2013年7月アーカイブ

INEOSは7月19日、東華能源(Oriental Energy Company)にInnovene PP 技術を供与すると発表した。

寧波大榭開発区に年産40万トンのPPを建設するもので、原料プロピレンは同地に建設するプロパン脱水素(能力1,320千トンの第一期660千トン)プラントから供給を受ける。

東華能源は1996年に設立された。(当初名は張家港東華優尼科能源)
株主は
張家港保税区経済開発公社と中国中信集団公司(香港)、Allied Oil International の3社で、LPGの輸入販売を主業務としている。

東華能源の計画は以下の通り。

立地:寧波大榭開発区
計画:

  事業者 第一期 第二期 合計
プロパン脱水素 寧波福基石化 660千トン 660千トン 1,320千トン
PP 張家港揚子江石化 400千トン

 -

400千トン

寧波福基石化(Ningbo Fuji Petrochemical):東華能源100%子会社
張家港揚子江石化:2011/9設立のJVで、株主は下記。
 
東華能源  56%、江蘇華昌化工 22%、 江蘇飛翔化工 22%

第一期は2014年初めに完工、3~6カ月で生産開始としている。

これとは別に、東華能源は2011年に本拠地の張家港市に張家港揚子江石化を設立した。
株主は
張家港揚子江石化と同じ3社。

プロパン脱水素132万トンの計画で、第一期66万トンについては2012年4月に
UOP LLCが技術供与した。2014年にスタートする計画。

下記のCNCICの資料では、PP 40万トン計画が記載されている。

ーーー

なお、INEOSは7月11日にはCNOOC にHDPE技術(Innovene S)を技術供与すると発表している。

立地は広東省恵州市で、能力は年産400千トン。

広東省恵州市にはCNOOCとShellとのJVの中海シェル石油化学(CNOOC and Shell Petrochemicals) があり、エチレン800千トンのコンプレックスを持ち、Basell 法によるHDPE 200千トンプラントも持っているが、今回はCNOOCの単独事業と思われる。

ーーー

CNCIC(中国化工信息中心:旧化学工業省の科学技術情報研究所を母体とする機関)は2013年4月にSingaporeでシンポジウム CPIC 2013を開催したが、その中に「中国のポリオレフィン事業の発展と予測」というレポートがある。
   http://cpic.cncic.gov.cn/bookpic/201342312375951506.pdf

現在建設中 or 検討中のポリオレフィン計画では、MTO/MTP(石炭→メタノール→オレフィン→ポリオレフィン)が非常に多いが、PPについてはPDH(プロパン脱水素)によるものも ある。(上記の東華能源の2つの計画も記載されている

  ナフサ MTP PDH  合計
LDPE - 1,290 - 1,290
LLDPE 1,050 3,230 - 4,280
HDPE 900 2,150 - 3,050
PP 4,770   8,410   1,860   15,040

このうちの主な計画は以下の通り。(図の上段の4つは既設)

当然ながら、MTPは内陸部の石炭産地にあり、PDHは輸入プロパンを原料とするため沿海部にある。

既存のMTP計画の概要は以下の通り。

シノペック中原石化(Sinopec Zhlongyuan)は2011年10月、河南省濮陽市で最初のS-MTO計画をスタートさせ、エチレンとプロピレンがオンスペックとなった。

メタノール 60万トンからオレフィン 20万トンを生産、これから、PP 10万トン、PE 6万トンを生産する。

包頭神華石炭化学(Baotou Shenhua Coal Chemical) は神華集団 76%、上海華誼集団公司 24%のJV。
メタノール 180万トン、MTO 60万トン、PE 30万トン、PP 30万トン
         2006/12/23   中国のMTO計画

唐多倫煤化工(Datang Duolun)大唐国際発電が60%、中国大唐集団公司が40%のJVで、内蒙古自治区Duolun県でUnipolで46万トンのPPを生産している。

神華寧夏石炭グループ(Shenhua Ning Coal)は公称 52万トン。

2011/10/26  中国の"Coal to Olefins"の現状

 



Dow Chemical は7月25日、第2四半期の実績を発表した。

前年比減収だが、EBITDA (金利・税・償却前利益)は特にPerformance Plasticsが貢献し、前年比で1.7倍の増益となった。


Dow Chemical も収益の拡大のため、事業構造を分析し、低成長事業を処分し、高成長事業を拡大している。

本年3月には、昨年12月の投資家フォーラムで説明したポートフォリオマネジメントの推進案(今後 24か月で非中核事業資産を10億ドル売却)を更に推し進め、1年半で15億ドル以上の資産を売却すると発表 した。

売りに出す事業は、
 PP Licensing and Catalysts 部門
 Plastics Additives 部門を挙げた。
今回、
Agriculture Sciencesのなかの殺菌剤事業も売りに出していることを明らかにした。

2013/3/19  Dow Chemical、非中核事業の資産売却を促進 

同社は第2四半期決算の説明会で、各事業の分析をしているが、判断材料としては、①市場の成長性と②EBITDA率 を見ている。

有望なのは以下の3事業。

Performance Plastics 年間売上高 144億ドル

包装などの市場は1000億ドル以上
新興国での消費増大で今後の伸びが大きい
原料からのValue chainの収益性

Agricultural Sciences 年間売上高68億ドル

グローバルでの人口増
耕地と水の減少で農業科学品の需要増

Electronic & Functional Materials  年間売上高 45億ドル

需要はますます増大
Dowは主要なセクターで1位か2位を占める。
 

残りの2事業、Coatings & Infrastructure Solutions と Performance Materials については3つのグループに分かれる。

これについて、Andrew Liveris CEOは以下のように述べた。

Water & Process Solution やSpecialty Chemicals は既に高収益で、かつ伸びつつある。

Acrylics/Dow Coatings business やPolyurethanes franchise は業績はまだ期待以下だが、改善の兆しが見られる。
サウジのSadara計画やプロパン脱水素計画、グローバルな建築市場、コーティング市場の
の伸びの恩恵も受ける。

これに対し、エポキシ、欧州の建築資材(Building & Construction)、コモディティの塩素誘導品(クロロフォルム、メチルクロライドほか)などは期待以下であり、JVや売却などを含むあらゆる可能性を検討する必要がある。

さきに売りに出した事業(PP Licensing and Catalysts 部門、Plastics Additives 部門、殺菌剤事業 )の売上高は年間15億ドルで、今回、売却またはJV化候補として名指しされた3事業の売上高は60億ドルに達する。

 


DuPont は7月23日、統合応用科学戦略を全事業で展開するための人事を発表したが、Performance Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。

スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討する。

Performance Chemicals 事業は、酸化チタンを中心に、フッ素化学品、フッ素樹脂などを扱っている。

業績は以下の通りで、売上高は全社の約20%、営業損益では28%を占める。

2012年の第4四半期の実績を見ると、売上高は前年同期比で15%減となっている。数量で8%減、価格で7%減となったが、欧米でのフッ素樹脂の需要減が数量減の主な理由で、値下がりは酸化チタンが主となっている。

営業損益は値下がりと両分野での販売数量減と減産により、前年同期の433百万ドルが54%減の200百万ドルに止まった。

酸化チタンは自動車用ペイントなどに使われ、世界経済の影響を受けやすい。
不況の間、メーカー各社はプラント休止で対応していたが、昨年になり DuPont、Cristal Global、Tronox、Huntsmanなどの大メーカーが休止していたプラントを一斉に再稼働させた結果、価格が急降下した。


DuPontでは、統合科学会社として株主価値を最大にするために既存事業の見直しを行っている。

2011年5月にはデンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを買収した。
  
2011/5/27  DuPontDaniscoの買収成功 

同社は2012年8月、Carlyle Group にPerformance Coatings事業を現金49億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
  2012/9/5   DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

Kullman会長・CEOはPerformance Chemicals 事業について、「景気変動による事業の不安定については科学ではどうしようもない」と述べ、DuPontは農薬、栄養、バイオサイエンスのような科学主導("science-driven")事業に集中するとしている。

ーーー

DuPontは世界最大の酸化チタンメーカー。

2007年時点で全世界需要490万トンの21%(約100万トン)をDuPontが供給していたが、同社は2011年に需要増大に対応し、年産35万トンの増設計画を発表した。
   2011/5/18
 DuPont、酸化チタンの大増設計画発表

1)メキシコのAltamira工場に5億ドルを投じて、年産20万トンのプラントを新設、2014年末の完成を目指す。

2)既存の下記 5工場の手直しで、3年間で年産15万トンの能力増を達成する。
    
ミシシッピー州DeLisle、テネシー州 New Johnsonville、デラウェア州 Edge Moor
    メキシコ Altamira、台湾 観音(Kuan Yin
    (これらは全て、塩素法を採用。同社はまた、フロリダ州
Starkeで鉱山を運営している。)

DuPont 200511月に山東省東営市の経済開発地区で当初能力年産20万トンの酸化チタンを生産することで地方政府と合意書を締結した。この計画は環境問題で難航しているが、引き続き、推進する。
   
2010/7/9  ChemChina、山東省で酸化チタン生産開始 に状況記載

DuPontは他社が硫酸法を採用するのに対し、塩素法を採用している。

硫酸法はイルミナイト鉱石と硫酸を反応させ酸化チタンの硫酸塩から二酸化チタンを製造する。工程は塩素法に比べて長く、より多くのエネルギーを消費する。また、硫酸鉄等の固形産業廃棄物は塩素法の7倍であり、廃硫酸は80%以上は回収不能な廃溶液となり、そのため必要な公害対策設備費も増大する。

一方、塩素法はルチル鉱と塩酸を反応させ四塩化チタンから二酸化チタンを製造する。気相反応で工程が非常に短く設備もコンパクトですむ。また、使用後の塩素の回収率は90%と非常に高く廃棄物は硫酸法に比べ七分の一。


大手他社の状況については、2011/5/18  DuPont、酸化チタンの大増設計画発表 参照。



EUの通商担当のデフフト(Karel De Gucht)委員は7月23日、中国の太陽光パネルのダンピング問題で中国側と和解に達したと発表した。

付記

欧州委員会は8月2日、これを承認した。
これにより価格協定に参加する中国メーカーは8月6日以降、ダンピング課税を免れる。参加しないメーカーは47.6%の課税を受ける。

経緯と概要は以下の通り。

EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。

当初はダンピング税率を平均 11.8%とし6月6日から適用、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

2013/6/10    EU、中国の太陽光パネルに反ダンピング関税、中国は欧州産ワインで反ダンピング調査開始

これに対しては、EU内にも中国の対抗策を懸念する声が強く、ドイツのMerkel首相はドイツ製品の輸出への影響を懸念して中国との更なる交渉を要求した。
中国製太陽光パネルを輸入する欧州の業者もダンピング課税に反対した。

6月10日付 英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」との社説を掲載した。

欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。

中国商務部は7月1日、EU原産の輸入ワインについて、反ダンピング調査と反補助金調査を開始すると発表した。

2013/7/5   中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始

中国商務部は6月5日に中国ワイン業界による調査申請の内容をEUに通知し、17日に欧中双方による話し合いを行った。
6月21日には欧州委員会から意見書を受け取った。

調査開始までの詳細な過程を発表するのは珍しく、協議を通じて貿易紛争を解決したいとの姿勢をアピールしたとも受け取れる。

EUのデフフト委員(通商担当)は6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。

その後、EUと中国側(中國機電品進出口商会)は中国製太陽光パネルのEUにおける最低販売価格年間割当額に関する交渉を続けた。

7月26日付の人民網によると、当初中国企業は0.5-0.54ユーロ/ワットという妥協ラインを提案していたが、EU加盟国の自国産モジュールの価格は0.6-0.7ユーロ/ワットと大きな幅があった。

最終期限が近づき、中国・EUの双方は譲歩を示した。ドイツ誌は、「EUは0.6ユーロ/ワットを大きく下回る最低輸入価格を提案した」とし、「中国の交渉代表者も妥協の意思を示し、数日内に最終的な価格を提出する見通しだ 」と報じていた。

EUは欧州委員会で正式に承認するまで内容は明らかに出来ないとしているが、最低価格が0.56ユーロ/ワットであることが非公式に伝えられている。 年間割当額が合意に含まれるのかどうかも明らかにしていないが、ロビイスト団体のEU ProSunは、予想される需要の70%であると伝えている

アンチダンピング調査の対象となった中国企業140社のうち90社、数量では60%が この最低価格を上回っている。
この最低価格を守らない輸出業者は8月6日以降は47.5%のダンピング税を課せられる。

付記

その後の報道では、輸出枠は年700万キロワット分、最低輸出価格は発電能力1ワットあたり0.56ユーロ。
2012年に欧州で新規に導入された太陽光発電容量は1715万9千kwで。今回合意した輸出枠はその4割に相当する。

中国機電産品輸出入商会によると、
年間輸出枠の6割はこれまでの各社の輸出額実績に基づいて割り当て。
3割はEUへの抗議活動に積極的にかかわった企業
残り1割を輸出実績が小さい中小企業枠。

中国製品に対して厳しい姿勢を求めていた欧州の太陽光パネルメーカーはこれに激怒している。
ロビイスト団体のEU ProSunは、この和解は欧州法に違反するものであり、市場の70%を現状の安い価格で中国勢に引き渡して国産メーカーに死を宣言するものだとして、EUを訴えるとしている。

これに対しドイツの経財相は、「これまで交渉で決めるのがよいと強調しており、妥協が行われたのはよいことだ」と述べた。

6月のダンピング課税決定に賛成したフランスも、今回の決定を支持したが、中国がEUのワインの反ダンピング調査をやめることを希望している。

中国商務部はこの妥協を歓迎し、双方が実際的で柔軟な態度を示し、問題を解決する知恵を出したショーケースだとし、中国とEUとの間のオープンで、協力的で、安定し、持続可能な経済通商関係に貢献するものとしている。

 


