「no」と一致するもの


中国の 独占禁止法違反調査が完成車のほか、自動車部品分野に及んでいる。

中国国家発展改革委員会(NDRC)は昨年来、自動車メーカーが中国のディーラーに最低卸価格を決めていないかどうかを調査している。
最低価格設定は独禁法違反となる。

2013/8/19 中国当局、輸入車などの独占価格調査を開始 

NDRCの独禁法違反に関する調査は、完成車の価格のみに限られず、完成車販売後の部品供給ルートの独占、ディーラーの価格 つり上げ・地域限定の販売に向けられている。
これは水平・垂直方向の独占、市場の支配的な地位の濫用など、独占禁止法の疑いがある 行為の取り締まりを目的としている。

海外資本の企業は中国で、自動車部品販売の大半のシェアを占めている。
国産部品の売上は、2012年に全業界の20-25% のみとなり、外資の背景を持つ部品メーカーが75%以上を占めた。
これらの外資系部品サプライヤーのうち、100%出資企業が55%、 中国との合弁企業が45%を占めた。

NDRCは日米欧の高級車を中心に、完成車メーカーと部品メーカー、販売会社などが純正部品の価格を不当に高く維持する取り決めをしている疑いがあるとみて調査しているとみられる。

この問題について、商務部の報道官は8月9日、「中国においては国内資本企業であれ、外資系企業であれ、法律を犯せば制裁を受け、相応の法的責任を負うことになる」とコメントした。

独占の疑いのある行為に対し法律に基づいて調査を実施するのは、公平な競争を促進し、消費者の権利を守るための重要な取り組みだ。
独占行為の調査摘発は国際的に行われている。
中国は「反独占法」を施行してから6年になり、独占調査を受けた企業には国内企業もあれば外資系企業もある。反独占法の前に、すべての企業は一律に平等で、「排外的状況」などというものは存在しない。

中国汽車維修(自動車メンテナンス)協会は2014年4月、国内で一般的に流通している車種の「零整比」 (zero integer ratio)を発表した。

零整比は部品価格と完成車価格の比率を示す数値で、北京ベンツの「ベンツCクラス(W204)」の場合、この数値は1,273%に達する。 これは中国で同車種のすべての部品を取り替える場合、その費用が新車12台分に達することを意味する。
2位のトヨタ Yaris の場合も720%(7.2倍)となっている。

業界関係者は、「海外のデータによると、300%前後が最も一般的だ」と指摘している。

 

零整比

Mercedes-Benz C-Class 1,273.31%
トヨタ Yaris(ヴイッツ) 720.28%
BMW 3 シリーズ 320i 661.74%
トヨタ カムリ 503.80%
Mercedes-Benz S-Class 441.30%
Audi A6L C6 411.30%
BYD F3R 409.02%
トヨタ レクサス ES 350 408.87%
Volkswagen Bora 404.06%
ニッサン Tiida 375.92%
Audi A4L 351.25%
ホンダ Accord 342.66%
Citroen 308.82%
Volkswagen Passat 306.90%
Buick Excelle 283.95%
Volkswagen Lavida 272.75%


NDRCの動きを受け、各社は完成車と部品の値下げに動いている。

ここ10数日間に、ジャガーランドローバー、ベンツ、アウディ、クライスラーの4メーカーが完成車価格および部品価格を調整した。
これらメーカーの主力製品の多くは、高価格の高級車や輸入車で、どちらも国内と国外との価格差が非常に大きく、部品価格と完成車価格との差も非常に大きく、暴利との批判を受けている。
ジャガーランドローバーの場合、値下げ後も一部製品の価格は欧米市場での販売価格の3倍前後になるという。

多くのメーカーは厳罰を回避することは難しいと考え、主体的な値下げによって少しでも処分を軽くしようとしているとの分析がされている。

「反独占法」の規定によると、独占行為があった企業は最高で年間売上高の1%以上、10%以下の罰金を科される。
ベンツやアウディなどは売上高が巨額のため、罰金額も巨額になる可能性がある。

粉ミルク 液晶パネルなどの産業に対して行った独占調査では、企業が主体的に調査に協力した場合は罰金額の引き下げや免除を受けられることもあった。
 (明治ホールディングスなどは罰金を免除された。)

東風日産、広汽ホンダ、広汽トヨタは8月8日に一部部品の価格を値下げ調整することを明らかにした
3社とも具体的にどの製品を値下げするか、値下げ幅はどれくらいかを明らかにしていない。

3社はNDRCの調査や問い合わせを受けたと説明しており、補修に使う部品の価格が高すぎるとの指摘を受けたとみられる。

主な動き:

トヨタ 広汽トヨタ自動車(広州汽車集団とのJV)は8月8日、ウェブサイトで一部部品を8月18日から引き下げると発表
「レクサス」をめぐり「当局の問い合わせには前向きに対応している」と説明
ホンダ 広汽ホンダ(広州汽車集団とのJV)は9月1日から一部部品について値下げを行うと説明した。
日産自動車 東風汽車(東風汽車集団とのJV)は、改善方法を積極的に検討していると述べた。
Mercedes-Benz 8月3日、自主的に中国市場の部品価格の調整を発表
(8月4日にNDRCが上海事務所の立ち入り調査)
Audi 8月1日から値下げすると発表した。
TFSIエンジンが22%、マルチトロニック変速機が38%、車体が16%、アンチロック・ブレーキ・システムが25%など。
値下げ後に「A6L」の「零整比」は従来の411%から291%に低下する。  
BMW 中国で提供する約2000個の自動車部品の価格を8月11日から平均20%引き下げると発表した。
空調用コンプレッサーやブレーキ盤など補修用部品が対象
クライスラー クライスラー中国自動車販売有限公司が一部の製品・部品の価格を調整したことを明らかにした。
「Jeepグランドチェロキー ART8」や「チェロキー」を値下げ。
ヘッドライト、バックミラー、スターターなど145種類の部品の価格を20%値下げする。

 

自動車メーカーとは別に、中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月6日、自動車部品とベアリングの価格カルテルに絡む日系企業12社に対する調査を完了したと発表した。
近く、
「反独占法」に基づき、12メーカーにはそれぞれ1億元(16.5億円)以下の罰金が科されることになる。

