2012年12月アーカイブ

中国商務部は12月27日、各企業別の2013年上半期のレアアース輸出割当を発表した。

希土は13,563トン、中重希土は1,938トンで、合計15,501トンとなった。

中国のレアアースの2012年輸出実績は過去10年間で最低水準に落ち込み、1万3千トン前後にとどまる見通しとされているが、中国政府はこれを上回る輸出を許可する。

中国のレアアース輸出量は激減しており、2011年の実際の輸出量は輸出枠30,258トンの61%の18,600トンに止まっている。
2012年1-6月のレアアース輸出総量は、輸出枠21,226トンに対し、2011年同期比42.7%減の4,908トンとなった。

企業別には、2010年1月から2012年10月までの輸出数量比(50%)、輸出金額比(50%)で割り当てられた。
  http://www.mofcom.gov.cn/aarticle/b/e/201212/20121208504001.html


  2009 2010 2011   2012 2013

2011/12/7
      承認

上期追加

2012/8/22
  承認
2011/12/7
仮承認 
2012/5/17
  承認
上期合計
上期 25千トン 14,446トン 22,282トン 軽希土 9,095トン 12,605トン 9,490トン 18,585トン   13,563トン
中重希土 1,451トン 1,753トン 1,190トン 2,641トン   1,938トン
合計 10,546トン 14,358トン 10,680トン 21,226トン   15,501トン
下期 25千トン 15,738トン 7,976トン 軽希土         8,537トン  
中重希土         1,233トン  
合計   約6,000トン     9,770トン  
年間 50,145トン 30,184トン 30,258トン 軽希土         27,122トン  
中重希土         3,874トン  
合計   約31,000トン     30,996トン  

 

中国国家発展改革委員会(NRDC)は12月19日、2012年に新たに着工した西部大開発重点プロジェクトは22件、投資総額は5778億元に達することを明らかにした。

鉄道、道路、電力関連などがほとんどだが、その中に「中衛-貴陽天然ガスパイプライン」と「西気東輸第3パイプライン」が入っている。
いずれも中国西部及びその西の中央アジアの天然ガスを中国中部および東部に送るパイプラインである。

中衛-貴陽天然ガスパイプラインは西気東輸第1及び第2パイプライン で送られた天然ガスを寧夏自治区の中衛から重慶経由で貴州省の貴陽まで送るもの。

西気東輸第3パイプラインは新疆ウイグル自治区のコルガスから寧夏自治区の中衛を経由し、広東省福州に天然ガスを送るもの。

          第3西気東輸の 中衛以東の詳細ルートは不明。

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2000年3月東部沿海地区の経済発展から取り残された内陸西部地区を経済成長軌道に乗せるため、「西部大開発」が全国人民代表大会で正式決定された。

その目玉が、「西気東輸」、「南水北調」、「西電東送」、「青蔵鉄道」など。

西気東輸」は西部の天然ガスを東部に輸送するもので、新彊のタリム盆地から甘粛、寧夏、陝西、山西、河南、安徽、江蘇、浙江、上海と続く総延長4000キロのパイプラインを建設、2005年に開通した。

2006/7/6 中国、今年の西部開発12事業を発表

その後、西気東輸第二パイプラインが建設された。
新疆ウイグル自治区のコルガスから寧夏自治区の中衛を経由し、
広州から香港までの5000kmのパイプラインで2011年6月に稼働した。
珠江デルタ、長江デルタなど14省・自治区・直轄市と香港に天然ガスを輸送する。

香港には海南島沖の崖城(Yacheng) ガス田から780kmの海底パイプラインで送られている。
2012/12/24 BP、南シナ海の天然ガス権益を売却 

付記

2012年12月30日、西気東輸第二パイプラインの支幹線が広州から広西チワン族自治区南寧に到達し、幹線と支幹線が全て完成した。

これは国内のタリム盆地などの天然ガスを輸送する第1ラインとは異なり、中央アジアの天然ガスを陸上輸入するために建設する戦略インフラとなる。

中国とカザフスタンは2007年8月に政府間協定に調印し、2期に分けて天然ガスパイプラインを建設することとした。
第1期はカザフスタン国内を通過する中央アジア天然ガスパイプライン(南ルート)の建設で、ウズベキスタンとカザフスタンの国境シムケントから
新疆ウイグル自治区のコルガスまでの全長1,300キロで、2009年12月に竣工した。

第2期はカザフスタン国内のパイプラインであり、西部のベイネウからシムケントまでの1,400キロで、2011年9月に着工した。



西気東輸第三パイプラインは同様に、新疆ウイグル自治区のコルガスから寧夏自治区の中衛を経由し、河南省、湖北省、湖南省、江西省、福建省、広東省を経由し、福州までの総延長は7378キロメートルで、天然ガスの年間輸送量は300億立方メートル。

この完成により、中央アジア及び中国西部の天然ガスが中国全土に送られることとなる。

このほかに、四川省の普光から上海まで通じる全長1,700キロに達する天然ガスパイプライン「川気東送」も完成している。

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中央アジアと中国とは石油のパイプライン(カザフスタン北部を経由)でも結ばれている。

 

2006/5/29 中国-カザフ石油パイプライン正式稼動



 

AOCホールディングスは12月27日、連結子会社のアラビア石油が会社分割により新たに設立する子会社をJX日鉱日石開発に譲渡する契約を締結したと発表した。

新会社は2013年4月に設立の予定で、石油上流事業に携わってきた過程で蓄積した技術と豊富な経験を有する人員と、AOCグループが保有する日本オイルエンジニアリングの全株式を承継する。(日本オイルエンジニアリングの他の株主はコスモ石油)

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アラビア石油は1958年2月に設立された。

サウジとクウェートの旧中立地帯で、1957年に(前身の日本輸出石油が)サウジの採掘権を、1958年にクウェートの採掘権を取得、1960年1月にカフジ油田を発見して 1961年2月に生産を開始した。1963年11月にはフート油田を発見した。

アラビア石油はここで日本の石油消費量の5%に相当する日量27万バレルを生産して日本に持ち込み、エネルギーの安定調達に大きく貢献してきた。(原油累計生産量は約39億バーレルに達し、その内、約28億バーレルを日本向けに供給)

しかし政府の全面的な後押しを受けて臨んだサウジとの権益更新交渉に失敗して2000年2月にサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。
利権協定の期限は当初から決まっており、それに対して手を打ってこなかった後継首脳に対する批判がある。

コスモ石油子会社のアブダビ石油が単独で権益を保有し1973年から操業しているアブダビ沖合のムバラス油田は、2012年に45年間の期限を迎えたが、30年の更新が認められた。

新利権協定は2012年12月6日に発効、アブダビ石油が操業中の既存3油田(ムバラス油田、ウルアルアンバー油田およびニーワットアルギャラン油田)の利権が今後30年にわたり更新されるとともに、3油田と同程度の生産規模が見込まれる既発見・未開発の新鉱区(ヘイル油田)について、新たに30年の権益が確保された。

   
2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

その後はカフジの操業は両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、この契約の更新が出来 ず、2008年1月4日、クウェート・カフジ油田の操業から撤退、半世紀に及ぶ元祖「日の丸油田」の役割を終えた。

クウェート石油公社との間では2023年1月まで、最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェート原油の売買に関する取り決めを結んでおり、これは今後も継続する。

2008/1/5 アラビア石油、カフジ撤退

なお、アラビア石油と富士石油は2002年10月に事業統合で合意、2003年1月、株式移転によりAOCホールディングスを設立した。

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アラビア石油はこのほかに2か所で石油開発を進めているが、いずれも諸問題の発生で操業開始が大幅に遅延、巨額な損失が発生している。このため、同社では権益売却を模索する。

(1)ノルウェー領北海・イメ油田再開発プロジェクト

ノルウェーにおける石油・天然ガスの探鉱・開発プロジェクト実施のための現地法人として1988年に100%子会社Norske AEDC ASを設立した。

ノルウェー領北海2/1鉱区のギダ油田(オペレーターはTalisman Energy)に5%の権益を保有している。1990年6月より原油生産を開始し、日量約4千バレルの水準で原油を生産している。

2009年2月に、新たなプロジェクトとしてイメ油田とそれに隣接する2 つの探鉱鉱区の権益をそれぞれ10%取得した(オペレーターはいずれもTalisman Energy)。

イメ油田は、Talismanによる開発作業が行われているが、海上生産設備の不具合等により生産開始が大幅に遅れており、生産開始の目途は立って いない。

(2)エジプト・スエズ湾ノースウェスト・オクトーバー鉱区

アラビア石油は2005年2月、スエズ湾北部のノースウェスト・オクトーバー鉱区の国際入札に成功し、同年7月にエジプト政府およびエジプト石油公社と生産分与契約を締結し、2006年9月に商業量の原油の賦存を確認した。

プロジェクト推進のため、2008年10月に100%子会社のAOCエジプト石油(株)を設立し、開発作業を進めた。

現在、エジプトの政治情勢を注視しつつパートナーのエジプト石油公社と協議を続けて いるが、同国の情勢はなお安定に至っておらず、今後は権益の売却を模索する。

石油上流事業のポートフォリオを整理し同事業から実質的に撤退することも視野に入れ、アラビア石油が半世紀以上にわたり石油上流事業に携わってきた過程で蓄積した技術と豊富な経験を新たな形でわが国石油開発業界において活用する ため、今回の決定を行った。

移籍する社員の半分の約40人が技術系。うち10人はノルウェーとエジプトの現場で腕を磨いている。

現行の上記2件のプロジェクトと、クウェイト石油公社との原油売買契約に基づく原油の購入・販売は引き続きアラビア石油が行 う。

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一方、JX日鉱日石開発は、2020年を目途に原油換算で日量20万バーレルの石油・天然ガスの生産体制を確立するべく、新規事業案件の獲得および既存プロジェクトの価値の最大化を推進している。

この達成を確実なものとした上で、更なる発展を図るためには、上流事業についての高度な専門技術と幅広い知見を有する人材を拡充することが必要にな るが、昨今の資源開発ブームの影響により、石油開発業界の人材は世界的に不足しており、その確保は難しい状況にある。

このため、承継される人材のアラビア石油時代に培った技術・知見を存分に活用し、同社の事業基盤の更なる強化を図る。

 



オマーン石油 (OOC) とLG International は12月18日、オマーンでの石油化学JV計画の契約を締結した。

OOCが70%、LGが30%出資のJVを設立し、Sohar PortでPTA 110万トン、PET 50万トンのプラントを建設する。

所要資金は約850百万ドルで、2016年末に商業生産を開始する。

原料パラキシレンは、Soharで2009年から操業しているAromatics Oman LLC(OOCとLGが出資)から供給する。

Aromatics Oman LLC概要:
出資:Oman Oil Co.    60%
   Oman Refinery    20%
   LG International  20%
立地:Sohar
製品:Benzene  210千トン
   Paraxylene 814千トン
原料:Sohar Refinery Companyの日量74,260バレルの残渣油流動接触分解装置から

製品販売:現在はLGが20%の引取権を持ち、アジアで販売。
        残り80%は2005年にOOCがオランダの商社Vitol と設立したJVの
OOC-Vitol が販売している。

OOCでは、この事業がPETの川下産業育成に役立つと考えている。

ーーー

オマーンの石油化学については、下記参照。

2006/6/3 湾岸諸国の石油化学ー4 オマーン

オマーンではOctal Petrochemicals がSalalah Free Trade Zone で3万トンからスタート、2008年に年産30万トンのPET樹脂プラントをスタートさせ、2010年に50万トンの増設を行った。2012年の能力は100万トンとしている。

製品はボトル用レジンとPETシート。
中東最大のPETレジンメーカーで、世界最大の統合PETシートメーカーと称している。

原料PTAはSABICのIBN RUSHD (Arabian Industrial Fibers Company)から購入している。

IBN RUSHD:
  PTA 75万トン
  PET 72万トン(30万トン+42万トン)

Octal Petrochemicals 社は2006年に米国の投資会社Chemlink Capital Ltd. と Pound Capital Ltd.により設立され、サウジや湾岸諸国、米国の個人や投資会社が出資している。

 

 

 

 
東シベリア太平洋石油パイプライン(ESPO)が12月25日、ナホトカ近郊までの全線で稼働した。

スコヴォロディノとナホトカ近郊のコズミノ港を結ぶ第2期工事がこのほど完了し、25日に稼働した。

終着ターミナルについては、当初、ペレヴォズナヤとコズミノの2案があった。(下記地図には前者が載っている)

最終的にコズミノとなり、
200912月、タンカーへの原油積み替え設備などを備えた埠頭が完成した。
パイプライン全線開通までは
スコヴォロディノで鉄道貨車に積み替えて輸送することとなり、同年1228日、プーチン首相立会いでタンカーへの原油積み出しが開始された。

年間の輸送能力は従来の鉄道輸送に比べ2倍の3000万トンとなる。
アジアでの需要拡大をにらみ、中期的に5000万トンまで増やす計画で、プーチン大統領は25日「ロシア極東のインフラが持つ可能性を飛躍的に高める」と語った。

東シベリア産の原油を極東に輸送する東シベリア太平洋石油パイプライン(ESPO)は全長4740キロメートル。

東シベリアのタイシェトと中間地点のスコヴォロディノをつなぐ区間が先に完成したが、ここから中国の大慶を結ぶパイプラインが2009年末に完成し、2011年1月1日から、同パイプラインを通して年間1500万トンの原油がロシアから中国に供給されている。

中国は2009年2月、ロシアとの間で政府間協定を結んだ。

中国開発銀行がロシア国営石油会社 Rosneft に150億ドル、東シベリア太平洋パイプラインを運営するTransneftに100億ドルを低利で融資する見返りに、Rosneft は2011から20年間、毎年15百万トンの原油の供給を行い、Transneftはパイプラインを中国に延長する。

CNPC2009年7月、ロシアからの原油処理のため、遼陽市の製油所の拡大(11%) を開始したと発表した。

   2009/7/22  CNPC、ロシアからの原油用に遼陽市の製油所を拡大

ーーー

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2010年10月、ロシアのイルクーツク石油と共同で探鉱調査を行っているイルクーツク州北部のセベロ・モグジンスキー(Severo-Mogdinsky) 鉱区で可採埋蔵量が1億1000万バレルと想定される大規模油田の試掘に成功したと発表した。

2010/10/25 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、東シベリアで大規模油田を確認

JOGMECは2012年6月、東シベリアの油田を、ガスプロム・ネフチと共同開発すると発表した。

イルクーツク州北部に位置するイグニャリンスキー鉱区で、埋蔵量1億バレル級の中規模油田。2013年末までに地質調査や試掘などを行い、2010年代後半から日量数万バレルの生産を見込んでいる。将来的に日本企業が49%の権益を獲得する。

同油田から採掘した原油は、東シベリア太平洋石油パイプラインでコズミノまで運び、日本に輸送する。



Braskem Idesa は12月20日、米大陸の石化計画では最大の32億ドルの借り入れに成功したと発表した。

Braskem Idesa はブラジルのBraskemとメキシコのGrupo IDESAのJVで、メキシコのVeracruz石化コンプレックスを建設する。

同社のエチレンXXI 計画の内容は以下の通り。
・エタンベースのエチレン 100万トン(Technip技術)
・HDPE 2系列(INEOS Innovene 技術)
・LDPE (Basell Lupotech 技術)
 (HDPEとLDPE 合計で能力100万トン)