EUとの間では問題は解決に向かったが、米国の場合は簡単ではない。

米国はこの問題でEUと共同で中国と交渉し、米/EU/中国の包括的な取り決めを結ぼうとした。
しかし、
米国は中国製太陽光パネルに対し、既にダンピング課税と相殺関税を最終決定しており、一旦最終決定をしてしまうと、簡単には取り消すことができない。

このため、8月6日にダンピング税率の引き上げを迎え、解決を急ぐEUに置いてけぼりを食った形となった。


 

   

エーザイは7月19日、連結子会社のエーザイ生科研の同社持株(70%)全株を譲渡する契約をローソンとの間で締結した と発表した。

エーザイ生科研は、中嶋農法を確立した中嶋常允氏が1967年に設立した㈱生科研を母体とし、土壌用肥料等の製造・販売、土壌・作物分析、土壌改良剤・ミネラル剤・作物栄養剤の研究開発、製造及び販売を行っている。

「中嶋農法」は土壌診断に基づく健全な土づくりの技術と、作物の健全な生育を維持するための生育コントロール技術 により、土壌の栄養バランス(ミネラルバランス)や作物の生育状態に対して適切な栄養を供給する栽培農法。

1972年にエーザイと取引・共同研究を開始し、1990年にエーザイ生科研と改称した。「中島農法」の商標や肥料の特許を保有する。

ローソンは関東甲信越地区の店舗で2012年4月から「中嶋農法」認定の「ローソンセレクトカット野菜」を販売している。

同社は2010年に農業生産法人「ローソンファーム千葉」を設立、現在は全国に9カ所の農場を持つが、今年度中に20カ所にする計画で、ここに中嶋農法を順次導入し、「安心・安全でミネラル豊富な」付加価値の高い野菜や果物の提供を拡大する。
合わせて、ローソングループと取引のある全国の契約農家にも「中嶋農法」を紹介し広める。

エーザイは、医薬品を中心とした事業に経営資源を更に集中する。

ーーー

中嶋農法は創始者の中嶋常允氏が長年の研究によりたどりついた2つの基本技術、土壌診断に基づく健全な土づくりの技術 、作物の健全な生育を維持する為の生育コントロール技術から成り立つ。

まず精密な土壌分析を行い、 これにより作物に必要な多量要素から微量要素までの土壌養分を把握してバランスをとり、 この処方箋による施肥を行うことで、作物は理想的な栄養吸収を行い健全に育 つ。

気象条件や栄養条件によって、体内の栄養バランスが崩れ、徒長や花芽分化の遅れ、品質の低下等が発生するが、常に生育状況を観察し、 葉面散布剤等を用いて、栄養バランスを調整し、正常な生育状態に戻す。

http://www.eisaiseikaken.co.jp/nakashima/

 



東京大学の調査委員会が分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授グループの論文について、改竄、捏造、もしくはその疑いがあると認定し、計43本は撤回が妥当と判断していることがわかった。7月25日に各紙が報じた。

加藤元教授は国内を代表する分子生物学者。改竄などが指摘された論文には20人以上の研究者が関わっており、こうした論文で得た博士号などの学位が取り消される可能性もある。

骨ができる仕組みやホルモンが作用する仕組みに関する研究など、これまで16年間に発表された計165本の論文を調べた結果、画像の合成や使い回しなどの不正が判明した。

朝日新聞によると問題例は以下の通り。


2012年1月、「データに加工の疑いがある」と学外から指摘があり、調査委員会で調べていた。
加藤元教授は「監督責任がある」として2012年3月末に辞職した。

今回、加藤元教授は、「不正があったのは間違いない。研究室のメンバーを信用していた。私の監督責任は重大だ。指摘された論文は撤回する。関係した皆さんに心からおわびしたい 」と述べた。

背景には、メンバーを複数の小グループに分け、有名科学誌への発表成果を競わせる研究室の運営手法にあったとされる。

「私自身は外部から指摘されるまで知らなかった。研究室のメンバーは熱心に実験をしており、疑っていなかった。指摘を受けて、論文の図をきれいに見せるために画像データをいじっていたことが分かった。ただ、してもいない実験をしたと偽るような捏造ではない」としている。


この問題は2012年1月にブログ名 JuuichiJigen氏(11次元)がYouTubeに次のタイトルで各論文の問題点を図示したことで判明した。

東京大学 分子細胞生物学研究所の核内情報研究分野の研究室での類似画像掲載論文について
 捏造・改ざん・研究不正か? うっかりミスか? 偶然か?

       日本語版 http://www.youtube.com/watch?v=on5lmd-pxiU&feature=youtu.be

     英語版     http://www.youtube.com/watch?v=FXaOqwanWnU&feature=youtu.be

問題点の図示の例


 

これを見て、Science誌が2012年1月25日にScienceInsiderで大々的に報じ、全世界に広まった。
 
http://news.sciencemag.org/people-events/2012/01/whistleblower-uses-youtube-assert-claims-scientific-misconduct

同誌はJuuichiJigen氏と電話インタビューし、背景を聴取した。

JuuichiJigen氏は私企業のライフサイエンス研究者。
2010年に
獨協医科大学の研究者の研究結果を再現できなかったのが関心を持った最初。  

加藤元教授の論文に関心を持ったのは、2011年10月に2009年のNatureの論文の修正が出た時で、彼と同僚は加藤グループの論文のチェックを始めた。

JuuichiJigen氏は2012年1月に東大ほかに「類似画像掲載論文に関する申立書」を送付し、1月11日付で受理された。

東大はこれを受けて調査を開始した。


分子生物学会は本年6月12日に声明を発表、東大が本事件の調査結果の公表を要求しても公表しないとして、論文不正調査機関の設置等の提言をしている。
    http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/0885d64c69151190aff4108f47012214

実は東大は未だに本件について発表していない。

各紙が報道したのは、JuuichiJigen氏がツイッター上で、東大の分子細胞生物学研究所長からの7月5日付の通知「東京大学 加藤茂明 分子細胞生物学研究所(元)教授に係る論文の不正行為に関する予備調査の結果について」を発表したためである。

予備調査において、貴殿により指摘された加藤茂明氏の論文24編68箇所を精査した結果、別表の通り、21論文65箇所に関し貴殿の指摘を認めるとの結論に到った。

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JuuichiJigen氏の調査が無ければ、今も改竄・捏造が続いていたかも分からない。

ーーー

研究の不正が相次いでいる。

2011年3月 名古屋市立大の准教授による19本の論文で、画像の不正使用を大学が認定

2012年2月 東京医科歯科大の助教が3本の論文でデータを捏造

2012年6月 日本麻酔科学会は元東邦大准教授の麻酔科医が発表した論文約170本が捏造だったと公表

2012年10月  iPS心筋移植が偽装と発覚
       
2012/10/15    iPS 心筋移植問題
       2012/10/22    Massachusetts General Hospital
、森口氏の特許出願を撤回

2013年4月 京都府立医科大が元教授の動物実験などの論文14本で改竄などがあったと発表

 


昨年末からインドネシアの Pertamina (国有石油会社)とChandra Asri が石油化学計画で混戦を繰り広げている。


  Pertamina Chandra Asri 概要
2012/12

石化JV設立のMoU締結

PP 250千トン(投資額 2億ドル)
2013/3   (独Ferrostaal と)
西パプア石化計画のLoI締結
 
2013/4 (タイPTT Global Chemicalと)
石化JV設立のHoA締結
  エチレン、PP、PE、PVC
投資額40~50億ドル、2018年生産開始予定
2013/6   (仏Michelinと)
合成ゴムJVの契約締結
Michelin 55%、Chandra Asri 45%
投資額 435百万ドル
2013/6

石化JV設立を取り止め

 
2013/7   (独Ferrostaal と)
西パプア石化計画のFS実施
MTOでPP 400千トン、エチレン 175千トン
投資額 18.9億ドル


インドネシア最大の石油化学会社Chandra Asri Petrochemical は、クラッカーやPE増設などの石油化学の大増設計画を打ち出し、第一弾として2011年6月に年産10万トンのブタジエン製造設備を発注した。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画

しかし、同社は2011年12月、世界経済の状況が不安定なためとして大増設計画を棚上げすると発表した。
ブタジエン計画は続行し、2013年に完成させる。


2012年12月に Pertamina とChandra Asri は石化JV設立のMoUを締結した。
これはPertaminaとして川下の石油化学を拡充するもので、2億ドルを投じてPP 250千トンプラントを共同で建設し、インドネシアの拡大する需要に対応しようというものであった。

しかし、本年に入り、Chandraはドイツの建設・エンジニアリング会社のFerrostaalとの間で、PP 400千トンを含む西パプア石化計画のLoIを締結、別途Michelinとの間に合成ゴムJV契約を締結した。

2013/6/26   Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立

他方、Pertaminaは4月にタイPTT Global Chemicalとの間で、投資額40~50億ドルにも及ぶ石化JV設立のHoAを締結した。
6月にはその第一歩として
PTT Polymer Marketing との間でPTTのPE、PPの購入契約を結んでいる。

そして、Pertaminaは6月28日、Chandra Asri と共同で石化JVを設立する計画を白紙に戻すと発表した。

共同研究の結果、両社はJVの条件で合意に達せず、MoUを終了することで合意したとしている。

その後、7月に入り、ChandraはFerrostaal との間で、西パプア石化計画のFS実施を決めた。

ーーー

PertaminaとタイPTT Global Chemical のJVの構想は以下の通り。

インドネシアにワールドクラスの石化コンプレックスを建設する。
2013年末までにJVを設立し、設計・建設を開始し、2018年に商業生産を開始する。
投資額は40~50億ドル。

報道では、エチレン、PP、PE、PVCを生産するとしている。

Pertaminaでは、インドネシアの石化製品の需要増大と、Pertaminaの石油事業と石化事業の統合による巨大なポテンシャルを考え、石化事業をPertaminaの成長の柱の一つと考えており、PTTGCの石化における実績と経験からパートナーに選んだとしている。

2005年12月にタイのNational Petrochemical  (NPC) とThai Olefins (TOC)が合併し、PTT Chemicalが誕生したが、2011年10月にPTT Chemical とPTT Aromatics & Refining が統合し、PTT Global Chemical となった。

Pertaminaはインドネシア国内に6つの製油所を持ち、合計精製能力は原油ベースで日量100万バレルとなっており、アジアで5番目。

ーーー

Chandra AsriとFerrostaal の構想は以下の通り。

立地:インドネシアのWest Papua のTeluk Bintuni
製品:天然ガスを原料にメタノールを生産
    メタノールから、PP 400千トン、エチレン 175千トンを生産
投資額:18.9億ドル
完成時期:2019年
原料天然ガス:西パプアTangguh LNGから受ける予定

 

Tangguh LNGは6つのガス田(Vorwata, Wiriagar Deep, Ofaweri, Roabiba, Ubadari, Wos)のガスをLNGにするもので、BPが最大の権益保有者でオペレーターを務めており、日本企業が多く参加している。

LNG年産760万トンで、2009年7月に第一船が出荷した。

権益保有者 権益率
(%)
BP 37.16
MI Berau(三菱商事 56%、国際石油開発帝石44%) 16.30
CNOOC(中国) 13.90
日石ベラウ石油開発(JX 51%、JOGMEC 49%) 12.23
ケージーベラウ石油開発
(海外石油開発=三井物産、MI Berau、JX日鉱日石開発、
JOGMEC )
8.56
LNG Japan (住友商事 50%、双日 50%) 7.35
Talisman Energy(カナダ) 3.06
KG Wiriagar石油開発(海外石油開発、JOGMEC) 1.44

 


経済産業省は7月20日、南鳥島の沖合の海底に存在するレアメタルついて、国際海底機構から探査の承認が得られたと発表した。
今後15年間にわたって日本が独占的にレアメタルの探査を行うことになる。

経産省は1987年から石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて西太平洋の公海域の深海底で、コバルト・リッチ・クラストの賦存状況調査を実施した。

コバルト・リッチ・クラストは、水深1,000~2,000mの海山の頂部や斜面を厚さ数cm~数10cmでアスファルト状に覆うコバルト、ニッケル、白金等のレアメタルを含む鉄・マンガン酸化物

その結果、南鳥島の南東の沖合、およそ600kmの公海には、深さ1,000m~2,000mの海底に、コバルト・リッチ・クラストを見付けた。

 

公海域海底の鉱物資源探査・開発は国連海洋法条約に基づき、国際海底機構の規則に従って鉱区申請、活動実施が求められる。

マンガン団塊については2000年、海底熱水鉱床については2010年に探査規則が採択され、鉱区申請が可能となっているが、2012年7月にコバルト・リッチ・クラスト鉱区についても探査規則が採択された。

政府は直ちに南鳥島の南東沖の深海底で探査鉱区(3,000km2)の申請を行い、2013年2月の国際海底機構の法律・技術委員会の審査を経て、今回承認された。

JOGMECは本年度中をめどに同機構と契約を締結、15年間の排他的探査権を取得したうえで、資源量把握のための本格調査、環境保全に配慮した開発技術等の調査研究に取り組む。

JOGMECによると、探査契約の10年目末までに鉱区の2/3を返却するが、残る1,000km2の推定埋蔵量は、コバルトが65万トン、ニッケルが80万トンとのこと。
 

コバルト・リッチ・クラストの採掘やレアアースなどを抽出する技術は確立していない。

茂木経産相は「日本の資源開発の可能性を高めるうえで極めて意義深い。深海の鉱物資源の開発は、世界でも商業化の例がなく、技術開発など克服すべき課題は多いが、将来的な可能性を積極的に追求したい」というコメントを発表した。

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日本が公海上で探査権を得るのは1987年にハワイ南東沖でマンガン団塊鉱区を取得して以来2例目。

JOGMECは1975年以降、経産省の委託を受けて、ハワイ南東海域の公海においてマンガン団塊の探査活動に着手するとともに、深海底鉱物資源の探査専用船「第2白嶺丸」を建造し、1980年から本格的な調査を開始した。

