2009年10月アーカイブ

Saudi Aramco は10月28日、米国向け輸出の原油価格を決定する際のベンチマークを来年1月から英Argus Media Argus Sour Crude Index (ASCI)に変更すると発表した。

Aramcoは米国向けの基準として1984年からMcGraw Hill傘下のPlattsが出すWTI crude prices を使っている。

日本向けにはドバイ原油とオマーン原油のスポット価格の月間平均値を足し、2で割ったものに調整金を付け加えて決める。
欧州ではロンドンのInternational Petroleum ExchangeでのBrent原油加重平均で決めている。

この件については、WTI原油が正確な需給を反映していないことが明らかになった2007年ごろから、Aramcoと買い手の間で議論が交わされていたとされる。

サウジは昨年米国に日量150万バレルを超える原油を輸出しており、カナダに次ぐ第二位の輸出国となっており、サウジにとり重要性が増している。

Argus Sour Crude Index 米国メキシコ湾岸地域の中質サワー原油現物価格の指数として本年5月から出されている。
メキシコ湾岸のMars
PoseidonSouthern Green Canyon原油の全ての取引の加重平均価格である。
メキシコ湾岸の生産量は現在の120万バレルから来年には140万バレルに、2013年には190万バレルになると見られている。

サワー(sour)原油は原油中に硫化水素が 0.04 モル%以上含まれている原油をいう。

Argus では、ASCIは取引全体の加重平均を使っており、最も透明性が高い、健全な指標であり、今回の決定はこれが原油価格の指標としては正しいものであるということを示していると述べた。

ーーー

WTI原油の価格は、WTI原油の受け渡しが行われるオクラホマ州Cushing 周辺での貯蔵能力の影響を大きく受ける。また、投機資金の影響で乱高下するなど、市場参加者からは、値決めの基準となる「マーカー原油」としての役割を疑問視する声が上がっていた。

メキシコ湾岸原油の取引価格指標のASCIはドバイやウラル原油価格と同じ動きをしている(下の右図)。
それに対し、WTIは
そのASCIに比べ、上下が激しい(左図)。 

Argus Mediaエネルギー相場の査定で世界最大規模を誇る独立企業。

1970年の創立以来、エネルギー市場における価格査定および市場動向の調査を専門に企業活動を続けている。
創業者、従業員および自社にて株式の
100%を保有する。


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米国のAlbemarle Corporation と、SABIC子会社でプラスチック製品を製造するIbn Hayyan Plastic Products Company (TAYF)は10月27日、ポリオレフィン等の触媒トリエチルアルミの製造JVを設立すると発表した。

社名はSaudi Organometallic Chemicals Company (SOCC)。
両社の50/50JVで、サウ
ジのAl-JubailArabian Gulf Industrial City に年6000トン能力の工場を建設し、SABICを初めとし、周辺各国のポリオレフィンメーカーに供給する。
年内に建設を開始し、2012年初めにスタートする予定。

ーーー

Albemarle は触媒、ファインケミカル、ポリマー添加剤の3つのセグメントを持ち、売上高は24億ドル。

同社の始まりはEthyl Corporationである。

Ethy1923年にガソリンのアンチノッキング剤のテトラエチル鉛(TEL)製造のため、General Motors Standard Oil of New Jersey (ESSO)50/50JVとして設立された。
GMTELのアンチノッキング剤としての用途特許をもち、ESSO TELの製法特許を持っていた。
製造そのものは
Dupont に委託した。(特許切れ後はDupont は独自に製造、Ethylは自社製造を行った。)

1962年にAlbemarle Paper Manufacturing Company<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>1887設立のクラフト紙メーカー)2億ドルを借り入れて、自社の13倍のEthyl Corporation を買収した。
その時点では過去最大の
LBOleveraged buyout)であった。
Albemarle
は社名をEthyl Corporation に改称した。

その後、自動車業界は順次無鉛ガソリンにシフトしたため、TELの需要は減少、Ethyl corporation 1970-80年代に多角化した。
<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>(1976年に製紙事業を売却、1987年にダウの臭素事業買収)

1994年に Ethyl は化学事業をスピンオフし、Albemarle Corporationとして上場した。

元のEthyl 2004年に NewMarket Corporation と改称、傘下に①潤滑油メーカーのAfton Chemical Corporation と②TELを含む燃料添加物メーカーのEthyl Corporation を持っている。

TELは自動車用には最早使用されないが、航空機やカーレース用ガソリンには使用されている。
Ethylは自社生産は止め、英国のInnospecがライセンス契約に基づき生産している。

Albemarle Corporationのその後の動きは以下の通り。

1996にαオレフィン等の事業をAmoco に売却。
1997年に三井東圧とVista Chemicalの50/50出資の日本アルキルアルミのVista持分を買収
1997年にPolymer Chemicals Fine Chemicals 2部門にリストラ
1998年にヨルダンにJordan Dead Sea Industries Arab Potash CompanyとのJV 臭素及びその誘導体製造のJV設立
2000年に中国の金海化学とのJVNingbo Jinhai Albemarle Chemical and Industryを設立、
  安定剤、難燃剤、ファインケミカルを生産
2000年にFerroの難燃剤事業を買収
2003年に元の親会社のEthylから燃料、潤滑油の酸化防止剤事業を買収
2003年に Rhodiaの硫黄ベースのポリウレタン難燃剤事業を買収
2003年に Atofinaの臭素ファインケミカル事業を買収

2004年にAkzo Nobel の石油精製触媒事業を買収、自社のポリオレフィン触媒<p>HTML clipboard</p>テトラエチル鉛製造技術を元に開発)事業と合わせ、触媒セグメントとする。

現在の事業分野は以下の通り。
1)Polymer Additives
     Flame retardantsAntioxidantsCurativesStabilizers
2)Catalysts
     FCCHPCPolyolefinAlternative Fuel Technologies
3)Fine Chemicals
     Fine chemistry servicesPharmaceuticalsBromine chemicals
    
Total Mercury SolutionsOther industrial specialities

 


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財務省が10月29日に発表した輸入通関速報によると、9月のナフサ輸入価格は40,230円/kl となった。また、8月の金額も修正された。

この結果、3四半期のナフサの平均輸入価格は 39,208円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は41,200円/kl となる。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格
4Q平均  50,047  52,000
09/1  21,500    
09/2  23,836    
09/3  28,632    
1Q平均  24,970  27,000
09/4  29,628    
09/5  30,783    
09/6  33,544    
2Q平均  31,283  33,300
09/7  37,900    
09/8  39,507    
09/10  40,230    
3Q平均  39,208  41,200

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)

 


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豪州当局は10月23日、中国4位の石炭会社、エン州煤炭が同業の豪 Felix Resourcesを35億豪ドルで買収することを条件付で承認した。

ーーー

中国4位の石炭会社、エン州煤炭(Yanzhou Coal Mining)は本年8月、同業でオーストラリアのFelix Resourcesを買収することで合意した。石炭の供給確保を目指す。

中国企業による豪州企業の買収としては、英豪系の鉱業大手 Rio Tintoが6月に中国アルミ大手Chinalcoからの195億米ドルの出資を拒否した以降で最大規模のものとなる。

Felix Resourcesは東豪州に多くの炭鉱を持つ。

Site Ownership    Resources (Mt)
Measured Indicated Inferred Total   
Yarrabee open cut 100% 54.6 5.3 57.3 117.2
Ashton open cut 60% 84.9 25.9 8.1 118.9
Ashtonunderground 60% 163.6 112.7 46.4 322.7
Harrybrandt open cut 100% 102.5 102.5
Minerva open cut 51% 17.4 36.1 25.0 78.5
Athena underground 51% 560.0 560.0
Moolarben open cut 80% 257.4 96.5 52.7 406.6
Moolarben underground 80% 88.8 114.6 96.4 299.8
Phillipson Basin open cut 100% 14.7 145.7 354.5 514.9
Total   681.4 536.8 1,302.9 2,521.1
Felix 持分合計   504.2 421.5 964.6 1,890.3

ーーー

豪州当局は承認に当たり、以下の条件をつけた。

豪州の炭鉱を運営するYancoal Australiaは、豪州法人で豪州に本社を置き、主として豪州人の経営者、セールスチームが経営する
Yancoal Australiaとその子会社は豪州に主たる住居を持つ最低2人の取締役を置き、そのうち1人はエン州煤炭から独立した者とする
Yancoal AustraliaのCEOとCFOは主たる住居を豪州に持つ
Yancoal Australiaの毎年の取締役会の大部分は豪州で開催する
2012年末までに Yancoal Australia を豪州で上場し、エン州煤炭の持株比率を70%未満とする
豪州石炭の全てを国際市価で、市場の慣行に沿って販売する
いくつかの炭鉱は第三者とのJVだが、 Yancoal Australia の上場後は、これらJVのエン州煤炭の持分は50%を超えない。

エン州煤炭はこの条件を受け入れた。

ーーー

豪州の資源企業は資源価格の値下がりと、グローバル経済危機による投資資金の逃避により、開発資金を欠いて四苦八苦しており、中国からの資金投入が認められない場合、開発を続けられない状況にある。

海外に資源を求める中国企業との思惑は一致している。

しかし、中国企業による豪州企業の買収提案が相次ぎ、豪州国内で政治問題化した。

Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

2009/9/17 中国の海外資源会社への出資 続く 

ーーー

豪州のForeign Investment Review Board は本年9月、主要な豪州の資源会社への海外からの投資は15%未満に、新規計画への参加は50%未満にするべきだとの意向を表明した。

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めたが、豪州のForeign Investment Review Boardは9月24日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出

ーーー

中国の国有企業五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属(Minmetals Non-ferrous Metals)が豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals を約17億米ドルで全株式を取得する案件では、豪州政府はOZ Minerals の Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

実際には、鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。

両社は協議の結果、Prominent Hill 鉱山を買収対象から除外し、買収額を12.1億米ドルに修正した。

これについて、豪州政府は条件付でこの買収を承認したが、条件の中には、
鉱山運営会社は豪州に本社を置き、豪州人の経営陣で運営する。CEOとCFOは豪州在住とする。
五鉱集団との取引価格は国際市況に沿った市価基準とする。
という、今回と同様のものが含まれている。

2009/4/25 豪州政府、中国五鉱集団による豪州OZ Minerals 買収を条件付で承認

ーーー

豪州のWestern Plains Resources Ltd は6月12日、武漢鋼鉄集団との間で南豪州のHawks Nest磁鉄鉱開発に武漢が50%出資する契約を締結した。Hawks Nest はWoomera Prohibited Area にある。

豪国防省は9月24日、国家の安全に及ぶとの理由で、中国武漢鋼鉄公司によるWoomera Prohibited Areaでの磁鉄鉱の投資採掘は認めないと発表した。Woomera Prohibited Area にあるという理由での不承認はこれで2件目となる。

 


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9月中間決算の発表が始まった。

10月26日に信越化学とJSRの発表があったが、いずれも大幅減益となった。

特に半導体シリコン、半導体材料等(非石油化学部門)での減益幅が大きい。

 

信越化学

営業損益で前年同期比972億円の減益、当期損益でも654億円の減益となった。配当は据え置き。
同社は通期見通しについて、「現時点においても適切な予想を算出することは極めて困難」として、引き続き未定とした。

                                単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
08/9中間 695,413 150,101 156,519 100,953 50.0
09/9中間 417,229 52,939 55,818 35,528 50.0
増減 -278,184 -97,162 -100,701 -65,425  
09/3 1,200,813 232,927 250,533 154,731 50.0 50.0

営業損益対比(億円)
08/9 09/9 差異 09/3
有機・無機化学品 555 274 -281 952
塩ビ系 182 88 -94 367
シリコーン系 228 105 -123 336
  その他 145 81 -64 249
電子材料 794 171 -623 1,121
  半導体シリコン 699 100 -599 984
  その他 95 71 -24 138
機能材料 154 89 -65 257
調整 -2 -5 -3 -2
合計 1,501 529 -972 2,329

各部門との大幅な減益だが、特に半導体シリコンの減益が大きい。

四半期別に見ると、下図のとおり、2008年4Qを底に上向きにはなっているが、以前の状況には程遠い。

半導体シリコンについては一部で需要回復の兆しが見られてきたが、価格下低迷し厳しい状況が続いたとしている。

塩ビについてはシンテックは米同業他社が減産する中、世界中の顧客への拡販に努め、高水準の出荷を維持したとしている。(欧州と日本は需要低迷で厳しい状況)

そのシンテックでも経常損益はドルベースで前年同期の153百万ドルに対し、82百万ドルと46%減となっている。
なお、Georgia Gulf, Westlake (PVC部門)、Polyoneはいずれも赤字となっている。

ーーー

JSR

大幅減益で、当期損益は赤字となった。特にこれまで利益の大部分を稼いでいた多角化事業の減益の影響が大きい。
配当は前年度の年間32円を本年度は26円に落とす。

                               単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益  経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間 208,037 26,166 27,822 16,204 16.0
09/9中間 142,943 3,290 3,107 -448 13.0
増減 -65,094 -22,876 -24,715 -16,652 -3.0  
09/3 352,502 30,347 31,111 13,981 16.0 16.0
10/3予想 307,000 16,000 16,500 10,000 13.0 13.0

営業損益対比(億円)
08/9 09/9 差異 09/3
エラストマー   60 -43 -103   80
エマルジョン -1 -3  -2   5
合成樹脂   13 -7 -19   13
多角化事業  190 86 -105   205
合計 262 33 -229  303

