2015年8月アーカイブ


8月28日、ジャワ島中部
Batang で、電源開発と伊藤忠商事が参画する石炭火力発電所の起工式がJoko Widodo大統領をはじめ日本とインドネシアの政府や企業の関係者らおよそ500人が出席して行われ、ジョコ大統領が「着工」を宣言した。

ジョコ大統領は、経済成長に伴ってひっ迫している電力事情を改善するため、今後5年間で3万5000メガワット分の発電所の建設が必要だと強調したうえで、「この発電所が、ほかの投資案件のモデルケースとなることを望んでいる」と述べ、日本からのさらなる投資の拡大に期待を示した。

大統領は「私たちは投資家を安心させなければならない」と述べ、政府として計画を支援していく方針を表明した。
土地収用を近く終えるとし、「投資環境の問題解決のモデルだ」と強調、2018年の稼働開始に言及した。

しかし、住民が「農地を奪われて生活できなくなる」「環境が悪化する」などと反対し、土地収用が難航、着工が3年近く延期されているが、なお未収用の土地が多い。
Greenpeaceによると、20.7ヘクタールの土地を持つ67人の土地所有者が売却に反対している。

総事業費は40億ドル超で国際協力銀行(JBIC)が融資を主導するが、融資契約は土地収用の完了が前提 で、日本側の企業幹部は「完了するまで先のことは何もわからない」と述べた。

ーーー

計画は中部ジャワ州に合計出力200万kWの石炭火力発電所を建設し、インドネシア国有電力会社(PLN) と25年間の長期売電契約を締結するアジア最大規模のIPP事業。

2011年4月に行われた国際入札で、電源開発(Jパワー)と伊藤忠が現地の石炭企業のAdaro Energy Tbk.と組んで優先交渉権を獲得、10月に同JVが国営電力PLNと契約を結んだ。

日本政府が進めるパッケージ型インフラ輸出で、高効率石炭火力発電設備としては初の案件となる。

概要は以下の通り。

立地 :中部ジャワ州 Batang 県 Pondewareng 村
 
事業会社 :PT. Bhimasena Power Indonesia
  建設・保有・運営・保守を担当
発電所 :中部ジャワ発電所(CJPP)
発電方式 :超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)石炭火力発電
         
亜臨界圧石炭火力発電所と比べ、
          使用燃料を約1割削減
       容量100万kW当たり二酸化炭素排出量を年間約50万トン削減
出力 :200万kW(100万kW×2)
        ジャワ島の電力需要の約1割
燃料 :インドネシア産低品位炭(亜瀝青炭)
スキーム :BOT(Build-Operate-Transfer)方式
出資
電源開発(Jパワー) 34%
  PT Adaro Energy Tbk. 34%
  伊藤忠商事  32%
電力販売先 :PLN(インドネシア国有電力会社)
    インドネシア財務省が国営インフラ保証会社を通じて、PLNの契約履行を保証
契約期間 :25年間
工程
   (2011/10)
:2012/10 着工
    2016/10  1号機運転開始(工期48か月)
    2017/4    2号機運転開始(工期54か月)
事業費 :約40億ドル
資金調達  :三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、国際協力銀行 (JBIC)などで構成する銀行団が
  30億ドル程度を協調融資

本計画の認可条件として、事業資金の融資契約を1年以内(2012年10月6日まで)に締結することとなっており、そのためにはそれまでに用地の買収を完了しておく必要があった。
用地買収、住民対応等ほとんどを事業者側が行う形になっている。

建設用地の買収は難航した。農地は年3回、コメの収穫が可能という肥沃な土壌で、田んぼを手放さないという農民と、予定地近くの漁場汚染を懸念する近隣の村の漁師、環境保護団体が猛反対した。

期限の2012年10月になっても、同計画に関する環境アセスメントや土地取得が終わっておらず、地元住民の反対運動も続いていた。
このため、インドネシア政府は資金調達契約の締結期限を1年間延長した。「再延長はなし」と決められた。

その後も土地取得は進まず、日本政府はインドネシア政府に協力を要請、2013年9月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際、安倍首相が直接ユドヨノ大統領に協力を要請した。

この結果、2013年10月に再延長が認められた。

2013/10/7    日本出資の中部ジャワ石炭火力発電所計画 難航

しかし反対運動が続き、2014年10月には3度目の延長が行われた。
用地買収は9割程度とされるが、
発電所の重要部分の地権者が反対している。Greenpeaceによると、20.7ヘクタールの土地を持つ67人の土地所有者が売却に反対している。

土地収用の決着がついていないにもかかわらず、2015年4月上旬からインドネシア国軍の重機による整地作業が強行された。

建設に反対する地元住民が2015年7月29日、融資を検討する国際協力銀行に環境や地域社会に与える影響を精査するよう求める異議申立書を、関係官庁に抗議書を提出した。

建設予定地の水田や畑が収用され、多数の住民が生計手段を失った。「年に3回収穫可能な水田があり、非常に豊かな土地だ。私たちの土地を守ってほしい」と訴えた。

建設予定地は海に面しており、過去に石炭火力発電所周辺で漁業被害が生じたことから、地元漁民も反対運動に加わっている。

また計画に反対する住民が、不当逮捕されたり、軍や警察などから脅迫を受けたりしたという。警察や軍、民間警備員、地元で「プレマン」と呼ばれるならず者による人権侵害に直面している。

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本計画の受注争いで敗れた丸紅のグループは、用地買収は事業者側が担当する取り決めになっていることに配慮し、地盤整備で費用がかさむが、土地を取得する際の問題は少ない別の場所を採用していたとされる。

「早い段階での企業からの説明や交流がほとんど無かった」ともされる。




米医薬品メーカー Sucampo Pharmaceuticalsは8月26日、アールテック・ウエノを330億円で買収すると発表した。
アールテック・ウエノ の持つ現金約54百万円とSucampo 株式 (250万株、持株比率5.5%)を含む。

1株1900円で公開買付けを行い、全株式の56%を取得する。
残る44%については、アールテック
の創業者と関係団体から1株1400円で買い取る。

Sucampo も アールテックも、上野隆司博士と久能祐子博士夫妻が設立した会社で、夫妻は両社の大株主である。
今回、両社を一体化する。

Sucampo:夫妻及び夫妻の資産管理会社(S&R Technology Holdings)が46.17%を所有
     (2015年3月に株式公開のため一部放出した後の持株比率)

アールテックS&R Technology Holdingsが32.99%、上野博士が16.57%、久能博士が10.35%
      (他にオリックスが9.19%)

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夫妻は新技術開発事業団(現 科学技術振興機構)で研究に携わっていたが、上野博士はプロスタグランジンの代謝物でケトン基を有するものが活性を有することを発見し、プロストン(Prostone) と名付けた。

夫妻は上野博士の父親が社長の上野製薬で緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ点眼液」の開発を進めた。

夫妻は1989年にアールテック・ウエノを設立、久能博士は経営に専念した。

1994年に「レスキュラ点眼液」の製造承認を取得し、藤沢薬品工業(現 アステラス製薬)と独占的販売契約を交わした。(2004年10月に眼科領域に強い参天製薬へ変更)

2001年に上野製薬からレスキュラの製造販売業務の承継を含む事業承継を受け、製造発売元になった。

夫妻は1996年に米国にSucampo Pharmaceuticalsを設立し、Prostoneをベースにした医薬品の開発を開始 した。
最初の製品がAmitizaで、成人向け慢性特発性便秘症治療薬として
2006年1月に米食品医薬品局(FDA)より販売認可を受けた。

2002年に英国にSucampo Pharma Europe、日本にスキャンポファーマを設立し、日米欧三極で医薬品を開発する体制を構築した。

アールテック・ウエノは、グループの中で、プロストン製剤の全世界への製造供給を担う。

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Sucampo Pharmaceuticalsは米国とカナダでのAmitizaの独占販売権を武田薬品に譲渡、武田薬品は米国で 2006年4月に販売を開始した。

久能博士は「ワシントンDCライフスタイル」のインタビューで次のように述べている。

1996年には最初に開発した薬のロイヤリティーも入り始めていたので、それを元手にしてアメリカで上野と共に創薬ベンチャーの「スキャンポファーマシューティカルズ」を1997年に立ち上げ、私はCEOに就任しました。

2002年にお金がなくなった時に投資家を募ったほか、最終的にまたお金がなくなった時にはまた新薬の販売権を武田薬品に合計200億円で売る(マイルストンを含む)ことにし、2006年に2番目の新「アミテーザ」の販売にこぎ着けました。

Sucampo Pharmaceuticalsは2010年3月15日、武田薬品が便秘薬のCollaboration and License Agreementに違反したとして、この契約の終了と損害賠償を求めて国際仲裁裁判所に調停を申し立てたと発表した。

Sucampoが開発した便秘型過敏性腸症候群治療薬アミティーザの売上高が当初予想を下回ったことなどを理由に「武田側が販促活動を怠った」として契約終了を要求していたが、武田側が要求を受け入れなかったとしている。

2010/3/22 米製薬ベンチャーSucampo Pharmaceuticals、武田薬品との調停申し立て

2012年7月、国際仲裁裁判所はSucampoの主張 を認めず、損害賠償についても認めなかった。
この結果、2004年に締結した独占的供給契約は継続することとなった。

その後2014年10月に、Sucampo Pharmaceuticalsと武田薬品 は、AMITIZA®について、グローバルでの開発、販売、供給に関する契約を締結した。
武田薬品は、これまでの米国・カナダに加え、日本および中国以外のすべての国におけるAMITIZAの独占的販売権を獲得した。

日本については2009年2月にアボットジャパンが独占販売権を取得している。
また、Sucampoは2015年5月11日、
Harbin Gloria Pharmaceuticals Co., Ltd. (哈爾濱譽衡藥業有限公司)との間でAMITIZA®に関する中国での独占的ライセンス契約を締結した。

 

 


Butamax Advanced Biofuels, LLC とGevoは8月24日、バイオベースのイソブタノールに関して世界中での特許のクロスライセンス契約を締結し、長期間争ってきた特許紛争を解決したと発表した。

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ButamaxはDuPontとBPのJVで、DuPontのバイオ技術・バイオ関連の製造技術とBPの燃料の技術経験と販売ノウハウを結びつけるもの。

両社は2003年にバイオ燃料の共同開発で合意し、2004年に対象をバイオブタノールに決め、2005年にコアとなる特許を申請した。

両社は2006年6月19日に、既存のバイオ燃料の限界を超える次世代バイオ燃料の開発・製造・販売でのパートナーシップの設立を発表した。

2008年に事業採算を確認、2009年にButamax社が設立された。

Butamax は2013年に第一世代のエタノールメーカーのHighwater Ethanol LLC と組み、同社のプラントをButamaxの最新の技術で改造した。
2014年に商業生産を開始した。


Gevoは2005 年にコロラド州Englewood を本拠地として設立された。
同社はカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の遺伝子組み替え技術を導入してバイオマスからイソブタノールを選択的に生産する技術を開発した。

現在、ミネソタ州Luverneの発酵プラントでイソブタノール、エタノール、高価値の動物飼料を生産している。
また、バイオアルコールから石化製品をつくる技術を開発しており、テキサス州 Silsbeeにバイオリファイナリーを持ち、South Hampton Resources Inc.の協力のもと、バイオジェット燃料、オクタン、ポリエステル原料などを生産している。

2009年にフランスのTotal が出資し、役員1 名を送り込んでいる。このほか、 Coca-Cola Companyや東レなど多数の有力企業と提携している。

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Butamaxは2011年1月、特許侵害でGevoを訴え、それ以降、抗争が続いている。

Delaware 地裁は2013年4月11日、GevoがButamax 特許を侵害していないとの判決を出した。

これに対し、Butamaxは控訴し、控訴裁は2014年2月18日、問題となった特許請求の新しい解釈に基づき、地裁判決を覆した。

これに対し、Gevoは最高裁に上告した。

米最高裁は2015年1月27日、Butamax勝訴とした控訴裁の特許請求の新しい解釈を否定した。
そして、前週の Teva Pharaceuticals とSandoz の特許紛争での判決で決まった控訴裁でのレビューの基準に基づき、再検討するよう控訴裁に差し戻した。


この審理が始まる予定であったこの日(8月24日)に和解が発表された。

Teva とSandozの特許紛争は下記の通り。

Tevaは多発性硬化症治療薬Copaxoneの特許権を有しており、Sandozがこの治療薬のジェネリック品を上市しようとしたため、TevaはSandozを特許権侵害で訴えた。これに対し、Sandozは 、クレームの記載用語が不明瞭であるとして、本特許の無効を主張した。

地裁は、当業者であれば十分理解することができると判断し、専門家からの証言を録ったのち、特許は有効であるとの判決を下した。

連邦巡回区控訴裁は、 審理を最初からやり直し、用語が不明瞭であるとして、地裁の判決を覆した。

2015年1月20日、米国最高裁はこの事 案で、地裁のクレーム解釈判決を控訴で再審理する際に使用すべき新基準を打ち立てる判決を下した。

これまでは、「de novo基準」(地裁判決を考慮せず、最初からやり直す)を使用していたが、今回、7対2の多数決で、再審においては地裁で判決の下された事実問題は「clear error基準」(明らかな誤りがない限り、地裁の判断を尊重する)を使用するべきであり、de novo 基準は、事実問題以外の法律問題などで使用すべきであるとした。

事件を総轄し、証言を実際に傾聴した地裁の判事は、証言はなく、弁論趣意書に基づいた代理人の議論だけが行われる控訴裁の判事に比べ、事実をより詳細に理解しているはずであるとしている。

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和解に当たって金銭の授受があるのかどうかについては明らかにされなかった。

クロスライセンスにより、両社はイソブタノールの全分野で全ての特許を使用できる。サブライセンスも可能

各分野で年間30百万ガロンまではロイヤリティなしで販売できるが、これを超えた場合、下記の通りロイヤリティを支払う。

分野 幹事会社

ロイヤリティ

支払 受取
On-roadのガソリンブレンド Butamax Gevo  Butamax
ジェット(Alcohol-to-jet) 燃料 Gevo Butamax  Gevo
船舶用ガソリンブレンド、卸パッケージ燃料、
パラキシレン
Butamax  Gevo
ケミカル イソブチレン Gevo Butamax
Off-road ガソリンブレンド、イソオクタン、
ディーゼル、溶剤
双方無し

幹事会社は必要な許可(EPA、ULその他)を取ったり、相手側の製品のこの分野での販売を手助けする。

イソブタノール製造・販売で全ての特許をクロスライセンスするが、両社とも独自のバイオ触媒やプロセス技術を持ち、これらは自由に第三者にライセンスできる。

両社とも発表分以外は情報を秘密とすることで合意した。


 

 

 

 


瑞海公司の爆発した当時の化学品の保管状況が明らかになった。

爆発後の写真(右)で見られるとおり、炭化カルシウムなどの置かれていた重箱区に爆発の大きな穴があいている。

付記 
「ダイヤモンド」誌は運抵庫に置かれたシアン化ナトリウム(河北誠信製の700トン)が原因ではないかとしている。
シアン化ナトリウムは化学反応を避けるため、単独で閉めきった危険物倉庫に置くべきなのに、野積みにし、露天に晒していた。

 


爆発前の工場の写真
 

 

天津市政府は8月25日、犠牲者の数を発表した。

死者:135人(うち、公安消防 21、天津港消防 60、警察 7)
行方不明:38人(うち、公安消防 3、天津港消防 20、警察 4)

