2018年12月アーカイブ

米議会上院の与野党は12月21日午後8時30分に、新たなつなぎ予算案を可決することなく22日正午まで休会に入った。 国土安全保障省、司法省、住宅都市開発省など、連邦政府の約4分の1にあたる機関では 12月22日午前0時1分に予算が失効した。

上院共和党は、下院が議決した「国境の壁」費用として57億ドルを盛り込んだ2019年2月8日までのつなぎ予算を通そうとしたが、民主党は壁の予算は一切認めないとしている。

2018/12/21 米政府機関 一部閉鎖の恐れ 


上下両院は12月27日、政府閉鎖を終わらせることなく数分で閉会した。 多くの議員がワシントンに戻らず、この日の審議を欠席した。米議会は12月31日に再開されるが採決の予定はなく、来年1月1日は休会となる。閉鎖解除が年明けにずれ込むのは確実な情勢である。

ホワイトハウスは声明で「民主党は米国民でなく不法移民を守るために、政府閉鎖の継続を選んだ」と糾弾、それに対し民主党の上院議員はツイッターで、「無駄遣いで効果のない50億ドルの壁建設という言語道断の要求のため、トランプ氏は政府を人質に取っている」と応酬し、大統領と民主党が責任を押し付け合う構図となっている。

トランプ大統領は12月24日、ツイッターで ぼやいた。


I am all alone (poor me) in the White House waiting for the Democrats to come back and make a deal on desperately needed Border Security.
At some point the Democrats not wanting to make a deal will cost our Country more money than the Border Wall we are all talking about. Crazy!

12月29日には、 「野党は大統領いじめに忙しい」と述べた。

I am in the White House waiting for the Democrats to come on over and make a deal on Border Security.
From what I hear, they are spending so much time on Presidential Harassment that they have little time left for things like stopping crime and our military!

付記

トランプ大統領は1月1日のツイッターで、3日からの新議会で下院議長に就く予定の民主党のNancy Pelosi 院内総務に対し、「壁建設費や政府閉鎖の問題で下院議長の任期を始めたくないだろう! 取引をしようか?」と述べた。

Border Security and the Wall "thing" and Shutdown is not where Nancy Pelosi wanted to start her tenure as Speaker! Let's make a deal?


現議会は1月2日正午までとなり、11月の中間選挙で選出された新議員が同日宣誓して就任する。

上院は共和党勝利だが、60票には満たない。下院は野党民主党が過半数を獲得。

  共和 民主 欠員 未確定
上院

任期6年
1/3ずつ改選

体制 51 47+2#     100
新体制 53 45+2#     100
 
下院

任期2年
過半数は218

体制 235 193 7   435
新体制 199 235   1 435


上院民主党の # 印は民主党系無所属(Vermont州のBernard Sanders とMaine 州のAngus King 議員)

下院ノースカロライナ州第9選挙区は共和党勝利となっていたが、不正投票の疑いがあり、未確定、再投票の可能性も。 


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2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の米連邦予算は異例のものとなっている。

トランプ大統領は、壁建設費50億ドルの歳出予算を盛り込むことを求めているが、民主党はこれに反対しており、上院民主党はかねてから、国境の壁建設予算16億ドルなら支持する方針である。

トランプ大統領は7月29日のツイッターで、「民主党が壁を含むBorder Securityに賛成しなければ、政府を閉鎖する」と述べた。

米議会の共和、民主両党は、政府機関閉鎖の回避を目指し、面白い案を考えた。

トランプ大統領も賛成する部分(国防省、労働省、教育省、保健福祉省などの予算)については正式予算を作成する。

壁の建設を担当する国土安全保障省や、国務省や商務省、司法省、科学関連省庁の予算については、11月6日の中間選挙の結果を待つこととし、正式予算ではなく、12月7日までのつなぎ予算とし、現行の予算水準を維持する。

2018/10/2 米国、10月からの政府閉鎖回避

1980年以降の政府機関の閉鎖は次の通り。


2013/10/1 米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖

2018/1/20 米政府機関、閉鎖 
  
2018/1/23 米国、政府機関閉鎖解除へ 
2018/2/10 米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除

付記 2019年1月12日、一部閉鎖は22日目に入り、これまでの最長(21日)を超えた。

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2018年中間選挙で下院の1議席(North Carolina 州 第9選挙区)が未定となっている。

投票結果は次の通りで、共和党候補が僅差で勝利した。

Mark Harris (共和党) 139,246
Dan McCreay (民主党) 138,341
905

しかし、共和党候補者の側に不正投票があることが明らかになり、調査が始まった。

次の点が報道されている。

  • 第9選挙区のうちの2つの地区で異常に多くの不在者投票の要求があった。多くが実際には投票がなかった。
  • 選挙民の数人が宣誓書で、身元不明の女性が自宅を訪問し、不在者投票表を回収したと述べた。代わりに出しておくからと言って回収した。不在者投票表はサインも封もしていない。
  • 来訪した女性がLisa Brittであったとする選挙民がいる。彼女は共和党候補の選挙事務所で不在者投票を担当するLeslie McCrae Dowless Jr.の養女である。
  • Britt ともう一人の Dowlessの親戚Jessica Dowlessは選挙期間中に事務所でDowless のために働いたと述べている。
  • 彼らに不在者投票表を渡した選挙民は実際に投票していない。

 しかし、次の点は不明である。

  • 投票がなかった不在者投票分が実際にどう処理されたのか?
  • Harris候補の陣営が Dowlessの行動を知っていたのか?
  • 異常な活動は2地区だけなのか、他の地区でも疑いがあるのか?


共和党のMark Harris候補は12月28日、選挙結果を認めるよう緊急要請書を提出したが、North Carolina 州の選挙管理委員会は、その直後、9区の結果を決めることなしに解散した。
12月1日付でHarris側に資料提出命令を出したが、ごく一部しか提出しなかったとしている。何度も提出すると言いながら、提出しなかったとする。

民主党は2019年1月3日にMark Harris候補が議員として宣誓するのに反対するとしている。

あとは、裁判所が選挙結果を認めるかどうかとなる。再選挙の可能性もある。


  


中国電力とJFEスチールが共同出資した「千葉パワー」は12月27日、千葉市のJFEスチール東日本製鉄所構内で計画していた石炭火力発電所「蘇我火力発電所」の建設を中止すると発表した。

両社は2016年11月、特別目的会社を設立のうえ共同で石炭火力発電所開発に関する検討に着手することに合意したと発表した。

計画内容は次の通りで、関東地域における中長期的な電力の安定供給確保に貢献するとともに、地域経済の活性化にも寄与するとした。

建設予定地 千葉市 JFEスチール東日本製鉄所構内
発電方式 超々臨界圧(USC)発電方式
出力 約107万kW
主燃料 石炭
運転開始 2024年(予定)

2017年4月3日、中国電力 73%、JFEスチール 27% 出資で千葉パワーが設立された。

発電所は2020年着工、2024年運転開始を目指して2016年から環境影響評価の手続きに着手し、詳細設計を進めていたが、今回、本計画は十分な事業性が見込めないと判断したことから検討を中止することとしたとしている。

今後は建設費が比較的安く、石炭火力に比べてCO2排出量が少ないLNGを燃料とする火力発電所の建設を検討する。

本建設計画については付近住民らでつくる「蘇我石炭火力発電所計画を考える会」が反対運動を展開している。

2017年3月には環境省が、「パリ協定」での 2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減するという目標を達成できない恐れがあるとして、自主的な計画撤回を求める意見書を提出していた。

付記 

出光興産、九州電力、ならびに東京ガスは1月31日、千葉県袖ケ浦市にある出光興産所有地を活用した千葉袖ケ浦エナジーの石炭火力発電所の共同開発を断念すると発表した。

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環境省は2015年に、多くの石炭火力計画に対し、「現段階では是認できない」とする環境影響評価(アセスメント)の意見を経済産業省に提出した。

2015/11/18 環境省、千葉と秋田の石炭火力計画も是認せず

その後、環境省は経産省との合意をもとに、2016年2月に石炭火力の新設を容認した。

2016/2/11 環境省、石炭火力発電所の建設を容認 

環境省は2017年3月10日、「(仮称)蘇我火力発電所建設計画に係る計画段階環境配慮書」に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。事業実施の再検討も選択肢とするよう求めている。
山本環境相は上記の合意を維持するとしつつ、「事業リスクが極めて高いことを自覚してほしい」と述べ、自主的な計画撤回に期待感をにじませた。

内容は次の通り。

パリ協定の目標達成のため「石炭火力の稼働を是認できなくなるおそれもある」

本事業者においては、石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、2030 年及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2 排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することが重要である。

経産省に対しては、省エネ法に基づくベンチマーク指標の2030 年度目標の確実な遵守及び道筋の検討、共同実施の評価の明確化、自主的枠組みの実効性・透明性の向上及び参加事業者の拡大、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた適切な運用、引き続き、CCS 導入に向けた一層の取組を進めること。

「パリ協定」で、日本は2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減する目標を掲げるが、石炭火力の新増設計画が2017年2月現在で約1940万キロワット分に上り、達成できないおそれがある。

2017/3/16 環境省、千葉の石炭火力発電所計画の再検討求める 

ExxonMobilはこのたび、カナダの子会社の Imperial Oil Resourcesと共同で進めてきたBritish Columbia州でのWCC LNG計画について正式に環境アセスメントから撤退し、事業の中止を決めた。
慎重に検討した結果としているだけで、理由を明らかにしていない。

2015年の計画発表後、 これまでに手続きを何度も延期し、2017年11月には計画を遅らせると発表し、Prince Rupert 事務所を閉じていた。

Imperialは2017年第4四半期決算で、Exxonとの50/50JVの Horn River シェールガス開発計画中止で289百万ドルの減損処理を行っていた。 中止理由として、投資の相対的な競争力の評価を含む多くの要素の結果としている。これに伴うLNG計画中止と見られる。

WCC LNG 計画は、ExxonMobilと同社が69.6%出資するカナダ第二の石油会社 Imperial Oil Resourcesが進めてきた計画で、カナダのBritish Columbia 州 Prince Rupert 市のTuck Inlet に250億ドルを投じてLNG輸出基地を建設するもの。

天然ガスの既存パイプラインからの接続パイプラインと、液化設備、貯蔵設備、船積み設備を建設するもので、LNGの 能力は年間1500万トンで、最終3000万トンに拡張する計画であった。



             完成予想図


10月2日に、
三菱商事、Shell、PETRONAS、PetroChina、
韓国ガス公社 KOGASが共同で近くのKitimatでのカナダで最初のLNGプロジェクトに関する最終投資決定を行ったと発表した 直後である。

2018/10/5 三菱商事、LNGカナダプロジェクトに最終投資決定

一時はカナダ西海岸に20件ものLNG計画があったが、実現は1件だけとなり、業界にショックを与えている。

国際石油開発帝石は12月26日、豪州の沖合WA-44-L鉱区のPrelude FLNG Project が生産井からのガス生産を開始したと発表した。

西豪州ブルーム市の北北東約475キロメートルの沖合に位置するPrelude ガス田及びConcerto ガス田を開発し、洋上液化施設(FLNG船)にてガスを分離・液化する、同社にとっては初のFLNGプロジェクト。

井戸から生産されたガスは、FLNG船にて液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、コンデンセートに分離・液化処理された後、順次FLNG船から直接タンカーに船積みして出荷される。

国際石油開発帝石(Inpex)は2012年3月、Shell が西豪州沖合WA-44-L鉱区にて開発中のPrelude FLNGプロジェクトの17.5%の権益を取得することで合意したと発表した。

権益比率

Shell (Operator) 67.5%
国際石油開発帝石 17.5%
KOGAS (韓国) 10.0%
OPIC (台湾) CPC子会社 5.0%

生産能力

LNG 360万トン/年
LPG 40万トン/年
コンデンセート 130万トン/年

国際石油帝石 LNG販売先

JERA
(東京電力/中部電力JV)
56万トン
静岡ガス 7万トン
合計(持分17.5%) 63万トン

  2012/3/23 国際石油開発帝石、豪プレリュードFLNGプロジェクトの権益取得 

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国際石油帝石は、WA-44-L鉱区に隣接するIchthys LNGプロジェクトに62.245%出資し、オペレーターとなっている。

同社は10月31日、オペレーターとして操業を行なっている イクシスIchthysLNGプロジェクトより初めて出荷されたLNGを輸送するLNG船が、同日朝、同社の「直江津LNG基地」に入港したと発表した。

2018/11/3  イクシスLNGプロジェクトからのLNG第一船入港 

同社はまた、両プロジェクトの北東のインドネシアで、大型海底ガス田Abadi LNG を開発している。

同社はインドネシア政府の公開入札により、マセラ鉱区の100%権益を取得し、2000年に掘削した試掘第1号井によりバディガス田を発見した。

2010年12月に第一次として LNG年産250万トンをFLNG方式で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。

