「no」と一致するもの

LyondellBasell は1月16日、サウジの西岸Yanbu Industrial City でPPを製造販売するNational Petrochemical Industrial Company (NATPET) の株式35%をサウジの投資会社Alujain Corporationから取得したと発表した。契約締結は同日、リヤドのエネルギー省でおなわれた。

National Petrochemical Industrial Company (NATPET) は2009年以降、Yanbu Industrial Cityで年産40万トンのPPを生産販売している。

PP 製品は、Teldene® というブランド名で、世界 60 か国以上、ほぼすべての地域で販売されている。

PP プラントはLyondellBasell がライセンスしたSpheripol technologyを使用、原料プロピレンは UOPの Oleflex 技術を使用したPropane Dehydrogenationにより自社生産している。

National Petrochemical Industrial Company (NATPET) の当初の出資者は、サウジのAlujain Corp と Xenel Group(サウジのAlireza一族の投資会社)とポリマーのグローバルサプライヤーのNoble Resources である。

Alujain Corpは1991年設立で、サウジで石油化学、採掘、金属、エネルギー分野などのさまざまな産業プロジェクトに出資している。

当初の出資比率は不明だが、Alujain Corpは2023年10月に出資比率を88.59%から97.55%にしていた。

この中から35%をLyondellBasellに売却し、今後は実質的にAlujain Corp とLyondellBasell のJVとする。(62.55% / 35%)

LyondellBasell とAlujan は株式売買と同時に、新しくPDH法によるプロピレン工場と、現工場と同じLyondellBasellのSpheripol technologyを使うPP 第2工場を建設する検討を開始した。

LyondellBasell とAlujan の株式売買契約は、エネルギー省がこのプロピレン用の原料の割当を承認するのを待って行われた。

Alujain Chairman のMohammed Bin Saleh AlKhalil は、「われわれは、最初はライセンシーとして、そして現在は合弁パートナーとして、LyondellBasell との関係を深める機会を歓迎します」と述べた。

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Yanbu Industrial City のNational Petrochemical Industrial Company (NATPET) の工場の隣には、Sabicの関係会社のArabian Industrial Fibers IBN RUSHD)の工場がある。

IBN RUSHD1993年にSABIC 70%、その他1530%JVとして設立され、Yanbu に芳香族→PTA→ポリエステルのコンプレックスを1995年から稼動させている。

LyondellBasell は2009年8月6日、Arabian Industrial Fibers (IBN RUSHD)が同社のSpheripol PP 技術を採用したと発表した。

今回、初めてPPに進出し、Yanbu に525千トンのプラントを建設するもので、2012年のスタートを目指す。

2008年10月、Lummus Technology はIBN RUSHDからプロパン脱水素設備の技術供与、基礎設計の契約を受けた。

2008/8/12 SABICのArabian Industrial Fibers、PP進出




英国で多数の郵便局長らが不当に有罪判決を受けた「英国史上最大の冤罪事件」と呼ばれる郵便局スキャンダルで、欠陥のある会計システムを郵便局に納入した富士通に対し、補償金を支払うよう求める声が高まっている。

1999年から2015年までの間に郵便局の窓口の現金と富士通が納入した会計システム上の残高が合わなかったなどとして郵便局長ら700人余りが横領などの罪で訴追された。

2024/1/16 「英史上最大の冤罪事件」で富士通の責任を問う声

英国の郵便局スキャンダルの渦中にある富士通の欧州のトップ、Fujitsu Services のPaul Patterson CEO は1月16日、英下院Business and Trade Committee で証言し、「われわれが目にしてきた証拠に個人的に愕然としている。会社には貢献する道義的義務があると思う」と述べた。

Paul Patterson は10年以上同社で働いており、2019年に現職に就任した。富士通本体の執行役員も務める。

証言では、富士通社内の人間が1990年代から会計システムHorizonソフトウエアの問題を知っていたと語った。「富士通は最初から関与していた。システムにはバグとエラーがあったが、700人以上の郵便支局長の裁判で郵便事業会社側を支援した。本当に申し訳ない。」

裁判では富士通は郵便事業会社に対して、郵便局長以外は誰もHorizonの記録にアクセスしたり、変更したりできないと伝えた。これにより責任は郵便局長だけにあるとされた。しかし、これが事実でないことが分かった。

Paul Patterson はこれが無実の郵便局長を有罪にするのに使われたことを認めた。

何故、富士通がそれを知りながら何もしなかったのかと問われ、「知らない。本当に知らない」と答えた。

「契約により郵便事業会社に渡した情報ではっきりしており、郵便事業会社もバグとエラーがあったことを知っている」と述べた。

被害者への賠償についても「道義的責任がある」としたが、「責任が明確になった場合に判断する。具体的な金額は裁判官による調査の終了後にのみ決定される」と述べた。

郵便事業会社のCEOのNick Read も証言したが、まともに質問に答えず、非難された。

郵便局長以外は誰もHorizonの記録にアクセスしたり、変更したりできないというのが事実でないことを郵便事業会社がいつ知ったのかなどの質問に答えなかった。

委員会にはHollinrake 担当相も出席し、富士通の発言を肯定的に評価した。政府から被害者への補償額は「最終的には10億ポンド(1855億円)以上になるかもしれない」と語った。富士通がこの一部を負担することになれば、補償額は数百億円に上る可能性もある。

