2012年11月アーカイブ

中国商務部は11月23日、日本と米国原産の輸入レゾルシンの反ダンピング調査でクロの仮決定を下したと発表した。

商務部は2月3日に中国のレゾルシンメーカーを代表して浙江鴻盛化工から日・米原産の輸入レゾルシンの反ダンピング調査の要請を受け、調査を行ってきたが、3月23日、反ダンピング調査の開始を決定した。

保証金は以下の通りで、非常に高率である。

 日本
  住友化学          40.5%
  三井化学          40.5%
  その他            40.5%

 米国
  INDSPEC Chemical       30.1%
  その他                 30.1%

ーーー

これまでの情報では、レゾルシンの世界需要は約6万トンで、メーカーは以下の通りとされていた。

 

能力

  原料
住友化学  30,000トン 千葉2万トン
大分1万トン(2010/4 新設)
1,3-diisopropylbenzene
(プロピレンとベンゼンが原料)
三井化学 7,600トン 岩国大竹
INDSPEC Chemical 20,000トン 下記参照 1,3-benzenedisulfonic acid
Hoechst

1992年停止
インドのAtul 1,500トン 5,000トンへの増設を計画  
ロシアの Orgsintez

2007年に停止   
その他

     若干   

インド、中国など  
合計 約6万トン    


INDSPEC :
Koppersが
Pennsylvania州のPetrolia工場で世界で最初にレゾルシンを企業化した。
1988年初めに英国のBeazer East がKoppersを買収した際、Petrolia工場と近くの研究センターがMBOで独立、INDOSPECとなるが、1999年にOccidentalが買収し、子会社にした。
(残る旧Koppers設備は1988年末にMBOで再度 Koppersになった

この場合、中国メーカーの供給能力はほんの一部のため、ダンピング課税が行われても中国の大半の需要家は課税後の高い価格で輸入を続けざるを得ず、中国需要家が被害を受けることになる。

商務部は太陽発電用の米・EU原産のポリシリコンに反ダンピング、反補助金調査を開始したが、これは米・EUの中国産の太陽電池パネルの反ダンピング、反補助金調査に対抗した政治的なものであり、通常は大部分を輸入に頼る製品にダンピング課税を行うことはない。

このため調べてみると、反ダンピング調査を要請した浙江鴻盛化工Zhejiang Hongsheng Chemical が2万トンの設備を完成させていることが分かった。既に稼働している模様。

参考 同事業の環境調査報告

同社は染料等のメーカーの浙江龙盛集团Zhejiang Longsheng Groupが75%、香港の万津集団が25%を出資する合弁会社で、浙江省上虞市Shangyu)に自社技術で建設した。


同社の技術は、ベンゼン、硫酸、硝酸からm-フェニレンジアミンをつくり、これを加水分解してレゾルシンとm-アミノフェノールを製造するもの。レゾルシンは2期に分けて建設し、合計能力は2万トンとされている 。

ーーー

なお、三井化学の岩国・大竹工場は4月22日に爆発事故を起こし、停止しているが、同社では再建を断念したとされている。

報道では、生産停止が半年以上に及び、需要家が他社からの調達に切り替える動きを加速し取引の回復が難しくなったため。市況も低迷しており、再建にかかる数十億円の投資負担は重いと判断したとされている

事故当初は供給不足が懸念され、住友化学が、千葉と大分の両工場ともフル操業状態のため「増産による対応は難しいものの、当面、在庫を切り崩して応援出荷することにした」とされた

三井化学の能力が欠けても問題が起こっていないことをみると、浙江鴻盛化工の供給開始が影響しているのかも分からない。
 





EUのユー口圏17カ国とIMFは11月26日夕から27日未明にかけて財務相会合を開き、凍結していたギリシャヘの支援融資の再開で合意した。

ギリシャ国会が 、EUなどが求める公務員給与や年金のカットなど計94億ユーロの歳出削減策を盛り込んだ2013年緊縮予算案を可決し、支援受け入れの条件をクリアしたことを受けた。

ギリシャの公的債務については、2020年までGDP比120%に圧縮する目標だった。
しかし、経済状況の深刻化で目標は大きく外れ、現状では財政緊縮策などを進めても、2014年に190%、2020年になっても144%までしか減らせない見込みだった。
今回、当初目標を修正し、2020年までにGDP比124%に圧縮することとした。

凍結中の次回分315億ユーロだけでなく、年内に予定されていた残る2回分も含め、計437億ユーロを実施する方針で、12月13日までに正式決定する。

付記
ユーロ圏財務相会合は12月13日、来年3月末までに491億ユーロの対ギリシャ融資を行うことで合意した。向こう数日中に343億ユーロが支払われ、残りも2013年第1四半期に支払われるという。

「ギリシャの債務の対GDP比率を大幅に引き下げる国債買い戻しの結果を歓迎する」とし、「この国債買い戻しが、11月27日に合意された構想、および調整プログラムの完全な実施と共に、ギリシャの債務の対GDP比率を2020年に124%に引き下げることに貢献することを再確認した」としている。

支援計画の骨子は次の通り。

・凍結していた融資再開を決定
・中期の財政再建目標
(財政赤字をGDP比3%以下にする)の達成期限を、2014年から16年に延期
・2020年時点の債務残高の対GDP比目標を当初の120%から124%に修正
・新たに2022年に110%以下にする目標を設定
・過去に実施したユーロ圏諸国からのギリシャ向け融資の金利を1%ポイント軽減(支援を受けている国からの融資は除く)
・過去に実施した各国及びEFSFからの融資の返済期限を15年間延期、EFSFローンの金利支払いの10年間延期
・ECBはギリシャ債からの利益110億ユーロを放棄
・ギリシャ国債を発行価格より安い価格で市場から買い戻し、債務残高を圧縮

目標見直しでは、IMFが目標の現状維持とユーロ圏諸国によるギリシャ債権の一部放棄を求めたのに対し、ドイツなどユーロ圏はこれを拒否した上、目標達成時期の2022年への先送りを主張、対立が鮮明化していたが、双方が歩み寄った。

今回の計画そのものの実現性がはっきりしない。

財政赤字をGDP比3%以下にする財政再建目標の達成期限を2014年から16年に延期すると、330億ユーロが追加で必要となる。
更に、債務残高比率縮減にも資金が必要。 

ギリシャ国債を発行価格より安い価格で市場から買い戻す (報道では300億ユーロの国債を100億ユーロで買い戻す案)というが、投資家が応じるかどうか不明である。

付記
ギリシャ政府は12月3日、最大100億ユーロを投じて民間投資家から国債を買い戻すと発表した。
対象となる20のギリシャ国債の買い戻し価格は償還期間によって異なり、最低で元本の30.2-38.1%、最高で32.2-40.1%と、市場の予想を上回った。

付記
ギリシャ公債管理機構は12月12日、応募額が額面で319億ユーロ、買い取り額113億ユーロと発表。差額の206億ユーロ相当の債務が削減される。

2012年の経済成長見通しは前年比マイナス6.5%で、GDPが減少すると、GDP比の赤字の率は減らない。

今回、融資再開が決まったが、再開の条件となる緊縮策に対しては、年金受給開始年齢の引き上げや公務員削減への反発からギリシャ国内で数万人規模のストライキが発生しており、ギリシャ政府は連立政権の合意で「レイオフはしない」と表明している。

ユーロ圏にとどまったまま(通貨切り下げが出来ない状況で)ギリシャ経済が大きく改善する可能性はないため、緊縮策と支援だけがGDP比債務削減の手段となる。

しかし、先の見込みのないままの緊縮策には国民が同意する筈はなく、今回の新計画が実行される保証はない。

支援国側にも、際限のないギリシャ支援への支持はない。

今回も、オランダなど一部の国は「新規の資金投入は認めない」との立場を崩さず、公的債務の減免は見送られた。

最終的にはギリシャがユーロから離脱するしか、方法はないのではないか。

参考       浜 矩子同志社大学教授のユーロ解体論


付記

格付け大手S&Pは12月5日、ギリシャの長期債務格付けについて、投機的水準のCCCから部分的なデフォルト(債務不履行)を意味するSDに再び引き下げたと発表した。

民間銀行などから額面の3分の1程度で国債を買い戻す計画について、「投資家は当初の約束を下回る価値を受け取る」と指摘、「デフォルト同然」と判断した。

買い戻しが実施されれば、格付けをCCCに戻す公算が大きいという。

 

これまでの経緯は以下の通り。

2009/10 総選拳で全ギリシャ社会主義運動が新民主主義党を破り、パパンドレウ政権発足。
前政権の財政赤字粉飾が発覚、危機表面化
2010/5 EUとIMFによるギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、
    民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。
ギリシャ問題については
民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減

ギリシャで政府の緊縮策に抗議する全国ゼネスト

2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7   EU 金融危機

その後 EU・IMFの試算では、当初予定していた第2次支援を実施しても、2020年時点でギリシャの政府債務の対GDP比率は129%までしか低下せず、目標の120%を実現するための追加策が残された大きな論点となった。

ギリシャ政府の追加緊縮策が整わないことなどを理由に正式決定が先延ばしされてきた。

EUは第二次支援を1300億ユーロとするとともに、民間銀行のギリシャ国債元本削減幅を従来の50%から更に拡大することとし、ギリシャにそのための条件を科した。

2012/2 ギリシャ、3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」
   2012年で33億ユーロ分の 賃金、年金、公務員削減による節減策を議決

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
   ギリシャ与党党首が「緊縮策実行の誓約書」に署名。

3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)
   6億2500万ユーロの歳出削減めぐって暗礁に乗り上げたが、
    うち、3億ユーロを年金の削減で賄うことを決定
   残り 3億2500万ユーロについては、最終的に国防費や公共投資などの削減で賄うことを決定。

2012/2 ユーロ圏17カ国、ギリシャへの総額1300億ユーロの第2次支援を決定

条件
・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に
・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる

2012/3 ギリシャ、債務削減に成功
2012/5  総選挙で財政緊縮派の全ギリシャと新民主の連立2与党が過半数割れ
2012/6 EUとIMFが支援凍結
2012/6 ギリシャ、連立政権発足 
2012/11 国会が13年緊縮予算案を可決。支援受け入れの条件クリア
ユーロ圏財務相会合がギリシャ財政再建の目標期限を16年まで2年延長することを基本承認
2012/11 凍結していたギリシャヘの融資実施でEUとIMF合意


 

 



韓国のHanwha Groupに買収されたQ.Cellsは、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていたが、倒産のきっかけの一つがドイツのRenewable Energy Actの改正で、4月1日から太陽光発電の買取価格(Feed-in-tariff)の大幅引き下げが実施された。

2000年に当時のシュレーダー首相率いる社会民主党と緑の党の連立政権は再生可能エネルギーの普及のため、太陽光や風力などで発電した電力を20年にわたり、地域の電力会社が固定価格で買い取る仕組みを導入した。

これにより太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。
(太陽光発電はドイツの全発電容量の14.9%を占めるが、発電電力量では3.3%にしかならない。)

買取価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだ。
電力消費者が支払う再生可能エネルギー法上乗せ金は、2012年は140億ユーロ以上となっている。
2013年には、これが約200億ユーロに達する。

このため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。
 (設置時の買取価格はその後も維持される)


屋根設置型の買取価格(ユーロセント/kWh)

  2012/1/1  2012/4/1
~10kW 24.43 19.50 発電量の80%分のみ支払
~30kW 16.50 発電量の90%分のみ支払
30~100kW 23.23
100~1000kW 21.98
1000kW~ 18.33
 
13.50
10MW以上

不適用(一定の猶予期間あり)

買取価格適用外の電力は市場実勢価格の月平均値で買い取る。

新価格は2012年4月1日に遡って適用され、2014年1月まで有効。
これらの買取価格は7月から15ヶ月に渡って毎月1%ずつ削減され、2014年から1年単位の買取価格の削減が行われる予定。

ドイツ連邦経済省は2012年10月、ドイツ国内の電力系統運用者4社から報告を受け、再生可能エネルギー法にかかる2013年以降の上乗せ金が1キロワット時につき3.592セントから5.277セントに増額となることを公表した。

平均的な一般家庭(3人家族で年間3500kwh)の場合、電気代の増額分は付加価値税(19%)を加えると年間で7400円となる。       (5.277-3.592)ユーロセント x 1.19 x 3500=70.2ユーロ≒7400円

ドイツの家庭用電気料金とそのうちの再エネ法賦課金の推移は以下の通り。
2013年の平均的な一般家庭の電気代(予想)は、年間 102千円で、うち再エネ法賦課金は付加価値税込みで年間 23千円となる。

