2018年10月アーカイブ

韓国ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長は10月23日、役員会議を開き、今後5年間に国内外の全事業部門で合計50兆ウォン(約5兆円)を投資し、約7万人を雇用する計画を表明した。


化学、流通を二大軸として、毎年平均10兆ウォンを継続的に投資し、事業競争力を強化するとともに、新たな成長動力を確保する。

50兆ウォンのうち35兆ウォン(70%)を韓国国内に投資する。スローダウンした経営活動を速やかに正常化するため、初年度となる来年には12兆ウォンを集中投資する。
サムスンの石油化学事業を買収した2016年の投資額である11兆2000億ウォンを上回る過去最高の投資規模となる。

投資が集中する部門は化学と建設で、投資規模全体の40%に相当する20兆ウォンが投じられる。化学分野に思い切った投資を行い、成長のけん引役とする。

流通部門と観光・サービス部門には、それぞれ25%を割り当てる。流通部門では、オンライン事業を拡大、人工知能(AI)やビッグデータなど新技術を活用し、顧客に新たな買い物体験を提供する。
観光・サービス部門では、国内外の拠点を拡大する。

食品への投資は全体の10%を占める。新製品の開発に拍車を掛ける。


ロッテはインドネシアに4兆ウォンを投資し、超大型のナフサ分解プラントの建設を進めているが、辛会長が収監された影響で、用地買収以降の進展がストップしていた。

2011/4/27 韓国ロッテグループの湖南石油化学、インドネシアでエチレンプラント建設へ 

中断していた米国のエチレン計画を再開する。

米ルイジアナ州ではシェールガスに付随するエタンを分解し、エチレンを生産する。Lotte Chemicalが90%、Axiall Corp.が10%出資することとなっていた。

下記の通り、AxiallがWestlakeに買収されたため、計画を変更する。

2015/6/22 韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学

ロッテケミカルは2016年6月、米同業中堅のAxiall Corp. に買収提案したと発表した。株式の取得総額は20億ドル前後になるとみられた。

Axiall Corp.は、2013年1月にGeorgia Gulf と PPG Industriesのcommodity chemical divisionと合併し、設立された。

ロッテは上記の通り、同社とのJVでエチレンを生産する計画であった。

Axiall はロッテが手薄なカセイソーダやVCMなどクロル・アルカリ系の原料に強く、顧客の大半が北米地域である。一方、ロッテはエチレンなどオレフィン系に強みがあり、事業の中心はアジア地域で、製品群や顧客基盤が重ならず、相乗効果が高い。

しかし、辛会長に対する捜査の影響で買収を断念、同様に買収意欲を示していたWestlakeが買収した。

ロッテは、「今後は積極的な合併・買収(M&A)を模索していく」と説明している。


韓国国内では麗水、蔚山、大山の各プラントで設備投資を行い、コスト競争力を高める。

辛会長が逮捕、収監されたことで8カ月にわたりストップしていた同社の投資はようやく再スタートする 。

辛会長は役員会議の席上、「不確実な未来、予測できない変化に先制的に対応しなければならない。困難な環境であればあるほど、積極的に投資に取り組む」と述べた。

ドイツ西部、ヘッセン(Hesse) 州で10月28日実施された州議会選挙で、メルケル首相率いる与党 キリスト教民主同盟(CDU)が得票率を大きく落とした。

第1党の座は確保するが、前回2013年よりも11ポイント強低い27.4 %と52年ぶりの低水準に落ち込んだ。

国政でCDUと大連立政権を組むドイツ社会民主党(SPD)も11.1ポイント低い19.6%と、歴史的な大敗になった。

州議会で連立を組む「緑の党」が頑張り、議席数では合計でなんとか過半数を超えた。

逆に、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大躍進し、初議席(17議席)を確保した。

投票率 議席
今回 前回 増減 今回 前回 増減
キリスト教民主同盟 (CDU) 27.4% 38.3% -10.9% 36 47 -11
緑の党 19.5% 11.1% +8.4% 25 14 11
(州議会 連立) (46.9%) (49.4%) (-2.5%) (61)
50.4%
(61)
55.5%
(0)
-5.1%
社会民主党 (SPD) 国政で連立 19.6% 30.7% -11.1% 25 37 -12
ドイツのための選択肢 (AfD 極右) 13.0% 4.1% +8.9% 初議席 17 0 17
自由民主党 (FDP) 7.8% 5.0% +2.8% 10 6 4
左翼党 6.0% 5.2% +0.8% 8 6 2
その他 6.7% 5.6% +1.1% - - -
合計 100% 100% - 121 110 11


ヘッセン州議会の定数は110であるが、超過議席
overhang seat)制度で今回は121議席となった。
まず、小選挙区での当選者が決まる。ある党の当選者が20とする。
別途、比例代表の結果、その党に割り当てられた議席数が22とすると、その党の当選者は2名が追加される。

10月14日に実施された保守の牙城のバイエルン州の選挙でも、CDUと連立を組む保守与党、キリスト教社会同盟(CSU)が歴史的な大敗を喫し、社会民主党も得票率が半減、逆に「緑の党」と「ドイツのための選択肢(AfD)」が大躍進している。

2018/10/17  独与党、バイエルン州で大敗 メルケル政権に打撃    

ドイツメディアは今回の選挙を「運命の選挙」と名付け、バイエルン州に続き与党の退潮に歯止めがかからなければ、メルケル政権の今後は危ういと指摘してきた。

バイエルン州ではCDUの姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)が大敗したが、今回はメルケル氏が自ら率いるCDUの敗北だけに、ダメージも大きい。

メルケル首相は10月29日記者会見し、州議会選で連敗した責任をとり、保守系与党のキリスト教民主同盟(CDU)の党首を退任する考えを表明した。
12月の党大会で「党首に再び立候補することはない」。

2021年の任期切れまでは首相にとどまり、その後 政界を引退する意向を示した。

付記

ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)は12月7日、メルケル首相に代わる党首として、側近の女性幹事長 Annegret Kramp-Karrenbauer を選出した。

メルケル首相のかつての政敵で連邦議会(下院)元院内総務のFriedrich Merzとの決選投票で勝利した。但し、517 対 482 の僅差であった。

中国山西省太原市の太原理工大学の研究者等(アメリカ国立標準技術研究所所属の中国人を含む)は、エタンから簡単にエチレンを分離する方法を開発した。

10月26日に"Science"で発表した。

    http://science.sciencemag.org/content/362/6413/443



今回発見された新しいタイプの微孔性の金属有機構造体(MOF)、iron(III) peroxide 2,5-dioxido-1,4-benzenedicarboxylate は、ポリマーグレードのエチレンの製造において並外れた分離特性を示す。

MOFなどの微孔性材料を用いたガス分離プロセスが、従来のエタン/エチレン分離法に代わるものとして有望なことは知られていたが、こうした物質の多くはエチレンを優先的に吸着するので、エチレンを追加のプロセスでさらにMOFから分離しなければならない。

しかも、ポリマーグレードの純度(99.95%以上)を実現するには、何度も分離を繰り返す必要があるため、全体的な効率や費用対効果が低い。

研究者は、エタンのようなアルカンを優先的に結合させる天然の金属酵素から発想を得て、エチレンよりもエタンの結合を著しく優先させるMOFの作成に成功した。

さらに、この物質は周囲条件においてたった一度の分離で、ポリマーグレードのエチレン(純度99.99%)を生成する能力があることを発見した。

用化には更なる研究が必要としている。

欧州委員会は10月23日、イタリアに対し、2019年予算案を3週間以内に再提出するよう求めた。

委員会の7月13日の勧告から著しく離脱しており、また、前政権が4月に提出したStability Programmeからも外れているとした。

イタリアはこの数年、EUの財政支援を受けており、Stability Programme では2019年の財政赤字をGDPの0.8%にするとしていた。

それに対し、イタリア側は予算案の修正に応じない姿勢を強調した。

付記

ユーロ圏財務相会合は11月5日、イタリアの2019年の予算計画に関する協議をブリュッセルで行い、欧州委員会の「評価に同意」し、「中期的な予算目標の道筋と十分な債務削減に重点的に取り組むことが、安定成長協定(SGP)に欠かせない」との声明を発表した。

イタリアは11月13日までに修正した予算案を欧州委へ再提出しなければならないが、イタリアのトリア経済・財務相は5日、「予算案は変わらない」と強調した。

付記

コンテ首相は12月12日、ユンケル欧州委員長と会談。財政赤字の見通しを実質GDP比で2.4%から2.04%に引き下げると説明した。欧州委は今後、加盟国の財務相による閣僚理事会で修正案を審議する。

首相は、最低所得保障や年金の受給開始年齢の実質引き下げといった、巨額の財政資金が必要な政策については「変更しない」と強調。国有資産の売却は進めるものの、赤字を減らす具体策については明らかにしなかった。

付記

欧州委員会は12月19日、イタリアが再提出した修正予算案(赤字幅を縮小)を承認した。制裁を見送り、監視を継続する。

イタリア下院議会は12月29日、2019年予算案を可決した。最低所得保障(ベーシックインカム)や年金受給開始年齢の引き下げなどを盛り込んだバラマキ型の予算で、GDPに対する財政赤字の比率は2.04%とした。

ーーー

「五つ星運動」と「同盟」のポピュリスト2党の連立政権であるイタリア政府は9月27日、2019-2021年の経済財政計画を発表したが、財政赤字目標はGDP比2.4%とした。

構造的財政収支の悪化を回避する目安とされた2%を上回った。前政権は 0.8%を約束していた。

イタリアの総選挙は3月4日に行われ、紆余曲折のうえ、6月1日に「五つ星運動」と「同盟」の連立で、政治経験のない法学教授のジュゼッペ・コンテ首相の内閣が発足した。

「五つ星運動」は、大衆の不満に率直な賛同を示す人民主義政党(ポピュリズム)として行動。「同盟」は右派ポピュリズム政党。

「五つ星運動」のディ・マイオ党首が経済発展・労働相、「同盟」のサルビーニ書記長は移民問題を扱う内相として入閣し、ともに副首相となる。

2018/6/5 イタリアの混迷

「五つ星運動」は、選挙公約だった最低所得保障などの政策を実践するため、所得保障のための100億ユーロを含む280億ユーロ規模の予算調整を目指した。この場合、赤字は2.5%となる。

政権の公約:
付加価値税の税率引き上げ見送り、フラット税の導入(実質的な減税)、家族向けに3000ユーロの一律所得控除、最低所得保障制度の導入、退職年齢引き下げなど。

エコノミストのトリア財務相はEUの財政規律の遵守を重視し、1.6%を主張した。

しかし、「同盟」書記長のサルビーニ副首相が五つ星党首のディマイオ副首相に同調し、押し切った。


前政権は2019年予算の財政赤字をGDP比で0.8%に抑える計画でEUと合意していた。EUルールでイタリアに許される歳出は0.1%増までだが、歳出は2.7%増となり、赤字はGDPの2.4%となった。

イタリアの公的債務はGDPの130%に達しており、ギリシャに次ぐ。

EUの財政規律である安定成長協定では、加盟国の予算を監視する制度の一環で、毎年10月15日までに次年度予算案を欧州委員会並びにユーロ圏の財務相会合に提出することが求められる。

EUの財政規律の基本は、財政赤字の対GDP比 3%未満、公的債務残高の対GDP比率 60%未満である。 (公的債務残高は多くの国が基準を超えている。)

イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たすが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、 構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めていた。

政府は10月15日夜の閣議で、2019年度予算案を承認し、欧州委の審査を受けるため、同案を送付した。
2019年の単年度財政赤字目標をGDP比2.4%に引き上げ、2020年が2.1%、2021年は1.8%に設定した。

欧州委は前政権との間で、上記の通り、2019年予算の財政赤字をGDP比で0.8%に抑える計画で合意している。

欧州委は10月18日の書簡で財政規律ルールの深刻な違反につながると警告したが、イタリアは22日に予算案を修正しないと回答した。

欧州委は、GDP比130%の公的債務が膨張する懸念を伝えたが、イタリアは、財政拡大で成長刺激、税収増となり、財政悪化につながらないとしている。

トリア財務相は、「イタリアの赤字は西側民主主義国では普通であり、とんでもない値ではない」と言明、この目標値は前政権が掲げた数字(GDP比0.8%)を大きく上回るものの、国内経済の成長鈍化のため財政赤字の同比率は既に2.0%に向かっているとした。

このため欧州委は23日に、期限を待たずに即座に差戻しを決めた。イタリアは、11月13日までに修正した予算計画案を提出しなければならない。

欧州委が加盟国の予算案を差し戻すのは初めてのケース。


今後3週間以内に修正案を出す必要がある。拒めば、欧州委はイタリア財政を監視下に置き、改善努力が乏しければ最大でGDPの0.5%相当の制裁金が必要となる。

EUの財政規律では、構造的財政収支に基づく中期的な財政目標の達成に向けた取り組みが不十分な国に対して、GDP比で0.2%相当の有利子預託金を課す「重大な逸脱手続き」や、最大でGDP比0.5%相当の制裁金の支払いとEUの構造投資基金(経済・社会・地域格差是正や成長促進を目指す投資基金)の凍結につながる「過剰な赤字手続き」が開始される。

ただ、最終的な制裁の発動は、EUの是正勧告と効果的な措置が採られたかの評価を複数回繰り返したうえで、加盟国の逆特定多数決(欧州委員会の勧告を覆すには、国数で55%以上、人口比で60%以上の賛成が必要)で決定される。

これまで実際に制裁が発動された例はない。

なお、欧州委員会の助言機関である欧州財政委員会(EFB)は10月10日公表したリポートで、EUの財政規律について、公的債務削減への効果が高まるように修正するべきだとして、債務が減少している国を対象に赤字目標を廃止するよう提言した。

EFBは、既存のルールは複雑過ぎる上、一部加盟国の公共財政の長期的な持続可能性向上につながっていないと指摘 する。

GDP比3%以下とする既存の財政赤字目標の廃止を提案し、債務削減だけに焦点を当てるべきだとした。

「簡略化した新たな財政の枠組みは債務の対GDPB比率を中核にするべきだ。これにより、加盟国の債務の長期的な持続可能性が財政規律の基本目標として維持される」としている。

提案では、プライマリー支出が3年にわたって上限を下回った国は債務削減が見込まれるとして赤字が過剰であっても財政規律に順守しているとみなされる。

規律に順守しているかどうかの評価対象から構造的財政赤字目標を外す案も示した。

債務の対GDP比の上限は現在と同じ60%としたが、目標に達するまでの調整期間を15年に延長することを提案した。


イタリア政権の中枢は、反エスタブリッシュメントの「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」のポピュリスト政党であり、EUとの対決を恐れていない。

6月1日の内閣発足後すぐに、「同盟」の書記長のサルビーニ内相・副首相が難民問題で過激な発言をした。難民問題でのEUの対応を求め、EU予算拠出見直しや国境検問を示唆、「統合欧州がまだ存在しているかどうかは1年以内に決まるだろう」と発言したと報じられた。イタリアへの移民流入を抑制するために他のEU加盟国が協力しない場合、EU予算へのイタリアの拠出について見直す可能性があると発言した。

2018/6/26 EUの危機:難民問題

この問題はドイツのメルケル政権内部の争いに展開し、メルケル政権の崩壊直前にまで進んだ。

2018/7/2 EU首脳会議、移民問題で不十分な合意、ドイツ内相が辞任示唆


最低所得保障などの政策を
選挙公約にし、EUと財政縮小の約束をした前政権の「民主党」を破って政権についた与党としては、EUの指示に従うことは国民を裏切ることとなる。

