「no」と一致するもの

LG Chemの電池子会社LG Energy Solution は3月12日、2025年までの5年間で米国に45億ドル以上を投資すると発表した。少なくとも2工場を建設、米国での電気自動車の成長に対応し、能力を70GWh増やす。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社 (2020年12月1日発足)

LGはGMとのJVのUltium Cells LLCで、オハイオ州 Lordstown の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWh+α の次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場の建設中で、2022年の稼働を目指している。両社は急速なEV普及に対応するために 能力35GWhの第2工場の建設を協議中だが、今回の発表はこれとは別である。

2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表

第2工場についてはLG側は「上半期中に投資規模や建設場所を確定する」と述べた。能力は35GWhとしている。
候補地としてテネシー州Spring HillのGMの組み立て工場が挙がっており、州当局との話し合いを行っている。
GMはこの工場で20億ドルを投資し、電気自動車(Cadillac Lyriq など)工場を建設すると発表している。

付記 GMとLGは4月16日、第二工場のテネシー州Spring Hillでの建設を発表した。記事

LG単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、GM、Ford Motor、Chrysler などに供給しているが、2工場が完成すると、米国では単独で75GWh、GMとのJVで65GWhの能力となる。
ミシガン工場はオバマ米大統領が2010年7月の起工式に参列するなど注目されたが、いろいろな問題が発生した。

2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止 

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LGは「Green New Deal(大規模エコ投資)」政策により急成長が予想される米国の電気自動車バッテリー市場で先手を打つ。

GMは次の5年間で電気自動車と自動運転車に270億ドルを投資すると発表しており、電池需要が増大する。同社は1月に、2035年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を全廃すると明らかにしている。

新たに建設する設備では、自動車用のパウチ型とエネルギー貯蔵システム(ESS)向けパウチ型に加え、ピックアップトラック専門のEVメーカ ーのLordstown Motorsや、EVバスメーカーのProterraなど、電気自動車のスタートアップを中心に需要の大きい円筒型バッテリーも生産する。

電池には角型、パウチ型ラミネート型)、円筒型がある。

民生用は円筒型が一般的だが、自動車用では円筒型の場合、セルとセルの隙間が無駄になるため、余り使われない。その中でTeslaは円筒型を採用している。円筒形セルの代表的なサプライヤーはパナソニック、LG化学とBYD等 の中国企業である。

他の企業が角型に集中する中、LGはパウチ型に注力する。「設計、価格、工程と寿命、熱性能の面で競争力を持つ」としている。

ロイターによると、LGはTeslaのニューモデル向けに4680型(直径46㎜、高さ80㎜)円筒型のサンプルを作ったとされる。(現行は直径21㎜、高さ70㎜)

LG は上半期に工場候補地を選定する計画で、新しく建設する工場は、100%再生可能エネルギーのみで運営する。

今回の投資で、LG Energy Solution は、急成長が予想される米国の電気自動車、ESS市場でトップの座を強固にすると予測されている。

LG Chemは韓国と米国のほか、ポーランドと中国にも電池工場を持ち、各地で増産計画を進める。調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2020年の世界シェアは23%で中国寧徳時代新能源科技(CATL)の26%に次ぐ2位につける。


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一方で、この時点での発表には裏があるのではとの見方もある。

LG Chemが同業のSK Innovationを車載電池の営業秘密の侵害で訴えていた係争で、米国際貿易委員会(ITC)は2月10日、SK Innovationに米国への輸入禁止命令を下した。

SK Innovationは米ジョージア州で建設中の車載電池工場で部品調達ができず生産停止を迫られる。(実際は両社の和解を求めたものである。)

2021/2/12 米ITC、SK Innovationに輸入禁止命令 

SKの生産が停止となれば、電気自動車促進(Green Transportation Goal)を公約に掲げるバイデン大統領のグリーンエネルギー 政策に悪影響を与えるという見方がある。

Georgia州選出の民主党上院議員は議会で、ITCの決定はジョージア州の労働者とバイデン大統領の電気自動車推進策への "a severe punch in the gut" であると批判した。これを受け、 米運輸省はSKとLGの対立がバイデン大統領の方針に与える影響を分析すると発表した。

今回の発表はこれに対する牽制であるとの見方もある。 自社の投資拡大を通じて米国でのバッテリー需要に十分対応が可能だと主張するものという。

また、SK Innovationの工場があるジョージア州の知事はバイデン大統領に対し、SK Innovationに関する決定を覆してほしいと要請した。
これを受け、LG側は新しく建設する工場を同州に決めたいとの申し入れを行った。また、SK Innovationの工場を買いたいとする向きがあれば、LGもこれに加わって運営を引き受けたいとのレターを同州の議員に送ったとされる。

実際には、ITCの命令はSKに今後の生産を禁止するものではなく、事実上の猶予期間を設定し、LG Chemとの和解を促するものである。

金額の問題だけであり、SKがLGの提案をのめば、大統領のグリーンエネルギー 政策に悪影響を与えることにはならない。

企業間の紛争に政治が関与するのはおかしい。

医療検査機器開発のマイテックと琉球大学は3月15日、「量子結晶」を用いたプラズモン増強効果により新型コロナウイルスを2分で可視化する新規検査法を共同開発した と発表した。

PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するため、手技が煩雑で結果を得るまでに数時間(通常、1~4時間)かかる。また、迅速抗原検査はどこでも簡単に検査できるが、PCR検査と比較すると感度が低く一度に大量の検査はできない。

開発された検査法は、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術を活用、蛍光顕微鏡で観察する。

マイテックは、バイオチップ(プロテオ®)表面に1分で金属錯体の結晶(量子結晶)を固相化させる特許技術を有しており、この技術を応用し、1滴の血液でがんを早期診断する新しい検査法を確立している。

今回、上記の技術をCOVID-19の診断に応用する研究開発を、琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学の研究チームと共同で行った。

これまで2回の試験で、感染者と非感染者の計175人の検体を扱い、72~94%の割合でPCR検査の陽性の判定と一致した。

この新しい検査手法をCV(Coronavirus Visualization)検査と命名した。CV検査では検査時間を大幅に短縮できることだけでなく、測定前の工程が2ステップと簡便で、かつ迅速抗原検査では検出できないような低ウイルス量の検体でも定量的にカウントすることができた。


仕組みは下図の通り。

手順1.光の増強効果がある量子結晶の試薬と、新型コロナウイルスに反応する抗体を付着させた プロテオ®バイオチップを準備する。量子結晶でナノレベルのくぼみをつくる。

マイテックは プロテオ®バイオチップ(蛋白質等を特異的に検出するバイオチップ)の表面に1分で量子結晶を固相化させる特許技術を有している。

量子結晶はマイテックが世界で開発に成功した新たな概念の新規プラズモン物質固体中での自由電子の集団励起の量子)で、蛍光物質の光を増強する特徴を持ってい る。
また、量子結晶は通常12時間以上かかる金属錯体の固相化を1分に短縮する事ができる。

手順2.検査を受ける人の唾液や鼻腔から採取した検体に標識抗体(蛍光物質)を混ぜ、チップにたらす。 ここまでを最短2分で済ませることができる。

検出 感染している場合は、ウイルスと抗体がくっつき、光がミラーボールの反射のように増強されるマイテックの技術でウイルスに付着した蛍光物質が増強され、通常の顕微鏡でも確認できる。ウイルスがなければ、抗体とくっつかず、洗浄されるため、光らない。

共同記者会見で、琉球大学大学院医学研究科の金城武士助教は「これまでウイルスを可視化して診断しようというアイデアはなかった。迅速、簡便で一度に大量の検査ができ、多くの患者をいっぺんに診断する状況には非常に有用だ」と強調した。

製品の開発費に数千万円かかり、その確保が課題となる。実用化した場合、1検体で5千円程度の検査費用を見込み、さらなる低減を目指す。

東京五輪・パラリンピックまでに実用化したい考えで、空港の検疫所やイベント会場など、人出が多い場所での検査を見込んでいる。

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バイオベンチャー「マイテック」は長谷川克之氏が1999年に妻の長谷川幸子社長とともにを設立、息子の裕起氏が加わった。広範囲分野の研究を独学で進め、「量子結晶」「過酸化銀メソ結晶」を発見、2011年にそれをもとに超早期のがん診断を簡易かつ安価に行える世界初のがん診断ツールを開発した。

「過酸化銀メソ結晶」のチップに、がん患者の血液から分離させた血清を乗せると、がん細胞から出る「ヌクレオソーム」を吸着し、がんの大きさが直径0.1ミリ以下の超早期のがんでもその有無を約3分で診断できる。蛍光顕微鏡で確認する。

対象となるのは、膵がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝がん、大腸がん、舌がん、甲状腺がん、腎臓がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がんなどの固形がんで、がんのリスクをA(リスク低)・B(要観察)・C(リスク高)の三段階に分類・判定する。

現在、リスクスクリーニング検査(リスク判定)として全国の医療機関で実施している。

米国立衛生研究所(NIH)は3月5日付で、新型コロナウイルス感染症の治療指針を更新し、重症患者に、関節リウマチなどの治療薬「トシリズマブ」(中外製薬のアクテムラ)を、既にコロナ治療で広く使われているステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」と併用して投与することを推奨した ことが判明した。

既報の通り、中外製薬は3月11日、COVID-19治療薬候補「アクテムラ」(Tocilizumab)の海外での試験で、主要評価項目を達成しなかったと発表した。
他に、主要評価項目を達成しなかった例と、主要評価項目を達成した例がある。

2021/3/12 中外製薬のCOVID-19治療薬候補「アクテムラ」、海外で効果確認できず 

一方、英政府は2021年1月7日、「アクテムラ」(Tocilizumab)と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

1月8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。
コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

2021/1/9 英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効」

今回、米国立衛生研究所(NIH)は英国での臨床試験で、酸素補給が必要な入院中の重症患者に、トシリズマブを抗炎症薬と共に投与すると死亡率の改善がみられたことを考慮し、トシリズマブとデキサメタゾンの併用を認めたと見られる。

 推奨は下記の通り。

「トシリズマブ」と「デキサメタゾン」の併用

対象の患者は、
過去24時間以内にICUに入院し、侵襲的人工呼吸器、非侵襲的人工呼吸器(NIV)、または
高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を必要とする患者
ICUには入らないが、
NIVまたはHFNCを必要とし、炎症のマーカーが大幅に増加している、酸素の必要量が急速に増加している患者

