「no」と一致するもの

韓国の国会は3月30日、半導体などへの投資を促進するために企業に税制優遇措置を与えることにより、同国の半導体産業をさらに後押しする法律案「租税特例制限法の一部改正法律案」を承認した。


「K-CHIPS法」とも呼ばれる同法は、国家戦略技術の投資税額控除率を引き上げる。

同法における国家戦略技術には半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、電気自動車など未来型移動手段が含まれた。

同分野の大企業と中堅企業は現行の8%から15%に、中小企業は16%から25%に税額控除率が拡大される。

更に、 直前3年間の年平均投資金に対する投資金の増加分に対しては、今年に限って10%の臨時投資税額控除の恩恵も提供する。

適用期間は、今のところ2024年12月末まで。

政府の企財部は、「半導体への投資に25%の税額控除の恩恵を与えることで、米国など半導体強国に対して世界最高レベルの税制支援が可能になった」と説明した。


米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。


韓国では申請内容に不満を持ち、各社は申請するかどうか、ためらっている。韓国政府も米政府に懸念を伝えている。


申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):
    半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
    うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

米政府はCHIPS法に基づく補助金を申請する半導体企業に対し、ウェハの生産能力、製造歩留まり、ウェハの予定販売価格およびその推移予測、長期利益計画などの詳細な財務予測情報を国立標準技術研究所に提出するよう求めており、企業は、さまざまな営業秘密情報の開示要求やペーパーワークなどに翻弄されているという。

米商務省は3月27日、半導体補助金を申請する企業が予想キャッシュフローなど収益性指標を明らかにする際に単純に数字だけでなく算出方式を検証できるエクセルファイル形態で提出しなければならないと明らかにした。

商務省が提示した例示には半導体工場のウエハーの種類別生産能力、稼動率、予想歩留まり、生産初年度販売価格、その後の年度別生産量と販売価格増減などが含まれた。半導体を生産するのに使われる素材、消耗品、化学薬品と工場運営に必要な人件費と公共料金、研究開発費用も入力しなければならない。このほかにも従業員の類型別雇用人数と製造に使われる素材別費用まで生産に関連した詳細なデータをすべて公開するよう求めた。

公表されている半導体の歩留まりの大部分は推定値であり正確な歩留まりは核心営業秘密に属する。

「半導体は原価構造を公開すればどのような技術をどのように使い、どのような工程を導入したのか敏感な情報が推定できる。競合相手である米マイクロンにこうした機密が伝われば韓国企業の競争力に相当な打撃になりかねない」との声がある。

米国政府は又、補助金受給企業は10年間にわたり中国にある半導体工場への投資に制限を受けることとなる。

米韓政府の交渉で、先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、ひとまず10年間は中国工場を安定して稼働できることになった。

また、当初合意した基準以上に利益を上げた場合にその一部を米政府と共有することが義務付けられている。

2023/3/13 米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始

SKグループは、最先端の半導体パッケージング工場の建設を含め、米国の半導体部門に150億ドルの投資を計画している。SK Hynixは、米国工場建設そのものは計画通り実行するが、米国のCHIPS法の補助金申請プロセスが厳しすぎると感じており、補助金を申請するかどうかまだ検討していると している。

Samsungも、米テキサス州に総工費250億ドル超の半導体工場を建設中だが、SK Hynix同様、補助金を申請するか否かの姿勢を示していない。

産業通商資源省は「半導体法で定められた条件が事業の不確実性を高め、企業の経営権や技術権を侵害し、投資先としての米国の魅力を損ねる可能性がある」と述べた。

尹大統領は3月30日、ソウルを訪問した米国通商代表部(USTR)のタイ代表と会談し、「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めた。韓国産業通商資源省の通商交渉本部長は、タイ代表との会談で、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体企業にとって、米国の新しい半導体補助金の受給条件は重荷となる可能性があると述べた。

西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

「高性能な先端半導体、これは軍事的な用途に使用された場合、国際的な平和および安全の維持を妨げる恐れがある」 西村大臣はこのように話し、高性能な半導体の製造装置について輸出管理を強化すると発表した。

最先端半導体をめぐっては米中の覇権争いが激しさを増しており、米国が日本やオランダに協力を呼びかけていた。  

バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術(14〜16ナノメートル以下のロジック半導体の製造などに必要な装置や技術)の新しい輸出規制を実施すると発表した。軍事開発に欠かせないAIやスーパーコンピューターに使われる先端半導体の輸出を制限、さらに特定の先端半導体を扱う中国企業の工場に対し、米国製の製造装置を販売することも原則禁止する。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大

米国は日本とオランダにも協力を求めていたが、オランダは3月8日に先端半導体製造装置の輸出規制を強化すると表明していた。2023年の夏までに公表するが、半導体製造装置のメーカー ASMLが半導体メーカーに販売している深紫外線(DUV)露光装置に関する技術が影響を受ける。

JETROによると、中国向けの半導体製造装置全体の輸出は日本が31.5%を占め、最大である。今回の規制強化はそのうちの最先端の23品目だけでる。

今回、「国際的な安全保障環境が厳しさを増すなか、軍事転用防止目的としてWassenaar Arrangementを補完すもに半導体製造装置関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案し、特定の貨物及び技術輸出管理の対象に追加する 」こととした。

我が国をはじめとする主要国では、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、我が国及び国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っている。

国際輸出管理レジーム参加国一覧表

(WA参加国は42カ国で中国は含まれない。)


ワッセナー・アレンジメントとは、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理を実施することにより、地域の安定を損なう可能性のある通常兵器の過度の移転と蓄積を防止する目的で1996年7月に成立した国際的申し合わせに基づく国際的輸出管理体制である。

1 目的
  • (1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
  • (2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
2 設立の経緯
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。
なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。

3 基本的枠組み
 WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在している。


参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリストに掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施している。

(a)汎用品・技術リスト:9カテゴリーに分類された「基本リスト」、基本リストの中でもより機微なものと位置づけられる汎用品・技術を抜粋した「機微品目リスト」及び「特に機微な品目リスト」の3種が存在する。