入院:582人(うち、危篤 11、重症 25)、退院済み 216

 付記 8月30日現在

死者:150人(うち、公安消防 23、天津港消防 69、警察 10)
行方不明:23人(うち、公安消防 1、天津港消防 11、警察 1)

入院:367人(うち、危篤 5、重症 15)、退院済み 431

公安消防は正式には中国人民武装警察消防部隊で、隊員の身分は軍人で、兵役(2年間)として消防任務に就いている。
「消防新兵」と呼ばれる兵士で、十分な専門知識と経験に基づいた訓練を受けていないとされる。


中国の国有不動産 5社( 天津不動産集団有限公司、天津泰達投資持株有限公司、天津住宅建設発展集団有限公司、天津海泰持株集団有限公司、天津天宝持株有限公司)は 天津不動産企業社会責任連盟を結成し、爆発で損壊したアパートを買い取る。
地元当局が被害状況などを査定した上で「住民らの利益を損なわない形で」買い取り価格を決定するという。

 

付記

中国検察当局は8月27日までに、危険物取り扱いの許認可や安全検査を担う担当部局に職務の怠慢や職権乱用などがあったとして、同市交通運輸委員会トップら各部局の幹部計11人を拘束した。

 職務怠慢(監督を怠る)

天津市交通運輸委員 主任 武岱
(元)天津市交通運輸港口管理局 副局長 李志剛(退職)
天津市交通運輸委員會港口管理処 処 馮剛
天津市安全生産監督管理局 副局長 高懷友
濱海新安全生産監督管理局 局長 曹春波
濱海新企画&國土資源管理局 副局長 朱立明
天津税関 税関 新港税関 税関長 王家鵬
天津港(集團)有限公司 總裁 鄭慶躍
天津港(集團)有限公司 總裁助理  李洪峰
天津港(集團)有限公司 安監部副部長 鄭樹國

 職権乱用(条件を備えていないにもかかわらず危険物の取り扱い許可を与えた疑い)

交通運輸部水運局 副巡視員 王金文


付記  瑞海公司関係では下記の10名(舒錚を除く)が拘束されている。

瑞海公

出資

影のオーナー
名目 実際
会長 李亮 55% 55% 於學偉 元 Sinopec 天津分公司の副總經理瑞海公司創業者
副会長 曹海軍        
副会長 董社軒   45%    
CFO 宋齊        
社長 只峰        
安全担当副社長 尚慶森        
副社長 劉振國        
工場長 貝勝強        
李某某        
取締役 舒錚 45%      

 
    45%出資する副会長の董社軒
天津港公安局 元局長董培軍の子


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2015/8/14   天津で大規模爆発

2015/8/17   天津大爆発のその後

2015/8/21   天津爆発事故のその後 (2)




カナダの製薬大手 Valeant Pharmaceuticals International, Inc. は8月20日、「女性用バイアグラ」とも呼ばれる女性の性的欲求低下障害の治療薬 Addyi (一般名flibanserin) を手掛ける米製薬会社Sprout Pharmaceuticals, Inc. を買収することで合意したと発表した。

買収額は約10億ドル(借入金なしベース)で、契約締結時に5億ドル、2016年第1四半期に残り5億ドルを支払う。これに加え、今後の業績の一定割合を支払う。

Addyi (一般名flibanserin) は、閉経前女性の性欲低下障害(HSDD:Hypoactive Sexual Desire Disorder)に対する初の治療薬で、処方薬としての認可をFDAから8月18日に受けたばかり。10月中旬から先ず米国で販売する。今後、世界中での販売を目指す。

HSDDは、性欲の低下を特徴としており、いままで性欲が正常だった女性に発症し、性行動のタイプやパートナーに関係なく発症する。

FlibanserinはBoehringer Ingelheinが開発した。しかし、FDAから承認を得られず、2010年にSprout Pharmaceuticalsに権利を売却した。

FDAの諮問委員会は本年6月4日、女性の性欲向上に役立ち得るとして 賛成18、反対6で市販承認を促す判断を下し、FDAは8月18日に承認した。

買収完了後、Sprout はValeant の事業部となり、Sproutの現CEOはValeantに移り、この事業を担当する。

 

Sprout Pharmaceuticals は女性の HSDD 治療薬のみに注力している。

同社のCEOのCindy Whitehead は、FDA から最初に承認を受けた男性用の医療用テストステロン埋め込みペレット Testopel を販売するSlate Pharmaceuticals の共同創業者であったが、2011年にSlate Pharmaceuticalsからスピンアウトし("sprouted")、Sprout Pharmaceuticals を設立した。

その後、Slate Pharmaceuticals をActient Pharmaceuticals, LLCに売却した。

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Valeant Pharmaceuticals International は2014年、物言う株主William Ackmanが組んで米製薬会社Allergan の買収を目指したが。拒否された。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦

Valeant は本年2月22日、米同業Salix Pharmaceuticalsを借入金込みで145億ドルで買収することで合意したと発表した。
1株当たり158ドル、総額101億ドルの現金で全株を買い取る。

2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収    

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中国人民銀行は8月25日、追加の金融緩和を決めた。

8月26日に政策金利である銀行の貸し出しと預金の基準金利を0.25%引き下げる。
9月6日から預金準備率を0.5%引き下げる。

期間1年以上の定期預金の金利の上限規制を撤廃し、金利の自由化に向けた歩みを進める。

本年に入っての推移は下記の通り

  貸出
基準金利

預金基準金利

準備率
金利 上限 倍率
2015/1 5.60 2.75 3.300 1.2 20.0
2 5.60 2.75 3.300 1.2 19.5
3 5.35 2.50 3.250 1.3 19.5
4 5.35 2.50 3.250 1.3 18.5
5 5.10 2.25 3.375 1.5 18.5
6 4.85 2.00 3.000 1.5 18.5
7 4.85 2.00 3.000 1.5 18.5
8 4.65 1.80

廃止

18.5

9

   

18.0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











  

Lukoilは8月20日、カザフスタンのJVの Caspian Investments Resources Ltd.の50%持分をSinopecに売却する契約に調印した。売却額は10億8700万ドルで、カザフスタン政府からの認可は7月末に受けている。

Sinopec は残りの50%を2010年にインドの富豪Lakhshmi Mittal から購入しており、これで100%オーナーとなる。

実は両社は2014年4月に12億ドルでの売却で合意していた。

しかし直後から石油価格が下落し、約半値となった。このため、Sinopecは最終の契約を締結せず、Lukoil側は契約違反として調停にかけていた。

今回、値下げで最終合意に達したと見られる。

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Caspian Investments Resourcesはカザフスタンで5つの油田を開発している。

北西部のAktyubinsk RegionのAlibekmola と Kozhasai
カスピ海東岸のMangistau RegionのKarakuduk、North Buzachi、Arman

このうち、Alibekmola と Kozhasai はカザフスタン国営のKazMunayGas が50%、Caspian Investment Resources が50%出資するJVのТОО Kazakhoil Aktobeが運営している。1999年8月に25年の 採掘契約を締結した。

Caspian Investments の売却後も、LukoilはカザフスタンにTengiz、Karachaganak、Kumkol の3つの原油・ガス田を持ち、Caspian Pipeline Consortium の権益も有しており、ロシアの最大のカザフスタン進出企業である。

TengizのパートナーはChevron 50%、ExxonMobil 25%、KazMunayGas 20%、Lukoil 5%である。

2014年のカザフスタンでの生産は、石油が430万トン、ガスが15億m3となっている。

Kashagan 油田については 2013/9/14   カザフスタンのカシャガン油田、生産開始 

Caspian Pipeline Consortiumはカザフスタン最大の生産油田であるTengiz (及び途中のKashagan)と ロシアの黒海沿岸の積み出し港ノボロシスクとを結ぶ総延長1,580km、輸送能力2,800万トン/年の原油パイプライン(CPCパイプライン)を保有・運営するコンソーシアム。

 出資は下記の通り。

Transneft - 31%
Kazakhstan - 19%
Chevron Caspian Pipeline Consortium Co. - 15%
LukArco B.V. (Lukoil) - 12.5%
Mobil Caspian Pipeline Co. - 7.5%
Rosneft - Shell Caspian Ventures Ltd. - 7.5%
Agip International (N.A.) N.V. - 2%
Oryx Caspian Pipeline LLC - 1.75%
BG Overseas Holdings Ltd. - 2%
Kazakhstan Pipeline Ventures LLC (KazMunayGas / BP)- 1.75%

2001年3月に完工し、 2001年11月に正式に稼動を開始した。




 



日揮がサウジアラビアの国営石油会社 Saudi Aramco から同国北部 Turaif のシェールガス精製設備の第一期分を受注したことが8月20日に明らかになった。

Aramcoは2018年までに、日量2億立方フィートのシェールガスを生産する。
ガスはTuraifのWa'ad Al Shammal 計画(Ma'aden が開発している燐コンプレックス)の1000MWガス発電所の燃料として送られる。

2014年に日揮のほか、韓国のGSエンジニアリング建設、伊のMarie Tecnimont 及びカナダのSNC-Lavarin の4社が応札した。
当初は2014年11月末に決定予定(2016年12月完成)であったが、数回延期された。

第一期計画(通称 System A)は、シェールガスの坑口、パイプライン、精製設備建設を含み、能力は日量 66百万立方フィート(当初の50百万立方フィートから拡大された)。
契約金額は明らかでないが、2億ドル程度でないかとされる。

第二期分の System B 計画はこれの4倍で、同じ4社が応札している。

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Ma'aden は1997年にサウジの鉱物資源の開発のために政府100%出資で設立され、その後2008年に50%分が売却され、上場した。

当初は金鉱山の開発を行ったが、その後、燐、アルミ、工業用金属(マグネサイト、カオリン、低品質ボーキサイトなど)に事業を拡大した。

このうち、燐関係については2つの子会社を持つ。

1) Ma'aden Phosphate Company
         出資:Ma'aden 70%、SABIC 30%
         Al Jalamid 鉱山:粗鉱 年 1160万トン、コンセントレート 年500万トン(dry basis)
        
Ras Al Khair 工場:Al Jalamid から鉄道輸送したコンセントレートを加工
     生産:燐酸、硫酸、アンモニア、燐酸二安肥料(DAP:年産300万トン)、
      コジェネ、海水脱塩   

2) Wa'ad Al Shamal Project (建設中)
    設立:2012年承認  
        出資:Ma'aden  60%、
米国肥料最大手 Mosaic 25%、SABIC 15%
   Umm Wual 鉱山:Turaifの40km北東
   Wa'ad Al Shamal(Turaif)工場
    生産:コンセントレート、硫酸、燐酸、飼料用燐酸1カルシウム・
燐酸2カルシウム
      食品用精製燐酸、トリポリ燐酸ソーダ、

  他に、東部の Ras Al Khairにアンモニア・燐酸ベースの肥料工場を計画

Wa'ad Al Shamal Projectは2018年から、採掘及び発電用に日量 2億立方フィートのガスを引き取る計画。

 


Wa'ad Al Shamal Project はTuraif に人口10万人の都市と燐鉱山・化学を中心とする産業コンプレックスをつくる計画で、Bechtel がMa'adenに協力している。

 


2014年2月に下記の建設契約が締結された。

相手先 建設計画
SNC Lavalin (カナダ)/ Sinopec 硫酸工場
中国寰球工程  鉱石選鉱設備
Hanwha Engineering & Construction 燐酸工場(年産150万トン)
韓国企業 アンモニア工場
スペイン企業 燐酸肥料工場


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サウジは世界で5番目の天然ガスの貯蔵量を持つが、主に発電用の需要量は2030年には2011年から倍増する。このため、シェールガスの調査を行ってきた。

Aramcoは、北西部のAl Jalamid地区、東部のSouth Ghawar地区、南部の Rub'a al-Khali (Empty Quarter) の3地区でシェールガスの探査を行ってきた。

政府は、2016年のシェールガス生産量を日量 20~50百万立方フィートとし、2018年には5億立方フィート、最終的には40億立方フィートと推定している。

石油相は、サウジは有望なシェールガスを発見しており、採掘のための技術も妥当な価格で取得済みであるとしている。

石油相は2015年5月に、Aramcoが、建設中のWa'ad Al Shammal 計画の発電所用にシェールガスの供給を行うことを明らかにした。





山東省淄博市桓台県果里鎮東付村の化学会社・山東潤興化工科技の工場で8月22日午後8時50分ごろ、大規模な爆発があり、火災が発生した。

 



9人が負傷して病院に搬送されたが、その後、工場従業員1人が死亡した。

山東潤興化工科技は、山東潤興投資集團の100%子会社で、
自社で技術開発したアジポニトリル(年産10万トンの3系列)とヘキサメチレンジイソシアネート(年産10万トン)のプラントを建設している。

アジポニトリルの第1期10万トンは昨年完成し、本年5月15日に竣工式を挙げた。

アジポニトリル→ヘキサメチレンジアミン(HAD)→ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)

ヘキサメチレンジアミンはナイロン6.6.の原料にもなる。

アジポニトリルが爆発の原因とみられる。アジポニトリルは加熱や燃焼により分解し、きわめて有毒なシアン化水素(青酸)を発生する。

工場から最も近い住宅は1キロ以内にあり窓ガラスが割れたほか、5キロ離れた場所でも揺れが感じられたという。消防車20台と消防隊員140人が現場に急行した。

空中に浮遊物が漂っているとの情報もあり、警察は現場に通じる道路を封鎖し、工場から半径1キロの範囲に住む人たちが避難している。


 
同じ山東潤興投資集團の子会社の山東省濱州市の山東海明化工では2015年3月18日に過酸化水素の爆発事故があり、4人が死亡、2人が負傷した。


山東潤興投資集團は化学、不動産、家具を扱う。

山東海明化工はアゾ染料のトップメーカーと自称している。青島潤興光電材料は、ポリウレタン、液晶材料、医薬中間体を扱っている。

8月20日は世界モスキート・デーであった。

マラリアはマラリア原虫に感染したハマダラ蚊に刺されることにより人に感染する病気で、世界で毎年約2億人が発症し、約58万人が亡くなっていると言われている。

1897年8月20日にイギリスの医学者であるRonald Ross(1857~1932)が、ハマダラカ蚊の胃の中からマラリアの原虫を発見した。
これを記念して、8月20日はWorld Mosquito Day と呼ばれている。

Ronald Rossはこの発見により1902年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1911年にナイトに叙勲された。

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次のような経緯がある。

マラリアの語源は "mala aria" で「悪い空気」を意味し、水はけが悪い地域の毒気に当てられた、と考えられていた。


フランスの Alphonse Laveran (1845~1922) は、ストラスブルグ大学で医学を学び、アルジェにいた時マラリアの研究を始めた。

1880年11月、コンスタンチンの陸軍病院においてマラリア患者の血液を検査し、赤血球内にある小体が色素を含有して運動するのを見つけ,また赤血球外に飛び出しては鞭毛を出し、活発に運動するものを発見した。
マラリア原虫のプラスモジウスであった。

この発見でフランス科学アカデミーの名誉会員になり、後にコルシカ島に行きマラリアの撲減を計画し,蚊の絶減と湿地の治水を実行して効果を挙げた。

1907年にマラリア原虫を発見した功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 

Patrick Manson (1822-1922) は、蚊によるマラリア媒介説を提唱した。

Mansonは、フィラリアの寄生によるフィラリア症の研究を行った。
フィラリアは人体内においては発育し得ないことを見つけ、中間宿主の体内においてのみ発育し、ヒトに移ると推定し、蚊に注目した。