これらは
、クライスラーやアウディが行った「第三者への製品転売価格に制限を加えることに合意した縦方向の独占」とは異なり、「横方向の独占」といえるもので、たとえば入札の過程で複数の企業が密かに示し合わせて、1社が低い入札価格をうち出すと、他社がそれより高い価格をうち出すという方法で、順繰りに落札するというものだったとしている。

中国は日本製自動車部品に対する依存度が高く、2013年の日本からの自動車部品輸入額は95億8千万ドルで、自動車部品輸入全体の27%を占めた。
日本部品が各部品の輸入全体に占める割合はトランスミッションやクラッチがいずれも45%に達し、制動装置は33%に達し、日本はコア部品の輸入でドイツをはるかに上回る。

人民網は日系部品メーカーが部品価格を操作したとして、米国や欧州で摘発され、多額の罰金を課せられたことを伝えている。


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自動車部品については日米欧の独禁法当局が摘発している。

日本 2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

2012/11/24  公取委、自動車メーカー発注の自動車用部品コンペ参加業者に 排除措置命令と課徴金納付命令

ベアリングカルテルについて2013年3月29日、排除措置命令及び課徴金納付命令

米国 2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引 

2014/8/11現在で、27社(ほとんどが日系)が罰金支払いで同意。
他に、36名が起訴され、うち26名が禁固刑と罰金支払いで同意、残り10名が起訴段階。

EU 2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

ワイヤーハーネス、自動車用マットレス・シートでも。
他に、エアバッグ、安全ベルト、ハンドル、エアコン、エンジン冷却製品、照明システムなどで調査を進めている。


 



世界保健機関(WHO)は8月8日、過去最悪の感染となったエボラ出血熱が西アフリカの4カ国から拡大する恐れがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

2013年12月にギニアで始まった感染は8月現在、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネで広がっており、患者は1,711人、うち死亡は932人となった。

発表 http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/ebola-20140808/en/

渡航と貿易の全面禁止を勧告するまでに至らなかったが、感染者については公式な医療救助の対象とならない限り国境を越えるべきではないと指摘、当該国は航空各社と乗員への適切なケアを確実にするよう取り組むべきだとし、感染者と接した可能性のある乗客の確認を迅速にできるようにする必要があるとの見解を示した。

「ウイルスの毒性を考えれば、国際社会で感染がさらに広がった場合の結果はとりわけ深刻だ」とし、「エボラ出血熱の世界的な感染拡大を食い止め防止するためには、国際的な協調対応が不可欠だ」と指摘した。

エボラウイルスは大きさが80 - 800nmの細長いRNAウイルスで、自然宿主の特定には至ってはいないが、コウモリが有力とされている。

感染すると、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを呈し、進行すると口腔、歯肉、結膜、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。

患者の血液、分泌物、排泄物や唾液などの飛沫が感染源となる。エボラウイルスの感染力は強いが基本的に空気感染をしない。

現在のところ、エボラ出血熱ウイルスに対するワクチンはなく、有効かつ直接的な治療法は確立されていない。

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政府機関はエボラ出血熱の治療に富士フィルムのインフルエンザ用治験薬ファビピラビル(favipiravir)を利用できるよう承認手続きを急いでいる。

米国防総省によれば、富士フイルムの米国での提携相手である
MediVector Inc.はファビピラビルをエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、米食品医薬品局(FDA)と協議している。承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し。

今後、エボラ出血熱に感染したサルに同薬を投与して効果を確認する作業を進め、9月中旬には暫定的な試験結果を得られる見通しであるとされる。

ファビピラビルは既にインフルエンザ感染者の抗ウイルス剤として治験が重ねられており、エボラ出血熱の治療に適用する上で優位性がある。
現在はインフルエンザ治療薬として米国での治験の最終段階にある。

国防総省のJoint Project Manager Transformational Medical Technologies (JPM-TMT) は2012年、 「軍関係者をインフルエンザの大流行から保護するため」、ファビピラビルの開発を後押しし、1億3850万ドルをMediVectorに助成している。
Emerging Infectious Diseases-Influenza Medical Countermeasures Acquisition Program)

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ファビピラビルは富士フイルム傘下の 富山化学の古田要介氏によって1998年に発見された。

インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大する。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。
これに対し、ファビピラビル(製品名アビガン)は、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及び A(H7N9)等に対する抗ウイルス作用が期待されており、実験動物レベルでは既に効果が確認されている。

富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。


「アビガン」は、最近のインフルエンザを取り巻く現状をふまえ、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、ノイラミニダーゼ阻害剤等の他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、新しいメカニズム の「アビガン」を使用可能な状況にしておくことは意義があると判断され、世界に先駆けて国内で承認となった。

直ちに医家向けに販売するのではなく、厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行うもので、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される。

 

付記 「アビガン®錠200mg」の承認には厳しい条件がついている。

動物実験で「初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」。

日本人を対象にした薬物動態試験と追加臨床試験結果を医薬品医療機器総合機構に提出し、成績が確認されるまでは「原則製造禁止」 。
 (申請に用いたのが米国の試験結果で、日本人を対象にしたものがなかった。)
 但し、パンデミック時など厚労相が「要請」した際は製造できる。

なお、追加試験で「季節性」インフルエンザに有効性が示されれば、富山化学は「季節性」の適応追加を申請することが可能になる。


米国では2007年3月より臨床試験を開始している。

2010年2月から臨床第Ⅱ相試験を開始した。A型あるいはB型のインフルエンザに感染した患者を対象に、高用量および低用量と偽薬(プラセボ)との二重盲検試験を実施し、好結果を得た。

2015年3月頃に第Ⅲ相試験の完了後に承認申請を行う予定。



      

中国の食品大手の上海鵬欣 (Shanghai Pengxin Group)は8月1日、ニュージーランドの乳牛牧場の買収を進めていることを明らかにした。

子会社
Pure 100 Farm Limited を通じ、ニュージーランド北島中部のTaupoの近くの 13,800エーカーのLochinver農場を購入することで合意した。

同国のOverseas Investment Office はこの申請を受け付けたが、国民の反発を恐れ、9月20日の選挙が終わるまで秘密にされていた。
しかし、これが保守党党首の選挙演説で暴露された。「国民は裏で何が起こっているか知るべきだ。本件は明らかに選挙の争点だ。ニュージーランドは 'For Sale' の看板を下ろすべきだ」と述べた。