 【基本リストの9カテゴリー】
  (1)先端材料(超伝導材料、セラミック等)
  (2)材料加工(工作機械、ロボット等)
  (3)エレクトロニクス(集積回路、半導体等)
  (4)コンピュータ
  (5)通信関連(ケーブル、暗号装置等)
  (6)センサー・レーザー(ソナー、暗視センサー、レーダー等)
  (7)航法装置(ジャイロスコープ、GPS等)
  (8)海洋関連(潜水艇、水中用ロボット等)
  (9)推進装置(ロケット推進装置、無人航空機等)

(b)軍需品リスト:22項目にわたって武器(通常兵器)等を全般的に網羅したリスト。


今回、下記を含む23品目を輸出を制限する「リスト規制」の対象に加える。 軍事転用の防止が目的だとしている。

東京エレクトロンやニコン、SCREENホールディングス (京都市にある半導体・液晶製造装置・印刷関連機器などの産業用機器を製造する企業グループの持株会社)など10社程度が影響を受けるとみられる。

メーカー
真空状態で不純物を除去する洗浄装置 SCREENホールディングス、東京エレクトロンなど
極端紫外線(EUV)フォトマスク向けの成膜装置 東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、アルバックなど
EUVフォトマスク向けの防護カバー ニコン、三井化学など
フッ化アルゴン(ArF)を使う液浸露光装置   ニコンなど
記憶素子を立体的に積み上げるエッチング装置 東京エレクトロン、日立ハイテクなど


詳細は省令改正案 参照


対象品目は輸出時に経産省の審査を受ける。

審査が簡略化されるのは、Wassenaar Arrangement加盟の米国や韓国、台湾など42カ国・地域(国際輸出管理レジーム参加国一覧表 参照)に限られ、中国は含まれていない。(ロシアは含まれている)

省令改正に向けて3月31日からパブリックコメントの募集を始め、省令改正は5月の公布、7月の施行を予定する。


付記   中国外交部の反応

「日本側はこれまで中国側との意思疎通で、両国の経済・貿易関係は緊密であり、日本側は対中協力の推進に尽力し、『脱中国化』の手段を取ることはないと繰り返し表明してきた。日本側が実際の行動によってこの姿勢表明を実行に移し、公正な立場と市場原則を堅持し、自らの長期的利益の観点に立ち、グローバルな産業・サプライチェーンの安定性と円滑性を維持し、自由で開かれた国際貿易秩序を維持し、中日両国及び双方の企業の共通利益を維持することを望む」

「中国は世界最大の半導体市場であり、中国の集積回路輸入額は年間6000億ドル近くに達する。日本にとって中国は最大の半導体輸出市場であり、日本の対中輸出額は年間100億ドルを超える。中国市場は日本の半導体機器輸出シェアの4分の1を占め、中日双方はこれまで互恵・ウィンウィンの協力を実施してきた。日本側の講じようとする対中輸出管理は、この地域、さらには世界の半導体産業のサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、日本企業にも損害をもたらすだろう」

「中国は日本の規制の影響を評価し、日本側が人為的に中日の通常の半導体産業協力に制限を設け、中国側の利益を深刻に損なった場合、中国側は座視することはせず、断固として対処する」

東芝は元役員に対し損害賠償の訴訟を行っていたが、東京地裁は3月28日、判決を言い渡した。


東芝は当時の西田厚聰社長(故人)、佐々木則夫社長、田中久雄社長、村岡富美雄副社長、久保誠副社長に対し、合計32億円を連帯して支払うよう求めていた。

同社は本件に関し金融庁に課徴金73億7350万円を支払い、過年度決算の修正に係る監査作業で監査法人に20億7153万の監査報酬を支払った。

このうち、課徴金分で29億円、監査報酬分で3億円、合計32億円を連帯して支払うよう求めた。

別途、株主代表訴訟で個人株主がインフラ事業グループ担当だった北村秀夫副社長と真崎俊雄副社長など他の歴代幹部10人を訴え、合わせて審理された。

これに対し旧経営陣側は、会計処理の違法性を否定し、「注意義務違反はなかった」と争う姿勢を示していた。

京地裁は元役員のうち佐々木、田中両社長、久保北村、真崎副社長の5名に3億860万円の支払いを命じる判決を言い渡した。不正会計問題で旧経営陣の個人責任が認められた判決は初めて。

会社提訴のうち佐々木氏と田中氏の認容額は各1億円、久保氏の認容額は2億円で4億円だが、連帯負担のため合計2億円となる。代表訴訟での2人が1億860万円となる。

西田氏、村岡氏に対する請求は棄却された。

判決はインフラ工事での損失引当金の過少計上などを米国会計基準に反する違法な会計処理だったと認定し、田中元社長や佐々木則夫元社長ら5人は「違法な処理を認識でき、是正する義務を怠った」などと結論付けた。 久保氏については1件で「引当金の先送りを提案した」、田中氏は2件で「違法処理を助長する指示をした」と認定した。

しかし、パソコン事業での利益のかさ上げなどは会計基準違反に当たらないと判断、西田厚聡元社長らの賠償責任は認めなかった。
東芝は同日、「今後の対応は判決内容を精査し、代理人と協議のうえ決定する」とのコメントを出した。

東芝による損害賠償の請求は下記の通り。 黒塗り部分は対象外で、それ以外は各金額を連帯で負担することを求めた。

2015117日 提訴 

2016年1月27日付 追加   

判決
連帯して3億円 課徴金分対応追加 26億円 監査報酬対応 3億円
西田厚聰 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上

連帯

請求
棄却

佐々木則夫 地下鉄向け電車用電機品の納入受注損失引当金計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
1
田中久雄 WECの発電所建設における損失引当金の計上 
ETC 設備更新工事における損失引当金の計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
1億
村岡富美雄 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 請求
棄却
久保誠
WECの発電所建設における損失引当金の計上 
地下鉄向け電車用電機品の納入
受注損失引当金計上
ETC 設備更新工事における損失引当金の計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
2億
15億円 8億円 2億円 1億円 1億円 2億円 連帯
4億円


