2007年1月アーカイブ

欧米の報道機関は、フランス/ドイツのSanofi-Aventisと米国のBristol-Myers Squibbが合併し世界最大の医薬品会社となるとの噂を報じた。両社が合併で基本合意したとしている。
これに対して両社ともコメントしていないが、Sanofi-Aventisの株は下がり、逆にBristol-Myers 株は値上がりした。

Bristol-Myers1887年開業、Squibb 1856年開業で、1989年に両社が合併し、Bristol-Myers Squibbとなった

Sanofi-AventisはHoechstと Rhone Poulenc が合併してできたAventisと、フランスのSanofi-Synthelaboが2004年に合併したもの。
2006/3/6 「
世界の医薬会社の構造改革 参照)

Sanofi-Aventisの2005年の医薬品売上高(324億ドル)
はPfizer(443億ドル)に次ぎ世界第二位。Bristol-Myers(153億ドル)は第10位で、合併するとPfizerを抜きトップとなる。
(世界の医薬品ランキングはUto Brain 資料から

http://www.utobrain.co.jp/news-release/2006/061200/ 参照) 

Sanofi-Aventisにとってはこの合併は以下の意味をもつ。
 ・規模拡大
 ・両社とも有力薬品が特許切れ間際になっているが、
Bristol-Myersは新薬候補を持つ。
 ・米国進出手段
 ・乗っ取り回避(13%の株主のトタルは本年後半の株の売却を匂わしている)


Bristol-Myers も、Sanofi-Aventis もからむが、有力薬品のジェネリック品をめぐってトラブルを起こして経営がガタガタし、昨年9月にCEOのPeter Dolan が辞任に追い込まれており、株価は低落、Schering-Plough AstraZenecaなどが売却先に噂されている。

 

事態は以下の通り。

Sanofi-Aventisが開発した抗血小板剤 Plavix に関して、米国ではBristol-Myersが、米国以外ではSanofi-Aventisが販売する契約を結んでいた。
この特許は
2011年まで有効だが、カナダのGenerics 医薬品会社のApotex が特許無効を主張して米国でこれを販売しようとした。

20063月に3社は和解契約を締結した。
内容は、
Bristol Sanofi Apotex 4,000万ドルを支払い、Apotex2011年までgeneric品販売を延期するというものであった。

合意にはApotex側の要請で、和解の政府承認が得られない場合には、Bristol が特許侵害訴訟に勝利した場合にApotexに請求できる損害賠償金額に上限を設定すること、Bristol Sanofi Apotexgeneric発売後5営業日までは差し止め命令を求めることができないという条項が入っていた。

この合意はFTCに認められず、Apotexは和解が不可能になったとして、8月8日にgeneric品を発売した。Bristol Sanofi 米連邦地裁に販売の暫定的差し止め命令を14日に求めたが、判事が数週間後に販売の一時差し止めを命じるまで Apotex は大量に出荷する時間を稼いだ。
更に、両社の帳簿に不審な点が発見され、合意に関して政府を欺いたのではないかとして捜査が開始され、
BristolのCEOのPeter Dolanの事務所が捜索された。2006年 9月 12日、CEO が辞任に追い込まれた。

なお、本特許の有効性に関する裁判は本年1月22日に始まったが、確定までに最低3ヶ月かかるとみられている。

 

Naphthagraph_2

国産ナフサ価格=3ヶ月平均輸入価格+2,000円

2006/10輸入価格  49,143円
2006/11  45,071円
2006/12  44,129円
平均  46,117円
国産ナフサ価格  48,100円

国産ナフサ価格については下記参照
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2006-7-2.htm#naphtha-price
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2006-11-1.htm#naphtha-3Q

 

インドのコングロマリットのEssarグループ傘下のEssar Chemicals は今年に入り、相次いで2つのプロジェクトを発表した。

1月22日、Totalの塩ビ・化学品・機能製品部門 Arkema と Essar Chemicals はインドでのアクリル酸とアクリル酸エステルの製造販売の50/50JVのFS実施の覚書を締結した。インドでのアクリル酸の事業化は初めて。ワールドスケールの工場を2010年にスタートさせる計画で、インドとアジア市場を狙う。

更に26日、Eastman とEssar Chemicals は年産15万トンのオキソアルデヒドとその誘導品の製造販売についてのFSの完了と覚書の締結を発表した。

Essar Chemicals の計画はいずれも、Vadinar製油所の製品のプロピレンを利用して高付加価値製品を製造するもの。

Arkema はフランスのCarling と米国 Bayport (USA) にアクリル酸の拠点を持つが、この計画でグルーバルプレヤーとしての地位を強化するとしている。また、Eastmanはこれによりインド市場への進出をしたいとしている。

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Essar Group はインドで急成長しているグループで、製鉄、石油・ガス、電力、モバイル通信、海運、建設など、幅広い活動をしている。グループの資産は60億ドル、従業員は約2万人。

石油・ガス部門のEssar Oils はインドとミャンマーで石油と炭層メタン(coal bed methane採掘を行っている。
製油所は西海岸の
Jamnagar の近郊のVadinarに昨年11月に操業を開始した。能力は1,050万トンで、当面750万トンでスタートし、半年でフル稼働にもっていく。
この製油所の建設は
1996年に始まったが、98年に60%完成した時点でサイクロンの被害を受けて中断、その後も環境問題や資金不足で建設が遅れ、2005年に建設を再開した。120MWのコジェネや港湾、ターミナル設備を備えている。

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付記

2006/6/5 「インドのエチレン計画」でインド国営石油会社(IOCL)がニューデリー近郊のPanipat建設する初のエチレンプラントについて述べた。

Foster Wheeler は25日、IOCLの Paradip製油所計画の基本設計等を受注したと発表した。
インドの東海岸の新しい製油所は原油処理能力 15百万トンで、芳香族とPPのプラントを含んでいる。
能力は石油製品 1050万トン、PP 70万トン、TPA 120万トン、SMが60万トンとなっている。

今回の契約にはParadipの第二期のナフサクラッカー計画の詳細FSの実施も含まれている。
計画では、
エチレン能力100万トンで、HDPE、LLDPE、PP(増設)、MEG等を建設する。

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Indiamap_3

ブッシュ大統領は1月23日、一般教書演説を行い、その中でエネルギー政策の強化を表明した。

米国が海外の原油依存が高いため、敵対国やテロ集団に原油輸送を妨害されると価格アップが生じ、経済に悪影響を与えるとし、クリーンな石炭、太陽・風力発電、クリーンで安全な原子力発電の利用や、ハイブリッド車、バイオ燃料等により、10年でガソリン消費を2割削減しようと提案した。これが出来ると、現在中東から輸入している原油の75%分をカットできることとなる。

このために2017年に再生可能燃料を350億ガロン使用するという目標を決め、代替燃料の供給を増加させねばならないとした。
従来の目標は2012年に75億ガロンであった。昨年の使用実績は約40億ガロン。

更に、不時のトラブルを避けるため、戦略石油備蓄を倍増し15億バレルに拡大することを提案した。

演説の前日には米国の有力企業10社が温暖化ガスの排出量の削減を目標にする新規立法を要請しているが(下記)、大統領は演説のエネルギー部分の最後に、技術開発を進めて「地球温暖化の悪影響に対応する」とし、地球温暖化に触れはしたが、温暖化ガスの削減義務を企業に課す措置には踏み込んでいない。

また、バイオ燃料については、「木くずから草、農業から出る廃棄物まで全てを使ってエタノールをつくる」とし、現在の主力であるトウモロコシには触れなかった。トウモロコシ相場の高騰を招いていることも配慮した模様である。

エネルギー部分の全文は以下の通り。

Extending hope and opportunity depends on a stable supply of energy that keeps Americas economy running and Americas environment clean. For too long our nation has been dependent on foreign oil. And this dependence leaves us more vulnerable to hostile regimes, and to terrorists, who could cause huge disruptions of oil shipments and raise the price of oil and do great harm to our economy.

It
s in our vital interest to diversify Americas energy supply, and the way forward is through technology. We must continue changing the way America generates electric power by even greater use of clean coal technology, solar and wind energy, and clean, safe nuclear power. We need to press on with battery research for plug-in and hybrid vehicles, and expand the use of clean diesel vehicles and biodiesel fuel. We must continue investing in new methods of producing ethanol, using everything from wood chips, to grasses, to agricultural wastes.

We made a lot of progress, thanks to good policies here in Washington and the strong response of the market. And now even more dramatic advances are within reach. Tonight, I ask Congress to join me in pursuing a great goal. Let us build on the work we
ve done and reduce gasoline usage in the United States by 20 percent in the next 10 years. When we do that, we will have cut our total imports by the equivalent of three-quarters of all the oil we now import from the Middle East.

To reach this goal, we must increase the supply of alternative fuels, by setting a mandatory fuels standard to require 35 billion gallons of renewable and alternative fuels in 2017. And that is nearly five times the current target. At the same time, we need to reform and modernize fuel economy standards for cars the way we did for light trucks, and conserve up to eight and a half billion more gallons of gasoline by 2017. Achieving these ambitious goals will dramatically reduce our dependence on foreign oil, but it
s not going to eliminate it. And so as we continue to diversify our fuel supply, we must step up domestic oil production in environmentally sensitive ways. And to further protect America against severe disruptions to our oil supply, I ask Congress to double the current capacity of the Strategic Petroleum Reserve. Americas on the verge of technological breakthroughs that will enable us to live our lives less dependent on oil. And these technologies will help us be better stewards of the environment, and they will help us to confront the serious challenge of global climate change.

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米大手企業10社と環境政策のシンクタンクなどでつくるUnited States Climate Action Partnership (USCAP) 22日、温暖化ガスの削減を義務化する立法を促す提言 A Call for Action を発表した。
http://www.us-cap.org/ClimateReport.pdf

温暖化問題を懸念し、議会は出来るだけ早く法律を作るべきだとしている。
環境目標の設定、段階的な費用効率のよりアプローチ、短期目標と中期目標の設定が必要で、
Cap &Trade(排出権取引)が重要とし、議会に対して、温暖化ガスを5年で現在レベルの100-105%、10年で90-100%、15年で70-90%という削減義務の設定を求めている。

USCAPのメンバーは以下の通り。

企業:AlcoaBP AmericaCaterpillar Inc.Duke EnergyDuPont
   
FPL Group(Florida Power & Light Company)、
    General Electric、Lehman Brothers、
       PG&E Corporation(Pacific Gas and Electric)、
       PNM Resources
(Utilitly)
非政府団体:
      
Environmental Defense
      
Natural Resources Defense Council
   Pew Center on Global Climate Change

      
World Resources Institute.

