2011年10月アーカイブ

日本の液晶パネルメーカーは「2012年問題」に直面している。

現在の世界の液晶パネルのメーカーは以下の通りで、大型では日本勢は韓国、台湾勢に押され、シェアは落ちた。

中国企業が建設中の大型パネル工場も2012年以降、相次いで稼働するため、世界の液晶パネルは2012年に約1600万台の供給過剰になると言われる。 

液晶パネルで世界の上位4位を占めるSamsung、LG、友達、奇美の4社が本年7~9月期に赤字となった。
Samsungの赤字は62億円だが、LGは339億円、友達は404億円の大赤字で、トップ4社がいずれも3四半期連続の赤字となった。
 

日本のテレビの販売は、7月の地デジ移行後、想定以上に大きく落ち込んだ。
売れ筋の32型の平均価格は4万円と、3年前の4割まで下がった。

各社のテレビ事業は大幅な赤字となっている。

パナソニックは2012年3月期連結決算で、採算が悪化したテレビ事業の主力工場の資産を減損処理し、約1200億円の損失を計上する。

 付記 パナソニックは10月31日、通期業績予想を見直した。
   事業構造改革費用を薄型テレビや半導体などで4,040億円追加し、当初予想と合わせ5,140億円とした。

テレビ用パネル工場はプラズマパネルについては日本の2工場(最新鋭の尼崎第3工場を含む)と中国工場を今期中に稼働停止し、液晶パネルも茂原は売却、姫路も一部は中小型パネルに切り替える。

  工場 当初計画 今後の展開
プラズマ 尼崎第1 中国への設備移管
跡地で太陽電池生産
今年度生産停止、
中国への設備移管中止
太陽電池生産も撤回(海外展開へ)
尼崎第2   生産継続
尼崎第3   今年度生産停止
中国(上海市) 尼崎から設備移管し増産 生産停止→ 組み立て拠点に
尼崎から設備移管中止
液晶 姫路
パナソニック液晶ディスプレイ
  中小型パネルの生産開始
 (生産比率を半分まで高める)
茂原   売却の方向で調整
(新設のジャパンディスプレイへ)

パナソニックは2008年2月、姫路市に液晶パネル新工場を建設すると正式発表した。
投資額は約3千億円。2010年1月に稼働し、13年のフル稼働時の生産能力は32型換算で年1500万台を予定した。
プラズマに続き液晶でも部材から一貫生産する垂直統合モデルを構築する。
運営は
パナソニック液晶ディスプレイ(旧称 IPSアルファテクノロジー)が担当する。

IPSアルファテクノロジーは日立ディスプレイズ 50%、松下電器 30%、東芝 15%の共同出資により設立された。
2008年に松下電器が東芝の保有株式を買い取り、出資比率を45%とした。

2010年6月、日立ディスプレイズが持株を新設の「IPSアルファ支援会社」に譲渡したうえで、支援会社をパナソニック(94%)と日立製作所(6%)に譲渡した。
この結果、実質出資比率はパナソニック 92%、日立製作所 3%、その他 5%となった。

2010年10月1日、パナソニック液晶ディスプレイと改称した。

パナソニックは後記の通り、中小型パネルの東芝モバイルディスプレイに参加していたが撤退し、その後、日立ディスプレイズにも参加したが、ここからも撤退した。

今回は大型の不振を受け、姫路工場で中小型に再参入する。

 

シャープは2009年に亀山工場の休止中の第1工場の生産設備を、南京市と南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)が設立したLCD事業会社「南京中電熊猫液晶顕示科技」に売却した。

亀山工場では今年からスマートフォンなどに使う中小型パネルの生産を始めた。中小型液晶への対応強化策として、亀山工場をモバイル向けを中心に転換する。

亀山第1工場は、スマートフォン向けの「CGシリコン液晶」
亀山第2工場ではタブレット端末向けに新開発の「IGZO(酸化物半導体)液晶」
いずれも本格稼働は2012年度を見込む。

大型については、堺での60型以上の生産を本格化させ、大型液晶テレビや、デジタルサイネージやデジタル黒板などの成長領域に集中する。30~40型の競争の激しい領域は外部調達の活用を進める。

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを発表、12月1日に起工式を行った。

亀山工場で構築した、液晶パネルから液晶テレビまでの「垂直統合型」の事業展開をさらに川上まで推し進め、「企業の垣根を超えた垂直統合型」を目指した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

なお、シャープは堺の液晶パネル新工場を2009年7月に分離してシャープディスプレイプロダクトとし、同年末にソニーが100億円(約7%)を出資した。
ソニーは最終的に出資比率を34%に高めるとしていたが、本年4月に両社は、
ソニーの追加出資を先送りし、2012年3月末まで継続して協議すると発表した。液晶パネルの調達環境をめぐる変化が背景にあるとみられる。

 

そのソニーは韓国サムスン電子との液晶パネルの合弁事業解消に向け交渉に入ったと伝えられた。
韓国にあるテレビ用パネルの合弁生産会社S-LCDの持ち株をサムスンに売却、外部調達を増やすことでパネルのコスト削減を狙う。ソニーのテレビ事業は7期連続の赤字。

ソニーとサムスンは2004年、韓国にアモルファスTFT液晶パネルの製造合弁会社S-LCDを設立した。
サムスンが発行済み株式の5割と1株を持ち、ソニーが残りを出資している。
2005年4月に第7世代工場が稼動、2007年秋に第8世代工場が稼動、ソニーはほぼ半分を引き取ってきた。

JVは本年4月にソニーの求めで15.38の有償減資を行ったが、ソニーが長期的にはサムスンとの協力範囲を縮小するのではないかという観測がなされた。

 

付記
ソニーは12月26日、合弁を解消し、全株式をサムスンに譲渡すると発表した。
同時に、サムスン電子からソニーへ供給される液晶パネルの取引に関する戦略的な契約を締結した。

 

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中小型液晶については日本勢はまだ頑張っている。


しかし、各社が単独で事業を進めた場合、
十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高い。

このため官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニーの中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資してテコ入れすることを決めた。その後、日立ディスプレイズも参加を決めた。

東芝、ソニー、日立製作所と産業革新機構は8月31日、2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社を設立すると発表した。新会社の名前は「ジャパンディスプレイ」で、革新機構が70%、東芝・日立・ソニーが各10%出資する。

新会社は日立ディスプレイの茂原工場に隣接するパナソニックの液晶工場を買収する方向。

2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資

付記
産業革新機構は2012年3月5日、パナソニックの茂原市の「テレビ向け液晶パネル工場」を買収することで合意した。

付記

ジャパンディスプレイは2012年4月に発足した。
有機ELパネルについて日立製作所から取得した茂原工場に試験設備を設けて研究を進めており、12年度中にも製品のサンプルを通信機器メーカーなどに出荷し、2013年度にもスマートフォン向けの量産を始める。

参加会社の概要は以下の通り。

  東芝モバイルディスプレイ

2002年4月に東芝松下ディスプレイテクノロジー(東芝 60%、松下 40%)として設立

2009年4月に赤字の同社の松下持株を東芝が買収して東芝100%とし、現社名に改称した。

  日立ディスプレイズ

2002年に日立製作所のディスプレイ事業を分社、日立ディスプレイズを設立。
(大型はIPS
アルファテクノロジー:上記)

2008年2月、日立・キヤノン・松下が中小型液晶ディスプレイ事業における包括的な提携を目的とする契約を締結し、キヤノンと松下が各 24.9%を取得した。

その後、松下が撤退、日立 75.1%、キヤノン 24.9%となった。

  ソニーモバイルディスプレイ

ソニーと豊田自動織機は合弁会社のST LCDとSTモバイルディスプレイを持っていたが、2007年12月1日付けで両社を合併させ、ソニーモバイルディスプレイ(ソニー86%、豊田自動織機14%) とした。
現在はソニーの完全子会社。

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韓国や台湾、新たに大型に進出した中国の各社も早晩、中小型に乗り出すと思われる。

新会社が政府資金を投じて設備投資をしても、各国他社も大型からの切り替えや新設で対抗すると思われ、
供給過剰→値下げ競争となり、テレビ用パネルの二の舞いになる恐れが強い。

健康保険が使える保険診療と適用外の自由診療とを併せて受ける「混合診療」を原則として禁じている国の政策が適法かどうかが争点となった訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は10月25日、「国の政策は適法」との判断を示した。

健康保険法には「混合診療は全額自己負担にする」という明文規定はないが、現在の制度では、保険給付対象と対象外の治療を併用した場合(混合診療)は、全ての治療が保険の給付対象外となる。

これまで混合診療については、歯科において平成元年に東京地裁で、「治療行為のすべてが、療養の給付の対象外となる」という判決が出ている。

厚生労働省は、「医療の平等の確保」、「安全性と有効性の確保」、「患者の負担を抑える」といった理由から、混合診療を認めていない。患者が医師の言いなりになり、高額で安全性が確認されていない診療を受けて負担が増すことを防ぐ目的もあるとする。

但し、「先進医療」として指定された治療(後記)を指定機関で受けた場合は、例外として、保険給付対象治療については給付対象となる。(先進医療分は全額自己負担)

本件は、保険給付であるインターフェロン療法と、保険外である活性化自己リンパ球移入療法を併用した原告が、インターフェロン療法について療養の給付を受ける権利を有することの確認を求めた「確認訴訟」で、最高裁は、患者の上告を棄却し、患者側の敗訴が確定した。

本件では、2007年11月の一審・東京地裁判決は、「健康保険法などを検討しても、保険外の治療が併用されると保険診療について給付を受けられなくなるという根拠は見いだせない」とし、国による現状の法解釈と運用は誤りであるとの判断した。

一方で、同判決は、「法解釈の問題と、混合診療全体のあり方の問題とは次元の異なる問題」とも述べ、混合診療自体の是非についての言及は避けた。

しかし、2009年9月の二審・東京高裁判決は、1984年の健康保険法改正で国が特定の高度先進医療に限って例外的に混合診療を認めた点を踏まえ、「これ以外の混合診療は禁じていると解釈すべきだ」と述べ、一転して患者側敗訴としていた。

  • 法令で混合診療が禁止されているのは明らか

保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条で
「保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもの(先進医療)のほか行つてはならない」
とされており、保険医が保険外診療を行なうことは禁止されている。

  • 混合診療は禁止されているのだから、給付の有無が明記されてなくても、「療養の給付」が給付されることにはならない
     
  • 憲法は合理的理由に基づいた区別を禁止しておらず、混合診療を禁止することには一定の合理性があるから、法律の裁量権の範囲内であり、受給できなくても憲法違反にはならない
     
  • 有効性が明らかでないとして特定療養費から外された療法を受けられなくなっても、生存権は脅かされないから憲法違反にはならない
     
  • LAK療法に代わる他の活性化リンパ球移入療法を受ける余地があるので、憲法違反にはならない


今回の最高裁の判決の骨子は以下の通りで、高裁判決を認めている。

例外的に保険診療分を支払う保険外併用療養費の先進医療制度の趣旨や目的を考慮すれば、健康保険法は混合診療を原則禁止していると解釈できる。
   
混合診療で保険外併用療養費の支給要件を満たさない場合、保険診療相当部分も保険給付ができないと解するのが妥当。
   
混合診療の原則禁止は、患者の治療選択の自由を不当に侵害して著しく合理性を欠くとはいえず、憲法違反ではない。
   

判決は五裁判官の全員一致だが、田原睦夫裁判官は「法の規定は明解に定められるべきである」とし、健康保険法に明確さが足りないと指摘した。1

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日本医師会は医療給付上の格差を拡大するものとして、混合診療に反対している。

保険外診療は、事前に有効性、安全性が認められていないために保険外となっているものである。
これを保険と併用した結果、なんらかの問題が発生した場合、患者にとって不利益となるばかりか、公的保険の信頼性が損なわれる。
   
「混合診療」が解禁され、新しい医療技術等は自己負担という流れができると、新たな医療技術等を保険下に組み入れようとするインセンティブが働きにくくなり、その結果、公的保険給付範囲が縮小する恐れがある。
   
混合診療が解禁された場合、「全額自己負担」は、「保険診療の一部負担+保険外診療の自己負担」になる。
しかし、すべての国民に、保険外診療の自己負担が可能なわけではない。

 

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「先進医療」の概要

「先進医療」は、2004年12月の厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との「基本的合意」に基づき、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防止するといった観点も踏まえつつ、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認めることとしたもの。

厚生労働省解説 いわゆる「混合診療」問題について ①同 ②

混合診療は次の3つに分類されている。
 日本国内未承認薬の使用(諸外国では承認されているが日本では未承認 =「ドラッグ・ラグ」)
 高度先進医療(肝臓移植、体外衝撃波膵石破砕術など)
 制限回数を超える医療行為(腫瘍マーカー、ピロリ菌除去など)

2006年の健康保険法等の一部を改正する法律において、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされている。

具体的には、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとしたもの。
また、将来的な保険導入のための評価を行うものとして保険診療との併用を認めたもので、実施している保険医療機関から定期的に報告を求めることとしている。

201110月現在で、94種類の先進医療について、当該技術の施設の要件が設定されている。

先進医療を受けた場合、「先進医療に係る費用」は全額自己負担、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われる。

保険会社のTVコマーシャルで「先進医療特約ー1000万円の限度額までカバー」などとといっているのは、この自己負担分をカバーするもの。

韓国のS-Oilは10月20日、温山で1系列で世界最大のパラキシレン工場の竣工式を開催した。
商業生産は2011年6月に開始している。

S-Oil は1976年にKorea-Iran Petroleum Co., Ltd.として設立された。
第一次石油ショックで原油の安定購入が韓国の第一の課題であった時に、 双龍セメントがイラン国営石油会社(NIOC)との50/50 JV設立に成功した。

1978年のイラン革命で、イラン側が撤退し、1980年に 双龍精油(Ssangyong Oil Refining)と改称した。
1987年に上場。

1991年にAramco Overseas Companyが3億9500百万ドルを出資して35%を取得、20年間の原油供給を約束した。
 (現在のS-OilのCEOはSaudiAramcoの米国法人のCEOであったAhmed A. Al-Subaey 氏。)

1999年12月には、双龍セメントの持株 28.4%を自社株として買収し、双龍グループから法的に独立し、2000年3月に双龍精油からエスオイルに社名を変更した。

温山に製油所を持つ。
製油能力は
日量580千バレルであったが、コンデンセート凝縮装置を入れ、669千バレルとなった。

完成したのはNo.2 Aromatic Complexのパラキシレン年産90万トン、ベンゼン 28万トンで、これにより同社の能力はほぼ倍増し、パラキシレン 170万トン、ベンゼン56万トンとなった。 

