前回の記事で塩野義製薬の 経口投与治療薬と経鼻ワクチンについて触れた。
経口投与治療薬(飲み薬)について新しい発表があった。
年内に薬事法申請し、来年1~3月に実用化の予定
年度内(2022年3月末まで)に100万人分を生産
海外供給も視野に国際共同治験も計画しており、年内に米FDA、欧州医薬品庁(EMA)と協議に入る。
経鼻ワクチンの詳細は次の通り。
塩野義製薬と東京大学発の創薬ベンチャーである㈱HanaVaxは2021年7月9日、カチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する新規経鼻ワクチンの開発に関するライセンス契約を締結した。
塩野義は、cCHP技術を活用したCOVID-19経鼻ワクチンの全世界における独占的研究・開発・製造・流通ならびに販売権を取得する。HanaVax社は、本契約の締結に伴う一時金、今後の開発の進展に応じたマイルストン、ならびに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを塩野義から受領する。
COVID-19のような呼吸器感染症に対するワクチンは、全身系の免疫に加えて、病原体の侵入門戸である呼吸器粘膜に「粘膜免疫」を誘導できる経鼻ワクチンがもっとも有効なワクチンと考えられている。
cCHPはHanaVax社の独自のデリバリー技術で、鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができる。また、医療環境が整っていない新興国では注射による投与が困難な場合があり、医療アクセスの観点から、どのような所でも使いやすい製剤として経鼻ワクチンの必要性が高まっている。
ワクチン抗原をナノゲル内に封入し、経鼻投与を介して粘膜に導入することで、全身系および粘膜系両方の免疫を効果的に誘導することが期待される。
塩野義製薬とHanaVax社は、画期的な次世代経鼻ワクチンの提供を通じて、COVID-19の脅威から人々を解放するため、感染症領域における塩野義製薬の強みと、粘膜免疫学のパイオニアであるHanaVax社の強みを融合し、本ワクチンの研究開発を加速して 行くと述べている。
発表にはないが、ワクチンそのものは塩野義が開発を進めているワクチンと思われる。
塩野義のグループ会社のUMNファーマと国立感染症研究所、九州大学(現 京都大学)が共有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発している。開発と並行して、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ㈱とそのグループ会社である㈱UNIGENと提携し、生産体制の立ち上げを進めている。
遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に、アジュバント(ワクチンの効果を高める物質)を添加して投与される。
BEVS (Baculovirus Expression Vector System ) 技術は、目的とするタンパクの遺伝子情報を組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させ、昆虫細胞内で目的タンパクを発現させる技術である。
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塩野義製薬と㈱HanaVaxは2020年9月30日に、HanaVax社が開発中のカチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)を用いた新規経鼻肺炎球菌ワクチンに関するライセンス契約を締結した。
肺炎球菌は、特に高齢者や小児等に対して、重篤な肺炎のほか、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす。肺炎球菌には90種を超える血清型が報告されているが、既存ワクチンの効果は一部の血清型のみに限られる。
本ワクチンは、広範な抗原として期待されるPspA抗原を使うもので、HanaVax社の独自技術であるカチオン化ナノゲルデリバリーシステムを用いて鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができる。
PspA(Pneumococcal Surface Protein A)は菌体表層に存在するタンパク質で、肺炎球菌が共通して有する病原因子の一つ。肺炎球菌はPspAの働きによって、宿主免疫による排除から免れていると考えられており、広範な血清型に有効性を示す肺炎球菌抗原として期待されている。
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カチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)はいろいろな治療薬、ワクチンに期待できる。
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