1982年9月には探査開発の推進母体となる「深海資源開発」(DORD)が設立された。

1987年12月に国連海洋法条約の下で、ハワイ南東沖にマンガン団塊鉱区75千km2を登録し、2001年6月に深海資源開発は国際海底機構との探査契約を締結した。

マンガン団塊は水深4000メートル以上の海底に散在しており、まだ開発に至っていない。

 

  http://www.enecho.meti.go.jp/policy/mineral/mineral02.htm


なお、南鳥島周辺の海底ではレアアースを豊富に含む泥が発見されている。

2012/7/2  南鳥島沖にレアアース 

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石井吉徳・東大名誉教授(もったいない学会会長)はFACTA  8月号のインタビューで、有効に利用できる資源には①濃縮されている、②大量にある、③経済的に採掘できる場所にある、の3条件が必要であり、「海洋資源大国は『幻』、質を見ねば国を誤る」としている。

在来型の海洋ガス田なら1か所で井戸を掘るとガスが自噴するが、広大な海域に広く薄く ばらばらに分散しているメタンハイドレートやレアアース(レアメタルも同様)は、資源としての「質」は極めて低いとしている。

写真のようにコバルト・リッチ・クラストは海底の岩盤表面を厚さ数cm~数10cmでアスファルト状に覆っている。
モノとしては存在しても、どのように採掘するのか、採掘して採算が取れるかどうかが問題である。

2001年6月に国際海底機構との探査契約を締結したハワイ南東沖のマンガン団塊鉱区も未だ開発に至っていない。




名古屋大学は7月12日、大学院理学研究科の研究グループが、ベンゼンを簡単にフェノールに変換することができるバイオ触媒を開発したと発表した。

現在使われているクメン法は、ベンゼンとプロピレンを 200-250℃ で反応させてクメンを得 、これを酸素酸化してクメンハイドロパーオキサイドとし、パーオキサイドを硫酸で分解し、フェノールとアセトンとしている。

C6H6 + CH2=CHCH3 → C6H5CH(CH3)2 (クメン ) 

C6H5CH(CH3)2 + O2 → C6H5C(OOH)(CH3)2  (クメンハイドロパーオキサイド)
 
C6H5C(OOH)(CH3)2 → C6H5OH  (フェノール) + (CH3)2C=O (アセトン)

この手法は危険な反応条件で行う必要がある上、多量の副産物を生成してしまうという問題を抱えている。

一段目では、原料ベンゼンを過剰に用いるため、その回収再利用が必須。
二段目の生成物は爆発性のパーオキサイドのため、生成物の濃度を低く抑える必要があり、未反応のクメンの回収再利用が必要。
三段目ではアセトンのほか、多種多様の副生成物が少量ずつ生成。廃酸の処理問題もある。 


研究グループは、特定の化合物が入ってきた時にだけ働く酵素に着目し、特定の化合物に構造のよく似たダミーの化合物(デコイ分子)を酵素に取り込ませた。

食用油に含まれる飽和脂肪酸を選択的に水酸化するシトクロムP450BM3と呼ばれる細菌の持つ酸化酵素を取り上げた。

ダミー化合物としてパルミチン酸に似たパーフルオロノナン酸を使い、酵素に結合させると、酵素が誤作動し、通常酵素とは反応しないベンゼンを常温・常圧下で直接フェノールに変換することに成功した。

ポイントは下記の通り。

1)常温常圧の条件でベンゼンを直接的にフェノールの変換
   副産物は生成されない。

2)生成物のフェノールが更に酸化される過剰酸化反応を抑制

3)デコイ分子使用で、天然に存在する酵素をそのまま利用
   遺伝子操作による酵素変換にかかる時間とコストを大幅に削減

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産業技術総合研究所は2002年1月、丸善石油化学(当時)、NOKと共同でフェノールの一段階反応法の開発に成功したと発表している。

反応器にパラジウム薄膜で被覆した多孔質アルミナ細管を用い、150-250℃で、管の外側と内側の一方に水素を流し、他方にベンゼンと酸素を流すことによって、フェノールを得るもの。

酸素のベンゼン環への導入は、パラジウム膜上に吸着した水素が解離活性化し、このままの状態で反対側へ透過し、酸素分子を捕まえ、活性化した酸素を放出し、これがベンゼン環の二重結合に付加することによって起こる。


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これらの技術については、大量生産ができるのか、既存法と比べて競争力のあるコストで生産できるのかが問題である。





豪州のKevin Rudd首相は7月16日、温暖化ガス排出量の多い企業を対象とした炭素税を2014年6月末に廃止すると発表した。

当初2015年7月を予定していた温暖化ガス排出量取引制度(Emission Trading Schem:ETS)への移行を1年前倒し、2014年7月とする。
炭素税と同時期に導入した石炭と鉄鉱石に課税する鉱物資源利用税(Minerals Resource Rent Tax:MRRT)は継続する。

負担が大きいとして経済・産業界から批判されてきた政策を転換し、総選挙に向け支持拡大につなげる。
首相は、計画の前倒しによって38億豪ドルのコストがかかるとの見通しを示した。歳出削減と税優遇措置制限で代替財源を確保する。

現状では370社から炭素税を徴収し、12年度(12年7月~13年6月)は75億4000万豪ドルの税収を見込んでいる。
価格が市場で決まる排出量取引制度に移行すれば、企業の負担は4分の1になる見込み。

この変更は8月下旬から9月とされる総選挙後に法制化されることとなる。
野党保守連合は選挙に勝利した場合、炭素税の廃止を公約に掲げている。

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炭素税はJulia Gillard 前首相が2012年7月に導入した。

Gillard首相が率いる労働党は2010年8月の総選挙で、炭素税を導入しないことを公約としたが、苦戦となり、気候変動対策を主張する緑の党などを取り込み、ようやく政権を維持した。

その後設立された「超党派気候変動委員会」では労働党は2020年までに1990年比で5%削減を目標としたが、みどりの党は25~40%削減を主張した。
緑の党は、労働党の主張する排出権取引制度は不十分とし、炭素税の導入を主張、家庭への支援強化を求めた。

緑の党の主張が通った。

排出量の多い約500社は排出する炭素1トンごとに"Permit"を購入する。
  
201271日施行で、最初の3年間は税金と同じ扱い。
  企業は排出量分の
Permitを購入する。売買や将来の年度での使用はできない。
  炭素価格は
   2012/7-2013/6 はトン当たり
23.00豪ドル (注 1豪ドルは現在で約0.92米ドル)
   
2013/7-2014/7 24.15豪ドル
   
2014/7-2015/7 25.40豪ドル 

201571日に排出量取引制度(Emissions Trading Scheme)に移行する。
  炭素価格は市価となる。
  
2014年予算で、最初の5年間の総排出枠(Cap)を発表する。

・炭素価格は製品価格に上乗せされるため、2012年度(2012年7月~2013年6月)の消費者物価指数が0.7%上がると試算。
  
このため、 炭素税の税収の50%以上を充て、補助金や所得税減税を実施する。
  10家族のうち9家族が減税や補助金で炭素税のコストアップをカバーされる。

2011/7/13  豪、2012年7月から「炭素税」導入

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本件は温室効果ガス削減と、そのための費用負担を巡る争いであり、Rudd首相にとっても長い歴史を持つ。

2007/11   連邦議会選挙勝利の結果、Kevin Ruddが第26代豪州首相に就任
 温室効果ガス排出権取引制度導入を公約
2007/12   豪州、京都議定書に調印



2008/12   温室効果ガス排出権取引制度の詳細を明らかにした白書を公表
 2010年7月導入を再確認


2008年における豪州の一人当たり二酸化炭素排出量は18.5トンと、先進国では第1位となっている。
国全体では3億9700万トンと、世界の総排出量の1.4%を占めた。
豪州政府は、炭素価格制度導入に当たり、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を
2020年までに2000年比で5%削減、2050年には同80%削減することを目標に掲げた。

 ーーー その後、Lehman shock による世界的な景気悪化
2009/5   排出権取引制度導入の1年延期を決定
2010/4   排出権取引制度導入の少なくとも3年延期を発表
 議会の強い反対(上院議会で3度否決)
 
Julia Gillard 副首相も諦めるよう進言
 この結果、Rudd首相の支持基盤が消失 
2010/5   資源会社を対象とした税率40%の「資源超過利潤税」(Resource Super Profits Tax) の導入案発表
 
産業界の猛反発を買い、支持率が急落
     
2010/6   Rudd首相辞任、Julia Gillard 副首相が豪州初の女性首相に就任
2010/7   Gillard 首相、資源税案修正(税率引き下げその他)で業界と合意、
 「鉱物資源利用税」(
Minerals Resource Rent Tax:MRRT) を2012/7 導入
       2010/5/29 豪州の資源新税で資源開発計画の見直し相次ぐ
2010/8   総選挙
 Gillard 首相は
炭素税を導入しないことを公約とした。
    自由党との大接戦となり、労働党が緑の党などを取り込み、過半数確保に成功。
2010/9    9月15日 第2次Gillard 内閣成立
2011/7   「炭素価格制度」を2012年7月から導入する構想を発表
  2015年7月に排出量取引制度に移行する
2011/11   「炭素価格制度」関連法案 可決
2012/2   Rudd外相が突如辞任、党首選挙実施。
 
Gillard がRuddを破り、再選
2012/7   「鉱物資源利用税」、「炭素税」(トン当たり23.00豪ドル )開始
     
2013/6   労働党党首選挙
 Gillard 敗北、Rudd 首相復帰
2013/7   「炭素税」24.15ドルに (2014/7に25.4ドルとなり、2015/7に排出量取引制度に移行の予定)
2013/7   Rudd首相、「炭素税」の2014年6月末廃止(2014/7 排出量取引制度に移行)方針を発表
 鉱物資源利用税(MRRT)は継続


米司法省は7月18日、パナソニック、三洋電機、LGが価格カルテルを認め、罰金を払うことで合意したと発表した。
  http://www.justice.gov/opa/pr/2013/July/13-at-808.html

パナソニックは自動車部品関連で45,800千ドルを支払う。

ステアリングホイールスイッチ、ワイパースイッチ、コンビネーションスイッチ、ドアカーテシースイッチ、ターンスイッチ、ステアリングアングルセンサー、HIDバラストが対象。

三洋電機はノートパソコン向け円筒形リチウムイオン電池関連で10,731千ドル、LGもノートパソコン向け円筒形リチウムイオン電池関連で1,056千ドルを支払う。

円筒形リチウムイオン電池関連でのカルテル摘発は今回が初めて。

ーーー

自動車部品関連では、米司法省は7月16日、大阪のダイヤモンド電機がイグニションコイルの価格カルテルを認め、19百万ドルの罰金支払いで合意したと発表した。

同時に、スウェーデンの部品メーカー Autoliv Inc.の従業員の日本人が罪を認め、1年と1日の禁固と罰金20千ドル支払いで合意したと発表した。Autoliv自体は既に14.5百万ドルの罰金支払いで合意している。

http://www.justice.gov/opa/pr/2013/July/13-afp-789.html

ーーー

米国司法省、欧州委員会、日本の公取委は2010年2月ほぼ同時期にワイヤーハーネスのカルテルの調査を開始し 、米国とEUは同時に自動車部品のカルテルについて調査を続けた。

2013/7/16  EU、ワイヤーハーネスのカルテルに課徴金

これまで米国では次の11社と個人15名が罪を認めている。

      罰金
古河電工 2011/9 ワイヤーハーネス 200 百万ドル
矢崎総業 2012/1 同上 470百万ドル
デンソー 2012/1 electronic control units (ECUs)
heater control panels (HCPs)
78百万ドル
ジーエスエレテック
(デンソー関係会社)
2012/4 antilock brake systems 2.75百万ドル
フジクラ 2012/4  wire harnesses 20百万ドル
Autoliv Inc
(Stockholm)
2012/6 seatbelts, airbags and
steering wheels
14.5百万ドル
TRW Deutschland
(米社独子会社)
2012/7 seatbelts, airbags and
steering wheels
5.1百万ドル
日本精機 2012/8 自動車用計器 1百万ドル
東海理化 2012/10 ヒーターコントロールパネル 17.7百万ドル
ダイヤモンド電機 2013/7 イグニションコイル 19百万ドル
パナソニック 2013/7 スイッチ等 45.8百万ドル


個人:古河電工3名、矢崎6名、デンソー4名、山下ゴム1名、Autoliv 1名の計15名

  氏名  発表 or 合意書  禁固 罰金
古河電工 J. F. 2011/10/24 1年+1日 各人
2万ドル
H. N. 2011/10/13 15か月
T. U. 2011/11/10 18か月
矢崎総業 T. H. 2012/1/30 2年
R. K. 2012/3/26 2年
S. O. 2012/3/26 15か月
H. T. 2012/3/26 15か月
T. S. 2012/8/16 14か月
K. K. 2012/9/26 14か月
デンソー N. I. 2012/3/26 1年+1日
M. H. 2012/4/26 14か月
Y. S. 2013/5/21  16か月
H. W. 15か月
山下ゴム H. Y. 2012/11/16  1年+1日
Autoliv T.M. 2013/7/16 1年+1日

 

 

AppleがE-book(電子書籍)の販売で出版社と共謀し価格をつり上げていたとして、米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反で訴えていた裁判で、Southern District of New York 連邦地裁は7月10日、Appleが同法に違反したとの判断を下した。

連邦地裁のDenise Cote判事は、「Appleは違法行為の中心的な役割を果たしており、Appleの働きかけがなければ価格の引き上げは実現しなかっただろう」として、独占禁止法違反を認定する判決を言い渡した。

米国33州の法務長官が、より高い値段で電子書籍を購入した消費者の代わりに提起した賠償訴訟についても別途の審理が開かれる予定

司法省は2012年4月にAppleと下記の出版5社を訴えた。
Appleは電子書籍市場で当時90%のシェアを握っていたAmazonが安い価格を維持できないよう、出版5社と共謀した。

1) Hachette Book Group、HarperCollins Publishers、Simon & Schuster
2) Penguin Group (USA)
3) Macmillan(Holtzbrinck Publishers)