総投資額は約45億ドルで、設備投資額は32億ドル、2015年に操業開始の予定

2009/11/17 Braskem、メキシコでProject Ethylene XXI を実施

完成すれば、メキシコの現在の15~20億ドルの輸入ポリエチレンに置き換わり、メキシコの貿易収支改善に寄与する。
 

融資は三井住友銀行が単独でファイナンシャルアドバイザーを務めたもので、7つの公的機関(イタリアの輸出信用機関SACEを含む)と商業銀行10行が参加する。

構成は以下の通り。
IFCは世界銀行グループ、IDB(米州開発銀行)は、中南米・カリブ海諸国の経済開発を促進するため1959年に米州機構会議で設立を決めた多国間開発金融機関。
銀行 融資額
(百万ドル)
種類
ブラジル BNDES   623 Direct Loan
メキシコ Nafin 280 Direct Loan
メキシコ Bancomext 120 Direct Loan
Export Development Canada 300 Direct Loan
International Finance Corporation (IFC) 285 A Loan
Inter-American Development Bank (IDB) 285 A Loan
三井住友銀行 200 IFC&IDB- B Loan
SACE Guaranteed
HSBC 200 IFC&IDB- B Loan
SACE Guaranteed
ドイツ復興金融公庫 150 SACE Guaranteed
Banco do Brasil 140 IFC&IDB- B Loan
三菱東京UFJ銀行 140 IFC&IDB- B Loan
韓国産業銀行 140 IFC&IDB- B Loan
スペイン BBVA 100 SACE Guaranteed
イタリア Intesa Sanpaolo 100 SACE Guaranteed
スペインSantander 100 SACE Guaranteed
みずほ 30 SACE Guaranteed
TOTAL 3,193  

SACEはイタリアの輸出信用機関

 

 

 

 

EU加盟国の財政規律を強化する「新財政協定」('Fiscal Compact')の批准国が12月21日にユーロ圏諸国だけで12カ国に達し、発効要件を満たしたため、2013年1月1日付の発効が決まった。
フィンランドが21日に批准書を提出した。

'Fiscal Compact' は正式にはThe Treaty on Stability, Coordination and Governance in the Economic and Monetary Union

EU首脳会議は2011年12月9日、ユーロ圏の政府債務危機を受け、財政規律強化のための新条約の制定を協議した。
しかし英国の反対で決定できず、ユーロ圏を中心とした条約とすることとした。

もともとユーロ圏諸国には「財政赤字がGDP比3%以下」など厳しい財政規律が義務付けられ、罰則もあったが、過去に違反した独仏両国を含む各国は制裁はされておらず、骨抜きになっていた。

EUは12月16日、新条約の原案をまとめ、加盟27か国に送付した。

2011/12/12 ユーロ新条約、最大26カ国参加へ 

2012年3月2日のEU首脳会議で、財政規律の強化に向けた新条約に英国とチェコを除く25か国が署名した。
ユーロ圏17か国のうち、12か国の批准で発効する。

2012/3/7 欧州金融危機への今後の対応

英国は主権制限を懸念して拒否した。チェコは憲法上の理由としている。

チェコの国家主権を移譲する必要がある場合、憲法の規定に従って大統領は首相にその権限を与えなければならないが、大統領は拒否する考えを明らかにしている。

ユーロ圏17か国のうち、まだ批准していないのは、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スロバキア、マルタの5か国。
署名した非ユーロ圏8か国では、デンマーク、リトアニア、ラトビア、ルーマニアの4国が既に批准している。

新条約の概要:

各年の一般政府の構造的財政収支赤字がGDP比0.5%を超えない。
但し、公的債務残高の対GDP比が60%を大幅に下回り、長期的な財政の持続可能性リスクが低いと判断される場合、対GDP比で1%までの構造的財政赤字が認められる。


従来の基準は
・単年度の財政赤字額の比率がGDPの 3%を上回わらない
・国債残高が GDP の60%を下回ること
但し、違反に対する罰則は骨抜き

構造的財政収支が中期目標から逸脱した国は、各国毎の目標に向かって速やかに収支を収斂させなければならない。
   
上記の財政均衡化ルールは、協定発効から1年以内に、批准各国の国内法規(憲法上の規定が望ましい)で定められなければならない。
   
一般政府の公的債務残高の対GDP比が60%を上回った場合、当該国は毎年、基準を上回った金額の20分の1ずつ債務を減らさなければならない。
   
国内法規が均衡化ルールに適合していない場合、欧州司法裁判所は是正措置を採るよう求め、是正勧告に従わない場合、GDPの0.1%未満の罰金を科すことができる。

 

 


三菱ケミカルホールディングスは12月25日、医薬品カプセル製造で世界シェア2位の奈良のクオリカプス(Qualicaps)の全株を取得し、子会社化するための株式売買契約をカーライル・グループとの間で締結したと発表した。

クオリカプスの有利子負債を含む買収金額は558億円で、三菱ケミカルは金融機関からの借り入れで賄う方針。

クオリカプスは1965年の設立以来、医薬品・健康食品用カプセルならびに製剤関連機械の開発・製造・販売を日米欧の3拠点を軸に展開するグローバル企業で 、2011年の連結売上高は176億円、海外売上高比率は64%。

高品質・高機能のハードカプセルの提供とともに、長年培ったカプセル製造技術のノウハウを活用した製剤関連機械の設計・開発、製作・据付け、技術サービスの提供というトータルなアプローチで、カプセル市場において確固たる地位を築いてい る。

三菱ケミカルの推定では、
世界のカプセル市場の規模は約1,000億円で、年率数%の安定的な成長が見込まれる。
そのうち医薬品用は半分以上を占めており、クオリカプスは医薬品用カプセル市場において20%を超える世界シェアを有している。
今後年率10%以上の成長が予想されるセルロース系カプセル市場において、クオリカプスは技術・品質の優位性によってリーディングカンパニーとしての地位を確立して いる。

三菱ケミカルは石化事業の収益環境の悪化を受け、好調な医薬品事業を強化する。

但し、世界の医薬品メーカーは目指す分野に投資を集中させ、それ以外の分野を売却しているなかで、本件のカプセル事業は医薬関連であるとはいえ、医薬品の補助材料であり、競合する医薬品メーカーを需要家とする。
 
三菱ケミカルでは、クオリカプスのグローバルな顧客ネットワークは同社の医薬品原体・中間体事業との補完性が高いとしているが、高いノレン代(クオリカプスの2011年営業利益は30億円に過ぎない)を払って買収する意義があるのか、疑問がある。

ーーー

塩野義製薬と米国イーライ・リリーが1965年に50:50の合弁で「日本エランコ」を設立した。

1992年に塩野義100%となり、その後「シオノギクオリカプス」と改称した。
1995年に米国とスペインにカプセル工場を建設した。

2005年10月にThe Carlyle Groupをスポンサーとして、マネジメント・バイアウト(MBO)方式で塩野義製薬から独立した。

塩野義製薬は医療用医薬品への経営資源集中を進め、カプセル事業はノンコアビジネスであった。

クオリカプスは当時、日本市場では業界首位の地位にあったものの、海外市場では各国法人が個別に経営されており、大手医薬品メーカー顧客獲得に苦戦していた。

Carlyleは以下の方針で立て直しを図った。

・グローバル化する顧客ニーズに対応するため、グローバルなカプセルメーカーとしてグループ経営を確立すること。
日米欧連携により製造品質の改善を行い、米国大手医薬品メーカーの顧客を獲得すること。
・植物性カプセルの早期投入による業界におけるリーダーシップを確立
・日本における機械事業をグローバルに展開。
カーライルのグローバルネットワークの活用

独立後、2007年1月に、カナダのハード・カプセル製造会社Pharmaphilの買収した。

そして同年5月には世界的なカプセル製造機械メーカー、カナダのTechnophar Equipment and Service を買収した。
同社はカナダとルーマニアにカプセル機械の製造工場を有しており、さらに、ルーマニアでハード・カプセル工場を建設中であった。

この結果、現在の拠点は下記の通り。

現在はCarlyle group 3社が全株式を保有している。

Carlyleは以上の戦略で企業価値を向上させ、2010年末にクオリカプスの売却を試みた。

しかし、Pfizerによる子会社のカプセルメーカーCapsugel の売却と重なったため、その時は失敗に終わった。

Pfizerは2011年4月1日、Kohlberg Kravis Roberts (KKR)との間でCapsugel を23億75百万ドルで売却する契約を締結したと発表した。
Capsugelはハードカプセルで世界一で、2010年の売上高は約750百万ドル。

 



化学各社の2012年9月中間決算は惨憺たるものであった。

大半の企業の営業損益が前年同期を下回っている。

2012/11/12   2012年中間決算-4 まとめ

三菱ケミカルホールディングス、旭化成、住友化学三井化学ソー などで、石油化学基礎化学の損益が激減している。

石油化学だけが不振なのではなく、ポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス
している。
石油化学だけが不振なのではなく、ポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス関連で減益となった企業も多い。
信越化学とトクヤマでは半導体シリコンが大幅減益となった。

国内のエチレン能力は800万トンであるのに対し、エチレン換算内需は500万トン強である。
輸出については、円高が進んだうえ、中国経済の低迷と中国の設備能力過剰の顕在化で期待できない。

海外では中東で依然として設備新設が盛んである。
従来の計画と異なるのは、これらでは汎用品だけでなく、最新技術を入れた高付加価値製品が生産されることである。

10月にはChevron Phillips Chemical のJVのSaudi Polymers Company (SPCo) が商業生産に入った。
  
2012/10/5 Chevron Phillips Chemical のサウジ石化コンプレックス、商業生産開始

DowとSaudiAramcoは2011年11月に石化JVのSadara Chemicalの設立を発表、本年9月には米国のEx-Im Bankから49億75百万ドルの直接融資の承認を受け、建設を進めている。
  
2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定

住友化学とSaudiAramcoのJVのPetro Rabigh は第二期計画の実施を決めた。
  
2012/5/28 住友化学、サウジ・アラムコとの「ラービグ第2期計画」実施へ

サウジ政府のJubail/Yanbu王立委員会は2月12日、Jubail Industrial Cityでの総額56.5億米ドルの石化計画を承認した。
  
2012/2/17 サウジ、Jubail地区の大規模石化計画を承認 

このほかにも、多くの計画が進んでいる。

さらにシェール革命を受けて、米国の天然ガス価格が大幅に下落し、米国の石油化学産業が大々的に復活しつつある。

DowのCEOは以下のように述べ 、米国への復帰を宣言、同時にLNGの輸出に反対している。

Dowはこれまで安いエネルギーを求めてサウジなど海外で石化事業を拡大してきた。
しかし、米国
の豊富で安いシェールガスの出現で、Dowは再び米国での投資を始めた。
10年ぶりに新しいエタンクラッカーを建設するとともに、米国の施設をリフレッシュする。

天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ。
天然ガスからプラスチック、肥料、その他化学製品に加工して輸出すれば、LNGで輸出するよりも8倍もの価値を生む。

Dowは2011年4月に、安価なシェールガスを利用するエチレンとプロピレンの能力増強を発表した。
   2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

このうち、プロピレンについては、2012年3月にテキサス州Freeportにプロパン脱水素により新しいプラントを建設することを発表した。
   2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メキシコ湾岸に新しいワールドスケールのエチレン設備の建設することを明らかにしていたが、同社はこのたび、テキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。
投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

Dow以外にも多くの企業が米国でシェールガスの利用に動いている。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 
2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画 

ExxonMobilもテキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は、日本経済新聞景気討論会で、米国のシェールガス革命による産業界の活性化 を挙げ、米国での事業も検討したいと述べた。

12月23日の日経報道ではダウの新エチレン(150万トン)プラントに隣接して、MMAモノマー25万トンを建設する計画とされる。三菱レイヨンが買収したLuciteのエチレンを原料とするアルファ法を採用すると思われる。

更に本日(12/25)の日経は、三菱ケミカルが医薬品カプセル製造で世界シェア2位の奈良のクオリカプスをカーライルから負債を含め約500億円で買収すると報じた。
クオリカプスは1965年に塩野義製薬と米国イーライ・リリーが50:50の合弁で設立した「日本エランコ」で、1992年に塩野義100%となり、その後「シオノギクオリカプス」と改称、2005年にカーライルが買収した。カプセル充填機等の機器も製造する。

三菱ケミカルは収益環境の悪化から、好調な医薬品事業を強化する。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスの小林社長は、週刊ダイヤモンドで以下のとおり述べている。

日本の製造業は国際競争力が削がれる「6重苦」(円高、通商政策=FTAの立ち遅れ、③高い法人税率、④電力問題、⑤労働規制、⑥温暖化ガス削減の重いコミットメント)に見舞われているが、化学産業が背負うのは「⑦原料コスト高」も加わった「7重苦」だ。

コストが安い中東勢などの低価格製品が増え、国内生産は今後さらに輸出競争力を失っていく。

加えて高齢化で内需も減っていく。さまざまな石油化学製品の基礎原料であるエチレンを製造する設備は国内に15基。内需に対して設備の3分の1が余剰だといわれている。

この結果が上記の中間決算に表れている。
しかもポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス関連でも問題が生じている。

エチレン能力800万トンに対し、エチレン換算内需は500万トンで、内需に対し300万トン(37.5%)が過剰であり、今後は輸出は利益の寄与が期待できない。
2000年頃の不況時にはその後中国需要という神風で業績が好転したが、今や状況が再度よくなる可能性はほとんどない。

三菱化学は鹿島第一エチレン(390千トン)を2014年の定期修理をもって停止(第二エチレン能力を50千トン増)するが、それ以外のエチレン停止はない。
水島と千葉でエチレン統合はあるが能力減は当面の計画に入っていない。

エチレンを止めるべきだと考えても、止められないというのが実態だろう。
石化に代わって雇用を続ける事業がないからだ。

上記の6重苦の⑤労働規制は、通常は「製造業の派遣禁止」などとされるが、最大の問題は
「解雇権濫用法理」である。

日本をダメにした10の裁判」では第一に解雇権濫用法理を挙げている。

東洋酸素事件の東京高裁判決(1979)では整理解雇の要件は以下の通り。
  ・事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない場合であること
  ・従業員を他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がないこと
  ・具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること
  その後の判例では「労働組合との協議」が条件に加えられた。

具体的には、このままでは倒産もありうるというような状況でないと、解雇が認められない。
この結果、エチレンを動かし続けることとなる。

しかし、いつまでもこの状態を続けるわけにはいかないだろう。

某社の社長の発言が伝えられている。

需要が落ちているというが、その需要だって構造的な要因によるものか、景気循環によるものか、よく見極める必要がある」
「エチレンだけ見て、500万トンにしようというのはあまりにも短絡的だ。誘導品までみて、国際競争力のあるコンビナートにしていかないと意味がない」

