ユーロ圏諸国の財務相らとIMFは5月25日未明、ギリシャ支援協議で合意に達した。
ギリシャは2015年8月、最大860億ユーロの支援でEUと合意、2015年10月までに計260億ユーロを融資することとなり、まず8月の国債償還用に130億ドルが融資され、11月には100億ユーロをギリシャの銀行救済基金へ移し、ギリシャ大手銀行への資金注入を正式承認した。 合計214億ユーロの融資を実行している。
しかし、その後はギリシャ政府の財政再建努力を見極めるため、融資を中断しており、支援継続にはギリシャが更なる改革を行うことが条件となっていた。
ギリシャは7月に多額の債務返済を控え、支援が滞れば財政危機が再燃する恐れもあった。
ギリシャ国会は5月9日未明、EUによる金融支援継続の前提となる財政改革法案を与党の賛成多数で可決した。
債権団の要求に沿って、一部の年金支給額を減らし、複数の年金基金を合併し、社会保障費を増額し、中高所得者層の税率を上げた。
更にギリシャ政府は、2015年7月20日に13%から23%に引き上げたばかりの付加価値税の税率を24%に引き上げるほか、燃料やタバコ、アルコール類の増税などを柱とする新たな財政改革案を議会に提出し、議会は5月22日、賛成153、反対145で可決した。
ギリシャ国民の不満は募っており、デモが頻発している。
これを受け、ユーロ圏諸国の財務相らとIMFは5月25日未明、ギリシャ支援協議で合意に達した。
ギリシャは金融支援第2弾を受けるために必要なことを成し遂げたと発表し、支援策の第1次評価を数カ月遅れで完了した。
ユーロ圏財務相会合議長(オランダ財務相)は「ギリシャが昨年夏に約束した一連の改革を承認することで完全に意見が一致した」と述べた。
ユーロ圏19カ国が正式に追加支援策を承認すれば、ギリシャ向けに総額103億ユーロの融資が数回に分けて実施される。最初の融資75億ユーロは早ければ6月にも実行される。
会合では債務軽減策も議論し、現行の第三次金融支援プログラムが終了する2018年時点で、返済期間の延長など抜本的債務軽減策を判断することで合意した。
IMF のラガルド専務理事は2015年7月8日の講演で、EUに対し、「ギリシャのケースでは、財政持続のために債務の再編が必要だ」と述べ、借金の減免や返済期限の延期を促している。
IMFは本年5月23日、ギリシャ財政の再建には債務負担軽減が不可欠だとする報告書を発表した。
ギリシャ財政が危機的状況を脱するには「無条件での債務軽減策」が重要だと指摘、EUなどがギリシャ向け融資の満期、返済猶予期間を延長し、少なくとも2040年まで金利を年1.5%以下に固定する必要があると分析した。これに対し、2017年に総選挙があるドイツは、ギリシャへの更なる譲歩を避けたいとの思惑でこれに反対し、対立した。
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2015年1月の選挙で反緊縮を訴え、緊縮推進・EUとの合意支持の政権連立与党を破った急進左派連合(チプラス党首)は同じ反緊縮の独立ギリシャ人党と連立政府を樹立した。
しかし、チプラス首相はEUの金融支援と引き換えに、公約に反して緊縮策を受け入れた。
合意された財政改革内容
黒字目標 2015〜18年に各1%、2%、3%、3.5%の黒字化 歳入 付加価値税 増税(13→23%)、離島優遇税撤廃 法人税 2016年から増税(26→28%) 歳出 雇用/年金 早期退職制度縮小/年金受給開始年齢引き上げ(→67歳) 年金削減(GDPの1%分) 防衛費 2015年 1億ユーロ、16年 2億ユーロ削減 預金保護 破綻時預金保護上限設定(10万ユーロ) 民営化基金 国有財産(500億ユーロ)の民営化などによる売却
このため、与党内で造反の動きが続出し、2015年8月14日の財政改革法案(EU側からの金融支援の条件)では与党から多数の反対が出た。
野党は、「ギリシャ共産党」と「黄金の夜明け」(合計 32人)を除くと、緊縮派のため全員が賛成し、法案は成立した。
ユーロ圏財務相会合は同日、ギリシャに対し3年間で最大860億ユーロの新たな金融支援を行うことで正式に合意した。
ドイツなど関係国の議会での承認手続きを経て、「欧州安定メカニズム(ESM)」から、まずは10月までに計260億ユーロを融資する予定。
8月20日に欧州中央銀行が保有する約32億ユーロのギリシャ国債の償還期限を迎えることから、先行して130億ユーロを同日までに融資、残りの130億ユーロのうち、100億ユーロは銀行の資本増強にあてる計画。
チプラス首相は8月20日夜にテレビを通じて演説し、辞任して、総選挙を行うと表明した。改めて信任を問うもの。
9月20日に投票、開票が行われ、チプラス首相は信任された。
2015/9/24 ギリシャ総選挙でチプラス首相信任
ギリシャ議会は11月19日、債権団の要求に応じ、住宅ローン滞納者の保護基準引き下げなどを柱とする財政構造改革法案を可決した。
ユーロ圏はESMの管理下にある100億ユーロをギリシャの銀行救済基金へ移し、11月23日にギリシャ大手銀行への資金注入を正式承認した。
国有財産の売却の一環として、ギリシャは2016年4月8日、アテネ近郊にある同国最大のピレウス港の売買契約を中国海運大手の中国遠洋運輸集団(China COSCO Holding)との間で締結した。
2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却
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