被害者団体 Justice for Subpostmasters Alliance を結成、郵便事業会社に対して集団訴訟を起こし、テレビドラマ「Mr Bates vs the Post Office」の主人公であるAlan Batesが証言し、まだ補償を受けていないとし、"it's madness" と述べた。


富士通は契約で24億英ポンドを得ており、契約が終了するまでに四半世紀以上かかる。

スナク首相は先週、冤罪被害者を無罪とし、約980人の郵便局員への補償を早める新たな法律を導入する考えを表明していた。補償は、スキャンダルに巻き込まれながら私財を投じて弁済し、起訴されなかった多くの人にも提供される。
  

ーーー

富士通の時田隆仁社長は1月16日にダボスで英BBC放送の取材に答え、「郵便局長らとその家族の人生に壊滅的な影響を与えたことをおわびする」と謝罪した。時田社長が公の場で事件についてコメントするのは初めて。

ダボス会議に参加した同氏は「これは大きな問題であり、富士通として非常に深刻に受け止めている」と語った。欠陥のある会計システムで得た収益を返還するかとの問いには答えなかった。


付記

イギリスのテレビ局 Sky News は1月17日、イギリスの Kemi Badenoch貿易相(Secretary of State for Business and Trade)が富士通の時田社長宛てに被害者らへの補償について協議するため早期の面会を求める書簡を送ったと伝えた。

スカイニュースはレターの一部を見たとし、下記の通り内容を報じている。

she would "value the opportunity to discuss Fujitsu's involvement in the Post Office Horizon scandal".

"As you may know, my department is at the forefront of our government's efforts to right the wrongs of the past.

"I am committed to ensuring that postmasters affected get the justice they deserve.

"This is why the UK government announced new legislation last week, to overturn wrongful convictions and a plan to ensure swifter access to compensation."


付記

1月19日の独立した調査機関の公聴会で、Paul Pattersonは 「早い段階でシステムにバグや欠陥などがあったことを関係者全員が知っていた」と証言した。システムが導入されたあとの1999年11月には欠陥が把握されていたものの、2018年まで20年近く問題が続いていたという認識を示した。そして、「こうした事実を郵便局の運営会社に知らせていた」と述べた。

調査団によれば、富士通がソフトの開発段階で「マイナス」と設定するはずの記号を誤って「プラス」と設定したせいで、数字のデータを削除すると逆に倍増する現象が起きていたことが判明した。

郵便局長らの裁判では富士通が提供したデータが証拠として提出されたが、ソフトの欠陥を示す数字の誤りなどは事前に削除されていたことも、この日の公聴会で明らかになった。


イギリス政府は1月18日、富士通側から「問題の公的な調査が終了するまで、政府案件の新たな入札への参加を一時停止する」とする書簡を受け取ったと明らかにした。

バイデン米政権が設定した電気自動車(EV)税控除制度で、2024年1月1日をもって新ルールが発効したことに伴い、最大7500ドルの控除対象となる車種が大幅に減少した。

税控除適格基準の引き上げで対象車は従来の20数種から13種に減少した。新しい規則では、中国メーカー製のバッテリー部品を使用した車両は税額控除から除外される。

財務省報道官は、政府は新たな制限について企業と緊密に調整しているが、まだデータを提出していない企業もあり、リストに追加される可能性があると述べた。

2023年4月に新しい対象が発表された。

2022年8月17日に発効した「北米での最終組み立て要件」と2023年1月1日に発効した「車両の希望小売価格の上限」「購入者の所得上限」の要件を満たした上で、2023年4月18日から適用する「バッテリー関連の調達価格要件」の全部またはいずれかを満たした車両となる。

2023年4月17日までの対象車両は41モデルだったが、日産「リーフ」、フォルクスワーゲン「ID.4」、リビアン「R1T」「R1S」のほか、BMW、ボルボ、現代などの外国メーカーを中心に、23モデルが対象車両から外れ、新たにゼネラルモーターズ(GM)とフォードの計4モデルが追加された。

2023/4/19 米国の電気自動車税額控除の新しい対象発表 


ルールでは、2024年から対象のクリーン車両は「懸念される海外企業」(FEOC)が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならず、2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

しかし、この定義が明らかにされていなかった。

主な要件(控除額は個人の場合) 
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること(日本はOK)

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル


財務省は2023年12月1日、「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

バッテリー部品が条件を満たすかどうかは、該当する重要鉱物の抽出、加工、およびリサイクルのすべての段階のレビューによって決定される。

2023/12/4 米政府、EV税額控除で中国の影響排除


今回発表されたものはこのルールによるもので、下表のとおり。 黄色地は抹消、青色地は追加(Eivinは復活)

