%、ARCO 50%とした。

20026月に昭和電工が離脱、住化 50%、Lyondell 50%とした。

2000年9月に住友化学はPOの新法開発を発表した。

プロピレンとキュメンからPOを生産し、副生するクミルアルコールはキュメンにして再度利用するもの。
2003年に千葉に200千トン設備を建設した。

住友化学はPO事業を石油化学部門のなかでコア事業の1つに位置づけ、2003年3月に日本オキシランの出資比率を60%に引き上げ、代わりにSM販売については日本オキシランに移管した。

それまで日本オキシランはPOを直接販売していたが、SMについては住友化学が日本オキシラン設立以前に製造販売していたことから、日本オキシラン品を受託販売していた。(住友化学は千葉に100千トン設備を持っていたが、産構法で停止した。)

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Halcon Internationalは1987年にScientific Design Companyに改称した。
Scientific Designは2003年に
Saudi Basic Industries Corporation (SABIC) とSüd-Chemie AGに買収された。

2011年にClariantがSüd-Chemieを買収、現在はScientific DesignはSABIC とClariantのJVとなっている。


1985年にARCOの子会社としてLyondell 設立され、1989年に独立した。
ARCOは2000年にBPに買収されたが、これに先立ち、1998年に
Lyondell はARCO Chemical Company を買収している。

1997年にはMillennium Chemicals とのJVでオレフィンおよぴポリオレフィンメーカーのEquistar Chemicalsを設立した。
当初はLyondell が41%出資で、MillenniumとOccidental が各29.5%出資であったが、2001年にOccidentalは持株をLyondellに売却し、その代金でLyondell株を購入している。

2004年12月、Lyondell とMilleniumが合併した。合併後の姿はMilleniumとEquistarがLyondell の子会社の形をとっている。

2007年にBasellがLyondellを吸収合併し、LyondellBasell Industriesとなった。

 

 

住友化学は11月22日、㈱ボナックとの間でボナックが保有する核酸医薬原薬の製造・販売に関する知的財産権の独占的実施権の許諾契約を締結、大阪工場に開発用途の核酸医薬原薬の製造設備を新設し、2014 年度第3 四半期から同原薬の受託製造を開始すると発表した。

核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。

核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。

ただし、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。

ボナックは、これらの課題解決に有力な独自の核酸医薬のプラットフォームを確立し、特許を日本で取得したほか欧米の主要国で出願中で、国内外の製薬メーカーと核酸医薬品開発についてライセンス交渉を進めるとともに、核酸医薬品の自社開発を行っている。

RNA干渉法を用いた核酸医薬に関する研究開発を進めてきた九州大学、東京医科大学、ボナックの3者は日本独自の核酸医薬に関する新しい基盤技術を確立するに至り、それを機に眼科領域に特化した、新しい分子標的核酸医薬の開発と臨床応用を本格的に進めるために、2012年3月19日に、産学連携ベンチャー「アクアセラピューティクス」を福岡市に設立した 。

住友化学は、医薬原薬・中間体については30 年以上にわたる生産実績があり、優れた工業化技術、GMP対応力を有するとともに、高度な品質保証体制を確立している。

核酸医薬原薬の工業化パートナーを探していたボナックと、同社の技術の将来性、優位性に着目した住友化学のニーズが合致したことから、今回の決定にいたった。

住友化学は、今後、ボナックおよび同社からライセンスを受けて医薬品開発を行う国内外の製薬メーカー向けに核酸医薬原薬の受託製造を行い、医薬化学品事業の強化を図る。
ボナックは、住友化学から安定的に高品質の核酸医薬原薬を確保し、核酸医薬品の早期実用化に向けた開発を進める。

ボナックはタルク、カオリン、炭酸カルシウム、マイカ等の輸入やあらゆる無機粉末を扱う鉱物粉末の専門メーカー の林化成が2010年2月に設立した。
社名のボナック(BONAC)は核酸化学の架け橋(Bridge Of Nucleic Acids Chemistry)を表す。

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核酸医薬品にはいろいろの種類があり、世界の多くの企業が開発に当たっている。(主としてsiRNAを開発している)

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001922.pdf


しかし、現状では市販されているのは3品目しかない。

初めの2つはいずれも眼性疾患用である。

第1号は1998年に米国で認可されたエイズ患者のサイトメガロウイルス網膜炎の治療薬「Vitravene」(fomivirsen)で、米国のISIS Pharmaceuticalsが開発した。

天然型のDNA製剤 (アンチセンスDNA医薬 )のVitraveneの問題は、注射すると血中で分解されることと、細胞内になかなか取り込まれないこと。
そのためVitraveneは患者の眼球に局所注射して分解を抑止、局所のアンチセンスDNAの濃度を上昇させてやや無理矢理細胞内に取り込ませて薬効を発揮した。 (全身投与できず、対象疾患も極めて限定された )

第2号は2005年にEyetechとPfizerから上市された血管新生型加齢黄斑変性症(AMD)治療薬でアプタマー医薬の「Macugen」(ペガプタニブナトリウム)

第3号は2013年1月にFDAが承認した家族性高コレステロール血症の治療薬 の「Kynamro」(mipomersen) で、アポたんぱく質B100のmRNAを標的とした第二世代のアンチセンスDNA医薬 。
家族性高コレステロール血症患者のホモザイゴート(両親からLDL受容体の変異を共に遺伝した患者)に限り、承認された。
米Isis Pharmaceuticals社が開発、米Genzyme社が販売する。

ボナックは、自社の有する高い有機合成・核酸合成技術に基づいて一本鎖核酸による遺伝子発現制御プラットフォーム技術「nkRNA®」「PnkRNA™」(ボナック核酸)を開発し、2012年4月に国内特許を成立させた。

  1. nkRNA® : 「遺伝子発現制御のための一本鎖核酸分子」 (特許第4968811号)
  2. PnkRNA™ : 「含窒素脂環式骨格を有する一本鎖核酸分子」 (特許第4965745号)

ボナック核酸は従来のsiRNA(二本鎖短鎖RNA)とは異なる、ユニークな分子内構造(2次構造)を有する一本鎖長鎖核酸を構造的な特徴と する。
既に日本国内で特許が許諾されているため、特定の欧米企業が専有する既存の核酸干渉に関する基盤特許技術に依存することなく、独自の核酸医薬を開発することが可能とな る。

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核酸医薬品の原料は、日東電工の米子会社 Avecia Biotechnology と米 Agilent Technologiesが合計8割程度の世界シェアを持つ。

日東電工は2011年2月に、今後成長が期待される核酸医薬の分野において事業基盤の強化を目的に、米国マサチューセッツ州にある核酸医薬の製造受託分野でトップのAvecia Biotechnologyを買収した。

Avecia Biotechnologyは、核酸医薬の製造受託分野でトップシェアを誇り、前臨床段階から商業的製造までのステージにおいて、 世界最大のcGMP製造能力をベースに、分析方法開発、プロセスバリデーション、安定性試験、品質管理及び薬事面サポートと幅広いサービスを提供してい る。

日東電工では下記のシナジー効果を発揮し、更なる事業拡大を図っていくとしている。

1)核酸医薬分野での優位性のある市場ポジション及び顧客ネットワーク  
2)ドラッグデリバリー技術を含む、特許・技術の融合
3)日東のポリマービーズ技術を活用した、核酸合成効率の向上と製造原価削減
4)Aveciaの良好な地理的立地と、更なるサービス提供エリアの拡大

Agilent Technologiesは、化学分析機器や電気・電子計測機器の開発・製造・販売・サポートを行う業界最大手の企業。核酸分野での主なビジネスは研究用・GMP レベルの核酸の受託合成、分析受託、合成・分析機器の販売など幅広い。

Hewlett-Packardの一部門であったが、2000年にHPが株式を売却、独立した。

2006 年に核酸の製造を行うSynPro を買収、さらに2008 年にDawpharma の核酸医薬品製造ビジネス部門を買収し業務を拡大している。

住友化学は原料の需要家でもあるボナックと組むことで、先行する2社を追う。
ボナックなどの開発が進んで市販できる核酸医薬品が出るときは、量産用の設備の建設を検討する。





    

クラレは11月21日、DuPont から同社のPackaging & Industrial Polymersの一部であるビニルアセテート (Glass Laminating Solutions/Vinyls)関連事業を 543 百万ドル+在庫相当額で買収する契約に調印した。
所管当局の正式な承認を経て、2014 年前半の完了を目指す。

買収対象事業は、安全ガラスの中間膜として使用されるポリビニルブチラール(PVB)シート、ビニルアセテートモノマー(VAM)、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂などで、建築分野・自動車分野等広範な産業分野において使用される製品群を有しており、当該事業の年間売上高は500 百万ドル以上となっている。

工場所在地は以下の通りで、他に、北中南米、欧州、日本、韓国、中国等に販売等の拠点があり、従業員は約600人。

 米国: 3ヵ所(テキサス州、ノースカロライナ州、ウエストバージニア州)
 欧州: 2ヵ所(ドイツ、チェコ)
 アジア:1ヵ所(韓国)

デュポンコリアの蔚山工場ではブタサイト(合わせガラス中間膜PVBシート)を生産している。
他の工場の生産品目や能力は今のところ不明。

クラレは 世界に先駆けてビニロン繊維の原料としてPVA の工業化に成功(昨日の記事参照)、ビニルアセテート関連事業のパイオニアとして、PVA 樹脂、PVB 樹脂・フィルムのほか、液晶ディスプレイや洗剤個包装などに使用されるPVA フィルム、食品包装やガソリンタンクなどに使用されるEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂(クラレ商標<エバール>)、アスベスト代替のセメント補強材料などに使用されるPVA 繊維ビニロンを世界的に展開している。

DuPontのVA 関連事業に携わる世界中の人材、技術力・開発力および生産・販売網は、今後の持続的成長に貢献するとしている。

ーーー

クラレの2012年4月の中期経営計画「GS-Ⅲ」説明会での 同社の構想は以下の通り。

同社の現状は以下の通り。(今回のDuPontからの購入は含まず、数字は能力:千トン)
  日本 アジア 欧州 北米 合計
酢ビ 岡山 150             150
PVA(ポバール)樹脂 岡山・新潟 124 Kurare Asia
Pacific

40

Kurare Europe
     (増強中)
70
(24)
Kuraray
 America
(40) 234
(+64)
ポバールフィルム 玉島・西条
(増強中)
      MonoSol                               

MonoSol

   
PVB樹脂         Kuraray Europe 39     39
PVBフィルム     (検討中)   Kuraray Europe
  (増強中)
34
    34
エバール 岡山 10 (検討中)   Eval Europe 24

Kuraray
 America
  
(増強中)
 

35
+12
69
  (+12)

日本:

酢ビ:1983年に中条工場の天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止。

ポバールフィルム:
     2007年初めは西条3100万m2、玉島3000m2の合計6100万m2であったが、

   現状は 1億8000万m2となっており、2013年6月には西条増強で合計2億1200万㎡まで拡大する。
     西条工場の増強では大型液晶テレビ用偏光フィルムのための幅5000mmの広幅タイプの生産ができる。

アジア:

クラレは1996年10月、シンガポールに日本合成化学との50/50JVのPoval Asia を設立したが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。

2008年7月にアジア・オセアニアのポバール樹脂販売会社Kuraray Specialities Asia と統合し、Kuraray Asia Pacificとした。

欧州:

  1) PVA、PVB事業

クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。
工場はフランクフルトで、能力はPVA 50千トン、PVB 16千トンであった。その後増強。


2006年
9月に
Kuraray Europeが吸収合併した。

  2) PVBフィルム

2004年11月にRütgers AGの子会社HT Troplast社から買収した。
工場はドイツの
トロイスドルフで、能力は26千トンで、2007年に34千トンに増強した。 
これにより、PVA樹脂→PVB樹脂→PVBフィルムの一貫体制を完成

2012年3月、世界的なPVBフィルムの需要拡大(特に新興国を中心に伸長する自動車用途)に対応し、増強を決定(能力非公表)。2013年11月稼働目標。

  3) Eval Europe

1999年にベルギーのアントワープでエバールの生産を開始した。

     4) MonoSol (ポバールフィルム)英国:下記


米国
 

当初、Eval Company of America を設立し、1986年にテキサス州パサディナでエバールを生産開始した。
その後、
Kuraray Americaに吸収合併した。

2011年1月に酢ビ・ポバール事業の拡大のため、エバール工場の近くに土地を購入。
2012年にPVA樹脂40千トンの建設決定(2014年9月完工予定)

MonoSol:
クラレは2012年5月、米国のポバールフィルムのメーカーのMonoSol社を買収すると発表した。
MonoSolは、洗剤・農薬・染料などの個包装、人工大理石離型用など産業用ポバールフィルムではリーディングカンパニーの位置にある。
本件買収により、クラレはポバールフィルムに関し、偏光フィルム向けの光学分野だけでなく、広範な産業分野においてもグローバルリーダーとなるとしている。
工場は米国と英国。

 


 

クラレは、中国へのビニロンプラント輸出50 周年記念式典を11 月15 日に北京で開催した。

ビニロンはポリビニルアルコール(ポバール)を原料とする合成繊維で、京都大学の桜田一郎教授らによって1939 年に開発された。
米国でDuPontのWallace Carothersが1935年にナイロンを開発し、評判になった直後で、「日本のナイロン誕生」と騒がれた。
当時は「合成1号」と名付けられた。