国民の支持と、ドイツの一人勝ちのもとで同様に財政赤字に悩む南欧諸国の暗黙の支持をもとに徹底的に抵抗すると思われる。

EUは英国に対して非常に厳しい態度を示すことで、EU離脱の追随国が出るのを防いだが、新たな火種となる。

LIXILは10月22日、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)がイタリア建材子会社の中国企業への売却を承認しなかったことを明らかにした。

この建材子会社はビル外壁材などを手掛けるPermasteelisa S.p.A で、売上高の約4割を米国が占める。

付記 LIXILは11月27日、売却契約を解除したと発表した。

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LIXILは2011年にイタリアのPermasteelisa S.p.A を約608億円で買収した。同社は世界27ヵ国で事業展開する世界最大級のカーテンウォール事業会社で、買収目的はアジアを超えた「グローバルなオペレーションの入手」としていた。

Permasteelisa は、カーテンウォールやインテリアなど建築物の内外装分野で業界を牽引 しており、世界の主要な建築プロジェクトのエンジニアリング、プロジェクト管理、製造、施工に携わっている。
著名な建築家と連携し、ロンドン・ブリッジ駅の南西側に所在する超高層ビルThe Shard、カリフォルニア州 のAppleの新本社社屋、シドニーのオペラハウス、香港の世界貿易センターなども手掛けてきた。

LIXILは2017年8月、Permasteelisa S.p.A.の全株式を中国を拠点とした建築設計・建築装飾事業を行うGrandland Holdings Group Limited(廣田控股集團)に譲渡する ことを決めた。基本譲渡価額は、4億6700万ユーロ(597億7600万円)。

LIXILグループは、経営の効率化や財務体質の強化のため、全領域で事業ポートフォリオの最適化を図っている 。今回の株式譲渡は、事業構造の簡素化と組織の統合、シナジー創出と効率化を目指す同社の取り組みに合致するものという。

売却先のGrandlandは、カーテンウォール、都市開発、メカトロニクスなどを手掛けている。

瀬戸欣哉社長兼CEOは、「当社では、カーテンウォール事業や商業施設向けインテリア事業についてPermasteelisaから多くを学んだので、今後の事業運営に生かしていきたい。また、Grandland およびPermasteelisaの事業は当社との親和性が高く、将来的な連携も検討していく」などとコメントしていた。

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LIXILは今回、対米外国投資委員会(CFIUS)から、今回の売却について、現行の売り手・買い手の対応方法では承認できない旨の通知を受領したとし、今後の方向性について検討を進めていると述べた。


トランプ米大統領は本年3月12日、シンガポールに本社を置く通信用半導体大手
Broadcom Limitedによる米Qualcomm Incorporatedの買収を禁じる命令を出した。外国企業による米国企業への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)の勧告に基づく。

米大統領がCFIUSの異議に基づいて買収を阻止したのは5件目。トランプ氏としては就任以来2件目となる。

2018/3/14 米大統領、BroadcomによるQualcomm買収禁止命令 

これまでのCFIUSの審査対象は、安全保障に係るものと大統領が判断した買収に限られた。

外国企業の対米投資を審査する米国の独立機関、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する条項を加えたJohn McCain 国防権限法(NDAA)案が8月13日成立した。

CFIUSの審査対象を、米国企業の買収を狙いとする取引に限らず、合弁会社設立や、米国の重要な技術やインフラ、個人情報に関わる少額の出資なども審査の対象とする。米政府施設に近い土地取得など不動産取引も含める。

米財務省は10月10日、8月に成立した新法に基づく外資による対米投資の規制の詳細を発表した。11月10日から実施する。ハイテク分野での覇権を狙う中国から先端技術を保護するのが狙い。

半導体や情報通信、軍事など27産業を規制対象に指定し、少額出資でも当局に事前申告を義務づける。

規制対象となる分野も航空エンジン・部品、アルミニウム精錬、石油化学などと細かく指定した。ナノテクノロジー(超微細技術)の研究開発や光学レンズ製造も対象になっている。 幅広い無機化学品も含まれている。

2018/10/12 米政権、ハイテク27産業で外国投資の規制強化

今回のPermasteelisa の事業は、カーテンウォールやインテリアなど建築物の内外装分野である。

CFIUSの本来の対象であった安全保障に関係するとは思えない。

また、8月に成立した新法に基づく財務省の規制対象の分野にもこれは含まれていない。

推測だが、Permasteelisa はAppleの新本社社屋など、重要な建物の内装を引き受けている。中国のGrandland が親会社となることで、Permasteelisa が施工する建物に、例えば盗聴設備などが密かに設置され、重要情報が漏れるのを恐れたのかも知れない。

METIは10月19日、2022年までの世界のエチレン系・プロピレン系誘導品及び芳香族製品の需給(需要、生産能力、生産量)の動向をとりまとめ、発表した。

発表内容は次の通り。

これをもとに、商品別の需要・能力・生産に組み替えた。 

商品別国別集計(国別の需要・能力・生産)

商品別国別の需要・能力・生産をグラフ化した。

https://www.knak.jp/METI-world/meti-2018/index.html


特記事項:

1.中国の動向等

新増設計画は、中国を中心に引き続き計画・検討されている。しかしながら、原油価格の値下がりにより、中国の石炭系エチレンの優位性が大幅に低下したことに加え、環境規制の強化への対応から、大幅な見直しを余儀なくされている。

一方、これまで凍結状態であったナフサ分解設備は、第13次5ヵ年計画で7つの地域に集約、原料の多様化、環境問題、エネルギー循環型を踏まえた、新規エチレンプラントの構想が打ち出されている。

2.米国のシェール革命の影響

好調な米国の経済環境を背景に、本年度から、いよいよシェール由来のメガコンプレックスが稼働を開始し、グローバルな石化市場に与える影響が懸念される。一方で、中長期的に見ても米国に豊富に存在する競争力ある石化原料や、グローバルなメガトレンドに沿い、継続的に増大する石化需要等を背景に、シェール由来の2nd Wave-3rd Waveの新増設計画が進みそうな様相となってきている。
メガコンプレックスの稼働が開始となり、1st Waveとして2020年までに約10百万トンのエチレンコンプレックスが増強され、さらには2nd Waveとして2025~2026年ごろまでに約10百万トンの増強が予定されている。その後もグローバルな需要の拡大に沿い、さらなる増強の可能性も予想される。同時に石化原料用途のエタン、LPGの輸出も出荷設備の新増設により増大。米国内のみならず、米国産シェール由来原料(含むメタノール)をベースにした石化プラントが、欧州・インド・ブラジル・中国でグローバルに展開され始めている。


概要は以下の通り。

1.世界のエチレン系誘導品

1)生産能力

2)需要

  3)世界のエチレン系誘導品の需給バランス(エチレン換算 百万トン

    世界計 アジア計 うち中国 北米計 中東計
2016 能力 174.6 69.6 28.8 33.6 30.8
生産 149.9 56.5 23.6 32.9 27.2
需要 142.3 67.1 40.0 25.1 9.4
バランス 7.6 -10.6 -16.4 7.8 17.8
2022 能力 212.9 85.5 37.3 44.6 36.9
生産 186.3 73.8 32.5 42.2 32.8
需要 177.3 90.3 57.1 29.2 12.1
バランス 9.0 -16.5 -24.6 13.0 20.7

 

2.世界のプロピレン系誘導品

1)生産能力

2)需要

3)世界のプロピレン系誘導品の需給バランス(プロピレン換算 百万トン

    世界計 アジア計 うち中国 北米計 中東計
2015 能力 111.9 58.7 30.1 17.1 10.1
生産 100.8 53.1 28.5 15.0 9.4
需要 94.1 52.5 32.2 13.6 3.5
バランス 6.6 0.7 -3.7 1.4 6.0
2021 能力 137.0 76.5 42.8 19.2 12.6
生産 122.9 71.1 40.6 15.8 11.0
需要 114.2 67.2 43.7 15.1 4.6
バランス 8.7 3.9 -3.1 0.7 6.4

 

3.主要製品の需給 (総能力、総生産と地域別需要)

 

 

 

 

 

 

 

 
 
   

他の商品のグラフ 及び商品別の国別の需要・能力・生産のグラフは下記にあります。

https://www.knak.jp/METI-world/meti-2018/index.html

 

日揮は10月19日、再生可能エネルギーによる水の電気分解で製造した水素を原料とするアンモニアの合成、および合成したアンモニアを燃料としたガスタービンによる発電に成功したと発表した。

再生可能エネルギーを活用した水素ならびにアンモニアの製造とこれを燃料とした発電は世界で初めて。

日揮と産業技術総合研究所は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム「エネルギーキャリア」のもと、2014年から『新規アンモニア合成触媒および再生可能エネルギーによる水の電気分解で得られた水素を原料としたアンモニア合成プロセス』の研究開発を進めてきた。

本年5月には産業技術総合研究所、沼津工業高等専門学校、および日揮触媒化成と共同で、触媒に使用する担体や触媒の製造方法を改良することにより、低温・低圧下で効率的にアンモニアを合成できる新たなルテニウム触媒の開発に成功し た。

実証試験を通じて、新たに開発した触媒が低温・低圧で高い活性を有することを確認するとともに、再生可能エネルギーの使用時に課題となる急な運転条件の変更によるアンモニア製造量の変動に対応できることが検証できた。

このたび、太陽光発電設備で発電した電力による水の電気分解を通じて製造した水素を用いてアンモニアの合成試験を行い、合成したアンモニアを燃料にガスタービンによる発電試験(発電量47kW)を実施した。

再生可能エネルギーの有効利用のため、水を電気分解して水素を製造する方法の開発が期待されている。

水素エネルギーを本格的に活用していくためには、安全性やコストをはじめ、輸送・貯蔵の効率性等が課題であり、水素をアンモニアや液化水素、有機ハイドライド等のエネルギーキャリアに転換する必要があ る。

なかでも成分中に水素を多く含むアンモニアは、液化が容易で、アンモニアのまま直接燃焼させることが可能であり、また燃焼時にCO2を排出しない特徴を持つだけでなく、肥料原料などにも広く利用されており、既にサプライチェーンが確立されていることから、水素のエネルギーキャリアとして優位性がある。

これまでの「ハーバー・ボッシュ法」でのアンモニア製造と比較し、下記の特徴がある。

ハーバー・ボッシュ法 今回の方法
水素製造時 大量のCO2を排出 排出せず
合成反応 高温高圧 低温低圧
 従来法の触媒は非効率→新触媒開発
問題点 天然ガス価格で経済性が変化 再生エネのため水素製造量が変動

日本の対中経常収支

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10月21日付の毎日新聞の「時代の風」で藻谷浩介氏(日本総合研究所)が 「誤った『選択と集中』 妄信ただす現実の確認」 というタイトルで書いている。

日本の停滞は「官民の組織はとにかく決定が遅く、実行に移らない」ため、「イノベーションが進まず、経済が成長せず、国際競争に立ち遅れるばかり」というのが一般的だが、むしろ全力で間違った方向に「選択と集中」を行い、それで行き詰る大組織も日本には多数ある、とする。

東芝は技術革新の余地の乏しい原子力に投資を続け、医療機器や特殊用半導体などのイノベーティブな部門を売却する羽目に陥った。
北海道電力や関電も、原発にこだわるあまり、LNG火力の整備が遅れた。(それに対し、中部電力は上越LNG火力を稼働させ、太平洋岸、日本海側どちらかを天災が襲ってもバックアップできる体制)

憲法9条改正が今の優先課題か?

少子化と段階世代退職に伴う人手不足を好景気とはやす。少子化を理由に小中高校の統廃合、地方国立大学を低予算で締め上げ、都会に比べ出生率の高い地方圏の子育てコストを増やすのは方向が正反対。

地震の巣に正対した辺野古の太平洋海上に軍事用滑走路を造成するというのは、意思決定のずさんさが目に余る「選択と集中」である。

ポイントは、決定し実行する、しないではなく、その前の事実認識の段階こそが重要だ。間違いを信じ込んだまま、何もしないか、間違った方向に突っ走っている。

事実誤認の例として、「グローバルイノベーション&バリューサミット」なる行事(聴衆の過半は在日外国人)の最終セッションで登壇し、聴衆に質問した。

「日本の経常収支は、2017年に中国(香港含む)に対して、5兆円の黒字、赤字、どっちか?」と聞いたら、ほぼ全員が「赤字」と回答したが、正解は5兆3000億円の史上最高の黒字である。

ーーー

財務省の貿易統計の主文には主要地域・国との統計が載っている。

中国(香港を含まず)は下記の通りで、赤字である。この印象が強い。

しかし、地域別・国際収支データを見ると下記の通りとなっており、藻谷氏の指摘通りである。

対中経常収支は順次赤字が減り、2017歴年で黒字化、香港を含めると2016年の3兆円の黒字が2017年は5兆円超えの黒字
対中貿易赤字は減少しつつあり、香港を含めると2017歴年に黒字化、サービス収支は対中で大幅黒字。
対中第一次所得も大幅黒字
 
中国全体でサービス収支は大幅赤字となっているが、下図のとおり、大半は旅行である。

日本の対中サービス黒字の理由は訪日中国人の「インバウンド需要」である。

米Alphabet Inc. 傘下のGoogle は10月16日、欧州域内で売るスマートフォンについて、端末メーカーに無料提供していたメールや地図ソフトを有料化すると発表した。

欧州連合(EU)が7月に科した競争法(独占禁止法)違反による制裁に対応するため。

ーーー

Googleはスマホ用のAndroid 基本ソフト(OS)を無料で提供している。その上で動くアプリも無料としている。

Android 基本ソフトのなかで欠かせないのが Google Play Storeで、Android搭載スマートフォン/タブレットで利用できるアプリ、映像、音楽、電子書籍などが配信されている。

Googleはこれに目を付け、Google Play Storeのライセンス条件として、Chromeブラウザ(Google Chrome browser) と Google検索アプリ (Google Search) のプリインストールをメーカーに要求している。

これまで、これらのソフトを無料で提供してきたのは、検索などのサービス経由で集めたデータによる広告で収入を確保できるからである。

しかし、欧州委員会はこれを問題とした。

Android は世界のスマホで88%のシェアを持っており、EUはGoogleがそのシェアを生かして検索などのアプリを「拡散」し競争をゆがめていると批判していた。

EUの欧州委員会は7月18日、Google に下記を問題として、43億4000万ユーロ(約5700億円)の制裁金を払うよう命じた。3カ月以内に同行為を改めなければ、さらに高額罰金を科すとした。

1) Googleのアプリストア (Google Play Store)のライセンス条件として、Chromeブラウザ(Google Chrome browser) と Google検索アプリ (Google Search) のプリインストールをメーカーに要求。

欧州委員会の調査では、ユーザーはPlay Storeが入っているのが必須としている。

Googleは、Play Storeのラインセンスで、Google Chrome browser と Google Search をプリインストールすることを条件とした。

2) Google検索アプリ(Google Search)のみをデバイスにプリインストールする一部の大手メーカーやモバイルネットワークオペレータにインセンティブ支払い。

3) Googleのアプリのプリインストールを希望するメーカーが、Google版ではないAndroidフォーク (Androidのベース部分だけを使用、独自のアプリを採用するもの)を販売するのを妨げた。