Maker Model

2023年4月 Tax Credit

2024年 Tax Credit  
Stellantis
North America
(PSA/ Fiat Chrysler
Chrysler Pacifica 2022-23 $7,500 $7,500 Plug-in Hybrid
2024
Jeep Wrangler PHEV 4xe 2022-23 $3,750 $3,750 Plug-in Hybrid
2024
Jeep Grand Cherokee PHEV 4xe 2022-23  $3,750 $3,750 Plug-in Hybrid
2024
Ford Ford F-150 Lightning (Standard & Extended range) 2022-23 $7,500 $7,500 EV
2024
Ford e-Transit 2022-23 $3,750 EV
Ford Mustang Mach-E 2022-23 $3,750 EV
Ford Escape Plug-in Hybrid 2022-23 $3,750 $3,750 Plug-in Hybrid
2024
Lincoln Corsair Grand Touring 2022-23 $3,750 $3,750 Plug-in Hybrid
2024
Lincoln Aviator Grand Touring 2022-23 $7,500 Plug-in Hybrid
GM Chevrolet Bolt EUV & EV 2022-23 $7,500 $7,500 EV
Cadillac LYRIQ 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Silverado 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Blazer 2022-23 $7,500 EV
Chevrolet Equinox 2022-23 $7,500 EV
Tesla Tesla Model 3 Performance 2022-23 $7,500

EV
2023-24 $7,500
Standard Range 2022-23 $3,750
Tesla Model Y All-Wheel Drive 2022-23 $7,500

EV
2023-24 $7,500
Rear-Wheel Drive 2024 $7,500
Tesla Model X Long Range 2023-24 $7,500
Rivian Rivian R1S Dual Large & Quad Large 2023-24 $3,750
Rivian R1T Dual Large, Dual Max & Quad Large 2023-24 $3,750


Rivian Automotive, Inc.は、2009年に設立された米国の電気自動車メーカー。2009年にMainstream MotorsとしてRobert "RJ" Scaringeによって設立され、のちにAvera Automotiveに改称、2011年にRivian Automotiveに再度変更した。

電動式のスポーツ用多目的車(SUV)とピックアップトラックを「スケートボード」(Skateboard)と呼ばれる汎用性のある次世代式プラットフォーム上に組み立てて製造する。
また、Amazonと提携し、Amazon配達用の電動式バンの製造を引き受けている。

(ウクライナのEU加盟問題)

EUは12月14日の首脳会議でウクライナとモルドバの加盟交渉を正式に開始すると決定した。併せて、ジョージアを正式な加盟候補国とした。

2022年の申請から異例のスピードで合意にこぎ着けた。

EUは2022年6月23日開いた首脳会議で、ウクライナとモルドバに加盟候補国の地位を付与することを承認した。全27加盟国が同意し、認定に必要な全会一致で決まった。ジョージアについては、欧州委が提示した条件を満たせば候補国にする方針を示した。

EU加盟に向けて司法・行政・経済など分野ごとの加盟交渉に向けて動き出すが、国内法の改正などが必要で、実際に加盟するまでには通常10年程度かかる。

ウクライナの場合、腐敗が問題で、オリガルヒ(政商)が政財界の癒着を広げ、賄賂の横行や政治家による司法への圧力が問題。
国営企業の民営化、独占企業の解体などの市場改革も必要。
ウクライナの一人当たりGDPはEU平均の1/10以下で、今回の戦争の影響も大きい。加入の場合、EU予算の圧迫も懸念される。

2022/6/27 EU、ウクライナとモルドバを加盟候補国に認定 

ウクライナの加盟交渉開始をめぐっては、ハンガリーが長らく反対していた。

ハンガリーは、エネルギーの輸入などを通じてロシアとの経済的な結び付きが強く、オルバン首相はロシア寄りの姿勢を示し、これまでもEUのロシアへの対応をめぐる方針に反対する姿勢を示してきた。

オルバン首相はウクライナの汚職対策や、ウクライナに住むハンガリー系住民の権利保護が不十分だと主張し、加盟交渉開始や予算案に反対してきた。最近も「(交渉開始などは)加盟国の利益にならない。EUは 過ちを犯そうとしている」と改めて強調した。「ウクライナはEUからはるかに遠い位置にあり、欧州委が加盟交渉開始を約束したとの誤解を正すのもわれわれの責務だ」と指摘した。

EUは加盟交渉などの重要政策を全会一致で決めなければならない。このため、主要国の首脳らはオルバン 首相への説得を重ねたが、オルバン首相は、「他の26カ国が異なる見解を示したとしても(決定を)阻止しなければならない」と強硬姿勢を崩さず、首脳会議で拒否権を行使する考えを示していた。

土壇場で効果を発揮したのが「建設的棄権」を規定するEU条約31条である。

年内最後の首脳会議でウクライナの交渉入りを決め、欧州の結束を示したい主要国の首脳らはオルバン 首相への説得を重ねた。

たどりついたのがEU条約31条で定める「建設的棄権」 で、一部の代表者が退室して採決を棄権した場合、残ったメンバーのみの賛成で全会一致が成り立つという取り決めがある。
  
Under unanimous voting, abstention does not prevent a decision from being taken.