2013年は予想。発電・送電・配電コストは2012年分をそのまま適用し、再エネ法賦課金は上記を適用。

ユーロセント/kWh

  2011 2012 2013
予想
発電・送電配電 13.80 14.05 14.05
公道使用料 1.79 1.79 1.79
19条賦課金 0.03 0.15 0.15
電力税環境税 2.05 2.05 2.05
エネ法賦課金 3.53 3.592 5.277
(小計) (21.20) (21.63) (23.32)
VAT(19%) 4.03 4.11 4.43
家庭用 合計 25.23 25.74 27.75

詳細は

国際環境経済研究所(IEEI)
ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ①、②、③

http://ieei.or.jp/2012/07/expl120711/

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日本では、再生可能エネルギーの普及・拡大を目的に、2012年7月1日から「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が始まった。

2012/4/26    自然エネルギー買取価格

2012年度の育エネ負担金の単価は、例えば東京電力管内で、月々の電気の使用量が300 kWhの標準家庭では、

  • 再生可能エネルギー賦課金:電気の使用量300 kWh/月×0.22円/kWh=月額66円
  • 太陽光発電促進付加金:電気の使用量300 kWh/月×0.06円/kWh=月額18円

となり、育エネ負担金は月額84円となる。

ソース 政府広報オンライン

ドイツの場合もスタート時は0.2セント/kwhで、平均的な一般家庭(3人家族で年間3500kwh)の場合は、(現在のレートで付加価値税込みで)月額70円程度であった。

新規設置の買取価格は当初の50.6セントから20セント以下に下がっているが、買取電力量の急増により、2013年ベースでは月額1900円程度にまで増大している。

日本でも、やり方を間違うと、家庭の負担が急増する可能性がある。

上記のIEEIの資料では、
「ドイツの全発電容量の14.9%を占める太陽光発電も、発電電力量では3.3%にしかならない。この3.3%の発電電力量をまかなうために投じた費用との見合いが問題」、とし、
「再生エネとバックアップ電源の二重の設備投資を社会全体で負担せざるを得ないものであることは、認識しなければならないないだろう」としている。

 


ドイツの太陽電池メーカー大手のQ.Cellsは2012年4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。

太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

2012/4/6 太陽電池大手 Q-Cells 破綻

Q.Cellsは8月26日、韓国のHanwha Groupから買収提案を受けたと発表した。

Q.Cells は8月29日、債権者集会で韓国のHanwha Groupへの事業売却が、参加者の過半数によって承認されたことを発表した。
従業員約1,550人のうち、1,250人を
Hanwha Groupが引き受け、また、Q-Cells の事業の大部分についてもHanwha Groupに移管される。

買収価格は、営業債務の引き受け部分(1〜5億ユーロ相当)と、キャッシュによって支払われる部分(数千万ユーロ)から成り、キャッシュ部分の金額は今後、Hanwha Groupが引き受ける追加債務の金額によって変動する。

新聞情報では、買収額は4千万ユーロで、2億74百万ユーロの負債も引き継ぐ。

2012年10月24日、買収が完了し、Hanwha Q.Cells GmbHが設立された。

Hanwha Q.Cellsは以下の資産を引き継ぐ。

・本社、研究開発拠点および管理部門(ドイツ)
・200MWのセル生産拠点、120MWモジュール生産拠点(ドイツ)
・800MWのセル生産拠点(マレーシア)
・海外拠点(米国、オーストラリア、日本)
・特許34件
・従業員1,225名

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Hanwha Groupは2020年までに世界トップの太陽電池メーカーになるとの方針を建て、2010年8月に4,300億ウォン(約341億円)を投じて太陽電池モジュール業界で世界4位の中国のSolarfun Power Holdings(江蘇林洋新能源)の株式49.9%を取得し、同社と戦略的関係を結んだ。

同社は太陽光セルとモジュールのメーカーで、ウェハー、セル、モジュールまで生産している。

2011年1月1日付でSolarfun Power はHanwha SolarOneに改称した。

Hanwha SolarOneは太陽電池生産規模を500MWから1,300MWに増やした。

Q.Cells 買収を通じ、Hanwha Groupは2.3GWの生産能力を有する世界第3位の太陽光発電メーカーとなる。

 

Hanwhaは2010年10月にはボストンの太陽光技術開発会社の1366 Technologyの株式 6.3%を500万ドルで取得した。

MITのProf. Emanuel M. Sachsが設立した会社で、インゴット過程を経ずに溶解状態のポリシリコンから直接ウェハーを生産するダイレクトウェハー技術を開発している。

2011年には太陽光発電分野の研究開発を担当するHanwha Solar Americaを米カリフォルニア州シリコンバレー設立した。
2012年4月12日にオープン記念式典を行い、本格稼働を開始した。

ハンファ・ジャパンは本年8月、丸紅が建設を計画している日本全域の太陽光発電所に、向こう4 年間で約50万キロワット分の太陽光モジュールを供給することで丸紅側と合意したと明らかにしている。




 

スイスの商品取引大手Glencoreと鉱山大手Xstrataは11月20日、それぞれ株主総会を開き、合併案を承認した。

合併により、世界第4位の鉱山会社が誕生する。

Glencore Internationalは2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。
新会社の社名はGlencore Xstrata International PLCとなる。

しかし、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holding (12%出資)などが合併条件の見直しを求め、7月中の株主総会承認は難しくなった。

Glencoreは9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。Xstrata株主に割り当てるGlencoreの新株数を2.8株から3.05株に引き上げた。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。

2012/2/9  スイスの資源会社Glencore InternationalとXstrataが合併

Glencoreの株主総会は99.4%の賛成で合併を決議、Xstrataも約79%が賛成した。

Glencoreは既にXstrataの株式の34% を保有しており、残りの購入価額は約320億ドルとなる。

ただ、Xstrata総会は鉱山の経験が深いXstrataの経営トップを残留させるための2億ドル以上の報酬案を否決、統合新会社Glencore Xstrataの会長に就任する予定だったGlencore のJohn Bond会長は、「経営陣が出した議案がことごとく否決された」ことを理由に辞任した。

報酬案の否決により、これを受け取る予定であった約70人のXstrataの管理職が残留するかどうかが問題となる。


残る合併のハードルは独禁当局の承認で、EU、中国、南アの承認がキイとなる。

そのEUは11月22日、合併を承認した。

EUと欧州鉄鋼連盟(EUROFER)の最大の懸念は亜鉛であった。
Glencore とXstrataはともに亜鉛に強く、合併すれば欧州でのシェアが80%近くになる。

このため、Glencoreは同社が7.8%出資するNyrstarが欧州で生産する亜鉛をGlencoreが販売する契約(年間35万トン程度、2011年に2018年まで延長された)の破棄と、同社株の売却を提案した。これにより合併会社の欧州での亜鉛のシェアは40%以下に半減する。

Glencoreは又、Nyrstarから直接、間接を問わず10年間は亜鉛を購入しないことと、その期間、Nyrstarが欧州でGlencoreと競合することを制限するいかなる行為も行わないことを約束した。

EUはこれにより、GlencoreとXstrataの合併後に亜鉛価格を引き上げるとの競争法上の懸念がなくなったとし、承認した。

Nyrstarはオーストラリアの亜鉛大手Zinifex(現在はOZ Minerals)とベルギーのUmicoreが2007年に亜鉛の製錬・合金部門を統合して設立した世界最大級の亜鉛・鉛製錬企業で、欧州、北米、オーストラリア、中国で事業展開している。

OZ MineralsはNyrstarの株式をGlencoreに売却した。Nyrstarの残る主要株主はUmicore。

このEUの決定は甘いとの見方がされている。当初はXstrataのドイツのNordenham亜鉛精錬工場か、世界最大のスペインのSan Juan de Nieva工場の売却を求められるのではないかとされていた。

 

残るハードルは中国と南アの独禁当局の承認である。



 

公取委は11月22日、自動車メーカーが発注する自動車用部品のコンペ参加業者に対し、 排除措置命令及び課徴金納付命令を行ったと発表した。

各社は遅くとも2000年11月ごろから、自動車メーカーがモデルチェンジした後も同じ企業が受注し、価格も下がらないようにするため、受注予定社や提示価格を調整していた。

対象企業と違反案件、排除命令対象(上段、〇印)、課徴金対象(下段)と課徴金は以下の通り。(課徴金単位は千円)
課徴金合計は3,388,830千円に達する。

  ホンダ スズキ ホンダ スズキ スズキ 日産等 富士重 ホンダ 富士重 合計
オルタネータ オルタネータ スタータ スタータ ワイパー ワイパー ワイパー ラジェター
電動ファン
ラジェター
電動ファン
三菱電機
581,390
30%減 

388,790
30%減 

5,140
30%減 

434,990
30%減 
          4件
1,410,310
ミツバ    
18,380
 
 375,040

573,800

140,290
    4件
1,107,510
ティラド              
672,350
  1件
672,350
カルソニック                
198,660
1件
198,660
日立
オートモティブ
 
 
          2件
日立製作所  
 
         
デンソー
免除

免除

免除

免除

免除

免除

免除

免除

免除

違反 2社 4社 3社 4社 2社 2社 2社 2社 2社 7社
延べ23社
排除命令 1社 2社 2社 2社 1社 1社 1社 1社 1社 5社
延べ12社
課徴金命令 1社 1社 2社 1社 1社 1社 1社 1社 1社 4社
延べ10社
課徴金額 581,390 388,790 23,520 434,990 375,040 573,800 140,290 672,350 198,660 3,388,830


ミツバは旧称三ツ葉電機製作所、ティラドは旧称東洋ラジエーター。

日立製作所は、2009年7月1日付けで日立オートモティブシステムズに、新設分割により自動車用オルタネータ及び自動車用スタータに係る事業を承継させ、以後これらの事業を営んでいない。

日立オートモティブは2件に参加し排除命令は受けたが、受注がなく課徴金はなし。

デンソーは全ての事案に参加しているが、
課徴金減免制度の適用を受け、排除命令も課徴金も免除された。

三菱電機は課徴金減免制度で30%の減免を受けた。

 

デンソーのみが全ての事案に参加している。

この場合、課徴金が5割増しになる「主導的役割を果たした事業者」である可能性がある。

単独で又は共同して、当該違反行為をすることを企て、かつ、他の事業者に対し当該違反行為をすること若しくはやめないことを要求し、依頼し、又は唆し、当該違反行為をさせ、又はやめさせなかった者

しかし、課徴金免除の対象外となるのは、「違反行為をすることを強要し、又は当該違反行為をやめることを妨害していた場合」であり、それ以外は免除の対象となる。





Bayer は10月30日、Bayer HealthCare LLCが、米国その他でビタミンや栄養サプルメントを販売する大手のSchiff Nutrition Internationalを買収する契約を調印したと発表した。

買収額は1株当たり34米ドルで、合計約12億米ドル。

Schiffの2大株主(合計で85%を保有)はBayerの提案を受け入れており、少数株主のSqueeze outが可能となっている。

Squeeze outは支配株主が少数株主にその保有する株式の売り渡しを請求できる権利を認める制度で、いったん買収会社が法律上十分な被買収会社の株式を取得すれば、買収会社は被買収会社の残った少数株主の承認を得ることなしに合併ができる。

Schiff の2012年5月決算の売上高は259百万ドルで、本年9月には、2013年度の売上高は43~46%増加すると発表している。

同社は本年3月30日に飛行機の乗客向けの免疫補助サプリメントAirborne で有名な Airborne Inc.を150百万ドルで買収しており、この分も売上高増の一つの理由。

Schiff の製品はBayerの既存のOTC製品を補完する。

BayerのMarijn Dekkers最高経営責任者(CEO)は「今後も戦略的買収による成長を目指す。今回の買収は、戦略的にみて当社のヘルスケア事業に大きく寄与するだろう」と語っている。

Bayer HealthCare は2012年9月、イスラエルのTeva Pharmaceutical のUS-Animal Health businessを145百万ドルで買収することで合意して おり、今後も小・中規模の買収を進める方針。

ーーー

Schiff の大株主の賛成で、BayerによるSchiff買収は成功すると思われたが、英国の消費財メーカーのReckitt Benckiser が11月16日に、Schiff Nutrition International の全株式を1株当たり42ドル、合計約14億ドルで買収するTOBを行うと発表した。

この価格は前日終値の23%高、Bayerの買収価格34ドルに比し24%高となる。

TOB期限は12月14日となっている。

Reckitt Benckiser のCEOは、Schiffの取締役会がこちらに賛成し、取引がまとまることに確信を持つと述べた。
買収によりビタミンやサプルメント分野に進出したいとしている。

Reckitt Benckiser の日本法人レキットベンキーザー・ジャパンは、パーソナルケア製品(薬用石鹸「ミューズ」、ニキビケアブランド「クレアラシル」、ムダ毛処理の「ヴィート」など)、フット・レッグケア(ドクターショール)、ホームケア製品(消臭芳香剤「エアーウィック」、食器洗い機専用洗剤「フィニッシュ」など)を扱っている。

