2009年1月アーカイブ

ブラジルのPetrobras 1月24日、主に深海の油田、ガス田開発のために2009年から2013年までの5年間で1,740億ドルを投じると発表した。

本年
280億ドルを投資する。
所要資金のうち、119
億ドルはブラジル政府開発銀行から、50億ドルはその他の借り入れとなっており、残りは明らかにされていない。 

2013年までの1,740億ドルのうち、1,200億ドルは原油販売収入で賄う予定で、平均47ドル/バレルを見込んでいる。

Petrobras 2007年と2008年にパートナーのスペインRepsol YPF や英国の天然ガス生産大手 BG Group1986年に民営化されたBritish Gas が前身)などと組んで、海面下4000m以上で石油を発見した。80億~120億バレルの埋蔵量と見込まれている。

そのうちのTupi 油田は軽質油50~80億バレル相当で、2000年にカザフスタンで発見された120億バレルの油田以来の最大級である。

Tupi 油田はおよそ2,140メートルの海の下、さらに地中5,000メートル以上の深さにある。
Tupi の所有権はPetrobras 65
%、BG Group 25%、Petroleos de Portugal 10% となっている。

ブラジル大統領は、これらの開発はブラジルにとって不可欠のものとしている。

新しい油田から、2013年に日量 219千バレル、2015年に582千バレル、2020年には1,820千バレルの生産を見込んでいる。
また、天然ガスについては、
2013年の日量7百万m3から2020年には40百万m3に増えるとしている。

Petrobras 1月15日、ブラジル国内の埋蔵量(上記を含まず)を発表した。それによると、
  石油とコンデンセート 119.7億バレル
  天然ガス        3,376億m3
  合計(石油換算)    140.9億バレル

Petrobras は2008年に平均して日量2,180千バレルの石油・ガスを生産した。


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カナダの出版社Corporate Knights Inc.と米国の投資調査会社 Innovest Strategic Value Advisors は1月28日、スイス・ダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)初日に合わせて、Global 100 Most Sustainable Corporations を発表した。

http://www.global100.org/PR_Global_2009.pdf

「Global 100」とは、2005年から発表しているもので、イノベスト社の格付調査をもとに、15カ国の全分野の大企業から、環境、社会、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメントに優れている企業を上位100社選出するもの

2009年では日本企業は、米国の20社、英国の19社に次いで、15社が選ばれた。次はドイツの7社。
2005年の5社から、06年10社、07、08年各13社となっており、初年度からの5年連続ではクラレ、NTTドコモ、リコー、トヨタの4社が選ばれている。

Corporate Knights は2002年設立のカナダの独立系雑誌社。
企業の社会的責任関連の雑誌で世界規模の発行部数を誇る。環境、教育、エネルギー・投資、責任投資などをテーマとした雑誌の発行や、環境に優しい企業や良き企業市民ランキングなどの公表などを行っている。

Innovest Strategic Value Advisors 1995年設立の独立系SRI(社会的責任投資)調査機関。
従来の投資分析手法のみでは測る事が困難な、コーポレート・ガバナンス、環境、人的資本、ステークホルダー資本の4 項目を重視する。
大手年金基金や、機関投資家、国連、NGO等の資産運用に関するアドバイスを行っている。

分析の基礎となる研究は以下を参照。

Corporate Social & Environmental Performance
Can Environmental Factors Improve Stock Selection
The Corporate Value of Eco-Efficiency

ーーー

各年に選ばれた日本企業は以下の通り。

社名 09 08 07 06 05
イオン      
ベネッセ        
キヤノン        
ダイキン工業    
大和証券        
デンソー  
JR東日本      
ホンダ      
クラレ
三菱重工    
日興コーディアル        
日本郵船    
野村證券        
日本精工      
NTTデータ        
NTTドコモ
パナソニック(松下電器産業)    
リコー
積水化学      
損保ジャパン        
凸版印刷    
トヨタ
合計社数 15 13 13 10

クラレによると、同社は1970年、環境保全の専門部署を設置し、環境負荷低減にいち早く着手した。1991年には社会環境委員会を設け、地球環境問題への総合的な対応とともに、社会への貢献活動を本格的にスタートした。さらに2003年、これをCSR委員会に改組し、企業倫理、人権・雇用、リスクマネジメントに至る広範なテーマを、重要な経営課題として取り組んでいる。

クラレは、ジョイセフ(JOICFP:家族計画国際協力財団)と日本かばん協会・ランドセル工業会の後援を受け、2004年から「ランドセルは海を越えて」キャンペーンを行っており、使用済みのランドセルにノート・えんぴつ・ボールペン・クレヨン等の学用品を入れて、世界で最も物資が不足している国のひとつであるアフガニスタンやモンゴルの子供たちにプレゼントしている。

2009年度ランドセルの応募受付を1月20日(火)から開始した。
  
http://www.kuraray.co.jp/release/2009/090119.html 


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財務省が1月29日に発表した昨年12月の輸入通関速報によると、12月のナフサ輸入価格は29,780円/kl となった。

この結果、第4四半期のナフサの平均輸入価格は 50,162円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は52,200円/kl となる。

付記 2009年3月に、2008年10月と11月の輸入統計が修正された。

第3四半期は史上最高の85,800円/kl であったが、第4四半期は52,200円/kl で、一気に 33,600円/kl も下がった。
しかも、12月単月ベースでは31,800円であり、今後も更に下がるのは必至。
(三井化学は1~3月を26,000円/kl と予想している。)

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格     修正後
輸入平均   基準価格
08/7  81,933          
08/8  86,801          
08/9  82,708          
3Q平均  83,820  85,800      
08/10  67,110      66,923    
08/11  48,593      48,456    
08/12  29,780      29,780    
4Q平均  50,162  52,200  50,047  52,000

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


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米国でピーナツバターによる食中毒が広がっており、43州で500人以上が被害を受け、8人が死亡した。被害者には 5歳未満の子供100人以上が含まれている。

Peanut Corporation of America
が出荷したピーナツバターを塗ったクラッカーなどを食べたもの。

ジョージア州の工場ではケロッグなど大手食品メーカーにピーナツペーストを出荷しており、クッキーやクラッカーなど、100以上の製品がリコールされた。

調査の結果、工場はサルモネラ菌の汚染を知りながら出荷をしていたことが分かった。

2007年と2008年に同社による製品テストでサルモネラ菌での汚染が12件発見されたが、いずれのケースでも再検査の結果、問題なしとしてそのまま出荷されたという。

シロになるまで検査を続けるのは違法で、サルモネラ菌の汚染が発見されれば、汚染除去の手続きを取る必要がある。しかし、同社はこの手続きを取っていなかった。

また、天井や壁に細菌がついており、天井に30cmの裂け目があった。清掃や製品貯蔵の手続きにも問題が見つかっている。

付記

Peanut Corporation of America 製のピーナツバターを使ったポップコーンが、日本で流通していることがわかり、厚生労働省は1月31日、輸入会社に対し、販売中止と自主回収を指示した。昨年7~8月にポップコーン437ケース(約540キロ)が輸入されていた。


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欧州委員会は1月28日、マリンホースの国際カルテルに関し、5社に合計131.51百万ユーロの制裁金支払いを命ずる決定を下した。

2007/7/9 マリーンホース国際カルテル事件

内容は以下の通り。(千ユーロ)
  自主申告・協力
での免除
 制裁金  
免除率 免除額
Bridgestone (Japan)       58,500 リーダーとして30%増し
Parker ITR (Italy/US)       25,610 リーダーとして30%増し
Trelleborg (France/Sweden)       24,500  
Dunlop Oil & Marine/Continental (UK/Germany)       18,000  
Manuli (Italy)  30%   2,100   4,900 捜査協力
Yokohama (Japan)  100%  14,400          0 Leniency制度
 合計      131,510 

ブリヂストンでは、追って送られてくる詳細な決定書を受領後、内容を検討の上、適切な対応をとりたいとしている。
Trelleborg
は罰金が予想より少なかったと喜んでいる。

ーーー

本件に関して、米国では個別に裁判が行われており、2008年12月現在で、2社に罰金、横浜ゴムを除く5社の社員とコンサルタント1人に禁固刑と罰金が科せられている。

このうち、Dunlop Oil & Marine 2人とコンサルタントは、英国でも同じ刑期の禁固刑の判決を受けている。(米国の禁固は免除)

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

公正取引委員会は昨年2月、横浜ゴムを除く 5社に排除命令を出し、ブリヂストンに238万円の課徴金を科している。

2008/2/25 公取委、マリンホース国際カルテルで排除命令

 

 


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DuPont は1月27日、第4四半期の業績を発表した。

建設、自動車、消費財の需要の減少、サプライチェーンでの在庫縮減により、Safety & Protection Pharmaceuticals を除き、赤字となり、税引き後の損益は629百万ドルの赤字となった。前年同期と比べると1,174百万ドルもの減益である。

第4四半期には退職金その他のリストラ費用を535百万ドル含んでいる。
2008年度ではこのほかに、第3四半期にハリケーン被害227百万ドルの特別損失がある。)

年間の税引き後損益も2,007百万ドルとなり、前年を981百万ドル下回った。

単位:百万ドル
        4Q        年間
2008 2007 前年比 2008 2007 前年比
Net Sales  5,820  6 ,983  -1,163  30,529  29,378  1,151 
税引前損益  -961  493  -1,454  2,391  3,743  -1,352
Net profit  - 629  545  -1,174  2,007  2,988  -981 
             
税引前内訳            
Agriculture & Nutrition  -182  -89  -93  1,087  894  193
Coatings & Color Technologies  -301  216  -517  326  840  -514
Electronic & Communication Technologies  -46  156  -202  436  594  -158
Performance Materials  -223  53  -276  128  626  -498
Safety & Protection  4  277  -273  829  1,199  -370
Pharmaceuticals  265  246  19  1,025  949  76
Other  -112  -55  -57  -181  -224  43
(小計)  (-595)  (804)  (-1,399)  (3,650)  (4,878)  (-1,228)
Net exchange loss  -116  -35  -81  -255  -85  -170
Corporate expenses & net interest  -250  -276  26  -1,004  -1,050  46
合計  -961  493  -1,454  2,391  3,743  -1,352

4四半期の売上高は前年同期比 1,163百万ドルの減となっているが、このうち、
 
Coatings & Color Technologies 363百万ドルの減、
 Performance Materials 517百万ドルの減、
となっている。

第4四半期には退職金その他のリストラ費用を535百万ドル含んでいる。

内訳は
 
Agriculture & Nutrition -18百万ドル
 
Coatings and Color Technologies -236
 Electronic & Communication Technologies -55
 Performance Materials -94
 Safety & Protection -101
 Other -31

特別損益を除いた前年比対比は以下の通り。(単位:百万ドル)

        4Q
2008 2007 前年比
税引前内訳(除 特別損益)      
Agriculture & Nutrition  -164  -89  -75
Coatings & Color Technologies  -65  216  -281
Electronic & Communication Technologies  9  156  -147
Performance Materials  -129  186  -315
Safety & Protection  105  277  -172
Pharmaceuticals  265  246  19
Other  -81  -55  -26
(計)  (-60)  (937)  (-997)

 


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オバマ米大統領は126日、温室効果ガスの排出量削減と自動車の燃費向上に関する政策の見直しを、EPAと運輸省など関係省庁に指示した。
新政権が地球温暖化の原因の排出を規制しようとしていることの明白なシグナルである。

20074月に米連邦最高裁はEPAに自動車からの二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出規制を強く促す判決を下した。
しかし、
Bush政権はこれまで、温室効果ガスを抑えるために既存の法律を使うことを繰り返し拒否しており、排出規制よりも燃費向上に焦点を当ててきた。

2007/4/5 米連邦最高裁、温室効果ガス規制で政府に促す判決

オバマ大統領は、カリフォルニアや16の州、Washington D.C. のトラック、自動車の排ガス規制法の不許可決定を見直すようEPAに指示した。
EPAがこれら州法を認めた後には、連邦法がこれに追随するだろうと見られている。

運輸省に対しては、2011年モデルからの新しい燃費基準を設定するよう命じた。

ーーー

連邦Clean Air Act では、製油所、工場やその他の固定排出箇所については、州に対して連邦政府よりも厳しい排出規制を行うことを認めている。
しかし、自動車については、連邦法より厳しい州法成立には
EPAの承認が必要となっている。