2018/7/27 欧州委員会、Googleに罰金5700億円 


GoogleはEUの指示を不服として10月9日に提訴したが、対抗策を取った。

EUの指示通り、インストールを強制しない代わりに、Google Search があったためにこれまで無償にしていた他のサービスの利用を有料化するというものである。

EUが問題としたGoogle Chrome browser と Google Search をプリインストールすることを条件としない。

ブラウザーをGoogle Chrome の代わりにFirefoxにしたり、検索エンジンをGoogle Searchの代わりにMicrosoftのBing(元のMSN Search)などを使っても良い。

但し、Andoroid(OS)は無料のままであるが、Play Storeのほか、Gmail、Google Map、Youtube などを有料化する。

Andoroid が入ったスマホを販売するメーカーはGoogle に一定の対価を払わないとこれらアプリをスマホに標準搭載できなくなる。具体的なライセンス料は明らかにしていない。

10月26日以降に発売される端末について、裁定の結果が出るまでは今回の措置を続ける。

対象国はEU28カ国のほかアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーのEEA諸国となっている。EU圏以外での変更はない。

Googleでは、「Google検索とChromeを当社の他のアプリとともにプリインストールすることは、当社によるAndroidの開発と無償配布を資金面で支えていた 」とし、今回の有償化は欧州委の命令に従うための決定であることを強調した。


今回の措置はGoogle にとってはAndoroid 採用のスマホに自社の検索・閲覧ソフトが使われない可能性があり、他社にシェアを奪われ、広告収入が減る恐れがある。

ただ、検索ソフトは性能で Google が圧倒的な優位にあり、メーカーが他のソフトに切り替えるかどうか不明である。

Play Storeの入らないスマホをは考え難く、Gmail、Google Map、Youtube なども有料化されても入れないわけにはいかないと見られている。その場合、ライセンス料が端末価格に反映され消費者の負担が増す可能性が強い。

Googleの発表を受け、欧州委員会は次の通り述べた。

Googleに対しPlay Storeや他のソフトを有料にせよと求めていない。欧州委のルーリングに対応してどのように政策を変更するかは同社の責任である。対応策が有効なもので、欧州委の決定を尊重したものであるかどうかを注意深く見ていく。要は、他のブラウザーや検索エンジンがAndroid採用のスマホでGoogleと競ってやっていけるかどうかだ。

しかし、実際に欧州委員会の狙い通りになるかどうか、疑問である。Googleの対応策は欧州委員会にアピールするものである。


Saudi Aramco はこのたび、浙江省舟山緑色石化基地で石油精製・石油化学計画を進めている浙江石油化工(Zhejiang Petrochemical )に出資することを決めた。10月18日に調印式を行った。
浙江省政府が保有する9%を取得したとされる。(浙江石油化工では中国の石油会社か外資に出資を求めようとしたが、成功せず、一時的に州政府が保有していた。)

Saudi Aramco は9月に、浙江石油化工の主株主の浙江榮盛控股集團(Zhejiang Rongsheng)との間で、本計画のための原油の長期供給契約を締結している。

浙江石油化工は2015年6月18日に設立された。

株主は、浙江榮盛控股集團 (60%)のほか、浙江桐昆控股集團有限公司Tongkun Group)と国有企業である巨化集團公司Juhua Group 国有の建設会社の舟山海洋綜合開発投資( Zhoushan Ocean Comprehensive Development Investment Co.)で、私企業と国有企業のJVである。

浙江榮盛控股集團は1989年創業で、石油化学、化学繊維、不動産、金融等を業とする。
石油化学と化学繊維事業では、水平&垂直戦略をとり、拡大している。BTXからPTA、PET、ポリエステルヤーンなどを生産している。

巨化集團公司は1958年設立で、フッ素化学、クロルアルカリ、石油化学製品、電気化学製品、ファインケミカルを扱っている。

浙江桐昆控股集團は、ポリエステルとポリエステルヤーンのメーカー。

浙江石油化工の計画では、立地は浙江省舟山緑色石化基地で、第一期と第二期に分かれ、それぞれ、石油精製 年産20百万トン、芳香族 520万トン、エチレン 140万トンとなっている。
石化製品では、エチレングリコール、LLDPE、HDPE、PP、PO、MMA、アクリロニトリル、ブテン-1、等々が含まれている。

この計画は、国の石油・石油化学の13期5か年計画( "13th Five-Year Plan" )に含まれている。

2017年7月に第一期の建設を開始した。

横河電機は本年3月、浙江石油化工から、第1期建設プロジェクト向けに、プロセスガスクロマトグラフ「GC8000」を受注した。

立地:浙江省舟山緑色石化基地: 火山列島を埋め立てている。

上海と舟山を結ぶ橋が計画されている。

主要石化製品能力(万トン)

1期 2期
エチレン 140 140
EO/EG 5/75 10/65
EVA/LDPE - 10/30
LLDPE 23 21.2
HDPE 25.8 -
PP 89.42 90
ANM 27.04 -
MMA 9 -
PX 400 400
スチレン 120 60
ポリカーボネート 26 26

米財務省は10月17日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。

Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States


日本と中国のほか、韓国、ドイツ、スイス、インドの6カ国を引き続き「監視リスト」に指定した。

貿易戦争を繰り広げる中国については、経済制裁に道を開く「為替操作国」と指定するのは見送ったが、報告書は「6カ月かけて再審査する」と同国へのけん制を強めている。

ーーー

2016年2月24日、2015年貿易円滑化・貿易履行強制法成立した。これはアンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置が盛り込まれた。

対象は、重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国で、米財務省は次の基準で選ぶこととした。

重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上
実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上
外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入

財務省は2016年4月の報告で、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、米国の主要貿易国の5カ国が3つの基準のうち2つに該当することを見つけた。
このため、新しい「監視リスト」を創設し、この5国を監視していくこととしたもの。

2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に

その後の「監視リスト」の対象は次の通り。

  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10


日本は(1)と(2)で条件に抵触した。

中国は、2016/10以降は(1)の1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。今回も同様である。

台湾は2017/4 に1つしか基準を超えなかったが、外為市場介入で対象外となったのが一時的かどうかをチェックするため、監視国に残った。2017/10からは外れた。

インドは、2017年第1・四半期から第3・四半期にかけて外貨購入を拡大した。通年では過去最大の560億ドルと、同国のGDPの2.2%の水準に達した。対米貿易黒字も230億ドルであった。

ーーー


今回の分析結果(2018年6月までの4四半期):

日本:モノの対米黒字700億ドルと経常黒字がGDPの4%で基準を超えた。

外為市場介入は過去7年間無しとなっている。

財務省は、着実な成長を利用し、構造改革を行うべし、とコメントしている。


中国:モノの対米黒字3900億ドルのみが基準を超えた。対米輸出は5250億ドル、輸入は1350億ドル。
    なお、サービスは米国の400億ドルの黒字。

経常収支は下図の通りで、サービスの輸入(海外旅行支出を含む)が大きく、モノの黒字を帳消しにしている。

付記 サービス収支の赤字の原因は旅行である。

外為市場への政府介入はない(±ゼロ)としているが、最近の人民元下落が大きく、注目している。為替介入をしないという中国政府ののG20での約束を重視 するとしている。

Treasury continues to place considerable importance on China adhering to its G -20 commitments to refrain from engaging in competitive devaluation and to not target China's exchange rate for competitive purposes.

  Treasury also strongly urges China to provide greater transparency of its exchange rate and reserve management operations and goals.

  今回も、1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。


韓国:
モノの対米黒字210億ドル(前年の280億ドルからは減少)と経常黒字がGDPの4.2%で基準を超えた。

若干(GDP比 0.3%)の為替介入があったとみる。韓国政府が2019年から為替介入について開示すると発表したのを好感。


ドイツ:
モノの対米黒字670億ドルと経常黒字がGDPの8.2%で基準を超えた。

EUメンバーのため、ドイツとしての為替介入問題はない。


スイス:
経常黒字がGDPの10.2%で基準を超えた。為替介入は大きく、GDPの2.4%となっている。


インド:
モノの対米黒字230億ドルで基準を超えた。
   インドの場合はサービスでも対米で40億ドルの黒字となっている。医薬とIT関係が中心。

インドは、2017年第1・四半期から第3・四半期にかけて外貨購入を拡大した。通年では過去最大の560億ドルと、同国のGDPの2.2%の水準に達した。
しかし、今回は介入はGDPの0.2%に止まり、「
GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入 」という条件から外れる。

今回は、1項目だけの基準超えのため、次回も同様なら、リストから外れる。

トランプ米大統領は10月9日、ホワイトハウスで記者団に米連邦準備理事会(FRB)の利上げについて「早く動く必要はない」と述べた。「再びインフレにはならない」と説明し、利上げによる金融の引き締めよりも、経済成長を優先すべきだとの考えを示した。

大統領は翌10日夕、「FRBは間違いを犯している。彼らは(金融政策を)引き締めすぎている。FRBはクレージーだと思う」と利上げ路線を改めて批判した。

11月の中間選挙を控え、金利上昇を通じた経済の減速を避けるため、FRBを改めてけん制した。

大統領は10月16日、FRBについて「私の最大の脅威だ」と述べ、利上げ路線を再びけん制した。「利上げが早すぎるので(パウエルFRB議長がやっていることを)よく思っていない」と述べ、インフレ率は「非常に低い」として利上げを急ぐ必要がないとの持論を展開した。


金利上昇の背景は次の通り。

(1) FRBによるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標のアップ

米国は、2008年11月~2010年6月の量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )、2010年11月~2011年6月に実施されたQE2に続き、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ったが、2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決め、その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。

2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%~0.25% から0.25%~0.50% に引き上げた。
その後、引き上げを続け、本年
9月26日に2.00~2.25%に引き上げることを決定した。

年内は12月にあと1回の利上げが実施されると予想、2019年は3回、2020年は1回との見通しを示した。

2008/10 2.00%→1.00%
2008/12 1.00%→0.00%
  0.00%
2015/12 0.00%→0.25%
2016/12 0.25%→0.50%
2017/3 0.50%→0.75%
2017/6 0.75%→1.00%
2017/12 1.00%→1.25%
2018/3 1.25%→1.50%
2018/6 1.50%→1.75%
2018/9 1.75%→2.00%
(2018/12 ) (2.00%→2.25%)

2018/9/27 FRBが本年3度目の利上げ

(2) FRBによる保有債券の縮小(市中のドルの減少→金利アップ)

FRBは2014年11月には債券買い入れをゼロとしたが、満期のきた債券については同額を買入し、残高は維持してきた。

しかし、FRBは2017年9月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結し、大幅に膨らんだ保有資産の縮小を始めると決めた。

但し、償還期限がきた分をそのまま償還すると、市場に出回るドルが減少し、FF金利アップと合わせ、長期金利がアップし、経済に影響を与える。

このため、FRBは10月から償還の時期が来た国債などを再び買い入れる額を少しずつ減ら すこととした。

年内の3か月は1か月当たり100億ドル(米国債が60億ドル、住宅ローン担保証券が40億ドル)を上限に資産規模を縮小する。

その後は3か月ごとに買い入れ額を減らし、1年後には1か月当たり500億ドル(米国債が300億ドル、住宅ローン担保証券が200億ドル)を上限に資産規模を縮小していく。

2017/9/23 米連邦準備理事会、資産縮小開始を決定

当月の償還額のうち、下記を超える額は再び買入する。(各月 億ドル )

国債 住宅ローン
担保証券
合計
2017/10~12 60 40 100
2018/1~3 120 80 200
4~6 180 120 300
7~9 240 160 400
10~12 300 200 500
累計 2,700 1,800 4,500
2019/12 累計 6,300-α 4,200-α 10,500-α

当月の満期額がこれを下回る場合は当然、満期額がそのまま縮小額になる。

今後は現行の圧縮ペースで固定し、ピークに2.5兆ドル近くあった残高は2019年末には2兆ドル割れをうかがう可能性が高い。

FRBの試算では、量的緩和は米長期金利を最大1%押し下げた。保有残高をどこまで減らすかはまだ決まっていないが、半減でも0.5%の金利上昇要因になるという。

(3) 中国の米国債売却

米財務省の10月16日の発表によると、中国の米国債保有は1兆1650億ドルと、7月の1兆1710億ドルから減少した。
外国勢の米国債保有残高で中国に次ぐ規模の日本は1兆300億ドルで、前月の1兆360億ドルから減った。サウジアラビアは27億ドル増加し過去最高の1695億ドル。

中国の駐米大使が2018年3月に、米国の関税への対抗策として米国債購入を縮小する可能性もあると示唆したことがある。

ムニューシン米財務長官は10月13日、中国が保有する米国債を両国間の貿易交渉で切り札として使ってくる可能性を巡り懸念してはいないと説明した。
  
「米国債市場は極めて流動性が高く、この問題がわれわれの交渉の中で議題に上ったことは全くない」と述べ、「米国債には多くの買い手がおり」、中国は「自由に自らがしたいように行動できる」と付け加えた。

米国の財政赤字

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米財務省は10月15日、2018会計年度(2017年10月~18年9月)の財政収支の赤字が前年度比17%増の7790億ドルだったと発表した。

2017年末に成立した大型減税で法人税収が減少したのが主因。赤字は3年連続で拡大し、6年ぶりの高水準となった。

source: https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2018/02/hist07z1-fy2019.xlsx


歳入は0.4%増の3兆3287億ドル。個人所得税は増えたが、税制改革で連邦法人税率を35%から21%に引き下げた影響で法人税収が22%減った。一方、鉄鋼やアルミニウムへの追加関税発動などで関税収入は2割増えた。

歳出は4兆1077億ドルで3.2%増えた。国防費(6%増)や社会保障費(4%増)が膨らんだほか、FRBの利上げで公的債務の利払い費(14%増)がかさんだ。

ムニューシン財務長官は声明で「無駄な歳出を削るとともに、強力な経済成長を実現してきたトランプ大統領の経済政策を進めれば、米国の財政は持続可能な方向に進む」と改めて強調した。

ーーー

米議会予算局(CBO) は本年4月9日の報告書で、米財政赤字は従来予想より2年早い2020会計年度(19年10月-20年9月)までに、1兆ドルを超える見通しであるとしている。

2017年6月の報告書では、米財政赤字が1兆ドルを超えるのは2022年度と見込まれていた。

CBOの報告書には税制改革の影響に関する新たな見通しが盛り込まれた。マクロ経済効果と債務返済費用の増加を考慮すると、今後11年間で財政赤字を約1兆9000億ドル増加させる見通し。

トランプ大統領が署名した減税や歳出拡大には、長期的な経済成長率を押し上げる効果はほとんどないという。



  


ドイツで10月14日に実施された保守の牙城のバイエルン州(英語ではBavaria州)の議会選挙で、メルケル政権を支える保守与党、キリスト教社会同盟(CSU)が歴史的な大敗を喫した。

CSUの得票率は前回2013年の47.7%から37.7%に下がり、68年ぶりの低さとなった。連邦議会下院で連立を組むドイツ社会民主党も惨敗し、両党を合わせても過半数を下回る。

逆に緑の党と、極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が大躍進した。

難民問題が票を左右した。

下院 (2018/3連立)

バイエルン州議会

今回 従来 差異
キリスト教民主同盟 (CDU) キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
246 連立
与党
399
キリスト教社会同盟 (CSU) 37.2% 47.7% -10.5%
ドイツ社会民主党(SPD) 153 9.7% 20.6% -10.9%
緑の党 67  