ーーー

Reckitt BenckiserのTOB発表を受け、BayerはSECへの報告で、Reckitt Benckiserに対抗すればBayerの財務基準を超えることとなるとの結論に達したと述べ、買収を取り止めた。

 





 

中国の靴メーカー浙江奥康靴業(Zhejiang Aokang Shoes Co)は11月18日、中国製皮靴に対する反ダンピング訴訟で同社の勝訴を支持するとする最終判決書をEU高等裁判所から受け取った。

最終判決では、2010年4月にEU第一審裁判所が行った審理は、法の適用を誤り、公正を欠いていると判断された。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

但し、EUの規則には例外規定がある。

Article 2(7)(b)
反ダンピング調査を受けた非市場経済国の製造者が、当該製品に関しては市場経済環境が存在するということを証明した場合、一般ルールが適用される。

市場経済扱い(MET)企業は個別に計算、それ以外は代替国価格をベースに計算する。
今回のケースで、MET扱いの場合、反ダンピング税率は9.7%、それ以外は16.5%である。

浙江奥康靴業はMET扱いを主張したが、EU第一審裁判所はこれを受け入れなかった。今回の判決はこれを誤りとした。

浙江奥康靴業に関しては、2006年10月の中国・ベトナム産革靴に対する反ダンピング税徴収法適用を無効とした。

EU高裁は、浙江奥康靴業のEU第一審裁判所と高裁への訴訟においてかかった費用を支払い、6年間にわたって納めた反ダンピング関税を還付するよう命じた。

ーーー

EU欧州委員会は2006年、中国・ベトナム製の革靴に対し、4月7日から臨時反ダンピング税を課すよう提案した。
最初は4%とし、段階的に引き上げて最後は 19.4%(ベトナム製は16.8%)に引き上げ、臨時措置の6カ月間にダンピングが解消されなかった場合は、正式な反ダンピング税の課税に踏み切るというもの。

欧州連合(EU)は2006年10月、加盟国による投票を行い、中国・ベトナム産革靴に対する反ダンピング税徴収法案を僅差で可決した。
同法案に基づき、EUは10月7日から、中国製品には16.5%、ベトナム製品には10%の反ダンピング税が課される。

同法案はフランスが提出し、僅差で可決された。投票結果は反対12、賛成9、棄権4。EUの規定では、提案を否決するには加盟国の過半数の票が必要で、棄権票は賛成票とみなされることから、同法案はかろうじて可決された。

中国商務部は、特にEUが中国を非市場経済国待遇をしていることに猛烈に反発した。

EUは2年の期間が満了した後、再審査を行い、関税適用を2011年3月31日まで延長する決定を下した。

2006/2/27  EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税

欧州委員会の決定を受けて、浙江奥康靴業を始め、浙江省温州市の泰馬、広東省広州市の南海金履、福建省などの靴メーカー5社は、EU第一審裁判所に提訴した。

2010年4月、EU第一審裁判所は、中国の靴メーカー5社の訴えを却下し、中国の靴メーカーの敗訴を言い渡した。

2010年4月、中国政府はWTOに訴え、EUによる不公平な国際貿易紛争の解決を求めた。

2010年5月、4社は、第二審での勝訴を見込めないと判断し、控訴を放棄したが、浙江奥康靴業のみ、EU高裁に控訴した。

EU委員会は20113月末に、いかなる延長申請も受理していないとして、中国とベトナムの革靴に対する反ダンピング措置を打ち切った。

浙江奥康靴業はその後も訴訟を続け、今回の判決を勝ち取った。

中国では今回の判決を受け、中国企業は外国の不公正な政策にもっとチャレンジすべきだとの声が挙がっている。

ーーー

反ダンピングを巡っての中国企業の勝訴は2件目となる。

欧州司法裁判所は2012年7月、浙江新安化工集団が除草剤・グリホサートに関する反ダンピング措置をめぐって欧州連合を訴えていた裁判の最終判決を下した。

同裁判所はEUが同公司に対して取った反ダンピング措置は無効であると認定し、欧州理事会の上告をすべて棄却した。

新安化工は非市場経済国についてのArticle 2(7)(b)による一般ルールの適用を求めたが、EUは中国政府が新安化工に出資(少数株主)していることを理由に、国家の関与があるとしてこれを拒否した。

このため、新安化工は訴訟に持ち込んだ。

欧州司法裁判所の判決は、政府が出資しているだけで市場経済国待遇を適用しないのは経済の実態に合っていないとした。

2012/7/30 中国企業、EUの反ダンピング措置の裁判で勝訴 


 



関西電力は11月19日、BPシンガポールとの間でLNG購入契約に関する基本合意書を締結したと発表した。

2017年度から15年間、年間約50万トンのLNGをBPシンガポールから購入するもので、原油価格ではなく、天然ガス価格を指標価格とする。

また、従来のようにLNG供給源を特定したものではなく、BPグループがトリニダード・トバゴやエジプトを始め、世界各地に保有する複数のLNG供給源から、BPシンガポールを通じてLNG供給を受けるポートフォリオ契約となっている。

LNG基本合意書の概要

売主 BPシンガポール
買主 関西電力
受渡開始 2017年4月
契約期間 15年間
契約数量 年間約50万トン(合計約750万トン)
受渡形態 Ex-ship(売主がLNG船を手配し輸送)

契約数量は2011年度の同社の年間輸入量の約7%に相当する。現時点で関電が保有するLNG火力発電所全16基の燃料として使用する。

ーーー

原油価格ではなく、天然ガス価格を指標価格とするのは2件目。

大阪ガスと中部電力は7月31日、米国のFreeport LNG Development との間で、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。

Freeport LNGはFreeport LNG受入基地に、液化設備を新たに3系列(1系列あたり年間約440万トン)を建設することを計画しており、2017年に液化事業を開始することを目指している。

大阪ガスと中部電力は、同基地の第1系列の液化設備においてそれぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保した。
これにより、シェールガスをはじめとした米国産天然ガスを自ら手当し、 同基地での液化を経て、LNGとして調達することが可能となる。

米国は現在、LNG輸出を自由貿易協定(FTA)締結国向けに限定しており、Freeport LNGは日本などFTA未締結国向け輸出許可を申請中。

但し、米国の日本向け輸出許可の取得は簡単ではない。

DowのAndrew Liveris CEOは、貴重な資源をそのまま輸出するのではなく、加工して付加価値をつけて輸出すべきと主張している。

また、米国にとっては戦略資源であり、中国に輸出する考えはなく、中国への輸出を避けるためにはFTA締結国に限定するというのは良い案ということになる。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

所在地:米国テキサス州南部(イーグルフォード地区)
参加者:Cabot 65%(オペレーター)、大阪ガス 35%
開発対象:ピアソール層
主な産出資源:天然ガス、軽質原油、NGL

Freeport LNGがFTA未締結国向け輸出許可を 取得できれば、自社枠の天然ガスをLNGにして輸入することも可能となる。

両社は、米国産LNGの調達を通じて、供給ソースの分散化および調達方法の多様化を図るとともに、引き続き安定的かつ経済的な原燃料の調達を目指すとしている。

ーーー

LNG価格は、LNGプロジェクト毎に売主・買主間の引き取り契約交渉で決定される。

日本・韓国・台湾等の極東地域では主力燃料である輸入原油価格にリンクするフォーミュラで形成される。

極東向けLNG価格は現在、原油価格をJapan Crude Cocktail(全日本輸入原油平均CIF価格)を指標とし、これに傾き係数、フレート、環境プレミアム要素等を加味した定額を加えた基本フォーミュラが主流となっている。

現時点での価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり約17ドルに達する。

日本は当初、LNGを原油の代替品として使用した。このため、価格は原油価格にリンクした。

これに対し米国では、天然ガスは原油とは別物として扱われ、天然ガスの価格はその需給で決められる。

従来は、原油100ドル/bbl天然ガス10ドル/100万BTUであったが、米国の天然ガス市況はシェールガス増加で大幅に下がった

天然ガス価格は一時2ドル近辺まで下がっていたが、値下がりにより発電燃料が石炭からガスへの移行が進み、本年9月下旬には3ドル台に定着した。11月20日には先物価格が一時3.83ドルをつけている。

Cheniere Energy がルイジアナ州Sabine PassのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設しており、2016年から輸出を行う予定で、既に韓国の韓国ガス公社(Kogas)等と売買契約を締結済である。

それによるとLNGのFOB価格は、原料ガスコスト(「Henry Hub」x 115%)+固定費(ガス化費用など)。
15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージン で、固定費はKogas向けが
百万BTU 当たり3ドルとなっている
天然ガス価格を3ドルとすると、LNG価格はF0Bで6.45ドルとなる。

「Henry hub」はSabine Pipe Line LLC.が所有するルイジアナ州Erathの天然ガスパイプラインのハブにおける取引価格。

ちなみに、WTI原油の市場取引の大部分は売買差額のみの決済で、現物の受け渡しはほとんど発生しないが、現物はオクラホマ州Cushingにある貯蔵庫のみで受渡がされることとなっている。

今回の関電の契約は、米国の主要な天然ガス指標価格である「Henry Hub」を用いる。

日本向けLNG運賃は以下の通りで、米国Gulf Coastの場合、約3ドル。

  Kirimat(カナダ西海岸)   1.24 $/百万BTU 
  US Gulf Coast        2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
         
  Gordon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  
    資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

関電の契約では、液化や輸送のコストを加えても12ドル前後で済むとみられ、現在の原油価格ベースの約17ドルと比べ、大幅な値下がりとなる。     

上記のCheniere Energy の韓国の韓国ガス公社(Kogas)の例では 、天然ガスが3ドルの場合、CIF価格は10ドル以下となる。

ーーー

政府は本年9月20日、LNGの消費国と産出国が集まる「LNG産消会議」を開催した。

枝野経産相は、シェールガスの生産やロシアやアフリカといった新たな供給源の参入などで大きな変化が起きており、原油価格に連動する方式の「合理性は薄れてきている」と強調し、現在の価格水準だと、「アジアの国々では、石炭や原子力の利用を増やさざるを得ない」と生産国関係者をけん制した。

参加国は、主要輸入国で割高となっているLNG購入価格の決定方式の見直しが必要との認識で大筋合意した。

 

 

 


Huntsman は11月13日、Sinopec Jinling Company(シノペック金陵石化)とJV設立契約を締結したと発表した。

JV名は南京金陵ハンツマン新材料(Nanjing Jinling Huntsman New Materials Co.,Ltd. )で、南京にワールドスケールのPO/MTBEプラントを建設する。

Huntsmanが49%、Sinopec Jinling が51%を出資し、750百万ドルを投じて、Huntsman技術で PO 25万トン、MTBE 73万トンの併産プラントを建設する。2014年末完工の予定。

POはポリウレタンの原料で、ポリウレタンはPOとMDI(or TDI)を反応させてつくる。

Huntsmanのポリウレタン事業部は、米国(Geismar, Louisiana)、オランダ(Rozenburg, Rotterdam)と上海にMDIプラントを持っている。
 
同社はTDI も製造していたが、2005年にBASFにTDI 事業を売却(工場は停止)し、MDIに特化している。
 

 上海ではBASFと上海クロルアルカリ等とのJVで粗MDIを生産し、上海クロルアルカリとのJVで精製している。

ーーー

Huntsmanは、テキサス州Port Neches にPO/MTBE(24万トン/75万トン)を持っている。

このプラントは1997年にTexacoから買収した。

TexacoはPort Neches で塩素法POを生産していたが、1970年代終わりにこれを廃棄した。

同社はその後、POの新製法の開発を進め、PO/MTBE併産法の開発に成功、プラントを建設した。
1994年に生産を開始したが、工場の操業は隣接するHuntsmanに委託していた。


Huntsmanは2011年5月に、煙台万華ポリウレタン(Yantai Wanhua Polyurethanes)との間で PO/MTBE の技術供与の契約を締結したと発表した。
能力や契約条件は明らかにしていない。

2011/5/31 Huntsman、煙台万華ポリウレタンに PO/MTBE 技術供与 

ーーー

POとTBA及びSMの併産設備ではLyondellBasellがトップメーカーである。

1966年に Halcon International とARCO Chemical のJVとして Oxirane Chemical Company が設立され、Halcon法によりPO/SM(後にPO/TBAも)の生産を始めたが、これがLyondellの元である。

1985年にARCOの子会社としてLyondell が設立され、1989年に独立、1998年にLyondell ARCO Chemical Company を買収している。

2004年12月、Lyondell とMilleniumが合併、2007年12月にBasellがLyondellを買収し、LyondellBasellが誕生した。

