2007年9月アーカイブ

中国最大の新聞紙メーカー山東華泰紙業(Shandong Huatai Paper)は912日、増資を行い、その資金で年産50万トンのイオン交換膜法電解設備を建設すると発表した。製紙業から製紙/化学業となる。

華泰紙業は昨年120万トンの高級新聞紙を生産し、国内市場の1/3を獲得しており、長期間輸入に頼っていたのを打ち切った。
人民日報ほか、主要新聞に用紙を供給している。

昨年、同社はDongying Xiefa ChemicalHuatai Paper ChemicalHuatai Fine ChemicalDongying Huatai Thermoelectric を買収した。

今回の計画は、そのうちのDongying Xiefa Chemical に依存している。

Dongying Xiefa Chemical はクロルアルカリで16年の経験を有し、12万トンのイオン交換膜法電解、6万トンの隔膜法電解、15万トンの過酸化水素、3万トンのクロロプレン、及びファインケミカルプラントを持っている。
山東省東営(
Dongying)は海塩と地下の岩塩が豊富で、クロルアルカリに適した場所である。

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中国の国家発展改革委員会(NDRC)は9月20日、とうもろこしの産業用加工計画の承認を3年間凍結し、承認済み計画で未着工のものも中断させる方針を明らかにした。

とうもろこしのエタノールのような工業製品への加工( いわゆるdeep processing )の禁止は、穀物を原料にするバイオ燃料による食物供給の安全保障や価格上昇に対する中国国内の懸念から出ている。

NDRCはウエブでの発表で、新しいとうもろこしのdeep processing を原則として2010年までは承認しないとした。
また、既存のそれらの計画の増強についても厳しくレビューされる。

さらに、当面、外国企業はバイオ燃料計画への参加を禁止され、国内の既存バイオエタノール企業の買収や出資も禁止される。

NDRCによると、地域によると、これら産業の進展は異常に速く、生産能力の増加はとうもろこしの生産の増加を上回っている。
2001-05年の105ヵ年計画ではとうもろこしの生産が年率4.2%の伸びであるのに対して、この分野の消費は14%の伸びを示した。)

次の3年間は deep processing 分野でのとうもろこしの消費は、全消費の26%に留められる。
NDRCは中国はdeep processing 分野のために輸入とうもろこしに頼ることは出来ないとしている。

中国のとうもろこしの生産は2010年に150百万トン(2006年比3.5%アップ)になるとみられているが、需要は同14.3%増の150百万トンを超える。NDRCではとうもろこしの輸出を減らし、輸入を促進することを提案しており、とうもろこし製品の輸出リベート率の見直しも検討するとしている。

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米国のPetroSun は中国に100%子会社 PetroSun BioFuels China を設立し、バイオ燃料事業を行なう。
藻からバイオディーゼルとエタノールを製造するもの。

同社は2007/2008年に米国各地、メキシコ、豪州で、藻の栽培池と抽出工場を建設する。

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LANXESS の経営方針

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LanxessBayerから分離独立した化学会社である。

Bayer20047月にBayer Chemicals の大半とBayer Polymers の一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer Lanxess 

20076月、Lanxess Ineos は、ABS事業の合弁会社設立で合意したと発表した。
合弁会社の社名は
INEOS ABS で、Ineos が合弁会社に51%を出資し、Lanxess ABS事業の Lustran Polymers を引き継ぐ。

2007/7/4 IneosLanxess ABS事業を買収へ 

LANXESS 19日、汎用樹脂のABS事業分離後の同社を specialty chemicals group と位置付け、13の製品群を3部門を組みなおし、2009年までに10億ユーロを投資すると発表した。

新組織は次の通り。

Heitmann 会長は投資家とメディアへの説明会で、同社が独立時と比べ高収益で競争力のある企業になったと述べた。今後、トップのspecialty chemicals 会社として、新しい3部門は3つの基準ー優れた製品・サービスの提供、事業の安定、事業の強化ーを満たすよう努力するとした。

同社は事業強化のため、次の3年間で10億ユーロ以上を投資する計画である。目玉は‘LANXESS goes Asia’である。

買収戦略については、他社のように高値で買収し、後になって減益となり競争力を失うようなやり方はしないとした。
買収は急ぐ話ではないとし、用意は出来てはいるが、やる場合には単に規模の拡大のためではなく、少なくとも3年以内に利益に貢献できるものでないといけないと述べた。

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なお、ドイツ紙の報道によると、Lanxess はブラジルの合成ゴムメーカーの Petroflex 買収の交渉を進めていたが、このたび交渉を打ち切ったという。250300百万ユーロでの買収交渉していたとされる。

Petroflex の株主はSuzano 20.1%Unipar 10.1%Braskem 20.1% であったが、Suzano の株主が変わった場合は、Suzano の持分をBraskem Unipar が購入するオプションを持っており、PetrobrasSuzano 買収に基づき、Braskem 13.4%分を取得し 33.5%とした。
Braskem は将来、これを売却する可能性があるとしていた。

2007/8/22 ブラジルの石油化学業界再編ー2 

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その後の原油価格

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2007/9/19 原油価格、高騰続く でOPECの原油生産枠拡大発表にもかかわらず、9月18日まで原油価格が高騰を続けていることを報告した。

9月20日にはWTIは一時 84.10$ の過去最高となった。

しかし、その後は利食い売りが始まり、24日にはハリケーンの被害が懸念されたほどでなかったため、石油製品の供給懸念が解消し、売りが優勢となった。25日には80$を割った。

東京市場も21日に過去最高となったが、連休明けには値下がりに転じた。

 

INEOSは9月18日、ドイツのWilhelmshavenで進めていたエタンクラッカー計画を中止すると発表した。

この1年で投資コストが30%以上、上昇しており、現状の形では採算が取れないというのが理由。
計画に参加していた
Statoil 及び E.ON Ruhrgas と協議して決定した。 

INEOSではドイツでのコア事業の拡大に引き続きコミットするとしている。 

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Wilhelmshaven ではICI-EVCのビニルチェーンINEOS ChlorVinyls が運営しており、塩素/ソーダ、VCM、S-PVC を生産している。

2005年5月、Jim Ratcliffe 会長はWilhelmshavenでの投資計画を地元政府に報告し、地元、州政府及び連邦政府からの協力の約束を得た。

投資額は12億5千万ドルで、エタンクラッカーと新しい隔膜法電解設備を建設し、VCMとPVCを大幅に増強、更にMarl からWilhelmshaven までの275kmのエチレンパイプラインを建設するというもの。

エチレン能力は80万トンで Statoil E.ON Ruhrgas が建設するガス分離設備から出るエタンを原料とする。エチレンパイプラインはMarl で欧州エチレンパイプライン(ARG)と接続する。
    
2006/6/16 欧州エチレンパイプライン (ARG) 

INEOSは2005年末にBPから石油化学子会社Innoveneを買収したが、それでも70万トンのエチレンが不足するとして、Wilhelmshaven の計画は実行するとしていた。

   INEOSについては 2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社  

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カリフォルニア州政府は20069月、自動車からのCO2などの温暖化ガスで数十億ドルの損害が出ているとして、GM、フォード、トヨタ、ダイムラークライスラー、ホンダ、日産の自動車メーカー6社を訴えた。

自動車メーカーは二酸化炭素を汚染物質と誤って定義しているとして訴訟しており、本訴訟に対しても却下を主張した。

2006/9/28 カリフォルニア州、温暖化問題で自動車メーカーを訴訟 
 

2007年9月17日、サンフランシスコの連邦地裁は、この訴えを退ける判断を示した。

判事は、有害な温室効果ガス排出により自動車メーカーがどの程度の責任を負うべきかは、司法ではなく、立法、政治判断に委ねられるべきだと指摘した。

訴訟は温室効果ガスによる地球温暖化の責任を自動車メーカーに問う最初のもので、6社の自動車がカリフォルニア州の人為的なCO2排出の30%以上を占めているとしている。

判決では、自動車からのCO2排出による被害の数量化のための基準をつくることが必要だが、それは裁判所の仕事ではなく、政治分野の仕事であるとしている。.

