2023年2月アーカイブ

三菱ケミカルグループは2月24日、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、今後の詳細な実行計画を明らかにした。

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三菱ケミカルホールディングスは2021年12月1日、新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定した。

経営戦略における最重要ポイントとして下記を挙げた。

  1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ
  2.分離・再編し、独立化を進める事業
  3.グループ全体におけるコスト構造改革
  4.戦略遂行のためのスリムな組織
  5.戦略的なキャピタル・アロケーション


3つの評価基準(市場の魅力度、グループの強み、カーボンニュートラル)に基づき注力事業を選別した。

 1) 最重要戦略市場

①エレクトロニクス
 EV:軽量化材料、車載電池材料、Wide Band Gap半導体
 デジタル:半導体材料、高速通信関係

②ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品:機能性食品材料、ニュートリション、長期保存材料


 2) 強みを有する市場は下記の通り。

①強固な機能性素材事業群
 
 ケミカル:MMA、機能性モノマー

 ポリマー:バイオプラスチック、EVOH、機能性樹脂

 フィルム:光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム

 モールディングマテリアル:炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ

②産業ガス

 3)残る石油化学事業及び炭素事業については、分離・再編し、独立化を進めることで、国内基礎化学産業の再編を主導する。

2024年3月期をめどに分離する。他社との事業統合などを検討する。両事業とも、採算が低く、温暖化ガスを大量に排出する。業界も伸びていない。

2021/12/2 三菱ケミカルホールディングス、石油化学事業及び炭素事業を分離・再編へ

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三菱ケミカルグループは2月24日、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、今後の詳細な実行計画を明らかにした。

同社のビジネスの成長とパフォーマンスの主要ドライバー

機能商品
すべての製品ラインアップをグローバル展開
・ マーケット志向型の組織に転換
産業ガス
世界4極で成長拡大
競争力さらなる強化
ヘルスケア
日米を中心とした重点製品の価値最大化
開発・販売におけるパートナーシップ強化とアライアンス構築

メディカゴ社の事業撤退など、一部事業の再編
効率的な研究開発投資

MMA
世界ナンバーワンの地位を確立
アルファ展開拡大


産業ガスとMMAは既に一定市場を押さえているが、それそれで国際競争が熾烈な機能商品で「
すべての製品ラインアップをグローバル展開 」するのは難しいのではないか。(どれを選択するかが難しいが。)

ヘルスケアをどのように展開していくかが問題だろう。

田辺三菱製薬は2月3日、Medicago Inc.の全事業から撤退することを決定したと発表した。

植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社として注目されたが、量産できず、撤退を決めた。減損損失480億円を計上する。

2023/2/4 田辺三菱製薬、新型コロナワクチンから撤退、カナダ子会社を精算へ 

・現在の同社の利益のほとんどは過去の技術供与のライセンス収入である。

この内の過半を占める多発性硬化症治療剤「ジレニア」 (年間500億円程度の収益)については、特許上の紛争で3年間、収益計上を取りやめていた。

今回、仲裁廷より同社に有利な仲裁判断を受領し、遡及して合計1,260億円の利益を計上する。

2023/12/15 国際商業会議所の仲裁判断で田辺三菱製薬のロイヤリティ収入が復旧

しかし、これは前身の吉富製薬は1997年9月にライセンスしたもので、いつまでも続かない。

・2020年9月中間決算では、田辺三菱製薬が買収したイスラエルのNeuroDerm Ltd. が開発を進めているパーキンソン病の治療薬の仕掛研究開発費つい845億円減損損失を計上している。

(なお、開発は継続しており、2023年1月10日に、事前に設定した重要な評価項目を達成するトップライン結果を取得したと発表した。)

2020/11/7 三菱ケミカルHD、医薬品で減損損失計上

・医薬品は多額の投資をして開発に成功し、登録が取れ、その上で他社との競争に打ち勝って初めて利益が計上できる。買収には数兆円単位の資金が必要である。実質的にこれからのスタートで、ヘルスケアを事業の柱の一つにするのは簡単ではない。


成長とサステナビリティの期待に合致しない事業からはエグジットする。

石化事業については当初案の分離・再編から、JV化に変更した。ギルソン社長は、「日本の主要石化プレーヤーとの統合のほか、新規株式公開や株式売却も選択肢で、中期的なゴールは石化・炭素事業を完全に切り離すこと」と述べた。

日本の石化事業が国際競争力を持たないのは明らかである。

但し日本の市場の特殊性(需要家が在庫を持たないカンバン方式、需要に合わせたグレード開発等)から輸入品が市場を押さえることにはならない。工場数を減らして能力を国内需要相当まで落とせば、収益は期待できる。

雇用の問題もあり、工場が減らないのが問題で、恐らく当初の売却案が潰れたのもこれが原因ではないかと思われる。

買い手は商権が欲しいのであって工場が欲しいのではない。

三菱の場合、鹿島と水島を持つほか、ポリエチレンでは旧日本ポリオレフィン(川崎、大分)とのJV、ポリプロの場合はチッソ(千葉、四日市)とのJVであり、簡単ではない。

さらなるJV化は解決に結びつくであろうか。




エレベーター大手のフジテックは2月24日、臨時株主総会を開いた。

香港の投資ファンド、Oasis Managementが提案していた5人の社外取締役の解任議案のうち、取締役会議長など3人の解任が可決された。Oasisが提案していた新たな6人の選任議案は4人が可決された。会社が提案していた2人の社外取締役の追加選任は否決された。

Oasis Managementは2022年5月18日時点でフジテック株式の9.92%を所有していたが、11月29日の大量保有報告書の変更報告書で17.26%になっている。

株主提案によって社外取締役が解任されるのは極めて異例。経営陣の半数近くが入れ替わることになり、経営の混乱は避けられない。

付記

フジテックは3月27日、取締役会議長にオアシス推薦の社外取締役の海野薫氏が就任したと発表した。

3月28日、創業家出身の内山高一会長を解任した。解任を決議した取締役会は全9人で、オアシス側の取締役は4人。会社側の取締役の一部が賛成に回った結果、過半数に達したとみられる。

オアシスは内山氏に権限乱用があったと指摘。一方、内山氏は同日、オアシス側に名誉毀損されたとして、損害賠償を求める訴訟を起こす意向を明らかにした。


付記

遠藤社外取締役が3月30日付けで辞任した。会社側推薦で、49.77%のギリギリで解任が否決され、留任したが、オアシス側が辞任を求めていた。


Oasisは2022年にフジテックと創業家(内山家)の間に疑わしい取引があると主張し、創業家の内山高一前社長の再任反対を呼びかけた。内山氏が個人の利益のために権限を濫用していると指摘し、独自の調査に基づく資料を公開、ほかの株主の賛同を得ようと動いており、その結果が株主総会で明らかになるはずだった。

フジテックは1948年に富士輸送機工業として内山正太郎氏により設立された。富士電気よりエレベータやエスカレータにつかうモーターなどの供給を受けた。
1974年に現在のフジテックに改称した。


Oasisは、内山社長が自身の保有する法人を通じて、フジテックでの地位を利用し、すべての利害関係者に不利益をもたらす個人的利益を得ているのではないかという合理的な疑いを有しているとし、下記の例を挙げた。

- フジテックが内山家の私的利用のために超高級マンションを取得した
- 内山社長が保有する法人の不動産投資の失敗を補填するために、フジテックが買い取った
- フジテックは内山家が保有する法人の抱える債務に保証を付けたほか、内山社長が保有する法人に11年間にわたり
   担保なしにフジテックの手許現金の2割にも及ぶ、莫大な額の現金を貸付けていた

- フジテックは内山家及び内山社長本人が保有する法人から、その保有不動産を賃借
- フジテックが入札や株主への開示なしに非公開の会社の株式を内山社長が保有する法人に売却
- 内山社長が自宅の庭の手入れにフジテック社員を利用

フジテック側は、内山氏及びその関係会社との間での関連当事者取引その他行為について、企業統治上の問題があるとの主張がなされているが、当該主張は全くあたらない又は事実誤認に基づく主張であると認識している。いずれも所定の法令・手続等に従ってなされた適法かつ適切な取引及び行為であり、企業統治上も問題はないものと考えていると主張していた。

しかし、フジテックは定時総会の1時間前に内山氏の取締役再任議案を取り下げた。これについて同社は、取締役会が第三者委員会による追加調査及び検証を実施することを決議しており、その調査結果の報告を受けるまでの間、取締役に就任しないものとし、当該調査の結果、問題のないことが確認された際には、改めて、取締役就任の是非を株主に諮るべきと考えたためとした。

「問題ない」と断言しながら、第三者委員会による追加調査、検証を実施するとした。その後、現在に至るまで、第三者委員会の設置・人選、調査検証の途中経過など一切発表していない。本当に設置したのだろうか。

そのうえで、総会後に内山氏を取締役でない会長に任命した。

同社では今回 の臨時総会前に、同氏を会長とした理由として下記を挙げた。 (上場企業で、こんな理由が通るだろうか?)