注 多角化事業には半導体材料(売上高226億円)、FPD材料(297億円)、光学材料( 59億円)などがある。

エラストマーは自動車タイヤの需要の低迷、価格下落で赤字となった。

多角化事業は需要の減少に円高が加わり、大幅な減益となった。
四半期別には、下図の通り、順次回復はしている。


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2010年に中国・ASEAN自由貿易地域がスタートする。

中国とASEANは8月15日、第8回中国ASEAN経済貿易担当相会議が開かれているバンコクで「中国ASEAN全面的経済協力枠組み投資協定」に署名したが、これが2010年1月1日に発効する。

投資協定には、他国と自国の投資家を平等に扱うことや、政府が強制収用に乗り出した場合の補償や紛争処理などが盛り込まれた。

2008年までに中国が実施したASEANに対する累積の直接投資額は61億ドル。協定発効で「直接投資は今後2年間で40~60%増える」(タイ政府高官)とみられる。
ASEANの中国への投資は520億米ドルで、中国への海外からの投資の6%を占める。

中国はASEAN域内のインフラ整備のため、100億ドルの「中国―ASEAN投資協力基金」設置と150億ドルの融資の実施を提案した。投資協力基金の第1弾として年内に10億ドルを拠出する。


中国とASEANの自由貿易協定は2005年7月に発効している。
ブルネイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイの6カ国に対しては2010年から関税率がゼロとなる。

対6カ国 関税率引き下げ計画
  2005 2007 2009 2010
20%以上  20%  12%  5%   0
15%~20%  15%   8%  5%   0
10%~15%  10%   8%  5%   0
5%~10%   5%   5%   0   0
5%未満 不変 不変   0   0

カンボジャ、ラオス、ミャンマー、ベトナムの残り4カ国については2015年に関税率がゼロとなる。

またービス分野協定は2007年7月に発効している。

2010年1月1日から、双方の間で93%の製品の関税が免除され、投資協定の発効で中国・ASEAN自由貿易地域が完成する。

19億人の巨大な自由貿易圏が生ま
れる。合計のGDPは6兆米ドルに達する。

ASEANは中国にとって、EU、米国、日本に次ぐ4番目の貿易相手で(ASEANにとっても中国は4番目の貿易相手)、2008年の双方の貿易は2311億米ドルとなっている。
2009年上半期は前年同期の24%減の881億米ドルとなった)

ーーー

2000 11月に開催されたASEAN首脳会議で中国は「東アジア自由貿易圏」構想を提案した。
中国は
20018月、20032009年に関税を順次引き下げるなどの提案を行った。

200111 月、ブルネイで開催されたASEAN 首脳会議で、ASEAN と中国が10 年以内に自由貿易地域を創設することを決めた。
Framework Agreement on Comprehensive Economic Cooperation に調印)

背景として以下の点があげられている。
 ・中国
13億人、ASEAN 6億人という巨大な市場を擁して、相互に貿易拡大のチャンスと見た。
 ・中国が
ASEAN諸国からの熱帯性農産物の輸入で譲歩
  (
ASEAN諸国は熱帯性農産物輸出拡大の絶好のチャンスととらえた)
 ・
ASEANが「中国脅威論」から中国の成長の活用することに一歩踏み出した
 ・中国が東アジア地域において自国の影響力を強化するとともに世界的にも一層のプレゼンスを高めることを狙った。

ーーー

中国・ASEAN自由貿易圏での取引で人民元の利用が増えるとみられている。

これまで人民元の使用は、双方の貿易の10%に過ぎない国境貿易に限定されている。

中国は昨年12月、人民元建て貿易決済のトライアルを決定した。
広東省と長江デルタ地域では、香港、マカオとの商品貿易、また広西チワン族自治区と雲南省地域ではASEANとの商品貿易で人民元使用を認めた。

本年4月には国境貿易における人民元建て決済が5つの試行地区(上海、広州、珠海、東莞、深セン)で認められ、7月に開始された。


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ASEAN首脳会議が10月23日、タイ中部フアヒンで開幕した。

初日のASEAN首脳会議では、域内の人権の擁護・向上に取り組むASEAN政府間人権委員会(AICHR)が正式発足し、気候変動問題や食糧安保問題、自然災害などについて一致して取り組むことで合意した。
2015年の実現を目指す「
<p><p>HTML clipboard</p></p>ASEAN共同体」への取り組みを急ぐことも確認した。

ASEAN議長国タイのアピシット首相は、2015年に実現するASEAN共同体に明確なビジョンが必要だとのべ、「行動、結合、人間」の3点を提唱した。
ASEANの成果として、「憲章に基づく機構」へと進化し、共同体の3本柱ごとの評議会設置など機構面で前進していることを指摘した。

ASEAN共同体は
 政治・安全保障(ASEAN安全保障共同体:ASC)
 経済(ASEAN経済共同体:AEC)
 社会・文化(ASEAN社会・文化共同体:ASCC)
という3つの柱による協力から構成される。

<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>

また、東アジア首脳会議(EAS)に参加する6カ国(日・中・韓・インド・豪州・NZ)とASEANとの自由貿易協定締結が完了し、EAS規模の地域FTAを模索する時期にきたとのべた。

日本:2008年12月1日、包括的経済連携(AJCEP)協定 発効
     2007/11/29 
日本とASEANの包括的経済連携協定の交渉妥結

中国:2005年7月1日、FTA発効
      2007年サービス分野発効
     
2009年8月投資協定に署名、2010年1月1日に発効   

韓国:2007年6月1日、FTA発効
      2009年サービス分野発効、投資分野合意
 

インド:2009年8月13日、FTA締結。2010年1月発効<p>HTML clipboard</p>
     
2009/8/17 ASEANとインドFTA締結     

豪州・ニュージーランド:2009年2月27日、ASEAN・豪州・NZ自由貿易協定(AANZFTA)に調印<p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p>
    2010年1月1日に発効

24日には日中韓3国首脳とのASEANプラス3首脳会議、25日には、インド、オーストラリア、ニュージーランドが加わった16カ国による東アジア首脳会議が開かれた。

鳩山由紀夫首相は24日の首脳会議で、「開かれた地域協力の原則に立ち、東アジアへの協力を着実に進めたい」と東アジア共同体構想への賛同を求めた。

ーーーーーーーーーーーー

1996年のジャカルタでの第1回ASEAN非公式首脳会議において2020年までのビジョンASEANビジョン2020 の起草に合意。97年のクアラ・ルンプールでの第2回ASEAN非公式首脳会議において採択された。

2020年までの20余年間における地域の発展及び域内協力を通じた豊かな生活の達成についての展望を示した未来志向の中期計画で、政治・安全保障、経済協力、文化等全ての分野を包括する地域協力の在り方を提示した。

(1)東南アジア諸国間の協調

  • 調和がとれ紛争のない平和と安定の時代を志向。
  • 平和的手段による問題(Differences)の解決を堅持。
  • 核兵器及び大量破壊兵器の排除を希求。
  • 人材育成及び天然資源の開発により繁栄を共に享受することを期待。

(2)ダイナミックな発展のためのパートナーシップ

  • 域内の緊密な経済的統合を志向。
  • 持続的かつ衡平的な成長を重視しつつ、域内各国及び地域の強靱性(Resilience)の向上に貢献。
  • 貧困の撲滅及び生活水準の平均化を図るため、域内各国間の発展レベルの格差を縮小することを期待。
  • 人材及び潜在的な能力(Human Potential)の開発を含む全ての分野で域内の経済協力を推進。

(3)Caring Societyとしてのコミュニティ

  • 歴史的及び文化的遺産の絆を踏えた、共通の地域的なアイデンティティにより結びつけられたコミュニティの構築。
  • 性別、人種、宗教、言語または社会的・文化的出自にかかわず、全ての人が人間として向上・発展するための公平な機会を享受することを期待。
  • 飢餓、栄養失調、略奪、貧困の面での問題がなく、強い家族の絆が支える社会の構築。
  • 社会的弱者(Disadvantaged groups)に対し特別な支援と社会的正義を供するとともに、法の支配が優先する社会の構築。
  • 不法な薬物の撲滅の推進。
  • 人材の資質向上を伴う科学技術の振興。
  • 天然資源の持続的開発を通じた地域環境の保護。

(4)外に目を向けるASEAN

  • 域外に目を向けるとともに、国際場裡において中心的役割を果たす。
  • 相互尊重に基づく、対話国との関係の強化。

2003 年の第二ASEAN 協和宣言Declaration of ASEAN Concord II<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>ASEAN 共同体(ASEAN Community)2020年に創設することを決めた。

ASEAN共同体は「政治・安全保障」、「経済」及び「社会・文化」という3つの柱による協力から構成される。 

ASEAN安全保障共同体(ASC)は、個々の外交政策を追求する加盟国の主権的権利を認め政治・経済・社会的な現実を考慮しつつ、軍事協定、軍事同盟又は共同外交政策より も、ASEANビジョン2020に従った、幅広い政治的、経済的、社会及び文化的側面を有する包括的安全保障の原則に同意する。

ASEAN経済共同体(AEC)は、2020年に財貨、サービス、投資、資本の自由な流れ、平等な経済開発と貧困・社会経済格差の削減が存在する安定し繁栄し競争的なASEAN経済地域を創造する「ASEANビジョン2020」の経済統合という最終目標を実現するものである。

ASEAN社会・文化共同体(ASCC)は、「ASEANビジョン2020」の目標設定と調和し、福祉社会の共同体としてパートナーシップで共に結ばれた東南アジアを構想する。

ASEAN は、2007年1月13日、フィリピンのセブ島で第12回首脳会議を開催した。20を数える多くの宣言と協定、議定書などが調印された。その中でASEAN 共同体を5年前倒しし2015年に創設すると決定、ASEAN 憲章の制定に向けて一歩踏み出した。

 

ASEAN経済共同体とEUの比較
  AEC EU
関税撤廃  ○  ○
共通対外関税  X  ○
非関税障壁撤廃  ○  ○
サービス貿易自由化  △  ○
規格・標準の統一、相互承認  △  ○
人の移動  △  ○
投資自由化  ○  ○
知的所有権保護  ○  ○
競争政策  △  ○
税制(付加価値税)調和  X  △
域内協力  ○  ○
共通通貨  X  △
主権制限(市場統合における)  X  △

参考 ASEAN関連文書


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豪州の Moly Mines Limitedは19日、四川漢龍集團Sichuan Hanlong Group)との間で出資契約を締結したと発表した。

漢龍集團は2億米ドルでMoly Minesの株式の55.3%を取得する。
更に、
SpinifexRidge モリブデン/銅鉱山の開発に5億米ドルのプロジェクトファイナンスを行う。

投資は豪州のForeign Investment Review Board の承認を要する。

豪州のForeign Investment Review Board 9月に、主要な豪州の資源会社への海外からの投資は15%未満に、新規計画への参加は50%未満にするべきだとの意向を表明している。

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めたが、豪州のForeign Investment Review Board924日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

豪州政府がこれを承認するかどうかは疑問。しかし、漢龍集團は「豪州政府と既にコンタクトしており、承認は得られると思う」としている。

Moly Mines はモリブデンなどのメタル開発に注力する資源会社で、世界最大級のSpinifex Ridge モリブデン計画を手掛けている。

これは1982以降発見された最大のモリブデンと銅の鉱山で、西オーストラリアのPilbara 地区にあり、現在確認されている埋蔵量はモリブデンが35万トン、銅が50万トン。この数字は更に増えると見られている。

同社は20065月にこれの100%の権利を取得した。

200810月に開発資金確保の第一歩として150百万米ドルのつなぎ融資を確保している。

開発のための承認は全て取得しており、開発準備をほぼ整っている。Moly Mines では2年内に生産が開始できるとしている。

漢龍集團は私企業で、発電、インフラ開発、鉱山開発、医薬、食品・アルコール飲料、不動産、環境技術、観光開発、ハイテク技術など多岐にわたる事業を行っている。従業員は12千人を越える。

今回の投資はアフリカでの鉱山開発に次ぐ
2つ目の大規模海外事業である。

なお、正式契約はまだだが、漢龍集團は製品の一部を引き取ることで合意している。

 


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京都府警は10月20日、高速水着の素材として注目を集める山本化学工業の「バイオラバー」を使った商品を、厚生労働相の承認を受けず「がん治療や視力回復に効果がある」と宣伝・販売したとして、健康用品販売会社の店長など3人を薬事法違反(無承認医薬品の販売)容疑で逮捕した。

逮捕容疑は、京都駅前店で「バイオラバーはがん細胞を抑制し、緑内障などを治す」と宣伝し、ベスト2着を約51万円で販売。また、別の女性に同様の説明をし、ベルトを約23万円で売ったとされる。

「壮快薬品」の説明会では、山本化学工業の名が明記された資料が配られていた。
「がん抑制、がん死滅効果日本初の正式発表」などと書かれた資料で、バイオラバーを使った治療法を「ほとんど副作用が考えられない癌死滅の新治療法」などと紹介している。

