2013年6月アーカイブ

中国農業部は6月14日、数日前に3種類の遺伝子組み換え大豆の輸入安全証書を発行したことを発表した。
中国政府がアルゼンチンとブラジル産の遺伝子組み換え作物の輸入を許可したという報道に続くもの。

農業部の発表では、承認を受けたのは:
 CV127   BASF開発    イミダゾリノン系除草剤耐性 大豆
 MON 87701   Monsanto開発    チョウ目害虫耐性大豆
   MON 87701 x MON 89788
     (INTACTA RR2 PRO)
  Monsanto開発    上記と、除草剤グリホサート(Roundup)耐性ダイズの掛け合わせ


この発表はアルゼンチンとブラジルの発表と一部異なっている。
MON 87701の代わりに
Bayer CropScienceが開発した除草剤グリホシネート耐性Liberty Linkが入っており、アルゼンチンの場合はコーンも入っている。

アルゼンチンの農業大臣は6月8日、中国の農業部長(大臣)と北京で会談後、中国が新たに3種の遺伝子組み換え大豆と1種のコーンの輸入を承認したと発表した。

対象:CV127、PR2 PRO、Liberty Linkの各大豆と、1161という名前のコーン

ブラジル農業省は6月10日、中国がブラジルの3種の遺伝子組み換え大豆の輸入を認めたと発表した。
両国の農業大臣は北京で開催されている中国ーラテンアメリカ・カリブ海農業大臣フォーラムに出席していた。

対象:CV127、RR2 PRO、Liberty Link の各大豆

中国農業部によると、中国では既に下記の5種の遺伝子組み換え大豆の輸入が認められている。

GTS40-3-2  〔モンサント〕  除草剤Roundup 耐性 Roundup Ready 
MON89788  〔モンサント〕
  除草剤グリホサート(Roundup)耐性
A2704-12   〔Aventis Crop Science〕 除草剤グルホシネート耐性
356043  〔
DuPont-Pioneer ] 除草剤グリホサート及びアセト乳酸合成酵素阻害剤耐性
305423  〔DuPont-Pioneer ] 高オレイン酸含有

ーーー

農林水産省のレポート「中国における遺伝子組換え作物の導入と今後の見通し」によると、中国では非食糧では既に、トマト、綿花、ペチュニア、ピーマン、ポプラ、パパイヤなどの遺伝子組み換え作物の栽培が承認されている。

このうち、綿花については1998年に中国と米国(Monsantoの抗虫綿花MON531/757/1076)がそれぞれ開発した遺伝子組換え抗虫綿花の商業化生産を許可し、河北省などで試験栽培が始まった。

遺伝子組み換え抗虫綿花の栽培面積推移は下記の通りで、全体の80%近くにも達している。

栽培用ではなく、生産加工用としては、トウモロコシ、綿花、大豆、ナタネでの輸入が承認されている。

食糧作物では2009年に、10年を超える研究開発と試験段階を経て安全性評価の審査を通過した2種類の遺伝子組換え稲と1種類の遺伝子組換えトウモロコシが「農業遺伝子組換え生物安全証書」を取得した。
引き続き、商業栽培の審査プロセスに入っている。

抗虫稲「華恢1号」:華中農業大学
抗虫稲「Bt 汕優 63」:同上 (上記「華恢1号」と一般の「珍汕97A」を交雑したもの)
トウモロコシ「BVLA430101」:中国農業科学院生物研究所 フィターゼ挿入

フィターゼはフィチン酸からリン酸を切り離す酵素群。
豚、鶏ではフィターゼ産生菌をほとんどもたないため、植物性飼料原料に多く含まれているフィチン態リンを消化・吸収することができず、消化・吸収できなかったフィチン酸は、糞中に排泄され、環境汚染の原因となる。
フィターゼ挿入でフィチン酸のリン酸を切り離し、体内で吸収させ、排出させない。


中国需要の減で鉄鉱石の価格が低迷するなか、豪州の鉄鉱山開発を巡り、日本企業で2つの異なる動きがあった。

1)伊藤忠と三井物産、ジンブルバー鉄鉱山の新規権益取得

伊藤忠商事と三井物産は6月21日、BHP Billitonの鉄鉱石事業の一部で、西豪州Pilbara地区のJimblebar 鉄鉱山を開発しているBHP Iron Ore Jimblebarの株式を一部取得する契約を締結した。

取得後の権益比率は伊藤忠商事8%、三井物産7%、BHP Billiton 85%となる。
取得総額は伊藤忠商事が約8億米ドル、三井物産が約7億米ドルで、両社はJimblebar 鉄鉱山に関連し今後発生する開発費用も、持分権益比率に応じ負担する。

Jimblebar 鉄鉱山は西豪州Pilbara地域のNewmanより東41km地点に位置し、年産35百万トン(100%ベース)体制に向け現在開発中 。

ーーー

両社とBHP Billitonは同じPilbara地区の
Mt Newman、Yandi、Mt. Goldsworthy の3つの鉄鉱石・鉄道・港湾JVを運営している。
このうち、Mount GoldsworthyはYarrie Nimingarra 地区とNewmanの北西のC地区に分かれている。

3社の持分は、今回のJVと同じく、BHP Billiton 85%、伊藤忠商事 8%、三井物産 7%となっている。

これら3つのJVの2012年度の出荷量は約180百万トンで、中国向けを中心に輸出している。

開発中の上記のJimblebar鉄鉱山(35百万トン)を含め、年間出荷量220百万トン体制へ向け、拡張を進めている。

ーーー

両社とBHP Billitonはこれまで、西豪州鉄鉱石事業の出荷能力拡張に向け、段階的な拡張計画(Rapid Growth Projects)を推進してきた。

2007年にはPort Headlandで行っていた最終処理プロセスをMt. Newman 鉱山に移設する工事や、鉄道と港湾の拡張を行った。

2010年には19.3億米ドルの先行投資を行い、鉄道・港湾、並びにJimblebar 鉱山(BHP Billiton 100%)の開発推進のため、資機材の調達や、鉄道複線化・港湾拡張工事のエンジニアリングを実施。

2011年には74億米ドルを投じ、港湾での鉱石ブレンディング用設備を新設、年間出荷能力を220百万トン超とした。

2012年には9.17億米ドルを投じて、Port Headlandの外洋に鉄鉱石出荷設備、内陸にストックヤード及び鉄道支線等の鉄鉱石供給設備を新設して年間100百万トンの港湾出荷能力を追加する計画の先行投資を決めた。

ーーー

足元の鉄鉱石需要は低迷し、アジア向けの豪州産スポット(随時契約)価格はピーク時に比べると4割程度安いが、両社は中長期でみれば需要は回復すると判断している。

両社は中長期的に見込まれる鉄鉱石の世界的な需要増に対応する為、今回の権益取得により、西豪州鉄鉱石事業の供給能力を更に拡充する。

なお、BHP Billitonは2004年にJimblebar鉱山の一部のWheelarra鉱区を中国の製鉄会社4社とのJVにサブリースした。
JVはWheelarra JV で、近隣のMt. Newman に出資する伊藤忠と三井物産も参加した。

 出資
  中国4社(武漢鋼鉄、馬鞍山鋼鐵、江蘇沙鋼集団、唐山鋼鉄集団)40% 
  
BHP Billiton  51%
  伊藤忠         4.8%
       三井物産         4.2%

Wheelarra JVは中国4社に25年間にわたり年間約12百万トンのMt. Newman鉄鉱石を供給する。
BHP Billitonはこれに加え、追加で10年間にわたり12百万トンの
C地区のMarra Mamba 鉄鉱石を供給する契約も締結した。


2)三菱商事、豪西部の鉄鉱山開発 を延期

豪州紙は6月17日、三菱商事が子会社Crosslands Resourcesの西豪州のJack Hills鉄鉱山開発とOakajee港湾・鉄道プロジェクトの作業を正式に延期したと報じた。

昨年11月には、コスト削減と縮小改編を発表していたが、JVパートナーが見つからず、今回の決定となった。

このプロジェクトは、Jack Hills鉱山の37億豪ドル規模での拡張と、Oakajeeでの港湾・鉄道インフラ整備の59億豪ドル規模の事業で合計96億豪ドルの予定であったが、Crosslands ResourcesのCEOは現状では100億豪ドルを超えるとし、パートナーの支援が必要としている。

三菱商事では、鉄鉱石の価格が下がっているため、現状では採算が合わないと判断した。

ーーー

三菱商事は2007年6月、豪州のMurchison Metalsと50/50JVで鉄鉱山拡張と輸送インフラの建設を行うことを決めた。
鉄鉱山開発のCrosslands Resources、これに関連する鉄道・港湾インフラ事業体のOakajee Port and Railを設立した。

Murchison Metalsには韓国のPoscoが14%出資している。

Jack Hills鉄鉱山では年産150万トン程度の小規模な試験操業が2006年末から開始されていたが、2011年頃に年産2,600万トン規模に拡張し、約420kmの鉄道を敷設、Geralton北方23kmにOakajee港を建設する計画であった。
当時は総事業費を30億豪ドルとみていた。

鉄鉱山の拡張には港湾・鉄道プロジェクトがキイとなるが、その後、建設予算は急騰、Murchison Metalsの資金繰りが難航したことから、同プロジェクトは保留状態が続いていた。

このため、三菱商事は2011年11月にMurchison Metalsの権益を3.25億豪ドル(約250億円)で買収し、100%子会社とした。

三菱商事はこの6 - 12カ月の間に提携先を求める意向で、候補とし中国の中鋼集団(SinoSteel)、宝山鋼鉄、鞍山鋼鉄集団、韓国のPoscoなどが挙がっていたが、いずれもまとまらなかった。

ーーー

西豪州での日本企業の鉄鉱山開発計画は以下の通り。

西豪州 Pilbara
  Robe River 鉱山
  
West Angelas鉱山
Robe River 三井物産   33%
新日鉄     10.5%
住友金属工業 3.5%
Rio Tinto 53%
西豪州 Pilbara
  Mt Newman
  Yandi
  Goldsworthy
   +
Jimblebar
BHP Billiton J/V 伊藤忠   8%
三井物産 7%
BHP Billiton 85%
西豪州中西部
  
Jack Hills 鉱山
Crosslands Resources 三菱デベロップメント
(三菱商事)
50%
Murchison Metals Ltd
 50%
三菱デベロップメント 100%
西豪州 Pilbara
  Beasley River 鉱山
Beasley River JV Beasley River
 Iron Associates 47%
新日鉄  60%
三井物産  20%
住友金属工業  20%
Hamersley Iron 53%
(Rio Tinto group)



サウジのKing Abdullahは6月23日、勅令を発し、国の週末をこれまでの木曜・金曜から金曜・土曜に変更することを命じた。今週末から適用される。
サウジと世界の他の諸国との間の週日が異なることによる悪影響と経済機会の喪失に終止符を打つためとしている。

これまでは週7日のうち4日が欧米かサウジのいずれかで金融市場やビジネス世界が休みとなり、週に3日しか相互取引が出来なかったが、今回の変更で週4日が取引可能となる。

「休日変更」を提起したサウジ政府の研究会によると、木曜の休日(年間48日)によって貿易決済や金融取引ができないため、およそ10億ドルの逸失利益があるという。

 
欧米                  
サウジ                  
相互取引 不可能 可能 不可能

        

 
欧米                  
サウジ                  
相互取引 不可能 可能 不可能


イスラム世界ではムハンマドがメッカを脱出した金曜日が安息日となっており、集団礼拝が定めである。

旧約聖書では週の7日目(土曜日)が安息日と定められている。

出エジプト記(モーゼの十戒の四戒):
「安息日を心に留め、これを聖別せよ。---七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。」

申命記:「あなたの神、主は安息日を守るよう命じられた」

ユダヤ教徒は土曜日にいかなる労働も行わないことが求められる。

イスラエルの週末は、金曜日の日没から土曜日の日没後。

キリスト教の場合は当初は安息日(土曜日)に集まって礼拝を行っていたが、のちにキリストの復活の日である日曜日に礼拝を行うようになった。


このため週5日制になった現在、週末は金曜を挟んで、木曜・金曜とするか、金曜・土曜とするかのどちらかとなる。

GCC 6か国(UAE・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビア)では、サウジ、オマーン、UAEが木曜・金曜で、クウェート、カタール、バハレーンが金曜・土曜であった。

UAEの場合、政府各部局や教育機関では木曜・金曜だが、民間セクターは多くが金曜・土曜としていた。
2006年9月1日から、政府各部局や教育機関も金曜・土曜に変更となった。

オマーンも本年5月1日から金曜・土曜に変更となった。
オマーンでも銀行は早くから木曜開店、金・土曜休みに変更し、一般企業も金・土曜が休みとなっていた。

サウジの場合、2007年に変更案が出たが、諮問評議会(Shura Council)が宗教的理由でこれを拒否した。
今回は Ministry of Civil Service(民生サービス・住宅省)の報告を検討した結果、諮問評議会が本年4月に週日変更の検討を勧告した。

サウジでは勅選議員150名からなる諮問評議会が実質的に立法権を持つ(但し国王が最終決定権)。



Michelin とインドネシアのChandra Asri は6月17日、インドネシアに合成ゴム製造JVを設立する契約に調印した。

設立するJV(名称未定)はMichelin が55%、Chandra Asriの100%子会社のPT Petrokimia Butadiene Indonesia (PBI)が45%出資する。
投資額は435百万ドルで、工場建設は2015年初めに開始、2017年初めのスタートアップを目指す。