州側は、現状では連邦政府も議会も省庁もなんら行動しないため、カリフォルニア州としては救済されないこととなるとし、判決を検討し、控訴を考えるとしている。公害物質を川に流すような場合には裁判官はきちんと基準を決めているのに、今回決めないのはおかしいとしている。

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これに先立ち、自動車が出すCO2など温室効果ガスについて、州に排出規制権限があるかどうかが米バーモント州と自動車業界との間で争われていた訴訟で、バーモント連邦地裁は12日に州の規制権限を認める初の判決を出した。

同種の規制はバーモントのほか10州余りが採用しており、今回の結果が注目を集めていた。

米大気浄化法は、新車の排ガス中の「大気汚染物質」の規制を米環境保護局に義務づけるとともに、カリフォルニア州だけには独自規制を認め、他州は連邦規制かカリフォルニア規制のいずれかを選べる。

自動車業界は訴訟で「温室効果ガスは大気汚染物質ではない」と主張した。しかし、連邦最高裁は4月に別の訴訟の判決で、大気汚染物質であることは「法的に明白」としており、今回の判決もこの判断を踏襲した。

2007/4/5 米連邦最高裁、温室効果ガス規制で政府に促す判決 

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INEOS NOVA スタートへ

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NOVA Chemicals 9月10日、米FTCがINEOS NOVA joint ventureを承認したこと、新JVが10月1日に発足することを発表した。

NOVA ChemicalsとINEOS は本年3月22日、NOVAの北米のSM、PS事業を両社の欧州のNovaとINEOSの 50/50JVのNOVA Innovene に移管することで合意したと発表した。

  2007/3/26 NOVA Chemicals、北米のSM、PS事業をINEOSとのJVに移管 

 

NOVA Chemicals 18日、INEOS NOVAのために、Sterling Chemicals Inc.Texas City 工場のスチレンモノマーの独占権を取得したと発表した。

Sterling Chemicals は酢酸(北米3位、シェア17%)、SM(同4位、11%)、可塑剤(同3位、9%)のメーカーで、スチレンモノマーはTexas City 工場のみで、能力は775千トン。

契約では独占販売契約の期間は201712末までとなっており、JVは工場の全能力に対する独占権と、製品をフルコストベースで引き取るオプションを持ち、Sterling 所有のSM貨車を購入する。
契約発効時に
NovaSterling60百万ドルを支払う。
(仮にFTC が取引を認めない場合は、
Nova は解約料として6百万ドルを支払う)

Nova ChemicalsCEOは、この設備は停止する積りであることを明らかにした。
Sterling Chemicals の商権を取得し、同工場を停止して他の工場の操業度を上げ、生産を最適化することにより、拡販とコストダウンで採算の向上を狙うもので、年間30百万ドルの採算向上効果があるとしている。

北米の能力削減により、アジアや欧州の市場も急速にタイト化するし、北米に輸入品が流入することもないと述べた。

 

Nova Chemicals 19日にSM市場についての説明会を開催した。
 
詳細: http://www.novachem.com/investorcenter/docs/INEOS_NCX_ConfCall_09_19_07.pdf

新生INEOS NOVA は北米ではSMとPS、欧州ではPSとEPSを持ち、全世界でSMでは5位、PSでは2位、EPSでは4位のメーカーとなる。

INEOSは欧州のSM事業(工場はドイツのMarl )をJVには出さず自社で運営している。
INEOS
の米国のTexas CityのSMプラントはJVに移管。
NOVAの発泡PS事業は「Styrenix」ではなく、「発泡PS & 機能製品」部門に属しており、JVには出さず自社で運営する。

    Capacity
(
千トン) 
Rank % Share
North America Solid Polystyrene   900  1  28%
Styrene Monomer  1,690*  1  26%
Europe  Expandable Polystyrene   350  1  28%
Solid Polystyrene    540  2  21%
Global Expandable Polystyrene   350  4   6%
Solid Polystyrene   1,440   2  10%
Styrene Monomer  1,690*  5   6%
*Sterling Texas City 工場を含まず
 

なお、北米のSM市場は以下のように変わる。

  2005      → 2007
Total capacity 7,320千トン 6,545千トン
メーカー数 10 7
トップ 4 メーカー 59% 82%
Nova Chmicals 18% Ineos Nova 26%
Total/GE 16% Dow/Chevron 24%
Chevron 13% Total/GE 18%
Lyondell 12% Lyondell 14%

Sterling がSM廃業、工場停止(能力 775千トン)
IneosTexas 工場とNova2工場がIneos Novaに。
DowChevron SM/PSJV設立(予定)
  2007/4/11
Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立 

以上により、3社減、775千トン減となる。

なお、Total/GE Total (Atofina) General Electric Petrochemicals 50/50JVCos-Mar Styrene Monomer で、Carville, Louisiana 1,150千トンのプラントを持つ。

 

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酸化チタンメーカーの石原産業は、日本製紙ケミカルが2006年に操業停止した電解設備を購入し、岩国から四日市に移設して、酸化チタン製造用の塩素、苛性ソーダを自製する。来年8月に稼動する予定。

日本製紙ケミカルはクラフトパルプの漂白用に岩国工場(旧山陽パルプ)で 2,778トン/月(ソーダ)の電解設備を操業していたが、漂白過程でパルプ中のリグニンから生成するダイオキシン等の有機塩素化合物が河川や海域の環境を汚染し,大きな社会問題となっていることから、各社とも非塩素漂白(ECF)に切り替えつつあり、日本製紙もECF化を行なった。

岩国工場では二酸化塩素を使用した最新漂白法を採用。
八代工場に2ラインのうち1ラインにはオゾン漂白設備(勇払工場に続く2基目)を導入。

この結果、日本製紙ケミカルは2006年3月末をもって電解事業から撤退した。

 

酸化チタンは以下の通り幅広く使われている。
  塗料43%、インキ20%、プラスチック11%、製紙11%、化学繊維2%、ゴム2%、電子材料1%、その他10%

石原産業はトップメーカーで、四日市工場に硫酸法で8万7千トン、塩素法で同6万8千トン、計15万5千トンの酸化チタンの設備を保有している。

硫酸法イルメナイト(チタン鉄鉱 FeTiO3)を原料とする。
チタン原料鉱石は粉砕され、約300℃に加熱された濃硫酸により、酸化チタン分が硫酸塩(TiOSO4)となる。
その後、焼成、粉砕され、仕上げ処理が行なわれる。
TiO2 50~60%のイルメナイトを大量(原単位3~4t)の硫酸で処理するため産業廃棄物が多く、公害処理費が大きい。

塩素法はルチル鉱または合成ルチル(TiO2)を原料とする。
塩素化して四塩化チタン TiCl4とし、これを高温で酸化して、仕上げ処理が行なわれる。
TiO2 90%のルチルを塩素で処理し、塩素は90%回収するため産業廃棄物は硫酸法の1/10以下で、公害対策設備費は1
/3以下といわれる。

石原産業は硫酸法で以前に廃硫酸を中和処理せずに伊勢湾に捨てて有罪判決を受けており、最近問題になったフェロシルト不法投棄事件も廃硫酸の処理に関して発生した。

廃棄物の少ない塩素法への切り替えを求める声が強い。

   2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件 

石原産業では、今回の設備購入により、現在購入している塩素と苛性ソーダを自製し、コストダウンを図る。

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日本の電解プラントは設備廃棄が相次ぎ、最盛期の1974年当時には38社、54工場あったが、2006年9月には25社、30工場に減少している。

設備廃棄の中には、セントラル化学(川崎)、三井化学(大阪)、千葉電解(千葉)のように、VCM停止に伴うものがある。

このほかに、最近10年程度の間に以下のプラントが停止している。

関東電化(渋川)、三井化学(名古屋)、日本カーバイト工業(魚津)、旭硝子(北九州)、
住友化学(大分)、日本製紙ケミカル(岩国)、関西クロルアルカリ(大阪)

 

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旭硝子は9月12日、旭ファイバーグラスの事業を譲渡することを決めた。

旭ファイバーグラスのガラス短繊維事業と工業材料事業を、日本政策投資銀行と、WISE PARTNERSの運営するファンドの共同出資による持株会社のグローバル・インシュレーションに160.5億円で譲渡する。11月1日に譲渡の予定。

旭ファイバーグラスは1956年に旭硝子と世界最大のガラス繊維製造メーカー Owens Corning Fiberglass (その後Owens Corninと改称)の共同出資で設立された。その後、1996年にOwens が全持株を旭硝子に譲渡した。
なお、2006年に長繊維事業をOwens に譲渡している。

現在の事業は次の2つ。

①断熱・建材事業
  住宅を中心としたグラスウール断熱材、断熱・建材、配管用保温保冷材、グラスウール吸音材など。

②工業材料
  各種樹脂と強化材や添加剤とを混練したFTPペレット、樹脂の機能を高めるミルドファイバー、自動車用インシュレーター、樹脂の難燃化・発煙防止に有効なガラスパウダー、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂コンパウンドなど。

旭硝子では事業ポートフォリオの見直しと経営資源の再配分について継続的に検討しているが、本事業はグループとして積極的に資源投入を図る事業分野とのシナジーが少ないと判断した。

旭ファイバーグラスの事業を新設会社に分離し、その全株式を譲渡する。
土地・建物等の非営業資産は旭硝子が保有する旧会社(AGCエステートに改称)に残す。

 

譲渡先のグローバル・インシュレーションは本件のために設立されたJVで、日本政策投資銀行と、WISE PARTNERSの運営するファンド(WP1号ファンド)が共同出資した。