本音ではないと思われるが、今や、そんなことを言っている時期ではない。
 

このなかで、住友化学は状況変化に適応するよう、明確な方針で進めているように思われる。

同社の十倉社長は11月21日の記者会見で石油化学事業の今後の展開について以下のように述べている。

サウジのペトロ・ラービグ社が第2期計画段階に入る。

今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とする。
千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していきたい。

    同社の株主向け中間決算報告から

ーーー


石油化学プラントでの大事故が相次いでいる。

古くは2006年の信越化学直江津工場、2007年の三菱化学鹿島事業所の事故があるが、この1年で3つの大きな事故があった。

2007/4/16 信越化学 爆発事故のその後

2008/3/17 三菱化学鹿島事業所火災事故 事故報告書

ーーー

2011/4/11  東ソー、南陽事業所爆発事故の調査報告書を発表

2012/9/11   三井化学、岩国大竹工場の事故のその後  

2012/10/1    日本触媒・姫路製造所で爆発事故

東ソーの場合は緊急停止の後、プラント点検のための液抜き作業中にガス漏れが起こり爆発したが、反応に対する知識が不十分で誤操作を行ったこと、異常時の対応マニュアルが十分でなかったこと等が指摘されている。

三井化学の場合はプラントの緊急停止の際に取った操作が関係したが、問題点についての認識が不足しており、またマニュアルにも記載が無かった。

日本触媒については事故原因等は調査中で未報告だが、タンク内の温度管理は管制室での監視ではなく、タンクに付いている温度計を目視するシステムであったとされている。
また、事故当時の報道では、出入りの業者は火災等の場合、消防への直接通報を禁止されていたという。

これらから見えることは、これら事故はいつ起こっても不思議でないということで、恐ろしいことである。

石化協では事故を受け、企業トップによる保安トップ懇談会を開催しているが、以下のような発言があったとされる。

トラブル対応経験の減少、自動化・デジタル化による現場感覚の希薄化、コミュニケーション機会の減少、プロセス全体の把握・理解の不足が問題である。
対策は従業員教育がポイントになる。ベテランOBを活用した伝承教育が不可欠。
トップとして保安・安全への方針を定め、確実に実行し評価、これを最先端まで浸透させることが重要だ。

世代交代で、マニュアル通りに運転するだけで、各プロセスでの反応の意味や潜在的な危険性を認識せず、異常事態時に対応が出来ないというのである。

トップからこのような発言があるのは驚く。

もう一つは、コスト認識のためか、いまだに安全軽視のケースが見られる。

日本触媒のケースは、報道が事実なら、これに当て嵌まる。

JX日鉱日石エネルギー の水島製油所では虚偽の保安検査記録のケースがあり、コスモ石油千葉でも市原市消防局の特別検査で消防用の屋外給水栓や、石油製造施設の排水管の老朽化など多数の不備が見つかり、改善命令を受けている。

国内の石油化学事業の採算が極めて悪化し、今後の見通しが暗いなか、これまで以上の十分な安全対策が取られるのか、懸念される。

更に、事故による工場休止で安全供給の問題も出てくる。今回にも供給不安が懸念される製品もあった。
他社製品に差をつける 特殊品の場合、需要家側が採用をためらうケースも出てくると思われ、供給責任体制も求められる。

アップルは、シャープのオンリーワン技術の新型液晶IGZOを新型の「iPad」で採用したが、これにはシャープ製のIGZOと韓国サムスン電子などのアモルファス液晶という2種類のパネルが混在しており、それが消費者に分からないよう、性能で勝るIGZOの解像度をわざと落としているという。
シャープに何かがあっても供給が止まらないよう、また価格を競わせるためという。

ーーー

日本の石油化学は7重苦という大きなハンディを持つが、なくなることはない。

アルミニウムの場合は電力料の高騰で競争力を失った結果、1978年に6社で「164万体制」であったのが、現在は日本軽金属・蒲原工場の7千トンが動いているだけである。

アルミの場合は全くのコモディティで品質に差がなく、安価な輸出品に対抗できなかった。

石油化学製品の場合も、モノマーのようにスペックが合えばよいような製品は既に輸入品に置き換わっている。今後も海外品の品質向上と価格差による置き換えは進む。

メタノールの場合、1970年代には東西の共同生産会社(東日本メタノール、西日本メタノール)、三菱ガス化学、三井東圧化学、協和ガス化学の5社体制であったが、安値海外品流入で相次ぎ操業停止、1995年に最後の国産メーカー・三菱ガス化学が新潟 264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。 

しかし、多くのポリマー製品は需要家のニーズに合わせた特殊品で、少数グレードを大量生産する輸入品に置き換えるのは難しい。

日本のメーカーはカタログに載った製品を供給するだけではない。

需要家の求める「機能」の充足のため、製法や触媒、添加剤の改良を行い、コンパウンド化するなどで、需要家の製品をより良くするための改良材料、新材料をつくり、需要家に提案を行っている。
多くの企業が開発センターを有し、例えば自動車バンパーの衝突試験でバンパー材料の改良検討を行うことまで行っている。
更には、これまでに無かった新しい機能を持つ材料を供給することで、新しい需要を創出している。

住友化学のように海外展開を図る場合も、日本のマザー工場での開発改良が役に立つ。

このやり方は日本独自のものであった。
その後、GE Plasticsが米国にこの方式を導入、次第に広がった。
(日本と異なり、追加費用は価格に上乗せしている)

しかし、頻繁なグレード切り替えによる多数グレード・少量生産で、Just in timeで供給するというのは、本来の装置産業製品に合ったものではなく、輸入品が入る可能性は少ない。

この「非合理性」で、逆に日本品が生き残ることが可能となる。

楠木 建「ストーリーとしての競争戦略」は、他社のようにハブ空港を使わない SouthWest 航空や大量の在庫を持つAmazon などを取り上げ、 「部分の一見不合理」が全体としての合理的戦略になるとしている。

但し、現在のような過当競争体制の下では、これらが無料のサービスと化している。
メーカー数を減らして追加費用を求償出来る体制にすることが必要である。

参考 2012/12/7   ベンゼン価格高騰 ー 市況ベース価格体系とコストベース価格体系 後半部分




BPは12月19日、海南島沖の崖城(Yacheng) ガス田の34.3%の権益をKuwait Foreign Petroleum Exploration Company に308百万ドルで売却することで合意したと発表した。

これで2010年以降の資産売却は378億ドルとなる。(過去の資産売却


中国は1980年代に初めて石油・ガス田を外資に開放したが、後にBPに統合されたARCOが1982年に南シナ海の鉱区を取得、1983年にYachengガス田を発見した。1996年に生産を開始している。

中国の最大級の海底ガス田(深さ90m)で、世界第二の長さの780kmの海底パイプラインで香港の青山發電廠(Castle Peak Company)に、また60kmの海底パイプラインで海南島のFuel & Chemical Corporation (CNOOC子会社)に天然ガスを供給している。

 

現在の権益は、 BP 34.3%、CNOOC 51%、Kuwait Foreign Petroleum Exploration 14.7%で、売却により、CNOOC 51%、Kuwait Foreign Petroleum Exploration 49%となる。

なお、操業は2004年1月にBPからCNOOCに移管された。

ーーー

BPは南シナ海の2つの鉱区で現在探査を行っている。

1) 42/05鉱区(油田)

2005年と2006年に, CNOOCはDevonとの間で、42/05、64/18、53/30の3鉱区について生産物分与契約を結んだ。
Devonは3鉱区の権利100%を取得した。
CNOOCは生産開始時に51%参加するオプションを有する。

Devonは又、15/34鉱区(Panyu Project) の24.5%の権益を持つ。
同社が1998年に発見した。

その後、Devon は2010年9月にこの3鉱区について、Chevron、BPと契約を締結し、CNOOCがこれを承認した。 

探査段階において
42/05鉱区では、Chevronに59.18%、BPに40.82%を売却、
64/18、53/30の2鉱区では、Chevronに100%を売却、
Chevronは3鉱区でオペレーターとなる。

なお、CNOOCは生産開始時点で最大51%の参加を行う権利を有する。

2) 43/11鉱区(天然ガス)

BPは2012年2月、商務部から、CNOOCとAnadarko Petroleumとともに43/11鉱区で天然ガスの探査を行うことの承認を得た。



探査段階では、BPは40.82%、Anadarkoは50%、CNOOCは9.18%の権益を持つ。
生産開始後は、CNOOCが55.5%となり、BPは20%、Anadarkoは24.5%となる。





中国の雑誌「新周刊」が「今年の漢字」と「2012流行語10選」を発表した。


今年の漢字には「微」が選ばれた。

日本の「今年の漢字」は金環日触や金メダルの「金」
シンガポール
華字紙・聯合早報は、政府高官、ビジネス関係者、教育関係者などに相次いで性的なスキャンダルが発覚したということで、色情を表す「色」

「微」を選んだ理由は以下の通り。
 ・中国版ツイッター「博」(ミニブログ)のユーザー数が3億6千万人となり、世論を形成
 ・インスタントメッセージQQのスマートフォン用アプリ「信」のユーザーが2億人超え
 ・ミニブログ「公益」で義捐金送付
 ・北京の豪雨被害の際のボランティアの「言」(簡単な言葉)
  
我们不要钱,我们是来救人的お金は要らない。助けに来た
 ・
背が低く容姿も劣り、しかも収入の低い負け組男性力薄」のことを表す言葉「吊絲」が流行

2012流行語10選」は以下の通り。

1. 「莫言」 ノーベル文学賞獲得
2. 「十八大」 中国共産党第18回全国代表大会
3 「釣魚島」 尖閣諸島問題
4 你幸福吗 「幸せですか?」中国国営中央テレビが実施した街頭インタビューで話題に
5 「香港」 Made in Hong Kong :中国本土の妊婦による永住権狙いの「越境出産
6 「北京暴雨」 7月の豪雨
7 「舌尖上的中国」 舌で味わう中国)食をテーマとしたドキュメンタリー番組
8 「中国好声音」 人気オーディション番組:世界15か国以上で広がる「The Voice」の中国版
 
4人の音楽人が各々で挑戦者を"弟子"にとり、4組に分かれて歌唱バトル
9. 「2012」 マヤの人類滅亡説(2012/12/23)
10 江南style」 韓国の歌手PSYの6番目アルバム『6甲』のタイトル曲
PSYは中国のミニブログ大手「新浪微博」の「今年最も話題になった有名人」で1位に選ばれた。

 




豪州Ichthys (イクシス)LNGプロジェクトのオペレーターの国際石油開発帝石(INPEX)は12月18日、国内外の輸出信用機関8行および市中銀行24行 (邦銀は7行)等との間で、総額200億米ドルを限度とするプロジェクト・ファイナンスに係る融資関連契約に調印した。
国際金融市場において過去に組成されたプロジェクト・ファイナンスの中でも最大規模となる。

本プロジェクトの総投資額は340億米ドル。
国際石開帝石では、これでほぼ資金調達のメドはたったとしている。

Ichthys LNGプロジェクトは、日本企業がオペレーターとして主導する初の大型LNGプロジェクト。
産出される天然ガスを、Darwinに建設する陸上プラントで液化し、年間840万トンのLNGと年間約160万トンのLPGとして生産・出荷する。
また、洋上貯油・出荷施設(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading)等から日量約10万バレル(ピーク時)のコンデンセートを生産・出荷する。

LNGについては既に2017年から15年間の長期LNG売買契約を締結しており、7割相当が日本に仕向けられる。

権益比率は以下の通り。
各社は開発鉱区および探鉱鉱区の権益ならびに下流事業会社イクシスLNG社(液化・販売等を行う事業会社)の株式を取得する。

INPEX 66.070 %
Total 30.000  
東京ガス 1.575  
大阪ガス 1.200  
東邦ガス 0.420  
中部電力 0.735  

詳細は 2012/1/16 国際石油開発帝石、豪州イクシスLNGプロジェクト 最終投資決定

プロジェクト・ファイナンスはレンダーおよびプロジェクト参加会社からの融資により構成される。

プロジェクト・ファイナンスはプロジェクトの将来キャッシュフローを返済原資とする資金調達手段の一つで、今回の場合、借入契約上の借入人は下流事業会社であるイクシスLNG社となる。

プロジェクト・ファイナンスの内訳:

輸出信用機関 直接融資  国際協力銀行(JBIC)
韓国輸出入銀行、豪州輸出金融保険公団(EFIC))
50億米ドル
8億米ドル
国内外の市中銀行   輸出信用機関 保証・保険付融資
輸出信用機関 保証・保険無し融資
54億米ドル
48億米ドル
レンダーによる融資合計 160億米ドル
プロジェクト参加会社による融資 40億米ドル
プロジェクト・ファイナンス合計 200億米ドル


日本の市中銀行では、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、新生銀行の7行から融資を受ける。

市中銀行の54億米ドル分の融資については、日本貿易保険(27.5億米ドル)、韓国輸出入銀行、韓国貿易保険公社、蘭Atradius、独Euler Hermes、仏Coface貿易保険会社による保険・保証が付保されている。

ロジェクト参加会社は権益比率に応じてプロジェクトの完工までの債務保証をレンダーに差し入れる。
このうち、INPEX保証負担の一部として、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が20億米ドルを上限に連帯保証する。

 

 

三井物産は12月17日、フランスの電気・ガス事業者のGDF SUEZの子会社GDF Suez Canadaがカナダで開発・運営する再生可能エネルギー発電事業に出資参画することで合意したと発表した。

三井物産は投資子会社MIT Renewables Inc.を設立、本事業の30%持分を取得した。

GDF SUEZはカナダのインフラファンドのFiera Axium Infrastructure が代表するコンソーシアムにも持分30%を売却しており、今後、GDF SUEZ、三井物産、Fiera Axiumの3社共同で運営する。

GDF Suez Canada

  40%

三井物産   30%
Fiera Axium  30%

GDF SUEZ では持分60%の売却額を20億カナダドル超としている。

本事業は、カナダにて風力発電と太陽光発電を行うIPP(独立系発電)事業で、各州の州営の電力会社との長期売電契約に基づき電力を販売する 。

現在開発・建設中のものを加えると、発電容量は730MWになる。

本事業の事業規模は20億カナダドル超となる。

資産名 所在州   運転
開始
発電
容量
持分 備考
Norway プリンス エドワード島 風力 2007 9MW 100% 商業運転中


 合計363MW
SOP オンタリオ州 2008 40MW 100%
West Cape プリンス エドワード島 2009 99MW 100%
Caribou ニューブランズウィック州 2009 99MW 100%
Harrow オンタリオ州 2010 40MW 100%
PAR オンタリオ州 2011 49MW 100%
Plateau オンタリオ州 2012 27MW 100%
ELSC オンタリオ州 2013(予) 99MW 100% 建設中
Erieau (#)  オンタリオ州 2013(予) 99MW 100%
Cape Scott(#) ブリティッシュコロンビア州 2013(予) 99MW 100%
Cape Scott拡張(#) ブリティッシュコロンビア州 2014(予) 50MW 100% 開発中
Brockville(#) ブリティッシュコロンビア州 太陽光 2013(予) 10MW 60%
(*)
建設中
Beckwith(#) ブリティッシュコロンビア州 2014(予) 10MW 2013年2Q建設開始
合計 730MW    