2013年6月にINPEXが65%(オペレーター)、Shell 35% の体制となった。

その後、インドネシア政府は2016年3月23日、LNG設備を陸上に建設すべきだとする政府方針を決定した。

このため、2018年3月より、年産950万トン規模を想定する陸上LNGの概念設計作業(Pre-FEED)を実施している。

2016/3/29 国際石油開発帝石、インドネシア政府方針でLNG計画を大幅変更へ

国際石油開発帝石では、イクシスLNGプロジェクト、アバディLNGプロジェクトをはじめ、国内外で需要が高まるクリーンエネルギーとしての天然ガス(LNGを含む)事業に多数参画しており、「ビジョン2040」で掲げた事業目標の一つである、アジア・オセアニアを中心とした地域でガス開発・供給の主要プレイヤーになることを目指しているとしている。

BPは12月21日、モーリタニア・セネガル沖の Greater Tortue Ahmeyim LNG開発計画の第一期の最終投資計画(FID) についてパートナーと合意に達したと発表した。

モーリタニアとセネガル両政府、Kosmos Energy、セネガル国営石油会社 Petrosen、モーリタニア国営炭化水素公社 SMHPM とBPが合意した。


両国の沖合のMSGBC海底盆地では、2014年以降、中小探鉱会社による探鉱が進み、北セネガル沖で原油が、北セネガル・モーリタニア沖で天然ガスが発見された。メジャーも関心を示し、2016年にBP、2017年にTotalが参入した。

両国の海洋国境線にまたがる海域では、米国のKosmos Energyが探鉱を行ってきたが、2015年にガス層が発見された。

JOGMEC モーリタニア・セネガル沖開発へ メジャーズ参入

Greater Tortue Ahmeyim 計画では、ultra-deepwater subsea system でガスを採集、FPSO(浮体式生産貯蔵積出設備) で重質分を取り除き、国境の海岸近くの浮体式LNG生産施設に移される。

浮体式LNG生産施設の能力は年間約250万トン。LNGは世界中に輸出されるとともに、両国の国内用としても使用される。

今後、手続きを進め、2019年第1四半期には計画を実施、2022年に生産を開始する予定。Phase 1のガスは BP Gas Marketing が独占購入者に選ばれた。


中国財政部は12月24日、2019年の輸出入の関税調整計画を発表した。


財政部関税局は今回の関税調整計画による輸入関税引き下げについて、習近平国家主席が11月に上海市で開かれた「中国国際輸入博覧会」の開幕式の演説で示した対外開放拡大の方針に沿ったものだと説明した。
習主席は演説の中で、関税引き下げなどを通じて今後15年間で中国のモノの輸入は30兆米ドル以上になるとの見通しを語っていた。

1) 2019年1月1日より、自動車生産ライン向け産業ロボットなど706品目で現行の最恵国税率よりも低い暫定税率が適用される。

税率引き下げ は菜種かすや医薬品原料、石油製品、毛皮、航空機エンジン、ウランなど多岐にわたる。

中国は7月に米国産大豆に25%の追加関税を発動し、輸入が実質的に停止した。(12月に一部再開したが、関税は変わらず。)この結果、家畜の飼料に使われる大豆かすも影響を受け、価格が上がっている。このため、家畜飼料用のヒマワリや菜種を含むミール(かす)の輸入関税を廃止する。代替品の輸入を増やし、農家の負担を軽減するのが狙いとみられる。

一部医薬品の原材料に対する輸入関税も撤廃される。

粉ミルクの関税を12%からゼロにするほか、ウイスキーは10%から5%に、ディーゼル油は6%から1%に引き下げる。国内航空機産業の発展を促すため、航空機エンジンの関税率は1%と、低い水準に維持するとした。 自動車の組み立てラインで使われる溶接ロボットは5%に下げる。

附1  进口商品暂定税率表.pdf  (#がついているものは、7月からも引き下げ)

2019年7月からは電子・IT製品に対する通算4回目の減税も実施する。医療診断装置やスピーカー、プリンターなど幅広く、298品目が対象となる。

附2  部分信息技术产品最惠国税率表.pdf

2) 関税割当

小麦、羊毛等の8品目については、引き続き関税割り当てを続ける。税率は変えない。

附3 关税配额商品税目税率表.pdf

3) FTA締結国からの輸入

FTAとAsia-Pacific Trade Agreement 締結国からの輸入関税も引き下げられる。

New Zealand、Peru、Costa Rica、Switzerland、Iceland、South Korea、Australia、Georgia  及びAsia-Pacific Trade Agreement 締結国

香港、マカオ両特別行政区政府と結ぶ経済・貿易関係緊密化協定(CEPA)の枠組みによるゼロ関税品目も拡大する。

附5  进一步降税的进口商品协定税率表(另附).pdf

4) 輸出税

輸出関税も94品目を対象に1月1日から撤廃する。品目は化学肥料、燐灰石、鉄鉱砂、スラグ、コールタール、木材パルプなど。

附4  出口商品税率表.pdf

BPとアゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR:State Oil Company of Azerbaijan Republic) は12月20日、トルコでワールドスケールの石油化学コンプレックスを建設・運営するJVの設立を検討するための覚書 (HoA) を締結したと発表した。

トルコ西部のAliagaに建設するもので、年産34万トンのベンゼン、84万トンのパラキシレン、125万トンのTPAを生産する計画で、2013年のスタートを目指す。

立地は、SOCARのトルコ子会社が51%を所有するPetkim Petrochemicls の敷地内で、原料はPetkim Petrochemicls と同社が建設中の STAR Refinery から供給を受ける。

既存の石化コンプレックスと新設の製油所、インフラと統合することで、建設費が大幅に節減できると期待している。

BPの最新技術を使用する。

Petkim Petrochemicls Complex )

トルコの石油化学進出は1962年に決められ、1965年にPETKIM Petrokimya Holding が設立された。
1972年から76年にかけて
Yarimca Complex でSM、PS、SBR、LDPE等がスタート、次いで Aliaga Complexでエチレンからのコンプレックスが1985年以降スタートした。
(その後、Yarimcaは老朽化で閉鎖された)

トルコ政府は2007年7月、国営石化会社Petkem民営化のため株式の51%の入札を実施した。

10月に入り、首相を含む Higher Privatization Council は2,040百万ドルで2位で入札したSocar-Turcas-Injaz joint investment group を売却先に決めた。

2007/11/6 トルコの国営石化会社 Petkim 売却で逆転劇

売却先に決まった Socar-Turcas-Injaz joint investment group はアゼルバイジャンの石油会社Socar、カザフスタンのKazmunaigaz 、トルコの石油会社Turcas Petroleum とサウジの Injaz Projects のコンソーシアムであったが、最終的に51%を取得したのはSOCAR & Turcas Consortiumであった。

Groupはこの時点で新しい製油所 STAR Refinery の建設を決め、Petkimの立地の一部を割り当てた。2010年に建設のライセンスを取得した。

2011年にTurcas Petroleumが撤退、Socarが51%株主となった。現在、同社はIstanbul 株式市場に上場され、残り49%は一般株主が所有する。

STAR Refinery)

現在、建設中で、原油処理能力は10百万トン。建設費60億ドルで、間もなく完成する。


Petkim Petrochemicls Complex の製品と能力は下記の通り。
(千トン)


米最高裁は12月21日、国境を不法に越えた中南米などの人々による難民申請を制限する大統領令について、その効力を停止した司法判断に対するトランプ大統領の差し止め請求を却下した。

当面は不法に入国した人々も、これまで通り難民申請ができることになる。


トランプ大統領が、大統領の決定を裁判所が差し止めたのを批判したのに対して、最高裁長官が異例の抗議を行い、それに対して大統領が更に反論するという異例の事態となった。

トランプ大統領は11月9日、「キャラバン」と呼ばれる移民集団を念頭に、難民申請の手続きに関する規則を変更し、メキシコ国境では入国前に検問所だけで受け付け、検問所を通らず国境を越えた不法移民の難民申請は受け付けないとする大統領令に署名した。合法的な難民申請に対する審査も厳格化する見通し。

大統領は、不法入国者が米国内で捕まった後、本国で迫害を受ける恐れがあると訴えて難民申請をした後、行方が分からなくなるケースが増えていると指摘。「外国籍の人がいったん米国に入国すると、退去させるのは難しい。巨大な移民集団を今すぐ取り除くことに失敗すれば、さらなる不法移民集団が我が国に押し寄せる」と強調した。

これに対し、アメリカ自由人権協会(ACLU)は同日、「いかなる所でも難民申請はできる」と反発し、大統領令を無効にするよう裁判所に提訴した。

カリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁は11月19日、この大統領令について、移民法に違反するとして一時的に差し止める仮処分命令を出した。仮処分命令は次回審理が予定されている12月19日までのもので、即時、全米で有効とした。延長の可能性もある。

判事は、1965年に改正された移民国籍法では、米国に到着した外国人は誰でも、正規の入国地点からであるか否かにかかわらず難民申請が可能としていると指摘、今回の規則は、移民国籍法および連邦議会が表明した意図と相いれない矛盾があると述べた。

これに対し、サンダース大統領報道官は11月20日、「移民制度を管理する行政府の権限への干渉だ」と非難する声明を出した。その上で、政府方針を堅持するため「必要なあらゆる行動を取る」と争う姿勢を示した。

トランプ大統領は22日、地裁判事を"Obama Judge"と呼び批判した。

「重大な苦情("a major complaint")を申し立てる。これはオバマ判事だ。こんなことは再び起こさせない。最高裁で勝つ」と述べた。「我々はいつも第9巡回裁判所では勝つことができないし、これは不名誉だと思う」とも述べた。

2018/11/27 米最高裁長官がトランプ大統領に異例の抗議  "Obama Judge"

サンフランシスコ連邦地裁の11月19日の判決に対し、政府は控訴した。しかし、サンフランシスコの連邦高裁は12月7日、これを退けた。

トランプ政権は12月11日、連邦最高裁判所に緊急上訴した。

連邦地裁は12月19日、当初の同日までの仮処分を延長した。)


米連邦最高裁は12月21日、米国への難民申請の権利を制限するトランプ政権の大統領令を一時差し止めた地裁命令について、支持する判断を下した。

現在、最高裁判事9人は保守派5人、リベラル派4人の構成だが、今回、保守派のロバーツ長官 が差し止め支持に回り、賛成5人、反対4人で差し止め支持となった。

当面は不法に入国した人々も、これまで通り難民申請ができることになる。

現在の最高裁の構成は次の通り。

性別 年齢 人種背景 指名した大統領 就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 70歳 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Ruth Bader Ginsburg 女性 85歳 ユダヤ系 Bill Clinton 1993年8月10日 リベラル
Stephen Breyer 男性 80歳 ユダヤ系 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  長官 男性 63歳 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 68歳 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 64歳 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 58歳 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 51歳 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 53歳 白人系 2018年10月6日 保守

2016年に Scalia 判事が死去するまでは、リベラル派が4人、保守派が4人で、保守系中道のKennedy判事が「スイングボート」として、判決を左右してきた。

保守派 Kennedy
保守系中道
(swing)
リベラル派
以前 4 ← 1 → 4
2016 Scalia 判事死去 3 ← 1 → 4
2017 Gorsuch 就任 4 ← 1 → 4
2018 Kennedy 引退、Kavanaugh指名 5 4

トランプ大統領は10月のKavanaugh判事の就任で保守派を5人とし、最高裁で思い通りの判決を獲得できるとみていたが、Roberts 長官が差し止め支持に回り、思惑が外れた。


なお、リベラル派の
Ginsburg 判事は高齢で、体調が悪く、職務を続けられない事態となる可能性がある。その場合、トランプ大統領が保守派判事を指名するのは必至。

11月7日に最高裁の執務室で転倒して肋骨が3本折れ、首都ワシントン市内の病院に入院した。9日に退院した。

12月21日 (上記の判決後)、ニューヨーク市内の病院で左肺からがん性の小結節 2つを取り除く手術を受けたと発表した。術後の経過は良好で、数日間安静に過ごした後に退院する見通し。今後、追加治療を行う計画もない。

付記 12月25日に退院し、自宅療養。


三井物産がロシアのガス大手 Novatek との間で北極圏のArctic LNG 計画への出資を協議していることが分かった。日本経済新聞が12月22日に報じた。ロイターも同日、三井物産、ロシア政府出資のファンドのRussian Direct Investment Fund (RDIF)及びサウジのSaudi Aramcoが出資交渉をしていると報じた。

Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov(Utrennye) ガス田等を供給源とするもの。

Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200~210億ドルとみている。
能力は660万トン×3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。

現在は、Novatek が90%、フランスのTotal が10%を出資するが、Novatekはこのうち60%分を維持し、30%を他社に譲渡する考え。場合によっては、30%以上を譲渡することもあり得るが、事業のコントロールのため50%以下はあり得ないとしている。(Yamal LNG は51%)

TotalとNovatekは2009年からTermokarstovoyeガス田(地図の⑩)を共同で開発、2015年5月に生産を開始した。
この関係もあり、Yamal LNG とArctic LNGに出資している。