 

李明博大統領が異例の出席をしたほか、サウジの石油鉱物資源大臣、 サウジアラムコの社長、韓進グループの会長らが出席した。SaudiAramcoはS-Oilに35%、韓進グループは28.4%出資している。

S-Oilには SaudiAramco の子会社 Aramco Overseas Company B.V. 1991年以降35%出資している。
(SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。
 2004年に50%株主のシェルから10%分の譲渡を受け、2005年に更に5%分を購入した。)

S-Oil は2007年に、双龍セメントから買い取って金庫株としていた 28.4% を(時価の14%増しの)25億ドルで韓国航空など韓進グループに売却した。

韓進グループは本買収のため、2007年3月に韓進エネルギーを設立した。
グループの韓国航空が82.5%、韓進海運が14.6%、韓進空港サービスが
2.9%出資した。

S-Oilと韓進エネルギーは戦略的投資協定を締結、エネルギー運送及びマーケティング分野においてシナジー効果を生んだ。

2007/3/9 韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加

 

李大統領は挨拶で、韓国の石油精製産業が、輸入原油を精製する産業から、高付加価値の石油製品を製造し輸出する産業に転換することを期待すると述べた。

大統領はまた、サウジの石油鉱物資源大臣はアラムコのCEOであった20年前(1991年)にS-Oilに出資することを決断し、現在のS-Oilにしたと述べ、両社の協力が経済協力の成功モデルとなり、両国間の友好関係のシンボルになると述べた。

サウジの石油鉱物資源大臣は祝辞で、両社の関係は産油国と石油消費国の最も理想的な協力関係であり、サウジの世界中の計画の中で最も成功した事例だと述べた。

PetrochinaQatar Petroleum International(QPI)、Shellの3社は10月10日、浙江省台州市当局との間で、同市での石油精製・石油化学コンプレックス建設に関する協力枠組み協定を締結した。

3社は2008年6月に中国での石油精製・石油化学コンプレックス建設の予備検討開始の覚書を締結した。
PetroChina 51%Shell QPI がそれぞれ24.5%出資となっている。

同年10月、浙江省台州市当局は、3社が台州市での建設を検討していると発表した。

現地報道によれば、投資額は800億人民元で、年産2000万トンの製油所、120万トンのエチレン設備を含む。
カタールからの輸入コンデンセートを原料に使用する。

本年6月に中国国家発展改革委員会(NDRC)の予備的承認を得たが、今後、環境保護部の承認を得た後に、NDRCの最終承認を得て建設を開始する。

コンプレックスは台州市の路橋地区に建設され、コンデンセートは大陳島の石油桟橋からパイプラインで輸送される。

コンデンセートは天然ガスの採収にあたり地表で凝縮分離した軽質液状炭化水素。

2010年5月にPetroChinaとShellはQPI(カタール政府を代表)との間で、カタールでの天然ガス開発・製造契約(Exploration and Production Sharing Agreement)を締結した。

カタールの Ras Laffan市近郊のBlock D(海底及び陸上の8,089km2で30年間開発を行うもので、Shellが75%、PetroChinaが25%の権益を有し、Shellが操業を行う。
 

中国では石炭からのオレフィン製造"Coal to Olefins"が石炭化学の中心になりつつある。 

昨年に生産を開始した神華包頭石炭化学のCoal-to-Olefins 計画(PE 30万トン、PP 30万トン)が順調に生産しているほか、神華寧夏石炭グループのCoal-to-PP(52万トン)が本年第2四半期に商業生産を開始、大唐国際発電の Coal-to-PP(46万トン)も生産を開始する。

現在の石油価格と石炭価格を基にすると、Coal-to-Olefinsは非常に競争力があるとされる。 

神華とダウの陜西省楡林市でのCoal -to-Olefins のJVもFS段階を完了した。
Totalと中国電力投資は内蒙古でワールドスケールのCoal-to-PolyolefinsのJVを設立する契約を締結した。

Sinopecは石炭原料のS-MTO(Sinopec Methanol-To-Olefins)計画を推進している。

S-MTOプロセスはシノペック上海石油精製研究(SRIPT)、シノペックエンジニアリング、シノペック北京燕山石化により共同で開発された。
2007 年に燕山石化が日産100トンのパイロットプラントを建設、2008年にメタノール投入ベースで年産180万トンのS-MTOプロセスの技術パッケージが完成した。

10月10日、シノペック中原石化は河南省濮陽市で最初のS-MTO計画をスタートさせ、エチレンとプロピレンがオンスペックとなった。

投資額は15億人民元で、メタノール 60万トンからオレフィン 20万トンを生産、これから、PP 10万トン、PE 6万トンを生産する。
建設は2010年4月に始まり、PPは7月、MTOは8月にメカニカルコンプリーションとなった。

 なお、中原石化の既存設備はエチレン 18万トン、PE 20万トン、PP 6万トン。

本計画では原料メタノールは外部調達する。シノペック中原石化は河南煤業化工集団(HCCIG)中原大化(Dahua Chemical )との間で年間36万トンのメタノール売買契約を締結している。

Sinopecはこのほかに3つのS-MTO計画を推進している。

1)貴州省畢節市織金県

シノペックは本年9月末に貴州省畢節市織金県で石炭ペースポリオレフィンの建設を開始した。
フェース1として180億人民元を投じ、PE 30万トン、PP 30万トンを製造するもので、2014年に生産開始の予定。

シノペックは2010年10月に貴州省政府との間で戦略的協力協定を締結した。
総額815億人民元を投じ、近代的な石炭化学産業を創出するとともに、石油・ガスの開発、石油パイプラインと流通ネットワークの建設を行い、畢節市織金県循環経済新地区に新エネルギー・化学地域の建設を加速する。

今回のCoal-To-Olefin計画はこの第一段階となる。

2)安徽省淮南市

シノペックと皖北煤電集団の50/50JVの安徽中安聯合煤化工公司が安徽省淮南市でS-MTO計画(オレフィン年産60万トン)を建設中。2010年12月に建設を開始、2013年末にスタートの予定。

3)河南省鶴壁市

シノペックと河南煤業化工集団(HCCIG)が共同で鶴壁市寶山産業区で年産180万トン(メタノール投入ベース)のMTO建設を計画している。

現在同産業区で建設中の年産60万トンのメタノール設備を購入し、新たに120万トンのメガプラントを新設する。

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ASIACEMによると、現在20件以上のCoal -to-olefins が建設中か検討段階にある。

  立地 企業 事業内容 千トン 現状
1 内蒙古 Ordos Total /中国電力投資集団(CPIC) Coal to Olefins   Development
2 内蒙古 Ordos 兗礦集團(Yankuang Group) Coal to Olefins   Planned
3 内蒙古 Ordos 中天合創(Zhongtian Hechuang) Coal to Olefins   Development
4 内蒙古 包頭 神華集団 Coal to Olefins PE 300
PP 300
Operation
5 内蒙古 Ordos 蒙古源興能源(Yuanxing Energy) Methanol to Olefins   Planned
6 内蒙古 フルンボイル 神華集団 Coal to Olefins   Planned
7 内蒙古 フルンボイル 中国中煤集団(National Coal Group) Coal to Olefins   Planned
8 内蒙古 シリンゴル 大唐国際発電 Coal to Olefins PP 460 Commissioned
9 陝西榆林 神華集団 / Dow Chemical Coal to Olefins Olefin 1,220 Development
10 陝西榆林 陝西延長中煤集團榆林能源化工
(Yanchang ChinaCoal)
Oil/Gas/Coal/Salt
Complex based on Olefins
  Construction
11 陝西省 延安 延長集團延安能源化工 Oil/Gas/Coal/Salt
Complex based on Olefins
  Development
12 陝西省 渭南 陝西蒲城清潔能源化工 Coal to Olefins   Construction
13 寧夏自治区 寧東 神華寧夏煤業(Shenhua Ningmei) Coal to Olefins PP 520 Commissioned
14 寧夏自治区 寧東 神華寧夏煤業(Shenhua Ningmei) 同上 Phase 2   Planned
15 寧夏自治区 寧東 寧夏寶豐能源集団 Coal to Olefins   Development
16 安徽省 淮南 安徽中安聯合煤化工
(Sinopec / 皖北煤電集団)
Coal to Olefins olefin 600 Development
17 貴州省 畢節 Sinopec Coal to Olefins PE 300
PP 300
Development
18 河南省 濮陽 Sinopec 中原石化 Methanol to Olefins PP 100
PE  60
Construction
19 河南省 鶴壁 Sinopec / 河南煤業化工集団(HCCIG) Coal to Olefins olefin 600 Development
20 甘粛省 平涼  華能集団(中国最大の電力会社) Coal to Olefins   Planned
21 浙江省 寧波 寧波河源化工 Methanol to Olefins   Construction
22 浙江省 嘉興 Xingxing New Energy Technology Methanol to Olefins   Planned
23 山東省 棗荘 聯想(Legend Holding) Coal to Olefins   Development
24 江蘇省 連雲港 盛虹集団(Shenghong Group) Methanol to Olefins   Planned
25 新疆ウイグル イリ 中煤能源集团(China National Coal) Coal to Olefins   Development
26 青海省 ゴルムド 青海塩業 (Qinghai Salt Lake Industry) Mg / Methanol to Olefins C2 165
PP 160
Construction

1) Coal to Olefinsは石炭~メタノール~オレフィン、Methanol to Olefinsは購入メタノールからのオレフィン生産。
2) 現状の順序 Planned~Development~Construction~Commissioned~Operation

 

なお、中国は2010年にPEを736万トン、PPを387万トン輸入している。

 

経産省化学課は10月17日、エチレンセンター11社の2010年度の石油化学部門の収益が改善し、前年度比大幅な増収益となったと発表した。

売上高は13.0%増の3兆9,220億円、経常利益は749億円の黒字となった。

2008年度は1825億円もの赤字、2009年度も94億円の赤字で、3期ぶりに黒字転換し、前年比で843億円の改善を果たした。

しかし、1988年をピークとするバブル期、2006年をピークとする中国バブル期に比べると利益水準は大幅に低い。
また、業績の悪化から業界再編(三菱化学・三井化学の設立、誘導品での事業統合、三菱四日市のエチレン停止など)が行われた1990年代後半~2000年代前半(のうちの良い時)の水準でしかない。

半期ごとに見ると、
 2009年上期 -128億円
      下期     34億円
 2010年上期  214億円
      下期  535億円
と、順調に回復しているように見える。

この損益には子会社(事業統合会社を含む)の損益を含んでおらず、必ずしも石化事業全体の損益を示さない。

営業損益についてはエチレンセンター11社の単独ベースのほか、子会社業績も含めた連結ベースについても報告されている。(連結ベースでは海外の事業の損益も含む)

これでみると、年間では単独・連結ともに経常損益と同様に順調な回復をしている。

しかし、半期ごとにみると、単独ベースでは順次回復しているが、連結ベースでは営業損益は上期に大幅に伸張したが、下期は1/3弱に落ち込み、2009年下期の損益を下回っている。

今後とも、過去2度のバブル期のような損益水準に戻ることはないだろう。

米商務省は、10月19日、9月の住宅着工件数を発表した。

それによると、季節調整済みの年率換算で658千戸で、前月比で15%の増、前年同月比で10%の増と、久しぶりに高水準となった。

2011年1~9月の平均では、年率換算で589.9千戸となる。

米国の住宅着工はバブル最盛期の2005年の2,068千戸(月別では2006年1月の年率2,273千戸)を頂点に続落した。
2009年以降は500千戸台で横ばいで推移している。

2006年 1,802千戸
2007年 1,355
2008年   905.5
2009年   554.0
2010年   586.9
2011年  589.9  (1~9月)

 

バブル期の住宅需要の増加は2つの要因に支えられていた。

一つは住宅価格の高騰で、もう一つはこれを前提にしたサブプライムローンである。

Alan Greenspan FRB議長はITバブル崩壊による企業の投資削減に対応するため短期金利を一気に下げた。
この結果、住宅需要が増えてきたが、企業の資金需要が出れば金利が上がり、住宅需要も抑えられると考え、放置した。

2004年に企業のバランスシートがきれいになり、企業の投資が始まると考え、ようやく金利を上げた。

しかし、他方で中国など新興国や年金ファンドがどんどん米国債を購入し、国債価格がアップ(長期利回りが低下)していたため、短期金利を急速に上げても、長期金利に対応する住宅需要はむしろ増大し、住宅価格も急騰した。

全米住宅価格指数は1990年代半ば以降年平均2~8%の上昇が続いてきたが、2004年4~6月期以降は前年比+10%超に達した。

住宅価格の高騰により、担保価値が上がり、より高価な住宅への買い替え需要が増え、富裕層は転売目的に住宅を購入した。

他方、住宅価格の高騰で、NinjaNo Income, No Job, No Asset)ローンと呼ばれるサブプライムローンが急増した。
ローン返済が出来なくても、住宅価格は上昇を続けるため、取り上げた担保を売却すればよいという前提で、本来住宅購入が出来ない階層に住宅を売りつけた。

2006年1月には住宅着工件数は年率で2,273千戸にもなった。完全な住宅バブルであった。

これが破綻し、多額の不良債権を持つ金融機関が破綻、Lehmanショックに至った。

米国の住宅ローンは日本と異なりnon recourse型で、担保物件を売却しても借金が残っても、債務者は残りの債務を負担しない。
サププライムローンは債券化され、世界中にばら撒かれたため、問題が世界中に広がった。

ーーー

ギリシャ危機が起こるまでは、米国経済はLehman危機から立ち直ったかに見えた。

しかし、住宅着工件数は低い水準で低迷したままである。

住宅価格は依然として低迷したままである。

2011年6月の米国の家計の住宅資産評価額はピーク時比で6兆6000億ドル減って、16兆1000億ドルとなった。
この間、住宅融資残高はほぼ横ばいで、9兆9000億ドル。

従って、ネット資産は12.8兆ドルから6.2兆ドルへと、半分以下となっている。
住宅価値が借入額を下回るケースも多い。

このほかに、商業用不動産(非金融部門)もピークから2兆8500億円減っている。

(2011/10/9 日本経済新聞)