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このほか、民主党のビンガマン、共和党のスペクター両上院議員は22日、温暖化ガス削減の義務を盛り込んだ提案を公表した。自動車の燃費規制の強化を求める動きも相次いでいる。

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1996年の国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2次報告書では「識別可能で人為的な影響が地球の気候に表れていることが示唆される」と初めて人間活動による温暖化を認めたが、米国は「温暖化は科学的に証明されていない」として、2001年に京都議定書からの離脱を表明した。

今回、第4次報告書が2月2日に公表される予定だが、報告書案では、地球の平均気温の上昇や氷雪の融解増などから、人間活動による温室効果ガスの排出で温暖化が確実に起きていると強調( "extremely likely" and "almost certain"温暖化への懐疑論を否定する内容となっている。

IPCC第4次報告書案骨子(毎日新聞から)
▽二酸化炭素(CO2)の大気中濃度は産業革命前の280ppmから2005年には379ppmに上昇した。
▽2000~05年の化石燃料からのCO2年平均排出量は90年代に比べ12%増加した。
▽南極の氷床から得られた過去65万年のデータから、現在の
CO2やメタンの大気中濃度は、産業革命前に比べてはるかに高い。
  化石燃料の使用、農業が主因。
▽地球の平均気温の上昇、氷雪の融解の増加などから温暖化は明白。
▽21世紀末の平均気温は20世紀末に比べ1~6.3度上昇と予測。
▽21世紀末の海水面は20世紀末に比べて19~58センチ上昇と予測。
▽温暖化で海水のpHは0.14~0.35下がり、酸性化が進む。
▽地球の平均気温が1.5~2.5度高まれば、20~30%の生物種が絶滅する恐れがある。
▽4度上昇で30億人が水不足に直面する。

なお、現在の大量消費型の社会から環境配慮型に転換すれば、21世紀末の温度上昇幅は、生態系への大きな悪影響を避けられる1度に抑えられるとしている。

2006年末、BBCA Biochemical が安徽省宿州市(Suzhou, Anhui )でバイオベースのMEGプラントの建設を開始した。

170百万ドルを投じて年産18万トンのMEGプラントを建設するもので、トウモロコシやタピオカからバイオルートでメタノールをつくり、メタノールからエチレン、更にMEGを生産する。年間60万トンのトウモロコシを使用する。建設期間は1年半。
同社はバイオエチレン、EO生産の実績を持っている。

中国ではこの数年PETの生産が拡大し、MEGの輸入が増大している。(2004年輸入量 339万トン、2005年 400万トンで、2006年 410万トン)

なお、原料トウモロコシの供給元である政府系の食料関係コングロマリットの中国糧油食品集団(COFCO: China National Cereals, Oils & Foodstuff Corp )がBBCAグループからBBCA Biochem
ical の20.74%の買収を決め、政府の認可待ちとなっている。

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BBCA Biochemical は、安徽省に本拠を置くバイオ企業BBCAグループに属している。Bbca_1

BBCAグループは大規模のバイオケミストリーのメーカーで、従業員は19,200人、2005年売上高は約1,000億円。
エネルギー、化学品、医薬品等、6つの子会社と1つの合弁会社から成り立っている。

1) BBCA Biochemical

BBCAグループの中核で、先進的なバイオ醗酵技術と分離技術を使って、農産物からバイオエネルギー、化学品を生産している。
製品には
①クエン酸、L-乳酸、グルタミン酸ナトリウム、スターチ糖などの食品添加物、②リジン、コーングルテン等の飼料添加物、③燃料用エタノール、バイオディーゼル等のバイオエネルギー、④バイオエチレン、EO、生分解性ポリマー、同繊維等のバイオ化学品がある。

バイオエタノールは能力
44万トンで、安徽省、山東省、江蘇省、河北省に供給している。

なお同社は2006年に、ブラジルでサトウキビ農園を買収してサトウキビ原料のエタノールを生産する構想を打ち出している。

2) BBCA Pharmaceutical

GMP適合の38のラインで漢方薬も含め360種の医薬品を製造している。

3) BBCA Food

ビスケット、菓子、繊維含有食品、天然植物性たんぱく質、朝食シリアル("cereal breakfast")、ジェリー、レモネード等。

4) BBCA (Suzhou) Biochemical

トウモロコシ等を原料にエチレン、EO、EGを生産(能力2万トン

5) BBCA Edible Oil

トウモロコシ胚芽、ナタネ、ピーナツ、大豆などからの良質の食用オイルの生産。

6) BBCA Gelatin Company

医療用ゼラチン、食用ゼラチン、写真用ゼラチンの生産。

7) Jiangsu Jiangshan Pharmaceutical Co., Ltd

1990年設立のビタミンCのメーカーで、Jiangsu Worldbest Pharmaceutical Co. 等との合弁会社。
BBCAは2005
年に同社の株主のResistor Technology Limited を買収して参加した。

EUの欧州委員会は24日、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。日本企業は「欧州でほとんど売っていないのを理由に多額の制裁金を課せられる」という珍しいケースとなる。

ガス絶縁開閉装置は、しゃ断器、断路器、母線等をガスを封入した金属容器に収納して構成された開閉機器システムの総称。

少なくとも1988からカルテルを結んでいたとされる。各社が連絡をとりあって割当数量比率で受注できるよう調整し、最低価格を決めていた。また、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていた。

日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、上記の取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため、制裁金が課せられた。

スイスのABBが免責制度に基づき申告し、20045月に抜き打ち検査が行われ、調査が開始されたもの。

対象企業と制裁金の額は以下の通り。.(単位:千ユーロ)

  免責額 制裁金
Siemens(ドイツ)     396,563
Siemens(オーストリア)      22,050
ABB(スイス)  215,156       0
三菱電機     118,575
東芝      90,900
Alstom(フランス)      65,025
Areva(フランス)      53,550
日立製作所      51,750
Schneider(フランス)      8,100
富士電機システムズ      3,750
日本AEパワーシステムズ*      1,350
合計  215,156   750,713

* 富士電機システムズ、日立、明電舎のJV

欧州委員会では本件はECの独占禁止ルールの重大な違反であり、制裁金額は市場の大きさ、カルテル期間、関与した企業のサイズなどを勘案したとするが、詳細は明らかにしていない。
上記のうち、Siemens, AlstomAreva の3はカルテル主導社として制裁金が50%増しとなっている。
また、ABBは再犯のため制裁金が
50%となっているが、自主申告により全額免責となった。

三菱電機は「通知の内容を詳細に確認のうえ、裁判所への提訴も含めて対応を検討する」としている。
東芝も「当社は、欧州委員会の調査に協力して参りましたが、当社の調査では欧州競争法に違反する行為を行っておらず、欧州裁判所において今回の決定を争っていく方針」としている。

Siemensは「価格カルテルは2002/10~2004/4の短期間に2、3のプロジェクトであっただけで、1988年からのカルテルはない」としてカルテルの存在は認めるが小規模のものとし、「制裁金の額は無茶苦茶で、どうしてこんな額になるのか理解できない」として、欧州裁判所に訴えるとしている。

ーーー

欧州委員会の主張が事実なら、逆に日本では、日本企業は欧州に出ない代わりに欧州企業に販売させないことで、欧州企業は日本で販売しないことで、ともに日本での競争を制限していることとなる。

日本の公正取引委員会は、日本企業及び欧州企業に対して、どういう行動を取るのであろうか。

エジプトのPP事業

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Thyssenkrupp社は15日、子会社のエンジニアリング会社UdheEgyptian Propylene & Polypropylene Company(EPPC) からターンキイベースで石油化学コンプレックスの建設を受託したと発表した。ライセンス、基礎及び詳細設計、機器手当、建設、訓練、試運転までを含む。

EPPC社はエジプト唯一のPPメーカーOriental Petrochemicals Company (OPC)とエジプト政府のエジプト石油化学公社. Egyptian Petrochemicals Holding Company (ECHEM) の50/50の合弁会社で、Port Said にそれぞれ35万トンのプロピレン及びPPを建設する。投資額は680百万ドルで、2009年末の完成を目指す。

同国の天然ガスを原料とし、Uhde STAR (STeam Active Reforming) プロセスでプロパンからプロピレンを製造し、BasellSpheripolプロセスでPPを製造する。PP65%以上は欧州と北アフリカ市場に輸出する。

STARプロセスはUhde1999年にPhillips Petroleum から導入し、その後開発を進めたもので、プロパン脱水素でプロピレンを、ブタン脱水素でブチレンを製造する技術。
(技術の詳細
 
http://www.uhde.biz/cgi-bin/byteserver.pl/archive/upload/uhde_brochures_pdf_en_12.00.pdf

この建設工事を巡っては、Uhde と東洋エンジニアリングの2社(当初はLinde も加わったが、他の事業が忙しく離脱)で争った。TECOPCPP工場の建設を請け負った実績があったが、Uhdeが勝ち取った。

ーーー

OPC1996年設立のPPメーカーで、ECHEM が 6%、カーペットメーカーのOriental Weavers が5%出資している。
工場はSuez
にあり、現在の能力は16万トン(当初は12万トン)。原料プロピレンはリビアから輸入、製品の6割はOriental Weavers のカーペット用で、残りは外販及び輸出。

建設を巡っては1996年から日本(TEC)と欧米5社が争い、最終的に1998年3月にTECが選ばれた。
契約金額8千万ドルのターンキー・ランプサム契約で、
UNIPOL技術を使用している。2000年10月には早くも試運転を開始している。2001年7月完成。

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ECHEMは2002年1月にエジプト政府がエジプトの石油化学を運営・管理するために設立した。
エジプト政府は20036月に、同国の豊富な天然ガスを利用した石油化学20戦略計画を発表しており、同社はこれの立案、遂行、管理を担当する。

台湾の中国石油が中東進出を検討中であることを明らかにした。

台湾国営の中国石油は高雄に日産 270千バレルの製油所と50万トンのエチレンコンプレックスを所有しているが、高雄の石油・石化基地は住民からの公害問題での苦情を受け、2015年までに閉鎖することが決まっている。

* 台湾のエチレンは http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/taiwan-complex.htm 参照
  高雄のエチレンは
隣接する林園コンプレックスに送付している。

中国石油は、2006年1月に、同社43%出資誘導品各社との合弁会社 Kuokuang Petrochemical Technology Co 國光石化科技)を設立し、雲林に120億米ドルを投じて、日産30万バレルの製油所とエチレン120万トンを建設することを決めたが、政府認可取得、土地買収に失敗した。
温室効果ガスの増大の懸念から政府の環境アセスメントをパスできず、850戸の漁民の立ち退き交渉もまとまっていない。

このため中国石油では、最後の手段として、サウジか、オマーンか、アラブ首長国連邦に進出し、石化事業を行うことを検討しているという。

中東進出は、これまで中東のどの国とも国交のない台湾にとって政治的な意味合いもある。

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他方、台湾のもう一つのエチレンメーカーFormosa Plastics は以前から浙江省寧波市北崙経済技術特区に石油・石化基地の建設を目指して中国、台湾両政府に陳情を行っている。現在の計画は、年産10百万トンの製油所、120万トンのエチレン、60万トンのプロピレン、及び各種誘導品である。

1月17日に中国国家発展改革委員会の副委員長とFPCのオーナーの王永慶がFPCの寧波計画に関して会談したと伝えられている。

2006/11/18 「米国住宅着工件数、続落」参照。Ushouse2006

2006年の住宅着工件数は1,801千戸で、前年比13%減となった。1月は前年を上回り、1-6月は平均2,000千戸であったが、下期は急降下して平均1,639戸と2003年もはるかに下回った。