上限
2億円  
対象事案により嵩上げされた営業利益額の割合を勘案 事案数にそれぞれの事案の修正年度数を乗じた数の合計を監査のために要した総工数で割った。

東芝は少なくとも2009年3月期から、7年間にわたり巨額の利益をかさ上げしてきた。累計額は2306億円にのぼる。

東芝では2008年ころから「チャレンジ」と呼ばれる経営陣の無茶な業務目標の強要が始まった。各部署に、短期間ではおおよそ達成不可能な利益目標を示し、圧力をかけた。下請けや関連会社にも「チャレンジ」を押し付け、協力金を要求した。

Lehman shock での大赤字で西田社長が 赤字の映像事業撤退却の脅しをかけ、「テレビ事業の黒字化は社長の公約、あらゆる手段で黒字化を」と述べ、パソコン部品の押し込みで黒字化 したのが始まりとされる。

Buy-Sell取引で、部品供給価格で利益を計上、押し込み販売を行った。 

2012年には佐々木社長がパソコン責任者に「3日間で120億円の営業利益改善」を要求した。ノーマル化の提案に対し、「会社が苦しいときにノーマルにするのは会社にとって良くない」 と述べたとされる。

小笠原 啓 東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

2015年1月に社員が証券取引等監視委員会に内部告発し、不正会計問題が明らかになった。

粉飾額は最終的に2306億円となった。 (下表の「修正前」は粉飾決算の数字)

2015年5月に発足した第三者委の調査によって、コーポレートガバナンス(企業統治)が骨抜きにされ、「チャレンジ」という名のパワーハラスメントが横行していたこと が浮き彫りになった。

内部統制すべき経理部がチャレンジ原案作成していたこと、取締役会、監査役会、会計監査人がチェック機能 を果たしていなかったことが分かった。上司の意向に逆らえない企業風土であった。

2015年12月に金融庁が新日本監査法人に行政処分を行った。法人に21億円の課徴金に新規契約業務の3カ月間停止、担当公認会計士に6ヶ月~1ヶ月の業務停止命令が出た。


東芝は2016年12月27日、
前年末のStone & Webster (S&W) 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。

2016/12/30 東芝、Stone & Webster買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性

日本産業パートナーズによる東芝TOBにつながる。

ソニーグループとパナソニックホールディングスの有機EL事業を統合して設立されたJOLEDは3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。

負債総額は約337億円。

JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権を継承することなどで、ジャパンディスプレイと基本合意した。

ジャパンディスプレイはJOLEDの設立時に株式15%を取得したが、2020年3月に全株式を譲渡し、現在は資本関係がない。

ーーー

同社は有機 EL ディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックの有機 EL ディスプレイの開発部門を統合して、2015 年1 月に事業を開始した。

官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニー、更に日立ディスプレイズ中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資して「ジャパンディスプレイ」を設立した。最大顧客の米アップルが iPhone の新モデルで初めて有機ELを採用したことから、ジャパンディスプレイも有機EL事業の進出を図り、2015年1月にソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合し発足したJOLEDに15%を出資した。
ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めた。


経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約

ジャパンディスプレイ(JDI)は2023年2月10日、筆頭株主のいちごトラストの支援をうけ、借入金1016億円を圧縮し、ゼロにすると発表した。

2023/2/13 ジャパンディスプレイ、株式転換や債権放棄で無借金会社へ 

JOLEDは、RGB印刷方式による21.6型4K高精細の有機ELパネルを世界で初めて製品化し、2017年12月5日より出荷を開始した。
大画面に均一に一括塗布する設備技術・プロセス技術の実用化とともに、光取り出し効率が高い独自の「トップエミッション構造」により、優れた色再現性や広視野角を実現した。

住友化学が開発した高分子発光材料を使用する。印刷方式は蒸着よりコストが安い半面、パネルが大型になるほど均一に材料を塗布するのが難しかったが、これを使えば塗布のムラができにくくなる。 

ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めたが、中期経営戦略の見直しに伴い、2018年3月30日、JOLEDへの51%出資方針を取り消した。

JOLEDは2018年8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。引受先の内訳はデンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。

  当初 増資
産業革新機構 75% 196億円  
ジャパンディスプレイ 15% 39億円  
Sony 5% 13億円  
Panasonic 5% 13億円  
デンソー     300億円
豊田通商     100億円
住友化学     50億円
SCREEN     20億円
合計   262億円 470億円

2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資

その後、ジャパンディスプレイの経営悪化に伴い、2019年に447億円の支援と引き換えにジャパンディスプレイの持つJOLEDの全株式が産業革新機構から新設分割されたINCJに譲渡された。

JOLEDは2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結した。華星光電日本を引受先とする第三者割当増資により200億円を調達するとともに、独自の印刷方式有機ELディスプレイ製造技術を活用し、TCL CSOTとテレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始した。

今回、ジャパンディスプレイが発表した同社株主は下記の通り。

INCJ:56.8%  2018年9月、産業革新機構から新設分割
デンソー:16.1%

華星光電日本:8%

産業革新機構→INCJは設立前から支援しており、支援総額は約1390億円。さらなる支援が必要だが、「追加出資は望めない事態に至った」としている。

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JOLEDは2019 年11 月には、能美事業所において、世界初の印刷方式有機 EL ディスプレイ量産ラインの稼働を開始し、高性能・高品質な有機 ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産するとともに、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。

しかしながら、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化により同社を取り巻く状況は厳しさを増した。

2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結したが、収益が伸び悩むとともに、資金流出が続いた。

JOLEDの業績推移
売上高営業利益純利益利益乗余金
2018/3 5600万円 -149.19億円 -147.84億円
2019/3 14.42億円 -247.53億円 -259.04億円
2020/3 18.57億円 -284.07億円 -372.53億円
2021/3 59.08億円 -310.65億円 -877.85億円
2022/3 56.55億円 -211.18億円 -239.26億円 -1197.87億円


量産ラインを本格稼働した2021年3月期には年売上高約59億800万円を計上した。しかし、量産ラインの立ち上げが想定よりも遅れ、稼働率は低位にとどまっていた。

加えて中型有機EL自体が新しく、既存の液晶と比較して価格が高いこともあって、顧客側の本格採用の意思決定にも時間を要し、2022年3月期の年売上高は約56億5500万円に減少した。
損益面も量産稼働による労務費負担等もあって、赤字計上が続き、債務超過に転落していた。