①当社事業の特徴として長期間にわたるプロジェクトが多く、経営者として最前線で活動を行っていた内山氏がいなくなることでの当社事業及び業績への影響を最小限にする
②社長就任以来20年間、会社を牽引してきた内山氏が退くことへの取引先・従業員の不安は極めて大きく、当社事業へも大きな影響があると考えられたため
会長としての役割
取締役・執行役員ではなく、当然ながら取締役会・執行役員会には参加せず、現経営へも関与なし
執行サイドが必要に応じ、従前の経験・知見に基づく事業に関連したアドバイスを依頼

Oasisはこの人事が株主への背信行為であり、「社外取締役は経営陣の悪質な行為を見逃した」と主張し、12月に社外取締役の交代を求めて臨時総会の招集を請求した。

米議決権行使助言会社Institutional Shareholder Services は6人全員の解任に賛成を推奨していた。現取締役会が創業家である内山家の強い影響力を克服する能力がなく、取締役会の総点検が必要だなどとしている。

引頭社外取締役は2月20日にガバナンスに関する考え方が会社とは大きく異なるた辞任した。会社側は 臨時総会前には単に「自己都合」としていたが、本人からの申し出を受け、総会後に修正した。解任提案からは除外された。 
会社批判での辞任と、自己都合辞任とは全く異なる。臨時総会での投票を勘案して辞任理由を誤魔化したと見られてもおかしくない。    

定時総会と今回の臨時総会の人事案は下記の通り。

2022/6/23 定時総会

2022/6/1  2022/6/23
第5号議案 取締役10名選任の件 議案の一部撤回 総会 総会後
社内

内山高一(留任)
岡田隆夫(留任)
浅野隆史(留任)
土畑雅志(留任)
内山高一(撤回)
岡田隆夫
浅野隆史
土畑雅志

岡田隆

浅野隆
土畑雅
内山高一会長(非取締役)
社外 杉田伸樹(留任)
山添 茂(留任)
遠藤邦夫(留任)
引頭麻美(留任)
三品和広(新任)
大石歌織(新任)



同左



同左


2023/2/24 臨時総会  赤字は解任、辞任、非選任
       

2022/6/23総会選任  2023/2/9 臨時株主総会招集 2023/2/24 臨時総会
会社提案 株主提案 会社側 OASIS側
社内

岡田隆夫社長
浅野隆史専務

土畑雅志専務
岡田隆夫
浅野隆史
土畑雅志
社外
杉田伸樹
山添 茂
遠藤邦夫
引頭麻美
三品和広
大石歌織
(追加選任)
岩﨑 二郎
海部 美知
(解任)
杉田伸樹
山添 茂
遠藤邦夫
引頭麻美
 
(2/20 辞任)
三品和広
大石歌織
(選任)
浅見 明彦
Torsten Gessner
Clark Graninger
海野 薫
Ryan Wilson
嶋田 亜子
遠藤邦夫
(後、辞任)

三品和広
Torsten Gessner
Clark Graninger
海野 薫
嶋田 亜子


解任された杉田取締役は立命館大特別任用教授、山添取締役(
取締役会議長)は元丸紅副会長、大石取締役は弁護士、辞任した引頭取締役は大和総研。

OASIS側推薦で選任されたのは、エレベーター業界出身のTorsten Gessner、金融業界の経験が長いClark Graninger、弁護士の海野薫、知財やグローバルM&Aに詳しい嶋田亜子の4氏。

最終的に取締役は、会社側提案が5名(うち社内が3名)、OASIS側提案が4名となる。

下記の通り、株主提案の否決は数%の差(0.23%ポイント~3.41%ポイント)で、全てが通る可能性もあった。


なお、OASISからは、人事に加え、4つの提案をしており、下記の通りとなった。会社側はすべて反対していた。

社外取締役の個人別基本報酬額:基本報酬を1,250万円とする。可決

社外取締役に対する事後交付型株式報酬付与 可決

社外取締役に対する株価条件付 事後交付型株式報酬付与 否決

社内取締役に対する株価条件付 事後交付型株式報酬の付与 否決

LG Energy Solutionは2月22日、Ford Motorと合弁でトルコに電池工場を建設すると発表した。

当初、FordはLGの競争相手の韓国の SK onと合弁工場を建設すると発表していた。Ford Motor とSK on、トルコ財閥の Koc Holdingの3社による合弁として2022年3月に基本合意した。

その後は資金調達の不調や物価高などで3社の協議が進まず、韓国メディアによると、JV計画を白紙撤回する見通しとなっていた。SK Onは「基本合意後の協議は長期化している。ただ(白紙撤回の)最終決定はしていない」とし、交渉が難航している状況は認めていた。

関係者によると、電池分野で後発のSKが電池の歩留まり向上に苦戦しており、Fordが提携先をLGに入れ替えたとされる。LGがSKの最重要顧客を奪った格好で、SKの電池戦略にとって痛手となる。

SK on とFordの合弁の米国の電気車用バッテリー生産会社「Blue Oval SK」が2022年7月に公式発足した。

テネシー州Stanton にBlue Oval Cityを建設する。電動ピックアップトラック「F-150 Lightning Electric Truck」の組立工場と、新JVのBlueOvalSKのリチウムイオン電池工場及び主要サプライヤーの拠点とリサイクル施設が建設される。投資額は56億ドル。

ケンタッキー州Glendale には58億ドルを投じてBlueOvalSK Battery Parkを建設する。新JVのBlueOvalSKが2つの電池工場をつくる。

電池工場の年間能力はテネシー工場が43GWh、ケンタッキー工場が86GWhで、合計129GWhとなる。フル稼働時にEV約220万台のバッテリーを供給できる。

これに加え、トルコでのJVを検討していた。

2023/1/11 韓国SK On のトルコの電池JV計画 白紙撤回へ 


Ford は2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン(LFP) 電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。

韓国のSK InnovationとのJVではなく、Fordの単独事業で、中国の大手電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

フォード、ミシガンにEV用電池工場建設 中国CATLが技術支援


Ford のSK離れが目立つ。

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Ford Motor、LG Energy Solution、Koç Holding の3社は2月21日、新しいJV設立のMOUを締結した。

トルコのAnkara近郊のBaşkent工業ゾーンにに欧州最大級の自動車用電池工場を建設する。

本年後半に起工し、2026年に最低25GWh でスタート、最終的に 45GWhに拡大する。

FordとLG Energy Solution、Koç Holdingとの関係は古い。

LG Energy Solutionは米国ではGMとの50/50 JVのUltium Cells LLCを持つが、単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、Ford Motor(やGM、Chrysler など)に供給している。

LG Chem は2018年11月にポーランドのヴロツワフ(Wroclaw)工場の増設に571百万ドルを投じることを決め、ポーランドの能力を年間10万個から30万個に引き上げた。最近ではここからFord Mustang Mach-E 、E-Transit 向けに電池を供給している。

Ford は トルコに Koc Holding との合弁会社Ford Otosanを持ち(60年以上の歴史)、主に商用車を年間45万台ほど生産している。


LG Energy Solutionの生産基地は下図の通り。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

Stellantis N.V.は2021年10月18日、LG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。

StellantisとLG Energy Solutionは2022年3月23日、本契約を締結した。

立地:カナダ オンタリオ州 Windsor (デトロイト市に隣接)
能力:45 gigawatt hours (GWh)
投資額:41億米ドル
予定:2024年第1四半期生産開始

2022/5/27 Stellantis、米国での2つのEV向け電池合弁会社の内容が確定

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韓国統計庁が3月22日に発表した韓国の2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数、暫定値)は0.78となった。

統計を取り始めた1970年以降で最低で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(1.59)の半分にも満たない。2023年には0.68人まで下がると予想されている。

韓国政府が対策に多額の予算を投じてきたにもかかわらず少子化に歯止めがかからず、昨年の出生数は25万人弱と、20年前の半分に落ち込んだ。

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
出生数(千人) 471.3 484.6 436.5 435.4 438.4 406.2 357.8 326.8 302.7 272.3 260.6 249.0
合計特殊出生率 1.24 1.3 1.19 1.21 1.24 1.17 1.05 0.98 0.92 0.84 0.81 0.78

「異次元の少子化対策」の検討を開始した日本は2021年が1.30である。出生数が近年大幅に減少している中国でも2020年が同じく1.30である。それに対して韓国は2022年に0.78に下がった。

韓国は2018年に既に1を割っており、今後も更に下がると予想されている。しかも効果的な対策を打っているとも見られない。将来についてどう考えているのだろうか。

付記 厚生労働省は2月28日、人口動態統計の速報値を公表した。2022年の出生数は過去最少の79万9728人で、統計を取り始めた1899年以降、初めて80万人を割った。

参考


日本の労働政策研究・研修機構は韓国の状況を下記の通り分析している。

 少子化の主な原因として指摘されているのは「結婚してから子どもを産む」という風潮である。

結婚せずに子どもを産む家庭の割合は2018年時点で韓国は2.2%、日本は2.3%と、それぞれOECD加盟国の最下位、下から2番目という極めて低い水準だった。

韓国の場合、このような認識は政策にもつながっており、非婚家庭に対する出産支援政策などは他国に比べて劣悪な状況である。

 日本と韓国に共通する要因もあるが、韓国特有の事情もある。

第一の事情は、韓国の就職難とそれによる就職年齢の上昇。
男性に徴兵制度があるため、男性の社会進出は他国に比べて遅れるが、これに加えて就職難が重なったことで、さらに結婚年齢が遅れる状況となった

第二の事情は、急激に上昇した結婚費用の増加である。これが結婚年齢を遅らせる主な原因として指摘されている。特に男性にその負担が大きかった。

結婚した顧客の結婚費用を見ると、住宅を用意するのに約2,200万円、嫁入り道具を購入するのに約130万円、結婚式および新婚旅行などに約250万円を支出しており、費用の平均60%を男性が負担していた。

このように、結婚に必要な初期費用が急激に増える中で、十分な結婚費を貯蓄し終える時期がさらに遅くなり、これが結婚年齢を遅らせるのに大きな影響を及ぼしたと解釈される。同時に、政府が不動産価格の急騰を抑制するために継続的に実施した不動産関連の貸出制限強化政策 等も、新婚夫婦の住宅準備を難しくした要因となった可能性がある。

就職と結婚に成功したとしても、仕事と育児の両立が不可能な文化による出産放棄、女性がやるべきものとされる家事労働の強い性別役割分担意識、教育の競争激化による育児費用の増加などが少子化の加速要因として指摘されている。

このように多様かつ複合的な要因によって、韓国の出生率は世界で最も低くなったと考えられる。


(中国)

なお、中国の2022年末の人口が前年比85万人減の14億1175万人となったが、合計特殊出生率は2020年が1.3で、今後大幅に向上する公算は小さく、今後も人口減少が続く可能性がある。

出生数の継続的な減少によるものであり、これは主に2つの要因の影響を受ける。

第一に、出産可能年齢の女性の数は減少し続けた。

2021年には、15歳から49歳までの出産可能年齢の女性が前年比で約500万人少なくなり、21歳から35歳までの出産可能年齢の女性が約300万人少なくなった。

第二に、出生率は低下し続けている。出産の概念の変化と初婚・出産年齢の遅れ(10年で約2年)の影響を受けて、出産可能年齢の女性の合計特殊出生率は2019年の1.70から2020年は1.30と急降下し、世界各国の水準を大きく下回ったが、2021年も低下し続ける。 (2020年の急減は異常だが、下のグラフのとおり、それまでの横這いが不自然で、過去分の修正を一気に行ったのではと思われる。)