前回にも述べたが、住宅の動向はPVCの需要に影響する。

米国では住宅関連がPVCの需要の60-70%を占めるといわれる。
第4四半期にはいり、米国のPVC需要は減少しており、業界では操業度が第3四半期の94%から76%程度に下がったと見ている。

塩ビメーカーで建材大手でもあるCertainTeed は本年2月に4つある塩ビサイディング工場のうち、カンサス州の工場を閉鎖するが、Georgia Gulf が一部のPVCプラントを一時的に停止したとの報道もされた。

信越化学の金川千尋社長は日本経済新聞(2006/11/29)インタビューで以下の通り述べている。

「主戦場である米国の経営環境は悪い。8月までは良かったが、9月以降、需給が悪化している。米住宅着工戸数は年初に200万戸を超えていたが、10月は148万戸まで減った。かなりひどい落ち込みだ。中国勢の増産のあおりで、アジアの需給も良くない」

「米国の需給が回復しなければ、米子会社は輸出で補う。中南米、インド、中東に加え、11月からトルコにも出荷を始めた。
来年(2007年)末には米国で増産設備を稼働させる。売り切るには相当な努力が必要だが、米子会社は最高益となる今期並みの業績を来期も確保したい」

シンテックの新工場はルイジアナ州イバビル郡プラクミンの南の元アッシュランドケミカルの工場敷地に建設しているもので、塩素45万トン、ソーダ50万トン、VCM75万トン、PVC60万トンの一貫生産を行う。二期に分けて建設し、第一期は塩素30万トン、ソーダ33万トン、VCM50万トン、PVC30万トンを建設する。当初は2006年末完成を目標としていた。
住宅建設が今後も停滞すれば、苦しいスタートとなる。

これまで米国の内需減少時には、メーカーは輸出に走り、アジアの市況を下落させた。(逆に内需増加時は輸出をやめるため、アジア市況は高騰した。)
最近は中国需要増大がこれを吸収し、原油価格アップもあって、アジア市況は堅調だった。

しかし今回は、中国の増設で中国は逆に輸出を伸ばしている状況であり(かつ、原油価格下落で値下げ要請が高まっており)、米国の輸出増は確実にアジア市況に影響を与える。

GEについて

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2007/1/11 「GEがGEプラスチックスを売却か?」 参照
(追加情報 2007/1/16
 「インドの Reliance Industries)

GE18日に米医薬大手のアボット・ラボラトリーズの診断機器部門の一部を813千万ドルで買収すると発表した。

今年に入り、GEは先ず8日にJPモルガン・パートナーズなどの投資ファンドから、原油・ガス採掘関連機器のVetco Gray 19億ドルで買収すると発表した。同社の2006年の売上高は16億ドルで、従業員は30カ国以上で5000人。
石油・ガス産業でのGEの存在を拡大するもので、インフラストラクチャー部門の強化となる。

更に15日には自動車・航空部品大手の英スミス・グループの航空宇宙部門Smiths Aerospace 48億ドルで買収することも決めた。
この買収はGE Aviation
 部門の民間機及び軍用機用エンジンに、Smith の飛行管理システムその他を加えることにより、この分野での活動を高める効果がある。

今回GEが買収するのは、アボットの診断事業のうち試験管を使った血液検査機器などin vitro diagnostics businesses and Abbott Point-of-Care diagnostics business
アボットの糖尿病治療ビジネス(Diabetes Care business)やエイズ検査に使う分子診断薬(Molecular Diagnostics business)などは含まれない。
今回の買収は、アボットの診断事業とGEの情報技術を組み合わせることにより、早期検診→発症前の病気発見→病気予防という、新しい "early health" model をつくるという GE Healthcare部門の戦略に大いに役に立つとしている。

この3つの買収で、今月だけで総額約150億ドルの買収となる。
検討中のGEプラスチック売却は、これらの買収費用に充当するとともに、事業構造を一気に変えることとなる。

同社は1月19日に第4四半期結果を発表したが、その中でプラスチックス事業の処分を検討していることを正式に明らかにした。

発表のなかで、GEのJeff Immelt 会長兼CEOは次のように述べている。
「我々はleadership businessへの投資戦略を継続して実行する。我々の狙いはより速い成長、より高い利益である。
本年に入り、原油・ガス、ヘルスケア、航空という成長プラットフォームでの150億ドルの買収を発表した。
逆に成長が遅く、変動の激しい事業からの撤退を続ける。現在、プラスチック事業の処分を検討中である」

ーーー

General Electric(GE)の源は、発明家トーマス・エジソンが設立したEdison Electric Light Companyで、1892年、Edison General Electric Company Thomson-Houston Electric Companyが合併してGEが誕生した。

GEはダウ・ジョーンズ工業株平均株価が1896年に導入された当時指標銘柄に選ばれた会社の中で、現在もリストされている唯一の企業。

GEの現在の事業ポートフォリオと売上高、損益の推移は以下の通り。
(部門別損益は税引前、金利控除前。連結損益は税引き後)

事業ポートフォリオ

  コンシューマー・ファイナンス  クレジットカード、パーソナルローンなどの個人向け金融
  コマーシャル・ファイナンス 機器・自動車リース、不動産などの法人向け金融
  NBCユニバーサル 放送、エンターテイメントなど、子会社にUniversal Pictures
   ヘルスケア 医療用画像診断装置、ライフサイエンスなど
  インダストリアル 高機能プラスチックス(売却検討)シリコーン(2006年売却)、クオーツ等の素材、セキュリティやセンサー、家電、照明、FAシステムなど
  インフラストラクチャー エネルギー関連機器、航空機エンジン、水質浄化システム等

 

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大連の大型商業施設、「マイカル大連商場」の工事費用の残金支払いなどを巡り中国で争われていた裁判で、清水建設の敗訴が確定したことが17日分かった。

中国の最高裁にあたる最高人民法院が昨年12月26日に言い渡したもので、2004年末に遼寧省高級人民法院が下した判決を全面的に支持した。

1998年9月にマイカルは大連の老舗デパート大連商場と提携し、大連の中心部の一等地に「マイカル大連商場」をオープンさせた。
マイカルの売場は新築の37階建てのビルの地下1階から地上6階までを使い、1階には吉本興業が中国で初めてプロデユースする劇場「龍舞天堂」が入り評判になった。
ビルの上階には「スイスホテル大連」(327室)のほか、マンション(14~20階)、オフィス(11~13階)が入った。

マイカルは2001年9月14日に第一勧業銀行から金融支援の打ち切り宣告を受け、経営破綻。その後、銀行と社長が会社更生法申請を考えたが、他取締役が民事再生法申請を主張して社長を解任するという事態となった。
その後、民事再生は難航し、結局、会社更生法を申請してイオンの完全子会社となり、2005年末に更生手続きを終えている。
この間、マイカル大連商場は中国側の手に移った。

清水建設は1996年1月に、このビルの建設を1億5400万ドルで大連国際商貿大厦(国貿大厦)から請け負い、98年10月に完成物件を引き渡した。
契約では契約締結時から引渡し時までに工事代金を4分割で支払われることとなっていたが、最後の1/4の3,850万ドルが未払いとなった。

このため清水建設は、中国の時効となる2000年10月に日本の高裁にあたる遼寧省高級人民法院に国貿大厦を提訴した。

清水建設側の主張は、当初契約通りの、中国の建築基準に従った建物を建てた。引き渡しも終えているので約束通りに代金を支払えというもの。
これに対して、一方の国貿大厦側は、契約通りの建物ではなく、正式な引き渡しを終えていない、
工事代金の1億5400万ドルは概算に過ぎず、第三者機関の鑑定結果によれば、実際は多く支払いすぎていると反論した。

2004年末の遼寧省高級人民法院の判決は意外なものであった。
清水建設は契約通りの引き渡しを国貿大厦に行っておらず、清水建設が建てた建物は1億5400万ドル(契約締結時)の価値はない。この結果、
新たな鑑定結果から支払済みの1億1550万ドルから差し引いた938万841ドルの返還に、工事の品質に起因する改善費用などを加えた約1590万ドルを国貿大厦に支払えというものである。「建物の瑕疵」は後になって主張されたものという。

清水建設はこれを不服として、北京の中国最高人民法院に上訴した。
昨年12月26日の判決は
一審と同様、溝水建設に対し、工事費用の過払い分の払い戻しや欠陥工事の修理費用などに加え、二審の裁判費用全額の合計約20億円の支払いを命じ、清水建設の敗訴が確定した。

清水建設は「契約も残高確認書も全く無意味という事態は経験がなく、どうにも理解し難い判決」としているという。

契約が無意味というのであれば、中国での事業は難しい。
この判決が広まると、同様の口実での不払いが起こる可能性がある。

 

2007/1/8 「日本のバイオガソリンの動き」で環境省補助事業の廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラント竣工と、石油連盟の「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」設立について述べた。

112日のNHK ニュースは、バイオエタノールの国内初の商業用プラント完成を報じたが、「車の燃料にする際のガソリンとの混ぜ方をめぐって環境省と石油業界が対立しており、操業開始を来週に控えた今も流通ルートを確保できない異例の事態となっている」とし、以下のように伝えた。

環境省などはエタノールをそのままガソリンに混ぜる直接混合方式を採っているが、石油業界はエタノールと石油ガスを化学的に合成してからガソリンと混ぜる方式で計画を進めており、対立が続き、プラントは16日に操業を始めるが、石油業界は、エタノールと混ぜるガソリンの供給や混合燃料の販売に協力しない意向を示し、流通ルートはいまだに確保されていない。

石油連盟は「直接混合はガソリンの品質を悪化させるおそれがあり、現段階での導入には反対だ」とし、環境省は、「直接混合はアメリカなどで広く実用化されている技術で、二酸化炭素の削減目標を達成するためにも引き続き協力を求めたい」としている。

NHKは16日夜7時のニュースでも「バイオエタノール 問題抱えスタート」として詳しく伝えている。

若林環境大臣は「日本が世界に誇れる画期的な技術で、品質にもまったく問題はない。石油業界には引き続き協力を求めていきたい」と話している。

ーーー

石油連盟の渡文明会長は新年賀詞交歓会で、今年注力するテーマの一つとして、バイオガソリンに向けた本格的な取り組みをあげたが、「最近、安心、安全を無視した単純拡大、あるいは直接混入といった安易な動きが出てきている」と述べ、その先行きに懸念を示した。

石油連盟は、26日に設立するバイオマス燃料供給有限責任事業組合バイオガソリン原料としてETBEを輸入することを明らかにした。

2010ー11年のETBE混合レギュラーガソリンの本格販売に備え、まず、フランスからETBEを7500KLを輸入し、新日本石油の根岸製油所でガソリンと混合し、4月末までに首都圏の50の給油所で販売する。ETBE混合ガソリンはレギュラーガソリンと同じ価格にするとしている。

石油連盟ではETBEの供給体制が整うまでの間は欧州からETBEを輸入することを考えている。

付記 2007/4/5

安井至先生は「市民のための環境学ガイド」で「4月5日:バイオ燃料 市販へ」 でこれについて触れている。
http://mntrav.cocolog-nifty.com/kankyo/2007/04/index.html