同社は2021年3月、資本金をそれまでの877億円から1億円に減資した。資本金1億円以下の企業は税制上、中小企業とみなされることから、税負担を軽くする事が目的で、悪化する財政の健全化に向けた判断とした。

今回、このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となるため、裁判所の関与の下で当社の事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、民事再生手続開始の申立てを行うに至った。

今後、技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る。他方、製品ビジネス事業(製造・販売部門)については、維持・継続に多大なコストを要する一方、早期かつ抜本的な収益改善の道筋がたっておらず、同事業をこれ以上継続することは困難であることから、能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)は閉鎖し、同事業から撤退することとした。

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半導体もそうだが、液晶ディスプレイ(ジャパンディスプレイ)も有機EL(JOLED)も日本の家電メーカーが自社の原料の自製でスタートした。外部の需要家を対象としないため、小規模のまま行き詰まり、政府の支援を受けた。
これに対し、インテルやTSMC、サムスン等は世界の需要家を相手に、事業家であるトップの判断で積極的に大規模投資を早期に行い、事業を拡大している。

幸いにもジャパンディスプレイは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した「いちごアセット」が救済に乗り出したが、日本的経営ではこの種の事業はやっていけないのは明白である。

韓国のLG Energy Solutionは3月24日、米アリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表した。

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同社は2022年3月24日、1兆7000億ウォン(約1700億円)を投じて米アリゾナ州に電池工場を建設すると発表した。2024年の稼働を目指す。

生産能力は11 GWhで同社の米工場として初めて円筒形電池を手掛ける。Teslaと米新興EVメーカーのLucid MotorsはEVに円筒形電池を搭載している。

しかし、同社は2022年6月29日、この計画について査定し直すとした。米国の異例な経済情勢と投資環境によりさまざまな投資の選択肢を見直しているとした。

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今回同社は、米アリゾナ州Queen Creek の電池工場建設について、投資規模を7兆2000億ウォン(55億ドル、約7200億円)と大幅に増やし、計画を進めると発表した。

建設費高騰などで計画をいったん止めていたが、需要の高まりやInflation Reduction Act での補助金支給の動きも踏まえ、生産規模を増やして再起動させる。

車載用の円筒型電池生産棟(投資額4兆ウォン)と、エネルギー貯蔵装置(ESS)向けパウチ型リン酸鉄リチウムイオン電池生産棟(投資額3兆2000億ウォン)を建設する。

2023年着工で、それぞれ2025年と2026年の稼働見込み。生産能力は車載向けにEV35万台分に相当する27GWh、ESS向けに16GWhを確保する。

世界の電池メーカーの中でESS向け専用の電池工場を建設するのは同社が初めてという。

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TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。
「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「18650」と呼ぶセルが、モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。

パナソニックはTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「4680」は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。

LG Energy Solutionは2022年6月にTesla向けに新型4680円筒形バッテリーを生産する同社の梧倉第2工場の生産容量を9GWh分増強すると発表している。

韓国紙によると、LG Energy Solutionが今回、一旦中止したアリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表したのは、LGとTesla とのバッテリー供給協議がまとまったからではないかという。

別途、 LG Energy Solutionはトヨタとの間でも電池供給の交渉をしていることを明らかにしている。

Teslaは1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。新バッテリー工場では最新のバッテリーセル「4680」を製造し、生産能力は年間で最大200万台分となる予定。この工場ではパナソニックとTeslaのJVが電池を生産しているが、今回の増設はTeslaが単独で実施するとみられる。
Teslaは2022年2月にFremontのパイロットプラントで4680の電池を生産したことを発表している。

Teslaが電池を自製する理由としては、バイデン政権が決めたインフレ抑制法が考えられる。条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

JV方式では、Teslaとパナソニックはこれを折半することとなる。今後、Teslaが単独で生産する場合、利益は大きい。

2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資

さらに、Teslaは将来的には航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だとしている。Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

LG Energy SolutionがTeslaを主な供給先として投資を決めたとしても、パナソニックと競合するうえ、Tesla自身とも競合することになる。

ただでさえEVメーカー自身による電池生産計画が相次ぐ中、車載電池メーカーに多額の補助金が支払われることとなり、この動きはひろまるだろう。電池メーカーの立場は苦しいものになる可能性が強い。

ーーー

LG Energy Solutionの北米での電池工場は下記のとおりとなる。

単独:Michigan、Arizona(今回)
GMとのJV:Tennessee、Ohio、Michigan
StellantisとのJV:カナダOntario
ホンダとのJV:Ohio

2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式 

日本産業パートナーズは3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表した。

東芝もTOBを受け入れると発表したが、価格が想定より低かったことから、現時点で応募を推奨するか否かについては意見を表明せず、TOB開始までに方針を決める。

付記

東芝は6月8日、日本産業パートナーズなど国内連合による東芝へのTOBについて、株主に対して応募を推奨すると発表した。


また東芝側は他陣営からの、より有利な買収提案を引き続き受け付けるとしている。

日本産業パートナーズは、発行済株式全て(自社株を除く)の買収を目指す。買付の下限を66.7%に設定した。1株4620円の買付で、総額は約1兆9987億円となる。     

買付予定株数 432,630,045株
下限(66.7%) 288,564,300株

  TOBが成立しても100%でない場合は、完全子会社とするためのスクイーズアウト手続を実施する。

TOB価格4620円は 、3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となる。

日本産業パートナーズが優先交渉権を得た2022年11月に提示した価格は5200円だった。
その後、東芝が業績見通しを下方修正したことを受け、2023年2月に4710円に引き下げた。
東芝は再度見通しを下方修正したため、3月に4610円に下げた。

単位:億円 2021年度実績

2022年度予想

2022/5/13 2022/11/11 2023/2/14
売上高 33,370 33,000 33,500 33,200
営業損益 1,589 1,700 1,250 950
当期純損益 1,947 1,750 1,900 1,300


その後の交渉で10円を上積みし、4620円とした。

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2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。
東芝は4月19日に
CVCから新たな書面を受領したもののなんら具体的な詳細情報が記載されておらず、東芝は買収交渉の中断を発表した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