地方政府は2021年以降、税控除や産休の延長、住宅補助など出産奨励策を実施しているが、これらの措置で長期的な出生率低下傾向に歯止めをかけることはできないとみられている。

2022/1/20 中国の出生率、建国以来最低、2021年1,062万人で5年連続減




なお、欧米では低迷していた出生率がプラスに転じている。

韓国、中国、日本のアジア3国が下降を続けている。人口の減少は経済停滞につながる。

各国の合計特殊出生率(日経)


付記  日本の出生率の低い理由  2012/12/17 ブログ

政策研究大学大学院の松谷明彦・名誉教授によると、日本の今後の少子高齢化と人口減少の割合は他の諸国よりもはるかに大きい。

これは過去の2つの政策(当時は止むを得なかった)による人口構造の歪みによるもので、対策はない。

第一は戦前(1920~40年前半)の「産めよ増やせよ」政策で、出生数が急増している。
この年代は現在70歳~90歳で、今後人口急減の原因となる。

第二は1948年の優生保護法である。
1947~49年に復員や外地からの引き揚げ等で第一次ベビーブームが起こった。
食料不足のなか、餓死を避けるため優生保護法がつくられた。
産児制限により、年間270万人の出生数が160万人にまで減少した。

この結果、次の世代、その次の世代の出生数が激減することとなった。



    * 特殊出生率は一人の女性が一生に産む子供の平均数

松谷名誉教授は、現行の年金制度などは継続不可能で、少子高齢化・人口減を前提にした別の社会保障政策を検討すべきだとする。

例えば、100年債を出して、国有地に100年住宅を建設、住宅コストを大幅に下げるなど。

LG Chemは2月17日、ノースカロライナ州に本社を置く鉱山会社Piedmont Lithiumとの間で計20万トン規模のリチウム精鉱"SC6" (含有量6%のリチウムを含むリシア輝石) 購買契約を締結した発表した。

Piedmont LithiumはカナダQuebecの鉱山から出るリチウム精鉱を今年3四半期から年間5万トンずつ4年間、LG化学に供給する。 これはリチウム約3万トンを抽出できる量で、高性能電気自動車約50万台相当の規模である。

LG ChemはPiedmont Lithiumと7500万ドル規模の持分投資契約も締結し、Piedmont Lithium社の持分約6%を確保した。 LG Chemはケベック鉱山のリチウム精鉱の他にも、Piedmont Lithiumが米国で生産する水酸化リチウム物量年1万トンに対する優先交渉権を得るなど、原材料供給の安定性を一層高めることになった。

Piedmont Lithiumは2021年にSayona Quebecに25%出資した。

Sayona Quebec は2021年8月に、北米で唯一商業生産が可能なリチウム鉱山であるTansim Lithium Project を運営していたNorth American Lithiumを買収した。2019年以降操業を停止している同鉱山及び建設中の鉱石処理施設、Sayona Miningが近郊に保有するAuthier リチウム鉱山を統合することで、同州におけるバッテリー向けリチウム製造ハブの構築を目指している。

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Piedmont Lithiumは、米ノースカロライナ州とテネシー州でリチウム鉱山開発およびリチウム生産プロジェクトを進めており、カナダのケベック州、ガーナのケープコースト州で開発中のリチウム鉱山開発会社にも持分を持っている。

Quebec とGhana 持分出資で、それぞれ引取権を持つ。

ガーナでは、英Atlantic Lithiumが南部のCape CoastのEwoyaa鉱山で開発に着手しており、Piedmont Lithiumは出資契約を締結している。

Tennessee Lithiumは世界クラスの水酸化リチウム工場で、年産30千トンを予定している。現在の米国での生産量を倍増する。

Carolina計画では水酸化リチウムを年間30千トン生産する計画。


リチウム精鉱はリチウム鉱石を加工して濃縮した高純度鉱物で、バッテリーの原料である水酸化リチウムを抽出できる。

LG Chemはこれを北米の主要顧客に供給する陽極材の生産に使用する。

韓国電池素材メーカーの中で北米産リチウムを確保したのはLG化学が初めてで、北米産リチウム精鉱を使えば、米政府のインフレ削減法(IRA)による税制優遇基準を満たす。

新法では、低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること 3,750ドル



しかし、新車購入者のほかに、インフレ抑制法の条項45Xでは、上記条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

米国商務省Bureau of Industry and Security (BIS) は2月10日の公告で、中国軍の近代化の努力、特に飛行船と気球を含む航空宇宙プログラムに関するものを支える中国企業6社を米製品輸出禁止リストである「Entity List」に追加することを発表した。

Entity Listは輸出管理法(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

米軍は2月4日、アメリカ本土を横断していた中国の気球を南部サウスカロライナ州の沖合の上空で撃墜し、FBIが海中などから回収した残骸の分析を進めてい る。バイデン政権は、この気球は中国軍の偵察用で、軍と直接関係がある企業が製造に関わっているとして、6社をEntity Listに追加した。

米紙Washington Post(電子版)は2月14日、米軍戦闘機が4日に撃墜した中国の偵察気球について、中国南部・海南島から打ち上げられ、直後から米軍と情報機関が太平洋を飛行する気球を約1週間にわたり追跡し続けていたと報じた。気球は中国空軍によるもので、太平洋地域の米軍基地の偵察が目的だったとみられ、海南島の基地から離陸後、太平洋を東方へ飛行していたが、風の影響で予定の針路から外れ、途中で北方に進路を変えた。その後米アラスカ州のアリューシャン列島上空を通過しカナダにいったん入った後、米本土を横断し、4日に南部サウスカロライナ州沖で撃墜された。

中国政府はこの気球を気象観測用の民間飛行船と主張している。


なお、米国家安全保障会議の戦略広報調整官は14日の記者会見で、米軍戦闘機が10日から3日連続で撃墜した飛行物体について「商業か研究機関に関連した無害なものとみられる」と述べ、物体が中国の偵察気球だったことを示す兆候は現時点でないとの見方を示した。

発表では、「中国の高高度気球の使用は、我々の主権を侵害し、米国の国家安全保障を脅かしている。今日の行動は、米国の国家安全保障と主権を侵害しようとする団体が、米国の技術へのアクセスを遮断されることを明確にしている」と述べている。

リストに追加された企業は次の通りで、いずれも中国軍が偵察や情報収集で使用する気球や飛行船の製造など、航空宇宙計画の分野で中国軍を支援しているとしている。

北京南京航空宇宙技術(Beijing Nanjiang Aerospace Technology Co., Ltd.)
中国電子科技集団公司第48研究所(China Electronics Technology Group Corporation 48th Research Institute)
鷹門航空科技集団(Eagles Men Aviation Science and Technology Group Co., Ltd. )
東莞凌空遙感科技(Dongguan Lingkong Remote Sensing Technology Co., Ltd.)
廣州天海翔航空科技(Guangzhou Tian-Hai-Xiang Aviation Technology Co., Ltd.)
山西鷹門航空科技集団(Shanxi Eagles Men Aviation Science and Technology Group Co., Ltd. )

北京南京航空宇宙技術は、宇宙永久停泊飛行体、往復再利用飛行体および宇宙輸送ツールを開発する会社で、2015年に中国で初めて、高さおよそ10万メートルまでの宇宙空間に近い高度を飛行できる軍民共用の飛行船を北京市内の大学などと共同で開発した。当時の報道では、飛行船には地上と通信したり、地上を観測したりする機能が備わっていて、離着陸や飛行を遠隔で操作できるという。

中国電子科技集団公司第48研究所 は、公式ホームページによると、マイクロ電子素材・太陽電池・光電子材料の研究開発および生産のための国家級専門機関で、中国内の主要半導体装備の供給と太陽電池の設計および加工技術を保有している国家ハイテク産業化モデル工程基地という。

鷹門航空科技集団(EMAST) は偵察気球を開発した企業とみられる。2004年に北京で設立され、北京航空宇宙大学の武哲教授が代表者になっている。南方日報は武教授が2019年に成層圏である高度2万メートル上空に無人気球を飛ばして世界一周に成功したと報道していた。同社が知能型ドローンの製造、衛星航法サービス、通信装備開発などのプロジェクトを手掛けているとされる。

東莞凌空遥感科技は2019年1月に設立され、設立目的は飛行船遠隔探知技術とイメージセンサーの開発、高分子フィルム素材の研究などとなっている。同社も武教授が監事に入っている。

廣州天海翔航空科技は軍用無人機を開発している。(中国は偵察気球ではなく気象観測用民間飛行船だと主張している。) 関連企業の製品目録を調べると気球・無人機から太陽光・イメージセンサー・半導体まで網羅されている。


山西鷹門航空科技集団はEMASTが100%株式を所有する子会社である。

(以上、各社概要は韓国の中央日報日本語版2023.02.16 による)


今回の指定を受け、中国商務部の報道官は2月14日、コメントを発表した。

米国は中国企業6社が『中国軍の飛行船など航空宇宙事業への支援を行った』として、この6社を輸出規制対象の『エンティティリスト』に加えた。中国はこれに対し断固たる反対を表明する 。

長期間にわたり、米国は国家安全保障の概念を拡大し、輸出規制措置を乱用し、他国の企業を抑圧・抑制し、正常な経済貿易往来を人為的に妨害し、企業の合法的権利に重大な損害を与え、グローバルサプライチェーン・産業チェーンの安全と安定を破壊し、世界経済の回復と発展を阻害してきた。

中国は、米国が中国企業に対する理不尽な抑圧を停止することを望むとともに、今後必要な措置を取って、中国企業の合法的権利を断固守り抜く 。

昨年5月以降、米国は本土で大量の高空気球を飛行させて(気球が)持続して全世界を回っており、中国関連部署の承認なく、新疆・チベットなどを含めて少なくとも10回余り中国領空を不法飛行した。

Ford は2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン(LFP) 電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。


同社は現在、韓国のSK InnovationとのJVのBlueOvalSKでテネシー州とケンタッキー州に3つの電池工場を建設している。

Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

3つの電池工場については設立を交渉中のFord とSK InnovationのJVのBlueOvalSK が建設、運営する。

テネシー州Stanton にBlue Oval Cityを建設する。電動ピックアップトラック「F-150 Lightning Electric Truck」の組立工場と、新JVのBlueOvalSKのリチウムイオン電池工場及び主要サプライヤーの拠点とリサイクル施設が建設される。投資額は56億ドル。