C先生:この話、業界の我が侭である。
 ETBEの毒性は、以前、わが国でも似た化合物であるMTBEを使っていた。しかし、漏れて地下水に混じり、地下水が飲料不可になるといった環境問題が米国で起きて、日本でもMTBEの使用を止めた。
ETBEの毒性は、場合によっては、MTBEよりも高いという。
 そもそも、毒性のある物質をガソリンのように大量に使用すること自体に賛成できない。長期的に見れば、石油業界に対するリスクは極めて高いと言えるだろう。短期的に利益を確保するためには、ETBEを使うことが必要だが、後日、石油業界も後悔することだろう(もっともエタノールにだって毒性はあるが)。
 エタノールを混ぜても、ある一定量以下ならば、通常の自動車にも悪影響が出ないことは、すでに米国・ブラジルなどで証明済みである。
 渡文明石油連盟会長が「賛同できない」理由は何か。

付記 2007/4/7

フランスからのエチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(ETBE)約7800KLが6日、新日本石油精製の根岸製油所で荷揚げされた。
ガソリンにETBEを7%(エタノール分として3%)混入し、石油連盟に加盟する石油元売り各社が4月27日から首都圏50カ所のサービスステーションで試験販売する。
2008年度に100カ所、09年度に1,000カ所。10年度には全国約46,000カ所にある全サービスステーションで供給される。
この時点でのETBE混合ガソリンの利用量は年84万キロリットル。バイオエタノールでは36万キロリットル、原油換算では21万キロリットルに相当する。

ーーー

環境省は平成19年度の環境省の重点施策として「バイオエタノール導入加速化戦略」を挙げ、今回完成したプラントのバイオエタノールを大都市圏でのE3大規模供給実証のために供給する予定としているが、こんな基本的なことを調整していなかったのであろうか。

ーーー

エタノール混合燃料は、混合割合によって低温始動性への影響度、空燃比や出力などが変化するため、安定した動力性能や燃費、排出ガスレベルを維持することが課題であるようだ。

韓国では20067月からバイオディーゼル使用がスタートしたが、試験事業では20%混合であったが各精油会社が品質問題を取り上げた結果、軽油に0.5%を混ぜたものとなった

但し、自動車各社は技術的対応を進めている。

トヨタ自動車(2006/6/13発表 「環境対応技術の開発とエコカーの市場導入を強化」)
     
  エネルギー多様化への対応  
  バイオエタノール燃料対応車の導入
  全てのガソリンエンジンにおいて、バイオエタノール混合率10%燃料に対する使用時の耐久性確保など、技術的対応を完了
  バイオエタノール燃料が普及しているブラジル市場に、エタノール100%燃料にも対応するFFVを、2007年春を目処に導入
     
日産自動車(2006/12/11発表 「ニッサン・グリーンプログラム 2010」)
     
  バイオエタノール燃料対応車をグローバルに投入
  - グローバルに全てのガソリンエンジンで、バイオエタノール混合率10%燃料(E10)に対応済
  - 北米で2005年から発売しているタイタンFFV(バイオエタノール混合率85%対応車)に加え、2007年よりアルマーダFFVを投入
  - ブラジル市場へバイオエタノール混合率100%燃料(E100)対応車を3年以内に投入
     
ホンダ(2006/9/25発表 「ブラジル向けフレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)を開発」 )
     
  エタノール燃料でもガソリンとエタノールの混合燃料でも走行可能な「フレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)」を開発した。
     

なお、ホンダは2006年9月14日に、地球環境産業技術研究機構(RITE)と本田技術研究所による、セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術に関する共同研究の成果を発表している。

ーーー

付記 2007/1/25

石油連盟は24日、大阪や北海道で生産する国産バイオエタノールを購入する方針を明らかにした。石連はバイオエタノールを石油製品と合成した「ETBE」を4月末からガソリンに混合して販売する予定で、その原料に国産エタノールを使う。
(北海道では地元の農業協同組合がテンサイなどを原料にしたバイオエタノールの工場を建設、08年度中の稼動を目指している。)

国家発展改革委員会(NDRC)研究院は13日、2007年の消費成長は減速するとした予測レポートを発表した。

中国の個人消費が経済に占める割合は1991年の48.8%から、昨年は史上最低の水準38.2%まで落ち込んでいる。
NDRCは、現在の消費問題は今年、さらに目立ってくると予測し、「中国の70%以上の商品は供給過剰であり、需要が供給を上回るような商品は無い。供給過剰という問題は明らかで、今年はこの矛盾がさらに悪化するだろう」
としている。

2006/8/8 杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」で、杉本氏は以下のように述べている。

消費の伸びが減速したのは98年以降であるが、農民の収入が急減したことに加え、都市部においても朱鎔基内閣が国有企業の住宅保障制度の廃止や、医療保険などの社会保障機能を分離し、3年以内に再就職できない余剰人員をリストラするなどの大胆な経済改革を推進したため、国民の将来に対する不安が一挙に高まり、国民の貯蓄率は46%まで高まった

日本同様、年金制度は実質破綻状態に陥っており、遠くない将来、1人が8人の面倒を見なければならないという試算もあるほどで、そのため、将来の不安から、貧困者のみならず一般の給与所得者の間でも消費を控える傾向が強まっている。

NDRCは最近の消費拡大の重要な障害として、住民の教育費・医療費支出の増加を挙げている。中国の教育費と(幼稚園などの)保育費は、1998~2002年までのわずか5年間で112.1%上昇しており、医療・保健サービス価格も年平均10%以上の成長を続けているという。

 

杉本氏はまた、次のように述べている。

任期5年の党大会のサイクルの中で結論を出す必要に迫られている指導者たちにとり、5年間で成果をあげるために一番てっとり早いのは、工場や住宅建設を中心とする固定資産投資を積極的に行うことにより経済成長率を上げることで、経済成長率を高めることが、国家レベルから地方レベルまでの各指導者の至上命題となり、その達成度が評価基準になった。消費が伸びなくてアンバランスであろうが、固定資産投資を伸ばせば一定の成績を上げられることから、彼らはそうした政策に走らざるを得なかった。

現在の中国の高成長は設備投資が中心である。それらが完成した時点では需要と供給のギャップは更に広がることとなる。


20061230日に広西壮族(チワン族)自治区欽洲市で「PetroChina広西石油化学」の10百万トンの製油所の鍬入れ式が行われた。投資額は約20億ドルで、2010年完成を目指す。製品にはガソリン、ディーゼル、LPG、PP等を含むが、それぞれの能力は明らかにされていない。

中国南西部の四川省, 雲南省, 貴州省, 重慶市、広西壮族自治区では市場が拡大しており、石油製品の不足が生じている。.

本事業はPetroChinaとSinopecの初の共同事業で、PetroChinaが70%、Sinopecが30%の出資比率となっている。
当初、両社がそれぞれ別個に
広西壮族自治区での製油所建設を計画したが、中国政府が過剰能力、過剰投資を懸念して介入した。

この製油所が処理する原油がPetroChinaの親会社の中国石油天然ガス集団公司(CNPC)のスーダン原油であるため、PetroChinaが70%のシェアを獲得した。
(Sinopecの場合は国際市場からの購入となり、市場価格の変動にさらされる。)

ーーー 

中国の石油関連海外進出は盛んである。2006/5/30 「中国の石油関連 海外進出」)

スーダンは、1970年代から80年代にかけ、Agip(現Eni)、Chevron、Totalなどの欧米石油企業が進出したが、1984年に南北内戦が勃発、鉱区周辺でゲリラによる攻撃が行われ死傷者が出たため、Totalは1985年以降、探鉱活動を休止、Chevronは1992年に同国から撤退した。

欧米企業に代わって進出したのが、CNPC(中国)、Petronas(マレーシア)、ONGC(インド)などアジアの国営石油会社で、製油所や原油パイプラインの建設も手がけており、3社がスーダンの石油産業を支えている。

スーダン原油の最大の輸入者はCNPCで、2005年にはスーダンの原油生産量の4割に相当する約13万バレル/日(中国の原油輸入全体の5.2%)を輸入している。

(資料 http://oilresearch.jogmec.go.jp/information/pdf/2006/0611_out_g_sd_asia_nocs.pdf )

ーーー

中国では1998年半ばまではCNPCは石油探査と生産を独占し、シノペックは独占的な精油業者であった。

1998年7月に大規模な資産交換がおこなわれ、両社それぞれが「上流」から「下流」までの事業を受けもつように再編成された。当初はシノペックには東部と南部が、CNPCには北部と西部があてられたが、その後、両社は激しい争いをしている。

本件は初の共同事業となる。

インドの新興財閥でインド最大の私企業 Ambani 財閥のReliance Industries が GE プラスチックの買収を狙っているとインド紙が報道している。

同社はグローバルに石油化学、合成樹脂事業を拡大する機会を狙っており、2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。(Innoveneは最後に Ineos が買収した)

2004年には同社は欧州のポリエステル繊維メーカーのTrevira を買収し、ポリエステル繊維トップメーカーとなった。

GEプラスチックについては、最終意思決定のための情報を収集中だが、買収は戦略的には十分意味があり、プラスチック業界で急成長するのには、こんな機会はめったにないとしている。同社の樹脂事業はほとんどが汎用品で、スーパーエンプラは開発を開始した段階。

 

一方で同社はダウとの提携強化を希望しており、GEプラスチック買収は、これがうまくいかない場合の代替案であるとも言われている。

Jamnagar 同社はインド北西部のJamanagar経済特区に新しく年産27百万トンの製油所を建設中で、川下の石化事業実施のために、ダウ、シェル、エクソンモビル、三菱化学等に声をかけたが、ダウが10億ドルを投じて参加する覚書を締結した。
Relianceは新製油所で年産100万トンのPPプラントを建設するが、ダウからの技術供与が決定している。

現在交渉中だが、ダウが正式に参加する場合には、ダウは見返りにRelianceに対して米国の石化事業への参加を認める可能性がある。

 

Reliance Group の事業は多岐にわたり、ガスパイプライン、石油精製、化学繊維、アパレル等の上流から下底までの石油化学事業、通信、電力等インフラ事業を行っている。

中心は石化事業のReliance Industries で、パラキシレンでは世界3位、高純度テレフタル酸では、世界4位となっている。
インドの拠点は4箇所。

Jamnagar に新設する製油所の隣には年産27百万トンの製油所があり、石化原料のナフサ、芳香族とPPを生産している。
PPは当初の3系列77万トンに、2006年第4系列28万トンが加わった。
同じく27百万トンの新製油所では上述の通り、100万トンのPPを新設する。

HaziraではJamnagar から送られるナフサを原料に石化コンプレックスがある。エチレン能力75万トン(100万トンに増設中)と、PE(16万+20万トン)、PP(36万)、VCM・PVC(16万)、PTA(35万x2)、その他を生産している。

PatalgangaではPTA、ポリエステル繊維、LAB等を生産し、Naroda インドで最も近代的な繊維のコンプレックスである。

 

2002年5月、同社はインド政府から国営石油化学会社Indian Petrochemicals Corp. Ltd. (IPCL)の株の26%を買収し、同社の経営権を取得した。現在IPCLの取締役10人のうち、5人はReliance指名で、RelianceのMukesh Ambani 会長がIPCLの会長を兼務している。