今回のTOB価格4620円は3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となるが、現在の株価は既に買収を折り込んでいる。

2021年のCVC Capital の買収提案前の株価との対比では20.6%の上乗せとなる。

今回の発表を受け、3月24日の東芝株は一時前日比6.4%高の4483円を付けた。

日本産業パートナーズは、出資金1兆円、銀行融資1兆2000億円の合計2兆2000億円を集めたとされる。このほか、新東芝が運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も得ている。

関係者の話では、参画する企業は下記のとおりとされる。

オリックスが出資と融資で最大3000億円程度
中部電力が1000億円弱を出資
JIP自身も1000億円を出資
ロームの投資額は最大で3000億円規模と参加企業で最大級  半導体の原材料調達や生産での協業を探る
スズキも数百億円を出資  東芝から車載リチウムイオン電池を調達
大成建設も出資する見通し

付記

オリックスは5月10日、東芝買収について2000億円を拠出すると明らかにした。内訳はエクイティ出資を1000億円、劣後ローンなどを1000億円としている。同社は「東芝の企業価値と経営改善計画の実効性を評価」とコメントした。


東洋経済によると、融資の内訳(融資枠を含む)は次のとおり。合計1兆4000億円のうち、三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円
三井住友信託(準主力) 2,200億円
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円
あおぞら銀行 450億円
合計 14,000億円 100%

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出

今回、2兆円を新東芝への出資に充てるが、出資社は、国内・海外のファンドのほか、国内事業会社17社、国内金融機関6社としている。海外事業会社も出資する。


日本産業パートナーズは7月下旬をめどにTOBを開始する見込みだが、競争法に関連した各種認可が一つ目の壁になり得る。

国外では、米国、カナダ、ドイツ、チェコ、ルーマニア、英国、モロッコ、モンテネグロ、ポーランド、スペイン、ベトナム、インド、サウジアラビア、エジプト、メキシコ、トルコ、オーストリアにおいて競争法上の手続が必要になる。

東芝は原子力事業や防衛事業など国の重要政策に関わる複数の事業を手がけていることから、外国為替法に基づいて国が外資による買収などを規制する対象となっているが(東芝は改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱えている)、今回は日本連合のため、問題はないとみられる。


焦点は、株主の約3割を占める物言う株主らがTOBに応じるかどうかである。

大量保有報告書によると、下記各社を含め全株主の3割強となるとされる。

Effissimo Capital Management 9.9% 筆頭株主
Farallon Capital Management (Chinook Holdings との共同で)5.37%(うちFarallonは2.12%)
3D Investment Partners (Singapore) 2.5% → 7.2% 2位株主に
Elliott Investment Management  買い増しで5%

付記 本発表前に3D Investment Partnersが株式の一部を売却、4.9%になっていたことが判明した。本TOB価格より低価格での売却。

東芝は2022年6月の総会で、Farallon CapitalElliott Investment から1名ずつ、社外取締役を受け入れた。

彼らは2017年12月5日払込の6000億円の第三者割当で株主となった。(その後の買い増しも)

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。後記のとおり、そのために東芝は振り回された。

この際の払込価格は(その後の株式併合の結果)2628円で、当時のレート(112.59円/$)で換算すると23ドル程度となる。

その後の買い増しなどで簿価は変わっていると思われるが、今回の4620円は130円/$ベースで35.5ドルとなり、損はしていない。 東芝の現状からみて、これよりも有利な案が出るとは考えにくい。多数が応じると思われる。

TOBで発行済株式の2/3以上を取得できれば、株主総会の特別決議で残りの株主から強制的に株式を買い取ることができる。(スクイーズアウト手続 )

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2015年4月に東芝の不正会計問題が発覚した。

2016年12月には米の原発事業で巨額損失が発覚した。当初の見通しよりさらにおよそ2000億円拡大し、7000億円規模に上る可能性があるという見通しを取りまとめた。

2017/1/24 東芝の原子力事業の損失の実態

東芝株式は2017年8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。来年3月末までに債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

2017/8/2 東芝、東証2部降格

東芝は2017年9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。

売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみた。

2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表 

しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。

中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが2018年5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。2018年6月1日に譲渡が完了した。(増資がなければ上場廃止となっていた。)

このため、東芝は11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。新株式の発行総額は約 6000億円で払込みは12月5日に完了する予定。

経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。これ以降、東芝は「物言う株主」対策に振り回されることとなった。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

東芝の車谷社長兼CEOが4月14日付で辞任した。

CVCによる買収は車谷社長兼CEOが持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長らは、こうした動きを「私物化」と判断し、取締役会に車谷氏の解任動議を提出する予定だったとされる。

2021/4/14 東芝 車谷社長辞任

東芝は2021年6月、前年7月の株主総会に関する調査報告書を公表し、同株主総会では、経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘されたことを明らかにした。報告書は、株主総会は「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けている。

東芝は6月13日に臨時取締役会を開き、6月25日に開催する定時株主総会に諮る取締役選任案や、その後に開催する取締役会で正式に決める執行役選任案の変更を決定し、計4人が退任すると発表した。

2021/6/15 東芝、異例の取締役候補者変更 

6月25日の定時株主総会で、永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。当初の13人の候補のうち、2人を事前に下したが、更に2人が否決された。
会長兼社長CEOと副社長1人以外は全て社外取締役となった。

2021/6/26 東芝、株主総会

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

インフラサービス Co.デバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。

2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編

しかし、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し

しかし、3月24日の東芝の臨時株主総会で会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。

「2分割案」でビルソルーション3社と東芝テックを「非注力事業」とし、早期の売却対象としたのは、実は、物言う株主(アクティビスト)を満足させようと編み出された側面が強かった。

2022/3/25 東芝株主総会、2分割案を否決 

東芝は2022年4月7日、取締役会を開き、社外取締役で構成する特別委員会を設置し、株式非公開化を含む戦略的選択肢を検討することを決めた。買収を検討する投資家との交渉にも関与し、最良の非公開案を特定するという。