200712月に EPAはカリフォルニア州が認可を求めていた自動車に対する独自の温暖化ガス排出規制案を認めないことを決めた。

Californiaの規制案では、SUV、ミニバン、乗用車は2009年モデルから、2016年までに排ガスを30%減らすことを求めており、他の州(Arizona, Connecticut, Florida, Maine, Maryland, Massachusetts, New Jersey, New Mexico, New York, Oregon, Pennsylvania, Rhode Island, Vermont, Washington, Utah, Colorado の各州)とWashington D.C. が追随した。

この実現のためには、他の方法もあるが、最終的には平均して2016年までにガロン当たり35.7マイル、2020年までに42.5マイルにする必要がある。

2007年のエネルギー法では2020年までの目標をガロン当たり35マイルとしている。

参考 2007/9/25 米連邦地裁、カリフォルニア州の自動車メーカー訴訟を却下


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既報の通り、Dowは1月23日、Rohm and Haas (R&H) との統合でFTCの承認を得たと発表した。ECは既に1月8日に承認しており、買収の全ての条件が満たされた。

契約ではすべての条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっており、土・日曜を除き、1月27日が期限となる。

しかし、Dowは1月26日、R&Hに対して27日に買収を実施しない旨伝えたことを明らかにした。

金融・経済危機による情勢の変化、PICとのJV計画の破綻を理由にしている。

Liveris CEO は、Dowの長期戦略は変わっておらず、R&H 買収はこの戦略に沿ったものであるとしている。

なお、契約では実行が本年110日より遅れる場合、ダウは 1日ごとに約3百万ドルの "ticking fee"を支払う義務を負うこととなっており、既に始まっている。これはR&H 株主に対する買収遅延の金利の意味を持つ。

    2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認 

R&H はこれを受け、株主の利益のためあらゆる手段を追求すると述べた。 

仮に契約を破棄した場合は、ダウは違約金750百万ドルの支払いが必要となる。

ーーー

R&Hは1月26日、契約の履行を求め、Delaware州の裁判所にDow を訴えた。
  
http://www.rohmhaas.com/investors/media_files/irol/86/86174/ROH_v_DOW_26Jan2009.pdf

全ての条件が満たされた。Dow2009127日までに契約を実行する義務がある。
Dowが実行しないのは契約違反であり、直ちに契約を実行することを求める。

Dowは、2009630日までには契約を実行する能力を確認できると信じる、としているが、将来の時点での実行の約束を拒否した。

Dowの義務はファイナンスによって左右されない。Dowが契約を実行しないのは、契約上認められていない。

 

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付記

Dow は裁判所に対し、裁判を4月後半に延ばすよう要請したが、判事はこれを拒否、3月9日の開廷を決めた。


参考 両社の契約書 Agreement and Plan of Merger は公開されている。

http://yahoo.brand.edgar-online.com/EFX_dll/EDGARpro.dll?FetchFilingHtmlSection1?SectionID=6043250-19594-239471&SessionID=QwdMWWvshMrhXd7


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Pfizer、Wyeth を買収

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世界第一位の医薬会社 Pfizer が1月26日、Wyeth 680億ドルで買収すると発表した。数ヶ月にわたって買収交渉を続けていた。

買収は現金と株式交換の組み合わせで行われ、Wyeth 1株に対し、現金33ドルとPfizer 0.985株を支払う。23日終値ではPfizer株部分は17.19ドルに相当する。
Pfizer は現金部分については自己資金と借入金で賄う予定で、コンソーシアムが既に225億ドルの融資を約束している。

Pfizer は昨年9月末現在で現金・短期運用資産で255億ドルを有しており、世界でもっともcash-rich な企業のひとつである。
金融危機のなか、他の業界の企業が資金借り入れに四苦八苦しているが、現金が豊富な医薬会社は唯一借り入れが可能である。

Pfizer のベストセラーのコレステロール薬 Lipitor (2007年の売上高137億ドルで、同社の年間売上高の30%を占める)が2011年の特許切れを迎え、generic 薬に売り上げを奪われることが懸念されるが、買収により売り上げ減少のいくらかを補うことが出来る。

統合により、研究開発、製造、販売、管理面での合理化を行い、3年後には40億ドルの節約を狙う。

ーーー

Lipitor の特許切れを控え、Kindler CEOの対策に対し、投資家は満足せず、株価は下落していた。

同社は2007年1月以降、1万4600人を削減したが、さらに、本年に入り、研究員のレイオフを始めた。2009年末までに全研究員1万人のうち、5-8%をレイオフする予定だという。これまでの開発が成果を挙げていないことを認めた。
営業職員も約
2400人削減する方針と報じられた。

現経営陣に批判的な向きの一部は、大規模な買収を検討すべきと主張しており、Kindler CEOも買収を検討する用意があると語っていた。

Wyethには子供の肺炎薬として米国政府が奨励している7価結合型肺炎球菌ワクチンPrevnar やうつ病治療薬Effexor がある。

統合会社は売上高が700億ドル以上となり、Sanofi Aventis GlaxoSmithKline の売上高を大きく上回ることとなる。

Pfizer CEO Jeffrey B. Kindler は、「両社の合併はこの産業を変革する強力なチャンスである。多様性と柔軟性と規模のブレンドが世界のダイナミックなヘルスケア事業分野で成功する基盤となる」としている。

ーーー

ユート・ブレーンによると、2007年の医薬品メーカーの売上高は以下の通り。(単位 :億ドル)
  
 http://www.utobrain.co.jp/news-release/2008/

    売上高 R&D
1 Pfizer  444.24  80.9
2 Sanofi Aventis  413.18  66.8
3 GlaxoSmithKline  384.14  66.5
4 Roche  345.05  67.5
5 Novaltis  326.46  64.3
       
9 Wyeth  186.22  32.6
       
17 武田薬品工業  107.82  24.6

ーーー

しかし、この買収に対し疑問を呈する向きもある。

Pfizer 2003年に603億ドルで Pharmacia を買収し、鎮痛剤のCelebrex Bextra を得たが、Bextra は市場から撤退、Celebrex も安全性の懸念から売上高は40%減っている。

ーーー

Wyeth (旧称はAmerican Home Products 2002年に改称)Pfizer には Lipitor を巡って因縁がある。

Lipitor Warner Lambert の製品で、Pfizerが販売権を持っていたが、1999年11月4日、American Home ProductsWarner Lambert は友好的合併(対等)を発表した。
数時間後、
PfizeLipitor を失うことを恐れ、Warner Lambertの敵対的買収を発表した。

その後、両社の訴訟合戦などがあったが、最終的にPfizeが合併した。

  2007/10/11 高杉良 「挑戦 巨大外資」

ーーー

また、American Home Products 1998年にMonsanto との合併で合意したが、直ぐに破談となった。Monsanto はその後2000年にPharmacia & Upjohn と合併してPharmaciaとなった。このPharmacia を後にPfizerが買収した。
Pharmacia 2002年に農薬部門を分離、Monsanto として独立させた。)

ーーー

なお、American Home Products 1994年にAmerican Cyanamid と合併した。
(その後、
2000年にAmerican Cyanamid を分離し、BASFに売却している。)

同社は1998年にSmithKline Beecham と合併で合意したが、すぐ破談している。

ーーー

医薬業界は今後4年で、年間1210億ドルもの売上高の製品が特許切れを迎えることとなり、これを契機に医薬業界で買収が相次ぐとの見方がある。

Johnson & JohnsonMerck & Co.Bristol-Myers Squibb などのCEOは買収を狙っているとしており、これら3社は合計で290億ドルもの現金・短期運用資産を持っている。

Johnson & Johnson 抗精神病薬Risperdal 抗てんかん薬 Topamax が特許切れを迎える。昨年9月末で148億ドルの現金・短期運用資産を保有しており、既に昨年12月に2つの小さな買収を行っている。

Merck は喘息薬のSingulair (売上高40億ドル以上)が2012の特許切れを迎える。


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Dowは1月23日、Rohm and Haas (R&H) との統合でFTCの承認を得たと発表した。ECは既に1月8日に承認している。

これを受け、Dow と R&H は合併契約の実施について打ち合わせを行っている。

FTCの発表によると、両社は塗工紙製品、ペイント、接着剤などをつくるためのアクリル酸やその他化学品の市場で直接競合しており、両社の合併は、アクリルモノマー(精製アクリル酸、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなど)、塗工紙に光沢等を与えるための中空粒子、道路に線を引くために使われるアクリルラテックスポリマーの、北米市場での研究開発・製造・販売で競争を減らすことになる。

合併後の精製アクリル酸のシェアは40%、ブチルは75%、エチルは90%となり、中空粒子とアクリルラテックスポリマーは2社だけのため、独占となる。

このため、下記の点について同意審決を行った。
Dowはアクリルモノマー、中空粒子、アクリルラテックスポリマーを含む一連の施設をFTCが承認する相手先に売却する。
DowR&H から取得する事業に関して、独禁法上問題がある非公開の情報にアクセスしないよう、手続きを取る。

売却対象として下記が指定されている。
1) DowClear Lake, Texas のアクリルモノマー製造設備
2) Dow St. Charles, Louisiana のアクリルポリマー製造設備
3) DowAlsip, Illinois のアクリルポリマー製造設備
4) Dow Torrance, California のアクリルポリマー製造設備
5) DowSouth Charleston, West Virginia のアクリルモノマー研究開発グループ
6) Dow Cary, North Carolina のアクリルラテックスポリマー研究開発グループ
7) その他、これら事業の関連施設

これら事業に関連する全ての技術を含み、Dowはこれらに直接関係はないが、事業に使用される知的資産をライセンスすることとされた。

なお、売却は買収実施の240日以内に行わなければならない。

Dowは2008年9月に、独禁法問題対応のため、一部工場の売却を検討していることを明らかにしている。

Clear Lake, Texas の設備は20042月に、アクリル酸、アクリレートの技術とともに Celanese から買収したもの。
St. Charles, Louisiana の設備は Union Carbide のもの。.

ーーー

Dow は20087月10日、 R&Hを188億ドルで買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。

1株 $78 は前日終値の74%増し。

2008/7/11 速報 Dow ChemicalRohm and Haas を買収

ダウは11月13日、合併後の新組織を発表した。
 R&H事業を新しく
Advanced Materials Division とする。
 これは次の6つの
Business Group から成る。
  
* Coatings,
  * Building and Construction,
  * Paper and Textiles,  
  
* Specialty Packaging and Films,
  * Designed Polymers and Separation Technologies,
  * Electronic Materials

ーーー

R&H 買収契約によれば、契約上はあらゆる条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっている。
FTCの承認が得られたため、あらゆる条件が満たされたこととなる。

なお、契約では実行が本年110日より遅れる場合、ダウは 1日ごとに約3百万ドルの "ticking fee"を支払う義務を負うこととなっており、既に始まっている。
これはR&H 株主に対する買収遅延の金利の意味を持つ。買収価格78ドルの年8%相当を1月10日以降支払うこととなっている。
R&H の株主に帰属し、契約を実行してもダウに返済されることはない。

ーーー

ダウはPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立により、事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

Dow は R&H 買収資金188億ドルを、つなぎ融資 130億ドル、著名な株式投資家Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルで賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

K-Dow Petrochemicals の破談により、DowR&H 買収を取り止めるのではないかとの噂も出ていた。

しかし、DowのCEOのAndrew Liveris はつなぎ融資によりR&H 買収を進めると述べた。また、PICに対して違約金の25億ドルを求償する意向を示している。

だが、これは本来、ごく短期間のつなぎである。このままでは格付け会社がグレードダウンする可能性が強い。
DowとしてはPICの代わり(SABIC、Oman Oil
Saudi ArmacoAbu Dhabi's International Petroleum Investment などが噂されている)を見つけたり、他の事業を売却する手があるが、これには時間がかかる。
理想は銀行と交渉して、つなぎ融資を1~2年のローンに変更し、その間に上記のいずれかで資金を得ることのようだ。

 


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アラバマ州Mobile の巡回裁判所判事はこのたび、Ineos Phenol が1科学者からフェノールの危険廃棄物をリサイクルしタイヤなどの原料とする技術を盗んだという裁判で昨年10月に陪審員が有罪とした判断を支持し、Ineos Phenol に192百万ドルの支払いを命じた。
192百万ドルのうち、25百万ドルはこれまでの被害に対するもの、残り167百万ドルは今後2025年までの被害に対するもの。

Mobile にあるDegussa子会社の元社長が2006年に訴えたもので、2001年にIneosがDegussaから買収しPHENOLCHEMIE が彼のアイディアを勝手に特許にしたとするもの。2004年に自分のアイディアがEUや米国で特許となって使われていることが分かったという。