これを受け、上海鵬欣は契約したことを発表、既に購入した農場とのシナジーを求めてのものと述べた。

今後、Overseas Investment Office が申請を受け付けるかどうか、注目される。

 

上海鵬欣は2012年1月にニュージーランドに本社を置くCrafar Farms から北島の16か所の乳牛農場を1.64億米ドルで買収する件で、ニュージーランド政府の承認を受けた。
中国企業による初めての土地購入となった。

Crafar Farms は同国2位の家庭酪農農場で、8000ヘクタールの土地に2万頭の乳牛を放牧している。
2009年に破産保護を申請、16ヶ所の牧場、粉ミルク工場とニュージーランド大手乳製品メーカーFonterra の株式などの同社資産の売却を検討した。
2010 年7 月に上海鵬欣は買収意向を表明した。

鵬欣集団は同牧場で生産した乳製品を、中国やほかのアジア地域に販売する。

上海鵬欣は本年3月に中国当局からニュージーランド南島で合計4000ヘクタールの13の農場を運営するSynlait Farms Ltd の買収の承認を受けた。
上海鵬欣が74%の株を持つSFL Holdingsを通して買収した。

今回の買収が認められると、北島と南島に農場を持つこととなる。

中国の経済成長に従い、高品質の農産品の需要が急拡大し、中国企業は積極的に海外の農場や牧場を買収している。

鵬欣集団は2010年にボリビアのサンタクルス市の国有農場を2,720 万ドルで買収し、大豆など農産物を栽培している。

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中国企業による土地買収については、ほかでも問題となっている。

2011年11月に、アイスランド政府は、中国の不動産企業北京中坤集団(Zhongkun Investment)による広大な土地購入計画について、法的要件を満たしていないなどとして、購入を許可しないことを決めた。

マンション建設やリゾート開発を手掛ける北京の中坤集団はアイスランド国土の0.3%に当たる約300平方キロの土地を880万ドルで購入、リゾートを建設する計画を進めていた。土地所有者は売却に同意していたが、アイスランド政府が認めるかどうか審査していた。

広大な土地をチャイナマネーに買収されることに強い反発が起こり、政府は許可しないことを決めた。
外国企業によるこれだけ広い土地の取得は前例がないと説明、「アイスランドの独立性を守るため、外国人の土地取得の権利を制限することは必要と認めた」とした。

中坤集団の会長は旧建設省など中国政府での勤務経験があるため、空母建造を進める中国が「大西洋での戦略的な足掛かりを得るのが狙い」との観測がでていた。

その後、アイスランド政府が賃貸なら認めることとし、地方政府が土地を買収し賃貸するという契約が締結間近と報じられたが、最終的にこれも認められなかった。

2013年4月に発足したアイスランド新政権は「投資法」を改正し、土地売却を認める方向で検討しているが、反対も多い。

最近の報道では、中坤集団はアイスランドを諦め、ノルウェーでの観光事業を検討しているという。




白元は7月31日、同社のスポンサーとしてアース製薬を選定し、同社との間で、事業譲渡契約を締結したと発表した。

白元は約255億円の負債を抱え、5月29日付で民事再生手続きの開始を申し立てた。
スポンサーを選定の上、事業譲渡を実施することを検討し、スポンサーの募集・選定のための入札手続を実施してきた。

譲り受け価額は75億円で、白元アース製薬を8月8日に設立し、ここが事業を引き継ぐ。

白元をめぐっては、アース製薬のほかに日用品大手のエステーや投資ファンドなどが最終入札に残ったとされる。
7月下旬の最終入札ではファンドが100億円以上を提示したとの情報が流れた。

最終的には、債権者への弁済原資の極大化と、事業の再生・継続の確実性、従業員の雇用維持、ブランド維持の観点等から検討した上で、アース製薬を選定した。


白元は、1923年に防虫剤メーカーとして創業した。

防虫剤や除湿剤が主力だが、靴下を好きなところで止めることができ、ズレを防ぐ「ソックタッチ」や電子レンジで温める湯たんぽ「ゆたぽん」 、保冷枕「アイスノン」、高機能マスク「快適ガードプロ」、脱臭剤「ノンスメル」などユニークな品ぞろえで知られる。

衣料用防虫剤ではエステーに次ぐ第二位。

衣料用防虫剤シェア
     主要ブランド
エステー 49%  ムシューダ
白元 27%  ミセスロイド
キンチョー  9%  タンスにゴンゴン
アース製薬  8%  ピレパラアース
 その他  3%  

アースは白元を傘下に入れることで、シェアを35%とし、エステーを追撃する。アース社長は、「防虫剤のシェアでNo.1 を目指したい」としている。

 

白元は無理な拡大路線をとり続けたことから破綻に追い込まれた。

2000年ごろから、中国で現地法人を設立したほか、明治薬品工業、大三、キング化学などを立て続けに買収し、グループの拡大を進めていったが、効果は出ず、銀行からの借金は膨らみ続けた。

創業家出身の鎌田真氏が4代目の社長に就任した2006年ごろから「売り上げ至上主義」に拍車がかかり、返品を前提に需要を上回る大量の製品を卸会社に売る「押し込み販売」をしていたとされる。

業績悪化が続き、2013年4月には衣料用防虫剤「ミセスロイド」の開発で協力する住友化学が19.5%の株式を引き受け、再建を支援した。
本年1月には看板商品の使い捨てカイロ「ホッカイロ」の事業を、医薬品会社の興和に売却した。

しかし、資金繰りは改善せず、金融機関に資金支援を申し入れたが、交渉はまとまらず、破綻した。

ーーー

アース製薬は家庭用殺虫剤では国内市場で50%を超えるシェアを有するが、日用品分野を家庭用殺虫剤に並ぶカテゴリーに育成することが必要不可欠と考えている。
白元とのシナジーを創出することで、事業価値を最大限に向上させることが可能と判断した。

アース製薬は1892年の創業で、1970年に大塚製薬グループ入りした。
ごきぶりホイホイやアースレッドなどユニークな製品を持つ。

2012年2月には、Wise Partnersの運営するファンドなどが保有する入浴剤大手のバスクリンの株を買い取り、100%子会社とした。

芳香浴剤「バスクリン」は1930年に津村順天堂(現 ツムラ)が発売した。

ツムラはその後、 医療用漢方製剤を中心とする事業へシフトしたため、2008年にWise Partners支援を受け、MBOによりツムラグループから独立、㈱バスクリンとなった。