2022/4/8 東芝、2分割案の検討中断、非公開化も検討 エレベーター事業等の売却を再検討

東芝は2022年7月19日の取締役会で、複数のパートナー候補を選定した。非公開化関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。

報道では、下記の各社が選ばれたとされる。

1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)

その後、産業革新投資機構(JIC)が日本産業パートナーズ(JIP)との連携を解消する方針であることがわかった。

日本産業パートナーズ(JIP)は国内企業の出資を募り2次入札に臨む方針で、オリックスなどの10社超に対し、東芝への出資に参加するよう打診し、日本企業を交えた連合体での落札を目指している。これに対し、産業革新投資機構(JIC)は、事業会社の参加に消極的で、国内外のファンドとの連携を模索しており、同じく2次入札に進んでいる米Bain Capital と連合を組む方向で調整しているという。

2. 米大手投資ファンド Bain Capital

3. 欧州拠点のCVC Capital Partners

4. カナダのBrookfield

2022/7/22 東芝再編、4陣営に絞り込み? 

日本産業パートナーズ(JIP)などの連合が2023年2月9日、東芝に買収の最終提案を提出した。

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出


今回のTOBは、「物言う株主」から株を買い戻すためのものである。

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なお、三菱ケミカル元会長の小林喜光氏は東芝の不正会計が発覚した2015年9月に社外取締役就任、2017年10 月から2020年7月末に退任するまで取締役会議長も務めた。
6000億円増資を決め、後に社長CEO解任直前に辞職した車谷氏を会長として招聘した2017年11月の取締役会では議長であった。

2020年7月の退任会見で「会社が存続するかどうかの中でよくここまで回復した」と語った。

2020年9月の日経ビジネスは「東芝復活までの5年、社外取退任の小林喜光氏が明かす真実」というインタビュー記事を載せている。

6000億円の増資:「債務超過2年で上場廃止になるという制度には問題があると思う。」
 「海外投資家が6割以上を占める状況になり、いい影響もありました。経営が極めてサイエンティフィックになった。」

車谷会長招聘:「議論を進める中で、金融出身者にCEOを担ってもらい、株主との対話を重視しながらも成長戦略を実行できる人物がいいという話になった。」


 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/090200015/


NVIDIAは3月22日、三井物産と協業して、高解像度分子動力学シミュレーションやジェネレーティブAIモデルなど創薬を加速するテクノロジーで日本の製薬業界をさらに発展させるためのAI スーパーコンピュータ「Tokyo-1」を発表した。

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NVIDIA Corporationは、カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカー。1993年に米半導体製造会社のAMD(Advanced Micro Devices)を辞職したJen-Hsun Huang氏(社長兼CEO)等によって設立された。

コンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とするGPU(Graphics Processing Unit)を開発し販売する。

デスクトップパソコンやノートパソコン向けのGPUであるGeForce
プロフェッショナル向けでワークステーションに搭載されるQuadroやNVS
スーパーコンピュータ向けの演算専用プロセッサであるTesla
携帯電話やスマートフォン・タブレット端末向けのSoC(システム・オン・チップ)であるTegra

また近年は、自動運転技術の開発にも力を入れている。

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の英半導体設計 Arm Limited の全株式をNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。

しかし規制上の制約が大きく、2022年2月8日、契約を解消したと発表した。

2022/2/9 ソフトバンク、Arm Limited のNVIDIA への売却を断念、Armの株式上場に変更

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「Tokyo-1」は、NVIDIA DGXで構築されたスーパーコンピュータ。NVIDIA DGX™ H100は、第4世代のNVIDIA DGXシステムで、NVIDIA H100 Tensor コア GPU とNVLink Switch System、NVIDIA ConnectX®-7を組み合わせた世界最速のAIシステム。

三井物産は数十億円を投じて複数台購入した。10月にも創薬向けに国内に設置する。三井物産が2021年に設立した創薬支援子会社のゼウレカ(Xeureka)が運営する。

第一段階として、TensorコアGPU「NVIDIA H100」を8基搭載したシステム「NVIDIA DGX H100」が10台以上導入される予定。
DGX H100は、GPUアーキテクチャー「NVIDIA Hopper」をベースとしており、生物学や化学のための生成系AIモデルを含むTransformerモデルの学習を加速させるために設計された「Transformer Engine」を搭載する。

Tokyo-1上でソフトウェア「NVIDIA BioNeMo」を使用することにより、研究者はタンパク質構造の予測、低分子化合物の生成、骨格推定などの用途で、最先端のAIモデルを数百万、数十億のパラメーターに拡張できるようになるとのこと。

まずアステラス製薬、第一三共、小野薬品工業など国内6社が利用料を支払って使えるようにする。2024年3月までに10社まで増やす。

ユーザー企業に「NVIDIA DGX H100」ノードへのアクセスを提供し、分子動力学シミュレーション、大規模言語モデルのトレーニング、量子化学、潜在的な薬剤の新規分子構造を生成するジェネレーティブAIモデルなどをサポートする。

また、ユーザーは生成系AIクラウドサービス「NVIDIA BioNeMo」創薬サービスおよびソフトウェアを通じて、化学物質、タンパク質、DNA、RNAの一般的なファイル形式の大規模言語モデルを活用することもできる。


日本の製薬業界は、COVID-19ワクチンでみられるように、開発競争で遅れをとっている。この問題を解決するための施策の一つとしてAIの導入がある。

新薬の候補となる化合物を絞り込む「創薬研究」では、従来は実際に化合物を合成することを繰り返すため、2〜3年かかっている。スパコンは膨大なデータを使ってオンラインで絞り込むことが可能で、期間を2〜3カ月とこれまでの10分の1以下に縮められる。

しかし、現在の日本では、製薬会社が十分にスパコンを活用する環境が整っていない。マイクロソフトやアマゾンもクラウド上で創薬関連ツールを提供しているが、「空き容量が足りない、利用料が高額になりやすいなどの課題がある」(三井物産)。

三井物産は、英国でのCambridge-1 を参考にした。

NVIDIA は2021年7月、英国で最もパワフルなスーパーコンピュータ Cambridge-1 を発表した。これにより、トップ サイエンティストやヘルスケアの専門家がAI とシミュレーションのパワフルな組み合わせを利用し、デジタル バイオロジーの革命を加速し、世界をリードする英国のライフサイエンス産業を強化する。