日本政策投資銀行は2008年10月の民営化を前にファンドへの転換を急いでおり、これまでに蓄積した事業評価能力、再生支援のノウハウを利用し、未公開株に投資し、再生して、新規株式上場(IPO) 目指す。今回はその初のケースとなる。

旭ファイバーグラスの良質な事業基盤、住宅の省エネ効果の高い断熱材事業、高い技術力の工業材料事業を評価し、旭硝子から独立した事業運営を支援することとした。

経営陣及び従業員による資本参加も検討されており、彼らが自立的かつ意欲的に事業に臨むことにより、今後更なる企業価値の向上が期待されるとしている。

WISE PARTNERSとともに、ファイナンス面やネットワーク等の提供、様々な経営資源の補完等中長期的な視点に立った企業成長を支援し、株式公開を目指す。

日本政策投資銀行では、今後もこうした取組みを積極的に進めていくとしている。

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なお、旭硝子は中小型の液晶パネル事業からも撤退を検討していることが報じられた。

旭硝子が6割、三菱電機が4割を出資するオプトレックスは、この数年業績が悪化しており、旭硝子ではこれを売却して、本業の板ガラスや液晶、プラズマテレビ用のガラス基板事業などに経営資源を集中きせる。

中・小型液晶パネル分野では2004年10月にセイコーエプソンと三洋電機が、この分野でのNo.1 カンパニーを目指すとして、三洋エプソンイメージングデバイス(エプソン55%/サンヨー45%)を設立したが、事業を取り巻く競争の激化により、予想を上回る大幅な価格低下などが続くなか、2006年12月に三洋が撤退し、エプソンイメージングデバイスと改称している。

米ディスプレイサーチによると、2006年の中・小型液晶パネルのシェアは、オプトレクスは1.1%、エプソンイメージングデバイスは10.2%(3位)。なお、トップはシャープの21.1%、2位は東芝松下ディスプレイテクノジーの11.8%。

 

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BASF、新しい買収?

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BASFは昨年6月に触媒メーカーのEngelhard を48億ドルで買収した。
買収後、グループに取り込み、 BASF Catalysts LLC と改称した。)

2006/10/12 BASF、北米事業を強化 

BASF は今回、新しい買収に動き出した模様。17日のWall Street Journal が報じた。

BASFCFOはインタビューで、買収のために100億ユーロ(16千億円)を新規に借り入れる用意があることを明らかにした。
1年以内で Engelhard の統合に成功したため、経営陣も買収に対する自信を強めたという。

「銃を撃つ用意をし、乾いた火薬があれば、撃つべきだろう(買収する気があって、金の用意があるなら、実行すべきだ)」と述べたと報じられた。

CFOの発言内容は以下の通り。

世界の最大の化学企業10社を合計してもマーケットシェアはたった20%で、最も集約化の遅れた分野のひとつである。
更なる集約が必要だ。
   
今年の初め頃は、借入が容易で低金利のため多くの企業、特に投資会社が買収に乗り出し、価格を押し上げた。
最近は借入金比率が高い買収には資金確保が難しくなり、買い手の数が減り、
BASFにとってチャンスである。
   
BASFは借入金が少ない。
借入金と営業利益の比率が
1.1で、これを2倍まで増やすこと(=100億ユーロの借入)が可能である。
  Moody から Aa3 の格付けを受けており、15 四半期連続で売上高と利益が増加し株価がも26%上昇しているのも、有利な借入を可能にしている。

原油価格、高騰続く

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OPECは9月11日に原油生産枠を11月1日から、既存枠からは140万バレル増の2720万バレル/日にすると発表した。

2007/9/12 速報 OPEC増産 

従来の増枠は現状追認が多かったが、今回は実生産量から50万バレル増であり、これで価格は下がるのではと思われた。

しかし、その後の動きは予想に反して上昇を続け、連日過去最高を更新している。

  NY WTI 東京 ドバイ
(過去最高) (2007/8/1 一時 78.77$/bbl (2006/8/8 72.30$/bbl )
9/12 一時 80.18$/bbl  過去最高 終値 72.90$/bbl  過去最高
9/13 一時 80.20$/bbl  過去最高
 (終値は
80.09$ 過去最高) 
終値 73.60$/bbl  過去最高
9/14 一時 80.36$/bbl  過去最高
 (終値は79.10$)
終値 73.70$/bbl  過去最高
9/17 一時 80.70$/bbl  過去最高
 (終値は80.57$ 過去最高)
(祭日)
9/18 一時 82.16$/bbl  過去最高
 (終値は81.51$ 過去最高)
終値 74.30$/bbl  過去最高

OPECの事務局長は14日、現在の世界の経済情勢から考え、80ドル以上の高値が続くことはないと述べた。
現在の高値の理由としては、次の3つを挙げている。

Hurricane Humberto2年ぶりに米国上陸)
 メキシコ湾で発生した熱帯暴風雨が9月13日早朝、勢力を強めて 
Hurricane Humberto となった。
 米国南部テキサス州沿岸部に上陸しルイジアナ州へ進んだ。両州で12万戸が停電し、複数の石油関連施設が操業停止に追い込まれた。

②メキシコのパイプライン爆破
 左派グループが9月10日、6箇所で石油とガスのパイプラインを爆破した。

③米国の製油能力の不足

OPEC12月総会で更に増産するのかとの質問には答えず、OPECは今後の石油の需給や在庫の状況を注視するとした。

なお、OPEC筋は18日、原油価格が15-20日以上にわたって80ドル/バレルを上回る水準を維持した場合、増産について再度協議を行う可能性が高いとの見方を示した。

ーーー

週明け17日のニューヨーク・マーカンタイル取引所ではWTI 10月渡しが一時、史上最高値を更新、終値も最高値となった。
18日に米政策金利が引き下げられ米経済が成長基調を維持して原油需要が伸びるとの見通しから買い注文が集まった。

米連邦準備理事会(FRB)は18日(日本時間18日夜)の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%引き下げ、年4.75%とすることを全会一致で決め、即日実施した。

これ受け、ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI は直後に82ドルを超えた。終値は前日比94セント高となった。

要は投機マネーが流入し、原油価格を引き上げている。

大田弘子経済財政担当相は14日、閣僚懇談会後の会見で、 
「投機的なマネーによる部分があり、短期的には上がったり下がったりする。懸念しながらみている。長期的には全体的な需給バランスによる」とし、原油価格の高騰が足元の経済に及ぼす影響を注視していると述べた。

東京市場 原油・ナフサ価格推移

 

付記 その後の価格推移

9月20日にはWTIは一時 84.10$ の過去最高となった。
しかし、その後は利食い売りが始まり、24日にはハリケーンの被害が懸念されたほどでなかったため、石油製品の供給懸念が解消し、売りが優勢となった。25日には80$を割った。
東京市場も21日に過去最高となったが、連休明けには値下がりに転じた。

 

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RAG Beteiligungs-AGは9月12日、グループを再編し、Evonik Industries に改称すると発表した。2008年前半に上場を行なう。

RAGはドイツのエネルギー会社で、エネルギー、不動産と化学品を業としている。

Degussa 1999年にHuls と合併してDegussa-Huls となり、2001年にSKW Trostberg と合併して再度 Degussa と改称した。
2000
6月に両社の親会社が合併してE-On となったが、2003年にRAGDegussa 50.1%E.Onから買収し、最大株主となった。

RAG
2003年に化学品を主要事業の一つにすることを決めた。その後、Degussa株の買い増しを行い、2006年に全株式を取得した。

 

Evonik Industries は化学、エネルギー、不動産の3部門から成る。Degussa (化学子会社)、Steag (エネルギー子会社)と RAG Immobilien (不動産子会社)は新会社に統合され、これらの名前は消える。

Evonik 造語で、「新しく・クリエイティブで・革新的」という意味が込められているという。

ドイツの石炭採鉱部門はRAGの名前で残り、Evonikには加わらない。

Evonik Industries は世界の100カ国以上で活動しており、2006年の従業員は43千人、売上高は148億ユーロ、営業利益は12億ユーロを超える。

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Evonikは、上海化学工業区に新設するメタクリル酸メチルとメタクリル系スペシャリティ製品の総合製造施設の鍬入れ式を915日に行うと発表した。総額約2億5,000 万ユーロを投資する。2009年に操業開始する予定。

国家発展改革委員会NDRC2007年3月末にこの計画を承認した。
計画の詳細は明らかにされていないが、業界筋によると、以下の製品が含まれている。

 イソブチレン  105千トン
 MMA  115千トン (直酸法)
 メタクリル酸   15千トン
 ブチルメタクリレート   20千トン
 PMMA    40千トン

2006/12/14 Degussa、上海にMMAコンプレックス建設 

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中国の国有企業のChina National Chemical Corp.ChemChina中国化工集団公司 と投資会社のBlackstone Group 9月10日、スペシャルティケミカル分野でのグローバルリーダーをつくるための戦略的提携を発表した。