その結果、ドイツのショルツ首相がオルバン首相に「コーヒーでも飲んできたらどうか」と伝え、オルバン首相が席を立って退室、オルバン首相不在のもと、ウクライナの交渉入りに必要な「全会一致」での合意は 成立した。

フランスのマクロン大統領は「我々は解決策を提案できた」と語り、事前にオルバン 首相と擦り合わせていたことを示唆した。

オルバン首相は会議後 、ハンガリーは「悪い決定に参加したくないので、今日の決定から離れた」とし、「他の26カ国がしたいなら勝手にすればいい」と語った。

オルバン首相が棄権という形で事実上の容認に転じたのは、凍結していたEU補助金の支給再開という見返りがあったから である。

ハンガリーへの補助金は、オルバン首相が裁判所の独立性を制限したとして、法の支配への懸念から凍結されている。

ハンガリーが2004年にEUへの加盟を果たした時期から民主体制は後退していった。オルバン氏が首相に返り咲いた2010年以降、その傾向は顕著となる。

司法機関の独立性を弱める。言論と報道の自由を侵食する。汚職対策を取らないどころか,政府上層部も不正行為に手を染める。自由でない不公正な選挙を黙認(または率先)する。少数民族を抑圧する。学問の自由を制限する。ジェンダーの平等を軽視する。性的少数者を抑圧する。このようなオルバン政権の施政は、同国を独裁国家と呼ばれてもおかしくない体制に仕立て上げることになる。

EUは2022年12月にEUの基本原則である「法の支配」順守と汚職を巡り懸念があるとしてハンガリー向けの資金を凍結した。

EU名義の共同債券を財源とする復興基金の設置を採択する際に、加盟国による復興基金を含めたEU予算の不適切な使用を防止し、EUの財務上の利益を守る目的で採択された条件設定規則メカニズムにより、EU理事会の特定多数決により決定した。

(特定多数決は、①加盟国の 55%以上、および 15 ヵ国以上が賛成する、②賛成国の人口が EU 人口の 65% 以上を占める、の 2 点を要件とするもの)

欧州委員会は今回、オルバン政権の強権的な政策を理由にしてきたハンガリーへの補助金凍結を一部解除し、最大102億ユーロ(約1兆6千億円)の支給を認めると発表した。


ウクライナのEU加盟交渉開始は決まったが、合わせて審議した4年間で総額500億ユーロのウクライナ支援パッケージはハンガリーの拒否権で否決された。将来のウクライナの加盟についても拒否する姿勢を崩していない。

米政府は12月は27日、最大で2億5000万ドルに上るウクライナへの追加の軍事支援を発表した。
防空ミサイルシステム「ナサムス」のための追加のミサイルや高機動ロケット砲システム=「ハイマース」に使われるロケット弾、地対空ミサイル「スティンガー」などが含まれている。

バイデン政権は10月19日に、イスラエルとウクライナへの軍事支援と米・メキシコ国境警備強化の資金等々のため、1060億ドル近い緊急予算案を公表した。(うちウクライナ向けは614億ドル、イスラエル向けは143億ドル)
しかし、米議会では与野党の協議がまとまらないことから、軍事支援の継続に必要な緊急予算が承認されておらず、これを最後に予算は枯渇する。

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(スウェーデンのNATO加盟問題)

フィンランドとスウェーデンは2022年5月18日、NATO加盟を正式に申請した。

NATOの加盟には、EU加盟の30カ国全部の批准が必要であるが、トルコとハンガリーのみが批准をしていない。

トルコのエルドアン大統領は、トルコ政府と対立する国内のクルド分離主義組織「クルド労働者党(PKK)」を両国が支援しているとして難色を示していた。

2022/12/9 フィンランドとスウェーデンのNATO加盟 難航 

トルコのエルドアン大統領は2023年3月17日、フィンランドのニーニスト大統領と会談し、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める意向を示した。

トルコ議会が2023年3月30日にフィンランドの加盟を承認し、全30の加盟国の批准手続きが完了し、フィンランドは4月4日に正式加盟した。スウェーデンだけが残った。

NATOのストルテンベルグ事務総長は2023年7月10日、トルコがスウェーデンのNATO加盟を支持することに同意したと明らかにした。トルコのエルドアン大統領が「できるだけ早く加盟議定書をトルコ議会に送り、批准を確実にするため議会と緊密に協力することに同意した」と述べた。7月11~12日に開かれるNATO首脳会議を前に、大きな進展となった。