1877年に、蚊の胃においてフィラリアが袋を破り、脱皮して胃壁をとおり抜けて筋肉に入り、ここで成長する事実を発見した。

Mansonはフィラリア研究より推論して、マラリアも中間宿主があって人に伝染するもので、恐らく一種の蚊が伝染の仲介者であろうと考え、1894年にマラリア・蚊媒介説を発表した。

 

Ronald Ross は、インドで生まれ、英国に帰って教育を受け、India Medical Service の試験に合格し、インドに渡った。

マドラスで多数のマラリア患者の血液を検査したが、原虫プラスモジウスを発見することができなかった。

ロンドンでMansonの研究室を訪ねた際に、Mansonはマラリア・蚊媒介説を説明し、この分野の研究を行なうことを勧めた。

Rossは1895年にインドで研究を開始、1897年にマラリア患者がRossの知らない種類の蚊(ハマダラ蚊)を示した。
Rossはこの蚊に患者の血液を吸わせ、毎日その蚊の胃を検査した。
その結果、1匹の蚊の胃壁に小球体を発見し、この小球体は蚊が患者の血液を吸って、4日後に発生することがわかり、またこの小球体が発育することを知った。

Ross はノーベル賞を受賞したが、Rossにマラリア・蚊媒介説を伝え、研究を指導したManson は受賞していない。

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住友化学は世界モスキート・デーの8月20日、マラリア対策向け新規殺虫成分の現地試験を開始すると発表した。
 (英文発表は住友化学と下記のIVCCの共同発表)

非営利団体 IVCC蚊が媒介する疾病の感染を減らすことなどを目的として、2005年にBill & Melinda Gates Foundationの支援を受けて設立)と共同で、マラリアなどの感染症を媒介する蚊を駆除する新たな殺虫成分のアフリカでの現地試験を開始する。

開発品は従来のマラリア対策用の殺虫成分と異なる作用機作を持っており、既存の殺虫剤に抵抗性をもつ蚊に対する効果や安全性について、研究室レベルですでに確認されている。

これまで、住友化学の「オリセット®ネット」をはじめとする長期残効型防虫処理蚊帳や、室内残効性スプレーが普及することで、罹患率は大きく低下してきた が、一部地域では、既存殺虫剤に抵抗性をもつ蚊の発生が確認されている。

開発中の新規殺虫成分は、こうした抵抗性問題の解決につながることが期待される。






天津の爆発事故を受け、市トップの黄興国・共産党委員会書記代理兼市長が8月19日、事故後初めて市内で記者会見し 「天津市の党委と政府の主要な責任者として私には今回の事故に対して逃れられない責任がある」と述べ、責任を取る意向を表明した。
黄市長は、習近平国家主席に近い指導者として知られる。

中国共産党中央規律検査委員会は8月18日、天津市の爆発事故現場で事故対応を指揮していた楊棟梁・国家安全生産監督管理総局長(閣僚級)を「重大な規律・法律違反の疑い」で調べていると発表した。
楊氏は天津市で国営化学メーカーや市経済分野の幹部を歴任し、2001~2012年の間、天津市副市長を務めた。

中国メディアは瑞海国際物流の董事長ら10人が拘束されたと報じた。ずさんな管理体制や贈収賄などについて調べている模様。

爆発現場の南約800メートルにマンションが立ち並び、数千人が暮らしていたが、壊滅的な被害を受けた。

中国の法律は、周囲1キロの範囲に住宅などがある場所に危険化学物質の貯蔵施設を造ることを禁じているが、人民日報によると、近くのマンション群が完成した後の2013年に爆発が起きた貯蔵施設の建設許可が出ていた。

地元では貯蔵施設の管理会社の幹部が天津市の幹部の親類だったといったうわさも繰り返し流れてい たが、同社の株の45%の所有者・董社軒が天津港公安局の元局長の息子であることが分かった。会長が55%を保有する。

この董社軒が新華社のインタビューで、「警察や消防当局とコネがある。私が彼らに資料を渡せば、すぐに認可をくれた」と話したという。 贈賄の事実には触れなかったという。 

付記  
会長は李亮で55%株主とされるが、実際の55%株主は創業者の於學偉于学伟)で、元 Sinopec 天津分公司副總經理

また、爆発した倉庫には許可量を大幅に上回る猛毒の化学物質があったことが分かっている。

天津市当局は、損壊した周辺の住居を買い取ったり、修繕したりする方針を明らかにした。破損程度を当局が査定する。

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天津市は8月19日、現場に残る化学物質について、硝酸アンモニウムや硝酸カリウムなどの酸化物が約1300トン、ナトリウムやマグネシウムなどの可燃性の高い物質が約500トン、シアン化ナトリウムなどの毒物が約700トンあると明らかにした。

国営中央テレビは17日、爆発現場の空気中から高濃度の有毒な神経ガスが検出されたと伝えた。李興華副参謀長は「シアン化ナトリウムと神経ガスという二つの有毒物質の値が最高値に達した」と述べたという。

しかし、天津市環境保護局長は、「そのような物質は検出されていない」と否定した。

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新交通システム津浜軽軌の東海路駅(終点)の駅舎とコントロールセンターは爆発で大きく損傷した 。イオンの近くの会展中心駅や隣の市民広場駅の駅舎も大きな損傷を受けた。
このため、8月13日から全線は運営停止になった。

周辺3キロが立ち入り禁止となっている。

中国天津市トップの黄興国・同市共産党委員会書記代理は19日の記者会見で、天津の大規模爆発で生産停止に追い込まれるなどして影響を受けた企業は176社に上ると明らかにした。
損害額はまだ分からないという。

トヨタ自動車は8月19日、現地合弁会社の天津一気豊田自動車の泰達工場と西青工場の生産停止を8月23日まで続けることを明らかにした。
24日以降に稼働を再開するかどうかも未定という。

同社は夏期休業(8月9日~16日)明けの生産を8月17日から始める予定になっていたが、避難勧告が出されたため、19日までの3日間を操業停止と していた。

天津一汽トヨタは中国における主力生産拠点の1つで、小型車「カローラ」などを生産しており、2014年の生産実績は44万台。

泰達工場は爆発現場から約2キロほどしか離れておらず、爆発により窓ガラスが割れるなどの被害があった。3キロ以内は現在、立ち入り禁止となっている。
西青工場は約70キロと離れているが、泰達工場からの部品供給が滞るため、同様に稼働を停止していた。

部品供給が滞っているため、長春西工場(吉林省長春市)も20~21日に休止する。

トヨタは完成車や部品受け入れのための代替の港を探す準備を進めている。 トヨタは2工場の操業停止を再延長し、週明けの24~26日の3日間も続けると発表した。また、爆風の被害に遭った出荷待ちの新車が約4700台に及んだことも明らかにした。

付記

トヨタは2工場の操業停止を再延長し、週明けの24~26日の3日間も続けると発表した。また、爆風の被害に遭った出荷待ちの新車が約4700台に及んだことも明らかにした。

天津港は中国の主要な自動車の荷揚げ港の一つで、2014年の日本などからの輸入台数は約50万台と、中国全体の約4割を取り扱っているとされる。

ルノーの中国の合弁会社は港の倉庫に保管していた輸入車 1500台近くが焼けたり壊れたりする被害に遭ったとしてい る。
フォルクスワーゲンと現代自動車も、倉庫などに保管していた輸入車が被害を受けたことを認めている。
地元の自動車輸入販売会社「国機自動車」は当時、現場近くの倉庫に日本円で580億円余りに相当する6500台余りの輸入車を保管していたことを発表した。
被害は不明。

富士重工業は中国に生産工場を持っておらず、現地で販売する車両はすべて日本から輸出している。
天津港は2014年度に中国向けに輸出した約51千台のうち4割超を取り扱った最大の拠点となっているが、事故現場から約2キロ離れた物流拠点に保管していた新車百数十台が被害を受けた。

同社は8月19日、華北部向け輸出車の荷揚げを天津港から上海港へ一時的に変更する方針を明らかにした。8月20日に日本を出港する予定の輸送分から上海港に荷揚げ先を切り替える方向で最終調整している。

三菱自動車もスポーツタイプ多目的車(SUV)約600台の被害があった模様だが、「現場に立ち入れないので確認ができない」という。
同社は中国への輸出車の陸揚げを上海や大連などほかの港に切り替えることを決めた。

 

天津でカーナビなどを生産している富士通テンは製品を陸路で別の港まで搬送し出荷できないか検討している。  

大塚製薬は現場からおよそ4キロ離れたスポーツドリンクの工場で、窓ガラスが割れるなどの被害が出たため、14日から操業を停止していて、再開のめどは立っていないとしている。

イオンは爆発現場からおよそ2キロの場所にモールがあるが、周辺の立ち入りが規制されて被害の状況などが確認できず、営業再開のめどは立っていない 。

三越伊勢丹は
客入りが鈍いため閉店時間を3時間繰り上げている。

Hewlett-Packardは被害が比較的大きく、正常化の目途は立っていない。
 

三井化学(7月から三井化学SKCポリウレタンが85.1%出資する天津天寰ポリウレタンは 北東の漢沽区で通常通り操業している 。
しかし、トヨタ向けの自動車座席の素材を製造していることから、「トヨタの生産停止が長引けば影響が出る可能性がある」という。

2009年9月に天津市の市轄区のうちの渤海海岸に面した塘沽 区(TangGu)、漢沽区(Hangu)、大港区(Dagang)が合併し、浜海新区が設置された。

爆発が起こったのは塘沽区。
天津天寰ポリウレタン漢沽区にあり、Sinopec天津とSinopec SABIC天津石油化学は南の
大港区にある。

 

環境相は8月14日、中部電力が愛知県武豊町で2022年の運転開始を目指す大型石炭火力発電所(出力107万kw)について、環境影響評価(アセスメント)法に基づき「現段階では是認できない」とする意見書を経済産業相に提出した。

環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kw以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境相は、提出された計画段階環境配慮書について、経産相からの照会に対して意見を言うことができるとされており、この手続きに沿うもの。

電気事業連合会など電力業界が2015年7月に「電気事業における低炭素社会実行計画」で公表した二酸化炭素(CO2)削減目標は実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

環境相は6月12日、山口宇部パワー㈱が宇部興産の構内で石炭を燃料とする総出力120万kWの火力発電所を新設する「西沖の山発電所(仮称)」について、「現段階において是認しがたい」との意見書を経産相に提出した。

2013年4月に関係閣僚会合で承認された「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」では、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む枠組の存在が不可欠であるが、この時点において、枠組は構築されておらず、エネルギーミックスに基づく約束草案政府原案の達成に支障を及ぼす懸念があるとした。

2015年7月に「枠組」は発表されたが、環境省は今回、これの実効性が不十分とした。

今後、経産相から事業者である中部電力に対して、環境相意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

電力業界の目標を環境省が容認しない状況が続けば、今後の手続きでも反対意見が出て経産省が建設を許可しない可能性もある。

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東京電力による2012年度電力卸供給入札で、石炭火力の落札の可能性が出た。

石炭火力は安定供給・経済性に資するが、環境面に課題があることから、2013年4月25日、経済産業省と環境省は国の目標・計画と整合を取るため、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」を行い、関係閣僚会合で承認された。

・今後作成する国の温室効果ガス排出削減目標と整合的な形で電力業界全体の実効性ある取組の確保が必要。

・ 国は、下記の観点により必要かつ合理的な範囲で審査していく。
  (1) BAT(Best Available Technology)

  (2) 国の目標・計画との整合性

http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130426003/20130426003-3.pdf

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計画中の主な石炭火力発電所は下記のとおり。

立地 事業者 石炭火力計画 備考
愛知県武豊町 中部電力 5号機 107万kW
着工予定:2018年度
営業運転開始予定:2021年度
原油・重油燃焼の1号機は老朽化し、停止済み
同2号機~4号機(各37.5万kw)を2015年に停止、全機を撤去し、5号機を新設
山口県宇部市
西沖の山
(宇部興産所有地)
山口宇部パワー 120万kw(60万kw x 2基)
運転開始 2020年代前半
電源開発 45%、大阪ガス 45%、宇部興産 10%
 
秋田市 関西電力/丸紅 130万kW (65万x 2) 2020年代半ば
袖ケ浦市
出光の貯炭場に隣接
九州電力/出光興産/
東京ガス
均等出資
max 200万kW 2020年代半ば
千葉
(JFE製鉄所内)
中国電力/JFE/東京ガス 100万kW  


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政府は7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

政府は目標の検討にあたり、2030年時点の再生可能エネルギー比率を22〜24%、原発を20〜22%と決め、2013年比で排出量を21.9%削減できるとした。

  2010年度 2030年度
再生エネルギー(含水力) 9.6% 22~24%
原子力 28.6% 20~22%
LNG 29.3% 27%
石炭 25.0% 26%
石油 7.5% 3%
 
 
 
 
 
再生エネルギー内訳
安定 水力 8.8~9.2%
バイオマス 3.7~4.0%
地熱 1.0~1.1%
不安定 太陽光 7.0%
風力 1.7%


さらに代替フロン類削減などで1.5%減、森林整備などによるCO2吸収分2.6%を上乗せし、計26%削減を目指す。

    2015/6/4   エネルギーミックス最終案   


電気事業連合会加盟10 社、電源開発、日本原子力発電および新電力有志 23社は、2015年7月17日、低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組みを構築するとともに、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定したと発表した。

   http://www.fepc.or.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2015/07/17/20150717_CO2.pdf

内容は下記のとおりで、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすというもの。

2030年度に排出係数 0.37kg-CO2 / kWh 程度(使用端)を目指す。

 2030年度CO2排出量(3.6億トン-CO2) / 同年度の電力需要想定(9.808億kWh) = 0.37kg-CO2/kWh
 
  2013年度比 ▲35%程度相当と試算
 

火力発電所の新設等にあたり、BAT(Best Available Technology) を活用すること等により、最大削減ポテンシャルとして約1,100万トン-CO2の排出削減を見込む。

 設定根拠

参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集する。

・安全確保を大前提とした原子力発電の活用

・再生エネルギーの活用

・火力発電の高効率化に努める。

・電力小売分野での省エネ・省CO2サービスの提供


参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集するというだけで、具体的な「実行計画」はない。

今回、環境省は、このCO2削減目標は(1)石炭火力のCO2排出量をどう減らすか(2)CO2排出が目標通りに収まらない場合どう対応するか−−が明確でないと判断、実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

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オバマ米大統領は8月3日、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出に対する規制強化を正式に発表した。
新規制では、火力発電からのCO2排出量を2030年までに2005年比32%削減することを目指す。

米国政府はすでに、温暖化ガス排出量を2025年までに2005年比で26~28%削減する計画を提出しており、今回発表した火力発電への規制強化により目標達成を後押しする。

EPAは2013年9月20日、新設の石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案を発表した。

それによると、新設の石炭火力発電所は1メガワット時あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を1100ポンド(500キロ)までに制限される。
これは、近代的な石炭火力発電所の大半での排出量より700ポンドも少ない。