野党

 
310 17.5% 8.6% +8.9%
自由民主党(FDP) 80 5.1% 3.3% +1.8%
ドイツのための選択肢(AfD) 92 10.2% 0 +10.2%
左派党(The Left) 69 3.2% 2.1% +1.1%
無所属 2
Free Voters of Bavaria 11.6% 9.0% +2.6%
その他 5.5% 8.7% -3.2%
合計 709 100% 100% -

メルケル首相はキリスト教民主同盟 (CDU) の党首で、バイエルン州のみを地盤とするキリスト教社会同盟 (CSU) と連携している。

2017年9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。

このため、自由民主党(FDP)や緑の党と連立協議を進めたが、決裂し、2018年2月に第2党の社会民主党(SPD)との大連立交渉がようやく合意した。

2018/3/17 メルケル首相 再選 

しかし、この連立内閣は肝心のCDU(全国組織)とCSU(バイエルン州のみ)の間で問題を抱えている。

バイエルン州は難民がドイツに入る際の入り口に位置し、100万人を超える難民を受け入れたメルケル政権への批判が根強い。

反難民の極右の台頭に対抗するため、CSUは難民抑制にかじを切った。

キリスト教社会同盟(CSU)の党首である Seehofer内相が、寛容な難民政策が「欧州を分断させた」と糾弾し、他のEU諸国で難民登録済みの場合はドイツへの入国を許さず、元登録国に送還する措置の即時導入を要求し た。

Merkel 首相は7月2日夜、対立していた Seehofer 内相と会談し、新たな難民対策で合意した。Seehofer 内相は先に表明していた辞意を撤回、連立政権崩壊の危機はひとまず回避された。
Merkel 首相はSeehofer 内相が主張する国境での入国拒否を認めなかったが、ドイツに向かう難民の「玄関口」にあたるオーストリアとの国境に管理施設 (transit centres)を設け、他のEU加盟国で難民申請登録した人々はその国へ送り返すことで合意した。送還は2カ国間協定を結んで行う。

一方で、Merkel首相が難民送還に動いたことで、右傾化を嫌う穏健な支持層の離反を招いた。

ドイツの民間難民支援団体は難民管理施設を「絶望的な収容施設」と指摘、「政府首脳たちには、追われた人々への同情がない」と厳しく批判 した。

2018/7/2 EU首脳会議、移民問題で不十分な合意、ドイツ内相が辞任示唆 付記


今回のバイエルン州の選挙結果はこれを反映している。

メルケル政権の難民受け入れへの不満から、右寄りの支持層が極右政党ドイツのための選択肢(AfD)に流れた。

慌てたCSUは反難民に転じたが、今度は右傾化を警戒する穏健派が緑の党に流れた。

結局、左右両翼の支持を失うこととなった。


10月28日にはヘッセン州議会選挙がある。ここでCDUが敗北すれば、メルケル氏の党首としての立場がおかしくなる。


米司法省は10月10日、GE Aviation など米国の航空宇宙企業数社から企業秘密を盗もうとした疑いで中国国家安全省の経済スパイを逮捕、起訴したと明らかにした。
経済スパイと企業秘密窃の共謀と実行の4つの罪状で起訴された。


逮捕されたのは江蘇省の国家安全省第六處副處長徐燕軍Yanjun Xu)被告で、4月1日にベルギーで拘束され、10月9日に米国に身柄が引き渡され、逮捕された。

起訴状によると、Xu被告は2013年12月頃から 逮捕されるまで、米国内外の航空業界のリーダーと見られる複数の航空会社(
GE Aviationを含む)をターゲットとして活動。企業に勤務する専門家ら をリクルートし、当初は大学での講演などの名目で中国へ招待し、費用や報酬を払っていたという。

GE AviationはBoeing やAirbus にエンジンを供給しているが、現在、商業機や軍のヘリコプターの新世代エンジンを開発している。1年以上前から捜査が行われ、GE Aviation はFBIに協力してきたという。

徐燕軍、Qu Hui、又はZhang Hui と名乗り、江蘇科技促進協会の職員であると称していた。

南京航空航天大学(中国の産業情報部が設立)と密接に連絡を取っていた。

GE Aviationは徐燕軍のターゲットの一つで、同社を退職したエンジニアが2017年3月以降、南京航空航天大学にしばしばE-Mailを送っていた。

徐燕軍の支援のもと、そのエンジニアは南京航空航天大学で講演を行った。徐燕軍は旅費や報酬3500ドルを支払った。

その後、徐燕軍は重要な情報の提供を求めた。エンジニアは本年2月にファイルを送付、その後、徐燕軍は多くの質問を送った。

2月末に徐燕軍は欧州で会うことを求め、その時に情報を持参することを要求した。

徐燕軍は3月末にエンジニアと会うため、渡欧した。

これらは全て、FBIの監視下で進んだ。政府は4月1日にベルギーで彼を逮捕することを決めた。

関連して、9月末にシカゴに居住する中国人 季超群 が逮捕されている。中国の情報員に密かに協力し、米国の技術者や科学者をリクルートするのを助けたという。このうち7人は防衛関係のコントラクターの従業員で、全員が台湾か中国生まれで米国籍を持つという。


他国の現役の情報部員を逮捕するためには、十分な証拠を揃えていると思われる。

米国の司法当局にはベルギーでの逮捕権はないため、米国とベルギーの司法当局が十分打ち合わせた上のものであろう。

ベルギーがどんな罪状で逮捕できたのか、不明。

拘束から引き渡し(犯罪人引渡協定によると思われる)までに半年かかった理由も不明である。被告側の異議で時間がかかったと思われる。

John Demers 司法次官補(国家安全保障担当)は次のように述べている。

中国の情報部員が米国の航空宇宙企業から事業秘密とその他のセンシティブな情報を盗もうとした。これは単独の事件ではなく、米国を犠牲にして中国を発展させようとする広範な経済政策の一環である。我々は他国が我々の軍事力、我々の頭脳の成果を盗むのは我慢できない。

FBIの Priestap副長官は、「今回の中国情報部員の前例のない引き渡しで、中国政府が米国への経済スパイを直接監督していることが明らかになった」と述べた。

米国では共謀罪および経済スパイの量刑は最長15年。共謀罪および営業秘密窃取罪は最長10年。 加えて罰金が課せられる。

中国大使館や同被告の弁護士からのコメントは得られていない。


中国商務部の報道官は10月11日、米国、メキシコ、カナダのNAFTAに代わる新たな貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の自由貿易協定(FTA)に関する条項について、「自由貿易圏の構築は開放・包摂の原則に基づくべきであり、他国の対外関係の力を制限するものであってはならないし、排外主義であってもならない」と述べた。

このほど合意に達したUSMCAには、
3ヶ国のいずれかが「非市場経済国」とFTAを結ぶ時は、3ヶ月前までに他の2ヶ国に通知しなければならず、
その場合、他の2ヶ国は6ヶ月後にUSMCAを離脱して、2国間の貿易協定を結ぶことができる
という排他的な条項があり、中国を狙い撃ちしたものとみられている。

報道官は、「中国が繰り返し強調してきたのは、WTOの多国間貿易ルールには、『非市場経済国』に関する条項はなく、加盟国の国内法の中にあるだけということだ。中国は一つの国の国内法が国際法の上に置かれることに反対し、一国の意思を人に押しつけるやり方にも反対する」と述べた。


「非市場経済国」について:

中国は2001年12月にWTOに加盟した。

中国は、WTO加盟に伴い、 アンチダンピング(AD) 措置及び相殺措置に係る規則・手続をAD協定及び補助金・相殺措置協定に整合化させることを約束している。

他方、中国以外のWTO加盟国が、中国産品についてAD 措置又は相殺措置に係る調査を行う際の価格比較及び補助金額の算定に関し、中国を「非市場経済国 (Non Market Economy)」として扱う特例が、加盟後15年間認められた。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

2016年2月までにロシア、ブラジル、ニュージーランド、スイス、オーストラリアなど81国が中国の市場経済国家の地位を認めた。

WTOは中国を「非市場経済国」と認定していたが、その根拠となっている条項は15年が経過する2016年12月に失効した。

2016/2/12 中国の「市場経済国」認定問題 

米政府は2016年11月23日、中国を「市場経済国」と認定しない方針を明らかにした。

欧州委員会は11月9日、輸入製品が不当にEU域内で安く販売された場合に適用する、反ダンピング課税の算出に関する制度改正案をまとめた。

WTO上の義務に違反して中国から損害賠償を求められるおそれのある事態を回避し、同時に「市場経済国」として認定することによってもたらされると考えられる安値競争に対抗できなくなるという事態をも回避するために、EU域内での新たな通商上の救済措置を策定することを選択したこととなる。

経済産業省は12月8日、中国のWTOでの立場について、引き続き「市場経済国」と認定しないことを決めたと発表した。

2016/12/1 米、中国の「市場経済国」認定見送り

中国商務部は2016年12月12日、同国の「市場経済国」認定を見送った米国とEUをWTOに提訴したと発表した。日本に対しても近く提訴に踏み切るとみられる。

2016/12/17 中国、「市場経済国」待遇で米欧をWTO提訴 

商務部の報道官が言う通り、2016年12月以降は、「WTOの多国間貿易ルールには、『非市場経済国』に関する条項はなく、加盟国の国内法の中にあるだけ」である。

ーーー

USMCA協定の第32.10条 「非市場国とのFTA」は次の通りで、中国とFTAを締結した国は、3国協定から除外されることとなる。

1.USMCA締約国の一ヶ国が非市場国とのFTAを交渉する場合、交渉開始の3ヶ月前に、他の締約国に通知しなければならない。非市場国とは、本協定の署名日前に締約国が決定した国である。

2.非市場国とFTA交渉を行おうとする締約国は、他の締約国から請求があれば、可能な限りの情報を提供すること。

3.締約国は、他の締約国がFTA協定と潜在的な影響を調査するため、署名日の30日前に他の締約国がFTA協定の条文、附属書、サイドレターなど見直す機会を与えること。
  締約国が機密扱いを要求する場合、他国は機密保持を行うこと。

4.締約国が非市場国とFTAを締結する場合、他国は6ヶ月前の通知により、本協定(USMCA)を終了し、残りの二国間協定とする。

5.二国間協定は、上記締約国との規定を除き、本協定(USMCA)の構成を維持。

6.6ヶ月の通知期間を利用して、二国間協定を見直し、協定の修正が必要か決定する。

7.二国間協定は、それぞれの法的手続を完了したと通知してから60日後に発効する。

https://ustr.gov/sites/default/files/files/agreements/FTA/USMCA/32 Exceptions and General Provisions.pdf

この条項は、貿易相手として米国を選ぶか、中国を選ぶかの二者択一を求めるものである。米国を捨てて中国を選ぶ国はないであろう。


日米
は9月26日夕(日本時間27日朝)、「日米物品貿易協定(TAG:
Trade Agreement on Goods 」の交渉入りで合意した。

その共同声明には次の記載がある。

日米両国は,第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。

したがって我々は,WTO改革,電子商取引の議論を促進するとともに,知的財産の収奪,強制的技術移転,貿易歪曲的な産業補助金,国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため,日米,また日米欧三極の協力を通じて,緊密に作業していく。

2018/9/27 日米、物品貿易協定交渉へ、交渉中は自動車追加関税回避


今後のTAGの協議において、米国は上記のUSMCA の条項と同じものを要求してくると思われる。


日本は、
ASEAN10か国+6か国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)の東アジア地域包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)の交渉中。

10月13日の閣僚会合では年末までの実質妥結に向け、「いよいよ大詰めの段階に入った。」(世耕経済産業相)
ただ、「さらなる改善の必要性」も指摘しており、各国間に意見の隔たりもある。

日本は中国を引き続き「市場経済国」と認定しないことを決定しており、 USMCA と同じ条項が入ると、中国とは RCEP を締結できないこととなる。

USMCAも TAGも TPPも RCEPも FTAである。

トランプ大統領は自動車への追加関税で相手国を脅し、無茶な要求を通してきた。

パーデュー米農務長官は、共同声明の記述に反し、日本との農産品を巡る通商交渉で、日本がEUと結んだEPAや、TPPを上回る水準の市場開放を求める考えを示している。

日本政府は、共同声明で、「第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する」ことで既に合意している。

今後のTAG交渉で、米国の要求を拒否できるであろうか。

WTOの多国間貿易ルールには、『非市場経済国』に関する条項はなく、加盟国の国内法の中にあるだけである。
日本が今すぐ、中国を「市場経済国」と認めてしまえば、上の条項は関係ないこととなるが・・・。

ーーー

これとは別に、ムニューシン米財務長官は10月13日、日本との物品貿易協定(TAG)交渉を巡り「為替問題は同交渉の目的の一つだ」と述べ、通貨安誘導を封じる為替条項を日本にも求める考えを明らかにした。

カナダ、メキシコとのUSMCAにはMacroeconomic Policies and Exchange Rate Mattersの章があり、競争のための通貨切り下げや目標レートを決めることでの不公正な通貨政策をやめ、透明性を増やし責任あるメカニズムをとるとの high-standard のコミットをしている。

通貨政策に関する項目を貿易協定に明記するのは異例で、韓国とのFTA改正の付属書にもあるが、韓国側はFTAとは別だとしている。

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

なお、韓国の場合は強制力はないが、USMCAでは対抗措置が取れる。現時点では問題のないカナダ・メキシコとの協定にこの規定を入れたのは、今後のFTA協定に入れるためだとされる。

日本は為替条項は絶対反対としているが、拒否できるであろうか。




福島第一原発の放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水は、事故後は構内にため続けており、今年2月時点で約105万トンあるタンク貯蔵水のうち約85万トンを占めている。
タンクの容量は現状で約110万トンで、東電は2020年までに137万トンまで増設を計画しているが、それ以降については未定である。

ここにきて、第一原発の汚染水を処理した後の水にトリチウム以外の複数の放射性物質が残留していることが報道された。

8月19日に共同通信が取り残しを報じた後、8月23日には河北新報が、2017年度のデータを検証したところヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

経済産業省は8月30日と31日に放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水の処分方法をめぐり、公聴会を開いたが、海洋放出への反対が続出した。

東京電力は9月28日、福島第1原発の汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。

今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとしている。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題

これについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長から仰天の発言が飛び出した。

更田委員長は10月5日、福島第1原発を現地視察し、報道陣の取材に応じた。汚染水浄化後の処理水にもトリチウムなど複数の放射性物質が海洋放出の法令基準値を上回って残留している問題に関し、 東電が実施する意向を示している放出前の再浄化は必ずしも必要ではないとの認識を示した。

「科学的な意味では、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げることに大きな意味の違いはない」と 述べ、「再浄化は絶対に必要だと規制当局として要求する認識ではない」と述べ、再浄化しなくても希釈により基準値を下回れば、海洋放出を容認する考えを示した。

これは間違っている。

先ず、科学的な意味では、再浄化は放射性物質の総量を減らすものであり、希釈率を上げることは濃度を下げるもので、大きな違いがある。子供でも分かることだ。

海洋放出の法令基準値は、それ以下なら問題ないという数値ではない。放出そのものは問題だが、可能な限り処理をしても、どうしても処理できないものなら、そこまで薄めていれば、止むを得ず認めるというものである筈だ。

一つ一つの石炭火力発電所などのCO2排出が積もり積もって温暖化に至っている。 薄めたとしても、どんどん放出していけば、海洋にも今後影響が出ないとは思えない。

処理したといっていたトリチウムなどが実は残っていた。放出を始めた場合、本当に基準値以下まで薄めたか、信用できない。

また、科学大国の日本の原子力規制委員長が認め、放出しているとして、今後、他国が処理せずに放出を始めたら大変なこととなる。

東電の場合、ALPSなどで処理すれば、時間はかかるが、処理できるし、東電も再浄化するとしている。それを規制委員会の委員長が、再浄化せずに薄めて流せばよいというのは一体どういうことだろうか。