買い替え需要や転売目的の購入はなくなり、住宅を必要とするが資金を持たない階層は、これまでのようなサブプライムローンの利用は出来ない。

住宅在庫は9か月分とされるが、このほかに、銀行が差し押さえ、売却処分をしていない隠れ在庫が600万戸もあるとされる。

このような状況下では、近い将来に住宅着工が増える可能性は少ない。

PVCや板ガラスなど、住宅需要に依存する業界の復旧にも時間がかかると思われる。

中国で新通貨「潘」が誕生した。


冗談でできたものだが、実際に不動産の販売宣伝に使用されている。

発行元 SOHO中国不動産銀行(地産銀行)
1潘=1000人民元
/1m2

北京中心地区でオフイス物件や高級マンションの開発に従事し「三里屯SOHO」「SOHO現代城」などの物件を多数所有する不動産デベロッパー、SOHO中国有限公司のオーナーで有名な潘石屹(Pan Shiyi)がブログで次のように述べたことが発端。

「もしアップルが携帯電話を1台1000人民元(約1万2000円)で販売すれば、数百万人の中国国民が、アップル製品と死去したスティーブ・ジョブズ会長に限りない親近感を抱くだろう」

これに対し唐若丁9983の名前のブロガーが次のように応じた。

「潘董事長が死去したら、SOHO中国は1平方メートル当たり1000人民元で住居を販売してほしい。10億を超す国民が同氏を追悼すること間違いなし」

その後、これがどんどん広まった。

上のようなコンピュータで作った紙幣が現れた。潘氏の似顔絵が入り、発行元はSOHO中国不動産銀行となっている。

天津津浦偉業不動産はマンションの宣伝にこれを使った。
"Hot sales all over the city, up for grabs from 8.8 Pan!" 「お買い得、8.8潘から」
(1平方メートル当たり8800人民元から)

武漢市榮盛不動産開発も「アパートを"5 潘"から買えます」と宣伝している。

潘氏はこの動きを、「高い不動産価格に対する国民の不満の表れ」と述べている。

住宅価格の高騰は食料品の値上げとともに、若年層やこれまで政治に無関心であった都市の中間層に不満を引き起こしている。

中国全体ではアパートの平均価格は年収の7倍だが、北京や上海では17倍以上となっているとされる。

(2011/10/19 Financial Times から)

中国の独占禁止法(反壟断法)は2008年81日に施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

施行後3年強が経過した。その間、企業統合について500件程度の申請があったという。

その内、拒否は1件のみ、条件付き承認は7件で、うち日本企業は三菱レイヨンのLucite買収とパナソニックのサンヨー買収の2件である。
 (2011年10月12日、公取委競争政策研究センターセミナー 時建中 中国政法大学教授の講演)

しかし、実際にはこの他に、承認を得られる可能性が少なく、統合を断念し、申請を取り下げたケースがある。
このほか、中国企業の反対を受け、不許可の仮決定を下したケース(後に承認)もある。

 

〔拒否ケース]Coca-Colaによる中国匯源果汁集団の買収

Coca-Colaによる中国最大の果汁メーカー、中国匯源果汁集団の買収に関しては、中国商務部は2009年3月にこれを不承認とした。

Coca-Colaが匯源社の「美汁源果粒橙」と「匯源果汁」という有名ブランドを押さえ、炭酸飲料での支配力と合わせ、潜在的競争者の参入を妨げるなどの理由をあげ、本取引が市場での競争を阻害するとした。

時教授によると、Coca-Colaは商務部の問題点指摘に対し、対応策などでの交渉を全く行わず、商務部としては不承認とするしかなかったという。

2009/3/24  中国、コカ・コーラの果汁大手買収を承認せず

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〔条件付き承認ケース]

InBev のAnheuser Busch 買収

2008年11月にベルギーのビール会社 InBev が BudweiserのAnheuser Busch を買収したが、中国商務部は以下の条件を付けて承認した。

 (1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。
 (2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。
 (3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。
 (4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。
     華潤雪花は華潤創業と米Miller の合弁会社で中国販売量ナンバーワンビール(シェア15%)

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

② 三菱レイヨンのLucite International 買収

中国商務部は2009年4月、以下の条件付でこれを承認した。

  1.能力除去

中国Luciteは5年間、生産能力の50%を第三者に原価(製造コスト+管理費、利益なし)で供給する。原価は独立した監査人の監査を受ける。(買収後6ヶ月以内に行う。正当な事情があれば、更に6ヶ月延長。)

Lucite中国は2009年11月に50%分の売却先を中国商務部に提案、2010年1月4日、商務部の承認を得た。

ルーサイト中国(上海市、MMAモノマー年産能力101千トン)の50%相当を中国国内外の企業4社に販売する。
売却価格は「製造コスト+管理コスト」で、売却契約締結日より5年間。

  2.5年間の扱い

中国Luciteは三菱レイヨンからは独立した管理体制で運営する。
その間、両社は価格や顧客について情報交換しない。
この約束に反した場合、25万~50万元の罰金を課す。

  3.5年間の新事業禁止

商務部の許可なしで次の行為を行わない。 
1)中国でMMAモノマー、PMMAレジン・板のメーカーの買収
2)中国で新しくMMAモノマー、PMMAレジン・板の製造

2009/4/25 中国商務部、条件付で三菱レイヨンのLucite International 買収を承認

③ Pfizer のWyeth買収

2009年1月にPfizer がWyeth を680億ドルで買収すると発表した。
   2009/1/27 
Pfizer、Wyeth を買収

中国商務部はこの買収の審査を行っていたが、2009年9月、Pfizerの豚マイコプラズマ性肺炎ワクチン(RespisureとRespisure One)の中国本土の事業の売却を条件に買収を承認した。

この分野でのシェアが49.4% (Pfizer 38%, Wyeth 11.4%)となり、2位のIntervet の18.35%をはるかに上回る。
その他は10%未満。また、新規参入も難しいとした。
 

④ GMによる自動車部品メーカーDelphiの買収(垂直型企業結合)

米国の自動車部品メーカーDelphi(1999年にGM社から分離・独立)は2005年10月にChapter 11を申請した。

再生計画の一部として、GMが米国の4工場と世界中のステアリング事業とを買収した。
(GMは10億ドル以上の債務を引き受けるとともに、20億ドルの債権を放棄し、17.5億ドルを投資)

中国商務部は、GMによるDelphiの中国のステアリング事業買収に関して審査をしていたが、2009年9月、以下の条件付でこれを承認した。

・GMとDelphiが、Delphiの他の中国の需要家に関する情報を交換しないこと。
 (GMによる秘密情報取得の防止)

・Delphiが他の中国の自動車メーカーに、差別なしに、部品を市価でタイムリーに供給を続けること。

商務部は競争上の懸念を2社と議論し、2社から解決案が出てきたとしている。

2009/10/15 中国独禁法による合併審査

⑤パナソニックの三洋電機買収

本件は1カ月の初期審査の結果、実質審査に入り、8月14日、商務部が競争上の問題がある旨指摘、双方は協議を持ったが合意に至らず、審査の60日の延長した。
(日本、米国、EUからも同様の問題点指摘を受けた。)

その後、三度の双方協議を経て、ようやく問題解消措置について合意、2009年11月5日、以下の条件付で承認を得た。

  問題は下記の3つの電池市場で、いずれについても関連地理的市場は世界市場とされた。
  中国域外の工場の売却を条件としたのは本件が初めて。

 1) 自動車用ニッケル水素電池 (合併で中国市場で77%のシェア)

パナソニックの茅ケ崎市の湘南工場の第三者への売却

パナソニックは2011年2月1日、同工場のニッケル水素電池事業を中国の電池メーカー湖南科力遠新能源に売却すると発表した。特許を含む知的財産権を使用出来る契約。
受け皿会社に移管し、全株式を4千万元(約5億円)で売却する。

トヨタとの合弁のパナソニックEVエナジーへの出資比率を40%から19.5%に引き下げ、取締役指名権ほかの放棄、JVの社名からの「パナソニック」の除外

2010年6月にプライムアースEVエナジーと改称

 2) コイン型リチウム二次電池(同上 62%のシェア)

三洋電機の鳥取県岩美町の鳥取工場の第三者への売却(FDKに譲渡)

 3) ニッケル水素電池(同上 46%のシェア)

三洋電機の群馬県高崎市の高崎工場の第三者への売却(FDKに譲渡)

又は、三洋電機の蘇州市の工場か、パナソニックの無錫市の工場の売却

⑥ NovartisによるAlcon買収

Alconは1945年に米テキサス州で薬局として創業し、点眼薬やコンタクトレンズケア商品など眼科分野の最大手メーカー。
1978年にNestleが買収し、77%の株式を保有していた。

Novartisは2008年にNestleから25%を、2010年に残り52%を買収して77%の株主となった。
2011年4月、NovartisはAlconを統合した。(株式交換手続きのため新株発行)

商務部は2011年8月、条件付きでこれを承認した。
商務部の懸念する問題点と条件は以下の通り。 

 ・眼科用抗感染、抗炎症化合物

中国での合計シェア60%超
Novartisシェアは1%未満で、中国及び全世界関連市場から戦略的撤退を商務部に言明 

条件:Novartisは中国で販売しない

 ・コンタクトレンズ・ケア製品

合計シェアが世界で50%となり、中国では約20%で英国Hydronの30%に次ぐ。
HydronがNovartis製品の独占的販売業者となっており、今後協調での競争排除、制限の可能性がある。

条件:NovartisはHydronとの契約を打ち切る。

⑦ ロシアの肥料メーカーのOAO Silvinit OAO Uralkali の合併

    2010/12/25 ロシアの2大肥料会社が合併へ
  
商務部は2011年6月、価格および供給に関する条件付きで承認した。
中国国内への供給に影響を与える可能性から、中国当局が外国企業の合併承認に際して価格および供給に関する条件を設定した初めてのケース。

条件:
・塩化カリの中国需要家への供給で、直接販売や貨車・船での供給など、従来のやり方を踏襲する。
・塩化カリの中国需要家の要請(数量、グレードなど)に応じる。
・価格交渉では従来の慣行を踏襲し、過去の経緯や中国市場の特殊性を勘案する。

ーーー

〔不許可の仮決定→承認ケース]

Nokia Siemens NetworksによるMotorola通信機器部門の買収

フィンランドのNokiaとドイツのSiemensの合弁会社Nokia Siemensは2010年7月、米通信機器大手Motorolaの無線インフラ事業の大部分を12億ドルで買収することを発表した。

これに対し、中国の大手通信機器ベンダー、華為(Huawei Technologies)は自社の知的財産が不正にNokia Siemensに渡るとして、この買収の差し止めを求める訴えをシカゴの連邦裁判所に起こした。

華為とNokia Siemensは、世界の通信機器関連市場でスウェーデンのEricssonにつづく第2位の座を争っていた。
華為もMotorolaの通信機器部門買収に動いたが、米政府が安全保障上の懸念を示したことなどからNokia Siemensが買収することになったという経緯がある。

Motorolaは過去10年にわたり、華為との製造する通信機器を自社ブランドで再販するなど、協力関係をつづけており、これらの機器に含まれる華為の知財や業務上の秘密などが、同社の了承なく第三者の手に渡ることが問題とした。「われわれの保有する知的財産をMotorolaが第三者に渡すことを認めるという合意はしていない」とした。

中国商務部は2011年3月に不許可の仮決定を下した。

しかし、4月に華為とNokia Siemensとの間で、係争中のすべての訴訟を解決するとの和解が成立し、商務部は同月、これを承認した。

ーーー

〔断念ケース]

Arcelor Mittalによる中堅鉄鋼メーカーの莱蕪鋼鉄(山東省)買収 (独禁法施行以前)

合併前のArcelorは2006年2月に莱鋼の親会社との間で莱鋼株の38.41%取得に合意した。
その後、MittalがArcelorを買収してArcelor Mittalとなったが、Mittalは既に湖南省の湖南華菱鋼鉄集団の傘下企業に出資していた。

鉄鋼産業を基幹産業と位置づける中国政府はミタルの動きに警戒感を強め、買収価格の引き上げや、一層の技術移転を要求した。

Arcelor Mittalは認可取得の見込み薄と判断し、2007年12月に断念した。

②The Carlyle Groupによる建設機械メーカーの徐工集団工程機械の買収

Carlyleは2005年10月に徐工の株式の85%取得に合意した。

しかし、「国有資産の流出」などの批判が強まり、出資予定比率を2度引き下げたが、当局の審査が長期化し、結局は合意から2年9カ月で、出資断念となった。

③ Rio Tinto と BHP Billiton の鉄鉱石統合

Rio Tinto と BHP Billiton は2010年10月、 鉄鉱石統合の断念を発表した。

契約調印後、各国の独禁法当局に認可の申請をしていたが、認可を得るのが難しい状況となったため、断念した。
公正取引委員会も両社に対し「独占禁止法に違反する恐れがある」と指摘している。)

2010/10/18 Rio Tinto と BHP Billiton、鉄鉱石の製造JVを断念

インドシナ半島で7月下旬から続く記録的な大雨により、タイの各地で大規模な洪水が発生している。

タイでは7月中旬から北部(チェンライ県、ナーン県など)、東北部(ノンカイ県、サコンナコン県など)で豪雨による洪水被害が報告された。
その後、度重なる台風などの降雨で川が増水し、堤防の決壊などにより洪水被害が広がった。

10月初めに11のダムが基準貯水量を超え、10月4日には北部のプミポンダムで放水量を増やしたことが下流地域の増水に拍車を掛けた。

10月18日現在で全国で317人の死亡が確認されている。

特にタイ国土を南北に流れるチャオプラヤ川流域の被害が大きい。

首都バンコクに近いアユタヤ県では、世界遺産の寺院や仏像に水が押し寄せ、県内5カ所の工業団地もすべてが浸水した。

タイ政府はバンコク中心部の浸水阻止に懸命だが、潮位が上がる時期とも重なっており、予断を許さない状態が続く。

タイには多くの工業団地があり、多数の日本企業が進出している。

洪水は10月にアユタヤ県を襲った。

10月4日にサハラタナナコン(Saha Rattana Nokhon)工業団地(42社、うち日系35社)、
         9日はホンダ、ニコンなどのロジャナ(Rojana)工業団地(218社、うち日系147社)、
       13日にはキヤノン、ソニーなどのHi-Tech工業団地(143社、うち日系100社)、
       14日夜にはバンパイン(Bangpa-In)工業団地(84社、うち日系30社)、
       16日はFatory Land 工業団地に浸水した。

アユタヤの工業団地の浸水で被災した日系企業は合計で約310社に達した。

17日には、首都バンコク北側のパトゥムタニ県にあるナワナコン工業団地(Navanakorn)の一部で浸水が起きた。
18日には敷地の9割が冠水し、2日以内に全体が水没する危険が高まったため、タイ政府は操業停止と従業員の避難を命じた。
タイでは二番目に大きい団地で、入居190社のうち、日系は104社と半分以上を占める。

