富士フィルムは10月27日、米国の子会社 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies USA. がバイオ医薬品受託製造会社(CMO:Contract Manufacturing Organization)でワクチン製造に強みを持つKalon Biotherapeutics, LLCを買収すると発表した。ワクチンCMO市場に参入し、バイオ医薬品事業をさらに拡大する。
Kalon社の持分所有者であるテキサス州およびテキサス
A&M大学から全持分の49%を取得する。今後、数か月以内に決済手続きを行う。買収金額は公表していない。
また、同社の取締役の過半数を富士フイルムグループから任命する。
今後、売買契約に規定されたマイルストーンに沿って持分比率を100%まで引き上げる。
富士フイルムは、Kalon社がエボラウイルスや炭疽菌などの感染症向けワクチンを安全、安定的に製造できる点を評価し、買収により世界的な事業拡大が見込めると判断した。
Kalon社は2011年9月にTexas A&M University System によって設立された高度な技術と最先端の設備を持つバイオ医薬品CMO会社。
米国保健福祉省傘下の米国生物医学先端研究開発局から、バイオテロや新型インフルエンザのパンデミックなどの非常時に公共の健康を守るための医療手段を開発・ 製造する重要拠点 "Center For Innovation In Advanced Development and Manufacturing" の1つとして指定されている。
テキサス州はテキサス新興技術基金を通して、本拠点の建設・運営を援助している。
ワクチンを(鶏卵ではなく)動物細胞培養法で製造することに強みを持 つ。
ワクチン製造に必要なウイルスを製造工程内にとどめる世界トップレベルの高度な封じ込め技術を保有。
新型インフルエンザウイルスやエボラウイルス、炭疽菌などに対するワクチンを安全かつ安定的に製造することができる。ウイルスの高度な封じ込めが可能な、小型で可動式のモバイルクリーンルームを完備してい る。
同社のワクチン製造施設、National Center for Therapeutics Manufacturing ビルに、最大20基まで設置することが可能で、多品種のワクチンを同時並行で製造することができる。本クリーンルームは、動物細胞培養法によるワクチンはもちろんのこと、抗体医薬品を含むあらゆる種類のバイオ医薬品の製造も可能 。
バイオ医薬品CMO市場は年率約7%の成長が見込まれており、なかでもワクチンの用途が、従来の感染症予防に加え、がんの予防・治療にも広がっていることなどから、ワクチンのCMO市場は、年率10%以上と高い成長が予想されてい る。
富士フイルムは2011年2月に米国Merck & Co.,
Inc. から米、英のバイオ医薬品の受託製造会社2社を買収し、バイオ医薬品CMO事業に参入し、その後、バイオ医薬品を含む医薬品ビジネスで長年の経験を持つ三菱商事と業務提携し、
両社の事業体制を強化してきた。
2011/2/28 富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収 |
富士フイルムは、長年の写真フィルムで培った生産技術や品質管理技術などを両社に投入し、高品質なバイオ医薬品の効率的な生産を図ってい る。
今後、両社が持つ高度な動物細胞・微生物培養技術(Apollo ™、pAVEway ™)、および昆虫細胞培養技術に、Kalon社の強みを組み合わせて、さまざまなワクチン製造ニーズにワンストップで応えられるサービス体制を構築し、バイオ医薬品事業のさらなる拡大を図る。
富士フイルムホールディングスの医療機器を含めたヘルスケア事業の2013年度の売上高は3800億円。
グループの富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®
錠200mg」(一般名 favipiravir)
が、エボラ出血熱の治療に使われている。
同社ではバイオ医薬品の受託製造事業の売上高を2018年度までに300億円規模に拡大したい考え。
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富士フィルムは10月30日、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の新株予約権の全てを年内に行使することを決定したと発表した。
これにより持株比率は50.33%になり、連結子会社となる。
2010年に国内で再生医療製品事業を展開するJ-TEC
と資本提携を行い、41.29%の株式を取得した。
富士フイルムが開発した生体適合性に優れるリコンビナントペプチド(RCP)を活用した再生医療製品の開発をJ-TEC に委託し製品化を進めている。
2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携
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