生産品目は明らかにしていないが、Michelin は、新興国での自動車産業の高成長とグローバルな高機能タイヤ(安全で長持ちし、燃料効率がよい)への傾向で、より技術的な合成ゴムの需要が増えているとしており、溶液重合SBRなどではないかと思われる。

Petrokimia Butadiene はインドネシア初のブタジエン工場をジャワ島西部 Cilegon Chandraのコンプレックスに隣接して建設 している。
能力は年産
10万トンで、本年7月の商業生産開始を目指している。
原料のC4はChandraのナフサクラッカー(エチレン 60万トン)から供給を受ける。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画

Michelin はアジア市場でのタイヤ生産を増やすことを計画している。

インドネシアではタイヤメーカーのPT Gajah Tunggalに10%出資しており、乗用車用タイヤの製造に焦点を当てた協力協定を2004年に締結している。

ーーー

Chandra Asri は当初、Barito group75%日本インドネシア石油化学投資(丸85%、昭和電工 10%TEC 5%)が25%出資して設立され、1995年に生産を開始したが、2005年に日本側は撤退した。

2006/4/26    インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1

その後、株主が次々に代わった。

PT Chandra Asri2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、2011年11日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。

タイのSiam Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得、経営に参画した。
シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%を買収した。

Barito Pacific    59.35%    当初の株主
Temasek Holdings      シンガポールの政府系投資機関
Siam Cement Group   30.06%    
Marigold Resources   5.52%    
一般株主   5.07%    (上場)

現在の同社の能力は以下の通り。

  能力
 千トン
系列 スタート 技術
ナフサクラッカー   1 1995 Lummus
 Ethylene 600
 Propylene 320
 Crude C4 220
 Py-gas 280
LLDPE 200 1 1995 Union Carbide
HDPE 120 1 1995 昭和電工
PP
(旧
Tri Polyta )
480 2 1992 Union Carbide
1 1995
SM
(Styrindo Mono)
340 1 1992 Lummus
1 1999
Butadien
(Petrokimia Butadiene )
100 1 2013  


 

昨日の記事「Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進」で、
・RosneftとExxonMobilが
ロシア極東でのLNGプラント建設について、2013年末までに 細目を決定する
Rosneft がこれにサハリン石油ガス開発(SODECO;石油公団・伊藤忠・丸紅等のJV)やインドのONGC Videshを参加させる可能性がある
Rosneft が丸紅及び
サハリン石油ガス開発(SODECO)との間でLNG供給の覚書(Heads on Agreement)に調印した
ことを報告した。
プラントはサハリン1に建設する見込み。

現在のロシアの法律では、Gazpromのみが天然ガス、LNGを輸出する権利を持っている。

しかし、プーチン大統領は「ロシアが世界のLNG供給で3.6%しか占めていない」とGazpromに対する不満を示しており、2月13日、LNG輸出の段階的な自由化を検討するよう政府に指示した。

今回のRosneft のLNG供給の覚書締結はこれに基づくもの。

これに対し、GazpromもウラジオストクでのLNGプラント建設を計画している。

伊藤忠商事、石油資源開発(JAPEX)、丸紅、国際石油開発帝石(INPEX)及び伊藤忠石油開発が出資する極東ロシアガス事業調査㈱ とロシア国営ガス会社の Gazpromは6月22日、ウラジオストクにおけるLNGプロジェクトに関するMOUに調印した。

極東ガスは、2011年から2012年の間、Gazpromとの間で、ウラジオストク市周辺におけるLNGプロジェクトの共同事業化調査を実施致した。
この結果を受け、共同事業会社の設立に向けた協議を行い、並行して日本での共同マーケティング活動を実施することにつき基本合意した。

2030年に年産500万トンの第1プラントを、2032年に第2プラントを建設し、将来は年産1500万トン態勢とする計画。
LNG生産のためのガス田は、サハリン3のキリンスキー鉱区を想定している。

資源エネルギー庁とGazpromは2011年1月17日、ロシア東部での協力推進に関する合意文書に調印したと発表した。

内容は、
・ウラジオストク周辺における
LNG製造プラント建設に関するPre-FEED(初期設計前段階)、
CNG(圧縮天然ガス)生産・海上輸送、
・ガス化学製品の生産
に関する共同FSを2011年末までに完了するというもの。

2011/1/21 日ロ、LNG事業協力で正式調印

事業遂行のため、2010年12月6日に新会社「極東ロシアガス事業調査」が設立された。
  伊藤忠 32.5%、
伊藤忠石油開発 5%、石油資源開発 32.5%、丸紅 20%、国際石油開発帝石 10%

Gazpromは現在、サハリン南端のPrigorodnoyeにあるロシア唯一のLNG施設(サハリンエナジー所有)を通じて日本にサハリン2の天然ガスを供給している。

サハリン2プロジェクト
事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
→12.5%
・三菱商事 20%
→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル
<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、同地で液化後、LNGをタンカーで輸出

Gazpromはサハリン3でも、キリンスキー鉱区とアヤシ・東オドプト両鉱区を開発している。

                       サハリン3プロジェクト
鉱  区 キリンスキー アヤシ(Ayashsky)、東オドプト(Odopinsky) Venin
事業主体 未定(2006年入札の見込み)
ガスブロム
未定(2006年入札の見込み)
ガスブロム
ヴェニネフチ(ウェーニン)

<出資企業>
・ロスネフチ・アストラ(露、49.8%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ
 (露、25.1%)
シノペック(中、25.1%)

    
Rosneft 74.9%
Sinopec25.1%

当初
・エクソンモービル社(米、33.35%)
・テキサコ社(米、33.35%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社
 (ロシア、16.55%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.55%)
当初
・エクソンモービル社(米、66.7%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社
 (ロシア、16.65%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.65%)
推定可採埋蔵量 ①石油    約4.53億トン
  天然ガス  約7,200億立方メートル
①石油    約1.67億トン
②天然ガス  約670億立方メートル
①石油 約1.682億トン
②天然ガス
    約2,580億立方メートル
開発の現状 99.4 生産物分与対象鉱区に認定
   (ただし、未だ生産物分与契約は締結
    されていない。)
02.9 テキサコが今後20年間で90億ドル
   の投資を検討していることが明らかに
   した。
04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区
   から外し、入札が無効となった

09.6 ガスプロムが開発権を取得
93   開発権を入札、モービル
   (現エクソンモービル)とテキサコが落札
04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区
   から外し、入札が無効となった
09.6 ガスプロムが開発権を取得
03  ロスネフチが地質調査の権利
  を取得
05.7 中国のシノペックと探鉱事業
   のための合弁企業を設立   

   地震探査調査を開始 


Gazpromは、LNG輸出事業の一環として、サハリンからハバロフスクを経由しウラジオストクに延びるガス輸送用パイプラインの敷設を進めている。プリゴロドノエに次ぐ国内2番目のLNGプラントをウラジオストクに建設し、LNGを輸出する計画である。

 


Rosneft とExxonMobilは6月21日、2011年に締結した戦略的協力協定の進展状況を発表した。

Rosneftは2011年にBPとのグローバルな戦略的提携が破綻した後、BPに代わる提携先を探していたが、2011年8月30日にRosneftとExxonMobilは両社が北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意したと発表した。

両社はこれに先立ち、黒海の海底油田の開発で合意しているが、これを包含した。

両社は2012年4月16日、上記のStrategic Cooperation Agreementを実施する契約を締結した。

  2011/9/1     Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携

両社はまた、サハリン1計画に参加している。


1)黒海と北極海(Kara Sea)開発のJV

2つのJV、黒海(Tuapse Block)のTuapsemorneftegaz SARL、Kara SeaのKarmorneftegaz SARLが設立され、活動を開始する。
ともに、Rosneftが66.67%、ExxonMobilが33.33%を出資する。

これらの開発資金は合計で32億ドル以上とみなされており、大半はExxonMobilが負担する。

2013年中にデータを収集し、2014年に掘削を開始する。


2)北海の7ブロック追加

本年2月、両社は戦略的協力の範囲を拡大、北海の7つのブロックを追加した。ロシア領北海のChukchi Sea、Laptev Sea、Kara Seaの鉱区で、約60万平方kmに及ぶ。

近くJVを設立する。


3)西シベリアのタイトオイル開発

西シベリアでタイトオイルを開発するJVの設立を準備中。

Rosneft が51%、ExxonMobil が49%出資する。

4)ロシア極東でLNGプラント建設

2013年末までにLNGプラントの立地、天然ガス液化技術、運営形態を決定する。
現在のところ、プラントはサハリン1に建設する見込み。

Rosneft のSechin社長は、サハリン1計画に30%出資するサハリン石油ガス開発(SODECO;石油公団・伊藤忠・丸紅等のJV)や同じく20%出資するインドのONGC Videshを参加させる可能性があると述べた。
また、
生産能力は年500万トンを想定しており、既にこれを上回る購入希望があるという。

Rosneft は6月21日、丸紅及びサハリン石油ガス開発(SODECO)との間でLNG供給の覚書(Heads on Agreement)に調印した。
丸紅に年間125万トン、SODECOに100万トンを供給する。


これらに加え、両社は6月11日に、Arctic Research Centerの設立と、世界中の他の地域で技術を共同利用する契約に調印した。

Arctic Research Centerの出資比率はRosneftが 66.67%、ExxonMobil が33.33%で、第一段階の費用200百万ドルはExxonMobilが負担する。第二段階の250百万ドルは両社が折半する。


BPは6月18日、広東省珠海のPTA第三期計画の最終承認を中国政府から取得したと発表した。

本計画は2011年2月に発表したもの。
   
2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大

第三期計画は能力125万トンで、2014年遅くにスタートする予定。
BPの最新技術を使用するもので、既存技術と比べ、排水量が75%減、温室効果ガスも65%減少する。固形廃棄物は95%少ない。

建設するのはBP Zhuhai Chemical で、BPが85%、Zhuhai Port Co.(珠海港集団、旧称 Fu Hua Group:富華集団)が15%出資する。

同社は1997年に設立され、2003年に第1系列 35万トン、2008年に第2系列 90万トンの生産を開始した。
第1系列はその後、60万トンに増強され、2012年に第2系列のデボトルネッキングで20万トンの増強を行った。

第3系列完成で、合計能力は295万トンになる。

第一系列  35万トン  60万トン
第二系列  90万トン 110万トン
第三系列     125万トン
合計     295万トン

この完成後のBPの全世界能力は930万トン、BP持分では830万トンとなる。

ベルギー Geel 130万トン PX 70万トン
PETプラント誘致
英国 Huls

ー 

酢酸 60万トン
台湾 高雄 140万トン
(90万トン)
China American Petrochemical Company (CAPCO)
   BP     61.4%

他に麦寮で酢酸 40万トン
Formosa BP Chemicals:BP 50%)

台中 70万トン
(50万トン)
210万トン
(140万トン)
インドネシア Merak 60万トン
(30万トン)
Amoco Mitsui PTA Indonesia
 BP50%、三井化学45%、三井物産5%
中国 珠海 295万トン 重慶で酢酸 40万トン(YARACO:BP 51%)
南京で酢酸 60万トン(
BYACO:BP 50%)
米国 Cooper River,
South Carolina
130万トン  
Decature, Alabama 100万トン PX 110万トン
PET工場誘致
230万トン 他にTexas CityでPX 130万トン、酢酸 60万トン
MX 10万トン
合計   925万トン
(825万トン)
 
 
韓国 蔚山 110万トン Samsung Petrochemical
2006年 持分を三星に売却

他に蔚山で酢酸60万トン
(Samsung BP Chemicals:BP 51%)

大山 70万トン
180万トン
マレーシア Kuantan 60万トン 2012年 Relianceに売却

 ーーー

BPが石油化学に参入したのは、1947年にBP(当時はAnglo Iranian Oil)がウイスキーメーカーのDistillers とのJVのBritish Petroleum Chemicals を設立したのがきっかけである。

2006/8/29 BPの石油化学のオリジン

BPは2005/4/1、石油化学の大半をInnoveneとして分離、2005年末にIneosに売却した。
     2006/6/14 
事業買収で急成長した化学会社

但し、PTAとその原料であるパラキシレン、酢酸、及び中国でのエチレンJVはその後もBPのコア事業である。


現在のBPの事業一覧は http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/investors/FOI_2008_2012_full_book.pdf

 

 

中国の有人宇宙船「神舟10号」が6月11日、内モンゴル自治区の酒川衛星発射センターから中国の最先端ロケット「長征2F」に搭載されて宇宙に打ち上げられ、6月13日に中国宇宙ステーションの実験第1号機「天宮1号」とのドッキングに成功した。
女性1人を含む3人の宇宙飛行士は「天宮1号」に10日間以上滞在し、部品交換や科学実験、宇宙からの授業などを行う予定となっている。

神舟は打ち上げのたびに研究対象を搭載する。神舟10号は人参のタネを宇宙に運んだ。

専門家は「現在われわれは漢方薬の重点研究室を澳門に設けている。澳門科技大学はこの分野で非常に高い水準と進んだ設備を備えている。今回われわれは人参の種を宇宙へ運んだ。帰還後に栽培し、澳門と吉林省の協力、わが国の新たな漢方薬産業の発展を促す」と説明した。

宇宙環境は種子に大きな影響を与える。「科学研究機関は良い変異を選択して栽培し、良質な人参の生産を実現する」としている。

酒泉衛星発射センターがあるゴビ砂漠の
東風航天城の北東の一隅に野菜栽培エリアがあり、宇宙に運ばれた野菜の種子を植え、栽培している。
種子を宇宙に運ぶのは「宇宙でのアップグレード改造」の第一歩に過ぎず、地上での栽培、ふるい分け、鑑定を経て合格した種子のみが試験栽培の対象となる。