1943年に倉敷レイヨンの大原総一郎が岡山に日産200kgの重合、紡糸の一貫工場を建設した。

大原は戦後直ちに事業の遂行を決め、1948年に原料から紡糸までの一貫試験工場を建設した。
この時点で桜田教授から「ビニロン」の名称の提案があり、採用された。

1949年に商工省は「合成繊維工業の急速確立に関する件」の省議決定を行い、ポリビニールアルコール系繊維を倉レ、ポリアミド系繊維を東レ担当とした。

1950年にフィラメント日産5トン、ステープル5トンの商業生産プラントが完成した。
カーバイドを生産していた昭和電工・富山工場の一角でカーバイドアセチレンからPVAを生産、岡山工場に重合、紡糸工場を建設した。

建設に当たっては政府からの資金援助が「日本にとって贅沢品だ」として閣議によって否決され、資金調達に苦しんだ。
反対した大臣のなかに大屋晋三運輸大臣(9年間の参院議員の前後は帝人社長)がいる。
大原総一郎は「日本の繊維産業を復興するものだ」と一万田日銀総裁に直談判し、協力を得て、15銀行による14億円の協調融資が成立した。

2010年に「ビニロン」が国立科学博物館により「未来技術遺産」に選ばれた。

 

他方、東レは1951年にDuPontから当時の東レの資本金を3億円も上回る10億8千万円で特許を購入した。
DuPontが工業化しているのは66タイプだが、東レが事業化するのは6タイプで異なるため、特許権だけ買い、ノウハウは自社開発とした。(特許購入は、米国に製品を輸出する際に、物質特許による特許紛争が起こることを読んだもの)

同社は1938年にナイロン特許が公告された直後から研究を開始し、1943年から試作を行っていた。

ーーー

1958 年に中国化学工業考察団が来日した際、民生用繊維増産の目的でビニロンプラント輸入の申し入れがあり、交渉がはじまった。

当時は日中間に国交が樹立されておらず、また台湾政府との関係もあって政治問題化した。

倉敷レイヨンは政府や政党幹部、中国在勤の西側外交筋へ積極的に働きかけた結果、1962 年11 月に締結された「日中総合貿易に関する覚書(LT協定:廖承志と高碕達之助の名前から)による日中貿易の目玉として輸出承認が得られ、中国へのプラント輸出の第一号として、1963 年6月にポバール・ビニロン一貫生産プラントを輸出する契約を締結した。

中国側の代金延べ払いが議論を呼んだが、関係各大臣の協議で、金利を原案の年4.5%から6%に引き上げることを条件に認められた。

これが、西側諸国からの対中国プラント輸出の第一号となった。

当時、大原総一郎はこう言っている。

私の念願することは、日産30トンのビニロンは、6億 5千万の人口に対しては、1年1人当たり僅かに0.017キロの繊維を供給するに過ぎないものであるが、繊維に不足を告げている中国人大衆にとって、いささかでも日々の生活の糧となり、戦争によって物心両面に荒廃と悲惨をもたらした過去の日本人のために、何ほどかの償いにでもなればということ以外にはない。

周恩来総理、陳毅副総理、郭沫若外交部長らが、訪中した大原総一郎社長と会見した。
 

 


米金融最大手のJPMorgan Chase は11月19日、2008年の金融危機を招いた住宅ローン関連証券の不正販売を巡り、総額130億ドルを支払うことで米司法当局と合意した。

米金融当局はほぼすべての大手金融機関を対象に責任を追及しており、今後、他の金融機関にも責任追及の動きは広がる。

司法省や米連邦住宅金融庁(FHFA)、複数の州当局などは、JPMorgan、Bear Stearns、Washington Mutual が2008年末までに十分な情報を開示せずに住宅ローン担保証券(RMBS)を住宅公社や投資家らに販売、住宅バブルの崩壊で価値が急落し、多額の損失を被ったとしてJPMorganの責任を追及していた。

大手投資銀行 Bear Stearnsは2008年5月30日付けで、JPMorgan Chaseに救済買収された。
住宅金融大手 Washington Mutualは2008年9月25日に資産差押えとなり、入札により事業の大部分をJPMorgan Chaseが取得した。

被害を被った連邦住宅貸付抵当公社(Federal Home Loan Mortgage CorporationFreddie Mac)と連邦住宅抵当金庫(Federal National Mortgage AssociationFannie Mae)は2008年9月6日に米連邦住宅金融庁(FHFA)の公的管理下に置かれた。

政府によると、JPMorganが2006-07年に引き受けた住宅ローンの一部を外部機関が調べたところ、27%が引き受け基準を満たしていなかったが、同行はその少なくとも半分を 住宅ローン担保証券に組み込んで販売した。

JPMorganは、同行が扱った住宅ローンは基準を満たしているとしたが、従業員の一人が基準を満たしていなかったと語ったことは認めた。

司法長官は声明で「今回の調査で明らかになった行為は間違いなく住宅ローン危機の種をまくことにつながっていた」と述べた。
JPMorganのCFOは「いかなる違法行為も認めておらず、認めた事実が残りの訴訟に影響するとは考えていない」と語った。

JPMoraganは当初、住宅ローン担保証券の不正販売の大半は、同社が金融危機時の08年に救済買収した大手投資銀行のBear Stearnsと  Washington Mutualが起こしたもので、ブッシュ政権の要請に基づき救済買収したものであるとして責任を減免するよう求めていたが、司法当局は要請を拒否した。

これまでWall Street - White House complex(Wall StreetのトップがFRBや財務長官などを勤め、退職後は再度 Wall Street に戻る)がWall Street重視の政策をとってきており、金融危機で政府の支援を受けた金融機関が高額の報酬を支払うなど、国民の不満が高まっている。

今回は不人気なオバマ政権が人気対策で強攻策を取ったとのコメントが多い。

特に、政権の要請で救済合併したところの責任をすべて負わしており、金融機関側に不満が出ている。


和解金130億ドルの内訳は以下の通り。

1) 住宅ローン担保証券の品質に関する不適正な情報開示の罰金 20億ドル

2) 住宅ローン担保証券の買い手に対する賠償金 70億ドル

米連邦住宅金融庁(FHFA) 40億ドル(Freddie Mac 27.4億ドル、Fannie Mae 12.6億ドル)
National Credit Union Administration 14億ドル
Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC) 5.15億ドル
New York州など5州 計 10.57億ドル

3) 損害を被った住宅ローンの借り手への支援金 40億ドル

このうち、住宅ローンの評価損に少なくとも15億ドル、住宅所有者に対する月間返済金の軽減に最大5億ドルをそれぞれ充て、残り20億ドルは住宅危機で大きな打撃を受けた地域に住む低中所得者向け新規ローンや荒廃住宅の解体などに利用される。

なお、刑事上の免責は和解に盛り込まれなかったため、不正販売に関わった行員らに対する刑事訴追の可能性は残った。

 

今回の和解は住宅ローン担保証券に関する連邦政府、州政府との和解であり、他にも係争はある。

今回の発表に先行して、JPMorgan Chaseは11月25日、米連邦住宅金融庁(FHFA)に51.5億ドルを支払うことで和解したと発表した。
これには上記の住宅ローン担保証券に対する40億ドルのほかに、証券化されていない住宅ローン(whole loan ) 分が11.5億ドル含まれている。

Freddie Mac 4.8億ドル、Fannie Mae 6.76億ドルの合計 11.5億ドル

JPMorgan Chaseは11月15日、住宅ローン関連の金融商品を不正に販売した問題で、21の機関投資家に、合わせて45億ドルを支払うことで和解に達したと発表した。

以上を合計すると、JPMorgan Chase の支払額は186.5億ドルに達する。

JPMorgan Chase では和解に備えて2013年7-9月期に訴訟関連引当金を92億ドル追加しており、引当金残は9月末時点で230億ドルになっており、今回分はすべて引き当て済みとなっている。

 

住宅ローン問題とは別に、JPMorgan Chase は本年9月、昨年発覚した巨額トレーディング損失に関連し、連邦証券法に違反したことを認め、9.2億ドルを支払うことで合意した。

同行経営幹部は2012年4月の時点で、ロンドンのチーフ・インベストメント・オフィス部門が7.5億ドルの損失を隠蔽するためにトレーディング勘定の水増しを行っていたことを認識していた。幹部の一部は昨年、第1四半期の決算報告に署名するのに「難色を示した」という。

ロンドンの部門は日々大きなポジションを動かし、市場では「London Whale(ロンドンの鯨)」とニックネームをつけていた。
 


 


韓国の暁星は11月4日、ポリケトンの開発・商業化に成功したことを発表した。

ポリケトンはエチレンと一酸化炭素を原料とする環境に配慮した高分子素材。

 

暁星では「ポリケトンはナイロンに比べて耐衝撃力が 2.3 倍強く、化学物質に対する安定性は 1.4~2.5倍に上る。耐摩耗性も従来の最高レベルのPOM比 14倍以上、気体遮断性も現存する素材の中で最も優れたエチレンビニルアルコールと同等の水準である」とし、「自動車の燃料系統の部品、電子製品の内・外装材などで脚光を浴びるだろう」と説明した。

暁星の李相雲副会長は「一酸化炭素を原料とする環境にやさしい低炭素の素材」、「1938年にナイロンが開発されて以降、75年ぶりに登場した革命的な素材 」としている。

韓国紙は「ポリケトンは1970年代以降、Shell などが量産化に挑戦していたが、触媒剤の開発から上手くいかず、失敗続きだった 」とし、「世界初の商用化」とはやしている。

暁星は2004年に趙錫來会長の「今まで世の中になかった素材を開発せよ」との指示で研究を始め、10年間に500億ウォン(約46億円)を投資した末、ようやく独自開発に成功した。
国内 133件、米国・欧州・中国、日本など海外 27件の関連特許出願・登録を終えている。

2012年3月に蔚山の龍淵工場に1000トン規模の生産施設を作り、試験稼動を行って おり、最近1年間で韓国・ドイツなど約100社に試作品を供給し、その品質について認証を受けている。

暁星は2年以内に2000億ウォンを投資し、年産5万トン規模のポリケトン工場を建てる計画 で、2020年まで1兆500億ウォン台の追加投資を検討している。

ーーー

日本では旭化成が独自の重合技術と紡糸技術により開発された世界初のポリケトン繊維を開発、「サイバロン」と名付けた。
独自の湿式紡糸技術により、技術化した新しいタイプの繊維で、特に接着性、耐疲労性、耐薬品性、加工性に優れており、その接着性・耐疲労性を生かして、タイヤなどのゴム資材や電子材料用途を目指した。

2001年にポリケトン繊維の開発を明らかにし、その後新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)の基盤技術研究促進事業にも採択され、2002年から5年間で約5億円の資金援助も受けて開発を進めた。2006年にパイロットプラントを稼動させた。

同社では2009年度に年産2000トンの設備を導入するとしていたが、最終的に事業化に至らず、2010年に事業化研究を中止した。

同社はその後、パイロットプラントを活用して、ポリケトン樹脂を使用した多孔膜を開発した。

ナノサイズで制御された微多孔構造とポリケトン独自の特性により、機能性フィルターやセパレーター材料、細胞培養基材、再生医療母材などの用途展開を図っている。

 

 

ブラジルの資源大手 Valeは11月11日、ノルウェーのアルミニウム・エネルギー大手 Norsk Hydro の持ち株売却を開始すると発表した。

アルミニウム業界から撤退し、鉄鉱石やニッケルなどの主力事業に経営資源を集中するのが狙い。


Valeは2011年初め、ブラジルに保有するボーキサイト・アルミナ・アルミ資産をNorsk Hydroに売却し、引き換えに同社株22% を取得した。

しかし、その後の世界的なアルミニウムの供給過剰が響き、Norskの株価は大幅に下落し、Valeは昨年には9億7500万ドルの評価損を計上した。

Valeは2013年12月、この持ち分を売却する意向を明らかにした。
当初は売り急ぎはせず、利益が出るまで待つ構えでいたが、その後も値下がりが続いたため、今回、半分以上(約12%相当、時価では約10億8000万ドル前後)を売却する。
残りについても今後売却する。

Valeでは主力事業以外の資産を売却する方針で、売却資金は主力事業の鉄鉱石、ニッケル、銅、石炭、肥料の事業分野への大規模投資に充てる。

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Valeは2011年2月にブラジルに保有するボーキサイト・アルミナ・アルミ資産をNorsk Hydroに売却した。

2010年5月にNorsk Hyrdoとの間で、日本とブラジルが共同で行っている「アマゾン・アルミニウム事業」(アルミ精錬のAlbras とアルミナのAlunorte)を含むアルミ事業とアルミナ事業及びボーキサイト鉱山の権益を売却する契約を締結した。

Norsk HydroはAlbrasの権益51%、Alunorte権益91%(既出資の34.03%を含む)と、パラゴミナス鉱山の権益 60%及び Para州に建設する計画のCAPアルミナの権益81%(既出資の20%を含む)を保有することになる。

Norsk Hydroはパラゴミナス鉱山の残り権益40%については2分割2013と2015年にそれぞれ2億ドル)で購入するオプションを持つ。

パラゴミナス鉱山は世界3位のボーキサイト鉱山で、年産能力は990万トンであったが、CAPアルミナへの供給で1500万トンに拡大する。

Valeは現金11億ドルと、Norsk Hydroの株式の22%を受け取る。これらに7億ドルのJVの債務負担を加えると、合計で49億ドルに相当する。
(Norsk Hydroは格付け維持と将来の投資資金確保のため、17.5億ドル相当の増資を行った。)

詳細は、2010/6/16 ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 



オリンパスは11月18日、テルモから受けていた66億円強の損害賠償請求に対し、60億円を支払うことで和解したと発表した。
オリンパスは「和解で早期に解決することが最善の策と判断した」と説明している。

テルモは過去に第三者割当増資で引き受けたオリンパス株 681万株について、2011年に発覚したオリンパスの粉飾決算事件後に株価が急落し、損失を被ったとして賠償金を請求していた。