アースとエステーは2010年に、殺虫剤業界3位だったフマキラーをめぐり「争奪戦」を繰り広げた。

2008年にアース製薬が3位のフマキラーの筆頭株主になったことが報じられた。
フマキラーの創業者一族の大下(おおしも)高明氏が8.5%を所有するが、アースは市場で買い進め、わずかだがこれを超えて筆頭株主になった。

アース製薬では、株式取得はあくまでも「純投資」が目的、としたが、非公式に経営統合を打診したことを認めた。
アース製薬はその後、「フマキラー株の取得を継続する」とした。

これに対し、フマキラーは2010年5月13日、消臭芳香剤大手のエステーとの資本業務提携を締結したと発表した。

フマキラーはエステーを引受先に12.5%相当の第三者割当増資実施、これにより、
エステーのフマキラーへの出資比率は4.76%から15.1%になり、アース製薬(10.5%に低下)を抜き筆頭株主になる。

2008/1/23  アース製薬によるフマキラー株式購入


2011年2月、アース製薬はフマキラー買収を断念、持株を全てエステーに売却した。
これにより、エステーはフマキラーの25.69%保有の筆頭株主となった。

2011/2/14 アース製薬、フマキラー株式をエステーに売却、買収を断念


 

 

   

台湾高雄市の爆発事故で、死者は28人、負傷者287人となった。消防士2人が依然行方不明となっている。

付記 不明の2人は発見されず、家族の同意の下、8月5日に死亡証明書が発行された。 死者30人となった。

既報  2014/8/1  速報 台湾・高雄で大規模爆発 原因はプロピレンか?

6キロの範囲にわたって爆発が起き、道路が陥没するなど大きな被害が出ている。
雨で爆発現場に水がたまり、川のようになっている。


事故の原因については既報の通り、李長栄化学向けのプロピレンのパイプとの見方が強い。

高雄市環境局によると、ガス爆発が起こった地点には3本のパイプラインが走っている。

① 中国石油(CPC)のパイプライン
② 李長栄のパイプライン
③ 華
運倉儲(China General Terminal & Distribution Corp)から李長栄へのパイプライン

華運倉儲は台湾のポリエチレンメーカーのUSI Group(台湾聚合化学)の連結子会社で、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレンなどの石油化学原料の倉庫保管及び輸送を手掛けている。

このうち、①と②は爆発当時は使用されていない。

高雄市政府は「7月31日夜に華運倉儲が李長栄向けにプロピレンの加圧処理と輸送を行ったが、プロピレンが李長栄化学にうまくパイプライン輸送されなかった。プロピレンが漏出して爆発した恐れがあり、李長栄化学の過失ではないかという見方が強い」としている。

31日夜8時から9時の間に1時間当たり最高で4トンのガスがパイプラインを通っていたことが分かっており、毎時これだけのガスが漏出していたことになる。

爆発の3時間前にガス漏れの通報を受けていながら、速やかにガス漏れを止められなかった高雄市当局を批判する声が出ている。

 

林園区の林園 No.3, No.4と前鎮高雄 No.5フサクラッカー のエチレンやプロピレンなどは、大社区や仁武区の誘導品プラントに市街地に埋設されたパイプラインで送られている。多くの人が暮らしている地下を多数のパイプラインが走っている。(設置された時点では、住民は少なかったという。)

 

1997年にCPCの作業チームが道路工事のため一部区間のガス管を掘り出そうとした際に爆発が起き、5人が死亡、約20人が負傷した事故が起きている。

事故を受け、地下に通された工業用パイプラインの移設を求める声が住民から上がっている。

8月2日に現場を訪れた馬英九総統は原因の究明を急ぐとしたうえで、街中のパイプラインの監視を強化するとの考えを示した。「原因の救命に全力で取り組み同様の事故が起きないよう対策を進める」と述べた。

大社区や仁武区の誘導品プラント(既報に明細記載)は長期間停止せざるを得ないと思われる。

ーーー

江蘇省昆山市の金属工場で8月2日朝、大規模な爆発が発生し、71人が死亡し、186人が負傷した。
爆発の際、264人が工場内にいて、爆発現場で45人が死亡、残りは病院に運ばれた後、亡くなった。

工場は昆山市経済技術開発区にある「中栄金属製品有限公司」で、車のアルミホイールを研磨する作業場で、可燃性の粉じんに引火して「粉じん爆発」が起きた可能性が高いとみられている。
同社は1998年設立の台湾系企業で、米のGeneral Motors指定のサプライヤー。

事態を重くみた習近平指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。当局は同社の責任者2人を拘束して調査を開始した。  

 

付記

8月2日の記者会見で現地政府は、粉じんが飛散したエリアでの引火が原因との見方を示し、安全基準の違反があったと指摘した。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、現地の当局者が粉じんが爆発を引き起こすリスクを繰り返し警告していたが、同社はこの警告を無視していたという。

ーーー

可燃性の固体微粒子が空気中に浮遊し、そこに発火源が存在した場合、ある条件下で爆発燃焼する。これを粉塵爆発という。

粉塵爆発は、
1)酸素
2)爆発下限濃度以上の粉塵
3)最小着火エネルギー
の3
条件がすべて揃った瞬間に発生する。

爆発の恐れがある粉塵には、以下のものが上げられる。
 ・マグネシウム ・アルミニウム ・アルミ軽合金 ・鉄粉 ・エポキシ樹脂 ・コーンスターチ ・チタン
   ・微粉炭 その他可燃性粉塵


2007年3月20日、信越化学の直江津工場のメチルセルロース製造プラントで爆発があり、3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。

2007/3/22 「信越化学 爆発事故  

同社では原因を粉塵爆発と推定し、粉塵爆発の対策として以下を実施した。

(1) 窒素置換
(2) 静電気除去対策
(3) 粉塵堆積の防止

ーーー

昆山経済技術開発区は1985年に設立、1992に国務院に国家クラスの開発区と認定された。

日本精工、シマノ、マキタ、豊田自動織機など、200社以上の日本企業が進出している。



 
 

台湾南部・高雄で8月1日午前0時前、大規模な爆発があった。高雄市消防局によると少なくとも24人が死亡、271人がけがをした。
6キロの範囲にわたって爆発が起き、道路が陥没するなど大きな被害が出ている。