Blackstone ChemChina 100%子会社のChina National Bluestar (Group) Corp. 藍星グループ)の20%を6億米ドルで取得、2人の役員を派遣する。

藍星グループでは化学分野での投資で資金を必要としている。

同社は先般、上海の浦東区星火開発地区に3段階に分けて合計20万トンのPOMプラントを建設することを発表した。

7月には甘粛省蘭州市で55千トンのブタンジオールと30千トンのポリフェにレンオキサイド計画に147百万ドルを投資する契約を蘭州市と締結した。

同じく7月に、同社は黒龍江省大慶で8万トンのSMプラントの建設を開始している。

ChemChina 会長は、「Blackstone を長期的なパートナーとしたい。Blackstoneの化学分野における幅広い経験(特にCelanese や Nalco での以前の成功経験)でBluestar の成長、拡大を支援してくれることを期待している」としている。

Blackstone 2004年に Celanese TOBにより38億ドルで買収し、ドイツ株式市場から上場廃止とした。

同社は取得の
7ヵ月後には米国証券取引委員会に7.5億ドル(その後10億ドルに修正)の株式発行(IPO)の予備登録を行い、2005年初めに株式発行して New York 市場に上場した。
同社はその後、順次持株を売却し、2007年
5月に残り株式を売却して、完全にCelanese から離脱した。
同社は短期間の間に
50億ドル以上の利益を得た。

  2007/6/2 米投資会社 Blackstone、Celanese 株式の売却完了 

Nalco Chemical は1928年創立の水処理剤のパイオニアで、2003年9月にBlackstone GroupApollo ManagementGoldman Sachs Capital Partners が共同で42億ドルで買収した。

2004年にIPO(株式公開)を行い、11月に再上場をおこなった。

一方、Blackstoneは経済成長により、中国の化学分野が長期的に成長するものと期待している。

ーーー

ChemChina China National Blue Star (Group) Corp China Haohua Chemical Industrial (Group) Corp が2004年5月に統合して設立された。

Bluestarには三菱化学がアクリル酸技術を供与している。
ChemChina Bluestar は積極的に海外進出を図っている。

2006/10/30 中国化工集団公司(ChemChina)の海外進出 

 

本年上半期に米国の投資会社Ewing Management Group は中国の2社(SMメーカーのDonghao Chemical 中国有数の園芸会社)を買収しているが、国営企業への出資は初めてと思われる。

2007/6/25 米投資会社、中国のSMメーカーを買収 

ーーー

なお、Blackstoneは本年5月に中国政府から30億ドルの出資を受け入れた。中国の外貨準備は昨年末で約1兆700億ドルと日本を上回って世界一だが、運用先は米国債に偏り利回りが低いため、シンガポールなどを真似て外貨準備の積極運用に動き始めたもの。

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インドネシア国営で最大の肥料会社PT Pupuk Sriwijaya (略称 PusriはイランのNational Petrochemical Company International との間でイランでの肥料生産のJVを設立することで合意した。

両社は50/50のJVを設立し、6億ドルを投じてテヘランに工場を建設する。2009年の完成を目指している。
製品の50%はインドネシアで販売、残りは国際市場で販売する。

原料の天然ガスはSouth Pars ガス田からパイプラインで供給を受ける。
天然ガス価格は
100万BTU当たり3~5ドルの国際価格に対して 1ドルという安値で、これはインドネシアとの友好関係の樹立のためイラン首相が約束したものであるとしている。

別途、イランとインドネシアの両政府は西ジャワのCilegon に建設予定のLNG受け入れターミナルにイランからLNGを送る案を協議している。
ターミナルの運営を担当する国営電力会社
PT PLN はカタールからのLNG供給案が潰れたため、イランからの供給を望んでいる。
希望量は年間400万トン程度としている。

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ニュースのその後

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1.CO2からプラスチック

中国海洋石油の子会社の中海石油化学China BlueChemical Ltd)が生分解性プラスチック製造のためポリプロピレンカーボネート(PPC)プラントの建設を開始したことを報告した。

2007/8/20 中国のCNOOC子会社が生分解性プラスチック製造

PPCは二酸化炭素とプロピレンオキサイドのコポリマーで、海南島東方市の化学産業都市で年間 3,000トン生産する。
中国科学院・長春応用化学研究所が独自に開発した特許技術を使用している。

二酸化炭素からプラスチックなどの高分子をつくる技術は東京理科大学の井上祥平教授(東大名誉教授:当時、東大助教授)と東大の鯉沼秀臣客員教授(当時、東大大学院生)が約40年前に見つけた。

内蒙古の蒙西高分子材料有限公司が長春応用化学研究所からライセンスを受け、内蒙古のオルドスに年産 3,000トンの工場を持ち、2002年12月に販売開始している。

東京大学、住友化学などの産学チームは9月11日、二酸化炭素からプラスチックを作ることに成功し、量産技術の開発を始めると発表した。(日本経済新聞)

野崎京子東大教授らは新しい触媒で耐熱性を改善し実用化のめどをつけた。
新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援を受けて、2012年度にも実用化する。

参加メンバーは以下の通り。
 東大、東京理科大学、慶応義塾大学、金沢大学
 住友化学、住友精化(生産担当)
 帝人(加工担当)
 三菱商事(販路開拓担当)

 参考 野崎研究室 研究内容  http://www.chem.t.u-tokyo.ac.jp/chembio/labs/nozaki/
       COCO2などの小分子を用いた合成反応 
          
 http://www.chem.t.u-tokyo.ac.jp/chembio/labs/nozaki/researchdetail2.html 

ーーー                

2.三菱化学、南ア・Sasol 社とのアクリル酸及びアクリル酸エステルの合弁事業解消

三菱化学は2001年12月に南アのSasol 社との間でアクリル酸及びアクリル酸エステルの共同事業について合弁会社を設立することで基本合意した。その後、20039月にEUの承認を得て2つの合弁会社を設立し、2004年4月に製品出荷を開始した。

①Sasol Dia Acrylates (Pty) Limited (本社:南ア)
 三菱化学 50%、Sasol 50% 出資で、アクリル酸及びアクリル酸エステルの販売、投資等の事業管理を目的とする。

②Sasol Dia Acrylates (South Africa) (Pty) Limited (本社:南ア)
 ①のJVが
50%、Sasol 50% 出資
 Sasol
 社 Sasolburg工場敷地内に、アクリル酸 80千トン、アクリル酸ブチル 80千トン、アクリル酸エチル 35千トン、精製アクリル酸 10千トンを生産。

2006/4/24  アクリル酸業界 

三菱化学は9月10日、Sasol との合弁事業を解消することに合意したと発表した。

合弁事業の経営について将来の方向性を協議した結果、それぞれが独自に事業を継続するほうが両社にとってメリットがあるとの結論に達したもの。

三菱化学が事業管理合弁会社(上記の持分50%をSasol に譲渡、自動的に①②ともにSasol の100%子会社となる。

同社は合弁解消後もSasol からの製品の引取権を持つ。
また、
2004年8月に技術供与した中国藍星社のグループ会社の沈陽パラフィンが遼寧省沈陽市で建設したアクリル酸(80千トン)、同エステル(120千トン)の製品の一部の引取り権を有している。

三菱化学では、四日市事業所におけるAA及びAEの一貫生産体制にこれらの引取り権を加え、引き続き、日本市場、国際市場における事業展開を図り、AA及びAEの川上製品から高吸水性樹脂(SAP)やエマルジョン等の川下製品までの「トータル・アクリレート・チェーン」での事業展開を進めていくとしている。

 競合する日本触媒については 2007/8/31 日本触媒 アクリル酸工場再編 参照
   

ーーー

3、ダノンとワハハの争い

仏の食品メーカーのダノン Danone が出資する中国の合弁企業「杭州娃哈哈集団」Hangzhou Wahaha Group 飲料水「娃哈哈」Wahaha)のブランド使用をめぐるダノンと中国側相手の対立がドロ沼化している。

1996年2月に宗慶後が主導するWahaha Group Danone 商標移転契約(WahahaブランドをJVに)、非競合契約、守秘契約を含むJV契約を締結し、JVを設立したが、Wahaha側がこっそりと他の会社でWahahaブランド製品を販売していることから争いが起こった。

2007/7/12 ダノンとワハハの争い、更に深刻化 

Wahaha 側は613日に杭州市の仲裁委員会に仲裁を要請したが、Danone は712に、杭州市の仲裁委員会に反論を提出した。
Wahahaが1996
年の商標移管契約を完全には実行しておらず、最近になって商標管理当局が商標移管を認めなかったと嘘をついているとした。DanoneはWahahaに対して商標移管の対価として660万ドルを支払ったとしている。