オリンパスは2013年4~9月期決算でテルモへの和解金を訴訟損失引当金として特別損失に計上している。

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テルモとオリンパスは2001年4月25日、医療機器分野における開発、製造、販売等に関し、包括的な業務提携基本契約を締結した。

両社は2005年8月、業務提携の強化に合意した。

両社はまた、この業務提携強化を経営レベルで推進するため、その裏付けとして両社間の資本提携を行うこととした。

テルモ:オリンパスの6811千株  2.51%   
オリンパス:テルモの4715千株  2.20% 

更に両社は2006年12月に、共同事業に関して合意、2007年4月にオリンパス バイオマテリアルにテルモが参加し、オリンパス テルモ バイオマテリアルとした。

2012/1/19 オリンパスとテルモ

 

テルモは2005年8月にオリンパスと資本提携を行った際、総額149億9782万円の第三者割当増資を引受けた。

しかし、オリンパスの過去の損失先送り問題により第三者割当に係る有価証券届出書等 に重要な事項に係わる虚偽記載があったことが判明した。

テルモは2012年7月、 これによる株価の低下で、66億1167万円の損害が発生したとして、損害賠償の請求を行った。

 

2012年に、オリンパスが他社との資本・業務提携によって再建を目指す方針を固め、国内外の5社(ソニー、パナソニック、富士フイルム、テルモ、韓国 サムスン電子)を軸に提携先の検討を進めていると報じられたが、このなかにテルモも含まれている。

テルモは損害賠償請求の直前に、オリンパスに対し、500億円の資本提携と将来の共同持ち株会社の設立に向けた統合協議委員会の立ち上げを提案している。

この統合が実現すれば、グローバル医療の潮流である低侵襲治療において、世界で伍していけるリーディングカンパニーになれるとしている。

統合提案は、オリンパス社が各分野において他社と最適な事業・技術提携ができる内容となっている。

統合提案と同時に訴訟を行ったのは、虚偽記載による民事責任が、効力発生から7年が経過する2012年8月3日頃には権利が消滅してしまうことに よるもので、「株主への責任を全うするというガバナンスの観点から、やむを得ず提訴した」としていた。
テルモは「本訴訟が、オリンパスに対する統合提案に何ら影響を与えるものではない」とのコメントを発表した。

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ソニーとオリンパスは2012年9月28日、資本業務提携すると発表した。ソニーがオリンパスに500億円を出資し、11.46%を持つ筆頭株主になる。

両社は2013年4月、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズを設立した。ソニー51%、オリンパス49% 出資。
事業内容:
(1) 4K以上の解像度技術、3D機能等を有する新型外科用内視鏡及びその関連システムの開発・設計・製造・販売 
(2) 手術室等向けの医療機器・映像機器の統合ソリューション事業 など


 

IHI 等が出資するIHI NeoG Algae合同会社は11月14日、油分を大量に含む藻の屋外での100m2 規模による安定培養に成功した と発表した。
屋外の開放型の池で、増殖に必要なエネルギー源として太陽光のみを利用し、他の藻類や雑菌などに負けない培養方法を開発したことで、藻を高濃度で安定的に増殖させることができる点に、世界的に見ても優位な特徴がある。

生産コストの試算を従来の1リットルあたり1000円から同500円に引き下げた。実用化目標の 2020年までに、従来燃料と同等の価格競争力を持つ同100円以下を目指す。

次のステップとして、量産を見据え数千㎡規模での培養を実現するための場所の選定と、さらなるコスト低減に向けたプロセス改良を進める。

また、生産する油をMOBURA ("藻"+"油") と名付けた。今後、ジェット 燃料を中心に、MOBURAを利用した燃料以外の様々な用途開発に関する共同研究も本格化する。


藻類は主に光合成によって増殖し、その一部には育成の過程において燃料を生産するものがある。
成長する際にCO2を吸収し、また増殖が速いという特徴を有しているため、原油や食糧の価格高騰と地球温暖化を同時に解決するソリューションとして、藻類を利用したバイオ燃料生産に対する注目が高まっている。

IHI NeoG Algae合同会社は、藻類バイオ燃料に関する技術開発を目的に、IHI、神戸大発ベンチャーのジーン・アンド・ジーンテクノロジー 、ネオ・モルガン研究所の3社で2011年8月に設立した。

ジーン・アンド・ジーンテクノロジーは、神戸大学の榎本平教授の研究成果を実用化することを目的に設立された神戸大学発ベンチャー。高速増殖型ボツリオコッカス(榎本藻)を発見。

ネオ・モルガン研究所は、創立者の古澤満博士の最先端の進化理論(不均衡進化理論)を応用した育種技術を有し、世界の製薬・化学・食品企業に対し、微生物の育種・培養を支援しているベンチャー企業。微細藻類の研究においても国内トップクラスの経験とノウハウを有している。

従来は化学物質や放射線など生物にダメージを与える方法で突然変異を起こしていたが、不均衡進化理論をベースに自然で起こる突然変異を短期間で効率的に引き起こす技術を開発した。

社名は1933年にノーベル医学・生理学賞を受賞した遺伝学者 T.H. Morgan に因んだもの。

今回屋外安定培養に成功したのは、ジーン・アンド・ジーンテクノロジーの高速増殖型ボツリオコッカス(榎本藻)をベースに、ネオ・モルガン研究所が様々な改良を加えたもので (遺伝子組み換えは行っていない)、IHIが保有するプラント技術で屋外での大量培養に成功した。

一般のボツリオコッカスは1ヶ月の培養で1個が4個に増殖するが、榎本藻の場合は約1000倍の約4000個になる。
また、雑菌等の混入に負けない培養方法を開発し、安価な培養を可能とした。

乾燥重量の約50%が燃料。

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デンソーは2008年4月から、慶応大学先端生命科学研究所と共同で、デンソーが海洋バイオテクノロジー研究所(2008年3月解散)から特許を譲り受けた新種の藻にCO2を吸収させてバイオ燃料を生産する新しい研究に取り組んでいる。最近は中央大学、京都大学とも協力している。

新種の藻は、温泉で発見されたシュードコリシスチスで、通常の植物と同様にCO2を吸収して光合成で澱粉を作るのに加え、ディーゼルエンジンに使用可能な軽油の成分を含んだオイルも作る。成長が早く、丈夫で培養しやすい特徴を持つ。


JX日光日石エネルギーはユーグレナと組んで、微細藻類のユーグレナでのジェット燃料開発を行っている。

2013/10/17   ミドリムシが地球を救う!


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JX日鉱日石エネルギー、IHIおよびデンソーは2012年6月、3社が発起人となり、微細藻燃料開発推進協議会を設立したと発表した。

微細藻燃料には、CO2削減策、エネルギー資源、食料との競合を回避、抽出残渣の飼料等としての利用など、多くの利点が期待されて いるが、実用化にあたっては、培養、油分の抽出、燃料化といった各工程の技術開発の課題を解決し、一貫生産システムの構築を行うことが必要であり、そのためには、各企業のアライアンスにとどまらず、産官学のオールジャパンでの取り組みとすべく、本協議会を設立することを決定した。


参加企業は他に、日立プラントテクノロジー、三菱商事、出光興産、㈱ユーグレナ、ネオ・モルガン研究所、いであ㈱、ヤンマー など。

学識経験者や関係行政の助言を得ながら、微細藻燃料製造の技術を開発する上で共通の課題を抽出し、解決策を検討、必要な施策を提言し、2020年度までに微細藻燃料の一貫生産システムを確立することを目標に、開発に取り組んでいく。


上記のうち、出光興産は1980-90年代にかけて、ボトリオコッカスを利用したバイオ燃料生産の研究に取り組んだが、事業の採算性が合わずに研究をいったん中止した。

いであ㈱は社会基盤の形成と環境保全の総合コンサルタントで、藻場分布調査、生育・生態調査、モニタリング調査を実施しており、自然再生や環境創造の観点から、藻場造成に関する試験、種苗培養や育成、新たな技術開発に積極的に取り組んでいる。

ヤンマーは「つくり、育てる」漁業のあり方を考え、1988年にヤンマーマリンファームを設立した。
有用な水産生物の養殖システムの開発、稚魚・稚貝の生産、種苗に不可欠な藻類の培養を一体として取り組むことで、養殖事業の拡大をめざしており、また、藻類を活用してCO2を削減する環境保全技術についても研究を進めている。



 



 
中国石油天然気集団(CNPC)は、中南米への進出を図る方策の一環として、ペルーの石油・ガス資産を26億米ドルで取得する。

CNPCと子会社のPetroChinaはこのたび、ブラジル国営のPetroBras からペルー子会社 Petrobras Energia Peru S.A.の全株式を買収することに合意した。

PetroBrasはブラジル沖で発見された鉱区の開発のため、海外資産の売却を図っており、中南米進出を加速するCNPCとの間で交渉がまとまったもの。
売買にはブラジルとペルーの両政府の承認が必要となる。

Petrobras Energia Peru
は次の3つの鉱区を持つ。

 Lot X   1912年発見で、昨年原油換算16千バレルを生産
 Lot 58   最近、天然ガスが発見された。
採掘可能量は
天然ガスが 56.6 trillion m3、コンデンセートが 113.7 百万バレル。
 Lot 57   天然ガス・コンデンセート田で、まだ操業していない。
46.16%の権益で、スペイン Repsolが残り 53.84%を保有。


増え続ける中国内のエネルギー需要を支えるため、CNPCは中南米進出を加速している。

10月21日に初めて実施されたブラジルの南東部沖合にある大規模な海底油田「Pre-Salt」の開発権を巡る入札で、CNPCと中国海洋石油(CNOOC)が参加するコンソーシアムが落札した。


PetroBras   40%
Total   20%
Shell   20%
中国石油天然気集団(CNPC)   10%
中国海洋石油(CNOOC)   10%


2013/10/25  ブラジル海底油田「
Pre-Salt」開発始動

 


 

11月9日から12日に中央委員204人、中央委員候補169人が出席して三中全会(中央委員会第三次全体会議)が開かれ、11月15日に「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」が発表された。

概要は以下の通り。

意義と指導思想
  改革開放は新しく偉大な革命であり、現代中国の最も際立つ特色
  改革には、中国の特色ある社会主義という偉大な旗幟を高く掲げ、
マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、
小平理論、「三つの代表」という重要思想、科学的発展観を指導の柱とする。
  中国が長期的に社会主義の初期段階にあるという最大の現実に立脚し、発展は依然として中国のあらゆる問題を解決するための要


2020年までに、重要な分野と要となる部分の改革で決定的な成果を上げ、系統的で整った、科学的で規範的な、効果的な運用が可能な制度体系を形成し、各方面の制度をさらに成熟してさらに形の整ったものとする。

6つの主眼

 経済体制改革   資源配置で市場に決定的役割を果たさせる
 政治体制改革   党の指導と人民主体
 文化体制改革   社会主義の核心価値体系と社会主義文化強国の建設
 社会体制改革   国民生活のさらなる保障と改善、社会の公平と正義の促進
 エコ文明体制改革   美しい中国の建設
 党の制度建設改革   科学的な執政と民主的な執政、法律に従った執政の水準の向上


改革の要点

1.基本的な経済制度の堅持・改善
  公有制を主体とし、さまざまな所有形態の経済が共同で発展するという制度は、中国の社会主義市場経済体制の根幹
  財産権の保護制度を完備
  混合所有制経済を積極的に発展させる
  国有企業の近代的企業制度の完備を推進
  非公有制経済の健全な発展を支援
     
2.近代的な市場体系の完備を加速:資源配置における決定的役割を市場に果たさせる
  公平、開放的、透明な市場ルールを打ち立てる
  市場が中心となった価格決定の仕組みを整備
  都市と農村の統一的な建設用地市場を構築
  金融市場体系を完備
  科学技術体制改革を深化
     
3.政府の職能転換を加速:科学的なマクロ調整と政府による効果的な統治
  マクロ調整体系を整備
  政府の役割を全面的かつ正確に果たす
  政府の組織構造を改善
     
4.財政・税務体制改革を深化:科学的な財政・税務体制
  予算管理制度を改善
  税収制度を改善
  権限と支出の責任とが相互に見合った制度を構築
     
5.都市と農村の発展の一体化に向けた体制・仕組みを整備:
  都市と農村との二元構造は、都市と農村の発展の一体化を制約する主な障害
  新型農業経営体系の構築を加速
  農民により多くの財産権を与える
  都市と農村における生産要素の平等な交換と公共資源の均衡配置を推進
  都市化の健全な発展のための体制・仕組みを整備
     
6.開放型経済の新体制を構築
  投資条件を緩和:国内資本と外資の法律法規を統一し、外資をめぐる政策の安定性・透明性・予見可能性を確保
  自由貿易区の建設を加速
  内陸部や辺境地区の開放を拡大
     
7.社会主義民主政治の制度建設を強化:人民の主体的地位を保証することを根本
  人民代表大会制度の時代に伴う前進を促す
  協議と民主との幅広く多層にわたる制度化発展を推進
  基層における民主を発展させる
     
8.法治中国の建設を推進
  憲法と法律の権威を維持
  行政・法執行体制の改革を深化させる
  法律にのっとった独立的で公正な審判権・検察権の行使を確保
  司法権の運用の仕組みを整備
  人権司法保障制度を改善
     
9.権力行使の制約および監督体系の強化
  科学的で効果的な権力の制約・協調の仕組みを形成
  腐敗撲滅のための体制・仕組みの革新と制度的保障を強化
  正しいやり方が常態化するような制度の整備・改良を進める
     
10.文化体制・仕組みの革新を推進:国家の文化ソフトパワーを増強
  文化管理体制をさらに完全なものとする
  近代的な文化市場体系を構築・整備
  近代的な公共文化サービス体系を構築
  文化開放の水準を高める
     