7月31日午後9時ごろにこの付近で「ガス漏れのような異臭がする」との通報があり、消防局などが警戒に当たっていたところだったという。

高雄市環境保護局はエチレンかプロピレンが爆発を引き起こした可能性があると見ており、関連の会社などとともに原因を調べている。

高雄市にはChinese PetroleumCPC)が ナフサクラッカーを3基(林園区の林園 No.3, No.4 前鎮高雄 No.5) 持っている。

誘導品プラントは 林園区のほか、大社区や仁武区にあり、エチレンやプロピレンは市街地に埋設されたパイプラインで送られている。

今回の爆発は、大社区の李長栄のPPプラントへのプロピレンのパイプラインで爆発事故が発生した のではないかとされている。

貿易赤字の裏側 - 化学業界の話題

 

河野太郎衆院議員のブログ 「ごまめの歯ぎしり」7月30日号が、「貿易赤字の裏側」というタイトルでLNG輸入の増大について述べている。
  http://www.taro.org/2014/07/post-1505.php

財務省が7月24日に発表した2014年上半期の貿易収支は、7兆5983億円の赤字で、半期では過去最大の赤字となりました。
このままのペースでいくと、年間を通して15兆円の貿易赤字となります。

日経新聞は「燃料輸入の増加が主因」と分析しています。
産経新聞も「原発の稼働停止に伴う、火力発電用燃料の輸入額が高水準となるなど輸入が過去最大に」と解説しています。

天然ガスの輸入量が増えて貿易赤字が増えているというように聞こえます。

(中略 数量の増加よりも金額の増加がはるかに大きいことを説明)

新聞報道を見ていると、あたかも原発が停止したので天然ガスの輸入量が増えて、貿易赤字が膨らんだかのように思えます。しかし、事実は、天然ガス価格の上昇とそれに輪をかけた円安のおかげで円建てのガス価格が上昇し、貿易赤字が増えたのです。

どの新聞を読んでも天然ガスの輸入量やその価格がどう推移したのか、まったくわかりません。

政府が発表していることだけを右から左に流しているだけではマスコミの役割を果たしていると言えないのではないでしょうか。

これに対し、池田信夫ブログ(7月31日)が「LNG価格はなぜ暴騰したのかでこれに反論している。

竹中平蔵氏も産経新聞の正論で同じことを述べている。

「第2の誤りは、貿易赤字は原発停止-燃料輸入増によるとの見解だ。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏が提示する分析によると、過去3年間の貿易収支悪化の約3分の1はエネルギー価格上昇と円安が理由だ。エネルギーの輸入増ではなく、価格要因(円安と国際価格の上昇)である。」

彼らに共通の誤りは、なぜLNG価格が暴騰したのかを知らない点にある。LNGの「価格要因」は自然現象ではない。2010年まではヨーロッパとほとんど同じだった日本のLNG価格が震災後に倍増し、アメリカの4倍になった。その原因は、原発停止でスポットで買いに行ったからだ。


この論争は池田氏の勝ちである。

本ブログでは既に、この分析を行っている。
   
2014/3/9  LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響

輸入金額の増加分を、数量増によるものと、価格増によるものに分け、価格増分は更に、円安によるものと、ドル価格アップによるものに分けた。
日本のLNG購入契約は長期契約分は原油スライドであるため、ドル価格アップ分を原油価格スライドのアップとそれ以外に区分した。

原油価格アップを上回る分は、原発停止による高値のスポット買いによるものである。

  2010 2011 2012 2013  

増加分

2010年比 2012年比
輸入金額(兆円) 3.4480 4.7730 6.0015 7.0560 3.6080 1.0545
数量(百万トン) 70.008 78.532 87.314 87.491 17.483 0.177
平均為替レート(円/ドル) 88.09 79.97 79.55 96.91 8.82 17.36
以下は上記から計算    
輸入価格(円/kg) 49.25 60.78 68.73 80.65 31.40 11.91
輸入価格(セント/kg) 55.91 76.00 86.40 83.22 27.31 -3.19
同上 原油価格スライド 55.91     68.77 12.86  
             
WTI原油価格平均($/bbl) 79.59 94.81 94.19 98.05    

この結果、年平均ベースのため大雑把だが、2010年と2013年の金額増 3兆6080億円のうち、数量増によるもの(8611億円)と原油価格アップを上回る値上がり(1兆2252億円)の合計2兆0863億円が原発停止の影響と言える。

円安の影響は2010年(平均 88.09円/ドル)比では4314億円に過ぎない。2012年(79.55円/ドル)比でも1兆3123億円である。

  2010年比 2012年比
数量差 8611億円 121億円
ドル建て価格差
(原油価格スライドの場合)
(原油価格アップを超える分)
2兆3155億円
(1兆0903億円)
1兆2252億円
-2700億円
円レート差 4314億円 1兆3123億円
合計 3兆6080億円 1兆0545億円
うち原発停止の影響 2兆0863億円  

原発停止が貿易赤字の一因であることは否定できない。

但し、円安が狙った効果が出ておらず、貿易赤字の一因であることも事実である。

輸入金額が急増したうえ、輸出が伸びていない。

化学製品などは国際競争力がないため、円安でも輸出は伸びないが、唯一国際競争力のある自動車さえ、円安によって見込まれた輸出の増加は期待どおりには進んでいない。
 

本年1月から6月までの半年間に国内の主な自動車メーカー8社が日本から海外に輸出した車の台数は前年同時期を 5.4%下回った。

このうち、トヨタ自動車は、アメリカでの高級車の販売拡大に向けて九州で生産していた一部をアメリカとカナダの工場に移したことなどから11%減少、日産自動車も、SUVの新型車の一部の生産を去年の秋以降、九州の工場からアメリカに移したことなどから5.4%減少しているほか、ホンダは、主力小型車の生産の一部をことし2月にメキシコに移したため、74.5%の大幅な減少になっている。
(NHK)

これらは円安になってからの海外移管であり、ショックである。


 「人民網日本語版」(7月31日)は、日本の輸出の成長には限りがあり、経済を引っ張る総体的な動力が足りていないことから、「安倍内閣が円安政策を放棄しない限り、貿易赤字の高止まり状況の改善は難しいだろう」としている。