特許の発明者として5人がリストされており、そのうち4人が生存しているが、全員が自分のアイディアではなく、誰のアイディアか知らないとしているという。

Ineos Phenol はこれを否定しており、控訴する。

ーーー

PHENOLCHEMIEは1952年に設立されGladbeck(ドイツ)、Antwerp (ベルギー)にフェノール工場を建設した。
1994年にHulsが全株式を取得した。(1998年にDegussa とHuls が合併して Degussa-Hulsとなり、2007年に改組し、Evonik に改称した。)
2000年にMobile工場をスタート。

2001年、IneosがPHENOLCHEMIEを買収し、Ineos Phenol と改称した。

現在のフェノール能力は以下の通り。

  Gladbeck 工場  650 千トン
  Antwerp 工場  500
千トン
  Mobile 工場   540
千トン 

同社はまた、2005年にフェノール原料のキュメン工場を買収している。

  Port Arthur 工場 500 千トン (Chevron Phillips から)
  Marl
工場     250 千トン (BPから)

 


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米商務省は1月22日、2008年の住宅着工件数を発表したが、それによると12月の季節調整済み年率換算は550千戸となり、1959年の統計開始以来最低となった。バブル最頂時の2006年1月の2,273千戸と比べると24%にしか過ぎない。

年間では904.3千戸で、2007年の1,355千戸から大幅に低下した。

12月の着工許可件数も市場予測を下回る549千戸で、米国経済の回復の兆しはまだ見えない。

  注. 12月の数値はあと2回見直され、3月中旬に確定します。


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アラブ首長国連邦(UAE)アブダビのユセフ・オメール国営石油会社総裁は、2012年に45年間の期限を迎えるコスモ石油の油田権益について20年の更新を認めることを明らかにした。最高石油評議会がアブダビ石油の権益更新を承認している。

権益更新が決まったのは、コスモ石油子会社のアブダビ石油が単独で権益を保有し1973年から操業しているアブダビ沖合のムバラス油田。

同社の生産量は日量18千バレル程度で、処理設備は同25千バレルの能力があるため、この水準まで生産量を増やすことができる新鉱区も与える方向で検討しているという。

また、アブダビでは国際石油開発帝石子会社のジャパン石油開発も2018年に権益期限を迎えるが、オメール総裁は「まだ時間があるが、大丈夫ではないか」と楽観的な見方を示した。

アブダビでの日本企業の石油開発の詳細については
    
2008/1/8 アブダビの石油権益は延長か  

ーーー

中東では2000年2月にアラビア石油のカフジ油田のサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。

その後はカフジの操業はサウジとクウェート両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、この契約の更新が出来ず、2008年1月4日、アラビア石油は撤退した。

2008/1/5 アラビア石油、カフジ撤退

このため、ムバラス油田(期限 2012年)を初めとして順次期限がくるアブダビの油田については、日本政府も強力に支援を行ってきた。

2007年12月福田康夫首相は、来日中のムハンマド・アブダビ皇太子と会談したが、その席でアブダビ石油の自主開発油田の契約更新に向け、原油の安定供給について意見交換した。

2008年1月、アブダビ首長国を訪問した甘利明経済産業相は、アブダビ石油公社のユセフ総裁と会談した。
席上、総裁は「油田開発には日本企業の関与継続を求める」と述べ、権益延長・拡大を認める方針を示唆している。

コスモ石油はアブダビのIPICからの出資を受け入れている。

ーーー

コスモ石油は2007年9月、UAEのアブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社(IPIC) が約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になると発表した。

IPICは非常勤取締役2人を派遣、コスモが増資で調達する資金の使途など具体的な業務提携内容を両社で詰めるとし、アブダビ政府が同国で計画する石油精製と石油化学の複合事業にコスモが出資することも検討に入った。

IPICはオーストリアのOMV、韓国・現代精油など石油・石油化学関連の海外8社に投資しており、コスモヘの出資は9社目。

コスモ石油は以下の通り述べた。

昭和シェル石油がサウジアラムコから15%の出資を仰いでいるが、サウジアラムコの狙いは原油販売の拡大であるのに対し、コスモとIPICの提携は海外での新たな展開が主眼。

IPICとの上流での協力はアブダビ以外のアジアなどの油田開発が広く対象となる。
コスモが35%の権益をもつ豪州北部の海上鉱区についても、開発段階に進めば一緒にやる候補になる。

今回の提携はムバラス油田権益更新に直接関係はないが、アブダビ政府との関係強化が後押しになるかもしれない。

IPICは以下の通り述べている。

コスモは経営が良好で石油化学や液化石油ガスなど様々な下流部門を持っており、資本参加で油田開発などの上流部門と精製や販売など下流とのインテグレーショ ンを進めたかった。

アブダビは石油やガスの生産能力を拡張する。アブダビ産の原油や天然ガスの安定供給先の確保も出資の狙い。


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DOWAホールディングスの100%子会社のDOWAエコシステムは1月20日、東南アジアの廃棄物処理会社 Modern Asia Environmental Holdings Inc.(MAEH)の全株式を投資ファンドから譲り受ける契約を締結した。

DOWAホールディングスは2006年10月に同和鉱業が持株会社制を導入して改称した。
主要事業会社は5つで、DOWAエコシステムはその一つ。

 DOWAメタルマイン:貴金属銅事業、亜鉛事業、レアメタル事業、リサイクル事業
 DOWAエコシステム:廃棄物の収集・運搬、減容化・無害化する中間処理、最終処理までの一貫したリサイクル事業
 DOWAエレクトロニクス:半導体、電子材料、磁性材料
 DOWAメタルテック:金属加工事業、めっき事業
 DOWAサーモテック:熱処理加工事業、熱処理加工事業

DOWAエコシステムは、近年日本国内において最終処理施設を機軸として、廃棄物の中間処理事業→土壌浄化事業→リサイクル事業へと展開し、急速に成長してきた。

MAEH社は、2000年に米国の大手廃棄物処理会社Waste Management, Inc の海外部門の元社員が設立した会社で、東南アジア3カ国、4拠点で廃棄物処理事業を展開している。

インドネシア PT Prasadha Pamunah Limbah Industri 最終処理施設や廃油・廃液処理施設などを保有
廃棄物処理事業、燃料再生事業、土壌・施設浄化事業など
(インドネシアで唯一、有害廃棄物の最終処理の営業許可を所有)
タイ Bangpoo Environmental Complex Co Ltd. 廃棄物の焼却処理施設
(タイに2ヶ所しかない廃棄物焼却処理施設の1つ)
Eastern Seaboard Environmental Complex Co Ltd. 廃棄物の最終処理、廃油・廃液処理などの拠点
(タイ最終処理施設保有大手4社の1社)
シンガポール Technochem Environmental Complex Pte Ltd. 廃棄物の焼却処理、蒸留・再生などの拠点
(シンガポール有害廃棄物処理企業6社のうち1社)

今後、同社をベースにして、現在の最終処理、焼却処理の廃棄物処理事業にとどまらず、土壌浄化事業やリサイクル事業を東南アジアで展開する。

1) 廃棄物処理事業の拡大
   日系企業等をメインに廃棄物処理などの既存事業を拡大

2)土壌浄化事業の拡大
   最終処理施設を機軸に土壌浄化市場を創設・拡大

3)リサイクル事業の拡大
   現状の収集運搬システムや集荷拠点、保有している許認可等を活用、
   プロダクションスクラップなどを中心とした貴金属リサイクル原料を回収し、リサイクルを促進、
   日本・中国・東南アジアにおけるリサイクルネットワークを構築

DOWAは2003年、中国蘇州市に、産業廃棄物から貴金属をリサイクルすることを主な目的として蘇州同和資源総合利用有限公司を設立した。

4)CDM・環境コンサルティング事業の拡大
   フィリピンで開始したCDM事業を東南アジアに拡大
   環境コンサルティング事業も強化

2008年5月、DOWAと伊藤忠商事は、フィリピンの養豚場における糞尿処理工程にて発酵するメタンを回収・燃焼させることで、温室効果ガスを削減し、排出権を創出するCDM事業を共同推進することを決定している。

5)日本政府の環境支援プロジェクトなどとの連携
   東南アジア諸国の環境改善、人材交流・育成などにも貢献


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SABIC業績速報

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SABICは1月20日、第4四半期の業績を発表した。

SABIC業績                (単位:10億SAR)
      4Q      年間
2008 2007 前年比 2008 2007 前年比
Gross profit  3.51  13.35  -74%  48.1  47.73  
Operating profit  1.61  11.11  -86%  37.27  41.0   -9%
Net profit  0.311   6.87  -95%  22.0  27.0  -19%

2008/3QのNet profit は7.24 billion SARで、4Qはこれに対して-96% となっている。

第4四半期の業績悪化の原因は、金融危機、経済危機による需要減少と、それに伴う石油化学製品の価格下落で、特に自動車や建築分野での石化製品の需要減がサウジ国外のSABIC関連会社の業績に強い影響を与えたとしている。

(1SAR は約24円)


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金融危機の原因は中国の高貯蓄率であるという米国の論調に対し、中国で猛烈な反発が出ている。

発端は昨年1225日付の New York Times の記事「Chinese Savings Helped Inflate American Bubble」である。
  
http://www.nytimes.com/2008/12/26/world/asia/26addiction.html

2005年3月に Bernanke (2006年にFRB議長に就任)は、「問題はアメリカ人が金を使いすぎることではなく、外国人が貯めすぎていることだ。中国人は余分な貯金を積み上げ、米国に低利で貸し、アメリカ人の消費を助けている。」と述べた。

過去10年で中国は1ドル以上(大部分は製品の輸出収入)を米国に投資してきた。これが米国の金利を引き下げ、消費意欲を高め、住宅バブルを引き起こした。

Bernanke は今、もっと金融機関を規制し、中国を含め投資の洪水がまずい使い方がされるのを防ぐべきであったとするが、しかしFEDの銀行規制には限度があり、規制をもっと厳しくしていても十分ではなかっただろうと述べている。

アメリカは中国からの投資を21世紀版の鉄道建設に使わず、政府はイラク戦争に、国民は緩い信用調査を利用して高価なSUVや大きな住宅を買うのに使った。金融機関はより高い利潤を求めて、リスクのある投機に走った。・・・・・

1月2日付けのFinancial Times は「Paulson says excess led to crisis」と題し、任期終了を迎えるHank Paulson 米財務長官とのインタビューを載せた。
  
http://www.ft.com/cms/s/0/c56df5aa-d86f-11dd-bcc0-000077b07658.html 

国により異なる貯蓄と消費の違いが金の余剰と不足を生み、この世界経済の不均衡が金利を押し下げ、投資家をリスキーな資産に向けさせた。

今回の危機に先立つ何年もの間、中国や石油輸出国のような急成長の途上国の余剰資金が、金利を引き下げ、リスクを広めた。

これがグローバルなバブルの種となり、米国のサブプライム市場を超えて拡大し、悲惨な結果を生んだ。


人民網日本語版は早くも1月8日に、「『金融危機の原因は中国の高貯蓄率』は責任逃れ」と題する反論記事を掲載した。
   
http://j.people.com.cn/94476/6570538.html

ニューヨークタイムズやPaulson 米財務長官のロジックは全くのでたらめとしか言いようがない。

中国が米国の債券を買っていたというのは事実だ。だが問題は中国のせいと言うよりは、ウォール街の金融機関が作り出した卑劣なトリックのせいだろう。

今回の危機は基本的には信用危機であり、ウォール街や米国の信用に起こった問題だ。
米国人の過剰な消費や金融市場の過度の発達、金融監督の甘さ、財政赤字と経常赤字の双子の赤字などが危機の根源となった。

現在の危機は世界の経済不均衡と確かにつながりを持っている。この不均衡の原因は一概には言えないが、米国を代表とする先進国の経済構造に大きくかかわる。
世界一の経済大国である米国が巨大で急速に増加する経常赤字を抱えていたことは根本的原因の一つになった。
欧米諸国の過剰消費や貯蓄不足、ハイテク製品の輸出制限なども重要な原因の一つだ。

現在のこのような合理的でない不均衡システムに対しては、発展途上国は早くから変更を希望していた。だが既存の国際的な経済や貿易のシステムは先進国の主導で動かされている。

米国はカギとなるこの時期、他国の貯蓄率の高さを非難するようなことをやめ、勇気を出して自らを検討し、持続不可能な経済モデルに適切な調整を加え、財政赤字を抑え、貯蓄率を高めなければならない。さもなければ、米国自身の利益を損なうばかりでなく、国際社会の共同利益も損なってしまうことになる。 