設立パートナーである AstraZeneca、GSK、Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust、King's College London、Oxford Nanopore などの英国組織と共に、デジタル生物学によって英国のヘルスケア研究を推進し、疾病のより深い理解と医療の飛躍的進歩を実現することを目指している。


AstraZenecaは
ディープラーニングと AI で新薬の開発を加速、GSKはCambridge-1 の計算リソースを利用して、大規模データベースの遺伝学根拠を活用し、世界を変える医薬品を開発している。

King's College London は人間の脳の人工 3D MRI 画像を合成可能なディープラーニング モデルを作り、さまざまな要因が脳、解剖学的構造、病状に影響を与える仕組みを研究している。

Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust は異種システムから大量の患者データを処理、取り扱い、対応する。

NHS はスーパーコンピューティングのパワーを必要とする AI テクノロジを利用し、データを分析し、クリーンアップしている。

Oxford Nanopore はゲノミクス研究を加速している。

https://www.nvidia.com/ja-jp/industries/healthcare-life-sciences/cambridge-1/



今回、日本で参加する各社の狙いは次の通り。

アステラス製薬: AI や大規模シミュレーションは、低分子化合物の研究以外にも、抗体、遺伝子治療、細胞医療、標的タンパク質分解誘導、次世代ファージセラピー、mRNA 医薬の研究などに幅広く活用できると考えている。

第一三共:AIおよびTokyo-1の最先端のGPUリソースを駆使することで、大規模演算を行い、創薬活動を加速させることができる。医薬品デリバリーの改善、個別化医療など、新たな価値を患者に提供できる可能性に期待。

小野薬品工業:高品質なシミュレーション、画像解析、映像解析、言語モデルなど、利用範囲は非常に広い。

三井物産:製薬業界が計算創薬のための最先端のツールでこの状況を一変させることができるイノベーションハブを構築する。


米エネルギー大手Sempraは3月20日、同社とKKRが70%出資するSempra Infrastructure Partners, LP がテキサス州Jefferson CountyのPort Arthur LNG Phase 1 の投資を決定したと発表した。2027年の稼働を目指す。

Port Arthur LNG Phase 1 プロジェクトは認可済で、2 系列 年間約1,300 万トンの天然ガス液化トレイン、2 つのLNG 貯蔵タンクを持つ。設備投資総額は130億ドル。

ConocoPhillips(500万トン)、RWE Supply and Trading(225万トン)、INEOS(140万トン)、ポーランドのPKN ORLEN S.A.(100万トン)、ENGIE S.A. などと 約1050万トンの長期契約を結んでいる。

ConocoPhillipsは30%を出資する。同社は年間500万トン、20年間の購入契約を締結している。

KKRが運営するインフラファンドGlobal Infrastructure Investors IV fund が25%~49%を出資する。

Sempra Infrastructure Partnersは、KKRの出資比率次第で、20%~30%を出資する。

Sempra Infrastructure は、Port Arthur LNG Phase 2(申請中、2028年稼働予定)のマーケティングと開発を積極的に行っている。ConocoPhillipsはこれについても出資と引取の権利を得ている。

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本事業には当初、Saudi Aramco が参加する予定であった。

Saudi Aramco と米国のSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG がテキサス州で開発中のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。

AramcoがPort Arthur LNG の第1期分 年間1100万トン(その後、1350万トン)のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。

2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加

しかし、2021年6月に双方が本件を取りやめることで合意した。 この後、KKRが参画した。

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Sempra LNGは北米の5か所でLNGプラントを建設し、グローバルなLNG市場に年間45百万トンのLNGを輸出する目標を立てており、Port Arthur LNGはその一つである。

現在具体化しているのは、次の3つ。

1) CAMERON LNG (Hackberry, Louisiana)

第1期 3基計 1200万トンは昨年出荷を開始した。

同社は次の液化設備(2基)とLNGタンクの承認手続きを開始した。

2019/6/4 キャメロンLNG、出荷開始

2) 本件 Port Arthur LNG (Port Arthur, Texas)

3)ENERGIA COSTA AZUL LNG (Ensenada, Baja California, Mexico)

Sempra LNG とメキシコ子会社 IEnova が既存の輸入LNGのガス化ターミナル(Energía Costa Azul )に液化設備の建設を計画している。

1期は1系列で年間能力 240万トン。LNGタンクやバースは既存のものを利用する。2期では液化設備2系列とタンクを新設する。

Sempraは2019年3月31日、同地での液化のため、天然ガスをメキシコに輸出する連邦政府の認可を取得したと発表した。
TransCanada所有のNorth Baja Pipelineがアリゾナ州ーカリフォルニア州を結んでおり、メキシコ国境でSempra Energyのメキシコのパイプラインに接続する。

2020年11月17日、最終投資決定を行ったと発表した。

Sempraは中国へのLNG輸出を考えている。

2022年12月22日、米国エネルギー省から、米国産のLNG をメキシコから非自由貿易協定 (FTA) 諸国に再輸出する許可を受けた。

 

ドイツの自動車大手Volkswagen (VW) は3月13日、同社として初めてとなる欧州以外のEV用バッテリーセル工場を建設する場所としてカナダを選んだと発表した。

税優遇などで気候変動対策に動く企業を支援する米国のインフレ抑制法(IRA)を受け、欧州で6つの電池工場をつくる従来の計画を保留し、北米投資に傾斜する。IRAは米国のほかカナダやメキシコでの投資も対象となる。

新工場の投資額は非公表であるが、VWは最大100億ユーロ(約1.4兆円)の優遇措置を見込む。

デトロイトから北東へ約195km 離れたカナダのオンタリオ州 St. Thomasに建設する。2027年の生産開始を目指す。

VW傘下のScout Motorsは3月3日にオフロードモデルの「スカウト」の電動車ブランドとしての復活に向けて、米国サウスカロライナ州コロンビア近辺に最初の工場を建設すると発表しており、これに次ぐ北米での電気自動車関連事業となる。