しかもその法令基準値については、「科学的」であるとは言えないとの意見もある。

この法令に定められた、告示濃度限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルに基づいているが、この放射線防護モデルは、原発の運転がしやすいように、ある限度は撤廃され、ストロンチウム90などの線量評価は緩められてきた歴史的経過がある。この緩すぎる限度で、原発事故放射能汚染水を海に放出してよいわけがない。放射能汚染水の放射能は、総量で規制すべきである。

公害対策では総量規制が常識である。

硫黄酸化物の規制は濃度規制に始まり、逐次改訂強化がなされたが、特に工場密集地域を中心に環境基準に照らすとなお深刻な状況にあった。このため、四日市市を抱える三重県で1972年に総量規制を盛り込んだ条例が設けられ、これを追って1974年、大気汚染防止法の改正により総量規制が導入された。

汚水処理では中西準子氏の浮間下水処理場調査が有名である。
当時の活性汚泥処理ではシアンや重金属は処理できないが、「濃度が下がっている」と宣伝されていた。中西氏が調べると、それぞれの工場から異なるモノを含んだ排水が流し込むと、見かけ上、それぞれのモノの濃度が下がるだけだと分かった。1971年に研究結果が発表され、1973年に廃止された。

これらは昔むかしの話である。

今頃、濃度規制が正しいので、処理などせずに、薄めてどんどん流せばよいなどと発言する人が原子力規制委員会の委員長でよいのであろうか。

外国企業の対米投資を審査する米国の独立機関、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する条項を加えたJohn McCain 国防権限法(NDAA)案が8月13日成立した。


これまでのCFIUSの審査対象は、安全保障に係るものと大統領が判断した買収に限られた。

今回、米国企業の買収を狙いとする取引に限らず、合弁会社設立や、米国の重要な技術やインフラ、個人情報に関わる少額の出資なども審査の対象とする。米政府施設に近い土地取得など不動産取引も含める。

中国が対米投資を通じて技術やノウハウを盗み出し、軍事技術に流用するのを食いとめたい考えだが、審査は外資すべてを対象としており、中国企業だけでなく、日本企業にも影響が出そうだ。

2018/8/17 米、対米投資の審査対象拡大


米財務省は10月10日、8月に成立した新法に基づく外資による対米投資の規制の詳細を発表した。11月10日から実施する。ハイテク分野での覇権を狙う中国から先端技術を保護するのが狙い。

半導体や情報通信、軍事など27産業を規制対象に指定し、少額出資でも当局に事前申告を義務づける。

規制対象となる分野も航空エンジン・部品、アルミニウム精錬、石油化学などと細かく指定した。ナノテクノロジー(超微細技術)の研究開発や光学レンズ製造も対象になっている。 幅広い無機化学品も含まれている。

ANNEX A TO PART 801 --対象産業:具体的には北米産業分類システム(NAICS)コードで定義

航空機、
航空機エンジン・エンジン部品、
アルミナ精錬・アルミ、
ボール・ベアリング、
コンピュータ記憶デバイス、
コンピュータ、
誘導ミサイル・宇宙船、
誘導ミサイル・宇宙船製造装置、
装甲車・タンク・タンク部品、
原子力発電、
光学機械・レンズ、
その他基礎無機化学品 (NAICS Code: 325180) 、
その他の誘導ミサイル・宇宙船部品・備品、
石油化学品
粉末冶金部品、
電力・配電・変圧器、
一次電池、
ラジオ&TV放送・無線通信機器、
ナノテクR&D、
バイオ分野のR&D、
アルミの2次精錬・アロイ、

航空及び航海の探査・発見・誘導システムと機器、
セミコンダクターと関連機器、
セミコンダクター製造機器、
蓄電池、
電話用器具、
タービン・タービン発電セット

規制対象となるのは、上記の対象分野で、外国人投資家が下記のことができる場合。

 ・ その企業が保有する重要な非公開情報にアクセスできること、
 ・ 取締役や類似のポジションに就く、
 ・ 重要な技術の使用、開発、取得、処分等の意思決定に参加すること

§ 801.302に対象を例示、§ 801.303に対象外を例示

規制対象は全ての外国人で、特定の国に限定しないとするが、中国が念頭にあるのは明らか。

規制の対象となる産業への対米投資が完了する45日前までにCFIUSに申告するよう外資企業に求める。これまでは事前申告を義務付けてはいなかった。
違反した場合には最大で予定していた取引額と同額の罰金(Civil monetary penalty up to the value of the transaction) を科す。

Steven Mnuchin 財務長官は「これらの暫定的な規制は、米国の極めて重要な技術に対する特定のリスクに対処するものだ」と説明した。

DuPont、ロゴを変更

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DuPontは10月3日、新生DuPontとなるのに伴い、ロゴを変更すると発表した。

現在のロゴは1909年から変わっていない。

同社の社名は正式には、創業者の名前を取った E. I. du Pont de Nemours and Companyである。

社名の通称は、当初は Du Pont (間にスペースあり)であった。ロゴはDU PONTである。

20年ほど前に、これを DuPontに変更した。
しかし、ロゴについては変更せず、そのまま使っていた。

今回、社名と同様に間のスペースを取り除き、DUPONTとする。
DowDuPontの子会社であり、正式社名も 
E. I. du Pont de Nemours and Company ではなく、Du Pontになると思われる。)

文字をで囲んでいた楕円(border)を取り除くが、元の印象を残すため、 卵型(oval )の中に文字を置く形をとった。

ーーー

DowDuPont は2018年2月26日、今後分離する3つの事業会社の社名を発表した。

米司法省は10月3日、日本ケミコンが電解コンデンサのカルテルで司法取引に応じたと発表した。

日本ケミコンはこれまでの電解コンデンサカルテルでは最大の罰金60百万ドルを支払う。また5年間の保護観察となり、その間、コンプライアンス計画を実行し、毎年その報告を行うことを義務付けられた。
同社の社員4名が起訴された。

同社は他社と共謀し、2001/11~2014/1の期間、電解コンデンサの競争を阻害したとされた。

これで電解コンデンサカルテルで合計8社と個人10名が起訴された。8社は全て罪を認め、合計150百万ドル以上の罰金支払いに応じた。
個人10名のうち、2名は罪を認め、それぞれ禁固刑(1年と1日)となっている。

ーーー

電解コンデンサカルテルでは、2015年9月2日に NEC TOKIN が罪を認め、13.8百万ドルの罰金を支払うことで合意した。

司法省はその前の2015年3月に日本のコンデンサメーカー(Company A とし、社名を明らかにしていない)の1名を起訴したと発表している。

司法省は2016年4月27日、日立化成が司法取引を行ったと発表した。この時点では司法省と日立化成ともに、罰金額については明らかにしなかったが、後の司法省の発表では 3.8百万ドルとなっている。

2016/4/30  日立化成、コンデンサ事業でのカルテルで米国司法省と司法取引

司法省は2016年8月、ルビコンエルナーHoly Stone の3社と司法取引を行ったと発表した。罰金額はいずれも明らかにしていない。エルナーの1名が罪を認めた(禁固1年と1日)。


日立化成エレクトロニクスは2010年に、三春工場のタンタル・ニオブコンデンサ事業を台湾の禾伸堂企業股份有限公司(Holy Stone Enterprise Co., Ltd. )に売却した。
(Holy Stoneはその後2014年に、これを米国の
Vishay Intertechnologyの子会社ビシェイポリテックに売却した。)

司法省は2016年12月に3名を起訴したと発表した。Company Aの2名、Company Dの1名としている。

2017年2月に松尾電機が司法取引に応じた。罰金額は明らかにしていない。同社の1名が罪を認めた(禁固1年と1日)。

2017年7月にニチコンが司法取引に応じ、罰金 42百万ドルを支払った。(同社は別途、需要家に和解金として21.5百万ドルを支払うことで合意)

今回の日本ケミコンが8社目となる。個人の起訴は10人目となる。

ーーー

コンデンサー業界は日本のほか、中国、台湾、米国、韓国、欧州でカルテルの調査を受けている。中国以外で全て有罪となった。

2015/12/15 台湾、日系などのコンデンサーメーカーの価格カルテルに多額の課徴金

2016/4/2  公取委、コンデンサーメーカーに課徴金納付命令

2018/3/30 EU、コンデンサーカルテルで制裁金

2015/10/3 韓国公取委、日本のコンデンサーメーカーの価格カルテル調査


韓国公取委は2018年9月16日、日本のコンデンサー製造・販売企業9社が、アルミニウム・タンタルコンデンサーの供給価格を共同で引き上げまたは維持することで合意していた行為を摘発し、是正命令と共に課徴金360億ウォン(36億円)を賦課したと発表した。

制裁を受けた日本企業は、
アルミニウムコンデンサーではニチコン、三洋電気(現 パナソニック)、エルナー、日立化成エレクトロニクス、ルビコン、日本ケミコンの6社。
タンタルコンデンサーは、ニチコン、三洋電気、エルナー、日立化成エレクトロニクス、トーキン、松尾電気、ビシェイポリテックの7社。

公取委は、ビシェイポリテック、松尾電気、エルナー、日本ケミコンの4法人と日本ケミコン所属の職員1人を検察に告発した。

企業側発表の課徴金:

日立化成:2,012百万ウォン
松尾電機:1,840百万ウォン




ロッテの辛東彬(重光昭夫)会長が被告となっている2つの裁判を併合して審理が行われた控訴審で、ソウル高裁は10月5日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑は懲役14年)を宣告した。

実刑を免れた辛被告は同日、保釈された。ロッテの経営に復帰する。

判決を受けてロッテは「裁判所の賢明な判断を尊重する。ロッテが国家経済を支え、社会的な責任を果たせるよう努める」とのコメントを発表した。

会長は10月8日に早速出社した。

ロッテ関係者は「総帥不在のため経営の重要事項を決定できない状態だった」とし、「当分は山積した懸案を迅速に検討、決定を下し、経営正常化に取り組む」と説明した。

同じ控訴審で、ロッテグループの経営不正疑惑などで1審で懲役4年を言い渡された父親の辛格浩(重光武雄)名誉会長は減刑され、懲役3年と罰金30億ウォンとなった。
裁判所は1審と同様に実刑を言い渡した一方、辛会長の健康状態を考慮して法廷拘束はしなかった。

ツエを手にして車椅子に乗ったまま法廷に入った辛名誉会長は自身の名前と年齢などを直接話したが、裁判所と円滑な意思疎通はできない姿だった。

ーーー

ロッテグループの企業内の不正事件で横領や背任などの罪に問われた同グループ会長の辛東彬(重光昭夫)被告ら創業者一族に対する判決公判が2017年12月にソウル中央地裁であった。

2015年ごろまで経営の実権を握った創業者が、会社の資金を横領し、内縁の妻やその娘らに実態に見合わない多額の報酬を払ったほか、系列映画館の売店運営権を親族の会社に渡し、グループに損失を与えたとし、横領と背任の主犯と認定し、懲役4年と罰金35億ウォンを命じたが、収監は見送った。

辛東彬・会長については、経済的利益を受けていないとする一方、犯行を黙認した責任を指摘した。「たとえ父の言うことを拒否できないと言っても、犯行の実現過程での役割は無視できない」と指摘し、 懲役1年8カ月、執行猶予2年とした。この時点では、執行猶予のため、勤務を続けた。

多額報酬に絡み横領の罪に問われた長男の辛東主被告は無罪だった。

検察側と被告側はそれぞれ控訴した。

もう一つは、辛東彬(重光昭夫)会長の朴槿恵前大統領の事件に絡む裁判である。

免税店事業認可に絡み、朴槿恵被告の要請で「Kスポーツ財団」に70億ウォンを賄賂として提供したとして贈賄罪で在宅起訴された辛東彬(重光昭夫)会長に対し、ソウル中央地裁は2018年2月13日、懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。

会長は上記の裁判で懲役1年8カ月、執行猶予2年の判決を受けており、今回の有罪で執行猶予が無効となって収監された。懲役は合計4年2か月となる。

2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑 

会長は控訴した。

控訴審は2つの裁判を併合して行われた。

辛東彬(重光昭夫)会長については、裁判長は次のように判断した。

まず、原則論として、「被告人が財閥グループのトップである点や、裁判の結果が企業や経済全般に影響を及ぼす可能性がある点が裁判に影響してはならず、考慮すべき事情でもないと思う」と述べた。

そのうえで、グループの経営不正事件については、ロッテシネマの売店の独占運営権を親族の経営企業に与え、背任罪に問われたことについて、一審と同様に有罪とした。
ただ、勤務実態のない親族に給与を支給し、横領罪に問われたことに関しては「(父で創業者の)辛格浩(重光武雄)総括会長の指示で給与が支給されることを容認したとしても、共謀したとはいえない」として、無罪とした。

国政介入事件での贈賄罪については、「Kスポーツ財団」に70億ウォンを拠出したことを賄賂として認めた。
ただ、「朴大統領が先に要求して受動的に応じたが、応じない場合は企業活動全般に不利益を受ける恐れを感じるほどだった」として、「意思決定の自由が多少制限された状況で賄賂供与の責任を厳しく問うことは難しい」とした。
裁判所は、私益の追求など大統領が支援金を要求した目的を全く知らないまま、社会貢献として金銭を渡したという辛会長側の主張も受け入れた。

最終的に、懲役2年6月、執行猶予4年とし、保釈を認めた。

辛名誉会長については、1審と同様、トップ一家に無料給与を支給し、ロッテシネマ売店に営業利益を与えたなどの一部横領・背任疑惑を有罪と認定し、刑量を多少減軽した。

まとめると次の通りとなる。

  一審判決 二審判決
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) ① 懲役1年8カ月、執行猶予2年
懲役2年6月

計 
懲役4年2か月、執行猶予取消、収監
懲役2年6月、執行猶予4年、保釈
辛格浩(重光武雄)創業者(95) ①懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り 懲役3年と罰金30億ウォン 収監は見送り
辛東主(重光宏之)(63) ①無罪  



ペンス米副大統領は10月4日、11月の米中間選挙を控え、中国が政権交代をもくろみ、あらゆる手段を講じて米国に内政干渉していると非難した。また中国は南シナ海で無謀な行動を取っているとし、同海域での海洋進出の動きをけん制した。

副大統領は米シンクタンク、Hudson Instituteでの講演で「中国は政府全体で政治・経済・軍事的手段およびプロパガンダを駆使し、米国内で自国の影響力を強め、利益を得ようとしている」と言明。「さらに、これまで以上に積極的にこうした動きを強め、米国の政策や政治に影響力を及ぼし、干渉しようとしている」と批判した。

内容は以下の通りで、強烈である。

過去2年間、大統領は習近平首席と強い個人的関係を築いてきた。二人は核問題や北朝鮮問題など共通の関心事で協力してきた。

しかし、中国は政府をあげて、政治的、経済的、軍事的手段、プロパガンダを使って、米国での影響を強め、利益を増やそうとしている。

中国はまた、これまでより強力に、米国の国内政策や政治に干渉している。

過去17年で中国のGDPは9倍になり、世界第二の経済になった。
多くは米国の中国投資によるが、同時に中国は、自由でフェアな貿易に反する行動をとってきた。関税や、割当、通貨操作、技術移転の強制、知財の盗み、補助金、等々である。これらが中国の製造基盤となったが、相手国、特に米国の犠牲によるものだ。