なお、低酸素血症の患者で、通常の酸素補給が必要な患者にはレムデシビル、デキサメタゾン+レムデシビル、又はデキサメタゾン単剤 を推奨

https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/statement-on-tocilizumab/


中外製薬は、上記の海外試験での主要評価項目を達成しなかったとの発表に際し、年内に国内でCOVID-19治療薬として承認申請する計画に変更はないとしている。

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「トシリズマブ(Tocilizumab)」(中外製薬の製品名 アクテムラ):

トシリズマブは大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体。関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、高安動脈炎・巨細胞性動脈炎、 キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。海外ではコロナ治療薬のレムデシビルと併用する治験が行われている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。

「サリルマブ(Sarilumab) 」(Sanofi の製品名 ケブザラ):

ヒト型モノクローナル抗体で、アクテムラに次ぐIL-6阻害薬。炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節の破壊や変形から生じる機能障害、疲労、骨粗鬆症など)を緩和することが期待される。

Sanofiと米国のRegeneronが共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州2017年に承認され た。日本ではサノフ2017927日 に既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果において製造販売承認を取得した

サノフィは2017年12月に旭化成ファーマと日本でのライセンス契約を締結した。サノフィおよびRegeneron社が製造を担い、旭化成ファーマが流通・販売を 担う。

抗炎症薬「デキサメタゾン」

英オックスフォード大は2020年6月16日、抗炎症作用のある一般的なステロイド剤デキサメタゾンが、新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らすのに効果的だとする臨床試験の結果を公表した。

これを受けて英国の保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症の標準治療に午後からデキサメタゾンを含めると表明した。

日本の厚生労働省は、7月に新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。
効果が検証され国内で使用が認められた治療薬は、5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。

既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。

日本経済新聞(2021/3/14)は、大日本住友製薬がパーキンソン病の患者に再生医療を施す臨床試験を2022年度に米国で始めると報じた。

パーキンソン病は有効な治療法がなく、症状の進行をゆるやかに抑える対症療法しかない。iPS細胞で実際に症状を改善する治療法開発につなげたい考えだ。


京都大学医学部附属病院は2018年7月30日、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験を8月1日より開始すると発表した。

パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドパミンを分泌する神経細胞が失われる難病で、体が震えたり筋肉がこわばったりする。

再生医療用iPS細胞ストックから提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、分化誘導したドパミン神経前駆細胞(計約500万個)を、定位脳手術により、患者の脳の線条体部分(左右両側)に移植する。 手術は、頭部を固定した上で頭蓋骨に直径12mmの穴を開け、そこから注射針のような器具を用い、細胞を注入する。

本治験は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)と大日本住友製薬より支援を受けて実施される。治験が成功すれば大日本住友製薬が開発を引き継ぎ、実用化を目指す。

2018/7/30 京大がiPS細胞でパーキンソン病治療臨床試験へ


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大日本住友製薬の再生・細胞医薬分野の事業化計画は下記の通りで、本件は2022年度上市目標としている。

1. 小児先天性無胸腺症(RVT-802)

T細胞の正常な発達に必要である胸腺が存在しないか未発達のため、T細胞の数が少なく、様々な感染症に対する抵抗力が不十分で、生後まもなく感染症にかかり、再発を繰り返す。

RVT-802は、先天性無胸腺症の小児患者に移植されて免疫応答機能を発揮するように作成された培養ヒト胸腺組織で、生涯に1回きりの再生医療である。

本剤は心臓病の小児の心臓手術中に除去されたヒト胸腺組織で患者の大腿四頭筋に移植される。患者自身の骨髄由来幹細胞が本剤に移動して成熟T細胞に分化することによって、感染を防御する。治療後612カ月で感染を防御するのに十分な胸腺機能が発達する。

20194月に米国で申請、201912月審査結果通知を受領、再申請の準備中。


2. 加齢黄斑変性

大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は2013年12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。

加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発


3. パーキンソン病  上記


4. 網膜色素変性

神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」について、2020年611日の厚生科学審議会再生医療等評価部会了承されたと発表した。

「網膜色素変性」は、遺伝子のキズが原因で光を感じる組織である網膜が少しずつ障害を受ける病気で、人口約5000人に1人の割合で患者がいるとされている。

京都大iPS細胞研究所(CiRA)が「iPS細胞ストック事業」で備蓄しているiPS細胞を使い、大日本住友製薬が網膜シートを作成する。 理化学研究所が免疫反応試験を行う。

2020/6/15 iPS網膜シートの移植、臨床研究開始へ 


5. 脊髄損傷

厚生労働省の専門部会は2月18日、iPS細胞を使って脊髄損傷を治療する慶応義塾大学の臨床研究計画を了承した。
慶應義塾特定認定再生医療等委員会が、2018年11月27日に計画を承認し、厚生労働大臣へ申請していた。

iPS細胞から作った神経のもとになる神経前駆細胞を患者に移植し、機能改善につなげる世界初の臨床研究である。

2019/2/20 iPS細胞で脊髄損傷治療

これに関し2020年11月、慶應義塾大学と大日本住友製薬の共同研究で、臨床用ヒトiPS細胞から効率的にグリア細胞(オリゴデンドロサイトなど)へ分化する臨床応用可能な誘導方法を開発し、脊髄損傷モデル動物の脊髄への投与により低下していた運動機能の改善を認めることを確認したことが発表された。