張健華・中国人民銀行研究局長はPaulson 米財務長官の発言を批判し、これは極めて愚かな、無責任なものであり、gangster logic’であるとしている。


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BASFは15日、韓国蔚山の1.4ブタンジオール(BDO) テトラヒドロフラン(THF) プラントを永久停止すると発表した。
両工場ともに昨年8月から需要不振で停止していたが、現状では競争力ある価格での生産が出来ないとして永久停止を決めた。

蔚山のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEGBASF商標ではPolyTHF) はBASFの他のプラントからTHFを供給し、生産を継続する。
蔚山の
PolyTHF は高級スパンデックス用の標準グレードと、接着剤、塗料、熱可塑性エラストマー用の特殊グレードを持つ。

同社のこれら製品の製造は下記の場所で生産されている。

  BDO THF PolyTHF  
Ulsan (Korea)  ○→X  ○→X  ○ 今回 BDOTHF停止
Ludwigshafen (Germany)  ○  ○  ○  
Feluy (Belgium)  X     2005年停止
Geismar (USA)  ○  ○  ○  
Caojing (China)  ○  ○  ○  
Kuantan (Malaysia)  ○  ○   BASF Petronas
千葉  ○     BASF千葉:BASF 67%(当初は50/50の出光BASF
四日市    X  X 2006年停止

蔚山工場は三菱化学のブタジエン法BDOTHFの技術のライセンスを受けており、三菱化学は製品の一部を引取る契約をしている。

上海Caojing 工場はBASFの独自の新技術でBDOを通さず直接ブタンからTHFを製造する技術を採用した。
しかし、技術的問題から
THF プラントを停止させ、その後改造してブタン→無水マレイン酸→BDOTHF とした。

他のBDOプラントは一般的に使われるアセチレンとホルマリンを原料とする方法を採用している。

ーーー

韓国BASF BASF Company Ltd.)はBASF 100%で、199812月に韓国BASF ウレタン、韓国BASF Styrenics BASF KOREA  合併して誕生した。

蔚山(3プラント)、安山、麗水、群山に工場を持ち、スチレン系樹脂、ポリウレタン、化学品・機能製品(PolyTHFなど)、ファインケミカルを製造販売している。

同社は群山でリジンを製造していたが、2007年にリジン事業を止め、工場を停止した。BASFのNutrition 事業のうち、リジンは唯一のアミノ酸で、今後は非アミノ酸事業に集中する。


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三菱レイヨンは1月16日、アクリル繊維事業の構造改革に伴い、第3四半期に130億円の特別損失を計上すると発表した。

同社は湿式、乾式の紡糸技術を有し、短繊維と長繊維を生産する、世界で唯一の総合アクリル繊維メーカー。

主原料アクリロニトリル価格の上昇、及びそれに伴う世界需要の減少傾向(安価なボリエステル素材への需要のシフト)に伴い、近年赤字経営を余儀なくされてきた。

付記

日本化学繊維協会は1月21日、2008年の化学繊維生産の概況(速報)を発表した。
それによると、アクリル短繊維の生産は144,969トンで前年(236,350トン)の61.3%と大幅減少となった。

このような環境下、同社はこれまで、原綿価格の引き上げ、高付加価値素材比率の向上、並びに減産を強化して対応してきたが、現状のままでは中長期的にも大幅な収益回復は困難と判断し、アクリル繊維事業の構造改革の総仕上げとして、原綿生産の縮小実施及び特別損失の計上にいたったもの。

内容は以下の通り。

(1)大竹事業所
 レギュラー品種の生産能カを大幅に縮小し、競争優位性の高い付加価値品を拡大する。
   原綿生産能力は13万トン規模から5万2千トン規模に縮小
   炭素繊維用プレカーサー製造設備への転換を加速、
    ANからブレカーサー、炭素繊維、プリブレグ、複合材料、製品加工までのANチェーンの更なる強化に邁進

(2)中国の寧波麗陽化繊有限公司
 寧波麗社は、徐々に減産を強化してきたが、抜本的改革(撤退)を早期に実施すべく、共同出資者と協議中

なお、同社は第2四半期にインドネシアにおけるアクリル繊維紡績事業からの撤退に伴い、損失見込み額 4,352百万円を計上している。

インドネシアの紡績会社P.T.VONEX INDONESIA の保有全株式(97.3%)をインドネシア人実業家Choi Wijaya氏に売却し、インドネシアに於ける紡績事業から撤退する。

同社は1974年に設立され、1990年代以降、日本市場への紡績糸の供給基地として大きな役割を果たしてきた。
しかし、日本産地の縮小により糸需要が減少し、業績が悪化した。
Vonex社の旧来の取引先で2.7%を所有(2008年3月に双日から取得)するChoi Wijaya氏に売却する。

ーーー

同社の2008年~2010年の第6次中期経営計画では「AN系事業の事業構造改革」をうたっている。

AN系事業の戦略としては①アクリル繊維の構造改革を行い、②炭素繊維の垂直展開と水平展開を図るもの。

①アクリル繊維の構造改革
  ・アクリル繊維からプレカーサ生産設備への転換加速
  ・アクリル繊維のダウンサイジング

②垂直展開と水平展開
  ・ANモノマー~プレカーサ~炭素繊維・複合材料までのチェーン展開の強化
  ・炭素繊維・複合材料事業の北米、欧州展開での強化
  ・炭素繊維の焼成能力のスケールアップ

中期計画でのAN系事業のグループ設備能力は以下の通り。 (トン/年)

製品   日本 中国 北米・
カナダ
英国 年度末計
アクリロニトリル 07年度末 大竹 200,000        200,000
08-10年度新増設          200,000
アクリル繊維 07年度末 大竹 132,000   50,000      182,000
08-10年度新増設  -50,000-80,000      132,000
炭素繊維 07年度末 豊橋 5,400     2,000    750    8,150
08-10年度新増設 大竹 2,700         10,850

今回の構造改革では、
 大竹のアクリル繊維を132千トンから52千トンに縮小、プレカーサー設備への転換を加速する。
 中国からは撤退の方向。

参考 炭素繊維の世界シェア (2007年:約35千トン)

東レ   34%
東邦テナックス(帝人)  19%
三菱レイヨン  17%
Hexcel Corp米)   5%
Cytec米)   5%
台湾プラスチック    3%
その他  17%

  2008/12/26 日本経済新聞

ーーー

中国の寧波麗陽化繊有限公司浙江省寧波市でアクリル繊維の製造販売を行う会社で、2003年3月に総投資額1億ドルで設立された。
出資は
三菱レイヨン55%、三菱商事10%、伊藤忠 10%、丸紅 10%寧波連合投資控股有限公司 15% となっている。

アクリル繊維はセーター・肌着・靴下・縫いぐるみなどの衣料及び雑貨品や毛布・カーペットなどのインテリア寝装品等々の幅広い分野に使用されており、中国の国内需要は2002年で約96万トンであり、WTO加盟もあって再加工輸出も含め需要量は2005年には105万トン程度に達すると見込まれていた。
三菱レイヨンは世界のトップメーカーを目指し、事業基盤強化及び収益力の向上のため、中国政府に設立を申請した。

繊維事業においてアクリル短繊維はコア中のコア事業であり、アクリル短繊維最大市場である中国を中心に「アジアにおけるプレゼンスをさらに高めていく」としていた。

2006年11月に三菱レイヨンの繊維事業部門長は以下のように述べている。
「世界のアクリル総需要が約250万トン、うち中国の需要が120万トンですから、やはりアクリル繊維に関しては、主戦場は中国市場です。ここで勝ち抜かないと、どうしようもない。」

2005年末から湿式アクリル短繊維「ボンネル」(能力:50千トン/年)の商業生産を開始した。
2008~09年頃には更に50千トンの増設を考えていた。

しかし中国の需要は2006年に入り、減少に転じた。

減少理由として以下の点が挙げられている。

・原料高による製品価格高が川下企業の消費意欲を減退させた
・製品リニューアルの遅さが末端需要の動きを鈍くさせている
・人民元切り上げ等の要素が繊維品の輸出に影響を及ぼした
・改質ポリエステルや新しい複合繊維によるアクリルの代替が進んだ

寧波麗陽では徐々に減産を強化してきたが、撤退を検討する。

 


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LG化学は113日、「2010年に発売予定のGMの電気自動車シボレー・ボルト(Chevy Volt) に搭載されるリチウムイオン・ポリマー・バッテリーを供給する唯一の企業として選ばれた」と発表した。

LG化学が独占供給するのは2010年後半から15年までの6年間。GMがこの期間に30万台の電気自動車を製造した場合、LG化学は2兆ウォン(約1320億円)の売り上げとなる見込み。

LG化学が供給するバッテリーは、サイズが180cm、重さ180kg、電力量 16kw/h の中大型リチウムイオン・ポリマー・バッテリーで、「円筒形ではなく四角形の封筒型パウチタイプで爆発の危険も少なく、表面積も広いため熱の排出も容易なことから寿命も長い」と説明している。

ーーー

GMは2007年1月のデトロイトモーターショーでChevy Volt のコンセプトモデルを展示、2008年9月16日、創立100周年記念式典で市販モデルを発表した。デトロイトで開催中の「北米国際オートショー2009」に量産型モデルを出品している。

ドアのFFセダンで、トヨタのプリウスとほぼ 同サイズだが、ボルトのほうが全幅は約75mmワイドで、全高は約60mm低い。

最大の特徴は、家庭用コンセントで充電できるプラグインハイブリッドカーという点で、最大出力16kWの大型リチウムイオンバッテリーを搭載してお り、プラグを差し込んでおけば、240Vコンセントでは約3時間、120Vコンセントでは約8時間で充電が完了する。

フル充電時の最大航続距離は40マイル、最高速度は約161km/h。

プリウスとの違いは、プリウスが駆動用エンジンを搭載しているのに対し、バッテリー充電専用のエンジンを搭載している。
バッテリー残量が少なくなると、発電用の小型エンジンが始動して充電が行われ、航続距離は数百マイル伸びる。

GMは2007年にバッテリーとその組立について、2チームと開発契約を締結した。

ひとつはLG化学とその米国子会社のCompact Power で、 陽極にマンガンスピネルを使用する。

もうひとつは
2001年にマサチューセッツ工科大学からスピンアウトした A123Systems と、ドイツを拠点とする自動車部品サプライヤー大手のContinental Automotive のチームで、Nanophosphate(リチウムフェライトを使用、粒子をナノレベルまで小さくしたもの)を使用する。

GMは最終的にLG化学を選んだ。

LG化学はソウルの90km南方の梧倉(Ochang )に730百万ドルを投じて新工場を建設する。
GMは当初は電池の組立を
Compact Power に委託するが、ミシガン州の自社工場完成後は自社で行う。

ーーー
LG
化学は現代自動車が今年7月から生産を開始する Hybrid Avante などにも、同バッテリーを供給することになった。

LG
化学では世界のハイブリッドカーと電気自動車の市場は年率47%で伸びており、2008年の510百万ドルから2012年には2,300百万ドルになると見ている。


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財務省は2009年度からサウジアラビアを特恵関税対象国から除外する。

特恵関税は所得水準の低い国の輸入品に通常より安い税率を課す制度で、世界銀行の統計で高所得の国に含まれないなどの基準に該当する141カ国・14地域からの輸入品が対象となっている。

サウジは直近の2006年の1人当たり所得が13,980ドルとなり、世銀の水準(約1万ドル以上)を3年連続で上回った。

2007/3 財務省告示
当該年度の前年までの3カ年の世銀統計において、同期間中連続して「高所得国」に分類されている国・地域を特恵適用除外とする。
   

なお、このほかに、輸入品目別に適用除外とする措置(部分適用除外措置)があり、サウジアラビア産のエチレングリコールが特恵関税の部分適用除外品目となっている。(中国のソーダ灰もこれに含まれる)

過去には2000年度から韓国、台湾、シンガポールが除外されている。
また、
マレーシアは、2006年7月13日の日本・マレーシア経済連携協定の発効に伴い、特恵対象国から外れた。

日本の特恵関税措置の内容は以下の通り。 

  農水産品 鉱工業産品
対象品目 特定の品目を選定し、その品目に対して特恵関税を供与。約340品目 石油、毛皮など一部の例外品目を除き、原則としてすべての品目に特恵関税を供与。約3,200品目
特恵税率 個々の品目ごとに一般の関税率より引き下げ
1) 原則として無税
2) ただし、シーリング対象品目は無税または一般税率の20%、40%、60%、80%
特恵停止方法 エスケープ・クローズ方式: 国内産業に損害を与える等の場合に、政令で特恵適用を停止
1) エスケープ・クローズ方式:同左
2) シーリング方式:年度当初に一定の品目ごとに特恵適用限度額または限度数量を設定。それを超えた場合には自動的に特恵適用を停止