山本化学工業からのコメント

もともと、この事案の原因は壮快薬品が山本化学工業に無断で薬事法違反となる様なダイレクトメールを配布した事に端を発している。このダイレクトメールには、山本化学工業の社名はもとより、社長の山本富造の顔写真まで掲載し、あたかも山本化学工業や社長の山本富造が薬事法違反を容認しているかのダイレクトメールを数ヶ月に渡り配布をしていました。
2009.8月に壮快薬品の複数のお客様から山本化学工業に対して「壮快さんからこんなダイレクトメールが何通も来ているが山本化学工業や山本社長は、この事知っていますか?」の問合せが来ました。これを受け顧問弁護士と協議の結果、2009.8.31に壮快薬品の社長山田典男氏に内容証明にて抗議を正式に送付しました。
2009.9.18に壮快薬品の弁護士より、こちらの指摘事項に対しこれを認める内容証明を受け取りました。
この内容証明により、2009.10の壮快薬品による薬事法違反事案前にこの薬事法違反は壮快薬品の単独の事案であることは明白で有りまし
た。

ーーー

山本化学工業のバイオラバーについて、関西の私立大の医学部教授らが、科学的にがんの増殖を抑える効果があるとする論文をまとめたり、記者発表したりしていた。山本化学工業はこれらの発表を製品の宣伝に使っていた。

山本化学工業は論文掲載後、山本富造社長名で「世界最高峰の科学誌『ネイチャーの6月23日付電子版』にて承認掲載された」と書いた文書を報道機関に配布。「世界初で人体外部装着のみでがん抑制効果のある、全く新しい『がん抑制』『がん予防』素材であり、副作用も全く考えられない新素材であります」と強調していた。

近畿大学は9月28日、医学部の研究グループが山本化学工業が開発した医療用素材「バイオラバー」(学術名:活性型ゴムレジン)が持つとされるがん抑制効果について、これまで指摘されてきた「がん細胞に対する直接的効果」とは異なり、生体内における間接的効果によるがん抑制のメカニズムが存在することを解明したと発表した。

がんに対してバイオラバーを短期間、暴露使用した場合のがん抑制効果を、培養細胞を使った(In vitro)実験と動物を用いた生体内(In vivo)実験の双方で比較検討した。

通常では、培養細胞を使った実験の方が、生体内実験より、その効果がはっきり出る場合が多いのに対し、今回のバイオラバーを使用した研究では、生体内実験(実際の患者治療に近い実験)の方が、圧倒的にがん抑制効果が大きいという、きわめてまれな結果が出た。

さらに、複数の分析を重ねた結果、短期的には、バイオラバーが生体に影響を与え、宿主(実験で用いられる生体)自身において、間接的にがんを抑制するメカニズムが存在することを、解明した。

バイオラバーについてはこれまで、遠赤外線(波長4~25ミクロン)を発信することによる温熱作用、すなわち「バイオウェーブ」による、直接的ながん抑制メカニズムの存在が指摘されてきたが、今回、解明されたメカニズムは、生体内における間接的効果によるという点において、まったく異なるメカニズムとなる。

これは、生体内で惹起(誘導)された抗がん作用であることから、今後のさらなる研究によって、将来、実際のがん治療やがん予防の臨床応用に発展する可能性を示唆するものである。

山本化学では9月30日に「製品関連ニュース」で、「バイオラバーのがん抑制効果」 近畿大学医学部の研究グループが解明 としてこの発表にリンクを張っている。(近畿大学の発表文は現在抹消されている)

ーーー

国立がんセンターの津金昌一郎予防研究部長は「がんが治ると主張するからには、細胞や動物の実験ではなく、人を対象とした臨床試験で証明が必要だ。質の高い複数の科学的証拠がそろって初めて効果があったといえるが、そのレベルに達していない」と話している。(朝日新聞)

がんが治るかどうかにかかわらず、医薬品等としての承認を得ずに医療効果をうたって販売すれば薬事法違反となる。

ーーー

山本化学工業はバイオラバーについて、下記の通り説明している。

 バイオラバーとは:

炭酸カルシウムを99.7%以上含む高純度の石灰石をベースとし、独自製法のミクロの気泡によるハニカム構造をもったラバーに、希少金属を配合し混入することで、人体に有益なバイオウェーブ(遠赤外線)を放射するのが「バイオラバー」です。

 バイオウェーブとは:

東洋では「気」の一種として認知されていて健常者が発しているのと同じ、4~25ミクロンの波長を持つ遠赤外線レベルの波動の事です。
遠赤外線は有機物に接触すると、熱や電気に変換されて、人体に有用な働きがあります。

 

 参考  2008/5/17  競泳用水着の闘い
  2009/8/15  山本化学、新素材による水着を発売



SABICは10月18日、第3四半期の業績速報を発表した。

                                    単位:百万SR
  2009/1Qの営業損益にはノレン償却 -1,181を含む。

第3四半期
 純損益は36億SRで、前年同期(72億SR)の50%減、前期(18億SR)の倍増となった。

 営業損益は64億SRで、前年同期(125億SR)の48%減となった。

 前年同期比減の理由はグローバルな経済危機による石油化学、合成樹脂、金属製品の価格の暴落である。
 前期比では需要の回復でほとんどの製品の価格が上昇した結果、倍増益となった。

 アナリストの純損益予想(ロイター調査)は30億SRで、これを上回った。

1-9月の9ヶ月の純損益は108億SRで、前年同期(356億SR)の69%減となった。

SABICでは「経済危機の最中でも操業は維持してきた。本年の9ヶ月の生産は44百万トンで前年比4%増、販売数量も34.5百万トンで3%増となった」としている。

また、SABICの業績には、健全な資金状況、コストダウンの絶えざる努力、設備増強(YANSAB、SHARQ、Saudi KAYAN中国でのSinopecとのJVなど)などが好影響を与えているとしている。

SABICの連結対象会社については 2009/7/29  SABICの第2四半期業績参照

SABICではサウジと中国での増設で、2年後に生産量を12百万トン増やす計画。

 


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10月20日早朝の時間外取引で、WTI原油は一時80.05ドル/バレルと昨年の10月13日(81.19ドル)以来初めて80ドルを超えた。

しかし、パドリOPEC事務局長が「原油価格は若干高い」と最近の原油高をけん制、カタールのアティーヤ石油相が「原油供給の不足はない」と述べたことが利益確定売りを誘い、終値は79.09ドルとなった。

バドリ事務局長は、このところ上昇している原油相場は「投機色」を帯びているとし、「原油の供給不足は起こっておらず、1億2500万バレルの洋上備蓄がある。この2つが投機筋による原油価格上昇を疑う理由だ」、「われわれは、現在の経済危機の環境で、1バレル=80ドルの価格水準はやや高いと考える。ただ、価格上昇が続くかどうかを見守る必要がある」と述べた。

最近の原油価格は株価の上昇と合った動きをしている。

付記
2178ドル割れまで軟調に推移していたが、米エネルギー省の週間石油在庫統計が大幅減と発表され、買いが強まり、終値は81.37ドルとなった。

WTI原油の高値を反映し、東京市場でもドバイ原油が76.45ドル/バレル、オープンスペックナフサが668ドル/トンと、いずれも昨年10月初め以来の高値を付けた。


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2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資で以下の報告をした。

中国投資有限責任公司(CIC) 73日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。

CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。

CICは最近、資源関係に相次いで投資している。

ドル安予想の下で、CICのコモディティへの投資は中国の巨大な外貨準備高のリスク軽減によいオプションであるとみられている。CICは当初、金融部門に投資したが、運用を多様化し、エネルギーやコモディティ関係に関心を移している。

1)Nobel Oil Group(ロシア)

CICはロシアのNobel Oil Group45%の出資を行う。

3億米ドルの投資は2回に分けて行われ、1回目の1.5億ドルの決済がこのたび行われた。1億ドルは株式の代金で、0.5億ドルは油田の運転資金に使われる。残り1.5億ドルは9ヶ月内に支払われ、既存の油田の周辺の150百万バレルの石油・ガスの権利の買収に使われる。

この結果、CICは45%の株主となり、50%は既存の株主、残り5%は香港のOriental Patron Financial Group という株主構成となる。

なお、香港の凱順能源集団(Kaisun Energy:旧称 挑戦者集団 Challenger Group)がNobel Oil 買収に乗り出し、due diligenceを行うこととなったと報じられている。
この場合、
CICは出資を続ける。

Nobel Oil はロシアに3箇所の油田を有し、合計生産能力は150百万バレルとなっている。

2)カザフスタンの石油・ガス会社 JSC KazMunaiGas Exploration Production

CICはこのたび、939百万米ドルを払ってカザフスタンの JSC KazMunaiGas Exploration Production 国際預託証書(GDR) 11%を取得した。取引は7月に始まり、既に必要な手続きは全て完了している。

Global Depositary Receipt (GDR)
自国以外の国に株式を上場させる場合に、株式そのものは自国に預け、株式に代わってそれに見合う証書を上場させて、投資家の便宜をはかるものをDepositary Receiptという。GDRは主に欧州で発行されるものをいう。

同社のGDRは20069月にLondon Stock Exchangeに上場された。

JSC KazMunaiGas Exploration Productionはカザフスタンの国営石油会社KazMunayGasの中核をなす探鉱・開発部門(陸上)子会社。

なお、カザフスタンと中国の関係は深く、20094月にCNPCPetroChina)は KazMunaiGas50億ドルを融資することで合意した。
両社は共同で、カザフスタンで
36箇所の油田の権益を有する MangistauMunaiGasをインドネシアのCentral Asia Petroleumから買収した。両社の合弁会社がこの株式を保有する。

CNPCはまた、PetroKazakhstan67%を保有している。

3)インドネシア Bumi

CICはインドネシアの石炭業者PT Bumi Resources Tbk19億米ドルを融資した。

このうち、6億ドルは4年返済、6億ドルは5年返済、残り7億ドルは6年返済となっている。
今後、両社で共同で投資を行う。

CIC12%の金利を受け取るとともに、投資利回りとして19%IRRを受け取る。

IRR (internal rate of return)
投資した金額に対して、分配金を現在価値に引き直して複利計算し、その結果を年率で表示する。

インドネシアは石炭の世界最大の輸出国。

Bumiは政商の Bakrie 一族が支配する会社で、これを借入金返済と新規投資に使用する。

4)Glencore

CICGlencore は最近、"Commodities product investment agreement"を締結した。詳細は明らかにされていないが、8Glencoreのトップが北京で、CICGlencoreの製品に投資する覚書を締結している。

Glencoreは、スイスの貿易グループで、創立者のMarc Richらが74年に設立した非上場企業。

同社のビジネスは、非鉄金属、鉄鋼、石油及び石油デリバティブ、石炭等の資源関係の他、電気、農産物(砂糖、米、穀物)等で、年商は、約300億ドル程度と推定されている。地下資源関係では、鉛、亜鉛、バナジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、石油、鉄など鉱山開発にも進出している。

ロシアのRUSALSUAL GroupGlencore 3社は200610アルミ事業を統合して United Company RUSAL'(ロシースキー・アルミニウム)とすることで合意したと発表した。
新会社はボーキサイト鉱山、アルミナ、アルミ精錬、アルミフォイル生産設備を所有する。
出資比率は
RUSAL 66%SUAL 22%Glencore 12%

2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収

5)Noble Group

CICはコモディティ商社のNoble Group14.5%850百万ドルで取得した。

Nobleは香港に本社を置き、シンガポールに上場するグローバルなコモディティ商社で、扱い商品は多岐にわたる。

農業分野(27%):コメ、小麦、大豆、砂糖、コーヒー、ココアなど
金属、鉱物、鉱石(17%):鉄鉱石、フェロアロイ、クロム鉱、マンガン鉱、アルミ、鉄
エネルギー(51%):石炭、コークス、エタノール、炭素クレジット
物流(4%)

Noble5月に豪州のGloucester Coal 430百万ドルで買収している。株を売却した資金で更に買収を行うとみられている。

6)その他

CICはレアアースを専門とする内蒙古のBaotou Steel Rare-Earth Hi-Techと交渉している。

このほか、CICが狙っているとみられているのに、マレーシアでプランテーションや発電を行うSime Darby、シンガポールに本拠を置く石炭業者の Straits Asia Resources、インドネシアのAdaro Energy and Berau Coalなどがある。

 

付記

トロントに本社を置くSouthGobi Energy Resourcesは10月28日、モンゴル南部のOvoot Tolgoi 炭鉱の拡大(150万トン→800万トン/年)の資金としてCICが5億ドルを融資することで合意したと発表した。CICは見返りに取締役1名を派遣する。

カナダの資源会社への投融資は2件目。

2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

 


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アブダビで新しい石油化学コンプレックスを建設中のChemaWEyaatのトップはこのたび、第一期計画は順調に進んでおり、2015年に完成すると述べた。

ーーー

アラブ首長国連邦のアブダビにはAbu Dhabi National Oil CompanyADNOC60%/Borealis 40% 出資のAbu Dhabi Polymers Company Limited Borouge)などがある。

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)

アブダビ政府所有の国際石油投資会社(IPIC)は、20091月、「IPICは新規部門への投資を拡大している。IPIC はエネルギー部門、非エネルギー部門での良い機会を探している」と述べ、今後の投資活動の拡大に意欲を見せた。

アブダビ政府の投資計画のなかには、以下のものがある。

1)アブダビでの新しい石油化学事業

2)ホルムズ海峡迂回石油パイプライン事業

総延長距離370kmHabshan(アブダビ首長国)~Fujayrah(フジャイラ首長国)間の石油パイプライン事業(通油能力150万B/D)を建設中。
Fujayrahに能力1000万バレルから1200万バレルのタンクを建設、ホルムズ海峡を通らず、ここから出荷する。

3)パキスタンのKhalifa Coastal Refinery 事業(能力25万B/D)