(1)作製された細胞は免疫染色、遺伝子発現解析でグリア細胞分化指向性が高いことを確認

(2)移植した細胞は多くがオリゴデンドロサイトに分化し、再髄鞘化を確認

(3)細胞移植したマウスで、脊髄損傷により低下した運動機能が改善


6. 腎不全

慈恵大学・東京慈恵会医科大学、明治大学、バイオス、ポル・メド・テック、大日本住友製薬は2019年4月5日、iPS細胞を用いた「胎生臓器ニッチ法」による腎臓再生医療の2020年代での実現を目標として、共同研究・開発などの取り組みを開始すると発表した。


ヒト
iPS細胞から分化誘導したネフロン前駆細胞を、ヒト腎臓再生医療用遺伝子改変ブタ」の胎仔から採取した腎原基に注入し、その後、腎原基を患者に移植することによって、臓器ニッチを利用した機能的腎臓の再生を目指すもの

「胎生臓器ニッチ法」用いた腎臓再生医療の事業化は、5者協力のもと大日本住友製薬が担う。

2019/4/9 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始 

日米豪印4か国の首脳(菅首相、Biden大統領、Morrison首相、Modi首相)は3月12日、テレビ会議を行い、共同声明("The Spirit of the Quad") とFact Sheetを発表した。

首脳は、様々な分野で実践的な協力が進展していることを歓迎するとともに、ワクチン、気候変動、重要・新興技術について、それぞれ作業部会を立ち上げることで一致した。

世界保健機関やCOVAXファシリティを含む既存の関連する多国間組織との緊密な連携の下、インド太平洋へのワクチンの公平なアクセスを強化すべく協働する。

気候変動が世界的な優先課題であるとの認識の下で団結し、パリ協定に沿った気温の制限を実現可能とし続けることを含む全ての国の気候行動を強化すべく行動する。

イノベーションが自由で開かれ、包摂的で、かつ強靭なインド太平洋と一致することを確保するために、将来の重要技術に関する協力を開始する。

東シナ海及び南シナ海におけるルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応するべく、海洋安全保障を含む協力を促進する。
国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化への我々のコミットメントを再確認し、また、日本人拉致問題の即時の解決の必要性を確認する。
ミャンマーにおける民主主義を回復させる喫緊の必要性と、民主的強靭性の強化を優先することを強調する。

ワクチンについては以下の通り。

「Quad」のパートナーは、パンデミックの収束を更に加速させるための画期的なワクチンパートナーシップを立ち上げる。

世界保健機関(WHO)やCOVAXファシリティを含む既存の関連する多国間メカニズムと緊密に連携し、インド太平洋の国々におけるワクチン接種を強化し支援すべく協働する。

安全で有効なワクチンを世界中での利用可能性を確保することから始める。承認されているワクチンの製造能力の増大を優先させ、インド国内の施設における安全で有効な新型コロナ・ワクチンの製造拡大を達成するために連携する。

安全で有効なワクチンの製造、調達及び配送のために、資金面及び物流面での需要に対応する。

米国は、米国国際開発金融公社(DFC)を通じて、インドのBiological E Ltd. と連携し、同社が2022年末までに、Johnson & Johnson製のワクチンを含めたワクチンを少なくとも10億回分製造できるよう製造能力を増やすための資金協力を行う。

日本は、JICAを通じ、輸出向けの新型コロナ・ワクチンの製造を拡大するためにインド政府に対して円借款を供与するための議論を行っている。

Biological E は、米国のBaylor College of Medicine 及びDynavax Technologies Corp.と協力しワクチンを開発している。Baylor CollegeのBCM Ventureの抗原と、Dynavaxのアジュタント(CpG 1018)を使ったワクチンで、最近 Phase Ⅰ/ Ⅱ 治験を完了し、間もなくPhaseⅢに入る.

同社は別途、Johnson & Johnsonとの間でインドでの生産受託の契約を結んだ。年間6億回分のワクチン製造及び充填の受託とされる。

日米豪印のパートナーは、既存の健康安全保障・開発プログラムを活かし、「最後の1マイル」(全ての人への)のワクチン接種のための取組を強化する。ワクチンの受入れ準備と配送、ワクチンの調達、保健医療人材の即応性、ワクチンに関する誤った情報への対応、地域社会の関与、予防接種能力等に関する各国への支援を含む。

米国は、既存のプログラムを活用してワクチン接種能力をさらに高め、予防接種に焦点を当てた地域のプログラムに少なくとも1億ドルを活用する。

日本はCOVAXファシリティとの連携及び支援を確保しつつ、4千百万ドルの無償資金の提供や新たな円借款の供与等を通じ、ワクチンの購入、コールド・チェーン支援といった途上国のワクチン接種プログラムを支援する。

豪州は、大洋州の9か国及び東ティモール向けのワクチンへのアクセスと健康安全保障を確保するための4億7百万米ドルの既存のコミットメントに加えて、東南アジアに焦点を当てたワクチンの提供と「最後の1マイル」の配送支援のため、7千7百万米ドルを貢献し、調達を支援し、ワクチンの配送を準備し、東南アジアの保健システムを強化していく。


