住友化学は11月25日、シンガポール法人が2006~2010年にカンボジア政府の幹部2人に対し、契約受注の見返りに256,471ドルを支払う不正取引があったと発表した。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金( Global Fund
to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が11月14日に発表した調査報告で明らかになった。
基金の援助で行ったマラリア感染防止用の同社の防虫剤入り蚊帳
Olyset Net
の契約を受注するたびに、架空のコンサルタント会社を経由して手数料名目で個人口座に見返り金を振り込んでいた。
2006~10年の間に計7回、カンボジア政府のマラリア対策組織(National
Centre for Parasitology, Entomology and Malaria Control )の高官2人に対し、蚊帳の受注額の2.25~6.5%を渡した。
同社によると、不正にかかわったのは日本人ではない部長級マネジャーと部下の社員で、内部調査に対し不正な資金供与を認めたため、懲戒解雇した。
基金の発表では、住友化学シンガポールのほかに、スイスに拠点を置き、蚊帳("PermaNet")や水の濾過フィルター("LifeStraw")など緊急事態や病気に対応する製品に特化した企業のVestergaard
Frandsenの不正が判明した。
同社は154,241ドルを支払っていた。
両社の支払った合計410,712ドルのうち、National CentreのDirector が350,904ドル、Deputy Directorが59,809ドルを受け取っていた。
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本件で何故、住友化学が賄賂を払ったのか、不思議である。
先ず、カンボジアは基金の支援を受けて蚊帳を購入することは決まっており、供給メーカーは多くないし、Olyset NetはWHOからも使用を推奨されていることもあり、賄賂を払わなくても採用されるのはほぼ確実であろう。
Olyset Netは多くの国で採用されていることから、基金は価格を分かっているはずで、賄賂分を価格に上乗せすることは不可能と思われ、賄賂分は持ち出しになる。
その意味では、「不正行為」であることは間違いないとして、基金に損失を与えてはいないと思われる 。
基金も "all the mosquito nets procured by that grant were provided as intended" としている。
もしかすれば、カンボジアでは、インドネシアなどと同様に、賄賂なしでは物事が動かないということなのかもしれない。 (言い訳にはならないが)
インターネットでは、カンボジアへの入国の際に賄賂がいるとか、「(交通違反の罰金の代わりの)ワイロを受け取らない交通整理員」としてプノンペン市内の男性公務員を紹介した動画が、カンボジアのフェイスブックで人気となっているとの記事が出ている。
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Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malariaは世界で毎年合計600万人以上の命を奪っているエイズ・結核・マラリアに立ち向かうために、国や政治を越えて新しい資金調達の方法を作ろう、と、2002年に設置された世界基金(本部 :ジュネーブ)で、この3つの病気に関する治療・ケア&支援、予防の各プログラムに資金を配分している。
2000年の九州・沖縄サミットでわが国が初めて感染症対策を主要議題に取り上げ、それがきっかけで設立された。
また、アナン国連事務総長が2001年4月に "call to action"を発表し、世界に行動を起こすよう呼びかけた。
これまでに151か国の1000件を超える事業に資金供与を承認しており,2012年には約33億ドルを実際に供与した。
世界基金の支援により,設立以来約870万の命が救われている。
我が国は世界基金に対し,これまで17.4億ドルの拠出を行っており,米国,フランス,英国,ドイツに次いで第5位の拠出国である。
2009年末の基金のレポートは次の通り述べている。
2009 年12月までに、発展途上国のエイズ・結核・マラリア対策への支援として承認された金額は総額192億ドル、そのうち100 億ドルが支出ずみ。
設立以来の僅か8 年間で、世界基金はグローバル・ヘルス( 地球規模の保健医療課題)に対する重要な多国間援助機関となった。基金を通じた支援は、発展途上国の結核対策、マラリア対策に対する国際援助総額の3分の2、エイズ対策では5分の1を占める。
2009 年12 月までに490万人の命が救われたと推計されている。そして、世界で3300万人 のHIV 陽性者、何百万人ものマラリア患者や感染リスクにある人々、年間940万人の結核患者が、生きる望みを取り戻すことに役立っている。
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11月14日のレポートで基金は以下の通り述べている。
基金は不正行為を一切許さない(zero toleranceである)。
積極的に調査を行って不正を暴き、不正に使われた資金を取り戻す。調査結果は透明性の観点から公表する。今回、2006年から2011年の間に、国際企業の2社がカンボジアの役人2名に、マラリア予防のための殺虫剤練り込み蚊帳の供給契約を得る見返りに約41万ドルのコミッションを支払ったことが判明した。
このため、基金は2社(Vestergaard Frandsen とSumitomo Chemical Singapore)との契約を一時停止する。
両社は調査にフルに協力し、関係した従業員に対する処分を行い、将来のための予防措置を講じた。
基金はカンボジアでのAIDS、結核、マラリアと戦うため2003年以降331百万ドルを投じ、マラリアでの死亡を80%減らし、結核では45%、AIDSでは50%減らした。
今回のケースはカンボジアのマラリアとの闘いに直接の影響はなかったが、契約の見返りにコミッションを受け取ることは我々の 使命に反する。
調査の結果、コミッション問題はあったが、基金の資金で購入された蚊帳は所期の目的どおり納入されている。
基金の調査報告書は http://www.theglobalfund.org/documents/oig/OIG_GFOIG13050InvestigationCambodia_Report_en/
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