購入希望は多く、既に中国のCNPCや日本(三井物産か?)や韓国の企業と交渉したとされる。

本年10月にサウジのエネルギー相がSaudi Aramco の出資の可能性に言及した。

エネルギー相は2017年12月にYamal LNG の第一船積み込み式典に主賓として招かれており、2018年2月にはNovatek とAramcoの間で天然ガス計画に関する国際的協力(LNG供給、LNG市場開発、ガス探査・製造計画、R&D を含む)についての覚書を締結している。

Russian Direct Investment Fund (RDIF)は資金100億ドルのロシア政府出資のファンドで、世界の有力ファンドとともにロシアの有望企業に直接出資をしている。


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Yamal LNG はYamal半島のSouth (Yuzhno) Tambey ガス田を開発し、液化してLNGにする。

2017年12月5日、LNGの生産を開始した。

液化設備は550万トンx 3系列の合計年間1650万トン。LNG基地を含む投資額は270億ドルとされる。

日揮がフランスのTechnipと共同で、このLNGプラント新設プロジェクトの有償見積りおよび詳細設計役務等を受注している。

2013/4/8  日揮、ロシアのヤマルLNGプラントの詳細設計役務等を受注

LNGの売却先は、Total、CNPCとスペインのGas Natural Fenosa。

Novatekは2015年9月3日、プーチン大統領と習近平主席の見守るなか、中国のシルクロード基金(絲路基金にYamal LNG 計画の持分 9.9% を譲渡する基本契約書を締結した。

これにより、Yamal LNG計画の出資比率は下記のようになった。

  従来 2015/9  
Novatek 60% 50.1%  
Total 20% 20.0% 2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出
CNPC 20% 20.0% 2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了
絲路基金 - 9.9% 2015/9/14 中国のシルクロード基金がヤマルLNG計画に出資   

同地に多機能海港のSabetta港が建設され、LNG、石油、天然ガス・コンデンセートを輸出する拠点港になる。

韓国の大宇造船は2014年7月8日、 大宇造船海洋カナダ、中国、日本の海運会社と、Yamal ProjectのLNGを輸送するための17万立方メートル級ARC7 砕氷LNG船9隻に対する受注契約を締結したと発表した。

最大氷厚2.1mの氷海において単独砕氷航行可能な仕様となっており、ヤマル半島サベッタ港のYamal LNG基地から、通年にわたり世界各地への輸送に従事するが、夏季には北極海航路を経由して東アジア向けに運航される。

2014/7/15 大宇造船、砕氷LNG運搬船9隻を28億ドルで受注


付記

三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結した。

付記 2019/9/5 最終投資決断を発表した。

出資比率はJOGMECが75%、三井物産が25%。

三菱商事は参画を断念した。

Aramcoが出資交渉中との報道もあったが、これは消えたこととなる。

Novatek 60%
Total 10%
CNODC 10%
CNOOC 10%
三井/JOGMEC 10%

トランプ米大統領と習近平中国・国家主席は12月1日、G20出席のため訪問中のBuenos Airesで首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めた。
米国は、2000億ドル分の中国製品について、2019年1月1日に追加関税を25%に引き上げるのを止め、当面 10%に留める。

両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内に結論を得ることで合意した。

中国との協議で合意できなかった場合、制裁関税を2019年3月2日に引き上げる。

トランプ大統領は対中協議の責任者に、政権きっての対中強硬派のLighthizer USTR代表を指名した。

米中が2019年1月に会合を開き、通商を巡る合意を文書化する意向だが、3月1日の期限までに米中が妥協策を見いだせるかが焦点となる。


日本経済新聞(2018/12/23)は、「 米中協議 『合意は険しい』 中国産業政策 全面転換迫る」と題して、ホワイトハウスのPeter Navarro通商製造業政策局長とのインタビューを掲載している。

Peter NavarroはUniversity of California, Irvine の経済学・公共政策学の教授だが、トランプの大統領選キャンペーンの政策アドバイザーに就任、2016年12月にトランプ次期大統領の指名を受け、新設のホワイトハウス国家通商会議の委員長に就任した。

2017年4月に、ホワイトハウスは国家通商会議を廃止し、通商製造業政策局(OTMP)を新設したが、Navarro はそのトップになった。

OTMPは貿易や製造業に関する政策について大統領に助言するほか、ホワイトハウスと商務省など通商関連官庁との調整や、米国製品の購入や米国人の雇用を促す政策の支援も担当する。OTMPの設置は、「米国の製造業や国防の基盤が損なわれるなか、米国はもはや不正な貿易は容認しないという重要なメッセージだ」とされる。

Navarro は、『中国がもたらす死(Death by China:Confronting the Dragon - A Global Call to Action』を出版、2012年にこれをもとにしたドキュメンタリー映画を監督・プロデュースした。

中国がWTOに加盟し、米中間で自由貿易が開始されて以降、アメリカ国民やアメリカ経済がいかに被害を受けたかが描かれている。アメリカからは工場と仕事が消え、製造業の拠点もなくなっていく。その一方、中国はますますアメリカ国債を所有する......。アメリカが抱える問題の深刻さを、データやインタビューを通じて生々しく描写。


2018年6月19日にNavarroが率いる OTMPは「
How China's Economic Aggression Threatens the Technologies and Intellectual Property of the United States and the World (中国の経済的攻撃はいかに米国と世界の技術と知的財産を脅かしているか)」と題する報告書を発表した。

今回、Peter Navarroはインタビューで、この報告書を引用して、次のように述べている。

報告書で明確に指摘しているのは、中国による米企業への技術移転の強要であり、サイバー攻撃であり、長年にわたるスパイ活動への懸念だ。製造業や先端技術などすべての中国産業を守るため、高率の関税を課し(許認可などの)非関税障壁もある。

どのように中国が我々の技術を追いかけて、日本や米国、欧州の将来を盗もうとしているか。この解決が2019年3月1日までの90日間の交渉の主題だ。

サイバー攻撃や為替操作など中国が関与している50の慣行がある。これらのすべてがWTOルールに違反する不公正政策だ。90日間の交渉が成功と言えるようになるのは、これらのすべての問題に対処しなければいけない。90日での解決は険しい。


中国の政策や慣行をすべて改めないと駄目ということでは、解決は無理と思われる。

中国も、部分的には政策や慣行を改めようとしてはいる。

全人民常務委員会は12月23日、外資投資を保護する外商投資法案の審議を始めた。

法案の内容
 「技術協力の条件は双方の協議で決め、行政手段で強制してはならない」
 「外国投資家の中国での出資、利潤、資本収益などは法に基づいて人民元や外資で自由に海外送金できる」

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中国の最高人民法院(最高裁)は、2019年1月から知的財産権を巡る紛争を専門に解決する専門部門「知的財産権法廷」の運営を始める。習指導部は最高裁の専門部門設置で保護強化をアピールする。

知財紛争を巡っては、主要16都市の地裁に知財を専門に扱う部門「知的財産権法廷」があり、北京、上海、広州に知財専門裁判所がある。国際的に影響が大きい複雑な案件が増えていることなどから、最高裁の新設部門は上訴された案件の審理を手掛ける。

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上記のOTMPの報告書では、中国が知的財産を盗み、米国の経済と国家安全保障を脅かす産業政策を追求しているとして厳しく批判している。

中国の目覚ましい経済成長は「世界的な規範・規則を逸脱する攻撃的な行動や政策、慣行を通じて成し遂げられた部分が大きい」とする。

さらに「中国経済の規模と、市場をゆがめる政策の程度を踏まえると、中国の経済的攻撃は今や、米経済だけでなく世界経済全体を脅かしている」と指摘する。

「企業の部内者や企業秘密および極秘の企業情報への信頼されたアクセスを持つ者による経済スパイを通じた物理的な窃盗が、米国の技術や知的財産を手に入れる重要な手段を中国にもたらした」と非難している。

内容は次の通り。

 中国の狙い

国内市場保護:Protect China's Home Market From Importsand Competition
世界シェアの拡大:Expand China's Share of Global Markets
重要天然資源の囲い込み・支配:Secure and Control Core Natural Resources Globally
製造業の支配:Dominate Traditional Manufacturing Industries
キイとなる技術・知財の取得:Acquire Key Technologies and Intellectual Property From Other Countries, Including the United States
先端産業育成:Capture the Emerging High-Technology Industries that will drive Future Economic Growth and Many Advancements in the Defense Industry

 中国の技術・知財取得のやり方 (それぞれについて詳述している。)

1. 窃盗:Physical Theft and Cyber-Enabled Theft of Technologies and IP
Physical Theft of Technologies and IP Through Economic Espionage
Cyber-Enabled Espionage and Theft
Evasion of U.S. Export Control Laws
Counterfeiting and Piracy
Reverse Engineering
2. 強制・規制:Coercive and Intrusive Regulatory Gambits
Foreign Ownership Restrictions
Adverse Administrative Approvals and Licensing Requirements
Discriminatory Patent and Other IP Rights Restrictions
Security Reviews Force Technology and IP Transfers
Secure and Controllable Technology Standards
Data Localization Mandates
Burdensome and Intrusive Testing
Discriminatory Catalogues and Lists
Government Procurement Restrictions
Indigenous Technology Standards That Deviate From International Norms
Forced Research and Development
Antimonopoly Law Extortion
Expert Review Panels Force Disclosure of Proprietary Information
Chinese Communist Party Co-opts Corporate Governance
Placement of Chinese Employees with Foreign Joint Ventures
3. 経済的強制:Economic Coercion
Export Restraints Restrict Access to Raw Materials
Monopsony Purchasing Power
4. 情報収集:Information Harvesting
Open Source Collection of Science and Technology Information
Chinese Nationals in U.S. as Non-Traditional Information Collectors
Recruitment of Science, Technology, Business, and Finance Talent
5. 国営企業による技術獲得のための投資:State-Sponsored, Technology-Seeking Investment
Chinese State Actors Involved in Technology-Seeking FDI
Chinese Investment Vehicles Used to Acquire and Transfer U.S. Technologies and IP
  ・Mergers and Acquisitions
 ・Greenfield Investments
 ・Seed and Venture Funding


発表に際し、日経の記事の図表の元(
中国が関与している50の慣行)が示された。

駐カナダ中国大使The Globe and Mail 紙に12月13日付で投稿した。
タイトルは、"
On China, has Canada lost its sense of justice?"

概要:

Huaweiは、グローバルな事業は現地の法や規制に厳格に従っていることを公的に何度も表明している。しかし、Five Eyes countries (米、英、豪、NZ、加)の諸国は、何の証拠もなく、Huaweiが彼らの国家の安全を脅かす存在であると非難している。そのような推測をもとに、恐怖の種を撒き、国民をミスリードしている。

5カ国の諜報機関(Five Eyes:アメリカ国家安全保障局、英政府通信本部、カナダ通信保安局、豪 参謀本部国防信号局、NZ 政府通信保安局)はUKUSA協定を結び、世界中に張り巡らせたSIGINTの設備や盗聴情報を相互利用・共同利用する為に協定を結んでいる。

もしHuaweiの通信機器がセキュリティー上のリスクになるというのであれば、西側のメーカーの通信機器も、同じ科学と技術を使用しているため、同様である。

しかし米国は、2017年6月28日に中国で施行された「国家情報法」を懸念する。この第7条は「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」と明記する。

誰が他国のセキュリティーにとっての最大脅威になっているかを知りたければ、アメリカのPRISM program(国家安全保障局が運営する極秘の通信監視プログラム)を調べてみればよい。中国のHuaweiを非難する人々は自分たちの姿を鏡でよく見るべきなのだ。

多くの人々が古い「冷戦思考」を持ち続けており、中国のことを「異常な国」だと信じ込んでいる、という事実に行き着く。彼らは中国が西洋諸国にあまりにも急速に追いついてしまい、経済だけでなく、科学やテクノロジーの面でもすぐに追い越すことを恐れている。だからこそ彼らは中国企業を取り締り、国家の安全という名の下に中国の発展を妨害するのだ。

カナダはカナダの法律違反ではないのに不当に孟女史を拘束した。カナダ政府は米国への国際的義務と主張するが、中国国民の法的権利を保護する国際義務はどうなのだ。彼女はバンクーバー国際空港で乗り換えをしただけなのに逮捕された。

中国が孟女史の逮捕の報復として拘束したと非難している人々は、まず最初にカナダ側がとった行動についてよく考えてみるべきだ。

中国国民はカナダに対して以前は好意的な印象をもっていたが、今回のカナダ政府の行動は、それを冷やした。

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中国外務省の華春瑩報道官は12月17日の記者会見で、米国の要請でカナダ当局がHuaweiの孟晩舟副会長を逮捕した事件に関し、米国とカナダの両当局は国際法に違反していると指摘した。

報道官は「米国とカナダが引き続き法律と規則の遵守を主張していることに驚愕している」と述べ、「私の見解からすれば、これは他でもない新バージョンの帝国主義である。彼らがどれほどもったいぶった口実を使い、どれほど『合法的』な服で隠していたとしても、これは事実とは一切無関係であり、法律を軽視しており、これは国際社会に嘲笑されている」と指摘した。

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国際シンクタンク The International Crisis Groupは12月11日、同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官、Michael Kovrig氏が中国で拘束されたとの情報が入ったことを明らかにした。