インドでは3社がワクチンを開発している。インド政府は1月にBharat Biotechのワクチン Covaxin を承認した。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
Bharat Biotech International
with
Indian Council of Medical Research - National Institute of Virology
Inactivated Whole-Virion Inactivated SARS-CoV-2 Vaccine (BBV152) 2 0, 14 IM Covaxin
インド 2021/1/3

2021/1/4 インド、COVID-19 国産ワクチン承認 

Biological E Ltd 
with Baylor College of Medicine / Dynavax Technologies (USA)
Protein Subunit BECOV2 2 0, 28 IM Ⅰ/Ⅱ
Cadila Healthcare
(
Zydus Cadila
DNA DNA plasmid vaccine
 
3 0, 28, 56 ID 付記
 ZyCoV-D
インド 2021/8/20

Zydus Cadila のワクチンは次にインドで承認を受けると見られている。 → 2021/8/20 承認
2~8℃での保管でよく、承認前から世界中から能力以上の注文が来ているという。

なお、AstraZenecaは2010年6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表したが、インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。

このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給 

中外製薬は3月11日、COVID-19治療薬候補「アクテムラ」の海外での試験で、主要評価項目を達成しなかったと発表した。

中外製薬の親会社 Rocheは2020年5月28日、Gilead Sciences と共同で多施設共同無作為化二重盲検国際共同第III相臨床試験(REMDACTA試験)を開始すると発表した。

重症COVID-19肺炎による入院患者を対象に、「Actemra®remdesivirとの併用療法 」と「プラセボとremdesivirとの併用 」と比較して安全性および有効性を評価するもの。

重症の入院患者650人を対象としたこの試験で、主要評価項目(標準的な医療措置を受けている重症COVID-19肺炎による入院患者における28日時点の退院までの期間の改善)を達成しなかった。

死亡の可能性、人工呼吸器の使用または死亡まで進行する可能性、臨床状態等の主要な副次評価項目も未達であった 。

アクテムラ(トシリズマブ)は大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 。関節リウマチ, 若年性特発性関節炎, 成人スチル病, 高安動脈炎・巨細胞性動脈炎, キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。

ーーー
Rocheは2020年7月29日、新型コロナウイルス関連肺炎による重症入院患者を対象に欧米で実施したアクテムラ(トシリズマブ)の第3相臨床試験「COVACTA」の結果について、主要評価項目を達成しなかったと発表している。

試験は、重症の新型コロナ関連肺炎による成人入院患者450例が対象で、標準治療にアクテムラを上乗せすることでの有効性・安全性を検討する目的で実施された。

主要評価項目の「4週目の臨床状態の改善」については、アクテムラ群はプラセボ群に対し、統計学的な有意差は認められなかった。

4週間後の死亡率は、アクテムラ群19.7%、プラセボ群19.4%で、有意差は認められなかった。

退院(退院待機状態を含む)までの期間はアクテムラ群20日間、プラセボ群28日間で、有意に期間を短縮した。ただ、同社は「主要評価項目は未達のため、その差について統計学的な有意性を判断することはできない」としている。

人工呼吸器未使用日数はアクテムラ群22日間、プラセボ群16.5日間で有意差は認められなかった。

4週目時点の感染症の発生率は、アクテムラ群38.3%、プラセボ群40.6%、重篤な感染症の発現率は、アクテムラ投与群で21.0%、プラセボ投与群で25.9%だった。
また、安全性について「新たなシグナルは認められなかった」としている。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は2020年4月15日、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と共同で、新型コロナウイルスに関する論文を発表した。

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

有望視されるのが、中外製薬のIL6 阻害薬「アクテムラ」トシリズマブ)で ある。

中外製薬の親会社のRocheは3月19日、米国食品医薬品局(FDA)と連携し、重症COVID-19肺炎による入院患者を対象にActemra/RoActemraの第III相臨床試験を開始すると発表した。

2020/5/6 COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム

英政府は2021年1月7日、関節炎治療薬の「トシリズマブ」と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。

英政府はRocheと連携する。

コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

2021/1/9 英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効」

米下院は3月10日、1.9兆ドル(約200兆円)規模の新型コロナウイルス対策法案(American Rescue Plan ) を賛成多数で可決した。
バイデン大統領は3月12日にホワイトハウスで同法案に署名して成立させる。

付記 大統領は1日早めて3月11日に署名、成立させた。

米下院は2月27日未明、1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案を可決した。

2021/3/1 米下院、1兆9千億ドルのCOVID-19対策法案可決 

米上院は3月6日、これを一部修正し、可決した。

失業保険の州支給分への上乗せ(3月14日に期限切れ)は、現行は週300ドルの上乗せとなっているが、下院は400ドル上乗せとした。しかし、これに対する反対が強く、最終的に現行通りの300ドル上乗せに修正した。

下院が通した法案には最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、「予算決議」の下では「最低賃金引上げ」は対象外であると判断された。
このため、上院ではこれは削除された。

2021/3/7 米上院、1.9兆ドル経済対策法案を可決 


今回、上院で修正した分を下院で再議決した。

民主党 共和党 合計
賛成 220 220
反対 1 210 211
棄権 1 1
合計 221 211 432

2月27日の下院議決では、民主党から2議員(Kurt Schrader of Oregon & Jared Golden of Maine)が反対票を投じた。最低賃金の15ドルへの引き上げに反対とされる。