IPIC 76%、Pak-Arab Refinery Company24%を出資し、50億ドルを投じるもの。Khalifa UAE大統領(アブダビ首長)の名前を取った。

基本的問題の解決まで延期

4)カスピ海事業

Abu Dhabi National Energy(Taqa:アブダビ政府75%出資)とKuwait Energyがカスピ海での共同石油・ガス事業を進める協定に調印している。

これには最大20億ドルまで投資する。

ーーー

新しい石油化学については、2008年にAbu Dhabi National Chemicals Company (ChemaWEyaat)が設立された。(ChemaWEyaatChmical の意味)
出資は
IPIC40%、アブダビ投資評議会(ADIC)が40%、Abu Dhabi National Oil ADNOC)が20%である。

ChemaWEyaat はアブダビの Taweelah地区のMina Khalifa Industrial Zone ChemaWEyaat工業都市(Madeenat ChemaWEyaat) の建設を行う。

ここで石油化学事業に少なくとも700億ドルを投資する。

全てが完成するとChemaWEyaat工業都市はサウジのJubail Industrial Cityのようになり、石化コンプレックスはBASFVerbund” のように完全統合されたものとなる。

現在、第一期としてTacaamol 計画が既に建設準備を行っており、第二計画の Al ChemeyaFS中である。

第一期計画の遂行のため、Chemaweyaat 51%/IPIC 49%出資でTacaamol が設立された。

 


Tacaamol
100億ドル以上を投じて、以下のコンプレックスを建設する。
 世界最大級の改質設備:
70千バレル/日
 ナフサクラッカー: エチレン
1,450千トン、プロピレン 690千トン
 
BTX設備:パラキシレン 1,370千トン、ベンゼン 860千トン
 エチレンオキサイド:
790千トン
 メラミン:
80千トン

最終製品の能力は以下の通り(単位:千トン)
 パラキシレン
1,370、ベンゼン 340、キュメン 400、フェノール 60、アセトン 110
 ビスフェノール
A 160、ポリカーボネート 130
 
PP 420PE 950
 
MEG 900DEG 46TEG 3、エタノールアミン 100
 ブタジエン
200MTBE 140
 尿素
1,000、メラミン 80

本年5月に、Neste Jacobs(Neste Oil 60 %/Jacobs Engineering 40 %)が基礎設計エンジニアリング(FEED)を実施する契約を締結した。

本計画は上記の通り、2015年に完成する。

なお、第二期計画の Al Chemeya650千トンのプロパン脱水素2系列を中心としたプロピレン誘導品のコンプレックスとなる。


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2009/8/29 中国、新産業でも過剰能力を抑制 で以下の通り述べた。

中国国務院は8月26日、風力発電装置などの新産業分野での過剰能力について懸念を表し、過剰能力や不必要なプロジェクトなどの問題について行政指導を進めることを決めた。

過剰設備は鉄鋼やセメント産業で以前から問題となっているが、最近は風力発電やポリシリコンのような新産業でも不必要なプロジェクトが出てきた。

政府の4兆元の景気刺激策で新エネルギーや環境産業が重点投資分野に指定され、全国各地で投資が増えた。

特に、鉄鋼、セメント、板ガラス、石炭化学、ポリシリコン、風力発電分野で指導を強化する。

これに基づき、9月末に中国の10省庁(NDRC、工業・情報化部、財務部、環境保護部、人民銀行ほか)が共同で特定分野の過剰能力を処理する提案を国務院に提出し、国務院はこの提案を承認した。

対象分野には上記の6分野のほかに、アルミ電解や造船、大豆油抽出などがある。

このほか、NDRCは自動車についても警告している。

  2009/9/23 中国国家発展改革委員会(NDRC)、自動車の過剰能力を警告

国務院は以下のように述べている。

過剰能力を減らすという政府の長年の目標を達成することは緊急の課題である。放置すれば、工場閉鎖、失業、銀行の不良債権が発生する。
注意すべきことは、過剰設備がありながら、まだ盲目的に拡大しているのが、鉄鋼やセメントのような昔からの産業だけではないことだ。風力発電機器やシリコンでも同様だ。

過剰能力対応策は以下の通り。

鉄鋼:

政府は中国の粗鋼生産能力の10%は違法であるとする。現在58百万トンの粗鋼設備が建設中だが、そのほとんどは違法なものである。
能力は7億トンを超え、早急に対応しなければ、過剰能力は更に増える。(需要は
470百万トンと推定される)

国務院は、今後新設計画及び増設計画を承認しないとしている。

これにより直接被害を受けるのは豪州のコークス用石炭部門で、中国向け輸出は1年前と比べ10倍になっている。
中国は国内での小規模鉱山、安全性を欠く鉱山が閉鎖されたこともあり、最近はコークス用石炭の純輸入国となっている。

付記

中国政府は宝鋼集団と武漢鋼鉄がそれぞれ計画している工場建設の承認を先送りすることを決めた。いずれも高炉を含む年産1000トン級の大型製鉄所。

宝鋼集団は広東省湛江市に広東省・広州市政府との合弁の広東鋼鉄集団(宝鋼集団80%)で臨海製鉄所を建設する計画。武漢鋼鉄も広西チワン族自治区の鉄鋼メーカーの柳州鋼鉄と共同で建設を計画している。

アルミ:

5月に設備の新設を3年間禁止し、2010年までに合計80万トンの小規模プラントを停止することを決めたが、この方針を確認した。

石炭化学:

国務院は、公害の原因となり大量の水を使用する昔からの石炭化学(coal-to-chemical )の能力が需要を30%上回っているとしている。
2009年上期に石炭原料のメタノール設備が40%しか稼動していない。

政府はこれら分野への参入を厳しくする規則を検討している。

合わせて、コークスのみを製造するプラントの新設を3年間禁止する。

国務院はこまでになく明確に地方政府を指弾している。違法な承認や、承認前の建設開始が見られるとしている。

セメント:

承認された計画が全て稼動すると中国のセメント能力は27億トンとなるが、需要は16億トンしかないとしている。

930日時点で建設を開始していないプロジェクトは停止し、再検討する。
特定の省に対しては、
3年以内に老朽能力を停止する計画の作成を命じた。
設備新設の場合は、相当する旧設備能力の停止を義務付けた。
 

風力発電機器:

2010年に機器の能力は20百万kw相当となるが、実際に設置されるのは10百万kw相当しかない。
海外では有力な風力発電機器のメーカーは
67社しかないが、中国では政府の奨励策により、投資家が殺到し、7080社が既に参入するか、参入しようとしている。

国務院は原則として風力発電機器の製造工場の建設承認を行わない。地方政府が機器製造設備を建設するのを防ぐため、投資家に対し、地方で作られた機器の使用を禁止した。

NDRCでは、再生可能エネルギーの確保は中国にとり重要であり、国務院が問題にするのは、風力発電自体ではなく、風力発電用の機器であると述べた。

風力発電自体は今後10年で原子力発電を上回る電力ソースになるとみられている。政府は本年末に新エネルギー計画を出し、風力、太陽光、原子力発電の目標を引上げる。

ポリシリコン(関連情報):

中国は8月1日以降、シリコンスクラップの輸入を禁止した。

太陽電池向けは半導体向けよりも純度が低くても利用できるため、これまで大量のシリコンスクラップを輸入していた。
中国は世界の太陽電池パネルの60%以上を生産しており、シリコンスクラップの使用は全体の30%にも達している。

今回の輸入禁止は中国の輸入廃棄物原料に関する禁止・制限・自動許可リストの改訂によるもので、環境保護部では、再使用の際にスクラップについてくる重金属が環境を害するのが理由としている。

しかし実際には、供給過剰にある中国のポリシリコンメーカーの保護のためと言われている。

7月に67ドル/kgであったポリシリコンのスポット価格は8月には72ドルに上昇している。

日本のシリコンスクラップの市況は、欧州市場の太陽電池バブルの崩壊と中国の輸入禁止で行き場を失い、ピーク時の1/10まで下落している。


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MTBEによる水道水の汚染を巡って ExxonMobil New York市の裁判が行われた。

8月の1審及び2審ではExxon が敗訴、10月に始まった3審で負ければ、次の4審では賠償額が審議されることとなっていた。

10月14日、3審の判決があり、判事は「市当局は懲罰的賠償を命じるに足る十分な証拠を陪審員に示さなかった」とし、ExxonMobil に軍配を上げた。

ーーー

2006/4/29 米国のMTBE市場の激変MTBEについて述べた。

200655日以降、米国のほとんどのガソリンからMTBEが除かれる。

MTBE やエタノールは従来、オクタン価向上のためにガソリンに添加されていた
Oxygenateとしては、MTBE 85%以上使用され、エタノールは8%程度であった。

ところが、MTBEによる地下水汚染が大問題となった。ガソリンスタンドの地下タンクには必ず漏れがある。ガソリンの漏れは微生物が分解するが、MTBEの場合には分解する微生物は少ない。このためMTBE が地下水を汚染することとなる。

この結果、カリフォルニア州ニューヨーク州、コネティカット州などが2004年からMTBEの使用を禁止した。ニューヨーク等はエタノールに切り替えた。

55日以降は Oxygenateの添加義務はなくなるが、オクタン価向上剤は必要である。しかし、MTBEを使用して地下水汚染が起こった場合に免責はされない。

この結果、従来MTBEを添加していたガソリンはエタノールをオクタン価向上剤として添加することとなる。

2008年にMTBEに関する最大の和解が行われた。

153の公共水道会社と340人の個人が17の州で水道汚染に関して石油会社に対して裁判を起こした59のケースについて和解したもので、石油会社側 10数社は423百万ドルを支払うとともに、30年間にわたってクリーンアップの費用の70%を負担する。

石油会社側は責任がないとしていたが、裁判を続ける費用などを勘案し、また裁判の結果がどうなるかの不安もあり、和解に応じることとした。

石油会社は、政府はMTBEの使用に関し、最初の段階で特に反論しなかったのだから、浄化に要するコストを払うべきではないと主張した。
また、
MTBEの人に対する長期的な健康影響は証明されておらず、したがってMTBEは汚染物質と見なされるべきではないと主張した。
和解はするが、これらの主張に変わりはないとしている。

和解した石油会社には以下が含まれる。各社の分担金は明らかにされていない。
 
BPChevronConocoPhillipsTosco Corp.Shell Oil Co.Ultamar Inc.Valero Energy Corp.Hess Corp.

ExxonMobilを含む少なくとも6社は和解を拒否した。

ーーー

8月4日、マンハッタンの連邦地裁でExxonMobilに対する裁判が始まった。

Queens区のJamaica地区にある井戸の汚染に関するもので、この井戸は緊急時や渇水時に川からの取水が出来ない場合のためのバックアップの井戸である。汚染により、これが使えなくなった。
もう一度使えるようにするには、
250百万ドルをかけて処理設備を作る必要があるとされている。

2003年にNew York市は23の石油会社を訴えたが、ExxonMobilを除く22社と和解、15百万ドルを得た。

裁判でNew York市は、ExxonMobil 1980年代にMTBEの使用を始めたが、ガソリンの添加物が地下水を汚染することを知っていたが、儲けのために使い続けたと非難した。汚染問題がないエタノールを使うことが出来たが、ガロン当たり3セントを惜しんでMTBEを使ったとしている。

他方ExxonMobil は責任を否定、地下水汚染は他の業界によるものだとしている。同地区は産業廃棄物の溜まり場で、汚染はMTBEのためではないとした。
また、市は処理設備をつくる積もりはなく、バックアップ用に他の方法を計画しているとした。

陪審員は8月12日、市側の勝利を決めた。

828日、ExxonMobil は第二審でも敗れた。11名の陪審員は、MTBEが井戸水に長く残り、6つの井戸の水の汚染が2033年に10ppbのレベルになるであろうとした。

10月に第三審が始まった。

ExxonMobil は井戸はMTBE以外の汚染で閉鎖されており、使用できない状況にある。汚染の原因はドライクリーニングに使われるパークロルエチレンによるものであり、同社はこれを生産していないと主張した。 


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LG Chemが第3四半期に過去最大の業績を上げた。
同社の金磐石(キム・バンソク)副会長は13日の企業説明会で、第3四半期の売上が4兆3643億ウォン(約3350億円)、営業利益が7299億ウォン、純利益が5430億ウォンを記録したと明らかにした。
売上、営業利益、純利益のすべてが四半期ベースで過去最大となった。
売上は前年同期比で9.7%増、営業利益は75.3%増、純利益は82.8%増と急増した。

金副会長は、「液晶パネルの需要増にともなう偏光板など光学素材事業の収益性が改善し、ノキアやヒューレット・パッカードなど大口顧客への電池供給量が増えた」と説明した。
また、「石油化学部門でエチレン・プロピレンなどで価格が上昇したことから利益が増え、PVC需要が回復したことで業績が改善した」と述べた。

連結損益 (単位:10億ウオン)

  2008 2009
1Q 2Q 3Q 4Q 合計 1Q 2Q 3Q 4Q 合計
売上高 - - - - - - - - - -
 Petrochemicals  2,835  3,131  3,380  2,470  11,816  2,587  2,884  3,074       8,545
 I & E Materials 620 654 654 750 2,678 786 1,015 1,234 - 3,035
 Total 3,494 3,749 3,980 3,332 14,555 3,400 3,921 4,364 - 11,685
営業損益 - - - - - - - - - -
 Petrochemicals 285 393 319 -85 912 374 531 519 - 1,423
 I & E Materials 84 102 107 172 466 114 130 216 - 460
 Total 362 484 416 59 1,321 487 660 730 - 1,878
  注. 「その他」があるため、両部門の合計は全社と一致しない。