水がバンコクに近づいたため、タイ政府の洪水対策本部は18日夜、北東部につながる運河の水門を相次いで開いた。
上図のバンコク市防衛計画の通り、バンコク都心部が浸水するのを避けるため、チャオプラヤ川の水を都心部の東と西の運河に流すもの。

これに伴い、知事は北東部の7つの区(住民100万人)に避難準備を求めた。
ホンダの二輪車組み立て工場のあるラカバン(
Ladkrabang)工業団地(283社、うち日系49社)も含まれる。工業団地側は浸水の恐れがあるとして各企業に操業停止を要請した。
 

日系自動車の拠点は次の通りで、現在、浸水したのはアユタヤのRojana団地のホンダだけだが、部品を供給する企業の多くが浸水で操業を停止したため、10月20日以降、日系完成車メーカー8社の全てが操業を停止する。

 
トヨタ
 チャチェンサオ県 Gateway City工業団地
   同      Bangplee 工業団地
 サムットプラカーン県 Samrong
          (Bangplee の西隣)

日産自動車
 サムットプラカーン県 
Bangsaothong
           (
Bangpooの北隣)

 

ホンダ
 バンコック Ladkrabang工業団地   

 

   

 

タイのティラチャイ財務相は10月17日、3.5~4%程度と予測された国内総生産(GDP)成長率が1~1.7%押し下げられるとの見通しを表明した。

 

 

BPは10月17日、Deepwater Horizon 事故に関し、MC252鉱区の25%の持分を持つAnadarko Petroleum Companyとの間で、全ての問題を解決することで合意に達したと発表した。
両社間の争いを解決することが両社にとり最善と判断したもので、この合意は事故の責任を認めるものではないとしている。

和解の条件は以下の通り。

AnadarkoはBPに対し現金で40億ドルを支払う。これはBPが損害賠償のために設定した200億ドルの基金に充てられる。
AnadarkoはMC252鉱区の25%の権利をBPに引き渡す。

AnadarkoはBPに対する「重大な過失」の非難を取り下げる。

将来、第三者からの支払いや保険収入での回収が15億ドルを超える場合、Anadarkoは超えた分の12.5%(上限10億ドル)の権利を有する。

両社は互いに対する訴訟を取り下げる。
BPはAnadarkoへの
第三者の請求の大部分はBPが全額補償する。

水質浄化法に基づく米当局からの制裁金や州の環境法に基づく制裁金など(civil, criminal or administrative fines and penalties, claims for punitive damages, and certain other claims) は和解の対象外。

もう1社の株主の三井石油開発とは2011年5月に同様の和解をしている。

2011/5/20 BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 

BPはまた2011年6月に、掘削機器の部品のfloat collarを供給したWeatherford U.S., L.P. とも和解した。

WeatherfordはBPに75百万ドルを支払う。

両社は互いに対する訴訟を取り下げる。
BPはWeatherfordへの
第三者の請求(制裁金などは除く)はBPが全額補償する。

事故に関するPresidential Commission やMarine Board of Investigationの調査では、BPのほか、事故を起こしたリグの所有者で掘削作業を担当したTransocean やセメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)を担当したHalliburton などの行動が事故の原因としており、BPではこれらの会社に対しても話し合いを行っている。

ーーー

Anadarkoは40億ドルの支払いのため、ブラジルの海上油田の権利(30億~40億ドルと見込まれる)を売却する考え。

 

ーーー

2010/5/4 米の原油流出、環境や漁業に影響  
2010/6/8 
BPの原油流出事故のその後  
2010/6/17
 メキシコ湾石油流出事故の損害負担  
2010/6/19
 メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その2)  
2010/6/22
 メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その3)  
2010/7/1
   BP、パートナー2社に事故関係費用分担金を請求  
2010/7/5
   米司法省、原油流出事故関係各社に資産売却等の事前通知を要請  
2010/7/10
 メキシコ湾石油流出事故対策の現状  
2010/7/17
 BP、新しいキャップの設置に成功  
2010/7/24
 原油流出事故のその後 ー上院小委員会公聴会と原油流出事故対応会社設立     
2010/8/2    BP、油井完全封鎖へ  
2010/8/3
   三井物産、第1四半期決算に原油流出事故関係を一部反映  
2010/8/6
   メキシコ湾油井封鎖作業の状況   
2010/8/26
 BP、メキシコ湾の水質検査に新兵器採用  
2010/9/6
   メキシコ湾原油流出事故の状況  
2010/9/9
   BP、メキシコ湾原油流出事故の原因調査報告を発表  
2010/9/20
  メキシコ湾原油流出事故ー
Bottom Kill 作業完了  
2010/10/20
BP、メキシコ湾原油流出事故で油濁法の損害賠償限度額の権利放棄を言明  
2010/11/6
  BPの原油流出事故損失 398億ドルに  
2010/11/16
BP原油流出事故の現状  
2010/11/25
BP原油流出事故で新事実  
2010/12/17
米司法省、BP原油流出事件で提訴  
2011/1/7
    原油流出事故の原因はBPなどの管理欠如に由来、大統領委が報告書  
2011/4/22
  三井石油開発子会社と
Anadarko、BPを訴え  
2011/4/25
  BP、原油流出事故で業者を訴え  
2011/5/20
  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解

 

付記

米内務省安全環境執行局は10月26日、BPに対してメキシコ湾深海での新たな油田の掘削認可を与えたと発表した。
ルイジアナ州沖約400kmにあるカスキダ鉱区の水深約1800mの地点で掘削を行う。

Bloomberg は10月13日、DuPontがDuPont Teijin Filmsとパウダーペイント事業の買い手を探していると報じた。
前者についてはGoldman Sachs Group が、後者についてはGreenhill & Co. が売却を手伝っている。
売却額はそれぞれ、10億ドル未満と見られている。

Ellen Kullman女史が2009年1月にCEOに就任して以来、71億ドルでのDanisco買収などで高成長分野に舵を切っている。
これまで大きな売却はしていないが、いよいよ時期が来たとしている。

ーーー

帝人はポリエステルフィルム分野では、世界6カ国で米国デュポンと合弁事業を行っている。

帝人は1957年に英国ICIのPETフィルム製造技術を導入。
DuPontは1998年にICIからポリエステル事業を買収。

両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。

日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立されており、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売している。

インドネシアは帝人子会社、中国は
DuPont JVで、それぞれを両社のJVに移した。

 国  社名   出資比率 %  備考
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム 50.1 49.9    
米国 DuPont Teijin Films U.S. 49.9 49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0 50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg 50.0 50.0    
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 50.1 49.9   元は帝人100%P.T.Indonesia Teijin Films
中国 DuPont Hongji Films Foshan
(佛山杜邦鴻基薄膜)
中国JV  51 (*2) 49 *2 佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
DuPont
持株をDuPont Teijin Films China に移管
(49.0) (51.0)

 

帝人は2008年3月決算で米国及びルクセンブルグでのJVの固定資産の減損処理を実施し、大幅減益となった。
需要低迷や原燃料価格の高騰により、特に米国のフィルム事業を取り巻く経営環境は厳しく、急速な業績回復は難しい状態となったのが理由。

DuPont Teijin は、2009年2月の米国Circleville, OH 工場の閉鎖、同6月のLuxembourg工場の1生産ラインの休止に加え、米国Florence, SC工場を段階的に縮小し、2010年末に閉鎖した。
これにより、米国におけるポリエステルフィルム製造拠点を、Hopewell, VA
工場に集約した。

付記

帝人は10月28日、中国のJVのDuPont Hongji Films Foshanの能力増強を発表した。
厚物差別化品市場に向け、本年2月に閉鎖した米国Florence工場の遊休設備1ラインを移設し、薄物差別化品市場に向け1ラインを新設、現行の年産50千トンを77千トンとする。

ーーー

大豆タンパクと大豆食物繊維製品のJVのSolae LLCの売却先を探していると報じた。
14億ドル~17.5億ドルでの売却を目指し、ファンドや欧州企業と交渉しているという。

Salaeは1958年に Protein Technologies International として設立され、当初は産業用大豆タンパクのみであったが、その後食品などに展開した。

1997年にDuPont がRalston Purinaから買収、2003年4月にBunge Ltd.が28%を出資してSolae LLC を設立した。

まず、DuPontのProtein Technology事業とBungeの北米と欧州の素材事業を新会社に移行し、第二段階でBungeのブラジルの素材事業を移行した。

DuPontは現在、 売却方針を変換し、SolaeのBunge持株の28%を購入し、100%子会社にすることを検討しているという。
Daniscoの事業とSalaeの事業は相互補完的で、収益向上、高成長が期待できるとみている。

Solaeの需要家には、大豆ミルクのメーカーの 8th Continentがある。

2000年にDuPontとGeneral MillsのJVとして設立され、2008年にStremicks Heritage Foods に売却された。

ーーー

DuPontはまた、ケチャップやマスタードなどのプラスチック容器を生産する Liqui-Boxの買い手を探している。

DuPontは同事業を2002年に333百万ドルで買収した。 

付記

DuPont は2011年12月30日、Liqui-Box をSterling Group LP (private equity firm) に売却した。

最高裁は9月30日、カネカ及び三菱レイヨンが上告していたMBSカルテルに関する公取委の審決取り消し請求について上告を棄却した。東京高裁の判決が確定した。

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2003年2月、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会はモディファイヤー(塩ビ樹脂強化剤=MBS)の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手した。

9カ国の14社以上のメーカーに調査が入った。Akzo NobelRohm & Haas などのほか、日本では三菱レイヨン、呉羽化学(現クレハ)、鐘淵化学(現 カネカ)に調査が入った。

クレハは同事業からの撤退を決定し、2003年1月1日にこの事業を提携先のRohm & Haas に譲渡している。

米国においては、20064に容疑なしとして不起訴となり終了した。
欧州委員会による調査も2007年1月に終了した。

しかし、米国のMBSの購入者から、価格維持等の米国独占禁止法に違反する行為により損害を被ったとの主張で、3社の子会社に対してそれぞれ損害賠償請求訴訟(民事集団訴訟)が提起された。

・クレハは2005年11月、原告団に対して500万ドルの和解金を支払うとの内容で、原告団と和解した。
・カネカは2007年4月、原告に対して590万ドルの和解金を支払うとの内容で、原告と和解合意した。
・三菱レイヨンは2008年1月に
原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意した。

2008/1/29 MBS価格カルテル問題

ーーー

日本では公取委は2003年12月11日、三菱レイヨンと鐘淵化学に対し、排除勧告を行なった。
呉羽化学に対しては、公取委は2005年7月、
2億6,849万円の課徴金納付命令を出した。(呉羽化学は既に事業を譲渡しているため排除勧告は不要)

これらは審判に付されたが、公取委は2009年11月9日、両案件について審判審決を行い、三菱レイヨンとカネカに対しては排除命令、クレハに対しては2億6,849万円の課徴金納付命令を認めた。

クレハはこれを受諾した。

三菱レイヨンとカネカは、「審決内容には実質的な証拠に基づかない部分が多々ある」と判断し、東京高裁に審決取消訴訟を提起した。

東京高裁は2010年12月10日、この請求を棄却した。

1999年と2000年の合意が成立したことが認められ、クレハを含む3社の共同行為で、競争の実質的制限がもたらされていたことは明らかで、クレハ離脱後も、同様の行為が再び行われるおそれがあると認めざるを得ないから、排除措置を命じる必要があるとした。

これに対し両社は最高裁に上告したが、最高裁は今般、上告事由に該当しないとしてこれを棄却し、東京高裁の判決が確定した。

なお、公取委は2010年6月に三菱レイヨンとカネカに課徴金納付命令書の送達をした。

  カネカ     6億 458万円
  三菱レイヨン 5億4361万円
  合 計     11億4819万円

これに対し両社は審判を請求し、公取委は2010年8月27日、審判開始決定を行った。

この審判は現在もまだ続いているが(次回は11月17日)、最高裁の上告棄却を受け、両社が審判請求を取り消す可能性はある。
(カネカは最高裁の上告棄却について、「当社の主張が認められず残念ですが、司法判断によるものであり、今後は審決の内容に従って対応します」としている。)

付記

2012年5月30日、上記課徴金に関する審決が出た。

  カネカ     6億 458万円
  三菱レイヨン  5億4361万円 

ポリプロピレンのカルテルが、2000年5月の立ち入り検査の後、2010年12月にようやく決着したが、本件も長期にわたっている。

米国予防医療専門委員会(US Preventive Services Task Force:USPSTF) はこのたび、前立腺癌の検診で使われているPSA検査について、「すべての年齢の男性に対して検査は勧められない」とする勧告案をまとめた。

USPSTFは2008年8月に「75歳以上の人に検査を勧めない」としたが、今回は全年齢に広げた。

2008年の勧告
・現在の証拠では、75歳未満について、PSA検査のメリットとデメリットを評価するには不十分。(Grade:I)
・75歳以上については検査のメリットは小さいかほとんど無し。検査を勧めない。(Grade:D)

注)Grade A :メリットが著しく多い。実施すべし。
       B :メリットがかなりある。実施すべし。
       C :メリットが少ないとの証拠がある。
        その患者にとり、やるべきだとの他の判断がある時のみ、実施。
       D:メリットがないか、デメリットの方が多い。実施反対。
       I :現在の証拠では判断不能。
        勧告を読み、メリットがあるかどうか不明であることを理解してから判断すること。

今回は全年齢でGrade:Dとした。

USPSTFは2009年11月に、40歳代の女性に対する乳房X線撮影装置(マンモグラフィ)を用いた乳がん検診で意見を変更している。

それまでは「40歳以上の女性に対して、マンモグラフィを用いた乳がん検診の1~2年に1回の受診を推奨する」(Grade B)としていたが、
「40歳代の女性に対しては、マンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診を行うことを推奨しない」(Grade C)に変更した。

癌ではなかった人に対する不必要な検査や、放置しても臨床的に問題にならない癌に対する治療等のデメリットが存在し、利益と不利益を比べた場合に50歳代以上の女性と比較して、40歳代では利益が不利益を上回る度合いが小さいとした。

ーーー

PSA (Prostate-specific antigen)は前立腺特異抗原と呼ばれるセリン蛋白分解酵素で、本来は、前立腺から精漿中に分泌され精子が体外に放出される時に精漿中のゼリー化成分である蛋白を分解して精子の運動性を高める役割を果たす。

健常男性であれば、血液中にPSAが浸出することは非常に稀(0.1 ng/mL以下と非常に低濃度)だが、前立腺に疾患があると血液中にもPSAが浸出し、4.0 ng/mLと40倍もの濃度となる。