2007/7/18 Basell Lyondell を買収


LyondellBasellの拠点は次の通り。

地区 場所 能力
(千トン)
併産 備考
米国 Bayport, Tex   545 TBA  
Channelview, Tex   530 SM  
欧州 Fos-Sur-Mer, France   220 MTBE  
Botlek, the Netherlands   250 TBA  
Maasvlakte, the Netherlands   318 SM Lyondell/Bayer 50/50
アジア 日本オキシラン(千葉)   181 SM 住化 60%/Lyondell 40%
Ningbo ZRCC Lyondell Chemical   280 SM Lyondell/Sinopec 50/50

LiondellBasellは2011年12月、Sinopecとの間で、浙江省寧波市にワールドスケールのPO/TBAプラントを建設するために共同でFSを実施する契約を締結したことを明らかにした。

両社は50/50JVのNingbo ZRCC Lyondell Chemical を持ち、シノペック鎮海煉油化工(ZRCC)の寧波市鎮海地区のエチレン100万トンのコンプレックスの中にSM/POとPGプラントを持っているが、更にPO/TBAプラントを建設する。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略 


他の併産法メーカーは次の通り。

    場所 能力
(千トン)
併産  
欧州 ELLBA CV Moerdijk、the Netherlands   250 SM Shell/BASF 50/50
アジア SKC Chemical 蔚山   160 SM 当初 ARCO/油公JV、1992年ARCO撤退
Seraya Chemicals Singapore Singapore   220 SM Shell 100%
ELLBA Eastern Singapore   250 SM Shell/BASF 50/50

 



Saudi Aramco は11月14日、サウジアラビアの南西端にあるJizan (Jazan とも表す)に建設するJizan Refinery とMarine terminal 設備の設計・購入・建設契約(EPC)の締結式を行った。

2012年4月の基本設計(FEED)完了後に入札を行い、決定した。

総建設費は60億ドルで、下記の各社が選ばれた。(建設費総額と受注額の内訳は業界筋による情報)

サウジ Petrofac Saudi Arabia 14億ドル
韓国 Hyundai Arabia 3億ドル
韓国 Hanwha Engineering and Construction 6億ドル
韓国 SK Engineering & Construction 10億ドル
スペイン Tecnicas Reunidas 10億ドル
日本 JGC 10億ドル
日本 Hitachi Plant Technologies 5億ドル

 Jizan Refineryはサウジアラビアの南西端のJizan市に建設中のJizan Economic City の中核を占める。


 

製油所の能力は日量40万バレルで、Arabian Heavy、Arabian Medium 原油を処理し、ガソリン(75千bpd)、超低硫黄ディーゼル(100-160千bpd)、燃料油(160-220千bpd)とベンゼンを生産する。 (製品別能力は処理する原油により異なる)

Marine terminal は原油の30万トン級タンカー(VLCC)が接岸可能で、また製油所から石油製品を出荷するためのバースを持つ。

完成予定は2016年後半。

ーーー

Jizan Economic City は4つのゾーンに分かれる。

1)重工業ゾーン

・ Saudi Aramco Oil Refinery  本件

・ Steel Complex   
        Metal plates:年産100万トン
  鉄筋:年産50万トン

・ Ship Building & Maintenance Complex

  2)二次産業ゾーン

・ Silicon Processing
・ Pharmaceuticals
・ Food Industries
・ Primary Construction Materials
・ Petrochemical Industries
・ Plastic Industries
・ Metal Fabrication and Manufacturing
・ Automotive Spare Parts

 3)Human Resources and Business Development Zone

 4)Residential Areas and Seafront District

 



BPは11月15日、2010年4月のルイジアナ州で掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig での爆発事故に関して、司法省によるすべての刑事訴訟で和解したと発表した。合わせて米証券取引委員会(SEC)とも和解した。

BP原油流出事故 関連記事一覧

水質汚染防止法に基づく民事訴訟や天然資源の損害賠償、過去の和解に含まれない個人による請求はこれに含まれない。

和解に伴う支払額の合計は4,525百万ドルで、米国史上最大額。

これまでの最高は2009年に医薬品大手Pfizer が、医薬品の違法な販売促進があったことを認め、罰金13億ドルと和解金10億ドル、合計23億ドルを払った件。

    
2009/9/4 米Pfizer、Health Care不正で政府に23億ドル支払い


1)刑事訴訟

11名死亡に関する11の違法行為とClean Water Act、渡り鳥条約、議会妨害に関する違法行為の合計14について有罪を認めた。
このうち13はnegative pressure test に関連するもので、BPは既に、これが多くの関係者がからんだいくつもの原因によるものであると発表しているが、今回の和解はこの線に沿ったものである。残る1つは漏出量に関する議員への報告に関するもの。

BPは約40億ドルを5年分割で支払う。
このうち、罰金は1,256百万ドルで、これとは別に、National Fish & Wildlife Foundation に2,394百万ドル、National Academy of Sciences に350百万ドルを支払う。

米国の法律では、有罪となった企業は連邦政府との取引から除外されることが有り得るが、今回の和解に関しては、どの省庁からもその動きはない。

2)SEC

事故当初の漏出量予想の報告が問題とされた。

これに関し、BPは罰金525百万ドルを3年分割で支払う。

今回の和解に伴う支払額の合計は4,525百万ドルで、支払は以下の通り行われる。(百万ドル)

  SEC 罰金
 
NFWF
& NAS
Total
2012  175      175
2013  175  506  420 1,101
2014  175  250  345  770
2015    150  380  530
2016    150  590  740
2017    200 1,009 1,209
Total  525 1,256 2,744 4,525

ーーー

BPではこの事故に関連して、2012年9月末時点で税引前で381億ドルの損失を計上しているが、これにはSECに対する525百万ドルを織り込んでいる。

今回の和解で、9月末時点の損失に約38.5億ドルが追加され、現時点の損失は 419.5億ドルとなる。

なお、BPはMacondo wellの共同所有者及びコントラクターと和解し、下記の金額を受け入れている。  

  三井石油開発    10億ドル 2011/5/20 BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 
  Anadarko   40億ドル 2011/10/19   BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解
  Cameron   2.5億ドル
  Weatherford   0.75億ドル

ーーー

残る民事訴訟にはいろいろあるが、Clean Water Actによる連邦政府との民事訴訟が大きい。

同法では原油の流出量1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められているが、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

米科学者の推計では、事故発生以来の流出量は300万~500万バレルとなる

300万バレルとしても、過失無しの場合で罰金は33億ドル、重大な過失があるとされれば、129億ドルとなる。
(500万バレルの場合、55億ドルと215億ドル)
但し、回収努力などを考慮して減額される。

BPは重大な過失がなかったとして争っていくとしている。




インド政府は11月8日、日本政府との間で合意していた対日レアアース輸出について正式に承認した。

野田首相とシン首相が11月16日に東京都内で首脳会談し、正式合意する予定であったが、「16日衆院解散」発表を受け、両政府がシン首相の公式訪日の延期を決めた。

日本、インド両政府は16日、経済産業省内でレアアースの共同生産と日本向け輸入を始める覚書に署名した。
2013年度から最大4,100トンのレアアースを輸入する。

インドのIndian Rare Earths と豊田通商の間で協力し、合弁会社(下記)によってレアアースの共同生産・輸出を行う。


2010年10月25日、日・印首脳会談が開催され、レアアースとレアメタルの開発や再利用に向け、日・印両国が協力することで一致し、共同声明が出された。


「両首脳は、将来の産業にとってのレアアース及びレアメタルの重要性を認識し、レアアース及びレアメタルの開発、リサイクル及び再利用や代替品の研究及び開発における両国間の協力を追求することを決定した。」

日印両国は2012年4月にニューデリーで開かれた初の閣僚級経済対話で、8月にも輸出を始める方向で大筋合意したが、価格などの調整が難航し、インド政府側の承認が遅れていた。

これまでの両国間の交渉では、インドからの供給量は年間5,000トン前後とされ、日本の年間需要量の15~20%程度に相当する。
ランタン、セリウム、ネオジムの3種類のレアアースで、自動車のモーターや排ガス削減のために使用される重希土類。

ーーー

米地質調査所によるとインドのレアアースの埋蔵量は世界全体の3%にあたる310万トン。
生産を独占する国営
Indian Rare Earths (IRE)は東部オリッサ州の主力鉱山が環境規制で採掘を停止したことに伴い、2004年以降は輸出を見送っている。

インドは外国企業にレアアースの採掘権を認めていない。

豊田通商は2010年12月、インド子会社のToyotsu Rare Earths Orissa (TREO)が、インド国営のIndian Rare Earths (IRE) と信越化学の協力のもとに、インド・オリッサ州でレアアース酸化物の製造工場を建設する計画を推進していることを明らかにした。

 

IREはインド原子力庁傘下企業で、原子力発電推進のため、海岸の漂砂鉱床より採掘・選鉱されたモナザイト鉱石から燃料(ウラン・トリ ウム)を抽出しているが、その抽出後に副産物として混合塩化希土も産出しており、今回のレアアース製造工場は、その混合塩化希土を原材料としてレアアースの酸化物を製造するもの。

 

信越化学は工場への技術支援および製品の引き取りを決定している。
また、信越化学、IRE、JOGMECは、TREOへの投資を検討している。


2010/12/14 豊田通商、インドでレアアース製造工場建設、住商は米マウンテン・パス鉱山に出資

外電によれば、この工場は2012年夏に完成し、12月から生産を開始する。

ーーー

日本のレアアースの年間輸入量は2~3万トンで、中国からの輸入が大きい。

2010年通年ベースで総輸入量 28,564トンのうち中国が 23,422トン、82%を占めていた。

しかし、2010年の尖閣諸島を巡る日中対立で中国当局がレアアースの対日輸出を止めたことから、日本企業の「脱レアアース」技術の開発が進んだことにより、需要が急減した。

2012年の1~6月のレアアースの輸入実績を2倍すると、2012年通年輸入状況(見込み)は12,204トン、うち中国が5,980トンとなり、中国の比率は49%にまで下がることとなる。

中国のレアアース輸出量は激減しており、2011年の実際の輸出量は輸出枠30,258トンの61%の18,600トンに止まっている。
 2012年1-6月のレアアース輸出総量は、輸出枠21,226トンに対し、2011年同期比42.7%減の4,908トンとなった。
 (中国側は密輸の影響が大きいとしている。)


枝野幸男経済産業相は11月12日の衆院予算委員会で「来年半ば以降、レアアースの国内需要量の5割程度を中国以外から確保できる」との見通しを示していた。

ーーー

カザフスタン北部アクモラ州 Stepnogorskで11月2日、住友商事が出資した合弁企業 Summit Atom Rare Earth Companyによるレアアースの分離精製プラントの開所式が行われた。

JVにはカザフスタン国営原子力公社Kazatompromが51%、住友商事49%出資する。

30百万ドルを投じたプラントで、年産1,500トンのレアアース酸化物を生産する。
ウラン残土からレアアースを回収するもので、ジスプロシウムなど、特に希少性が高い重レアアースを中心に生産する。

試験稼働を経て来年1月にも対日輸出が始まる。

2012/11/5   住商のレアアース合弁、カザフに精製工場完成

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豪州のレアアース開発会社のLynas Corp.と双日は2010年11月に、レアアースの日本向け供給、およびLynas のレアアース拡張プロジェクトに関して、戦略的提携を締結することに基本合意し、2011年3月に双日と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、Lynasへ総額250百万米ドルを出融資することを決定し、10 年に亘って日本の消費量の約3 割にあたる年間約8,500 トン(±500 トン)以上のレアアース製品を長期供給する契約を締結している。

2010/11/25 双日、レアアースの供給・拡張プロジェクトで豪州Lynasと戦略的提携の基本合意

Lynasは西オーストラリア州のMt.Weld 鉱床でレアアースを採掘するが、マレーシア東海岸のPahang 州 Kuantan のGebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。
当初、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画したが、中国政府による締め付けが強くなったことから、中国を断念した)

しかし、マレーシアでは反対運動が起こった。

マレーシアでは1979年に当時の三菱化成が35%出資でAsian Rare Earth (ARE)を設立し、1982年にイットリウムなどレア・アースをスズの鉱石と一緒に出るモナザイト鉱などから抽出する事業を開始した。

能力は年産 4200 トンの軽希土類、550トンの重希土類、4400トンのリン酸三カルシウムで、希土類は全て日本に輸出され、日本で分離精製されが、工場はトリウムを含む残土の保管施設を持たず、工場の裏にあった池や地面に野積み状態にしていた。

