2007年1月に日本のバイオガソリンの動きについて述べた。
バイオエタノール・ジャパン・関西が環境省の補助を受けて建設した廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラントが竣工した。大都市でのエタノール3%混合ガソリン(E3)大規模供給実証のためのエタノール供給元となる。
他方、石油連盟は「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立、バイオエタノールを石油系ガスと合成し、バイオETBE としてガソリンに混合して利用する。
石油連盟では(1) 大気環境への悪影響、(2) 車の安全性や実用性能から、バイオエタノールをそのままガソリンに混入するのではなく、バイオETBE のガソリン混合を主張している。
2007/1/8 日本のバイオガソリンの動き
ここにきて、両者ともに動き出した。
1)エタノール3%混合ガソリン(E3)
日本エタノール販売とペトロブラスの50/50JVの日伯エタノール(Brazil-Japan Ethanol)は3月初めから東京でエタノール3%混合ガソリン(E3)の試験販売を開始する。
同社はこのたび、袖ヶ浦でターミナルでガソリンとエタノールの貯蔵、混合を開始した。
ペトロブラス子会社の南西石油(沖縄)からガソリン、バイオエタノール・ジャパン・関西からバイオエタノールを受け入れた。
E3は環境省の新宿御苑のサービスステーションで供給を開始する。
日伯エタノールでは今後、この事業の拡大を計画している。
大阪府と環境省が主導したバイオエタノール・ジャパン・関西の事業は元売りが引き取りを拒否したため、中国精油がスポット物を輸入し岡山でE3にし、大阪を中心に独立系の17のサービスステーションで販売している。昨年11月からは南西石油がガソリン供給を開始した。
今後は日伯エタノールがこれを引き継ぐ。
日伯エタノールは2006年に日本アルコール販売とペトロブラスの50/50JVとして設立された。
事業目的は、ブラジルからのサトウキビ由来のエタノールの輸入・販売(ペトロブラスの輸入総代理店)と CO2排出権取引となっている。
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日伯エタノール設立に当たり、日本エタノールの雨貝二郎社長(経産省出身)はブラジルのルーラ大統領と会談、大統領は合弁会社の設立を「両国関係の新しい時代の幕開けに繋がる」と歓迎、支援を惜しまないと明言した。
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ブラジル国営石油ペトロブラスは2007年11月、エクソンモービル系の南西石油買収を発表した。
2008年4月1日に引渡しが完了、新出資比率はペトロブラス87.5%、住友商事12.5%となった。
南西石油は能力が日量10万バレルと小さく、設備も老朽化しており、安価な燃料油が中心であるため、ぺトロブラスは1千億円を投じて大型設備を建設し、2010年前後に稼働させ、中国や東南アジアなどにガソリンなど石油製品の輸出を始める計画であった。
2007/11/7 ペトロブラス、南西石油を買収、最新設備新設
ペトロブラスはその後、増産に向けた設備投資計画確定のため市場調査などを進めた。
当初計画では2008年に市場調査を終了。2010年中ごろには環境調査や関係機関との協定を締結し、新しい精製ユニットの建設に着手、2012年中に操業開始の予定であった。
しかし、米国のサブプライムローン問題を発端とする世界的な金融危機の影響で、コスト面と石油価格面の双方で予想が難しいとして調査をいったん中止した。
住友商事との間では、とりあえず2010年3月まで調査を延期することとしている。
しかし、その時点で、全く投資をせず、現状のままで運営するという結論になる可能性もあるとしている。
同社の能力は日量10万バレルだが、2008年4月の生産は3.5万バレル程度であった。
同社は2008年8月ごろからブラジルやシンガポール、ベトナム、韓国、中国にガソリンや軽油を輸出した。
昨年末の生産量は能力の半分の日量5万バレル程度で、半分が 県外、海外への出荷に振り向けられている。
2009年夏には日量7万バレルの生産を目指している。
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2)バイオETBE
石油元売り9社が共同出資するバイオマス燃料供給有限責任事業組合(JBSL)は2月26日、国内バイオエタノール製造会社が2009年度から本格生産を始める国産エタノールの購入について、基本合意に達したと発表した。