 

このうち、プラスチック類(項名31)の最近の実績は以下の通り。(単位:千円)

  2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度
   (~11月)
タイ   4,277,195 3/16  4,034,247 11/16  4,239,067 1/16  4,681,324 1/16  6,257,512 11/18
サウジアラビア  4,108,413 12/16  4,221,953 11/16  4,343,870 10/17  4,648,994 10/16  4,915,918 9/17
マレーシア  2,317,071    2,794,074     824,819 7/13*    -      -  
中国  1,563,117    2,179,648    3,520,153    4,361,159    3,044,468  
フィリピン   220,322     232,780     296,235     241,304     152,194  
インド   199,771     699,694     328,592     191,800      97,548  
ブラジル    3,150      23,110      50,368     109,930      70,535  
インドネシア    7,707      26,209      26,965      26,173      6,321  
ベトナム    8,177      35,062      29,812      21,053      26,017  
ルーマニア    40,910      44,245      33,699          
トルコ     210                  
イラン        3,173              
合計  12,746,043   14,294,195   13,693,580   14,281,737   14,570,513  
シーリング枠 18,468,156   19,022,200   19,592,867   20,180,653   20,786,073  
国別限度額    20%      20%      20%      20%      20%  

 <p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>  数字の横の日付は輸入額が国別限度額を超えて特恵輸入が打ち切りになった日。
  
マレーシアは、日本・マレーシア経済連携協定の発効に伴うもの。 

日本の特恵関税制度は2001年度に大幅に変更された。プラスチック類では以下の通り変更された。

  変更前 2001年度以降
シーリング枠 毎年6%増加 毎年3%増加
国別限度額 全体枠の25% 全体枠の20%
特恵税率 無税 一般税率の20%

このほか、国別限度の管理が日別管理から月別管理に変更された。
従来は限度枠を超えると、翌日には特恵停止の手続きがとられ2日後に停止となっていたが、月内は枠を超えてもそのままフリーとなる。
停止手続きに約半月(10営業日)かかるため、翌月中旬に停止となる。


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既報の通り、DuPont は200812月5日、競争力強化のためのアクションを発表した。

建設業界と自動車業界の不振、消費者の消費の減少の結果、サプライチェーンでの在庫の縮小で、需要の減少が予想されるとし、コスト削減、投資の縮小によるキャッシュフロー強化のための積極的な行動を取るとしている。

リストラ計画として、主として欧米の自動車、建築業界の事業でおよそ2500人を削減する。将来の競争力強化のため、資産の合理化も行なう。リストラのため第4四半期に税引前で5億ドルの費用を計上する。

これらの処理で2009年に税引前で130百万ドル(年率では250百万ドル)の利益を生むと期待している。

また、年初に始めた生産性計画(2009年に6億ドルの固定費減、10億ドルの運転資金減)を早める。
計画では年末までに4000人の下請けを減らし、2009年には更に減らす。

ーーー

Business Week 誌は、経営コンサルタントRam Charan の近著 "In Leadership in the Era of Economic Uncertainty: The New Rules for Getting the Right Things Done in Difficult Times "の抄録を載せている。
http://www.businessweek.com/magazine/content/09_03/b4116036891021.htm?campaign_id=rss_topStories

この中で「経営者には詳細な、最新の、フィルターを通さない情報が必要で、問題が起こった場合には躊躇なく行動しなければならない」とし、今回のDuPont のアクションにおけるChad Holliday Jr. 会長の行動を描いている。

Holliday 昨年10月初めに訪日し、需要家(多分トヨタ)を訪問したが、そのトップが資金問題を懸念しており、今後に備えて資金の留保を指示したことを知った。これで経済危機がグローバルに広がりつつあるということに気がついた。

帰国するや直ちに6人の役員を招集、状況がどの程度悪いのか、どこまで悪くなるか、の質問をした。
数日後に出てきた答えはひどいものだった。同社の国内国外のすべての事業で金融危機の影響が出ており、Wall Street の危機と思われたものが、西欧、ロシア、アジアとグローバルな危機になる可能性が見えた。

逆にいえば、Holliday はそれまでは単に馬鹿な銀行の自業自得で自社には関係ないと見ていたことになり、日本の経営者の方がはるかに先見性があることになる。

深刻なことに、生産がどんどん落ちていた。同社のペイントは米国の自動車の30%以上をカバーしており、使用の48時間前に納入するカンバン方式をとっているが、突然注文が止まった。

同社には緊急時にとるCorporate Crisis Management plan があり、発動されると幹部が集まり、対策がとられる。これまでは911の時と、Hurricane KatrinaHurricane Rita などの時だけであった。

Holliday はこれを発動することを決断した。

10以内に全従業員が上司の面談を受け、資金節約、コストダウンに直ちに役立つ3項目を提案するよう求められた。
提案は即座に実施され、出張削減、社内会議の取りやめ、下請けカットなどが行われた。

Holliday 、工場停止など準備に時間がかかるものと平行して、10月から直ちに実施できる案の作成を求めた。

すぐに出来ることとして、2万人以上の下請けのカットが行われ、生産が落ちたプラントの従業員が下請けのしていた仕事に回された。

DuPont の危機対策は6週間で作成された。今後も経済情勢に対応して手が打たれる。

ーーー

既報の通り、Ellen J. Kullman 女史10月1日付けで社長に、2009年1月1日付でCEOに就任、Holliday は当面会長を続ける。

2008年12月18日に新体制の発表があった。

Kullman は 1月1日付けでCEOに就任するが、合わせて
同氏が今後の同社のコア事業とみなしている Agriculture 部門とSafety & Protection 部門を統括する。

「DuPont は現在の経済危機に際して、月初に発表したアクションを含め、積極果敢な策をとっている。明確なリーダーシップと責任の下で計画を実行する。DuPont がより強い市場志向のサイエンス企業になることを確信している」と述べた。


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医薬品卸1位のメディセオ・パルタックホールディングスと2位のアルフレッサホールディングスは2009年4月1日の合併の基本合意書を締結していたが、1月9日に合併基本合意書の解約を発表した。

公正取引委員会への事前相談を行っていたが、公取委から本合併に関して第2次審査に移行するとの方針が示された。
これにより合併の延期が必要となることが予想され、その場合、各施策に遅れが生じ、統合効果を早期に実現することが困難になり、収益面で大きなリスクを抱えることも想定されると判断した。

合併新会社は医療用医薬品卸の分野で4-5割(首都圏や近畿など一部地域ではシェアが6割程度)のシェアを占める。また大衆薬卸の分野でも全国シェアは6割超になる。
公取委は大手2社の合併で寡占度が圧倒的な水準にまで高まることに難色を示し、一部事業の売却などを求めた模様。

ーーー

両社は2008年10月10日に、両社が対等の精神に基づき合併する基本合意書を締結した。

以下の背景のもとで、さらなる効率化を推進し、国民の健康な生活に貢献するためには、経営統合が最良の選択であると判断した。

近年、より質の高い安定的な医療の提供が望まれる一方、医療費増大と健康保険財政逼迫に対して、政府は医療費適正化の政策を推進している。
全国どこへでも医薬品を安定供給するという「ユニバーサルサービスの提供」、医薬品の特質から求められる「トレーサビリティの確保」といった社会的な要請の高まりから、物流拠点、流通網、ITシステム等に関する事業基盤整備・拡充のための設備投資、システム投資の必要に迫られている。
一般用医薬品については、改正薬事法の施行にともない、一部の製品がスーパーマーケット、コンビニエンスストア等での販売が可能となり、競争の激化が予想される。

ーーー

過去数年、医薬品卸業界はM&Aを重ねてきており、2社にスズケン、東邦薬品を加えた四強体制が構築されている。

医薬品・大衆薬・日用品卸の業界順位
社名(主な取扱い商品)         2008/3売上高
メディセオ・パルタックHD(医薬品・日用品) 2兆,2549億円
アルフレッサHD(医薬品) 1兆7695億円
スズケン(医薬品) 1兆5865億円
東邦薬品(医薬品)   8054億円

 

各社の歴史は以下の通り。

メディセオ・パルタックHD (Mediceo Paltac Holding)

メディセオ・パルタックは2008年に小林製薬子会社の一般用医薬品大衆薬卸最大手、コバショウを完全子会社にし、パルタックと合併させた。
これにより、医療用医薬品に加え大衆薬、日用品の分野でも首位となる巨大卸となった。

アルフレッサ HD (Alfresa Holdings)

1998 日本商事と昭和薬品が合併し、アズウェルとなる。
2003 アズウェルと福神が共同持株会社「アルフレッサ ホールディングス」を設立

卸売事業   アルフレッサ
四国アルフレッサ
成和産業
明祥
恒和薬品
安藤
小田島
アルフレッサ日建産業
アルフレッサ ピップトウキョウ
製造事業 アルフレッサ ファーマ
青島耐絲克医材有限公司
その他事業 日商物流サービス

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Exxon Mobil の会長兼CEOの Rex W. Tillerson 1月8日、ウッドロウ・ウイルソン国際学術センターで「Strengthening global energy security」と題するスピーチを行った。

スピーチ:http://www.exxonmobil.com/Corporate/news_speeches_20090108_rwt.aspx

この中で、温暖化ガス削減対策として、オバマ次期政権が検討しているとされる排出量取引制度(cap-and-trade systemよりも炭素税(carbon taxの方が優れているという見解を示した。

石油業界はこれまで炭素税に反対していた。

日本でも環境省が「環境税」を提案している。

石油連盟はこれに反対し、「増税なき温暖化対策を目指すべき」としている。
   http://www.paj.gr.jp/from_chairman/data/file/2004/20041117.pdf 

「化学産業団体・地球温暖化対策協議会」(日本化学工業協会、石油化学工業協会、日本ソーダ工業会、塩ビ工業・環境協会、日本化学繊維協会)や日本鉄鋼連盟なども温暖化対策税の導入に反対している。

スピーチの内容は以下の通り。

現在の経済危機のなか、直近の経済成長を図るのは必要だが、同時に長期的に経済成長を維持するというチャレンジも必要である。
   
エネルギー面では多面的な問題にチャレンジする必要がある。
   
特に開発途上国の経済発展に伴い、エネルギー需要は急増している。
  このため採算の取れる方法でより多くのエネルギーを確保する必要がある。
    代替エネルギーの開発、これまで採掘が難しかった場所での採掘のための新技術・投資資金・他国との協力など
  また、エネルギー効率を高めることも必要。
   
エネルギー需要の増加に伴い、温室効果ガス排出が増加する。
  膨大なエネルギー需要増加への対応と温室効果ガス対策という「双子のチャレンジ」が必要
   
①新しいエネルギーの供給、②エネルギー効率、③温暖化対策を総合した長期戦略が必要
   
①については、米国内に大量にあるエネルギー資源を探査、採掘、生産、輸送する技術を持っている。
   たとえば地下深くの岩石層のなかに閉じ込められている天然ガスを経済的に取り出す技術
   これまでの船よりも80%増しのLNGの輸送が可能なQ-Max船(カタール石油と共同開発)
   
②についても、エクソンは新世代自動車向けの新しい省エネ技術を開発している。
   新しいエンジン技術(Homogeneous Charge Compression Ignition
   タイヤメーカーとの共同開発によるタイヤのライニング技術
   リチュウムイオン バッテリー
   水素燃料
   
温室効果ガス排出量低減への総合対策が必要で、対策はイノベーションや競争を阻害したり、勝者敗者をつくって市場を不安定にするものであってはいけない。
   
排出権取引(cap-and-trade system)には多くの問題がある。
   無駄な費用が掛かり、複雑
   取引のための新しいインフラが必要で、新しい排出権の"Wall Street"のブローカーが儲けるだけ
   検証・求償のための組織が必要で、企業や消費者のコストとなる。
   
代替案として炭素税(carbon tax)がある。
   これは排出権取引より、もっと直接的で、透明で、有効であり、コストも少なく複雑でない。容易に実行可能である。
   企業の投資から消費者の製品選択まで経済面でのあらゆる意思決定において、カーボンのコストを反映する最も有効な方法である。
   炭素税賦課と同時に他の費用や税金を減らすことにより税収中立にできる。(するべきである)
 

 全ての国が排出量削減に責任をもつ統一基準として最適


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中国国務院は12月18日、国際原油価格の下落を受け、石油製品の卸売価格を19日から引き下げると発表した。2007年1月以来の値下げとなる。