AmazonはベストセラーのE-bookを9.99ドルで販売していた。

これに対し、2010年にAppleがE-bookに参入した際に、5社と共謀し、5社が価格決定権を握る一方、Appleが販売価格の30%を手数料として受け取る契約を締結した。 ベストセラーの価格は12.99~14.99ドルに上がった。

Appleの参入の数日後に、Amazonは出版社が販売価格を決める"agency pricing"に変更した。

司法省は、こうした動きによって、Amazonが同様のビジネスモデルへの転換を強いられ、電子書籍市場全体の価格が上昇する構図になったと指摘し ていた。

出版5社(3グループ)はいずれも司法省と和解している。(しかし、従来のような$9.99のような安値は出ていないという。)
  参考 (1)グループの和解 http://www.justice.gov/atr/cases/f282100/282141.pdf

Appleは、「E-bookの価格を固定するために示し合わせた事実はなく、間違ったことはしていない。誤った訴えに対しては引き続き争うつもりだ」とコメントし、判決を不服として上訴する方針を示した。

裁判でApple側は、出版社は当時Amazonの9.99ドルの統一価格に不満を持っており、もしAppleが"agency pricing"を導入しなければ、出版社は高いハードカバーがもっと売れるまではE-bookの発売を遅らせる"window"と呼ばれる戦術を取っていただろうと主張したが、司法省側 は、実際にそれまでに"window"されたのは37冊しかなかったとして、その影響を少ないと反論した。

司法省はまた、Appleの契約には最恵国待遇の規定があり、もっと安い価格が出た場合にはAppleはその価格まで下げて売る権利を持つため、Amazonとしては"agency pricing"に切り替えざるを得なかったと主張した。

裁判長は故Steve Jobsの発言も証拠として取り上げた。

Walter Isaacson の"Steve Jobs"で、JobsはIsaacsonに対し、以下の通り述べている。(P. 503)

Amazon screwed it up.  It paid the wholesale price for some books, but started selling them below cost at $9.99.  The publishers hated that --- they thought it would trash their ability to sell hardcover books at $28.  So before Apple even got on the scene, some booksellers were starting to withhold books from Amazon.  So we told the publishers, "We'll go to the agency model, where you set the price, and we get our 30%, and yes, the customer pays a little more, but that's what you want anyway."  But we also asked for a guarantee that if anybody else is selling the books cheaper than we are, then we can sell them at the lower price too.  So they went to Amazon and said, "You're going to sign an agency contract or we're not going to give you the books."

Jobsは音楽の場合は音楽会社にAgency pricingを認めなかったが、E-bookの場合は採用した。Why ?
"We were not the first people in the book business."

 

付記

司法省と各州の規制当局は8月2日、本訴訟の是正策を提示した。
マンハッタン連邦地裁は是正策について8月9日に双方の主張を聞く。その後、損害賠償をめぐる裁判が始まる可能性がある。

是正策

1)   Apple に対し、上記5社との既存契約の打ち切りを求める。
人為的に価格をコントロールするような新契約の締結を禁止。
2)   iPhone や iPad のユーザーが2年間、Amazon Kindle や Barnes and Noble Nook からe-Bookを購入することができるようにする。
3)   電子書籍や映画、音楽、テレビ番組などのコンテンツを iPhone や iPad 向けに提供する会社との間で、価格上昇につながりかねない契約を結ぶことも禁止。
コンテンツ提供者側はアップルの競合向けの価格を引き下げた場合、アップルに対しても値下げを行うことが義務付けられる。
4)   社内の反トラスト法順守担当者をフルタイムで雇用、裁判所指定の外部監査を導入することで、未然に違法行為を発見できるようにする。


これに対しAppleは、「極めて厳格で懲罰的な」介入であり、必要以上に厳しく、消費者や競争の観点から悪影響をもたらすと反論した。

田辺三菱製薬は7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダの医薬品会社 Medicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。

カナダ法上認められている友好的企業買収手法であるPlan of Arrangementにより現金で取得する。

両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

VLPは、ウイルスと同様の外部構造を持つ一方、遺伝子情報を持たないため、ワクチンとしての高い免疫獲得効果が期待されることに加え、体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる有望なワクチン技術として注目されている。

ワクチン(vaccine)は毒性を弱めた微生物やウイルスを使用、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、感染症にかかりにくくする。
但し、弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。

ウイルスはcapsid というたんぱく質でできた殻の中に、遺伝子(DNAやRNAなどの核酸)を収めている。
ウイルス様粒子(VLP)はcapsidの殻を持つため、生体はこれを認識して免疫反応を起こし、通常のウイルスに対するのと同様に抗体をつくって攻撃を仕掛ける。

しかし、capsidのなかに遺伝情報をもたないため、理論上感染の恐れがない安全なワクチン作成への応用が進められている。

ワクチンは受精卵などに接種し増殖させるが、Medicagoは植物の細胞内に遺伝子操作によってVLPを生成させ( Proficia technology) 、効率的に抽出・精製する独自技術で、VLPを安価に短期間で製造することを可能としている。

同社の臨床開発パイプラインには、季節性インフルエンザワクチン、パンデミックH5N1インフルエンザワクチンがあり、研究段階の品目として狂犬病ワクチン、さらには米国陸軍感染症研究所との協業でエボラ出血熱ワクチンの開発にも取り組んでいる。

ーーー

田辺三菱製薬は2011年9月にMedicago株式6%を取得した。

田辺三菱とMedicagoは2012年2月、VLP製造技術を用いた新規ワクチンの共同研究契約を締結した。
まず、同年春から「ロタウイルスVLPワクチン」の研究を開始した。

ロタウイルスによる感染は、乳幼児に胃腸炎を引き起こす。国内では年間約80万人が発症し、そのうち約8万人が重症化していると推計される。

両社は、既存の生ワクチン特有の課題解決が期待される「ロタウイルスVLPワクチン」の創製をめざし、共同で研究を進める。

田辺三菱はMedicagoのVLP技術を評価した結果、同技術は幅広い種類のワクチンを効率的に製造することが可能な有用性の高いものであり、同社買収により更なるパイプラインの強化を実現できるものと判断した。

ーーー

Philip Morrisは世界最大の煙草メーカー。

2008年10月にMedicago株式49.8%を取得した。(現在の持株は38.5%)

当時は投資目的としており、将来買い増しも売却を有り得るとしていた。

Phillips Morrisは2012年9月、Medicagoとライセンス契約を締結し、Medicagoのインフルエンザワクチンを中国で独占的に開発、製造、販売する権利を獲得した。

同社は世界のたばこ喫煙の40%前後を占める中国での活動を広げているが、たばこ葉から派生するインフルエンザワクチンの開発や、健康に対する悪影響のより少ないたばこの開発など、単なる煙草の販売以外の活動も行っており、その一環である。

ーーー

田辺三菱製薬とPhillips Morrisは、Medicagoの技術を成熟化させ、優れたワクチンをグローバルに供給できるワクチン会社に育てることで合意している。

田辺三菱が指名する議長と、両社から2名ずつ指名する4名の取締役で構成される取締役会が運営に当たる。取締役会を除くMedicagoの経営体制は維持される。




中国公安省は7月11日、GlaxoSmithKline の現地法人GlaxoSmithKline (China) Investment の役員らを賄賂や脱税容疑で捜査していることを明らかにした。

1週間前に当局は GlaxoSmithKlineの上海市、湖南省長沙市と、河南省鄭州 市の事務所を急襲し、社員を拘束した。

公安部はその後、4人の役員(趙虹燕、梁宏、黄紅、張国維)を深刻な経済犯罪を犯したとして刑事強制措置を行った。 

同社は市場の拡大と医薬品価格の引き上げのため、政府の役人や医薬協会、病院や医師に多額の賄賂を支払ったとされる。

更に、違法行為のための現金を得るために増値税(付加価値税)専用の虚偽の伝票を使用した、旅行会社を通じて偽の伝票を発行した、虚偽の普通伝票を発行して現金を詐取したといった犯罪行為があったという。

また、その地位を利用して、旅行業者から賄賂やキックバックを受け取っていた。

当局は十分な証拠を得ており、容疑者は既に罪を認めているという。

旅行業者も容疑者として拘留され、取り調べを受けている。

本年初めにWall Street Journalが内部告発者の情報として中国のGlaxoSmithKline の役員が医者や病院に賄賂を贈っていると報じた。
GlaxoSmithKline は本年になって中国での不正行為を告発する内部告発を受け、調査を行っており、先週に賄賂や不正行為の証拠はないとの内部調査の結果を発表していた。

公安省の発表を受け、GlaxoSmithKlineでは調査に協力すると述べた。
同社の中国での売上高は2012年に17%伸び、12億ドルとなった。

GlaxoSmithKlineは7月15日、声明文を発表した。
 「企業内の一部社員と第3者機関が、詐欺と非道徳的行為により非難を浴びていることについて、深い懸念と失望の意を表明する。中国政府の汚職根絶の決心を支持し、発生した件についてお詫びを表明する。当社は政府の関連部門の最新状況に対する調査に全力で協力し、調査によって導き出された結論に基づき、すべての必要な行動をとる」

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公安省は、医師への贈賄が幅広く行われ、中にはオフラベル(承認適応症以外)での処方に見返りを渡すケースもあるとの情報提供を受けて調査に入っていた。

中国では医薬品の市場は急速に拡大している。これまでは政府が医薬品の価格を管理してきた。

関係者によると、計画経済から市場経済への移行期に当たり、法律や規則が厳密に機能しておらず、賄賂やキックバックがかなり行われている。

ある医者によると、医薬会社のセールスマンが医者に賄賂を払うのは「隠れたルール」であるとしている。

2012年にはEli Lillyが
米証券取引審議会に対して、ブラジル、中国、ポーランド、ロシアで政府の役員や医師に不適正な支払いを行ったとして29百万ドルの罰金を支払った が、中国では国立病院の医師への贈り物や現金支払いのため、嘘の経費報告を行っていた。

最近では米司法省は世界の医薬大企業が販売推進のため世界中の医者や病院に不正な支払いをしていないかどうか、調査をしている。

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これとは別に中国の国家発展改革委員会(NDRC)は医薬品の価格設定システムを改善するため、GlaxoSmithKline、Merck、Novartis、Baxter Internationalを含む製薬会社のコストと価格を調査している。

ーーー

GlaxoSmithKline は6月11日、中国のR&D部門がまとめた研究データに事実と異なる部分があったとの声明を発表した。

同社な数週間前に、中国R&D部門の研究者が2010年にバイオ医学研究誌 Nature Medicineに掲載した研究論文「Th17細胞の生存と増殖におけるIL-7の役割の重要性」のデータが捏造されたものだとの告発を受けていた。

調査の結果、データ捏造があることが確認され、中国の研究者1人が解雇されたほか、1人が辞職、3人が最終決定までの間、休職処分となった。

この研究では多発性硬化症に罹患した患者の血液サンプルを採用すべきだったが、実際には健康な人の血液サンプルを使っていた。



韓国の最高裁は7月12日、ベトナム戦争に従軍した韓国の退役軍人が、枯葉剤(Agent Orange)をかぶって"chemical acne"(塩素性にきび症状)が出たとしてメーカーのDow ChemicalとMonsantoに賠償を求めた裁判で判決を下した。訴訟から14年が経過している。

塩素性にきび」は枯れ葉剤に露出した人の顔に水疱や皮脂のようなにきびが生じる症状。

判決で、39名についてはAgent Orangeと病気との因果関係を認め、DowとMonsantoに合計415千ドルの賠償支払いを命じた。
枯葉剤と病気の因果関係を世界で初めて一部認めた。

しかし最高裁は、16千人以上の退役軍人が合計44億ドルの賠償を求めて1999年に訴えた件については、更なる検討を求め、控訴裁に差し戻した。

最高裁は今回、病気がAgent Orangeに曝されたことによるとの証拠はないと述べた。
裁判長は「気の毒な立場だけをもって判決をすることができなかった」と述べたが、事実上、原告敗訴判決を下した。

ーーー

韓国はベトナム戦争を通じて30万人の軍人をベトナムに送った。
韓国の退役軍人はAgent Orangeの被害者を約15万人とみている。

ベトナム政府はAgent Orangeの使用の結果、数百万人が死んだり、苦しんだりしているとしている。

米連邦最高裁は2009年、「枯れ葉剤は人間を標的とした毒物として作られたものではない」として原告の元ベトナム人兵士らの請求を棄却したニューヨーク連邦高裁の判断を支持し、原告敗訴の判決を言い渡している。
米国政府は今まで、責任を認めていない。

2007/6/23 ベトナムの枯葉剤被害者による訴訟

ベトナム戦争に参戦した米国・豪州・ニュージーランド軍人は1978年、米国の会社を相手取り集団訴訟を起こしたが、1984年の和解で、訴訟を取り下げる条件として Dow ChemicalMonsanto など7社は240百万ドルの補償を行った。
米政府も毎年
15億ドルの予算で対象者に補償を行っている。

最大参戦国の韓国は後にこれを知り、1993年に在米同胞弁護士を通して訴訟を起こした。しかし「訴訟資料不足」という理由で訴訟取り下げ命令を受け、1999年に韓国の裁判所に訴訟を起こした。

 争点は3つあった。
 ・枯れ葉剤と原告の症状の因果関係
 ・枯れ葉剤露出から10年が過ぎたという訴訟時効
 ・裁判管轄権が韓国裁判所にあるかどうか

地裁は2002年5月に「因果関係を確認できず、時効も過ぎた」として原告敗訴判決を出した。

しかし控訴審のソウル高裁は2006年1月、「原告が主張する枯葉剤の後遺症のうち塩素性にきびをはじめ、非ホジキンリンパ腫・軟組織肉腫・ホジキン病・肺がん・多発性骨髄腫・2型糖尿病など11の症状が除草剤の副産物ダイオキシンと因果関係がある」とし、一審判決を覆した。
これらの病気とダイオキシンの間に疫学的な相関関係があるという米国立科学院の疫学調査報告書が根拠となった。

ーーー

参考  2013/7/6   沖縄に枯葉剤のドラム缶? 