11. 社会事業の革新改革を推進:人々のニーズをさらに適切に満たす
  教育分野の総合改革を深化させる
  就業・起業を促進する体制・仕組みを改善
  合理的で秩序ある所得分配の局面を形成
  さらに公平で持続可能な社会保障制度を構築
  医薬衛生体制改革を深化させる
     
12.社会管理体制の革新
  社会の管理方式を改良
  社会組織の活力を引き出す
  社会矛盾を効果的に予防し解消する体制を革新
  公共安全体系を整備
     
13.エコ文明の制度建設を加速
  自然資源資産の財産権制度と用途管理制度を整備
  生態保護のためのレッドラインを引く
  資源の有償使用制度とエコ補償制度を実行
  生態環境の保護管理体制を改革
     
14.国防・軍隊改革の深化
  軍隊の体制編制の調整・改革を深化させる
  軍隊の政策制度の調整・改革を推進
  軍と民との融合のさらなる発展を推進
 

トピックス

国有企業改革は不十分(事前に大幅な改革が行われるとの観測があった)
   公有制を主体とするのは中国の社会主義市場経済体制の根幹
   そのなかで、非国有資本の出資を認める、石油や電力などは「競争性のある価格」にすることを目標
  国庫納付金(配当)を2020年までに利益の30%に引き上げ
  (現在、たばこ20%、石油・電力15%など5段階、平均10%程度)
   
出産政策を徐々に調整・改善し、人口の長期的な均衡発展を促す
   計画生育政策という基本的な国策を堅持し、一方が一人っ子である夫婦は2人目の子どもを出産可能に
   
定年年齢を徐々に引き上げる
   
農業移転人口の市民化を推進し、条件に合致する農業移転人口を徐々に都市部住民としていく
   戸籍制度改革を加速し、建制鎮と小型都市の移住制限を全面的に緩和、中型都市の移住制限を秩序よく緩和
 特大型都市の人口規模を厳しくコントロール
   
指導幹部の勤務生活保障制度を規範的かつ厳格に実施
   基準を超えた公務接待を禁止し、規定や基準に反した待遇享受などの問題を厳しく取り締まる
   
所得分配の秩序を規範化
   違法な収入を取り締まり、低所得者の収入を増加させ、中等所得者の比重を拡大
   都市・農村間や地域間、業種間の所得分配の格差縮小
   ラグビーボール型の分配局面を形成


付記

国有企業改革が不十分であったことについて、毎日新聞(11月21日)は「リコノミステリー」として報じている。

「リコノミクス」とは中国の首相、李克強氏の経済改革政策である。今年3月、全国人民代表大会(議会)で表明した。

中国の成長力も落ちた。規制緩和によって国有大企業の特権を廃し、市場経済化を進めて民間活力を引き出そうというのがリコノミクスだ。となると、「大型国有企業」と結びついた共産党内の特権集団から激しい抵抗が出る。石油閥あり、電力閥あり、不動産業界、金融業界、通信業界との癒着あり......共産党内でそれぞれの権益集団代表がにらみをきかせている。

(今回)リコノミクスの具体化になると思われていたが、結果は大違い。李克強首相が関与していなかった。リコノミステリーだ。

中国では、経済政策の提案は首相か副首相が行うのが慣例だ。今回の3中全会では習近平総書記が自ら決議案の趣旨説明演説をした。あまり普通のことではない。

習氏は演説のなかで「公有制経済を守る」と断言した。要するに国有企業の権益を守る一方で、国有企業からの国庫上納金を増やそうという改革案だ。

習近平政権は構造改革という険しい道を避けて、目先の安定を求めた。持続的成長への挑戦を回避した。

リコノミクスは消え去るのみ。



 

中国では11月11日は「光棍節」(独身者の日)と呼ばれる。

中国では、独身者のことを「光棍」(枝葉を持たない木→妻子を持たない独身者)と呼ぶが、「1」が4つ並んだこの日がシングルデーとされた。

中国では、18歳から34歳までの独身者は約1億8千万人で、近年中国でも晩婚化や「剰女・剰男」(結婚していない男女)という言葉が流行するほど独身者数の増加が目立つという。また、「剰女・剰男」には高学歴、高収入が多いという傾向もあるという。

アリババ傘下のB2C(企業と個人の取引)のオンラインショップ「天猫(Tmall)」は 2009年、「独身の日」をテーマにした大規模セールを始めた。

これが大反響を呼び、現在は
同じくアリババ傘下のCtoC(消費者と消費者との間の取引を仲介するサイト)のタオバオ(淘宝網)など多くのオンラインショップが大規模な販売促進キャンペーンを実施している。

アリババの報告によると、今年、傘下のサイトを訪れた顧客数は4億200万人で、これは同国成人人口の3分の1以上に相当する。今では既婚者も含めたあらゆる消費者層にとって1年で最大のネット通販の日となっている。

アリババ傘下の天猫(Tモール)と淘宝網(タオバオ)を合わせた11日の販売額は351億9000万元(約57億8000万ドル)で、昨年の191億元(約31億ドル)を大きく上回った。午前0時のセール開始からわずか6分ほどで10億元を突破した。

天猫の責任者は、「ハイアールなどの300以上のブランドのオフラインの3万店舗が、天猫の激安セールに参加する。これらの店舗は全国300余りの都市、1000余りの県を網羅しており、全国の市・県の約半数を占める」としている。

国内宅配大手4社(申通、円通、韻達、中通)が11日に受理した宅配便の件数はいずれも1千万件を超え、過去最高を更新した。

アリババ・グループの馬雲(ジャック・マー)会長は、「中国経済モデルチェンジの一つのシグナルだ。新たなビジネスモデルと伝統的なビジネスモデルとの戦いだ。製造メーカー・貿易会社は、情勢が変化しつつあり、新経済が始まる時期が到来したことに気づくだろう」と指摘した。

馬会長は、「未来のEC事業は中国において、1000万規模の優良な中小企業を生み、世界10億人の消費者にサービスを提供する能力をつけるだろう」と述べた。

 

 


台湾の Formosa Plasticsグループのベトナム子会社 Formosa Industries Corp (台灣興業)は11月7日、ベトナム Dong Nai Province(ホーチミン市の東)の工場に5億米ドルを投資し、ポリスチレンを新設、繊維の能力を増強すると発表した。

5つの計画に各1億ドルずつ、合計5億ドルを投資する。

このうちポリスチレンはベトナムのTPP 参加でベトナムからの輸出製品が関税ゼロになるのを見込んだもの。

PS 新設 200千トン  
コジェネレーション 各プラントに電力供給
ヤーン増強 320,000 spindles 400,000 spindles
ポリエステル繊維(シルク)倍増 28.2千トン→56.2千トン
二軸延伸フィルム(BOPP) 第3系列新設   合計 60千トン→90千トン


既存プラントには他に、
ポリエステル繊維(綿)108千トンがある。


PSは同グループとしてはベトナムで初の生産で、原料のSMは台湾から輸送する。

ベトナムの Trans-Pacific Partnership (TPP) 参加でベトナムからの輸出製品が関税ゼロになるのを見込んだもので、 PSは近隣に集まっている家電やエレクトロニクスのメーカーに販売する。

Formosa Industries Corp (台灣興業)には、グループのFormosa Chemicals & Fiber  (台灣化纖)が42.5%、Nan Ya Plastics Corp (南亞塑膠)が42.5%、Formosa Taffeta (福懋興業:繊維関連) が10%出資、他に地元のドリンクメーカーのKing Car Group (金車)が 5%出資している。
 

ーーー

ベトナムでは既に、Vietnam Polystyrene がPSを生産している。

2006年設立で、ブンタウ市(ホーチミン市の南東)に工場を持つ。
当初は発泡PS 24千トンでスタートしたが、2012年に発泡PS増強と、PS(GPPS、HIPS)の新設を行った。
現在能力はPSが5万トン、発泡PSが 4万トンとなっている。



韓国石油公社(KNOC)は11月10日、イラク北部のクルド地域にある探査中のHawler鉱区で、2月に引き続き、新しい油田を発見したと明らかにした。

Hawler鉱区はクルド人自治区の中心都市 Arbil を含む陸上鉱区で、スイスのOryx Petroleum が権益 65%を持ち、操業を担当している。クルド人自治政府が20%、韓国石油公社が15%の権益を持っている。

JVは本年2月に同鉱区のDemir Dagh-1で潜在資源量が5億5000万バレルに達する大規模な原油埋蔵を確認した。

今回のAin Al Safraの探査井では、6月にボーリング作業 を開始、9月初めに深さ3039mに到達、その後の生産テストで1日最大850バレルの原油産出試験を完了した。正確な埋蔵量は来年、評価ボーリングを実施し確認する 。

Oryx Petroleum はトロントに上場し、アフリカと中東で石油を開発している会社。
イラクではこのほかにバグダード南東部のWasit州に鉱区を持つ。
アフリカではナイジェリア、セネガル沖、ギニアビサウ共和国沖、コンゴに権益を持つ。

ーーー

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した

2008/2/20  韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

現在の4地域(5鉱区)の権益は以下の通り。

なお、Sangaw Northはコンソーシアムが撤退を決定、2013年1月にクルド政府に通告している。

  Operator

 権益

KNOC KNOC-Bazian Oryx Sterling 政府 others
Sangaw Sangaw North Sterling Energy 20%      40% 20% Addax 20%
Sangaw South KNOC 60%       20% 20%
Qush Tappa KNOC 80%       20%  
Hawler Oryx Petroleum 15%   65%   20%  
Bazian KNOC-Bazian   80%     20%  


KNOC-BazianはKNOC主導のコンソーシアムで、他メンバーは
Daesung産業、三千里SamchullyBum-Ah資源開発、GS Holdings、,Majuko 通商、UIエナジー。(当初はSKエナジーも入っていたが、その後離脱:後記)

試掘を開始した当時、これらの鉱区で期待されていた原油埋蔵量は合計72億2300万バレルで、韓国石油公社は契約調印時にクルド自治政府に211.4百万ドルを支払い、掘削に188.68百万ドルを支出した。

しかし、2011年8月までに行われた探査試掘の結果、これらの鉱区では原油が発見されておらず、発見されたとしても当初の推定埋蔵量を大幅に下回っているとみられた。

韓国の国会議員は以下のように批判した。

原油探査の失敗、社会基盤整備事業の縮小、イラク政府とのギクシャクした関係など、石油公社は数千億ウォンもの巨額を投じながら何一つ手にしていない。

今回の原油開発で政府と石油公社は、事業の妥当性を確認する前から、資源外交の成果を誇示することばかりに力を入れた。今回の失敗は、このような性急さがもたらした、まさに典型的なケースだ。

この時点では、Hawler鉱区ではボーリングは未実施であったが、事業性なしと見られていた。

2011/9/20 韓国のイラク・クルド地区の石油開発は失敗

ーーー

イラクのシャハリスタニ石油相は2009年4月、イラク駐在の河泰允大使に会い、「KNOCやSK Energyなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

イラク政府は第1回油田開発入札資格審査でKNOCとSK Energyの両社を排除、第2回審査でもSK Energyを脱落させた。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

SK Energyはイラク政府の油田開発に参加するため、2012年2月にKNOC-Bazian コンソーシアムから離脱した。





小泉純一郎元首相は11月12日、日本記者クラブで講演した。

講演ビデオ  

講演概要 


小泉元首相は脱反原発論について、毎日新聞の8月26日の記事以来、取り上げられているが、311以降、ずっと言い続けてきたとしている。

 

既報 2013/11/1   小泉元首相の「脱原発」論 


講演のなかで、エイモリー・ロビンスの著書「新しい火の創造」を紹介している。
 「新しい火」(エネルギーの効率的利用と再生可能エネルギー)で化石エネルギーに代替させようというもの。

 

なお、記念の記帳に書いたのは考不如一行」(百考は一行に如かず )

小泉氏は、「百聞は一見に如かず」の続きが、「百見は一考に如かず」で、その後が、「百考は一行に如かず」で、百の考えも一つの行動に及ばないの意味だと解説した。

安倍首相への言葉であろう。

 

 

 

下記3社は11月8日、ヒト パラインフルエンザ(Human parainfluenza viruses )2 型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンの共同開発を実施することについて基本的に合意したと発表した。2013 年12 月までに共同開発契約を締結する予定。

独立行政法人医薬基盤研究所 「次世代ワクチンの研究開発」を重点領域の一つとして位置付け、次世代ワクチンおよびその免疫反応増強剤(アジュバント)の開発ならびにそれらの投与法の研究開発を行っている。
NPO 法人 AERAS 本部:米国メリーランド州
世界中のパートナーと協力して結核ワクチンを開発する非営利団体
アカデミア、製薬企業、バイオベンチャーとのグローバルな提携を通じて、6 つの結核ワクチン候補品の開発に関与、前臨床、臨床開発、免疫学およびワクチン製造における専門知識・技術を提供している。
クリエイトワクチン
(右2社のJV)
大日本住友製薬 ワクチン事業への参入を計画
日本ビーシージー製造 BCG ワクチンの、製造、販売、輸出を通じて、結核ワクチン事業に関する豊富な経験を有す。


結核は 3 大感染症の一つであり、世界では 1 年間に新たな患者が約 860 万人発生し、約130 万人が死亡している。
特にアジア、アフリカ諸国に多く蔓延しており、日本においても、毎年2 万人以上が感染し、2 千人以上が死亡している。

既存のワクチンにおいては、乳幼児に対しては極めて高い効果が認められるが、成人の肺結核に対する効果は乏しく、新規結核ワクチンの開発が望まれて いる。

既存の結核予防ワクチン(BCG:パスツール研究所の研究者の名前を冠した菌:Bacille Calmette-Guerinの頭文字をとったもの)は、牛に感染する牛型結核菌を時間をかけて弱めたもの。