しかし、実際に商標管理当局が商標移管を認めなかったことが明らかになり、Danone側は8月末に北京裁判所に中国特許庁を訴えた。
商標移管の承認拒否の理由を書面で説明しなかったため、商標法の規則に違反しており、この決定を取り消すべきであるというもの。

訴えによると、Wahahaは1996年4月と1997年9月にWahaha Food Co.に帰属する200以上の登録商標を移管する承認を求めたが、当局は、商標所有権の喪失を避けるための企業商標管理規則(1995年施行)を理由にこの2つの申請を拒否した。

裁判所はこの訴えを受け付けたが、裁判の期日は決まっていない。

そのような規則が存在している以上、Danone側の勝ち目は少ないと思われる。

ーーー

4.BASFのスチレン事業の売却

BASFJurgen Hambrecht CEOは81日の2007年第2四半期の業績発表の席上、 スチレン事業の一部の売却に関して、買い手候補のある1社と極めて建設的な交渉を行っていることを明らかにした。

2007/8/6 BASF、スチレン事業一部の売却交渉進展

その後、一向に発表がない。

ドイツの新聞は、この交渉相手がBasell (元のShellとの50/50JV)であると伝えた。
しかし、事業価値の評価の違いや、BASF内部での意見の違いで話は進んでいない模様である。

Basellは本年7月に Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意した。
Lyondell
POとの併産設備でSMを生産しているほか、エチレンももっている。

また、Basell 自体がエチレンを持ち、更にShellから製油所も買収している。

2007/8/7 BasellShell France から製油所買収へ 

ーーー

5.信越化学、ドイツで医薬用メチルセルロース生産へ

3月20日の信越化学直江津工場の爆発事故で、セルロース誘導体の生産が停まり、医薬業界にパニックが起こった。
信越化学の生産拠点は国内は直江津しかなく、ドイツ子会社でも医薬用グレードは生産していない。

2007/3/22 信越化学 爆発事故 

2007/5/22 信越化学、直江津のセルロース製造設備の生産再開

信越化学は9月6日、ドイツ子会社SE Tylose GmbH & Co.KG2009年4月を目途に医薬用メチルセルロースの生産を開始すると発表した。直江津工場でも2008年10月を目途に医薬用の生産能力を増強する。

ドイツでは建材用も能力を増強し、ドイツの年産能力は約1万トン増加し、約5万トンとなる。日独合わせた投資額は約300億円。

ーーー

6.Bayer、MDI増設検討

Bayer MaterialScience は9月12日、欧州で2012年スタート目途に400千トンのMDI プラント建設を検討していることを発表した。
中長期的に西欧、東欧、中東での需要が伸びるのに対応する。

現在の同社のMDI 能力は110万トン。

  2006/12/20 Bayer、MDI 能力 約110万トンに  

今回の設備が完成すると、2008年スタートの上海の350千トンを加え、全世界能力は 1,850千トンとなる。

 

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韓国の公正取引委員会の公正取引法施行令の改正案について財界を中心に強い反発が出ている。
「市場支配的事業者の価格乱用行為」の判断基準を補完するもの。

現行の施行令は、「市場支配的事業者が正当な理由なしに、商品の価格を費用変動に比べて顕著に引き上げたり少なく引き下げた場合」に限って価格乱用行為としている。

今回の改正案では以下の2項目が追加された。
商品の価格が供給の費用に比べて、顕著に高い場合
商品の価格や利益率が、同種業種または類似業種の通常的な水準に比べて、顕著に高い場合

財界では、改正案が施行されれば、マーケットシェアの高い企業は商品の価格を引き上げなくても、技術開発などを通じてコストを削減すると「価格乱用行為」とみなされて、公取委の制裁を受ける可能性があるとし、企業の技術開発など原価削減の努力を源泉的に封鎖する恐れがあるとしている。
世界市場で熾烈な生存競争を繰り広げなければならない企業の足かせになる可能性が高いと批判している。

また、「顕著」とか「通常的」という曖昧な表現で恣意的な裁量が過度に拡大する恐れがあるのも問題だと指摘する意見もある。

改正案は規制改革委員会と法制処の審査などを経て11月4日に施行の予定だが、公取委では、「立法予告期間が過ぎているが、規制改革委員会に改正案を提出する前に財界や市民団体の意見をさらに集約して、最終案を確定付ける予定」としている。

付記

韓国公取委は9月3日、独占・寡占事業者など、市場支配的な事業者の価格乱用行為に対して価格または利益率で規制する内容の公正取引法施行令の改正案の中で、利益率の要件を削除した見直し案をまとめたと明らかにした。

さらに「技術革新および経営革新を通じた商品の開発やコスト削減」によって生じた利益は規制の対象から取り除くことを見直し案に明示した。

しかし、
△商品価格がコストより顕著に高く
△同種または類似業種の通常の水準より顕著に高い場合、
企業を制裁するという方針だ。

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これとは別に、韓国の公取委の課徴金賦課が問題となっている。

公取委の企業に対する課徴金賦課は2003年以降大幅に増加しており、昨年は1,753億ウォン(210億円)に達した。
今年も史上最高を更新する可能性が高い。
しかし、行政訴訟で負けたり異議申請が受け入れられて返却した額が昨年は 54件 656億ウォンと37%にもなる。課徴金を賦課した後、証拠が不足したり立証が難しくて公取委が自ら取り消した例も多い。

公取委による課徴金賦課の乱発に対して企業側の不満が強い。
課徴金の返却を受けても、公取委が課徴金賦課の時点で企業の名前を公開しているため、
「不道徳な企業」というレッテルが貼られ、企業のイメージやブランドなどにダメージを与えるとしている。

 

公取委は9月6日、現代・起亜自動車グループの不当内部取引の事実を摘発し、631億ウォンの課徴金を賦課した。
1998年に起亜自動車は経営が破綻し現代自動車の傘下に入り、現代・起亜自動車グループとなった)

公取委の調査では、現代自動車は材料費の引き上げで起亜の払うべき購入額を代納したり、現代カード社の支援のため部品会社への支払を現代カードの法人カードで決済して同社のカード手数料収入を増やしたり、社長が最大株主の輸送会社に自動車と部品の物流業務を一任するなど、他の系列社を不当に支援した取引規模が29706億ウォンになるとしている。

現代自動車側では、公取委の意見書を検討した後、行政訴訟など法的対応手続きを取るとしている。

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速報 OPEC増産

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OPECは11日、ウィーンで開いた総会で原油生産量を11月から日量50万バレル増やすことを決めた。

OPEC12カ国のうち、イラクとアンゴラ(2007年1月加盟)を除く10カ国について、2007年2月に決めた生産枠 26,700千バレル/日から1,400千バレル増やし、27,200千バレルとする。

現在の実生産量は枠を900千バレル上回る26,700千バレルであるため、実質500千バレルの増産となる。
増枠は2005年7月以来であるが、実質増産は久しぶりである。(下のグラフ参照)

現在の10カ国の能力は28,780千バレル。ほかに、アンゴラが1,650千バレル、イラクが2,070千バレルとなっている。

   既報 2007/3/17 OPEC総会、生産量維持を決定 

9月11日の東京市場ドバイ原油は72.60ドル/バレルで過去最高となっている。

付記 市場はOPECの増産が不十分とし、原油価格は上昇した。
     12日東京市場ドバイ原油終値 
72.90$/bbl
 過去最高更新
     12日NY市場WTI 10月物 一時
80.18$/bbl 過去最高更新 

 

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Solvayは6、タイのMap Ta Phut Epicerol®によるワールドクラスのエピクロルヒドリン工場を建設すると発表した。
能力は10万トンで、2009年末のスタートを目指している。

エピクロの需要はエポキシ樹脂原料として最近急速に増えており、中国では年率20%以上の伸びを示している。Solvayではアジアの需要に対応するものとしている。

Epicerol®同社が開発した技術で、菜種油からバイオディーゼルを生産する際の副生のグリセリンを原料とする。
副生グリセリンと塩酸から中間体のdichloropropanol を直接合成し、次の脱塩化水素工程でエピクロを生成する。
本年4月にフランスのTavauxで年10千トンの生産を開始した。

   2007/4/13 Solvay、バイオディーゼル副生グリセリンを原料とするエピクロの生産開始 

Epicerol®20以上の特許をとっており、American Oil Chemists' Society2007 年総会でInnovation Award を得た。また、2006年にフランス産業省から環境に貢献するイノベーションで Pierre Potier トロフィーを得た。

  参考
     2007/5/8 
植物ベースのバイオ製品の開発  

     2007/6/13 DuPont、Bio-PDOの商業生産開始  

European Commission IneosによるNorsk Hydroのビニルチェーン買収について調査を行なっているが、より詳細な調査が必要であるとして来年1月11日まで調査期間を延長すると発表した。
本来は
824日までに結論を出すところを97日まで延長していたが、更に延長する。