IPCLは3箇所にコンプレックスを持っている。エチレン能力はVadodara が13万トン、Nagothaneが40万トン、GandharDahej)30万トンである。TPA能力は100万トンを超えている。
2006/6/5 「インドのエチレン計画」 参照

それにしても、日本にはGEプラスチックスを買収しようという元気のある会社はいないのであろうか。

既報の通り、ロシアからベラルーシ経由の欧州への原油送油が停止し、欧州を巻き込んだ騒動となったが、事態の深刻化を受け、10日に両国大統領が電話で協議、その後ベラルーシ側が石油関税撤回を発表した。

ロシアのフラトコフ首相とベラルーシのシドルスキー首相は12日、モスクワで10時間の交渉の末、ロシア産石油輸出の協力に関する合意文書に署名した。欧州向け石油供給の一時停止にまで発展した問題は和解で正式決着した。

合意によれば、ロシアはベラルーシ向け原油の関税を当初の180ドル/トンから53ドル/トンに引き下げる。
ベラルーシは国際市価よりも安いロシアの原油を加工して製品を欧州に再輸出し利益を得ているが、この利益のうち本年は70%をロシアに還元する。2008年には80%、2009年には85%とする。(これにより、ロシアは10億ドル以上の収入を見込んでいる。)

ベラルーシは既に同国を通過するパイプラインでロシアが欧州に輸出する石油への45ドル/トンの関税案を撤回している。

ーーー

両国の関係は複雑である。

ロシアとベラルーシはこれまで友好国として、国境開放、貿易自由化を行っており、共通通貨使用の検討までしていた。
これまでベラルーシは国際価格の1/4の価格でロシアのエネルギーを無制限に利用していた。
ロシアはベラルーシが安いロシア原油を欧州に転売して儲けていると非難している。

最近になって、ロシアはベラルーシ経由で入る外国製品の管理を厳しくし、旧ソ連諸国へのエネルギー供給を国際価格で行う方針を取っている。

東欧の報道は、ベラルーシの45ドルの関税は実際にはパイプライン通過料であるとしている。リトアニアやラトビアは19ドル~20ドルの通過料を取っているが、ベラルーシの場合は1992年に両国が締結した自由貿易協定により、ほとんどゼロとなっているという。

ベラルーシにとっては、ロシアが原油に関税をかけたことにより、協定を破ったことになる。
これに加え、ロシアがベラルーシ向け天然ガス価格を引き上げたことに反発して、ベラルーシ側が対抗策を取ったもの。

両国には、この問題に加え、砂糖の関税問題がある。ベラルーシは生産する砂糖の約半分をロシアに輸出しているが、昨年12月にロシアが輸入関税を設定し、ベラルーシのメーカーは被害を受けているという。

EUの行政機関である欧州委員会は10日、「欧州エネルギー政策」を発表した。3月のEU首脳会議で、加盟27カ国の承認を得る。

京都議定書では2012年までに1990年に比べ先進国で温室効果ガスの5%の削減を義務づけており、EUは8%、日本は6%の削減が目標となっている。欧州委は国際的な合意により2020年までに先進国全体で30%の削減を行うべきであるとし、EUとしては少なくとも20%削減することを提案した。

現在のエネルギー政策のままでは、EUの温室効果ガスは2030年までに5%程度上昇し、EUのエネルギー輸入依存度がエネルギー消費量の50%から2030には65%にアップするとしている。今世紀中に地球の気温が5℃以上上昇する可能性が50%以上あるともしている。

提案された政策は次の3つの柱からなっている。

1)エネルギー統一市場

EUは1951年の欧州石炭鉄鋼共同体が母体だが、エネルギー政策は全体としては国別となっている。
提案では、統一市場化により、EUのエネルギー消費者が真の選択ができるようにするとともに、エネルギーへの巨大投資を促進することを狙っている。

統一市場化により、既存のエネルギー市場を完全に開放し、5億のEU市民が電気やガスを欧州のどこからでも得ることができるようにする。このためにはエネルギー生産(発電)とエネルギー流通(送電)の分離を提案している。

2)低カーボンエネルギーへの移行の促進

再生可能エネルギーの比率を2020年までに20%にすることにより、EUが再生可能エネルギーでの世界のリーダーの地位を維持することを提案している。このため、バイオ燃料比率を10%にすることも挙げている。

研究開発の重要性を指摘し、戦略的EUエネルギー技術プランを提案している。7年間でエネルギー研究開発の年間支出を最低50%増やす。

現在EUの原子力発電はEUの電気の30%、EUのエネルギー消費の14%を占めるが、原子力に頼るかどうかはそれぞれの国の判断に任せるとする。但し、原子力発電を減らす場合は、その分を低カーボンのエネルギーソースで補うべきであるとしている。

3)エネルギー効率の向上

・燃料効率のよい自動車の使用
・家電の基準を厳しくする
・既存の建物のエネルギー効率の改善
・発電、送電、配電の効率改善

 

これらの目的はEU単独では出来ない。開発国と途上国、産油国と消費国が連携する必要があるとしている。

欧州委のピエバルグス委員はエネルギー戦略の全面的な見直しで「欧州が世界の新産業革命ー低カーボン経済ーで世界をリードする」としている。


 

 

 

 

住友商事の塩ビパイプ子会社Cantex Inc. は、アリゾナ州キングマンに、20078月生産稼動予定で最先端の製造設備と配送センターを有する新工場を建設する。

Cantex 1946年設立で、1954年に塩ビパイプに進出、1992年に住友商事が買収した。

電纜(electric cable)用塩ビパイプ、継ぎ手のメーカーで、塩ビ製電纜パイプでは現在全米シェア1位の会社。6番目の製造拠点になるアリゾナ新工場稼動後の製造能力は約272千トンとなる。
従業員は約
800名、売上高(年商)は約430億円。
製品は電力業界向け、電話設備向け、建設業界向け、通信業界など多岐に渡って、全米市場に納入されている。


ーーー

米国の塩ビパイプ業界には他に2社が進出していた。

三菱化学は1995年にオレゴン州の塩ビパイプメーカー、PWパイプ(PWPipe)を買収した。

しかし、同社は1999年9月に撤退を決め、同業のEagle Pacific に売却した。
Eagle Pacific は20007月に社名を PW Eagle, Inc.に変更した。各地の塩ビパイプメーカーを買収し、米国第二の塩ビパイプメーカーとなっている。子会社にPEパイプメーカーのUSPoly Company を持つ。

ーーー

日商岩井は1997年に米国最大の塩ビパイプメーカーの一つ、National Pipe & Plastics, Inc. を買収し、子会社とした。(日商岩井 90%/鐘淵化学 10%)

1999年には4万トン級の工場を買収し、生産能力を12万トン規模に拡大した。

当時、日商岩井は三菱化学とともに、ブラジルで3つのJV(下記)に参加しており、その1つのPVCメーカーのトリケム(当初名 CPC、1996年に改称)のPVCを米国に販売するための受け皿としてこれを活用しようとしていた。

しかし、同コンビナートの中心となるブラスケムはポリアルデン、トリケムの100%子会社化を図り、2003年、三菱化学、日商岩井は株式売却に応じた。(それ以前にシキネペトロキミカは両社を含め全株主がElekeiroz に売却している。)
但し、日商岩井はブラスケムへの株式売却に当たり、交換にブラスケムの株式を取得している。

*このほか、ブラスケムは住化、伊藤忠からLDPEメーカーのポリテーノの株式も買収している。

日商岩井は2003年にニチメンと合併して双日となった。
同社は
2005年2月、National Pipe & Plastics Inc. MBOで経営陣に売却した。

 

三菱化成/日商岩井のブラジル進出

JV名 シキネ
ペトロキミカ
ポリアルデン
ペトロキミカ
CPC  →Trikem
設立 1969/6 1974/7 1975/10
稼動 1974/3 1979/1 1979/9
製品 2エチルヘキサノール
ブタノール
無水フタル酸
無水マレイン酸
DOP
HDPE PVC  514千トン
VCM 540千トン

(旧 サルジェマ)
EDC 1,180千トン
当初株主
→現状
三菱化成   28.4  
日商岩井   ::5.4  
ペトロキザ   35.2  
バンコ エコノミコ   31.0  
Elekeiroz     →100
三菱化成   16.4  
日商岩井   16.7  
ペトロキザ   33.3  
バンコ エコノミコ   33.3  
Braskem     →100
三菱化成   19.0  
日商岩井   14.3  
ペトロキザ   33.3  
オデブレヒト   33.3  
Braskem     →100

  


 

GEがGEプラスチックスを売却するという噂が飛び交っている。9日付けのWallStreet Journal は同社が競売方式で投資ファンドに売却し、売却金額は100億ドルに達する見通しと報じた。

買い手候補としてはGE Silicones を昨年買収したApollo Management が筆頭にあがっている。同社は昨年初めに、多角化企業のTyco International からプラスチック・接着剤部門を975百万ドルで買収している。
(同部門はゴミ袋、ストレッチフィルム、シート、ダクトテープの米国のトップメーカー)

このほかRhodia のフェノールその他事業を買収したり、イスラエルDor Chemicalsに出資しているBain Capital、セラニーズを買収した Blackstone Group、1980年代にLBOの手法を確立し、1988年にRJRナビスコを買収したKohlberg Kravis Robertsも名前が挙がっている。名前の挙がっているBlackstoneApollo、Bainの3社は、Goldman Sachsとともに一大買収ファンドコンソーシアムを作り、Basell買収合戦に参加したこともある。

投資ファンド以外ではBASFとダウも噂として挙がっており、またSABICも売りに出るなら買いたいとしていると伝えられている。

GEプラスチックスは儲かってはいるが、原料価格高騰で2006年第3四半期には利益は23%落ち込んでおり、CEOのJeffrey Immelt は不安定な事業を売却し、今後成長を期待できる事業に集中しようとしていることから、十分可能性があると見られている。

GEは20069月にシリコーン事業のGE Advanced Materials Apollo Management, L.P.38億ドルで売却すると発表した。

他方、
2003年10月、GEはゲノム解析装置などを手がける英医療・薬品大手アマシャム(Amersham plc)の全株式を取得して買収すると発表した。2004年4月、買収を完了、GE Healthcareとなった。
GE Healthcare医療用画像診断装置、サービス、ヘルスケアITビジネスを展開するGE Healthcare Technologies(従来のGEメディカルシステム)と、旧アマシャムのビジネスを受け継ぐGE Healthcare Bio-Sciencesの2つの事業部門からなるヘルスケア企業となった。
(これに伴い、日本法人のアマシャムバイオサイエンスはGEヘルスケアバイオサイエンスと改称、それまで住友化学とアマシャムのJVであった
日本メジフィジックスは住友化学とGE Healthcare のJVとなった。)

ーーー

GEプラスチックスは、ジェフ・イメルト現会長やジャック・ウェルチ前会長の出身事業部。1953年にポリカーボネート樹脂を開発して以来、エンプラのトップメーカの地位を維続するとともに、現地化を積極的に推進している。日本では日本GEプラスチック(GE 51%、三井化学 41%、長瀬産業 8%)が変性PPO、ポリカーボネートなどを製造、販売している。