工場の目の前には人口1万人が住むBukit Merah 村があった。住民たちの間に健康被害が現れ、住民はAREの操業停止を求めて抗議活動を展開した。

三菱化学は1994年1月、マレーシアからの撤退を決め、問題の工場も閉鎖されたが、廃棄物処理施設の設置工事の契約締結は2009年8月になってからである。

2009/11/14 三菱化学、マレーシアの撤退工場に廃棄物処理施設を設置

今回の抗議はこれが繰り返されるのを恐れた住民とグリーングループが行ったが、これに政治も絡んだ。

2011/7/7 豪州レアアース開発会社Lynas Corp. と三菱

Lynasは本年9月にようやく、工場の認可を得たが、住民は裁判に訴えた。

11月8日、マレーシアの裁判所は工場の操業を認めた。
双日は年間約8,500 トン(±500 トン)以上のレアアース製品を長期供給する契約を締結している。



 


旭硝子、ADEKA、カネカ、信越化学工業、及び三菱化学は11月12日、5社の共同出資会社の鹿島電解と鹿島塩ビモノマーの運営に関して正式合意したと発表した。

2011年12月に旭硝子、ADEKA、カネカの3社が両JVへの出資を引き揚げ、信越化学および三菱化学が出資を継続し、信越化学の子会社として運営を行うという基本合意を行い、具体的な条件等の協議を進めてきたもの。

鹿島コンビナートの電解・VCMも5-6割の低稼働が常態化しているとされ、製品引き取りはほぼ信越化学だけとなっているとされる。

このため2011年3月の東日本大震災で止まった設備を復旧せず、能力を削減して稼働率を高める。
撤退する3社は設備縮小などには協力し、70億~100億円の費用を負担する。
また、これに合わせ、鹿島北共同発電の能力を削減する。

カネカはVCMからの撤退で、VCMを高砂から送り、特殊品とペーストのみを生産するとされている。

2011/9/19 鹿島コンビナート 電解・塩ビ再構築

再編完了後(2012年12月下旬の予定)の形は以下の通りとなる。

現在、鹿島電解が行っているバース設備(製品又は資材の受入及び出荷のための港湾設備)の運営については、新たに共同出資会社として、鹿島バース㈱を設立して移管する。


ーーー

三菱化学は2012年6月11日、鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表した。

鹿島第1エチレンプラント及び第1ベンゼンプラントを停止(2014年の定期修理時に停止)、鹿島第2エチレンプラントの増強 (+5万トン/年)、OCU設備(プロピレン年間生産能力15万トン)の稼動維持に向けた設備対応、事業所内の配管整備を行う。

   生産能力(非定修年、千トン/年)

    現 在 停止後
エチレン 1E 390 0
2E 490 540
880 540
ベンゼン 1Bz 90 0
2Bz 180 180
270 180

2012/6/27 三菱化学、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革 





中国の大増産により、米国やEUの企業で倒産が相次いでいる。
中国企業も経営難に落ち込んでおり、中央・地方政府による救済が行われている。

中国の太陽光パネルを巡る貿易戦争が激化してきた。

1-1 米国(対中国)

米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。

米国際貿易委員会(ITC) は11月7日、上記による被害を最終認定した。(米国ではダンピングの存在は商務省が、被害の存在はITCが認定する。)

この
最終決定により、商務省は10月10日に発表した関税率に基づき、対象製品に反ダンピング関税と相殺関税の5年間の適用命令を出すことができる。

単位:%   AD:反ダンピング、CVD:相殺関税
  最終決定
AD 輸出
補助金
調整後
 AD
CVD 合計
Wuxi Suntech 31.73 -10.54 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 18.32 -10.54 7.78 15.97 23.75
他の59社  25.96 -10.54 15.42 15.24 30.66
他の全て 249.96 -10.54 239.42 15.24 254.66


2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定

米国商務部のデータによると、米国は2011年、中国から31億ドル相当の太陽電池およびモジュールを輸入した。

中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社(The Coalition for Affordable Solar Energy)は反ダンピング課税・相殺関税に反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。


このほか、2011年9月に倒産した米国の太陽電池メーカーのSolyndra が、中国太陽電池企業の尚徳電力(Suntech Power)、天合光能(Trina Solar)、英利緑色能源(Yingli Green Energy)の3社を相手取り、独禁法違反を理由に15億ドルの賠償を求め、 San Franciscoの連邦裁判所に訴えた。

2012/10/19 倒産した米太陽電池メーカーSolyndra、中国の太陽電池企業を独禁法違反で訴え

 

1-2 中国(対米国)

中国商務省は7月20日、米国製の太陽光発電パネル向け多結晶シリコンについて反ダンピング調査、反補助金調査を開始したと発表した。合わせて韓国製の多結晶シリコンについても反ダンピング調査を開始した。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされる。
中国メディアは安価な製品の流入で多結晶シリコンを生産する中国企業は生産停止や倒産に追い込まれ、多数の失業者が出たと報じている。

米紙は「中国のジレンマ」と報じている。

実際に反ダンピング課税が行われると、中国のソラーパネルメーカーのコストが上がる。更に米国(と恐らくEU)からのソラーパネルに対する反ダンピング、反補助金課税も受ける可能性があり、下流と上流からダブルでコストアップとなる。

2012/7/24    中国商務部、米の太陽発電向けポリシリコンに反ダンピング、反補助金調査開始

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2-1 EU(対中国)

EUは9月6日、中国製の太陽光パネルと主要部品(solar cells、solar wafers)の反ダンピング調査開始を発表した。
続いて11月8日には反補助金調査を開始した。

中国は2011年に約358億ドルの太陽光発電製品を輸出したが、そのうちEUに輸出された製品の価値は210億ユーロ(270億ドル)に達した。EUの中国太陽光発電企業に対する影響は、米国を大きく上回る。

米国商務部のデータによると、米国は2011年、中国から相当の太陽電池およびモジュールを輸入した。

2-2 中国(対EU)

中国商務部は11月1日、欧州から輸入される多結晶シリコンに対するダンピング・補助金調査を開始することを発表した。
 

中国商務部は11月5日、EU加盟国のイタリアとギリシャの"feed-in tariffs" (固定価格買い取り制度)現地の部品を中心に使っている電力会社を価格面で優遇しているのは協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

ギリシャでは太陽光発電による電気をドイツに送るという壮大な太陽光計画(Helios)を打ち出している。しかし長距離送電には問題があることなどから、今のところうまくいっていない。

EU内部でも加盟各国の再生可能エネルギー計画には国際的なルール上で問題となるものがあるとして、内々に警告していた。

これと同様の問題がカナダのオンタリオ州の制度にあり、EUと日本が2011年7月にWTOパネル設置要請を行い、パネルが設置されている。

カナダ・オンタリオ州の再生可能エネルギー発電(太陽光・風力発電)分野の支援制度 "feed-in tariffs" プログラムにおいて、同支援制度を受ける条件として発電事業者に一定比率の同州産品の使用を課されている(ローカルコンテント)ことについて、WTO協定との整合性が問題にされた。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/7/0720_05.html

これについては、WTOパネル(委員会)の予備判定がメディアにリークされた。

報道によれば、WTOパネルはオンタリオ州のグリーンエネルギー由来の電力の「固定価格買い取り制度」のローカルコンテント要求がWTO協定と整合しないとする日本・欧州の主張を正しいと結論付けた。判定は後日公式発表され、3か月後にはWTOの上告機関の最終決定を申請することになる。

ーーー

中国が米国とEUのダンピング調査で問題にしている点に、米国とEUが中国を非市場経済国待遇をしていることがある。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。
但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

実際には中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

今回、米国は代替国としてタイを選んだが、EUは米国を代替国に選んだとされる。

EUの場合も、ダンピング認定がされるのは必至とみられている。




中間決算では石油化学の業績の悪化が見られたが、これ以外にも損益が激減している事業がある。

その一つがポリシリコンで、これまでの高収益状況が一転、大幅減益となった。

太陽電池パネルの供給過剰とパソコンの販売不振等を背景にした半導体ウエハーの在庫調整に伴う、販売数量の減少及び販売価格の下落による。

トクヤマの決算は以下の通りで、営業損益は大幅減益となり、当期損益は赤字となった。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 141,912 8,194 5,603 2,709 3.0  
12/9中間 125,985 792 -1,980 -2,539 0.0  
増減 -15,927 -7,402 -7,583 -5,248 -3.0  
             
12/3 282,381 13,720 11,524 9,351 3.0 3.0
13/3 260,500 3,000 -1,500 -2,500 0.0 未定

営業損益推移

セメントは増収増益となったが、特殊品部門の多結晶シリコンの販売数量の減少、販売価格の下落等により、大幅減益となった。

  10/3 11/3 12/3 13/3予 増減   11/9 12/9 増減
化学品 31 24 19 15 -4 9 -2 -10
特殊品 141 164 102 -20 -122 65 -4 -70
セメント 14 21 29 35 6 10 22 12
機能部材 11 20 17 25 8 16 12 -4
その他 22 24 20 25 5 9 13 4
全社 -54 -51 -51 -50 1 -26 -33 -7
合計 165 201 137 30 -107 82 8 -74


既報の通り、信越化学でも信越半導体グループの損益は最盛期からは激減している。

トクヤマでは、多結晶シリコンについて、半導体向け・太陽電池向けともに供給過剰に伴い市況は急激に悪化、当面、市況低迷は続くと予測している。

中・長期的には、需要拡大と、競争力のないメーカーの生産停止、撤退、増産計画見直しにより、需給ギャップは徐々に縮小すると予想する。

トクヤマでは徳山製造所のプラント(年産9,200トン)を8月から減産しており、今後の稼働は市場動向に応じて判断する。
1,800トンの増産プラントは2013年春稼働の予定であったが、延期を決定した。

マレーシアの新設プラントは、第一期(6,200トン)は本年11月末に完成、2013年6月の営業運転開始に向けて試運転を開始する予定。
第2期プラント(13,800トン)についても、工事は予定通り進めるが、営業運転開始時期(当初予定では2014年4月)については、太陽電池の市場動向に応じて柔軟に対応するとしている。

ーーー

JX日鉱日石は11月6日、 連結子会社(85.1%出資)のスペースエナジーが展開する太陽電池用シリコンウエハー事業からの撤退を決定したと発表した。

太陽電池市場は、欧州債務危機の深刻化等により需要が伸び悩む一方、中国メーカー等の設備増強により大幅な供給過剰状態にあり、主要部材であるシリコンウエハーについても世界的な供給過剰解消の目途が立たない状態にあるとしている。

 



各社の中間決算がまとまった。

1) 化学会社

大半の企業の営業損益が前年同期を下回っている。

三菱ケミカルホールディングス、旭化成、住友化学三井化学ソーで、石油化学基礎化学の損益が激減している。している。

旭硝子の減益は電子部門の損益の激減による。

帝人は高機能繊維・複合材料が、トクヤマはシリコンの減益が大きい。

増益となった企業は少なく、増益幅も非常に小さい。

このうち、信越化学は半導体シリコンの大幅減益をシンテックの塩ビがカバーしたもの。

ーーー

2) 医薬会社

武田薬品工業以外は前年と比べ若干の変動である。

武田薬品の実績は以下の通りで、営業損益は大幅に減少した。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 702,502 211,046 209,551 135,660 90.0  
12/9中間 786,936 108,576 113,099 119,790 90.0  
増減 84,434 -102,470 -96,452 -15,870 0.0  
             
12/3 1,508,932 265,027 270,330 124,162 90.0 90.0
13/3 1,550,000 160,000 150,000 155,000 90.0 90.0

当期損益は移転価格税制還付金(税金減 456億円)と還付加算金(特別利益 116億円)があり、若干の減少にと止まった。

2012/4/9 武田薬品の移転価格税制での更正処分で異議決定 

営業損益増減の内訳

   増収による利益増   279億円  
   販売費一般管理費増   -947億円  特殊要因除くと-588億円
   研究開発費増   -357億円  
   合計    -1,025億円

  同上    -666億円

販売費一般管理費には、TAP社統合ミレニアムナイコメッド、URLファーマ買収に伴う無形固定資産とのれんの償却費 669億円が含まれている。
前期のこれは310億円のため、差引 359億円の損益悪化要因となる。今期から始まったナイコメッド社の分は315億円 。

ミレニアムの無形固定資産償却(189億円)は2018年まで、ナイコメッドのそれ(228億円)は2026年まで続く。

なお、ナイコメッド社買収による増収効果は1,661億円となっている。





東ソー

東ソー南陽事業所では2011年11月13日、第二VCMプラント(年産能力55万トン)で爆発・火災が発生、社員1人が死亡した。

この事故で事業所内の塩ビモノマー設備 1-3号機すべてが停止した。

このうち、第一プラント(年産能力:25万トン)は2012年5月8日から、第三プラント(年産能力:40万トン)は7月8日から稼働を再開した。

2011/11/17  東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故

2011/4/11   東ソー、南陽事業所爆発事故の調査報告書を発表

この影響で、VCM、PVC、苛性ソーダの売上高が減少した。
営業外費用として、塩化ビニルモノマー製造設備停止に係る費用 -12億円を計上している。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 367,740 21,663 18,632 9,930 0.0  
12/9中間 311,794 4,819 4,446 310 3.0  
増減 -55,946 -16,844 -14,186 -9,620 3.0  
             