この基準を達成するためには、CO2が大気に放出される前に回収する二酸化炭素回収貯留(CCS) という最新技術を使うしか方法がない。

2015/8/7 オバマ政権、火力発電のCO2排出規制を強化
 

石炭火力は、最新型であってもCO2排出量が天然ガス火力の2倍以上とされ、欧米各国は事実上、新設を不可能にする規制を導入しつつある。

日本が大量の石炭火力発電の増強を進めれば、温暖化対策に逆行するとして、国際的な批判にされるのは必至である。




ロッテホールディングスは8月17日午前、帝国ホテルで臨時株主総会を開き、創業者の次男の重光昭夫副会長を中心とした体制で経営を続けると確認し 、およそ15分で終了した。

これにより、事実上、韓国と日本ロッテの「ワントップ体制」が固まった。


これまでの経緯  2015/8/1   ロッテの内紛

総会には、経営陣の1人として次男の昭夫副会長が、また、株主として長男の宏之氏が出席した。創業者の武雄名誉会長は欠席した。

会社が提案した議題は次の2つで、いずれも承認された。

 1)コーポレートガバナンスに関する方針の確認

重光昭夫副会長を中心とする現在の経営陣が、安定的な経営体制を確立してコーポレートガバナンス・企業統治を向上させるとともに、透明性の高い経営を徹底することを希望する。

 2)社外取締役の選任

元参議院議員で、帝京大学の教授を務める弁護士の佐々木知子氏を創業以来、初めてとなる社外取締役として選任する。

役員や社員持ち株会が昭夫副会長を支持したとみられる。

創業者一族が対立している問題で、 盧柄容・ロッテ物産社長ら韓国ロッテグループ系列37社の社長は8月4日、ソウルで会議を行った後、「ロッテを率いるリーダーとして、長年にわたり経営能力の検証を受け、成果を出してきた辛東彬会長(昭夫氏)が適任だ」とする声明を発表した。
 「ロッテグループは特定の個人や家族の専有物ではなく、顧客、株主、協力会社、18万人に上る社員と共に歩む企業だ」とも強調した。
 
 ロッテHDの佃孝之社長も同日、東京で韓国メディアとの懇談会を開き、昭夫氏支持を明確にした。

重光宏之氏は以前、ロッテHDの株主総会で取締役の入れ替えを提案するとしていたが、1)の結果を受けてか、提案しなかった模様。

宏之氏は2件の議案に賛成しなかったとし、「父の委任状を持って株主総会に出席し、父も2つの議案に賛成しなかった」と述べた。
「私は株主の権利を持っている。今後経営陣の交代に向け株主総会の招集を求めることも考えていきたい」としている。

昭夫氏は総会の後、「佐々木氏の就任を機に開かれた経営をよりいっそう加速する」とのコメントを出した。

昭夫氏は8月11日の韓国での記者会見で、支配構造改善タスクフォースと企業文化改善委員会の発足を約束した。
タスクフォースは循環出資の解消、持ち株会社体制への転換とそれに伴う実務作業を担う。委員会はこれまで問題視されてきた「軍隊式組織文化」を変えることも重視する。

付記 ロッテの「韓国企業化」を図るため、ホテルロッテの上場を準備している。


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今回の騒動で、韓国ロッテの持ち株会社に当たるホテルロッテの株は日本側がほとんどを握っていることが初めて明らかになり、韓国内で大騒動となっている。

韓国紙は、「韓国で稼いだカネを日本に持っていく」 などと報じている。

長男の宏之氏が記者会見を日本語でおこなったことも問題視された。

ホテルロッテの株は、日本のロッテHDが19.07%、総括会長が代表である日本の複数の「L投資会社」が72.65%、光潤社が5.45%保有するとされる。 

昭夫副会長は11日の記者会見で、「日本のロッテHDの株式は光潤社、社員持ち株会、役員が3分の1ずつ保有している」と説明した。

諸情報から、ロッテの株主と出資比率は下記の通りとみられる。

総括会長が代表を務める資産管理会社「光潤社」が27.65%
社員持ち株会が32%超
残りを武雄名誉会長、長男宏之氏、次男の昭夫副会長(いずれも数%ずつ?、昭夫副会長は1.4%)や長女・辛英子氏、親族、役員など。

「光潤社」の株は総括会長が3%、兄弟が 29%ずつ保有するとされるが、今回の事態を受け、自社株 12%を昭夫氏が譲り受けることにしたとの報道もある。

「L投資会社」については下記の点を明らかにした。

韓国のロッテホテルは1972年から完成まで10億ドルという多額の資金が投資された。
日本のロッテ系列企業多数が共同で出資し、8株主になっている。

2000年代に入り、出資元の企業が事業部門と投資部門を分割した結果、L投資会社が設立された。
12社あるL投資会社はホテルロッテの株式72.65%を保有している。

聯合ニュースによると、7月31日付で昭夫氏が L投資会社12社すべての代表取締役として登記されたことが分かったという。


韓国の現行法によると、ロッテのように相互出資が制限されている企業集団は非上場会社であっても筆頭株主の株式保有状況や役員の構成などを公示することになっているが、外国企業にはこの義務が適用されない。

しかし、韓国公取委は8月に入り、韓国ロッテグループの支配構造の頂点にあるロッテHDと光潤社が日本企業で、筆頭株主や株主構成などが公表されていないため混乱が深まっているとして、韓国ロッテを所有している日本のロッテHDと光潤社 、L投資会社の筆頭株主や出資構造などを把握する方針を固めた。
「方法を模索している」としている。

外国企業が韓国の相互出資制限企業集団(資産規模2兆ウォン:約2124億円以上)を保有している場合、その企業の所有構造を把握できるようにしたい考え。


韓国の崔ギョン煥経済副首相兼企画財政部長官は8月6日、必要に応じて同グループの不透明な支配構造や資金の流れを厳しく調査する方針を示した。

「資産規模で韓国第5位のグループであるロッテが、常識的に理解できない経営権争いを繰り広げていることに、非常に失望している」と述べた。ロッテは争いをやめて不透明な支配構造の改善に努めるべきだとし、「そうしなければ市場が相応の対応を取るだろう」と強調した。

 




ミャンマーの3つの経済特区(北部で中国が開発するチャウピー、日本が担当するヤンゴン南部のティワラ、タイが担当する南部のダウェー)のうち、遅れていたダウェーの開発がようやく動き出す。

初期開発段階で日鉄住金物産のタイ企業とのJVが参加する。

Dawei SEZは2008年にミャンマーとタイの両国が開発で合意した。

2010年にタイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) が250平方キロの土地について60年間の事業権利と75年間の租借権を得て、開発に着手した。
しかし、実際は1社では開発資金をまかないきれず、地元住民の移転や周辺土地と一部道路の整備程度しか進んでいない。

2012年7月のタイのインラック首相とテイン・セイン大統領との会談で、Dawei 開発の仕切り直しが行われ、両国政府が協力して進めることで合意、土地の開発権と租借権がItalian-Thai Development からDawai 開発の特別目的事業体(SPV)に移管された。

Dawei SEZの開発面積はThilawa SEZの10倍あり、港湾や発電所などのインフラ整備だけで1兆円とされる。

このため、タイ政府とミャンマー政府は日本にも参加を要請した。
但し、
両国はあくまでThilawa SEZ 優先ということで合意している。

2013/5/29 ミャンマーの経済特区 

安倍首相は2014年11月、ASEAN関連首脳会議へ出席のため訪問中のミャンマーの新首都ネーピードーでテイン・セイン大統領と会談を行った。

テイン・セイン大統領から、これまでの官民を挙げてのティラワ経済特区の開発支援に対する感謝表明があり、安倍総理から総額260億円の円借款3件の供与を決定したこと、これも活用して、中小企業向け金融、配電網、ティラワ港などの整備に協力したい旨述べた。

両首脳は、ダウェー開発についても今後、日本、ミャンマー、タイの3カ国間で協議していくことで一致した。

ティラワ経済特区の状況(2015/5) については下記参照
 http://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/mm/sez/pdf/thilawa_sez_7.pdf

2015年7月4日、東京で第7回日本・メコン地域諸国首脳会議が開催された。
これを機に同日、日本、ミャンマー及びタイの間で、ダウェー開発にあらたに日本が参加することについて覚書が署名された。
ミャンマーの情報相によると年内にも覚書に基づく開発が開始される。

覚書は「出資」「技術連携」「幹線道路建設」「環境・社会への配慮」など6章で構成され、出資については、ミャンマーとタイが設立した特別目的事業体(SPV)に、3カ国が均等出資する形で日本が参画の意図を表明。前提となるSPVの枠組み合意や株主合意の修正も進める。
開発を「初期開発事業」と「本格開発事業」に区別し、各段階でSPVの機能を明確化し、SPVの権限、ガバナンスを強化することでも一致した。

技術連携では、3年以内に本格開発に必要な技術的検討、設計・開発計画を策定し、既存マスタープランを精緻化させる。
日本政府は技術協力の意図を表明、SPVを支援し、プロジェクトを提案するためJICAの専門家を派遣する。

幹線道路建設では、日本政府は新規幹線道路の建設のあり方を探るプレFSを早期に実施すると表明した。

三井物産や伊藤忠商事が同特区開発への参画を検討、新日鉄住金やトヨタ自動車も関心を寄せている。

 

ミャンマー政府とタイ政府は8月5日、ダウェー経済特区の開発で、2年前に権利を取り上げたタイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) を含むコンソーシアムと初期開発権契約を締結した。

コンソーシアムは2015年2月に、この事業のため、MyanDawei Industrial Estate Holding を設立した。
コンソーシアムのメンバーは下記の通り。

・Italian-Thai Development Corporation(ITD) タイの大手建設会社

Rojana Industrial Park Public Co., Ltd.  :タイの工業団地の造成・分譲・運営会社

1988年5月にVinichbutr's Group(タイ)と住金物産(現 日鉄住金物産)のJVとして設立された。
現在はタイで上場しており、Vinichbutr's Groupが31%、日鉄住金物産が21%の出資となっている。

LNG Plus International Company Limitedタイのエネルギー会社

初期計画のうちのLNG受入基地の建設は、LNG Plus International が実施する。

ITDによると、初期開発の総開発費は17億ドルで、敷地面積が27平方キロメートルの工業団地や発電所などを整備する。
第一段階として、小規模港湾、火力発電所、タイへの2レーンの道路、LNG受入基地、居住地、電話線、労働集約産業の団地などを整備する。

世界銀行からの5億ドルの融資や、ミャンマー政府、タイの地場銀行からの融資で開発を行う。

初期開発段階では衣料品や食品加工のような労働集約産業の団地を整備するが、長期計画では自動車、鉄鋼、電子電器、ゴム、化学品、石油精製、肥料、プラスチック、医薬品などの誘致を考えている。

ーーー

住金物産(現 日鉄住金物産)はタイ国において長年に亘り、現地パートナーと合弁で工業団地の造成・分譲・運営 (Rojana Industrial Park Public Co., Ltd.)や天然ガス焚きによる発電事業(Rojana Power Co., Ltd.)を行い、同国におけるインフラ事業を推進してきた。

Rojana Powerは、Rojana Industrial Park 41%、KPICネザーランド(関電グループ) 39%、住金物産 20% の出資で、ロジャナ工業団地内に併設され、1999年の運転開始以来、天然ガス焚き発電を行い、タイ電力公社(EGAT)に電力を安定して卸販売するとともに、ロジャナ工業団地に入居する企業に電力と蒸気を販売して いる。




天津市は8月16日、死者数が112人になったと報じた。 更に95人が行方不明で、このうち85名が消防関係者とのこと。
病院で手当てを受けた人は720人以上に上っている。

既報 2015/8/14 天津で大規模爆発

爆発に巻き込まれた消防士は、最初に受けた通報では「コンテナから出火」という内容で、何が燃えているのか理解しておらず、「消火作業を始めて約20分後に突然、爆発が起きた」と証言している。現場に行った警官も何が燃えているのか知らされていなかったと明かしている。
水に触れると可燃性ガスのアセチレンが発生する恐れがある炭化カルシウムを保管しており、放水が爆発を誘った可能性がある。

付記

軍関係者、倉庫にあった金属ナトリウムに放水したことが爆発につながったとの見方を示した。
倉庫にはほかに、シアン化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなど約40種類が保管されていた。

中国メディアは瑞海国際物流の董事長ら10人が拘束されたと報じた。ずさんな管理体制や贈収賄などについて調べている模様。

中国共産党中央規律検査委員会は8月18日、国家安全生産監督管理総局トップの楊棟梁局長(閣僚級)について、重大な規律違反と違法行為で調査していると発表した。
楊氏は、中央政府で天津市の爆発事故を統括する立場にあるほか、2012年まで天津市常務副市長を務めており、何らかの関係がある可能性もある。 

現場に多量のシアン化ナトリウムが確認されたため、8月15日に急遽、現場周辺 1km前後だった立ち入り禁止区域を周辺 3kmに拡大した。
一部中国メディアは保管されていたシアン化ナトリウムが700トンに上り、下水道から基準値を超えるシアン化合物が検出されたと伝えた。

港に通じる道路の通行止めが続くなど、復旧のめどがたっていない。



事故現場付近には、トヨタ自動車を中心に多くの日系自動車関連企業が進出している。
天津一汽豊田汽車や豊田通商、松下汽車電子開発やイオン永旺夢のモールなどは 3km 範囲にある。

 トヨタ自動車は夏期休業 (8月9日~16日)明けの生産を8月17日から始める予定になっていたが、避難勧告が出されたため、19日までの3日間を操業停止とすることを決めた。
イオンは営業できない状況になっており、今のところ再開のめどは立っていない。

爆発の影響で、現場近くでは数千台の輸入車などが破損した。

爆発前(Google Earth)

北側から   爆発で巨大な穴が出来ている。 自動車置き場の後方に高層マンション群。


税関業務も止まり、荷揚げが中断している。
天津港は大連や上海、香港などと並ぶ中国有数の輸出入の拠点で、港湾機能の停止が長引けば、中国の輸出不振に追い打ちをかける懸念もある。


爆発現場の南約800メートルにマンションが立ち並び、数千人が暮らしていたが、壊滅的な被害を受けた。

中国の法律は、周囲1キロの範囲に住宅などがある場所に危険化学物質の貯蔵施設を造ることを禁じているが、人民日報によると、近くのマンション群が完成した後の2013年に爆発が起きた貯蔵施設の建設許可が出ていた。

地元では貯蔵施設の管理会社の幹部が天津市の幹部の親類だったといったうわさも繰り返し流れている。

 

 

 

イラク北部のクルド自治政府が中央政府との合意に反して、独自に石油輸出を始めた。

中央政府とクルド自治政府は2014年12月2日、対立の原因だった石油輸出問題で合意、キルクーク油田などで産出された石油に関して自治政府が中央政府を通して輸出し、中央政府が必要な予算を配分することになっていた。

ーーー

イラクでは中央政府とクルド自治政府が石油開発を巡って争ってきた。

中央政府は、自治政府と外国企業の油田開発契約を違法とし、参加した外国企業を中央政府との開発交渉から除外した。

イラク政府は第1回油田開発入札資格審査で韓国石油公社やSKエナジーを排除、オーストリアのOMVに対しても石油輸出の停止処分を行なった。
ExxonMobil に対しても警告した。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