カナダ外務省は12月13日、カナダ人実業家 Michael Spavor氏が中国の国家安全保障に脅威を与えた疑いで中国当局に拘束されたことを認めた。

カナダ外務省報道官は12月19日、3人目のカナダ人の拘束を確認したが、Huawei に対する捜査への報復との見方は示しておらず、事件との関連は不明。


付記 カナダ外務省は12月28日、3人目のカナダ人女性が中国で釈放され、カナダに帰国したと明らかにした。

  中国で英語を教えていたが、不法就労の疑いがあるとして中国当局に拘束された。

米国では2019会計年度(18年10月~19年9月)の一部予算が通っておらず、つなぎ予算が12月21日までとなっている。

2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の米連邦予算の法案が9月28日にトランプ大統領が署名し、成立した。

トランプ大統領がメキシコとの間の壁の建設費用を認めない場合に政府を閉鎖するとの脅しを続ける中、国防省等については正式予算、メキシコとの間の壁の建設を担当する国土安全保障省等については12月7日までの「つなぎ予算」とする異例の形となった。

当初のつなぎ予算期限の12月7日、トランプ米大統領は12月21日までの歳出を可能にする「つなぎ予算」に署名し、成立した。両院が前日に議決していた。

ブッシュ元大統領の死去(11/30)を受けて国境の壁の議論を先送りした。

問題は「国境の壁」建設費用で、トランプ大統領は、壁建設費50億ドルの歳出予算を盛り込むことを求めているが、上院民主党はかねてから、国境の壁建設予算16億ドルなら支持する方針である。

今回も決着せず、上院は12月19日、2019年2月8日までの「つなぎ予算」を可決した。国境の壁建設費用は含んでいない。

これに対し、トランプ米大統領は12月20日、与党・共和党幹部に対し、「国境の壁」建設費用が計上されていない予算案に署名しない方針を伝えた。

これを受け、下院は同日、「国境の壁」費用として57億ドルを盛り込んだ2019年2月8日までのつなぎ予算を217対185で可決した。与党共和党から8人が反対に廻った。

しかし、これが上院で通るメドは立っていない。可決には60票が必要で、現在は共和党議員は51名で、可決には民主党の賛成票が欠かせない。


21日までに予算が成立しなければ、一部の政府機関が閉鎖するリスクがある。

国境警備を担う国土安全保障省や国務省、商務省などの予算が一時的に失効する。航空管制や入国審査、沿岸警備、司法捜査など国家運営に関わる業務は、職員が一時的に無給で勤務を続ける。国立公園は閉鎖される可能性がある。

付記

米議会上院の与野党は12月21日午後8時30分に、新たなつなぎ予算案を可決することなく22日正午まで休会に入った。

国土安全保障省、司法省、住宅都市開発省など、連邦政府の約4分の1にあたる機関では午前0時に予算が失効した。

ただ、上院は休会前に、一時帰休となる連邦政府職員への給与を保証する法案を通過させた。可決は全会一致だったが、下院でも可決する必要がある。

上院共和党は、下院が議決した「国境の壁」費用として57億ドルを盛り込んだ2019年2月8日までのつなぎ予算を通そうとしたが、民主党は壁の予算は一切認めないとし た。

閉鎖がいつまで続くか不明で、トランプ大統領は"for a very long time" と述べた。

上院は22日午後に審議を再開したが予算成立の見込みが乏しいため、クリスマス後の27日午後に審議を再開することを決めた。下院も与野党が予算案で合意するまで審議しない方針を決めた。

付記 トランプ大統領は12月24日、ツイッターで ぼやいた。

I am all alone (poor me) in the White House waiting for the Democrats to come back and make a deal on desperately needed Border Security.

At some point the Democrats not wanting to make a deal will cost our Country more money than the Border Wall we are all talking about. Crazy!

 

製薬世界大手の英 GlaxoSmithKline(GSK)と米 Pfizerは12月19日、一般用医薬品(大衆薬)事業を統合すると発表した。
合弁会社を設立し、GSKが68%、Pfizerが32%出資する。


統合会社は売上高は98億ポンド(約1兆4000億円)で、Johnson & Johnsonを上回り世界最大の大衆薬メーカーになる。市場シェアは7.3%に達し(2位のJ&J は4.1%)、米国と中国を含む主要地域の全てで1位か2位の市場シェアを持つこととなる。

GSKは統合完了から3年以内に新会社の株式を英国で上場させ、医療用医薬品・ワクチン 事業に専念する

GSKの大衆薬事業は歯磨きのSensodyne(日本名シュミテクト)や抗炎症剤Voltaren、非ピリン抗炎症剤・鎮痛解熱剤Panadol(日本名 カロナール) などが主力製品で、2017年12月期の部門売上高は71億ポンド(約1兆円)だった。

Pfizerの大衆薬は痛み止めAdvil(アドビル)や、サプリメント製品のCentrum やCaltrate などを手掛けている。2017年12月期の部門売上高は34億ドル(約3800億円)だった。

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Pfizerは2012年から、特許で保護された製品を扱うPfizer Innovative Health と、低成長のジェネリック製品を扱うPfizer Essential Health を分割して別々の企業として上場する案を検討してきた。

しかし、2016年9月 に会社分割を見送ると発表した。

2016/10/4 Pfizer、会社分割を見送り 

2017年10月に売上高全体の1割未満にとどまる消費者向け事業切り離す方針を表明し、これまでに米日用品大手 Procter and Gambleなどが買い手に取り沙汰されていた。価値が200億ドル相当と評価され、英国の日用品メーカー Reckitt Benckiserが交渉したが撤退、GSKも名乗りを上げたが、応札プロセスから撤退した。


Pfizerは、スピンオフ(分離・独立)、売却その他の取引を含む戦略的代替案あるいは部門保持を検討していると述べ、2017年内に決定を下す予定だとしていた。

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GSKは2014年4月に、Novartisとの間で事業交換を行った。

抗がん剤製品群をNovartis に譲渡する一方、Novartisの大衆薬事業を統合し、GSK主体のJVとした。
更にNovartisのインフルエンザ以外のワクチン事業を買収した。

2014/4/25 Novartis、GSKとの取引等で事業再編

GSKは2018年3月末に、Novartisとの大衆薬事業JVの持分を130億ドルで 買収し、GSK 100%とした。

今回、Pfizerとの統合で規模をさらに引き上げて収益力を高める。22年までに年間5億ポンド規模のコストを削減できると見込んでいる。

GSKの狙いは医療用医薬品やワクチンの開発力強化にある。
大衆薬はファイザーとの統合で収益力を引き上げる一方、将来的にはこれを切り離し、その売却収入を 医療用医薬品やワクチンのR&D拡充などに注ぎ込む構想。

GSKは12月3日には米がん治療薬ベンチャーのTESARO Inc を総額51億ドルで買収すると発表し、新薬開発に注力する戦略を鮮明にした。

TESARO はがん治療薬であるポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬「ZEJULA™」(一般名 niraparib)を持つ。米国において2017年4月に発売され、米国では卵巣がんの患者に直近で最も処方されているPARP阻害薬の一つ。米国のほか、欧州でも承認されている。


武田薬品とTESAROは2017年7月、「ZEJULA™」(一般名 niraparib)について、独占的開発・販売に関するライセンス契約を締結した。武田薬品は日本におけるniraparibに関する全てのがんに関して、また、韓国、台湾、ロシア、オーストラリアにおける前立腺がんを除く全てのがんに関して独占的開発・販売権を獲得した。


フランスのフィリップ首相は12月16日、仏メディアのインタビューで、2019年の財政赤字の対GDP比率がEUの定める上限の3%を突破し、約3.2%になるとの見通しを示した。

EUがイタリアに対し、GDP比2.4%の赤字を引き下げるよう、制裁金の可能性まで示して強く求めているなかで、フランスに対してどのような対応をするか注目され た。
欧州委員会は12月19日、イタリアが再提出した修正予算案(赤字幅を縮小)を承認した。制裁を見送り、監視を継続する。


フランスの財政赤字はリーマン・ショックがあった2008年から2016年まで、9年度連続でEU基準(上限3%)を上回っていた。2017年就任のマクロン大統領は公約の一つに財政再建を掲げ、2017~19年と3年連続でGDP比3%以内を守る見通しだった。2017年は2.6%の赤字であった。

フランス財務省は本年4月10日、経済成長率が従来予想を上回る中、財政赤字削減が計画より早いペースで進むとの見通しを示した。

欧州委員会に提出する長期財政計画の中で、2018年の成長率を従来見通しの1.7%から2017年から横ばいの2.0%と予想し、2018年の財政赤字は 予算案のGDP比2.6%を下回る2.3%と予想した。

フランスでは11月から「温暖化防止策としてガソリンなど燃料税を2019年1月1日から引き上げる」とする政府の方針への抗議デモ(「黄色いベスト」運動)が全国的に広がった。

これに対し、フランス政府は12月4日、予定していたガソリンと軽油の増税を6カ月延期すると発表した。 更にその直後の12月5日に、2019年は増税しないと方針を変えた。
この時点では、財政赤字は2.8%にアップするとしていた。

しかし、デモは収まらなかった。

要求の一つは富裕税である。

フランスでは、不動産、金融商品、現金、動産、貴金属などに富裕税が課税されている。

政府はこれを改め、130万ユーロを超える不動産を所有する世帯にのみ課税するよう変更した。現金等への課税が海外への逃避を生むため、 それらへの課税を廃止し、国内への投資に向けさせようというものである。

しかし、変更により、35万世帯からの41億ユーロの税収が15万世帯の8億5千万ユーロに減る。

批判派は、マクロン政権は年金生活者などへの税金を引き上げた一方で、富裕層を優遇していると非難した。

「黄色いベスト」運動は当初、燃料税の引き上げに反対して始まったが、生活費の上昇に対する抗議や、地方の小都市が直面している問題をマクロン大統領が無視しているといった不満にまで膨れ上がった。

マクロン大統領は12月10日、「黄色いベスト」の抗議デモが激化したことを受け、2019年2月に実施する最低賃金の月額100ユーロへの引き上げや 、残業手当に課税しないこと、月額2000ユーロ以下の年金生活者への増税の中止を約束した。予算局はこうした措置の総額が100億ユーロになるとの見方を示した。

歳出を削ったり、法人減税の対象を限ったりすることなどで40億ユーロ程度を確保するが、それでも財政赤字はGDP比3.2%に達するという。

フランスのルメール経済・財務相は12月17日、グーグルなどIT大手への「デジタル課税」を2019年1月から始めると発表した。年間の税収は5億ユーロ(約640億円)を見込んでいる。
IT大手によるネット広告、個人情報の売買などに課税する。課税対象は大手に限定するとみられる。
これが上記の40億ユーロに含まれているのか、追加なのかは不明。

この結果、2008~2016年に続き、EUのルールである「3%以内」を破ることになる。

ーーー

各年度の財政赤字をGDPの3%未満とする EUの財政安定化・成長協定は1997年に採択された 。

しかし、ドイツとフランスは、2002年以降3年連続で違反を続け、罰金の適用も停止させた。

フランスとドイツの圧力を受け、2005年3月の欧州理事会で見直しが行われ、財政赤字規律の条件を超えても、「小幅かつ一時的」な場合、経済成長がマイナスであれば過剰財政赤字とはみなされないことになった。

その後、2010年にギリシャ危機が起こった。

EUのユーロ圏16カ国は2010年5月7日夜の緊急首脳会議で、巨額の財政赤字を抱えるギリシャ向けの支援策を正式に承認するとともに、包括的な金融危機対策で合意した。
ギリシャ向け協調融資の正式承認、欧州安定化メカニズム(ユーロ防衛基金)の創設等々に加え、EUの財政協定を強化、違反国に効果的な制裁の用意を決めた。

2010/5/10 統一通貨ユーロの危機  

EU加盟国の財政規律を強化する「新財政協定」('Fiscal Compact')が2013年1月1日付で発効した。

各年の一般政府の構造的財政収支赤字(景気循環・一時的要因の影響を除いたもの)がGDP比0.5%を超えない。
但し、公的債務残高の対GDP比が60%を大幅に下回り、長期的な財政の持続可能性リスクが低いと判断される場合、対GDP比で1%までの構造的財政赤字が認められる。

2012/12/26 EUの新財政協定、2013年1月1日発効

EU財務相会議は2013年、フランスが財政赤字の対GDP比率を3%以内とする期限を2015年まで2年延期することで合意した。
フランス政府は、これを3年先延ばしにし、2018年とするよう要請した。

これを受け、EU財務相は2015年の理事会で、財政再建の達成期限の2年延長(2017年まで)を承認した。


フランス及びドイツの財政赤字の推移は下記の通りで、ドイツはレーマン危機の期間を除き、EU基準を守っているのに対し、フランスは2017年と2018年(予想)を除き、違反を続けている。

2015 2016 2017 2018予 2019予
ドイツ 0.9 0.6 1.3
フランス -3.8 -3.4 -2.6 -2.3 -3.2

2019年のフランスの財政赤字がEUルール違反となる見通しであることについて、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は12月13日、一時的であれば容認する姿勢を示した。