青年や成人にBCG を打っても、肺結核の感染を予防する効果は認められていない。

本剤は、基盤研の有するヒトパラインフルエンザ 2 型ウイルスベクター技術を臨床応用した粘膜ワクチンであり、開発に成功すれば本技術を用いた世界初の結核ワクチンとなる。

ーーー

医薬基盤研究所は国立医薬品食品衛生研究所大阪支所を主な母体に、国立感染症研究所、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の組織の一部を統合して、2005年4月に創設された。

厚生労働省所管試験研究機関の再編成の一環として、規制と振興の分離を図りつつ、創薬支援に関わる組織を一体化して、医薬品・医療機器の開発支援をより効果的に進めようとするもの。

医薬基盤研究所では、スーパー特区「次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクト」を推進している。

政府は、革新的技術の開発を阻害している要因を克服するため、研究資金の特例や規制を担当する部局との並行協議などを試行的に行う「革新的技術特区」、いわゆる「スーパー特区」を創設した。
これは、従来の行政区域単位の特区でなく、テーマ重視の特区(複合体拠点の研究者をネットワークで結んだ複合体)であることなどを特徴としている。 2008年度より、その第一弾として「先端医療開発特区」を創設し、最先端の再生医療、医薬品・医療機器の開発・実用化を促進する。

従来型の経験的なワクチン開発手法には限界があることから、分子生物学的手法(免疫学、遺伝子工学等)を用いた「次世代交付加価値型」の感染症ワクチンへの転換が不可欠とし、新型インフルエンザ、マラリア、エイズなどの感染症に対するワクチンを実用化しようとするもの。

この一環として、ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)をベクターとして粘膜免疫誘導型結核ワクチンの開発を試みた。

多くの病原体が消化器や呼吸器等の粘膜面から感染を成立させるため、感染防御には粘膜と全身の両者の免疫反応を誘導する粘膜ワクチンが必要である。

ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)に抗酸菌分泌タンパクであるAg85B遺伝子を導入し、呼吸器粘膜に対する結核菌ワクチン(hPIV2/Ag85B)を作製した。

hPIV2は病原性が殆ど無く、M遺伝子を欠損したhPIV2は生体内で複製できないことから、本研究におけるM欠損hPIV2はさらに安全なベクターと考えられる。

マウスにこれを吸入し、高病原性結核菌を気道内に投与したところ、明らかな感染防御効果が認められた。

2010年に国際特許を申請した。

AERASが支援を表明、2012年に研究開発でのHead of Agreementを締結した。

本年に大日本住友製薬と日本ビーシージー製造が参加を決め、基盤研、AERAS と共に結核ワクチンの開発を行い、商業化を進めるため、本年7月31日にクリエイトワクチンを設立 した。

 




各社の営業損益の推移をグラフにした。

各社の最近の業績悪化は、大型製品の相次ぐ特許切れの影響が大きい。
また、海外での大型買収が行われているが、無形固定資産償却等の
企業結合会計の影響も大きい。 

武田薬品工業  
   
 
2009/3 米国事業再編によるTAP社の子会社化およびミレニアム社買収の影響 
        営業損益
-2,423億円
 
アステラス製薬  
 
   
第一三共  
 
   
エーザイ  
 
   
塩野義製薬  
 
   
大正製薬  
 
   
田辺三菱製薬  
 
   
大日本住友製薬  
 
   

 

 

 

旭硝子は11月6日、ベトナムの塩ビ事業会社 Phu My Plastics & Chemicals の持分78%を取得することについて、現株主のマレーシアの Petronas Chemicals Group と合意したと発表した。三菱商事も同時に15%を取得する。

Phu My Plastics & ChemicalsのPVC生産能力は10万トンで、原料VCMはPetronasから供給を受けている。
ベトナムには他に、タイの
Thai Plastics & Chemicals (TPC) のTPC VINA Plastics and Chemical  (能力 17万トン)がある。

ベトナムは約9千万人の人口の成長余力の大きい市場であり、年率5%以上の安定した経済成長が見込まれ、同国の塩ビ市場は、東南アジアでインドネシア、タイに次ぐ規模であり、経済発展に伴う需要拡大により、2020年には現在の5割増の規模となる見込み。

旭硝子はインドネシアとタイに生産拠点を持ち、苛性ソーダ・塩素から塩ビまでを一貫生産する東南アジア地域最大級のクロール・アルカリメーカー。

インドネシアのAsahimas は、旭硝子が52.5%、三菱商事が11.5%出資し、残りを現地資本(Rodamas 18%、Ableman Finance 18%)が出資する。

タイのAGC Chemicals (Thailand) は旧称 THASCO Chemical で、2002年に現地合弁相手(スリフンフン・パニチュワ・グループ) の全持分(47.9%)を買収し、出資比率を92.9%に高めて子会社化した。

Phu My は成長するベトナムの塩ビ樹脂市場で3割を超えるシェアを有しており、旭硝子は今後、ベトナムでの事業展開を本格的に始動することになる。
また、旭硝子のPVCのグローバル生産能力は、インドネシアにおける増強と合わせて現行の30万トンから倍増以上の65万トンとなる。

旭硝子は日本では、PVCの生産委託先である呉羽化学がPVC事業を大洋塩ビに譲渡するのを機に、2002年12月にPVC樹脂の販売から撤退した。
VCMについては、現在も京葉モノマー
(年産20万トン)を運営している。
京葉モノマー株主の
クレハ(25%出資、引取枠25%)は塩化ビニリデン用を除き、引取権を大洋塩ビに譲渡した。

旭硝子は他に、タイとパキスタンにPVCのJVを持っていた。

タイのThai Plastic & Chemicals(TPC)は当初、地元のCEグループ、旭硝子のTHASCO Chemical、及び三井グループ(三井物産・三井東圧)のJVとして設立された。
2004年に 旭硝子が持株をSiam Cement 等に売却、三井グループも売却、現在はSiam Groupの子会社となっている。

旭硝子は1997年にパキスタンで同国初の本格的塩ビ樹脂製造販売会社 Engro Asahi Polymer & Chemicalsを設立した。旭硝子 30%、三菱商事 20%、地元 Engro 50%出資で、PVC能力は10万トン。

同社は2007年に、事業拡張を巡る思惑の違いやカントリーリスクなどを考慮して撤退した。


旭硝子では中期経営計画 "Grow Beyond-2015" の主要施策として新興地域戦略の強化を掲げており、大きく成長する東南アジアでの事業を積極的に推進していくとしている。

ーーー

Phu My Plastics & Chemicalsは当初、米国のOccidental と丸紅に現地2社を加えた4社で計画した。
その後、Occidental が撤退、代わりにマレーシアの Petronas が参加、その後更に出資に変更があった。

  Occidental Petronas 旭硝子 三菱商事 丸紅 VietGas PetroVietnam Tramatsuco Vung Tau
Shipyard
当初 40% 30% 15% 7%
1996年 40% 30% 15% 7%
2000年 50% 43% 7%
2007~ 93% 7%
今回 78% 15% 7%


なお、ベトナムのもう一つのPVCメーカーのTPC VINA Plastics and Chemical も最初は三井化学のJV Mitsui Vina Plastics & Chemical であった。

三井化学 36%、三井物産 10%、Thai Plastics & Chemicals 24%、Vinaplast 15%、Fercemco 15%

 三井化学と三井物産の両社は、2000年8月末までに日本側が持っていた株式をThai Plastics & Chemicalsに譲渡を完了、事業撤退した。

当初のTPC VINA の能力は8万トンであったが、TPCは2007年にMap Ta Phut で新しく 120千トン設備を稼動させるに際し、Bangkok 近郊のSamutprakarnにある古い設備2基計9万トンのうち、3万トン設備を廃棄、6万トン設備をベトナムに移設し、デボトルネッキングを行って9万トンとした。
これを含め、現在の能力は17万トンとなっている。


 
 

 

 

欧州委員会は11月5日、各国にレジ袋使用を減らすよう求める提案を採決した。

欧州ではいくつかの国で削減策が取られているが、全体としての規制はなかった。
2011年3
月にEU諸国の環境大臣がレジ袋の環境への影響を議論し、EUとしての有効な対策が必要と結論付けた。

欧州委員会は2011年5月にレジ袋 (plastic carrier bags) の使用減少についての意見聴取することを発表した。

レジ袋有料化やレジ袋税が有効か、又は、EU全体でのレジ袋禁止のような他の案がベターか、更に、生分解性の包装材を増やし、包装材として生分解性製品を義務付けるのがよいのか、に関して意見を聴取した。

2011/5/28 EU、レジ袋禁止を検討


今回、メンバー各国は、有料化、使用減の目標設定、禁止など、最も適していると考える方策を選ぶことができる。

軽量のプラスチック袋は多くは一度限りの使用だが、環境中には100年も残り、特に海洋生物にとり危険であるとしている。

スペイン沿岸で死んでいた鯨はレジ袋を含む17kg のプラスチック廃棄物を飲み込んでいた。
EU推定では地中海だけで 2500億個に及ぶ合計500トンのプラスチックの小破片が浮かんでいる。

欧州では毎年、80億枚の袋がゴミとなり、大きな環境被害を起こしており、この問題の解決のため、今回行動を起こす。

既にいくつかの国は行動を起こしてレジ袋使用の削減に成功しており、他の国が行動を起こすと、現在の消費を80%減らすことができると見ている。

提案には2点が含まれる。

① メンバー各国は、厚さ50ミクロン未満のレジ袋の消費を減らすための方策を採用する。

② 方策は、有料化や国としての削減目標設定、販売制限などの経済手段の使用を含む。

2010年に推定で986億枚のレジ袋がEU市場に出回っており、EU市民が年間一人当たり198枚のプラスチック袋を使っていることになる。
約1000億枚のうち、大半が軽量の袋で、再利用されることは少ない。
国により使用量は異なり、年間一人当たりで、デンマークとフィンランドでは約4 枚だが、ポーランド、ポルトガル、スロバキアでは466 枚にも及ぶという。

本提案がお欧州議会で承認を受ければ、早ければ2年以内に施行される。

ーーー

EUのいくつかのメンバー国では既に規制が行われている。

2007/3/3 ニュースのその後 - レジ袋税

2011/1/8 イタリア、レジ袋禁止

2009/9/28 アイルランド、レジ袋税を2倍に

 

ーーー

日本でもレジ袋の有料化の動きが進んでいる。

東大工学系研究会科の平尾雅彦教授によると、レジ袋と木綿袋を比べると、レジ袋もごみ袋に再利用する場合、LCAでは有利であるという。
特に、木綿袋を多数持つのであれば、レジ袋をごみ袋に再利用する方がよいという。

木綿は栽培時に大量の化学肥料と農薬(害虫駆除、雑草管理、防カビや殺菌消毒、収穫時に葉が混じらないようにするための落葉剤など)が使われ、環境負荷は大きい。



 
政府は11月6日、市販薬(一般用医薬品)の99.8%の品目のインターネット販売を解禁する一方、安全性に懸念がある28品目は販売を禁止したり、制限したりする方針を発表した。

約1万1千品目ある市販薬のほとんどはネット販売を認めるが、エフゲン(殺菌消毒薬)など劇薬5品目は禁止、リアップX5(発毛剤)など市販後間もない23品目は、原則3年間かけて安全性を確認できればネット販売を認めるというもの。

政府は今国会に薬事法改正案を提出し、来春実施を目指す。

ーーー

従来は一般用医薬品は薬剤師を置かないと販売できなかったが、逆に、薬剤師を置けばインターネット販売も可能であった。

厚生労働省は、薬事法上「店舗による販売又は授与」とは必ずしも店頭に限定するものではないとの解釈の下、インターネット販売は適法とし、これを容認してきた。

薬事法 第37条 
薬局開設者又は一般販売業の許可を受けた者、薬種商若しくは特例販売業者は、店舗による販売又は授与
以外の方法により、医薬品を販売してはならない。

2009年6月1日に改正薬事法が施行され、コンビニエンスストアなどでも、登録販売者を置けば、「一般医薬品」の販売ができるようになるなど、医薬品販売の規制緩和がなされた が、厚生労働省は、改正薬事法施行に合わせて、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を規制する内容の省令を公布した。

             改正薬事法 省令
専門家 相談対応 積極的情報提供 ネット販売
第一類 副作用等により日常生活に支障を来す程度の
健康被害が生ずるおそれのある一般医薬品のうち、
特に注意が必要なもの
(胃腸薬「ガスター10」、発毛剤「リアップ」など)
薬剤師 義務 文書義務付け   ○    X
第二類 副作用等により日常生活に支障を来す程度の
健康被害が生ずるおそれのある一般医薬品
(主な風邪薬、「葛根湯」などの漢方薬、鎮痛薬など)
薬剤師
登録販売者
義務 努力義務   ○ X
第三類 第一類医薬品、第二類医薬品以外の一般医薬品
(ビタミン剤、整腸薬など)
薬剤師
登録販売者
義務 規定なし   ○
  * 登録販売者:実務経験1年以上で、都道府県が実施する試験に合格したもの

これに関して、ケンコーコムとウェルネットは国を相手取り、医薬品ネット販売の権利確認と省令の無効確認・取消を求め、東京地裁に提訴したが、東京地裁は2010年3月30日、上記の請求を棄却した。

しかし、東京高裁は2012年4月の控訴審で、原告側敗訴の一審判決を一部取り消し、2社に販売権を認める逆転判決を言い渡した。

最高裁第2小法廷は2013年1月11日、ネット販売を一律に禁止した省令は無効との判断を下し、国の上告を棄却した。

改正薬事法にネット販売規制の趣旨を明確に示すものはない。国会にもこの意思があったとは言い難い。
・省令は改正薬事法の趣旨を逸脱し、違法で無効

この結果、省令以前の状態に戻り、ネット販売は従来どおり実施されてきた。

安倍首相は6月に、原則解禁し、劇薬などの扱いは秋までに検討する方針を表明した。
政府の規制改革会議やネット販売推進派は、対面販売と合理的根拠のない差を設けないよう求め政府内で調整が続いていた。