参考 LNGの輸入推移

 


東レの連結子会社の韓国の東レ尖端素材(Toray Advanced Materials Korea)は、2013年11月6日、熊津ホールディングスほかとの間で熊津ケミカル(Woongjin Chemical)の株式56.2%を4,300億ウォンで取得する契約を締結し、2014年2月28日に全ての手続きを完了した。

熊津ケミカルは2014年4月にToray Chemical Korea Inc.と改称した。

2013/10/3 東レ、韓国 ウンジンケミカル買収へ


米司法省は7月9日、Toray Chemical Korea(旧称 熊津ケミカル) がDuPont の情報の窃盗事件にからみ、2,058千ドルの罰金支払いとコンプライアンス強化、調査への協力に同意したと発表した。
司法省はこの事件の情報と2年間の起訴猶予合意(deferred prosecution agreement)を裁判所に通知した。


熊津ケミカルは ポリエステルフィラメント、ポリエステルファイバー、チップ、繊維、水処理フィルター、A-PET シート(無延伸フィルム)、アラミド繊維等の製造・販売を行っている。

報告によると、熊津ケミカルは同社のメタアラミド繊維のArawin® 開発に注力し、DuPontのメタ系芳香族ポリアラミドNomex®に対抗しようとしていた。

2011年1月から11月にかけて、熊津ケミカルは Arawin の改良のため、Nomex、特に Nomex paper の製造プロセスに知識を持つDuPont退職者をコンサルタントして雇用しようとした。2人のDuPont 退職者が韓国を訪問し、その際、熊津側は強く情報開示を求めた。

Nomex paperはアラミドポリマーからフロック(短繊維)とファイブリッド(合成パルプ)を作り、これを水中に分散させて抄紙機にかけて製造される。
この後に高温・高圧でカレンダー加工を行い、高密度化をはかり内部結合力を高める。
この結果、高温下でも機械的、電気的に優れた紙が出来上がる。

日本ではデュポン帝人アドバンスドペーパーが製造している。

2人のうち1人は、現役のDuPont 従業員からフロックの長さや製造条件を聞き出そうとした。これは成功しなかったが、その後も熊津は合法・非合法にフロックのサンプルを得ようとした。

DuPont は2011年にこの動きを察知し、FBIに相談した。

その後、熊津はFBIがDuPont情報窃盗容疑で2人の元従業員を調べていることを知った。

起訴猶予合意には、Toray Chemical が政府の調査に全面的に協力し、改善策を取ったことが記されている。

DuPont とToray Chemical は民事面でも本件を解決することで合意している。

ーーー

DuPont のアラミド繊維の営業秘密を巡っては、韓国のKolon Industriesが争っている。

DuPontは2009年2月にKolon を商業秘密盗用で訴えた。
これに対し、KolonはDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

2014/4/8 DuPont と韓国Kolonのアラミド繊維の技術盗用裁判、差し戻し 

 

DSMは7月11日、世界的なビタミンC製造メーカーのAland (Jiangsu) Nutraceutical江蘇江山製藥 )のビタミンC事業買収について、親会社のAland(HK)Holding と合意したと発表した。
今後6ヶ月から9ヶ月を目途に手続きを完了する予定だが、本買収に関する財務情報の詳細は公開していない。


DSMは既存のスコットランドのDalry工場のビタミンCプラントを維持しつつ、江山製藥にサステナビリティや環境などに配慮する経営文化と品質管理のノウハウを注入してビタミンCの供給体制を増強、DSMが手掛けるHuman Nutrition & Health(健康食品やサプリメント向け)、Animal Nutrition & Health (動物用飼料向け)、Personal Care(化粧品向け)の3部門において、ビタミンC市場でのポジショニングをより強固にすることができると期待している。

江蘇江山製藥有限公司1990年に中国・江蘇省に設立された。従業員は1,850名で、主力製品であるビタミンCの年間売上は約9000万USドル。
同社のもう一つの部門は消費者向けの栄養製品部門で、これは今回の取引に含まれない。

ーーー

DSMは欧州唯一のビタミンC製造メーカーである。

DSMは2003年にRoche のビタミン、カロテノイド、クエン酸、その他のファインケミカルのVitamins & Fine Chemicals Divisionを19.5億ユーロで買収した。
Rocheは1938年にビタミンCを初めて合成した企業である。

DSMはこの取引でスコットランドのDalry工場と米国New Jersey州のBelvidere工場を引き継いだ。
しかし、後者については2005年に閉鎖し、現在はスコットランドだけで生産している。

ーーー

欧州ではBASFがデンマークでビタミンCを生産していた。

BASFは2000年に武田薬品とビタミンバルク事業で提携した。

① 日本では両社によるビタミンバルク事業のJV BASF武田ビタミン(武田薬品 34%、BASF 66%)を新設
② 武田薬品の海外子会社(タケダ・フード・ビタミン米国、タケダ・ヨーロッパ、タケダ・フード・ビタミン・アジア)全株式をBASFに譲渡
③ 武田薬品のビタミンC、B1、B2、B6、葉酸等のビタミンバルク製造技術・特許をBASFに譲渡
④ 武田薬品は、光工場でビタミンバルクの生産を一定期間継続し、その全量をBASFへ供給

武田薬品は2006年1月、BASF武田ビタミンの全株式(34%)をBASFジャパンに譲渡した。

BASFは武田から引き継いだNorth Carolina 州 Wilmington のビタミンC合成ラインを2002年に停止した。

同社は2005年にデンマークのGrena工場でのビタミンCの生産を停止した。

BASFは1995年に東北製薬とのJV BASF Vitamins を設立し、2000年に出資を70%から98%にし、2005年に100%とした。瀋陽市に工場を持つ。

ーーー

両社が各工場を閉鎖したのは、中国勢の安値攻勢に負けた結果である。

世界のビタミンC需要の 90% を中国メーカーの江蘇江山製薬、東北製薬、石藥集團維生藥業(石家莊)、河北Welcome(维尔康) 製薬などで製造している。

今回、BASFに続き、DSMも中国に進出する。
 

 

米司法当局は2012年に中国製のビタミンCの価格カルテル調査を開始した。米国の需要家の訴えによるものである。

裁判では、被告側は価格カルテルの存在は認めたが、中国政府に強いられたと弁解した。中国商務部もこの主張を裁判で認めたが、原告は政府の命令ではなく、自発的なカルテルだと主張した。