ーーー

2003年10月に中国は有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げと回収に成功し、世界で三番目に人類を宇宙へ送り出した国となった。

神舟5号はカボチャのタネを宇宙に運んだ。

宇宙で育種したカボチャが、150キログラムを超える実を結んだ。この巨大カボチャは哈爾濱の軍隊基地で育てられ、哈爾濱香坊公園に運び込まれた。重さ150~200キログラムの実が次々と収穫されているという。

この巨大カボチャは400斤巨型太空南瓜と呼ばれている。(中国の1斤は500g)
高い価格で販売されているという。

人民網日本語版 2004/9/2

ーーー

日本もカボチャのタネを宇宙に上げた。

国際宇宙ステーション「きぼう」が民間にも有償利用されることになり、さまざまな植物の種子を打ち上げて「きぼう」に一定期間保管し、回収後は教育及び文化事業に活用するという企画が採用された。
国際総合企画とラグランジェが提案したペポカボチャ
(Cucurbita pepo)別名「おもちゃカボチャ」の種子もその一つ。 ハロウィンの飾りに使われるもので、西洋カボチャに比べるとずっと小さく、形も丸やひょうたん形などさまざまで、見て楽しむ種類。

200811月にスペースシャトル「エンデバー」で打ち上げ国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」に搭載、保管され、2009年7月、若田宇宙飛行士ととも地球に帰還した。

弘前大学農学生命科学部で栽培・採種され、応募した各地の小学校に贈られ、栽培された。
特に通常と異なった結果
は報告されていない。

 

信越化学は6月19日、米国子会社のShintechがルイジアナ州での電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定したと発表した。
増強する生産能力はVCM 約30万トン/年、カ性ソーダ 約20万トン/年、PVC 約30万トン/年で、完成は2015年頃を目指す。投資額は5億ドル。

増設後のシンテックの塩ビ樹脂の生産能力は、ルイジアナ州の工場の既存分とテキサス州の工場を併せて295万トン/年となる。

立地 PVC VCM カ性ソーダ
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
今回増設 32 30 20
合計  295  190   126

信越化学では、Plaquemine工場の総投資額2500億円に上る塩ビの原料からの一貫生産工場建設を決断した2004年当時は、米国では天然ガスの高騰が続いていて、それが恒久化するという考えが趨勢であったが、同社は「米国にはエネルギー問題を解決する力がある」と確信して一貫工場の建設を進めたという。

シェールガス革命とも称されるブームが起きる前に踏み切ったこの投資が、シンテックの最高益に大きく貢献した。

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信越グループの全世界のPVC能力は415万トンとなる。

日本 鹿島 55  
USA Shintech  295  
オランダ Shin-Etsu PVC 45 1999年、ShellとAkzoの50/50 JV のRovinを買収
ポルトガル CIRES 20

2009年8月、完全子会社化

合計 415  

2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学

2007/6/1  シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請

2010/4/6  信越化学、米国でVCM増強

 

Shintechが1974年に操業開始した当時の能力は10万トンで、米国での順位は13位であったが、今回の増設で、2位のOxyvinylの能力の約2倍のダントツのトップとなる。(能力:万トン)

 1974年当時

塩ビ事業のその後  

 増設完了後

1 BF Goodrich  49 GeonPolyone Oxyvinyls
その後PolyoneはOxyに持分売却
1 Shintech  295  
2 Diamond Shamrock 26 Goodrich (Geon)に売却 2 Oxyvinyl 168 OxyとGeonのJV
Oxy 100%
3 Borden 24 Westlake, Formosa, Shintechに工場売却
Shintechは廃棄
3 Formosa 127 台湾資本
4 Tenneco 22 Oxyvinyl、Bordenに売却 4 Georgia Gulf 120 カネカがペースト工場を
買収するが撤退。
5 Conoco 21 DuPontに売却
その後、Vista、Condea Vistaを経由、
Georgia Gulfに売却
5 Westlake 76 台湾資本
6 Firestone 20 Oxyに売却  
7 Union Carbide 18 閉鎖?
8 Stauffer 16 Formosaに売却
9 Certainteed 14 Saint-Gobain子会社
パイプ、窓枠など塩ビ製品製造
10 Goodyear 12 閉鎖
11 Robintech 11 当初、Shintechの50%株主で需要家。
倒産
12 Georgia Gulf 10  
13 Shintech 10  

 (各社の能力は信越化学発表から)

 

原子力規制委員会は6月19日、福島第1原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行する。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別され る。手順やマニュアルまでを含めると約4000ページに及ぶ。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

毎日新聞 2013/6/20

過酷事故対策編 「特定安全施設」(事故の際、中央制御室の代替として機能) 5年間猶予
「緊急時対策所」(前線本部となる免震重要棟) 仮設も当面可能(機能を満たせば)
フィルター付きベント装置 加圧水型原発は現状でも当面容認
電源車やポンプの配備  
航空機墜落などのテロ対策 5年猶予
非常用バッテリー(3つ目) 5年猶予
設計基準編 ケーブル難燃化(火災対策)  
活火山、竜巻対策の強化  
冷却装置、電源設備の多重化、多様化  
地震津波対策編 最高の耐震性  
防潮堤、水密扉  
活断層の調査対象を必要に応じて「40万年前以降」までさかのぼって拡大  
最高津波の高さ(「基準津波」)に応じた安全対策を実施  
活断層直上に重要施設の設置を認めない 日本原子力敦賀2号を認定


地震津波対策編では「活断層直上に重要施設の設置を認めない」とされたが、現在のところ、日本原子力敦賀2号は活断層直下とみなされている。

全ての基準が直ちに適用されるのではなく、5年間猶予されるものや、条件付きで当面容認されるものもある。


国内には運転開始から40年超の原発が3基、30年超が14基ある。

「40年運転制限制」では、運転期間が原則40年に限定される。1回に限り最大20年延長できるが、原子炉圧力容器のコンクリートのサンプル分析などを行う「特別点検」に合格しなければな らない。

ーーー

早期再稼働を目指す電力会社は、急場しのぎの対策で申請に殺到する見通しだが、審査の布陣は、規制委事務局である原子力規制庁や「原子力安全基盤機構」の職員ら約80人。3つの審査チームと、地震・津波分野について横断的に審査するチームに分かれて行う。
過去の審査では、申請から安全判断まで半年〜1年程度かかったが、今回は申請が殺到する上、過酷事故対策の審査も加わる。

現在、関西電力が高浜3、4号機と大飯3、4号機、九州電力が玄海3、4号機と川内1、2号機、北海道電力が泊1─3号機、四国電力が伊方3機の計12プラントについて安全審査を申請する見通し。 (大飯3、4号機は当面の運転継続は認められる模様だが、9月の定期検査で停止後の再稼働時に審査を受ける。)


各原発の状況は以下の通り。

 
申請準備中
電所名
運転開始 型式 40年
まで
年数
能力
(万KW)
稼働 PWR フィルタ

ベント
(PWRは
猶予)
緊急時対策所
(仮設可)
電源
ケーブル
活断層
(規制委)
北海道電力
 泊
① 1989/6/22   PWR   57.9   15年度 15年度   OK
② 1991/4/12   PWR   57.9  
③ 2009/12/22  PWR   91.2  
東北電力
 東通
① 2005/12/8  BWR
(Mark-I 改)
  110.0   X 15年 16年   調査中
東北電力
 女川
① 1984/6/1   BWR
(Mark
-I)
  52.4   X 検討中   OK
② 1995/7/28 BWR
(Mark-I 改)
  82.5  
③ 2002/1/30 BWR
(Mark-I 改)
  82.5  
東京電力
 福島第一
⑤ 1978/4/18 BWR
(Mark
-I)
5 78.4   X 未定   OK
⑥ 1979/10/24 BWR
(Mark-Ⅱ)
6 110.0  
東京電力
 福島第二
① 1982/4/20 BWR
(Mark-Ⅱ)
9  110.0   X 未定   OK
② 1984/2/3 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
③ 1985/6/21 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
④ 1987/8/25 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0  
日本原子力
 東海
② 1978/11/28 BWR 5 110.0   X 設置予定   OK
東京電力
 柏崎刈羽
① 1985/9/18 BWR
(Mark-Ⅱ)
  110.0   X 着工   調査必要性
検討中
② 1990/9/28 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
③ 1993/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
④ 1994/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
⑤ 1990/4/10 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0    
⑥ 1996/11/7 ABWR   135.6    
⑦ 1997/7/2 ABWR   135.6   着工
中部電力
 浜岡
③ 1987/8/28 BWR
(Mark-I 改)
  110.0   X '14年度   調査必要性
検討中
④ 1993/9/3 BWR
(Mark-I 改)
  113.7   '14年度
⑤ 2005/1/18 ABWR   138.0    
北陸電力
 志賀
① 1993/7/30 BWR
(Mark-I改)
  54.0   X '15年度 '13/9   調査中
② 2006/3/15 ABWR   135.8  
日本原子力
 敦賀
① 1970/3/14 BWR
(Mark
-I)
0 35.7   X 検討中 X 調査中
② 1987/7/25 PWR   116.0   検討中   リスク認定
関西電力
 美浜
① 1970/11/28 PWR 0 34.0   検討中 検討中 X 調査中
② 1972/7/25 PWR 0 50.0  
③ 1976/3/15 PWR 3 82.6  
関西電力
 大飯
① 1979/3/27 PWR 6 117.5     仮設
対応
X 調査中
② 1979/12/5 PWR 6 117.5    
③ 1991/12/18 PWR   118.0 '15年度  
④ 1993/2/2 PWR   118.0 '15年度
関西電力
 高浜
① 1974/11/14 PWR 1 82.6   検討中 検討中 X 調査必要性
検討中
② 1975/11/14 PWR 2 82.6  
③ 1985/1/17 PWR   87.0    
④ 1985/6/5 PWR   87.0  
中国電力
 島根
① 1974/3/29 BWR
(Mark-I)
1 46.0   X   '14年度 X OK
② 1989/2/10 BWR
(Mark-I改)
  82.0   '14年度  
四国電力
 伊方
① 1977/9/30 PWR 4 56.6   '15年度 X OK
② 1982/3/19 PWR 9 56.6    
③ 1994/12/15 PWR   89.0    
九州電力
 玄海
① 1975/10/15 PWR 2 55.9   '16年度 仮設
対応
X OK
② 1981/3/30 PWR 8 55.9    
③ 1994/3/18 PWR   118.0    
④ 1997/7/25 PWR   118.0  
九州電力
 川内
① 1984/7/4 PWR   89.0   '16年度 仮設
対応?
  OK
② 1985/11/28 PWR   89.0  


PWR:加圧水型、
APWR(Advanced PWR) :改良型加圧水型 ---フィルタ付ベント設置猶予 
BWR:
沸騰水型、
ABWR(Advanced BWR):改良型沸騰水型 ---フィルタ付ベント即時設置要

フィルタ付きベントは全て未整備だが、申請準備中の12基は全てPWR(加圧水型)のため、設置が猶予される。

また、12基のうち、「緊急時対策所」の整備を終えた原発は、四国電力伊方3号機1基のみだが、機能を満たせば仮設でも当面可能となる。

但し、九州電力川内は中央制御室横の「控室」を仮施設として位置付けているが、規制委は稼働中の中央制御室横の部屋を使うことに難色を示している。

大飯3,4号機は、2015年に完成するまで、1, 2号機の会議室を仮設として使う計画だが、規制委は、その間は「1, 2号機の運転停止を条件に」認める方針。(当初は3,4号機の会議室を使用する計画であった。)

関西電力大飯のように、同じ原発で申請しないものがあるのは、ケーブルの難燃化が出来ていないなど、他の条件が整わないため。

 


Dow Chemical と Saudi Aramco がJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設するため設立したSadara Chemical Company は6月17日、世界の輸出信用機構や商業銀行、サウディ公的投資基金との間で総額約105億ドルの協調融資契約を締結したと発表した。

これには2012年9月に
米国の
Ex-Im Bankが承認した過去最大の49億75百万ドルの直接融資を含む。
輸出信用機構としては、他に、フランスのCOFACE、ドイツのEuler Hermes、スペインのFIEM、韓国のK-Exim とK-sure、英国のUK Export Financeが含まれている。

銀行団は三井住友銀行など邦銀勢のほか、英HSBCやドイツ銀行、米大手銀、中東各国の銀行、Export Development Bank Canada、Islamic Development Bank、Saudi Public Investment Fund などで構成される。
 融資期間は2025年6月まで。

利率は当初はLIBOR + 1.25%、建設完了後の最初の5年は+1.55%、その後は +1.85% と報道されている。

Sadaraは本年4月には20億ドルのイスラム債(Sukuk)を発行しており、融資総額は125億ドルとなった。

Sadaraはイスラム債の発行を決めたが、当初発行予定の14億ドルに対し2.6倍の応募が殺到、最終的に20億ドルを発行した。
期間は16年で、6カ月物SAIBOR+95 basis points 相当の金利を支払う。(単なる金利支払とは異なる形態をとる)

総投資額は約200億ドル (現在の予算は193億ドル)で、借入は65%と想定しており、これで資金計画がまとまった。

ーーー

DowとSaudi Aramcoは2011年7月25日、両社の取締役会が、サウジのJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設するJVの設立を承認したと発表した。

JVの名称は "Sadara Chemical Company"(Forefront Chemical Companyの意味)で、一部を公募し(2014年初めを予定)、残りを両社が均等出資する。(Dowは一部を技術供与などの形で出資する)