しかし、その後もクルド地区での石油開発は続いている。

2012/8/14  イラク・クルド自治区の石油開発の状況

クルド地区の利点は、石油をトルコを通る既存パイプラインを使って、トルコの地中海岸の積み出し港ジェイハンにまで運び、そこから輸出できることである。

イラク政府は、自治政府が独自に石油を開発することを認めず、また、石油を直接輸出することを認めていない。

中央政府が認めた場合は輸出は認められており、2009年6月にはノルウェーのDNO International が開発するTawke油田、カナダのAddax Petroleumなどの企業連合が開発するTaq Taq 油田から、中央政府が管理する既存パイプラインを使ってトルコの地中海岸の積み出し港ジェイハンに運び、そこから輸出された。

原油の販売はイラク石油省傘下の国営石油会社(SOMO)が担当し、中央政府が収入の71%、クルド政府が17%を受け取り、残りを外国石油会社が受け取るもの。

2009/6/9 イラクのクルド自治区の原油輸出開始 

2014年6月、イラク政府は、クルド人自治区がイスラエルに原油を「違法」に売却したと非難した。 自治区産の原油を積んだタンカー SCF Altai 号は6月20日、イスラエルのアシュケロンに入港した。

イラク石油省は自治政府がイラク憲法に反して割引価格で原油を輸出していると主張しており、今後も輸出を監視し、自治政府から原油を購入した者を訴えると表明した。

自治政府は、パイプラインを通じてトルコに2度目の輸出を行ったと認めた。買い手は明らかにしておらず、原油の販売は憲法違反ではないと主張している。

これを受け、中央政府は自治政府に対する予算の支払を凍結した。
この結果、自治政府の職員やクルド人民兵は何ヶ月も支払を受けられなかった。

この問題は、ISISとの戦いにも支障をきたした。

2014年11月に双方の間で、日量15万バレルの石油の代わりに中央政府が自治政府に5億ドルを支払うという暫定合意に達した。
この支払いの約束を契機に妥協が生み出された。

2014年12月の合意では、クルド自治政府は中央政府に日量55万バレル(現在のイラクの輸出量の1/5に相当)を引き渡す。
このうち、30万バレルはISISが進出しイラク軍が撤退した後、クルド軍が掌握したキルクーク周辺(自治区外)の油田からのもの(中央政府は自分のものと主張している)で、残り25万バレルはクルド地区の他の油田からのもの。

これらの石油はイラク石油輸出公社(SOMO)を通じて輸出される。これにより、中央政府はクルド自治区の石油とその収入への管理を強化できることとなる。

その代わりに、自治政府はこれまで凍結されていた中央政府の財政支出の17%を確保することになった。
この比率は、イラクの全人口に占めるクルド人の割合を基礎としたもので、2005年憲法に盛り込まれた財政取り決めを反映したもの。

シーア派政治家は「われわれ全ての上にISISの脅威がのしかかっていることから、どのような形にせよ、双方が合意することは必要だった」と話した。

ーーー

クルド側は7月に中央政府への石油の引渡しを停止した。

自治政府によると、当初は技術的問題で約束しただけの量を中央政府に渡せなかったが、これに対し、中央政府は約束した額の30~40%をカットした。

その後、クルド側は技術的問題を解決し、4月に入って平均日量50万バレル以上を送ったが、中央政府は支払を増やさなかったという。

信頼関係が弱まり、自治政府は6月の輸送量を15万バレル以下とし、7月にはゼロとした。

自治政府はトルコ経由のパイプラインで日量60万バレル以上を輸出し、支出をカバーするに必要な月額10億ドル近くを確保している。

自治政府側は、自治政府の職員や戦闘員に給与を支払うため、中央政府に頼るのではなく、経済的自立に向け動かざるを得なかったとしている。

中央政府が昨年、予算の支払を凍結したため、多額の借入金があること、ISISとの戦闘の費用、他の地域から流入した170万人の外国人及びイラク人の避難民の費用などから、輸出を増やさざるを得ないとしている。

しかし、自治政府が輸出している石油には、中央政府が自分のものとしているキルクークの石油が含まれていることが、問題を複雑にしている。

昨年の合意が何故壊れたのかについては、いろいろな説があるが、中央政府内にクルド自治政府に譲りすぎだとの批判があったとされる。






天津市の工業地帯で8月12日夜、大規模な爆発が発生した。

爆発は、天津東疆保税港区の 瑞海公司(Rui Hai International Logistics) の危険物倉庫で起こった。
関係者は「引火や爆発しやすい物資を詰めたコンテナから出火した」と話している。

 

 


8月12日午後11時前、自動車が燃えているとの通報を受けた消防隊が現場に駆けつけると、積んであった多数のコンテナが激しく燃えていた。
 

消防が誤って炭化カルシウムに放水したとの噂もある。
 (炭化カルシウムは水と反応すると発熱し、水酸化カルシウムを生成し、可燃性ガスのアセチレンを発生する。)

大きな爆発は2回あった。

一回目は午後11時34分6秒で、2回目は30秒後に起き、高さ数十メートルのキノコ雲が上がり、大きな揺れがあった。河北省など周辺地区でも揺れを観測した。

新華社によると、1回目の爆発はリヒタースケール約2.3でTNT火薬3トンに相当、2回目は約2.9で 同21トンに相当する規模だったと いう。
現地駐在の日本人は、「日本でもあれだけの揺れは、なかなかないような、それぐらいの激しい揺れでした」と話している。

地震計はこれを捉えている。

爆発は気象衛星「ひまわり」からも捉えられた。

死者は50人、負傷者は700人以上で、依然として数十人が行方不明になっている。死者のうち12人は消防隊員だった。日本人の被害はない。

付記 8月15日、死者は104人となった。


トヨタ自動車の販売店では、窓ガラスが割れる被害が出ているほか、イオンのショッピングモールも、爆風で入り口のガラスが割れ、営業ができない状態となっている。

税関を含む付近の港湾施設で建物損傷や機能停止が報告されており、二次被害防止のため、同地区の大部分で立ち入りができなくなっている。
今後の船積みに大きく影響が出ることが予想される。

付記

Sinopec Tianjin とSinopec SABIC Tianjin Petrochemical は南の大港 (Dagang) 地区にあり、爆発の影響を受けず、操業を続けている。



瑞海公司は2011年設立で、天津港で危険品コンテナの中継、集散の拠点を運営している。

同社は下記の危険品を扱っている。

第二類  高圧ガス  アルゴン、圧縮天然ガスほか
第三類 引火性液体類  メチルエチルケトン、エチルアセテートほか
第四類 可燃性物質類  硫黄、ニトロセルロース、炭化カルシウム、カルシウムアロイほか
第五類 酸化性物質類  硝酸カリウム、硝酸ナトリウムほか
第六類 毒物類  青酸ソーダ、TDIほか
第八類 腐食性物質 ギ酸、燐酸、メタアクリル酸、硫酸、硫化ソーダほか
第九類 有害性物質


第一類の火薬類、第七類の放射性物質は扱っていない。




Shell は8月7日、中国のJVの統一潤滑油(Tongyi Lubricants)の全持分75% を、JV相手の 霍氏集团(Huo's Group) と The Carlyle Groupに売却する契約に調印したと発表した。承認を得て、2015年末か2016年初めに完了する見込み。

Carlyleによると、Carlyle Group がこのマジョリティを取得する。

統一潤滑油は、エネルギー、倉庫・ロジスティック、金融を扱う霍氏集团(トップはHuo Zhenxiang:霍振祥)の事業であったが、Shellが2006年に75%を取得した。
北京、山西省
咸陽市江蘇省無錫市の3箇所に合計60万トン能力の潤滑油調合工場を有している。

Shell自身は天津と江蘇省乍浦の2箇所に潤滑油調合工場を持っていたが、統一潤滑油の取得後も、2009年には広東省珠海に、更に本年には天津工場に隣接して7番目(統一潤滑油3工場を含め)の工場を稼動させた。

統一潤滑油は Monarch ブランドで販売しているが、Shell自身は一般ガソリン車用にはShell Helix ブランド、ディーゼル車用にはShell Rimula ブランドで販売している。

ーーー

2014年1月にBen van Beurden がShellの新しい CEOに就任したが、原油価格の下落を受け、2015年末までに150億ドルの資産を売却する計画を明らかにした。
これまでの投資拡大から、キャッシュフローの改善と増配による株主への還元に舵を切った。

下流部門については、最も競争力のある少数の資産に集中する戦略で、その他は売却する方向。

最近の昭和シェルの出光興産への売却はその一環である。

2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意


2014年12月に、Shell が統一潤滑油の持分の売却を計画していることが明らかになった。

売却に関して China International Capital Corp.を雇用、350百万ドル~500百万ドルでの売却を期待しているとされた。(今回の売却額は明らかにされていない。)

この時点では、Blackstone Group LP が霍氏集团と共同で買収するのではないかとされていた。





財務省が8月10日公表した2015年1~6月の経常収支は8兆1835億円と、東日本大震災後では最高となった。

経常黒字は2010年7~12月の9兆5692億円に次ぐ高い水準。2014年は 1~6月が4977億円の赤字、7~12月は3兆1435億円の黒字だった。

 (単位:億円)
  経常収支 貿易収支 輸出 輸入 サービス
収支
一次所得
収支
二次所得
収支
2014/上 -4,977 -62,014 357,273 419,286 -14,924 83,348 -11,386
           下 31,435 -42,002 383,743 425,747 -15,876 97,855 -8,542
2015/上 81,835 -4,220 378,247 382,467 -8,723 105,114 -10,336
 

貿易収支(決済ベース)は、原油の輸入額が減少したことや、海外景気の緩やかな回復等を背景に輸出が持ち直していること等から、▲4,220億円の赤字となり、前年同期比では5兆7,794億円の赤字幅縮小となった。

 原油価格(石油連盟)

  1. ドルベース:57.75米ドル/バレル(前年同期比▲47.8%)
  2. 円ベース:43,558円/キロリットル(前年同期比▲39.1%)


サービス収支は 8,723億円の赤字で、前年同期比 6,201億円の赤字幅縮小となった。

  サービス収支 うち
旅行 知的財産権
2014/上 -14,924 -657 7,970
2014/下 -15,877 216 9,003
2015/上 -8,723 5,273 13,362


「旅行収支」が黒字転化した(黒字額は過去最大)ほか、「知的財産権等使用料」が黒字幅を拡大した(黒字額は過去最大)こと等から、「サービス収支」は赤字幅を縮小した。

旅行収支は日本を訪れた外国人が使ったお金から、日本人が海外で支払ったお金を差し引く。
上半期の訪日外国人旅行者数は 9,139,900人で、前年同期比 46.0%増の過去最高となった。
逆に、出国日本人数は7,622,800人で、前年同期比 4.9%減となった。

 
第一次所得収支は、「直接投資収益」及び「証券投資収益」が増加したこと等から、10兆5,114億円の黒字で、前年同期比 2兆1,766億円の黒字幅拡大となった。






中国人民銀行(中央銀行)は8月11日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートの「基準値」の算出方法を変更すると発表した。

人民銀行は市場で取引される人民元の水準を基準値の上下2%以内に制限している。
これまでは基準値は銀行から毎朝報告される為替レートをもとに人民銀行が決めていたが、市場の実勢レートとの差が大きかった。

8月11日からは、基準値を市場の前日終値などを参考に決め、市場の実勢を反映しやすくする。


これに伴い人民銀行は8月11日の基準値を前日から約2%切り下げた。

付記

終値は63231人民元/$ となった。

  基準値 下限 上限 終値 変動幅 2010/6/18比
8/7 6.1174 6.2397 5.9951 6.2097 -1.51% 9.93%
8/11 6.1162 6.2385 5.9939 6.2097 -1.53% 9.93%
8/12 6.2298 6.3544 6.1052 6.3231 -1.50% 7.96%

 

 

 

突然の発表を受け、市場では人民元が一時約3年ぶりの安値水準に急落した。

人民元が円やユーロなどに対して割高になり、輸出が伸び悩み貿易面で影響が出るなど中国の景気が減速するなか、事実上の人民元切り下げにより、低迷する輸出競争力の回復を目指す。
    
2015/5/30 IMF、「人民元はもはや過小評価でない」

人民銀行は以下の通り述べた。

人民元の実効レートは他の通貨より高い
本日の人民元中心レートの大幅引き下げは1回限りの調整
人民元相場の柔軟性を高める
市場における人民元中心レートの役割を強化する





インド後発薬大手Lupin Limited は7月23日、米のGAVIS Pharmaceuticals LLC とその姉妹会社Novel Laboratories を買収する契約を締結した。
買収価額は880百万ドルで、借入金は引き継がない。

買収でLupinの米ジェネリック市場での規模は拡大するとともに、皮膚科学、規制物質製品およびその他の高価値でニッチな後発医薬品のパイプラインが拡大する。
GAVISのR&D組織はLupinのフロリダの吸入
製剤関連のR&Dセンターを補強する。
GAVISのNew Jerseyの工場はLupinにとって最初の米国の生産基地となる。

ーーー

Lupinは1968年設立の世界第7位のジェネリック医薬品メーカーで、アメリカ、EU、オーストラリアなど世界約100ヶ国以上の国で販売している。特に、抗結核薬およびセファロスポリン等で世界市場をリードし、CVS(心血管系)、CNS(中枢神経系)等の領域において存在感を強めている。

世界市場を対象とした原薬から医薬品まで自社一貫製造を行う製造施設(FDA認定工場)を複数有し、コスト競争力においても定評がある。日本の品質管理基準に合致した原薬・医薬品の供給が可能。

 

共和薬品工業は2007年10月、Lupin と資本提携することとし、Lupinが共和薬品の株式の過半数を取得した。

共和は2005年8月より、Lupinとジェネリック医薬品に関する協力契約を締結し、共同開発を推進してきたが、より密接な関係を構築することとした。

共和の製品開発、製造販売に対して、Lupinの研究開発力及び国際マーケティング力が戦略的に加わり、相乗的に大きな価値を生み出すとした。

インド系企業による日本のジェネリックメーカーの買収は、2007年4月のZydus Cadila による日本ユニバーサル薬品の買収に続き2社目だった。

Zydus グループの本社はインド北部グシャラード州アーメダバードにあり、インドではCadila Healthcare、インド国外ではZydusの名称で事業展開している。

ーーー

GAVIS Pharmaceuticals LLC とその姉妹会社Novel Laboratoriesについて:

2006年12月に創業者Dr. Veerappan Subramanianが進出に技術的バリアのあるジェネリック医薬品のR&D、製造、販売を目指し、Novel Laboratories を設立した。

2008年にNovelで開発、製造したジェネリック医薬品の販売のため、GAVIS Pharmaceuticals が設立された。

GAVISの2014年の売上高は96百万円。





マリン カッサの「コールダー・ウォー: ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争」を読んだ。      右の図書紹介

 (出版社のPRから)

東西冷戦をしのぐ米露の熾烈な戦いが始まっている。プーチンは今、膨大なエネルギー資源を武器に強力な資源外交を展開している。狙いは資源取引のドルベース・ルール(ペトロダラーシステム)に変更を迫り、アメリカ覇権を転覆させることだ。その長期戦略はもはや経済制裁や原油安では阻止できない。米国有数のファンドマネージャーが資源開発現場で得た最新情報をもとに、ドル崩壊の危機を予測した全米ベストセラー !