ケンタッキー州Glendale には58億ドルを投じてBlueOvalSK Battery Parkを建設する。新JVのBlueOvalSKが2つの電池工場をつくる。


今回はFordの単独事業で、中国の大手電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

FordとCATLは2022年7月21日、北米、欧州、中国での電池供給に関するGlobal Strategic Cooperation で合意した。CATLは2023年にFordの北米でのMustang Mach-E向け、2024年初めの同じくF-150 Lightning 向けにLFP電池を供給する。

新工場は、当初の生産能力がEV年間40万台分に相当する35ギガワット時で、2026年に稼働する予定。Fordはこの工場を含め、これまで北米と欧州に4カ所の電池製造工場建設を表明している。

リン酸鉄リチウムイオン電池はエネルギー密度の低さなど制約もあるが、Fordが工場建設を推進している背景には、CATLの技術によるコスト低下や再充電速度の向上などを通じて大口購入の法人など多くの顧客を取り込めるとの判断がある。

ーーー

Tesla は2021年10月20日の発表文で、同社が、航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だと述べた。

同社は中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

CATLのLFP電池は正極側にリチウムや鉄、リンを使い、長寿命で、最高800℃までの耐熱性を有し、安全性と信頼性に優れていると言われる。火災や振動、衝突など様々な危険な状況を想定した300項目以上の試験で検証しているという。

Teslaは2023年1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。小型電気自動車(EV)200万台分に相当する100ギガワット時の年間生産能力を持つ電池工場 と、同社初の商用車であるEVトラック「Semi」の量産工場も新設する。

Teslaの米国製EVには、これまでパナソニック製の円筒型セルが採用されてきたが、今回はTeslaがLFP電池を自製すると見られる。

2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資

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Fordの米国内の電池生産は、昨年成立したインフレ抑制法(IRA)に基づく補助金を得ることもできる。

新法では、低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること 3,750ドル

しかし、新車購入者のほかに、インフレ抑制法の条項45Xでは、上記条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

Teslaはこのメリットを強調しているが(パナソニックとのJVの場合は35ドルを折半することになる)、Fordも、今回の工場建設決定に際してはIRAが非常に重要な要素になったとし、この補助金が2026年までのEV事業における目標としている利益率8%の達成に役立つとの見方を示している。

田辺三菱製薬は同社の多発性硬化症治療剤「ジレニア」のNovartis Pharma AGへの技術ライセンス契約に関し、2019年2月15日にNovartis Pharmaより仲裁の申立てを受け、国際商業会議所において仲裁手続きを継続していたが、2月13日に仲裁廷より同社に有利な仲裁判断を受領したと発表した。

Novartisは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、Novartisにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めていた。

仲裁廷は今般、Novartisの主張を全面的に否定する判断を下した。争点となったライセンス契約のロイヤリティ支払い義務を定める規定は全部有効であるとの判断がなされた。

田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っていたが、IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つに「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」があり、Novartisが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため、田辺三菱製薬は売上収益から除外してきた。 

同社では上記の仲裁判断により、2023年3月期第4四半期で一括して売上収益として認識する。

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田辺三菱製薬は多発性硬化症治療剤「ジレニア」をNovartis(スイス)に技術供与し、そのロイヤリティ収入が同社の収益の柱となっていた。

多発性硬化症治療剤「ジレニア」(一般名:フィンゴリモド塩酸塩)田辺三菱製薬の前身の吉富製薬京都大学の藤多哲朗教授、台糖(現「三井製糖」)との共同研究から見出された世界初のスフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬である。

吉富製薬は1997年9月にNovartis Pharma AGとの間でライセンス契約を締結し、全世界における開発権(日本については共同開発権)および販売権をNovartisに対し許諾した。

田辺三菱製薬は、吉富製薬の本件契約上の地位を承継し、ロイヤリティの支払いを受けていた。

2019年2月、Novartisから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、Novartisを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

Novartisは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、Novartisにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めていた。

田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っている。

本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われた。

IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、Novartisが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため、田辺三菱製薬は売上収益から除外してきた。 

もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤


三菱ケミカルホールディングス
田辺三菱製薬普通株式の全てを取得し、田辺三菱製薬は、2020/2/27に上場廃止となった。

田辺三菱製薬コア営業損益の大半がロイヤリティ収益であり、その激減で業績が低迷していた。

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア うち
ロイヤリティ
非コア 合計 中間 期末
2019/3 4,248 558 631 -55 503 504 374 28 28
2020/3 3,798 191 174 -252 -61 -65 1
非公表
2021/3 3,778 210 159 -795 -585 -577 -46,102
2022/3 3,859 -30 133 -127 -157 非公表 -102
増減 81 -240 -26 668 428    
2023/3予 4,095 180 非公表 0 180 非公表  

ロイヤリティ収益の過年度分の一括認識で本年度の利益は急増する。

業績への影響については本仲裁判断の詳細な内容を精査の上、今後、影響が明らかになった時点で発表する。)


付記  コア営業利益を1,260億円 上方修正した。


なお、田辺三菱製薬では最近、新型コロナワクチンからの撤退を発表
、減損損失が480億円であることを明らかにしている。

  2023/2/4 田辺三菱製薬、新型コロナワクチンから撤退、カナダ子会社を精算へ




日本産業パートナーズ(JIP)などの連合が2月9日、東芝に買収の最終提案を提出した。JIPに対し、銀行団が計1兆4千億円の融資を約束する文書を出し、資金調達にめどがついた。

海外投資家ら「物言う株主」の関係者を含む東芝の経営陣が提案を受け入れるかどうかが今後の焦点となる。

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東芝は2022年4月21日の取締役会で、パートナー候補となりうる潜在的な投資家やスポンサーから、企業価値向上に向けた戦略的選択肢(非公開化を含む)に関する提案を募集することを決議した。

東芝は7月19日の取締役会で、応募した10件のなかから第2次入札プロセスに招聘する複数の本パートナー候補を選定した。非公開化に関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。

報道では、下記の各社が選ばれたとされた。

1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)

2. 米大手投資ファンド Bain Capital

東芝の筆頭株主で旧村上ファンド出身者がシンガポールで設立した Effissimo Capital Managementは、Bain Capitalが東芝株を公開買い付けした場合、保有株をすべて応募する方針であることが、Effissimoが3月31日に関東財務局へ提出した変更報告書で明らかになった。

2022/4/5 Bain Capital が東芝の買収を検討

3. 欧州拠点のCVC Capital Partners

4. カナダのBrookfield 唯一、東芝の上場維持を前提とした提案をしている。

東芝は改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱えており、買収には国の重点審査が不可欠である。このため、Bain CapitalやCVC Capital Partnersの単独での買収は難しい。日本企業による買収に融資または優先株による出資で参加するのではないかとみられる。

2022/7/22 東芝再編、4陣営に絞り込み? 


9月下旬に官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が共同で2次入札に進んだ日本産業パートナーズ(JIP)との連携を解消する方針であることがわかった。東芝への出資戦略をめぐり意見に隔たりが生じた。

日本産業パートナーズ(JIP)は国内企業の出資を募り2次入札に臨む方針で、オリックスなどの10社超に対し、東芝への出資に参加するよう打診し、日本企業を交えた連合体での落札を目指している。

これに対し、産業革新投資機構(JIC)は、事業会社の参加に消極的で、国内外のファンドとの連携を模索しており、同じく2次入札に進んでいる米Bain Capital と連合を組む方向で調整しているという。


東芝が国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に優先権を与えたことが10月11日に報じられた。今後、買収価格などの詳細な条件の協議を始める。

2022/10/13 東芝再編の状況 



東芝の経営再建を巡り、優先交渉権を得た国内ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が、日本企業十数社から買収資金として計約1兆円の出資の意向を取り付け東芝に提示したことが11月7日に分かった。

足元の株価をもとにした2兆2000億円程度で全株を買い取って非公開化することを軸とした正式提案を出したとされる。

関係者の話では、参画する企業は下記のとおりとされる。

オリックスが出資と融資で最大3000億円程度
中部電力が1000億円弱を出資
JIP自身も1000億円を出資
ロームの投資額は最大で3000億円規模と参加企業で最大級  半導体の原材料調達や生産での協業を探る
スズキも数百億円を出資  東芝から車載リチウムイオン電池を調達
大成建設も出資する見通し

日本企業全体で十数社が合計1兆円を出資
各社は東芝への出資を通じ、連携による事業拡大や技術の維持につなげる。

ただし、JIPは買収資金のうちの融資について銀行団からの確約を得られておらず、銀行が融資する意思を示したことを証明する「コミットメントレター」は期限の11月7日までに提出できなかった。

ーーー

今回、今回の融資を取りまとめる三井住友銀行が2月9日未明までにJIPに対し、総額1兆2000億円の融資を確約する「コミットメントレター」を送った。これとは別に東芝が決められた範囲で運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も設ける。

東洋経済によると、融資の内訳は次のとおり。合計1兆4000億円のうち、三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円
三井住友信託(準主力) 2,200億円
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円
あおぞら銀行 450億円
合計 14,000億円 100%


あおぞら銀行は2013年2月に、オペレーショナル・リスク管理など金融機関の内部統制をサポートするソリューション分野で東芝ソリューションと本格的な協業を開始している。


各行は2022年12月までに融資の方針を固めていたが、財務制限条項(コベナンツ)の条件などをめぐってJIPなどと調整を続けていた。

財務制限条項とは、金融機関が債務者に対して貸付を行う際に付与する条件のひとつで、その契約において、債務者の財政状況が定めた基準条件を下まわった場合に、債務者は期限の利益を喪失し、金融機関に対して即座に貸付金の返済を行うことと定められている。 金融機関にとっては、融資先の倒産による貸し倒れリスクを予め軽減するための対策 である。

財務制限条項には、「経常利益が2期連続して赤字にならないこと」といった損益に関するものと、「純資産が前期比75%を下回らないこと」といった 財産に関するものなどがある。

最終的な条件は明らかになっていないが、「将来、財務が悪化した場合には、東芝が事業売却を迫られる可能性はある」という。業績不振事業を売却することや、銀行からの役員を受け入れること、経営監視のために投資家の代表者を含む委員会を設置するよう、求めているという。


JIPは出資金1兆円、銀行融資1兆2000億円(融資枠2000億円を除く)の合計2兆2000億円から、買収後の東芝の運転資金などは除き、買収に充てる額としては2兆円規模を想定している。