GEプラスチックスの製品には変性PPEPC、PBT、PEI (polyetherimideABSやそれぞれのアロイ、及びLNP コンパウンドがある。
PCでは米国、オランダ、スペインと千葉(日本GEプラスチック)に工場を持っている。

LNPコンパウンドはPP等の汎用樹脂からPEI, PEEK等の高機能樹脂まで30種類以上の熱可塑性樹脂と様々なフィラーの組み合わせにより、今までに得ることのできなかった樹脂の性能と可能性を引き出すもので、川崎製鉄の100%子会社であったが、2002年に、NKKとの事業統合を控え鉄鋼事業と密接な関連を持つ石炭化学事業へ特化する方針を固めた川崎製鉄が、世界規模でエンプラ事業の拡大を目指すGEに売却した。
(LNPは当初は米国企業で、ICIが買収、その後川崎製鉄がICIから買収した。)

前回に続き、ロシアの石油を武器とした攻勢について。

2007年1月1日になる2分前に、ロシアとベラルーシは天然ガス価格値上げで合意した。

ロシアとベラルーシはこれまで密接な関係にあり、ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムは天然ガスを国内並みの優遇価格(1000立方メートル当たり46.68ドル)で供給してきた。しかし、昨年11月に2007年から4倍の200ドルに引き上げると伝え、ベラルーシはこれを拒否、12月27日にはガスプロムは、交渉がまとまらなければ1月1日からガス供給を停止すると伝えた。

ギリギリの交渉の結果、2007年には100ドルとし、2008年以降も段階的に引き上げ、2011年に欧州向けの水準(2007年で293ドル)とすることとなった。
(なお、ガスプロムは
グルジアとは235ドル、モルドバとは170ドルで、それぞれ、値上げ交渉を妥結した。)

値上げの一方でガスプロムは、ベラルーシ国内の天然ガス供給パイプライン運営会社の株の半分を今後4年間で総額25億ドルで購入する。またロシア産天然ガスのベラルーシ領の通過料も値上げされる。
(ガスプロムは2005年3月のベラルーシ政府との交渉で、低価格を据え置く代わりに、ベラルーシを通る天然ガスパイプラインの権益を獲得している)。

しかし、問題はこれで止まらなかった。

ロシアはベラルーシに対し、石油についても2007年からトン当たり約180ドルの輸出関税(これまで免除していた)を上乗せすると通告した。
これに対し、ベラルーシは対抗策として、同国を通過するパイプラインでロシアが欧州に輸出する石油に対し、2007年からトン当たり45ドルの関税を課すと発表した。ロシア側はベラルーシには欧州向けのロシア産石油に関税を課す権限はないと反論、ベラルーシはロシア側が関税上乗せを取り止めれば同国も取り止めるとしている。

8日、同国内で北に分岐し、ポーランド経由ドイツ向けのNorthern Druzhbaラインが送油を停止した。
ベラルーシ側は「第3国向け送油は止めていない。パイプラインの油圧低下は、我が国に非があるのではない」と否定、一方、ロシアのパイプライン管理会社は、「ベラルーシが6日から予告なしに、ロシア産欧州向け原油の抜き取りを始めた」と非難している。プーチン大統領は「ロシア産石油を購入している西側諸国とロシアの利益保護のためあらゆる手段を講じなければならない」とし、石油の生産調整の検討を指示した。

ドイツは130日分以上、ポーランドは70日分以上の備蓄をそれぞれ持っており、当面静観しているが、EUは9日、ロシアとベラルーシの対応を強く非難した。

IEAは原油輸送停止がSouthern Druzhbaラインにも及び、ポーランド、ドイツ、ウクライナ、スロバキア、ハンガリー、チェコの6カ国の原油供給に影響が出たとの声明を出した。

紛争が長期化すれば、欧州経済に影響が出る恐れがある。

付記(2007/1/13)

ロシアのフラトコフ首相とベラルーシのシドルスキー首相は12日、モスクワでロシア産石油輸出の協力に関する合意文書に署名した。欧州向け石油供給の一時停止にまで発展した問題は和解で正式決着した。

ーーー

天然ガスに関しては、ロシアは2005年末にウクライナとの間で欧州各国も巻き込んだ大問題を起こしている。

2005年4月、ガスプロムがウクライナ政府に対し、それまでの1,000立方メートルあたり50ドルから160ドルへの値上げを提示、後に更に230ドルに引き上げた。

交渉は紛糾し、2005年12月にはガスプロムは、契約がまとまらなかった場合には2006年1月1日からガス供給を停止すると改めて表明した。

2006年に入り、ガスプロムはがウクライナ向けのガス供給を停止した。
(EU向けと同じパイプのため、ウクライナ向け対応の30%を削減した)

しかしウクライナ側は、これを無視してガスの取得を続けたため、パイプライン末端のEU諸国のガス圧が低下し、各国は大混乱となった。
問題が二国間の問題に止まらず国際問題となったため、両者は急速に歩み寄りを見せ、1月4日に
期間5年、95ドルで妥協した。

但し、ガスプロムはウクライナには直接販売せず、オーストリアの銀行(ダミーで、実際はウクライナの投資家といわれる)との合弁会社ロスウルクエネルゴに230ドルで供給し、同社はそれをトルクメニスタンおよびカザフスタン産の低価格ガス(50ドル)と混ぜたうえでウクライナに95ドルで販売することとし、ガスプロムは「ウクライナへの販売価格を西欧並に」という主張を通した。

ウクライナの収入となるガスパイプライン通過料も2005年の1.3億ドルから2006年には2億ドルに引き上げられた。

ーーー

ウクライナは2004年暮れの「オレンジ革命」以来、親ロシア政策を放棄して、EUとNATOへの加盟を志向する親自由主義国家となった。
ロシアにしてみれば、衛星国待遇を続ける必然性がなくなった訳で、西欧諸国と同等の市場価格でエネルギーの提供を受けるべきというのは理に適った主張でもある。
なお、ウクライナは90年代にロシアからのガスについて、たびたび不払いと抜き取りを繰り返したという歴史もある。

今回は友好国のベラルーシに対しても、市場価格での供給に切り替えた点が注目される。
客観的に考えれば、EU向けが293ドルという時代に、ベラルーシが46.68ドルでの供給継続を要求するのは無理があると思われる。
また、国内パイプラインを通る他国の石油に輸出関税を課するのもおかしい。

EU側には、サハリン2問題や今回の問題で、石油を武器にするロシアの姿勢に対する反発と不安がある。


やり方は別として、ロシアの姿勢の背景には、それぞれ、理解できる点もある。

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ロシアは現在、天然ガスをウクライナやベラルーシを通るパイプラインでEU各国に供給しているが、既にモルドバやドイツなどでパイプライン権益を押さえており、ガスプロムはガスの生産会社から、欧州における配給会社にもなろうとしている。

2005年9月、ガスプロムとドイツの電力会社E.On、及びBASFの関連会社の3社は、ロシアからドイツに直接、天然ガスを供給する「バルト海パイプライン」(North European Gas Pipeline)を建設する契約文書に調印した。
サンクトペテルブルク北方のビポルクから独北東部グラ
イフスバルトまで、バルト海海底約1200キロを結び、年間最大550億立方メートルの天然ガスを供給する。2010年の完成を目指す。
(Gazprom 51%/Eon 24.5%/BASF子会社Wintershall 24.5%)

この独ロ共同企業体の監査役会長はシュレーダー前独首相で、同氏は「欧州がエネルギーをロシアに依存する以上、友好的態度で接するほかはない」と述べている。

参考 ロシアの北西部原油・天然ガスパイプライン
     緑線は原油、赤線は天然ガス(点線は計画)

Pipelinerussia1


ロシアのプーチン大統領は12月21日、同国の天然ガス独占企業ガスプロムがサハリン沖の資源開発事業「サハリン2」に過半数出資することが決まったことについて「ロシアは全面的に同事業を支援する」と述べ、歓迎の意を表明した。

サハリン2計画の概要については、2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 のサハリン計画の項を参照。

これまでの経緯は以下の通り。

・事業主体のSakhalin Energy Investment Company(SEIC) の出資比率はシェル 55%/三井物産 25%/三菱商事 20% であった。
 (1994年のスタート時点では米国
Marathon Oil 30%/同McDermott 20%/シェル 20%/三井物産 20%/三菱商事 10%であったが、その後前2社が撤退した)

ロシア政府はガスプロムをサハリン2に出資させ事業への発言力を強める意向をもっており、2004年に株主3社も基本的に受け入れる方針を固めた。ガスプロムがシベリアに持つ油田の権益と交換する形で、最大25%分をシェルから譲渡を受ける交渉を行った。
2005年7月、25%譲渡で合意したと伝えられたが、条件面で折り合わず。
ロシア側が、日本勢の権益も含め、さらに高いシェア確保を求めているとみられた。)

・2005年7月、事業費が100億ドルから200億ドルに倍増
 パイプラインのルート変更(希少種のコククジラの繁殖地があり、NGOが銀行団に圧力)に伴う工期延長
 世界的な資源開発ラッシュと鋼材高による資機材コストの高騰
 エンジニアリング費用がユーロ高でアップ、等による。

・2006年に入り、ロシアが生産物分与協定(PSA)を見直すよう間接的に圧力
 サハリン2で「合意事項が守られていない」などとして四半期ごとの会計報告書を要求。違反に対して罰金を科す可能性を示唆
 輸出基地に通じるパイプライン建設についても環境面での問題を指摘、工事差し止め措置を示唆

・2006年8月、ロシアの環境監視当局が環境汚染の懸念があると指摘したことを受け、パイプライン建設工事を中断

・9月、ロシア天然資源監督局は「サハリン2」の事実上の生産停止を求め、モスクワの地区裁判所に提訴
 サハリン2のパイプライン建設を環境面で承認した省令の取り消しを求める内容
 (パイプライン建設が計画通りに行われておらず、事故の可能性があるためなどが理由)

・9月18日、ロシア天然資源省 「サハリン2」工事の承認を取り消し
 パイプラインだけでなく採掘施設、LNG基地の建設も含み、「独立した専門家が新しい環境対策を提出し、承認されるまで」工事中断
 提訴は取り下げ。

・10月、ロシア政府、生産物分与協定(PSA)見直しの意向を表明
 ①PSAを維持し従来経費で実施 ②経費倍増ならPSAを破棄し、優遇措置のない通常事業として実施③権益を売却 の選択肢に言及

・12月、合意
  ガスプロムが「サハリン2」に過半数(50%+1株)出資
   (シェル 55%→27.5%、三井物産 25%→12.5%、三菱商事 20%→10%、総額74億5千万ドルでガスプロムに譲渡)
  総事業費を194億ドルとし、約100億ドルの増加分のうち36億ドルについてはガスプロムを除く 3社が負担
   (コストとして勘定せず、優先回収の対象から除外)
  環境問題については、ガスプロム参加により適切に処理されるとして、不問に。