しかし、フランスの赤字は上記の通り、一時的なものではない。しかも財政再建の達成期限を2015年まで延長し、更に2017年まで2年延長している。 その期限は切れている。

ドイツとフランスが2002年以降、違反を続けたことから、ギリシャ危機が起こったもので、その反省から2013年に新財政協定を結んだ。

イタリアに対しては、非常に厳しい態度をとってイタリア政府と対立しているが、大国のフランスについて容認するなら、EUの秩序は乱れると思われる。

イタリアは2019年の単年度財政赤字目標をGDP比2.4%に引き上げた。(前政権は 0.8%を約束していた。)

イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たすが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めていた。

欧州委員会は10月23日、イタリアに対し、2019年予算案を3週間以内に再提出するよう求めた。

拒めば、欧州委はイタリア財政を監視下に置き、改善努力が乏しければ最大でGDPの0.5%相当の制裁金が必要となる。

しかし、イタリア政府はこれを拒否した。

コンテ首相は12月12日、ユンケル欧州委員長と会談。財政赤字の見通しを実質GDP比で2.4%から2.04%に引き下げると説明した。年金受給開始年齢の引き下げや、最低所得保障などの大枠は維持するが、実行時期を遅らせたり、規模を縮小する。

2018/10/29 イタリア、来年度予算案で欧州委と対決

総務省は12月14日、第五世代(5G)移動通信システムの周波数を携帯電話各社に割り当てる際の審査基準を定めた開設指針を決定した。

総務省は事前に公表していた指針案を修正し、12月14日に有識者会議の電波監理審議会に諮問し、即日、内容が妥当との答申を受けた。

基地局など通信設備で、中国製品の一部を事実上排除するよう求める項目を盛り込んだ。

世界貿易機関(WTO)のルールに配慮し、国名や企業名の名指しを避けたが、Huawei、ZTEの製品が念頭にあり、12月10日に関係省庁が申し合わせた「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」(後述)について留意すべきこととしている。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内3キャリアは、2019年度米国防権限法(NDAA2019) を念頭に、既に 5GでHuaweiとZTEの通信設備を事実上排除する方針を固めたと報じられている。
ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」の設備について、華為技術(Huawei)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。スウエーデンの
Ericsson、フィンランドのNokiaの製品に順次置き換える。

開設指針では、「考え方」を以下の通りとしている。

我が国の情報通信ネットワークの安全・信頼性を確保することが重要であると考えており、民間事業者においても、サイバーセキュリティ向上に向けて積極的に取り組んでいただけることを期待。

これに関連して、政府調達に係る申合せにおいて通信サービスの調達についても対象とされていること等を踏まえ、12月10日の関係省庁申合せについても留意すべきこととしている。

別表第一
開設計画に記載すべき事項
二 開設計画に従って円滑に特定基地局を整備するための能力に関する事項
1 略
2 特定基地局の無線設備の調達に関する計画及びその根拠
(「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」並びに「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群(平成30年度版)」及び「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」に留意すること。)

当初の開設指針案に対する意見と、それについての考え方も記載している。

意見:セキュリティリスクの問題で諸外国で使用禁止になっているHUAWEI、ZTEの2社の設備は使用禁止にすべき。【個人】

考え方:

我が国の情報通信ネットワークの安全・信頼性を確保することが重要であると考えており、民間事業者においても、サイバーセキュリティ向上に向けて積極的に取り組んでいただけることを期待。

これに関連して、政府調達に係る申合せにおいて、通信サービスの調達についても対象とされていること等を踏まえ、本開設指針案の別表第1において、(中略)、「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」 (平成30年12月10日関係省庁申合せ)についても留意すべきこととしている。

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政府は12月10日、首相官邸で中央省庁のサイバーセキュリティー担当者が集まる「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開き、中央省庁がIT機器や情報システムを調達する際にサイバーセキュリティーの観点から手続きを厳格化する「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」を決定した。

1.目的
複雑化・巧妙化しているサイバー攻撃に対して、政府機関等におけるサイバーセキュリティ対策を一層向上させるためには、従来行われている取組に加え、より一層サプライチェーン・リスクに対応するなど、政府の重要業務に係る情報システム・機器・役務等の調達におけるサイバーセキュリティ上の深刻な悪影響を軽減するための新たな取組が必要である。

そのため、各省庁等において特に防護すべき情報システム・機器・役務等に関する調達の基本的な方針及び手続について、次のとおり関係省庁で申し合わせ、講ずべき必要な措置について明確化を図る。

2.対象とする調達
別紙1に掲げる各省庁等において、別紙2に掲げる情報システム・機器・役務等の調達のうち、別紙3に掲げる重要性の観点から、より一層サプライチェーン・リスクに対応することが必要であると判断されるものについては、情報通信技術(IT)総合戦略室及び内閣サイバーセキュリティセンターと協議のうえ、本申合せに基づき必要な措置を講じる対象とする。

別紙2 情報システム・機器・役務等 (詳細略)
・通信回線装置
・サーバ装置 ・端末
・複合機 ・ソフトウエア
・周辺機器
・外部電磁的記録媒体
・役務
別紙3 重要性の観点
①国家安全保障及び治安関係の業務を行うシステム
②機密性の高い情報を取り扱うシステム並びに情報の漏洩及び情報の改ざんによる社会的・経済的混乱を招くおそれのある情報を取り扱うシステム
③番号制度関係の業務を行うシステム等、個人情報を極めて大量に取り扱う業務を行うシステム
④機能停止等の場合、各省庁における業務遂行に著しい影響を及ぼす基幹業務システム、LAN 等の基盤システム
⑤運営経費が極めて大きいシステム
4.契約方式 本申合せの対象となる調達の契約方式については、総合評価落札方式や企画競争等、価格面のみならず総合的な評価を行う契約方式を採用するものとする。


5.調達手続

各省庁等は、第2項で特定した調達を実施する際は、会計法及び予算決算及び会計令に基づき契約手続を進めるに当たり、調達する情報システム・機器・役務等の提供事業者及びその製品並びに役務について、サイバーセキュリティ確保の観点から、仕様条件の決定、製品及び役務を提供する事業者の選定のために必要な情報を、Request for Information(RFI)及び Request for Proposal(RFP)等により取得することとする。

各省庁等は、調達手続のうち、サプライチェーン・リスクの観点から必要な場合において、情報通信技術(IT)総合戦略室及び内閣サイバーセキュリティセンターに対して、講ずべき必要な措置について、原則、助言を求めるものとする。


新ルールは2019年4月1日以降に調達手続きを始めるものから適用する。


「申合せ」では特定の企業名や製品名は示していないものの、HuaweiやZTEなどの中国通信機器メーカーの製品にセキュリティー上の懸念があることを踏まえたもの。

中国外務省の報道官は12月10日、日本政府が政府機関の調達先から中国通信機器大手、Huaweiなどの製品を事実上排除する方針を決めたことについて、「中国はいかなる差別的な対応も受けるべきではないと考えている」と述べ、不快感を示した。5G移動通信システムに関し、Huaweiが20カ国以上の企業と契約していることも明らかにした。

大手メディア『環球時報』は12月10日、「HuaweiとZTE排除によって日本は自らの利益を必ず損なう」という社説を発表し、「中日関係を改善させる重要なタイミングで日本は米国の政治圧力に屈した。大きな悪影響がもたらされるかもしれず、日本の安全保障にもよくないことだろう」と強調した。

日本企業が、近い将来、中国内で排除される、報復措置の可能性もありうる。 


中国政府は12月14日、米国から輸入する自動車に上乗せしていた25%の関税を来年1月から3カ月間、停止すると発表した。米国製自動車の関税はいまの40%から元の15%に戻る。

12月1日の米中首脳会談の合意に基づく措置である。

米国は2000億ドル分の中国製品について、2019年1月1日に追加関税を25%に引き上げるのを止め、当面 10%に留める。

中国は、非常に多くの農産物、エネルギー、工業製品その他を米国から購入し、貿易のインバランスを減らす。

両国は5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内に結論を得る。

2018/12/2 米、中国への追加関税を90日猶予

発表にはないが、トランプ大統領は中国が自動車関税を引き下げると述べていた。

中国財務省は「国内市場に合った製品の輸入が拡大し、人民のニーズを満足させられる。追加関税は米国の保護主義に迫られてとった措置だった。あらゆる追加関税を取り消す方向で協議を加速し、バランスのとれたウィンウィンの新たな貿易秩序を築きたい」と、他の分野でも摩擦を解消する意向を示した。

中国の国営企業が12月12日に150万トン以上の米国産大豆を購入したことが分かった。更に追加するとみられる。

但し、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議が、90日以内(2019年2月末まで)に結論を得られるかどうか、疑問であり、振出しに戻る恐れもある。

さらに、今回の華為技術(Huawei Technologies )の孟晩舟副会長 兼 最高財務責任者の問題もあり、楽観視は出来ない。

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中国財務部は2018年5月22日、輸入自動車及び自動車部品に対する関税を引き下げると発表した。貿易赤字削減へ関税引き下げを求めてきたトランプ米政権に中国側が歩み寄った。

自動車については、税率が25%の(関税番号での)135種と、20%のトラック4種を引き下げ、全て15%にし、自動車部品については、8%、10%、15%、20%、25%の(関税番号での)79種を引き下げ、全て6%とする。

2018/5/24 中国、自動車関税を一律引き下げ 米に歩み寄り

しかしその後、米中の制裁関税、報復関税が相次いだ。

トランプ米政権は2018年7月6日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税を発動した。

米通商代表部(USTR)は、第一弾の340億ドル分について、米東部時間7月6日午前0時1分(日本時間午後1時1分)以降に米国に到着したり、国内の保管庫から取り出されたりした輸入品から関税を徴収すると通知を出した

中国も対抗して7月6日に同額の輸入品に追加関税をかけた。乗用車、電気自動車なども含まれており、乗用車は40%となった。

米通商代表部(USTR)は、残り160億ドル(25%)の制裁関税を8月23日に発動すると発表した。

これを受け、中国も、残り160億ドルの追加関税の対象製品リストについて相応の調整を行った後、2018年8月23日午後0時1分より25%の追加関税を課すことを決定したと発表した。

2018/7/6  米国、対中制裁関税を発動、中国も対応

トランプ米政権は9月17日、中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表した。

家具や家電などに10%の関税を上乗せする。中国が踏み込んだ政策変更に応じない場合、2019年以降は25%に引き上げる。

中国は9月24日午後0時1分より 報復関税を課した。5207品目、600億ドルに対し、5%と10%追加関税を課す。

2018/9/20 米国、対中関税第3弾を9月24日発動

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中国の乗用車関税の推移:

  全体 対米国
当初 25% 25%
2018年5月 15%


 
15%
 2018年7月 対米追加関税 25% 40%
 2019年1月~3月 対米追加関税免除 15%
 2019年4月以降 米中交渉結果次第 40% ?

米国の関税収入 急増

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米財務省が12月13日に発表した11月の財政収支によると、関税収入は62億ドルと前年同月比でほぼ2倍に増えた。

米国は3月23日から日本などから輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税をかけ、5月31日からは一時的に免除していたEU、カナダ、メキシコからの輸入品についても関税を課した。

中国については、7月6日から340億ドル分に25%、8月23日から160億ドル分を追加して合計500億ドル分について25%の関税を課した。

9月24日に中国製品へのSection 232 による第三弾の追加関税(2000億ドル分に対して10%)を課したことで急増した。


自由貿易を求める関税に反対する組織 Tariffs Hurt the Heartland によると、関税収入の内訳は下記の通りとなる。
   

10月の対中国の追加関税は、26億ドルとなり、前月比で14億ドル増となっている。これは2000億ドル分の10%が加わったことによる。

これは2019年1月からは25%にアップする予定であったが、(12月1日から)90日間延期となった。この間に(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、結論を得る。

合意できなければ、25%に引き上げられる。月間14億ドルが35億ドルにと21億ドル増加する。10月の関税収入62億ドルが83億ドルまで増えることとなる。
2017年10月ベースに比して、53億ドルの増となる。年間では従来ベースより600億ドル以上の増加となる。

この関税はは米国企業が払っているものであり、最終的には米国の需要家に転嫁される。多額の関税増は、2017年末の大型減税の効果を打ち消すものとなる。

多くのエコノミストが、関税は米国企業の負担であり、多くの企業が投資を遅らせ、雇用のペースを緩め、レイオフなどのコストカットを行い、価格に転嫁する。最終的には米国のGDPを下げることとなる、と述べている。

Tariffs Hurt the Heartland は次のように述べている。

数字は嘘をつかない。米国人がこの関税を支払うのであり、しかも以前よりはるかに多い。この関税は、我が国を豊かにするのではなく、真逆である。データは関税が政府が決めたもののうち、まぎれもない失敗であることを示している。起こっているのは、企業と消費者が余分に支払うことであり、報復によって米国の輸出は急減少しており、政府が懸念している貿易赤字は急増する。

10月の輸入は0.6%減ったが、報復により輸出は37%減少した。

米連邦準備理事会(FRB)は関税引き上げによって、物価上昇と景気悪化が同時に進む「スタグフレーション」に陥るリスクを懸念する。

しかし、トランプ大統領は数十億ドルの関税を勝ち取ったと誇らしげに述べた。

We are right now taking in $ billions in Tariffs. MAKE AMERICA RICH AGAIN."