北海道内でバイオエタノールの生産事業に取り組んでいる北海道バイオエタノールとオエノンホールディングスで、フル稼働時で両社ともに年間15千kl のバイオエタノールを生産できる。
新日本石油が2009年12月を目処に新日石精製根岸製油所にETBE製造設備を建設し、年間10万kl を生産する。
根岸製油所では現在、海外から輸入したETBEを、ガソリンに7%混ぜてバイオガソリンを製造し、元売り各社を通じて首都圏などで販売している。
北海道バイオエタノールは2007年6月にJA北海道中央会などを中心に設立された。三菱商事、北海道電力、北海道瓦斯など地元企業も多数出資している。
十勝管内清水町でてん菜(交付金対象外)、規格外小麦を原料としてバイオエタノールを製造する。
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JAグループは当初、輸送費用やエネルギーの「地産地消」を理由にE3を導入する意向を示していた。しかし、石油連盟がETBEの導入を決めたため、独自の流通販売体制を確立しなければならなくなったため、方針を変更した。
しかし、わざわざ根岸まで送るのは大きなロスだ(将来は北海道にもETBE設備をつくるのだろうが)。
オエノンホールディングスは2003年に合同酒精が持株会社化したもので、旭化成から買収した富久娘酒造も傘下に置いている。
オエノンと北海道などは2007年5月、バイオエタノールの道内生産に向け協議会を発足した。オエノンは同年末に44億円(半分は補助金)を投じ、苫小牧市内にバイオエタノール技術実証プラントの建設を開始した。実証プラント能力は年 15千kl で、同社の醸造アルコールの生産ノウハウを応用、粉砕したコメからブドウ糖を抽出し、発酵・蒸留・脱水などの工程を経てバイオエタノールを生産する。
原料にはまず安価な輸入米を使用するが、生産者団体の協力も得て規格外米などの調達ルートを築く。
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JBSLは別途、2008年7月に米国ライオンデルケミカルとの間で、2010年度以降に調達するバイオETBEの長期購入契約を締結した。
更に、10月にはブラジルの大手バイオエタノール製造販売組合のCopersucar との間で、バイオエタノールの購入(年間200千kl)に関する長期契約を締結した。バイオエタノールは、ライオンデルケミカルの米国内の工場に搬入され、バイオETBEにする。
石油業界では2010年度には、84万kl のバイオETBEをガソリンに配合することを目標としている。これは国が定めた目標バイオエタノール36万kl に相当する。
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政府(経産省、環境省)と石油業界の対立が続き、別々の方向で動いているのは問題で、普及促進のためには早急に方向をまとめる必要がある。<p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p>
両者の言い分や問題点は 2007/1/19 ニュースのその後 日本のバイオガソリンの動き
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安井至先生は「市民のための環境学ガイド」で「2007年4月5日:バイオ燃料 市販へ」 でこれについて触れている。
C先生:この話、業界の我が侭である。
以前、わが国でも似た化合物であるMTBEを使っていた。しかし、漏れて地下水に混じり、地下水が飲料不可になるといった環境問題が米国で起きて、日本でもMTBEの使用を止めた。ETBEの毒性は、場合によっては、MTBEよりも高いという。
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(注 ガソリンは地中の微生物が分解するが、MTBEは分解されない)
そもそも、毒性のある物質をガソリンのように大量に使用すること自体に賛成できない。長期的に見れば、石油業界に対するリスクは極めて高いと言えるだろう。短期的に利益を確保するためには、ETBEを使うことが必要だが、後日、石油業界も後悔することだろう(もっともエタノールにだって毒性はあるが)。
エタノールを混ぜても、ある一定量以下ならば、通常の自動車にも悪影響が出ないことは、すでに米国・ブラジルなどで証明済みである。
渡文明石油連盟会長が「賛同できない」理由は何か。
正当な理由なしに直接添加を妨げた場合、独禁法上は問題にならないのだろうか。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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