但し、PSA 4~10 ng/mLの場合でも、前立腺肥大症の場合と前立腺癌の場合が混在する。

癌でない場合は蛋白と結合していない遊離型PSAが多いことから、遊離型の比率(F/T比)を検査することで、前立腺癌の確率を推定できる。

PSAが高値となった場合は、前立腺触診、前立腺超音波検査などを行い、癌が疑われる場合は、生検にて確定診断を行う。

USPSTFは、これまでに実施された5つの大規模臨床試験の結果を分析した結果、年齢や人種、家族歴にかかわらず、PSA検査をした場合に、しなかった場合と比較して、死亡率を下げるとの証拠は見いだせなかったと結論づけた。

検査により癌死を防ぐメリットよりも、死に至らない癌を手術することによる深刻な副作用のデメリットの方が大きいとしている。

ただ、自覚症状があったり、前立腺がんが強く疑われたりする場合は別としている。

上記の通り、高いPSA値は癌以外の理由でも生じる。調査の結果、PSA検査で誤った診断や害のない癌を治療したケースが多く見つかった。

治療(主に手術や放射線治療)により、勃起障害や尿漏れなどの後遺症が残る人もいる。
前立腺癌と指摘され、自殺や心臓麻痺死のリスクが倍増したとの調査もある。

ーーー

2010年3月に、約40年前にこの検査法を開発した米アリゾナ大学のRichard Ablin教授がNew York Timesに寄稿し、この検査法の有用性は小さく、保険財政を圧迫していると指摘した。

米国人男性のうち前立腺がんと診断される割合は16%だが、その大部分は進行が遅く、死に至るのはわずか3%だという。

教授はまた、PSAの年間費用は少なくとも30億ドルにのぼっていると指摘している。

American Cancer Societyも、2009年に米医学誌 New England Journal of Medicineに掲載された2つの研究の予備的な結果を受け、PSAのリスクと限界について患者に説明するよう医師たちに強く呼びかけている。

同協会によると、PSAは治療介入が必要な進行の早いがんと進行の遅い腫瘍を区別することができない。

さらに、PSAでは誤診の可能性もあるという。患者の年齢とともに前立腺が自然に肥大した場合も値が上がる。

同協会によると、200万人以上の米人男性が前立腺癌と診断されるが、今も生存している。

これに対し、検査が有用とする意見も多い。

ーーー

国内では、日本泌尿器科学会がPSA検査を推奨するが、厚生労働省の研究班は、効果を判断する根拠が不十分などとして、集団検診には勧めないとの報告をまとめている。

東京都でも健康診断の対象にする区と、しない区がある。

総務省統計局によると、PSA健診対象といわれている50歳以上の男性は日本全国で2,400万人、これは総人口の約40%に当たるが、このうち、2005年時点で、PSA健診を受診した人は、5%にも満たないという。

70~80%の対象人口が既に受診をしている欧米各国とは大きな隔たりをみせている。

 

米上下両院は2011年10月12日、韓国及び、コロンビア、パナマとのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。
オバマ大統領の署名で法案が成立し、米側の批准手続きが完了する。

韓国側の批准を待ち、来年1月に発効する見通し。
(韓国野党は、追加交渉で利益の均衡が崩れたとして反対している。与党は履行法案の10月中の処理を目指す) 

付記

韓国の国会で11月22日午後、過半数を占める与党・ハンナラ党が米国との自由貿易協定(FTA)の批准案を強行で可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

これまでの経緯は以下の通り。

  2007年4月2日、韓米自由貿易協定(FTA)締結交渉は妥結した。
  しかし、米国内で反対が強く、この協定は批准されなかった。

2007/4/4 米韓FTA妥結 

  2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、米国でもムードが変わった。 
  争点を話し合うための通産相会議が行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂

  その後、相互が妥協し、2010年12月3日、追加交渉が妥結した。

    米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れた。
    韓国は自動車で大きな妥協を行った。
       米国での韓国製自動車の関税撤廃ペースを遅らせる。
       非関税障壁とされた安全基準、燃費基準でも妥協。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

韓国とEUの自由貿易協定(FTA)は2011年7月1日に発効している。

2010/10/12  韓国とEU、自由貿易協定締結

対米FTAが発効すると、韓国は欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」となる。

韓国は以下の国と地域との間でFTAを締結している。

 ・欧州:EU、欧州自由貿易連合(EFTA=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドで構成)
 ・アジア:ASEAN10ヵ国、シンガポール、インド(包括的経済連携協定)
 ・北南米:米国、チリ、ペルー

日本は、EU、EFTA、米国とは締結しておらず、韓国に大きく差を付けられることとなった。

韓国企業は日本企業に対し、ウォン安とあいまって、EUと米国への輸出でより有利な立場に立つ。

ーーー

韓国はいずれのケースでも「コメ」は関税撤廃対象から除外している。
しかし、対米ではコメ以外の農産品の解放幅拡大を受け入れ、国内の農業被害には思い切った補償策を用意した。

一方、自動車安全基準では対EUではEU規格を丸のみ、対米でも米国製自動車の非関税障壁を大幅に緩和した。

DICは合計約100億円を投じ、グローバルベースでのPPS(ポリフェニレン・サルファイド)増産一大プロジェクトを遂行している。

DICは9月26日、100%子会社のDIC EPの鹿島工場に約80億円を投じてPPS樹脂の新プラントを建設することを決定したと発表した。
2013年5月に完工予定の年産5,500トン強の新設で、PPS樹脂の生産能力は世界トップクラスの年産19,000トン強となる。

ーーー

DICは10月7日、オーストリアのウィーンにPPSコンパウンドの新プラント建設(総投資額1400万ユーロ)を決定したと発表した。
これに先立ち9月30日にSolvayからPPSコンパウンド事業を譲受することで合意した。

新プラントは、2012年末に完工予定で、稼動開始時点での能力は6000トンの予定だが、将来的には年産1万トンまでの生産ラインの拡張が可能

欧州におけるPPSコンパウンドの需要は年間約1万5千トンと、日本の同3万トンに次ぐ規模があり、今後も年間 6~8%の成長が予想される。同社では数年後に、欧州におけるPPSコンパウンドのシェア20%以上を目指す。

ーーー

同社は2011年7月に、約5億円を投じてマレーシアのDIC Compounds(Malaysia)のPPSコンパウンドの生産能力を、年産1,500トンから4,500トンへ増強した。

ーーー

PPSは、ほとんどがガラス繊維や無機質フィラーを充填して強度を引き上げたPPS コンパウンド(主に成形材料用途)として出荷されている。
PPSコンパウンドの世界需要は73,000トン程度(2010年度)と推定されているが、DICでは、PPS樹脂からPPSコンパウンドまで一貫生産しており、世界トップシェアの地位を確立している。

PPSコンパウンドは、耐熱性や強度、寸法安定性ならびに耐薬品性に優れることから、自動車、電子・電気ならびに住設機器が主な用途であり、その需要は拡大している。

主要用途である自動車については、ハイブリッドカーや電気自動車のエンジンのダウンサイジングによる要求特性の高度化により、従来車と比較して一台あたりの使用量は飛躍的に増加している。
(PPS使用量 ガソリン車:0.7Kg/台→HV車:2.5Kg/台)

住設機器用途においては、従来のガス給湯器部品の金属からの代替用途に加えて、その優れた耐熱性・耐水性を生かして、ヒートポンプ式給湯機器のジョイントやバルブ、ポンプ等の部品への採用が進んでいる。

DICはエンプラ分野でPPS事業へ経営資源の集中を図ることを決め、2010年3月にPBT事業を東洋紡に譲渡した。
(DICと東洋紡の両社がエンプラ分野の事業に関して事業展開の方向性が合致したもので、東洋紡はPBT事業のさらなる拡大を目指す。)

ーーー

DIC(当時は大日本インキ化学)は当初、Phillips Petroleum からベース樹脂を輸入し、ガラス繊維補強材や充填剤を混練し成形用コンパウンドとして市場開発を進めた。

1984年11月のPhillips Petroleumの基本特許の失効後、大日本インキ(鹿島工場:年産3500トン)を含む数社が相次いでPPS国産化プラントを稼働させた。

一方、東都化成が独自技術で開発を行い、トープレン(東都化成55%、東燃化学45%)を設立して千葉で生産を開始した。(年産3,500トン)
その後、トープ
レンは東都化成10%、東燃化学90%となったが、2001年2月にDICが譲り受けた。

DICは2001年4月に、トープレンをディーアイシー・イーピー(DIC EP)に変更するとともに、自社の鹿島工場のPPSプラントを同社に移管、統合した。

その後、両プラントを順次増強し、今回の鹿島の増強で、合計能力を19,000トン強とする。

ーーー

日本のPPSの状況は以下の通り。

  立地 現状 増設  
DIC EP 鹿島工場 13,500トン +5,500トン
(2013/5 完工予定)
 
千葉工場
東レ 東海工場 14,000トン +5,000トン
(2013/1 稼働予定)
 
クレハ 錦工場 10,000トン   コンパウンドはポリプラスチックが担当
Wilmington, N.C 15,000トン   Fortron Industries LLC
(JV of Ticona and Kureha )
東ソー 四日市工場    2,500トン
 (cpd    4,200トン) 
+200トン
(+400トン)
当初 東ソー・サスティール
  (東ソー70%、保土ヶ谷化学30%)
1992/6 東ソー100%、1996吸収合併
出光興産 千葉工場 10,000トン(?)    

 

なお、PPSは1967年にPhillips PetroleumのEdmondsとHillが、パラジクロルベンゼンと硫化ソーダから合成する方法を発明、1972年Phillips Petroleumにより最初に工業化された。

Phillips(現 Chevron Phillips Chemical)はBorger, Texasの能力を倍増し、20,000トンとしている。

Solvayは10月5日、DowとのJVのMTP HPJV (Thailand) がタイのMap Ta Phutで世界最大の過酸化水素工場をスタートさせたと発表した。

2007/8/3 Dow と Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立

Solvayの独自技術によるもので、ユニークな大規模プラントにより建設費と製造コストが節減できる。省エネ、節水の面で環境面でもメリットがある。

能力は33万トン(100%ベース)で、DowとSiam Cement のJVのMTP HPPO Manufacturing のPO(HPPO)の製造用に供給される。

2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

原料プロピレンは、Dow と Siam Cement Group のRayong の新しいナフサクラッカーから供給する。
能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。OCT(Olefins Conversion Technology) で大量のプロピレンを製造する。Siam が67%、Dow が33%出資。

2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進 

今回のタイのプラントはPO製造用のワールドクラスの過酸化水素工場としては2番目のもの。

最初のものは2009年末に稼働したアントワープの23万トンプラントで、SolvayとBASFのJVにDowが参加してパートナーシップを設立した。DowとBASFのJVの30万トンHPPO用に供給している。

2009/3/12 ダウとBASFのHPPO法PO生産開始

タイの過酸化水素はHPPO向けが主であるが、生産量の1/4は Solvay Peroxythai Limited が外販する。
Solvay Peroxythai は東南アジアの過酸化水素の主メーカーで、Map Ta Phutに35千トンのプラントを持ち、過去20年以上にわたり、高純度品を食品やエレクトロニック業界に供給している。新プラントからの製品で、供給能力は従来の2倍以上となる。

参考

Evonik(旧Degussa)は2011年1月、インドでのHPPOプロジェクトに関し、インドのソーダ会社 Gujarat Alkalies and Chemicals Limited (GACL)と覚書を締結した。

EvonikとUhdeが共同開発した過酸化水素法プロピレンオキサイド(HPPO)をGACLが建設し、過酸化水素工場をEvonikが建設するもの。GACLの拠点のインドGujurat 州Dahej に建設する。

EvonikとUhdeはこの技術を韓国のSKCに供与し、SKCは蔚山に100千トンのHPPOプラントを建設、2008年にスタートした。

Evonikは子会社Evonik Degussa Peroxide Koreaで過酸化水素を製造しているが、2010年11月、SKCはこの子会社に45%出資し、協力関係を強化した。

2011/1/20 Evonik、インドでのHPPOプロジェクトでインドのGACLと覚書締結

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POの製法については下記参照。

  2006/3/24 ダウとBASF、POを新製法で生産

BASFは10月10日、SinopecとのJVの南京のBASF-YPC の第一次増強計画のうち、最初の2工場が生産を開始したと発表した。

エチレンの増強(600千トンから740千トンへ)に続き、今般、ブタジエン抽出(120千トン)と非イオン界面活性剤(60千トン)が生産を開始した。

残りの各プラント(下表 参照)も年末までに稼働する。

第一次増強は14億ドルをかけるもので、2009年9月に建設を開始した。

2008/3/22 BASF-YPC、増設計画の承認を申請

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BASFとシノペックは2010年12月に、第二次増設計画についての覚書を締結している。

投資額は約10億ドルで、C3、C4誘導品を拡張する。16万トンのアクリル酸の増設や新しくブチルアクリレートの新設などを含む。
また、ワールドクラスの過酸化水素法POも新設、BASF-YPCに統合した旧Yangzi-BASF StyrenicsのSMも増設する。

HPPOはダウとBASFが共同開発したもので、アントワープの両社のJVが第1号。
ダウは
Siam Cement Group とのJVタイにプラントを建設している。

2010/12/24  BASFSINOPECBASF-YPCの第二次増強を検討 

第一次、第二次増強計画の内容は以下の通り。(単位:千トン)

  当初      第一次増強 第二次増強
エチレン   600   →740  
C4 Comlex Butadiene ー   ◎(100120  
2-propylheptanol  ◎  増設
Isobutene  ◎ 80  
Polyisobutene  ◎ 50  
EO EO 250  +80 & EO purification  
EG 300     
EO Derivatives Butyl glycol ether ー   ◎  
Non-ionic surfactants  ◎ 60  増設
Amines complex Ethanolamines
Ethyleneamines
Dimethylethanolamine
ー   ◎  
DMA3 (dimethylaminoethylacrylate) ー   ◎  
LDPE 400     
Acrylics value chain アクリル酸  160     +160
アクリル酸エステル 215     
Super-absorbent polymer (SAP) ー   ◎ 60  
butyl acrylate ー   ー  ◎
C4オキソアルコール  250   増設  
蟻酸 50     
プロピオン酸 30   増設  
メチルアミン 30     
ジメチルホルムアミド(DMF 40     
PO(HPPO) ー   ー  ◎
Yangzi-BASF Styrenics Ethylbenzene 130   BASF-YPC統合  増設
Styrene monomer  120   増設
Polystyrene  200   
EPS  52   

 

メキシコのコングロマリットのGrupo KUOは9月22日、江蘇省南京市の江蘇金浦集團(Jiangsu GPRO Group)との間で50/50JVを設立することで合意したと発表した。