東芝の株価は再編への期待を織り込んで高値圏にあり、足元の東芝の時価総額は1.99兆円だから、ほとんどプレミアムはつかないことになる。

東芝はJIP案について社外取締役7人で構成する特別委員会で詳細を議論していた が、提案を受け入れるかどうか検討を急ぎ、最終的には12人いる取締役会で判断する。

東芝の業績は悪化しており、JIP案より好条件の提案が短期間で出てくるかは不透明 である。

ジャパンディスプレイ(JDI)は2月10日、筆頭株主のいちごトラストの支援をうけ、借入金1016億円を圧縮し、ゼロにすると発表した。

加えて、いちごを引受先とする新株予約権を発行し、最大1735億円を調達する。


財務体質を強化するのと同時に成長投資の原資を確保する。

2026年に向けた基本方針は下記の通り。

 https://www.j-display.com/ir/news/pdf/20230210_j_2235353_02.pdf

 
①いちごトラストから新規に200億円を借入れ、筆頭株主のINCJ(元 産業革新機構)からの同額の借入金を弁済する。

②上記①の実行後にINCJの保有するA種優先株式の全ての無償取得、消却

③これらの実行後に、INCJ からの債務536.8億円をいちごトラストに譲渡

(①~③で、INCJ は貸付金736.8億円を実質的にいちごを通じて返済を受け、見返りにINCJの優先株を無償で放棄する。)

④その後、いちごトラストの貸付金債権合計1016.8億円のうち、150億円を債権放棄 (残る債権866.9億円)

その後、いちごトラストの貸付金債権合計 868億円を資の目的とするDES(Debt Equity Swap):普通株19.3億株と交換

(いちごは200億円を追加貸付した上で、INCJの貸付金を肩代わりし、すべての貸付金を放棄して、いちごの普通株19.3億株を無償で受け取る。)

この取引のすべてが完了した時点で、いちごトラストの議決権割合は現状の49.28%から91.57%になる。その場合、東京証券取引所の上場維持基準に抵触する可能性があり、JDIのCEOは「どこかのタイミングでいちごの保有株を減らす方法を考えている」と説明した。

まとめると、借入金、株式は下記のとおりとなる。

借入金 株式
INCJ いちご 合計 INCJ いちご 合計
優先株 普通株 優先株 普通株 新株予約 普通株
2022/12/末 736.8 280 1016.8億円 4.5億株 2.1億株 29.7億株 4.5億株 6.3億株 47.2億株
借入/返済 -200 200
譲渡 -536.8 536.8 -4.5億株 -4.5億株
債権放棄 -150
(小計) (0) (866.8) 866.5億円
転換 -6.6億株 +6.6億株
Debt/Equity Swap -866.8 0 +19.3億株 +19.3億株
予約 +38.5億株 +38.5億株
残高 0 0 0 0 2.1億株 23.1億株 30.4億株 38.5億株 6.3億株 100.4億株

ーーーーーーー

経緯は次の通り。

経営再建中のジャパンディスプレイは2019年8月9日、4-6月期の決算を発表した。

顧客の在庫調整や米中貿易摩擦の影響を受けた需要減により売上高が減少したほか、白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上した。

この結果、連結純損益は833億円の赤字となり、債務超過となった。

2019/8/14 JDIが債務超過に


ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年12月12日、
独立系投資顧問のいちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書を締結したと発表した。

いちごアセットは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した

社名の「いちご」は千利休が説いた茶人の心構え「一期一会」から採った。経営理念は、 「日本を世界一豊かに。その未来へ心を尽くす一期一会の『いちご』」である。

Callon 社長の投資スタンスは長期保有が原則とされる。

2019/12/19 ジャパンディスプレイ、いちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書締結 


JDIは2020年7月21日、いちごアセットからの追加出資受け入れで最終契約を締結したと発表した。

  2020/7/21最終契約
払い込み 金額 転換 株数
B種優先株 2020/3 504億円 @50 10.08億株
D種優先株 2020/8/28 50億円 @50 1.00億株
C種優先株        
E種優先株 2020/10~
2024/6
554億円 @24 23.08億株
合計   1108億円 @32.44 34.16億株


2020/7/24 JDI、いちごアセットと追加出資受け入れの最終契約締結

ジャパンディスプレイ(JDI) は2022年1月12日、資本金を2152億円から1億円に減資すると発表した。

減資の2151億円と資本準備金の247億円、その他資本剰余金の一部で累積赤字の2882億円を一掃する。

資本金を1億円とすることで、税務上は「中小企業」(資本金1億円以下)と位置づけられ、軽減税率適用、年800万円以下の交際費枠等々、いろいろのメリットを得る。

資本勘定の異動は次の通り(百万円)。
  処分前 処分 処分後
資本金 215,223 -215,123 100
資本準備金 24,660 -24,660 0
利益剰余金 -288,193 288,193 0
その他資本剰余金 73,310 -48,410 24,900
合計 25,000 0 25,000

 
2022/1/14 JDI、減資で累損一掃


同社の損益推移は次の通り。

最近は、世界的なインフレ高進による民生機器の需要減ウクライナ情勢や中国のコロナウイルス対策に起因するサプライチェーンの混半導体等の部材不足の継部材エネルギー輸送費の高騰等によ厳しい経営環境となっている。

スマートフォン向けなどの需要が鈍く、在庫調整が長引いている。


ジャパンディスプレイ(JDI) は2022年1月12日、資本金を2152億円から1億円に減資すると発表した。

減資の2151億円と資本準備金の247億円、その他資本剰余金の一部で累積赤字の2882億円を一掃する。

2022/1/14 JDI、減資で累損一掃

原子力規制委員会は2月8日の定例会合で、原発の60年超運転に向けた新たな規制制度案を正式決定するかを議論したが、石渡明委員が「安全側への改変とは言えない」と述べて反対し、決定を見送った。来週、定例会で改めて議論する。


付記

原子力規制委員会は2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。

石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。


原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。

現行ルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。

新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。

福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。

2023/1/4 原発運転期間延長 


この時点では、石渡明委員を含め、全員が賛成した。

一般からの意見公募を経て、現行ルールを定めた原子炉等規制法の改正案について通常国会への提出を目指した。

今回の定例会合では、国民からの意見公募(パブリックコメント)の結果を受けて、最終案を議論した。

意見公募に寄せられた2016件の大半は制度の見直しに反対する内容だったが、規制委事務局は規制案の内容を変更することなく、案を正式決定するかどうかを定例会に諮った。


委員5人のうち、山中伸介委員長ら4人は案に賛成した。

しかし、石渡委員は反対を表明した。

「今回の改変は科学的な新知見があって変えるものではない。運転期間を法律から落とすことになり、安全側への改変とは言えない。われわれが自ら進んで法改正する必要はない」 と述べた。

現在、審査中の10基は電力会社の説明が不十分で長引いているケースがほとんど。地震津波対策の審査を担当する石渡委員は「いたずらに審査を延ばしているのではなく、残念ながら時間がかかっている。審査が長引くほど、その分だけ運転期間が延び、将来的により高経年化(老朽化)した原発が動くことになる」と指摘した。

山中委員長が「どういう運転期間になっても規制ができるようにする仕組みだ」などと説明したが、石渡委員は「私の考えは述べた通り」と引かなかった。

定例会後の記者会見で山中委員長は「(石渡委員に)誤解もあると思う。基準を満たさなければ運転を認めない。運転期間が延びたら危ないということにはならない」、「反対意見があること自体は問題とは思わない。委員の間で議論を深めたい」と話した。


原子力規制委員会設置法は委員会の議事について「出席者の過半数」で決めると規定する。過去には多数決をとって決定した例がある。

しかし、山中委員長は「私はこれまで多数決を一度もとったことがない。時間的余裕があれば議論を尽くしたい」と強調、改めて石渡氏と議論する考えを示した。


政府は昨年12月、原発の再稼働審査や司法判断などで停止した期間を運転年数から除外し、実質的に60年超の運転を可能にする方針を決定、関連法の改正案を今国会に提出することを目指している。



付記

2月10日、「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

①エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

②GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

GX実現に向けた基本方針

GX実現に向けた基本方針の概要

GX実現に向けた基本方針参考資料

原子力については、下記の通り。

 原子力の活用

安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化する。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。

厳格な安全審査を前提に、40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う。

経済産業省は2月7日、下請け企業との価格交渉でコスト上昇による転嫁に後ろ向きな企業を初めて実名で公表した。

エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、2021年9月より、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定。この「月間」おいて、価格交渉・価格転嫁を促進するため、広報や講習会、業界団体を通じた価格転嫁の要請等を実施している。

また、各「月間」終了後には、多数の中小企業に対して、主な取引先との価格交渉・価格転嫁の状況についてのフォローアップ調査を実施し、価格転嫁率や業界ごとの結果、順位付け等の結果をとりまとめるとともに、状況の芳しくない親事業者に対しては下請中小企業振興法に基づき、大臣名での指導・助言を実施している。


今回発表した企業リストは、価格交渉促進月間(2022年9月)のフォローアップ調査において、10 社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業について、受注側中小企業からの
「②価格交渉の回答状況」
「③価格転嫁の回答状況」について点数付けし、整理してリスト化したもの。

各社ごとに、受注側中小企業からの回答を点数化し、その平均値を求め、点数付けし、「ア」、「イ」、「ウ」、「エ」の評価を行った。

ア: 回答の平均が7点以上
イ: 回答の平均が7点未満、4点以上
回答の平均が4点未満、0点以上
回答の平均が0点未満


調査対象全社の評価は下記に記載。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/dl/202209list.pdf


このうち、「エ」(回答の平均が0点未満
)があるのは次の2社。

価格交渉 価格転嫁
日本郵便
不二越


両方が「ウ」(
回答の平均が4点未満、0点以上)の企業は次の通り。

五洋建設、三井住友建設、東芝プラントシステム、オカムラ、NTN、関西電力、一条工務店、ダイフク、前田道路、オリックス自動車、凸版印刷、日立グローバルライフソリューションズ、佐川急便、関電工 日本郵便輸送、中電工

日本郵便は本社と子会社の日本郵便輸送が挙がっている。

中小企業の価格転嫁は政府が目指す物価上昇率を超える賃上げにも影響があることなどから、経産省は評価が良くなかった約30社を指導、助言し、是正を促していくとしてい る。