* 太陽光発電の2計画は、商業運転開始時に少数株主保有持分(40%)を買取予定

# 国際協力銀行及び市中銀行3行とプロジェクトファイナンスに係る融資契約を締結
   GDF SUEZ 発表ではこれら各行にManufacturers Life Insurance を加え、合計 11億カナダドルのproject financeとしている。

三井物産の保有する発電容量は開発・建設中案件を含め 5,764MWとな る。
このうち再生可能エネルギーによる発電事業は 384MWで、全体の約7%を占める。

ーーー

GDF SUEZはフランスに基盤を置く電気事業者・ガス事業者で、電力・ガスの供給で世界2位の売上高を誇る。

2008年7月にフランスガス公社Gaz de France(GDF)と水道・電力・ガス事業SUEZ S.A.が合併して設立された。
SUEZの水道事業は分離され SUEZ ENVIRONNEMENTとなった。(GDF SUEZは約35%保有)

同社は北米(米国、カナダ、メキシコ)ではGDF SUEZ Energy North America を設立、発電、コジェネ、天然ガスとLNGの流通・販売、エネルギー小売り等の事業を行っている。

能力は発電 13,000MW以上、蒸気 毎時600万ポンド、冷水 毎時38千トン。
このうち、再生可能エネルギー(風力、バイオマス、水力等)は668MW。


GDF Suez Canadaは
GDF SUEZ Energy North Americaの子会社。





EUの欧州議会は12月11日、単一特許制度を承認した。特許取得の費用軽減や手続き簡略化が狙い。

30年以上にわたる議論の末の合意で、2014年に導入するが、 イタリアとスペインは参加を見合わせ、両国を除く25カ国での発足となる。

発明者は欧州特許庁(European Patent Organisation)に申請し、認められると参加25か国で有効となる。

英語、ドイツ語、フランス語のいずれかで申請する。多国語の申請の場合、3か国語のいずれかの翻訳を付ける。

イタリアとスペインは、両国語が採用されなかったことに抗議し、参加を見合わせた。施行までに参加する可能性はある。

単一特許制度は2014年1月1日に発効する。

統一特許裁判所は妥協の産物として、本部をパリに、支所をロンドンとミュンヘンに置くこととなった。

EUの責任者は、「イノベーションのためのR&Dと投資を促進し、EUの成長を高める助けとなる」、「知的財産は国境で止まってはいけない。この決定はEU経済、とりわけEUの中小企業にとってgood news である」としている。
中国人から、「中国は単一特許なしには単一市場にはならなかっただろう」と言われたと付言している。

現在、EUでは、国別特許と欧州特許庁で取得する各国共通の欧州特許がある。

但し、欧州特許は 欧州特許庁で審査して特許査定が出れば、各国言語に翻訳して各国で手続きする必要があり、欧州全域で権利化するには欧州特許庁の費用とは別に多額の費用がかかっていた。
また、成立した特許権の効力は各国の国内法令で定めるため、国によって異なり、また、成立した特許権の有効性については各国毎に争われる。(このため欧州特許庁が付与する特許は、「国内特許の束」と言われる。)

新しい単一特許制度では、欧州特許を25カ国で登録する手続きを一本化するほか、特許専門の裁判所を設け、EU各国の訴訟を集約する。

EUでは、典型的な例で、これまでの費用 36,000ユーロ(46,800ドル)が4,725ユーロ(6,140ドル)になるとし、米国と日本との競争力が高まるとしている。(AP通信によると、米国は2,300ドル、中国は800ドル)

 

単一特許制度についてのQ&A
   http://www.europarl.europa.eu/news/en/pressroom/content/20121205BKG57397/html/The-new-EU-unitary-patent-QA

 



 

EUとシンガポールは12月16日、自由貿易協定 (FTA) 締結で合意したと発表した。
EUにとってはアジアでは2011年7月発効の韓国に次ぐ2番目のFTAとなる。

EUはシンガポールからの全ての輸入品を5年間でゼロにする。協定発効時に関税品目の80%の品目の関税を撤廃する。
シンガポール通産省(Ministry of Trade and Industry)は、特にシンガポールのエレクトロニクス、医薬、化学品、加工食品の輸出業者は関税撤廃で恩恵を受けるとしている。

シンガポールはEUからの輸入品全てについて直ちに関税撤廃する。
EU当局者によると、FTA締結によって、シンガポールがEUの基準を受け入れることから、自動車の重複検査など非関税障壁が取り除かれることになる。

これに加え、シンガポールの銀行・金融サービスセクターや政府調達市場が一段と開放される。

EUにとってシンガポールは世界で13番目の貿易相手で、ASEAN各国では最大の取引相手で、2009年から2011年で財とサービスの取引は40%増加している。 (EUの貿易黒字の大部分は自動車輸出)

EU加盟各国は2009年12月に、欧州委員会にASEANの個別国とFTA締結に向けた交渉を開始する許可を与えた。

それまでは、FTA交渉を地域ベースで進める方針をとっていたが、十分な進展が見られなかったことから、個々の加盟国と個別に交渉を開始する方針に切り替え た。

第一歩として2010年3月に最も重要な貿易パートナーであるシンガポールとの交渉を開始した。

シンガポールのほかに、現在、マレーシアとベトナムと交渉を行っている。
EUは現在も、EU-ASEAN FTA (region-to-region agreement) を長期目標としている。

ーーー

シンガポールはこれまでに18のFTAを締結している。

1993/1  ASEAN
2001/1  New Zealand
2002/11  Japan
2003/1  (EFTA) Swiss、Liechtenstein、Norway、Iceland
2003/7  Australia
2004/1  USA
2005/7  China 〔ASEANとして〕 (サービスは2007/7)
2005/8  Jordan
2005/8  India
2008/3  S. Korea
2006/5  (TPSEP) Brunei、Chile、New Zealand
2006/7  Panama
2007/6  Korea〔ASEANとして〕(財のみ)
2009/1  China
2009/1  Japan〔ASEANとして〕
2009/8  Peru
2010/1  India〔ASEANとして〕
2010/1  Australia-New Zealand 〔ASEANとして〕


TPSEP(環太平洋戦略的経済連携協定)はSingaporeとNew Zealandの自由貿易協定にチリとブルネイを加えたもので、一定期間に例外品目なしで関税100%自由化を目指すなど、「質の高いFTA」と言われる。
その後、TPP (Trans Pacific Partnership)と改称され、現在拡大交渉が行われている。

 

 

 


BHP Billitonは12月12日、PetroChinaに豪州のBrowse LNG事業の権益を売却する契約を締結したと発表した。

同社の保有する権益(East Browse JVの8.33%、West Browse JVの20%)全てを16.3億米ドルで売却する。

なお、Browse LNG事業の他の参加者はPetroChinaに対抗して買収する権利を有しており、一定期間内に買収を提案することが出来る。

BHP Billiton は非戦略的資産を売却するものとしている。

中国の国有エネルギー各社は将来のエネルギー供給源確保のため、海外の石油およびガス資産を積極的に取得している。
2005 CNOOC 米 Unocal 〔米議会の反発で断念〕 (185億ドル)
CNOOC カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69% 1.5億加ドル
Sinopec Northern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% を
Synenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
 
2008 CNOOC ノルウェー海底石油開発 Awilco Offshore  約25億ドル
2009 Sinopec スイス Addax Petroleum 約75.6億米ドル
PetroChina カナダのAthabasca Oil Sandsの事業に参加 19億加ドル
2010 CNPC Australia Arrow Energy Ltd.
(Shell との50/50JV=CS CSG (Australia) Pty Ltd.)
35億豪ドル
Sinopec Repsol Brazilに40%出資 71億ドル
Sinopec カナダのオイルサンド事業会社 Syncrude Canadaの9.03% 46.5億米ドル
CNOOC テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加   Niobrara shaleを追加  
2011 Sinopec ポルトガルのGalp Energiaのブラジル子会社の30% 約52億ドル
PetroChina カナダの天然ガス権益取得 →交渉中止  
CNOOC カナダのオイルサンド企業OPTI Canadaを買収 21億米ドル
2012 PetroChina カナダのオイルサンド権益を100%にアップ  
Sinopec 米のシェールガスの権益取得 22億ドル
PetroChina カナダと米国での非在来型ガス開発での提携強化   
CNOOC Nexen Inc.
 カナダ産業相は12月7日、買収認可を発表した。
151億ドル
Sinopec Talisman UKの49% 15億ドル
Sinopec Repsolからエクアドルの石油権益の一部 明らかにせず

 ーーー

Browse LNG事業は豪西オーストラリア州沖合のBrowseコンデンセート田で生産する天然ガス・コンデンセートをKimberley地区に輸送し、精製・液化・出荷を行う大規模な開発計画で、Woodsideの子会社がオペレーターを務めている。

LNGの生産は年間1,200万トンの予定。

三井物産と三菱商事は2012年4月、両社が折半出資する豪Japan Australia LNG (MIMI) Pty Ltdを通じて、Woodsideの子会社Woodside Browse と権益売買契約を締結した。
Woodside Browseの持つ権益46%のうち、14.7%を20億ドルで買収する。

2012/5/8  三井物産と三菱商事、豪ブラウズLNGプロジェクトに参画

本事業は当初、Woodside、Chevron、Shell、BHP Billiton、BPの5社の事業であった。

2012年4月、Woodsideが一部を三井物産・三菱商事に20億ドルで売却した。

Chevronは2012年8月、同社の持分全てを、Shellの持つ豪州北西部のWheatstoneのClio-Acmeガス田の1
/3の権益と交換した。
Shellはこのほかに現金450百万ドルを支払う。
ChevronはClio-Acmeガス田の権益を100%保有することとなり、
同社主導のWheatstone計画の開発を促進する。

今回、BHP Billitonが全ての権益をPetroChinaに売却する。

Browse LNG事業の現在の権益関係は以下の通り。

  East JV West JV 合計持分
Woodside 34% 17% 31.3%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.7%
Chevron  (16.67%) (20%) (17.2%)
Shell 25% 35% 26.6%
BHP Billiton  (8.33%) (20%) (10.2%)
PetroChina 8.33% 20% 10.2%
BP 16.67% 20% 17.2%
合計 100% 100% 100%

 

 

 

米国のヘッジファンドが日本の大人用紙おむつに関心を示している。

Financial Timesが11月29日付で伝え、人民網日本語版が「日本経済 紙おむつのターニングポイントが到来か」でこれを引用している。

Financial Times:
何故ヘッジファンドマネジャーが日本の大人用紙おむつに関心を持つのか? 
それは多くのヘッジファンドが次の稼ぎどころと見る日本の国債バブル破裂の手掛かりになるからだ。

日本では本年に大人用おむつの販売が乳幼児用を初めて上回る。
空売りを狙う業者は、これを数か月後に起こると予想する危機の原因の一つと見ている。

Hayman Capital Managementの創始者のKyle Bassが需要家へのレターで、これを取り上げ、日本国債は暴落するので売りだとしている。

大人用紙おむつが乳幼児用を上回るということは
、介護を必要とする高齢者数が新生児数を上回るということで、日本の社会保障のコストは今後どんどん増えていき、歳入不足のなかで国債を増やしてきた報いを受けることになるとする。

別のヘッジファンドマネジャーは、衆院選が変化のきっかけになると見ている。

安倍晋三が首相になるのは確実だが、彼は物価上昇率2%を目指して日銀に無制限の金融緩和を求めている。
そうなれば、国債利回りは2%に上がり、国債の大幅値下がりで空売り業者は莫大な利益を得るとしている。

Kyle Bassも同じことを述べている。
「2011年度の日本の税収はざっと41兆円。これに対して国債の利払いが11兆円 。日本国債の金利が今の水準より1%上がるだけで、その利払いは20兆円以上で、税収の半分を金利に取られてしまうことを意味する。日本の財政が持続できなくなり、実質的に破綻することもあり得る。」

* この問題については、日銀白川総裁の講演「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」が分かり易い。

ーーー

人民網は、日本と中国を比較して、以下の通り結論付けている。

20数年間に渡る低成長と高齢化により、日本が高度成長期に蓄えた優勢がほぼ消耗し尽くされており、米国式の「財政の崖」が間近に迫っている。

中国は安価な人件費による優勢が失われているが、これは実際には低所得層の所得増、中国の内需成長を促すことになる。内需主導型の経済成長方式は、産業構造のアップグレードを促し「中等収入の罠」を乗り越えるだろう。その際に、中国に対して空売りを仕掛ける身の程知らずはいなくなるに違いない。

ーーー

紙おむつなど衛生用品を扱うメーカーでつくる日本衛生材料工業連合会は、大人用紙おむつが数年後に乳幼児用を上回るとの予測を明らかにした。

少子高齢化により、2011年の生産数量は大人用が288千トンとなり、296千トンの乳幼児用に肉薄した。
乳幼児用が停滞しているのに対し、大人用は安定的に伸長。今後も高齢化が進むことから、日衛連では2015年までに大人用は生産数量で現在比15%増となるとみる。

政策研究大学大学院の松谷明彦・名誉教授によると、日本の今後の少子高齢化と人口減少の割合は他の諸国よりもはるかに大きい。

これは過去の2つの政策(当時は止むを得なかった)による人口構造の歪みによるもので、対策はない。

第一は戦前(1920~40年前半)の「産めよ増やせよ」政策で、出生数が急増している。
この年代は現在70歳~90歳で、今後人口急減の原因となる。

第二は1948年の優生保護法である。
1947~49年に復員や外地からの引き揚げ等で第一次ベビーブームが起こった。
食料不足のなか、餓死を避けるため優生保護法がつくられた。
産児制限により、年間270万人の出生数が160万人にまで減少した。

この結果、次の世代、その次の世代の出生数が激減することとなった。


        http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf
    * 特殊出生率は一人の女性が一生に産む子供の平均数
 

松谷名誉教授は、現行の年金制度などは継続不可能で、少子高齢化・人口減を前提にした別の社会保障政策を検討すべきだとする。

例えば、100年債を出して、国有地に100年住宅を建設、住宅コストを大幅に下げるなど。





城南信用金庫は11月9日、加藤寛慶應義塾大学名誉教授を名誉所長に迎え、城南総合研究所を設立した。

我が国の抱える諸問題について、グローバル資本主義などのお金の弊害を是正するために生まれた協同組織金融機関である信用金庫という観点から、独自な分析、提言をしていくとしている。

城南信金は原発事故を受け、昨年4月に脱原発を宣言、「原発に頼らない安心できる社会」を目指す方針を掲げる。

国民の間では、原発を止めると、電力が足りなくなったり、電気代が大幅に上がってしまうという「二つの懸念」があり、原発に関する正確な情報が行き届いていないとみており、主に原発のコストと電力不足をテーマに、専門家によるさまざまな切り口での分析を分かりやすい言葉で世の中に広げる「媒体」を目指す。

城南信金によると、総合研究所の設立についての東京新聞の記事(11月9日)を見て、小泉元首相から祝福の電話があったという。
小泉元首相は4月の城南信金の講演会でも、「原発を推進していくのは無理。原発の依存度を下げていくのが、これから取るべき方針」と訴えたという。

城南総合研究所設立に合わせ、第一弾レポート「原発を稼働すれば、電気料金は大幅に上がる?」を発表した。
「原発は即時廃止すべき、原発ゼロは国民経済の新たな成長発展につながる」という見解、メッセージを発信するもの。

加藤名誉所長もメッセージを寄せている。

報告は下記のブログに転載されている。
 http://blog.goo.ne.jp/coccolith/e/f46d08cbdd2365115de1415e4a2b800e

レポート要旨

1)原発がなくても、電気は十分に足りている

関電は電力不足を理由に大飯原発を再稼働させたが、同時に火力発電を停止した。
原発はなくても電力は十分だった。

家庭や企業で省エネ設備の買替えが進めば、消費電力の減少につながる。
猛暑の夏の午後のピーク時に電気を節約するだけで、電力には大幅な余裕が生じる。

大企業などでは、火力発電設備をはじめ、太陽光や風力などの新しい発電設備の増強に取組んでおり、我が国全体では、この1年間で原発約6基分の発電能力が増加している。また、東京都などが天然ガス発電事業の支援を表明するなど、今後とも電気は十分足りる見通しだ。

2) 原発を稼働し続けると、かえって電気料金は大幅に上がるはず

経産省は、1kwhの発電コストは、原発5~6円、火力7~8円、水力8~13円とする。
これには原発のある地域への巨額の交付金が含まれないなど、不正確な計算である。

立命館大学の大島堅一教授の試算では、原発10.25円、火力9.91円、水力7.19円となり、原発は最も割高。

更に、使用済み核燃料の問題がある。原発と六ケ所村の燃料プールに大量に保管され、数年で保管場所がなくなる。

使用済核燃料の処理ができないということは、保管費用・処理費用は無限大にのぼることになる。
原発を稼働し続ける場合、巨額の費用を計上することになり、電気料金を大幅に引上げなければならなくなる。

結論

原発のコストは恐ろしく高価で、将来大幅な電気料金の値上げにつながる発電方法である。
一刻も早く、とりかえしのつかない事故が再び起こる前に原発を廃炉にすることが、経済的にも正しい判断と考える。

加藤名誉所長メッセージ

 ただちに原発をゼロに!
  国民の手に安全な電気を取り戻し、日本経済の活性化を実現しましょう!!