両社はINSA GPRO (Nanjing) Synthetic Rubber Co.を設立、60百万ドルを投じて、南京市に第一期年産能力30千トンのニトリルゴム(NBR)プラントを建設する。

Grupo KUOの100%子会社で、合成ゴム、エマルジョンを製造するINSA (Industrias Negromex, S.A. de C.V.)が技術を担当する。

中国当局の承認を得次第、着工し、2014年初めに生産開始する計画。

NBRは産業用に広く使用されており、Grupo KUOでは子会社 INSAがすでに中国に輸出している。

江蘇金浦集團は2005年に南京市に、同社が40%、Sinopec揚子石化が60%出資のJV、揚子石化金浦橡膠(YPC-GPRO Rubber)を設立し、南京ケミカルパークに第1期 100千トンのSBR プラントを建設している。(第2期計画 100千トン)

ーーー

江蘇金浦集團は江蘇省南京市に本拠を置く化学会社で、従業員3,000人。プロピレンオキサイド、ポリエーテル、PP、ガソリン添加剤、潤滑油、酸化チタン等々を生産している。

江蘇金浦集団はまた、韓国の錦湖石化との50/50合弁会社、南京GPRO錦湖石化を設立し、南京の南京ケミカルパークで電解、PO、PPGの生産をしている。2008年に生産を開始した。

能力はPOが80千トン(当初の発表では100千トンであった)、PPGが50千トン、カセイソーダが100千トンとなっている。

2006/11/28 韓国の錦湖石油化学、南京でPO生産

BASFとIneosのスチレン系事業を統合した50/50JVのStyrolutionが、各国の独禁法当局の承認を得て、10月1日に発足した。
社名は、"Styrenics" と"Solution"を合成したもの。

BASFとIneosは2010年11月30日、両社のスチレン、PS、ABS、SBC、その他スチレン系コポリマーとそのブレンドの事業を新しい50/50JVのStyrolutionに統合すると発表した。

統合に先立ち、BASFは2011年1月1日にスチレン系ポリマー事業を分社し、Styrolutionを設立した。
両社は2011年5月27日にJV契約を締結した。

2010/12/2 BASFとIneos、スチレン事業を統合 

新会社の製品は、SM、PS、ABS、スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBC)、スチレン系コポリマー(SAN、AMSAN、ASA、MABS)と、それらのブレンド(ABS/PA、ASA/PA、ASA/PC)で、発泡ポリスチレン(EPS)は対象外で両社に残る。

なお、当初新会社に含まれるとしていたIneosのスペインTarragonaのABS(18万トン)はEUの独禁法上の指示でIneosに残る。社名をElixとし、今後売却される。

付記

2011年12月31日、Sun European Partners (Sun Capital Partners の子会社)がStyrolutionとの間でElix Polymers 買収で合意した。

発表では、SM、PS、コポリマーでは世界第一、ABSでは世界第二となる。

2010年ベースの売上高は6,441百万ユーロ。

BASFの拠出する事業

ドイツ Ludwigshafen, Schwarzheide PS能力 540千トン
 (2009年80千トン減)
ベルギー Antwerp
韓国 Ulsan PS 250千トン、EPS 80千トン、ABS 250千トン
(SM 320千トンは2009年にSK Energy に売却)
インド Dahej  
メキシコ Altamira  

   対象製品

Commodities SM
PS
ABS
SBS
(スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)
コポリマー Luran® (SAN) :スチレン/アクリロニトリル コポリマー
Luran® HH (AMSAN):α-Methylstyrene-acrylonitrile copolymers
Luran
® S (ASA)styrene acrylonitrile copolymers that have been impact-modified with acrylic ester rubber
Terblend
® N (ABS/PA)ABS/Polyamide 6
Terluran
® HH (ABS-High Heat)modified ABS that meets the requirements for thermally stressed components
Terlux® (MABS)Methyl methacrylate-acrylonitrile- butadiene-styrene-polymer
Styroflex
® (SBS)Styrene/butadiene block copolymer

   対象外製品

発泡ポリスチレン  
発泡ポリスチレン用のLudwigshafen SM/PS事業  
南京のBASF-YPCSM/PS事業
(旧
Yangzi-BASF Styrenics
SM 120千トン
PS  200
EPS
 52

Ineosの拠出する事業 

Ineos ABS
ドイツ  Cologne  
スペイン  Tarragona 180千トン
 (付記 独禁法当局指示で除外、売却)
 
インド  Vadodara  
タイ  Map Ta Phut      
  Lanxessから買収 能力:730千トン→550千トン
Ineos Nova SM/PS
  SM
 千トン
PS
 千トン
EPS
(対象外)
Sarnia, Ontario 430        
Indian Orchard, MA   165  
Channahon, Illinois   410  
Decatur, AL   193  
Bayport, TX 770    
Texas City, TX 455    
(北米合計)  (1,655)  (768)  
Trelleborg, Sweden   85  
Breda, The Netherlands   90 90
Marl, Germany   180 85
Wingles, France   200 100
Ribecourt, France     90
(欧州合計)   (555)  (365)
       
総合計 1,655 1,323 365
Ineos SM ドイツ Marl
 エチルベンゼン 550千トン、SM 380千トン

ーーー

なお、BASFと並ぶスチレン系の大手であったDowも、スチレン系事業のStyronを投資会社Bain Capital Partnersに売却している。 (DowはStyronに7.5%を出資)

2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

Styronは2011年末に社名を Trinseo に変更する。

Styronの社名はスチレン系からきているが、同社はSMやPSを今後も中心とはするが、それ以外にも展開する計画であり、社名を変更する。

TrinseoはIntrinsic(「固有の」、「本質的な」、「内在する」)から取った。
同社の製品や技術が、需要家の製品にintrinsic な役割を果たし、需要家の成功に不可欠なものになるという意味。

なお、PSの商標は従来通り Styron を使用する。

昭和シェル石油は10月1日、サウジの電力公社 (SEC) 及びSaudi Aramcoと共同で同国初となる太陽光発電事業をスタートした。

サウジ南西部沖のFarasan島に立地した出力500kwの発電所の運転を開始した。約28,000バレルの軽油に相当する発電量が見込まれる。
2万人の住民向けに電力供給を実証することで、今後の同国内での再生可能エネルギー本格普及への基盤づくりをする。

 

この太陽光発電所は昭和シェルの100%子会社のソーラーフロンティアが建設を進めてきたもので、経済産業省と昭和シェル石油が協力し、中東における日本の最先端技術の普及を目指した政策の一環として、政府による資金援助を得ている。

ソーラーフロンティアの独自技術で生産するCIS薄膜太陽電池は、銅、インジウム、セレンを使用し、結晶シリコン系よりも高温時の温度係数が優れているため、気温上昇時の変換効率が低下しにくいなど砂漠環境に適した特性を有している。
また砂の付着や埃の蓄積を防ぐよう傾斜を付けたフレーム構造や、日本が誇る生産技術に支えられた高い耐久性も特長となっている。

ソーラーフロンティアの世界最大規模の宮崎県の第3工場(年産900MW)は 2011年2月より商業生産を開始している。宮崎第1、第2工場と合わせて、約1GW(1,000MW)のCIS薄膜太陽電池の年産能力の確立を目指している。

2009/5/29 昭和シェル石油、太陽電池事業 1600億円投資

昭和シェルとSECは本年6月1日、本発電所の完成を間近に控え、運営に関する覚書を締結した。

昭和シェルは15年間、本設備を所有し、その後は資産はSECに移管される。

稼働開始後は、SECが操業とメンテナンスを担当し、ソーラーフロンティアは新設のサウジのAl Khobarの事務所を拠点に技術サポートを継続的に提供する。

サウジ政府は、今後の人口増加と石油資源の枯渇をにらみ、2007年にエネルギー戦略を大転換した。
2010年5月にKing Abdullah City for Atomic and Renewable Energy (KA CARE)の設立を決め、原子力と太陽光発電を今後の中心にすることを決めた。

サウジでは電力需要が今後5年は年平均7~8%前後で伸びる予想で、これへの対応は国家的な命題(Aramco CEO)。
サウジの人口は2500万人(外国人700万人を含む)だが、若年層が急増し、2050年には7000万人になるとみられている。

昭和シェル石油は2009年6月、15%の大株主であるSaudi Aramcoと、サウジ国内において太陽光を活用した小規模分散型発電事業の可能性の調査を開始することに合意した。

太陽光発電のパイロットプラントを建設し小規模独立型電力系統(マイクログリッド)への繋ぎ込みなどの技術検討を行い、この結果を受けて同国内での本格的な事業化へ移行する計画。
 
 なお、AramcoのCEOは、宮崎工場の技術を移転し、2~3年以内に昭和シェルと合弁でサウジで電池の製造事業を実現したいとしている。(2011/10/4 日本経済新聞)


サウジにおけるソーラーフロンティアのCIS薄膜太陽電池の設置事例には次のものがある。
 1)アブドラ国王科学技術大学(KAUST)の10キロワット規模の発電設備(2009年運転開始)

 2)10メガワット規模のNorth Park Project(2011年末 稼働予定)

ソーラーフロンティアは2010年10月、Saudi Aramcoに対し10メガワットのCIS薄膜太陽電池モジュールを供給することに合意した。

Dhahran市にあるAramcoのオフィス複合施設 North Park Complexへ電力を供給するため、敷地内の駐車場の屋根上にCIS薄膜太陽電池モジュールを設置するもの。

車両4,450台収容の駐車場(16~18ヘクタール)の屋根上に設置され、発電電力は敷地内のオフィスビルで日中に使用される全ての電力量(一般家庭6,000戸分の電力に相当)を賄うことができる。


 

三菱樹脂は9月28日、長浜工場で半世紀以上にわたり活躍してきた硬質塩ビ板製造用プレス機「3×6-1プレス機」が、日本の科学技術の発展を示す貴重な技術史資料として国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録されたと発表した。

今回登録された「3×6-1プレス機」は、3尺×6尺(900ミリ×1800ミリ)サイズの硬質塩ビ板が製造できる国内初の大型機械で、1954年に導入した。製造元は小松製作所。

それまでの硬質塩化ビニル板は、大サイズの需要もなく、製造技術もなかった。
同社では用途の拡大に対応して、本プレス機を導入、様々な板の標準サイズに対応できる本格的な工業用途向けの硬質塩化ビニル板生産技術を確立した。

 

「未来技術遺産」は、国立科学博物館が2008年、わが国科学技術の発展を示す貴重な資料の保存と活用を図り、科学技術の急速な発展の中で、技術を培ってきた先人たちの経験を次世代に継承していこうということで制定した登録制度。

これまでに登録された「未来技術遺産」は下記参照。
   http://www.kahaku.go.jp/institution/sts/material/index.html

 

化学関連のものは以下の通り。

年度 登録番号 名称                                   所在地 製作年 詳細
2008 00009号 国産初期の硬質塩化ビニル管サンプル アロン化成
名古屋工場
1951 PDF
2009 00026号 池田菊苗博士抽出の第一号具留多味酸
― 日本最古のグルタミン酸 ―
東大大学院 1908 PDF
00029号 【 アンモニア合成装置 】 輸入機器
(1) アンモニア合成塔
(2) 混合ガス圧縮機
(3) 清浄塔
― わが国初の本格的なアンモニア合成プラント ―
旭化成
(延岡市)
1923 PDF
00039号 界面活性剤製造設備(TO リアクター)
― 世界で初めてα オレフィン・スルフォン酸塩の工業化に成功 ―
ライオン
大阪工場
1976 PDF
2010 00051号 合成ガス循環機
― 日本初の国産アンモニア合成装置 ―
昭和電工
川崎事業所
1930 PDF
00056号 ビニロン(ポリビニルアルコール繊維)
― 国産初の合成繊維 ―
クラレ
岡山事業所
1950 PDF
00057号 塩化ビニル被覆電線・ケーブル見本
― 現存最古級の塩化ビニル被覆電線 ―
古河電工
(市原市)
1950~
1955頃
PDF
00072号 上中啓三 アドレナリン実験ノート
― 高峰譲吉によるアドレナリン発見を決定づけた実験ノート ―
教行寺
(西宮市)
1900 PDF
2011 00080号 硬質塩化ビニル板製造用プレス機
― 日本最古の硬質塩ビ板成形プレス ―
三菱樹脂
長浜工場
1954 PDF
00082号 "テトロン"糸生産第一号機
― 日本初のポリエステル繊維製造装置 ―
東レ
(三島市)
1958 PDF

 

別途、日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用を推進するため、化学遺産委員会を設置し、さまざまな活動を行っているが、2010年から「化学遺産認定」を行っている。

2010/3/18 化学遺産認定  
2011/3/17
化学遺産、第二回認定

下記の3つが両方に認定されている。

 化学遺産 第2号 上中啓三 アドレナリン実験ノート(未来技術遺産 00072号) 
                第3号 具留多味酸(グルタミン酸)試料 (
未来技術遺産 00026号)
                第6号 カザレー式アンモニア合成装置および関連資料 (
未来技術遺産 00029号

 

なお、日本化学会では、震災で延期となっていた 2011世界化学年記念として第5回「化学遺産市民公開講座」を下記により開催する。

 日時:
10月27日㈭ 10:30~16:45 
 場所:
学術総合センター2階会議室
 
http://www.chemistry.or.jp/archives/kouza2011.pdf

 

 

 

 

Stay Hungry. Stay Foolish.

これは彼が2005年6月12日にStanford Universityの卒業式で来賓として行ったスピーチの最後の言葉。

若いころに愛読したThe Whole Earth Catalog の最終号の後ろのカバーに書かれた言葉である。

And I have always wished that for myself. And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you.
Stay Hungry. Stay Foolish.

 

スピーチでは3つの話をしている。

1)The first story is about connecting the dots.

You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something -- your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.

2)My second story is about love and loss.

You've got to find what you love. And that is as true for your work as it is for your lovers. Your work is going to fill a large part of your life, and the only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work. And the only way to do great work is to love what you do. If you haven't found it yet, keep looking. Don't settle. As with all matters of the heart, you'll know when you find it. And, like any great relationship, it just gets better and better as the years roll on. So keep looking until you find it. Don't settle.

3) My third story is about death.