12/3 687,131 23,737 24,773 9,379 0.0 6.0
13/3 650,000 20,000 22,000 8,000 3.0 3.0

 

営業損益推移

各部門で減益となった。クロルアルカリは事故の影響が大きい。

  10/3 11/3 12/3 13/3予 増減   11/9 12/9 増減

内訳

数量差 交易
条件
その他
石油化学 79 104 125 80 -45 79 33 -47 -26 3 -24
クロルアルカリ -143 -35 -100 -52 48 1 -51 -52 -68 -21 38
機能商品 148 203 131 104 -27 100 45 -55 -14 -50 7
エンジニアリング 20 36 57 48 -9 22 13 -9 -7 0 -2
その他 26 27 24 20 -4 14 9 -5 -5 0 0
合計 130 335 237 200 -37 216 48 -168 -120 -68 19

 

ーーー

信越化学

増収増益となった。年度でも前年比で増収増益を予想。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 521,368 80,411 84,330 51,040 50.0  
12/9中間 536,998 83,620 86,016 55,700 50.0  
増減 15,630 3,209 1,686 4,660 0.0  
             
12/3 1,047,731 149,632 165,237 100,643 50.0 50.0
13/3 1,060,000 160,000 170,000 105,000 50.0 50.0


営業損益推移

半導体シリコンが大幅減益となったが、シンテックが好調で、シリコンとシリコーンの減益分をカバーした。

  10/3 11/3 12/3 13/3予   11/9 12/9
塩ビ・化成品 196 197 237     134 242 109
シリコーン 249 341 337     174 149 -25
機能性化学品 139 129 147     70 76 6
半導体シリコン 226 389 343     211 126 -85
電子・機能材料 307 361 382     187 210 22
その他 68 73 50     27 31 4
全社 -13 3 1     0 3 2
合計 1,172 1,492 1,496 1,600 104 804 836 32


Shintech経常損益

2009年から2011年までは以前と比較すると減益となっていたが、2012年上期は前期比倍増となった。

VCMの第2期 80万トンの増設が完成したと思われ、効果が出てきたものと思われる。

立地 PVC VCM カ性ソーダ  
Texas州 Freeport  1,450   -   -  
Louisiana州 Addis   590   -   -  
PlaquemineⅠ   600   800   530  
PlaquemineⅡ   800  530  2011年完成
Addis  (270)   -   - Bordenから購入、廃棄
合計  2,640  1,600   1,060  


信越半導体グループ経常損益

2010年3月期以降、大幅減益となっているが、本年上半期は更に悪化、前年同期比42%減となった。

 

 

三井化学

営業損益は石化・基礎化学品の交易条件悪化により大幅な減益となった。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 755,764 28,748 27,888 13,365 3.0  
12/9中間 680,517 1,479 -2,508 -15,283 3.0  
増減 -75,247 -27,269 -30,396 -28,648 0.0  
             
12/3 1,454,024 21,564 22,884 -1,007 3.0 3.0
13/3 1,430,000 23,000 18,000 5,000 3.0 3.0


4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。

2012/4/24 三井化学大竹工場で爆発事故

レゾルシンとサイメン工場は損傷を受けた。 
事故発生で全工場が停止したが、安全を確認して順次稼働した。
メタパラクレゾールは9月28日に原料を千葉から運んで再開した。

上期決算への影響は以下の通り。
  営業損益    -26億円(基礎化学品 -14、機能化学品 -4 ほか)
  特別損益等   -50億円(補償・撤去・復旧等費用、プラント停止固定費)
  合計      -76億円(年間合計では、保険料戻入等を含め、-60億円)

営業損益推移

ウレタンの赤字幅が減少した。通期では黒字化を予想している。

  10/3 11/3 12/3 13/3予 増減   11/9 12/9 増減

増減内訳

交易
  条件
数量差 その他
石化 -34 128 89 105 16 63 15 -49 -77 6 23
基礎化学品 -48 204 86 -80 -166 182 -70 -252 -218 -75 41
ウレタン -21 -90 -146 5 151 -72 -18 54 24 6 24
機能樹脂 -44 72 82 105 23 43 47 3 -12 12 4
加工品 8 14        
機能化学品 74 100 117 150 33 63 72 9 -8 11 6
フィルム・シート 2 -30 -32 18 -15 -32 -22 -7 -4
その 11 1   -25 -11 -2 -11 -10     -6
全社 -41 -25 -14 -8 -4 3    
合計 -95 405 216 230 14 287 15 -273 -313 -47 88

2012年より加工品セグメントを変更した。(上記の表とグラフで12/3と11/9は新セグメントで表示)

旧セグメント   新セグメント
石化 エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン 同左
基礎化学品 フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、エチレンオキサイド 同左
ウレタン ポリウレタン材料、コート材料、接着材料、成形材料 同左
機能樹脂 エラストマー、コンパウンド製品、特殊ポリオレフィン、エンジニアリングプラスチック 機能樹脂セグメント
加工品 ペリクル事業
フィルム・シート事業 フィルム・シートセグメント
不織布事業 機能化学品セグメント
機能化学品 眼鏡レンズ用材料、ヘルスケア材料、化成品、特殊ガス、触媒、農業化学品
その他 その他関連事業等  

ーーー

旭化成

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 784,446 63,768 62,136 38,214 7.0  
12/9中間 787,508 38,305 35,866 20,613 7.0  
増減 3,062 -25,463 -26,270 -17,601 0.0  
             
12/3 1,573,230 104,258 107,567 55,766 7.0 7.0
13/3 1,685,000 96,000 93,000 50,500 7.0 7.0

営業損益推移

住宅と医薬・医療は好調だが、ケミカルズが大幅な減益となった。

2012/4/26に Zoll Medical買収を完了したため、「クリティカルケア」セグメントを新設

  10/3 11/3 12/3 13/3予 増減   11/9 12/9 増減

   

売価差 数量差 コスト差
ケミカルズ 261 644 445 310 -135 341 146 -195 -122 -41 -33
住宅 253 365 463 520 57 179 188 9 20 48 -58
医薬医療 40 70 88 160 72 56 75 19 -23 67 -25
繊維 -28 42 31 40 9 21 17 -4 -8 -4 8
エレクトロニクス 72 143 64 25 -39 70 0 -70 -53 -13 -5
建材 12 21 18 35 17 8 16 8 2 4 2
クリティカルケア       -40 -40   -11 -11 0 0 -11
その 18 17 30 20 -10 12 12 0 0 0 -1
全社 -53 -72 -97 -110 -13 -50 -60 -10     -10
合計 576 1,229 1,043 960 -83 637 383 -254 -183 61 -133

 





9月中間決算の発表が続いている。

大半の企業が前年同期を下回っている。

三菱ケミカルホールディングス、旭化成、住友化学三井化学ソー で、石油化学基礎化学の損益が激減している。している。


している。
三菱ケミカル、住友化学三井化学減益幅きい。

 参考  2012/8/8  2012年第1四半期決算 

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

田辺三菱製薬の営業損益は堅調だったが、三菱化学と三菱レイヨンは減益幅が大きく、営業損益は546億円の大幅減益となった。

少数株主損益調整前純損益は145億円だが、田辺三菱製薬(三菱ケミカル持分 56.34%)を中心とする少数株主利益が112億円あり、純損益は33億円に止まった。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 1,570,197 95,686 92,885 37,504 5.0  
12/9中間 1,529,788 41,105 33,883 3,323 6.0  
増減 -40,409 -54,581 -59,002 -34,181 1.0  
             
12/3 3,208,168 130,579 133,614 35,486 5.0 5.0
13/3 3,200,000 120,000 105,000 21,000 6.0 6.0
                                                         

営業損益推移(億円)

機能商品分野と素材分野では、中国等の海外需要の低迷、円高の継続などで厳しい状況。
ネットでみると、減益理由はほとんど売買価格差である。

逆に、ヘルスケア分野は堅調な需要に支えられ、概ね良好な状況。

  10/3 11/3 12/3 13/3予  

 

 

 

 

 

 

 

 
11/9 12/9

増減内訳

売買差 数量差 コスト その他
ケミカルズ 69 530 148 20 -128 194 -54 -248 -227 29 17 -67
ポリマーズ -225 550 238 150 -88 222 29 -193 -212 17 45 -43
エレクトロ -14 10 -53 -10 43 -12 -13 -2 -23 -11 33 0
デザインド 133 365 231 280 49 184 105 -79 -28 -84 33 0
ヘルスケア 710 851 764 790 26 397 360 -37 -96 74 3 -18
その 62 45 61 60 -1 16 25 9 - 4 5 0
-73 -86 -83 -90 -7 -44 -41 3 - - 1 2
663 2,265 1305 1,200 -105 957 411 -546 -586 29 137 -126


グループ企業別の営業損益は以下の通り。(億円)

田辺三菱製薬の貢献が大きい。
三菱化学と三菱レイヨンは減益幅が大きい。

  11/3 12/3 増減   11/9 12/9 増減
三菱化学グループ 881 231 -650 295 -16 -311
田辺三菱製薬グループ 766 690 -76 361 322 -39
三菱樹脂グループ 166 106 -60 88 60 -28
三菱レイヨングループ 410 303 -107 229 54 -175
調整 42 -24 -66 -16 -9 7
合計 2,265 1,306 -959 957 411 -546
 

田辺三菱製薬の業績          単位:百万円 (配当:円)

  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 200,358 36,051 36,373 19,963 15.0  
12/9中間 203,829 32,246 33,119 19,492 20.0  
増減 3,471 -3,805 -3,254 -471 5.0  
             
12/3 407,156 69,043 68,759 39,014 15.0 20.0
13/3 425,000 70,000 71,000 40,500 20.0 20.0

 

ーーー

住友化学

営業損益は医薬品以外、全て前期大幅減益となり、合計で296億円の減益となった。

税引前損益136億円に対して、法人税等で188億円の引き当てを行っており(説明なし)、少数株主損益調整前純損益は-52億円となった。

利益源の大日本住友製薬については、住友化学の出資比率は50.12%に過ぎない。
このため、他子会社も含めた少数株主利益 79億円を控除すると、純損益は-131億円となる。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 998,281 54,035 48,993 -2,713 6.0  
12/9中間 961,383 24,481 18,948 -13,114 6.0  
増減 -36,898 -29,554 -30,045 -10,401 0.0  
             
12/3 1,947,884 60,688 50,714 5,587 6.0 3.0
13/3 2,020,000 65,000 62,000 10,000 6.0 未定

なお、11/9中間期の特別損失には、豪州の株式市況低落による豪州農薬会社Nufarmの株式評価損 -289億円を含む。

営業損益推移(億円)

基礎化学・石油化学と情報電子化の価格差の影響が非常に大きい。

  10/3 11/3 12/3 13/4予 増減  

 

 

 

 

 

 

 

 
11/9 12/9 増減 内訳
価格差 数量差 コスト
基礎化学    206 93 -20 -113 125 -26 -151 -115 -31 -5
石油化学   111 62 10 -52 78 -2 -80 -100 20 0
情報電子化   261 110 150 40 101 24 -77 -155 3 75
健康農業関連   233 265 320 55 148 77 -71 -20 -51 0
医薬品   287 209 330 121 155 231 77 -50 62 65
その   41 77  -140 -8 35 42 7 0 6 0
全社   -260 -209 -101 -102 -1
 515 879 607 650 43 540 245 -296 -440 9 135

 

大日本住友製薬の業績          単位:百万円 (配当:円)

  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
11/9中間 178,026 14,726 14,480 9,569 9.0  
12/9中間 178,748 19,978 19,925 10,951 9.0  
増減 722 5,252 5,445 1,382 0.0  
             
12/3 350,395 20,402 18,872 8,629 9.0 9.0
13/3 348,000 28,000 27,000 13,500 9.0 9.0

 

 

 

 

 


日本ゼオンは11月6日、スーパーグロース法で得られる高品位なカーボンナノチューブのサンプル提供を実施すべく、産業技術総合研究所(産総研)の量産実証プラントを活用し、カーボンナノチューブのサンプル製造を開始したと発表した。
2013年1月を目処に、サンプル提供を計画している。

カーボンナノチューブは電気、熱伝導性、機械強度に優れており、高性能キャパシタ、高機能ゴム材料、高熱導電材料等の革新的材料、デバイスの可能性が示唆されつつあり、産業への応用が期待されている。

しかし、現状では1グラム当たりの生産コストは数万~数十万円で、実際の製品に使うのは難しかった。

量産実証プラントの装置規模は日産600~800グラムだが、従来品に比べるとコストは各段に安く、「将来的には電子材料向けに、1キロ当たり数万円、グラム数百円で提供できるようになるのでは」としている。