LG Chem によると、各部門の状況は以下の通り。

石油化学部門
 ナフサ分解/ポリオレフィン:原油価格アップ、製品市場好調で増益
 PVC:原油価格アップ、国内と途上国市場好調で増益
 
ABS/エンプラ:中国市場の需要安定
 アクリル/可塑剤: 需要維持で安定
 合成ゴム/特殊樹脂: 自動車業界の回復

 今後の予想
 中東と中国の新増設でポリオレフィン価格下落

 
ポリオレフィン以外は安定

I & E Materials部門
Electronics & opticalsLCD需要の急増で増益
                  品質改善も貢献
 
Battery:主要需要家(Nokia, HP, LGE)の需要増
       ハイブリッド自動車向け販売開始(現代自動車、起亜自動車)

ーーー

液晶パネル世界第二位のLG Display は第3四半期の営業利益が9040億ウオンで前年同期比3.6倍になったと発表した。純利益も90%増の5591億ウオンとなった。

ーーー

LG Chemだけでなく、サムスン電子、現代自動車など韓国の主要企業は好調である。

これについて、韓国内で議論が分かれている。

大統領府(青瓦台)の姜万洙経済特別補佐官は10月13日、「主要企業は、為替効果と政府の財政政策がなければ過去最高の赤字を出したはずだ」とし、「二番底(ダブルディップ)がやって来る懸念があり、経済は今後2年間にわたり現在の不況が続く」と発言した。

これに対し、韓国貿易協会の司空壱会長は14日、「為替相場が企業(の業績改善)に役立っているのは事実だが、 1990年代後半にアジア通貨危機を経験し、企業の基礎が丈夫になり、企業が新製品開発と新市場開拓に取り組んだ結果だ」と反論、「最近世界経済に表れている民間消費の伸びや投資シグナルが持続しなければ、一部で二番底に陥る可能性があるが、G20が政策協調を行えば、二番底を防ぐことができる」と述べた。

本年7-9月期の平均レートは1ドル=1239.22ウォンだった。
昨年同期のレートは1ドル=1066.09ウォンだった。

証券各社が予想する今年7-9月期のサムスン電子の営業利益は、およそ2兆6000億ウォンだが、レートが昨年と同じ水準だったと仮定すれば、営業利益は昨年同様1兆ウォン程度にとどまっていたと推定されている。


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10月14日のNew York ダウ工業株30種平均は大幅に反発し、前日比144.80ドル高の10,015.86ドルで終え、2008年10月3日(10325.38ドル)以来、約1年ぶりに1万ドルの大台を回復した。

14日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物市場も、ドル安や景気回復期待を背景に5営業日続伸し、WTI原油の11月渡しが一時、1バレル75.53ドルまで上昇、終値も75.18ドルとなり、昨年1014以来の高値となった。

  WTI Dow  
08/
10
   
1 98.53 10831.07
2 93.97 10482.85
3 93.88 10325.38
6 87.81 9955.50
7 90.06 9447.11
8 88.95 9258.10
9 86.59 8579.19
10 77.70 8451.19
13 81.19 9387.61
14 78.63 9310.99
15 74.54 8577.91
16 69.85 8979.26
17 71.85 8852.22
20 74.25 9265.43
     
09/
10
   
13 74.15 9871.06
14 75.18 10015.86
 

東京市場でもドバイ原油は72.70ドル/バレル、ナフサは625ドル/トンと上昇した。

 


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2008年8月1日、中国の反壟断法(独占禁止法)が施行された。

合併・買収では以下の点を審査することとなっている。
 ・市場シェアや市場への支配力
   市場独占の判断基準=1社で5割、2社で2/3、3社で3/4以上のシェア 
 ・国民経済や消費者への影響
 ・
国家安全への影響(外資の場合)

1年2ヶ月が経過し、合併審査の実例が溜まった。

ーーー

本年1月26日、PfizerWyeth 680億ドルで買収すると発表した。

2009/1/27 PfizerWyeth を買収

中国商務部はこの買収の審査を行っていたが、929日の公告77号で、Pfizerの豚マイコプラズマ性肺炎ワクチン(RespisureRespisure One)の中国本土の事業の売却を条件に買収を承認した。

この分野でのシェアが49.4% (Pfizer 38%, Wyeth 11.4%)となり、2位のIntervet 18.35%をはるかに上回る。その他は10%未満。また、新規参入も難しいとする。

「赫氏指数」HHIHerfindahl-Hirschman Index) が336の増加で2,182となり、集中度が高まり、競争を制限するとしている。

Pfizer によるWyeth買収については、独禁法当局による承認は米国とカナダのみが残っているが、間もなく承認される見込みで、Pfizerでは第4四半期初めにも買収が実現するとみている。

動物薬に関しては、他の国の審査でも問題になった。

このため、PfizerWyeth921日、両社の動物薬事業の一部をBoehringer Ingelheimに売却する契約を締結した。

Wyethの動物薬事業のうち、牛や小動物のワクチンその他医薬品について、製品、Fort Dodge工場及び研究所、知的財産を売却する。
このほか、豪州の愛玩動物ワクチン、EUと南アの牛のワクチンなども売却する。

ーーー

米国の自動車部品メーカーDelphi1999年にGM社から分離・独立)は2005年10月にChapter 11を申請した。

再生計画の一部として、GMが米国の4工場と世界中のステアリング事業とを買収する。条件として、GMは10億ドル以上の債務を引き受けるとともに、20億ドルの債権を放棄する。また17.5億ドルを投資する予定。

中国商務部は、GMによるDelphiの中国のステアリング事業買収に関して審査をしていたが、9月28日、条件付でこれを承認した。

条件には以下のものが含まれる。

GMとDelphiが、Delphiの他の中国の需要家に関する情報を交換しないこと。
 (
GMによる秘密情報取得の防止)

・Delphiが他の中国の自動車メーカーに、差別なしに、部品を市価でタイムリーに供給を続けること。

商務部は競争上の懸念を2社と議論し、2社から解決案が出てきたとしている。

ーーー

このほか、既報の以下の例がある。

・ベルギーのビール会社 InBev によるAnheuser Busch 買収

  2008年11月 条件付承認

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

米コカ・コーラによる中国最大の果汁メーカー中国匯源果汁集団の買収

 2009年3月18日、不認可

2009/3/24  中国、コカ・コーラの果汁大手買収を承認せず 

・三菱レイヨンによるLucite International の買収

 2009年4月24日、条件付で承認

2009/4/25 中国商務部、条件付で三菱レイヨンのLucite International 買収を承認

付記

・パナソニックの三洋電機買収

  本件は1カ月の初期審査の結果、実質審査に入り、8月14日、商務部が競争上の問題がある旨指摘
  双方は協議を持ったが合意に至らず、審査の60日の延長。
  その後、三度の双方協議を経て、ようやく問題解消措置について合意。
  2009年11月5日、以下の条件付で承認。

  問題は下記の3つの電池市場で、いずれについても関連地理的市場は世界市場とされた。(理由説明なし)
  中国域外の工場の売却を条件としたのは本件が初めて。

 1) 自動車用ニッケル水素電池 (合併で中国市場で77%のシェア)

パナソニックの茅ケ崎市の湘南工場の第三者への売却

付記
パナソニックは2011年2月1日、同工場のニッケル水素電池事業を中国の電池メーカー湖南科力遠新能源に売却すると発表した。特許を含む知的財産権を使用出来る契約。
受け皿会社に移管し、全株式を4千万元(約5億円)で売却する。

トヨタとの合弁のパナソニックEVエナジーへの出資比率を40%から19.5%に引き下げ、取締役指名権ほかの放棄、JVの社名からの「パナソニック」の除外

付記 2010年6月にプライムアースEVエナジーと改称

 2) コイン型リチウム二次電池(同上 62%のシェア)

三洋電機の鳥取県岩美町の鳥取工場の第三者への売却

付記 FDKに譲渡

 3) ニッケル水素電池(同上 46%のシェア)

三洋電機の群馬県高崎市の高崎工場の第三者への売却

付記 FDKに譲渡

又は、三洋電機の蘇州市の工場か、パナソニックの無錫市の工場の売却

  日本の公取委や米国、EUの当局からも同様の指摘を受けた。

パナソニックは2009年11月4日、公開買付け開始を発表したが、公正取引委員会その他海外の競争法当局による審査の過程で指摘を受けた競争法上の懸念を解消するため、以下の問題解消措置を講じるとしている。

車載用ニッケル水素電池
   
パナソニックの車載用ニッケル水素電池に関する事業を第三者に譲渡する。
   
パナソニックEVエナジーの行う車載用ニッケル水素電池に関する事業に対する影響力排除のため、
中国商務部との間で合意したものを実施する。
   
円筒形リチウム一次電池及びコイン形リチウム二次電池

三洋の円筒形リチウム一次電池及びコイン形二次電池に関する事業並びにニカド電池用極板加工に関する事業の一部を、「三洋エナジー鳥取」に移し(その他の事業は三洋に移し)、全株式をFDK(富士通の連結子会社)に譲渡。

   
民生用ニッケル水素電池

三洋の民生用ニッケル水素電池事業を「三洋エナジートワイセル」に移し(その他の事業は三洋に移し)、全株式をFDKに譲渡。
   

 

 

2000年のポリプロカルテルについては、トクヤマ、出光興産、住友化学、サンアロマーの4社が2007年8月8日の審決を不満として東京高裁に審決取消を求めて提訴していたが、その判決が9月25日にあったことが、10月13日付けの公正取引委員会メールマガジンで明らかになった。

4社は
(1)本件審決は原告ら7社の間でポリプロピレンの販売価格の引上げに関する合意を行ったと認定しているが、そのような事実はなく、
(2)本件審決の事実認定は、引用する証拠自体が実験則や経験則に反しており、実質的な証拠がないなどとして、本件審決の取消しを求めた。

東京高裁は、本件審決の認定は、経験則、採証法則等に反するとはいえず、実質的証拠があって、本件審決が(上記)会合において本件合意(意思の連絡)が成立したと認めたことは合理的であるということができ、本件審決には、原告らの主張するような違法はなく、原告らの請求は理由がないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。

判決文 http://snk.jftc.go.jp/JDS/data/pdf/H210925H19G09000035_/090925.pdf

このなかで、「意思の連絡」について、下記の通り述べている。

独禁法3条で禁止されている「不当な取引制限」すなわち「事業者が、他の事業者と共同して対価を引き上げる等相互に事業活動を拘束し、又は遂行することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(2条6項)にいう「共同して」に該当するというためには、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であると解される。
この「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、
事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる
と解するのが相当である。(中略)
特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には、その行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、強調的な行動をとることを期待し合う関係があり、上記の「意思の連絡」があるものと推認されるのもやむを得ないというべきである(以上につき、東芝ケミカル事件に関する前掲東京高裁平成7年9月25日判例参照)。なお、事業者としては、特段の事情の立証により上記の推認を破ることができるほか、
対価引上げに関する情報交換という不明朗な行為自体を避けさえすれば、上記の推認を受けないものである。

住友化学は14日、「主張が認められなかったことは残念だが、上告しないことにした」とのコメントを発表した。
残りの3社はいずれも「今後の方針を現在検討中」としているが、事態は収束の方向に向かうと見られる。

ーーー

本件の経緯は下記の通りで、公取委の立入検査(2000/5/30)から9年もかかっている。

2000 1 21 部長会で値上げの必要性について意見交換
    2 7 現状のPPの販売価格で採算が取れるナフサ価格の水準 17,000~18,000円/kl で共通認識
(各社:共通認識はない)
    2 21 PPの値上げについて意見の一致をみず
    3 6 4月以降のナフサ価格の見通し 22,000から23,000円/klで一致
10円/kg目処の
引き上げで合意
(各社は「合意なし」と主張)
    3 17 各社の値上げの打出しの内容、対外発表時期等を確認
(各社:値上げ手続き後であり、事前合意がなくとも進捗状況の話はする)
    3 27 各社の責任分担ユーザーを取り決め
(各社:送別会の集まり。酒席で,各社が値上げ交渉に入っている中での難物ユーザーの名を挙げることは、カルテル合意
     の存在を前提としなくても行われ得る)
   4   (4/15~5/1)各社の値上げ実施予定日 →課徴金計算始期
   5 30 公正取引委員会が立入検査   →前日が課徴金計算終期(2007/6/19 審決:日本ポリプロ、チッソ)
  9   チッソ、日本ポリケム、グランドポリマー 
 本件合意から離脱する旨等を他の各社に文書で通知→課徴金計算終期(2003/3/31納付命令:三井化学
2001 5 30 公取委勧告
 

 拒否:住友化学、サンアロマー、出光石油化学(→出光興産)、トクヤマ
      
2001/6/27 審判開始決定
          9/12 第1回審判
      2006/8/4  第28回審判(審判手続終結)


 応諾:日本ポリケム
(→日本ポリプロ)、グランドポリマー(→三井化学)、チッソ

 ○日本ポリケム:
   勧告を厳粛に受け止めている
 ○グランドポリマー:
   ・
合意が成立など認識と異なる部分もあり、応諾するか否か苦慮
   ・まぎらわしい行為があったことも事実
   ・早く結論を出して欲しいという社員の気持にも配慮し、応諾
   ・認識と異なる点については上申書提出