調査結果の公表を受け、日本郵便は「非常に厳しいものであるが、真摯に受け止めたい」、不二越は「適正な価格転嫁の実現は重要であると認識しており、取引先とのコミュニケーションを一層強化していきたい」とそれぞれコメントした。


逆に両方が最も高い「ア」の評価を得たのは、次の7社:

住友化学、東洋紡、日本製鉄、村田製作所、王子製紙、旭化成、グローリー㈱

ーーー

なお、公正取引委員会は2022年12月27日、原燃料費や人件費などコスト上昇分を下請け企業などとの取引価格に反映しなかった企業として佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社の社名を公表した。

2022/12/28  公取委、価格転嫁拒否で企業名公表




1月25、26日に開かれた衆院本会議の代表質問で、自民、日本維新の会、国民民主の3党がそろって、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式」の導入に言及した。

N分N乗方式」はフランスで1946年に始まった税制で、フランスが先の大戦後、戦争で減った人口を増やそうと導入した。英語ではfamily-quotient system(家族係数システム)という。

日本の所得税が個人の所得に課税するのに対し、世帯単位なのが特徴で、世帯の総所得を家族の人数で割り出した「所得」に課税するため、子どもが多いほど税率は低くなる。

フランスでは、世帯所得を家族の係数である「N」で割り、家族係数1あたりの所得税額を算出する。この所得税額に再び「N」をかけ、世帯全体の所得税額を算出する。「N分N乗」

子供は2人までは各0.5、3人目以降は各1で計算する。

「N」は夫婦だけなら2,子供1人なら2.5(2+0.5)、2人なら3(2+0.5+0.5)、子ども3人なら4(2+0.5+0.5+1) になる。

子供が多いほど税金が安くなり、少子化対策に有効とされる。

1月25日の衆院本会議で自民党の茂木幹事長はN分N乗方式を「画期的な税制」と指摘した。26日には日本維新の会の馬場代表が 「日本は人口危機という有事に直面している。個人ごとの課税方式を改め、N分N乗方式を導入すべきだ」と主張、国民民主党の玉木代表も「政府として検討すべきだ」と述べた。

今後、岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」を巡り、この方式の導入が与野党の政策連携のテーマとなる可能性があるが、首相官邸は自民党側から「事前の説明を受けていない」としており、党主導の発信に警戒感も広がっているとされる。


国民民主党は、日本の税制のもとで年収1200万円の世帯(片働き及び共稼ぎ、夫婦と子供2人:N=3)を例に所得税を試算している。

片働きの場合 112万円
共稼ぎの場合  66万円(夫61万円、妻5万円)

これに対し、N分N乗では48万円となり、現方式での片働きと比べ64万円、共稼ぎと比べ18万円だけ税金が安くなる。

因みに、子供が3人になった場合(N=4)、税金は38万円となり、子供1人増で税金が10万円減ることになる。
(実際には子供が3人になった場合、扶養家族控除が増えるため、現在の税金もN分N乗ケースの計算も異なる。)

計算の詳細は下記の通り。 課税所得の計算は省略(社会保険料は年収の15%)

例1 例2 例3 N分N乗 N=3 例4 N=4
合計
年収 1200万円 900万円 300万円 1200万円 1200万円 1200万円
課税所得 762万円 517万円 109万円 626万円 762/3=254万円 762/4=190.5万円
税金 税率 (23%) (20%) (5%) (10%) (5%)
計算 175.3 103.4 5.45 25.4 9.5
控除 -63.6 -42.8 0 -9.75 0
合計 112万円 61万円 5万円 66万円 16万円x348万円 9.5万円x438万円
例3との差 64万円                   18万円 
例4との差 74万円 28万円


税額計算

課税所得 税率 控除額
~1,949千円 5% ゼロ
1,950~3,299千円 10% 97,500円
3,300~6,949千円 20% 427,500円
6,950~8,999千円 23% 636,000円
9,000~17,999千円 33% 1,536,000円
18,000~39,999千円 40% 2,796,000円
40,000千円以上 45% 4,796,000円

「年収の壁」問題

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岸田文雄首相が国会答弁で、配偶者が働く時間を抑える一因とされる「年収の壁」への対応策を検討する考えを示した。

現行では、配偶者を持つパート労働者は年収106万円または130万円を超えると扶養から外れ、社会保険料の負担が生じる。手取りが減ってしまうため、特にパート主婦は働きたくても、上限額を超えないように就労調整を余儀なくされてきた。  

施政方針演説で「年収の壁」の見直しを表明した岸田首相に対し、自民党の平議員が予算委で、「働き控えが起き、人手不足が進む。時給を上げても、さらに時間を削るという"無間地獄"になっている」などと指摘。働き手を確保するため、「壁」にブチ当たった際に所得が減らないよう、社会保険料分に対し時限的な給付金の支給を提案した。  

共働き世代が増える中、サラリーマンの妻が『年収の壁』を超えない限り扶養の恩恵を受けている現行制度は、"専業主婦の優遇"と批判されてきた。このため、一時的な給付金にしろ、『壁』となっている収入上限を取っ払うにしろ、さらに優遇するのかという批判が噴出しかねない。

社会保険に関しては、年収106万円(月収8.8万円)以上の人は従業員数や週の労働時間などに応じて保険料を負担しなければならない『106万円の壁』もある。現行は従業員数の条件が『101人以上』だが、2024年10月から『51人以上』に変更される予定である。

政府が社会保険料を広く集めようとする一方、これについてのみ見直すのは問題である。

ーーー

現在の「年収の壁」には下記がある。

以下、所得が給与収入のみとする。実際には課税所得で決まるため、他の所得や控除項目があれば、それも加算される。

1.103万円の壁  

 所得が給与収入のみ場合、所得税と住民税が発生する。(住民税は場所により基礎控除が変わる。)

 給与所得控除が55万円、基礎控除が48万円あるため、103万円までは課税されない。これを超えると課税される。
 また、多くの企業で配偶者手当がなくなる。 地方税は、東京都の場合108万円まで課税されない。

所得税 地方税
給与収入 103 108
給与所得控除 -55 -65
課税対象所得 48 43
基礎控除 -48 -43
課税所得 0 0

 (基礎控除は東京ケース)

2.106万円の壁

 年収106万円(月収が8.8万円)を超える人で下記の条件にすべて該当する人は、社会保険への加入義務が発生する。

雇用期間見込みが1年以上
所定労働時間が1週間あたり20時間以上
社員が501人以上(
来年10月から『51人以上』に変更される。
学生でない。

付記 月額88,000円は契約時の所定内賃金で決まり、残業代、賞与、通勤手当などは含まない。年末に残業を減らしても関係ない。

3.130万円の壁(60歳以上または障がい者の場合は「年間収入180万円」)

 「配偶者」と「3親等内の親族」は年収が130万円未満までは、「扶養者の社会保険」の被扶養者となれる。 (この場合は総年収)

 年収が130万円を超える場合、社会保険の扶養から外れ るため、「106万円の壁」から外れたとしても、自ら社会保険へ加入が必要となる。


4.配偶者控除

(1) 配偶者控除が段階的に縮小  「150万円の壁」

    所得48万円までは配偶者控除、それ以上は配偶者特別控除となる。

    配偶者特別控除は、所得95万円(収入150万円)までは配偶者控除と同額である。
    これを超えると、所得に応じ段階的に減額となる。

    なお、配偶者控除、配偶者特別控除とも、納税者本人の所得により、控除額が変わる。
     納税者所得が1000万円以上は控除はなくなる。

(2) 配偶者特別控除がなくなる   「201万円の壁」

    所得133万円(収入201万円)以上は配偶者特別控除は対象外となる。

給与のみの収入の場合、所得=給与収入 マイナス 給与所得控除

給与収入 給与所得控除
~1,625千円 550千円
~1,800千円 収入金額 x 40% - 100千円
~3,600千円 収入金額 x 30%+80千円
~6,600千円 収入金額 x 20%+440千円
~8,500千円 収入金額 x 10%+1,100千円
8,500千円~ 1,950千円



付記 

本人の社会保険(健康保険)、年金保険の加入条件は下記の通り。保険料支払いは必要だが、将来年金が受け取れるうえ、被扶養者の場合は受け取れない傷病手当金や出産手当金なども受け取れる。


  被扶養者から外れた場合で、この条件を満たさない場合は、加入できない。(健康保険については、国民健康保険に加入できる。)

FRBは2月1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、Federal Fund金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ4.50~4.75%とした。決定は全会一致。

2022年6月から4回連続で0.75%の引き上げを続けたが、前回の2022年12月には0.50%の引き上げとし、今回は0.25%と、引き上げ幅を縮小した。

同時に公表した声明文では政策金利の先行きについて「継続的な引き上げが適切」とした前回までの表現を維持し、利上げの停止時期がまだ先であることを示唆した。

 
2018/12 2.25%~2.50% +0.25%
2019/7

2.00%~2.25%

-0.25%
2019/9

1.75%~2.00%

-0.25%
2019/10

1.50%~1.75%

-0.25%
2020/3

1.00%~1.25%

-0.50%
2020/3

0.00%~0.25%

-1.00%
2022/3 0.25%~0.50% +0.25%
2022/5 0.75%~1.00% +0.50%
2022/6 1.50%~1.75% +0.75%
2022/7 2.25%~2.50% +0.75%
2022/9 3.00%~3.25% +0.75%
2022/11 3.75%~4.00% +0.75%
2022/12 4.25%~4.50% +0.50%
2023/2 4.50%~4.75% +0.25%


FRBは声明で「最近の指標では消費と生産が緩やかに増加していることが示されている。ここ数カ月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率はやや鈍化したが、依然として高い水準にある」と述べた。

FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指しており、これらの目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.5〜4.75%に引き上げることを決定したとしている。

なお、EUと英国も同時点で利上げを決定した。

ーーー

2022年12月の米国の物価は下図の通り。かなり下がってきたが、FRBが目的とする2.0%程度には遠い。             

           

2023年1月の雇用統計では、非農業部門の雇用は51.7万人と大幅に増えた。

1月の失業率は3.4%で、これは1969/5以来の低水準である。(最近では、2019/9、11、12月、2020/2月、2022/7、9、12月3.5%を記録)