12月13日の米テレビ番組のインタビューで「中国がモノを米国に送る際に、彼らは25%を支払っている」とも語った。

米メディアは「大統領は中国製品にかけた関税の支払いを、米国民ではなく中国側が負担していると誤解しているのではないか」と疑問視する。

部分的には、関税引き上げ分の一部を中国の業者が輸出価格の値下げの形で負担しているケースもあるとは思われるが、25%分全てを負担するなどはあり得ない。

こんな誤解のもとに、政策が決められているとすれば、恐ろしいことである。

商務省などは当然、この点を理解しており、関税引き上げ対象の中国製品を選ぶ際に、直接の消費財は除外している。但し、消費財でなくとも、関税でコストが上がり、それを使った消費財の価格に最終的に転嫁される。

大統領は、中国製品の2500億ドル相当分の残りについても関税を課すと脅しているが、その場合には消費財そのものの関税が上がり、すぐに転嫁されることになる。

大統領は、関税引き上げで米国での生産増を図るが、輸入品よりも安価に生産することは難しい。逆に中国の報復関税を避けるため、中国での生産を図る企業も出ている。

サムスン電子が中国天津にあるスマートフォン生産法人の閉鎖を決めた。

サムスン電子は12月12日、今月末で中国・天津工場の稼働を中断すると発表した。11日に天津工場の従業員約2000人を対象に稼動中断に関する説明会を開いた。天津工場の従業員の退職補償、再就職支援などについて、協議を継続する予定。

ケース、カメラモジュール、回路基板などを生産する協力会社の生産施設撤収も相次ぐとみられる。


サムスン電子は、中国国内で天津工場と広東省の恵州工場をスマートフォンの生産拠点としている。

同社は中国のスマートフォン市場で2014年までは10%台のシェアで首位を守っていた。

しかし、2015年からは、華為(Huawei)、OPPO、VIVO、小米(Xiaomi)など中国メーカーに押され、本年7-9月期にはシェアが0.7%まで低下した。
小辣椒(
Xiaolajiao)、SUGAR、CMCCなどの中小ブランドにも敗れ、全体順位は11位に落ち込んだ。

四半期ベースで2000万台に達していた販売台数は本年7-9月期には天津・恵州工場2カ所を合わせてわずか70万台にまで落ち込んだ。

サムスン電子は恵州工場をそのまま維持すると明らかにしたが、中国と業界ではこれについても閉鎖また事業縮小をする可能性があると予測している。


サムスン電子は現在、韓国の亀尾をはじめ、ベトナム、インド、ブラジル、インドネシア、中国にスマートフォン工場を置いている。

天津工場の閉鎖で、ベトナムやインドでスマートフォンを生産する「脱中国」化が加速する。

サムスン電子のスマートフォン生産はすでにベトナム法人が製造の中枢の役割をしている。

バクニンやタイグエンにある生産法人は年間3億台以上のスマートフォンを生産できる能力を備えている。ここでの雇用者数は10万人以上で、今年上半期の売上高は約2兆3700億円にのぼる。

また、7月に完工したインドのノイダ工場も1億2000万台以上の携帯電話製造が可能という。


参考 

チッソ子会社 JNCは12月11日、関西学院大学の畠山琢次教授との共同研究により開発した新しい有機 EL 材料が大手ディスプレイメーカーのスマートフォンに採用されたと発表した。

共同開発した有機EL材料は、これまでに使用されてきた材料系とは全く異なる新しい構造を特徴とした青色発光材料で 、ホウ素原子を含むヘテロ環構造を主骨格とし、電圧をかけることによって発生する光の波長の幅が従来の材料に比べ狭いことを特徴としている。これにより、発光したエネルギーロスを抑えることが可能となり、低消費電力化を実現でき る。

畠山琢次教授とJNCの共同研究は 2011 年から開始した。

2016 年には世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料を開発した。新しいタイプの有機EL素子に適用できる材料の開発も進めている。

JNCはこの有機EL材料を水俣製造所にて製造する。

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世界最高レベルの発光効率と色純度を持つ有機ELディスプレイ用青色発光材料は、2016年2月にドイツの科学誌 Advanced Materials のオンライン速報版で公開され た。

有機ELディスプレー用の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料 の3種類が利用されているが、いずれも問題がある。

蛍光材料は発光効率が低いという問題がある。

りん光材料とTADF材料は、発光効率は高いものの、発光の色純度が低いという問題がある。色純度が低いと、ディスプレーに使用する際に、発光スペクトルから不必要な色を除去して色純度を向上させる必要があり、トータルでの効率が大きく低下する。


畠山教授は、発光分子の適切な位置にホウ素と窒素を導入し、共鳴効果を重ね合わせることで、世界最高レベルの色純度を持ちながら、発光効率が最大で100%に達するTADF材料 のDABNAの開発に成功した。

発光効率 発光の色純度
蛍光材料 低い
りん光材料 高い 低い 不要な色を除去し、色純度を向上させる必要
(トータルでの効率が低下)
熱活性化遅延蛍光(TADF)材料
新TADF材料(DABNA) 最大で100% 世界最高レベル


DABNAの特徴と TADFとの違い

DABNA

TADF材料

光(可視光)は波長によって色が異なる。通常の光源は、一定の波長の幅を持った発光スペクトルを示すが、その幅が広ければ、さまざまな色(波長)の光が混合していることになり、色純度が低くなる。
発光スペクトルの幅が狭ければ、単色光に近づき色純度が高くなる。

TADF材料の場合、フィルターにより不要な色を除去し、色純度を向上させる必要 があり、トータルでの効率が低下する。

DABNAは、ホウ素、窒素、炭素、水素というありふれた元素のみからなり、市販の原材料から短工程で合成できることから、理想的な有機ELディスプレー用の発光材料 となるとしている。


政府や三菱重工業などの官民連合がトルコの原子力発電所の建設計画を断念する方向で最終調整に入った。日本経済新聞が報じた。


三菱重工は「当社が発表したものではない」とのコメントを出した。7月末に提出した事業化に向けた調査報告書(FS)をトルコ政府エネルギー・天然資源省にて評価中であるとしている。

建設費が当初想定の2倍近くに膨らみ、トルコ側と条件面で折り合えなかった。


三菱重工業とフランスのArebaは、1991年に燃料サイクル分野において合弁会社を設立、2006年には原子力事業でのより広範な協調で合意した。

2007年7月11日にArevaとの折半出資による合弁会社ATMEA社を設立、両社技術を融合した電気出力110万kW級の最新鋭の加圧水型軽水炉(PWR)ATMEA 1 を開発した。

2017年にフランス政府は、Arevaの救済のため、抜本的な同社の構造改革を決めた。

原子力部門はフランス電力(EDF)が主体で、三菱重工も出資した。(文末に再編図)

これに伴い、合弁会社ATMEAも、2018年1月1日にEDFと三菱重工の50/50 JVとなった。

ATMEA 1 はトルコのSinop原発で110万kW 4基の採用が決まった。 トルコの原発計画は、日本政府が成長戦略として推進する原発輸出政策の一環と位置づけられている。2013年に安倍晋三首相とトルコのエルドアン首相(現大統領)がトップ会談して本格的に動き出した。

2013年5月に日本・トルコ両政府は原子力協定と原子力発電所建設の細目を規定した政府間協定に調印したのに続いて、2013年10月に商業契約を締結した。

ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発に続くもの。

Westinghouseは、トルコの三番目の原発計画(イーネアダ原発)でAP1000の原子炉4基を建設する方向で交渉したが、断念 した。

事業主体の国際コンソーシアムには、三菱重工業 15%、伊藤忠商事 15%、GDF Suez(現 Engie)21%、トルコ国営電力会社(EUAS)49%が出資することとなっていた。

トルコ建国100周年を迎える2023年の1号基稼働を目指した。

2013年当時の総事業費の見込みは2兆円規模だった。しかし、2011年の福島第1原発事故の後に強化された安全基準に対応した結果、総事業費は増大した。

低価格で原発輸出を進める中ロと比較され「価格差が開きすぎた」。今夏以降のトルコの通貨リラ急落も響いた。

2018年3月に採算性の調査を担当する三菱重工が内々にトルコ政府に事業費の見積もり を伝えたが、トルコ政府にはねつけられた。

三菱重工が7月末に提出した報告書では建設費が当初の2倍近くに膨らみ、総事業費は5兆円規模に達した とされる。

企業連合の出資で3割、日本の国際協力銀行などの融資で7割の建設費を確保し、売電収入で資金を回収する枠組みを想定していたが、 完全に予定が狂った。

日本、トルコ両政府が2013年に大筋合意した想定売電価格ではコストが回収できないのは明らかで、価格見直しが争点となるが、トルコ政府としても大幅値上げは難しいとみられる。


伊藤忠商事は、事業への参画はリスクが高いとみて、2018年3月末で離脱した。

三菱重工社長は2018年6月の朝日新聞のインタビューで、次のように述べた。

「われわれは(企業連合に)入る予定だが、事業体が成り立つかどうか。すべて責任を負うわけではない。設備の製造では中核になるが、事業体の中核にはならないと思う。どこが(中核に)なるかはこれからの問題で、コメントできない」

目標とする2023年からの稼働 は、「コメントできる立場ではないが、現実論として原発はかなり期間がかかるというのは事実だ」

「われわれが着工できる条件を、採算性調査の中で申し上げることに全力を尽くす。それが関係者にとって満足いくかどうかは、また別の話。みんながやりたいということにならないと進まないと思う」

他方、ロシアのRosatomが受注したAkkuyu 原発については、4基(能力は各120万kW)のうちの1号機の起工式が2018年4月に行われた。両国大統領は映像回線経由で参加した。

エルドアン大統領は「4基すべてが稼働すれば、同原発がトルコの必要電力の10%を賄う」と言及。計画は遅延しているが、2023年には1号機の運転を開始すると述べた。

総投資額は220億ドルと見積もられていたが、現時点での投資額は不明。

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東芝(Westinghouse)の撤退を含め、日本企業の海外原発計画は進展していない。

日英両政府は2016年12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだが、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power の英中部Wylfaの原発計画に加え、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)で計画する原発について言及している。

2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

東芝は11月8日、英国における原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、連結子会社のNewGeneration (NuGen)を解散すると発表した。

これまで売却交渉を続けてきたが、2018年度中のNuGen社の株式売却完了の見通しが立たないこと、及びNuGen社維持費用の継続負担等を勘案し、経済合理性の観点から、今般、解散を決めた。

2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

朝日新聞は8月17日、「日立の英原発建設、米大手が外れる方向 建設費の高騰で」と報じた。

北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で、建設工事の中核から米建設大手 Bechtelが外れる方向になった。建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためで、原発建設のノウハウに乏しい日立には痛手となるとしている。

日本側も英国側も出資の目途はたっていない。
また、完成した場合の電力の買い取り価格も決まっていない。

2018/8/22 日立の英原発計画がピンチ

ベトナム政府は2016年11月22日、日本企業が受注し、同国南部に建設することになっていたベトナムで初めての原子力発電所の建設計画を中止すると決めた。

2016/11/14  ベトナムの原発建設計画 中止へ

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2017年のフランス政府によるArevaの構造改革のスキーム:


2017/7/14 三菱重工業、フランスのアレバ原子炉事業に出資

Brexit 難航

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英国のメイ首相は12月10日、英国のEUからの離脱案を巡り、12月11日に議会下院で予定していた採決を見送ると表明した。

離脱案の内容に対して野党だけでなく与党の一部からの反発も強く、このままでは採決しても否決が確実だと判断した。

特に、Backstop案移行期間中にも北アイルランド問題が解決しない場合に英国全土をEU関税同盟に残すという最後の策)では英国が永遠にEU関税同盟に残ることとなり、「EUの政策決定に関与できないまま、EU規則に縛られ続ける」と不満が噴出している。

英国政府は12月5日、EU離脱に関してメイ首相がコックス法務長官から受けた法的助言の全文を公表した。首相が全文公開を拒否したことが議会侮辱に当たると認定する動議を可決し、公表を余儀なくされた。

助言には、アイルランドの国境管理厳格化を避けるためのBackstopを巡り、英国がEU関税同盟に無期限にとどまるリスクが明記されている。

Backstopについては「恒久的なものを意図しておらず、別の恒久的な取り決めに替えるという当事者の明確な意思を記すものだが、国際法では代替的な合意が取り交わされるまでの間、無期限に存続する」と指摘、「停止する権利がないため、英国が長期的、反復的な交渉に縛られる法的リスクがある」としている。

メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党は、法的助言は「破滅的」との見解を示した。

離脱協定が発効するには下院(定数650)での合意案承認が不可欠で、正副議長らを除いた639の過半数(320)の支持が必要 である。与党・保守党は下院で315議席を保持するが、 野党第1党の労働党だけでなく、保守党からも100名程度が反対するとみられ、採決した場合、大差で否決されるとみられていた。


首相はEUと再交渉して合意の修正を試みたうえで、議会の承認をめざすとみられる。

しかし、EU側は現在の合意が「唯一の選択肢」としており、再交渉に応じるかは不透明だ。

EUのトゥスク大統領は、EUが12/13-14に開く首脳会議で英国のEU離脱が議題に取り上げられるが、離脱合意案の再交渉は行わないと言明、「Backstopを含め、合意は再交渉しない」と述べた。ただ「合意なき離脱シナリオへの対応についても討議する」とした。

与党内の意見はまとまっておらず、首相が英国内の意思をまとめた修正案を作れるかどうかも不明である。

保守党内では「EU離脱により英国の主権の回復が必要」という強硬離脱派の発言力が強いが、EUとの経済関係の維持を求める意見も根強い。

付記

英国の与党・保守党は12月12日夜にメイ党首(首相)の信任投票を行い、メイ党首の続投を決めた。
保守党の規約では下院議員の15%(現在は48人)が党首交代を求める書簡を提出すると信任投票が行われる。今回はEUからの決別も辞さない強硬離脱派の議員を中心に書簡が集まった。

一時的に党を離れていた議員も含め317人が投票。信任200、不信任117で、メイ氏の信任が決まった。

メイ氏は投票に先立つ演説で「次の選挙(今の下院議員の任期は2022年まで)の時に、私は党首(首相)としては選挙戦に臨まない」と述べた。

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EU司法裁判所は12月10日、英国は、EU加盟国の同意なしに、EU離脱を一方的に撤回できるとの裁定を下した。

Brexit 反対派の英国の政治家や活動家のグループはかねてから、英国は一方的にEU離脱プロセスを止めることができるはずだと主張していた。一方で英政府やEUは、この主張を否定してきた。

今回の裁定を「追い風」に国民投票を再実施してEU残留を決めるとの動きが強まる可能性がある。ただし、メイ首相は国民投票の再実施に否定的である。

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。

2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立した。

2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。

背景には、米国による「中国製造2025」潰しもある。


2019年度米国防権限法(NDAA2019)は、禁止を国防総省以外にも拡大するもので、対象条項は、SEC. 889. Prohibition on certain telecommunications and video surveillance services or equipment.

禁止対象製品 (covered telecommunications equipment or services) は次の通り。

(A) Huawei Technologies と ZTE (関係会社を含む)製の通信機器 (Telecommunications equipment)

(B) Hytera Communications、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua Technology Company (関係会社を含む)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器 (video surveillance and telecommunications equipment)

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

* B 条項を提案したVicky Hartzler 下院議員は次のように述べている。

中国政府があらゆる手段を使って米国を標的にしている現実に対処せねばならない。中国企業が販売するビデオ監視装置やセキュリティ機器は米国政府を著しく脆弱な状況にしている。この法律は中国政府に米国の政府機関のビデオ監視をやらせないようにするものだ。

HIKVISIONは監視カメラ業界で世界シェア31.3%で1位、Dahua Technologyは世界2位
海能達通信(Hytera)は警察など特定用無線で世界1位

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

procure or obtain or extend or renew a contract to procure or obtain any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system;

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

enter into a contract (or extend or renew a contract) with an entity that uses any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system.

問題は第2段階である。

既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている機器の利用を一切やめ、その旨を米政府に報告・誓約しなければならなくなる。

中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。これらの企業にとっては、「米政府と取引を続けるか、中国での生産活動を続けるか」という事実上の踏み絵を突き付けている。

日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っている。

Huawei の通信基地局の日本国内シェアは2017年度に13%で、低価格を武器に、約18%のNECや富士通に迫る。

ソフトバンクは Huawei の基地局を採用しており、同社と5Gの共同開発や実証実験を行っている。NTTドコモも5Gの実証実験で Huawei と組んでいる。

ソフトバンクは次世代通信「5G」の基地局などに中国製の設備を使わない方針を固めた。

付記 ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」の設備について、華為技術(Huawei)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。スウエーデンのEricsson、フィンランドのNokiaの製品に順次置き換える。
    

一方、Huawei は大量の部品を日本企業から調達している。2017年の日本での調達額は約4900億円。

付記 

カナダ司法省は12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies )の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した 。12月5日に明らかにした。

付記 

裁判所は12月10日、保釈の可否を巡る審問を開いたが、判断を示すことなく休廷した。現地時間11日午前10時(日本時間12日午前3時)に再開する。

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カナダの裁判所は12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。

条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払ったり追跡装置を身につけたりする。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。

カナダの裁判所は来年2月に、米国の正式な要請に基づいて身柄を引き渡すかどうかを別途判断する。

米側は逮捕から60日以内に具体的な証拠を裁判所に示す必要がある。
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トランプ大統領は12月11日、ロイターとのインタビューで、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。

"If I think it's good for the country, if I think it's good for what will be certainly the largest trade deal ever made - which is a very important thing - what's good for national security - I would certainly intervene if I thought it was necessary."

( Meng 副会長が釈放される可能性について)

"Well, it's possible that a lot of different things could happen. It's also possible it will be a part of negotiations. But we'll speak to the Justice Department, we'll speak to them, we'll get a lot of people involved."

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国際シンクタンク The International Crisis Group(ICG)は12月11日、同団体の上級顧問を務めるカナダの元外交官、Michael Kovrigが中国で拘束されたとの情報が入ったことを明らかにした。

カナダ外務省は12月13日、カナダ人実業家 Michael Spavor氏が中国の国家安全保障に脅威を与えた疑いで中国当局に拘束されたことを認めた。

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付記

カナダのトルドー首相は2019年1月26日、同国のジョン・マッカラム駐中国大使が同日付で辞任したと発表した。首相が辞任を要請した。

マッカラム氏は1月22日に中国語メディアとの会合で孟氏の逮捕にはトランプ米大統領の政治的な意向が反映されていると指摘。逮捕容疑であるイラン制裁違反に関して「カナダは(米国が求める)イラン制裁措置に署名していない」とし、引き渡しが行われない可能性を示唆していた。


米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 今年8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。(なお、今回の件が犯罪人引渡協定の対象になるかどうかについて議論があるという。)

逮捕の12月1日には、トランプ米大統領と習近平中国・国家主席 が、G20出席のため訪問中のBuenos Airesで夕食会形式で首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めている。


ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、孟氏が12月1日に逮捕されることを「事前に知っていた」と明らかにした。 大統領が知っていたかどうかは不明だが、ボルトン補佐官は米中首脳会談に出席しており、逮捕情報を知りつつ習氏ら中国側に情報開示をしなかった可能性が出てきたことで、中国側が今後の通商協議で態度を硬化させる恐れがある。


報道によると、米当局は少なくとも2016年から、Huawei がイランとの違法取引に関わっていないか捜査してきた。
英金融大手HSBCがHuawei の関与の疑いのある取引を見つけ、米捜査当局に報告したとされる。

12月7日にバンクーバーの裁判所で孟氏の保釈をめぐる聴聞会が開かれた。カナダ司法当局は拘束理由を明らかにし、逃亡の恐れがあるため保釈しないよう求めた。

カナダ当局によると、米司法当局は、Huawei が2009~14年に香港に拠点を置く関係会社のSkycom Techを通じて米国のコンピュータ機器をイランの携帯電話の会社に販売したとみている。これは米国製品をイランに販売することを禁じる法律に違反するもの。
しかし、孟氏は2013年に米金融機関に対して、
Huawei とSkycom Techが「無関係だ」と虚偽の説明を行い、違法な金融取引に関与させた疑いがある。

米司法当局の調べでは、Huawei は2009年にSkycom Techを売却したように装っていたが、少なくとも2014年まで管理下に置いていた。
Skycom Techの登記簿によると、孟氏は2008年2月~2009年4月に同社取締役を務めていた。

カナダの裁判所は12月10日にも聴聞会を開き、保釈の可否を判断する。米国に身柄を送還するかどうかは、裁判所が判断したうえでカナダの司法相が決める。米国で有罪となれば最大30年投獄される可能性があるという。


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Huaweiは12月6日、「現時点で逮捕に関する情報は少しもないが、不正行為の認識はない。カナダと米国の司法制度が最終的には公正な判断を下すことを信じている 。Huaweiは、事業を営む場所全てで、国連と米国とEUの輸出管理と制裁の法律・規則を含め、法と規則を遵守している」と述べた。

The company has been provided very little information regarding the charges and is not aware of any wrongdoing by Ms.Meng. The company believes the Canadian and US legal systems will ultimately reach a just conclusion.
Huwai complies with all applicable laws and regulations where it operates, including applicable export control and sanction laws and regulations of the UN, US and EU.

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孟氏はHuaweiの創業者、任正非(Ren Zhengfei)(74)の長女で1972年生まれ 。16歳の時に母親の姓に改姓した。

1992年に大学を卒業後、1年間、国有銀行大手「建設銀行」で勤務した後、Huaweiに入社 し、秘書として商品リストの打ち込みや営業サポートなどを経験した。
1997年から1年半休職し、華中理工大学で会計学を学び、その後は社内の財務部門で昇進した。

社内では2011年の役員就任時に任会長の長女であることを初めて明かした。

本年3月に副会長に就任したことで、後継有力候補と目されるようになった。

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Huaweiは中国最大の民営企業で、習近平指導部が進めるハイテク産業育成策「中国製造2025」で重要な役割を占める。
次世代通信規格「5G」のインフラに注力しており、世界66カ国の通信会社向けに約1万件の基地局をすでに出荷している。

輸出管理法を管轄する米商務省が違法と判断すれば、米国企業との取引を規制する制裁を科す可能性がある。

HuaweiはGoogleのスマホ用基本ソフト(OS)Androidや米Qualcommの半導体を採用するなど米国企業と幅広く取引して おり、米国が制裁に踏み切れば、同社の経営には大きな打撃となる。

米商務省は2016年3月、中興通訊(ZTE)が2010年にイランや北朝鮮に禁輸措置品を輸出し、その事実を隠ぺいしたとして、輸出禁止の対象とした。

その後、トランプ大統領と習主席の話し合いで、ZTEが罰金を支払うことで7月に制裁を解除した。

2018/6/8 米政府、中興通訊(ZTE)の事業再開認める


Huaweiの問題が米中協議に悪影響を及ぼすとの懸念が市場で広がっている。

トランプ米大統領と習近平中国・国家主席は12月1日の首脳会談で、両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪 (窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内(2019年2月末まで)に結論を得ることで合意した。

この間に合意できない場合、現在は追加関税が10%の2000億ドル分の中国製品について、追加関税は25%に引き上げられる。

トランプ米大統領は7日「米中協議はとても順調だ!(China talks are going very well!)」とツイッターで強調した。
米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、Huawei 問題は「安全保障の問題」であり、米中協議とは「別の問題だ」と主張した。


米国政府・議会は、中国の通信・監視カメラなどハイテク企業を排除すべく、動いている。日本をはじめ、各国もこれに引き込まれつつある。

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決 し、8月13日にトランプ大統領が署名し成立した。2020年からは、これら各社の製品を使用する世界の企業は米国政府との取引を禁止される。(詳細 明日の記事)

豪州政府は8月に、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、Huawei とZTEの参加を認めない方針を出した。

ニュージーランドでは同国大手通信事業者が11月下旬、5Gの整備で華為製品を使用しないと発表した。同国政府が、華為製品の使用は「国家安全保障上の重大な危機」があると警告したため。

日本政府は、Huaweiなどを念頭に、中央省庁が情報通信機器を購入する際、価格だけでなく、安全保障上のリスクを低減できるかどうかを考慮するという調達指針を策定することとした。

各省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器について、安全保障上の懸念から、中国通信機器大手HuaweiとZTEの製品を「事実上」排除する方針を固め与党関係者によると、「政府がファーウェイの製品を分解したところ、ハードウェアに"余計なもの"が見つかった」という。

EUの欧州委員会の副委員長は12月7日、Huaweiなどの中国のIT企業は中国の情報機関との協力を義務付けられているとし、欧州の安全保障上のリスクを懸念する必要があると述べた。

OPEC-Plus、減産を発表

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OPECとロシアなど非加盟国は12月7日、2019年1月から合計で日量120万バレル減産することで合意した。

世界景気への不安から需要の落ち込みが懸念されて、急ピッチで下落している原油価格に歯止めをかける。

サウジアラビアのエネルギー産業鉱物資源相は「市場の均衡を目指すため行動する」と語った。

今回の合意は、原油価格を抑えるためサウジに減産しないよう圧力をかけていたトランプ米大統領の怒りを買う可能性がある。

サウジのエネルギー相は、今回の減産合意でトランプ米政権とサウジの関係は悪化するかとの質問に対し、供給が不足する事態になればサウジには増産する用意があるとし、「われわれは消費国が支払える水準を超えて価格を引き上げるようなことはしない」との立場を示した。また、最近米国が最大の産油国となったことを踏まえると、米国のエネルギー関連企業は「安堵のため息をもらしている」のではないかとも述べた。