著者:Marin Katusa
Casey Research のエネルギー部門主任研究員で、エネルギー産業に特化した投資ファンドマネージャーとして大きな成功を収める。世界各地の資源開発現場に飛び、第一線の最新情報を持つ。

ほとんどのアメリカ人が知らないうちに、米露の間で超冷戦(Colder War) が進んでおり、プーチンの長期戦略が結実しつつある。

プーチンのグランドデザインは下記のとおりとする。

 1)ロシアは外国からの攻撃に屈しない強国でなければならない。
 2)ロシアを脅かすのは米のみ
 3)周辺国をバッファーに(米との連携を許さない)
 4)ロシアの安全保障のためにも国民は豊かにならなくてはならない。
 5)ロシアの繁栄は天然資源とりわけエネルギー資源に依存する。
 6)資源収入は軍事予算を担保するだけでなく、資源輸入国をロシア依存国にする。
 7)資源エネルギー関連産業の圧倒的力がロシアに依存せざるを得ない国をつくる。
 8)資金と技術のため海外からの資金は歓迎するが、政府の全面的監督下に。
 9)ロシア国外のエネルギー事情混乱はロシアに有利。中東騒乱は有利。
  10)PetroDollarに風穴をあけ、米に打撃を与える。

PetroDollar体制とは:

1971年8月15日、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止した。

ニクソンはキッシンジャーをサウジに派遣し、以下の交渉を行わせた。
 ・米はサウジを防衛する。どんな兵器も売る。サウジ王家を未来永劫に保護する。   
   ・見返りに
①サウジの石油販売を全てドル建てにする。
         ②サウジの貿易黒字で米国財務省証券を購入する。

  
サウジはこれを受け入れ、1974年に調印された。
その後、OPECの他のメンバーもドル建て取引を採用し、ドルが世界通貨となった。

これが「ペトロダラー」システムで、これまで金との兌換が必要なため、無制限なドル印刷は出来なかったのに対し、ほぼゼロコストでドルを無制限に印刷し、輸入決済に充てることが出来るようにな った。

ーーー

著者によると、ソ連の崩壊はレーガンの政策の成功の結果ではなく、ソ連が石油開発に資金を割けなかったため、埋蔵量はありながら、生産が激減したためであるとする。

プーチンはロシア再興のカギは豊富なエネルギー資源であると早くから認識し、それはロシアの民間資本で運営されるべきで、経営は国家の指導に沿ったものでなくてはならないと考えた。
このため、この方針に沿わない新興財閥(オリガルヒ)を国家権力を使って排斥すると共に、中小企業を半官半民の超企業に育て上げた。

ユダヤ人のMikhail Khodorkovskii は混乱期のロシアで違法スレスレの手段で国営石油会社 Yukos を超安値で買収した。
Khodorkovskii はこれを、Roman Abramovich同様の手法で育てた石油会社 Sibneft と合併させ、ロシアの石油生産の30%を占める大企業にした上で、高値で売却すべく、ExxonMobil とChevronとの交渉を開始した。
一方で、
Khodorkovskii はプーチンを公開の場で批判し、プーチンの政敵に政治献金をした。

政府はKhodorkovskiiを脱税、横領、詐欺、文書偽造で逮捕して財産(ユコス株含む)を凍結するとともに、Yukosの最大子会社を脱税で差し押さえた。
最終的に、ExxonMobilもChevronも交渉を取り止め、Yukos-Sibnet の合併はご破算となり、Yukos は破産、清算した。

Yukosの残余資産は、Rosneftがバーゲン価格で取得し、これを機に拡大した。

石油戦略

ソ連崩壊時 原油生産設備は荒れ放題であったが、プーチンは石油増産のため合併を進め、2007年以降、寡占化に1600億ドルを投じた。
Rosneft にYukos資産を取得させた上で、少数株主の株を強制的に買い上げさせ、政府プロジェクトを任せ、大企業に育て上げた。

ロシアの生産は1998年に日産600万バレルであったのが、2012年には1100万バレルに達した。
2012年の世界の消費量 8500万バレルのうち、ロシアの供給は1100万バレルで13%を占め、国際間取引では15%を占める。

ExxonMobilとの提携で、北極圏開発。
  2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進 

TNK-BPの買収で、BPとの提携強化   
  2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収 

石油パイプラン敷設

  中国・アジア向け

2010年 ESPO(東シベリア・太平洋石油パイプラン) 中国国境まで完成
2012年     コジミノまで開通

     2012/12/27  東シベリア太平洋石油パイプラインが全線で稼働 

  欧州向け

ドルジバ(Friendship) Pipeline

2012/3、輸出ターミナル新港 ウスチルガが開通 
パイプライン使用料で揉めたベラルーシを通らず、ウラル石油を欧州に供給

天然ガス戦略

Gazpromはソ連崩壊時に民間企業になったが、乱脈経営で資産を超安値で売却。

プーチン就任後、直ちに経営陣を刷新。
新経営陣は、シブネフチガスを買収、Gazprom銀行を設立。

本書に記載はないが、サハリンⅡではロシア政府が工事の承認を取り消し、最終的にGazpromが過半数(50%+1株)を出資した。
  
2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

ウクライナとの抗争
 
2013/2/19   ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争  

ウクライナを経由しないパイプライン
 ① Nord Stream
       
2011/8/27  Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続
            2015/7/1    Nord Stream 倍増計画

   ② South Stream
          
2012/12/13 ロシア、サウスストリームパイプライン計画着工
         2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め

      代替案 Turkish Stream
   
2015/7/15   ギリシャへの中国、ロシアの接近

アジア向け  Eastern Pipeline、Altai Pipeline 中国に30年の供給契約
  2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

LNG戦略:パイプラインで遅れない地区にLNGで供給

サハリンⅡ 年1000万トン輸出 →2020年 6000万トン

バレンツ海シュトックマン海底ガス田(Gazprom 75%、Total 25%)のガスをNord Stream へのつなぎ込むとともに、ムルマンスク州のテリベルカにLNGプラント建設

アフリカ戦略(ナイジェリア、エジプト、モザンビーク、アルジェリアで開発)

イスラエルで膨大な天然ガスが発見され、開発中。
    
2013/4/4 イスラエルで新ガス田からの天然ガス輸送開始

Gazpromは2013年2月、Tamar ガス田のガスのLNG化を計画するLevant LNG Marketing Corp. との間でLNGの20年間の独占購入契約を締結した。

また、天然ガスを
キプロスとギリシャを経由するガスパイプランで欧州に輸出することも検討している。
ロシアは、キプロスに財政支援、ギリシャにもTurkish Stream を通すなど関係強化を図っている。

ウラン戦略

ウラン鉱山の囲い込み

ロスアトム子会社ARMZは2010年に「ウラニウムワン」の持株を17%から51%にアップ。
 ウラニウムワンはウラン鉱最大手で、豪、カナダ、カザフ、南ア、タンザニア、米に鉱山

カザトムプロム(カザフ)と共同生産合意

モンゴルでのウラン開発 

   2020年にロシア生産分で世界のyellow cake 生産の1/3を占め、カザフを加えるだけで世界の半分。
   他にウクライナ、ウズベキスタン、モンゴル

   ロシアは転換と濃縮分野でのリーダーでもあり、転換能力では世界の1/3のシェアを持ち、
   濃縮のシェアも40%でこれを50%にアップする構想。

目標 Yellow cake 生産では58%確保、加工工程でも半分以上

原子力発電では米国も含め、ロシアに依存することとなる。


黄昏のペトロダラーシステム

プーチンの長期戦略に従い、国家権力も使って、ロシアに依存せざるを得ない体制が密かに完成しつつある。

ペトロダラーシステムに対しても、ドルを介在させない取引が出現しつつある。

 ロシア:石油産出国に金による価格設定を要請

 中国:ブラジル、豪、UAE、トルコ、韓国などと通貨スワップ協定を締結、ドル介在なしでの取引が可能に。

 BRICS:新開発銀行設立

 米国:イランの経済制裁が、逆にドル崩壊を加速化している。

制裁をくぐった貿易は盛んであり、SWIFT(ドル決済システム)が使えないため、ドルを使わない決済(金塊、他の通貨、バーターなど)が次々に開発された。

米国の政策が各国に反米感情を産んでいる。

 ペトロダラーの元のサウジも最近は対米不満が高まっている。

・シリアのスンニ派の反アサドの戦いに支援なし
・スンニ派パレスチナ組織の対イスラエル交渉に何もせず
・シーア派イランへの接近
・フセイン放逐に反対したが、米は従わず、結果はイラクがばらばらに 等々

 そのなかで、ロシアがサウジに接近している。

サウジと米国の提携が崩れ、石油取引がドル建てではなくなった場合、米国経済は崩壊する。

最悪のシナリオは、各国がドルから逃げ出し、金利が大幅アップ、発行済み国債が暴落し、ドル の減価で輸入コストが急増し、インフレが進行、金利アップやデリバティブ商品の破綻で金融機関が危機に陥る。

これを回避するには、政府予算削減、外交姿勢修正(紛争介入回避)、過度な福祉政策の停止、国内エネルギー資源開発、非経済な再生可能エネルギーの見直しなど厳しい政策が必要であると説く。

 

ーーー

本書にはほとんどの米国人が知らない米政府の問題行動を明らかにしている。

①イラクのクウェート侵略

米国の駐イラン大使 April Glaspie は侵略の1週間ほど前に大統領官邸でフセインと会談し、クウェート侵略を黙認するような以下の発言をした。

あなた方とクウェートとの紛争の様な、アラブの紛争には何の意見もありません。ベーカー国務長官は、1960年代のクウェート問題は、アメリカとは関係がないという、最初にイラクにさしあげた説明を強調するよう、私に指示しました。

②ウクライナ問題

2014年2月に国外脱出したヤヌコーヴィッチ大統領は選挙で選ばれた大統領であり、暴力的に失脚させることに米は手を貸した。
米資本の入ったインターネットTV(フロマッケテレビ)が煽った。

Victoria Nuland 国務次官補は過激なネオナチのスヴォボダ党党首とヤヌーコヴィッチ大統領追い落とし作戦を打ち合わせた。
暫定政権でスヴォボダ党は副首相、農相、環境相、司法長官を確保した。

ウクライナの改革は進まず、腐敗は相変わらずである。







アイルランドの製薬会社Shire Pharmaceuticalsはバイオ医薬品の米Baxalta に株式交換による約300億ドル相当の買収案を提示した。
Baxalta はBaxter Laboratoriesから7月にスピンオフしたばかり。

Shireの提案では、Baxalta の株主は1株当たりShireの米国預託証券(ADR)を0.1687ADR受け取る。
Baxalta 株を45.23ドルと評価したことなり、これは8月3日終値を36%上回る水準。

非米国会社が、米国において株式により投資家から資金を集めようとする場合、母国との物理的な制約から株券の受け渡しに手間がかかる上、配当金が企業の母国通貨建てで支払われることから、米国投資家に取引上・為替上のリスクや不便が生じていた。
ADRは、これらの不都合を解消し米国株式と同様、米ドルでの売買・決済、および配当金の受領を可能にした。併せて証券の保管も米国内で行われる。

Shire はBaxalta に対し「買収協議に応じる」よう求めたが、Baxalta はこれまでのところ協議を拒否しているという。

Baxaltaは希少な血友病や免疫不全症の治療薬を手掛け、Baxterからスピンオフ(分離・独立)を完了したばかり。
スピンオフ後もBaxterが24%前後の株式を保有し、筆頭株主の座を維持している。

Baxterは2014年3月27日、バイオ製薬事業を分離し、別会社として上場する計画を発表した。バクスター本体には、輸液製剤などの医療用品事業が残る。
市場や成長ペースが異なる2つの事業を分離し、経営効率や株主価値の向上を見込む。

新会社として分離するバイオ製薬事業は、血友病や他の血液疾患の治療剤、ワクチンなどを手がける。2013年の売上高は約60億ドルだった。

一方、本体に残る医療機器事業は輸液製剤や薬剤投与関連製品が中心。2013年の売上高は90億ドルだった。
2012年に血液透析システム大手の
スウェーデンのGambro AB約40億ドルで買収し、事業規模を拡大していた。

ーーー

Shire は患者数の少ない希少疾病に強い製薬会社で、競合を避けながら4割弱の高い営業利益率を誇っている。

Shire Pharmaceuticalsは2014年7月、2013年初めに米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生したAbbVie Inc. に買収されることで合意したが、AbbVie は2014年10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。

米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断したもの。
AbbVie による買収案の撤回により、Shire は違約金16億ドルを受け取った。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる

Shire Pharmaceuticalsは2015年1月11日、米バイオ医薬品のNPS Pharmaceuticals, Inc. を52億ドルで買収すると発表した。

NPS Pharmaceuticals は、希少疾病用医薬品(Orphan drug)に重点を置いたバイオ製薬企業で、下記の有力製品を持つ。

成人の短腸症候群 (SBS) 治療薬としてGattex®が米国と欧州で承認されている。
成人の副甲状腺機能低下症における NatparaTM(遺伝子組み換えヒト副甲状腺ホルモン)は、第3相試験が完了した。

NPSの買収により、難病治療薬への軸足移動が加速するとともに、消化器疾患や内分泌疾患などの治療薬の拡充を図る。

ShireのCEOは、バイオテクノロジー企業としての存在感を増すために、引き続き買収機会を模索していくと述べた。

2015/1/17 アイルランド製薬Shire Pharmaceuticals 、米バイオ医薬品 NPSを買収 


これらの関係は下記のとおり。

 





オバマ米大統領は8月3日、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出に対する規制強化を正式に発表した。
新規制では、火力発電からのCO2排出量を2030年までに2005年比32%削減することを目指す。

米EPAは2014年6月、火力発電所から出るCO2を2030年までに05年比で30%削減するとの規制案を公表していた。(下記)
オバマ大統領はこの削減幅を同 32%に拡大する。大統領権限で実施する。

規制計画では、古い石炭火力発電所を廃止することでCO2排出量の削減目標を引き上げる一方、太陽光などの再生可能エネルギーへの転換を投資促進策をてこに促す。
目標達成に向けた計画は州ごとに2016年9月までに作り、2022年から実施する。

火力発電所へのCO2回収・貯留設備の設置など、規制計画に伴う電力業界の費用は2030年まで年84億ドルと試算している。

米国政府はすでに、温暖化ガス排出量を2025年までに2005年比で26~28%削減する計画を提出しており、今回発表した火力発電への規制強化により目標達成を後押しする。

各国の目標は下記の通り。

  2030年 2025年
日本 2013年比 26%減  
中国 2005年比 GDP当たり60~65%減  
米国   2005年比 26~28%減
EU 1990年比 40%以上減  
ロシア 1990年比25~30%減  
韓国 対策とらない場合比 37%減  
カナダ 2005年比 30%減  
メキシコ 対策とらない場合比 25%減  


大統領はホワイトハウスで演説し「われわれは気候変動の影響を実感する最初の世代。そして何らかの対策をとることのできる最後の世代でもある」と主張。「地球は1つだけだ。プランBはない」と訴えた。

ーーー

米環境保護局(EPA)は2014年6月2日、発電部門における新たなCO₂排出規制案を発表した。
(新設の
石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案については、EPAは既に下記のとおり、2013年9月20日発表し ている。)

大気浄化法(Clean Air Act)に基づき、米国内の既存の発電所におけるCO₂排出を規制するもので、EPAが各州に発電部門において達成すべきCO₂排出基準を設定し、基準を達成するための行動計画の提出および実施を義務付けるもの。

石炭よりもクリーンな天然ガスを使った火力発電の活用を明記したほか、建設中の原子力発電所を完成する方針を示すなど温暖化ガスの排出を抑える手段として原発の役割にも言及した。太陽光や風力による発電など再生可能エネルギーの重要性も認めた。