 ○チッソ:
   早く事業に専念したいため応諾

2003 3 31 応諾3社に課徴金納付命令
日本ポリケム  8億4517万円 →審判
三井化学
(グランドポリマー)
 7億6008万円 →応諾
チッソ  4億3513万円 →審判
2007 6 19 日本ポリプロ、チッソ審決
日本ポリプロ
(日本ポリケム)
 2億2087万円
チッソ  1億1662万円

課徴金計算終期の見直しで当初の命令より大幅減額

2007 8 8 勧告拒否4社に審決

  結論 独禁法違反あり(各社は否定しているが)

住友化学、サンアロマー 価格引き上げ合意の消滅の確認とその周知徹底等
出光興産、トクヤマ 格別の措置なし(PPの製造販売業を実質的に営んでいない)

その後、4社全てが東京高裁に控訴

2008 6 20 公取委、残り4社に対し課徴金納付命令

各社の課徴金は以下の通り。(青字が確定分)

  当初課徴金 審判課徴金 今回の命令
三井化学(グランドポリマー)  7億6008万円    
日本ポリケム  8億4517万円  2億2087万円  
チッソ  4億3513万円  1億1662万円  
出光興産      1億4215万円
住友化学      1億1716万円
サンアロマー         5097万円
トクヤマ         4781万円

公取委は8月29日、4社からの審判手続の開始請求を受け、審判を開始すると発表した。

2009 5 19 公取委、住友化学とトクヤマに対し、課徴金納付を命ずる審決
  2008/6/20命令 2009/5/19審決
出光興産  1億4215万円  
住友化学  1億1716万円  1億1716万円
サンアロマー     5097万円  
トクヤマ     4781万円     4779万円

出光興産、サンアロマーは審判継続中

2009 9 25 東京高裁、審決取消請求事件で原告らの請求を棄却する判決

 


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三菱ガス化学は中国・重慶市で計画していたメタノール合弁事業を白紙撤回する。10月7日の日本経済新聞が報じた。

原料の天然ガスの中国の価格が計画当初に比べて約2倍に高騰しており、価格や費用などの条件面で折り合わなかったという。

ーーー

当初の計画は、2005年上半期に三菱ガス化学 51%、重慶化医 49%出資で JV を設立し、投資額 2億ドルで年産85万トンのメタノール工場を建設するもので、2008年の建設完了を目指していた。

2004年8月に国家発展改革委員会(NDRC)から詳細事業化調査を行う正式許可を得て、FSを続けていた。

その後、状況が変わった。

国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表した。830日から適用された。

天然ガスの利用は、都市ガス、産業ガス、発電、化学品の4つに分類され、都市ガス用の利用が最優先される一方、メタノール用の使用が禁止された。社会面、環境面、経済面を考えた選択としている。

メタノールについては、これから建設を開始する計画が禁止されるが、稼動中のものや建設完了のもの、ガスの供給契約を締結済みの建設中のものについては除外される。

2006年の中国のメタノールの生産量は 762万トンだが、メタノール能力のうち、7580%が石炭ベース、20%程度が天然ガスベースで、残り僅かがコークス炉ガスやオフガスとなっている。

他の石油化学や発電用も制限又は禁止された。例えば石炭が豊富な地域での天然ガスによる発電は禁止される。

また、パイプ輸送を進めるため、大規模、中規模のガス田でのLNG製造計画が禁止された。

重慶化医集団によると、JVの計画は2007年7月5日に事業実施の承認を取得した。
新しい天然ガス活用政策ではメタノールの新規計画は禁止となるが、
ガスの供給契約を締結済みの建設中のものについては除外されるため、本計画は禁止の対象にはならないとされた。

本計画の定礎式が2007年12月26日、副市長その他の出席のもと、重慶市の重慶ケミカルパークで行なわれた。

重慶化医によると、投資額は21億人民元(約290百万ドル)で、公称能力は年産85万トンだが、実能力は100万トンになるという。
2008年上半期に着工し、2010年の下半期のスタートを目指すとした。

しかし、三菱ガス化学側は何も発表しておらず、本事業をやるかどうかについて、まだ結論を出していないとした。

上記の天然ガス規制などに関連して(承認取り消しを恐れて)、中国側が実績つくりをした可能性もある。

2008/1/11  重慶ケミカルパークのメタノール事業

 

なお、三菱ガス化学では南京市の南京ケミカルパークにメタノール誘導品の子会社を持っている。

社名: 菱天(南京)精細化工 Lingtian (Nanjing) Fine Chemical Company Ltd.
出資:三菱ガス化学 85.1%
    伊藤忠ケミカルフロンティア 10.0%
    伊藤忠商事 4.9%

製品:ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド(40千トン)及びジメチルアセトアミド(10千トン)

   
第二期計画として、トリメチロールプロパン


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デュポンは10月7日、証券取引委員会への報告の中で、2008年の利益水準に戻るのは早くても2012年になるとの見通しを発表した。

Vergnano副社長は前日の投資家への説明で、2008年の利益水準(前年比33%減)に戻るのに2.5年~3年はかかると述べた。
2008年の同社の1株当たり利益は2.20ドルであったが、アナリストは2009年予想を1.82ドルとみている。

副社長によると、この予想には医薬部門の減益を折り込んでいる。

2008年の税引前損益36.5億ドルのうち、医薬部門は10.25億ドルと28%を占める。(2007年では19%)

                          単位:百万ドル
  2008年  2007
Net Sales   30,529   29,378
税引前損益   2,391   3,743
Net profit   2,007   2,988
     
税引前内訳    
Agriculture & Nutrition   1,087    894
Coatings & Color Technologies    326    840
Electronic & Communication Technologies    436    594
Performance Materials    128    626
Safety & Protection    829   1,199
Pharmaceuticals   1,025    949
Other    -181    -224
(小計)   (3,650)   (4,878)
Net exchange loss    -255    -85
Corporate expenses & net interest   -1,004   -1,050
合計   2,391   3,743

DuPont 1991年にMerck との50/50JVDuPont Merck Pharmaceutical を設立した。パーキンソン病の薬Sinemet(R)、心臓画像診断剤Cardiolite(R)、抗高血圧薬のCozaar(R)Cozaarチアジド系利尿剤 との合剤 Hyzaar(R)などが上市された。
Cozaar Hyzaar Merckで販売された。

1998年にDuPont DuPont MerckのMerck 持分を買収し、同社をDuPont Pharmaceuticals と改称した。その後、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)用の薬としてSustiva (R) が上市された。

しかし、DuPont の力をもっても医薬事業で生き抜くのは難しく、販売減と、研究開発費・販売費の増大により、1999年から2000年に営業利益が半減した。

DuPont は2001年、世界の事業の構造改革を実施した。
4月に競争力を失ってきたポリエステルおよびナイロン工場の閉鎖を発表、3カ月後にはポリエステル事業の一部を売却した。

同年6月、
DuPont PharmaceuticalsBristol-Myers Squibbに売却するという決断をした。医薬品事業に必要な巨額投資は、同社にとっても、あまりにリスキーだったからである。

売却額は78億ドルで、税引き後利益は38億6,600万ドルであった。
但し、条件として、
Cozaar抗高血圧薬)と HyzaarCozaar利尿剤との合剤の権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。

しかし、これらの医薬品の特許は9月にEUで失効、米国でも来年4月に失効する。

これに伴う利益の減少が大きい。


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BASFは9月29日、「アジア太平洋の2020年戦略」の概略を以下の通り発表した。

 ・2020年まで毎年、アジア太平洋化学市場よりも平均で2%ポイント高い成長を目指す。
 ・販売の70%は同地で生産する。
 ・最低5,000人を増員(15,000→20,000)
 ・2009-2013年で20億ユーロを投資
 ・効率改善で2012年までに年間1億ユーロの合理化

同社では地域市場の伸び率を4-5%と予想しており、2%ポイント高い成長により、2020年までに売上を倍増する。
新戦略では同地域で5つのキイとなる成長市場を狙う。

同社は既に中国、日本、韓国、マレーシア、インドなど15カ国に進出しているが、ベトナムや中国内陸部など急速に発展している地域にも積極的に進出を考える。

1)20億ユーロの投資(2009-2013年)には以下を含む。

 南京のシノペックとのJV・BASF-YPCの14億ドルの増設計画の50%持分
 重慶では
MDI 40万トン計画(2014年初めの商業運転を目指す)

2)5つのキイとなる市場

 自動車、建設、包装、ペイント・コーティング、医薬

 BASFの事業例:
   自動車軽量化のためのエンプラ、省エネ住宅のための断熱システムとコンクリート混和剤、
   生分解性包装資材、環境にやさしいペイント材料、医薬中間体

3)増員

 中国とインドに雇用を進めるためのリクルートセンターを設立した。
 特に中国とインドで2020年までにR&D要員を倍増する。
 (現在はアジア太平洋で15のR&D拠点で300人を雇用している)

 アジアのニーズに合わせた製品や使用方法、問題解決策を需要家と一体となって開発する。

4)合理化

 Site Optimization Project (工場最適化計画)により、デボトルネッキングや、
 他の製品や他の工場とのシナジー効果で能力を増やす。
 この投資は
1年以内に回収することを狙う。

 

参考  2006/7/10 BASFの中国戦略


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公取委は10月7日、外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。2007年11月に米国、EUと同時期に調査を開始したもの。

日本のブラウン管テレビ製造販売業者(オリオン電機、三洋電機、シャープ、日本ビクター、船井電機)の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、遅くとも2003年5月ころまでに、2か月に1回程度、ミーティングを継続的に開催し、おおむね四半期ごとに次の四半期におけるその現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。

公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。

外国法人間の取引では日本の独禁法は適用できないが、公取委は今回、日本の電機大手の親会社がブラウン管の購入価格などを交渉していたため、日本の親会社と現地製造子会社は一体だとして、日本の市場にも悪影響を及ぼしたと認定、同法が適用できると判断した。

    価格
決定
出荷   排除措置
命令
課徴金納付
命令
 
MT映像ディスプレイ     大阪府   ○   -  
 MT Picture Display (Malaysia) Sdn. Bhd. 子会社   Malaysia   -  650,830千円 清算手続き中
 PT. MT Picture Display Indonesia 子会社   Indonesia   -  580,270 清算手続き中
 MT Picture Display (Thailand) 子会社   Thailand   -  566,140 清算手続き中
Samsung SDI     Korea   ○   -
 Samsung SDI (Malaysia) BERHAD 子会社   Malaysia   -  1,373,620  
LG Philips Displays Korea   <p><p>HTML clipboard</p></p>  Korea   -  151,380 事業譲渡
 P.T. LP Displays Indonesia     Indonesia   - *(10億円以上)  
Chunghwa Picture Tubes     Taiwan   ー   - 自主申告
 Chunghwa Picture Tubes (Malaysia) Sdn Bhd. 子会社   Malaysia   ー   -  
Thai CRT   Thailand   -   - 解散消滅
合計          2  3,322,240  

◎印の5社が、共同して特定ブラウン管の最低目標価格等を設定し、日本のブラウン管テレビ製造販売業者と価格等の交渉を行い、各社の子会社等(○印)が指示を受けて、日本のブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等に出荷していた。

ーーー

MT映像ディスプレイは旧松下東芝映像ディスプレイ(松下/東芝JV)で、現在はパナソニックの100%子会社。

 MT Picture Display (Malaysia)は2007年10月に解散の決議を行い、同日付けで清算手続を開始。
 
PT. MT Picture Display Indonesia20079月に操業停止、同日付けで清算手続を開始。
 
MT Picture Display (Thailand) 20095月に解散決議を行い,同日付けで清算手続を開始。

LG Philips Displays Korea20097月に韓国のMeridian Solar & Displayにテレビ用ブラウン管の製造販売に係る事業を譲渡。

Thai CRT20076月に解散決議を行い、その後、消滅。

ーーー

Samsung 系2社は同日、公取委に国内代理人の解任を伝えたため、海外送達手続の完了まで命令の効力は発しない。

P.T. LP Displays Indonesiaには10億円以上の課徴金納付を命じる方針だが、同社は日本で代理人を選任しておらず、外交手続きにより意見申述・証拠提出の機会を付与するための手続を行っている。

注 独禁法49条3
公正取引委員会は、排除措置命令をしようとするときは、当該排除措置命令の名あて人となるべき者に対し、あらかじめ、意見を述べ、及び証拠を提出する機会を付与しなければならない。

<p>HTML clipboard</p>◎印5社のうち、LGは事業譲渡、Chunghwaは自主申告、タイのメーカーは会社が解散したため、排除措置命令対象から外れた。

ーーー

パナソニックは以下の通り発表した。

MT映像ディスプレイ株式会社はブラウン管事業からの撤退を決定しておりますが、今回の排除措置命令および課徴金納付命令に関する公正取引委員会の判断については、これまでの独占禁止法の考え方並びに運用と異なる点もあることから、今後、審判請求も視野に入れて慎重に対応を検討してまいります。


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1.100%子会社の違反に対する親会社への制裁金問題

欧州委員会は200412月に、BASFUCBAkzo Nobel の欧州3社と米国のBioproducts DuCoa、カナダのChinook の6社が、992年から1998年にわたって、家畜用のビタミンB4 (塩化コリン)で国際カルテル(価格、市場割当)を結んだとして欧州3社に制裁金を科した。