2023/7/12 スウェーデンのNATO加盟に大きな進展

トルコ議会の外交委員会は2023年12月26日、スウェーデンのNATO加盟批准に必要な法案を承認した。本会議で数週間以内に採決され、可決される見通し。その後、エルドアン大統領が署名する。

ただし、外交委の委員長は本会議での迅速な採決を期待すべきではないと指摘、採決のタイミングは議長が決定するとしている。


ハンガリーのオルバン首相は12月21日、スウェーデンのNATO加盟を巡りハンガリーとトルコの間で合意はないとし、加盟承認の採決を行う時期を決めるのはハンガリーの議会だとし、与党議員の間にはスウェーデンの加盟を積極的に承認しようという動きはないと述べた。

ハンガリーは承認手続きが遅れている理由として、ハンガリー政府が民主的権利を損ねているとの見方がスウェーデンにあることを挙げている。

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(シェンゲン協定:国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)

ルーマニアとブルガリアはこのたび、2024年3月から空と海の国境を開いたシェンゲン圏に加盟することでオーストリアと合意に達した。陸上国境に関する交渉は来年も継続される。12月27日に各国が明らかにした。

2007年にEUに加盟した両国は2010年までにシェンゲン協定の加盟条件を満たしたが、オーストリアが中東からの移民対策の不備などを理由に反対を続けてきた。

オーストリア政府は、両国の協定参加の協議を契機に、オーストリアへの難民申請数が多い原因となっている現在のEUの移民制度を抜本的に変更したいためとされる。

最近の交渉で両国が国境警備の強化を表明、オーストリアが段階的参加案を提示、今回の合意に達した。陸上国境に関する交渉はこれからである。

シェンゲン協定はEU各国と、EUとの関係が非常に深い欧州自由貿易連合(EFTA)加盟4カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)が加盟している。

このうち、英国(EU元メンバー)とアイルランドは適用除外が認められ、協定国との間で国境審査が継続している。英国は「国境管理は国家主権の中核」と主張し、参加を拒否した。

EU加盟国で不参加はキプロスのみで、同国は2024年までの加盟を目指している。

NATO EU シェンゲン協定
非欧州 米国 原加盟国 対象外 対象外
カナダ
イタリア 1952
オランダ 当初署名国
フランス
ベルギー
ルクセンブルグ
英国 1973加盟→2020離脱 「国境管理は国家主権の中核」
デンマーク 1973
ポルトガル 1986
アイスランド 非加盟 EFTA
ノルウェー
ギリシャ 1952/2 1981
トルコ 非加盟
西ドイツ→ドイツ 1955/5 1952 当初署名国
1991/12/26 ソ連崩壊  赤字国名は旧ソ連
スペイン 1982/5 1986
チェコ 1999/3 2004/5
ポーランド
ハンガリー
エストニア 2004/3
ラトビア
リトアニア
スロバキア
スロベニア
ブルガリア 2007/1 2023/12参加(空と海)
(オーストリアが容認)
ルーマニア
アルバニア 2009/4 非加盟
クロアチア 2013/7
モンテネグロ 2017/6 非加盟
北マケドニア 2020/3
アイルランド 非加盟 1973 EUで適用除外
オーストリア 1995
フィンランド 2023/4(トルコが容認)
スウェーデン 2022加盟申請
キプロス 非加盟 2004/5 2024年までの加盟を目指す。
マルタ
スイス 非加盟 EFTA
ボスニア・ヘルツェゴビナ
セルビア
コソボ
ベラルーシ
モルドバ
ウクライナ
リヒテンシュタイン EFTA
合計 30カ国→31カ国
(フィンランド加盟)
28→27カ国
(英離脱)
27→29
(ブルガリア、ルーマニア加盟)

 



オックスフォード英語辞典を出版するオックスフォード大学出版局がこのほど、毎冬恒例の「今年の流行語」を発表、2023年は「Rizz」が大賞に選ばれた。

言語専門家チームや一般の投票によって決まる「Word of the year」で、SNSをにぎわせたZ世代のスラング「Rizz」が3万2000以上の票を獲得し、選ばれた。

この用語は「charisma(カリスマ)」の中間の言葉をとったもので、「他者を自身のセンスや魅力などで惹きつける力」を指す。

動詞としても、たとえば「rizz up」のように使われる。これは「chat up(相手を誘惑する)」と同様に、「人を惹きつける、誘惑する」という意味をもっている。

また「rizz」がたくさんある人のことを「rizzler」とも呼ぶ。

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過去の「今年の流行語」は下記の通りで、2005年には日本で開発され、2004年11月に英国の新聞Timesが採用し、大ブームとなった数独=「Sudoku」が選ばれている。


2022年 
goblin mode

「goblin mode」は俗語で、「in goblin mode」や「to go goblin mode」という表現で使われる。コロナ禍の2022年2月にSNSで流行した。