しかし、厚労省側の判断は異なる。

厚労省の検討会資料では、最高裁の判断について、こう解釈している。

ネット販売禁止は職業選択の自由の制約になるが、禁止の是非については賛否両論があるなか、国会の委任の範囲を超えて勝手に省令で規制するのが違法である。⇒ 法改正によりこれを行う。

厚労省は、「薬剤師らが薬の危険性を説明する必要がある」と対面販売にこだわった。
厚労省専門会議では、表情や口臭などを通じて患者の状況を把握できる利点を強調している。

薬事法では薬局には医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師が勤務していることが求められるが、薬剤師がレジで販売に従事することは求めていない。小さな個人経営の薬局は別として、薬剤師が「表情や口臭などを通じて患者の状況を把握」して販売するなどは先ずないであろう。
一般医薬品の販売に関しては、対面販売とネット販売に差があるとは思えない。

これについて、池田信夫ブログは以下の通り批判している。

司法の意思は「薬局でも説明なんかしてないのに、ネット販売だけ規制するのはおかしいだろ」という常識論を「法律で決まってない禁止規定を省令で決めてはいけない」という法技術論で表明したものと読める。

厚労省の今回の方針は、それを「一律」ではなく品目指定して法技術ですり抜ける脱法行為である。役所が率先して脱法行為をするのでは、国民に「法律を守りましょう」とはいえない。新たに立法してネット販売を規制することも形式的には問題ないが、それは最高裁まで「おかしい」と判断した薬事法の過剰規制を今度は堂々と表からやろうという話だ。

この背景には薬のネット販売に反対する議員連盟があり、その議員に対して薬剤師連盟が3年間で14億円の政治献金をしているというわかりやすい構図がある。

 (翌日の記事)
大衆薬のネット販売が認められると、その次は(世界で普通に行なわれているように)処方薬もネットで買えるようにしろ、という要求が出てくるだろう。そうすれば処方薬にも価格競争が起こり、薬価基準も市場の実勢に合わせて見直さざるをえない。それを防ぐことが、薬剤師や製薬業界や医師会の最大の関心事なのだ。


アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、処方せん医薬品を含め、医薬品のインターネット販売が認められている。
 (但し、安全性を
確保するための認証システム
や許可制などがある。)
     http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/pdf/0727.pdf


政府の規制改革会議は10月31日、一般用医薬品(市販薬)のネット販売について改めて議論、厚生労働省が一部市販薬のネット販売を禁止する方向で検討を進めていることについて、岡 素之議長(住友商事相談役)は「ネット販売の特性を十分に理解していないのではないか」と批判した。
会議後、全品目のネット販売を求める追加の意見書を厚労省に提出した。


楽天の三木谷浩史社長は、「3年であれ4年であれ、科学的な議論もなく、一律に規制を行うのは違憲であり、甚だ遺憾だ。対面販売の方がインターネット販売よりも安全だという主張も話にならない」と述べ、政府の方針に強く反対する考えを示した。
そのうえで、「今回の規制は、ネットユーザーを中心に大きな波紋を呼ぶと考えているし、特定の団体の利益を守る規制については断固として反対する。基本的には、司法の場で争うことになるだろう」と述べた。

また、三木谷社長は、今回の政府の方針に反対して、政府の産業競争力会議の有識者議員を辞任する意向を固めた。

ーーー

政府の規制案は以下の通り。

1) 副作用のリスクが特に高いとされる「劇薬」に指定される5品目のネット販売は今後も禁止する。

ガラナポーン 勃起障害等改善薬
ハンビロン
ストルピンMカプセル
マヤ金蛇精(カプセル)
エフゲン  殺菌消毒薬

  
2) 医薬品から市販薬に転用されてから間もない23品目については一定の期間後、ネットでの販売を可能とする。

一般医薬品のうち、医療用医薬品の有効成分を転用したものをスイッチOTCと呼ぶ。

現在の制度では、スイッチOTCは先ず「第一類」に分類される。
市販後、3年間の調査を義務付け、提出されたデータを基に1年間かけて、安全対策調査会で検討、パブリックコメントを行い、リスク区分の変更を行う。

今回、この過程を終了していないものについてはネット販売を禁止するというもの。
当初からでは合計4年間となるが、政府ではこれを3年に短縮することとした。

法律が通り、来年4月に施行されると仮定すれば、23品目のうち、9品目はリスク区分が完了し、ネット販売が可能となり、残り14品目が一定期間、ネット販売が禁止となる。

今後のスイッチOTCは4年間は薬局では販売できるが、ネット販売は禁止となる。

アラセナS 口唇ヘルペス用薬 2014/4
 ネット販売可
リアップX5  発毛剤
イノセアバランス  胃腸薬
フェミニーナ膣カンジダ錠 膣カンジダ用薬
オキナゾールL 100
パブロン点鼻クイック アレルギー用薬
ナザールAR〈季節性アレルギー専用〉
コンタック鼻炎スプレー〈季節性アレルギー専用〉
ロキソニンS 解熱鎮痛薬
 
エンペシドL  膣カンジダ用薬 一定期間
ネット販売禁止
ナシピンMスプレー  アレルギー用薬
ストナリニ・ガード
アレジオン10
アレギサール鼻炎
アレグラFX
アイフリーコーワAL
コンタック鼻炎Z
ストナリニZ
エルペインコーワ 生理痛用薬
ナロンメディカル 解熱鎮痛薬
エパデールT 中性脂肪異常改善薬
エパアルテ
アンチスタックス むくみ等改善薬

  

付記

政府は11月12日、一般用医薬品(市販薬)の大半についてインターネット販売を解禁する薬事法改正案を閣議決定し、国会に提出した。
上記のほか、下記が折り込まれている。

ネット事業者は最低1店舗で週30時間以上の対面販売を行う。
注文の受け付けや梱包作業は実店舗でのみ認められる。

薬剤師らはメールなどを通じて購入希望者の持病や副作用歴を確認した上で市販薬を販売する。
副作用リスクが高い1類については、販売した薬剤師の名前などの販売記録を保存するよう義務付ける。
オークションによる販売や、使用期限の切れた薬の販売は禁止。
依存性のある薬の販売個数も制限する。
厚生労働省のホームページにネット販売業者の一覧を掲示する。

医師の処方箋が必要な医療用医薬品もネット販売を認めず、対面販売でなければならないと明記する。

現在も省令で禁じているが、市販薬の省令によるネット販売規制が最高裁で違法とされたため、法律で位置づける。

楽天子会社のケンコーコムは11月12日、国に対して処方箋薬郵便等販売の地位確認請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。



米医薬・日用品大手のJohnson & Johnsonは11月4日、約20億ドルを米司法当局に支払うことで合意した。

統合失調症薬「リスパダール」などの販売方法が不適切だったとして、司法省などが刑事・民事の両面で調査していた。


過去の支払い分を合わせるとJohnson & Johnsonは刑事処分に対する罰金・利益返還として4億8500万ドル、米連邦政府・各州との民事和解金として17 億2000万ドルの合計22億ドル超を支払うことになる。民事の和解は米司法省および全米45州との間で成立した。

同社は今回の支払いに備えた引当金を積んでいたため、今後の決算で費用を追加計上する必要はないとしている。

司法省によると、問題点は以下の通り。
http://www.justice.gov/iso/opa/ag/speeches/2013/ag-speech-131104.html

1)連邦食品・医薬品・化粧品法違反

子会社 Janssen Pharmaceuticals が統合失調症薬リスパダール(Risperdal)を承認されていない用途に販売。

統合失調症の治療用にのみ承認を受けていたのに、精神病症状や統合失調症ではない認知症患者の治療に推奨した。

2) 民事訴訟

Johnson & Johnson とJanssen Pharmaceuticalsが統合失調症薬リスパダールと第2世代統合失調症治療薬インヴェガ(Invega)を老人の認知症患者や子供や精神障害者の行動障害をコントロールする目的で医者や老人ホームに推奨。

リスパダールの重大な副作用(脳卒中を含む)を軽視し、処方させるためにリベートを支払いさえした。

この一環として、米国最大の老人ケア向け薬局のOmnicare Inc.に数百万ドルのリベートを支払い、アルツハイマーや認知症の患者にリスパダールを処方させた。

Omnicare Inc.は本件で98百万ドルの罰金支払いで和解している。

ーーー

以上の2件に対し、
Janssen Pharmaceuticalsはリスパダールの承認用途外販売で、罰金4億ドルを支払う。
Johnson & Johnson と Janssen Pharmaceuticalsは虚偽請求取締法(False Claims Act)での民事訴訟で12億ドル以上を支払う。
Johnson & Johnson はJohnson & Johnson への不当なリベート支払いで149百万ドルを支払う。

3)子会社サイオス・インク(Scios Inc.)の心臓病治療薬ナトレコール(Natrecor)の承認用途外販売

科学的証拠がなく、効かないのに高価な薬を推奨

同社は2009年に本件で罰金85百万ドルを支払っているが、今回は民事で追加に184百万ドルを支払う。


以上合計で今回の支払いは約20億ドルになる。

過去の支払い分を合わせると合計22億ドル超を支払うことになる。

リスパダールはJohnson&Johnson の主力製品で、米国特許が失効する前の2007年には22億ドルの売上高を計上していた。

Johnson & Johnson は、ベルギーのJanssen Pharmaceutica を1961年に買収した。
Johnson & Johnson は、心臓血管疾患及び炎症性疾患の画期的な治療薬を開発している生物薬剤会社のScios Inc. を2003年に買収した。

ーーー

「統合失調症」は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患で、多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現する。幻覚と妄想が統合失調症の代表的な症状。

以前は「精神分裂病」が正式の病名であったが、「統合失調症」へと名称変更された。

ドーパミン系やセロトニン系といった、緊張‐リラックスを司る神経系や、意欲やその持続に関連する系列、情報処理・認知に関する何らかの系列にトラブルが起きているといわれている。

ーーー

日本でもリスパダールは、適応外での処方が頻繁にされる薬で、強い不安感、緊張感、睡眠障害、強迫性障害、引きこもり等、様々な精神症状に対して処方されているとされる。

河野太郎ブログによると、日本に統合失調症の患者が多いのは、認知症の患者を「おとなしく」させるために(リスパダールを)使用するが、レセプトに「認知症」と書いたら適応なしとして保険が通らないので、「統合失調症」という病名がつけられるそうだ。

河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり 統合失調症が多い理由


日本ではヤンセンファーマが販売するほか、ジェネリック医薬品が多数あるが、問題にならないのだろうか。

 

 


 


旭化成

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 787,508 38,305 35,866 20,613 7.0  
13/9中間 918,984 74,295 72,886 46,649 7.0  
増減 131,476 35,990 37,020 26,036  
             
13/3 1,666,640 91,960 95,125 53,712 7.0 7.0
14/3 1,904,000 145,000 143,000 86,000 7.0 7.0


営業損益推移 (億円)

住宅が好調。ケミカルズは前期比で86億円の増益となったが、273億円の為替レート差益によるもの。

2012/4/26に Zoll Medical買収を完了したため、「クリティカルケア」セグメントを新設。

 

年度決算

中間決算

11/3 12/3 13/3 14/3予 増減 12/9 13/9 増減

増減内訳

売買差 数量差 コスト等
ケミカルズ 644 445 229 430 201 146 232 86 268 12 -194
住宅 365 463 543 600 57 188 265 77 3 83 -10
医薬・医療 70 88 159 280 121 75 164 89 36 82 -29
繊維 42 31 40 85 45 17 44 27 38 5 -16
エレクトロニクス 143 64 28 160 132 0 93 93 32 18 44
建材 21 18 40 60 20 16 31 15 2 7 5
クリティカルケア     -37 -35 2 -11 -20 -9 9 23 -41
の他 17 30 22 15 -7 12 8 -4   -1 -3
全社 -72 -97 -105 -145 -40 -60 -73 -13     -13
合計 1,229 1,043 920 245 530 383 743 360 387 229 -256

売買差 387億円のうち、為替レート差が437億円。

 

ーーー

東ソー
 
単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 311,794 4,819 4,446 310 3.0  
13/9中間 365,652 18,272 23,503 14,113 3.0  
増減 53,858 13,453 19,057 13,803  
             
13/3 668,494 24,463 33,580 16,867 3.0 3.0
14/3 750,000 40,000 44,000 26,000 3.0 3.0


営業損益推移 (億円)

南陽事業所の2011年11月13日の事故で塩ビモノマー設備 1-3号機すべてが停止したが、このうち、第一プラント(年産能力:25万トン)は2012年5月8日から、第三プラント(年産能力:40万トン)は7月8日から稼働を再開した

クロルアルカリの損益は、VCMの生産数量の回復により、出荷が増加し、円安に伴い輸出価格が改善し、黒字化した。

 

年度決算

中間決算

11/3 12/3 13/3 14/3予 増減 12/9 13/9 増減

増減内訳

交易
条件
数量差 その他
石油化学 104 125 105 133 28 33 66 33 7 6 21
クロルアルカリ -35 -100 -16 50 66 -51 8 59 20 47 -8
機能商品 203 131 90 186 96 45 100 55 37 11 7
エンジニアリング 36 57 44 11 -33 13 -4 -17   -17  
その他 27 24 22 21 -1 9 12 4   5 -1
合計 335 237 245 400 155 48 183 135 63 52 19


ーーー

信越化学

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 536,998 83,620 86,016 55,700 50.0  
13/9中間 572,184 92,224 97,332 63,820 50.0  
増減 35,186 8,604 11,316 8,120  
             