両社は2011年10月8日、Sadara ChemicalについてのJoint Venture Shareholders' Agreementに調印、11月28日にJV設立を発表した。

総投資額は200億ドルと見込み、自己資本で35%、輸出信用機関や金融機関からの借入金で65%を賄う。

エタンからのエチレンのほか、ポリウレタン(イソシアネート、ポリエチレンポリオール)、酸化プロピレン、プロピレングリコール、エラストマー、LLDPE、LDPE、グリコールエーテル、アミンなど、合計26基のプラントを建設する。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定


DowはサウディでのSadara計画と、米国での
安価なシェールガスを原料とする石化計画の二正面作戦をとる。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

 


武田薬品は6月13日、イスラエルのTeva Pharmaceutical とインドのSun Pharmaceutical の両社と和解したと発表した。

両社が米国で同社の胃食道逆流性疾患を治療するプロトンポンプ阻害薬 Protonix®( 一般名 pantoprazole)の物質特許が満了する2011年1月より前に後発品を販売したことに対し、武田薬品(が買収したNycomed)とPfizer が特許侵害で訴えていたもの。
Nycomedは米国で
Pfizer の子会社のWyethに独占的使用を許諾している。

和解により、Tevaは16億ドル、Sunは5.5億ドル、合計21.5億ドルの和解金を 支払う。このうち、Pfizer が64%の13.76億ドル、武田が7.74億ドルを受け取ることとなる。

しかし、本件は2011年1月以前の特許侵害に対応するものであり、武田薬品はそれ以後の2011年5月にNycomedの買収契約を締結(2011年9月30日に買収完了)したため、Nycomedの買収契約に基づき、受領する和解金の全額をNycomedの旧株主に支払うことにな る。

Nycomedの株主は下記の投資ファンド
  Nordic Capital  41.2%
  DLJ Merchant Banking  25.6%
  Coller International Partners  9.7%
  Avista Capital Partners 8.9%
  Others  14.6%

ーーー

WyethはNycomedから米国におけるProtonixの独占的使用権を許諾されており、Protonixは同社の売れ筋商品であった。

Protonixに関する基本特許は、2011年1月まで有効であったが、TevaとSunはそれ以前にFDAからジェネリック版を販売する最終承認を取得した。

NycomedとWyethは基本特許の侵害を主張、訴訟を提起したが、仮差し止めが裁判所に却下され、Tevaは2007年12月、Sunは2008年1月にジェネリック版を発売した。
特許無効を理由に特許の失効前に販売するもので、特許が有効とされると3倍賠償となるため「リスクのある販売 at-risk launch 」と呼ばれる。

WyethのProtonix の売上高は2007年に19億ドルあったが、TevaとSunによるジェネリック品の発売後、2008年の売上高は58%ダウンし、8億ドルになった。WyethはTevaとSunに対抗して、公認ジェネリック薬を米国で販売した。
(損害賠償訴
訟でTevaとSunはこれを理由に賠償額の減額を主張したが、成功しなかった。)

WyethとNycomedは両社の特許満了前の販売から生じた損害賠償金を求め、訴えた。

2010年4月、陪審員は基本特許の有効性を支持し、Sunがこれを不服として起こした動議を7月に裁判所が却下した。

損害賠償額を争う裁判が始まった直後に双方は和解を決めた。

ーーー

Pfizerは2009年1月26日、Wyethを総額約680億ドルで買収する正式買収契約を締結した。

2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収


武田薬品は2011年5月、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed A/Sを買収すると発表した。

買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(約1.1兆円)で、武田の既存事業と重複するため買収対象外の米国の皮膚科事業(Nycomed US Inc.)の株式を除き、100%取得する。

同年9月30日に買収を完了し、同日をもって100%子会社とした。

2011/5/23  武田薬品、Nycomed社を買収  


イスラエルのTeva Pharmaceutical は後発医薬品(ジェネリック)メーカー最大手

2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収


Sun Pharmaceutical はインドのムンバイに本社を置くジェネリックメーカー。

1983年に設立後、ICNのハンガリー事業、Caraco Pharmaceutical、Taro Pharmaceutical などの買収、MSD(Merck)とのJV設立などで拡大、ジェネリック医薬品やノーブランド医薬品を中心にアメリカ合衆国やヨーロッパおよびアジアなど世界中に輸出している。

武田薬品は2012年にURL Pharmaを買収したが、その後同社の後発品事業をSunに売却している。

武田薬品とURL Pharmaは2012年4月、武田がURL Pharmaを800百万米ドルで買収することについて合意した。買収完了後、武田ファーマシューティカルズUSAに統合した。
URL Pharmaの2011年の売上高は約600百万米ドルで、そのうち痛風の予防および治療薬であるColcrysの売上高が430百万米ドル強を占めている。

武田薬品は2012年12月、URL Pharmaの後発品事業をSun Pharmaの100%子会社のCaraco Pharmaceutical に譲渡した。

 

 

 

米最高裁判所は6月13日、人の遺伝子は特許の対象にならないとの判決を全員一致で言い渡した。遺伝子に特許を与えた場合、科学的な研究や医療行為を妨げると主張した医師や患者のグループが勝訴したことになる。ただし、人工的に合成された遺伝子については特許の取得が可能とした。

この裁判は、米バイオ医薬品会社
Myriad Geneticsが乳がんと卵巣がんに関連した2つの遺伝子(BRCA1とBRCA2)の特許を取得したことに、医療研究者らが反対し、争われていた。

BRCA1,2 (breast cancer susceptibility gene 1,2 ) は、がん抑制遺伝子の一種であり、その変異により遺伝子不安定性を生じ、最終的に乳癌や卵巣癌を引き起こす。

今回、最高裁は人の遺伝子は特許の対象にならないとした。

Clarence Thomas判事は、Myriad が重要で有用な遺伝子を見つけたのは確かだが、遺伝子の分離は発明行為ではなく、同社は何も創造していないとした。

一方、 単離されたDNA分子や人工的に合成された遺伝子(cDNA) については「自然に発生はしない」とし、特許で保護されるとした。

オバマ政権は、自然に形成された遺伝子の抽出は特許対象とはならないが、人工的に合成された遺伝子はそうなるとの立場を取っており、最高裁はこれを受け入れた。

Myriad Geneticsでは判決を受け、最高裁はDNAに関する特許は否定したが、相補的DNA (cDNA)の特許を認めたとし、BRACAnalysis テストに関する24の特許(有効なクレイムは500以上)が維持されると述べた。

ーーー

Myriad Geneticsは1994年に特許を出願した。

同社は特許に基づき乳がんと卵巣がんの発症しやすさを調べる遺伝子検査の市場を支配してきた。

同社のBRACAnalysisテストで陽性になった女性は生涯で乳がんになる確率が82%高く、卵巣がんになる確率が44%高い。

女優のAngelina Jolieが最近、がんに関連した遺伝子変異が見つかったため予防措置として両乳房の乳腺切除手術を受けたことを明らかにして、こうした遺伝子検査が注目を浴びた。

2009年に研究者や患者らを代表するアメリカ自由人権協会(SCLU) が乳がんと卵巣がんの発症における遺伝子特許無効の訴えを行った。

同特許の対象範囲があまりに広いため、BRCA1やBRCA2に関する研究者の調査や比較を阻害すると主張。
あらゆる人間が持つ最も基本的な要素を知的財産として認めることの合法性・合憲性を問うものである

この特許が Myriad Genetics に対し乳がんや卵巣がんに関連する検査への独占的権利を与えるもので、該当する遺伝子の検査におけるすべての新しい科学的方法論なども、権利保護の対象にしており、同社が乳がんや卵巣がんの遺伝子検査のタイプや種類を決めるとともに、他の研究所の研究を阻害している。

この特許のもとでは、BRCA1やBRCA2の検査や分析を
Myriad Geneticsに依頼すると、テスト1回ごとに3,000ドル以上の支払いが課され、これらの遺伝子検査を求める女性の障害になっているという。 他の企業が安価な検査法を開発しようとしても、特許を盾に認められない。)

2010年3月29日、ニューヨーク州南部地区米連邦地裁が特許無効の判決を下した。

Myriad特許の「身体から取り出した遺伝子」は「ヒトの細胞の自然産物としての遺伝子」とは目立って違いもなく、取り出し精製することでその遺伝子の本質的特性が自然産物としての遺伝子の特性から変化したわけでもない。

検査方法も遺伝子情報集め以上のものではなく数学的アルゴリズムといえる。

Myriadは控訴した。

2011年7月29日、米連邦巡回控訴裁判所はMyriadの BRCA1とBRCA2の特許を認めた。

身体の中に自然にある遺伝子ではなく、遺伝子の特定の化学形態をテストするものとした。
但し、DNAの塩基配列を分析する方法は特許を認めなかった。

2012年3月、米最高裁は、別件のPrometheus社の投薬方法に関する特許について、特許適格性が無いとする判決を下した。 

同特許は、自己免疫疾患を治療するためのチオプリンが投与された患者の血中の代謝物量を測定し、それに合わせて投与量を増減させる方法に関するもの。

連邦巡回控訴裁判所の判決では、同特許は、薬物が人体内で代謝されることで物質として変化すること、そして、対象クレームでは人体内から血液を抽出し測定することを必然的に伴うから「トランスフォーメーション」があるとし、特許対象であるとしていた。

しかし最高裁は判事の全員一致でこれを覆し、特許適格性無しとしたもの。

「自然法則」あるいは「自然現象」は特許可能ではないが、それが公知の構造や方法に対する応用である場合には特許可能となる。
しかし、そのためには、クレームに具体的な応用に関する記載がなければならない。

本件のクレームは、投薬後の血中の代謝物の量と、当該薬剤による予想される効果、危険度との相関性を記載しているが、これは自然法則そのものである。
自然法則の応用を確実に具現化する追加的特徴を記載しない限り、特許適格性を満たさない。

工程を組み合わせたところで、自然法則以上のものを何ら付加するものとはいえない。

最高裁はPrometheus判決をもとに、米連邦巡回控訴裁判所に対し、2011年の判決の再検討を指示した。

2012年8月、米連邦巡回控訴裁判所は再度、Myriad のBRCA1 とBRCA2の特許を2:1で認めた。
しかし、DNA 塩基配列を「比較」したり、「分析」したりする特許は否定した。

原告は遺伝子は自然の産物と主張したが、判決では、
「全てのもの、全ての人間は自然の産物ではあるが、このBRCA1とBRCA2は自然の法則に従ってはいるが、自然物ではなく、人間のつくったものである」とした。

裁判では Dr. James Watsonが特許化に反対し、裁判所が人間の遺伝子の非常にユニークな性質を認めないのかと恐れると証言した。
「遺伝子は化学物質ではあるが、人間を創る指令を暗号化して伝えるもので、生命の指令を法律上の独占で支配するべきものではない」とした。

しかし判決は、特許はイノベーションを促進するとして特許を認めた。

今回の訴訟は、米国自由人権協会や15万人以上の研究者、医師、患者らが、特許対象の遺伝子を使用した今後の研究・調査の妨げになるとして、先の控訴審判決を覆すよう最高裁に申し立てたもの。

2013年6月13日、米最高裁判所は上記の判決を下した。

 


物質・材料研究機構は6月14日、癌の温熱療法と化学療法を同時に実現させることが可能なナノファイバーのメッシュを開発したと発表した。

上皮性の悪性腫瘍のひとつである扁平上皮癌は、例えば、食道癌の90%以上、子宮頚部癌の80%以上、肺癌の 30%以上を占めているといわれている。

「上皮性」とは外界と接触しているもので、皮膚、消化管の内側すべて(口・食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肛門)、肝臓や膵臓、肺・気管支、尿管・膀胱・腎臓、膣や子宮など。
扁平上皮はその表面を覆っている細胞。

「非上皮性」とは体を支えている部分で、骨・脂肪・筋肉・血管・結合織・脳・神経など。

上皮由来の悪性腫瘍を「がん」、非上皮由来の悪性腫瘍を「肉腫」と呼ぶ。

扁平上皮癌の治療方法は、癌の進行度によって手術、放射線療法、化学療法が三本柱となっているが、これらに加え、温熱療法が注目されている。
これは癌細胞が正常な細胞と比べ熱に弱いことを利用し、がん細胞を死滅させるもの。
温熱療法は、化学療法などと併用することで抗癌剤の効果が向上するが、これまで併用は困難であった。

今回の研究では、上皮性悪性腫瘍に対して温熱療法と化学療法を同時に行う方法の開発に成功した。

開発したのは患部に直接貼れるメッシュ状の材料(直径500ナノメートルのナノファイバーをメッシュ状にしたもの)で、温度応答性高分子(温度が上がると縮む性質のある高分子)、磁性ナノ粒子、抗癌剤を組み合わせたハイブリッド材料。

ナノファイバーメッシュに含まれた磁性ナノ粒子に交流磁場をかけることでファイバーを加熱する。生じた熱(43〜45度)に応答し、温度応答性高分子が収縮することで、内部の抗癌剤を外部に放出させ る。

ファイバー内の磁性粒子は安定に存在するため体内への拡散も抑えられ、ドラッグデリバリー技術を応用して磁性粒子を直接投与する方法と比べて安全性は高い。

このナノファイバーメッシュはハンドリングしやすく、内視鏡手術などでも使える。

物質・材料研究機構では、このナノファイバーメッシュを用いることで、上皮性の癌細胞を効率的に自然死(アポトーシス)させることに成功した。

培養した皮膚がんの細胞の上にこの繊維を置き、磁場を2回(各5分間)かけて45度まで熱したところ、がん細胞は5日後に27%まで減少した。抗がん剤だけを加えた時は40%までしか減らず、何もしないと2.4倍に増殖した