「スカウト」はInternational Harvesterがかつて販売していたピックアップトラックのオフロードモデルで、2021年にVWグループのトラック・バス部門が買収した。米国で電動車ブランドとして復活させ、まず、ピックアップトラックとSUVの2車種のEVを米国市場で発売する。

投資額は20億ドルだが、IRAによる優遇措置で投資額を抑えられるとしている。

また2020年代後半にもメキシコのエンジン車工場でも新たにEVを製造できるようにすることも検討する。VWは2030年までに25車種以上のEVを米国で発売する予定で、IRAを追い風に投資を加速している。

VWは2022年7月、バッテリー攻勢を開始するために、新しいバッテリー会社「PowerCo」を立ち上げ た。グループの 世界的なバッテリー事業の責任は「PowerCo」が負うこととなり、セル生産に加えて、バッテリー バリューチェーン全体に沿った活動を担当する。同社はパートナーと共に、2030年までにバッテリー関連事業の開発に200億ユーロ以上を投資する。

カナダのギガ計画もPowerCoが担当する。

VWは2022年8月22日、カナダ政府との間でバッテリーのサプライチェーンを強化することなどを目指した覚書に署名した。EV電池の材料であるリチウム、ニッケル、コバルトの安定調達に向けてカナダと協力することで合意した。VWはカナダ国内の鉱山会社に出資し、安定的な供給を確保する 。メルセデス・ベンツも同様の覚書をカナダ政府と締結した。

参考 2023/2/20 LG Chem、北米産リチウム精鉱購買契約を締結

今回はバッテリーセル工場の詳細を発表していないが、昨年8月の時点でPowerCoの会長は、2022年内に北米工場の場所と、採掘、製錬のパートナー候補を発表することを目指していると話し、北米の生産能力は20GWhを目指していることも明らかにしている。

ーーー

VWは2021年3月、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。

遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指すとし、最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

これまでにドイツのザルツギッター、スウェーデン、スペインのバレンシアの3カ所の建設を決めていた。

VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。

VWはNorthvoltとのJV(16GWhのリチウムイオンバッテリー工場)を南ドイツのSalzgitterに設立しているが、これをVW 100%子会社とし、ここも40 GWh に増強する。

VWは2022年3月、スペインのバレンシアに40GWのバッテリーセル工場を建設すると発表した。2026年の稼働開始を予定。

2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産

2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする予定であった。

「4カ所目となる東欧での工場立地がまもなく決まる」。2022年12月の臨時株主総会でオリバー・ブルーメ社長はこう語ったが、VW社内でその後、欧州での電池計画の「保留」が決まった。

「欧州の投資環境は不透明感が強まり、状況を見定めるまで待つことが重要。意思決定を急ぐ必要はまったくない」としている。

欧州で2030年までに計240ギガワット時の電池生産量が必要だとの方針は変えていないが、2026年以降に4カ所目の投資決定を先延ばしすると示唆、工場の数についても「必ずしも6カ所になるとは限らない」と表現を改めた。

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VWだけではなく、多くの企業が昨年8月のIRA成立以降、米国投資に踏み切った。

BMWグループ:

2022年10月19日、サウスカロライナ州スパータンバーグの工場において、10億ドルを投じて新たにBEVを生産するほか、7億ドルを投じてスパータンバーグ近郊のウッドラフに高電圧バッテリー組立工場を新たに建設すると発表

2023年2月3日、メキシコ中央部サンルイスポトシ州の既存工場に8億ユーロを投じて、高電圧バッテリーとEV「Neue Klasse」を生産すると発表

Stellantis:

2023年2月28日、EV用の電気駆動モジュール(EDM)を生産するため、米国インディアナ州の3つの工場に合計1億5500万ドルを投資すると発表

ドイツ自動車部品大手Bosch

2020年8月31日、サウスカロライナ州の工場を拡張し、2億ドルを投じて燃料電池車向けの燃料電池スタックを生産すると発表

本田技研工業と韓国のLG Energy Solution:

2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcuraのEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意したと発表。

2022/9/2 ホンダとLG Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意

バイデン米政権は3月13日、アラスカ州北部の連邦政府所有地(National Petroleum Reserve-Alaska)でConocoPhillipsが計画する石油開発を許可した。ロシアのウクライナ侵攻も背景に燃料の安定供給を確保する狙い。


アラスカ州の地元当局と多くの先住民団体は税収に期待して開発に賛成する一方、温暖化防止と野生動物保護を求める環境団体は反対し、バイデン大統領の判断に注目が集まっていた。

許可されたのは同社がNational Petroleum Reserve-Alaskaで進めるWillow project。最大で日量18万バレルを生産する計画で、事業規模は70億〜80億ドルと伝えられている。

The Bureau of Land Management の発表によると、承認されたのは3つの掘削箇所(BT1, BT2 and BT3)、合計199の井戸、付属のインフラ。

Conocoは5カ所での掘削に加え、周辺地域の道路や複数の橋梁、パイプラインの整備を計画していたが、政府は環境破壊の懸念に配慮して掘削は3カ所だけを承認し、インフラ整備計画も縮小した。

https://www.nativefederation.org/wp-content/uploads/2019/01/ScottJepsen_ConocoPhillipsAlaska_Jan16_2019AlaskaDay_Presentations-3.pdf


このプロジェクトはトランプ前政権が2020年末に承認していたが、
米連邦地方裁判所は2021年8月に、環境アセスメントが不十分と判断、ライセンス許可を取消す判決を下した。

バイデン大統領は、連邦の土地での新たな石油・ガス掘削を認めないことを約束して就任した。

しかし、バイデン政権は2021年5月、この油田開発プロジェクトを支持する方針を示した。


今回の承認と同時に、バイデン政権はNational Petroleum Reserve-Alaska における将来の産業発展を制限するための重要な措置を発表した。

内務省は、特別エリアを最大限に保護するための規則作りに着手しており、特別地域として指定された 1,300 万エーカー以上の追加保護を検討する。特別地域での将来の石油とガスのリースと産業開発を制限することになる。

バイデン大統領は、NPR-A に近い北極海の約 280 万エーカーを、将来の石油とガスのリースの立ち入り禁止として無期限に指定する措置を講じる。

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