生産物分与協定(PSA)は原油価格が低迷した1990年代に締結されたため、政府や議会ではロシアの取り分が少ないとの不満が高まっていた。
現行PSAでは事業者のコスト回収を優先しているため、事業費倍増により、ロシア側の利益受取りが更に遅れることとなり、反発が強まった。
今回、プーチン政権の環境問題を理由にした工事承認取り消しという強引な脅しで、ロシア側利益拡大の目的を達したこととなる。
3社側は妥協によりPSAの体系を維持した。

ーーー

英国のDr Ian Rutledgeが2004年11月の「The Sakhalin II PSA a Production Non-Sharing Agreement」という論文で、「サハリン2」の生産物分与協定(Production Sharing Agreement)について論じているが、ロシア側に極めて不利な、生産物「非分与」協定であるとしている。
 
http://www.carbonweb.org/documents/SakhalinPSA.pdf 

彼によると、一般的な生産物分与協定(PSA)は以下の形を取る。

・期間:長期だが一般的には有期限(例えば25年)
・開発リスクは開発企業が負担
  (油が出なければ、それまでの費用は開発企業が負担)
・開発企業は出た油に対してロイヤルティを支払う。
  (通常10~20%)
・‘cost oil’と ‘profit oil’の概念
  開発企業は投資額相当分を‘cost oil’で受領
  通常、回収可能なcostの定義あり (例 金利は対象外など)
・投資額回収後は、‘profit oil’を産油国と開発企業が分け合う。(例 産油国60%、開発企業40%)
  大油田の場合は開発企業が20%程度の場合もあり。
・通常、毎年の‘cost oil’に上限(cap 例 70%)を置き、それを超えるcost は翌年繰り越し。
  (産油国も当初から利益を確保)
・開発企業は所得税を支払う
  (所得計算では投資額は5~10年の償却)

 

これに対して「サハリン2」の場合は以下の通りとなっている。

・期間:一応25年だが、投資会社 SEICの判断で5年毎に延長可能で、実質無期限
     (20世紀初めの中東での契約に似たもの)

・開発リスク:PSA締結前に既にロシア企業により原油及びガスの存在を確認済みで、SEICはリスクなし。

・ロイヤルティ:6%

・‘cost oil’と ‘profit oil’
   1)SEICが投資額を回収し、投資利益率17.5%を確保するまでの間は、ロイヤルティ分を除く全収入は‘cost oil’とする。
   2)SEICが投資利益率17.5%を確保した後、2年間、ロシア側は製品の10%を、SEICは90%を受領
   3)その後は、SEICが投資利益率24%を受け取るまでの間、ロシア側は製品の50%を受領、SEICも50%を受領
   4)その後は、ロシア側は70%を受領、SEICは30%を受領。
   5)‘cost oil’に毎年のcap(上限)なし。
   6)PSAで ‘cost’の定義がなく、SEICは自由に「回収すべきコスト」を決められる。   

  ◎ロシア側の受領はSEICが投資を回収し一定利益を得た後に、かつ順次増大となるため、現在価値換算での取り分は少なくなる。
   今回の投資額倍増で、受領開始が送れ、更に取り分が少なくなることとなる。

・所得税率は32%(PSA締結時の一般税率は35%)
  所得計算で投資額は3年の定額償却、赤字は15年繰り越し可能

これによれば、ロシア側は、ロイヤリティを除き、投資会社が投資の回収と一定の利益の確保を終えるまでは自国の油が得られず、確かに生産物「非分与」協定である。

油が安い時代に、自国での開発技術を持たないロシアが締結した屈辱的な協定であり、豊富な資源を背景に国の威信を高めようとしているプーチン政権が手段を選ばず変更したのであろう。

国産バイオエタノール生産の拠点として、大阪府堺市に、廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラントが竣工し、1月16日に開所式が行われる。
バイオエタノール・ジャパン・関西株式会社が環境省の補助(地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター事業)を受けて建設を進めていたもので、平成19年度の環境省重点施策である「バイオマスエネルギー導入加速化戦略」において、
大都市でのエタノール3%混合ガソリン(E3)大規模供給実証のためのエタノール供給元となる。

建設廃木材等を原料として、高効率でバイオエタノールを生産する製造施設で、年間1,400 kLのエタノールを製造可能で、全量をエタノール3%混合ガソリン(E3)にした場合、約4.7万kLになる。

●事業概要(環境省補助事業;補助率 1/2)
 ①建設廃木材を原料に発酵等により燃料用エタノールを製造。
 ②エタノール製造プラントをH16~18で整備し、H19から燃料用エタノールを供給。

●事業者:バイオエタノール・ジャパン・関西株式会社
       (大成建設㈱,丸紅㈱,サッポロビール㈱,東京ボード工業㈱,大栄環境㈱の5社の出資)
●プラント能力:建設廃木材48,000t/年から燃料用アルコール1,400KL/年を製造
●総事業費:約37億円

環境省は平成19年度予算概算要求・要望主要新規事項のなかで、「バイオマスエネルギー導入加速化戦略」を挙げている。

バイオマスエネルギーの導入加速化戦略では、
○経済成長戦略大綱に位置づけられた、バイオマスエネルギーの導入加速化に関する施策を強力に推進
○脱化石燃料社会への第1歩であり、自動車を保有する国民誰もが参加出来るバイオエタノール等の輸送用エコ燃料の大規模導入により、温暖化対策と国民の意識改革を促進
するとし、以下の4点を挙げている。
詳細 http://www.env.go.jp/guide/budget/h19/h19-gaiyo-2/101.pdf

エタノール3%混合ガソリン(E3)の本格展開
・ 大都市圏(関東圏・近畿圏)において、E3供給システムを確立し、E3を大規模に導入
 (上記の大阪のエタノール生産プラントを活用)
・沖縄宮古島等で国産バイオエタノールを導入するほか、全国各地での体制整備を促進
 (林業地域への展開も視野)

エタノール10%混合ガソリン(E10)対応の促進
・ E10導入に必要な走行実証等を早期に実行し、エタノール混合割合の引き上げに向けた環境を整備。
・ 自動車メーカーによるE10対応を促進し、第1約束期間中(2008~2012年)には、すべての新車のE10対応化を完了

木質バイオマスのエネルギー利用の促進
・間伐材等の木質バイオマスを原料としたバイオ燃料の製造・利用に係る地域システムの構築・実用化実証により
 林業地域への積極的な展開を促進。
・木質バイオマスからのエタノール等の製造プロセスの高度化・低コスト化の技術開発を支援

多様なバイオマスのエネルギー利用の促進
・廃食用油を原料としたバイオディーゼル燃料としての利用などに係る設備整備を支援

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石油連盟は、1月26日に、「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立する。

石油連盟では、植物等を原料としたバイオエタノールを石油系ガスと合成し、バイオETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)としてガソリンに混合して利用していくことを決定しており、今後、バイオエタノールおよびバイオETBEの輸入・国内調達の方法、受入れ基地の整備、組合員への供給方法(輸送など)に関し、具体的に検討・準備を開始する。

組合員(出資会社)は下記の石油連盟加盟10社。
  出光興産、太陽石油、富士石油、コスモ石油、九州石油、昭和シェル石油、新日本石油、ジャパンエナジー、極東石油工業、エクソンモービル

 

石油連盟では2006年1月に、「バイオマス燃料の導入について」を発表、(1) 大気環境に悪影響を及ぼさないこと、(2) 車の安全性や実用性能を損なわないことに鑑み、バイオエタノールをそのままガソリンに混入するのではなく、バイオエタノールからETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)を製造し、これをガソリンに混合することとした。
 * ETBEとは
   ・エタノールとイソブテンを合成して生成する物質。
   ・現行の品質確保法上では、ガソリンの含酸素率の上限値が1.3%となっていることから、ETBEでは7%程度まで混入可能。

バイオエタノールの課題として、以下の点を挙げている。

1.環境特性の向上
 ① ガソリンにエタノールを混合すると蒸気圧が上昇。
   → 光化学スモッグの原因物質である燃料蒸発ガス(HC)が増加。
 ② 既存車に対する3%以上の高濃度のエタノール使用はNOxが増加。

2.適正な品質の維持と安全性
 水分混入によってガソリンとエタノールが分離。
 → 燃料性状の変化や自動車部品への腐食・劣化が発生。

3.供給安定性の確保
 ① 世界におけるエタノールの年間貿易量は約300万klのみで輸出余力があるのはブラジル一国のみ。
    (日本でガソリンをE3とした場合、180万kl/年が必要)
 ② 原料が農産物(サトウキビ等)であるため、天候や食料品価格により生産量・価格が大きく変動。

4.経済性の向上 
 ① ガソリンに対してコストが高い。
    (ガソリン輸入コスト(35円/
として)に比べて約10円/l 高い)
 ② エタノールの熱量はガソリンよりも3割程度少ないため燃費が悪化。

その上で、バイオエタノールを自動車燃料として利用するためには ①燃料蒸発ガスを増加させない(=環境上の問題がない) ②水分混入による分離がなく腐食性もない(=安全性に問題ない)方法として、直接ガソリンに混入するのではなく、ETBEを製造し利用するべきとしている。

1.2007年の中国経済成長率、9.5%と予測

国家情報センターと社会科学院世界経済・政治研究所は12月28日、共同で「経済情報緑書」を発表した。
2007年の中国の経済成長率を2006年より減速した9.5%前後になる見込みと予測している。

投資と輸出の減速が見込まれる中で民間消費の急拡大も期待できないとして、2007年の成長率が8%台に低下すると見る向きもある。2006年は、経済成長率が10.4%と4年連続で二桁台に乗ると見られている。

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2.中国政府、シノペックに50億元支給

中国政府は国有石油大手、シノペックに対し、石油精製事業の赤字を補填するために50億元(約750億円)を支給した。

中国では政府が国内の石油製品価格を統制しており、精製部門は原油高を製品価格に一部しか転嫁できず赤字となっており、それを補填するもの。2006年の決算に折り込まれる。

シノペックは2005年は政府から94人民元もの補助金を受けたが、それでも35人民元の赤字となった。

なお、逆に石油採掘部門は原油値上がりで大きな利益を上げているため、中国政府は2006年3月26日から、石油採掘企業に対して特別収益金(Windfall-tax)を徴収することを決めた。一般には暴利税と呼ばれている。

2006/7/14 SINOPECの損益構造の変化」 参照

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3.北京五輪対策

北京市は1226日、2008年夏の北京五輪、同パラリンピック期間中の空気浄化計画を発表した。

五輪開会式(88日)の3週間前から、大気汚染防止策として、郊外の製鉄所や会場周辺の建築材料製造工場の操業を全面停止し、市の中心部などではすべての建設現場の工事を休止させる。
81日から20日までは市内の火力発電所、冶金や石油化学の工場からの汚染物質の排出を制限し、必要に応じ操業停止を命じる。

生産活動を強制的にストップしてでも、国家の威信をかけた五輪を成功に導く決意である。

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4.中国、工業用地値上げ 

中国政府は、投資過熱の原因の一つである地方の乱開発と耕地の減少に歯止めをかけるため、2007年1月から、地方当局が開発業者やメーカーに工業用地を払い下げる際の価格を引き上げる。売却時の最低価格を設定するとともに、地方が土地売却益の一部を国などに納める額も2倍に増やし、価格上昇を促す。今回の措置により、売却価格は40-60%高まるとみられている。