今回、最低賃金引上げ部分は除かれた。このため、Kurt Schrader議員は賛成に回った。
しかし、Jared Golden議員は反対のままである。民主党はワクチン関係などもっと狭い政策に焦点を当てるべきだと主張、上院の修正案のうち最低賃金引上げを除外したなどは支持するが、まだ彼の懸念を払拭するものではないとしている。

下院の2回の議決及び上院の議決の全てで共和党からの賛成は1名もなかった。

上下両院の議決を得て、大統領は3月12日に署名し、成立させる。

現行の対策法では、失業保険の州支給分への上乗せが3月14日に期限切れとなる。3月12日に新法が成立することで、現行の300ドル上乗せが9月6日まで延長される。

対策の目玉となる1人最大1400ドルの現金給付を月内に実施する。米景気の回復を加速させ、日本を含む世界経済を押し上げるとみられている。


バイデン大統領は「この財源を携えて私たちは前進する」と述べ、新型コロナの封じ込めや経済の正常化を急ぐ意向を強調 、「歴史的な立法」を成し遂げたと議会に謝意を示した。

感染拡大が本格化した2020年3月以降の経済対策は総額6兆ドル規模に達する ため、インフレを懸念する声も上がっている。

日本化学会(小林喜光会長)は3月9日、化学遺産に新たに3件を認定したと発表した。


日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用を推進するため、化学遺産委員会を設置し、さまざまな活動を行っているが、歴史資料の中でも特に貴重なものを文化遺産、産業遺産として次世代に伝え、化学に関する学術と教育の向上及び化学工業の発展に資することを目的とし、2010年3月に第一回の「化学遺産認定」を行った。

第1回(2010年)~第8回(2017年)については下記を参照。

2017/3/10 第8回 化学遺産認定

2018年の第9回から本年の第12回までを紹介する。 詳細は表の「回数」をクリック。

2018年
第9回
44号 グリフィス『化学筆記』およびスロイス『舎密学』


アメリカのW. E. Griffisは、1871年3月から翌年1月まで福井藩の藩校明新館で物理と化学を教えた。
オランダのP. J. E. Sluysは、1871年4月に金沢藩の金沢医学館に着任し、医学やその基礎として化学などを教えた。
いずれもアボガドロの分子説に基づいた当時最新の化学を教え、水素や酸素などが2原子分子であることや原子価などについて教え、水の分子式はH2O、硫酸はH2SO4と教えた。

45号 モノビニルアセチレン法による合成ゴム


1920年代末から30年代にSBR、NBRなどの合成ゴムが発明された。工業化においては、その主原料であるブタジエンの合成法が重要であり、当時はアセチレンや発酵エタノールを原料とする様々な製法が研究された。

京都大学工学部の古川淳二はモノビニルアセチレン法を発明し、1942年に京都大学化学研究所で工業化試験に成功した。この設備はその後住友化学工業新居浜工場に移されNBRの工業生産に使われた。

日本での合成ゴムの研究・生産は連合軍によって長らく禁止され、日本での戦前、戦時中の合成ゴム関係資料はほとんど失われたが、古川淳二が保管し、1982年に京都大学、東京農工大学に寄贈した工業化試験資料は貴重である。

46号 化学起業家の先駆け 高峰譲吉関係資料


高峰譲吉は、強力な消化酵素タカヂアスターゼを安定して取り出すことに成功、医薬としての製造・販売は米国のパークデービス社を通じ、1895年に発売し世界に展開、日本では三共商店(第一三共の前身)が1899年に発売した。
1900年に高峰と助手の上中啓三によるアドレナリン高濃度抽出・結晶化の大発見を行い、世界的な医薬とすることに成功した。

2019年
第10回
47号 学習院大学南一号館ドラフトチャンバー


ドラフトチャンバーは、
揮発性の有害物質や有害微生物を扱うときに安全のために用いる局所排気装置
学習院大学南一号館は宮内省内匠寮の設計で、1927年3月に学習院高等科の「理科特別教場」として建設された。出窓式として作られた。

48号 我が国初のNMR分光器用電磁石


核磁気共鳴(NMR)の発見は1946年だが、1949年に創立したばかりの電気通信大学で、安定した磁場の電磁石を組み立て、磁気共鳴の信号を検出したばかりでなく、水素、フッ素、ナトリウム、銅、コバルト、燐、臭素、インジウムの原子核の磁気能率を測定した。中でも銅核において世界初の測定を実現したのは、大きな業績であった。

49号 島津製作所 創業記念資料館および所蔵理化学関係機器・資料等


島津源蔵(1839-1894)は、1870年に開設された京都舎密局に出入りし、教育用理化学器械の製造を始めた。1875年には島津製作所を創業した。

50号 銅アンモニウムレーヨン製造装置「ハンク式紡糸機」および関連資料


旭化成(株)のベンベルグ工場は現在、世界で唯一銅アンモニウムレーヨンとして知られる再生セルロース繊維「キュプラ」を製造する。

1928年にドイツのJ.Pベンベルグ社と旭化成の前身日本窒素肥料との間に技術導入/資本提携契約が結ばれ、日本ベンベルグ絹糸㈱が設立された。
1931年には現在のベンベルグ工場で生産が開始され、1949年に改良を加えた新型「ハンク式紡糸機」(三菱重工製)が導入された。