再発防止のためにがん細胞を切除した後に内臓や皮膚の表面に貼ると効果的という。

この研究成果は、科学雑誌「Advanced Functional Materials」のオンライン速報版で公開された。

今後、動物実験で安全性と有効性を確認し、臨床試験を実施する

 



公取委は6月6日、JNC(チッソから事業を引き継ぎ、2011年4月1日に営業開始)に対し、下請代金支払遅延等防止法(「下請法」)に基づき勧告を行ったと発表した。

JNCは、液晶材料の原材料の製造を委託している下請業者に対し、液晶材料の原材料の単価の引下げを要請し、この要請に応じた下請業者について、単価引下げ合意日前に発注した液晶材料の原材料について引下げ後の単価を遡って適用し、下請代金を減額した。

2011年6月~2012年6月の間に、下請2社に総額3509万円を減額していた。

同社は既にこれを返還しており、2012年7月の取締役会で、違反を認め、今後違反行為を行わないことを決議確認している。 「下請法の理解が不十分だった。再発防止に努めたい」としている。

今回の勧告の概要は以下の通り。
 ・取締役会決議と返還の事実を社員に周知徹底すること
 ・再犯防止のための社内体制の整備と、その内容の社員への周知徹底
 ・下請業者への通知

ーーー

下請法は物品の製造等の場合、資本金3億円超の事業者が資本金3億円以下の事業者を下請けに使う場合などに適用される。

親事業者は以下の行為が禁止される。

(ア) 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
(イ) 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
(ウ) 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)ーーー今回のJNCへの勧告
(エ) 返品の禁止(第4条第1項第4号)
(オ) 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
(カ) 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
(キ) 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
(ク) 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
(ケ) 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
(コ) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
(サ) 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第4条第2項第4号)

ーーー

中小企業庁では、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者の利益を保護することを目的として下請法に基づき対処している。

平成24年度は、親・下請事業者あわせて約27万社に対し書面調査を行い、違反のおそれのある1,158社に立入検査等を実施し、このうち1,035社、2,715件の違反行為について、書面による改善指導等を行うとともに、減額した下請代金等の合計約12億9400万円の返還等を親事業者に指導した。

このうち、重大な違反行為のあった1社について、公取委へ措置請求を行った。(平成22、23年度は各4社)

JNCはこの措置請求には含まれていない。

平成24年度の1社は、壁紙、床材、カーテン等のインテリア製品のメーカーで、「見本帳協力金」としての減額や、引下げ後の単価の遡及適用で下請事業者63社に総額約5億5,701万円を減額していた。

 


公正取引委員会は6月13日、異性化糖と水あめ・ぶどう糖の製造業者らに対し、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行ったと発表した。

各社は日本スターチ・糖化工業会の会合の場を利用して情報交換を繰り返し行うなどし、価格の引き上げで合意したもの。
(群栄化学は工業会のメンバーではないが、問題の会合には出席していた。)

合意及び情報交換は工業会の会合の場を利用して行われており、工業会の専務理事は販売価格に関する情報交換が行われていたことを認識していたにもかかわらず、これを取りやめさせるための措置を何ら講じなかったことから、公取委は工業会に対し再発防止のための措置を講じるよう要請した。

排除措置命令及び課徴金納付命令の対象は以下の通り。(金額:千円)

  異性化糖 水あめ・ブドウ糖 課徴金合計  
排除命令 課徴金 排除命令 課徴金
昭和産業  365,680  329,700 695,380  
敷島スターチ 11,950 10,900 22,850 昭和産業子会社
日本食品化工 227,880 220,620 448,500  
加藤化学 222,840 165,520 388,360  
日本コーンスターチ 261,640 ー  261,640 水あめ・ブドウ糖課徴金減免
日本澱粉工業 160,130 87,050 247,180  
サンエイ糖化 27,290 218,920 246,210  
三和澱粉工業 78,460 44,580 123,040  
群栄化学工業 77,510 6,370 83,880 異性化糖課徴金 30%減額
王子コーンスターチ 45,360 10,050 55,410  
合計 10社 1,478,740 8社 1,093,710 2,572,450  


異性化糖では全社に排除命令と課徴金で、群栄化学のみが課徴金が30%減額、
水あめ・ブドウ糖では日本食品化工と日本コーンスターチには排除命令はなく、日本コーンスターチは課徴金減免となっている。

事情は次の通りと推測される。

1)2012年1月31日に異性化糖について公取委が立入検査。
  これを受けて、群栄化学が申告(立入検査後の申告のため、30%減額)

      但し、同社は立入検査対象外の水あめ・ブドウ糖については申告せず。

2)日本食品化工と日本コーンスターチが、異性化糖に加え、水あめ・ブドウ糖についても違反行為を取り止め。
  両社は
水あめ・ブドウ糖については、立入検査前の違反行為取り止めにより、排除命令なし。

3)日本コーンスターチは同時に公取委に水あめ・ブドウ糖のカルテルを自己申告。(100%減免)

4)これを受け、公取委が2012年5月15日に水あめ・ブドウ糖について立入検査。


減免制度では、最大5社(但し、調査開始後の対象は最大3社)が減免対象で、減額率は①100%、②50%、③~⑤30%であるが、調査開始後は全て 30% となっている。



NOVA Chemicals は6月7日、アルバータ州Joffre でNOVA 2020計画の目玉の一つのポリエチレン拡大計画の起工式を行った。

Joffreには第一ポリエチレン(2系列)と第二ポリエチレンがあるが、第一ポリエチレンに第3系列(年産 43~50万トン)を新設する。
建設費は約10億ドル、2015年秋にスタートする予定。

シェール革命で北米の石油化学が生き返ったが、これもその一つ。

ーーー

Novaは2011年6月、コスト競争力のあるシェールオイル、シェールガスを活用し、拡大する北米のポリエチレン需要に対応するため、NOVA 2020計画を発表した。

同社はカナダ西部のアルバータ州Joffre と、東部オンタリオ州 Sarnia - Lambton に石化コンプレックスを持つ。
(Sarnia - Lambton地区にはCorunna、St. Clair River、Moore の3工場がある)

計画では、JoffreとMooreにそれぞれポリエチレン工場を建設する。更にMoore工場の既存プラントのデボトルネッキングを検討する。
Mooreの新工場は、同社が開発したポリエチレン技術 Advanced SCLAIRTECH 法を使用する第二のワールドクラスのプラントとなる。

原料のエチレンについては、既存のJoffreのエチレン利用増とCorunna のエチレンの増強で賄う。
エチレンの生産増には、シェールオイル・ガス、オイルサンドからのオフガスや、既存のエタンなど、多様化した原料ソースを使用する。
Corunnaのエチレンは原料を天然ガス100%利用できるよう改造する。2013年第3四半期からはMarcellus Shaleのエタンの使用を開始する。

NOVA Chemicals会長(親会社のアブダビのIPICの社長)は、IPICのグローバルの成長戦略の一環として北米におけるNOVAの拡大計画を喜んでおり、IPICはフルにサポートすると述べた。

ーーー

アブダビ国営の投資会社 IPIC(International Petroleum Investment Company )は2009年7月、カナダのNOVA Chemicals の買収を完了した。

その後、IPICはNovaの株式の24.9%を、Borealis(IPIC 65%:OMV 35%)に譲渡する構想が明らかとなった。
実際に当初はOMVのDeputy CEOがNOVAの会長になり、OMV主導でNova運営がなされた。
しかし、最終的にBorealisの出資はなかった。
2011年にはIPICが、NOVAとBorealisの合併を考えているとの噂が報道された。)

2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

NOVAとIneos20073月に、NOVAの北米のSMPS事業を両社の欧州の50/50JVに移管することで合意したと発表、Ineos NOVAが200710月に発足した。 

しかし、2010年にNOVAは持分をIneosに譲渡し、撤退した。

2010/11/22  Nova ChemicalsIneos Novaから撤退


なお、NOVAは上記のカナダ西部のアルバータ州と、東部オンタリオ州のほかに、米国に2つの工場を持っている。
 
Beaver Valley 工場(Monaca, Pennsylvania):EPS(発泡ポリスチレン)とARCEL® 発泡レジン
  Painesville工場(Painesville, Ohio):EPS

同社は上記の通り、SM、PS事業をIneos NOVAに拠出し、後に離脱し持分をIneosに譲渡したが、「発泡PS ・機能製品」部門に属しているEPSについてはIneos NOVAに出していない。

ーーー

IPICは活動を全世界に広げている。日本のコスモ石油の筆頭株主である。

UAE 内陸油田ハブシャンからの全長360kmの原油パイプラインとフジャイラ港でのタンクターミナルの建設
フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設
オーストリア 石油、ガス会社OMVに17.6%の出資
石化会社Borealisに65%の出資
  2006/11/10 
OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

AMI Agrolinz Melamine International に50%出資(OMVが残り50%)
日本 コスモ石油に出資
韓国 Hyundai Oil Bankに出資(70%)
    ↓
2009/11/21 
現代グループ、Hyundai Oilbank の経営権を奪還
パキスタン パキスタンのPak-Arab Refinery Co.株式40%を保有(残りはパキスタン政府)。
キスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)
オマーン Oman Polypropylene に出資(出資するGulf Investment Corporationを通して)
エジプト Arab Company に出資
スペイン CEPSAに出資(47%にアップ)
中央アジア 2008/8/27 Abu Dhabi のIPIC、中央アジアに進出
カナダ 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

 


丸紅は6月10日、100%取得の契約を締結しているGavilon について、持分譲渡契約を変更するための契約を締結したと発表した。

当初、穀物・肥料・エネルギー3事業を運営する同社の持分100%を36億米ドルで買収することとしていたが、穀物・肥料の2事業を26億米ドルで買収することとし、エネルギー事業は現持分保有者が継続して保有する。

なお、買収について、中国は4月22日に条件付き認可を行ったが、丸紅はその条件履行の施策について当局と協議中であるとしている。

ーーー

丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。

丸紅の輸出の99%が中国向けであり、Gavilonは北米の大豆の集荷、保管、輸送の巨大能力を持つため、両社の統合で中国への輸出で大きな強みを持つことになるとしていた。

しかし、中国商務部は2013年4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収の承認に厳しい条件を付けた。

2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


これにより丸紅は、
中国への輸出にGavilonの大規模な米国のネットワークを利用できず、高額での買収の意義が失われることにもなる。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認

ーーー

今回、エネルギー事業を除外し、買収金額が10億ドル減少することとなったが、これの解釈は難しい。

Gavilonの事業は以下の通り。(売上高は2011年)

  売上高
(百万$)
従業員 当初の
 契約
今回の
 契約
穀物事業 14,555 1,326

肥料事業 2,907 311

エネルギー事業 390 124

合計 17,852 1,934 36億ドル 26億ドル

Gavilonは原油・天然ガス等を中心にエネルギー事業も展開しており、北米において約8百万バレルの原油在庫施設、約100億立方フィートに及ぶ天然ガス在庫施設および約50万バレルの石油製品在庫施設などの物流ネットワークを活用し、トレーディング事業を行っている。

丸紅としては、この事業買収の意義として、北米における原油・石油製品・天然ガスのトレードの拡充と、保有アセットからの手数料収入等安定収益の増大を挙げているが、年間売上高が390百万ドルの事業に10億ドル分の価値があるとは考えられない。
このため、穀物や肥料事業の買収金額が減額になったのではないかとも推定される。

上述の通り、今回の中国政府による条件付き承認で、買収の意義が失われかねないこととなった。

米大豆協会では、丸紅とGavilonの連合が中国のような大規模な市場で供給を管理したり、価格操作を行うことは不可能であり、中国が課した条件は驚きだとしている。

丸紅としても中国がここまで厳しい条件を付けてくるとは考えていなかったと思われるが、相手が中国であり、どんな条件が付くか分からないため、ケースごとに買収条件を変えるような工夫をしていたことも考えられる。
(当初の発表時に、「取得価格は36億ドルから持分取得の実行時における譲渡契約に定める調整を実施した金額」としている。)

当初契約では丸紅は36億ドルでの買収に加え、Gavilonの借入金 約20億ドル程度を引き継ぐこととなっているが、今回のエネルギー事業の除外で、債務の引き継ぎ額も変わるのかどうかは明らかにされていない。

このほか、エネルギー事業を放棄したことについては、丸紅がGavilonのエネルギー事業に余り魅力を感じていなかったとか、当初の契約時から円が19%も下がり、円換算での買収金額が増えたなどの報道もされている。

丸紅は現在、中国当局との間で買収の条件履行の施策について協議中であり、それが確定した時点で恐らく詳細についての説明があると思われ、それまではこの見直し後の買収の評価をすることは難しい。

なお、エネルギー事業は現持分保有者が継続して保有することとなる。
現在の保有者はOspraie、General Atlantic、Quantum Strategicの3ファンドと経営者・従業員。

 


公取委は6月5日、プレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札で課徴金を納付したオリエンタル白石に対し、課徴金を返還したと発表した。

公取委は2011年6月15日、国土交通省関東地方整備局と近畿地方整備局並びに福島県が発注するプレストレスト・コンクリートによる橋梁の新設工事の入札参加業者10社に対し、課徴金の納付命令を行った。(千円)

  関東 近畿 福島県 合計
オリエンタル白石 105,740 375,810 55,750 537,300
合計  592,630  1,806,540  221,070  2,620,240