「社会規範や期待を否定する形で、堂々かつ自己中心的、怠惰、ずぼらで強欲である行動のタイプ」

普通の生活に戻ることを拒否する人々や、SNS上で表現される達成不可能な美的基準や持続不可能な生活に反抗する人々の、一般的な雰囲気を捉えたもの。

2021年 vax 

vaccine(ワクチン)

2020年 Words of an unprecedented year

「前例のない年を表す単語たち」

環境問題、政治経済、社会運動、ソーシャルメディア、科学技術、世界英語の広がり」など様々な分野ごとに、新しい語が生まれ、1つの単語には絞れなかった。

2019年 CLIMATE EMERGENCY

気候変動を低減するあるいは抑止するための措置が急務である状況

2018年 Toxic

ネガティブな意味で、社会問題・政治問題のほか、あらゆる物事や状況とセットで使われた。

  • toxic waste (有毒廃棄物・ゴミ)
  • toxic workplace (有害な職場)
  • toxic relationship (害のある関係)

2017年 Youthquake

youth (若者) と quake (地震)

若者の行動や影響から生ずる著しい文化的、政治的、社会的変化」:若者の強力な力が政治にまで影響を及ぼすようになった。

2016年 Post-Truth

「非常に緊迫した」政治的な1年を反映する言葉として選んだ。

客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞。6月のブレグジットと11月の米大統領選を反映した選択。

2015年 

初の絵文字「Face with Tears of Joy」うれし泣きの顔

世界で最も使われている絵文字(英国での利用率は前年比20%増、米国でも17%増)

2014年 vape

電子タバコを使用すること、または器具自体
ロンドンで初のベープカフェがオープン

2013年 selfie

自分撮りした写真

2012年 omnishambles

BBCテレビの風刺政治コメディ "The Thick of It" から生まれた造語で、「omni=すべて」と「shambles=大混乱」をくっつけた。ロンドン五輪に関する失言や不適切発言、欧州金融危機などによる混乱状態ならびに対処の誤りを表す。

2011年 squeezed middle

ミリバンド労働党党首(当時)がBBCのラジオ番組で口にした言葉で、労働党は中産階級をターゲットにする必要があると話したときに使った表現で、直訳すると「圧迫されている中間層」

2010年 big society

キャメロン首相が2010年7月、big societyとは何かについて演説を行った。「大きな社会とは言い換えればliberalism(自由主義)であり、empowerment(権限付与)であり、freedom(自由)である」と説明し、「中央官庁のエリートから街の男女へ権力を再配分する」との考えを示した。

Teslaと中国(上海)自由貿易試験区臨港新片区管理委員会は12月22日、土地の取得に関する調印式を行い、上海に大型蓄電装置を製造する新たなギガファクトリーを建設するプロジェクトが正式に始動したことを明らかにした。

Teslaにとって米国以外で初の大型蓄電装置を生産するギガファクトリーで、計画では2024年の第1四半期に着工し、第4四半期に稼働開始する。

超大型商用バッテリー「Megapack 」を生産し、グローバル市場に供給する計画で、初期の計画では「Megapack 」を年間1万台生産する。蓄電の規模は40ギガワット時(GWh)。Megapack は1ユニットで約3.9メガワット時(MWh)の蓄電が可能で、これは約3600世帯の1時間の電力消費量に相当し、再生可能エネルギーをより効率的に貯蔵・配分できる。

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Teslaは2023年4月9日、上海市に大型蓄電装置「Megapack 」の工場を建設すると発表した。新工場の生産能力は年間1万ユニット、容量ベースで同約40GWh(ギガワット時)に上り、中国国内だけでなく世界各国に輸出する。

同社は上海市南東部の臨港新区に年間110万台のEV工場の「ギガファクトリー」を構える。Megapack の工場も同じく臨港新区に建設される。

2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始 

臨港新区は、「このプロジェクトは上海市が外資企業の積極誘致だけでなく、市場メカニズムの導入や法治の推進、国際化されたビジネス環境整備などに注力してきた成果だ。対中投資に対する外資企業の信頼を高める効果がある」と述べ、歓迎している。

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現時点ではMegapack はカリフォルニア州の工場だけで製造されている。その生産能力は上海の新工場と同じ年間40GWh。

Teslaは電池セルの一部を自社生産するとともに、外部からも電池セルを調達し、車載電池パックや蓄電装置に組み込んでいる。同社の電池セルのサプライヤーは日本のパナソニック、韓国のLGエナジーソリューション、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と比亜迪(BYD)の4社。

Megapack にはもともと三元系のリチウムイオン電池が使われていた。しかし2021年と2022年に起きた発火事故の後、CATLから(エネルギー密度が相対的に低い)リン酸鉄系のリチウムイオン電池の調達を開始した。

横浜市経済局企業誘致・立地課は12月21日、Samsung Electronicsが横浜市西区の「みなとみらい21地区」に半導体の次世代パッケージング技術の研究拠点「Advanced Package Lab」を新設すると発表した。