値下げ幅はガソリンが13.9%、ディーゼル油が18.1%、航空燃料が32.2%で、値下げ後の価格は、いずれもトン当たりで、ガソリンが5,580元、ディーゼルが4,970元、航空燃料油が5,050元となる。

同時に小売基準価格もガソリンで1リットル当たり6.37元(87円)から5.46元(74円)に0.91元引き下げ、軽油も1.08元引き下げた。

中国は石油製品について1998年に基準価格制度を導入した。
基準価格は国家発展改革委員会が国際石油市場(当初はシンガポールのみ,2001年以降ロッテルダム,ニューヨークを追加)の製品価格を参考に設定する。価格の見直しは原則として2ヶ月に一度、国際石油市場の価格上昇幅が1カ月に8%を超える場合に行うこととなっている。

しかし、2005年頃からの原油価格の急騰を受け、中国政府は基準価格のアップ率を抑えた。
この結果、シノペックは大幅な赤字となり、政府が支援している。(ペトロチャイナは自社原油が多いため、補助なし)

    2008/3/21 
Sinopec、政府から石油精製事業の赤字補填金受領 

昨年8月から原油価格が急落したが、中国の燃料価格は昨年6月以来変更がなく、中国の小売価格はむしろ割高となっていた。
今回、原油価格の下落を受けて、基準価格を引き下げるもの。

業者は基準価格の
上限8% までの範囲で卸売・小売価格を設定することができる 

なお、20091月から、これまで道路整備費として徴収している「養路費」など6項目の交通費用を廃止し、燃料消費税を引き上げる。
ガソリンの消費税を現行の1リットル当たり 0.2元から1.0元に、ディーゼル油を同 0.1元から 0.8元に引き上げる。

廃止するのは公路養路費、航道養護費、公路運輸管理費、公路客貨運附加費、水路運輸管理費、水運客貨運附加費。
養路費は車両所有者に課せられる一種の道路税で、車両重量により決まり、例えば普通車なら月110元で前払いする。

政府は以前から自動車関係諸費用を燃料消費税に一本化することを検討していた。

走行距離に関係のない固定額から使用量に応じた徴税に変更する。
石油製品消費を抑制し、省エネルギーを促す狙いがあるとみられる。

国家発展改革委員会は燃料消費税改正でも国内の燃料価格は変わらないとしている。

燃料消費税は内税で、小売基準価格に折り込んである。
1月からの燃料消費税アップも折り込み済みのため、小売基準価格は変えない。

ーーー

中国ではこれ以前から民間ガソリンスタンドに値下げの波が押し寄せていた。

中国の石油製品小売価格は政府の統制下にあり、国家発展改革委員会が小売基準価格を決め、販売業者はこれを基準に上限8%までの範囲で価格を決めることが出来る。従来は基準価格が低く決められていたため、上限ぎりぎりに価格を設定するのが慣例だった。

しかし、国際原油価格の下落を受け、地方の民間石油精製工場が卸値を引き下げ、民間ガソリンスタンドに値下げによる販促活動を促した結果、値下げ競争が始まった。

この時点では国営石油大手2社のペトロチャイナとシノペックの直営スタンドは価格を据え置いていた。

12月25日にペトロチャイナが上海の150のスタンドでガソリン価格を引き下げた。

シノペックはこれを受け、本年1月1日からの上海の44のスタンドでの値下げを発表した。
8時間後にペトロチャイナは前回価格から0.10元の値下げを行った。
次にシノペックがどう対応するか、注目されている。

値下げ後の価格と値下げ幅は以下の通り。(単位:元/リッター) 

  ペトロチャイナ シノペック
90号ガソリン(低圧縮比エンジン用)  4.45 (-0.2)→4.35... 4.40 (-0.25)
93号ガソリン(レギュラーガソリン)  4.76 (-0.3)→4.66 4.71 (-0.35)
0号ディーゼル 4.55 (-0.3)→4.45 4.50 (-0.35)

                    シノペックの93号新価格4.71元は約64円

両社の価格競争は広州にも広がった。

なお、本来の規則では、業者は基準価格の上限8%、下限8%の範囲で卸売・小売価格を設定することができることになっている。
現在の小売価格は基準小売価格の下限の
8%よりも低い。
安く売った場合は需要家にはメリットがあり、損をするのは業者だけなので、規制する意味はなく、放任しているのかも知れないが、よく分からない国である。


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国土交通省は1月8日、エクセルシャノン、三協立山アルミ、新日軽、PSJ及び H.R.D. Singapore の5社が、樹脂製窓について、申請した仕様と異なる不正な試験体を使用して建築基準法に基づく性能評価を受け、大臣認定を受けていたこと等が判明したと発表した。

エクセルシャノンが、不正な試験体を使用して性能評価を受け、大臣認定を受けていたこと及び他社と共同で性能評価を受けたものがあることについて、報告したもの。

この報告を受けて調査を行ったところ、5社が、計27種類の防火設備(樹脂製窓)の遮炎性能試験又は準遮炎性能試験において、窓枠等の内部における遮炎材の増量等をした不正な試験体を使用して試験に合格し、性能評価を受けていたことが判明した。

また、これらの不正な試験体を使用して性能評価を受けた計27種類の防火設備(樹脂製窓)について、5社が計80件の大臣認定を受けていた。

各社は、国土交通省が2007年に実施した「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」において、
不正な試験体による性能評価試験を行っていない
大臣認定を受けた仕様とは異なる仕様の防火設備(樹脂製窓)の販売等を行っていない旨、報告していた。

国土交通省は2008年1月8日、「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」結果を発表した。

これまで認定を受けた大臣認定の構造方法、建築材料のすべてについて、認定を受けた企業に調査・報告を依頼したもの。
調査対象企業は1,788社。対象件数は1万3,965件。このうち、1,422社から1万2,771件の報告が寄せられた。

調査により、大臣認定の取得、認定書の使用について不正が行なわれていた疑義があるとの報告は40企業・77件あった。
内訳は「認定申請仕様と異なる試験体によって性能評価試験を受験したことが確かめられたもの」が7件、
「大臣認定の仕様とは異なる仕様の構造方法等の販売等を行なった」が38件、
残り 32件は「今後、ヒアリングを実施予定のもの」だった。

 

国土交通省では、不正な試験体を使用して大臣認定を受けた防火設備(樹脂製窓)については、当該大臣認定を取り消した。

各企業に対し、以下の指示を行った。
原因究明を行い、再発防止策を検討し国土交通省に報告する。
当該建築物について建築基準法の基準への適合性の確認を行い、不適合のものについて改修等の必要な対策を講じる。
上記以外で、販売仕様が認定仕様と異なる製品については、上記と同様の必要な対策又は 販売仕様の性能確認を行う。
各企業が保有する他の大臣認定について、あらためて法適合性の確認を行う。
相談窓口を設置し、適切に対応する。

今後は、社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会・防耐火認定小委員会においてとりまとめた再発防止策を実施する。

ーーー

不正があったのは、27種類の樹脂サッシについて各社が2003年2月~08年7月に取得した計80件の認定で、炎にさらされても20分間延焼を防ぐ性能が求められるが、13分程度しかないとみられるという。

約5500棟の建物の窓に使われており、エクセルシャノンが約4100棟と大半で、三協約750棟、H.R.D.約530棟、新日軽約90棟、PSJ 4棟。各社は無償改修する。多くの製品は複数社が共同で開発していた。試験体は、主にエクセルシャノンが製作した。

ーーー

エクセルシャノンはトクヤマの樹脂製窓枠事業子会社シャノンが2008年10月にカネカとその子会社の樹脂サッシ事業を吸収合併したもので、トクヤマ 67.38%、カネカ 32.62% となっている。2008年12月に改称。

三協立山アルミは2006年6月に三協アルミニウムと立山アルミニウムが合併してできた。

新日軽は2000年8月に株式交換により日本軽金属の100%子会社となった。

PSJ は2004年11月にシャノン、三協アルミニウム、立山アルミニウム、新日軽がビル用樹脂サッシの開発と供給を目的に均等出資で設立した。

H.R.D. Singapore は木造注文住宅建設事業の一条工務店の関連会社。H.R.D. は Housing Research and Development の略

ーーー

トクヤマによると経緯は以下の通り。

1995年 トクヤマが乙種防火戸認定を取得し、翌年 認定仕様と異なる構造の樹脂サッシを販売開始。
2000年 トクヤマの樹脂サッシ事業をシャノンが承継。
2003年 シャノンが準遮炎性能の防火設備認定を取得、認定仕様とは異なる仕様の樹脂サッシの製造販売開始。
2007 国土交通省の「防耐火関連の構造方法等の認定に関する実態調査」依頼に対し、「認定仕様と相違なし」と報告。

構造計算書偽造問題が発覚して大問題になったのが2005年。その10年も前から偽装を隠し続けてきたことになる。

シャノンの歴代社長は不正を知りつつ、公表していなかった。同社の中村辰美社長は「代替品ができるまで公表できなかった」と弁解したが、回収のコスト負担を恐れたことも公表を遅らせた。

同社では、問題となる製品は約5,500 棟(約71,000窓)に販売されており、対象となる建物の特定作業が済み次第、対象製品の不具合の改善を行う。
原因究明と再発防止については、独立した第三者(有識者、弁護士等)で原因究明のための社外調査委員会を構成し、調査委員会の報告を受け、再発防止体制を構築し、公表する。

ーーー

樹脂サッシは約半世紀前、ドイツで誕生した。以来、北欧の寒冷地を中心に、欧米の先進諸国での省エネ推進の観点から急速に普及し、2000年にはアメリカで約46%、アイルランドで66%、ドイツで55%が樹脂製となっている。

日本では1975年に発売開始された。
1999年に政府が策定した「次世代省エネルギー基準」で断熱サッシの採用を奨励したことも追い風となり、増加した。

当初は、冬季の凍結によるモルタルや窯業系材料のひび割れ被害が深刻化していた北海道や東北地方といった寒冷地、あるいは塩風による金属系材料の錆びが大きな問題となっていた沿海地域など、限定された範囲内にとどまっていた。

その後、高断熱・高気密機性が買われ、全国に広がりつつある。

塩ビ工業・環境協会(VEC)では樹脂サッシ普及促進委員会を設置し、2003年から普及活動を行っている。
(上のグラフは同委員会のホームページ 
http://www.jmado.jp/main.html から)

VECは活動の重点課題のひとつに「地球温暖化対策に貢献する樹脂サッシ等の普及促進」を挙げている。

環境省は2008年3月、入居している霞が関合同庁舎5号館の4フロアの事務室の窓をすべて二重化し、窓の内側に、樹脂サッシと複層ガラスを組み合わせた断熱・省エネ窓を2年がかりで設置した。工事費は約6,000万円。同省では「省エネ効果は確かに高い。それと外から騒音が入らず、部屋が静かになった」としている。

      付記

塩ビ工業・環境協会は1月9日、下記の声明を発表した。

1. 昨日午後、樹脂サッシメーカー5社が防火製品についてその性能を偽装していたとの発表がありました。誠に遺憾です。
2. 問題を起こした樹脂サッシメーカーには、問題となった製品についての適切な対応を早急に行うこと、また、法令に従った適切な製品を製造・供給することを強く求めます。その上で、環境性能に優れた樹脂サッシの普及を今後とも推進して参りたいと思います。
3. 樹脂サッシは、もともと、その優れた断熱性能と耐久性能故に、欧米では長年にわたり広く使われており、高い信頼性を築いてきております。今後の温暖化対策に 大きな役割が期待されるものであり、また、結露の防止や温熱環境の安定により、住まう人及び住宅そのものにも優しい製品です。


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シノペック子会社の四川ビニロン工場は昨年12月29日、重慶市長寿の重慶ケミカルパークで新しい酢酸ビニル計画の起工式を行った。

投資額は780百万ドルで、酢酸ビニル 年産30万トン、アセチレン 10万トン、PVA 10万トン、メタノール 73万トンの各プラントを建設する。
2010年10月に建設を完了、12月から試運転を開始する計画。

アセチレンと酢酸から酢酸ビニルを製造、酢酸ビニルからPVA(ポリビニルアルコール)を製造する。
また、アセチレンのオフガスからメタノールを合成する。

(注)一般的には酢酸ビニルはエチレンと酢酸から製造される。

アセチレンの原料の天然ガスは、四川省達州市のシノペックの普光(Puguang)ガス田から「四川ー東中国ガスパイプライン(四川ー上海)」で送られる。
また原料酢酸は敷地内で生産しているBP 51%、Sinopec四川ビニロン工場 44%、地元 5%のJV 揚子江アセチル(YARACO) から供給を受ける。