これまでのところ、金利引き上げは雇用に悪影響を与えてはいない。



問題は、2022年3月にFRBが金利を引き上げて以来、物価は順調に下がってきているが、更に金利を上げていって、物価が目標の2%まで下がるかどうかである。

本ブログでは、下がらないだろうとの見方を2つ挙げた。

2023/1/5 米国のインフレの見通し

1つは「粘着インフレ論」である。

粘着価格(Sticky-price)CPI は、家賃や外食料金、公共交通、医療関係など、あまり変化しないもの(平均して4.3ヶ月以上は変わらない)で、但し、いったん上昇し始めるとなかなか下がらない品目を集めた物価指標である。

逆に、弾力価格(Flexible-price)CPIはガソリン価格や新車価格、生鮮食品など振れやすい品目を集めた物価指標である。

粘着価格(Sticky-price)CPI は長く2%台で推移していたが、2021/6に3%台、2022/1に4%台に上がり、その後上がり続けて12月は6.7%まで上昇、1982年の不況期以来、40年ぶりの高さとなった。

もう1つは、渡辺務 東京大学大学院経済学研究科教授の「世界インフレの謎」に示されている。

今回のインフレは、ロシアのウクライナ侵攻の前に起こった。原因は新型コロナの蔓延であると推測する。

これによる3つの事態で供給不足が起こったとみる。これにウクライナ問題が加わった。上記の粘着価格の上昇はこれによるものと思われる。

特に米国では、コロナ下で退職したまま、コロナが終焉に向かっても職探しをしない非労働力人口が目立つ。コロナ前から400万人ほど増えたまま、働かない米国人はざっと1億人に上る。

米国には定年制はなく、完全に自分の意思による非就業である。

参考



FRBは物価を2%まで下げるため、当面、金利の引き上げを続けようとしている。しかし、供給不足により物価が上がっているとすると、金利を上げても物価は下がらない。

逆に、金利引き上げで供給増のための投資が止まり、物価が下がらず、不況になる恐れもある。

田辺三菱製薬のカナダ子会社 Medicago Inc.は、植物由来ウイルス様粒子(VLP)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したカナダのバイオ医薬品会社であり、2022 年2月には新型コロナウイルス感染症の予防を適応として開発してきた VLP ワクチン「COVIFENZ®」がカナダにおいて承認され、商用規模生産の移行に向け準備を進めてきた。

しかし、田辺三菱製薬は2月3日、Medicago Inc.の全事業から撤退することを決定したと発表した。

新型コロナウイルス感染症を取り巻く環境は大きく変化しており、現状の新型コロナウイルスワクチンの世界的な需要及び市場環境と、商用規模生産の移行への同社の課題を包括的に検討した結果、COVIFENZ®の商用化を断念するという結論に至り、精算を進める。

付記 三菱ケミカルHDは2月7日の四半期決算報告で減損損失が480億円であることを発表した。

同社のワクチン製造設備及び同社の事業に関連するのれんについて帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失△48,029百万円を計上しました

経緯は下記の通り。

なお、Medicagoは現在、田辺三菱製薬の100% 子会社となっている。

田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダのMedicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化

その後の報道では最近の出資比率は田辺三菱が79%、Philip Morrisが21%とされていた。

WHOの関係者は2022年3月16日、Medicagoが開発した植物由来の新型コロナウイルスワクチンは、同社がタバコメーカーのPhilip Morrisからの出資(Philip Morris 21%)を受けていることを理由に、WHOの緊急使用承認を「受けられない可能性が非常に高い」と発表した。

タバコや武器会社との提携に関するWHOの「非常に厳しい」ポリシーに抵触する恐れがあるため、緊急使用承認が一時停止されているという。

その後、Medicago はWHOへの申請を取り下げたと報じられている。

2022年12月にMedicagoはPhilip Morrisとの関係を絶ち、同社は田辺三菱製薬の100%子会社となった。

ーーー

Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

Medicagoは下記の技術を持つ。

 Proficia™  植物の葉でのワクチン製造 

インフルワクチンの製造は鶏卵を使ってウイルスを培養するのが一般的で、ウイルスが人の体内で働かないよう不活化処理を行うが、6ヶ月ほどかかる。
これに対し、Medicagoの開発したProficia™ はタバコの1種 ベンサミアナタバコ(学名 Nicotiana benthamiana)を使うもので、1ヶ月で製造できる。

         2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
 
 VLP    遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(
体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)


 VLPExpress™  新ワクチンを早く見つける手法

田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダのMedicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。(その後
の出資比率は田辺三菱が79%、Philip Morrisが21%となっていた。)

2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化

田辺三菱製薬は2021年9月30日、連結子会社のカナダのMedicagoが開発しているCOVID-19の植物由来のウイルス様粒子ワクチン(開発番号:MT-2766)について、10月2日より日本において第1/2相臨床試験を開始すると発表した。2022年3月までに日本での承認申請をめざすとした。

国内の承認申請時までに米国、英国、カナダ、ドイツ、フランスのいずれかで承認又は緊急使用許可(EUA)が取れていると「特例承認」が得られる。

田辺三菱製薬は2022年2月24日、カナダで承認を取得した。商品名:COVIFENZ)

なお、MedicagoはWHOに承認申請したが、WHOの関係者は2022年3月16日、Medicagoが開発した植物由来の新型コロナウイルスワクチンは、同社がタバコメーカーのPhilip Morrisからの出資(Philip Morris 21%)を受けていることを理由に、WHOの緊急使用承認を「受けられない可能性が非常に高い」と発表した。Medicago はWHOへの申請を取り下げたと報じられている。

田辺三菱製薬の連結子会社のカナダのMedicagoが開発しているCOVID-19の植物由来のウイルス様粒子ワクチン(商品名 :COVIFENZ)は2022年2月にカナダで承認を取得したが、2022年夏に米国工場で商用規模への量産に課題が見つかり、事業計画を見直した。

たばこ属の葉に遺伝子を組み込んで抗原を作るが、段階的に生産を引き上げる「スケールアップ」に課題が見つかり、計画通りに量産できない状況という。

最大7600万回分の契約を結ぶカナダ政府への供給ができない状態で、9月までに承認申請する計画だった日本の実用化も遅れる。

2022/8/6 田辺三菱製薬のカナダのコロナワクチン、量産に問題 


田辺三菱製薬では当初、「
カナダで承認されれば、世界初の植物由来ワクチンとしてお墨付きを得る。これをトリガーにしてワクチンを世界展開できるプラットフォームを確立していきたい」と述べ、世界中での販売を目指していた。

しかし、Philip Morrisからの出資が障害となってWHOへの申請を取り下げ、さらに米国工場で商用規模への量産に課題が見つかった。

量産への見通しは不明だが、世界中でPfizerとModernaのワクチンが席巻しているなか、時間と費用をかけて量産体制に成功したとしても、事業として成り立たないと判断したと思われる。

ーーー

同社では、コア営業損益のほとんどを占めていたロイヤリティ収入が激減し、大幅減収減益となっている。

問題は多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤリティ収入である。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。

このため、IFRSルールで、未収分を収益から除外している。

同社ではこのなかで、 VLP ワクチン「COVIFENZ®」で起死回生を図っていたと思われるが、画餅に帰した形となった。

「空から、世界を進化させる」を謳い文句とするドローン関連サービスの東京都のテラドローン㈱(Terra Drone )は1月25日、サウジアラビアの国営石油会社 Saudi Aramcoのベンチャーキャピタル Wa'ed Venturesから$14 million(18.5億円)を調達したと発表した。

この資金で2023年春にも現地子会社Terra Drone Arabiaを設立し、石油タンクを超音波で検査するドローン点検サービスの案件獲得を目指す。

都市開発で需要が高まる測量サービスなども受注したい考え で、サウジを起点に中東市場を開拓する。

テラドローンは2016年2月に設立された。

本社を東京におき、全国6支社と海外2か所に拠点を構え、国内外にてドローンを用いたレーザー・写真測量を実施、高精度3次元図面を短時間で作成、施工管理に役立つサー ビスを提供。

独自技術、ノウハウによる高精度の担保、データ解析の高速化、柔軟な対応力、自社開発のソフトウェア等が特徴で、大手ゼネコン・建機メーカー・測量会社等からの受注を中心に、400回以上のUAV測量実績を有し、i-ConstructionのUA V測量実績も全国トッ プクラス。2時間飛行が可能な固定無人機も自社で開発。

同社は2022年3月に、シリーズBラウンドで総額80億円の資金調達を実施した。三井物産、SBIインベストメント、東急不動産HD、九州電力送配電、西華産業 の5社に加え、既存投資家であるベンチャーラボインベストメントから追加投資を行い、引受先とした。加えて、国土交通省傘下の官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構より、特別目的会社を通じて関係会社であるUnifly N.V.への共同出資枠を確保した。

グループ会社にはアジアで電動二輪、三輪を製造、販売し、海外売上比率85%、年間3 万台を売り上げるテラモーターズがある。

ドローン運行管理システム (UTM)事業では、世界有数のUnifly社と提携し、約5億円の資本を投入し筆頭株主として次世代のシステム開発を行う。

Unifly NV (本社ベルギー):

Flemish institute for technological research(VITO)から事業を独立化し2015年に設立。ドローンと有人航空機の航空関連ソリューションの提供を行っているソフトウェア企業。現在提供しているサービスはUNIFLY LAUNCHPADとUNIFLY PRO、UNIFLY SENTRY、UNIFLY CONNECTの4つ。

テラドローンは2016年11月、ドローンの運行管理システムであるUTM(UAV Traffic Management)事業の開始を発表した。また、UTM業界において世界的なリーディングカンパニーであるベルギーのUnifly NVと戦略的パートナーシップを締結し、本サービスの世界展開を目指した。

UTMとは、リアルタイムに無人航空機の位置情報を把握し、複数のドローンの効率的で安全なフライトを支援するシステムで、UTMを利用することにより以下のことが実現可能とな る。

  1. ドローンのフライトプランの管理
    ・飛行計画、飛行ログの管理
    ・UAV飛行情報(位置、高度、速度、角度・バッテリー残量等)のリアルタイム管理
  2. 飛行エリアの管理
    ・ジオフェンス:重要施設等飛行禁止区域、ユーザーにより設定されたエリア内への進入禁止
    ・ジオケージ(ジオフィルター):指定エリア内のみでの運行
  3. 複数のUAV間・障害物間の衝突防止、緊急時の停止・自動帰還