国際金融市場で「Likonomics」が話題になっている。

Barclays Capitalが6月27日付のレポート"China: Postcard from Beijing -- What to expect from Likonomics?" で、アベノミクスと対比して、中国の李克強首相が本年3月から主導する経済政策をこう呼んだ。中国紙は「李克强経済学」と訳している。

著者は北京大学経済学部教授のYiping Huang黄益平)とBarclay CapitalのエコノミストのJian Chang常健)とMs. Joey Chew楊霊修)。

報道によると、内容は以下の通り。

李首相は今後3年で成長率が3%まで下がる一時的なハードランディングを狙っている。
「Likonomicsは中国が持続可能な成長をするために必要であり、これにより次の10年で6~8%の成長が可能となる」

Likonomicsの三本の矢は、(1) No stimulus、(2) deleveraging(信用圧縮)、(3) structural reform である。

中国政府はこの3か月間、新しい刺激策の要請を拒否してきた。
「国主導の投資は最早持続可能ではないと信じているからである」

同時に政府は資産バブルを防ぐため、shadow-banking などを締め付けてきた。
今や政府は金融機関の規制に踏み切ると見られる。

(1) No stimulus、(2) deleveraging は苦痛を伴うが、(3) structural reform のためには不可欠なものである。

「アベノミクスがデフレを止め、成長を狙うのに対し、Likonomicsは成長を抑え、信用を圧縮して、成長の質を高めようとするものである。
両政策とも、成功するかどうかはそれぞれの国での構造改革が成功するかどうかにかかっている」

Yiping Huang教授は別のレポートで以下の通り解説している。
  http://www.eastasiaforum.org/2013/07/07/likonomics-policies-in-china/

前任の温家宝の政策は「強い成長、弱い改革」であった。

しかし現在、国民は、2008年の4兆元の刺激策について、インフラ面での過剰投資と、地方政府の無謀な借入・インフレ・資産バブル・不良債権の恐れなどによる著しい金融リスクを生んだとして否定的である。

今や、緩やかな成長と構造改革が必要だとのコンセンサスがあり、これはLikonomicsの三本の柱の基である。

李首相は経済刺激策や政府の直接投資に頼る余地は少ないと繰り返し述べており、これが一本目の 'no stimulus'である。
政府投資への依存は新しい問題やリスクを生むと述べており、実際、鉄鋼・セメント・アルミ精錬などでは深刻な能力過剰に悩んでいる。

政府主導のインフラ投資(エネルギー、水、輸送など)は続いているが、以前より抑えられている。失業率が上昇しない限り、成長のための政府の刺激策は考え難い。

李首相は最近、金融機関は既存の信用をうまく利用し、金融リスクを抑える努力をするべきだと述べた。
金融刺激策の導入により、中国の信用供与合計は2008年の9兆ドルが2013年に23兆ドルまで膨れ上がった。急速に信用が拡大した国は、常に苦しい調整を余儀なくされている。

中国人民銀行による銀行間市場での信用バブルを抑えるための最近の動きは、政府が信用を圧縮し、将来の金融リスクを下げることを望んでいることを示すもので、これが第二の柱である。

この動きは暫く続き、中小の金融機関や弱い金融機関に潰れるところが出てくると思われる。

李首相の三本目の柱は改革である。

以下の分野の改革が行われると見られている。
  金融自由化、金融制度、要素価格、土地利用、行政管理、独占、所得配分、戸籍制度、・・・。

Likonomics 政策は中国が持続可能な成長をするために必要である。

短期的には、経済成長と資産価値を引き下げるリスクがあり、一時的な'hard landing'となるが、その後すぐに急速に回復するだろう。

 

ーーー

本然第2四半期の中国のGDPは前年同期比7.5%となった。
2期連続の減で、中国政府の目標とする7.5%まで下がった。

中国税関当局が7月10日に発表した6月の貿易統計は、輸出が前年同月比3.1%減、輸入が同0.7%減となった。輸出が減少するのは2012年1月以来1年5カ月ぶり。

中国の7月金融危機説がささやかれている。

2013/7/6 中国金融危機説


中国政府はこれまで、基本的な問題をまず解決するのではなく、経済発展を最優先してきた。
その結果、いろいろな問題が発生するが、それについてはパッチ当てで解決、それにより派生する問題もまたパッチ当てで解決するという方式を繰り返している。

2010/12/28   中国経済とBeijing Consensus

これまでなら当然のように手を打っていたであろうが、今回は経済の一時的悪化を犠牲に抜本改革を図るかも分からない。

 


EUは7月10日、トヨタ、ホンダ、日産自動車とルノー向けのワイヤーハーネスでカルテルを結んでいたメーカーに総額141,791千ユーロの課徴金を課した。

  課徴金
(千ユーロ)
カルテル対象
住友電工 0 トヨタ、ホンダ、日産、ルノーⅠ、ルノーⅡ
矢崎総業 125,341 トヨタ、ホンダ、日産
古河電工 4,015 トヨタ、ホンダ
S-Y Systems Technologies 11,057 ルノーⅠ、Ⅱ
Leoni 1,378 ルノーⅡ
Total 141,791  


S-Y Systemsは当初、Siemensの事業であったが、2001年に矢崎とのJVとなり、2013年から矢崎の100%子会社となっている。

各社のうち、住友電工はカルテルの存在を自主申告したため、100%(291,638千ユーロ)の減免を受けた。

他の各社は協力の時期と資料提供がカルテルの実証に役立った程度により、20%~50%の減免を受けた。
更に各社とも「同意決定手続き」により10%の減免を受けた。

「同意決定手続き」は2008630日に制定され、同年71日から運用された。

欧州委と企業がカルテルの内容と証拠を協議し、企業がカルテルの存在を認めると制裁金が10%減額される仕組み。
これにより裁判所への控訴による長期の争いを避けることができ、欧州委では要員を他の事件の摘発に向けることが可能となる。

適用第一号はDRAM(下記)で、他に家畜飼料家庭用洗剤、ブラウン管用ガラス(下記)、冷蔵庫用コンプレッサーwater management products のカルテルで適用されている。

2010/5/21 EUDRAMカルテルに制裁金、「同意決定手続き」初適用
2011/11/5    EU、ブラウン管(CRT)用ガラス事業カルテルに制裁金

ーーー

欧州委員会は2010年2月に、日本の公取委、米国司法省などとほぼ同時期に調査を開始した。  

欧州委員会はこれと並行して、自動車関連の乗客安全システム、ベアリング、エアコン、照明などでの調査を進めている。

日本の公取委は2012年1月、自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対し、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

  排除
命令
課徴金額 (千円)   《 》は減免率
トヨタ
    向け
ダイハツ
     向け
ホンダ
    向け
日産
   向け
富士重工
    向け
合計
矢崎総業 5 4,979,950
《30
%
872,150
《30
%
2,763,500
《30
%
440,030
《30
%
551,500
《30
%
9,607,130
 
住友電気工業 738,610
《50
%
482,950
《50
%
880,660
《50
%
0
《100
%
2,102,220
 
フジクラ 1件 1,182,320
《30
%
1,182,320
 
古河電気工業 0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
 
合計 12,891,670


2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 


米国では自動車部品カルテルで各社が順次司法省と和解して罰金を支払うとともに、役員等が禁固刑と罰金刑を受けている。

このうちワイヤーハーネスについては以下の通り。

      罰金 禁固・罰金刑
古河電工 2011/9 ワイヤーハーネス 200 百万ドル 3名
矢崎総業 2012/1 同上 470百万ドル 6名
フジクラ 2012/4  wire harnesses 20百万ドル  


2013/5/30   米自動車部品販売を巡るカルテルで更に2人に禁固刑





原発の新しい規制基準が7月8日施行された。

 2013/6/21  原子力規制委員会、原発新基準を決定

初日は、北海道、関西、四国、九州の電力会社4社が、5原発10基について再稼働に向けた安全審査を国に申請した。

北海道電力の泊①②③、関西電力の大飯③④、高浜③④、四国電力の伊方③、九州電力の川内①②の10基である。

これに遅れ7月12日に、九州電力は玄海③④について申請した。これで合計12基となる。

このうち、高浜③④、伊方③、玄海③はプルサーマルを前提にしている。

東京電力は柏崎刈羽⑥⑦の申請を決めたが、新潟県知事の反対を受け、取りやめた。

申請した12基のうち、大飯③④について、規制委は敷地内の断層(破砕帯)が活断層かどうかの調査が完了していないことを理由に、「実質的な審査に入れない」としている。

ーーー

7月8日の毎日新聞は、「国内の原発を(1)運転期間(2)原発の型(3)原子力規制委員会が活断層リスクを検討しているか否か−−の三つの基準で分類すると、8日に申請した原発の特徴が一目で分かる」としている。

これをもとに整理すると、以下の通りとなる。

(1)運転期間については、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年を上限に延長できるが、規制基準に加え、機器の検査対象を拡大した「特別点検」を実施しなければならないとなっている。
今回申請したのは比較的新しいものである。

(2)原発の型では、加圧水型はフィルタ付ベントの設置が猶予されており、沸騰水型より有利である。今回の申請は全て加圧水型となっている。

申請を予定していた柏崎刈羽⑥⑦は沸騰水型で、フィルタ付ベントの設置が必須である。

東電では年度内にも完成可能としているが、安全協定書では「原子力発電施設及びこれと関連する施設等の新増設をしようとするとき又は変更をしようとするときは、事前に新潟県及び柏崎市及び刈羽村の了解を得るものとする」となっており、 この了解が得られておらず、工事に入れない。

(3)の活断層リスクについては、関電の4基以外は問題がない。

関電の大飯については、非常用取水路を横切る断層で意見が分かれており、規制委はこれがはっきりするまでは、「実質的な審査に入れない」としている。

高浜についても調査の必要性を検討中で、データ収集が必要とされている。

この結果、泊、伊方、川内、玄海が有利となる。玄海は申請が数日遅れたのがどう響くか。

なお、加圧水型で、かつ活断層リスクがないが、今回の申請に入っていないのは伊方①②と玄海①②の4基だが、これらは電源ケーブルの不燃化などが未完成のため。
古いことが共通。

付記 7月16日の安全審査初会合で下記を決めた。

審査体制は以下の通り。青字は優先審査。 各チームは約20人

Aチーム:伊方③玄海③④、大飯③④ (大飯は活断層の結論待ち)
Bチーム:川内①②、泊①② (北海道電力、泊③優先審査を要請)
Cチーム:泊③、高浜③④ (規制委、高浜について活断層データ拡充を要求)

地震・津波チーム:全原子炉を担当

なお、規制委員会は原電敦賀②について活断層リスクを認定したが、原電は「活断層ではない」とする追加調査の結果を7月11日に提出し、改めて審議するよう求めた。40年を経過している1号機と合わせ申請準備をするとしている。
 

設置時期 沸騰水型(BWR)
(フィルタ付ベント要)
加圧水型(PWR)
(フィルタ付ベント猶予)
PT:プルサーマル
活断層OK 活断層調査 活断層OK 活断層調査
35年未満 2009     泊③   泊①②は2014/3まで停止
(泊③の緊急対策所として使用)
2006   志賀②      
2005   東通①
浜岡⑤
     
2002 女川③        
1997   柏崎刈羽⑦ 玄海④   東電が柏崎刈羽⑥⑦の申請を
決めるが、知事の反対で延期
1996   柏崎刈羽⑥    
1995 女川②        
1994   柏崎刈羽④ 玄海③PT
伊方③PT
   
1993   浜岡④
柏崎刈羽③
志賀①
  大飯④ (大飯)
非常用取水路を横切る断層で
意見分かれる。
→ 審査後回し
1991     泊② 大飯③
1990   柏崎刈羽②
柏崎刈羽⑤
     
1989 島根②   泊①    
           
1987 福島第二④ 浜岡③   原電敦賀② (敦賀)
活断層リスク認定
 
1985 福島第二③ 柏崎刈羽① 川内② 高浜④PT
高浜③PT
(高浜)
データ収集必要
1984 女川①
福島第二②
  川内①    
1982 福島第二①   伊方②    
1981     玄海②    
1979 福島第一⑥     大飯②
大飯①
 
35年以上 1978 原電東海②
福島第一⑤
       
1977     伊方①    
1976       美浜③  
1975     玄海① 高浜②  
1974 島根①     高浜①  
40年以上 1972       美浜②  
1970   原電敦賀①   美浜①  


各原発の詳細については 別紙参照。



韓国政府は7月8日、第1回国家科学技術審議会を開き、2017年までに科学技術の研究開発分野に92.4兆ウォン(約8兆1300億円)を投資することを柱とする 「第3次科学技術基本計画」を決定した。
64万人分の雇用を創出し、1人当たり国民所得3万ドル時代を実現することを狙う。

科学技術基本計画は科学技術基本法第7条に基づき、5年ごとに関係官庁の計画と施策を総合的に策定する科学技術分野の最上位の国家計画。
今回の5年間の予算は、前政権(68兆ウォン)より24.4兆ウォン上回る。

今後5年間の研究開発政策の基本となるもので、IT融合型の新産業、将来の成長動力創出、環境、高齢化対策、安全な社会構築という5分野で120項目の戦略技術を育成する。

主な内容は以下の通り。

分野 重点技術
IT融合型の新産業創出 ・次世代の有線・無線通信ネットワーク技術(第五世代:5Gなど)
・先端素材技術、環境対策車技術
将来の成長動力創出 ・太陽エネルギー技術、宇宙ロケット技術
クリーンで便利な環境づくり ・水質・大気などの汚染物質処理技術
・高効率エネルギービル技術
健康・長寿時代の実現 ・ニーズに即した新薬技術、疾病診断バイオチップ技術
懸念なき安全社会の構築 ・社会的災害予測・対応技術(原子力安全・環境事故など)
・食品の安全性評価・向上技術