YARACOも酢酸第二期 65万トンを建設中で、2011年にスタートさせる予定。

2008/1/28 BP、中国事業を更に拡大


各社の能力は以下の通り。

    第一期 第二期
四川ビニロン工場 アセチレン    6万トン  10万トン
酢酸ビニル   20万トン  30万トン
PVA    6万トン  10万トン
VAEラテックス   3万トン  
ビニロン   2万トン  
メタノール   35万トン  73万トン
フォルマリン   5万トン  
YARACO 酢酸  35万トン  65万トン
エステル   8万トン  

中国は2006年に215千トン、2007年に279千トンの酢酸ビニルを輸入しており、2008年も260千トン程度を輸入する。


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第一三共は1月5日、2009年3月期第3四半期に、連結子会社であるランバクシー・ラボラトリーズについて、個別決算において3,595億円の株式評価損、連結決算において3,540億円ののれん一時償却の特別損失を計上すると発表した。

ーーー

第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表した。

株式の取得総額は、TOBの結果により変動するが、1,474~1,980億ルピー(3,685~4,950億円、1ルピー=2.5円換算)を見込んだ。

Ranbaxyの概要は以下の通り。
 設立:1961年設立
 従業員数:約12,000名(うち研究開発1,400名)
 拠点:原薬製造:パンジャブ州 モハリ(Mohali, Punjab)、トアンサ(Toansa)他 計6拠点
     製剤:インド国内6拠点、海外13拠点
     研究開発:ハリヤナ州 グルガオン(Gurgaon, Haryana)
     連結子会社:インド国内8社、海外47社
 主要製品:高コレステロール血症、感染症などの領域における
後発医薬品
 主要な開発中の新薬:Arterolane(マラリア治療薬
- Phase 2b試験中)

買収の狙いは以下の通りであった。

ランバクシーは49カ国に営業拠点を持ち、その中にはアフリカや中東欧、南米などの新興国が多く含まれる。
(第一三共は先進国を中心に21カ国・地域に進出)

2007年の世界医薬品市場は6635億ドルで、そのうち日米欧が8割以上を占めるが、日米欧市場の年平均成長率は1ケタだが、主要新興国平均では同15%に達する。

第一三共の売上高8800億円のうち日米欧向けが97%で、ランバクシー買収により今後の成長が期待される新興市場への足がかりを獲得する。

このため、両社の補完関係は、先進国・新興国双方の需要への対応、イノベーティブ(特許で保護された製品)とロングセラー(特許が満了した製品)双方の共有というハイブリッドビジネスモデル「複眼経営」を構築する。

ーーー

同社は11月7日、ランバクシー株の63.9%を取得したと発表した。

2008年8月16日から2008年9月4日までの間、公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行った。
これら取引の取得価格はいずれも1株当たり
737ルピー。1ルピー2.5円で計算すると総額4,950億円になる。

なお、本件発表の翌日 6月12日の株価は 543.50ルピーであった。

  株数        金額
(百万ルピー)
    取得割合
希薄化前 希薄化後*
公開買付けによる取得   92,519,126    68,186   22.0%   20.0%
創業家一族からの取得(第1回)   81,913,234    60,370   19.5%   17.7%
創業家一族からの取得(第2回)   48,020,900    35,391   11.4%   10.4%
第三者割当増資引受け   46,258,063    34,092   11.0%   10.0%
小計  268,711,323   198,040   63.9%   58.1%
新株予約権引受け  (23,834,333)
    相当
    1,758 (行使価格総額の
     10%を払込み)
合計     199,796  
総株数     420,370千株 462,596千株

 * 希薄化後:転換社債、従業員ストックオプションを含み、新株予約権を除く完全希薄化後発行済株式

これで予定されていた取引は全て完了となった。
Ranbaxyは本取引終了後もボンベイ証券取引所及びナショナル証券取引所での上場を継続する。

ーーー

米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、ランバクシー・ラボラトリーズの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

ーーー

これが報道され、ランバクシーの株価は下落した。更に世界的な株安もこれに加わった。

第一三共の買収価格は1株737ルピーであるが、発表翌日の株価は543.5ルピーで、その後 500ルピー付近にあった(TOB最終日9月4日終値は493ルピー)が、その後、急落し、年末の終値は252ルピーであった。


終値は買収価格の34%に過ぎない。発表当時の株価からも半分以下になった。
また、ルピーも契約時には2.5円/ルピーであったが、その後の円高で1.9円となっている。

この結果、大幅な評価減が必要となった。

 

第一三共は12月19日、ランバクシーの新体制を発表した。第一三共グループの一員としての企業活動を本格的に開始する。

「先進国および新興国におけるマーケットの拡大と、医療ニーズの多様化が進展する2015年以降の医薬品市場を見据えて、インドのNo.1製薬企業であるランバクシーをグループの一員に迎える決定をした」としている。

今回の評価減、のれん償却についても、以下の通り述べている。

世界的な金融危機に直面する現状の市場環境に鑑み、予め厳格な会計処理を実施することによって財務体質の健全性を確保するもの。

先進国・新興国双方への需要への対応、イノベーティブ・ロングセラー双方の共有というハイブリッドビジネスモデルへの挑戦の方針には些かの変更もありません。

 

ジェネリック医薬品については 2008/9/26 ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出


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LyondellBasell 16日、米国事業とBasell Germany Holdings GmbH について破産法 Chapter 11 (民事再生法)の申請を行ったと発表した。

それ以外の国での活動は従来通りとしている。

なお、民事再生計画認可までの間の倒産を防ぐため、80億ドルのDIPファイナンスのアレンジをしたことを明らかにした。

DIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスは一時的な運転資金の手当てのことで、うち、32.5億ドルは新規借り入れ、32.5億ドルは既存の担保付借入金の再借り入れ、残り15.15億ドルは既存運転資金の再借り入れとなっている。

昨年下半期の売り上げが急減し、Lyondell 買収などによる260億ドルの借入金が重荷となり、借入金の返済期限延長交渉を行い、金利支払いを一部延期していた。

     2009年1月1日 LyondellBasell、民事再生法申請も

       


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既報のとおり、昨年末にクウェートの最高石油評議会が、本年1月1日に発足が予定されていたダウとPICの50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消した。

2009年1月 5日 ダウ、苦難のスタート

ダウは16日、「変身戦略」を推し進めるとし、クウェートに対する法的措置を含め、対応策を発表した。

ダウを、石油化学の合弁会社群と市場志向の機能性事業のポートフォリオによる高機能で収益の伸びの高い企業とするべく、積極策を取り続けるとしている。

Andrew Liveris 会長兼CEOは、今回のPICJV取りやめの決定は全く予想外で、強く失望しているが、ダウの将来の成長のためのロードマップである「変身戦略」を損なうものではないとしている。

同社の発表した対応策は以下の通り。

1)PICとの契約の権利を行使するため法的措置や他のオプションを追求する。

クウェートとの間の過去10年にわたる長いパートナーシップを考えると、法的措置は軽々しく行える決定ではないが、PICは契約違反を行ったのであり、会社と株主の利益を守るためには行動する必要がある。

参考 契約では裁判所が契約違反であると認定した場合PICは最高 25億ドルの違約金を支払う義務がある。

2)新しいパートナー(K-Dowを超えて)

K-Dow
PICを相手に決める際に、他のオプションもあった。
ダウは既に基礎プラスチック事業でのダウとの
JVについて他の企業からアプローチを受けている。

「変身戦略」達成のため、正式に交渉を開始する。
K-Dow の手本があるため、時間は短縮できる。

3)不安定なグローバル経済環境に対応

2005年以来の変身戦略は急速に変化するグローバル環境に対応してきたが、今後もよりスリムに、素早い行動で、危機と好機に対応していく。

4)コストダウンと投資格付けアップ

昨年12月にリストラ案を発表、人員の11%カット、高コスト地域でのプラント閉鎖、非中核事業撤退を行うこととしたが、柔軟に、効率的にこれを進める。

15日、Lubrizol Corporation はダウから熱可塑性ポリウレタン(TPU) 事業を買収したと発表した。

結果的に投資格付けアップを図る。

5)株主への約束

1912年以来、389四半期にわたり、減らすことも中断もなく配当を払ってきたが、これを続ける。


付記

ダウにとって次の問題はRohm and Haas の買収の実行である。

Rohm and Haas 買収契約によれば、実行が本年110日より遅れる場合、ダウは 1日ごとに約3百万ドルの "ticking fee"を支払う義務を負う。ticking fee は時計がチクタクと時を刻むごとに増えていくる費用の意味。

これはRohm & Haas の株主に帰属し、契約を実行してもダウに返済されることはない。

契約上はあらゆる条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっている。EUの承認が得られたため、あとはFTCの承認だけ。
Ticking fee はこれとは関係なしに、R&H 株主に対する買収遅延の金利の意味を持つ。買収価格78ドルの年8%相当を1月10日以降支払うこととなっている。

ダウは資金のめどをつけるため、短期的な遅延を考えていると伝えられた。

付記

PICに代わるダウの新しい提携先として、以下が噂に挙がっている。   

SABIC、Oman OilSaudi ArmacoAbu Dhabi's International Petroleum Investment Co.


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山東煙台万華(Wanhua)ポリウレタンは中国唯一のMDIメーカーで、山東省煙台に12万トン、浙江省寧波に24万トンのプラントを持ち、寧波に30万トンの新プラントを建設中である。

同社の煙台のプラントが商業地域になるため、煙台経済技術開発区の西港に移転することとなっているが、12月18日に中国環境保護省により環境アセスメントが承認された。

新立地は以下の構成によるポリウレタンコンプレックスとする。
  MDI  60万トン
  TDI  30万トン
  BTX抽出 80万トン
  苛性ソーダ 30万トン
  塩酸 48万トン

業界筋の情報では投資額は200億人民元(2600億円)で、2009年に建設を開始、2011年に完成する予定。

完成後は旧プラント12万トンは廃棄する。

ーーー

中国のMDI能力は以下のとおり。(単位:千トン)

    既存 建設中 計画
バイエル 上海     250   
BASF 上海   240     
重慶       400 
万華  煙台   120    → 0
      600
寧波   240  +300  
合計   600   550  1,000
 -120

2006/12/20 Bayer、MDI 能力 約110万トンに 

2008/10/13 BASFの重慶MDI計画,進展か

 

なお、TDIの能力は以下の通り。(単位:千トン)
    
2008/2/22 河北省の滄州大化、韓国SKとTDI事業でJV設立 に追加

社名 現行能力 建設中 計画 完成
上海BASFポリウレタン(上海市)   160      
甘肅銀光TDI(甘肅省白銀市)    50      50 2010年
滄州大化(河北省滄州市)
 Cangzhou Dahua-SK (河北省滄州市臨港化工区)
 
   30
 
 
 
    50
 
 
 
  100
 
2008年末
2012年?
藍星グループ(山西省太原市)     30      
Yantai Juli (山東省莱陽市)     15      
Bayer Material Science(上海市)     300   2009年
遼寧North Jinhuaポリウレタン(遼寧省 葫蘆島市)      50   2008年末
山東煙台万華ポリウレタン       300 2011
合計    285  400  450  

 


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ダウは今後の事業を1)石油化学事業、2)機能製品事業、3)健康・農業、先端事業、その他市場志向事業の3つに分け、市況の変動にさらされる石油化学事業についてはAsset Light 戦略によりJV化し、資本負担、リスクを減らすという「変身戦略」を採用した。

Asset Light 戦略では、残っていたポリエチレン、エチレンアミン、エタノールアミン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の事業をクウェートのPICとのJVのK-Dow Petrochemicals に移し、2009年1月1日に発足させることが決まり、「変身戦略」が完了することとなった。

しかしながら、既報のとおり、ダウは12月28日、クウェートの最高石油評議会が、1月1日に発足が予定されていたダウとPICの50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消したと発表した。

2008/12/29 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談に

これを受け、12月29日のDow の株価は19%下落し、Dow による買収が難しくなった Rohm and Haas の株価も下がった。

Standard & Poor's 1229日、Dow Chemical の格付けを引き下げたこと、Rohm and Haas についても引き下げを検討していることを明らかにした。
ダウについては企業格付けを現在の「
A-」から「BBB」に2段階落とした。Rohm and Haas についても現行の「BBB」から更に落とすことを検討している。
「BBB」は「投資適格」の下から2番目である。