2020年
第11回
51号 タンパク質(チトクロムC, タカアミラーゼA)の3次構造模型


大阪大学蛋白質研究所の角戸正夫らのグループがカツオの還元型シトクロムCの構造について1973年に高分解能解析に、1980年にタカアミラーゼAの高分解能で成功した。

52号 日本の近代化学教育の礎を築いた舎密局の設計図(大阪開成所全図)


1869年にオランダ人K.W. Gratamaを教頭に大阪に舎密局が開校された。

53号 日本初の純国産「金属マグネシウムインゴット」


1930年に理化学研究所で苦汁を原料に溶融電解法による金属マグネシウムの工業生産が開始された。

日満マグネシウム(理化学研究所の事業会社で、現在名は宇部マテリアルズ)で試作に成功、同社直江津工場で生産された。

54号 日本初の西洋医学処方による化粧品「美顔水」発売当時の容器3


和歌山の桃谷政次郎は1885年に西洋医学処方による薬用化粧水を開発、「美顔水」として販売、桃谷順天堂を創業した。

2021年
第12回
55号 日本の石油化学コンビナート発祥時の資料(所蔵:三井化学)


日本の石油化学第一期計画のトップを切って1958年に三井石油化学岩国のエチレン2万トン設備が稼働した。

56号 苦汁・海水を原料とする臭素製造設備と磁製容器(所蔵:東ソー・マナック)


臭素の製造には苦汁(ニガリ)を原料とする方法と、海水から直接製造する方法がある。

東洋曹達は1941年、海軍から大量生産の要請を受け、海水直接法を採用した。
マナックは1963年まで苦汁から生産していたが、かつての同業から石製臭素蒸留塔を譲り受けた。

57号 再製樟脳蒸留塔 (所蔵:日本テルペン化学)


樟脳は樟の精油主成分で、直下式水蒸気蒸留法で製造されていたが、残る樟脳生油中にも樟脳が溶けていることが分かり、捨てられていた生油から「再製樟脳」を採る技術が開発された。
1912年完成のドイツ製の加熱水式減圧蒸留塔は1917年に焼失したが、日本テルペン化学の前身の再製樟脳㈱により1920年に国産で再建された。

英国は2020年12月31日深夜、EUから離脱したが、その後、いろいろの問題が出ている。


(批准)

2020年1224日、欧州委員会と英国政府の間で通商・協力協定に合意した。

EUのMichel大統領とvon der Leyen欧州委員長は12月30日、英国との間で合意したFTAなど将来関係についての文書にブリュッセルで署名した。

EUは12月28日の加盟国大使級会合で、EU欧州議会の批准を待たず、31日深夜に暫定適用することを全会一致で承認している。

英国下院は12月30日、521対73の大差で離脱関連法案を承認した。これを受け、Johnson英首相は郵送された文書にロンドンで署名した。
同日夜、英国上院がこれを承認、エリザベス女王の裁可も得て法律となった。

これで12月31日深夜の英国のEU正式離脱が確定した。

2020/12/25 英EU、通商協定で合意

欧州議会本会議での批准決議までには、合意文書の精査、EU加盟各国の言語への翻訳、そして貿易・外務関連の委員会審議が必要であり、これには相応の日数がかかる。そこで、今回の英EU間FTAは、これらのプロセスを年明けに先送りし、EU加盟各国政府の合意の下で、2021年初めから暫定的に発効する形をとった。

EUは2021年2月に、批准期限を1カ月遅らせ、4月末とすることを求め、英国は了承した。
北アイルランドとの通商などで早くも対立が見られており、批准の遅れは不確実性をいっそう高めかねない。

ゴーブ英内閣府担当相は欧州委員会に宛てた2月23日付の書簡で、EUが4月末までに「域内の必要条件を満たす」ことを期待していると表明。英国は「離脱協定の暫定適用期間の延長をこれ以上要請されることはないと考える」と、くぎを刺した。


(北アイルランド問題)

北アイルランド問題では、英EU合同委員会が2020年12月17日に「アイルランド・北アイルランド議定書」で合意し、英国とEUは、北アイルランドを実質的に「EU圏内」としてステータスを維持することが決まった。

これにより、EUと北アイルランド間の貿易関係については、英EU貿易協力協定の適用除外とし、英本土と北アイルランドの間の通商関係は、EUとしては「対外貿易関係」として扱うこととなった。英本土から北アイルランドに持ち込む財については、EUの規制が適用される。

英国は一旦、これを骨抜きにする Internal Market Bill をつくったが、EUとの合意に違反する部分を削除することに合意した。

しかし、北アイルランド問題について、トラブルが続出した。

1月以降の規制が不透明なことを背景に、英国の大手小売店などが北アイルランド向けの宅配貨物発送を停止したり、同地域からの注文を取り消したりするなどして、混乱が広がった。


英政府とEUは一時的な対応策をとった。

(宅配貨物)

英歳入関税庁は2020年12月31日、宅配事業者や郵便事業会社ロイヤル・メールなどが本土から北アイルランドに移送する宅配貨物について、1月1日~3月31日の間、北アイルランドの事業者の搬入時の税関申告を最大3カ月間繰り延べ可能とする措置を発表した。

(鶏肉以外の冷蔵ひき肉・ソーセージなど)

英環境・食糧・農村地域省は2020年12月14日、特定の肉製品の英本土からEUおよび北アイルランドへの輸出・移送が制限されたり、許可されていないことに対する救済措置として、6カ月間は北アイルランドへの移送を可能とする特例措置を発表した。