原発はあまりにも危険で、コストが高い。ただちにゼロにすべき。火力発電だけで電力は十分に供給可能。

燃料費がかかるというが、日本の経常収支は黒字。仮に赤字になっても(円安になるので)大丈夫。円安になれば経済の活性化につながる。

9電力体制は、今では政府と癒着し、巨大な利権団体をつくり、マスコミ、国家をあやつるなどの弊害が明らか。

太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの発電技術や節電技術、蓄電池などの技術や水素を用いた新たな配送方法などの技術革新で、原発依存の電力会社体制も近い将来時代遅れになり消滅する。

このまま原発を再稼働しても、日本は活性化しない。脱原発に舵を切れば経済の拡大要因になる。
脱原発は雇用拡大につながる。

直ちに原発をゼロにすべきだ。国鉄改革のように電力独占体制にメスを入れ、真の自由化を実現し、国民の手に安全な電気を取り戻し、日本経済の活性化を実現しよう。





英国のStarbucks は12月6日、2013~2014年に利益があるかどうかに関係なく、「法の求めを超えて」、かなりの額の法人税を支払うことで英当局と合意したことを明らかにした。
同社の計算では2年で2千万ポンド(約26億円)程度という。

この問題は、10月15日付でロイターが「Special Report: How Starbucks avoids UK taxes」で以下の通り報じたことから起こった。

Starbucksは投資家に対しては英国で儲かっているとしているが、継続して赤字決算となっている。
これは租税回避による。

同社は1998年に英国進出して以来、30英億ポンド(3900億円)以上の売り上げがあり、735店を持つが、この間15年間で一度だけ法人税を860万ポンド(11億円)支払っただけである。
この3年以上にわたり、同社は英国で13億英ポンドの売り上げがありながら、赤字の報告で、法人税を一切払っていない。

一方、McDonald'sは英国での36億英ポンドの売り上げで8千万英ポンド以上の法人税を払っている。
Kentucky Fried Chickenも11億英ポンドの売り上げで3600万英ポンドの税金を払っている。

Starbucksはこの12年にわたり、投資家への報告では英国事業は儲かっているとしている。
2011年のannual reportでは、「特にカナダ、日本、英国、中国が海外事業の売上高と収益の大きな部分を占めている」としている。

これが英国の議会で大問題となり、国民の間でStarbucksのボイコット運動が広がった。

議会の委員会は、Starbucks、Google、Amazonのようなグローバル企業が、英国で多くの売り上げがありながら、ほとんど法人税を払っていないと批判した。

財務相は国税局に対し、租税回避を調査するため、特別予算(2年間)を与えた。


StarbucksのCFO はその後、グループ内の取引に関する2つの要素が関わっていることを明らかにした。

1)知的財産に対するロイヤリティ

Starbucks の英国や他の海外子会社は商標やノウハウなどの知的財産についてロイヤリティを支払っている。
同社の場合はこれが売上高の6%になっており、英国の所得から控除される。

McDonaldも同様だが、4.5%となっている。Kentucky Fried Chickenはロイヤリティを払っていないとしている。

Starbucks CFO の証言では、Starbucksの欧州子会社のロイヤリティは欧州本部のアムステルダムのStarbucks Coffeeに支払われるが、これについてStarbucksはオランダ政府との間の交渉で税務上特別扱いすることになっている。

移転価格税制ではグループ内取引では市価基準(arm's length principle)での取引が求められるが、Starbucksではこの原則を守っていると主張している。
しかし、今回の取り決めで、Starbucksは今後、ロイヤリティを損金として落とさないことにしたとされる。

2)コーヒー豆の取引

英国子会社は原料のコーヒー豆をスイスのStarbucks Coffee Trading から購入し、オランダの別の子会社でローストしている。

英国子会社では、スイスとオランダの当局から、移転価格税制に基づき、利益を両国の子会社に落とすよう求められているとしている。
その後、Starbucksはスイスに20%の口銭を落としたこと、スイスでの税率は英国の半分の約12%であることを明らかにした。

なお、英国Starbucksによると、2009年と2010年に移転価格の調査を受けたが、問題にはならなかったとしている。

3)このほかにグループ内借入金の利用の可能性がある。

英国Starbucksは資金を借り入れに頼っており、昨年にグループ会社に200万英ポンドの金利(利率Libor plus 4%ポイント)を払っている。
(英国McDonald'sのグループ会社への金利支払いは100万英ポンドで利率はLibor plus 2%ポイント)。

 ーーー

今回の解決策はおかしい。

Starbncksのやり方が英国の税法上、違法であれば、本来の税金を徴収すればよい。
税法の抜け道を狙ったものなら、相応の対策を取ればよい。

そうでなければ、一般国民の感情とは切り離した措置が必要であ り、税務当局はきちんと国民に説明するべきである。

日本でも、 銀行が大儲けしていながら税金を払っていなかっとことや、子会社からの受取配当が無税であることなども、一般国民の感情からの批判はあるが、前者は過去の損失の繰り延べであり、後者は二重課税排除の考えに基づいたものである。

異なる国にある関係会社間の取引については、移転価格税制があり、恣意的な取引で利益を不正に移管している場合には、その取引を市価基準(arm's length principle)に置き換えて計算された利益について税金を計算する。

双方の国で税務当局の認識が異なった場合には、二重課税の排除を求め、両国の税務当局の相互協議を求める道が開かれている。

今回の場合、高いロイヤリティを支払ったために継続的に赤字になるということであれば、ブランド名その他の知的財産が十分な効果を生まなかったということで、そのロイヤリティが高過ぎるということとなり、その分を否認すればよい。

それをせずに、どんぶり勘定で、しかも2年だけ、法人税を払うというのは理解しがたい。
その間に別の理由で大きな損失が出た場合でも、それに無関係に払うのであろうか。
2年経過後はどうするのであろうか。正当な額のロイヤリティも、損金算入をしないのであろうか。

これが前例になれば、他の企業も、税務上では正当なやり方をしていても、国民感情を勘案して、不当な税金を払わされることになりかねない。法治国家のやることではない。

Starbucks側も、税法上払う必要のない税金を払うと、株主から訴えられるリスクもあるのではないだろうか。

ーーー

移転価格が問題となるのは、国により法人税率が異なるためである。
全体の法人税支払いを減らすために、利益を税率の安い国に不当に移転するのが問題となる。

これが進めば、事業場所の移転が行われる。

多額の負債を抱え再建中であった英国のINEOSは2010年に本社をスイスに移転した。

同社では、業績が回復してきたが、英国では増税が検討されており、税金の負担が増えるとし、英国よりももっと低税率の国に本社を置く他の主要化学会社と競争していくためにスイスに本社を移すとした。

2010/3/5  INEOS、節税のためスイスへの移転を検討

英国はその後方針を変更、2011年4月に、それまでの法人税率 28%を26%に引き下げ、2012年4月に24%に引き下げた。
英国の財務相は2012年12月5日の演説で、法人税率を2013年に1%、2014年に2%下げて、21%にすると発表した。


日本は 2011年11月の改正、法人税率が30%から25.5%に下がり、実効税率が40.69%から35.64%に軽減された。

但し、2012年4月から3年間に限り、年税額の10%が復興特別法人税として上乗せされ、38.01%となる。
   (法人住民税には震災特別税は付加されない)



ソース  http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm
 スイスのみ別資料(州により税率が異なる)







ロシアのGazpromとパートナーは12月7日、南ロシアの黒海東岸の Anapa市でSouth Stream pipeline の着工式を行った。

South Streamはロシアと中央アジアの天然ガスを欧州に送るもので、黒海の湖底を通って対岸のブルガリアに渡り (900km)、その後、2手に分かれる。
北西ルートはブルガリア、セルビア、ハンガリーを通ってスロベニア、オーストリーに通じる。
南西ルートはギリシャからイタリアに通じる。

式典にはPutin大統領のほか、ブルガリアの大臣、パートナーのイタリアのENI、フランスのElectricite de France、ドイツのBASFの代表が出席した。

Gazprom とパートナー各社は11月に投資計画を確定、実行会社のSouth Stream Transport BV の本社をアムステルダムに置くことを決めた。

本計画は当初、GazpromとENIとの均等出資で計画された。
2011年にBASF子会社のWintershallとフランスの
Electricite de France SAが15%ずつ参加し、ENIの比率は20%となった。

Wintershallは、ロシアのもう一つの欧州向けの天然ガスパイプライン、Nord Stream計画にも参加している。

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

欧州への天然ガス供給は2016年第1四半期にスタートする予定。

プーチン大統領は第1段階の供給先としてブルガリア、セルビア、スロベニア、ハンガリー、イタリア、クロアチアの6カ国をあげた。

既に完成しているバルト海を通るNord Streamに並び、ウクライナを迂回して欧州にガスを輸出するルートを確保する。

ロシアから欧州向けの天然ガスパイプラインは従来はベラルーシ(Belorussia)からポーランドを経由するもの(Yamal Pipeline)と、ウクライナを経由するものがある。

ロシアとベラルーシは2007年に石油抗争を起こしたが、和解した。
  
2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争
  2007/1/15 ロシアーベラルーシ石油抗争 解決

ベラルーシはロシアが主導する旧ソ連諸国の経済統合を支持しており、ロシアはその見返りとして2011年11月に天然ガスの値下げに応じた。
Gazpromが、ベラルーシの国営パイプライン運営会社ベルトランスガスの株式の5割を保有するが、残りの株式5割を25億ドルで取得し完全子会社にすることでも合意した。

これに対し、ロシアとウクライナの関係はよくない。

Gazprom は2009年1月1日、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。 (2006年に続くもの)
ロシアは欧州向けのガスをウクライナが抜き取っているとして、1月6日から欧州向けの供給も停止した。

その後、プーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相がガス価格の引き上げに大筋で合意、1月19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

ロシアとしては、EUへの加盟も視野にいれるウクライナに欧州向け天然ガスパイプラインを抑えられるのは問題で、この対策として北側のNord Streamを建設したが、今回、南側のSouth Streamを建設する。

Nord Streamからは欧州を縦断するOPAL natural gas pipeline(Baltic Sea Pipeline Link)と接続している。

  2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

 

ーーー

これに対し、トルコはSouth Stream計画には参加しないとしている。
トルコは、South Nabucco 計画とTransanatolian (TANAP) 計画を重視している。

Nabucco計画はEU主導で、カスピ海地域の天然ガスをトルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー経由でオーストリアまで輸送する延長3300kmのガスパイプラインプロジェクト 。
EUはロシアの天然ガス依存度を減らしたい意向。

2005年にオーストリアのOMV、ハンガリーのMOL、ルーマニアのTransgaz、ブルガリアのBulgargazとトルコのBotasが各16.67%出資のJVNabucco Gaspipeline International を設立した。

2010年6月、トルコとアゼルバイジャンがアゼルバイジャン産天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
アゼルバイジャンのカスピ海沖で
Shah Deniz天然ガス田の第2期開発で生産するガスを、トルコが欧州など他国へ再輸出する権利を持つことを明記した。

2013年のパイプライン建設着工、2017年の完成が計画されているが、予定通り実現するかは不透明。

アゼルバイジャンとトルコは2011年12月26日、Transanatolian (TANAP) を共同で建設することで基本合意した。
両国は天然ガス供給に続き、輸送手段でも「同盟」を結び、欧州への本格的なガス輸出を目指す。

TANAPが実現する場合には、Nabuccoを西部(バルカン諸国を通りオーストリアに至る欧州部分)だけを残し、TANAPに接続する案も出ている。

ーーー

なお、石油については、アゼルバイジャンとトルコを結ぶBTCパイプラインがある。

2006/6/7 BTCパイプライン完成

 




既報の通り、米エネルギー省は12月5日、LNGに関する2つの報告書を発表した。

1つは同省によるAnnual Energy Outlook 2013 の速報版(2040年までのエネルギーの予測)で、もう1つは、NERA Economic Consultingに委託したLNG輸出の影響に関する調査結果報告書である。

後者のNERA レポートでは、LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討したが、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとしている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表


これに
対し、Dow Chemical はその翌日にAndrew N. Liveris CEOによる以下の反論を発表した。

LNGの輸出に関するレポートは、欠陥だらけの、ミスリーディングなもので、古くて不正確で不十分なデータに基づいている。

報告は、米国の経済に対する製造業の重要性を見ていない。

製造業は米国で最大の天然ガスのユーザーであり、天然ガスを使って、他のどのセクターよりも多くの雇用を生み、より多くの価値を生み出している。
製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される。

これに対して、LNGとしてエネルギーを輸出すれば、その価値分しか得られない。

更に、工場で雇用が増えれば、経済全体では5~8倍の雇用がつくられることになる。

報告は更に、豊富な国内の天然ガスのとてつもない競争優位を見ていない。
報告は、製造業を通じて米国経済を強化し、安いエネルギーコストで消費者に利益を与える代わりに、米国の天然ガスの有利性を他国の成長と雇用のために使うことで米国がよくなるという不可解な結論を出している。