中国の行動の結果、米国の昨年の3750億ドルもの対中貿易赤字となった。これは米国の貿易赤字の半分にもなる。

現在、中国は、「製造2025」計画を通じて、世界の最も先進的な技術、ロボット、バイオ、AIなどで90%を支配しようとしている。21世紀の世界経済を支配するため、どんな手段を使っても、米国の知的財産を取得するよう、官僚や企業に指令している。

米国の企業が中国で仕事をすることの見返りに企業秘密を渡すことを求めている。また、米国企業の成果を取得するため、米国企業の買収を進めている。最もひどいのは、中国の治安当局は先端軍事技術を使い、米国の技術の大規模窃盗を図っている。

中国は多額の軍事予算を使い、米国を西太平洋から追い出そうとしている。

尖閣諸島の近くを定期的にパトロールしており、南シナ海では人工島の軍事基地に対船・対空ミサイルを配置している。

今週には、米の駆逐艦 Decatur が南シナ海で航海の自由作戦を実施中に中国海軍が45ヤードにまで近寄ったため、衝突回避措置を取らざるを得なかった。しかし我々は、国際法で許される限り、飛行や航海を続ける。

米国は経済自由化で中国が米国や世界の偉大なパートナーになると思ったが、経済侵略を選び、軍事強化した。

中国が国民の自由拡大に動くと思ったが、逆で、自国民のコントロール、圧迫に Uターンした。例のない監視国家になった。

信仰の自由に関しても、中国のキリスト教、仏教、イスラム教を圧迫している。

中国は「借金外交」で影響力を広めている。アジア・アフリカから欧州、さらにはラテンアメリカにまで多額の融資を行い、その利益は圧倒的に中国に流れるようにしている。スリランカは借金が返せず、港を取り上げられた。間もなく中国の軍港となる。ベネズエラにも手を出した。

昨年だけでもラテンアメリカの3カ国に台湾と手を切るよう求めた。これは台湾海峡の安全を損なうこととなる。

これらはほんの例に過ぎない。

オバマ政権はこれを黙認していたが、現政権は異なる。強化した米国の力で権益を守る。

米国は最強の軍事力を持つ。核戦力も強化した。最先端の戦闘機、爆撃機を持つ。宇宙軍も創設する。サイバーの世界でも能力を強化し、敵対勢力に対抗する。

大統領の指令で、2500億ドルの中国製品に追加関税を課した。公正な互恵取引がなされないなら、更に倍増する。

中国の市場を苦しめる意図はないが、中国が公正な互恵貿易に戻るよう、求め続ける。

最もひどいのは、中国は米国民の考え方、2018年の中間選挙、2020年の大統領選挙に影響を与える過去に例のない努力を始めた。トランプ大統領のリーダーシップがうまく機能しているため、異なる大統領が就任することを望んでいる。

情報筋によると、「中国は米国の州や地方政府をターゲットにし、国と地方の分断を図っている。関税などを使い、北京の政治的影響を広めようとしている。」

情報網やプロパガンダを使い、中国のやり方についての米国民の見方を変えようとしている。中国の事業を続けたいという願いを利用し、ビジネスリーダーに米国の貿易政策を非難させている。
中間選挙で影響の大きい地方の製品の関税を引き上げた。Des Moines Register に宣伝を載せ、一般国民に影響を与えようとした。

しかし米国民は騙されない。トランプ大統領の成果であるUSMCA(旧 NAFTA) は米国の農民や製造業者にとって偉大な勝利である。

北京は中国内の米企業のJVの内部に「党組織」をつくることを求めている。台湾やチベット問題でも米企業に圧力をかけている。ハリウッドにも中国を好意的に扱うよう求めている。

中国共産党は米国や世界中に何十億ドルも使ってプロパガンダを行っている。米国のジャーナリストの中国人家族を脅したり、拘留したりしている。
中国人の米国留学生の団体を動かしている。アカデミアに金を出し、中国共産党を守る動きをさせている。

これらの動きはトランプ大統領の"America First" leadership を弱めようとするものだ。

しかし我々の中国へのメッセージは、「大統領は引き下がらない、米国民はゆるぎない、我々は安保と経済のため強くあり続ける」ということだ。

以下略


中国外交部(外務省)の華春瑩報道官は10月5日、米指導者によるいわれなき対中非難について「全く根拠のない、是非を混同したでっち上げだ」と指摘した。

この発言は中国の国内政策と対外政策に対して様々ないわれなき非難を加え、米国の内政と選挙に干渉していると中国を誹謗しており、全く根拠のない、是非を混同したでっち上げだ。中国側は断固として反対する。

中国国民は中国の特色ある社会主義に強い自信を持っている。これが中国の国情に合い、国家の富強と国民の幸福を実現する成功の道であることは、すでに歴史と現実が証明している。

中国の発展は主に中国国民全体の自らの勤勉な努力によるものであり、世界各国との互恵協力のおかげでもあるが、他者から与えられた施しや恵みでは断じてない。中国国民が中国の特色ある社会主義の道に沿って断固として揺るがず歩んで行き、さらに大きな成果を得るのを阻むことは誰にもできない。事実を歪曲しようとする者はみな、頭を無駄遣いするだけだ。

中国は終始変らずに平和的発展の道を歩み、平和共存五原則を基礎に各国との友好協力関係の発展に尽力し、人類運命共同体の構築を後押しする。

中国は他国の利益を犠牲にして自らの発展を図ることは断じてないが、自らの主権、安全、発展上の利益は断固として守る。

米側が中米間の正常な交流・協力を中国側による米国の内政と選挙への干渉と言いなすのは、極めてでたらめだ。中国はかねてから内政不干渉の原則を堅持しており、米国の内政と選挙に干渉することにも全く興味がない。何かというと他国の主権を侵害し、他国の内政に干渉し、他国の利益を損なっているのが一体どの国なのか、国際社会の目にはとうに明らかだ。中国に対するいかなる悪意ある誹謗も徒労だ。

中国の対米政策は一貫した、明確なものだ。われわれは米側と共に努力して、非衝突・非対立、相互尊重、協力・ウィンウィンを実現すべく尽力している。われわれは米側に対して、過ちを正し、いわれなき対中非難・誹謗を止め、中国側の利益と中米関係を損なうことを止め、中米関係の健全で安定した発展を実際の行動で維持するよう促す。

付記

王毅国務委員兼外相は10月8日、訪中したポンペオ米国務長官との会談で「米側に誤った言動をただちにやめるよう要求する」と抗議した。米国が貿易面で中国との緊張を高めているだけでなく「台湾問題で中国の権益を損なう行為をしたり、中国の内外政策に対するいわれのない非難をしたりしている」と強調。こうした米側の行動は「両国民の利益にまったく合致していない」と断じた。

ポンペオ長官は「米中の間には多くの問題で明らかな食い違いがある」とし、南シナ海、人権問題を含めて米中双方が一致しない分野について言及した。
そのうえで「米国は中国の発展に反対しないし、中国を封じ込める考えもない」と強調した。朝鮮半島問題で「中国の一貫した立場と非核化を推進するための重要な努力を称賛する」と述べ、引き続き協力を求めた。

これに対し王氏は「(朝鮮半島問題での)協力には健全で安定した2国間関係の支えが必要になる」と突き放したという。

日米首脳会談が9月26日夕(日本時間27日朝)ニューヨークで行われ、安倍首相とトランプ大統領が「日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods )」の交渉入りで合意した。

2018/9/27 日米、物品貿易協定交渉へ、交渉中は自動車追加関税回避

首相は記者会見で、「まさに物品貿易に関する交渉だ。これまで日本が結んできた包括的なFTAとは全く異なる」と説明した。
菅義偉官房長官も、「自由貿易協定(FTA)とは異なり、物品貿易に限定されるものであり、包括的なものではない」とした。

しかし、日米共同声明は次の通りとなっている。

日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。

上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

これはFTAそのものである。

更に、毎日新聞のコラムで知り、チェックすると、この共同声明は日米での協定の呼び名が異なる。

日本側:日米物品貿易協定(TAG)

米国側:United States-Japan Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services  (goodsは小文字)

米国側の表現では、「物品と、サービスを含む他の重要な分野に関する日米貿易協定」であり、「その後に他の貿易・投資の事項について交渉を行う」となっており、FTA交渉のうち、物品とサービス等について先行させるという意味になる。

米側発表には "TAG" の用語は使われていない。米側にとっては、FTA交渉である。

トランプ大統領とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表はFTA締結を目指すと発言した。

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WTOの規定によれば、TAGはFTAでないといけない。

TAGでは牛肉などの農林水産品について、「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること」としており、そこまでの関税引き下げを前提としている。そうでないと、米国が受け入れる筈がない。

WTO協定の基本原則の一つが最恵国待遇原則(Most Favoured Nation Treatment)であり、いずれかの国に与える最も有利な待遇を、他のすべての加盟国に対して与えなければならない 。

この原則の例外として認められているのはFTAの場合のみである。

米国に特恵的な関税引き下げをする以上、TAGは、仮に物品だけであっても、FTAでないといけないこととなる。

さもなければ、米国に認める関税引き下げをこれからFTA交渉をする他の全ての国に適用しないといけないこととなってしまう。

「FTAとは異なり、TAGである」とするのは、これまで、「米国にTPP復帰を求める、FTAはやらない」といってきた手前であろうが、姑息なやり方である。
最後まで「FTAでない」といっていると、WTO違反となってしまう。

日本は、米国が「農林水産品について,過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること」という日本の政府の立場を尊重するということで、「TAG」の交渉入りで合意したが、パーデュー米農務長官は早速、日本との農産品を巡る通商交渉で、日本がEUと結んだEPAや、TPPを上回る水準の市場開放を求める考えを示しており、この点でも懸念される。


なお、FTAの場合GATT 24条により、「実質的に全ての貿易について」関税を撤廃することとなっている。実際には90%程度以上とされている。

米国とEUは7月25日、関税引き下げに向け EUと協力することで合意した。

・自動車以外の工業製品について、関税ゼロ、非関税障壁ゼロ、補助金ゼロに向かい、協力する。
・この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わない。(米国の自動車追加関税を回避)

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ 

自動車を除外すると貿易の90%を下回るため、最終的には自動車を含めざるを得ないとされる。

三菱商事は10月2日、Shell、PETRONAS、PetroChina、韓国ガス公社 KOGASと共に、カナダ国ブリティッシュ・コロンビア州にて推進するLNGカナダプロジェクトに関する最終投資決定を行ったと発表した。

カナダ初の大型LNG事業となる。地理的にも日本に近いカナダに於いてアジアの主要LNG需要国と共に立ち上げる事業であり、日本を中心としたアジアの需要家にとって、カナダの豊富な天然ガスという新たなLNGの安定供給ソースが加わる。


本プロジェクトは年間1,400万トンの生産能力を持つ天然ガス液化設備を ブリティッシュ・コロンビア州キティマット
(バンクーバー北西650km)に建設し、2020年代中頃からアジアを中心にLNGを供給する事業となる。

原料ガスを独自に調達した上で、全長670kmのパイプラインを通じて天然ガス液化設備へ輸送し、産出されるLNGを持分比率に応じて引き取る。

天然ガス液化設備の総開発費は約140億米ドルを見込んでおり、三菱商事は持分比率である15%分の開発費を拠出し、LNG引取り(持分年間210万㌧)を行う。

付記 東京ガスは10月10日、このうち年間最大約60万トンを 2026年から13年間 購入する
基本合意書を締結したと発表した。日本への所要航海日数は10日程度。


また、三菱商事が石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて日本政府より支援を受け、ブリティッシュ・コロンビア州でCutbank Ridge Partnershipを通じて開発を推進するMontney事業より原料ガスを供給することで、カナダにおいて上流事業から中流事業に亘る一貫した天然ガスバリューチェーンを構築する。


三菱商事と
カナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2012年2月、British ColumbiaのCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発(Montney事業)で提携したと発表した。


   2012/2/21 三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加


本計画は、2012年に発表され、2016年に中断していた。計画内容は下記の通り。

2016/7 時点 今回
権益比率 シェル  50% 40%
三菱商事 15% 15%
Kogas  15% 5%
PetroChina 20% 15%
PETRONAS 25%
液化設備 600万トン/年x2=1,200万トン
将来2,400万トンに拡張可能性
700万トン×2=1,400万トン
生産開始 2020年代中頃
投資規模 120 億カナダ$  約140億米ドル

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2012年5月16日に、三菱商事、シェルカナダ、韓国ガス公社(Kogas)、PetroChinaのLNG輸出計画、「LNG Canada」構想が発表された。

2012/5/17 Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画 

カナダのNational Energy Board は2013年2月4日、この計画に輸出ライセンス (25年間で670百万トン) を与えた。

しかし、Shellは2016年7月12日、カナダ西海岸で進める大型のLNG Canada の最終的な投資決定の時期を、2016年末から無期限に遅らせると発表した。

予算の制約を含むグローバルな業界の課題から、最終の投資決定を行うのにもっと時間が必要との結論に達した。いつ最終決定をするかは現時点では言えないとする。
LNG Canada は魅力的なプロジェクトではあるが、Shellのグローバルな計画のなかで、他のプロジェクトに競合してやっていける必要があるとした。

LNG Canada のCEO は、世界の天然ガス価格の下落、特にアジアでの下落により、現時点では本計画は割高となった述べた。石油・ガス価格が回復することが必要とした。

2016/7/19 LNG Canada 計画、投資決定延期 


最近の価格状況は下記の通りで、Kitmatからの輸入は十分採算がとれるようになっており、再開を決めたと思われる。
(現状の輸入品は価格が原油価格ベーススライドで決められており、原油価格上昇で輸入価格も上がっている。カナダからの輸入品は比較的安定的な天然ガス市況スライドであり、十分競争力がある。)

Gulf Coastの場合、Henry Hub価格x1.15(口銭15%)+加工費3$+運賃3$、Kitmatの場合は、この数式で運賃を1.24$とした。

トランプ米政権は9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。

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メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している。

米国とカナダが進めていたNAFTA改定を巡る協議は、期限の8月31日中の合意には至らず、物別れに終わった。


トランプ政権は12月1日のメキシコの政権交代までに新協定の署名を終えたいとしており、トランプ大統領は、カナダとの合意のないまま、メキシコとのNAFTA改定案を11月下旬までに署名する意向であることを議会に正式通知した。

米国内法は議会が十分な審議を行えるよう、署名から90日前の通知を求めている。また、新協定文書を1カ月後に議会に送付することとなっている。

付記 3国は11月30日(メキシコ政権交代の前日)、「USMCA」に署名した。


カナダを含めた3カ国が新協定に合意し、新協定文書を9月末に議会に提出できるかどうかが焦点で、米国は、間に合わなければ、米国とメキシコだけの新協定を結ぶとして、カナダに妥協を迫っていた。

2018/9/3 米国とカナダのNAFTA再交渉、再協議へ  メキシコとの合意内容も記載

カナダとの交渉は難航した。

トランプ米大統領は9月26日の記者会見で、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡るカナダとの協議について「カナダの交渉スタイルに強い不満を持っている」と述べた。カナダのトルドー首相との会談を拒否したとも主張した。米政権は9月末までの合意を目指しているが、カナダは譲歩する姿勢をみせておらず、自動車に関税を課すと改めて圧力をかけた。