EPAはこの規制の実施により、これまでの対策と合わせて発電部門におけるCO₂排出量を2030年に2005年比で30%削減できると見込んでいる。

各州に適用される排出基準は、州の排出削減ポテンシャルに応じて設定され、かなりの幅がある。
ワシントン州では  0.10kg CO₂/kWh だが、ノースダコタ州では 0.81kg CO₂/kWh となっている。

既設の火力発電所の排出量は下記の通りで、規制案の達成は大変である。
 石炭火力平均 1.02kg CO₂/kWh
    LNG火力平均  0.51kg CO₂/kWh
    LNGコンバインドサイクル発電平均 0.37kg CO₂/kWh

ただし、需要側管理や再生可能エネルギー買取制度、排出権取引制度など幅広い施策を選択できる。

石炭火力からCO₂排出量の少ないLNGコンバインド火力へのシフトが進む他、省エネ投資、再生可能エネルギー投資が進むことなどが予想される。


今回は、火力発電所から出るCO2の削減幅を30%から更に 32%に拡大するもの。

新規制への電力業界の対策コストは年84億ドルとされる。

米の発電比率は下記の通りだが、EPAでは石炭発電比率は2030年には27%に減ると試算している。

  2000年 2013年
石炭 52% 39%
原子力 20% 20%
再生可能 9% 13%
天然ガス 16% 27%
石油など 3% 1%
合計 100% 100%

石炭産出州や業界団体などは新規制の撤回を求めて政府を訴える見通し 。
上院のマコネル共和党院内総務は、新規制は発電所の閉鎖につながり、電気料金を押し上げるとして「何としてでも阻止する」と述べた。

ーーー

EPAは2013年9月20日、新設の石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案を発表した。

それによると、新設の石炭火力発電所は1メガワット時あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を1100ポンド(500キロ)までに制限される。
これは、近代的な石炭火力発電所の大半での排出量より700ポンドも少ない。

この基準を達成するためには、CO2が大気に放出される前に回収する二酸化炭素回収貯留(CCS) という最新技術を使うしか方法がない。

商業的に稼働している発電所で導入している所は1カ所もない。

建設中の発電所でCCS施設が導入されているのは、2箇所のみ。巨額の追加投資は不可欠で、負担の転嫁で消費者や企業などが払う電気料金は大幅に上がりかねない。

JX日鉱日石開発は2014年7月15日、米国のJX Nippon Oil Exploration (EOR) Limitedを通じて、米国で石炭火力発電所の燃焼排ガスから二酸化炭素(CO2)を回収するプラントを建設し、回収したCO2の油田への圧入により原油の増産を図るプロジェクトを開始したと発表した。

CO2回収事業は、三菱重工業と米国の大手建設会社The Industrial Company(TIC)によるコンソーシアムが建設する。

CO2を年間約160万トン削減する。

 2014/7/18 JX日鉱日石開発、米国で石炭火力発電所の排ガス活用による原油増産プロジェクトを開始 
 

もう一つはSouthern Energyがミシシッピー州 Kemper County のMississippi Powerで建設中のもので、発電規模は582 MWで65%のCO2 (年間350 万トン)を捕捉する。
莫大な予算超過が、同社の収益を大幅に圧迫しているとされる。

しかも、このケースは特殊要因があり、多くの火力発電に適用可能とはいえない。
 ・ 発電所はSouthern Energy が所有する炭鉱に隣接し石炭の輸送コストがかからない。
 ・ 回収したCO2を近隣の2社の油田のEOR(石油増進回収法)の材料として販売でき、年5000万ドル程度の収入が期待できるという。

ーーー

同様にEPAが石炭発電所などに義務づけた水銀などの有害汚染物質の排出規制では、米連邦最高裁が6月に規制を無効とする判断を下した。

問題となったのは、水銀その他大気有害物基準(Mercury and Air Toxic Standards:MATS)で、EPAは2012年2月、火力発電所が排出する水銀や二酸化硫黄(SO2)といった大気汚染物質は呼吸器疾患などを引き起こし、国民の健康に悪影響を及ぼすとして、厳しい排出規制を課した。

EPAでは、汚染制御機器を備える石炭・石油火力の56%はこの基準を達成でき、残りの44%は水銀及び酸性ガスの排出を90%減少させる技術の設置が必要になるとした。

EPAはそのコストが年間96億ドルとする一方、恩益を年間370~900億ドルと見積もり、毎年11千人までの早期死亡を回避できるとした。

約1100の石炭火力と300の石油火力設備が対象となる。
石炭火力では水銀、粒子状物質、塩酸、フッ化水素酸の排出量が制限され、水銀排出量の90%が削減される。
石油火力では粒子状物質、塩酸、フッ化水素酸の排出量が制限される。
適用まで3年間の猶予期間(州は更に1年の猶予許可可能)

石炭産出州など20州と電力会社などは、発電所の廃止や追加対策による費用が膨らんだとして規制の撤廃を求めた。

米連邦控訴巡回裁判所は2014年4月、排出量の制限が実質的にも手続き的にも有効とした。

これに対し、最高裁は2015年6月29日、EPAがこの規制を実施する前にコストを十分に考慮していなかったとし、5対4で規則を無効と判断し、差し戻した。

多数派意見を執筆したスカリア判事は「EPAは環境規制が適切で必要なものと判断する前に、まずその実施や順守のためのコストを考慮しなければならない」とした。
反対派少数意見は、EPAの政策決定過程は妥当なもので、政策策定の後半の過程ではEPAはコストについて繰り返し計算していたと指摘した。

EPAでは、今回の最高裁の決定は規制自体を取り消すものではなく、またEPAの大気汚染を規制する権限に疑問を投げかけるものでもなく、単に規則制定にあたりもう少し早い段 階でコストを考慮すべきであったと指摘しているだけであるとしている。

今回の差し戻しにも関わらずMATSはなお有効であり、電力会社は引き続き対策をとっていく必要があるとしている。
MATSへの対策が必要な発電所の多くはすでに必要な投資をはじめており、また多くの石炭火力がすでに閉鎖され、再稼働される見込みはない。

ーーー

Steve Coll の「石油の帝国:エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」によると、ExxonMobilはずっと地球温暖化を疑問視してきたが、オバマ政権の誕生を契機に、気候変動が社会に深刻なリスクをもたらそうとしている認識に変換、環境税の導入支持へと軌道修正した。

石炭が最大のCO2排出源であり、天然ガスが石炭にとって代わることが出来るため、同社にとって有利となるとの判断からである。

 

 

 

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オマーンがイランの天然ガスをペルシャ湾の海底パイプラインを通して購入する計画がまとまりつつある。

イランのNational Petrochemical Companyはこのたび、イランのKuh-e MubarakからオマーンのSoharまでの200kmの海底パイプラインのアドバイザーが決まったと述べた。

イランのRudanからKuh-e Mubarakまでの陸上の200kmのパイプラインも新たに建設される。

パイプラインやインフラの建設費は全額オマーンが負担する。

2013年8月にオマーンのカブース国王は、イランを訪問し、ロウハーニ大統領と会談した。

この際に両国はペルシャ湾のKish島から海底パイプラインを敷設して、日量28百万m3の天然ガスを15年間(600億ドル相当)輸入する内容を含むMOUに調印した。

案としては、Kish島からオマーンまで全て海底パイプランでつなぐ案と、陸上パイプランで対岸まで運び、そこから海底パイプラインでつなぐ案があった。
今回、後者が採用される模様。
Kish島からRudanまでは既存パイプラインを利用する。

Kish島での共同開発の構想もあったが、これはまとまらなかった。

オマーンはガス輸出国ではあるが、人口の急激な増加や産業の活性化などによる国内でのガス需要増が見込まれ、近い将来、逼迫する懸念が生じている。
2008年には、カタールからアブダビを経由したドルフィン・パイプライン(後記)を通じて200MMcf/dのガスを輸入する売買契約に調印している。

イランにとっては、これにより、同国の天然ガスをアジア等の諸国に売却することができるようになる。

イランがオマーン国内のLNGプラント建設に参画する構想をある。

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オマーンにはLNG出荷ターミナル会社が2つあるが、2013年9月にこれらが統合された。(統合後の出資比率不明)

2つとも、Qalhatにプラントを持つ。

名称 Oman LNG Qalhat LNG
設立 1999 2002
株主 Oman政府 51.00% 46.84%
Oman LNG 36.80%
Shell 30.00%
Total 5.54%
Korea LNG 5.00%
三菱商事 2.77% 3.00%
三井物産 2.77%
伊藤忠商事 0.92% 3.00%
大阪ガス 3.00%
Pastex 2.00%
Union Fenosa Gas
(ENI/Fenosa)
7.36%
合計 100% 100%
長期
販売先
(年間)
大阪ガス 66万トン 80万トン
伊藤忠 77万トン  
Kogas 406万トン  
三菱商事・東電   80万トン
Fenosa(スペイン)   165万トン


ーーー

ペルシャ湾のガス・海底パイプラインは既にDolfin Pipelineが運営されている。

2007年7月に、カタール・ノースフィールド・ガス田から、ラスラファンにおけるプラントを通して、UAEのタウィーラへの送ガスが開始された。

運営するDolfin Energy の出資者は、アブダビ政府のMubadala Development 51%、Total 24.5%、Occidental Petroleum (当初は Enron) 24.5%である。

フジャイラのUnion Water and Electricity Company の海水淡水化プラント用のガスは当初、オマーンからアライン経由のパイプラインで輸送されたが、カタールのガスに代替された。
現在は、逆にこのパイプラインをアラインから逆送することで、Dofin Pipelineで送られたガスをオマーンに送っている。

 

 

 

 

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沖縄を除き全ての電力会社で第1四半期(4~6月)の経常損益が黒字となった。

原油やLNGの価格下落で火力用の燃料費が大きく下がったのが貢献した。

2015/7/31  輸入LNG 値下がり

 

2015年3月決算では、原油安が寄与して中部、中国、四国が黒字転換し、7社が黒字になったが、原発依存度の高い北海道、関西、九州は赤字を続けた。

北海道は2014年11月の再値上げで赤字幅は縮小した。

2015/5/5   電力会社決算

関西電力は本年6月1日から再値上げした。


第1四半期では、北海道、関西、九州も黒字となった。
関西電力は再値上げ(1ヶ月分)も収益を押し上げた。

 





福島県北中部の相馬双葉漁協は7月27日、理事会を開き、東電福島第一原発の建屋周辺の井戸(サブドレン)からくみ上げた汚染地下水を浄化して海に流す計画について容認する方針を決めた。

同県南部のいわき市漁協は既に容認を決めており、県漁業協同組合連合会も受け入れる。

 

第一原発の山側からは地下水が1日400トン程度、建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。

東電は2014年5月、汚染前の地下水を海に流す「地下水バイパス」を開始した。東電によると1日約400トンあった地下水流入を約300トンに減らした。

建屋の山側に12本の井戸を設置し、流入前の地下水をくみ上げ、放射性セシウム濃度が1リットル当たり1ベクレル以下と低いことを確認して海に放出する。
流入量を1日100トン程度減らせる。

福島県漁業協同組合連合会は2014年3月末、放出を容認、東京電力は2014年4月9日、「地下水バイパス」の作業を始めた。

サブドレン計画は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。

浄化装置で放射性物質濃度を1000〜1万分の1程度に下げて海に流す。
地下水を150トンに半減できると試算している

国と東電は2014年8月、計画を発表したが、地元漁協との交渉が大詰めを迎えた2015年2月、原子炉建屋屋上にたまっていた汚染水が排水路から外洋に流出していたことが発覚したため、県漁連は容認に向けた意見集約を先送りした。

サブドレン計画には、風評被害を深刻化させるのではという懸念がある。

それでも漁協側が容認したのは他に選択肢がなかったためである。

試験操業の範囲を広げる方向で協議を始めているが、そのためにも早く遮水壁を閉じること(下記)が必要 で、サブドレン計画を実施すれば、原子炉建屋に流れ込む地下水を減らすだけでなく、1〜4号機の海側遮水壁によって港湾内への汚染地下水の流出を食い止める効果 が期待される。
東電は「早期に遮水壁を閉じられないと、300トン以上の汚染水が毎日、海に流れ続けてしまう」と計画への理解を求めた。

漁協側は、「県の漁業復興が少しでも進むのならやむを得ないということだ」としている。

ーーー

東京電力は2015年3月25日、原子力規制委員会の第33回特定原子力施設監視・評価検討会に提出した資料で、2014年4月からの1年ほどの間に、福島第一原発から7420億ベクレルの放射性セシウムが海に漏出していたとの試算を明らかにした。

うち、護岸から専用港への流出が5100億ベクレルで最大である。

  314日間の流出量 (億ベクレル)
 
  全β Cs 134 Cs 137 Cs 合計 Sr 90
A排水溝 140 26 82 108 11
物揚げ場排水溝 130 23 76 99 15
護岸からの流出 22,000 1,300 3,800 5,100 8,500
K排水溝 2,300 500 1,500 2,000 1,500
C排水溝 320 29 84 113 110
合計 24,890 1,878 5,542 7,420 10,136

A排水溝とK排水溝からは外洋に流出
その他は専用港に流出(下記の通り、シルトフェンスで港外への流出防止)


このうち、護岸からの流出に対しては、海側遮水壁で流出を防ぐこととなっていた筈である。

汚染水を漏らさない対策の一つとして、海側遮水壁(鋼鉄製の板の壁で、海底から海面上まで幅800mにわたり約700本)を設置し、内側を埋め立てるとなっていた。

しかし実際は、海側遮水壁が完成すると地下水が行き場を失って水位が上がるため、全780mのうち770mを造ったところで中断し、残り10mの部分から地下水を海に流出し続けている。

        http://oshidori-makoken.com/?p=921

専用港では遮水壁未完成箇所を含め3箇所にシルトフェンス(海面から海底までカーテン状になっている汚濁防止フェンス)を張っているだけで、港外への流出防止は完全ではない。

(汚染水が流出してシルトフェンス内側の水量が増えると、フェンスを超えてフェンス外に出る。シルトフェンスの破損事故もあった。船が接岸する際はフェンスを外す。)


2015/3/28  福島第一原発から海への放射性物質流出


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東京電力は7月30日、福島第一原発3号機の海側にあるトレンチ(配管などが通る地下トンネル)にたまっていた高濃度汚染水の抜き取りが完了したと発表した。
 

当初は、トレンチと建屋が接する部分の汚染水を凍らせて流れをせき止めたうえで抜き取る計画だったが、汚染水が十分凍らず、昨年11月からはトレンチをセメントで埋め立てながら汚染水を抜き取る方法に変更していた。

これで、「凍土遮水壁」の建設のめどが立った。



なお、多核種除去設備ALPSでの処理後のトリチウムを含む水は、トリチウムの処理方法は今のところないため、タンクに保管されたままである。






出光興産は7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% を取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
独禁法等の手続きを経て、2016年上期の取得を目指す。

Shellも 同日、1690億円で売却すると発表した。シェル英国法人のAnglo-Saxon Petroleum が持つ1.80%は保有するとしている。

Shell は、売却はDownstream を集約するという戦略によるものとしている。
Shellブランドは引き続き昭和シェルに使用を認める。

出光と昭和シェルはこの株式譲渡を前提に経営統合に向けた協議を進めてきたが、これを加速する。

Shellは昭和シェルに持株売却の意向を伝えるとともに、2014年春に極秘裏に金融機関を通じて出光に昭和シェル株式売却を打診した。
両社は統合の協議を進めたが、2014年12月にこれが明らかになり、
昭和シェルの特約店などからは「業界2位の出光による吸収合併だ。不利益を受けるのではないか」など懸念の声が広がった。 このため、協議は中断した。