米国産業界は豊富な天然ガスを使い、900億ドルを投資し、数百万の新しい雇用を作り出す100件以上の投資計画を発表しているが、報告ではなんら触れられていない。

Liveris CEOは3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めている。

Dowはこれまで安いエネルギーを求めてサウジなど海外で石化事業を拡大してきた。
しかし、米国
の豊富で安いシェールガスの出現で、Dowは再び米国での投資を始めた。
10年ぶりに新しいエタンクラッカーを建設するとともに、米国の施設をリフレッシュする。

安い原料による圧倒的な競争力の維持は、米国経済にとって絶好の機会となる。
しかし、アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。これを失ってはならない。

天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ。
天然ガスからプラスチック、肥料、その他化学製品に加工して輸出すれば、LNGで輸出するよりも8倍もの価値を生む。

米国では、天然ガスは戦略商品であり、輸出に対する反対論がある。

Dowの主張は説得力があり、今後も主張を続けると思われ、政府の決定に影響を与える可能性がある。

ーーー

Dowは2011年4月に、安価なシェールガスを利用するエチレンとプロピレンの能力増強を発表した。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

このうち、プロピレンについては、2012年3月にテキサス州Freeportにプロパン脱水素により新しいプラントを建設することを発表した。

2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メキシコ湾岸に新しいワールドスケールのエチレン設備の建設することを明らかにしていたが、同社はこのたび、テキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。

投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

ーーー

Dow以外にも多くの企業がシェールガスの利用に動いている。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画

ExxonMobilもテキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

Dowを初めとして各社は、LNGの輸出により、原料の天然ガス価格が高騰することを懸念、輸出に反対している。

 


韓国関税庁は12月4日、「韓米及び韓EU間FTA発効後の輸出入をめぐる動向」と題した報告書を発表した。

世界的な景気低迷の中、韓米、韓EUの自由貿易協定(FTA)が韓国経済を下支えていることがわかった。
輸出が低迷している中、米国向け輸出はかえって伸びており、EU向け輸出も、関税恩恵品目を中心に善戦している。

1)米国

韓米FTAは2012年3月15日に発効した。

2012/3/15  韓米FTA発効 
内容は、当初 
2007/4/4 米韓FTA妥結
           自動車関連修正 2010/12/4 韓米自由貿易協定(
FTA)追加交渉が妥結             

それ以降、11月30日までの米国向け輸出額は373億ドルで、前年同期より2.1%伸びた。
この間、韓国の輸出総額は
3500億ドルで、3.4%減となっている。

FTA恩恵品目(関税引き下げ&撤廃)の輸出は12.9%伸びた。

品目別には、自動車部品(+15%)、タイヤ・ゴムベルトなどゴム製品(+14%)、石油製品(+8%)の伸びが大きい。

自動車部品は2.5~4%の関税が即時撤廃された。
なお、乗用車は
5年目まで2.5%の現行関税を維持。(電気自動車・ハイブリッドは8%から4%に引き下げ。)

石油製品は1バレル当たり平均52.5セントの関税が即時撤廃された。ジェット燃料の増が大きい。

ほかに繊維類も平均10.1%が即時撤廃された。

FTA利用率(相手国に対する総輸出額に占めるFTA税率で取引された輸出額)は66%となった。
韓インド(17.7%)、韓ASEAN(3.5%)間FTAの発効後1年間の利用率よりはるかに高い。

米国からの輸入は271億ドルで6.2%減少した。
恩恵品目はオレンジ(+32.4%)、クルミ(+50.1%)、アーモンド(+71.1%)などの食料品を中心に2.8%増えたが、恩恵を受けなかった品目の輸入は13.9%減少した。 

なお、米上院合同経済委員会は9月に、韓米FTA発効以来、米国の対韓貿易赤字がさらに拡大したという報告書を出した。
米商務省の統計によると、3月に6億ドルだった米国の対韓貿易赤字は、韓米FTA発効後、4月17.7億ドル、6月11.3億ドル、7月19億ドルと大きく膨らんだ。「まだ評価するのは早いが、韓米FTA後も統計上で韓国産の輸入が増えている一方、韓国への輸出は減っている」としている。  

2)EU

EUのFTAは2011年7月1日に発効した。

2010/10/12  韓国とEU、自由貿易協定締結

昨年7月1日から本年11月30日までの韓国のEU向け輸出は、 欧州財政危機を受け、前年同期比10.2%減の672億1000万ドルとなったが、FTA恩恵品目の輸出額は計358億8000万ドルで、10.9%の増となった。

品目別には、石油製品(+17.0%)、自動車(+15.2%)、自動車部品(+6.6%)の伸び幅が大きかった。

工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に段階的に撤廃。

石油製品は3.7~4.7%の関税が直ちに撤廃された。ジェット燃料油が大幅増。

一方、半導体(-43.2%)、船舶(-39.7%)、無線通信機器(-24.2%)など、FTAの恩恵を受けない品目の輸出額は26.2%も減少した。

FTA利用率は80.8%と高いレベルにある。

輸入品でも、FTAの恩恵を受けた品目とそうでない品目の差は顕著となった。

恩恵を受けた品目の輸入増加率は14.8%で、恩恵を受けない品目は2.4%増であった。
石油製品(+148.5%)、かばん(+28.5%)、靴(+23.5%)、時計(+37.5%)が大幅な増加となった。
EUからの原油輸入額は29億2000万ドルと36.5倍増加した。

ーーー

米国向け、EU向けともに、石油製品が入っている。
韓国の石油元売り業界によると、1~11月の石油製品輸出額は517億ドルで、半導体(461億ドル)、自動車(430億ドル)などを制して輸出額1位を記録している。



 

建設現場でアスベスト(石綿)を吸って健康被害を受けたとして、首都圏の元建設労働者と遺族ら337人が国と建材メーカー42社に総額約118億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は12月5日、一部について国の責任を認め、170人に総額10億6394万円の賠償を命じる判決を言い渡した。メーカーの責任は認めなかった。

建設労働者に対する賠償命令は初めて。

石綿訴訟では、吸った場所が明らかな工場労働者らの場合、雇用主側に賠償を命じるのが定着している。
今回の訴訟は建設現場を渡り歩き、時期などの特定が困難な労働者らが訴えていたもので、
横浜アスベスト訴訟では原告の請求がすべて棄却され、原告側は控訴している

判決骨子
1) 国は石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ
2) この時期以降に屋内で建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある
3) 屋外作業では危険性を容易に認識できたと言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない
4) 石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない

国は1947年から建設事業者に防じんマスクの備え付けを義務づけていたが、実際は大半の労働者が使っておらず、対策が不十分だった。
1979年の国際組織の勧告などで危険性を認識し、遅くとも1981年以降は
・事業者に防じんマスクの着用を罰則つきで義務づける
・建材に「肺がんなどを生じさせる」と警告表示する――
などの対策をとれば、多くの被害を防止できたと結論づけた。

1981年以降に屋内作業に従事した労働者のほか、より危険な吹き付け作業をした労働者については1974年以降の賠償責任を認めた。

しかし屋外作業だけの労働者をめぐっては「客観的な粉じん濃度の高さを示す研究結果などがなく、国は危険性を容易に認識できなかった」と判断。

零細事業主や個人事業主(一人親方)は、労働安全衛生法の「労働者」には当たらないとしいずれも国の責任を否定した。

石綿を含む建材のメーカーに対しては「適切な警告表示を怠ったことで、原告らが石綿の危険性を具体的に認識できなかった」と批判したが、「42社が共同して責任を負うべきほどの法的な結び付きはない」と賠償責任を認めなかった。

裁判で原告側は「国は危険性が分かっていたのだから、遅くとも1987年には石綿建材を禁止するべきだった」と主張。
国側は「危険性が明確になったのは2000年代前半。2006年に全面禁止したのは適切だった」と反論していた。

ーーー

アスベストに関しては、石綿(アスベスト)工場の元労働者や近隣住民、建設業等の元労働者及びその遺族が、石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったためであるとして、健康被害又は死亡による損害賠償を求めて訴訟を行っている。

これに対する国側の主張は以下の通り。

1) 最高裁の判例(筑豊じん肺訴訟最高裁判決等)で、規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるのは、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、当時の具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに限られる。
2) 国は、戦前から、石綿についても粉じんの一つとしてその衛生上の有害性を認識し、その時々の医学的知見、工学的知見に応じ、使用者に一定の義務を課すなどの措置を講じ、適時、措置を強化してきており、国の規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められず、国家賠償法上の違法は認められない。

 


これまでの訴訟の状況は以下の通り。

大阪アスベスト訴訟
(第1陣)
訴訟 泉南地域の工場の元労働者、近隣住民及びその遺族が9億4600万円の損害賠償を求める。
大阪地裁 2010/5/19 国の規制権限の不行使の違法を認める
国に対して総額4億3505万円の支払いを命じる
原告・被告双方が控訴
大阪高裁 2011/8/25 1審判決を取り消し、原告の請求を全て棄却 原告上告
最高裁 係属中    
大阪アスベスト訴訟
(第2陣)
 
訴訟 泉南地域の工場の元労働者ら55人が約11億3千万円の損害賠償を求める。
大阪地裁 2012/3/28 原告の請求を一部認容
50人に総額約1億8千万円の支払いを命じる。
原告・被告双方が控訴
大阪高裁 係属中    
横浜アスベスト訴訟 訴訟 建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどを発症した建設労働者や遺族計87人が、国と建材メーカー44社に総額約29億円の損害賠償を求める。
横浜地裁 2012/5/25 原告の請求を全て棄却 原告が控訴
東京高裁 係属中    
神戸アスベスト訴訟
(第1陣)
訴訟 尼崎地域のクボタの工場付近居住者2名の遺族らがクボタと国を相手取り、計7900万円の損害賠償を求める。
クボタは被害発覚後、周辺住民らに最高4600万円の救済金を支払ってきたが、遺族らは受け取らず、「責任を認めて謝罪してほしい」として提訴した。
神戸地裁 2012/8/7 国に対する請求を全て棄却
クボタに対する請求を1名に認容、

 約3195万円の賠償命令。
原告1名と被告が控訴
大阪高裁 係属中    
 

1) 大阪訴訟第一陣

 地裁判決

石綿肺の医学的・疫学的知見が1959年頃に集積されている。
労働大臣が、1960年の旧じん肺法成立までに「局所排気装置の設置を義務づけなかったことは違法

肺がん、中皮腫の知見が明らかになった1972年に石綿粉じん濃度の測定結果の報告および改善措置を義務づけなかったことは違法

1959年以前の曝露である1名を除く労働者原告全員について、国の不作為責任を認める。
国の責任は、使用者と共同不法行為(民法719条)の関係にあるとして、使用者と同等の責任を認める。
石綿による健康被害が慢性疾患で進行性・不可逆性で重篤化するという重大性を認め、被害を償うに相当な損害賠償額を認める。

  大阪高裁判決  弁護団によると歴史的不当判決

新たな化学物質等による危険を完全に防止することは現実的に困難
厳格な許可制の下でなければ操業を認めないとすると、工業技術の発展、産業の発展は望めない。
それのみならず、労働者の職場を奪うことになりかねない。
国がどのような規制権限を行使するかは専門的な判断に委ねられる。
国はマスクを勧めるなど一定の指導をしているので著しく不合理とはいえない。
アスベストの危険性は新聞報道されていたのだから、マスクをちゃんと着けていればこれほどの被害にはならなかった。

2) 大阪訴訟第二陣

 地裁判決

1959年までには石綿肺の医学的知見が集積され、国は粉じんによる被害が深刻だと認識しており、旧じん肺法が制定された1960年までに対策を取るべきだった。排気装置設置を義務付けた1971年までの間について、国の不作為責任を認定。

従業員の健康被害について最終的責任を負うのは使用者であるとして、国の賠償責任の範囲を3分の1に限定。

1960~71年の期間外に勤務していた従業員や、勤務先から十分な賠償を受けたと認められる原告の請求は棄却。

外部業者でも、工場内で相当の時間作業する場合は、工場事業者が被害防止策を講じるべきだが、国は法令制定を怠ったとし、工場に原料を搬入していた運送業者の元従業員1人の遺族の請求も認めた。

3) 横浜訴訟

 原告主張

1964〜1975年の間に石綿が肺がんや中皮腫を引き起こすことを知りながら石綿含有建材を用いた構造を建築基準法上の耐火構造等として指定した。
この間、この指定を取り消さなかった。
1955〜1975年に建設作業従事者の石綿粉じん暴露を防止するため労働基準法や労働安全衛生法等に基づく規制権限を行使することを怠った。
とりわけ、石綿の製造等の禁止については1987年の時点で禁止しなかった。

 地裁判決

石綿粉じん暴露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立したのは1972年の時点と認定。
 

1972年にILOとIARC(国際がん研究機関)が、石綿ががん原性物質であることを明言。
国内では昭和40年(1965年)代の文献でも石綿と肺がんとの関係について肯定的な見解と懐疑的な見解があった。
1971年の特定化学物質等障害予防規則の制定に当たって、石綿は発がん物質との位置付けではなかった。

IARCの報告書等から、この時点で石綿が特に中皮腫発症との関係で種類を問わずいかなる低濃度でも安全とする最小のしきい値がないとの医学的知見が確立していたとは認めがたい。
以上から、1972年当時、石綿の使用を全面的に禁止すべき物質とみるべきであったとは認められない。
   
国が建築作業に特化した石綿対策を取ってこなかった。
補償制度の創設について再度検証の必要がある。
建材と被害との因果関係を認められず、建材メーカーに責任はない。
 

4) 神戸アスベスト訴訟(第1陣)

 地裁判決

国の責任については認めず。

クボタについて、
 「工場敷地外への飛散を十分に防ぐことができていなかった」と認定。
  運搬時の破れた麻袋からの漏出、建物開放部からの飛散、集塵機の性能の限界など

 中皮腫を発症した周辺住民の居住地と神崎工場までの距離などを研究した学術論文に基づき、
  1名については、発生源が旧神崎工場と推認させる
  1名は居住地が離れており「関連性があると断定できない。

周辺住民の石綿による健康被害に対し企業の責任を裁判所が認めたのは初めて。

 

 



Bayerは2013年に創立150年を祝い、世界中でいろいろな催しを行う。

1983年8月1日、染料セールスマンのFriedrich Bayerと染色業者のJohann Friedrich Weskott がヴッパー川沿いに位置する工業都市 WuppertalのBarmen地区に新会社Friedr. Bayer et compを設立した。数年前に発明されたコールタールからの合成染料の製造販売を業とした。

同社のCEO のDr. Marijn Dekkerは11月30日、以下の通り述べた。

Barmen地区で小さいが革新的な染料工場としてスタートしたBayerは今や従業員11万人以上のグローバル企業となった。
過去150年にBayerの発明品は人々の生活の質の向上に貢献してきた。