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期限ぎりぎりの9月30日に合意した。

NAFTA(North American Free Trade Agreement)の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。

"Free Trade"が名称から消えた。トランプ大統領は1994年に発効したNAFTAが米国の貿易赤字を膨らませて国内の雇用を奪った元凶だと批判し、名称変更を求めていた。

米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきた NAFTA 19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。

3カ国政府は11月末の署名をめざす。発効に向けては各国議会の批准手続きが焦点となる。米国は11月の中間選挙で選出された新議会が年明けに審議する見通しだ が、中間選挙の結果、上院・下院のいずれかで民主党が過半数を取れば、否決される可能性もある。

USTRは概要を発表した。

農業分野 Agriculture: Market Access and Dairy Outcomes of the USMC Agreement

カナダ乳製品の市場開放:米国のみに新しい関税割当

カナダの乳価クラスシステムの変更:問題となっていたClass 6(低価格な原料乳製品向け生乳 の支持価格)、Class 7(無脂乳固形の支持価格)の廃止

カナダのチキン、卵と卵製品、七面鳥の新しい関税割当

貿易に関する事項 Modernizing NAFTA into a 21st Century Trade Agreement

知財の規定

DIGITAL TRADEの規定

為替問題:Macroeconomic Policies and Exchange Rate Mattersの章

競争のための通貨切り下げや目標レートを決めることでの不公正な通貨政策をやめ、透明性を増やし責任あるメカニズムをとるとの high-standard のコミット 。

これまでに例のない規定で、マクロ経済と、為替の安定を強化する。

(通貨政策に関する項目を貿易協定に明記するのは異例。韓国とのFTA改正の付属書にもあるが、韓国側はFTAとは別だとしている。)

労働規定

トランプ大統領は米国の労働者に利益がでることを再交渉の目的とした。Labor obligation を協定のコアとする。

団体交渉の権利を認める法制(メキシコ)やILOが認める労働者の権利を尊重するなど。

自動車について、時給16ドル以上の地域での生産割合 40~45%とする。

環境規定:労働規定とともに協定のコアとする。

違法漁業を助ける補助金の禁止、鯨や海亀の保護、野生動植物の税関検査強化、大気浄化・海洋投棄ゴミの減・森林管理のサポートと環境評価手続きなど

製造を守るための貿易のリバランス Rebalancing Trade to Support Manufacturing

自動車のRules of origin

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%

付記 10月26日の日経は、現地生産する自動車について、エンジンや変速機といった主要部品を3カ国で生産するように義務付けていることが分かったと報じた。

下記の主要部品が1つでも域外製の場合、関税がゼロにならないという。日本や欧州の自動車メーカーの場合、主要部品を域外から持ち込んでいるモデルも多く、新たな設備投資や調達先の変更を迫られる可能性が出てきた。

商品市場のアクセス:非関税障壁、輸出入ライセンス

繊維:繊維とアパレル市場のサプライチェーンの強化

各分野のANNEX

自動車の数量規制については、上記の発表文にはなく、別文書で定められた。

カナダ、メキシコからの乗用車輸入にそれぞれ年260万台の数量枠を設け、枠内であれば高関税を課さない。
米国で人気が高い小型トラックは輸入制限の対象から外す。

自動車部品でもカナダに年324億ドル、メキシコに年1080億ドルの輸入枠を設ける。

カナダ メキシコ
自動車関税ゼロ 条件

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%

自動車関税ゼロ 限度 乗用車 年260万台
小型トラック 対象外
自動車部品関税ゼロ 年間324億ドル限度 年間1080億ドル限度

なお、ガット第 11条により原則として輸出入数量制限を行なうことを禁止されている。
   国際収支が著しく悪化している場合には,第 12条により最小限の輸入制限が認められる。
   途上国の場合には,第 18条によってより緩やかな条件で国際収支擁護のための輸入制限が行なえる。

日米自動車紛争で、日本は1981年に1980年実績から14万台減らした168万台という輸出枠を設定したが、自主規制という形をとった。


カナダ、メキシコでの
日本車の最近の状況は次の通り。

カナダ メキシコ
生産 対米輸出 生産 対米輸出
トヨタ 57万台 45万台 15万台 14万台
ホンダ 43万台 32万台 21万台 13万台
日産 80万台 35万台
マツダ 18万台 7万台
合計 100万台 77万台 133万台 69万台
関税無し限度     260万台 260万台

2017年のメキシコから米国への自動車輸出は約180万台だったが、現状ペースでは2021年にはこれに達する見込み。

限度を超えた場合、メーカー別に枠をどう割り当てるのかは決まっていない。日本企業が不利となる恐れもないではない。


協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。


トランプ米大統領は9月26日、 国連安全保障理事会の会合で「中国は私の政権に逆らい、11月の米中間選挙に介入しようとしている」と指摘した上で「中国は私やわれわれ(共和党)に勝利して欲しくない。私が貿易問題で中国に立ち向かった最初の大統領だからだ」と述べたうえで「介入も干渉もされるつもりはない」と警告した。


名指しで批判された中国は「不当な非難は受け入れられない」(王毅外相)と反発している。

トランプ大統領は中国による介入の具体的な証拠は示さなかったが、その後、記者団に「中国が(米中西部の)農業地帯を標的にしている」と語り、アイオワ州の新聞 Des Moines Register に中国が出した「記事型広告」の写真を自身のツイッターに掲載した。

China is actually placing propaganda ads in the Des Moines Register and other papers, made to look like news. That's because we are beating them on Trade, opening markets, and the farmers will make a fortune when this is over!


アイオワ州新聞大手のDes Moines Registerは9月23日、4ページにおよぶ記事を掲載した。「中国国営のChina Dailyが執筆、広告費用を負担した 。本紙は内容に関与しない。」との但書を付けている。

容は、最近のChina Dailyの記事の転載である。

1.メイン記事  「米中対決は貿易のメリットを破壊させる」という題で、副題は「貿易紛争は中国の輸入業者を南米に向かわせる」となっている。

これはChina Daily 2018/8/23 の記事 US tariffs threaten economic interdependence の転載で、副題は Trade row forces Chinese importers to look to South America である。

米国の大豆7万トンを積んだ貨物船が7月6日に大連港に到着した。しかしタッチの差で、高関税が課せられたという話で始まる。以下概要。

トランプ大統領が中国品に追加関税を課したため、中国も米国品に追加関税を課したもの。

中国は世界最大の大豆輸入国で、米国の輸出大豆の60%を輸入している。ブラジルに次ぐ。中国は昨年127億ドルの大豆を米国から輸入した。

米中貿易紛争で、中国の輸入業者はブラジル、アルゼンチン、ウルガイなどの南米に向かわざるを得ない。

農業貿易では中国と米国は極めて補完的だが、トランプ大統領の貿易戦争の結果、中国は他のパートナーを探さざるを得ず、そうなれば、米国の農家は中国での市場シェアを取り戻すのは難しくなる。

米中の補完関係は農業だけではない。Boeingは昨年、次の20年間で中国の航空会社が1.1兆ドル相当の7240機のコマーシャルジェットを購入すると予想した。今回中国は大型ジェットには追加関税を課さなかったが、事態が悪化すれば、そうはいかないだろう。 

これまで長年、米中は対話を続けてきた。しかしトランプはこれをぶち壊した。中国や他国に、時代遅れの301条を使ったり、national securityを口実にして、追加関税の脅しをかけている。

対中貿易赤字はミスリーディングで、iPhoneを例にとると、米国は中国からの輸入を1台300ドル以上と計算するが、部品を世界中から受入れ、中国は労務費10ドルを稼ぐだけである。
iPhoneだけで昨年の対中貿易赤字の4.4%、157億ドルと計算されている。

トランプは中国のせいで米国の雇用が失われたとするが、多くの経済学者は、米国の失業の原因は、中国やメキシコのせいではなく、オートメーションであるとしている。

オバマ政権とは相互投資協定を締結し、現在、約15万の雇用が中国の投資で支えられている。トランプ政権になって、相互投資の対話は中断した。

Yale Universityの Roach 教授は、中国の産業政策を米国が攻撃しているのについて、どの国でもやっていることだとして否定した。また、中国が外国企業が中国にJVを設立する際に知財の移転を強いているとの考えを否定している。

2.この記事の左の記事

2018/5/4 の記事 New book tells story of Xi's 'fun' days in Iowaの転載である。

アイオワ州のSarah Landeが書いた本 " Old Friends: The Xi Jinping - Iowa Story" を紹介し、彼女と周近平夫妻との永年の交流を描いている。


アイオワ州は1983年に河北省と姉妹州(省)となった。彼女は姉妹州組織の常務理事を務め、習近平の1985年の来訪時にアレンジをし、2012年の再訪時にも会い、直後に訪中して会っている。

他の紙面の記事の内容は不明だが、他に「中国は世界の良いお手本」を題とする記事や中国のカンフーなどの内容とされる

ーーー

Des Moines Registerの記事については、外国政府が貿易振興のため米国の新聞の広告スペースを購入することは広く行われており、国家情報機関が行う秘密の作戦とは異なる との報道もあるが、中国当局がアイオワ州の有権者を対象に広告を掲載したのは、11月の中間選挙が背景にあることが原因だとする報道もある。

トランプ大統領のやり方を猛烈に批判し、このままでは中国は南米から農産物を買うことになるとしている。

アイオワ州は農業が盛んで、大豆生産量は全米1位を誇っている。

また、アイオワ州は、米国のなかでも共和党と民主党が互角の戦いを展開する「スイング・ステート」として知られている。選挙のたびに勝利政党が変わるため、その動きが常に注目されている。11月の中間選挙でも再び激しい攻防戦が予想される。

中間選挙を控えたこの時期に、このような記事を掲載したのは、選挙介入と見られる可能性はある。

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トランプ米大統領は9月12日、米国の選挙に介入した外国人に制裁を科すことを可能にする大統領令に署名した。

Executive Order on Imposing Certain Sanctions in the Event of Foreign Interference in a United States Election

米国では2016年の大統領選挙をめぐり、ロシアがトランプ氏のため選挙戦に干渉したとの疑惑が持ち上がった。また、投票システムへのサイバー攻撃が試みられたほか、メディアやインターネット上で偽情報が拡散された 。

今回の大統領令はどちらの行為についても、実行者に金融制裁を科すための正式な手続きを設ける。

大統領令を発表したDan Coats国家情報長官は、11月6日の議会選挙が迫るなか、介入が「ロシアだけでなく、中国からも行われている兆候がある。またイラン、さらには北朝鮮にも潜在的な実行能力がある」と述べた。

2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の米連邦予算の法案が9月28日にトランプ大統領が署名し、成立した。

トランプ大統領がメキシコとの間の壁の建設費用を認めない場合に政府を閉鎖するとの脅しを続ける中、国防省等については正式予算、メキシコとの間の壁の建設を担当する国土安全保障省 等については12月7日までの「つなぎ予算」とする異例の形となった。

11月6日の中間選挙後に壁の問題での大統領と民主党の争いが再開されることとなる。

トランプ米大統領は9月6日、メキシコの壁建設予算を巡って政府機関が閉鎖される可能性は11月6日の中間選挙まで「おそらくない」との考えを示した。中間選挙に出馬する共和党候補に打撃を与える事態を望まないため、と理由を説明した。しかし、「選挙が終われば即座にするつもりだ」と発言した。

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米国では10月1日から新年度(2018/10~2019/9)が開始する。

問題はメキシコとの壁の予算である。

トランプ大統領は、壁建設費50億ドルの歳出予算を盛り込むことを求めている。

民主党はこれに反対しており、上院民主党はかねてから、国境の壁建設予算16億ドルなら支持する方針である。

上院可決には60票が必要であるが、共和党は51議席しか持たない。

トランプ大統領は7月29日のツイッターでこう述べた。民主党が壁を含むBorder Securityに賛成しなければ、政府を閉鎖する。

I would be willing to "shut down" government if the Democrats do not give us the votes for Border Security, which includes the Wall!
Must get rid of Lottery, Catch & Release etc. and finally go to system of Immigration based on MERIT! We need great people coming into our Country!

9月16日にも、「壁がなければ犯罪以外に何もない」と述べ、共和党に決断を求めている。

"When will Republican leadership learn that they are being played like a fiddle by the Democrats on Border Security and Building the Wall?
Without Borders, we don't have a country. With Open Borders, which the Democrats want, we have nothing but crime! Finish the Wall!"

壁の予算は 民主党の反対で通らない。そうなると、大統領は政府閉鎖を決める。

米議会の共和、民主両党は、政府機関閉鎖の回避を目指し、面白い案を考えた。

トランプ大統領も賛成する部分(国防省、労働省、教育省、保健福祉省などの予算)については正式予算を作成する。

壁の建設を担当する国土安全保障省や、国務省や商務省、司法省、科学関連省庁の予算については、正式予算ではなく、12月7日までのつなぎ予算とし、現行の予算水準を維持する。

これにより、11月6日の中間選挙までこの問題を棚上げにするというものである。

上院は9月18日、これを承認した。

共和党 民主党 無所属 合計
賛成 45 47 1 93
反対 6 1 7
合計 51 47 2 100

下院は9月26日、これを可決した。

共和党 民主党 合計
賛成 176 185 361
反対 56 5 61
棄権 3 3 6
合計 235 193 428

国防省予算は6065億ドルで、前年比で170億ドル増となっている。

労働省、教育省、保健福祉省は合計1780億ドルで、前年比で10億ドル増、政権の要求より110億ドル増となっている。政権は軍事費以外の増については反対しているが、民主党に軍事費予算を呑ませるための見返りである。

歳出予算は裁量的経費(Discretionary Spending)と義務的経費(Mandatory Spending)に分けられているが、裁量的経費の75%を決めたこととなる。

裁量的経費が75%だけとはいえ、年度開始前に決まったのは20年ぶり。

最近の状況は下記の通り。

大統領 当初
Obama
(2009/1~ 2017/1)

オバマ政権は成立以来、予算案と債務上限問題で苦しんだ。
本予算が期限に一度も通らず、それまでの支出のペースを維持する短期の暫定予算をつないだ。

背景については 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 

2012/10~
2013/9
暫定予算 2013年3月、政府機関の閉鎖回避のための年度末(9月30日)までの暫定予算案を承認
  2013/3/25 米議会が暫定予算可決
2013/10~
2014/9
暫定予算 17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖
  
2013/10/1 米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖

2014年1月16日に、2014年9月30日までの歳出法案を可決

2014/10~
2015/9
暫定予算 米上院本会議は12月13日深夜、2015年9月までの包括的歳出法案を可決した。
移民制度改革(不法移民の大量受け入れ)の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、2015年2月までとされた。
  
2014/12/18 米国、包括的歳出法案が可決するも、問題を残す
  2015/3/6 米、国土安保省の予算可決 
2015/10~
2016/9
暫定予算 米議会下院と上院は2015年12月18日、1兆1500億ドル規模の予算法案を可決した。
  2015/12/21 米議会、予算案を可決
2016/10~
2017/9
暫定予算 2016/12/10 米国議会、来年4月28日までの暫定予算を可決

米議会共和党と民主党は2017年4月30日夜、2017年9月末までの資金を手当てする約1兆ドル規模の予算案について合意した。

2017/10~
2018/9
Trump
(2017/1~
暫定予算 2018年3月23日の暫定予算期限が近づく中、共和・民主両党の議会トップ4人は3月21日夜、10月までの政府予算を手当てする歳出法案で合意した。
  