When I was 17, I read a quote that went something like: "If you live each day as if it was your last, someday you'll most certainly be right." It made an impression on me, and since then, for the past 33 years, I have looked in the mirror every morning and asked myself: "If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?" And whenever the answer has been "No" for too many days in a row, I know I need to change something.(彼は若いころから禅に傾倒していた)

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma -- which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

クミアイ化学・三井化学・日産化学の3社は10月6日、各社がブラジルの日系農薬メーカーIharabras S.A.に出資したと発表した。

いずれも同社株主でブラジルの日系企業のAgroinvest Kayatani S.A.から買収した。

 クミアイ化学  

発行済み株式3.15%を取得。
既に出資している株式と合わせ、出資比率が
22.00%となり、持分法適用会社とする。

 三井化学   11.89%を取得。
 日産化学工業   3%を取得。
     
これにより、同社の主要株主は以下の通りとなる。
 日本曹達   28%
 住友商事   22%
 クミアイ化学   22%
 三井化学   11.89%


Iharabrasは1965年にイハラ農薬と三井物産が、
広大な農業市場をもち、高い成長が見込まれるブラジルに着目し、共同で設立した。当初の社名はIndusutrias Quimicas Mitsui-Ihara S.Aであった。

イハラ農薬は1949年に静岡県清水市で庵原農薬として設立された。
1962年にイハラ農薬に社名を変更、同年、東京証券取引所第二部に上場した。

1968年にクミアイ化学工業に社名を変更した。

1968年に日本曹達、三菱商事、住友商事、住友化学、武田薬品、東邦化学が出資した。

1972年に三井物産が離脱、クミアイ化学が主株主となり、社名を現在のIharabras S/A に変更した。

クミアイ化学はその後のブラジル経済の悪化で経営が維持できなくなり、1984年に一部株式の保有を残し、Agroinvest Kayatani S.A,に株式の66%と経営権を譲渡した。
(買い手が見付からず、苦肉の策として日系人グループが
Agroinvest Kayataniを設立して事業継続を決めたもの)
クミアイ化学は、
農薬原体の供給および製剤の技術提携など、Iharabrasとの友好的な協力関係は継続してきた。

Agroinvest Kayatani は1997年に日本企業に株式を譲渡、出資比率を51.2%とし、その後も日本の企業に株を売却、今回の売却で同社から撤退する。

ーーー

Agroinvest Kayatani は クミアイ化学がギブアップしたIharabrasの事業継続のため設立した投資会社で、主な出資者は日系人一世、ニ世で何らかの形で農業に関ってきた人々で構成されている。

Kayataniの参加により、成長への基盤ができると同時に、従来にも増して農業生産の現場に入り込み、生産者の声を自社製品の販売・製造にできる限り反映させていった。
1986年にはIharabrasがバイア州の野菜農場(Bagisa)に出資、生産者の立場から自社製品の品質向上を図った。

1993年にIharabrasの社長となったクニカズ・ニノミヤ氏は、積極的に近代的経営手法を取り入れた。

同氏は1994年に稲盛和夫氏(京セラ、KDDI創立者)の盛和塾に出会い、稲盛氏の「充分な利益を出さない会社は『ぼろ会社』」との言葉に感銘したという。「生きるか死ぬかの瀬戸際にあった当時、最も重要だったのは、発想の転換でした」。

売り上げ、利益、経費に関する明確で厳しい目標を設定すると同時に、従業員教育に力を入れた。

農業関係では収穫が天候に左右されるため債権回収が課題となるが、財務部門の権限と関与を強化し、客先との取引開始から債権回収まで深く関与する体制を確立、これにより、債権回収率は飛躍的に改善された。

2004年の売上高は1億2千万ドルに達し、利益率は17%となった。

同氏は2006年に日本での盛和塾全国大会体験発表会で最優秀賞を受賞した。

ーーー

クミアイ化学は海外において有望な複数の農薬原体の登録・上市を見込んでおり、グローバル展開の更なる強化・拡大のため、また、世界の人口増加等に対応して世界規模での食糧増産に寄与することが見込まれるブラジル市場における事業強化の一環として、Iharabrasの株式を追加取得した。

同社との関係をさらに深め、同地域でのクミアイ化学の薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発・上市を促進し、事業の更なる拡大を図る。

三井化学は、2011 年度中期経営計画において、農業化学品事業を景気変動による影響を受け難い「重点5 事業」の一つとして位置付け、早期拡大を図っている。

今回の株式取得により、三井化学グループはIharabrasとの関係を強化し、同地域での事業ノウハウ・情報の取得、同社薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発促進につなげ、農業化学品事業の更なる強化・拡大を図る。

日産化学も農薬事業をコア事業の一つと位置づけ、自社開発品の創出に向けて研究開発に注力し、一方で、他社剤の買収を積極的に推進し、既存の自社開発品を含め、アジア、欧州、北米を中心に販売体制の拡充を図っている。

Iharabrasとの関係強化により、中南米市場の開拓を本格的に進めることで、さらなる事業拡大を目指す。

中国国有資源大手の中国五鉱集団の中国五鉱能源(Minmetals Resources)は9月29日、コンゴで銅鉱山開発のAnvil Miningを12.8億ドルで買収することで合意した。

ーーー

五鉱能源は本年4月に、豪州とカナダに上場している銅鉱山開発会社のEquinox Minerals に対して63億カナダドルでの買収提案を行った。

しかし、同社はその後、買収計画を撤回した。
世界最大の産金会社、カナダのBarrick Gold が五鉱資源を上回る買収提示額(73億2000万カナダ・ドル)を示したことを受けたもの。

2011/4/15 中国五鉱集団、Equinox Minerals に買収提案 

ーーー

五鉱能源は銅資源の確保を狙い、その後、Anvil Miningと交渉を行った。
中国は世界の銅需要の40%を占めており、銅の価格が上昇する中、銅鉱山の取得に熱心である。

Anvil Miningはオーストラリアに本社を置く銅生産企業で、カナダとオーストラリアに上場している。
買値は4月29日のトロント市場終値に39%のプレミアムを乗せたもので、友好的買収となる。

Anvilは2011年8月に、会社の価値を最大化するために、売却を含む戦略的代替案の検討を開始したことを明らかにしていた。


Anvil Miningはアフリカのコンゴ民主共和国を中心に事業展開しており、同国における主要銅生産企業の1社である。

生産拠点はコンゴ南東部に位置するカタンガ州で、2002年から銅の生産を行っている。

主力はKinsevere銅鉱山で、
Stage I HMS(重液分離) プラントでは2010年に 16,538トン(oxide concentrate form)の生産を行った。2011年通年では36,000~38,000トン( Cu cathode)の生産を期待している。

現在、Stage II で年6万トンのLMEグレードの銅陰極プラントの建設中。

他に、国営資源企業であるGécaminesとのJV (Anvilが70%)でMutoshi HMSプラントを持っている。

 

BASFは9月27日、ベルギーのAntwerpにある肥料工場をロシアのEuroChemに売却する契約を締結した。
Totalの子会社のフランスのGPNとのJVの PEC-Rhinの50%持分もEuroChemに売却する意向で、合計の売却額は約7億ユーロ。 

付記

BASFは2012年1月20日、PEC-Rhinの50%持株をJV相手のGPN(Total子会社)に売却する契約を締結したと発表した。
ベルギー工場のEuroChemへの売却は予定通り手続きを進めている。

売却対象は肥料生産能力で約250万トンで、Antwerpには硝酸カルシウム/硫安肥料、Nitrophoska®肥料、ニトロリン酸、3つの硫酸プラントが、PEC-Rhinには硝酸カルシウム/硫安肥料、アンモニア、硫酸工場がある。

BASFLudwigshafen本社の肥料工場は、他の製品群と密接な関係があるため、売却対象外となる。

ーーー

EuroChem はロシアの富豪のAndrei Melnichenkoの会社(ロシア名はEvrokhim)で、世界で10位以内に入る農業関連企業。

・窒素ではアンモニア能力で7位
・燐ではリン酸能力で8位、燐安(MAP/DAP
)で7位
・カリでは埋蔵量で5位

同社の製品群と能力は以下の通りで、工場はロシア、リトアニアが中心。

カリについては窒素・リン酸事業と別系統。

2008年にゼロから業界に参入し、ロシアの2大メーカーのUralkali とSilvinit に挑戦した。
VolgagradとPermで生産しており、更に Gremyachinskoeで開発中(2013年に第一期でKCL 230万トン)
また、 K+S AG(下記)に8.7%を出資している。

 EuroChemのCEOは、BASFの肥料コンプレックスと PEC-Rhinの50%の買収で、高品質の製品の製造設備を手に入れ、活動地域を広げ、欧州需要家への供給が容易になるとしている。

ーーー

BASFでは肥料事業は重要性を失ったとし、売却を検討してきた。肥料の売上高は全体の1%以下である。

本年3月にはOrascom Construction Industriesとの間で肥料事業(AntwerpとPEC-Rhin)売却の初期段階の交渉をしていることが明らかになった。売却額は5億ユーロと見られていた。

Orascomはエジプトと中東で公共および個人顧客向けにエンジニアリング、調達、建設などのサービスを提供しているが、窒素系の肥料事業も行っている。

現在及び計画能力は以下の通り。

  現 能力 2012年能力
無水アンモニア  115万トン 220万トン
粒状尿素 130万トン 280万トン
アンモニウム-硝酸カルシウム (CAN) 115万トン 145万トン
尿素・硝安 (UAN) 20万トン 52.5万トン
メラミン 25万トン 25万トン
メタノール 75万トン

ノルウェーの窒素肥料メーカーのYara もBASF資産に関心を示していた。

同社は世界最大のアンモニア、硝酸、複合肥料のメーカーで、世界各国に工場を持つ。
  http://www.yara.com/about/production_sites/global_production_capacity/index.aspx

BASFはより高額(7億ユーロ)のEuroChemへの売却を選んだ。

ーーー

BASFの肥料工場売却に伴い、BASFの肥料の販売を受託している K+S KALI GmbH も販売網をEuroChemに売却する可能性が出てきた。

BASFは以前の子会社のK+S に肥料の販売を委託しており、契約は2014年まで有効となっている。

K+Sではサプライヤーが変わっても需要家との契約は守るとしているが、以前から、BASFのプラントが買収された場合には窒素肥料の販売ネットワークを買い手に売る可能性があるとしていた。

主事業はカリ、マグネシウムの採掘で、ドイツの6つの鉱山で年間750万トンを生産している。
世界で第4位のカリのメーカー。

カリと塩に注力しており、窒素肥料のマーケティングはコア事業ではないとし、家庭用肥料などの事業を売却した。

K+Sは、ドイツのSalzdetfurth AGと Wintershall AG のカリ(Kali)と岩塩(Salz)事業を統合して、BASFの傘下でKali und Salzとして設立されたのが始まり。

その後、BASFは株式を順次売却した。
2011年3月には10.3%を9億ユーロで売却した。

 

参考 カリのメーカーと損益

   2009年の利益は以下の通り。(単位:100万US$)
    * は
PotashCorpの出資先(上記)

PotashCorp   988
ICL(Israel) * 724
Yara (Norway) 613
Uralkali (Russia) 451
CF Industries (USA) 449
Mosaic (USA) 414
K+S (Germany) 403
SQM (Chile) * 372
Agrium (Canada) 366
APC (Jordan) * 281
Terra (USA) 153

デンマーク政府は国民の平均寿命を延ばすため、10月1日から「脂肪税:fat tax」を導入した。
バターなどの動物性脂肪に多く含まれる「飽和脂肪酸」を一定以上含む食品に対する課税を行うもの。

飽和脂肪酸を多く摂取すると、動脈硬化などを引き起こす悪玉コレステロールが増加し、がんの原因になるともいわれる。

政府は食生活の改善を目指し、心臓疾患などの生活習慣病を予防するため、2011年3月に導入を決定した。
保健・予防相は、世界初とされる「脂肪税」の導入について、「砂糖、脂肪、たばこに高い課税をすることは平均寿命を延ばすため、重要な施策の一つだ」と述べた。
デンマークは平均寿命が世界平均の79歳以下であるため、次の10年で寿命を3歳延ばすことを目標としている。

課税対象は、2.3%以上の飽和脂肪を含むバター、チーズ、牛乳、ピザ、チーズバーガー、肉、加工食品などで、飽和脂肪1kgあたり16クローネ(約220円)が課税される。

例えば、バター250gの値段は2.2クローネ(30円)上がる計算になり、今回の課税で約22億クローネ(約300億円)の税収が見込まれており、バターの消費量は約15%減少すると試算している。

デンマークでは、すでにほかの欧州各国と同様、砂糖、チョコレート、清涼飲料水にも課税している。

この課税に対しては、「デンマーク人はバターが好きだから、課税で効果は生まない」とか、「子どもはやるなと言われるとやるもので、もっと食べるのではないか」と疑問を呈する声が多い。

ーーー

ハンガリーも9月1日に"Hamburger tax"と呼ばれる"fat tax"  を導入した。

肥満防止のため、スナック菓子や清涼飲料水など塩分や糖分、カフェイン、炭水化物が高い食品に対する課税で、7月1日に法律が制定され、9月1日に施行された。

エネルギードリンク(1リットル)に300 forints ($1.63)、チップス(1kg)400 forints、糖分の多いソーダ(1リットル)10 forints などとなっている。

これによる税収は年間1.6億ドルと見込まれ、5.3億ドル赤字のヘルスケアのために使われる。
 

Lanxessは9月26日、オランダのGeleen のEPDMの50%を最新のKeltan ACE技術に転換すると発表した。
同工場の能力は年産16万トンだが、3系列のうち最大の系列を転換する。

同時にEPDMのグローバル本拠地をGeleenに移す。

LanxessはブラジルのTriunfoにも4万トンのEPDMプラントを持っているが、同社は9月21日、同地で世界初のバイオベースのEPDM(ブランド:Keltan Eco)を生産すると発表した。

Braskemが砂糖キビから製造するバイオベースのエチレンをパイプラインで既存のEPDM工場に運ぶ。

ーーー

Lanxess(Bayerから分離独立はドイツのMarlで年産6万トン、テキサス州のOrangeで6万トンの合計年産12万トンのEPDM(ブランド:Buna® EP)を生産していた。

Bayer時代に、Marlに1系列新設して合計115千トンとし、Orangeも手直しで70千トンとして、合計185千トンとする計画が打ち出されたが、需要の伸びが低い見通しから、計画を取りやめた。

Lanxess は2010年12月、Royal DSM からのDSM Elastomers部門の買収を発表した。買収額は310百万ユーロ。

2010/12/20 LANXESSDSM Elastomersを買収 

上記のオランダのGeleenとブラジルのTriunfoのプラントはDSMから買収したもので、これによりLanxessの能力は12万トンから32万トンに増えた。

DSMのEPDMのブランドはKeltanであるが、Lanxessではこのたび、2013年1月から同社のEPDMのブランドをKeltanに統一すると発表した。自社のBayer時代からのBuna® EPのブランドを廃止する。