一部は裁判に到る前に和解、一部は裁判中に和解、残りが2013年3月に3倍増の罰金を言い渡された。

江蘇江山製藥 裁判前に和解
東北製薬
香港の中国製薬集団(石薬集団)
傘下の維生薬業
22.5百万ドルで和解
華北製薬集団
傘下の河北维尔康製薬
損害認定 54百万ドル
判決 3倍増 162.3百万ドル
石藥集團維生藥業(石家莊)
(CSPC Weisheng Pharmaceutical)


河北维尔康製薬は華北製薬集団と香港の三威國際企業Triple Well International)のJVである。
英文名はHebei Welcome Pharmaceutical だが、英国のWellcome とは無関係。

 

アメリカでビタミンの価格カルテルが摘発されたのは、これが二度目である。

1999年に米、スイス、独、日、加の合計11社に総額 9億1050万ドルの罰金が課せられた。

武田薬品   72百万ドル   事業をBASFに売却
エーザイ   40百万ドル    
第一工業製薬   25百万ドル    
Roche    500百万ドル   事業をDSMに売却
BASF   225百万ドル    
Merck   14百万ドル    
Degussa-Huls   13百万ドル    
Lonza   10.5百万ドル    


各社はEUでも2001年に総額8億5522万ユーロの制裁金を課せられている。
  

 

 

 

米科学アカデミー(National Academy of Sciences)は7月24日、東京電力福島第 一原発事故に関する報告書
" Lessons Learned from the Fukushima Nuclear Accident for Improving Safety of U.S. Nuclear Plants"
を公表し、東電や当時の原子力安全・保安院が適切な津波対策を怠ったため被害が深刻化したと指摘した上で、福島の事故を教訓に米国内の避難計画の見直しを検討するよう求めた。


報告書は米国の原発の安全性を向上するため米議会がアカデミーに作成を要請したもの。

発表文 

報告 報告は有料となっているが、左枠のDownload をクリックし、登録すると全文が無料で読める。

報告書は、当時の日本では深刻な事故を想定した緊急時の対応が不十分だったとしたうえで、政府と地方自治体の意思の疎通がうまくいかなかったことや、除染が必要だとする放射線量の基準があいまいだったことなどが、政府に対する国民の不信を招いたと指摘している。

事故が深刻化した要因として、東電と当時の原子力安全・保安院が津波対策を怠っていたことなどを挙げた。
「津波に対する原子炉の設計基準が不十分であることを示す証拠が集まっていたにもかかわらず、東電と保安院は重要な安全設備を守る措置を取らなかった」と指摘。
電源喪失に適切に対応するための手続きもなかったなどと述べ、こうした一連の要因が、事故をより深刻なものにしたと結論付けた。

また、東電と保安院は「安全文化」を軽視していたと批判した。

そのうえで、想定外の事態( beyond-design-basis events)を踏まえ住民避難を含む事故対処計画を見直すよう勧告した。
電力会社や政府は深刻な事故が起きた際の周辺住民への情報の提供のしかたや、病気の人やお年寄り、子どもといった弱い立場の人を守る対策、それに長期間の避難生活の影響の評価などが十分か検証すべきだと提言している。

ーーー

報告では、福島第一の人々は勇敢に対応したが、下記の点が障害となったとする。

1)東電と原子力安全・保安院が、設計基準が津波に不十分だとの多くの証拠があるにもかかわらず、重要な機器を津波から守る対策を取らなかった。

2)全ての交流・直流電力が失われ、リアクターの熱力学パラメーター、格納容器、使用済み核燃料プールの情報をリアルタイムに得られなかった。
3)上記の結果、1~3号機が冷却できなかった。
4)多数の炉を同時管理しているため、現場の危機管理センターが混乱した。
5)現場のオペレータや危機管理センター員が電力喪失事故の手続きや訓練に欠け、水のレベルやリアクター圧力の管理、水素発生などに対応できなかった。
6)正確でタイムリーな情報発信、指示が出来なかった。
7)現場の危機管理センターのなか、及び現場と本社の役割と責任が明確でなかった。
8)多数の炉で長期間 問題が続いたため、事故管理スタッフが不足。


これを元に、米国の原発産業に以下の勧告を行った。


1)災厄についての新しい情報を求め、対応する。

2)重大事故に効果的に対応するため、プラントシステム、要員、訓練の改善

   想定外の事故(beyond-design-basis events)に効果的に対応できるよう。

3)想定外の事故のリスクの評価能力の強化
   米原子力業界と
原子力規制委員会は想定外の事故のリスクを見つけ、評価し、対応する能力を強化する必要あり。
4)原子力安全規則に最新のリスク概念を導入
5)構外の危機対応能力のチェックと改善策の実施
   構外に被害が生じる重大事故への対応
   ・広範な停電と通信・輸送・危機対応インフラへの被害
   ・放射能排出など原発事故情報がリアルタイムに伝わらない場合
   ・10マイルゾーンを超えた放射能の拡散
6)核安全カルチャーの改善
   nuclear safety cultureの維持と絶えざるモニター


報告書は「原発構外の危機管理から学んだレッスン」という章を設けている。


福島第一事故の大きな問題は、老人や入院患者などの避難計画が無かったことである。

日本の報告は、入院患者の避難の大混乱を描いている。
避難のトラウマと病気の悪化で避難途中で死んだ人も多く、持ち物も持っていけず、数ヶ月で何箇所もたらい回しされた人も多い。
放射能汚染を恐れて受入を拒否した病院もある。
健康な老人でも避難中に死んだ人が多い。

 

1)福島第一事故の際の日本の緊急管理計画は大事故を扱うには不十分なものであった。
2)現場の状態、構外への放射能の拡散、事故の進展、近隣住民の汚染についてのリアルタイムの情報が欠けたため、政府と業界の意思決定プロセスは、不十分なものとなった。
3)中央政府と地方の調整は、コミュニケーション不足でうまくいかなかった。
4)老人や病人などの避難やヨウ化カリウム配布などの保護活動は、急造でバラバラであった。
5)放射能の基準や除染基準が異なり、変更され、住民の混乱と政府への不信感を生んだ。
6)除染と帰還の時期がまだ決まっていない。
7)危機の最中に有効なコミュニケーション戦略を確立できなかったため、政府や規制官庁、原子力業界への国民の不信が生じた。