2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認

その後、つなぎ予算を延長したが、2018/1/19に4度目の延長に失敗、時間切れで政府機関の閉鎖
  2018/1/20 米政府機関、閉鎖 
  
2018/1/23 米国、政府機関閉鎖解除へ 
  2018/2/10 米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除
  2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認


スウェーデンのカロリンスカ医科大は10月1日、今年のノーベル医学生理学賞を、京都大の本庶佑特別教授(76)と、University of Texas MD Anderson Cancer CenterのJames Allison 博士(70)に贈ると発表した。

本庶氏は体内の異物を攻撃する免疫細胞の表面に、PD-1という免疫の働きを抑える分子を発見。この分子ががん細胞に対して働くのを妨げて、免疫ががんを攻撃し続けられるようにする画期的な薬オプジーボが小野薬品で開発され、複数の種類のがんで使われている。

日本のノーベル賞受賞は、2016年の医学生理学賞の大隅良典・東京工業大栄誉教授に続き26人目。

医学生理学賞は1987年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授、2012年の山中伸弥・京都大教授、2015年の大村智・北里大特別栄誉教授、2016年の大隅氏に続いて5人目。

授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)は受賞者で分ける。

James Allison 博士は、カリフォルニア大学バークレー校やハワード・ヒューズ医学研究所の研究者を経て、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター執行役員。

ヒトの免疫機能をめぐってT細胞やがん細胞の研究に専念し、1995年、T細胞の活動を抑える抑制性受容体のCTLA-4 を発見、自身の研究チームでCTLA-4の活性化を遮断する抗体の開発に取り組み、1996年にはマウスを使った動物実験でこの抗体が腫瘍の排除に役立つことが証明され、抗体製剤の開発に成功した。

「ヤーボイ」と名付けられた薬は、2011年に転移性皮膚がんの治療薬としてBristol-Myers Squibbから発売された。(提携する小野薬品も扱う)

ーーー

癌免疫薬は免疫チェックポイント阻害薬とよばれる。
(他に、自分のリンパ球を取り出し培養したうえで、活性化したリンパ球だけ、特にナチュラル・キラー細胞を戻すNK細胞投与がある。)

癌細胞には、免疫細胞攻撃を防止する「免疫チェックポイント」という仕組みがある。

1) 癌細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1 というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1 に結合すると、免疫細胞の働きが抑制される。

京都大学の本庶佑名誉教授が免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見した。

オプジーボは、その研究を基に「ゴールの見えないまま始めた研究から成果が出るまで20年以上かかった」(小野薬品)。

薬を作るには、PD-1分子の働きを邪魔する「抗体」が欠かせなかったが、小野薬品には抗体を作る技術がなかった。

その後、米ベンチャー企業 Medarexとの提携で「完全ヒト型抗PD-1 抗体」を入手でき、オプジーボが誕生した。

Bristol-Myers Squibbは2009年7月22日、Medarexを24億ドルで買収すると発表した。

日本、韓国、台湾以外はBristol-Myers Squibbが開発・商業化の権利を持つ。

2) 免疫細胞は、抗原提示細胞である樹状細胞から癌抗原の提示を受けると働きが活発になり、それを目印に癌細胞を攻撃するが、抗原提示を受ける際、免疫細胞のCTLA-4 に樹状細胞のB7というタンパク質が結合すると、逆に免疫細胞の働きが抑制され、癌細胞を攻撃できなくなる。


これらの「免疫チェックポイント」を阻害して、免疫細胞に癌細胞を攻撃させるのが、免疫チェックポイント阻害薬である。

機能 承認 開発中
抗PD-1抗体 免疫細胞のPD-1に結合し、PD-1と癌細胞のPD-L1の結合を防止 オプジーボ(小野薬品/Bristol-Myers Squibb)
キイトルーダ(米Merck)
抗PD-L1抗体 癌細胞のPD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の結合を防止 Roche/中外製薬
AstraZeneca
独Merck
/Pfyzer
抗CTLA-4抗体 免疫細胞のCTLA-4に結合し、CTLA-4と樹状細胞のB7の結合を防止 ヤーボイ(Bristol-Myers Squibb/小野薬品)
AstraZeneca



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付記 PD-1の発明経緯

小野薬品 社員を研究室に在籍させ、共同研究
1992年 研究室の大学院生 石田靖雅氏(現 奈良先端科学技術大学院准教授)が、細胞の自殺に関与する遺伝子の探索で、独自の遺伝子探索法でPD-1を発見。
細胞の自殺に関する遺伝子でないこと判明
1997 PD-1が働かなくしたマウスに関節リウマチの症状、免疫にブレーキをかける役割を持つとの推定。本庶氏「良い薬になる可能性」の直感
大学院生 岩井佳子氏(現日本医科大教授)らの研究で、皮膚がんの悪性黒色腫をマウスの肝臓に移植、PD-1を効かなくしたマウスの肝臓は白いまま。
「癌に効くかもしれない」
→ヒトのPD-1の働きを阻害する抗体を開発
小野薬品には抗体を作る技術なし。日本の企業は関心を示さず。
本庶氏が自ら話を持ち掛け、米ベンチャー企業 Medarexとの提携で「完全ヒト型抗PD-1 抗体」を入手でき、オプジーボが誕生 
2009 Bristol-Myers SquibbがMedarexを買収

                                   


東レ・カーボンマジックと科学技術振興機構、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)は9月28日、新素材「しなやかなタフポリマー」を活用した革新的コンセプトカーが完成したと発表した。

内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」に「超薄膜化・強靭化 『しなやかなタフポリマー』の実現 」プログラムがある。

ここで創出した「しなやかなタフポリマー」を、自動車を始めとする輸送機器の構造材や構成部品に適用することにより、軽量性・機能性・安全性・信頼性を飛躍的に向上させる可能性を検証することを目的として、それらの材料をふんだんに活用し、適用の効果を具現化した電気自動車(EV)のコンセプトカー"I toP "(Iron to Polymer) をつくったもの。

車両の樹脂化を従来比約4倍の47% まで進めた。

樹脂製の大きなサイドウインドや透明ルーフとフロントウインドの一体化など、これまでにないフォルムと空力を両立させつつ、革新的な一体成形モノコック構造ボディ・フレーム(重量140kg 、一般的な金属製モノコックの約半分)により、強度・剛性にも優れた衝突安全構造を実現した。

さらに、サスペンション・スプリング・ホイールなどの足回り部品にも炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を適用したことで、大幅な軽量化(車両重量850kg、軽量化率38%)を達成することができた。

その結果、製造工程も含めた10万km 走行時点での温室効果ガス(GHG)排出量が、従来素材の鉄、ガラス、タイヤなどで作った場合と比べて11% 低減できる可能性が示された。

伊藤耕三 東大教授は「自動車の重さが半分になれば燃料も半分でいい。開発した樹脂やプラスチックが普及すれば、自然環境に対して絶大な効果が期待できる。課題はコストで、量産化するなどして乗り越えていきたい」と述べた。

ーーー

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」を主導している。

究極的な目的を「イノベーションに最も適した国」「起業、創業の精神に満ちあふれた国」の実現とし、それを成功に導くために、「非連続イノベーションの創出」と「イノベーション創出の行動モデルの提示」を目標とする。

構想を実現するため、トップクラスの研究開発力を結集し、研究開発プログラム全体を統率して機動的なマネジメントを実施しながら、ハイリスク・ハイインパクトな研究開発に取り組み、非連続イノベーションの創出にチャレンジする。

16の研究開発プログラムがあり、その一つが、東大の伊藤耕三教授がリーダーの「超薄膜化・強靭化 『しなやかなタフポリマー』の実現 」である。


超薄膜化・強靭化 「しなやかなタフポリマー」

人類の発明した素材で最も用途が広いとも言われる便利なポリマー。しかし、薄くすると壊れやすく、厚く硬くすると脆くなる性質が課題でした。

本プログラムは、従来の限界を超える薄膜化と強靱化を同時に達成する「しなやかなタフポリマー」の実現を目指します。

タフネス性・柔軟性・自己修復性(熱や光で元に戻る)という特徴をもつタフポリマーは、自動車部品や輸送機器を飛躍的に向上させるブレークスルーにつながります。さらに高分子材料が利用される産業全般に広い波及効果が期待され、将来的に安全・安心・低環境負荷という社会的ニーズに貢献します。

体制は次の通り。

「燃料電池電解質膜薄膜化プロジェクト」において、燃料電池を構成するフッ素系の電解質膜を対象に、従来トレードオフの関係にあった薄膜化と高水準の機械的耐久性とを両立させるという難しい課題に挑戦している。

AGC(旧称 旭硝子)が有するフッ素系ポリマー技術と、大学などによる膜の構造解析技術やシミュレーション技術との連携により、ポリマーの化学構造に遡って検討を重ね、機械的耐久性を向上する上で最適な物性を有する膜の具現化に成功した結果、従来膜の1/5の厚さにおいて5倍以上の乾湿サイクル耐久性を示すという、従来は考えられなかった特性を実現した。

「Li電池セパレーター薄膜化プロジェクト」において、リチウムイオン電池のセパレーターを構成するPP系多孔質フィルムを対象に、従来技術では両立が困難であった薄膜化と高強度化を両立させるという課題の解決を目指している。

三菱ケミカルが培ってきた独自の材料技術と、学術機関による膜の高次構造解析技術やシミュレーション技術との連携により、多孔質フィルムを高強度化する上で最適な細孔構造などに関する指針の構築とその実現に成功した。その結果、PP系多孔質フィルムを1/3の厚みにしても突刺し強度が落ちないという、従来技術では不可能であった特性を達成した。

これは、多孔質フィルムをタフ化する新たな材料設計指針の確立につながるとともに、リチウムイオン電池の高容量化を実現可能な画期的成果と言える。

「車体構造用樹脂強靭化プロジェクト」において、ポリマー材料への環動ポリマー構造の導入により、高剛性と高靭性を高水準で両立した車体構造用材料を開発している。

東レが保有するナノアロイ®技術の活用や学術機関との種々の連携を通して、環動ポリマー構造をCFRPのマトリックス樹脂中にナノメートルオーダーで均一に分散させることに成功した結果、強度、剛性を保ちながら一般的なCFRPと比較し約3倍の耐疲労特性を実現した。

「タイヤ薄ゲージ化プロジェクト」において、タイヤを構成する各種部材を強靭化し薄くすることで、タイヤの省資源化および軽量化、並びに低燃費性能の向上を目指している。

これまで、亀裂進展挙動の本質を明らかにすることで、ゴム材料における高速き裂進展を大幅に抑制する高強度化を達成した。

北海道大学がタフポリマー化の手法として提唱するダブルネットワーク構造をゴム材料に導入することにより、さらなる高強度化とともに、従来トレードオフの関係にあった低燃費性能の向上との両立に成功した。これは、ゴム材料においてもダブルネットワーク構造がタフポリマー化に有効であることを実証するとともに、タイヤとしての実用化を目指す上でも極めて重要な成果と言える。

「透明樹脂強靭化プロジェクト」において、代表的な透明樹脂であるPMMAを対象に、高透明性を維持したまま、従来トレードオフの関係にあった高剛性と高タフネスを高水準で両立させるという非常に難しい課題に取り組んでいる。

住友化学が有する各種材料技術と、アカデミアによる破壊に関する分析・解析技術やシミュレーション技術との連携により、分子レベルでの高次構造制御に成功した結果、高透明性と高剛性を保ったまま、従来の10倍以上の耐衝撃性を実現した。これは、タフポリマー化のための新たな材料設計指針を示唆するとともに、自動車の前面窓やルーフを樹脂製に変える可能性を示す画期的な成果と言える。

その後、タフポリマーの材料開発プロジェクトに続き、「コンセプトカー製作プロジェクト」がスタート した。

「しなやかなタフポリマー」の社会実装や新しい価値創造の可能性をクルマで示す目的で、上記5つの材料開発プロジェクトの各種研究開発成果を適用して、実用性・安全性を備えた未来車のプロトタイプ(コンセプトカー)の製作に取り組んできた。

タフネスをもたらす原理を具体的部材に落とし込んだ。

部材 担当
ゲル 電解質膜 燃料電池セパレータ AGC
多孔性樹脂膜 LIBセパレータ 三菱樹脂
エラストマー タイヤ ブリヂストン
結晶性樹脂 車体用樹脂 東レ
非晶性樹脂 透明樹脂 住友化学

極限まで樹脂化を進めたコンセプトカー"I toP "の特徴的な研究・開発内容は次の通り。

(1)スタイリングデザインと空力

外観形状は、しなやかさとタフさをテーマにボディ全体を樹脂化することでのみ成立するデザインコンセプトを具現化している。

連続的な曲面からなる面構成、大きなグラスエリアとドア開口、独立したフロントフェンダー、カバーされたリアホイールなど、未来感覚のスタイリングと省エネルギー化に貢献する優れた空力性能を両立している。

(2)モノコックボディ

軽量性と高剛性、さらには耐衝突性能の観点から、車両のフレームは外板ボディを兼ねたモノコック構造を採用、下図部分を一体成形品として構築した。炭素繊維と熱硬化性樹脂からなる複合材の優れた物性と相まって、コンセプトの成立に大きく貢献している。

重量は、一般的な金属製モノコックフレームの300kgから140kgへと50% 以上の低減を果たしている。

(3)サスペンション

従来、樹脂化が困難とされてきたサスペンション部品にも、今回開発された環動ポリマー構造を導入したCFRPを用いることで、求められる性能や機能が達成され適用に至った。

(4)窓材料

本プログラムで開発された高剛性・高タフネス性を両立した透明樹脂をウインドガラスに適用した。これによりガラス部材の軽量化が見込めるとともに衝撃を受けた際の耐破断性が増すことで、飛来物の貫通や破片の飛散防止など安全性向上に効果が期待される。

(5)タイヤ・ホイール

今回のプログラムで創出された革新的なゴム素材を用いた専用タイヤを装着している。摩耗性の向上はタイヤ材料の省資源化に貢献するとともに、5%と推算される転がり抵抗と幅狭・大径化による低空気抵抗は、省エネルギーに直結する。

またホイールは、サスペンション部品同様に環動ポリマー構造を導入したCFRPを用いることで、耐衝撃特性が改善されており、タイヤを含めたバネ下回転部位の軽量化は、車両全体の性能向上に大きく寄与している。

(6)クラッシュボックス

環動ポリマー構造を導入したポリアミドとグラスファイバーの複合材からなる衝撃吸収体を側部および前部に配している。複合材化することで軽量化を実現してる。

(7)バッテリーパック

EVシステムのリチウムイオン2次電池モジュールを収めるボックスおよびそのベース部材もCFRP化し、軽量化(約30%)と耐衝撃性向上を図っている。

(8)インテリア

インテリアパネルの大半をCFRP化し、モノコックフレームやドア構造の一部とすることで、効率の良い車体剛性確保と軽量化に貢献している。またシート構造部材を、環動ポリマー構造を導入したCFRP製とすることで、軽量化に加え靭性に優れた薄肉シートシェル構造を採用することができた。

(9)その他の特徴

前席1名・後席2名の乗員配置、収納可能なフロントシートやツインレバー式ステアリングは、将来の完全自動運転を意識したものであり、後部に着席する乗員の快適性を追求している。

またドアの開閉から運転に関わる操作・情報モニターに至るまで、スマートフォンとタブレット型PCを用いるシステムを採用している。

さらに、大きく前上方に開く電動アシスト付きドア(重量35kg/片側)は、モノコックボディ同様の材質と構造を持ち軽量化が達成されたことで成立している。

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