Samsungの投資規模は今後5年間で400億円(約3500億ウォン)を上回ると予想され、政府がその半分、最大200億円の助成金を支給する。

Advanced Package Labは、合計2000坪の土地に、技術研究ができる施設やオフィスなどを構え、2024年度に開設する予定。研究開発の概要として、「先端パッケージ技術は、半導体業界が迎えつつある微細化の限界を突破するための方法の一つとして注目されている。異なる半導体を水平および垂直につなげるヘテロジニアスインテグレーションを使い、小さなパッケージによりたくさんのトランジスタを集積し、1つのパッケージにさまざまな機能を実装できるようにする」どと説明している。

「横浜はパッケージ関連企業が多く、優秀な大学と人材もあるため、業界、大学、研究機関などと協力するのに適した場所の一つだ」としている。


経産省は同日、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の開発テーマ「高性能コンピューティング向け実装技術」に関して、採択審査委員会での審査を経て、日本サムスンを採択先として決定したと発表した。

日本サムスンの採択事業テーマは「高性能大面積3.xDチップレット技術の研究開発」で、ポスト5G情報通信システムを支えるHPC(高性能コンピューティング)/AI(人工知能)用プロセッサ向けチップレットモジュールに関し、処理性能向上のためのさらなる高集積化とチップ間データ転送帯域の向上、大面積化と製造性の向上によるコストダウンおよび電源の安定供給の実現を目的に、2.xD/3Dを組み合わせた「3.xDチップレット技術」を開発するとしている。

この開発目的達成のため、同社は専用のパイロットラインを構築。チップを効率良く3Dに実装する技術「ファインピッチChip to Waferボンディング」、より多くのチップを集積させるための大型化技術「高機能大面積樹脂インターポーザ」、大型化しても反りを抑えて製造性を維持するための技術「大面積サブストレートの微細フリップチップ実装技術」、異種多チップモジュール内でも安定した電源を供給する技術「電源特性向上技術」の研究開発を、日本国内の材料/装置メーカーと連携を図りながら行っていく方針。

経産省は最大で2分の1を補助する。半導体支援のために用意した「ポスト5G基金」から拠出する。

次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社「Rapidus」が北海道に建設する新工場に対しては、政府はポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の採択先として、2回計3300億円を補助している。

2023/4/26 政府、ラピダスに2600億円の追加補助

他に、半導体支援として下記の2つがある。

1) 経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」 概要と、承認済みの計画(今回を含め18件)

2) 特定半導体生産施設整備等計画認定制度があり、これまでTSMC、キオクシア、マイクロンメモリ(2件)が多額の助成金を認められている。

戦時中に日本本土で働かされた韓国の元徴用工7人が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は12月21日、同社に賠償を命じた高裁判決を支持し、原告の勝訴が確定した。

女子勤労挺身隊として動員された韓国人3人と遺族1人が三菱重工業へ損害賠償を求めた訴訟も、賠償を命じた判決が確定した。

一、二審では原告が製鉄所や飛行機工場で過酷な労働を強いられたことを認め、元徴用工に対して1人当たり1億ウォン(約1100万円)、元挺身隊員には1人当たり1億~1億5千万ウォン(約1650万円)の賠償を命じ、日本企業側が上告していた。
今回の裁判の元徴用工や元挺身隊員はいずれも故人となり、遺族らが裁判を引き継いでいる。

日本政府は元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決したとの立場をとる。しかし、韓国大法院は2012年に「植民地支配に関わる不法行為の損害賠償については請求できる」との解釈を提示した。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPOSCO-NIPPON STEEL RHF JV の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の商標権2件と、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち 発電技術特許などの特許権6件の差し押さえを決定した。

韓国大法院は2022年8月にも三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令を確定させる予定であったが、(恐らく韓国政府の介入で)最終判断をしないまま、現在に至っている。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

付記

戦時中に強制労働させられたとして元徴用工と元挺身隊員が起こした裁判で、韓国の最高裁は12月28日、三菱重工業を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についてそれぞれ上告を棄却し、企業に賠償を命じた2審判決が確定した。


付記

日立造船の敗訴が確定した訴訟で、同社が2019年に賠償金相当額を「供託」していたことが判明した。

同社は2審で敗訴した直後の2019年1月に「強制執行を防ぐため」として、6000万ウォン(約660万円)を韓国の裁判所に供託した。

原告側は訴訟の賠償金として供託金を受け取る手続きを行う方針。

供託金を原告側が受けとれば、日立造船が賠償金を支払ったことになる。

付記

ソウル中央地裁は2024年1月23日、日立造船被害者のLさん側が供託金を賠償金として受け取るために申し立てていた差押取立命令の申立てを認めた。

韓国最高裁は2024年1月11日、戦時中に八幡製鉄所(現在の北九州市)で強制労働させられたとする元徴用工の遺族らが日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、日本製鉄の上告を棄却、約1億ウォン(1100万円)の賠償を命じる判決が確定した。2023年12月以降、最高裁の判断が下るのは3回目で、いずれも日本側が敗訴している。