工場の乱立を防ぐとともに、農家への補償を増やし、社会不安を防ぐことも狙う。

また、2007/1/1から、これまで外資系企業には免除されていた土地利用税が外資系にも適用されるとともに、1988年に設定された税率が一挙に3倍になる。
新しい税率は、大都市では1m2当たり年間 1.5~30人民元(場所により異なる)、中都市で 1.2~24人民元、小都市で 0.9~18人民元となる。

 

5.最低賃金引き上げ

2006年だけで30近い省や直轄市が労働者に支払う最低賃金を引き上げた。
東北部の黒竜江省のように64%上げた地域もある。

第10期全国人民代表大会は12月24日、「修習勤労者」の最低賃金と修習期間の制限を骨子とする労働契約法案を審議した。
修習勤労者の賃金は当該企業勤労者のうち最低賃金または修習以後に受けると契約した賃金の80%以上でなければならず、修習期間も勤労契約期間に合わせて1~6カ月を過ぎないように規定した。
また修習中、雇用契約を解約する場合にはその理由を盛り込んだ証明書を提出するよう義務化した。

 

6.外資系企業の法人所得税の引き上げと移転価格税制運用の厳格化

 
2006/12/28 「中国、法人所得税率を統一、一律25%へ」 参照

 

韓国中央日報は、これらを受けて、「今後、外国企業が中国で事業することはますます難しくなりそうだ」としている。 

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7.自動車産業の構造調整

中国の自動車工業では生産能力過剰の兆候が出ており、更に進む可能性があることから、国家発展改革委員会は自動車工業の構造調整を加速するための実施意見書を発表した。

  同意見では、自動車工業の構造調整を加速するための6措置が提出された。
  (1)完成車生産の新規プロジェクトを抑制、投資参入条件を適宜厳しくする
    ①本拠地(本社)以外で工場を新設するには前年の販売実績が生産能力の8割以上
    ②第二工場を建設するには前年の販売実績が10万台以上ーーなどの条件。
  (2)省エネルギー型・環境保護型自動車と自主ブランド製品の発展を奨励する
  (3)自動車メーカーの合併・再編を推進する
  (4)部品工業の発展加速を支援する
  (5)生産能力に関する情報の監督・測定制度を構築する
  (6)国有自動車企業グループの業績に対する審査内容を完備する

 

2006年の中国の自動車輸出台数は34万台に達したとみられ、前年比で約100%増になる。このうち、乗用車の輸出台数は同200%増となる9万台余りと予想される。

中国政府は自動車産業を国の基幹産業として定めており、部品を含む自動車製品の輸出を重点発展分野として奨励している。商務部はこのほど、「中国の自動車と部品の輸出額を、現在の110億ドルから1200億ドルに引き上げなければならない」とのコメントを発表した。

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8.中国人民銀行、預金準備率を0.5%引き上げ、9.5%に

1月15日から実施する。
昨年3月に都市部の過剰投資が問題になってから4回目の引き上げで、0.5%引き上げで約2兆2700億円を吸収することとなる。

 

EU 加盟国、27カ国に

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2007/1/1にブルガリアとルーマニアがEUに加盟し、加盟国は27カ国になった。
ルーマニア(2200万人)、ブルガリア(800万人)の加盟により、EUの人口は約4億9000万人に増大。東端は黒海に到達する。

1952年にEUの基礎の欧州石炭鉄鋼共同体が、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグの6カ国でスタートしたが、1995年に15カ国となった。
その後、2004年5月に東欧諸国を加えた10カ国が加盟し、今回の2カ国加盟で合計27カ国となった。

欧州各国のうち、参加国と非参加国は下の地図の通り。
西欧での非参加国はスイス、ノルウエー、アイスランド。
スイスは1992年5月に加盟を申請したが、その年の12月に行われた欧州経済領域(EEA)協定に関する国民投票でEEA協定締結が否決されたため、EUとの加盟交渉は凍結された。
ノルウエーは1994年の国民投票で48%:52%で非加盟を決定。加盟で国としての独自性維持が難しいこと、貿易・産業分野で国の利益を十分に守れないことなどが理由。
アイスランドにとっては漁業水域の保全が最も重要であり、共通漁業政策の受け入れを拒否。(EUが漁業政策を変更すれば加盟申請を検討する用意があるとの立場)。

また、2007/1/1にスロベニアが中・東欧諸国では初めて欧州単一通貨ユーロを導入、ユーロ圏も13カ国に拡大する。
(1995年までの15カ国のうち、英、スエーデン、デンマークがユーロを導入していない。)

ーーー

EUは1990年代から急速に加盟国拡大に動いてきたが、域内の基本法となるEU憲法の批准作業が2005年来停滞しており、今後は拡大ペースを落とし、域内の意思統一を図る「深化」に注力する方針だ。

今後の原則
1)市民との対話
2)EU内の体制強化
3)加盟候補国の厳格な審査 

EUの議長国フィンランドのバンハネン首相は12月18日に欧州議会で演説し、加盟拡大路線を転換する考えを表明した。
「EUの効率性と持続性の向上が課題になっている」と述べ、欧州憲法の必要性を強調、新規加盟については、「EU加盟のドアを閉ざすつもりはないが、改革や安定のために新規加盟の条件を厳格に求めていかなければならない」とした。民主化や経済改革が軌道に乗っているかどうかが重要としている。

現在、クロアチア、トルコ、マケドニアの3カ国が加盟候補国となっている。
このうち、トルコについては、EU加盟に向け大胆な改革を進めているが、キプロス問題が加盟のガンとなった。
キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民が混住しており、1974年以来、南北に分断されている。
EUに加盟する南部ギリシャ系のキプロス共和国に対し、トルコだけが承認する北部トルコ系の北キプロス・トルコ共和国(北キプロス)が対立、トルコはキプロス共和国の船舶や航空機の自国乗り入れを拒否しており、EUは開放を加盟交渉の条件にしていた。

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ドイツが2007年1月1日から、付加価値税(VAT)をこれまでの16%から一挙に19%に引き上げた。

財政再建が目的で、ドイツの財政赤字は、2002年から2005年まで、EUが上限と定めるGDP比3%を超えており、独政府は「財政再建は急務」と強調している。
また、3%の増税分のうち
1%を失業保険料の引き下げの形で還元する。 更に、生鮮食品や新聞・書籍などは現行の軽減税率(7%)を据え置く配慮もしている。

19%の高率に驚いて調べてみると、EUでは特に高い訳ではなかった。
EU加盟国のVAT税率一覧表(2006/9/1現在、25カ国)は以下の通り。 
低い国はキプロス、ルクセンブルグの15%、次いでスペインの16%。
最も高いのはスウェーデンの25%。20%以上は11カ国もある。

特別軽減
税率
軽減税率 標準税率 移行税率
Belgium      6   21   12
Czech Republic      5   19  
Denmark       25  
Germany      7   16
19
 
Estonia      5   18  
Greece   4.5    9    19  
Spain   4    7   16  
France   2.1    5.5   19.6  
Ireland   4.4   13.5    21   13.5
Italy   4   10   20  
Cyprus       5 / 8   15  
Latvia      5   18  
Lithuania      5 / 9   18  
Luxembourg   3    6   15   12
Hungary      5   20  
Malta      5   18  
Netherlands      6   19  
Austria     10   20   12
Poland   3    7   22  
Portugal     5 / 12   21  
Slovenia      8.5   20  
Slovakia       19  
Finland     8 / 17   22  
Sweden     6 / 12   25  
United Kingdom      5   17.5  

このほか、国により税率ゼロ製品もある。
詳細は 
http://ec.europa.eu/taxation_customs/resources/documents/taxation/vat/how_vat_works/rates/vat_rates_2006_en.pdf

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EU 加盟国 (クリックすると拡大します)
  
(リトアニアとポーランドの間はロシアの飛び地のカリーニングラード州)

Eu

SABIC、大拡張計画

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Gulf Daily Newsによると、SABICのCEOのMohammed Al Mady が昨年12月、ドバイでインタビューに応じ、インドでエチレンその他のプラント建設の協議をしていることを明らかにした。インドは世界第二の人口の大市場であり、今後需要の増大が期待されるインド市場への供給を狙うとしている。

インド計画の詳細は明らかでないが、2009年から2015年の間に同社の石化能力を約 50%増強する計画の一環である。
SABICではこのため、中国、インド、サウジでの工場建設と、欧州、米国での企業買収を検討している

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SABICは2002年にDSMから石油化学事業を買収し、SABIC Europe として欧州に進出した。

同社は2006年9月に、Huntsman から英国の石化子会社 Huntsman Petrochemicals (UK) Ltd の株式100%を7億ドルで買収すると発表した。(2006/12/29 Huntsman は売却手続き完了を発表)
買収するHuntsman Petrochemicals (UK) は、英国のWiltonに865千トンのエチレンと400千トンのプロピレンのクラッカー、130万トンの芳香族のプラントを有している。Huntsmanは400千トンのLDPEプラントを建設中だが、SABICは150百万ドルを投じてこれを完成させる。

昨年末にはトルコの財閥、Baser Group からPS事業を買収した。同グループはトルコ南部の本拠地、Adana に子会社Baser Petrokimya を設立し、1998年に4万トンのPS工場を建設したが、SABIC はこれに70%出資し、販売を引き受ける。
SABICはサウジのSADAF でSM、PetrokemyaでPSを生産し、主にSABIC Europeで販売している。
今回の買収は規模が小さく、意図も明らかにしていないが、トルコ市場への進出を図るものではないかと思われる。

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昨年11月にはExxonMobil と共同で、サウジでカーボンブラックとEPDM、TPO、ブチルゴム、SBR/PBR等の生産を行うFSを開始したと発表した。

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Madi氏は又、SABICが中国でDalian Shide(大連実德) 及びSinopec との間で石化計画の協議を進めていると述べた。

SABICは2004年6月に大連実徳グループと50/50のJVで、大連市の旅順港に50億ドルをかけて、年産1千万トンの製油所と年産130万トンのエチレンコンプレックスをつくる計画をたてた。(その後、エチレン能力を100万トンに落とした。)
大連実徳は2005年にFSと環境アセスメントを政府に提出している。


Sinopec の天津石油化学 旧称天津聯合化学 は2005年末に天津市の大港地区で既存の750万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設する計画の承認を受けた。
本計画は最初はダウと中国側の50/50 JVとして計画されたもので、当初はエチレン80~90万トン、LーLDPE、VCM、PVC、SM、PO、PG、エポキシ等を生産する計画であったが、ダウが経済性を理由に撤退した。
その後、天津市は石油化学センターの大型化を検討、外資企業の参加を求めた。
サウジアラムコとの合弁説も出た。
SABICも2004年4月にSinopecに対して本計画に関心ありとの意向を示したが、そのときは進展はなかった。

本計画は2005年末にSinopec単独の計画として政府の承認を受けたが、2006年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがSinopecとの交渉を再開した。

なお、サウジ勢ではSaudi Aramco が、ExxonMobil、福建煉油との合弁の福建石化計画(Fujian integrated petroleum/petrochemical project)で中国に進出している。

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