これに対し更生会社であるオリエンタル白石の管財人から審判手続の開始の請求があり、審判となったが、2012年 9月25日に課徴金の納付を命ずる審決があった。
オリエンタル白石はこれを納付のうえ、 10月17日に違法であるとして審決取消訴訟を提起した。

オリエンタル白石は、公取委は課徴金債権を債権として裁判所に申告しておらず、会社更生法の定めるところにより失権しており(更生法204条1項)、納付を命じる審決は違法であるとした。

これに対し公取側は、違反行為者に対する制裁として罰金と同じであり、免責されないと主張した。

争点
(1)本件課徴金債権は、更生債権に該当するか。
(2)本件課徴金債権は、更生計画認可の決定により免責されるか。
(3)本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責されるかどうかにかかわらず、公取委は課徴金の納付を命ずることができるか。

2013年5月17日、東京高裁の判決があった。

まず、公取委は、独占禁止法の違反行為があると認めるときは、当該課徴金債権が会社更生法204条1項の規定により免責されるかどうかといったことは考慮することなく、課徴金の納付を命じなければならないとした。
独禁法の課徴金には繰り返し違反に対する割増の規定があり、
今後違反があった場合、再犯とする必要がある。

仮に課徴金債権は会社更生法の定めるところにより失権している(そのため、強制執行が出来ない)としても、納付を命じる審決そのものは違法とは言えないとして、オリエンタル白石の訴えを却下した。(形式論)

以下、判決書別紙で実質判断を行った。

課徴金の対象となる独占禁止法に違反する行為が更生手続開始前にされた場合には、(課徴金納付命令が更生手続開始後にされたとしても)更生債権に該当する。

更生債権に該当する本件課徴金債権は、会社更生法上は「租税等の請求権」に該当する。

会社更生法は、租税等の請求権と罰金等の請求権とを、法的性格が異なるものとして明確に峻別し、その取扱いをまったく異にしている。
本件課徴金債権について、債権届出がない場合に、罰金等の請求権について定められた免責の例外規定を類推適用して、更生計画認可決定によっても免責されないとすることは許されない。

制裁という点で性質を同じくするとしても、明文の規定もないまま、同号の規定を類推すべきであるとすることは、法律解釈の限界を超えるものであるといわざるを得ない。

原告は、平成22年7月1日に確定した更生計画認可の決定により、本件課徴金債権につきその責任を免れたものというべきである。

公取委はこの判決を受け、オリエンタル白石から公取委に対して納付された本件課徴金は「自然債務」となっており、不当利得に該当するものと解されるとし、2013年6月4日、納付された課徴金5億3730万円に利息7万3602円を加え、返還した。

「自然債務」とは、債務者が任意に弁済すれば有効な弁済となり、債務が消滅する効果が認められるものの、弁済が任意でない場合には、弁済により得た利得は法律上の原因に基づくものとはいえず、不当利得になると解されているもの。

 


出光興産と三井化学は6月6日、両社とクウェート国際石油、ペトロベトナムとの合弁事業である総投資額約90億米ドルのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックス建設プロジェクトの最終投資決定を行ったと発表した。

ベトナムのタインホア省ニソン経済区にコンプレックスを建設し、クウェートからの原油の安定供給をベースに、ベトナムの急増する石油製品需要を捕捉し、今後需給逼迫が予想されるアロマおよびポリプロピレン製品の輸出販売を行うもの。

JV:Nghi Son Refinery & Petrochemical Limited Liability Company(NSRP)
  出光興産 35.1%
  三井化学 4.7%

 
 クウェート国際石油 35.1% 
  ペトロベトナム 25.1%

設備:
 常圧蒸留装置(CDU) 日量 20万バレル
 重油直接脱硫装置(RHDS) 日量 10.5万バレル(世界最大級)
 重油流動接触分解装置(RFCC)
日量 8万バレル

 パラキシレン 70万トン/
 ポリプロピレン 37万トン
/年 三井化学が技術供与

総投資額 90億米ドル(うち、40億米ドルが出資者による出資比率での直接負担)

最終投資決定を受け、合弁会社は公的金融機関及び民間銀行等との間で総額50億米ドルのプロジェクト・ファイナンス契約を締結した。

国際協力銀行(JBIC)16.5億米ドル、韓国輸出入銀行からの直接融資6.6億米ドル(他に保証 4.4億ドル)計約23億米ドル
国内外民間銀行等からの融資 計約27億米ドル
(民間銀行等の融資に対しては日本貿易保険(NEXI)および海外輸出信用機関の保険または保証が付保される。)

本年7月に建設工事を開始し、2016年完工および2017年の商業運転開始を目指す。

ーーー

2004年10月、出興産は石油開発鉱区取得の調印後、ペトロベトナムより、本案件への参画検討の打診を受け、2006年に共同スタディを開始した。
同年2月に出光が
クウェート国際石油と三井化学に参加を打診した。

20083月に、出光興産三井化学がNghi Son Refinery & Petrochemical コンプレックスの建設に向け、装置の詳細設計や経済性、資金調達方法などを検討する合弁会社への参加を決定したと発表した。

合弁会社にはPetroVietnam25.2%、Kuwait Petroleum 35.1%、出光が35.1%、三井化学が4.7% 出資し、Nghi Son 経済区に日量20万バレルの製油所を建設する。2013年末の操業開始を目指した。(その後、上記の通り変更)

当時、出光興産は、出資理由を以下の通りとしていた。
①ベトナムのエネルギー供給事業に参画することで、同国とのパートナーシップのさらなる発展に貢献、
②クウェート原油の安定供給、出光の石油・石油化学事業で培ってきた建設・運転技術、ベトナムで急増する石油製品需要という三つの条件が揃った案件で、ベトナムでの収益基盤が構築できる。
③アジアでのさらなる事業拡大のチャンス、
④クウェートとベトナムとの一層の関係強化が図れ、安定した原油調達の確保にも寄与する。

三井化学はアロマ原料を安定的に調達することにより、PTAおよびフェノール事業の安定化と収益拡大につなげるとした。

ーーー

ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111~121万バレルとした。


しかし、確定したのは3つのみ。
現在稼働しているのはPetroVietnam のズンクワット(Dung Quat)製油所で、2009年に稼働した。
能力は日量14.8万バレルで、
同社は増設を検討中。

ロンソン製油所には、当初ベネズエラ国営石油のPDVSAが参加を表明していたが、見送られた。

この製油所に隣接し、タイのSiam Cementグループとベトナム側のJVのLong Son Petrochemical が石化コンプレックスを建設する。
2012年1月、
Qatar Petroleum がこれに参加することが明らかになった。

2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工

2010/6/30付の日本経済新聞はJXホールディングスがズンクワットの拡張計画とロンソンの新設計画に加わると報じた。
(JXは、「当社が発表したものでもないし、具体的に検討している訳ではない」と述べ、報道を否定した。)


 


 

EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

EUは当初平均 47.6%の税率を加盟国に提示したが、反ダンピング関税に中国が反発したことや、通商摩擦激化を避けたい加盟国の多くが慎重だったことに配慮し、当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。

中国品はEU市場の80%以上を抑えており、その生産能力は世界の消費の1.5倍もある。中国企業の不公正な競争でEU企業は倒産の危機にある。2012年の中国の過剰能力は欧州の需要のほとんど2倍もあり、今回の措置はEUの25千人の職を維持し、更に業界で新しい仕事を作り出すこととなるとしている。

EUでは、平均ダンピング率は88%もあるが、47.6%にとどめたとしている。

EUは、中国の輸出業者、中国商工会議所との会話で問題を解決し、暫定関税を取り止める用意があるとし、また、EU・中国合同委員会を近いうちに開催し、WTOルールと戦略的パートナーシップの精神に基づき貿易関係の全ての問題を建設的に解決する用意があると述べた。

中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査を始めると発表した。
昨年の中国の欧州産ワイン輸入量のうち約60%はフランス産で、EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復の可能性がある。

ーーー

中国の太陽光パネルの大増産により、米国やEUの企業で倒産が相次いでいる。
中国企業も経営難に落ち込んでおり、中央・地方政府による救済が行われている。

昨年来、中国の太陽光パネルを巡る貿易戦争が激化している。

EUは昨年9月に反ダンピング調査、11月に反補助金調査を開始、これに対し中国は、EU加盟国のイタリアとギリシャの"feed-in tariffs" (固定価格買い取り制度)現地の部品を中心に使っている電力会社を価格面で優遇しているのは協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

更に中国商務部は欧州から輸入される多結晶シリコンに対するダンピング・補助金調査を開始した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争 

中国は世界の太陽光パネル生産量の6割を占めており、うち約85%を輸出している。中国の統計によると、2011年のEU向け輸出額は210億ドルで、中国の生産量全体の約60%を占め、反ダンピング課税が与える影響は大きい。

景気低迷が続くなか、欧州各国でこの問題で意見が分かれた。ドイツなどは太陽光パネルへの課税を決めた場合、中国が対抗措置をとることを警戒して消極的であり、中国もEU加盟国への働きかけを強めた。

メルケル独首相は5月26日、ベルリンでの中国の李克強首相との会談後、太陽光パネルへの反ダンピング課税を回避すべきだとの立場を鮮明にし、「ドイツは反ダンピング課税を避けるためにできるだけのことをする」と述べた。

EU加盟27カ国のうち、英国やオランダを含む少なくとも過半数の国が課税に反対し、賛成はフランスやイタリアなど少数派とされる。ギリシャのサマラス首相は5月中旬に訪中し、中国側と貿易や投資、海運などで協力する文書を交わした。

これに対し欧州委は、「仮決定をするのは欧州委だ」と強調。「中国が友好的な解決に動くべきだ」と述べ、中国にダンピングや不当な補助金の是正に向けた取り組みを求めた。さらに、「中国が個別国に圧力をかけているのは明らかだ」と不快感を募らせた。

EU発表の前日の6月3日、李克強総理は欧州委員会のバローゾ委員長と電話会談を行い、以下の通り述べた。

中国政府は中国・EUの太陽パネル製品を巡る貿易紛争に注目している。
本件は中国の重大な経済利益に関連し、適切に処理されなかった場合は中国側の利益を著しく損ね、また必然的に欧州側の利益を損ねることになり、中国・EU提携の大局に影響を及ぼす。
双方は貿易戦争ではなく、対話・協議により問題を解決するべきだ。貿易戦争に勝者は存在しない。

中国側は自国産太陽光パネル製品の輸出価格が安くなりすぎないように規制する案をEUに提案しているとされている。

EU発表を受けて中国が反発を強め、中国商務省は「中国政府は対話による解決に向けて誠意を示して最大限の努力をしたが、EUはこれを理解せず不公正な課税措置を取った。断固反対する」と批判する声明を発表した。

商務部は同時に、EU産ワインを対象にダンピング調査に入ると発表した。報復をちらつかせて太陽光パネルの課税に賛成に回ったフランスをけん制し、EU側から譲歩を引き出す狙いとみられる。

欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しており、中国のワイン産業に打撃を与えていると主張、「貿易保護主義には一貫して反対する」とした。

2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。

 

 

6月4日に日本経済研究センター50周年記念国際セミナー「持続可能な開発と企業の役割」が開催され、コロンビア大学のJeffrey Sachs 教授の基調講演と、パネラーの三井物産・木下専務と東大・澤田康幸教授の発表があった。
 (録画 http://www.ustream.tv/recorded/33797605

このなかで期せずしてSachs教授と澤田教授が企業の活動例として住友化学の名前を挙げた。

Sachs教授は温暖化問題を取り上げ、人類世(Anthropocene)では既に安全に活動できる領域(Planetary boundries)を超えたとし、MDGs (Millenium Development Goals)からSDGs(Sustainable Development Goals)に変えるべきだと主張した。

昨年の大統領選で気候変動について双方が一切言及しなかったことを挙げ、石油会社の宣伝によるものと批判、企業が政治を動かすロビー活動を禁止すべきだと主張したが、企業もSDGsに大きな役割を果たせるとした。

企業はいろいろな技術で貢献できるとし、アフリカでトヨタ、住友化学、ソニーなどと一緒に仕事を出来て誇りに思っている、もっと多くの企業に加わって欲しいと述べた。

三井物産・木下専務は同社の方針を説明、「YOI SHIGOTO」を世界中でキーワードとしているとし、モザンビークの天然ガス開発、エネルギー分野、水事業、 マレーシアのSmart City計画の4つの活動例を説明した。 

Sachs教授は特にSmart City計画に関心を示し、ODAの対象にしてはどうか、もしかするとアベノミクスの3本目の矢になるかもと述べた。

澤田教授は世界の重心がアジアとアフリカに移っているとし、ODAの役割を強調した。

その中で住友化学のOlyset Net (防虫蚊帳)のマダガスカルでのインパクト評価の結果を説明した。

ーーー

住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、WHOからも使用を推奨されている。

マラリアは「ハマダラカ」という蚊が媒介する。毎年3.5~5億人がマラリアを発症し、100万人以上が死に至っている。(その90%がサハラ以南のアフリカで発生、犠牲者の多くは5歳以下の子供 。)

以前はハマダラカの駆除にDDTが使用され、効果を生んでいたが、DDTの生態系への影響 から1980年代に各国で使用禁止となった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万人を数えたマラリア患者の数を31人にまで激減させることに成功していたが、DDT禁止後には僅か5年足らずで年間250万人に逆戻りし た。