ーーー

産総研は2004年に単層カーボンナノチューブ(CNT)生産技術のスーパーグロース法を開発した。

単層CNTの合成手法の一種の化学気相成長法では、触媒下でメタンやアセチレンなどのガスを500~1200℃の比較的低温で反応させて、CNTを得る。

スーパーグロース法は、水分を極微量添加することにより、通常は数秒の触媒寿命が数十分にもなり、極微量の触媒から、大量の単層CNTを合成することができる。

CNTの量産は、気相流動、もしくは担持触媒を用いたロータリーキルンなどで行うというのが業界の常識であったが、量産を行うため、基板の上で大量に単層CNTを成長させるという方法を考案した。

当初、量産のパートナーを求め、何社にも話を持ちかけたが、各社ともこれまでの製造法を捨ててスーパーグロース法に鞍替えすることに躊躇した。
その中でまったく CNTの経験がないものの、情熱と事業化への真剣さが感じられた日本ゼオンをパートナーに選定した。

産総研は2007年2月、日本ゼオンと共同で、スーパーグロース法を用いて、初めて大面積金属板上に直接大量の単層CNTを合成する技術を開発、2009年度の経済産業省の補正事業により、大量生産設備(実証プラント)を建設した。

従来の実験室レベルの合成装置はバッチ式のため、生産量は一日あたり1グラム程度にとどまっていたが、実証プラントの核となる全長12メートルの大面積対応型連続CVD(化学気相成長)合成炉では、幅の広い金属基板を用いて連続合成を行うことができる。

金属薄基板上に触媒層をコーティングし、これを連続CVD合成炉に送り込むことで、単層カーボンナノチューブを連続的に成長させる。
種々の合成条件を最適化することで、50cm×50cmの金属基板全面に、スーパーグロースCNTフォレストを均一かつ緻密に成長させることができた。
成長したカーボンナノチューブは、剥離装置により自動で根元から切断することで基板から分離・回収する。

スーパーグロース法で合成される単層カーボンナノチューブは他の方法による試料と比べ、はるかに高純度なため、特に精製する必要がなく、そのまま多くのアプリケーションに提供することができる。

2011年2月には、1日あたり600gの生産能力を実現した。

2011/2/18 産総研、単層カーボンナノチューブの大量生産技術を確立


今回、日本ゼオンは、産総研の量産実証プラントを活用し、スーパーグロース法で得られる高品位なカーボンナノチューブのサンプル製造を実施する。

スーパーグロース法で得られるカーボンナノチューブは、他のカーボンナノチューブと比較して、高いアスペクト比、高純度、高比表面積といった特長を有するため、従来にない機能や特徴を持つ新機能性材料、次世代デバイス等への応用が期待される材料であり、今後需要が急拡大すると予想される。

ーーー

日本ゼオンは産総研との共同開発でCNTの用途開発も進めている。

2010年5月に産総研と日本ゼオン、東レ、日本電気、帝人、住友精密工業は技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構を設立、単層カーボンナノチューブとグラフェンの実用化に向けて研究開発を進めているが、理事長には日本ゼオンの古河直純社長が就任している。


 

 

なお、単層CNT融合新材料研究開発機構にはCNT事業部のほかにグラフェン事業部もあり、炭素原子のシートであるグラフェンの開発を行っている。

これには、東レ、大日本印刷、カネカ、尾池工業が参加している。




 

JX日鉱日石エネルギーは11月2日、室蘭製油所 での原油処理(日量18万バレル)を2014年3月末で停止すると発表した。

同社は、現行中期経営計画における基本戦略のひとつとして、内需減退に先んじた国内トップの競争力を備えた製油所体制を構築すべく、精製能力の削減に取り組んで いるが、更なる競争力強化に向けて、様々な観点から総合的に検討した結果、決断したとしている。

同製油所では新たに設備投資を実施のうえ、二次装置を活用して、SKグループと合弁で韓国に新設するパラキシレン製造設備用の原料となるアロマ基材等の製造・輸出を行う。キュメンも引き続き製造する。

参考 2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

また、石油製品の物流拠点としての油槽所機能は存続し、引き続き北海道地区への灯油をはじめとする石油製品の安定供給に向け、万全の体制を確保 する。

ーーー

経済産業省は2010年7月、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。

実際には重質油分解装置の新設はあり得ず、常圧蒸留装置の削減を求めるものである。

本ブログは重質油分解能力の向上はよいが、それを強制するのはおかしく、実質的に国による設備カルテルであるとして批判した。

2010/7/7   エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

石油精製各社は、「エネルギー供給構造高度化法」による重質油分解装置の装備率の新基準について2010年10月末に経済産業省に計画を提出したが、その内容は非開示であるという。

その後、各社は順次、常圧蒸留装置の削減計画を発表している。

2012/8/30  エネルギー供給構造高度化法、進展 

ーーー

JX日鉱日石エネルギーの今回の室蘭製油所の原油処理停止はこの一環。

同社の当初のトッパー処理能力は1,792千バレルで、METIによる能力削減義務量は414千バレルである。

同社はこれまでも能力削減計画を発表してきたが、今回で義務量を達成する。

  原油処理能力(千バレル)  
008/12 2014/3 削減量
室蘭製油所 180 0 -180 今回発表
仙台製油所 145 145 -  
根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止
大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
 
PetroChinaとのJV化
水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止
麻里布製油所 127 127 -  
大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止
鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減
日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止
合計 1,792 1,212 -580  


METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 58.0  上記
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5    
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  101.2  


問題は東燃ゼネラル石油である。削減義務量は20.5万バレルとなっている。

 

トッパー
処理能力

川崎 33.5
15.6
和歌山 17.0
合計 66.1

堺も和歌山も存在意義があり、仮にどちらかを止めても、まだ不足する。

和歌山県知事は県議会で、「東燃ゼネラル石油和歌山工場は、本県の製造品出荷額ベースで約20%、有田市においては90%、さらに製造業だけじゃなくて周辺の経済に及ぼす影響などを考えますと、大変高い割合で有田市の経済、それから県の経済に貢献をしているというか、影響を及ぼす存在であるということだと思っております」と述べ、和歌山工場の廃止に対し反対している。

東燃ゼネラルは「株主の皆さまへ」で以下の通り述べている。

当社は、(METIの)この指針に対応するためさまざまな可能性について徹底的に検証しました。
2010年10月末に提出した計画には、
常圧蒸留装置の削減および重質油分解装置の能力増強も含んだ複数のケースが盛り込まれています。
2014 年3月31日の期日までに約3年あることから、今後も厳密な検討を続け、従業員、地域社会、顧客および株主の皆さまにとってどのような影響があるのかを十分に考慮した上で判断したいと考えています。


 




カザフスタン北部アクモラ州 Stepnogorskで11月2日、住友商事が出資した合弁企業 Summit Atom Rare Earth Companyによるレアアースの分離精製プラントの開所式が行われた。

JVにはカザフスタン国営原子力公社Kazatompromが51%、住友商事49%出資する。

30百万ドルを投じたプラントで、年産1,500トンのレアアース酸化物を生産する。
ウラン残土からレアアースを回収するもので、ジスプロシウムなど、特に希少性が高い重レアアースを中心に生産する。

試験稼働を経て来年1月にも対日輸出が始まる。

Kazatompromによると、JVは住友商事、信越化学、フランスのRhodiaの3社と販売契約を締結した。

Kazatompromは、2015年までに能力を倍増して 3,000とすると発表している。
2017年までに能力を5,000 ~ 6,000 トンにしたいとしている。

開所式には近藤洋介・経済産業副大臣やカザフ政府高官ら約200人が出席。近藤副大臣は「このプロジェクトは日本とカザフの協力の象徴的なものだ」と語った。


 

ーーー

2006年初にカザフスタン国営原子力公社Kazatompromが65%、住友商事が25%、関西電力が10%出資し、合弁企業APPAK LLPが設立された。

2008年6月3日、南カザフスタン州スザク地区にあるウェストムィンクドゥック鉱床の原位置抽出法によるウラン鉱山が開所した。

APPAK LLPはウラン精鉱の引渡しを2008年に開始し、2010年までに毎年1,000メトリックトンウランのフル生産を開始することを計画、見込まれている鉱山寿命は22年、総生産量は 18,000メトリックトンの計画。

2009年8月、住友商事は、Kazatompromとウラン鉱石残渣からレアアースを回収する事業に合意した。
両社が協力してカザフスタン国内に存在する残渣からの回収事業を独占的に行い、新たなレアアース資源ソースの確立に乗り出す。

2010年3月、両社は公社51%、住友商事49%出資で合弁会社 Summit Atom Rare Earth Company を設立した。
具体的には、Kazatomprom傘下のウルバ冶金工場の既存設備を活用して、ウラン鉱石残渣からのレアアース混合物の回収事業を立ち上げる。

この事業は、既存の残渣からレアアースを回収するため、新規に鉱山開発を行う場合と比較して、
(1)短期間での生産開始が可能、
(2)環境負荷が低い、
(3)開発コストが低減できるなど、
数多くのメリットがある。

経済産業省、資源エネルギー庁、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の支援も受けることが決定した。

また、京都大学との産学連携で、採取したレアアースの応用研究を進めることも決定しており、将来的には生産したレアアースを使った高付加価値品の製造までを、カザフスタン国内で行う一貫体制の構築も目指している。

ーーー

東芝も、2007年8月、原子力事業強化の一環として、カザフスタンのKazatomprom社が南カザフスタンで推進しているウラン鉱山開発プロジェクト(ハラサン鉱山プロジェクト)に参画することを決定した。

丸紅、東京電力、中部電力、東北電力が権益の一部を有する持株会社を保有し、同鉱区で生産されるウラン精鉱のうち、合計で2,000トン(MTU)/年の ウラン引き取り権を取得しているが、東芝は同持株会社の株式の22.5%を取得するとともに、最大600トン(MTU)/年の引き取り権を取得した。

東芝は2011年9月29日、Kazatompromとの間でアスタナ市にレアメタル分野に関する合弁会社であるKT Rare Metalsを設立したと発表した。

出資比率は、Kazatompromが51%、東芝が49%で、事業内容は以下の通り。

 ・ニオブ、ベリリウム応用製品、タンタル材の販売
 ・ニオブ、タンタル、ベリリウムを応用した新製品に関する製品開発
 ・ウラン鉱山から副産物であるレニウム、レアアース等の回収・販売に関する事業検討
 ・カザフスタン国内における新規供給源探査の検討

また同社は2010年11月、ウランを抽出した後の溶液からレアアース・レアメタルを回収する技術を開発し、カザフスタン共和国で実証試験を実施すると発表した。

ウラン抽出尾液からレニウム、ジスプロシウム、ネオジムを電解法によってそれぞれを分離して回収する技術を開発し、カザフスタンに試験装置を設置して実証実験を行う。

まずウラン抽出尾液からレニウムを回収し、その残渣液からジスプロシウム、ネオジムを溶融塩電解法により回収する。



 

東ソーは11月1日、南陽事業所 第三塩化ビニルモノマー(VCM)製造設備の生産能力増強(年間20万トン増)を決定したと発表した。

南陽事業所では2011年11月13日、第二VCMプラント(年産能力55万トン)で爆発・火災が発生、社員1人が死亡した。

2011/11/17  東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故

2011/4/11   東ソー、南陽事業所爆発事故の調査報告書を発表

この事故で事業所内の塩ビモノマー設備 1-3号機すべてが停止した。

このうち、第一プラント(年産能力:25万トン)は2012年5月8日から、第三プラント(年産能力:40万トン)は7月8日から稼働を再開した。

事故が起きた第二プラント(年産能力:55万トン)は、撤去して新設となれば運転再開に1年以上かかるとされた。
東ソーの宇田川社長は7月に、「再建するが、生産能力は元に戻さず、年20~30万トンにする」と述べた。(日本経済新聞)

同社では、VCM生産能力の復旧について複数の選択肢を検討してきたが、投資採算性や工期などを勘案し、今回、第三VCM製造設備の増強を決定したもの。

投資額は約50億円で、完工予定は2014年10月。

同社のVCM能力は以下の通り。(千トン)

    事故前 事故後 増設後
南陽事業所 第一VCM 250 250 250
第二VCM 550 - -
第三VCM 400 400 600
小計 1,200 650 850
四日市事業所 250 250 250
合計   1,450 900 1,100


VCM増産分は、グループ会社の国内外のPVC製造販売会社(下記)への安定供給を図ると共に、アジア市場へも外販する。

また、VCM増産により、事故後生産余力が生じている電解製造設備の稼働率が上昇し、生産増となる苛性ソーダは拡販を図る。

ーーー

同社グループの国内PVC能力は下記の通り。

大洋塩ビ

千葉

    90

四日市

310

大阪

158

 