2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ 

本年6月に東燃ゼネラル石油が昭和シェルとの統合に名乗りをあげた。

しびれを切らしたShellは出光に売却することを決めた。

これを受け、昭和シェルも出光との統合を決めた。

昭和シェルの大株主と持株比率は下記の通り。

 The Shell Petroleum Company Limited 33.24%

 今回買収

 The Anglo-Saxon Petroleum (Shell 英国法人) 1.80%

 当面保有継続

 Aramco Overseas Company B.V. 14.96%

 

SaudiAramco はShellから、2004年に10%分m2005年に更に5%分を取得した。

昭和シェルとAramcoの関係を深めて昭和シェルの原油調達能力を高め、競争力を抜本的に強化するのが狙い。
Shell Aramco米国とサウジで共同事業を展開するなど、グローバルな戦略的提携を実施している。

Aramcoは出光と昭和シェルの経営統合を支持している。株保有は継続し、原油供給を続ける。


両社の製油所の概要は下記の通り。

トッパー処理能力(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

 当初 高度化法 現状
  昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 70
昭和シェル 扇町 120 0
昭和シェル合計 515 445 445
出光興産 北海道 140 160 160
千葉 220 220 200
愛知 160 175 175
徳山 120 0
出光興産 合計 640 555 535

 
昭和四日市石油はコスモ石油の精製能力減に伴い、コスモに石油製品・半製品を供給する。

2015/5/21  コスモ石油、千葉と四日市で精製能力半減 

経産省は残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めている。

2014/3/31時点の装備率 改善率
   55%以上    9%以上
   45%以上55%未満    11%以上
   45%未満    13%以上
 
各社の2014/3/31の装備率
JX日鉱日石エネルギー 46.2% 鹿島石油、大阪国際石油精製を含む。
出光興産 51.5%  
コスモ石油 43.4%  
昭和シェル石油 59.4% 東亜石油、昭和四日市石油、西部石油を含む。
東燃ゼネラル石油 35.9% 極東石油を含む。
富士石油 48.3%  
太陽石油 24.6%  


2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制

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出光社長は、「石油の安定供給という社会的使命を全うするには昭和シェル石油がベストパートナー。経営統合で日本のみならず世界の石油業界をリードしていける競争力をもつ総合エネルギー企業を目指す」と語った。

記者会見での両社長の発言は下記の通り。

統合メリット   両社ともすでに製油所を再編するなどしてエネルギー供給構造高度化法への対応にメドをつけており、製油所の統廃合は不要。
物流など供給コストを削減できる。

(両社が保有する製油所は地域的にも重なっておらず、最大のコスト削減の製油所の統廃合は見込めない)  

     
経営統合の形   特約店や社員が活躍できる対等な形での経営統合をめざす
統合までの過程で一時的に(昭和シェルが)関係会社になることはあっても、親子関係になることは全く考えていない
     
ブランド   当面は維持することを基本的な考えとしたい
     
海外事業   昭和シェル単独で海外に出て行くという目標が昔から頭にあった。
海外展開に向けて出光興産と新しい枠組みをつくっていきたい


出光社長は、「供給過剰、過当競争が業界の課題だ。経営統合の後は大手4社体制になるが、これが最終形とは考えづらく、さらなる再編もありうるだろう」と述べた。


なお、これまでの石油業界の変遷は下記の通り。


コスモ石油と東燃ゼネラルは2014年12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、年間100億円程度の収益改善を見込む。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討


各社の概況:

  売上高 国内ガソリン
販売シェア
JX 10.9兆円 33.3%
出光 4.6兆円 15.5%
昭和シェル 3.0兆円 16.3%
(出光・昭和シェル) 7.6兆円 31.8%
東燃ゼネラル 3.5兆円 19.8%
コスモ石油 3.0兆円 10.8%

 

TPPを巡ってハワイ州のホテルで開かれていた日米など12カ国の閣僚会合は7月31日午後、合意を見送って閉幕した。
医薬品に関する知的財産ルールと乳製品の貿易で対立し、各国の利害を調整できなかった。

参加国は8月中の閣僚会合の再開を目指す。

共同声明の要旨:
 ・重要な進展があり、限られた数の問題の解決にむけて作業を続け、妥結に向けて道筋をつける
 ・共通の土台を見つけるため、勢いを保って集中的に作業を続ける
 ・交渉は最終段階にあり、TPPが妥結間近にあると確信している

一つの問題はニュージーランドで、日本、アメリカ、カナダ、メキシコに対し、膨大な乳製品の低関税枠を求め続けた。

甘利経済再生相は、「いろいろ過大な要求をされている国がありまして」、「もうちょっと妥当な要求に頭を冷やしてもらわなきゃならない」と述べた。

ニュージーランドは国内市場が小さいことから輸出に力を入れており、輸出全体のおよそ60%を農産物が占めている。
中でも、バターやチーズなどの乳製品が輸出される農産物のおよそ半分を占めており、経済的に重要な位置を占めている。

同国にとって、競争力がある乳製品の輸出拡大は重要な政策課題であり、「安易な妥協」を認めず本来の理念を強調することは、ニュージーランドの国益とも一致する。

閣僚会合後の共同記者会見では、ニュージーランドは、小規模経営の酪農家が多い日本やカナダを念頭に、 「乳製品に競争力がない国と難しい問題を抱えてしまうのはいつものことだ」と述べ、自らの主張に問題がないことを強調した。

TPPは元々はニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、チリの4カ国がモノやサービスのやりとりを原則自由にしようと結んだ貿易協定が前身で、2005年7月18日に締結、2006年11月8日に発効した。

これによれば、他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定している。

実際は下記のとおり順次撤廃する。

ブルネイ チリ ニュージーランド シンガポール
発効時 92% 発効時 89.39% 発効時 96.5% 発効時 100%
2010年 残り1.7% 2009年 残り0.94% 2008年 残り0.03%  
2012年 残り1.1% 2011年 残り0.29% 2010年 残り1.54%  
2015年 残り5.2% 2015年 残り0.12% 2015年 残り1.92%  
  2017年 残り9.26%    


この協定の拡大である現在のTPPは「全ての関税撤廃」には程遠く、ニュージーランドの主張も理解できる。


最大の問題は「新薬データの保護期間」で、バイオ医薬品について、米国は「12年」、日本は「8年」を主張しているのに対し、価格の安い後発薬を多く使う豪州やマレーシアなどは、新薬が保護されると医療費が高くなるとして「5年」を求めてきた。

新しい医薬品は特許で守られる。特許保護期間は20年である。ただし、医薬品の場合、臨床試験や審査に多くの年数を要し、販売を開始するときには特許切れまで数年しかない場合が多い。

このため、各国は特許とは別に、医薬品規制当局に提出する臨床試験データ等を承認申請時から一定期間保護している。
この保護期間中は、仮に特許が切れたとしても、ジェネリックメーカーは、独自に臨床試験データを作成する場合には膨大な手間とコストがかかるため、実質的に販売できないこととなる。

米国では保護期間は一般医薬品は5年、バイオ医薬品は12年となっている。

日本では一般医薬品は8年、稀少疾病用医薬品は10年。
(薬事法では、新薬承認時に指定される「再審査期間」中は
ジェネリック医薬品の承認に新薬と同等の資料が必要と定めらており、実質的にデータ保護期間の役割を果たす)

EUは10年。

「国境なき医師団」は、途上国で使われるエイズ治療薬の8割以上がジェネリックだと指摘し、「知的財産権の保護」によって、医薬品価格を高止まりさせる米国の「誤ったビジネスモデル」で、「人命が左右される事態になる」と批判している。

会合では、米国や日本が原則8年、バイオ医薬品について12年を要求、逆に、後発医薬品に依存するニュージーランドや豪州、マレーシアなどは5年を求めて対立が続いた。

米国紙によると、米国は最終的に「12年」は降りる姿勢を示した。日本は期間延長に際し、猶予期間を設ける提案をしたとされる。

しかし、合意には達せず、最後にニュージーランドは米国や日本、カナダなどに乳製品の大幅な輸入拡大を求め、 それがない限り、5年間の保護期間を譲らないとした。

 

他にも各国間でまとまらない項目は残っているが、新薬データ保護期間でまとまる見込みがないことから、各国とも最後の切り札を切らなかった。

ーーー

これまでは、米国大統領に強力な通商交渉の権限(Fast track negotiating authority ) を与える貿易促進権限(通称TPA)が切れていたため、交渉で妥協して合意しても米国議会がその部分を認めない可能性の恐れから、各国が最後の切り札を切らなかった。

6月24日に米議会は貿易促進権限(TPA)法を可決、翌日にはこれと対の、失業者対策を盛り込んだ貿易調整援助制度(TAA) 法案を可決し、オバマ大統領は6月29日、TPA法案に署名、成立した。

2015/6/25    米上院がTPA法案可決 近く成立

これで障害はなくなり、今回で一気に合意に達すると思われたが、米国の根回し不足でまとまらなかった。

米政府はTPA法により、TPPの署名の90日前に議会に通告する必要がある。その後に始まるTPPの実行に必要な法改正などを盛り込んだ関連法案の審議にも90日程度かかる。年明け2月には 大統領選挙の予備選が始まるため、年内の議会承認が必要である。

年内の米議会承認には、8月末がギリギリのタイミングで、次も合意に失敗すれば、 見通しがつかなくなる。



 

ロッテホールディングスでは7月17日、韓国ロッテの会長でロッテHDの取締役副会長の重光昭夫(辛東彬)氏が、ロッテHDの代表取締役副会長に就任した。
重光昭夫(辛東彬)氏は重光武雄(辛格浩)会長の次男。

重光武雄(辛格浩)会長、重光昭夫副会長、佃孝之社長の代表取締役3人体制となった。

2015/7/28   ロッテ、初の日韓連結財務諸表作成 


直後の7月28日、ロッテHDは取締役会を開き、創業者の重光武雄会長が代表権を外れ、名誉会長に就く人事を決めた。

創業者の重光武雄(辛格浩)氏 (92歳)の長男 重光宏之(辛東主)氏(61歳) と次男 重光昭夫(辛東彬)氏 (60歳)の内紛の結果とされる。

報道によると、今回の経緯は下記の通り。

重光武雄総括会長の長男は7月27日、父親の総括会長を車椅子に乗せ、金浦空港から日本に飛んだ。
長女の辛英子ロッテ福祉財団理事長、甥の辛東仁ロッテジャイアンツオーナー代行らが同行した。

一行は東京に到着すると、新宿のロッテHDのオフィスに直行した。
総括会長は、取締役らに対し、「自分を除く6人の取締役全員を解任する」と宣言した。次男の重光昭夫副会長や佃孝之社長も含まれていた。

重光昭夫副会長は7月28日朝、正式な取締役会を招集し、適法な決議を経ていない解任命令を違法だとした。
出席していない重光武雄総括会長を日本のロッテHD代表から退任させ、名誉会長に就任させることを決めた。

ロッテグループは「総括会長は日本での代表職のみを退き、韓国では総括会長職にとどまり、これまで同様に全ての報告を受ける」とし、重光昭夫会長が韓日双方のロッテを代表すると説明した。

ロッテ幹部は「グループと無関係な人物が総括会長の法的地位を利用するケースが再び起きないようにするため、総括会長には名誉会長に就いてもらった」と語った。単独では行動が不便で、90代の総括会長を重光宏之元副会長が「利用」したとの判断からという。

  日本 韓国
重光武雄 (92)
(辛格浩)

     創業者、総括会長

2015/7/28  ロッテHDの代表権外れ、名誉会長に  
長男 重光宏之 (61)
(辛東主)
当初、ロッテHD 副会長

2015/1 ロッテHD副会長 解任
     グループ役職全てから外れる。
 
次男 重光昭夫 (60)
(辛東彬)

2015/7/17 ロッテHD代表取締役副会長 就任
                (日韓双方で実質トップに)
韓国ロッテ会長


総括会長は18歳の時に日本に定着したが、韓国籍のまま。
日本で生まれた長男、次男は一時韓国と日本の二重国籍だったが、現在はいずれも韓国籍とされる。

今回、ロッテHDの代表権を持つのは、重光昭夫副会長と佃孝之社長の2人となる。


しかし、これで決着ではない。重光宏之氏は今後開かれるロッテHDの株主総会で取締役の入れ替えを提案するとしている。

ロッテHDには、総括会長が代表を務める資産管理会社「光潤社」が27.65%出資し、3氏や親族が直接出資しているほか、社員持ち株会が32%超を所有する。
総括会長の長女・辛英子理事長が「キャスティングボート」として存在感を強めているとされる。

報道によると、「光潤社」がロッテHDの株を 27.65%保有する実質的な持ち株会社で、同社の株は総括会長が3%、兄弟が 29%ずつ保有する。
今回の事態を受け、自社株 12%を昭夫氏が譲り受けることにしたとの報道もある。

光潤社と社員持ち株会をどちらが支配するかにより、結果が決まるが、大波乱も予想される。

ーーー

重光宏之氏は7月30日付の日本経済新聞でインタビューに応じ、経緯を話した。

宏之氏のロッテHD副会長解任:

投資案件が予算オーバーし、会社に損害を与えたとの理由。
損害は数億円ほどだったが、昭夫氏などが曲解した情報を父に伝え、永久追放に近い状態にされてしまった。

ようやく連休明けぐらいから『実はこういうことだったんだ』と話を聞いてもらえるようになった。

不文律を破り、韓国のロッテ製菓の株を買い増したとの話は、会長からの指示だった。昭夫氏に対抗してではない。

今回のロッテHD役員全員解任:

佃社長が功績のあった取締役などをこの1年で9人も辞めさせたことに総括会長が立腹し、直接解任を指示したが無視された。

昭夫氏も中国事業をはじめ韓国ロッテの業績をきちんと報告していなかった。昭夫氏が日韓両方の経営を見るということも総会会長は知らなかった。
総括会長は昭夫氏に日本ロッテグループ役職からの解任を指示したが無視された。

このため、『自分で直接行って申し渡す』と来日し、6人の取締役の解職と執行役員4人の選任の人事を発令した。

株主総会:

総会では取締役の入れ替えを提案する。

ロッテHDの議決権は総括会長が代表の資産管理会社が33%持つ。自分の2%弱と32%超の従業員持ち株会を合わせれば3分の2となる。

ーーー

ロッテは、総括会長が1948年に東京で創業し、日韓国交正常化後の1967年に韓国へ進出した。
韓国では小売業やホテル、石油化学なども手がけており、サムスンなどに次ぐ韓国財閥5位。  

2015/7/28   ロッテ、初の日韓連結財務諸表作成 


韓国の事業規模がはるかに大きいが、韓国ロッテの持ち株会社に当たるホテルロッテの株は日本側がほとんどを握っている。

ロッテHDが19.07%、総括会長が代表である日本の複数の「L投資会社」が72.65%、光潤社が5.45%保有するとされる。

 

今回の騒動で、ロッテは規模こそ大きいが、総括会長のワンマン個人会社であることが判明した。

これまでは早く、大胆な意思決定
のメリットがあったと思われるが、2代目が実質経営を担当する時代になっても、同じ体制を続けているのは問題である。

 

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