INEOS は5月21日にNorsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を670百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。同社は電解からVCM、PVC、コンパウンドを中心事業としている。

2007/5/25 INEOS、Norsk Hydro からポリマー事業を買収

EUはSuspension PVC (S PVC) のシェアを問題としている。
Norsk Hydro の資料では欧州のPVCの能力は以下の通りで、買収により Ineos 能力は約200万トンとなるが、他にも有力企業が存在している。

欧州のPVC能力
Norsk Hydro 2007/2報告 単位:千トン)
EVC  1,340
Solvin  1,195
Atofina   905
Hydro Polymer   625
Vinnolit   620
LVM   450
Shinetsu   400
Vestolit   360
Cires   200
Aragonesas   190
Hellenic Petrol   100

EUによると、調査の結果、国別でみて非常に高いマーケットシェアの存在や市場の状況の違いなどからみて、S PVCの市場は地域的、国別市場であり、欧州経済領域(EEA)よりは狭いものである。
このため、今回の買収によりIneos は特定の国、特に英国、ノルウエー、スウェーデンなどでのS PVC
の製造販売で強力な地位を占めることとなる。ドイツ、フランス、オランダなどの他のメーカーはIneos による値上げ努力を抑えるような競争圧力を発揮できないでいるとしている。

EU と欧州自由貿易連合(EFTA)は欧州経済領域(EEA)をつくり、統一市場(Single Market)創設の契約を締結しているが、実態がこれと両立しないものであるというもの。

EFTA1958年の欧州経済共同体(EEC)の発足に伴い、EECの枠外にあった英国など欧州7か国が設立した。
その後の各国のEU参加で、現在のメンバーはスイス、
ノールウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。但し、スイスはEEAに参加していない。

調査に際してIneos はEUの競争面での懸念を取り除く貯めに、いくつかの対策案を提示したが、EUは特に英国での競争面での不安を取り除くには不十分と判断し、更に詳細な調査をおこなうこととした。

今後、英国のS PVC市場に焦点を置いて調査をするとともに、ノルウエー、スウェーデンの市場や、苛性ソーダ、コンパウンド、硬質PVCフィルム市場への影響も調査する。

 

狭い欧州で、汎用品中心のPVCで、そういう状況は考え難いが、どうしてであろうか。

ExxonMobil Chemical は4、シンガポールでの2計画の詳細検討を終了し、建設の最終決定を行なったと発表した。
既存のコンプレックスに隣接して建設し、リファイナリーと石化プラントの原料、操業、投資のシナジー効果を狙う。

1期計画も含めた内容は以下の通り。(単位:千トン)

  1期  2期
エチレン  900  1,000
プロピレン  435   480
PE  480   650 x 2
PP  315   450
specialty elastomers  -   300
ベンゼン  150   340
paraxylene  400  
oxo-alcohol  150   125
n-butylene  270  
MTBE   80  
isopar   35  

2計画では 220 メガワットの発電所も建設する。2011年初めのスタートを狙う。

同社では、アジア太平洋地域への同社の変わらぬコミットメントを示すとともに、この地域の長期的な成長の可能性を信じて行なうものであるとしており、同社の最新の技術を出して、幅広い原料を処理して高価値製品を生産するとしている。
具体的にはメタロセンベースのエラストマー
VistamaxxPEレジンのExceedエチレンαオレフィンコポリマーのExact(R) plastomer などが含まれている。

同社は同時に、クラッカーの蒸留装置の設計・エンジニアリング・購買・建設契約(DEPC)をShaw Groupに、分解炉のEPCを三井造船と仏アルテに発注したと発表した。
三井造船は更に
PPと特殊エラストマーのEPCを受注、また、2系列のPEプラントのEPCは三菱重工業が受注した。

ーーー

シンガポールのジュロン島には、ExxonMobil の90万トンのコンプレックスのほかに、住友化学とShell の合弁のPCS (Petrochemical Corp. of Singapore) のコンプレックス(2系列 エチレン計 109万トン)がある。

    2006/4/2 シンガポールの石油化学の歴史 及び4/3 その2        

Shell は2004年頃から新たなエチレンコンプレックスの新設を検討した。

20031月、住友化学はシンガポールでの新たなエチレンプラントの建設について、Shell とともにFSを開始する旨の契約を締結した。
Shellのリファイナリーがあるブコム島でエチレン100万トンのコンプレックスを建設するものであった。

しかし、20045月に住友化学はサウジ・ラービグ計画に参加する覚書を締結、これにより、ブコム島でのエチレン計画から撤退した。

Shellは住友化学の離脱後もシンガポールの経済開発局とともに本計画を進めることとし、2005/11、東洋エンジニアリングとABBルーマス・グローバルBV社のJVに基本設計業務を発注した。
20067月、ShellはBukom IslandShell Eastern Petrochemicals Complex 建設の最終決定を行なったと発表した。2009/10年の稼動を目指す。

エチレン能力は800千トンで、750千トンのMEG、155千トンのブタジェン抽出設備も建設する。
製品は既存の海底パイプラインでジュロン島に送られる。

ExxonMobil もShell も中国にも進出している。

 ExxonMobil  福建石化計画  

 Shell   中海シェル石油化学 

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中国、中東とシンガポールの大増設が完成する頃には、アジアの市場はどうなっているだろうか。

韓国土地公社は8月28日、中国の人工爪製造の天津チンヒ美容実業有限公司が南北(韓国・北朝鮮)協力産業団地の開城(ケソン)工業団地に入居するため、入居契約を結んだと明らかにした。

また、合板製造の臨沂ベクチョン木業有限公司が入居を申請している。

 

海外資本を含む企業としては、これまで日系企業2社が進出している。

2005年に化粧品の容器を生産するテソンハタが進出した。
同社は韓国のテソン産業と株式会社ハタ
とのJVでハタが10%出資している。

本年7月にはヒロセ電機と韓国の大徳(テドック)電子の折半出資会社で電気コネクターやリードフレームを製造するヒロセコリアが入居企業に選ばれた。
中国での人件費が急上昇し、開城工業団地がソウルから1時間の距離にある点などを考慮し、開城工業団地に進出することになったとしているという。

ーーー

開城工業団地は2000年8月、金正日総書記と鄭夢憲・現代グループ会長との合意で、北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を作ることが決まった。
2003年8月に南北当局者間で投資保障、二重課税防止、清算決済、商社紛争合意書の4項目に関する経済協力合意書を交わした。

同地が北朝鮮にあるため、ここでの製品を韓国品として扱うかどうかが問題となる。

韓・シンガポールと韓・EUの自由貿易協定は、開城製品を韓国産に認めた。
「韓国産原料を60%以上使っていれば、韓国産に見なし、無関税の恩恵を与えてほしい」という韓国政府の要求が受け入れられた。

しかし、ASEANとの交渉では相当数の国が「WTOの原産地規定は、最終的な加工が行なわれた地域を基準とする」として反対し、ペンディングとなっている。

米国は、北朝鮮勤労者に対する労働搾取などを問題視してきた。

しかし、韓米自由貿易協定では、「韓半島域外加工地域委員会」を設置し、韓半島非核化の進展など一定要件の下、原則的に域外加工地域に指定するよう協定文に明示した。
開城工業団地など南北経済協力地域の生産品を韓国産と認める土台を確保したこととなる。

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四川省の普光から上海まで通じる全長1,700キロに達する天然ガスパイプライン敷設プロジェクト「川気東送プロジェクト」の工事着工が8月31日、北京で宣言された。この工事は、三峡ダム西気東輸青蔵鉄道南水北調に次ぐ5大プロジェクトと言われている。

西気東輸」は西部の天然ガスを東部に輸送するもので、新彊のタリム盆地から甘粛、寧夏、陝西、山西、河南、安徽、江蘇、浙江、上海と続く総延長4000キロのパイプラインを建設した。2005年に開通。

南水北調」は長江の上流、中流、下流からそれぞれ取水し、西北地区と華北地区の各地に引水するもので、東線、中央線、西線の3ルートがある。
総延長は
3700キロ、総工費は約15000億円。
水路が作られているが、肝心の揚子江の水が汚染されて飲み水に適さないという。

参考 2006/7/6 中国、今年の西部開発12事業を発表  

同プロジェクトでは中国石油化工集団(Sinopec)が投資、運営を行い、総投資額は627億元に達する。
普光ガス田をおもな供給源とする「川気東送」プロジ
ェクトでは、四川と重慶で使われるガスを合理的に供給することを前提とした上で、主に江蘇省、浙江省、上海に、さらに沿線の湖北省、安徽省、江西省にガスを供給する。
2010年末には年産120億立方メートルの生産能力を確保する見込み。

これにより、全国を網羅する天然ガスパイプライン網が形作られる。

ーーー

また、中国石油天然ガス集団公司(ペトロチャイナ)は8月27日、2本目の「西気東輸」パイプラインを建設すると発表した。2008年に着工し、2010年に輸送を開始する。