その後の恒久的な措置はまだ決まっていない。

(一部の食品)

英本土から北アイルランドへの移送について、スーパーマーケットやそのサプライヤーなど一部事業者を対象に、一定の条件の下で輸出衛生証明書、植物検疫証明書などの添付を3カ月間免除する措置も公表。

動物由来加工製品に植物性製品が使用されている「混合食品」、植物及び植物製品、非動物性由来の高リスク食品及び飼料

これらは臨時の措置で救済したが、期限終了後に混乱が予想される。

英本土と北アイルランド間の食品流通については、効率的に行われるよう、新たな電子システムを整備することとされている。

食品輸送に関しては、2月2日に英国から欧州委員会向けに、手続きの緩和措置を少なくとも2023年1月まで延長するよう要請したが、合意には至らなかった。

英国の北アイルランド相は3月5日、スーパーマーケットとそのサプライヤーに対して、英本土から北アイルランドへの食品移送において求められる証明書の提出免除など、現在の緩和された措置を2021年10月1日まで延長するなどとした声明を一方的に発表した。

欧州委員会は、「英国政府による Internal Market Bill に次ぐ2度目の国際法違反だ」と強く批判する声明を発表した。

「英国が離脱協定に違反する、もしくは違反をする意図がある場合は、欧州議会はEU英国間の協定を批准することは難しい」と述べ、欧州議会による批准にも影響を与える可能性を示唆した。

付記 

欧州委員会は3月15日、英国がEU離脱協定および議定書に違反しているとして、英国に対する義務不履行手続きに着手したと発表した。
手続きの第1段階として欧州委は英国に「公式通知状」を送付し、1カ月以内に「見解」の表明を求めた。
行政的な手続きで問題が解決しない場合、欧州委は、EU司法裁判所に提訴し、英国に対し制裁金を求めていく可能性も辞さないと警告した。


(新型コロナワクチン)

欧州委員会は1月29日、新型コロナウイルス対策ワクチンのEU域外への輸出に対し、許可制度を導入すると発表した。

2021/3/5 イタリア政府、新型コロナワクチンの輸出を差し止め  

これが発表されると、英国ではこれが北アイルランド議定書に抵触するのではないかと批判の声が巻き起こった。

北アイルランド自治政府首相は、北アイルランドとアイルランドの間に「厳しい国境管理」を要することになる「信じられないほど敵対的な行為」だと批判した。

こうした批判を受けて欧州委員会は、規制は「北アイルランド議定書には影響しない」と声明を発表した。

積水化学は3月1日、同社の100%子会社の積水マテリアルソリューションズが「抗ウイルス加工剤配合エタノール水溶液スプレー」について、新型コロナウイルスへのウイルス不活化試験を外部研究機関で実施し、次の効果を確認したと発表した。

・一定の条件下でこのスプレーを新型コロナウイルスに1分間接触させると、ウイルス感染価が99%以上減少した。

・一定の条件下でこのスプレーを噴霧したフィルムに、噴霧して1か月後に新型コロナウイルスを5分間接触させると、ウイルス感染価が99%以上減少した。

これらの結果により、抗ウイルス加工剤配合エタノール水溶液スプレーおよびその噴霧フィルムは、新型コロナウイルスを短時間で不活化することが判明した。
また、1カ月静置させた噴霧フィルムで効果があったことから、不活化効果の長期継続が期待できる。


スプレー成分は
抗ウイルス加工剤成分、発酵アルコール、イオン交換水

試験実施機関は、①
奈良県立医科大学 及び ②MBTコンソーシアム(「Medicine-Based Town=医学を基礎とするまちづくり」の理念を達成するために設立され、現在ほぼすべての業種から170社以上が参加)

詳細 https://www.sekisui.co.jp/news/2021/1358941_37322.html


積水マテリアルソリューションズは2017年10月、「ナウケア™(NOWCARE) ウイルス除去(エンベロープ有)エアゾールスプレー」を発売した。

積水化学グループでは、長年培ったプラスチック加工技術を生かした抗ウイルス加工剤を開発し、積水マテリアルソリューションズより2012年に抗ウイルス加工剤を発売した。これを自社でスプレーとして製品化した。

NOWCAREは、ドアノブや手すり、便座、スイッチなど、人が接触する物に対してスプレーすることで、対象物にウイルス除去効果を付与 する。
1回のスプレーで約1週間ウイルス除去効果が持続する。

インフルエンザウイルスなどエンベロープ("脂肪の膜")を有するウイルスで効果を確認している。発売後に蔓延した新型コロナウイルスもエンベロープを有している。


成分:

主成分:陰イオン系ナトリウム塩
添加物:エタノール、精製水、アルコール類

仕組み:

単糖の一種であるノイラミン酸と類似したイオン基を有したポリマーで、 エンベロープを持つウイルスを捕捉する。

ドアノブや手すり、便座、スイッチなど、人が接触する物に対してスプレーする。
室内に浮遊するウイルスが塗布面に付着すると、ウイルスを吸着して離さず、塗布面に手が触れても、ウイルスが手にくっつかない。

効果:


同社では、この発表時点で、「全てのウイルスに効果があるわけではありません」としていたが、今回、新型コロナウイルスについて効果を確認した。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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