計画の履行に向けては、以下の5大戦略を提示した。

  ・国家研究開発投資の拡大および効率化
  ・国家戦略技術の開発
  ・中長期にわたる創意力の強化
  ・新産業創出への支援
  ・雇用拡大

官庁別に見ると、
保健福祉部は先進国の10%のレベルにとどまっている医療技術を17年までに75%まで引き上げることを目標に掲げた。
農林畜産食品部は予算全体のうち、研究開発に関する予算の割合を昨年の5%から22年までに10%に拡充する。
未来創造科学部は2017年までに基礎研究の割合を40%まで拡大し、科学技術論文の引用索引インデックス(SCI)で引用上位1%に含まれる論文数を世界10位に引き上げるほか、最高水準の先駆的研究者100人を育成する。

未来創造科学部では、「過去の科学技術政策が技術開発と人材育成に焦点を合わせたのに対し、今回の基本計画は研究開発段階から新産業、雇用創出までを初めて含むもの」と説明した。

韓国の科学技術革新能力を現在の世界9位から7位に引き上げたいとしている。
 


参考  日本の科学技術基本計画




 

ドイツの太陽光パネルメーカー Conergy AG は7月5日、破産申請をした。
中国からの輸入品との価格競争と欧州市場の急速な縮小で赤字が続いていた。

独太陽電池専業大手の破綻は2012年4月のQ Cells 以来となる。
Q Cellsは2012年10月に韓国のHanwhaが買収し、Hanwha Q.Cells GmbHとなっている。

  2012/4/6     太陽電池大手 Q-Cells 破綻
  
2012/11/27 倒産したドイツの太陽光発電メーカーQ. Cells、韓国ハンファグループのHanwha Q.CELLSとして再生

 米国ではSolyndra 、中国ではSuntechなど、倒産した企業が多い。

2012/10/19 倒産した米太陽電池メーカーSolyndra、中国の太陽電池企業を独禁法違反で訴え
2013/3/15   中国のSuntech Power、倒産の危機

Conergyは1998年の創業で、2005年3月に株式公開をした。
創業以来、2.2GW以上を製造販売している。

2012年12月期の売上高は前期比37%減の4億7350万ユーロで、営業損益は8,380万ユーロの赤字だった。

2013年3月末の債務超過は9,630万ユーロ。
過去15か月にわたって、新しい投資家を入れる案を債権者と協議してきたが、まとまらず、支払不能に陥った。

2012年5月にFinancial Timesが、中国企業がConergyの株式30%の取得に向け交渉中と報じた。 社名は明らかにしていない。
Conergyと債権者が協議していたのはこの件であると思われ、関係筋は直前まで、合意に達するとの見方を示していた。

ドイツ国内に800名、海外に400名、合計1200名の従業員がいるが、3分の2がリストラ対象になる見通し。

ーーー

ドイツでは Sunways AGも5月初めに破産処理を行った。
70.88%を所有する親会社自身が倒産の危機に直面しており、支援不能となったもの。

かつて生産能力で世界最大の太陽電池用ウエハーメーカーだった中国 の江西賽維LDK太陽能高科技(LDK Solar)が本年1月、Sunways AGの増資(33%)分を220百万ユーロで引き受け、 更に4月にTOBを行い、合計70.88%の株主となった。(他に3%以上の株主はない)

しかし、LDK Solarの1-3月期決算は、ウエハー出荷量が会社予想を下回り、2桁減収となった。8四半期連続の赤字で、小幅ながら赤字が拡大した。

同社は中国の太陽電池メーカーで最も負債の多い企業で、来年に大部分が返済期限が来る。
現在、約30億ドルの負債のリファイナンスを交渉している。

 

関連記事 2013/7/5   中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始  

 

 

 

韓国の朴槿恵大統領は、6月27日から30日まで、経済人71人を同行させ訪中した。

この間、6月28日にはSKとSinopecが武漢エチレンJVの設立の調印を行ったが、同じ28日に韓国石油公社(KNOC)はSinopecとの間で蔚山北港オイルハブ計画の投資意向書を締結した。

蔚山北港プロジェクトについて、合弁会社参加協力、事業段階発展のための緊密な協力、早期に最終投資意思決定を行うよう努力するという内容が盛り込まれている。実現すれば、世界第二の石油消費国の中国の石油を韓国に貯蔵することとなる。

KNOCは本年5月には世界最大の石油・化学製品タンクターミナル企業のオランダのRoyal Vopakとの間で蔚山北港プロジェクト基本合意書を締結し 、合弁設立の交渉を行っている。

北東アジアのオイルハブを目指す蔚山北港プロジェクトが加速化するとみられる。

ーーー

韓国政府は国策として北東アジアオイルハブプロジェクトを構想した。

大規模商用石油貯蔵施設を建設して、石油製品と原油の供給・積み下ろし・貯蔵・仲介・付加処理を行い、石油取引所の形成も伴う。
世界3大オイルハブの中東湾岸地域、ベルギー・オランダ地域、シンガポールに続く、世界第4位のオイルハブを目指すもの。

構想は以下の通りで、麗水と蔚山に建設する。

1)麗水(Yeosu) Oil Hub

運営:OilHub Korea Yeosu

KNOC(29%)、China Aviation Oil (26%)、SK-energy(11%)、GS-Caltex(11%)、Samsung C&T(10%)、
Seoul Line Service (8%)、LG International (5%)

貯蔵能力:820万バレル(原油:470万バレル、製品:350万バレル)

2013年3月完工

  
2)蔚山

  貯蔵能力 バース数
第一段階:北港計画 990万バレル 5
第二段階:南港計画 1,850万バレル 3

  予定:

 北港計画は2016年に埋立、埠頭、港湾敷地造成を完了、その後、タンク42基を建設。

  




METIは7月9日、平成25年度「アジア拠点化立地推進事業」の採択事業を決定したと発表した。

本事業は、グローバル企業による統括拠点又は研究開発拠点といった高付加価値拠点の国内立地の誘致のため、支援を行うもの。

日本を「アジア拠点」として復活させるため、横断的な事業環境整備と合わせて、高度人材等雇用への貢献度等と連動したアジア統括拠点・研究開発拠点等の誘致・集積を促すインセンティブ制度で、政府の新成長戦略(2010年6月閣議決定)に折り込まれた。

加えて、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」(2010年10月閣議決定)でも、グローバル企業のアジア統括拠点・研究開発拠点の誘致の支援を通じたアジア拠点化を推進することとした。

日本国内の法人格を有し、2以上の国においてグループ会社が実態のある事業を営んでいる法人が、 日本における研究開発拠点、アジア本社機能を新たに新設する場合、プロジェクトのハード部分の整備(土地、施設、機材、設計料等)のコストのうち1/2(中小企業)~1/3を補助するもので、補助金額は上限10億円となっている。

過去及び今回の採択事業は以下の通り。

  事業者名 本社国籍 整備する拠点 分 野
2013年度 Comverge Japan 米国 研究開発拠点 電力デマンドレスポンス
Siemens Japan ドイツ 研究開発拠点 PET薬剤関連
Nippon Busch ドイツ 統括拠点
研究開発拠点
真空ポンプ・システム
BASF Japan ドイツ 研究開発拠点 化学(バッテリー材料)
過去の実績
2010年 Salesforce.com 米国 研究開発拠点 ITサービス
Zydus Pharma Japan インド 研究開発拠点 医薬品
Dyesol Japan オーストラリア 研究開発拠点 次世代太陽電池
Eurocopter Japan T&E
(2012/4 Eurocopter Japan )
フランス 研究開発拠点 特殊用途ヘリコプター
Dou Yee International シンガポール 研究開発拠点 液晶ディスプレイ
2011年 Sanofi Aventis
(2012年 Sanofiに改称)
フランス 統括拠点 医薬品
3M Health Care 米国 研究開発拠点 ヘルスケア事業関連
DSM Japan Engineering Plastics オランダ 研究開発拠点 化学品(プラスチック)
Cabot Microelectronics 米国 研究開発拠点 電子材料(研磨剤)
NeoPhotonics 米国 研究開発拠点 光通信機器
みかど協和
(親会社:Vilmorin & Cie S.A.)
フランス 研究開発拠点 種苗
Medasys Japan フランス 研究開発拠点 医療情報システム
Inteligent Energy Holdings 英国 研究開発拠点 燃料電池
Umicore ベルギー 研究開発拠点 工業化学品(触媒)
Volvo Technology スウェーデン 研究開発拠点 自動車関連技術開発
2012年 GE Japan 米国 研究開発拠点 エネルギー(次世代エネルギー関連設備)
ヘルスケア(医療用情報システム)等
Johnson & Johnson 米国 研究開発拠点 医療機器
Tenneco Japan 米国 研究開発拠点 自動車部品(排ガス浄化装置等)
Faurecia Japan フランス 研究開発拠点 自動車部品(自動車用シート)


今回の採択事業のうち、BASF Japanのバッテリー材料については、2月27日に同社が下記の発表をしている。

ーーー

BASF、尼崎研究開発センターを拡張し、バッテリー材料研究所を日本に新設

既存の尼崎研究開発センターを拡張し、 バッテリー材料に特化した研究施設「尼崎研究開発センター バッテリー材料研究所」を新設し、 2013 年内に本格的な業務開始を目指す。
同研究所では、 BASF のグローバルな研究開発ネットワークの一部として、高性能バッテリー用の電解液と電極材料の研究に重点的に取り組み、日本のバッテリー業界へテーラーメイドのソリューションを提供する。

1 段階として、 2013年4月にバッテリー材料に特化した研究者が業務を開始する。2013年内には、尼崎研究開発センターを拡張し、新しいオフィスと研究所を新設し、本格的な稼働を予定している。総投資額は数百万ユーロ。



6月19日付日本経済新聞夕刊は「メーカーの価格指定容認 経産省・公取委、22年ぶり」と報じた。

経済産業省と公正取引委員会は、メーカーが小売店に販売価格を指定することを容認する検討に入った。
従来は価格競争を促すために価格指定を一律に禁止していたが、流通業界の交渉力向上を背景に欧米のように条件付きで認める。
販売競争による値崩れが緩和されれば、メーカーは収益改善で新商品開発を進めやすくなる一方、消費者の反発を招く恐れもある。

これを受け、公取委は6月26日の事務総長会見で、これを否定、諸外国の規制等の現状と公取委の考え方を詳細に説明した。

http://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/h25/04_06/kaikenkiroku130626.html

1)米国の状況

最低再販売価格維持行為については、1911年のドクターマイルズ事件の連邦最高裁判所の判決以降、「当然違法の原則」が継続されてきたが、2007 年のリージン事件における連邦最高裁判所判決は、5対4の僅差であったが、1911 年のドクターマイルズ事件判決を破棄して、最低再販売価格維持行為は「合理の原則」で律すべきであると宣言した。

医薬品製造販売のDr.Miles社は400以上の卸売業者、25千の小売業者との間に最低販売価格を定める条項を含む契約を結び、最低販売価格を下回る価格で販売する取引先に対し、差止請求をした。

連邦最高裁は1911年に、「譲渡した財産に対する一般的な制限は通常無効である」というコモンローの判例を引用し、無効とした。
これは垂直的最低販売価格協定を「当然無効」とするものと解釈され、1世紀にわたりその後の判決を拘束してきた。

Leegin Creative Leather Productsは革製品とアクセサリーを製造販売しているが、1991年にBrightonブランドのベルトを発売した。
同社は1997年にBrighton価格設定および販売促進政策を定め、推奨価格を下回る価格で販売する小売業者に製品販売を拒否した。

同社の販売戦略の中心のサービスを顧客に提供できるだけのマージンを小売業者に与えること、値引きがブランドイメージと評判を害するというのが理由であった。

最高裁判決は、水平的価格協定では、ほとんどの場合に競争を制限し供給を減少させるので「当然違法」であるが、垂直的協定の場合は、状況によって競争促進効果をもつことも、競争阻害効果を持つこともあり、「当然違法」とするのに適さず、「合理の原則」により判断すべきであるとした。

詳細は http://www.umds.ac.jp/kiyou/r/21-2/r21-2obata.pdf

1911年以来保持されていた「当然違法」の原則は、そうした行為が行われただけで違反とされるというもので、反証なり正当化が許されないというものだが、これを「合理の原則」ということで、個別事案ごとに不当性を判断するという原則に立場を変えるということになったが、メーカーの価格指定が認められるようになったというものではない。

2)EU

EUでは、最低再販売価格の維持は原則禁止の考え方がとられている。

条件を満たせば一括適用免除の規定はあるが、購入者の販売価格を決定する能力に係る制限を目的とする垂直的協定は一括適用免除の対象ではない「ハードコア制限」と明示されている。

3)その他諸国

欧州の英国、ドイツ、フランス、カナダ、豪州、韓国らのいずれの国においても、メーカーによる小売業者に対する価格指定や、販売価格の拘束は法律等で禁止されている。

http://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/h25/04_06/kaikenkiroku130626.files/130626siryou.pdf

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メーカーによる小売業者に対する価格指定、いわゆる再販売価格の拘束という行為については、欧米諸国において厳しく規制されており、公取委としてメーカーによる価格指定を容認する方向での見直しを行う考えはない。

メーカーによる小売業者の自由な価格設定を制限することを容認するということは、公正かつ自由な競争を阻害し、消費者の利益を損なうものであり、適当ではないと考えている 。

昭和50年の最高裁判決(上位メーカーの2社に比べて、小さなシェアしか有していない事業者の再販行為 )や、平成20年のハマナカ事件(文化としての手芸手編み業を維持し、手芸手編み業界全体を守るため、毛糸の値引き限度価格を決めた)の高裁判決でも、正当性は否定されている。



中国国家発展改革委員会(NDRC)は7月2日、原子力発電の電気料金メカニズムを改善すると発表した。

中国では発電・送電が分離されているが、送電網への接続時の価格を、現行の個別の価格決定から「統一的電気料金」政策へと変更する。
全国の原発統一電気料金を1キロワット時あたり0.43元に設定する。