新疆ウイグル族自治区から天然ガスを珠江デルタと長江デルタに輸送する予定で、トルクメニスタン、カザフスタンなどの中央アジア国家を主要な供給源とする。

同社は今年7月、トルクメニスタンと協定に調印しており、すでに稼働している中央アジア天然ガスパイプライン経由で、年間300億立方メートルの天然ガスを霍爾果斯(ホルゴス)から2本目のパイプラインに引き入れるという。

 

国産天然ガスの供給
  川気東送 西気東送 平湖
事業者 Sinopec PetroChina 上海天然気公司
供給開始 2009年 稼動中 稼動中
供給量(年) 45~90億m3 120億m3  6億m3
増強計画 120億m3 120~260億m3  8億m3
供給ソース 普光ガス田 克拉ガス田ほか 平湖ガス田
延長 1,700km 3,900km 389km
(図と表は 石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料 から)

平湖ガス田は東シナ海の日中中間線の近くにある。1998年から生産を開始した。
海域にはほかに春暁、断橋、天外天、冷泉、龍井のガス田が確認されているが、春暁、断橋では埋蔵地域が日本側海域に掛かっているため両国間の問題になっている。日本政府は天外天、龍井についても中間線を越えて広がっている可能性を指摘している。

  

中国では一次エネルギー消費のうち、クリーンな天然ガスの比率を2005年の2.8%から2010年には5.3%にアップしようとしている。
しかし、沿岸部の需要の急増で供給が追いつかない状況で、「川気東送プロジェクト」と2本目の「西気東輸」はこの対策である。

国家発展改革委員会(NDRC)はこのたび、新しい天然ガス活用政策を発表した。830日から適用される。
限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙っている。

天然ガスの利用は、都市ガス、産業ガス、発電、化学品の4つに分類され、都市ガス用の利用が最優先される一方、メタノール用の使用が禁止された。社会面、環境面、経済面を考えた選択としている。

メタノールについては、これから建設を開始する計画が禁止されるが、稼動中のものや建設完了のもの、ガスの供給契約を締結済みの建設中のものについては除外される。(三菱ガス化学の重慶計画もOK)

2006年の中国のメタノールの生産量は 762万トンだが、メタノール能力のうち、7580%が石炭ベース、20%程度が天然ガスベースで、残り僅かがコークス炉ガスやオフガスとなっている。

他の石油化学や発電用も制限又は禁止された。例えば石炭が豊富な地域での天然ガスによる発電は禁止される。

また、パイプ輸送を進めるため、大規模、中規模のガス田でのLNG製造計画が禁止された。

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カザフスタンの環境相は8月27日、日本企業を含む外資が主導するカシャガン(Kashagan)油田の開発工事について、環境面その他で違反があったため3カ月停止の処分にしたと発表した。
合わせて首相はエネルギー相を更迭している。

カザフスタン北カスピ海沖合鉱区では、1999年9月より掘削された試掘第1号井でカシャガン油田の発見に成功した。
カザフスタン領カスピ海における最初の発見で、有数の巨大油田(
確認埋蔵量70億-90億バレル)であることが確認されている。
カシャガン油田のほかに、カラムカス、南西カシャガン、アクトテ、カイランの構造で炭化水素の存在が確認されており、並行して評価作業が行われている。

国際石油開発ホームページから

同鉱区では下記の各社が権利を有しており、オペレーションはEni の100%子会社 Agip KCO (Agip Kazakhstan North Caspian Operating Company N.V) が行っている。

国際石油開発    8.33%
Eni     18.52%
ExxonMobil   18.52%
Shell   18.52%
TOTAL   18.52%
ConocoPhillips    9.26%
KazMunaiGas    8.33%

当初は2008年にも商業生産が始まる予定だったが、2010年後半に延期され、開発費も大幅に増加した。

カザフスタン政府はスタートアップの遅延に不満を持っており、また、契約見直しでの石油販売取り分の増加(現在の10%を40%に修正)を求めている。

今回の停止は環境問題と関税問題で運営会社Agip KCOに違反があったというのが理由。
 (環境問題) 子アザラシの死亡、魚の減少
 (関税問題) 
ヘリコプター2機の輸入に関する脱税
別途、カザフの
Emergency Ministryでは火災安全に関する規則違反で同社を訴えるとしている。

 

付記

カザフスタンのマシモフ首相が9月6日、「KazMunaiGasを主要共同開発者とするよう要求する」と表明した。
伊ENIなどの持ち分(18.52%) 以上に引き上げることを求めているとみられる。
首相は「要求を受け入れなければ他の手段に訴える」とも述べ、外資の免許剥奪などの可能性も示唆した。

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今回のカザフスタンのやり方は、ロシアによるサハリン2計画の修正を真似たもので、契約修正を狙ったものとみられている。

サハリン2計画はシェル 55%/三井物産 25%/三菱商事 20% の出資であったが、2006年8月にロシアの環境監視当局が環境汚染の懸念があると指摘しパイプライン建設工事を中断、9月にロシア天然資源省はサハリン2工事の承認を取り消した。

同年12月の合意により、ガスプロムがサハリン2に過半数(50%+1株)出資することが決まった。
シェルは27.5%、三井物産は12.5%、三菱商事は10%となった。

    2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

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なお、国際石油開発は伊藤忠とともに、カスピ海のアゼルバイジャン共和国海域でACGAzeri-Chirag-Gunashli)油田の開発に参加している。

    2006/6/7 BTCパイプライン完成 

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イラクの産業相はドバイで開かれたIraq Oil, Gas, Petrochemicals and Electricity Summit で、イラク政府がShell 及び Dow と、イラク南部での石化計画を協議していることを明らかにした。SABICも関心をよせているという。

Basra近郊のKhor Al Zubair にある旧国営石油化学企業(SEP)のPC-1 コンプレックスを復旧し、グレードアップすることを狙うもので21億ドルの投資を考えている。

産業相によると、現在、ローカル市場や輸出向けにどんな製品、どんな設備が必要かを評価しているという。

また、イラク政府が別途、イラク中央部又は北部で全く新しい石油化学プラントの建設を検討しており、本年中にも海外の投資家と協議を始めたいと述べた。
年産100万トン能力のエチレンと誘導品を考えており、20億ドル以上を投資するとしている。

 

PC-1は1970年代後半にLummus Thyssen Rheinstahが建設した。
エタンを原料にエチレン 130千トン、EDC 110千トン、VCM 66千トン、PVC 60千トン、LDPE
60千トン、HDPE 30千トンの構成である。
1980年に
完成したが、イラン・イラク戦争で操業は凍結された。
湾岸戦争での被爆後、1992年に部分再開し、2003年のイラク戦争でも余り被害を受けず、部分的に操業を開始している。しかし予算がなく、細々と動かしている模様である。

  2006/3/29 イラクの石油化学  

原料はBasraの日量120千バレルの製油所からと見られるが、同国の精油能力不足のため、石油化学向けには余り割けず、事業の採算は期待できない。長期的にはイラクの治安の確保と産業インフラの復旧が必要である。

しかし、イラク政府が石油化学への投資を望んでおり、Shell と Dow はこれに応じることで、イラクの石油産業が自由化される前に足場を築こうとしていると見られる。
何ヶ月ももめていた新石油法は間もなく議会で議論が始まる。

8月初めに Total Chevron がイラクで4番目に大きい Majnoon 油田(Basra北方)の開発を含め、イラクで共同でプロジェクトを行なう契約を締結した。

業界ではShell はイラク最大のRumaila 油田(Basra西方)の開発計画を練っているとしている。.