これに対し、欧州3社は第一審裁判所に控訴、2007年に判決があった。

BASFとUCBの主張は1992年から94年は国際カルテル、それ以降は欧州カルテルで別カルテルであり、前者は時効だとするもので、第一審裁判所はこれを認め、制裁金の計算をやり直した。(UCBは大幅減額、BASFは増額)

Akzo は子会社が行なったカルテルで親会社に制裁金を科すのはおかしいとしたが、判決はこれを却下した。このため、Akzoは上告した。

2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額 

欧州の最高裁判所は9月10日、 「親会社は、自ら独禁法違反行為をしていなくとも、子会社の行為に責任を持つ」との委員会の主張を認め、Akzoの上告を却下した。

裁判所の判断は以下の通り。

重要なことは親会社が子会社と一つの経済体をつくっているかどうかである。

子会社の100%を保有している場合、親会社は子会社のポリシーに決定的な影響を与えている。子会社が日常の活動を独立して行っているというだけでは反論できない。

EUの独禁法では"undertakings(事業体"の活動が問題とされる。
親会社と子会社が一つの
undertakingsを形成しておれば、委員会は親会社に制裁金を科すことが出来る。
親会社が子会社のポリシーに決定的な影響を与えているということを示すためには、親会社が子会社の
100%を保有していることを示すだけでよい。

 

2.コンクリート用棒鋼カルテル事件
   裁判所で敗訴した事件で再度 制裁金

欧州委員会は9月30日、1989年12月から2000年5月までのコンクリート用棒鋼での価格カルテルでイタリアの8社に合計83百万ユーロの制裁金を科した。

本件は2002年12月、欧州委員会が当時の 欧州石炭鉄鋼共同体条約65(1)の違反で、同条約65 (4) (5)に基づき、制裁金を科した。

1951年にパリ条約が調印され、フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オ ランダ、ルクセンブルクが参加し欧州石炭鉄鋼共同体が設立された。

条約の第65 (1)ではundertakings(事業体)のカルテル行為を禁止している。

All agreements between , decisions by associations of undertakings and concerted practices tending directly or indirectly to prevent, restrict or distort normal competition within the common market shall be prohibited, and in particular those tending:

(a) to fix or determine prices;
(b) to restrict or control production, technical development or investment;
(c) to share markets, products, customers or sources of supply.

65 (4) (5)では手続きを決めている。

2002年にパリ条約が失効し、欧州石炭鉄鋼共同体の活動や資源は欧州共同体に吸収された。

EC条約では81条と82条で上記65 (1)の独禁法規定を引き継いでいる。
   
81条:競争制限の禁止
   
82条:独占的地位

しかし裁判所は、欧州石炭鉄鋼共同体条約が20027月に切れているため、同条約65 (4) (5)に基づいた制裁金命令は違法であるとし、敗訴となった。

欧州委員会は今回、当時の欧州石炭鉄鋼共同体条約 65(1)違反とし、旧法に置き換わったEC条約8182条執行手続きである7 (1)及び2003年のRegulation No 123 (2) に基づき、再度制裁金を科したもの。

同じ案件であるため、制裁金の額は(1社の少額の減額を除き)前回と同じである。

Neelie Kroes 委員(競争政策担当)は、「カルテル参加者は手続き面の理由で制裁金を逃れることは出来ないとの明確なメッセージを送った」と述べた。

 

3.変圧器カルテル

ECは10月7日、富士電機、日立、東芝を含む7社に変圧器カルテルで合計67,644千ユーロの制裁金を科したと発表した。

7社は1999年から2003年にかけて「紳士協定」を結び、日本メーカーは欧州に売らない、欧州メーカーは日本に売らないことを決めたというもの。年に1~2回、アジアと欧州の高級ホテルで会合を開いていた。

     Leniency 制裁金
(
Euro)
備考
減額(%) 減額(千Euro
Siemens (Germany)    100   33,360     0 カルテルを通知
ABB (Switzerland)      33,750 重犯で50%増し
ALSTOM SA(France)      16,500  
AREVA T&D SA (France)     18    2,970 うち 13,530
Fuji Electrics (Japan)     40    1,156   1,734  
Hitachi (Japan)     18     450   2,460  
Toshiba (Japan)      13,200  
合計      67,644  

東芝は以下の通り発表した。

欧州委員会の調査に協力して参りましたが、当社の調査では欧州競争法に違反する行為を行っておらず、欧州裁判所において今回の決定を争っていく方針です。決定書を正式に受領後、その内容を検討の上適切に対応していきます。

ーーー

日本のメーカーが欧州で販売しないために制裁金を科せられたのは、これまでに送電設備(ガス絶縁開閉装置)カルテルがある。

   2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 


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タイ中央行政裁判所は9月29日、同国東部のラヨン県マプタプット地区で計画されている石油化学などの76事業、総投資額4000億バーツについて、ラヨンの住民とAnti-Global Warming Association による違憲の訴えの最終判決を下すまで一時凍結するようタイ政府に命じた。

裁判が長引けば外国直接投資や雇用、経済全体への悪影響が避けられないと見られ、タイ政府は10月2日、凍結命令の取り消しを最高行政裁に求めた。

2007年発効のタイの現行憲法は地域の環境・健康に被害を与える恐れがある事業活動について、
▽環境・健康アセスメントの実施
▽公聴会の開催
▽ 環境・健康アセスメントを行う独立機関の設置――を義務付けている。

中央行政裁判所は今年3月、マプタプット地区で深刻な環境汚染が起きているとした原告住民の訴えを認め、全域を公害防止地域に指定するようタイ環境委員会に命令。これを受け同地区の住民と環境保護団体がPTTなどの事業が憲法の要件を満たしていないとして行政裁に建設中止を求めていた。

対象となる事業には以下のものが含まれる。
 インドのAditya Berla Chemicals
(アジア7位のセメントメーカー)の3計画
 Bayerの2計画(ポリカーボネートか?)
 豪州のBluescope Steel
の計画
 
Siam Yamato Steel(Siam Cement と大和工業子会社ヤマトスチールほかのJV)の計画
 
MTP HPPO Manufacturing (DowSiam Cement JV)の計画

タイの外国企業商工会議所議長は、これにより商業生産開始が遅れたり、資金が引き上げられるのを恐れるとし、政府が問題にきちんと対応するよう求めた。
環境保護は理解するが、環境保護と同時に投資とのバランスが取れるよう、法律をよく見て欲しいとしている。

25のプロジェクトが対象となったPTTは不満の意を表明し、凍結命令取り消しが拒絶された場合、他の企業と対応を検討するとしている。

JETROバンコックは、1970-80年代に同様の問題に対応した日本政府の経験を参考にして欲しいとしている。

タイ商工会議所では裁判所の命令が投資者の信用を危険なほど揺るがしているとし、早急に解決しないと外資が逃げてしまうとしている。


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中国中化集団公司(Sinochem)は9月28日、28億豪ドルでNufarmを買収する非拘束契約を締結した。先ずSinochem がdue diligenceを行い、その後、独占ベースの売買契約を締結し、株主及び両国当局の承認を得る。

Nufarm 2007115日に中国化工集団公司 (ChemChina)Blackstone Group 及び Fox Paine Management III, LLC からの26億米ドルでの買収提案を受けた。

コンソーシアムはその後、Nufarm との話し合いに基づき、due diligence を行なった。

しかしながら、コンソーシアムは交渉期限の同年1210日までに正式提案をすることが出来ないと通知し、その結果、交渉は打ち切られた。グローバルな信用収縮により、有利な借入ができなくなったのが理由とみられている。

2007/12/15 ChemChina 等の豪州の農薬会社Nufarm 買収交渉、破談

Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業で、農業資材では肥料、農薬、種子を扱う中国最大の企業である。

Nufarmジェネリック農薬の大手で、特に豪州、欧州、北中南米に強みをもつ。

この買収はこの分野での研究開発、製造、販売、サービスのチェーンのグローバル企業になるというSinochemの戦略に合うものである。 

ーーー

豪州では資源会社や鉱山権益の獲得に走る中国の動きに警戒感が広がっており、事実上の買収防衛に踏み切った。
外国投資審査委員会(
FIRB)は本年9月に、国内大手資源会社に対する外資の出資比率を15%未満に、鉱山開発などの新規案件で外資が地元資本と合弁会社などをつくる場合は50%未満に制限する方針を示した。 

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は本年5月、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出

豪州のForeign Investment Review Board924日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

本件について資源会社ではないため上記は該当しないが、豪州政府の対応が注目される。

ーーー

Sinochem国務院国有資産監督管理委員会の管理下の主要な国営企業の一つ。2009年の“Fortune Global 500”では170位にランクされている。

1950年設立で、農業資材、エネルギー、化学品、ファイナンス、不動産の5つのセグメントから成っている。
2008年の売上高は452億ドル、純損益は9.44億ドルである。

1)農業資材(肥料、農薬、種子)

・中国最大の肥料のサプライヤーで、中国に13箇所に工場を持ち、輸入品を含め2008年の販売数量は1,622万トンで、中国でのシェアは18%となっている。
子会社Sinofert (中化化肥)が中心となっている。

・農薬の2008年の売上高は70億人民元で、中国の農薬の輸入、輸出の最大の会社となっている。

2007年に旧化学工業省の下のファインケミカルの研究開発機関であった瀋陽化工研究院(SYRICI
)と合併した。
2008年には浙江石油化学の大株主となり、その子会社の浙江化工科技(南中国)を傘下に収め、SYRICI(北中国)と合わせ技術力を強化した。

2008年に瀋陽
New Pesticide Industrial Park の建設を開始した。

・種子では2007年に 中国種子集団(China National Seed Group)と合併した。 

2)エネルギー

Sinochemは中国の国営石油会社4社の1社である。
(他は、
Petro China:中国石油天然ガス、Sinopec:中国石油化工、CNOOC :中国海洋石油)

元々国営の石油トレーディング企業であるが、探鉱開発,生産,精製まで一貫操業を行う会社を目指している。

E&PExploration & Productionについては、主に国外の石油ガス田買収や製油所への資本参加等により参入を図る計画で、2000年に海外油ガス田の探鉱開発を行う「中化石油勘探開発」を設立,2002年に2億500万米ドルでノルウェーの油田サービス会社Petroleum Geo-Serviceの子会社Atlantis社を買収し,オマーン,UAE,チュニジア等の石油ガス権益を取得した。

8月12日、同社はロンドンで上場しているEmerald Energy社の全株を5億3,200万ポンド(8億7,500万US ドル相当)で買収すると発表した。これにより、シリア、コロンビア、ペルーにおける石油・天然ガス事業に乗り出す。

3)Chemical

当初からのコア事業の1つで、主たる製品は、フッ素化学品、医薬品(原体、中間体を含む)、ゴム製品、石油化学原料などである。

鎮江奇美化工(Zhenjiang Chi Mei Chemical) は本年2月に江蘇省鎮江市で10万トンのABSプラントをスタートさせたが、同プラントの一部の機器は、Sinochemから購入した。

Sinochemは江蘇省太倉市で6万トンのABSと2万トンのPTMEGプラントの建設を計画したが、ABSについては計画を中止。現在太倉には、2万トンのPTMEGと2万トンのHFC-134a (フロン代替)がある。

2009/2/26  中国のABSメーカー 


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ダノンとワハハは9月30日、両社が友好的に和解したと発表した。

ダノンはワハハとのJVの51%の権利をワハハに売却する。売却代金は明らかにされていない。
中国政府の承認を得て実施する。
これに伴い、両社間の法的争いは全て終了する。

ダノンのCEOは、「ダノンは1987年以来、中国に注力してきたが、更に活動を強める」と述べた。

ワハハの宗慶後会長は、「中国は開放されており、中国国民は寛大だ。中国企業は平等と相互利益の原則で世界の大企業と協力し、成長していくことを望んでいる」と述べた。

ーーー

フランスのダノンはヨーグルト等の新鮮乳製品で世界一、Evian、Volvic、Aqua 等のブランドの炭酸飲料水で世界一、ビスケットやCereal 製品で世界第二のメーカーである。

1996年にダノンと 全国人民代表大会の浙江省代表を務める有力者の一人で Forbes 誌で中国で23位の金持ちとされる宗慶後氏のワハハグループが、ダノン51%のJV 「杭州娃哈哈集団」を設立し、「娃哈哈(ワハハ)」ブランドの炭酸飲料水を売り出した。

1996/2/29   Wahaha Group Ltd DanoneJV契約締結
 
商標移転契約(WahahaブランドをJVに)、非競合契約、守秘契約を含む。
1996/3/28   中国で5つのJV設立で合意、宗慶後が会長に就任。その後JVは39社に。
     
2000年   Wahaha Group Ltd.が改組、杭州市政府が46%所有の会社に。
    6年間で独自に17社を設立し、Wahahaブランドで製品を販売。
     
2006年末   DanoneがWahahaに対し、これらの会社の51%の買収を提案(519百万ドル)、Wahahaが拒否(「安すぎる」)
     
2007/5/9   DanoneがJV契約に関する仲裁をストックホルム商工会議所に申請
(JV契約では仲裁はストックホルム商工会議所で行うこととなっている)
    Wahaha613日に杭州市の仲裁委員会に仲裁を要請。
     
2007/6/4   Danoneがロスアンジェルスの裁判所に訴訟、その後訴訟合戦。 

その後、商標移転契約を政府が承認しなかったことが明らかになった。ワハハ側はダノン側に伝えたとしている。
しかし商標移転契約が発効しなくても、競合禁止の契約は生きており、別会社でワハハブランドの製品を販売することは認められるものではない。