Bayer製品は我々の生活に不可欠になった。

1899年に上市したアスピリンは今もBayerのトップ製品の一つである。
現在はこの部門はBayer HealthCareに発展した。

1892年に世界最初の殺虫剤Antinonninを上市した。
Bayer CropScienceは現在、農業科学のグローバルリーダーである。

高機能材料分野では1930年代にポリウレタンを発見、1953年にはポリカーボネートの特許を取得した。

1981年に株式会社とし、Farbenfabriken vorm. Friedr. Bayer & Co. となった。

同社はその後拡張を続け、1912年に本社を現在のLeverkusen に移した。

ドイツは第一次世界大戦で敗戦、この結果、米国の資産と特許、商標は1917年に没収され、競売に付された。

Sterling Drug がBayer商標やアスピリン事業などを買収した。
1988年にEastman Kodak がSterling Drug を買収した。
1994年になって、ようやくBayerがKodakからSmithKline Beecham 経由でSterling Drug を買収し、米国でBayerの社名を使い、Bayer Aspirinを販売できるようになった。

2012/1/31 Kodak と Bayer

第一次大戦で世界市場を失ったドイツの染料業界は統合を決め、1925年12月に下記の各社が合併し、IG Farbenが設立された。

Bayer 27.4%
BASF 27.4%
Hoechst 27.4%
Cassella
Kalle
Agfa 9.0%
Griesheim-Elektron 6.9%
Weiler Ter Meer 1.9 %

IG Farbenは1951年に連合国軍により解散させられ、Bayerは1952年にFarbenfabriken Bayer AGとして再出発した。

Bayerは1988年の創立125周年後にコア事業への集約を開始し、1999年に子会社Agfaを売却、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

他方、農薬部門では2001年に Aventis CropScience を、医薬部門では2006年にドイツのSchering AGを買収し、拡大している。

2006/6/12 2つの買収劇 の2



 

米エネルギー省は12月5日、LNGに関する2つの報告書を発表した。

1つは同省によるAnnual Energy Outlook 2013 の速報版で、2040年までのエネルギーの予測である。
 
http://www.eia.gov/forecasts/aeo/er/pdf/0383er%282013%29.pdf

もう1つは、NERA Economic Consultingに委託したLNG輸出の影響に関する調査結果報告書である。
  
Macroeconomic Impacts of LNG Exports from the United States

1)Annual Energy Outlook 2013

   参考 
2012/1/26 米エネルギー省、米国のエネルギー見通しを発表

 概要は以下の通り。

 ・原油生産、特にTight Oil からの生産は急増する。

 ・自動車用ガソリン需要は、厳しい燃費基準、天然ガス使用により減少

 ・天然ガスはシェールガスの増で生産が国内需要を上回り、輸出を促進する。

2011~2035年の天然ガス生産は、シェールガス増産により前年の想定より8%高い。
2016年にはLNGのネット輸出国になる。
LNG輸出は2016年に日量60億立方フィートからスタート、2027年には45億立方フィートとなる。
カナダ、メキシコからのパイプラインによる輸入は前回予想より減り、2021年にはパイプラインによるネット輸出国になる。

 ・シェールガス増産とそれに伴う天然ガスの価格低下で米国の工業生産は拡大する。
   バルクケミカルでは2011~2025年で年率1.7%増、一次金属では2.8%増

  
再生可能燃料の使用は化石燃料使用よりも伸びが大きい。

 2)NERA レポート 

 ・ LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討した。
 ・ 全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがある。
輸出により国内の天然ガス価格が上がっても、輸出メリットは国内の損失を上回る。
 ・ 米国がシェールガスを大量に安価に生産でき、世界の需要が急速に伸び、他の地域の供給に限度がある場合、米国の利益は最大になる。
 ・ 米国の生産が十分でなく、コストが高い場合や、他の地域から充分な供給がある場合は、輸出しないだけであり、国内に影響しない。
 ・ LNGを輸出すると国内天然ガス価格は上がるが、輸出価格の上昇には限度がある。


ーーー

米国は現在、LNG輸出を自由貿易協定(FTA)締結国向けに限定しており、Freeport LNGは日本などFTA未締結国向け輸出許可を申請中。

但し、米国の日本向け輸出許可の取得は簡単ではない。

DowのAndrew Liveris CEOは、貴重な資源をそのまま輸出するのではなく、加工して付加価値をつけて輸出すべきと主張している。

また、米国にとっては戦略資源であり、中国に輸出する考えはなく、中国への輸出を避けるためにはFTA締結国に限定するというのは良い案ということになる。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

米エネルギー省の報告はLNG輸出を後押しするものにはなるが、天然ガスは米国にとって戦略製品であり、政治がからむため、簡単ではない。

ーーー

日本・韓国・台湾等の極東地域ではLNG価格は輸入原油価格にリンクするフォーミュラで形成される。

関西電力は11月19日、BPシンガポールとの間で天然ガス価格を指標価格とするLNG購入契約基本合意書を締結したと発表した。大阪ガスと中部電力が7月31日に米国のFreeport LNG Development との間で、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結したのに続く。

関電の契約では、液化や輸送のコストを加えても12ドル前後で済むとみられ、現在の原油価格ベースの約17ドルと比べ、大幅な値下がりとなる。     

2012/11/21 関西電力、BPシンガポールとLNG購入契約に関する基本合意書 


 


JX日鉱日石エネルギーは12月3日、大手需要家との交渉の結果、ベンゼンの12月契約価格(ACP)を発表した。

ACPはAsian Contract Priceで、 アジア契約市場における指標価格(運賃込み)。

同社(当時は新日本石油化学)は2005年3月17日、ベンゼンの国内向け価格を4月からは輸出の場合と同じ「アジア市況ベースの月極め・先決め方式」によって決定していくことで需要家各社の同意を得たことを明らかにした。

それまでは、輸出価格も国内価格も、コストとアジア市況を半々に反映した四半期単位の価格を後決めで決定してきた。
しかしアジアの市況がアジア全体の需給バランスをベースに短期で変動するパターンが定着しつつあるため、2005年1月から輸出価格をアジア市況をベースにした先決め・月極め方式に切り替えたが、国内についても同様の方式によることにしたもの。

2012年12月契約価格(ACP)は1,430$/tで、前月比145ドルのアップとなり、2005年4月の本方式採用以来の最高値を記録した。
アジアに連動して決まる国内価格は同15%高い1キロ123.6円になる。

同社では理由として、供給側要因から、アジア域内のベンゼン需給バランスは比較的タイトな状態が継続しており、中国勢の買い意欲および米国の輸入意欲が旺盛であることなどを背景に、アジアのスポット市況も前月を上回る水準にて推移したためとしている。

「シェールガス革命」の影響で北米を中心にベンゼンの供給が減少、、アジアでもナフサクラッカーの稼働減などから供給が停滞している。

日本ではポリエチレンやポリプロピレンなど、エチレン、プロピレン誘導品の価格は、現在もなお多くのケースで、ナフサ価格にスライドして決められている。

ベンゼンの場合は、2005年に早くもナフサスライドから離脱し、アジア市況スライドに変更した。

グラフの通り、多くの時期ではナフサ価格の動きと合致しているが、2008年央ではナフサの上昇ほどには上がらず、年末では逆にナフサ価格以上に下落している。
現時点では、ACPの上昇がナフサ価格をはるかに上回っている。

ーーー

国内のポリオレフィンについては、自動車メーカーなどとの間では、「2N方式」(1000円・2円方式)が採用されている。

国産ナフサ基準価格(3か月の輸入価格平均+諸費用2000円/kl)が1kl当たり1000円変動すれば、エチレン、プロピレンがkg当たり2円変動するとみなし、これに応じて価格を変更するもの。

第二次石油危機の末期の1986年第1四半期に31,300円であった国産ナフサ基準価格は第2四半期に16,900円へと急降下した。

この時に製品のポリオレフィンの価格をどうするかが大問題となり、エチレンメーカーは原価を試算し、1986年6月に、「ナフサ2万円/klの場合にエチレン 85円、ナフサ1000円の変動でエチレン 2円の変動」とする新価格体系を提示した。

当時はアジア各国には石化産業そのものが育っておらず、安定供給確保の意味からも需要家はこれを受け入れた。

しかし現在では状況が大きく変わっている。いつまでも古い方式を続けるわけにはいかないだろう。

ーーー

ポリオレフィンなどの価格体系を変える場合には、単に国際価格水準にするだけでなく、価値を正しく評価する方式の導入が必要である。


米国のポリオレフィン価格で見ると、一般的に言われている価格は汎用品の価格であり、1か月前の注文で(グレード切り替えなしの連続操業が可能となる)、支払条件は翌月末キャッシュというものである。

大手では 出荷は80トンのホッパーカー(貨車)が大部分で、残りは20トンのホッパートラックが中心で、袋は非常に少ない。
小口はコンパウンダーなどが貨車単位で購入したものを自社で小分けし、割増価格で販売する。

米国で2008年に住宅バブルがはじけ、塩ビ需要が激減した際、シンテックは以前から荷造設備を設置し、輸出体制を整備していたため、世界中での拡販により高水準の稼動を継続した。
競合他社は荷造設備を持たず、輸出が出来ないため、大幅減産を強いられた。

需要家の要求で品質を変えると、添加剤の違いや生産性の違いなどによるコストアップ分が転嫁される。
日本では需要家の要請を受けて非常に多くのグレードを生産、かつJust-in-time 納入が多いため、頻繁にグレード切り替えを行っている。

国際価格基準をとる場合、一定の条件のものにこれを適用し、基準から外れる分についてはそのための追加費用の割り増しを行うような価格体系が必要である。

それを需要家に受け入れさせるためには、メーカーの数を減らして、過当競争体制を是正する必要がある。

逆に言えば、現在の需要家の要求が今後も続くなら、そういった分野の製品は海外からの流入が難しく、日本品が残り得る可能性がある。




 

EUは12月5日、テレビやコンピューターモニター用のブラウン管CRTについて、1996年から2006年までの10年にわたり価格カルテルを結んだとして、パナソニックや東芝を含む6社に対し、過去最高となる総額14億7000万ユーロの制裁金を科した。

 

減免率

制裁金(千ユーロ)

TV用 モニター用 合計
台湾・中華映管(Chunghwa 100% 0
(8,385)
0
(8,594)
0
(16,979)
Samsung SDI 40% 81,424 69,418 150,842
Philips 30% 240,171 73,185 313,356
LG Electronics 0% 179,061 116,536 295,597
Philips/LG Electronics 30%
(Philips分)
322,892 69,048 391,940
フランス Technicolor 10% 38,631 - 38,631
パナソニック 0% 157,478 - 157,478
東芝 0% 28,048 - 28,048
パナソニック/東芝/松下東芝映像ディスプレイ 0% 86,738 - 86,738
パナソニック/MT映像ディスプレイ 0% 7,885 - 7,885
合計   1,142,328 328,187 1,470,515

注1.中華映管の(制裁金)は減免がない場合のもの

注2.PhilipsLG Electronicsは2001年に両社のブラウン管事業を分離し、LG. Philips Displaysを設立、
     2007年にLP Displaysに改称。

注3. 松下電器産業と東芝はブラウン管事業を統合、2003年4月に松下東芝映像ディスプレイを設立、
    2006年にドイツとアメリカの子会社での生産を停止し、
清算
    2007年に松下が東芝持株(35.5%)を買い取り、完全子会社化し、MT映像ディスプレイに改称。

東芝は、欧州競争法に違反する行為を行っていないとし、今後裁判で争う方針としている。
 パナソニックは、事実認定や法令適用に疑義あり、提訴も視野に検討するとしている。

EU発表によると、これら2つのカルテルは最も組織的なカルテルで、過去10年にわたり、価格操作、市場分割、顧客割当、能力や生産量の調整、秘密情報の交換など、最も悪質であらゆる種類の反競争的行為を行った。
また、工場訪問で能力規制を守っているかどうかをチェックするなどもしていた。

ゴルフの後で行うために "green meetings"と呼ばれるトップレベルの会合を開き、方向付けを行っていた。
詳細については下部組織が "glass meetings"で決めていた。

法律に違反していることを認識し、没収された資料には、「秘密厳守、需要家やEUにばれると重大な被害を生じる」と記載されていた。「読後破棄」と書かれた書類もあった。

現在ではブラウン管は液晶パネルに切り替わっている。
中国国有のテレビ用ブラウン管大手、彩虹顕示器件(陝西省)は中国の大手企業で唯一、ブラウン管製造を続けていたが、同社も10月にブラウン管生産から撤退した。

制裁金合計1,470,5百万ユーロは過去最高。

過去の制裁金 順位 
対象分野 制裁金
(百万ユーロ)
 
自動車用板ガラス  1,383,9 2008/11/15 欧州委員会、自動車用板ガラスで制裁金
エレベーター   992 2007/2/28 EU、エレベーターのカルテルで過去最高の罰金
ビタミン   790.5 2001年 (当初は855.2百万ユーロ、2社減額)
 Hoffman-La Roche (462百万ユーロ)、 BASF(296.16→236.8)、 Aventis(5.04)、
 Solvay Pharmaceuticals(9.1)、Merck(9.24)、
 武田薬品工業(37.05)、エーザイ(13.23)、第一工業製薬(23.4→18)
送電設備   751 2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金
パラフィンワックス    676 2008/10/6 EU、パラフィンワックスのカルテルで制裁金

なお、カルテル以外では、EUは2009年5月13日、米Intelが、CPU市場での独占的な地位を悪用し欧州独占禁止法に違反したとして、1,060百ユーロの制裁金支払いを命じている。
1社に対する制裁金としては、Microsoftに対する
899百万ユーロ(後にEU裁判所が860百万ユーロに減額)を上回る過去最高金額となった。



 

ユーロ圏17か国は12月3日の財務相会合で、スペインの銀行を支援するため、同国政府に対し 395億ユーロの支援を実施することを決めた。欧州委員会が11月28日にスペインの銀行再編計画を承認したのを受けたもの。

ユーロ圏は6月にスペインの銀行支援として最大1000億ユーロの支援を行うことを決め、支援条件として、スペインに中央銀行改革、金融監督の強化を指示した。

今回はその第一弾で、スペイン政府は支援資金を活用し、国内の銀行に公的資金を注入する。
他のスペインの銀行については、12月20日に決定するという。

今回の支援対象となる銀行は、既にスペインの銀行再編基金 FROB (Fund for Orderly Bank Restructuring) の管理下に入っている4銀行。

Bankia   181億ユーロ
Catalunya Banc   90億ユーロ
Novagalicia Banco   54億ユーロ
Banco de Valencia   45億ユーロ
(小計)   370億ユーロ
Sareb   25億ユーロ
(合計)   395億ユーロ

Sarebは金融機関から不良資産を買い取る「バッドバンク」

4行のうち規模が最も小さいBanco de Valenciaは売却され、スペイン3位のBank La Caixa と統合される。
他の3行は今後5年間でバランスシートを6割以上圧縮する必要がある。

これらの銀行の債券保有者も損失を負担することになるという。

4行のなかで規模が最も大きいBankiaは、全従業員の約4分の1に相当する6,000人を超える人員削減を行い、支店数を約39%削減し、2013年までに収支を黒字化させる。

ーーー

ユーロ圏は6月にスペインの銀行支援として最大1000億ユーロの支援を行うことを決めたが、銀行への直接注入は「銀行監督機能の一元化」の達成が条件 となった。

欧州首脳会議は6月の会合で銀行監督一元化の導入を決め、10月の首脳会議で、ユーロ圏の銀行を一括して欧州中央銀行(ECB)が監督する銀行監督一元化を2013年から段階的に導入することで合意した。