現状で 1ドル= 6.14元 →   0.43元=7セント

この価格は比較的安定的に維持されるが、定期的に評価をし、技術進歩やコストと需給の変化を折り込んで価格調整を行うとしている。

現在の中国の原発の平均コストは0.40元とされる。

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NDRCは2011年8月に、太陽光発電産業の健全で持続的な発展を促すため、統一電気料金を決定した。

2011年7月1日以前に建設が認可されたものは1kwhあたり1.15元で、7月1日以降のものは1.00元となる。
但しチベット自治区のみ、7月1日以降も1.15元とする。

現状で 1ドル= 6.14元 →   1.15元=18.7セント、1.00元=16.3セント

この電気料金は、平均投資と運営コスト、中国の太陽光資源の状況に基づいて確定したもので、太陽光発電所の入札価格を参考にしたとしている。

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送電会社の国家電網は本年2月、「分散型電源の送電網接続業務の達成に関する意見」を発表した。
分散型電源は分散配置
された再生可能エネルギーやクリーンエネルギーを指す。

今後、事業体や個
人は分散型電源によって自らに電力を供給するだけでなく、余った電気を売電できるようになる。

国家電網は2012年10月に「分散型太陽光発電」について発表しており、今回は、これを天然ガス火力発電、バイオマス発電、風力発電、地熱発電など全てのタイプの分散型電源に拡大するもの 。

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中国の電気事業は国の直営として行われていたが、1997年に、中央政府内の電気事業運営部門が、国有企業である「国家電力公司」として分離された。

2002年末には、発電部門と送電部門が分離された。

発電事業者はこの5大発電会社のほかに、原発を担当する中国核工業集団 や、中央政府が管理する国有企業や地方政府が保有する発電会社、民間、外資などがある。

5大発電所会社や中国核工業集団は全国各地に発電所を保有しており、いわゆる地域割という形はとられていない。

送電網は以下の通り。

チベットについては、国家電網が代行管理している。

 





カネボウ化粧品は7月4日、「美白効果」をうたった化粧品を使った際、肌がまだらに白くなるケースがあったとして、同社と子会社の製品、計約100万個を自主回収すると発表した。
利用者に肌がまだらに白くなる「白斑」と呼ばれる症状が39例報告された。

対象の製品には、同社が独自に開発した「ロドデノール」という成分が配合されていて、カネボウ化粧品では症状との関連性が心配されるとして、この成分が配合されている全ての製品の回収を決めた。  

同社では問題の製品を使用している顧客は約25万人いるとみている。

ロドデノールは白樺やメグスリノキの樹脂に含まれている天然物質 4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールの美白効果に着目してカネボウ 化粧品が研究開発して、特許を取得した。
2008年には厚生省から薬用美白成分としての承認を得た。


メラニンは身体を紫外線から守り、悪性腫瘍の発生を防ぐが、シミの原因にもなる。
同社のロドデノールは3つのメカニズムでメラニン生成を抑える。

メラニンとは、フェノール類物質が高分子化して色素となったものの総称で、ヒトのメラニンには、 黒~茶褐色をしたユウメラニン(黒色メラニン)と、淡褐色~淡黄色のフェオメラニンの2種類があり、シミやくすみ等の色素沈着はユウメラニンによるものと考えられている。

血中から供給されたチロシンは、銅含有酵素のチロシナーゼによって酸化され、ドーパになり、さらにドーパキノンとなり、ユーメラニン とフェオメラニンが合成される。

ロドデノールの3つの作用:

  1.チロシナーゼ活性阻害作用

ロドデノールはチロシンのかわりにチロシナーゼと結合し、チロシナーゼの活性化を阻害する。

  2.チロシナーゼ分解促進

ロドデノールはチロシナーゼの分解を促進し、チロシナーゼの量を減少させる。

  3.黒色メラニン生成抑制作用

ロドデノールには、ユウメラニンの生成に関わる酵素に働きかけ、その発現量や活性を低下させることで、ユウメラニンを減少させる。

カネボウ化粧品では、シミの生成過程における複数のプロセスにアプローチできるというのがロドデノールの最大の魅力であり、これが他の美白成分と比べて非常に高いシミ予防の効果を示す根拠になっているとしていた。

肌がまだらに白くなることについて、「正直なところメカニズムがわからない」としている。

カネボウ化粧品の直近の年間売上高は約1900億円とみられ、自主回収対象の製品の売上高は国内だけで50億円、このほか、台湾や韓国、タイなどアジアで卸売額ベースで約10億円とされている。

この問題はカネボウ化粧品を買収することで化粧品事業の拡大を図っていた花王にとっても痛手となる。

ーーー

カネボウ化粧品は2006年に花王の100%子会社となった。

カネボウは伊藤淳二社長の下、繊維、化粧品、薬品、食品、住宅の5事業をベースに「ペンタゴン経営」といわれる多角化路線を取ったが、二度の石油危機と円高不況で収益環境が悪化した。
経営不振を補うため、「宇宙遊泳」と呼ばれる粉飾取引が行われた。

2004年2月、カネボウは産業再生機構に支援を要請した。

産業再生機構は多くの事業を順次売却、残る事業について入札の結果、カネボウ化粧品を花王に、残るカネボウをアドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの国内投資フアンド3社の連合に売却した。

 

「カネボウ」ブランドはカネボウ化粧品だけが使える契約のため、カネボウ・トリニティ・ホールディングスグループは2007年7月1日付けで社名を「Kracie(クラシエ)」に変更した。

カネボウの歴史と産業再生機構による立て直しの経緯は
   
2007/3/6  カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更

2009年9月に染毛剤最大手のホーユーはクラシエの60%を購入、2012年3月に残る40%も取得し、完全子会社とした。

2009/9/25 ホーユー、クラシエグループ株式の60%を買収

 



中国の7月金融危機説がささやかれている。

中国の富裕層の多くは財テクの一環として、投資顧問会社や信託会社などが発行する高利回りの『理財商品』 を購入しているが、ほとんどが不動産投資に流れている。

不動産の値崩れで、その一部は満期を迎えても償還が難しいと懸念されているが、その償還が6月末から7月に集中しているためである。

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中国政府は銀行に厳しい規制を課しているが、信託会社や投資顧問会社などには緩やかで、理財商品のように銀行を経由しない金融取引は「シャドーバンキング」と呼ばれる。

Shadow Banking はPIMCOのManaging DirectorであったPaul. McCulleyの造語で、最初に講演で使用し、後に彼のレポート「Global Central Bank Focus」の中で紹介され、2007年頃から広まるようになった。

地方政府の開発とこれが結び付き、異常に膨張した。(それぞれについては後記)

理財商品残高は中国当局公表では2013年3月末で8兆2000億元(130兆円、GDPの16%)だが、実際には36兆元(GDPの7割) との説もある。

金融当局も規制・介入できない状況で、情報開示も不足しており、当局も含め誰も実態を把握しきれていない。

不動産バブルの崩壊で返済が不能となる恐れがあるが、 これらの商品では、債務不履行時の損失を誰が負担するかが曖昧なまま、高利回りをうたって資金を集めている。

米国のサブプライムローンと同じ構造である。

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背景には2つの問題がある。

1)人民銀行の金利規制

現在は、1年物の定期預金は基準金利が3.0%、金利上限が3.3% となっている。
(貸出金利は基準が6.0%、金利下限が4.2%)    

定期預金金利は2012年初めまでは消費者物価を下回っていた。現在でもネットでは1.3%程度である。

このため、富裕層は10%程度の高金利を謳い文句にする理財商品を購入した。

また、国営企業などは、幾らでも銀行から金を借りることができるため、多額の余裕資金を抱えており、資金を有利に運用するため、これを利用した。

2)地方政府の開発投資

2008年のリーマン・ショック時に中国政府は4兆元の経済対策を打ったが、地方政府は競って大規模投資を行った。
この時、地方政府は「融資平台」と呼ばれる開発会社を設立、資金調達と開発を行わせた。

運用先を探していたシャドーバンキングの資金がそこに流入した。

実際には、地方政府が建設した巨大なマンション群は多くが売れ残っている。
江蘇省常州市や内モンゴルのオルドス市、遼寧省営口市などには「鬼城」(Ghost town)がある。

 

中国の金融危機は経済危機につながり、日本や米国の経済にも大きな影響を与える可能性がある。

ーーー

中国の国務院は7月5日、シャドーバンキングの膨張で起こりかねない金融リスクを厳しく防ぐことなどが柱の金融行政・政策の指針を公表した。

声明では、中国経済は安定しているが、構造的問題はあり、資本の不適正配分が構造改善を妨げていると述べ、指針は先進的な製造業や新興産業などの"real economy"が必要な資金面のサポートを得られることを目的としている。

過剰能力を抱える産業では差別的支持政策をとり、競争力のある企業が資金サポートを得る。

信用供与はリーズナブルなレベルを維持するとしており、成長のために流動性を高めるのではなく、経済安定化のためのリストラクチャーリングに重点を置く。

経済安定化のため、多くの種類の財政的リスクを防ぐとし、シャドーバンキングの管理を強化する。


付記

中国人民銀行は7月19日、貸出金利下限規制を撤廃すると発表した。

貸出金利の下限撤廃で銀行間の競争を促し、企業の資金調達コストを引き下げる狙いがあるとみられるが、預金金利については自由化を見送ったため、預金金利の3%が事実上の下限となる。

これまではは基準金利が上限となっていた。今回、これを1.1倍までとした。

 

   預金金利

貸出金利
基準 上限 基準 下限
従来      3.50% 基準x1.0   3.50%   6.56% 基準x0.9 5.904%
2012/6改正      3.25% 基準x1.1  3.575% 6.31% 基準x0.8  5.048%
2012/7/5追加

3.00%

基準x1.1  3.30% 6.00% 基準x0.7 4.200%
2013/7/19改正   ↓      ↓  ↓

下限撤廃

沖縄市諸見里にある市サッカー場で6月13日、ドラム缶15本ほどが見つかったが、このドラム缶にDow Chemicalの社名が記載されていた。

Dowはベトナム戦争当時に米軍が散布したダイオキシンを含む枯れ葉剤 Agent Orange を供給した企業であることから、枯れ葉剤が県内で貯蔵されていたことを示すものである可能性が出てきた。

ドラム缶に内容物は見当たらないが、石油系燃料の異臭を放っている。
ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤は、散布しやすくするため、液体のディーゼルなどの燃料と混ぜて使用されていた事実がある。

小野寺防衛相は6月24日、ドラム缶の中身の調査を実施する考えを示した。「今週中に(調査の)契約を結ぶ。問題があれば最後まで責任をもって対応する」と述べた。
 
7月2日の調査では発見地点の残土やドラム缶から試料を採った。ダイオキシン類や農薬が残留しているかどうか、1カ月ほどかけて調べる。

Dow ChemicalではAgent Orange の缶ではないとするが、古い話で情報不足のため、ドラム缶の中味が何であるかは分からないとしている。

現地は嘉手納基地に隣接しており、1987年に返還された。
この周辺はゴミ捨て場になったが、沖縄市は1996年に2箇所の土質調査のみでサッカー場用に造成した。

今回、芝を人工芝に張り替える工事に取り掛かり、地下に排水管等を敷設する必要が生じ、50センチほど掘った時、ドラム缶が出て来た。


ベトナム戦争時に米軍はベトコンの隠れ場となる森林の枯死と、ゲリラ支配地域の農業基盤である耕作地域の破壊を目的に大量の除草剤を散布した。

オレンジ、ホワイト、ブルーの3種類の除草剤(Agent)が用いらた。総称して虹枯葉剤と呼ばれる。
Agent Orangeは2,4-D と2,4,5-Tの50/50混合物、Agent Whiteは2,4-D
Picloram4:1の混合物で、Agent Blueはカコジル酸を元にしたもので植物の脱水化を図る。

このうち特に大量に使用されたのがAgent Orangeで、Defence Production Actに基づき、Dow Chemical、Monsanto、Hercules、Diamond Shamrock、Uniroyal、Thompson Chemicals、T-H Agricultural & Nutrition が製造した。

Agent Orangeにはダイオキシン類が含まれており、動物実験では催奇形性が確認されている。
 
ベトナムの枯葉剤散布地区では、散布前と比べ流産が2.22.7倍に、奇形は約13倍になっている。

ーーー

 

米国はこれまで、沖縄に枯葉剤が保管されたことはないとしてきた。

 

しかし、本土復帰前の沖縄に持ち込まれていたことが、住民や米軍関係者の証言で明らかになっている。


琉球朝日放送は1月14日、
ベトナム戦争当時枯れ葉剤が嘉手納のアメリカ軍施設に保管されていたことを示す公文書がアメリカ陸軍への情報公開請求で見つか ったと報じた。

1971年に作成された国防総省の文書で、太平洋軍司令部の管内で枯れ葉剤が備蓄されている場所として「タイ、そして沖縄・嘉手納」の名前が明記されている。

2012年には復帰直前にアメリカ空軍が沖縄にあった25千本の枯れ葉剤のドラム缶を南太平洋のジョンストン島に運んだという公文書が見つかってい るが、米政府は沖縄に枯れ葉剤があったことを否定し続けている。


付記

沖縄市は7月31日、市独自の調査を発表した。

ドラム缶の周辺液体や付着物から水質基準値の280倍、土壌基準値の8.4倍のダイオキシン類が検出された。
Agent orange の主要成分 2,4,5,T はドラム缶22検体中18検体で検出されたが、同様に主要成分の2,4-Dは全検体で検出されなかった。
一部検体でPCBやヒ素も検出された。

Agent Orangeは2,4-D と2,4,5-Tの50/50混合物。

調査結果の最高値
採取物 項目 検出値 環境基準値
ドラム缶付着物 ダイオキシン類 8400pg-TEQ/g 土壌参考 1000pg-TEQ/g 以下
ドラム缶周辺の液体 同上 280pg-TEQ/L 水質参考 1pg-TEQ/L 以下
ドラム缶付着物 PCB 3.2mg/kg 0.5mg/kg 以下
ドラム缶埋設地の土壌 フッ素 5.5mg/L 0.8mg/L 以下