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韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化


朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した。「これが最後の機会だと思う」と強調した。小渕恵三首相と金大中大統領による1998年の日韓共同宣言を「発展的に継承する」と言及した。

日本側には「日本政府の包括的な謝罪、日本企業の自発的な寄与で呼応することを期待する」と求めた。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)による共同事業を念頭に「両国の経済界の自発的な寄与を検討中と聞いている。日本政府も反対しないという立場と理解している」と明らかにした。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 (過去の経緯も)

韓国政府は上記に基づき、政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う「第三者弁済方式」による手続きを進めている。 但し、一部の原告は政府案を拒否している。

今回勝訴が確定した原告らに対しても適用する方針とされる。


英科学誌ネイチャーは12月14日、2023年に科学分野で話題になった今年の10人に大阪大学の林克彦教授らを選んだと発表した。

林教授は雄マウスの細胞から卵子をつくり、子どもを誕生させることに成功した。同誌は絶滅危惧種の保全に役立つ可能性がある「驚異的な成果」と評価した。

林教授らは2023年3月、哺乳類である雄マウスのiPS細胞から世界で初めて卵子をつくった研究成果を発表した。卵子を受精させ、雄の細胞だけで子どもの誕生にも成功した。

チームは、雄 (性染色体 XY) のマウスの尾から細胞を採取し、それらを幹細胞に変換した。

この過程で、そのような細胞の約3%が自然にY染色体を失う。

これらのYを持たない細胞を分離し、細胞分裂中にエラーを引き起こす化学物質で処理した。これらのエラーのいくつかは、X染色体を重複させた細胞を生じさせ (性染色体 XX) 、事実上、それらを雌性細胞にした。

チームはこれらの卵子を受精させ、その結果得られた胚を雌のマウスに移植した。630回の胚移植からわずか7匹の生きた子が生まれた。


現在、マウスでの作業を他の動物、北白毛のサイ(northern white rhinoceros:Ceratotherium simum cottoni) に適用しようとしている。現在知られている北白毛のサイはたった2匹しかおらず、その両方が雌で、このままでは絶滅する。うまくいけば、絶滅系統を保存する方法となり得るが、ラボでサイの精子や卵を育てることは、マウスよりもはるかに難しいとしている。


「今年の10人」は、下記参照
  
https://www.nature.com/immersive/d41586-023-03919-1/index.html

住友化学は12月12日、CO2からメタノールを高効率に製造する実証に向けたパイロット設備を愛媛工場に新設し、運転を開始したと発表した。NEDOのグリーンイノベーション基金事業の助成を受けて建設したもので、2028年までには実証を完了し、2030年代の事業化、および、他社へのライセンス供与を目指す。

メタノールは、合成樹脂や接着剤、薬品、塗料など化学品の基礎原料で、世界で年間約8,000万トンの需要があり、現在は、天然ガスや石炭ガスを主原料に、高温高圧下で複数の製造工程を経て生産されている。

天然ガス等の部分酸化で製造した一酸化炭素 (CO) に、酸化銅-酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物を触媒として、50-100気圧、240-260℃で水素 (H2) を反応させる。
  CO + 2H2 → CH3OH                 

COの代わりにCO2からメタノールを効率的に合成するための触媒や製造技術の開発が行われてきた。しかし、従来のCO2からのメタノール製造には、大量のエネルギーが必要な「高温・高圧」反応条件が不可欠であり、可逆反応であることによる収率の低さや副生する水による触媒劣化といった課題があった。

住友化学は島根大学 総合理工学部の小俣光司教授が研究を進めてきた内部凝縮型反応器(Internal Condensation Reactor)に着目し、2020年9月に二酸化炭素からメタノールを実用化に見合うレベルで高効率に合成する共同研究を推進することとした。

島根大学は引き続き触媒とプロセスの基礎技術の開発を進め、住友化学はその基礎技術をもとに触媒とプロセスの工業化に取り組み、これらの問題を解決し、高効率なメタノールの合成反応の確立した。

既存技術では難しかった反応器内でのメタノールや水の凝縮分離が可能であり、これにより、収率の向上、設備の小型化、省エネルギー化につながるとともに、触媒劣化の抑制も期待できるとしている。

内部凝縮型反応器の原理

本技術の特徴

 反応器内で生成メタノールを分離
   ⇒ 収率工場、設備小型化、省エネルギー化の実現

 副生する水の分離 ⇒ 触媒劣化の抑制



メタノールを、ごみの焼却処理により発生する二酸化炭素と再生可能エネルギー由来の水素を原料として合成すれば、温室効果ガス排出量の削減と有用な工業製品の生産を同時に達成することができる。

また、合成ガス(一酸化炭素、二酸化炭素および水素の混合ガス)からも製造ができるため、地域の使用済みプラスチックやバイオマス資源を合成ガスに変換し、この合成ガスを原料としてメタノールを得ることで、炭素循環の実現が可能となる。

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