EU財務相理事会は12月4日、ECBによる銀行監督一元化を柱とする銀行同盟構想について協議したが、合意は得られなかった。

ECBの権限をめぐり仏独が激しく対立している。

ドイツは銀行監督の最終権限をECB理事会に委ねるべきではないとし、大半の銀行を各国当局の監督下に置かなければ、合意は得られないと主張した。
「銀行監督と金融政策との間にチャイニーズウォールが絶対的に必要」とし、ECBが銀行監督を兼務することに懐疑的な見方を示した。

これに対しフランスは、ECBを銀行監督の中心に据えるべきと反論した。

ユーロ圏外のスウェーデンは、フィンランドに大半の銀行が存在しており、ECBが自国の銀行資産を監督することになれば、ECB内で相応の発言権を得なければならないと懸念を示している。

今後ユーロ導入を目指すポーランドやハンガリーといった国も、ECBが銀行に対するより強力な権限を持つことで不利益とならないよう保証を得ようとしている。

当面はスペイン政府を通じて融資することとなる。




BPとロシアのRosneftは11月22日、BPのTNK-BPの持分(50%)をRosneftに売却する契約を締結した。
2013年上期に手続き完了の予定。

BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。

Rosneft とAAR consortium (Alfa Group、Access Industries、Renova) との残り50%についての交渉も進展しており、12月にも契約締結の見込み。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

TNK-BPの買収が成立すると、Rosneftは上場石油企業としては、石油・ガスの埋蔵量及び生産量でExxonMobleを抜き世界一となる。

      付記

Rosneft は12月12日、AARとの間でTNK-BPの50%持分を買収する契約を締結した。

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BPは2011年114日、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意したと発表した。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携 

しかし、TNK-BPの50%を持つAARを構成する4人の新興財閥が、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主協定に違反するとしてロンドンの高等法院(High Court)に訴えた。

裁判所は調停での問題解決を命じ、調停委員会は201151日、下記の決定を下した。

  ・TNK-BPRosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
  ・これを条件に、
BPRosneftの株交換を認める。
    但し、株交換は投資目的に限られ、議決権は独立の受託者に供託、双方は役員を派遣しない。

これに対しRosneft TNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示したため、AARが保有するTNK-BP株のBPRosneft による買い取りを軸に和解交渉が進められたが、結局、時間切れでBPRosneftの契約は白紙となった。

2011/5/18 BPRosneft との提携、白紙に

RosneftはBPに代わる提携先を探していたが、2011年8月30日にRosneftとExxonMobilは両社が北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意したと発表した。

2011/9/1  Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携

BPは今回の取引でRosneftの19.75%を保有することになり、念願の北極大陸棚などロシア資源開発への参入の道が通じた。

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Rosneft株主向けプレゼンテーション(2012/10/23)によると、合併後の姿は以下の通り。 

石油・ガス生産量 
埋蔵量
 

TNK-BPはベネズエラ、ブラジル、ベトナムにも権益を持っている。









東京ディズニーランドは、ミッキーマウスなどのキャラクターをかたどったヘリウム風船の販売を中止した。
運営するオリエンタルランドが11月27日、ヘリウムガスの安定確保が困難になったために前週から風船販売を中止したことを明らかにした。

半導体の製造工程などに必要なヘリウムガスが世界的に不足しており、国内ガス各社が対応を急いでいる。100%を輸入する国内では価格も上がっている。

大陽日酸は来年から米国での合弁生産に踏み切り、岩谷産業は輸入元を中東カタールに広げる。

ヘリウムは不活性で熱伝導率が高く、あらゆるガスの中で最も沸点が低い極低温の性質を持ち、医療やハイテク産業では欠かせない希少なガスである。

                                岩谷産業の資料「ヘリウム産業」から

2009年の世界の需要は169百万m3で、内訳は以下の通り。
 
アメリカ   74百万m3   44%
欧州   35百万m3   21%
加・中南米   14百万m3   8%
環太平洋地域   38百万m3   24%
その他   5百万m3   3%
 

ヘリウムは、製造業の成長が目覚ましい中国を始めとするアジア地域で需要増大の一途をたどっており、2000~2007年で約2倍になった。
中国を始めとした新興国で医療用MRIの需要が増加しており、中国のMRI
台数は現在、2000台(日本は4000台)で、今後も増加すると見られている。

ヘリウムは工業的に生産出来ず、特定の天然ガス田のみで産出される。

現状の生産量は以下の通りで、約170百万m3だが、後記の通り、既存ソースは減る方向にある。

生産の大半は米国カンザス・テキサス・ワイオミング・オクラホマ州等中西部に頼っている。

米国政府は「ヘリウム条例1960修正条項」により、カンザス州の民間所有ガス精製工場から天然ガス中のヘリウム回収を始め、これをテキサス州アマリロ近郊のクリフサイドにある国家備蓄基地へ集約、ここで純度向上と貯蔵を行った。

1995年段階で、ヘリウム備蓄量は10億m3に達し、翌年に議会は貯蔵増の停止と 、2005年までに備蓄ヘリウムをすべて販売することを命じた。ただし、備蓄分の売り切りは2015年と予想される。

カンザス州・テキサス州の主力ガス田が枯渇し減産体制に入ったが、最大ガス田であるワイオミング州の稼動は安定している。

アルジェリアでは 1994 年にArzew、2007 年にSkikdaでヘリウム生産を開始した 。
スペインとの天然ガス供給パイプラインの完成により天然ガスの液化が行われなくなったため、大幅な減産体制となっている。

カタールでは2005年にRas LaffanのLNG プラントにヘリウム回収設備が加わり生産を開始した。
2013年には岩谷産業が20%の引取権を持つ第二期がスタートする。

その他、ロシアのOrenburg、ポーランドのOdolanówで 小規模生産が行われている。

2010年3月に豪州のダーウィンで、420万m3/年の生産が始まっ た。

ーーー

これまで、アメリカの供給停止で2度にわたり供給逼迫があり、産業界に激震が走った。

・2002年に米西海岸の湾岸スト(岩谷は空輸で緊急輸入した)

・2007年に米国はじめ各国の生産プラントでトラブルが発生

今回のヘリウム不足は米国のヘリウムプラントの不調が原因。

・米国土地管理局の粗ヘリウム貯蔵庫からヘリウム精製プラントに延びているパイプラインのトラブルで生産量が20%減。

・エクソンモービル社の持つ世界最大のヘリウムプラントが昨秋の定期修理が長引き、現在もフル稼働になっていない。

・このほか、上記のアルジェリアのヘリウムプラントの減産などが重なる。

世界のヘリウム供給力がヘリウムの需要増に追い付いていない状況は当面の間解消されず、2013年5月に予定されているカタールのヘリウム新プラント稼働まではこのような不安定な状況は続くと予想される。

ーーー

日本のガス会社は対策を急いでいる。

1)大陽日酸

大陽日酸の米子会社Matheson Tri-Gasは2010年10月、Air Products and Chemicalsとの合弁で米ワイオミングでヘリウム生産設備の建設に着手した。

生産能力は600万m3で、大陽日酸の引取枠は1/2の300万m3で、2012年末に稼働する。
2014年には生産量を倍増する。

大陽日酸は2006年に英国のBOCから米国、ロシア、ポーランドのヘリウム引き取り権と関連する事業資産を買収している。
 
工業ガスで世界第5位の独リンデが同第2位のBOCグループを買収する計画に伴い、独占禁止法上の問題で欧米の行政当局から譲渡事業に指定された。

2)岩谷産業

岩谷産業は2010年5月、「カタールヘリウム2プロジェクト」への入札に参加し、日本企業として初めてヘリウムを直接輸入する権益を取得した。

世界最大の能力を有するカタールのLNG生産工程の随伴ガスからラスラファン工業地区で液化ヘリウム生産を行うもので 、能力は約4,000万m3
岩谷は20%の800万m3の引取権を持ち、2013年初頭の生産開始時より輸入を開始する。契約期間は2032年まで。


 


米国EPAは11月28日、BPと米国政府の間の新しい契約締結を一時的に停止すると発表した。
刑事訴訟の対象となったDeepwater Horizon事故で明らかになったBPの"lack of business integrity"(管理不十分?)を理由としている。

BPは11月15日、2010年4月のルイジアナ州で掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig での爆発事故に関して、司法省によるすべての刑事訴訟で和解したと発表した。合わせて米証券取引委員会(SEC)とも和解した。
和解に伴う支払額の合計は4,525百万ドルで、米国史上最大額。

この時点では、「米国の法律では、有罪となった企業は連邦政府との取引から除外されることが有り得るが、今回の和解に関しては、どの省庁からもその動きはない」としていた。

2012/11/17  BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解

EPAの発表は以下の通り。

取引停止は刑事事件で責任問題が発生した場合に通常取られる。
Deepwater Horizon の調査では、EPAがそれを決定する機関として指名されている。

今回、BPは一時的に連邦政府との契約や補助金、その他取引を中止される。
期間はBPがEPAに対し、連邦政府との取引の資格条件に合格するとの十分な証拠を示すまでの間となる。

今回の決定は既に存在している契約には適用されない。

BPにとって米国は世界の石油生産の20%以上を占めており、BPは過去5年で米国に520億ドルの投資をしている。
これは他のどんな石油・ガス企業よりも多く、またBPの投資先としては最大である。
事故の後も、米国政府はBPにメキシコ湾で50件以上の新しいリースを認めている。
しかし、この命令により、11月28日に行われた20百万エーカーの入札からも除外された。

BPも既存の契約には関係ないとしている。また、EPAは協定案を準備中で、合意できれば停止は取り消されると述べている。

なお、BPは米国防総省への最大の燃料供給業者で、2011年の取引額は13.5億ドルとなっている。




BPは11月28日、北海の石油・ガス田の一部の権利をアブダビのTAQA に売却する契約を締結したと発表した。
売却額は1,058百万ドル+アルファで、追加分は石油価格と生産量により変わるが、250百万ドルを上回ると期待している。

1,058百万ドルのうち、632百万ドルを手付金として既に受領している。
追加分は3年にわたり受け取る予定。

売却資産は以下の通り。

石油・ガス田 BP その他
Brae South, Central, North and West 27.70% Marathon(Operator)
East 33.21%
Braemar  52.00%
Maclure     37.04%(Operator)  
Harding 70.00%(Operator)  
Devenick 88.70%(Operator)  

売却先のTAQAはAbu Dhabi 政府のAbu Dhabi Water and Electricity Authority (ADWEA)が51%を所有し、上場している。
事業はOil & Gas とPower & Waterで、Oil & Gasでは北米、英国、オランダで石油・天然ガスの開発・生産を行っている。

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BPのCEOのBob Dudleyは、これは長期的に成長の可能性のある高価値の少数資産に集約するというBPの戦略に沿ったものとしている。

BPは北海(英国&ノルウェー)の主たる投資家で、生産量は石油換算で日量20万バレル、確認埋蔵量では30億バレルに達する。

今後5年間で100億ドルを投じる計画で、英国領で3件、ノルウェー領で2件の大きなプロジェクトが実施されている。

一方で、北海での小規模資産の売却を進めており(三井物産向けを含む、下記参照)今回の取引を含め、これまでの売却額は28億ドルとなった。

ーーー

BPは2010年初め以来、資産売却を続けており、今回の売却を含めると約370億ドルとなる。

目標は2010年から2013年の間に380億ドルで、目標達成は確実となった。


主な売却は以下の通り。

発表 売却資産 売却相手 売却金額
  百万ドル
2010/7 北米とエジプトの石油資産 アパッチ 7,000
2010/8 コロンビアの石油関連資産 コロンビア国営Ecopetrol、カナダTalisman 1,900
2010/9 マレーシアのエチレン、ポリエチレンJV持分 ペトロナス 363
2010/10 ベネズエラとベトナムの川上事業 TNK-BP 1,800
2010/10 メキシコ湾の4油田の権益 丸紅 650
2010/12 アルゼンチンのPan American Energy の持株 Bridas その後
Cancel
2010/12 ほとんど全てのパキスタンの権益
 同国南部のSindh provinceの9つのブロック
 アラビア海の4つの海上ブロック
United Energy Group Limited
(連合能源集団)
775
2011/3 U.S. Fuel Storage and Pipeline Assets Buckeye Partners L.P 225
2011/3 Wattenberg, Colorado natural gas processing plant Anadarko Petroleum 575.5
2011/4 ARCO Aluminum 住友軽金属等の日本企業連合 680
2011/5 北海油田 Wytch Farm Perenco UK 610
2011/9 Namibia, Botswana, Zambia, Malawi and Tanzania
の燃料販売事業
Puma Energy 296
2011/11 メキシコ湾 Pompano and Mica fields Stone Energy Offshore 204
2011/12 Canadian NGL Business Plains Midstream Canada 1,670
2012/2 Kansas ガス田、精製プラント  LINN Energy 1,200
2012/3 北海 Southern Gas Assets Perenco UK 400
2012/6 Jonah and Pinedale upstream operation(Wyoming)  LINN Energy 1,025
2012/6 北海 Alba and Britannia fields 三井物産 280
2012/8 Texas Midstream Gas Assets Eagle Rock Energy Partners 227.5
2012/8 Carson Refinery
ARCO Retail Network
Tesoro 2,500
2012/9 メキシコ湾油田 Plains Exploration and Production 5,550
2012/9 マレーシアのPTA事業 Reliance Global Holdings 230
2012/10 Texas Cityの製油所 Marathon Petroleum 2,500
今回 北海 TAQA 1,058
+250

 




米財務省は11月27日、主要貿易相手国の為替政策に関する報告書(為替政策報告書)を発表した。     

そのなかで、「入手可能な証拠は、人民元が依然大幅に過小評価されていることを示している」と指摘したものの、「為替操作国」(currency manipulator)への認定は見送った。

報告では、2010年6月から2012年11月初めまでに、人民元はドルに対し9.3%切りあがり、インフレ率を調整した実効為替相場では12.6%上昇し、貿易収支と経常収支はGDP比でピーク時の各 8.8%、10.1%から 各 2.6%に下がったとしている。

更に、2011年第3四半期以降、中国当局の市場介入が「大幅に」減少し、資本規制が緩和されたことを挙げ、 「これらの進展を鑑み、財務省は、為替操作に関する法律が定める基準を中国が満たしていないと結論付けた」と述べた。

人民元の終値は本年7月後半から上昇を続けている。
11月27日の終値は6.2223人民元の最高値をつけ、弾力化前(2010年6月18日)に対して 9.71%の上昇となった。

中央銀行は4月16日に一日の変動幅をこれまでの±0.5%から±1.0%に変更した。

終値が中間値を上回り始めた9月には中央銀行は中間値を引き下げたが、2012年10月以降、実績が変動幅の上限(1%)に張り付いてからは、中間値をほとんど下げていない。
現在、 終値は上限にほぼ張り付いている。

これは介入がないことを示している。

 

参考  2010/7/12 米財務省、中国の為替操作国認定を見送り

 

 

 

 

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