13/3 1,025,409 157,043 170,207 105,714 50.0 50.0
14/3 1,060,000 170,000 180,000 110,000 50.0 50.0

 

営業損益推移 (億円)

ShintechのPVCが相変わらず好調。円安効果もある。

 

年度決算

中間決算

11/3 12/3 13/3 14/3予 増減 12/9 13/9 増減
塩ビ・化成品 197 237 456     242 341 99
シリコーン 341 337 286     149 142 -7
機能性化学品 129 147 145     76 59 -17
半導体シリコン 389 343 219     126 145 19
電子・機能材料 361 382 409     210 215 6
その他 73 50 56     31 21 -10
全社 3 1 -0     3 -0 -3
合計 1,492 1,496 1,570 1,700 130 836 922 86



Shintechの経常損益の推移は以下の通り。

 

 

 

 


各社の損益が改善している。
但し、石油化学関連については赤字製品も多く、全体としてまだまだ楽観できない。

 

三菱ケミカルホールディングス

増収増益となった。
2014年3月期合計の予想も大幅増益となる。最終損益の従来予想は510億円であったが、石油化学関連製品の需要の回復が遅れている。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 1,529,788 41,105 33,883 3,323 6.0  
13/9中間 1,611,580 51,387 50,203 27,320 6.0  
増減 81,792 10,282 16,320 23,997 -  
             
13/3 3,088,577 90,241 87,054 18,596 6.0 6.0
14/3 3,500,000 133,000 125,000 46,000 6.0 6.0


営業損益推移(億円)

ケミカルズが黒字転換したが、ポリマーズは逆に売買差が大幅マイナスで赤字となった。
タッチパネル用フィルムなどのデザインドマテリアルズが好調で利益倍増、ヘルスケアも好調。

 

年度決算

中間決算

11/3 12/3 13/3 14/3予 12/9 13/9          増減内訳
売買差 数量差 コスト
削減
受払差 その他
ケミカルズ 530 149 -2 55 57 -54 2 55 6 11 31 9 -1
ポリマーズ 550 254 1 120 119 29 -10 -39 -52 -6 19 34 -34
エレクトロ 10 -53 -51 -35 16 -13 -26 -13 -11 -19 23   -6
デザインド 365 240 225 495 270 105 224 119 15 47 25   32
ヘルスケア 851 764 749 725 -24 360 351 -9 -8 -7 5   1
その 45 61 65 50 -15 26 4 -21   -9 10   -22
全社 -86 -108 -85 -80 5 -41 -31 10         10
2,265 1,306 902 1,330 428 411 514 103 -50 17 113 43 -20

 
 その他差には、減価償却制度統一影響の金額を含む。

 

グループ企業別の営業損益は以下の通り。(億円)

田辺三菱製薬、三菱樹脂の貢献が大きい。

  12/9 13/9 増減
三菱化学グループ -16 62 78
田辺三菱製薬グループ 322 305 -17
三菱樹脂グループ 60 113 53
三菱レイヨングループ 54 37 -17
調整 -9 -3 6
合計 411 514 103

 ーーー

住友化学

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 961,383 24,481 18,948 -13,114 6.0  
13/9中間 1,050,806 46,332 44,250 12,452 6.0  
増減 89,423 21,851 25,302 25,566  
             
13/3 1,952,492 45,016 50,252 -51,076 6.0 0.0
14/3 2,230,000 105,000 100,000 30,000 6.0 3.0

* 2013/3月期当期損益の詳細は 2013/5/21    2013年3月決算 - 住友化学 

営業損益推移(億円)

情報電子化学の貢献が大きい。石油化学は黒字転換したが、合繊原料やMMAの基礎化学が不調。
2014年3月期予想では、情報電子化学、農業関連、医薬品が好調で大幅増益。

  年度決算 中間決算
11/3 12/3 13/3 14/4予 増減 12/9 13/9 増減
基礎化学 206 93 -64 -70 -6 -26 -48 -22
石油化学 111 62 -32 55 87 -2 39 41
情報電子化学 261 110 117 395 278 24 217 193
健康農業関連 233 265 263 375 112 77 116 38
医薬品 287 209 309 410 101 231 206 -25
その 41 77 80 60 -20 42 34 -8
全社 -260 -209 -222 -175 47 -102 -101 1
879 607 450 1,050 600 245 463 219

 

 

 

ーーー

三井化学

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
12/9中間 680,517 1,479 -2,508 -15,283 3.0  
13/9中間 731,604 10,985 10,716 1,028 3.0  
増減 51,087 9,506 13,224 16,311  
             
13/3 1,406,220 4,290 9,206 -8,149 3.0 3.0
14/3 1,550,000 25,000 21,000 1,000 3.0 0.0

 

営業損益推移(億円)

石化は数量増で増益となったが、基礎化学品、ウレタンは赤字。

  年度決算 中間決算
11/3 12/3 13/3 14/3予 増減 12/9 13/9 増減

増減内訳

交易
条件
数量差 その他
石化 128 89 77 195 118 15 98 83 10 71 2
基礎化学品 204 86 -189 -160 29 -70 -80 -10 -15 12 -7
ウレタン -90 -146 -26 -20 6 -18 -41 -23 -1 -13 -9
機能樹脂 72 82 84 130 46 47 74 27 27 11 -11
加工品 14      
機能化学品 100 117 124 165 41 72 79 7 7 8 -8
フィルム・シート 2 -33 -5 28 -15 9 24 6 2 16
その -24 -14  6 -55 -61 -16 -29 -13     -13
合計 405 216 43 250 207 15 110 95 34 91 -30

 

 

 

 

 

本年2月にOccidental Chemical  (OxyChem) がシェールガスを利用し、VCM原料用にエチレンを新設することを報じた。

立地:テキサス州 Ingleside
能力:年産 545千トン
原料エタン:隣に新設する液状天然ガスの分解装置からパイプラインで輸送
製品エチレン:隣接する100%子会社OxyVinylsのVCMプラントにパイプラインで輸送

2013/2/11  OxyChem、シェールガス利用でエチレン新設

 


OxyChemは10月31日、このエチレンプラントをメキシコのPVC、コンパウンド、塩ビパイプメーカーのMexichemとのJVで建設することを発表した。

両社50/50出資でIngleside Ethylene LLCを設立し、年産545千トンのエチレンクラッカーをOxyChem のIngleside工場に建設する。他に、テキサス州 Texas にパイプラインとタンクも建設する。 建設費は15億ドルとされる。

建設と操業はOxyChemが担当する。同社では、2014年央の建設開始、2017年第1四半期の商業生産を予定している。

発表によると、「両社間の長期の戦略的供給関係の一部として」、生産したエチレン全量を隣接する既存のVCMプラントに送り、原料とする。
生産したVCMはMexichemに輸送、MexichemでPVCを生産、更にPVCパイプに加工する。

Mexichem は塩ビなどのプラスチックパイプのグローバルリーダー。

OxyはEquistar設立時に3つのエチレンコンプレックスを拠出しており、現在、InglesideのVCM用のエチレンは(恐らく LyondellBasell のCorpus Christiの旧自社工場から)購入している。これをシェールガスからの低コストのエチレンに切り替える。

Mexichemはメキシコでは塩素/苛性ソーダとPVCは生産するが、エチレン、VCMは生産しない。
塩素をPemexに供給し、PemexからVCMを購入している。Mexichemにとっては安価なVCMの取得は念願であった。

今回の発表には明らかにされていない疑問点がある。

エチレン全量をVCMにするとVCMは100万トン以上となるが、発表では「VCMはMexichemに輸送」とあるが、全量なのか、一部なのか(その場合、何割位なのか)が明らかでない。

実は、Mexichemは本年9月にPemexとのVCMのJVを発表したばかり で、塩素を供給しVCMを購入しているPemexのVCMプラントをJVとした上で、20万トンの増強を行うことが決まっている。

PemexがPajaritosのVCMプラントを現物出資 (228百万ドル)、Mexichemが現金(200百万ドル)と資産(90百万ドル)を出資し、Pemex 44%/Mexichem 56%出資のJV Petroquimica Mexicana de Viniloを設立、 工場の手直し増強を行って現在の年産20万トンを2015年第4四半期に40万トンにする計画。

Mexichemが今後、OxyChemとPemexをどのように扱うのかは不明である。

また、VCMとPVCのメーカーであるOxyChem が、シェールガスを原料とする低コストのVCMを 自社のPVC用に使用せず、Pemexに外販する理由も不明である。

ーーー

現在、米国ではシェールガスを利用するエチレン計画が目白押しである。

米国の場合、原料の塩は工場周辺の地下の膨大な岩塩層から低コストで入手できる。
電力やエチレンは現在でも日本と比べて低価格だが、今後はシェールガス利用で更に大幅に安くなると見られている。
日本でのVCM、PVCの生産コストとの格差が更に拡大する。

ーーー

OxyChemの塩ビ関連事業は以下の通り。

OxyChem 塩素、苛性ソーダ
炭酸カリウム(世界最大)
塩化カルシウム(世界最大)
有機塩素化合物、その
OxyVinyls EDC
VCM(世界最大)
PVC(世界3位、北米2位)


OxyChemとGeon(1993年にGoodrichから独立)は1999年に塩ビ樹脂事業を統合し、OxyVinylsを設立した。(Oxy 76%)

残るGeonはコンパウンド事業を行っていたが、2000年にコンパウンド会社のM.A. Hannaが合併統合し、Polyoneとなった。
この結果、OxyVinylsはOxyChem とPolyoneの76/24%のJVとなった。

2007年にOxyChemはPoly OneからOxyVinyls株式を261百万ドルで買収し、100%子会社とした。

Mexichem 1998年にQuímica Pennwalt Polímeros de Méxicoが合併して設立された。
フランスの
Elf Atochem とメキシコのGrupo Empresarial Privado Mexicanoが共同で所有したが、後者は1999年にCamesa Groupと合併し、2003年にTotalElf Atochem)の持株を買収し、メインの株主となった。

現在の同社の事業はビニルチェーンとフッ素チェーンの2つに分かれている。

1)ビニルチェーン:現在ラテンアメリカ最大の塩ビ樹脂、コンパウンド、塩ビパイプメーカー

Mexichem2004年にメキシコ最大の塩ビレジン、コンパウンドメーカーのPrimexを買収した。
2006年に米国の塩ビコンパウンドメーカーBayshore Groupを買収。
2007年にはコロンビアの塩ビメーカーPETCOを買収、また、コロンビア最大の塩ビコンパウンドメーカーGeon Polímeros Andinosの株の50%を買収した。
2012年2月、欧州の塩ビパイプメーカーWavinを531百万ユーロで買収した。

 現在の体制(子会社)は以下の通り。

子会社   工場  
Mexichem Derivados  メキシコ Coatzacoalcos 塩素 260千トン、ソーダ 286千トン、次亜塩素酸ソーダ 20千トン
  
塩素はVCM用にPemexに供給
El Salto 塩素/ソーダ 40千トン、次亜塩素酸ソーダ 70千トン、塩酸 26千トン
Mexichem Derivados Colombia コロンビア Zipaquira 苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、塩化鉄(5千トン)
Quimir メキシコ   燐酸、燐酸ナトリウム、活性炭
Mexichem Resinas Vinilicas メキシコ Altamira I、II、
Tlaxcala、
La Presa
s-PVC 349千トン、e-PVC 12,500t
Mexichem Resinas Colombia コロンビア 3工場 PVC 400千トン
Mexichem America 米国   コンパウンドとリサイクルPVC
2006年にBayshore Vinyl Compounds、Bayshore Rigids、Ricicla の3社を買収
Mexichem Compuestos メキシコ Altamira PVC compounds 60千トン
Tlaxcala PVC compounds 12千トン
C.I. Mexichem Compuestos Colombia コロンビア   PVC, PE その他のコンパウンド 50千トン
AlpahGary 米国   Compounds
2010年に
Rockwood Holding から買収

2)フッ素チェーン

Mexichem2004年にQuímica Flúor を買収し、世界最大の蛍石埋蔵量を誇るCompania Minera Las Cuevasと統合してMexichem Fluorとし、フッ化水素酸の世界最大の垂直統合メーカーとなった。

 ・Mexichem Fluor - San Luis Potosí:
    世界最大の蛍石メーカー
    能力は
metallurgic gravel 350千トン、acid-grade concentrates280千トン
    北米、南米、欧州、日本に輸出

 ・Mexichem Flúor - Matamoros
    世界第二位のフッ化水素酸メーカー
    能力 
95千トン
    
98%を米国に輸出  

 

トクヤマとセントラル硝子は10月31日、両社の創業当時からの製品であるソーダ灰と塩化カルシウムの販売について共同事業会社を設立し販売事業を移管・集約することで合意したと発表した。

国内ソーダ灰市場は、需要が大幅に縮小し、回復が見込めない状況で、 主用途であるガラスや粉末洗剤は慢性的な需要減少、ユーザーの海外移転等により今後も市場の成長・回復は厳しい。

両社はまず、2014年10月1日から販売事業を統合する。
2015年5月末にはセントラル硝子が生産から撤退し、トクヤマ1社が供給する体制にする。

販売会社(社名は検討中)はトクヤマが65%、セントラル硝子が35%を出資する。

両社の生産能力は以下の通り。

  トクヤマ セントラル 合計
ソーダ灰 34万トン 25万トン 59万トン
塩化カルシウム 19万トン 18万トン 37万トン

ーーー

ソーダ灰とその副産品の塩化カルシウムは、現在の電解法苛性ソーダの以前の製法であったアンモニア法苛性ソーダの原料であった。

1961年11月に通産省が「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」(後記)を出し、各社がアンモニア法ソーダを停止した以降も、ソーダ灰の生産は続けてきた。