WHO2006年9月にマラリア蔓延地区においてDDTの室内散布を推奨すると発表したが、これには賛否両論が出ている。

2006/10/23  WHO、マラリア防止にDDT使用を推奨

WHOは当初、マラリア対策として既存の蚊帳に薬を何回もしみこませて繰り返し使用するよう指導したが、再処理が面倒で、この方法はうまく機能しなかった。

住友化学は防虫網戸の技術に着目し、Olyset Net を開発した。蚊帳の糸に練りこんだ ピレスロイドが、洗濯等により表面の薬剤が落ちても中から徐々に染み出し、防虫効果が5年以上持続するもので、世界各地でテストを行った。

1998年にWHO、UNICEF、UNDP、World Bank 主導でRoll Back Malaria Partnership が始まり、2001年にWHOからOlysetがマラリア防止に有効との認定を受けた。

2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。

ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。

CBS News 録画  http://www.cbsnews.com/1606-500251_162-670124.html

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、 50以上の国々に供給されている。

住友化学は2003年からタンザニアのA to Z Textile Mills社にこの生産技術を無償提供し、2003年から年間1,200万張の生産開始した。

2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。

2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。

2010年8月現在、タンザニアでの生産能力は年間約2900万張りになり、タンザニアではこの生産だけで約7,000人の雇用機会を創出している。

同社はまた、オリセットネット事業で得た売上を役立てたいと考え、特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の協力を得て、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、エチオピアの各国で小中学校の校舎・給食設備の建設・教材・先生の宿舎などに取り組んでいる。



 

 

 

中国国家発展改革委員会(NDRC)は5月31日、開始から5年経ったレジ袋規制の状況を発表した。

中国は2008年6月1日にレジ袋の規制を開始した。
6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止する。
また、ゴミ公害(白色汚染)対策として極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用を禁止する。


同年7月10日には規制を強化する通達を出している。

2008/7/16 中国、「レジ袋規制」を強化

それによると、規制開始後、5年が経過したが、レジ袋の使用と廃棄は著しく減少し、ゴミ公害(白色汚染)もある程度減った。
レジ袋の使用は1/3になり、これまでに670億枚のレジ袋消費が減 った。これは600万トンの石油の節約となるとしている。

「白色汚染を減少し、美麗な家屋を建てよう」とのスローガンで、検査チームを各地に派遣し、従わない者を厳重に罰した。

しかし、まだレジ袋を無料で配ったり、禁止されている極薄の袋を使用するケースも残っており、今後も監視を続けるとしている。

実際には、International Food Packaging Associationが調査したところ、スーパーマーケット10店が全てレジ袋を有料としていたが、Wal-Martを含む4店のみが0.025mm以上のものであった。

一般の商店では調べた全てが無料で配っており、10店のうち1店のみが0.025mm以上のもので、他はすべて極薄品であった。

 

 


中国国家発展改革委員会(NDRC)は6月5日、SK GroupがSinopecの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
Sinopecが27億ドルを投じて単独で建設し、2012年末に完成しているが、Sinopec 65%、SK Group35%出資のJVとなった。

SKは2008年5月にシノペックの武漢エチレン計画に35%出資することで合意したことを明らかにしたが、その後、2009年に中国SKのトップが中国メディアに対し、現在の経済危機のなかで、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにしていた。

  
2008/6/2   韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資

両社は2011年12月に予備契約に調印した。SKの出資額は明らかにされていない。

エチレン能力は80万トンで、以下の誘導品を含む。
  LLDPE 300千トン
  HDPE  300千トン
  PP    400千トン
  EO   100千トン

ーーー

NDRCは今回、下記の2件プロジェクトの承認も発表した。

1) CNOOC 惠州製油所2期計画

CNOOC(中国海洋石油総公司)は現在、広東省恵州市の大亜湾の大亜湾経済技術開発区に年産11百万トン(日量220千バレル)の製油所を持つ。
同社は同地にShellとの50/50JVの中海シェル石油化学
CNOOC and Shell Petrochemicals)を持ち、2006年1月にエチレン 年産80万トンの石化コンプレックスの本格生産を開始した。エチレン能力は現在、95万トンとなっている。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社

今回、製油所第二期(年産10百万トン)と、他に年産100万トンのエチレンが承認された。
CNOOC単独で、中海シェル石油化学については言及されていない。

2011/1/11付 China DailyはShellがこの第二期計画への参加を求めたと報道している。

CNOOCは第二期計画に必要な資金も技術も持つため、仮にShellの参加を認めたとしても、中海シェル石油化学のように50%参加は認めないだろうとされ、Shellは中海シェル石化の持分のうちの20%を放棄して、代わりに第二期計画への30%の出資を求めたとの説も伝えられた。

2)Sinopec 海南島石化計画(Hainan Refining & Chemical Company)

エチレン年産100万トンと製油所の増設が承認された。

製油所は海南島の洋浦経済開発区(Yangpu Development Zone)にあり、2006年9月に800万トン(日産16万バレル)の製油所がスタートした 。

計画では製油所を1300万トンに増設し、隣接してエチレン年産100万トンを新設する。

Sinopecは2008年4月、海南省政府との間で年産100万トンのエチレン計画に関する契約に調印した。

2008/4/14 Sinopec の新しいエチレン計画



ExxonMobil は5月30日、シンガポールの第2エチレンクラッカーが稼働したと発表した。

既存の第1クラッカーと合わせ、数週間のうちにポリエチレン3系列、ポリプロピレン2系列、メタロセンエラストマー1系列と、能力増となったオキソアルコール、芳香族プラントが稼働することとなる。これを動かすコジェネレーション設備も220メガワットから375メガワットに増強された。

メタロセンエラストマーはアジア太平洋地区で初の製品となるとしている。

同社は2007年9月、シンガポールでの2計画の詳細検討を終了し、建設の最終決定を行なったと発表した。

当初は2011年末のスタートを予定したが、需要動向などを勘案し、遅らせた。

  2007/9/10 ExxonMobil、シンガポールでの2計画発表

同社の1期計画(2001年スタート)も含めた能力は以下の通り。(単位:千トン) 

  1期
(現状) 
 2期 合計
エチレン  900  1,000 1,900
プロピレン  520   450 970
ブテン 270   270
PE  600 650 x 2 1,900
PP  405   450 855
specialty elastomers  -   300 300
ベンゼン  240   +340 580
paraxylene  450 +80 530
oxo-alcohol  220   +125 345
isopar  35   35
n-butylene  270   270
MTBE  85   85


同社は、第二期の完成で、中国とインド亜大陸その他の成長市場に製品を供給できることとなるとし、「この地域の石化製品需要に対応し、シンガポールの成長に貢献する」としている。

ExxonMobilの2期計画の完成で、シンガポール3社のエチレン合計能力は3,800千トンとなる。

ExxonMobil       1,900千トン

Petrochemical Corp. of Singapore (PCS) 1,100千トン

日本シンガポール石油化学(JSPC) 50%、QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 50%
   2006/4/3   シンガポールの石油化学の歴史-2
       2009/11/26  カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資

Shell (Bukom島)800千トン

20031月、住友化学 とShell はシンガポールでの新たなエチレンプラントの建設についてFSを開始する旨の契約を締結した。

シェルの日量50万バレルのリファイナリーがあるブコム島(ジュロン島の5.5km南東)にエチレンプラントを建設、パイプラインで ジュロン島に送り、住友化学が誘導品を増設する計画であった。

20045月、住友化学はサウジ・ラービグ計画に参加する覚書を締結、これにより、ブコム島でのエチレン計画から撤退することとなった。

シェルは住友化学の離脱後もシンガポールの経済開発局とともに本計画を進めることとした。
製品はジュロン島のシェルのMEGプラント等で使用する。

2010年3月スタートした。

エチレン 800 千トン
プロピレン 450  
べンゼン 230  
ブタジエン 155  


 



昨日の記事の通り、Asia Mineralsは南アのKudunane Manganese Resourcesに出資する 。

Asia Minerals Limited (亜州砿業有限公司) は1993年に香港に設立されたマンガン専業メーカーで、鉱石からアロイ、メタル、化学品までを一貫して扱う。

日本人のHirotaka Suzuki 氏が創業者・会長である。

Asia Metals は2005年に内蒙古のフェロアロイ製錬会社 Inner Mongolia Resourceを取得した。
シリコンマンガン、中低炭素フェロマンガンなどを生産する。(年産7万トン)

2009年には第二の生産拠点として、遼寧省錦州市太和区にある製錬会社 Jinzhou AML Resources を買収した。

同社はAsia Metals (AML) が81.67%出資し、他に CITIC Jinzhou Ferroalloy(中信錦州フェロアロイ)、日本電工、豊田通商が出資する。シリコンマンガンの年産能力は5万トン。

同社は日本を初め、韓国、中国、米国、EU、CIS、中東のほとんど全ての製鉄メーカーにマンガンアロイを供給している。

ーーー

2012年5月にKudumane マンガン計画の最初の爆破の式典が鉱物資源相やAsia Metalsの鈴木社長やMr.Africaと称される矢野哲朗・アフリカ開発協会理事長が出席して行われた。

Kudunane Manganese Resourcesは、Northern Cape Manganese Company とDirleton Minerals & Energy が株主で、この2社にはAsia Minerals と現地のBBBEE企業のBold MovesとNWC Manganeseが出資する。
実質ベースでAsia Minerals が49.0%の出資となるが、将来は61.5%となる。

採掘はオープンピットと地下鉱山採掘の二つで、最初はオープンピットで始める。

鉱石は道路と鉄道でPort Elizabethに運び、輸出する。
現在Port Elizabethの近くで建設中のCoega Industrial Development ZoneとNgqura深水港が完成すると、そこから輸出する。

(昨日の記事参照)

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Asia Metalsはマレーシアのサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable Energy:SCORE)にマンガン精練所を建設している。

建設地はサラワク州ビンツル市北東のサマラジュ工業団地で、2013年7月〜9月から段階的に立ち上げ、2014年12月までにフル稼働に入る計画。

サマラジュ工業団地では、トクヤマが太陽電池向け多結晶シリコン生産工場を建設している。

年産能力はシリコマンガン12万トン、中低炭素フェロマンガン5.4万トン、フェロシリコン6万トン、原料用の焼結鉱20万トンで、投資額は約240億円 。

日本電工は2012年5月、この計画に参加することを発表した。事業会社はPertama Ferroally SDN. BHDで、Asia Mineralsが60%、日本電工が20%、神鋼商事が7%、中央電気工業が5%、マレーシアのCarbon Capital Corporation SDN.BHD.が8%出資する。

南アのマンガンもここで製錬する。

南アのTshipi E nete Manganese Mining に出資するOM Holdingsもサラワクに製錬所を建設している。
第一期はフェロシリコンアロイ年産308千トン。

ーーー

日本電工の主事業は合金鉄事業で、フェロマンガン、高炭素フェロクロム、フェロバナジウム、フェロシリコン、シリコンマンガンなど、ほとんどの品目をカバーして いる。他に機能材料事業として、マンガン酸リチウム、フェロボロン、酸化ジルコニウム、ほう素製品を扱う。

2010年に新日鉄(現・新日鐵住金)が14.86%を取得 した。

日本電工は南アに2つのJVを持っていたが、1社を売却した。

 NST Ferrochrome (Pty)Ltd ステンレス原料のフェロクロムの製造・販売

1993年設立。
Samancor Chromeとの50/50JV
(2009/11にInternational Mineral Resources がSamancor Chromeの70%を取得した)

日本電工は2012年5月、下記のマレーシアへの投資集中のため、JV相手への売却を決定した。

 SAJ Vanadium(Pty) Ltd. フェロバナジウムの製造・販売

2002年設立。
日本電工 50%、Vanchem 40%、三井物産 10%
(当初はHighveldとのJV)

 

 

5月31日付の日本経済新聞は以下のとおり伝えた。

南アでマンガン権益 レアメタル確保へ官民が連携 中国の攻勢に対抗

新興国でのレアメタル(希少金属)資源確保に向けた日本の官民連携が動き出す。世界最大の埋蔵量を誇る南アフリカの鉱山の採掘権を新日鉄住金グループの日本電工などが取得する。頑丈な鋼材を生産するのに不可欠なマンガン鉱石の権益を確保。中国の攻勢に対抗するため、日本の年間輸入量の2割にあたる20万トンを日本企業に優先して輸出する。

鉱物専門商社アジアミネラルズ(本社・香港)が南ア北部に広がるカラハリ鉱床の一部の鉱区で採掘権の49%を獲得し、特定目的会社(SPC)を設立する。日本電工が1割超の出資を検討している。

独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、鉱山開発など投資の回収に時間がかかる案件を対象とする「産業投資出資金」の枠から2.5%(約10億円)を出す計画。「産業投資出資金」から鉱物資源の案件に拠出するのは今回が初めてとなる。

記事はマンガン権益を初めて取得するような印象を与えるが、実際には既に住友商事が南アの二大マンガン生産企業の1社に約13%の権益を所有している。

記事にあるAsia Mineralsは香港の企業だが、創立者で会長は日本人。
マンガンその他の合金鉄を扱う日本電工は、本事業への参加は明らかにしていないが、Asia Mineralsがマレーシアのサラワク州サマラジュ工業団地に建設する合金鉄生産プロジェクトには参加を決めている。

南アのマンガン開発の状況と、Asia Mineralsの事業を2回に分けて紹介する。

南アのマンガン開発

南アフリカ共和国はアフリカ最大のマンガン生産国で、生産量では中国に次いで世界2位。

 

2012年の中国のマンガン輸入は1,223万トン と日本のおよそ10.5倍もある。資源メジャーは需要が急増する中国向けの供給を優先しており、「安定したマンガン鉱石の調達先を増やすことが産業界の課題」(資源エネルギー庁)。(日本経済新聞記事)