Shell の広報は、同社がイラク政府と多くの問題で話をしていることは認めたが、石化計画についてはコメントをしていない。
Dowはノーコメントとしている。

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これとは別にイラク政府は国営企業の建て直しのため、湾岸諸国を中心に外国企業とのJV構想を推進しようとしている。
鉱工業省では投資家に対し各企業の利益や損益分岐点、回収期間等の詳細情報を提供している。

2006年に成立した投資法(No.3)は登録やライセンス取得手続きの簡素化、土地の割当、コンサルタントサービスの提供、情報提供、税免除などによる海外からの投資推進を規定している。政府は国産品保護の法律も設定しようとしている。

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SABICは831GE Plastics の買収を完了したと発表した。
GE Plastics はSABIC Innovative Plastics と改称した。Massachusetts Pittsfield を本拠に、世界60箇所に10,300 人の従業員を抱えている。
Sabic Innovative Plastics CEO にはGE Plastics の副社長でレジン部門の事業部長のBrian T. Gladden が就任した。

2007/5/22 速報 GEGE PlasticsをSABICに116億ドルで売却  

2007/8/28 日本ジーイープラスチックスの合弁解消 

SABICは欧州でのDSMHuntsman の石油化学事業買収に続き、エンプラ事業を手に入れた。
新しく次の製品群がSABICの戦列に加わる。

PCABS, ASA, PPE, PC/ABS, PBTPEI レジンとコンパウンド
LNPコンパウンド
Specialty Film and Sheet

*LNPは機能性コンパウンドメーカーで、川崎製鉄がICIから買収したが、2002年にGEに売却した。

なお直前の8月27日に、GE Plastics はBayer MaterialsScience から50/50JVの自動車用glazing (窓ガラス代替分野)のJV EXATEC の同社持分を買収し、100%子会社としている。
Bayer MaterialsScience は今後、独自でこの分野で活動する)

EXATEC はPCを使用した自動車用グレージングシステムの技術開発のために、1998年に共同で設立した。
フロント以外の側面、後方、天井(パノラマなど)のガラスをPCに代替するもので、PCに下塗り、UV保護コーティング、プラズマコーティングなどを行い、
10年間の耐候性と耐摩耗性を確保している。

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GEは売却発表時に、売却収入(税引き後で約90億ドル)を自社株購入に当て、2007年の60億ドルの購入計画を70~80億ドルに増やすとしている。

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全国人民代表大会の常務委員会は8月30日、反壟断法(独占禁止法)案を採択した。来年8月1日に施行される。

詳細は発表されていないが、日本経済新聞によると、ポイントは以下の通り。

反壟断委員会の設立(公正取引委員会に相当) 

競争関係にある事業者の間で、以下の協定は禁止
 ・価格の維持や変更
 ・生産や販売量を操作
 ・新技術や新設備の導入を制限

行政権を乱用して競争を排除してはならない

支配的立場の乱用を禁止
 ・不公正な高値販売や不公正な安値購入
 ・原価を下回る価格で販売
 ・正当な理由無く取引先との取引を拒絶
 ・抱き合わせ販売

合併・買収では以下の点を審査
 ・市場シェアや市場への支配力
   市場独占の判断基準=1社で5割、2社で2/3、3社で3/4以上のシェア 
 ・国民経済や消費者への影響
 ・
国家安全への影響(外資の場合

 ◎イノベーションや技術強化を促進する場合は独占を承認
   
産業政策との整合性も考慮

違法企業には最高で前年度の売上高の10%の罰金

 

今後、日本の進出企業にも影響が出てくる可能性がある。
(デジタルカメラではキャノン、ソニー、ニコンの3社合計で7割前後のシェアがある)

また、中国では地方政府が行政権を乱用して競争を排除するケースが多いが、この法律でそれが本当になくなるのか、見ものである。

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商務部反独占調査弁公室の尚明主任の解説は以下の通り。 人民網日本語版)

  1.独占禁止に向けた三大制度を確定
   法制度の3つの柱は独占合意の禁止、市場における支配的地位の乱用禁止、経営者集中の抑制

   このほか、中国の経済発展の現状に即し、行政権力乱用の排除、行政による独占行為の禁止規定を設定
   
これに対応する形で、独占合意免除制度、市場支配地位推定制度、経営者集中申告制度、経営者承諾制度などを設けた。

2.さまざまな企業の成長を支持
   立法目的は、
独占行為の予防と制止、市場競争の保護、経済の運営効率向上
    
市場の支配的地位を乱用する行為を対象としており、市場の支配的地位そのものには反対しない
    競争システムの保護を通じ、企業規模の拡大を促進し、さまざまな企業が公平競争を通じて発展することを支持

3.外資による買収に関する特別条項はない
   競争に関する審査は国内資本であれ、外国資本であれ共通
    国家安全審査は国家安全保障上の配慮によるもので、国際的にも採用されている   

4.合併買収案件の反独占審査を全ての企業種別に拡大
    全国統一で開放的かつ市場競争と秩序が存在する現代市場体系の構築を目指す
  企業の合併・買収に関する反独占審査は全ての類型の企業に対象を拡大

ーーー

新華社通信やAssociated Press は、今回の独禁法の眼目を「国家安全への影響」審査であるとしている。

立法の担当者は「独占禁止の観点に加え、national security に影響する外資の投資はその観点からレビューを受けねばならない」とし、「これは他国のやり方に合わせたものである」としている。

次の事例がこの決定の背景にある。
 ・2005年のCNOOCによる米国の石油会社Unocal 買収=実現せず
  米国議会が米国の安全を損なうとして反対。

 ・2006年初めのドバイの国営会社による米国の6つの港湾のオペレーション企業買収=実現せず
  米議会は外国企業による買収のレビュー強化の法律を作成、7月にブッシュが成立させた。

近年外国企業の対中直接投資に変化が見られ、国内企業を買収する形で中国進出を図る傾向が出てきた。
2004年以前は買収案件が外資の対中直接投資に占める割合は5%だったが、04年には同比率が11%、05年には20%に迫った。
一部の多国籍企業や投資ファンドは中国の一部産業の重点企業を買収している。

中国政府は昨年、国家独占を継続する戦略部門リストを発表した。
軍事関連、発送電、石油、ガス、石油化学、テレコム製造、石炭、航空などである。

また、2005年に米国の投資会社Carlyle Groupが中国の建設資材メーカーを買収しようとして大問題になったのを受け、外資による買収のチェックを厳しくする規則が昨年商務部と他の5つの政府機関により出されている。

以前は1億ドル以上の外資による M&A が商務部のチェックと承認を必要とするだけであったが、外資による中国企業の買収が国家経済のセキュリティに影響する場合、重要セクターでの買収の場合、有名ブランドの権利移転を生じる場合には、商務部の承認が必要となった。

今回の独禁法制定について、発展途上の中国の企業をグローバル企業との競争から守るものだとする意見がある。
(他方、国営企業の力を弱めることになるとする意見もある。)

ーーー

中国には既に、価格カルテルを禁止するPrice Law of China が存在している。

その第4条は次の通り規定している。
 事業者は合意、決議、調整その他不正な方法で価格を決めたり、維持したり、修正したりしてはならない。

.その第14条は以下のような異常な価格設定を禁止している。
 ・他と共謀して価格コントロールを行い、他の事業者や消費者の利益を損なうこと
 ・価格を過度に上げるために、値上げ情報をでっち上げたり、広めること
 ・法や規則に反して暴利をあげること
 ・その他

最近、国家発展改革委員会NDRCは1ヶ月の調査のあと、中国ラーメン麺協会( China Ramen Noodle Association )の価格カルテルを有罪とした。

ラーメン麺協会は原料の油や小麦の値上がりを受け、2006年から2007年の6ヶ月間に3回の会議を行い、統一した値上げを決めた。
協会はその業界誌に会議の議事録を掲載、値上げのニュースが消費者にパニックを起こし、ラーメン麺の大量買い占めが起こったという。

NDRCは業界に対して値上げ撤回と合意の抹消を指示するとともに、他の業界にも遵法精神を高めるよう警告した。

  詳細は China Business Law Blog (中國商法博客 August 24, 2007 参照
     
 

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ノーベル財団のホームページに教育用のゲームのページがある。
物理学、化学、医学、文学、平和、経済学ごとに、いくつかのゲームがある。
各賞を受賞した研究に関係することをゲームを通じて学ばせるものである。
  
http://nobelprize.org/educational_games/

今回、化学の分野で新しいゲーム ”Heating Plastics”が加えられた。(全て英語で、14歳以上向けとなっている)
  
http://nobelprize.org/educational_games/chemistry/plastics/index.html

1963年に化学賞を受けたKarl Ziegler とGiulio Nattaの研究によりプラスチックの開発が進んだことから、プラスチックを取り上げた。

ゲームをしながらプラスチックの理解を深めるというもので、初めにプラスチックがいろいろの製品の原料として使われていることや、プラスチックの製法についての説明があり、ゲームに入る。

プラスチックには燃やすと溶けるもの(熱可塑性プラスチック)と、溶けないもの(熱硬化性プラスチック)があるとの説明があり、下記のようにランダムに出てくる(やり直せば、異なるプラスチック製品が出てくる)6つのプラスチック製品について、一つずつ、その樹脂を燃やすと溶けるか、溶けないかを選択していく。全て正解なら OK となる。

このゲームは、Ziegler とNatta の触媒でPPを初めて製造したMontecatini を始まりとするBasell がスポンサーとなっている。

Montecatini とEdison が合併してMontedison となり、同社とHercules が合弁会社 Himont を設立した。
その後の推移は下記を参照。 

2006/4/19  ポリプロピレン技術導入競争 

 

なお、化学分野ではほかに次の2つのゲームがある。

・Chirality game(キラル・光学異性体:2001年野依良治博士ほかが受賞)
    http://nobelprize.org/educational_games/chemistry/chiral/index.html

Conductive valley game (導電性ポリマー:2000年白川英樹博士ほかが受賞 )
   
 http://nobelprize.org/educational_games/chemistry/conductive_polymers/index.html

 

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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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