逆にワハハ側はダノンが競合禁止に違反していること、ダノン側の経営上の問題などを主張した。

過去の記事
  2007/6/15 仏食品メーカーのダノン、中国で「ブランド流用」で合弁企業と対立
  2007/7/12 ダノンとワハハの争い、更に深刻化
  2007/9/14 ニュースのその後 ダノンとワハハの争い
  2007/11/30 ダノンとワハハのその後
  2007/12/23 ダノンとワハハ、和解交渉へ
  2008/4/28 ダノン/ワハハのその後 ー 宗慶後会長の脱税事件

ーーー

明らかにダノン側の完敗である。
1996年に設立し、中国最大の飲料会社となったJVを中国側に渡すことになり、最初からやり直すこととなる。

Wahaha Group 杭州市政府が46%所有の会社になっており、会長の宗慶後は全国人民代表大会の浙江省代表を務める有力者の一人である。

今回の争いで、中国の企業や住民はDanoneに対し民族主義的な感情(「外国の悪魔」)を持った。

中国での訴訟や仲裁はワハハ側に圧倒的に有利である。

仮にダノンがストックホルムの仲裁で勝ったとしても、中国でボイコットを受けて事業が出来なくなる可能性が強い。
(現実に、多くの
JVのディストリビューターがJV製品の販売を止め始めた。)


敗因はJVのブランドを世界的に有名なダノンではなく、中国側パートナーのワハハにしたことである。
ブランドをダノンにしておけば、このような事態は起こらなかった筈である。

中国での事業の難しさを示す一つの例である。


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2009年のイグ・ノーベル賞の授賞式が10月1日、ボストン近郊のハーバード大学で行われた。

パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量する研究で、北里大学の田口文章名誉教授と共同研究の北里大の大学院生だった中国人留学生2人(宗国冨 Song Guofu、張光磊 Zhang Guanglei 両氏)が生物学賞を受賞した。

2007年は山本麻由さんが「牛糞からバニラの芳香成分vanillin の抽出」で化学賞を受賞したが、本年はパンダのフンである。

パンダが消化しにくいササを主食にすることに注目、フンを生ゴミに入れたところ、通常の倍のスピードで分解したことから、パンダの体内に分解菌がいることを発見、この菌を分離し、生ゴミを分解して減量できることを実証した。

授賞式に出席した田口名誉教授は「パンダは見かけもユーモラスだが、ふんもほかの動物のふんとはかなり違う。主食のササがほとんど消化されずに出てくるので、実は悪臭はない。実験は面白い経験でした」と述べた。

「パンダから分離した耐熱性酵素群を産生する高温細菌による生ゴミ処理の試み」

To establish an efficient method for the microbial treatment of kitchen refuse, experiments were performed to isolate heat-stable multi-enzyme-producing thermophilic bacteria and to verify functional activities of the isolates for the complete decomposition of kitchen refuse.

Five Bacillus strains - B.amyloliquefaciens FTP148, B.amyloliquefaciens FTP2414, B.subtilis FTP237, B.Licheniformis FTP136, and B.licheniformis FTP2530 - were successfully isolated from feces of the Giant Panda.

Using a commercial waste-treatment device, kitchen refuse was treated with the five strains with the following results. When 1 kg per day was treated for 4 weeks, a total of 24 kg of mixed refuse consisting of green vegetables and fish remains as well as raw and/or fried potatoes was reduced to only 0.98 kg and a final digestive rate of 96% was obtained. It is noteworthy that the internal temperature of the compost mass reached a peak of 72.

These results indicate that the novel thermophilic bacterial strains isolated from Giant Panda feces may be useful for high-performance waste treatment.

(生物工学会誌 79(12) pp.463-469 2001/12/15)

その他の受賞者は以下の通り。

獣医学賞 Catherine Douglas
Peter Rowlinson
(Newcastle University, UK)
名前をつけた乳牛の方が、名前のない乳牛よりも多くの乳を出すことを調べた。
平和賞      Stephan Bolliger
Steffen Ross
Lars Oesterhelweg
Michael Thali
Beat Kneubuehl
(University of Bern, Switzerland)
頭を殴るのに、ビールの入ったビール瓶か、空のビール瓶のどちらがよいかの研究。
経済学賞 破綻したアイスランドの4銀行
Kaupthing Bank, Landsbanki,
Glitnir Bank,
Central Bank of Iceland
)の役員
小銀行がいかにして急速に大銀行になるか、また、その逆の研究。
同様のことが国の経済にも当てはまることも調べた。
化学賞 Javier Morales
Miguel Apátiga
Victor M. Castaño
(Universidad Nacional Autónoma de México)
液体、特にテキーラからのダイヤモンドの製法
薬学賞 Donald L. Unger
(USA)
指の関節炎の原因を調べるため、左手の指の関節を60年にわたり毎日、ポキッと鳴らした。(右手の指の関節は鳴らさず)
物理学賞 Katherine K. Whitcome
(University of Cincinnati)

Daniel E. Lieberman
(Harvard University)
Liza J. Shapiro
(University of Texas)
妊娠女性は何故 転倒しないのかの分析
文学賞 アイルランド警察 ポーランド語の「運転免許証」のPrawo Jazdyを人の名前と勘違いし、この名前で50枚以上の交通違反切符を切った。
公衆衛生賞 Elena N. Bodnar
Raphael C. Lee
Sandra Marijan
(USA)
緊急時に2つのガスマスクになるブラジャーの発明
(1枚は本人用、他は近くにいる人用)
数学賞 Zimbabwe準備銀行頭取 1セントから100兆ドルまでの紙幣を発行し、国民に日常、小さな数字から膨大な数字までを扱えるようにした。

参考

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞

付記

公衆衛生賞のGas-Mask BraはTime 誌の2009の5つの最悪の発明の4位に選ばれた。

1位はオムロンが開発した笑顔をチェックするシステム「スマイルスキャン」。
接客サービスの向上などが狙いのシステムで、カメラ映像の中から顔を認識して「笑顔度」を0~100%で測定する。オムロンによると、鉄道会社の駅員や病院の看護師らに利用が広がっている。

Time's 5 Worst Inventions:
1.
"Smile Checks"
2.
小説 "Pride and Prejudice and Zombies"
  Jane Austen の小説 Pride and Prejudice の登場人物と舞台だけを借りて、ゾンビアクションにした小説
3. 犬用のSnuggie
  (Snuggie:フリース素材のブランケットに袖が付いた今アメリカで超話題商品)
4. The Gas-Mask Bra
5.
自動的に生徒の作文を採点する英国で使われているコンピュータ。
  


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Abbott Laboratories929日、Solvayの医薬品事業を現金45億ユーロで買収することで合意したと発表した。
これにより、
30億ドル以上の売上高が加わる。

Abbott 2008年の売上高は295億ドル(うち医薬品は167億ドル)で、神経系治療薬などが柱。主力製品の特許切れが今後相次ぐため、商品群の拡充を模索していた。

買収をテコにSolvayが得意とする循環器治療薬やホルモン治療薬を取り込む。東欧やアジアなどにSolvayが展開する販売網を使い、新興国での販売拡大を狙う。

取引条件は現金での45億ユーロの支払いのほか、2011年から2013年の期間に一定の目標を達した場合に追加で3億ユーロが支払われる。このほか、一定の債務が引き継がれるが、Solvay では4億ユーロとみており、Solvay側は52億ユーロの取引とみている。

なお、現在AbbottSolvayの高脂血症治療薬 fenofibrate の米国での販売権をもらってロイヤリティを払っているが、全世界の権利を引き継ぐ。

また、Solvayの年間5億ドルのR&D投資を引き継ぐこととなり、この後のAbbottの成長に資する。

Solvayは本年4月に外部報道を受け、医薬事業についていろいろのオプションを検討している旨の発表をしていた。

ーーー

Solvay の医薬品事業の2008年の業績は、売上高が2,699百万ユーロ、税、金利控除前経常損益(REBIT)は509百万ユーロとなっている。

医薬品事業の内容は以下の通り。(百万ユーロ)

分野 2008年
売上高
備考
Cardiometabolics
 心臓血管分野
     812 2005年に買収したFournier Pharma 高脂血症治療薬fenofibrateが中心
Neuroscience
 神経科学
     411 抗うつ薬 fluvoxamine
Parkinsons
病治療薬 DUODOPA
インフルエンザワクチン   137  
膵酵素   217  
消化器病治療薬   243  
男性及び女性ホルモン   648  
その他   231  

地域別

欧州  46%
NAFTA  40%
Mercosur   2%
アジア太平洋   8%
その他   4%

ーーー

Solvay 2008年実績は以下の通り。(百万ユーロ)

  Sales REBIT* 同左2007
Pharmaceuticals  2,699  509  457
Chemicals  3,096  238  345
Plastics  3,695  264  441
Corporate    -46  
Total  9,490  965  

 *REBITRecurrent Earnings (経常損益)Before Interest and Tax

医薬品事業は売上高で全社の28%を占める。
利子・税金控除前の経常損益では、2008年は特に化学品、合成樹脂の損益が悪化したため全社の53%を占める。

この医薬品事業の売却理由として、同社は次のように説明している。

外部要因
 ・業界の急速な変化
   承認プロセスが複雑で費用がかかる
   医療コストに対する圧力、etc

内部要因
 ・3部門全てで多額の投資が必要
 ・化学品、合成樹脂部門で持続可能性の改善が必要
 ・医薬部門は環境変化に対応するだけのサイズ以下

これらを検討した結果、Solvay事業(医薬及び非医薬)にとって医薬部門売却がベストと判断検討した。

他のオプション(全て問題あり)
・現状維持 
・上場
・買収
・合併

http://www.solvaypress.com/static/wma/pdf/1/6/5/0/6/20090928_Presentation.pdf

Solvay では売却収入を化学品と合成樹脂部門での高付加価値分野、戦略計画に再投資するとしているが、それについては検討中としているのみである。

同社の化学品部門は4つに分かれる。
1)Minerals
   ・ソーダ灰、誘導品
   
Advanced Functional Minerals
2)Electrochemistry, fluorinated products
   ・苛性ソーダ、エピクロルヒドリン
   ・フッ素製品
3)Oxygen
   
Hydrogen peroxide
   
Persalts
4)Organic (Molecular Solutions)

合成樹脂部門は2つ。
1)Specialties
   
Specialty Polymers
      high and ultra-high performance polymers like fluorinated Polymers,
            elastomers and fluids, barrier materials, polyarylamides,
            polysulfones, high performance polyamides, liquid crystal polymers
   
Inergy Automotive Systems (50/50 JV with Plastic Omnium)
2)Vinyls
    ・電解、VCM、PVC、コンパウンド
   
Pipelife (50/50 JV with Wienerberger)


中規模の医薬事業が大変であることは事実だが、化学品、合成樹脂でどの分野に投資するのであろうか。
医薬事業の穴を埋められるだろうか。


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スペインと中国のJVのGanzi Atlantic Silicon Industry920日、四川省の甘孜(Ganziカンゼ)・チベット族自治州の州都・康定(Kangding ダルツェンド)県で金属シリコンの第一期の起工式を行った。

Ganzi Atlantic Silicon はスペインのFerroatlantica (Atlantic Ferroalloy)75%、現地のGanzi Shunda Silicon Industry25%出資する。

820百万ユーロを投じる事業は2期に分かれる。
第一期は金属シリコン
50千トンで、第二期は金属シリコン50千トンと太陽電池用ポリシリコン10千トンとなっている。
水力発電所も建設する。
5,600人の雇用が生まれる。

合計100千トンの金属シリコンと10千トンのポリシリコンプラントは2011年に完成するが、2013年の発電所完成後に本格商業生産を開始する。

20076月にスペインのカルロス国王が参加し「四川ースペイン経済交流」が開催され、その席でFerroatlanticaJuan Miguel Villar Mir 社長が四川省に世界最大の金属シリコン工場を建設すると発表、その後立地を探していた。(当時は能力150千トンとしていた)

本年4月に四川省成都市で開催された中国・スペインフォーラム第5回会合で調印された。

ーーー

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Ferroatlantica はスペインの建設・エネルギーなどの総合事業大手Grupo Villar Mir に帰属する。
スペインに Cee、Dumbria、Sabon、Boo の4工場を持ち、金属シリコン、フェロシリコン、フェロマンガン等を製造販売している。

1998年にベネズエラのCVG-Fesilvenの80%を取得、社名を Ferroven に改称した。

Grupo Villar Mir2005年にPechiney Électrométallurgieとフランスの子会社Invensil 及び南アのシリコン精錬所を買収、 2006年にPechiney ÉlectrométallurgieFerro Pem と改称した。
フランスに
AnglefortChateau FeuilletLaudunLes ClavauxMontricherPierrefitte 6工場、南アにPolokwane工場を持つ。 

現在のグループのこの事業関連の能力は以下の通り。(単位:トン)

  Ferro Atlantica Ferroven  Ferro Pem TOTAL
Silicon 40,000   183,000    223,000
Ferrosilicon 79,000 96,000 20,000 195,000
Silicomanganese 218,000     218,000
Ferromanganese 221,000 38,000   259,000
CaSi     18,000 18,000
Inoculants and nodulisants     69,000 69,000
Pulverised and Passived 10,000     10,000
Paste of electrodes 6,000 14,000   20,000
Microsilica (Silica Fume) 32,000 22,000 80,000 134,000

 

参考 日本の多結晶シリコンの状況


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