 

中国商務部は7月1日、公告36号と37号を出し、EU原産の輸入ワインについて、反ダンピング調査と反補助金調査を開始すると発表した。

5月15日に中国ワイン協会が国内ワイン産業を代表して調査を要請した。

調査対象期間は2012年1月から12月末まで、被害調査の対象期間は2009年1月から2012年12月末までとしている。

ーーー

EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。

これに対し、中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査実施を検討することを明らかにした。
欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しているとし、反補助金調査も行う。

2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。

EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復と見られる。

2013/6/10    EU、中国の太陽光パネルに反ダンピング関税、中国は欧州産ワインで反ダンピング調査開始


中国商務部は6月5日に中国ワイン業界による調査申請の内容をEUに通知し、17日に欧中双方による話し合いを行った。
6月21日にはEU欧州委員会から意見書を受け取った。

調査開始までの詳細な過程を発表するのは珍しく、協議を通じて貿易紛争を解決したいとの姿勢をアピールしたとも受け取れる。

EUのデフフト委員(通商担当)は6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。

ーーー

6月10日付 英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」との社説を掲載した。

欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。

当然のごとく中国は欧州産ワインの販売に標的を絞った調査で報復した。EU最大のワイン生産国であるフランスはデフフト委員を支持した。対抗制裁は個人を狙ったものでもある。デフフト委員自身がワイン醸造業者だった。

現時点での最善策は、デフフト委員はひとまず方針を撤回し、地に足のついた対応を考えるべきだろう。




中国商務省は7月1日、2013年下期のレアアース輸出枠を15,500トンにすると発表した。

2012年は下期に枠を大幅に減し、本年上期も前年同期比5千トン以上減らしたが、下期は上期と同量とした。

この結果、通年で31,001トンとなり、2012年の輸出枠30,996トンと同水準となる。

 
      2009 2010 2011 2012 2013
輸出枠 上期 軽希土       18,585トン 13,563トン
中重希土 2,641トン 1,938トン
合計 21,728トン 22,282トン 14,446トン 21,226トン 15,501トン
下期 軽希土       8,537トン 13,821トン
中重希土 1,233トン  1,679トン
合計 28,417トン 7,976トン 15,738トン 9,770トン 15,500トン
年間 軽希土       27,122トン 27,384トン
中重希土 3,874トン 3,617トン
合計  50,145トン  30,258トン  30,184トン  30,996トン  31,001トン
輸出実績   39,813トン 18,600トン 16,265トン  



レアアースの輸出実績は以下の通りで2003年をピークに減少しているが、2009年から急減している。


          http://www.fas.org/sgp/crs/row/R42510.pdf

2009年に全国人民代表大会(全人代)に「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が提出された。

中国のレアアース生産量は2005年に世界の96%を占め、輸出量で世界一となったが、乱開発されており、無秩序な開発で採掘現場での回収率も低効率の状態にある。乱開発がこのまま続けば、20~30年で中国のレアアースは枯渇するとする。

2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限? 

これを受け、2010年の輸出枠は前年比40%減となった。

更に、2010年9月の尖閣諸島での中国漁船衝突事件を受け、中国政府はレアアースの日本への輸出を事実上止めた。
2011年の輸出実績は輸出枠を大きく下回った。

この結果、輸出価格は急騰したが、日本企業はレアアースの使用を減らす技術の開発を強化した。さらに各国がレアアース採掘を始めたことで調達先が多様化した。

2012年の輸出枠 30,996トンに対し、実際の輸出量は16,265トンにとどまった。


 

理化学研究所は6月28日、新たに合成した多金属のチタンヒドリド化合物に窒素分子(N2)を常温・常圧で取り込ませ、窒素-窒素結合を切断し、窒素-水素結合の生成(水素化)を引き起こすことに成功したと発表した。
窒素と水素から省エネルギーでアンモニアを合成できる可能性が生まれた。

http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130628_1/

窒素分子(N2)は2つの窒素原子が三重結合という強い結合で結ばれているため、非常に安定な分子で、反応性が乏しく、ほとんどの生物は大気中の窒素を直接利用することができない。
マメ科の植物に共生する細菌が持つ酵素「ニトロゲナーゼ」のみが常温・常圧で窒素の三重結合を断ち切って窒素をアンモニアへと変換している。

窒素は肥料の3要素の1つとして農作物にとって重要だが、農作物の増産には自然界が作った固定窒素だけでは足りない。

これを解決したのが窒素からアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法だが、合成時に500℃の高温と300気圧の高圧を必要とし、アンモニア合成に使われているエネルギーは、人類の年間消費量の1%に上るといわれてい る。

 

今回、理化学研究所では3つのチタン原子と7つのヒドリド(マイナスの電荷を持った水素イオン)原子からなる多金属ヒドリド化合物を開発した。

この化合物と窒素を反応させたところ、常温・常圧で窒素分子の「窒素―窒素結合」を切断し、「窒素―水素結合」を形成していることが分かった。

チタンヒドリド化合物のヒドリド原子(H)が電子を与える電子剤として働いて窒素分子の結合を切断し、また電子を放出することでプロトン源の役割りを果たして、窒素の水素化を実現した。

 


次に、反応機構を明らかにするためにこの反応を低温で行った結果、以下のような反応プロセスと分かった。

  図 A  

-30℃で窒素分子がチタンヒドリド化合物に取り込まれると同時に4つのヒドリド原子から2つの水素分子が生成・脱離する。
水素分子生成で余った4つの電子を窒素が受け取り(還元)、窒素-窒素三重結合がより結合力の弱い単結合まで還元された。

  図 B  

さらに、-10℃で2つの3価のチタン(Ti)から2つの電子を窒素に受け渡し窒素-窒素結合が切断され、2つの4価のチタン(Ti)が生じる。

    図 C

その後、室温の20℃で1つのヒドリド原子から2つのチタン(Ti)へ2つの電子を受け渡したことで、プロトン(H+)と2つのチタン(Ti)が生じ、このプロトンと窒素が結合し、窒素-水素結合が生成した。

このプロセスは、先に窒素-水素結合が生成し、その後に窒素-窒素結合が切断するプロセスより少ないエネルギーで進行することも分かった。

 

この成果は、将来的に窒素と水素から温和な条件下でアンモニアを合成する省資源・省エネ型手法の開発につながると期待される。

また、今回合成した多金属チタンヒドリド化合物は、非常に高い反応性を有しているため、窒素の固定化反応だけでなく、新たな触媒反応への展開も期待できる。

ーーー

これより前、2010年12月に東京大学大学院の西林仁昭准教授らは、「温和な反応条件下での触媒的アンモニア合成法」の開発に成功したと発表している。
    http://www.t.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/release_20101202.pdf

PNP型ピンサー配位子という、りん--窒素--りん原子が錯体を中心として三座で配位結合する化合物を有した、窒素分子架橋二核モリブデン錯体を新しく分子設計・合成を行い、これを触媒として用いることで常温常圧の極めて温和な反応条件下で窒素ガスをアンモニアへと変換する反応を開発することに成功した。

問題点として、西林准教授は以下の通り述べている。

工業化するためにはまだまだ解決しなければならない課題はたくさんあります。プロトン源として特殊な物質を使っているようではダメで、水を使えるようにしたいですし、触媒の寿命ももっと長くしなければなりません。もう一つ、窒素をアンモニアに変換する過程では還元剤、つまり電子の供給源が必要なのですが、現在はコバルトセンという物質を使っています。還元についても、こうした特殊な物質を使うのではなく、電気で行えるようにする必要があります。
 http://archive.wiredvision.co.jp/blog/yamaji/201101/201101281403.html

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2012年12月、東大大学院の西林仁昭准教授らと九州大学の吉澤一成教授らの研究グループは、単純で安価な鉄錯体を触媒に用いた常温常圧の窒素ガスの還元に成功したと発表した。

フェロセンや鉄カルボル錯体に代表される鉄粉等から簡単に合成できる安価な鉄錯体を触媒として利用することで、常温常圧の極めて温和な反応条件下で窒素ガスを還元し、アンモニア等価体であるシリルアミンへと触媒的に変換する反応を開発することに成功した。
シリルアミンは水と接触されることで定量的に簡単にアンモニアへ変換することが可能で、窒素ガスからのアンモニア合成の別法と言える。

今後は反応効率化が課題になるとされている。




 

BPは6月28日、Azerbaijan のカスピ海沖のShah Deniz ガス田第2期のガスの欧州向け輸送ルートをTrans Adriatic Pipeline (TAP) 決めたと発表した。

Azerbaijan とGeorgiaの間はSouth Caucasus Pipeline (SCP)を増設、トルコ国内はトルコ政府とアゼルバイジャン政府にBPも加わるTrans Anatolian  Pipelineを新設するが、トルコから欧州へはNabucco (West) Gas Pipeline と Trans Adriatic Pipeline (TAP) の2つの計画があった

2013/5/10 BP、アゼルバイジャン産ガスの欧州向け輸送ルート検討 

今回、ギリシャからアルバニアを経由、アドリア海を渡ってイタリアに通じる全長800kmのTrans Adriatic Pipeline (TAP) を選択した。

Shah Deniz ガス田第2期は年産160億立方メートルで、トルコが60億立方メートルを購入し、残り100億立方メートルを欧州に供給する。

Trans Adriatic Pipeline (TAP) AG の株主は以下の通り。

EGL(Axpo子会社) 42.5% スイス
Statoil 42.5% ノルウェー
E.ON Ruhrgas 15% ドイツ


なお、Shah Deniz consortium がTAP 採用を決めたため、Shah Deniz コンソーシアムのメンバーのBP、SOCAR、Statoil、Totalの4社がTAPに合計で50%迄出資するオプションを持つ。

Shah Deniz consortium は既にイタリアとギリシャの数社と天然ガス販売の条件で合意している。
ブルガリアでのガス販売の交渉も行っており、トルコからブルガリアまでのパイプライン敷設も検討している。

なお、Croatia、Montenegro、Bosnia & Herzegovina、Albania の諸国はIonian-Adriatic Pipeline (IAP)を建設してTAPと接続する案を検討している。


 

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Azerbaijan国営石油(SOCAR)は、Shah Deniz ガス田に続き ACG(Azeri-Chirag-Guneshli )やAbsheron、 Umid、Shafag-Asiman などの開発が進むと、Azerbaijanからの天然ガス輸出は飛躍的に増大し、今後、Nabucco (West) Gas Pipeline も必要になるとしている。

 

 



食品用紙容器大手のスイスのTetra Pakは6月26日、ブラジルのBraskemとの間でブラジルでの紙容器製造用にBraskemのサトウキビ由来のバイオベースポリエチレン購入契約を締結すると発表した。
液体食品用の紙容器でのバイオベースPE採用は世界初。

テスト期間中はブラジル限定だが、その後は他地域にも広げる。
ブラジルで生産する130億個の容器のうち、82%がバイオベースPEを使用する。

同社の紙容器の構造は下記の通り。(同社ホームページから)

① 紙

テトラパックの紙容器は、紙が主な原材料です。容器が安定するためにちょうど必要な量だけを使い、無駄に重くならないようにしています。紙は再生可能な原材料で、木から作られています。

② ポリエチレン

プラスチックの一種であるポリエチレンの薄い膜を貼って、液体が漏れないようにするとともに、外部の湿気から中身を守ります。

③ アルミニウム

食品を常温保存できる紙容器には、アルミ箔が使われています。アルミ箔が、酸素、におい、光から中身のおいしさを守っています。

 

Tetra Pakは2009年11月、Braskemのグリーンプラスチック(PE)を試用する契約を締結している。
Braskemの生産開始後、2011年から年5,000トンを使用するもの。

2009/12/1 テトラパック、ブラスケムのグリーンプラスチックを使用

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Braskemは2007年10月、サトウキビベースのエタノールを原料にした年産200千トンのPEプラント建設を発表した。

2007/11/5 Braskem、サトウキビからHDPEを製造

同社は2010年9月、Rio Grande do Sul 州の Triunfo Petrochemical Complexで サトウキビからのバイオエタノールを原料とするグリーンエチレン年産 20万トンとHDPE及びLDPEをあわせて年間20万トンのポリエチレンの生産を開始した。

同社は2013年5月21日、Green LDPE 30千トンの増設を発表した。2014年1月から生産を開始する。

同社はまた、グリーンPPプラントの建設も行っている。2013年に生産開始の予定。

2010/11/9  Braskem、Greeen PP 製造へ


豊田通商は2008年9月、Braskem が世界で初めて商業生産を開始する植物由来ポリエチレンに関し、日本を含むアジア地区の販売パートナーとしての業務提携を行うことに合意した。

双日は2012年7月、Braskem から、「グリーンポリエチレン」の販売代理権を獲得した。双日プラネットを通じて日本に加えて、アジア・オセアニア地域への販売も行い、3年後には年間取扱量2万トン規模を目指す。

グリーンポリエチレンのアジア向け販売代理権は豊田通商と双日が持つことになるが、豊田通商はトヨタ自動車など自動車関連向けへの販売が主力で、双日は生活消費財や民生機器分野を開拓する。

双日は、Braskemの親会社であるOdebrecht S.A.と共に、サトウキビ由来のバイオエタノールメーカーとして世界最大級のETH Bioenergia S.A に出資している。今回のグリーンポリエチレンの一部も、ETH社のバイオエタノールを原料として使用し、バイオエタノールチェーンを構築している。

2010/3/23  双日のブラジル・バイオエタノール事業

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2010年末のバイオPE製造開始を控え、Braskemは2010年上半期に登録商標 "I'm Green" を採用した。

バイオPEはこの商標で販売されている。

同社はまた、需要家に対し、バイオPEを51%以上使用する製品にこの商標の使用を認めている。

 

日本では椿化工株式会社が化粧品ボトルメーカーでは初めて、樹脂成型品の原料にこの "I'm Green"プラスチックを本格的に導入 する。
    http://www.tsubaki-ka.co.jp/bio/index.html



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