合計

(558)

 

東ソー

南陽

28

ペースト

徳山積水工業

徳山

117

積水化学 70%
東ソー    30%
合計 703  


海外のPVC子会社は次の通りで、原則として日本からVCMを供給。

  社名 株主 PVC能力
(千トン)
 
フィリッピン Philippine Resins Industries 東ソー 80%
三菱商事 20%
100  
インドネシア StandardToyo Polymer 東ソー 60%
三井物産 40%
86  
中国 東曹(広州)化工 東ソー67%
三菱商事
三井物産、丸紅
220  
常州新東化工 常州新東化工
東ソー 14.9%
丸紅 14.9%
100 東ソー
VCM 年間50千トンの供給権

 

南陽の事故後、東ソーはVCM輸出を大幅にカットした。

他社も含めた日本全体のVCMの輸出数量の推移は下記の通り。


ーーー

東ソーはこの計画を収益力向上に役立つとしているが、どうであろうか。

この計画は、増分で見ると、全原料を輸入し、全製品を輸出するものである。(苛性ソーダは主に豪州のアルミ用)
まるで輸送業者を儲けさせるための計画のように見える。

付加価値の少ない汎用品の輸出用に50億円も投資するのが妥当だろうか。


東ソー南陽の場合は電力は石炭火力による自家発電で、大規模で、かつ石炭灰のセメント工場への有効利用を図るなど、コストは安いとみられている。

VCM増設を行わない場合は、これを売電に回すと、他社が燃料を輸入して発電する分が減る。


米国の場合、原料の塩は工場周辺の地下の膨大な岩塩層から低コストで入手でき、電力やエチレンは現在でも日本と比べて低価格なのが、今後はシェールガス利用で更に大幅に安くなると見られている。

米国からVCMと苛性ソーダを大量に輸出されると、大変なことになる。

 

付記

中国の苛性ソーダの今年の輸出量は150万トン程度と日本の4倍に達するとみられ、今後も増加していく勢い。



塩野義製薬は10月29日、HIV治療薬JVの枠組み変更を発表した。

同社はViiV Healthcare との50/50JVのShionogi-ViiV HealthcareでHIVインテグレース阻害薬ドルテグラビル(Dolutegravir)の開発を行っている。

HIV治療薬には、
・核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸型逆転写酵素阻害剤(いずれもウイルスのRNAをDNAに変える逆転写酵素を阻害)、
・プロテアーゼ阻害剤(ウイルスのタンパク質を作る過程を阻害)、
・インテグラーゼ阻害剤
(インテグラーゼの動きを止め、ウイルスDNAがヒトDNAに侵入することを防止)、
・CCR5阻害剤(HIVとCCR5受容体との結合を邪魔する)
などがあり、それぞれ作用が異なる。

既存のインテグレース阻害薬は、ウイルスの耐性化や1日2回投与またはブースター(薬剤を代謝する酵素を阻害する薬剤)が必要という服用の煩雑さ等があるが、ドルテグラビルは、1日1回投与でブースターが不要、優れた耐性プロファイルを示すなど、次世代のインテグレース阻害薬とされる。

非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、およびインテグラーゼ阻害剤を含む3剤以上を用いる多剤併用療法は、強いウイルス増殖抑制効果を示す。

今回、同社のJVの50%持分をViiV Healthcareに譲渡し見返りにViiV Healthcareの10%の権利を取得する。
塩野義は、
知的財産の権利(50%持分)は継続して保持し、ViiV に供与、ドルテグラビル及び関連製品の販売高に応じ、平均10%台後半、一部地域では20%台前半のロイヤリティーを得る。

ーーー

塩野義は2001年9月に、GlaxoSmithKline plc.(GSK)との間で、両社の所有する複数の疾患領域における開発化合物を開発・販売することを目的とした合弁会社Shionogi-GSK Healthcare を設立した。

2002年8月に、両社はこのJVでHIV インテグレース阻害薬に関する共同研究を開始した。

塩野義は海外拠点獲得を視野に入れており、JVのGSK持分全部を買い取るオプションを持った。

契約では、米国とEU5か国ではJVが、日本と台湾では塩野義が、その他地域ではGSK製品を販売することとなっていた。

2009年10月に、GSKとPfizerは両社のHIV 治療薬を供出し、英国にViiV Healthcareを設立した。(GSK:85%、Pfizer:15%)
GSKはShionogi-GSKHealthcareの持分をViiVに譲渡し、名称をShionogi-ViiV Healthcareと改称した。

今回の枠組み変更の理由は以下の通り。

① 今後のHIV 治療では複数のメカニズムを持つ配合剤が主となることが予想される。
 インテグレース阻害薬のみをアセットとするJV では、配合相手の選択等において複雑な取扱いが必要となる。

② 塩野義はその後Scieleを買収したため、このJVを米国販売拠点とする必要がなくなった。

塩野義製薬は2008年10月、米ナスダック上場の中堅製薬会社Sciele Pharmaを総額で14億2400万ドルを投じ、完全子会社にした。
2010年1月11日付けで、Shionogi Pharma, Inc. に改称、その後米国の他の子会社と統合し
Shionogi Inc.となった。

③ 米国子会社のShionogi Inc.の販売はプライマリケア領域がメインであり、高度な専門性が要求されるHIV 治療薬とは販売形態が違う。


2012年中にドルテグラビルの新薬承認申請を行う予定であるため、今回の決定となった。

塩野義製薬の狙いは以下の通り。

ViiVの経営に参画し、ドルテグラビル及び関連製品の価値最大化に引き続き貢献し、ロイヤリティー収入の最大化を図る

ViiVの所有する他のHIV薬のアセットからも10%株主として、配当を得る

開発にかけていたR&Dリソースを他の自社開発品に振り分けることが可能
 将来の成長ドライバーとなる自社製品の研究開発を加速

ViiVの業績は次の通り。

  2010年12月期 2011年12月期
売上高 1,566 百万ポンド 1,569 百万ポンド
営業利益 851 百万ポンド 824 百万ポンド

ーーー

塩野義によると、世界のHIV市場の状況は以下の通り。

グローバルでの販売高は、今後も年1-2%成長し、2017年には約200億ドルに達すると期待されている。
  Gilead Sciences(76億ドル)、ViiV Healthcare(24億ドル)、Bristol-Myers Squibb(18億ドル)の3社で約70%のシェアを占める。

・ ViiVは、HIV薬として、Epzicom(10億ドル)、Combivir(5億ドル)をグローバルに販売。

その他のHIVにおける主要製品としては、Atripla、Truvada(Gilead)、Reyataz(BMS)、Isentress(Merck)などがある。
 今後、ドルテグラビル(ViiV)、Stribild(Gilead)の販売開始、現行品の特許切れで、主要製品の変化が予想される。

・ 今後のHIV市場においては、配合剤が市場全体の半分以上を占めると予想される。




日立製作所は10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社 No.1のE.ON及びNo.2のRWEから買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

合わせて、建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock InternationalRolls Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin と協力覚書を締結した。

Horizonが保有する北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth GloucestershireのOldburyの2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ2~3基建設する予定で、最初の発電所は2020年代前半の運転開始を目指す。
同社が世界で唯一運転実績(浜岡原発5号機など)を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(
ABWR)技術を用いる。

日立とGEのJVのGE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR:Economic Simplified Boiling Water Reactor)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。

日立はグループの日立GE ニュークリア・エナジー、GE Hitachi Nuclear Energy、およびGE日立 ・東芝3社による合弁会社Global Nuclear Fuelはもとより、世界中の原子力関連企業と協力体制を築き、新規建設プロジェクトを推進する。

日立は2012年6月にリトアニアから原発の受注に成功したが、国民投票や議会選挙の結果、最終決定が見送られる恐れがある。(下記)
日本での新設も難しくなった。
同社では、「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」としている。

今後、原発運営のノウハウを持つ電力会社などの出資を募り、日立の出資比率を引き下げる。

ーーー

Horizonは2009年1月にドイツのエネルギー会社 No.1のE.ONとNo.2のRWEとが50/50で設立、2015年までに英国で150億英ポンドを投じて原発4〜6基(最大660万KW)を建設する計画であった。
既に北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth GloucestershireのOldburyに建設用地を取得しているが、 株主の両社が今年3月、売却を表明した。

両社は経済危機による両社の資金繰り悪化とともに、福島事故に伴うドイツ政府の脱原発の影響を理由に挙げた。

英国のエネルギー相は、両社の撤退は残念だが、両社とも撤退は両社の事情によるもので、英国の原発の将来については疑いも持っておらず、他社が関心を寄せており、事業は継続するとした。

Horizonには次の各社が名乗りをあげた。

 フランスのAreva / 中国広東核電集団公司 (China Guangdong Nuclear Power Group:CGNPC)

  ・Westinghouse(東芝)/ 中国核工業集団公司 (China National Nuclear Power Corporation)

1999年にWestinghouseの電力システム部門はSiemensに売却され、原子力部門は英国核燃料会社(BNFL)に売却されたが、後者の原子力部門がWestinghouse Electric の社名を継承した。

2006年に東芝は Shaw Groupと組んで、Westinghouseを54億ドルで買収した。
 東芝 77%、Shaw 20%、IHI 3%。

東芝はその後、カザフスタンのKazatompromに持分10%を売却した。

2011年9月、東芝はThe Shaw Group 保有の株式(20%)を取得し、持株比率を87%にすると発表した。
 東芝 87%、Kazatomprom 10%、IHI 3%

  ・日立製作所 / SNC-Lavalin (カナダ)

日立製作所は原発事業でGEと提携している。


しかし、Areva / CGNPCは10月3日、本計画からの撤退を発表した。
また、Westinghouse(東芝)と組む中国核工業集団公司 も撤退の意向を示している。

中国陣の撤退は経済的な理由が中心とはされるが、英国の政界にはこの分野への中国の進出を懸念する意見も強い。

この結果、日立とWestinghouse(東芝)が残ったが、Westinghouse(東芝)は日立を上回る額の応札を見送った模様。

ーーー

英国では19基の原発が稼働している。

2009年11月、英国政府は原発拡大策を発表した。

「これはエネルギー安全保障のためにも必要だ。北海の原油埋蔵量は減少しており、多様化した、低カーボンの、燃料供給量の変動に左右されないエネルギーミックスが求められる 」としている。

10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。
新設立地は下表の
印のもの。

Horizonはこのうち、OldburyとWylfaを選び、土地を買収した。

  稼働中 廃止 政府案
Berkeley    2基   
Bradwell    2基 
Calder Hall    4基   
Chapelcross    4基   
Dounreay DFR   2基   
Dungeness  2基   2基   
Hartlepool  2基   
Heysham  4基   
Hinkley Point  2基   2基 
Hunterston  2基   2基   
Oldbury  2基   
Sizewell  1基   2基 
Torness  2基     
Trawsfynydo    2基   
Windscale    1基   
Winfrith SGHWR    1基   
Wylfa  2基   
Braystones    
Sellafield    
Kirksanton    
合計  19基   26基   
 

なお、新規計画参加者のうち、Scottish Powerを所有するスペインのIberdrolaが、Sellafieldでの原発新設を計画するコンソーシアムから離脱を考えているとの報道がある。

さらにフランスのEDF が Arevaと共同でHinkley Pointに原発を新設する計画を持つが、事前設計認可取得に必要な包括的設計評価書作成に難航しているとの報道もある。

ーーー

日立製作所は2012年6月、リトアニアから原発の受注に成功した。

日立は同国北東部に建設予定のVisaginas原発計画について、130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を提案し、入札を経て2011年12月に仮合意を結んだ。
2012年6月21日にリトアニアの議会が建設事業権について、日立製作所と契約することを賛成多数で承認した。

リトアニアはソ連時代にIgnalina原発が稼働し、独立後も国内電力の7割以上をまかなっていたが、Chernobyl 原発と同型のため、EU加盟の条件として2009年末に完全閉鎖した。

代替措置として、ラトビア、エストニアと共同で隣接地に新たにVisaginas原発を建設するもの。

日立として初の海外受注案件で、同原発に出資するラトビア、エストニアからの合意を得た後、正式に契約する予定であった。

しかし、10月14日に原発建設の是非を問う国民投票が行われ、 反対票が約63%に達した。投票率は52%で、選管は投票を有効と判断した。投票結果に拘束力はない。

投票結果を受け、グリバウスカイテ大統領は「新政権は国民の考えを注意深く踏まえなければならない」との声明を出した。

更にリトアニアでは10月28日に
議会選の決選投票が行われ、原発建設に慎重な野党3党が過半数を確保した。
Visaginas原発の建設計画の最終決定は、先送りされる公算が大きい。




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