そのうえで、電力会社や政府は深刻な事故が起きた際の周辺住民への情報の提供のしかたや、病気の人やお年寄り、子どもといった弱い立場の人を守る対策、それに長期間の避難生活の影響の評価などが十分か検証すべきだと提言している。


ーーー

 

大飯原発差し止め訴訟の判決では、想定外事故の可能性と、事故が起こった場合に混乱と焦燥の中で適切かつ迅速にこれらの措置をとることを原発従業員に求めることはできないとし、以下の通り述べている。


「この地震大国日本において、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準値振動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない。」

 

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 


原子力規制委員会は九州電力川内原発1、2号機について実質的に「審査合格」とした。
 

原子力規制委員会は「基準に適合しているかどうかを審査するだけで、稼働させるかどうかには関与しない」とし、田中俊一委員長は「基準への適合は審査したが、安全だとは私は言わない。これがゴールではないので、(九電は)努力していく必要がある」と述べた。

川内原発では桜島を含む鹿児島湾北部の「姶良カルデラ 」と呼ばれる火山地帯の巨大噴火が問題視されているが、九州電力は、カルデラ噴火の可能性は小さいとしたうえで、姶良カルデラなどの周辺に観測機器を新たに3か所設置し、監視を強化するとともに、噴火につながる地殻変動やマグマの上昇を細かい基準で判断するとした対策を説明し、規制委員会で了承された。


カルデラ噴火は破局噴火と呼ばれ、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。
姶良カルデラは2.2万年前に発生した。

カルデラ噴火が起これば、高温の火砕流が短時間で川内原発に到達する。

九電の案は、巨大噴火の兆候が出たら、原発を止め、放射性物質を冷却した上、安全な場所に移管するとする。

しかし、火山学者の間では、「巨大噴火は7300年間経験しておらず、今の火山学では巨大噴火を中長期的に予測するのは非常に困難だ」と、疑問の声が上がっている。仮に「3カ月後に巨大噴火」と予知できても、人は避難できるが、放射性物質の冷却には時間がかかり、移管できない。
 

原子力規制委員会の基準は、想定外の事故は起こらないであろうという前提に立っているようである。

 

原発から30キロメートル圏内にある姶良市議会は7月11日、「川内原発の1、2号機の再稼働に反対し廃炉を求める」意見書を可決した。

 

 

ーーー

 

米科学アカデミーの報告書は「原発構外の危機管理」について福島の例から問題提起をしている。

 

国際原子力機関(IAEA)は原発事故対策として「5層の防護」を定めている。3層目までが過酷事故の防止で、4層目が過酷事故対策、5層目は放射性物質が敷地外に漏れ出る場合の防災対策を求めている。
 

  運転状態 多重防護
レベル
目的 必須手段
事故発生防止/
事故影響緩和
通常運転 第1層 異常運転及び故障の防止 保守的設計及び建設・運転における高い品質
予期される運転時の事象 第2層 異常運転の制御及び故障の検出 制御、制限及び防護系、並びにその他のサーベランス特性
設計基準事故及び複合した運転時の事象 第3層 設計基準内への事故の制御 工学的安全施設及び事故時手順
シビアアクシデント 第4層 事故の進展防止及びシビアアクシデントの影響緩和 補完的手段及び格納容器の防護を含めたアクシデントマネジメント
シビアアクシデント後の状況 第5層 放射性物質の放出による放射線影響の緩和 サイト外の緊急時対応

 

米国では、第5層について、米原子力規制委員会が、原発から半径10マイル(16キロ)の緊急計画区域について州政府・自治体や事業者の緊急時計画を厳密に評価し、運転を認可する。

市民団体「原子力資料情報サービス」は、緊急計画区域を半径25マイルに拡大し、50マイル圏内でも避難ルートを設定するよう求めている。

原子力規制委員会は施策の実行可能性をチェックし、複雑に想定を変えた長期訓練の実施を義務づけている。
緊急事態が発生した際、適切な防護措置が講じられる保証がオンサイト及びオフサイト緊急事態に対する準備で示されない限り、運転認可を与えない。

米科学アカデミーは今回、電力会社や政府は深刻な事故が起きた際の周辺住民への情報の提供のしかたや、病気の人やお年寄り、子どもといった弱い立場の人を守る対策、それに長期間の避難生活の影響の評価などが十分か検証すべきだと提言し た。

しかし、日本では原子力規制委員会は「原発が基準に適合しているかどうかを審査するだけで、稼働させるかどうかには関与しない。」
第5層の防災対策は規制委の審査対象外である。

政府は福島第1原発事故後、事故に備えた重点対策区域を原発から8〜10キロ圏から30キロ圏に拡大したが、第5層の防災対策は災害対策基本法で自治体任せにされ ている。

川内原発が立地する鹿児島県の地域防災計画では、30キロ圏内の病院の入院患者や介護施設の入所者ら要援護者の避難計画は各施設が作るとなっている。
伊藤知事は「30キロ圏までの要援護者の避難計画は現実的ではない」と発言した。対象となる要援護者の数が増え、避難手段や受け入れ先の確保が難しいことが背景にある。


 

規制委員長は「安全とは、私は申し上げない」「世の中に絶対に安全だなんていうものは存在しない」と言い、政府は「安全は規制委の判断に委ね」 「個々の再稼働は事業者(電力会社)が判断する」と逃げている。

設備の基準を少々厳しくしても、事故の発生の可能性はある。「世の中に絶対に安全だなんていうものは存在しない 。」
その場合の避難対策は地域任せで、福島第一事故の前と同じでは、規制委が認めても、再稼動について地元の了解を得るのは難しいだろう。

米科学アカデミーの報告は米国政府と業界への提言だが、同時に日本への提言でもある。

第5層については政府が責任を持つべきである。
評判の悪い集団的自衛権をやめ、自衛隊をフルに使う体制を考えてはどうだろうか。

 

付記

鹿児島県の伊藤祐一郎知事は8月1日の記者会見で、九州電力川内原発について、再稼働の必要性を文書で示してほしいと経済産業省に要請したことを明らかにした。
安倍政権は再稼働について「政治判断しない」としており、最終的な責任の所在があいまいなままだが、知事は「国として意思を示す作業が必要だ」と述べた。

 

 

 

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