マンガン生産地域は北ケープ州北部のKalahari Basinに集中している。

これまではSamancorとAssmangの二大企業が生産を行ってきた。

SamancorはBHP Billiton とAnglo AmericanのJVで、Hotazel鉱山(Wessels坑内堀鉱山とMamatwan露天堀鉱山)を運営する。

Samancorの近隣にはAnglo Americanの傘下Kumba Iron Ore所有の同国最大のSishen鉄鉱山がある。

Assmangは高品位鉄鉱石、高品位マンガン鉱石及びクロム鉱石の3つの鉄鋼原料資源を保有する世界でも類を見ない資源鉱山会社で、African Rainbow Minerals とAssore(住友商事出資)のJV。

Nchwaningマンガン鉱山とGloriaマンガン鉱山を運営し、Port Elizabethから鉱石を輸出する。
また、Cato RidgeにあるCato Ridge Alloys(Assmang 50%、水島合金鉄 40%、住友商事 10% のJV)でフェロマンガンを生産し、Durbanから輸出する。

マンガン鉱の南部のKhumaniとBeeshoekに鉄鉱山があり、Saldanha港から輸出する。
北東部のDwarsrivierにクロム鉱山があり、近くのMachadodorpでクロム合金鉄にし、Richards Bayから輸出する。

住友商事は2007年1月、Assoreの持株会社Oresteel の株式20%をOld Mutualから取得。
その後、2回に分けて9%をSacco家から取得し2008年6月には更に20%を取得し、総額で約450億円の投資で49%とした。Assmangへの持分権益は約13%に増加した。

http://www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/2009f/mineral2_09.pdf

参考 Black Economic Empowerment政策(BEE政策)
南アでは不当な差別によって歴史的に不利な立場に置かれてきた黒人、カラード、女性など(HDSA: Historically Disadvantaged South Africans)に対するアファーマティブ・アクションとして、これらの経済進出を支援するBlack Economic Empowerment政策(BEE政策) が採られている。
従来のBEE企業は所有と経営参加だけを尺度としたが、少数の黒人のみが恩恵を受けるとの批判を受け、Broad-Based BEE (B-BBEE)が採用された。出来るだけ広範に富を配分するのが目的。

南アでは最近、新しいマンガン鉱が次々に稼働しつつある。

    年産
能力
生産
開始
株主  
Samancor Hotazel鉱山
・Wessels坑内堀鉱山
・Mamatwan露天堀鉱山
300万t   BHP Billiton
Anglo American
 
Assmang ・Nchwaning
・Gloria鉱山
300万t   African Rainbow Minerals
Assore
 
United Manganese
  of Kalahari
Smart、Rissik、
Botha 地区
2011年
271万t
2011 Renova (ロシア) 49%
Majestic Silver (BBBEE) 51%
現状では世界4位
中国のSinosteelがRenova持分の買収を考えている。
Tshipi E nete
  Manganese Mining
Tshipi Borwa鉱山
(Kalahari地区)
 
240万t 2012 POSCOが参加(下図)
 
OM Holdingsはサラワクに合金鉄プラント建設
Tshipi Bokone鉱山    
Kudunane
  Manganese
  Resources
York地区鉱山 2014年
300万t
2013 Asia Minerals 49.0% (61.5%)
Bold Moves(BEE) 25.5%(25.5%)
NWC Manganese(BEE) 25.5%(13.5%)
 (  )は将来
Asia Mineralsがサラワクに合金鉄プラント建設
Hotazelピット    
Kalagadi Manganese Kalahari地区 300万t   ArcelorMittal 50%
Kalahari Resorces 40%
南ア産業開発公社  10%
鉱山サイトに焼結鉱設備(240万トン)
Coegaに製錬工場(32万トン)

Tshipi E nete 株主

南アフリカでは港までの輸送と港湾設備の整備が問題である。

現在、カラハリ地区から積み出し港 Port Elizabethまでの鉄道輸送能力は年間400万トンで、輸送枠は既存2社でほぼフルとなっている。
このほかダ-バン港積みでトラック便による輸送が年間100万トンとなっている。


「Asia Mineralsの事業」に続く。



国際石油開発帝石(INPEX )とRosneftは5月29日、オホーツク海北部大陸棚に位置するMagadan-2 とMagadan-3 鉱区開発で協力協定を締結したと発表した。最終契約は年末までに締結する予定。

鉱区はマガダン沖約50ー150キロに位置し、水深約120 - 180 メートル、鉱区面積は28,082平方キロ。
2鉱区の推定可採埋蔵量は石油換算で15.77億トン(117億バレル)とされる。(地図に表示の数字は別)

両社で鉱区の開発及び生産にあたるJVを設立し、INPEXは33.33%を取得する予定。

INPEXはこの鉱区での地質探査の費用を全額負担する。これまでにRosneftが負担した開発費用を支払うほか、Rosneftがこの鉱区のライセンス取得のために支払った費用の33.3%も支払う。
更にINPEXは石油・ガスの発見ごとに一定のボーナスをRosneftに支払う。

この条件はINPEXにとって不利に思えるが、後記の通り、EniやStatoilも同様である。
2011年1月にBPが
Rosneftとグローバルな戦略的提携で合意し、ロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区の開発を決めた際にも、BPは1/3の出資で、開発コストの最初の20億ドルを負担することとなっていた。(TNK-BPの株主の反対でつぶれた)

Rosneftのセチン社長が同日、経済産業省を訪れて合意文書に署名した。
高原資源エネルギー庁長官は会談で「石油だけでなく深く幅広く連携していきたい。資源価格の安さも重要だ」と述べた。社長は「日本の事情はよくわかっている。是非良いパートナーになっていきたい」と応じた。

ーーー

Rosneftは深海での石油・ガス開発の技術を持たず、技術を持つ各社と相次いで提携している。

BP:2011/1/17  BP、ロシアのRosneft と戦略的提携  一旦破綻
  
2012/10/24  ロシアのRosneft、TNK-BPを買収         BPがRosneftに19.75%出資

ExxonMobil:2011/2/5  Rosneft、ExxonMobilとも海底油田開発で合意   サハリン1プロジェクトに次ぐ提携
                         2011/9/1    Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携 BPとの提携破綻による

Eni

両社は2012年4月、黒海(Western Chernomorsky油田)、バレンツ海 (FedynskyとCentral Barents)での油田開発の戦略的協力協定を締結した。
推定可採埋蔵量は石油換算で360億バレル。

Eniは地質探査の費用を全額負担する。

Statoil:

両社は2012年5月、バレンツ海のPerseevskyとオホーツク海での油田開発の協力協定を締結した。
オホーツク海は
KashevarovskyとLisyanskyとMagadan 1(INPEX開発地域に隣接)の3か所。

Statoilは33.33%を出資、開発段階の費用 (2016~2021年にwildcat well 試験井を6本掘削)を全額負担する。

 

ーーー

RosneftのSechin社長は翌30日、北京で中国石油天然気集団(CNPC) 会長と会談、ロシア北極海の大陸棚などでの探鉱や生産など共同資源開発の可能性を話し合い、相互協力に関する合意文書に署名した。

対象となる地域は、バレンツ海とペチョラ海の大陸棚 (West Prinovozemelsky, Yuzhno-Russky、Medynsko-Varandeisky) と、Irkutsk地方、Krasnoyarsk地方、Nenets地方の陸上鉱区。


 

 

 

 

米農務省(USDA)は5月29日、オレゴン州の農家の畑で、政府が承認していない遺伝子組み換え小麦が見つかったと発表した。

現在、遺伝子組み換え小麦は全世界で承認されていない。

東オレゴンの農夫が80エーカーの畑に、植えていない小麦が勝手に生えているのを発見、除草剤の "Roundup"で除草しようとしたが、出来なかった。
不思議に思った農夫がサンプルをオレゴン州立大学に送り、遺伝子組み換え処理によるRoundup抵抗性遺伝子が含まれているのを発見した。
USDAが29日にこれを確認した。

Monsantoは1970年に除草剤 Roundup を開発、1996年にこれに耐性を持つRoundup Ready 大豆を、1998年にはRoundup Ready コーンを上市した。

同社は1998年から2005年にかけてオレゴン州を含む16州でRoundup抵抗性小麦の圃場試験を行った。

しかし、Monsantoはこの計画を中止、商業化のための承認を求めなかった。既に遺伝子組み換えコーンなどで海外で反対が出ており、小麦の輸出に悪影響を与えるとする米国の農家からの反対が強かった。

問題は、9年前に計画を中止したのに、なぜオレゴンの畑で見つかったかである。
種子が圃場から風で飛ばされ、何かの事情でこの畑で育った可能性があるが、小麦畑が汚染され、何年も気付かれなかった可能性もある。

最悪ケースはヒューマンエラーで通常の種子と混ざってしまったケース。被害が広く拡販する恐れがある。

USDAは、Monsantoの小麦種子開発プログラム終了後の9年間にどのようにして未承認の種子が育っていったかを調査していると発表した。

Monsantoでは、USDAは元のRoundup Ready wheat が市場に入り込んだ証拠はないとしているとし、同社の社内調査では、種子が土壌に残ったとか花粉が飛んだとかは考え難いとしている。
また、仮に小麦にRoundup Ready遺伝子が存在しても、食品、飼料、環境の安全性の懸念はないと強調している。10年も前にFDAが食品と飼料の安全性を確認しているとしている。

ーーー

USDAの発表を受け、各国は直ちに対応に動いた。

Consumer Unionでは、「世界に影響が及ぶだろう。米国の貿易相手国は遺伝子が組み換えられた小麦を望んでいない。適切な検証がされておらず、この小麦を食べても安全なのかどうかは分からない」と述べた。

日本の農林水産省は5月31日、オレゴン州産が含まれる米国産小麦の銘柄 Western White (WW) の輸入を当面、停止することを明らかにした。
ケーキやビスケットなど菓子用や麺用に用いられる軟質小麦。

農水省は、政府が輸入した小麦を国内の業者に売り渡す入札を5月30日に実施したが、Western Whiteを対象から外した。
小麦の輸入量は年間500万トン程度で米国産が約300万トンを占め、うちWestern Whiteは80万トン前後。

韓国の食品医薬品安全処も、米国産輸入小麦粉のサンプルを入手し検査に着手した。
「小麦を輸入した時期ごとの検査も行って、遺伝子組み換え小麦が混じっていないかどうか、はっきり確かめたい」としている。
韓国の小麦輸入は241万トンで、米国産は120万トン、うちオレゴン州からは46万トンとなっている。

公取委は5月29日、平成24年度における独占禁止法違反事件の処理状況を発表した。
   http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/may/130529.html

主な内容は以下の通り。

1.課徴金納付命令

  延べ113社に合計250億7644万円。

 入札談合・価格カルテル等の不当な取引制限に対する課徴金のうち、

 ・主導的な役割を果たした事業者に対する割増算定率適用 2件、延べ6社
 ・違反を繰り返した事業者(10年以内)に対する割増算定率適用  4件、延べ4社
  * 課徴金算定率が10%が15%に、両方の場合を満たすときは20%に。

 ・早期に違反行為をやめた事業者に対する軽減算定率適用 4件、8社
  * 違反行為の期間が2年未満で、調査開始日の1か月前までに違反行為をやめていた場合
   課徴金算定率が10%が8%に

2.刑事告発

 2012年6月、 軸受(ベアリング)製造販売業者による価格カルテル事件について、不二越 、日本精工、NTNの3社と社員7名を告発
   ジェイテクトは自主申告したため告発対象から外れた。

 不二越に1億8000万円 、日本精工に、3億8000万円の罰金 、両社の5名に懲役1年ないし1年2月(いずれも執行猶予 3年)の有罪判決。
 
NTNについては公判中 。

2012/4/23 東京地検、ベアリング大手4社をカルテル容疑で家宅捜索

3.課徴金減免制度

 課徴金減免制度の適用状況

年度  18  19  20  21  22  23  24 累計
申請件数 79 74 85 85 131 143 102 725
適用件数 6 16 8 21 7 9 19 86
適用事業者 16 37 21 50 10 27 41 202

平成18年1月4日  課徴金減免制度導入
平成21年独占禁止法改正法(平成22年1月1日から課徴金減免制度拡充) 

 実際の減免は個別に公表されている。

2012年 http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/itiran24.html

2013年 http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/itiran25.html


4. 不当廉売

 不当廉売事案の注意件数の推移

5.審判

     審判係属件数の推移
       審判事件数は行政処分に対する各社の審判請求ごとの事件番号の数

  1) 平成24年度中に係属していた審判事件数は170件(うち 課徴金納付命令 95件)

   47件(うち 32件は新潟市等のタクシー事業者に対する件)の審判手続を開始。
   13件の審決 (
2012年5月30日 MBSカルテルでカネカと三菱レイヨンに課徴金に関する審決)

  2) 排除措置命令に係る審判請求棄却審決  3件
    溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯の製造販売業者による価格カルテル事件に係るもの1件

   3) 排除措置命令を取り消す審決 1件

    音楽著作物の著作権に係る著作権等管理事業者による私的独占事件
     公取委の排除措置命令を公取委が取り消す審決を行ったもの。
            http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h24/jun/120614.html

6.審決取消請求訴訟

  年度当初係属中の審決取消請求訴訟 14件
  年度中に新たに提起            5件

  これらのうち、原告の請求を棄却する東京高裁判決 5件(うち3件は確定、2件は上訴)
  最高裁で上告棄却 1件 (多摩談合事件の課徴金納付命令事件)

  差引 係属中 15件



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