ラドローンは世界的なドローン市場調査機関Drone Industry Insightsの「ドローンサービス企業世界ランキング」で、3年連続世界Top 3に選出されている。

テラドローンは2018年が9位であったが、2019年が2位、2020年が1位、2021年が2位とトップレベルを維持している。2021年の1位はマレーシアのAerodyne、3位は米国のCyberhawkであった。

同社はドローンを活用した土木測量、橋梁や工場施設といったインフラを点検するサービスなどを世界10カ国で提供している。その実績やグループ企業のドローン人材開発が評価され、Aramco からの出資が決まったという。

サウジでは国家プロジェクトの次世代都市「NEOM」の建設が進む。「広大な土地を測量する必要があり、ドローン測量の市場は大きい」(徳重徹社長)という。テラドローンは数年で100人程度を現地採用し、ドローン人材を育てる。測量用機器などの生産拠点設立も検討している。

サウジのNeom Cityは①環境にやさしい直線都市「The Line」と、②海の上に浮かぶ八角形の先端産業団地「Oxagon」、③環境にやさしい山岳観光団地「Trojena」の3つのプロジェクトで構成される。

特に、Neom Cityの中心であるThe Lineは、道路や車のない炭素排出ゼロ都市を目指す。高度500メートルの直線型垂直都市で、長さが170km、幅が200mで砂漠を横切って造成される。

      次世代都市「NEOM」については 2022/11/21 サウジのムハンマド皇太子、韓国訪問、来日は中止  に詳細記事

韓国中央日報は2月1日付けで上記のタイトルで サムスン電子の昨年10-12月期の業績を報じている。

営業利益が4兆3061億ウォンにとどまり前年同期より69%減った。何より半導体(DS)部門の営業利益が97%減り、2700億ウォンにとどまった。かろうじて赤字を免れた。半導体はサムスン電子の営業利益の60~70%を占める主力事業だ。このため同社の年間売り上げが302兆ウォンで過去最大を達成したというニュースも色あせた。」

注 1 ウオンは 0.11円

しかもこうした不振が今年上半期も続くだろうと予想されており、市場アナリストはサムスン電子半導体部門が今年1-3月期に兆単位の営業赤字を出すだろうという暗い見通しを出している。

半導体は昨年韓国の輸出の約19%を占めた輸出1位品目で、韓国経済で半導体の割合はそれだけ絶対的であり、歴史的にも半導体が深刻な不況に陥った時に例外なく韓国経済が危機にさらされた。

同紙は、「景気サイクルが回れば状況が好転するだろうという漠然とした楽観論は引っ込めなければならない。すでに世界的半導体大戦の真っ最中で、米国をはじめとする各国が天文学的な資金をばらまいて自国の半導体産業を支援している。政府と政界は設備投資と研究開発投資支援だけでなく、人材育成策などを細かく整えることを望む。業界の奮発も重要だ。どんな状況でも韓国の誇りである半導体産業が競争力を失うことがあってはならない」と述べている。

付記

韓国の1月の貿易赤字、過去最大127億ドル(半導体輸出 前年比44.5%減、中国向け輸出 31.4%減)    
半導体の輸出は、昨年8月(7.8%減)以降、6ヵ月連続で前年比減少




単位;兆 韓国ウオン

2021

2022

2021/Q1

Q2

Q3

Q4

2022/Q1

Q2

Q3

Q4

DX

Visual Display/Digital Appliances

1.12

1.06

0.76

0.7

0.8

0.36

0.25

-0.06

Mobile eXperience/Networks

4.39

3.23

3.36

2.66

3.82

2.62

3.24

1.7

DX orhers

0

0.05

0.03

0.02

-0.14

0.04

0.04

0

DS

Device Solutions

3.36

6.93

10.07

8.83

8.45

9.98

5.12

0.27

SDC

Samsung Display

0.36

1.28

1.49

1.32

1.09

1.06

1.98

1.82

Harman

Harman

0.11

0.11

0.15

0.22

0.1

0.1

0.31

0.37

Others

0.04

-0.09

-0.04

0.12

-0.06

-0.09

0.21

Total

9.38

12.57

15.82

13.87

14.12

14.1

10.85

4.31

韓国Samsung Electronicsは2021年12月にテレビなどのビジュアルディスプレイ事業とGalaxyシリーズなどを担うモバイル部門とを統合すると発表した。新部門の正式名称を「DX」部門とする。

DXは「Device eXperience」に由来し、「顧客にとって新しく有意義な体験を生み出す」という取り組みを反映しているという。

ビジュアルディスプレイ事業、デジタルアプライアンス事業、健康・医療機器事業、MX事業、ネットワーク事業で構成され、「サービスやユーザーのニーズだけでなく、スマートフォンから家電までの幅広いソルーションを提供することにフォーカスする」としている。

「デバイス・ソリューション(DS)」は半導体やディスプレー事業で構成される。

Samsung Electronicsと米Harman Internationalは2016年11月14日、SamsungによるHarman買収を発表した。買収総額は約80億ドルで、この買収により、Samsungは自動車関連事業の強化を図る。
この買収には、Harmanの自動車向け技術のほか、Harman Kardon、JBL、Mark Levinson、AKGなどのオーディオ事業も含まれている。

Harmanが持つ自動車向けのデザイン/設計技術や自動車メーカーとの長期的な関係と、Samsungのモバイル、半導体、ユーザーインターフェイス、ディスプレイ技術や流通網を融合し、自動車向けエレクトロニクス製品の強化を図る。買収完了は2017年の中頃を見込む。

世界保健機関(WHO)は1月23日、有害物質の入った咳止めシロップの服用により昨年インドネシアなどで子どもの死亡が相次いだことを受け、「即時かつ協調的な行動」をとるよう呼びかけた。

WHOによると、有毒で急性腎障害につながる恐れのあるエチレングリコール(EG)とジエチレングリコール(DEG)とが許容量を超えて検出された。いずれも不凍液などに使われる。

インドネシア、ウズベキスタン、西アフリカのガンビアで昨年、300人以上の子どもらが急性腎不全で死亡、ほとんどが5歳未満だった。

WHOはアフリカ西部ガンビアでの66人の児童の死亡はインドの製薬会社が製造した咳止めシロップの服用と関係している疑いがあるという声明を表した。
インド政権は、シロップを製造した製薬会社Maiden Pharmaceuticalsを検査し、製造に一連の違反が見つかったとして工場閉鎖を命じた。インド保健省によると、Maiden Pharmaceuticalsの4製品はインドでは現在売られておらず、輸出もガンビア向けだけという。

ウズベキスタン保健省はインドの製薬会社が製造したシロップを服用した子ども21人のうち18人が死亡したと発表した。死亡した子どもたちが飲んだ薬は、インドのMarion Biotech が製造したもの。

インドネシアの医薬品食品監督庁は2022年10月31日、国内で流通する子ども用シロップ薬から基準を大幅に超えるエチレングリコールとジエチレングリコールが確認されたと明らかにした。インドネシアでは子どもの間で腎臓の疾患症状の報告が相次いでいて、150人以上が死亡、特に8月以降はその数が急増していた。


WHOは1月23日、咳止めシロップの有毒物質が原因だと発表した。「少量でも致命的で、医薬品に含まれるべきでない」安価なジエチレングリコールとエチレングリコールが大量に含まれていたという。

フィリピン、東ティモール、セネガル、カンボジアでも市販の可能性があり、影響があるとし、これ以上の死者を出さないため加盟194カ国に行動を求めた。

この咳止めに関連する各社は否定しているか、調査中だとしてコメントしていない。 WHOは、政府や規制当局に監督強化を求めたほか、医薬品メーカーにはより徹底的な臨床試験と過程の記録を要請した。


WHOはこれまでに、問題のシロップを製造していたインドとインドネシアの製薬会社6社を特定した。

被害国 製品名 メーカー
ガンビア Promethazine Oral Solution
Kofexmalin Baby Cough Syrup
Makoff Baby Cough Syrup
Magrip N Cold Syrup
.
Maiden Pharmaceuticals
(Haryana, India)
インドネシア Termorex syrup PT Konimex いずれも
インドネシアメーカー
Flurin DMP syrup PT Yarindo Farmatama
Unibebi Cough Syrup
Unibebi Demam Paracetamol Drops
Unibebi Demam Paracetamol Syrup
PT Universal Pharmaceutical Industries
Paracetamol Drops
Paracetamol Syrup (mint)
Vipcol Syrup
PT Afi Farma
ウズベキスタン AMBRONOL syrup
DOK-1 Max syrup
Marion Biotech
(Uttar Pradesh, India).


6社は、調査に対して回答を拒否、または死亡原因とされる有毒物質の使用を否定している。

WHOが特定した6社が不正行為を行ったことを示す証拠を持っていない。WHOは6社の間に何らかの関連があるかどうか調査している。

事情に詳しい人物によると、6社は同じサプライヤーから原材料を仕入れていたという。

WHOは、問題の製品と同じものが販売されていた可能性があるカンボジア、フィリピン、東ティモール、セネガルの4カ国でも行うと発表した。

WHOは各国の政府や製薬業界に対し、規格外医薬品の根絶と規制強化のための対応を急ぐよう求めている。

ーーー

インドネシア警察は1月30日、同地の化学品のトレーダーのCV Samudera Chemicalが工業用グレードのEGとDECを、Dow Chemical Thailand が製造した医薬グレードのプロピレングリコールとして販売し、その結果、シロップの生産に使われたと明らかにした。

医薬グレードのプロピレングリコールは、注射剤、内用剤などの溶解補助剤、軟膏基剤として調剤に用いられる。

同社で見つかった9つのドラムサンプルからは、EG/DEGが最大52%、一部は最大99%検出された。つまり、ほぼ100%がEG / DEGコンテンツであった。

警察はSamudera Chemical とディストリビューターのCV Anugrah Perdana Gemilang の責任者を逮捕した。

ーーー

2006年9月以降、パナマで多数の死者が出た謎の疾病の原因について、米国疾病予防管理センター(CDC)は同年11月に「CDCがパナマの謎の疾病の解決を支援」と題するニュースを配信した。

パナマ保健省の発表で34名の死者が出た謎の疾病について、パナマ社会保障機関が製造した無糖咳止め・抗アレルギーシロップ剤に混入されたジエチレングリコールが原因であったことを突き止めた。


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