S&Pの格付け

「投資適格」:
AAA, AA+, AA, AA-, A+, A, A-, BBB+, BBB, BBB-
「投機的」:BB+, BB, BB-, B+, B, B-, ---- 

S&Pではこの決定について、「これまでは話は順調に進んでおり、新会社が1月1日にスタートするとされていた。取り消しは全く予想外である。ダウにとって、戦略的にも資金面からも、重要な事態だ」としている。

ーーー

Andrew N. Liveris 会長は1027日、東京で開かれた日経Global Management Forum で、“Growth Strategies in Turbulent Times” と題して下記の内容のスピーチを行っていた。 
 
http://news.dow.com/dow_news/speeches/20081027_liveris.pdf

今回は未曾有の危機であるが、この時こそ、戦略実行を加速する絶好の時である。
それこそ、ダウが行っていることだ。数年前に発表した企業の変身に向け、前進している。

Kuwait PICとのJVが間もなく決まる。これは win-win の取引である。

これは2つの面で重要である。
①ダウの石化を石化原料を持つ
PICと統合することで、コスト競争力を持つこととなる。
②ダウはこれで得たキャッシュを市況変動を受けにくい先端材料やスペシャルティケミカルの事業に使うことができる。
  
具体的には
Rohm and Haas の買収を進めており、買収後にはR&D予算16億ドル以上の、世界最大の先端材料企業のひとつになる。

今回の取り消しにより、Asset Light 戦略が完了しないだけでなく、資金面からRohm and Haas の合併も危うくなり、同社にとっては苦難のスタートとなる。

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Rohm & Haas 買収資金は188億ドル。(全株式買収 153億ドル+R&H 借入金肩代わり 35億ドル)

ダウはつなぎ融資 130億ドル、著名な株式投資家Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルでこれを賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

ーーー

前回の記事で、契約では契約キャンセルの場合、PICは25億ドルの違約金を支払う義務があるとした。

消息筋は、違約金25億ドルは、ダウが訴訟を行い、裁判所が契約違反であると認定した場合の最高額であり、湾岸諸国との友好関係を続けたいダウが訴訟を行うことは考え難いとしている。

ーーー

Rohm and Haas の株価が下落したことに伴い、ダウが買収価格を再交渉するのではないかとの説も出ているが、難しいとの見方が強い。

仮に契約を破棄した場合は、ダウは違約金750
百万ドルの支払いが必要となる。


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本年初日となる1月2日のニューヨーク原油先物取引で、WTI原油終値は12月31日の終値44.60ドル/バレルから1.74ドル値上がりして46.34ドルとなった。

ロシアがウクライナ向けガス供給を停止したことにより、天然ガス価格が急騰したことや中東情勢の悪化で原油高となった。
また、ダウ平均株価も朝方には製造業景気指数が28年ぶり低水準まで悪化して一時下落したが、オバマ新政権への政策期待で切り返し、終値が11月5日以来となる9000ドル台を回復したことも支援材料となった。


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ロシアの独占天然ガス会社 Gazprom は1月1日、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。

両国は、20億ドル以上とする天然ガス供給の代金未払いや債務、滞納の罰金支払いの調整及び2009年からの価格について年末から協議していたが、31日までの交渉が不調に終わったため、強硬措置に訴えた。同国のパイプラインを通じてガスを輸入する欧州でも懸念が広がっている。

ウクライナのユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相は1日、交渉継続を訴える共同声明を発表した。

問題点は2つ。

1)天然ガス代金未払い

ロシア側はウクライナの債務20億ドルが未払いとしている。

ウクライナはこれまで、金融危機の直撃を受けた経済混乱で債務を支払えないなどと主張し、この冬を乗り切るだけのガス備蓄はあるとしてロシアの支払い要求を拒否してきた。

ぎりぎりになって、ウクライナは15億ドルを支払い、完済したと主張しているが、ロシア側は、ウクライナには支払い遅延の罰金など5億ドルの支払い義務があり、債務問題は解決していないとしている。

ウクライナ側には、供給停止は親欧米のユーシェンコ氏に対するロシアの政治的圧力と受け止められ、国際社会の批判の矛先はロシアに向かうとの読みもあったとみられる。

2)2009年のガス価格

2008年のウクライナ向け天然ガス価格は179$/1000m3 だが、両国は今後段階的に引き上げることで合意、ガスプロムは250ドルを提案したが、ウクライナは201ドルを主張してこれを拒否した。

今回、ガスプロムは250ドル案を撤回し、一気に「国際価格」の418ドルに引き上げた。欧州向け価格は418ドル。 

付記

ガスプロムは1月4日、価格を450ドルに引き上げると発表した。

ーーー

この問題の背景には、グルジア紛争の際に、ウクライナのユーシェンコ大統領がグルジアに戦車やミサイルなどを提供したとの疑惑や、ウクライナのNATO加盟問題など、ウクライナとロシアの対立があるとみられる。

ベラルーシなど、旧ソ連の親ロ国向けは200ドル以下とし、差をつけている。
 

ウクライナ向け天然ガス供給停止により、天然ガス需要の約25%をロシアに依存し、その7割をウクライナを経由する欧州にも混乱が拡大している。
(ガスプロムはウクライナ向けに日量110百万m3、ウクライナ経由欧州向けに326百万m3の天然ガスを送っている。)

ガスプロムは欧州諸国向けのガス供給義務は履行するとしているが、「ウクライナが欧州向けのガスを抜き取ろうとしている」と主張している。
これに対して、ウクライナ側は備蓄で対応しており、欧州向けガスの通過は保証するとしている。

付記    

ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止したことで、ウクライナ経由でロシアのガスを輸入する欧州諸国への供給量が減るなどの影響が出始めた。影響が出ているのはハンガリー、ポーランド、ルーマニアなどで、ルーマニアでは供給量が3~4割減少したという。

ウクライナの国営ガス企業は2日、欧州向けのガスから日量21百万m3を使っていると発表、安定したガス通過のため技術的に必要だとしている。 

ガスプロムはベラルーシ経由のパイプラインの送量を増やし、対応している。

付記

ロシアは欧州向けのガスをウクライナが抜き取っているとして、1月6日から欧州向けの供給も停止した。

事態打開のため、EUがパイプラインを監視する中立的な国際調査団をウクライナに派遣した。

1月11日に一旦、合意文書に署名されたが、ウクライナがガス抜き取りの事実を否定する但し書きを文書に盛り込んでいたことが判明、ロシアが反発、12日になりウクライナがこれを撤回し、ようやく3者の間で合意にいたった。

その後、欧州向けの供給が再開されず。

1月18日、ロシアのプーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相がガス価格の引き上げに大筋で合意、19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

 ・2009年のガス料金は欧州向け価格より20%割り引く。(2009/1-3月は450ドルx0.8=360ドル)
 ・2010年以降のガス料金は欧州並とする。
 ・値決めは4半期ごととする。
 ・2009年の輸送料は据え置く。
 ・2010年以降の輸送料は国際価格とする。
 ・合意内容は10年間有効とする。

全体図は 2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争 末尾

ーーー

天然ガスに関しては、ロシアは2005年末にウクライナとの間で欧州各国も巻き込んだ大問題を起こしている。

2005年4月、ガスプロムがウクライナ政府に対し、それまでの1,000立方メートルあたり50ドルから160ドルへの値上げを提示、後に更に230ドルに引き上げた。

2006年に入り、ガスプロムはがウクライナ向けのガス供給を停止した。
(EU向けと同じパイプのため、ウクライナ向け対応の30%を削減した)

しかしウクライナ側は、これを無視してガスの取得を続けたため、パイプライン末端のEU諸国のガス圧が低下し、各国は大混乱となった。
問題が二国間の問題に止まらず国際問題となったため、両者は急速に歩み寄りを見せ、1月4日に期間5年、95ドルで妥協した。

但し、ガスプロムはウクライナには直接販売せず、オーストリアの銀行(ダミーで、実際はウクライナの投資家といわれる)との合弁会社ロスウルクエネルゴに230ドルで供給し、同社はそれをトルクメニスタンおよびカザフスタン産の低価格ガス(50ドル)と混ぜたうえでウクライナに95ドルで販売することとし、ガスプロムは「ウクライナへの販売価格を西欧並に」という主張を通した。

2006年末にはロシアはベラルーシとの間で同様の問題を起こしている。

2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争

付記 

毎日新聞(1月8日)は問題点を以下の通りまとめている。

ロシアの主張 ウクライナの主張
ガス料金滞納 ウクライナに6億ドルの延滞罰金を要求 延滞罰金の支払いを拒否
欧州向けガスの供給量低下 ウクライナが欧州向けのガスを抜きとっている ロシアが欧州向けのガスを契約通りに供給していない
ガス価格 (1000m3当たり) 当初09年から250ドル(08年は180ドル)を要求。
ウクライナが拒否すると、418ドル→450ドルとさらに引き上げ
国際的なガス価格が下がっておリ、235ドル以上は払えない。
その後、201ドルに引き下げを要求
ウクライナ領内のパイプライン使用料 1000m3のガスを100km輸送するごとに1.6ドルをウクライナに支払う(現行) 現行から9ドル以上に値上げを要求

同記事のなかで、争いの背景について、ロシアのエネルギー間題専門誌「ロスエネルギー」のミハイル・クルチーヒン編集長は以下の通り述べている。

ウクライナ側は交渉で、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムの周囲に存在する幾つもの不透明な仲介企業を排除するよう求めた。しかし、ガスプロムとこれらの仲介企業は、プーチン首相の周辺が租税回避先として利用しており、ウクライナの要求は機微に触れる格好となった。
ガスプロムは仲介業者を排除するのならば、ウクライナが従来の割安な価格でなく、欧州並みの価格を支払うべきだと通告し、交歩が暗礁に乗り上げた。

仲介業者の介入については下記の事情がある。

2005年4月、ガスプロムがウクライナ政府に対し、それまでの1,000立方メートルあたり50ドルから160ドルへの値上げを提示、後に更に230ドルに引き上げた。

ウクライナはこれに応じず、2006年に入りガスプロムはがウクライナ向けのガス供給を停止した。この影響は欧州に及んだ。

問題が二国間の問題に止まらず国際問題となったため、両者は急速に歩み寄りを見せ、1月4日に期間5年、95ドルで妥協した。

但し、ガスプロムはウクライナには直接販売せず、オーストリアの銀行(ダミーで、実際はウクライナの投資家といわれる)との合弁会社ロスウルクエネルゴに230ドルで供給し、同社はそれをトルクメニスタンおよびカザフスタン産の低価格ガス(50ドル)と混ぜたうえでウクライナに95ドルで販売することとし、ガスプロムは「ウクライナへの販売価格を西欧並に」という主張を通した。

 


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


LyondellBasell 1229日の法定届出で、借入金の返済期限延長や債務整理 (restructuring)の交渉を始めていることを明らかにした。

同社では「債務整理を検討しており、全てのオプション考えている。Chapter 11 (民事再生法)申請もオプションの一つである」としている。既に専門の弁護士事務所と契約している。

破産法の第7章が「破産」、第11章が「民事再生」で、Seven-Eleven と称される。

同社では既に、280百万ドル(160百万ドル+120百万ドル)の金利の支払い延期を行っている。

これを受け、Standard & Poor's 1230日に同社の格付けを "selective default"(一部債務不履行)に落とした。

LyondellBasell はこれに対し、下記コメントを発表した。

これはS&Pが述べているように、S&Pの定義、基準に基づく S&P としての意見であり、実際にLyondellBasell が銀行との契約上で債務不履行になっているのではない。

金融危機に伴うグローバルな経済不振のなかで、Len Blavatnik が率いるLyondellBasell 1年前の127億ドルでのLyondell 買収など、多数の買収に伴う債務に苦しんでいる。Standard & Poor's によると同社の債務は260億ドル。

今回の "selective default"になる前の同社の格付けはBマイナス」で「投機的」の上から6番目であった。
同社の債務の価値は最近異常に低下している。

2015年満期の $615 百万ドルの債務(利率 8.375 %)の評価は1ドル当たり 7 セント。
2020年満期の $225 百万ドルの債務(利率 9.8 %)の評価は1ドル当たり 25セント。
破産時に最優先で払われる
senior bank debt 10月末に1ドル当たり 60セントであったが、42セントに下がった。

S&Pの格付け

「投資適格」:
AAA, AA+, AA, AA-, A+, A, A-, BBB+, BBB, BBB-
「投機的」:BB+, BB, BB-, B+, B, B-, ---- 

K-Dow Petrochemicals の破談など、金融危機の影響が化学業界にも広がってきた。

 

参考 LyondellBasell について

  2006/6/15  Basellの買収

  2007/7/18  Basell が Lyondell を買収

 

 


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