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DSM ElastomersはEPDMの製造に関し、Nova Chemicals から新しい触媒技術の世界中での独占使用権を獲得した。

DSM ElastomersはNova ChemicalsのこのSingle Site触媒技術をベースに、効率的にEPDMを製造する触媒技術を開発、これをKeltan ACE と名付けた。(ACEは Advanced Catalysis Elastomersの意味)

触媒廃棄物がなく、省エネで、Green technologyであるとしている。新グレードも生産可能となる。

今回Lanxessは、オランダのGeleen のEPDMの50%をこのKeltan ACE技術に転換する。

古河電工は9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して以下の内容の司法取引に合意した。司法省も発表を行った。(DOJ 発表

 1.今後の刑事裁判手続きにおいて、起訴事実を認め罰金200 百万米ドルを支払う。

 2.社員3名が有罪を認め、禁固刑に服する。
     F氏 1年と1日
     N氏 15か月
     U氏 18か月

司法省では、同社は2000年1月以降、他のカルテルメンバーと共謀し、ワイヤーハーネスの価格を操作してきたとしている。
FBIは2010年にデンソー、矢崎総業、東海理化にも
立ち入り検査をしており、今回は触れていないが、今後、決定がなされる。

ーーー

電線業界は各種の電線でのカルテルが摘発されている。

公取委は2010年5月、特別高圧電線や光ファイバーケーブルのカルテルで課徴金納付命令を出した。

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

公取委は2010年11月、建設・電販向け電線カルテルで5社に対し排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

2010/11/30 公取委、建設・電販向け電線カルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令

公取委は2011年7月、VVFケーブル(主に建物内のブレーカーからコンセント等までの屋内配線として使用)の製造業者及び販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

同上 付記

車の配線に使うワイヤハーネスについても、公取委は2010年2月に住友電気工業、古河電気工業、矢崎総業などに立入り調査を行い、調査を進めた。

これについては、日本の公取委に加え、自国の市場にも悪影響を与えた疑いがあると判断して、米、英、豪、カナダ、欧州委員会の5つの海外当局が調査に着手した。

公取委は2011年6月、矢崎総業、住友電工、フジクラの3社に総額約130億円の課徴金納付命令、矢崎とフジクラに排除命令を下す方針を決め、事前通知している。ワイヤハーネスで世界シェアトップ矢崎総業の課徴金は90億円を超えるとされている。
古河電工は立ち入り検査を受けたが、減免制度を利用したとみられ、課徴金納付と排除命令を免除された。

古河電工では、日本では公取委に協力し、減免制度を利用して課徴金と排除命令を免除されたが、米国司法省が実施してきた調査にも全面的に協力した。
適用法令、事実関係等を総合的に勘案した結果、米国司法省との間で司法取引契約を締結することとした。

古河電工では、これに伴い、本年の第2四半期決算で 15,296百万円を特別損失として計上、関係役員の役員報酬を返上する。

最初はダイセル社員(防カビ剤のソルビン酸価格カルテル)

日本在住であったが、今後一切、海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、3ヶ月の禁固刑に服した。

2006/2/16 独禁法改正

もう一人はブリヂストン社員(マリンホース国際カルテル)

現場で逮捕された。有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられた。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

今回は、(司法取引時に3人が米国にいたかどうか不明だが)引き渡しが司法取引の条件となったものと思われる。

 

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米司法省は9月30日、日立製作所と韓国LG電子の合弁会社の日立LGデータストレージが、米国向けの光ディスク装置を巡る不当な価格操作による反トラスト法違反を認め、米当局に2110万ドルの罰金を支払うことで合意したと発表した。
http://www.justice.gov/opa/pr/2011/September/11-at-1291.html

同省はまた、商船三井ロジスティクスも、航空貨物に絡む価格談合で反トラスト法に違反し、罰金184万ドルを支払うと発表した。
http://www.justice.gov/opa/pr/2011/September/11-at-1295.html

米司法当局筋は米メディアなどに対し「日本狙い撃ち」の意図を否定した。

ジェネリック医薬品の世界最大手のイスラエルのTeva Pharmaceutical Industries は9月26日、興和とのJVを9月27日付で解消すると発表した。
興和テバの興和持分を1億5000万ドルで買い取り、興和テバを100%子会社とする。社名は当面そのままとする。

Teva Pharmaceutical は2008年9月、日本で興和との折半出資会社興和テバを設立して、日本市場に本格参入すると発表した。
両社の研究開発、製造、物流、マーケティングの力を合わせ、日本市場で高品質のジェネリック医薬品の供給を行なうとし、
2009年から営業を開始した。

2008/9/26 ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出 

興和テバは2009年12月、滋賀県甲賀市甲賀町の医療用医薬品のジェネリック専業メーカーの大正薬品工業とジェネリック医薬品で戦略的提携を行うことで合意、興和テバは大正薬品工業の株式の73.64%を取得した。

その後、2010年2月に第三者割当増資を引き受け、持株比率を88.28%に引き上げた。

2010年7月には大正薬品の営業部門を興和テバに統合、8月には完全子会社化し、10月には研究開発部門も統合している。

Teva Pharmaceuticalは興和と組んで日本に進出、大正薬品工業もその傘下に収めたが、他方、2011年5月にジェネリック医薬品で国内3位の大洋薬品工業の株式の過半数を取得する合意書を締結した。

Tevaは大洋薬品工業に対して、テバの原薬(API)、バイオシミラー、 その他の製品ポートフォリオならびにグローバルの経営資源を活用出来るようにし、一方、 大洋薬品工業は、国内の販売網、生産設備、研究開発、その他の経営基盤についてTevaと融合を進めていくとした。

Tevaは大洋薬品の創業家などから株式の57%を取得する契約を結び、更に残る株式全部について買収するオファを行い、2011年7月に大洋薬品の全株式を934 百万ドルで取得した。

2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収 

この結果、Tevaの日本での活動は、合弁の興和テバと100%子会社の大洋薬品工業が共存することになり、動向が注目されていた。

今回の買収でTevaは興和テバも100%子会社とした。
両社の扱いについては言及していないが、近い将来、合併させると思われる。

付記

テバは11月17日、大洋薬品と興和テバを2012年半ばに統合すると発表した。
統合後の新社名は「テバ製薬」となる。


興和テバは2010年に、売上高約200百万ドルを達成した。大洋薬品の2010年の売上高は約530百万ドルで、両社合計で日本のジェネリック企業でトップになる。
Tevaでは当初の目標である2015年より早く、日本における売上高10 億ドルを達成することを見込んでいる。

後発薬事業を主力とする企業の売上高ランキング
  (後発薬以外も含む。 単位:億円)
  大洋薬品+興和テバ  694
1 日医工 643
2 沢井製薬 638
3 大洋薬品 514
4 東和薬品 461
5 富士製薬 197
6 シオノケミカル   
7 興和テバ 180
 ソース:日本経済新聞

なお、興和は後発薬部門を一時、手放す格好となる。
同社は新薬、一般用医薬品(大衆薬)に加え、「興和グループとして独自に後発品を手掛ける」としている。
 

付記

興和は2012年3月30日、興和グループの「医薬品ハイブリッド戦略」の一翼を担う会社として、ジェネリック医薬品を販売する新会社「興和ジェネリック」を設立し、営業を開始したと発表した。

ハイブリッド戦略:
「医療用医薬品」、「OTC 医薬品(一般用医薬品)・ヘルスケア品」、「ジェネリック医薬品」の三分野が相互に作用し相乗効果を生む興和グループの医薬品事業戦略

 

 

9月29日、ハーバード大学で第21回イグノーベル賞の授与式が行われた。

化学賞には滋賀医科大学の今井眞講師が率いる研究チームが行った「わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度」が選ばれた。

受賞したのは、
今井真滋賀医科大講師(臨床実験)、
睡眠障害の研究をしている琵琶湖病院の村上純一医師、
田島幸信・香りマーケティング協会理事長、
香りを扱うベンチャー企業のシームスの漆畑直樹社長、種村秀輝取締役、
臭気発生装置を製作したエア・ウォーター防災の後藤秀晃さんと溝口浩一郎さん

警報装置は、3年前に開発した。

一般の火災警報器は警報音がけたたましく鳴るが、耳の不自由な人やお年寄りの場合、寝ている時に音に気付かない恐れがある。
このため、研究グループでは寝ている人を匂いで起こせるよう、嗅覚に働きかける警報装置を作れないかと考え、ツーンとした匂いがする「わさび」に注目した。

そして、「わさび」から刺激の強い匂いの成分を取り出して缶の中に閉じこめ、火災の発生を感知すると霧状に吹き出す仕組みを考案した。
滋賀医科大学で行われた実験では、耳の不自由な人を含む20代から40代の14人が眠っているところに警報装置を作動させたところ、風邪で鼻が詰まっていた男性を除く13人が、匂いが鼻に達してから2分以内に目を覚ましたという。
なかでも、聴覚障害者の場合は、10秒から30秒後に目を覚まし、その効果が確かめられた。

この警報装置はおととしから販売され、一部のろう学校などで導入されている。

滋賀医科大学の今井眞講師は、授賞式のスピーチで「この研究は実験に参加してくれた聴覚障害者の方々からの宝物です。でも間違っても、寿司やそばには使わないでくださいね」と冗談を交えながら受賞の喜びを語った。
(NHK ニュースから)

本年の各賞の受賞者とその内容は以下のとおり。

生物学賞 Darryl Gwynne(カナダ・オーストラリア・米国)とDavid Rentz(オーストラリア)
「オスのタマムシは豪州ビールの小瓶(stubby) をメスと勘違いする」という論文
"Beetles on the Bottle: Male Buprestids Mistake Stubbies for Females (Coleoptera)"
(Journal of the Australian Entomological Society, vol. 22, 1983)
医学賞 オランダ・ベルギー・オーストラリアの共同研究チーム
トイレに行きたくてたまらない時に下した決断が、ものによって良かったり悪かったりするのはどうしてなのか、原因を追究
心理学賞 Karl Halvor Teigen教授(University of Oslo)
「人間はなぜ日常生活においてため息をつくのか」を研究
 "Is a Sigh 'Just a Sigh'?  Sighs as Emotional Signals and Responses to a Difficult Task"
(Scandinavian Journal of Psychology, vol. 49, no. 1, 2008)
生理学賞 英国・オランダ・ハンガリー・オーストリアの共同研究チーム
アカアシガメ (Red-Footed Tortoise Geochelone carbonaria) のあくびを研究し、「あくびは伝染しない」と結論
物理学賞 フランスとオランダの共同研究チーム
円盤投げの選手は目が回るのに、ハンマー投げの選手は目が回らないのはなぜかを研究
公衆安全賞 John Senders (University of Toronto)
幹線道路を運転中にサンバイザーが下がって視界が何度も狭くなった場合の運転能力について、自ら運転して測定
化学賞 日本の研究チーム
火事の際に寝ている人を起こすことができる「わさびのにおい」の理想的な濃度を研究し、「わさび警報装置」を開発
数学賞 学者6人(うち1人は終末を今年の10月21日と予測)
世界が終わる日を予測・断言し、「数学的仮定を立てる際には気を付けた方がよいと世界に知らしめた」
 Dorothy Martin of the USA (1954年に終わると予測)
 Pat Robertson of the USA (1982年)
 Elizabeth Clare Prophet of the USA (1990年)
 Lee Jang Rim of KOREA (1992年)
 Credonia Mwerinde of UGANDA (1999年)
 Harold Camping of the USA (当初1994年、その後、2011年10月21日)
平和賞 リトアニアの首都VilniusのArturas Zuokas市長。
違法駐車の多さに業を煮やし、自ら装甲車を操縦して高級車を押しつぶすパフォーマンスを行った。
文学賞 John Perry(Stanford University )
「Theory of Structured Procrastination(構造化された先延ばしの理論)」を執筆
常に重要な作業をすることによって、それ以上に重要な作業をせずに済ませるテクニック

 

日本人はこれまで、2005年までに11件、2007-2010年に1件ずつ計4件、合計15件の研究でイグ・ノーベル賞を受賞している。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7  2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞

日本人の受賞はこれで16件となる。

 

  

NY証券取引所に上場する中国のソーラーパネルメーカー晶科能源公司(JinkoSolar Holding)の子会社で、浙江省海寧市紅曉村の浙江晶科能源(Zhejiang Jinko Solar) の工場から有害物質が河川に流れ出し、魚の大量死が発生した。

晶科能源公司は浙江晶科能源のほかに、江西省上饒市に江西晶科能源を持つ。
垂直統合メーカーで、高機能シリコンインゴット、ウエハー、電池、単結晶及び多結晶ソーラーパネルを生産、2011年の能力は1.5GW。

浙江晶科能源は旧称は浙江Sun Valley Energy Application Technologyで、2009年に晶科能源が買収した。

9月15日の夜、500人以上の村民が工場の外に集まり、魚の大量死の理由の説明を求めた。

海寧市の環境保護当局によると、工場の排水処理設備は4月以降、検査に合格しておらず、当局は警告を出していたが、工場側は適切な措置を取っていなかった。

抗議に先立ち、村民の一人がインターネットで、最近の村民の健康診断で3300人の村民のうち、6名が白血病、31名が癌と分かったと報じた。

当局は、この情報は不正確で、癌と診断されたのは2010年が4名、2011年が2名であるとし、虚偽の情報を流したとしてこの村民を拘束したが、これが火を付けた形となった。

当局によると、魚の大量死は川水の汚染によるもので、海寧市は汚染の調査と水質のモニターリングを開始した。
フッ素化合物を含む廃棄物が処理されないまま流出したとみられる。

海寧市当局は9月17日に記者会見を行い、以下の発表を行った。

 ・工場から、基準値を超えるフッ素化合物が排出されていたことを確認した。
 ・住民らに暴力を振るった工場の保安要員3人と、工場のパソコン破壊などを行った複数の住民の身柄を拘束した。
 ・廃棄物管理が杜撰だったとして、工場の
操業停止を命じた。
 ・この件による癌の発生率上昇の事実はない。

別途、47万元(約560万円)の罰金を科したと報道されている。

浙江晶科能源は9月19日、トラブルを謝罪し、クリーンアップを約束した。

現地の報道では、事件の背景には、太陽光発電産業の大躍進的発展があり、地元政府が同産業を強力に推進しているため、投資プロジェクトばかりが急がれ、環境アセスメントが操業より後になることも珍しくないという。

地元テレビ局の取材では、晶科能源の工場付近の水源から採取されたフッ化物の濃度は基準値の10倍だったが、業界関係者によると、業界内では10倍は問題視されず、あるメーカーの周囲の河川では基準値の100倍に達しているという。

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