アンモニアソーダ法 

       以上をまとめると、
                     2NaCl (工業塩)+ CaCO3 (石灰石)
→ Na2CO3  (ソーダ灰)+ CaCl2 (塩化カルシウム)

 

以下 苛性ソーダ製造プロセス)

 Na2CO3 (ソーダ灰)+Ca(OH)2  2NaOH+CaCO3 (消石灰)

(電解法の場合)  NaCl(工業塩)NaOH+Cl2 



ソーダ灰は幅広い分野で利用されている。

・板ガラス(自動車ガラス・建築ガラス・タッチパネルガラス等)、びんガラスの原料
・グラスウール(断熱材)の原料
・石けん、洗剤の原料
・かん水
・水処理助剤

副産の塩化カルシウムは、除湿剤、融雪剤、豆腐用凝固剤、食品添加物などに使用される。
途中で生産される塩化アンモニウムは肥料などに使われる。

ーーー

アンモニア法ソーダのメーカーは4社(トクヤマ:旧・徳山曹達、セントラル硝子:旧・宇部曹達工業、旭硝子、東ソー:旧・東洋曹達)で、各社とも苛性ソーダの製法転換後もソーダ灰の生産を続けたが、需要は減少した。
また、コストが安い米国の天然ソーダ灰の輸入もあり、その後は中国からの輸入も増大した。

米国の天然ソーダ灰は炭酸ナトリウムを豊富に含んだトロナ鉱石Na2CO3・NaHCO3・2H2Oを精製して製造される。
約5000万年前太古のアメリカ中西部にあった大きな湖が乾燥し始め、干上がった湖底に堆積した有機物から発生する炭酸ガスとまわりから流れ込むナトリウム塩が反応し、400万年の時を経てトロナ鉱石が作りあげられた。

国内市場は1979年度に ピークの140万トンを記録したが、その後、新築住宅着工低迷による建築用板ガラス生産の減少、顧客の海外移転に伴う国内ブラウン管用ガラス生産の減少、アルミ缶やペットボトルへの移行による飲料用ガラス瓶需要の減少などの影響を受け、2012年度には59万トンに減った。

国内生産は32万トンで両社がほぼ半量ずつを生産、残る27万トンは中国や米国などからの輸入である。
近年は中国品の輸入が増加し、販売価格も下落傾向にある。


東ソーは1996年、南陽のプラント(32万トン)を停止、米国天然ソーダ灰の輸入販売に切り替えた。

旭硝子は、北九州工場・千葉工場の両工場のほか、1990年に米国天然灰生産会社Solvay Soda Ash J.V(Solvay 80%、旭硝子 20%) を設立、3拠点であったが、1997年に千葉を停止、2001年に北九州も停止した。

同社は2004年に、同じく米国産ソーダ灰を輸入販売する住友商事と折半で販売JVのソーダアッシュジャパンを設立したが、2007年に住商100%とした。
フッ素化学事業の更なる強化のために経営資源を集中していきたい旭硝子と、ソーダ灰事業に更に注力していきたい住友商事との考えが一致したもの。

なお、セントラル硝子は当初の社名は宇部曹達工業で1936年に設立された。
1958年に子会社セントラル硝子を設立したが、1963年にこれを吸収合併し、社名をセントラル硝子に変更した。

ーーー

1961年11月の通産省 「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」はPVCの増設、原料転換に対応するもので、内容は以下の通り。

① カーバイドのコスト引き下げは困難であるので,増設に当たっては炭化水素源をEDCなどコストの安いものに移行させる。

② EDC法の採用に当たっては極力カーバイド法のスクラッブ・アンド・ビルドを進める。

③ 塩素源については苛性ソーダとのバランスを取るためア法ソーダの電解法への転換を進める。
   (PVC増産で塩素需要が急増。余剰ソーダ輸出、ア法ソーダ減産でも対応不可になってい。)

④ ア法メーカーのEDC計画を塩素消化の面から支援する。


この方針によりアンモニア法メーカーは先ず、EDCの外販から始めた。

東洋曹達/徳山曹達:1964年 周南石油化学設立 (両社にプラント) → 1978年解散
セントラル硝子   :1963年 セントラル化学設立(川崎) 


各社とも、PVCへの進出を図ったが、PVC増設枠の配分取得で難航した。

徳山曹達(現・トクヤマ):
    1966年に鉄興社(既存PVCメーカー)、ダイセルとのJV サン・アロー化学を設立、VCM・PVCの生産を開始。
    後に徳山曹達100%とし、現在に至る。(PVCは新第一塩ビ)

東洋曹達(現・東ソー):
    1966年に独自でVCM生産開始
    1969年に鉄興社(既存PVCメーカー)とのJV 四日市鉄興社を設立、PVCの生産を開始。
    1975年に鉄興社を吸収合併、現在に至る。(PVCは大洋塩ビ)

旭硝子:
    1966年に米国PPGとのJV 旭ペンケミカルを設立、VCM生産開始。
    1973年に独自でPVCの生産を開始。
    2002年 国内PVCから撤退。
    現在、VCMは京葉モノマー、海外PVCはインドネシアのAsahi-masで事業継続

セントラル硝子:
            1969年にセントラル硝子、東亞合成、東燃化学が川崎有機を設立。
       1970年にセントラル化学がVCMを、川崎有機がPVCを生産開始。
       2003年にセントラル化学がPVC事業から撤退。

21世紀に入り、日本ゼオン、住友化学、呉羽化学、三菱化学、チッソ、東亞合成などの各社がPVCから撤退する中、トクヤマと東ソーは健在である。
   


 

小泉元首相が各地で「脱原発」の発言を続けている。

10月16日の木更津市での講演の発言概要は以下の通り。(2013/10/30 毎日新聞)

首相の時は「原子力はCO2を出さない、安全だ、コストも安い」という専門家の話を信じていた。
しかし福島の原発事故を考えると、日本で原発を推進するのは無理だなと。
政治が決断すれぱ原発ゼロでもやっていけると考えた。
8月にフィンランドの核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察し、改めて確信した。

放射性廃棄物、核のゴミをきちんと危険のないよう保管する場所が、日本にはどこにもない。
地震国で津波もある。原発事故の後でコストが一番安いと信じる人はほとんどいない。
原発立地にどれだけ税金を投入したか。そして福島の事故の賠償責任、汚染水処理、廃炉。東電だけでできるわけがない。
今や原発のコストは一番高い。

日本は原発ゼロで十分経済成長できる。日本企業は力がある。
今すでに原発ゼロだ。原発は新増設できず、安全対策をして稼働させてもせいぜい数基だ。
それなら太陽、風力、地熱、地域全体でCO2を出さない自然エネルギー改革をする。
代替エネルギーの参入を増やし電気料金で競争させれぱいい。

10月29日には「世論を変えることで政府も脱原発に向け政治決断ができる」と述べ、今後も発言を続ける意向を示した。


付記 小泉純一郎元首相は11月12日、日本記者クラブで講演した。

講演ビデオ  

講演概要 

小泉元首相は脱反原発論について、毎日新聞の8月26日の記事以来、取り上げられているが、311以降、ずっと言い続けてきたとしている。

 記念の記帳に書いたのは「百考は一行に如かず」

小泉氏は、「百聞は一見に如かず」の続きが、「百見は一考に如かず」で、その後が、「百考は一行に如かず」で、百の考えも一つの行動に及ばないの意味だと解説した。

安倍首相への言葉であろう。


ーーー

「オンカロ」は、フィンランドのオルキルオト島で建設中の、世界で唯一の高レベル放射性廃棄物の最終処分場である。

地下およそ520メートルの深さまでトンネルを掘り、そこから横穴を広げ放射性廃棄物を処分する。2020年までに運用を開始し、その後2120年頃までの100年間にわたり埋設処分に利用、100年後に施設が満杯になった後は、道を埋めて完全に封鎖する。

プルトニウムの半減期は2万4000年で、生物にとって安全なレベルまで放射能が下がるにはおよそ10万年の月日を要するため、10万年にわたって封鎖され続ける。

ドキュメンタリー映画 『100,000年後の安全』

ーーー

小泉発言について、安倍首相は以下の通り反論している。

原発停止の影響で火力発電向け燃料の輸入コストがかさみ、原発ゼロを続けるのは現状では難しい。
1年間で4兆円近い国の富が海外に出ていっている。ずっと続いていくと大変だ。今の段階で原発ゼロを約束することは無責任。

原子力比率は可能な限り引き下げていかなければならない。
高レベルの放射性廃棄物の最終処分については、現在も処分地選定調査に着手できていないという現状を真摯に受けとめなければならない。
国として、処分地選定に向けた取り組みの強化を、責任を持って検討していきたい。

高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として、地層処分については、20年以上の調査研究の結果、我が国においても技術的に実現可能であると評価されている。一方で、地層処分について専門家間でさまざまな議論が存在するのも事実。
今後、これまで以上に専門家での丁寧な議論を実施し、同時に、安全性、信頼性の一層の向上に向けた研究開発を進めていくなど、日本学術会議の提言も踏まえて、国として、最終処分へ向けた取り組みの強化を責任を持って検討していく。

菅官房長官は「責任あるエネルギー政策を進めていくのは政府の役割だ」と述べた。

ーーー

使用済み核燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物の地層処分については、2000年に原子力委員会が実現可能と評価し、受け入れ先の選定に向けた特定放射性廃棄物最終処分法が成立した。

特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の作成と公表、精密調査地区及び最終処分施設建設地の選定、最終処分の実施、「原子力発電環境整備機構」の設置について規定

しかし、安全性や原子力政策への批判などから、最終処分施設建設地の選定は全く進展していない。

アメリカでは、1987 年に NWPA (核廃棄物政策法) を制定。候補地の中から、Yucca Mountain 絞り込んで処分場を作ることを決め、2009 年までに 150億ドルの投資を行って建設の準備を行ってきた。

しかし、決定後に地元住民やネバダ州議会の反対が強くなり政治問題化した。

オバマ大統領は 2008 年の大統領選挙において、Yucca Mountaiへの建設計画中止を公約に上げて当選、オバマ政権は代替手段を用意しないまま、Yucca Mountaiでの処分場建設計画を中止、これまでの数十年にわたる取り組みを無効化した。

建設中の「オンカロ」が世界で唯一の高レベル放射性廃棄物の最終処分場である。

 

日本学術会議は昨年9月、以下の内容の政策の抜本的な見直しを原子力委に提言した。

(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し

各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来することをしっかりと認識する必要がある。

従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。

(2) 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保

地層処分の政策枠組みが行き詰まりを示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっての、現時点での科学的知見の限界である。
自律性のある科学者集団による、専門的で独立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討論の場を確保する必要がある。

(3) 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築

行き詰まりの第二の理由は、原子力政策に関する大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題が先行して扱われてきたことである。
広範な国民が納得する原子力政策の大局的方針を示すことが不可欠であり、高レベル放射性廃棄物の暫定保管と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが不可欠である。

(4) 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性

行き詰まりの第三の理由は、従来の廃棄物処分方式では、受益圏と受苦圏が分離するという不公平な状況をもたらすことにある。
これへの対処として、
金銭的便益提供を中心的な政策手段とするのは適切でない。
金銭的手段による誘導を主要な手段にしない形での立地選定手続きの改善が必要であり、負担の公平/不公平問題への説得力ある対処と、科学的な知見の反映を優先させる検討とを可能にする政策決定手続きが必要である。

(5) 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性

(6) 問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識

 

経済産業省の総合資源エネルギー調査会は9月28日、原発の高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋める地層処分の技術的課題を検討する作業部会の初会合を開いた。技術面での本格的な再検証を始める。

杤山委員長は会合後、記者団に「できるかどうかをゼロに戻って判断したい」と強調、議論の結果次第では地層処分を取りやめる可能性もあるとの認識を示した。
 

地層処分方法を研究する日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターは10月28日、北海道の宗谷管内幌延町の調査坑道を報道機関に公開した。

調査坑道は2012年3月に掘削を開始した。

地下350メートルの地点に高さ3m、幅4mの馬蹄形の坑道を「8の字」形に掘っており、本年度中に坑道につながる試験用の横穴がすべて完成すると、総延長は約760mになる。

来年度から放射性廃棄物に見立てた100度程度の熱源入りの実物大の鋼鉄製容器の埋設試験を行い、本格的な処分技術の研究を始める。
水分を通しにくい特殊な粘土で覆い、地下水の浸透や容器の腐食の程度を数年かけて調べる。

機構と北海道、幌延町は実際に放射性廃棄物を持ち込むことと、処分場転用を禁じる三者協定を結んでおり、約20年の研究期間終了後は地下施設全体を埋め戻す。

 

付記 国内では既に2万5千本相当の使用済み核燃料がたまっており、東京ドーム約80個分の広さが必要という。
    オンカロもフィンランドに4基ある原発の2基分を貯蔵しうるだけで、あと2基分の処分場が必要。


 

読売新聞は10月8日の社説で以下の通り述べている。

使用済み核燃料や、それを処理した際に出る放射性廃棄物の処分法は技術的に決着している。
専門家は地盤の安定した地層に埋めれば、安全に処分できると説明している。日本を含め各国がこの方法の採用を決めており、フィンランドでは建設も始まった。
放射能は、時間を経ると減り、1000年で99.95%が消滅する。有害性が消えない水銀など重金属の廃棄物とは事情が違う。


これは事実ではなく、高レベル放射性廃棄物を地下に埋設するための基礎実験をこれから始める段階で、技術面での本格的な再検証の結果次第では地層処分を取りやめる可能性もある。

更に、最終処分を引き受けるところがないことから近い将来の実現はあり得ない。

実現するまでに廃棄物の保管能力が限界に達し、原発を止めざるを得なくなるのは必至である。





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