付記

OPECは2019年7月1日、6月末で期限が切れた協調減産を2020年3月末まで9カ月延長することで合意したと発表した。
OPECは2日、ロシアなど非加盟産油国との会合で、減産を9カ月延長することで合意、OPEC+の協力体制を定める「憲章」を採択した。OPEC+は恒久的なものとなる。


合意の内容は次の通り。

2018年10月の生産量をベースに、OPECは日量80万バレル(2.5%相当)、非OPEC諸国は40万バレル(2.0%相当)を減産する。
(当初の議論は、減産規模をOPECが日量 65万バレル、合計で日量約100万バレルとする案を中心に進んでいた。最終的に合意した数字は予想を超えるもの)

減産期間は2019年1月から6月までの6カ月だが、4月に会合を開き、減産の状況や市場環境を確認して見直しを行う。

各国の減産量の配分は公表していない。

ロシアは、これまで減産規模は最大で日量15万バレルとみられていたが、エネルギー相は10月の生産の2%に相当する日量22.8 ~23万バレル前後を減産すると表明した。

OPECでは、米国による制裁措置を受けているイランのほか、リビア、ベネズエラは減産の例外として認められた。
これまで減産を免除されていたナイジェリアは減産に復帰する。
イラクは日量14万バレルの削減を確約した。
Qatar は2019年1月からOPECを離脱する。

OPEC各国が10月の生産量の2.5%ずつを減産するとすれば、下記の通りとなる。(実際の配分は未公表)

原油市場では米国ではシェールオイルを中心に増産が続いている。一方で、貿易戦争による世界経済の先行きへの不安から需要が落ち込むとの見通しが出ており、原油価格は急降下している。

付記

OPECは2019年7月1日、6月末で期限が切れた協調減産を2020年3月末まで9カ月延長することで合意したと発表した。
OpPECは2日、ロシアなど非加盟産油国との会合で、減産を9カ月延長することで合意、OPEC+の協力体制を定める「憲章」を採択した。OPEC+は恒久的なものとなる。

住友金属鉱山および住友商事は12月5日、カナダの資源メジャー企業 Teck Resources Limited が保有する チリのQuebrada Blanca銅鉱山の権益のうち30%について、住友金属鉱山が25%、住友商事が5%の権益を取得することで合意したと発表した。


両社は権益取得に係る対価 8億米ドルに加え、建設工事費に対応する4億米ドルを2019年中に支払う。
また、今後Quebrada Blanca Phase 2 における 鉱石処理量が一定の増産を達成する場合は0.5億米ドルをTeck に支払う。
将来、Quebrada Blanca 銅鉱山の大規模な拡張工事に住友金属鉱山および住友商事が参入を決定する場合にはQB銅鉱山の評価額の増大に対して、相当額の負担すべき資金を支払う

両社はQuebrada Blanca 銅鉱山について、権益を保有するアリゾナ州のMorenci 銅鉱山(住友金属鉱山25.0%、住友商事3.0 %)や ペルーのCerro Verde銅鉱山(住友金属鉱山16.8%、住友商事4.2%)と比肩するワールドクラスの銅鉱山となることを期待して いる。

両鉱山については 2016/2/19 住友金属鉱山、米国モレンシー銅鉱山の権益追加取得

Quebrada Blanca銅鉱山事業の概要は下記の通り。

投資予定額:約47億米ドル
主要投資内容:選鉱場や尾鉱ダムなど

生産開始予定:2021年
生産品目:銅精鉱・モリブデン精鉱
平均年間生産量(金属量):銅約24万トン、その他モリブデン、銀

可採鉱量(金属量):銅約620万トン

マインライフ:約28年

採鉱法:露天掘り

出資者:

現状 今後
Teck Resources 90% 60%
Empresa Nacional de Mineria 10% 10%
住友金属鉱山 25%
住友商事 5%
合計 100% 100%

立地:

住友金属鉱山および住友商事は、Teck Resourcesとは、アラスカのPogo金鉱山を1997年から2009年まで共同経営するなど、長年にわたりパートナーシップを維持している。

住友金属鉱山と住友商事は8月30日、豪州大手の産金会社Northern Star Resources Limitedに、アラスカのPogo金鉱山の権益を全て譲渡すると発表した。
Pogo金鉱山は、アラスカ州で2006年から操業し、2009年からは住友金属鉱山がオペレータを務めてきた。

Pogo金鉱山概要:

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ

2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%→ 0
       Teck Resources 40%→ 0
       SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%→ 0
         2009年4月以降、出資比率変更

2018/9/1 住友金属鉱山と住友商事、アラスカの金鉱山権益を売却 

 

両社の銅鉱山権益は下記の通り。

鉱山

権益

能力
住友金属
鉱山
住友商事 その他
Morenci 米国 25% 3% Freeport-McMoRan 72% 48万トン
Cerro Verde ペルー 16.80% 4.20% Freeport-McMoRan 53.56%
others   25.44%
30万トン→50万トン
 
Sierra Gorda チリ 31.5% 13.5% KGHM International 55% 22万トン
Ojos del Salado チリ 16% 4% Lundin Mining 80%  
Candelaria
Batu Hijau インドネシア 3.5% 18.2% Newmont Mining 31.5%
others 46.8%
 
Northparkes 豪州 13.3% 6.7% China Molybdenum 80%  


三菱瓦斯化学は11月1日、SABICと日本・サウジアラビアメタノール(JSMC) との50/50JVの Saudi Methanol Company (AR-RAZI) が11月29日に合弁契約の期限切れを迎えると発表した。

2018/11/5 三菱瓦斯化学のSaudi Methanol、合弁契約の期限切れ 


その後、両社は合意に達し、三菱瓦斯化学は12月4日、SABICとの交渉の結果を発表した。

①  11月29日の合弁契約期限切れに伴い、JSMCのAR-RAZI持株の半分(全体の25%)を150百万ドルでSABICに売却

② 日本側は2019年3月末までに下記の条件での合弁契約の20年間継続の可否を決定する。

  継続しない場合、残り25%も150百万ドルでSABICに売却し、AR-RAZIをSABICの100%子会社とする。

  条件:
   ・ JSMCは契約延長対価としてSABICに1,350百万ドルを支払う。

   ・ 省エネ効果を高めるメタノール新技術の商業化の共同検討、および新技術によるメタノール設備更新の検討
      (SABICによると、SABICはこの新設備の"an equal co-owner" になる)

まとめると、次のとおり。

JSMC SABIC
従来 50% 50%
2018/11/29 25% 75% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い
2019/3/末
 Case 1 契約延長 25% 75% JSMCは 1,350百万ドルをSABICに支払い
新設備の検討
 Case 2 契約延長せず 0% 100% SABICは 150百万ドルをJSMCに支払い

付記 2019年3月22日、Case 1 の20年延長を決定。 1,350百万円は3年分割払い(費用としては20年分割算入)


まず、今回の25%分の引き渡し(対価 150百万ドル)は、サウジ現地では、SABICにとって非常に有利("highly favourable")と見られている。

JV契約の期限切れによるものであり、おそらく契約にはその際の株式の引取価格の規定があると思われるが、年間で120億円程度の配当のある株の取引価格としては非常に安い。

恐らく、簿価に近いものと思われる。

三菱瓦斯化学の連結決算での本件の投資損益は、2008~2017年度平均で約120億円。日本側全体ではその倍であり、今回売却分はその半分。

三菱瓦斯化学はJSMCに47%出資するが、同社は今回、同社としての為替差損と、JSMCでの売却益に対する税金から、売却損失が50億円程度としている。


契約延長を決めた場合、JSMCは延長のためだけで、1,350百万ドルの支払が必要である。持分は半分に減るため、現状ベースでは年間配当は120億円程度であり、元を取るのに時間がかかる。

また、三菱瓦斯化学が開発することになる新技術を、技術料は取るにしても、SABICとのJV(出資比率は50/50になる)に出す必要がある。

どうするであろうか?

韓国検察当局は11月29日、Samsung グループで有機ELパネル世界最大手、Samsung Displayの生産技術を中国パネル最大手の京東方科技集団(BOE)などに流出させたとして、Samsungの取引先のパネル製造装置大手ToptechのCEOを含む9名を、不正競争防止や営業秘密の保護に関する法律に違反した罪で起訴したと発表した。

ほかに中国企業の幹部2人も取り調べたが、起訴を見送った。検察は8月に韓国の情報機関の国家情報院から情報を得て捜査を続けていた。

Samsung はスマホ向けの中小型の有機ELパネルで9割以上の世界シェアを握る。

流出したのは、Samsung電子のGalaxyスマートフォンに搭載された「曲がったOLEDディスプレー」とガラス板を装着する工程の「3Dラミネーション」生産設備および技術資料で、BOEなど4社に流出した疑いがある。流出先には中国のパネル2位である華星光電(CSOT)が含まれている模様。

検察によると、Samsung Displayは2007年から6年間に1500億ウォン(約150億円)を投じてこの技術を開発した後、協力会社のToptech に関連装備の生産を任せた。Toptechはこの装備をSamsungに独占納品する契約を結んだが、偽装会社を通じてBOE などに16台を販売した。 情報提供によりToptecは1385万ドルを受け取ったとされる。

図は朝鮮日報


Toptech 株主に宛てたメッセージを公表し「当社が自社開発した技術を基に中国企業と取引した。Samsungの技術を流出させた事実はない」と、疑惑を強く否定した。 「法廷で真実を証明するために、あらゆる法的手続きをとる」としている。

カタール、OPEC脱退へ

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Qatar は12月3日、石油輸出国機構(OPEC)に対し、2019年1月に脱退する方針を伝えた。

エネルギー相は記者会見で、天然ガスを中心とする産業の発展に集中するためだと説明した。

エネルギー相は「原油より大きな潜在力がある天然ガスに力を注ぎたい」と強調した。

エネルギー相はOPEC脱退について「テクニカル」なもの(「何か思惑があるわけではない」の意味)であり、天然ガスの生産に集中する方針だと述べた。

しかし一方で、脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明した。

また、「OPECは一国によって管理されている」と指摘し、サウジを暗に批判した。


現在、原油安が急ピッチで進んでいる。

OPECは12月6日のウィーンでの総会で減産を決め、翌7日にロシアなど非加盟国と協調減産を続けることで合意するシナリオを描いている。

Qatar がOPEC脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明したことは、同国が脱退後に増産に動き、原油価格を支えるための努力が損なわれる可能性があることを意味し、OPECの価格支配力が一段と低下し、原油価格の波乱要因になる。

ーーー

Qatar の石油生産量は少なく、2017年1月実施の生産枠は日量618千バレルにとどまっている。

他方、世界の1割強を占める埋蔵量を持つ巨大なガス田を域内に抱え、LNGの最大輸出国である。日本もQatar から大量のLNGを輸入している。

LNGの生産量が年間7700万トンに達しているが、2024年までに1億1000万トンに拡大する方針。

エネルギー相はOPEC脱退について「テクニカル」なものであり、天然ガスの生産に集中する方針だと述べた。

しかし一方で、脱退後はOPECの合意に拘束されないと言明した。また、「OPECは一国によって管理されている」と指摘し、サウジを暗に批判した。

今回の離脱発表は、サウジアラビアとの政治的対立も影響したと見られる。

2017年6月5日、サウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国(サウジアラビア 、UAE、バーレーン)とアフリカ大陸にあるイスラム国家の一部(エジプト、イエメン、モルディブ)は、Qatarに対して国交断絶を表明した。

断交理由には、サウジアラビアと対立するイランへの過度な接近やムスリム同胞団への支援を挙げている。

ムスリム同胞団については、エジプトが2013年に、サウジアラビアが2014年にテロ組織に指定している。

Qatar外相は「事実無根。決して降伏しない」と表明し、対抗姿勢を打ち出した。

その後、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトの4カ国は、Qatarに対し13項目にわたる要求を送付した。

要求の中には、アルジャジーラの閉鎖、カタール国内に存在するトルコ軍基地の停止、イランとの外交関係の縮小、過激派組織との関係断絶など があると報じられた。

Qatarはこれらの要求を拒否したうえで、各種の対抗措置をとった。

経済制裁が違法だとしてWTOに提訴するとともに、禁輸となった物資の輸入先をオマーンやインド、イラン、トルコへ切り替え。
LNGの年間生産量を従来の7700万トンから1億トンへ増やす計画を発表 。
欧米から戦闘機やコルベットを購入するとともに、トルコ軍と合同軍事演習を実施。

2018年4月、サウジアラビアがQatarとの国境線沿いに運河を建設する構想が報道された。 報道では、サウジアラビアは全長60キロに及ぶ国境沿いに軍事基地と核廃棄物処理場幅約200メートルの運河を建設し、Qatarを物理的にも孤立させるという。

SK Innovationは11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。

韓国企業が米現地に電気自動車用バッテリー工場を建設するのは、2012年に完成したLG Chemのミシガン州ホランド工場(下記)に次いで今回が2度目となる。

SK Innovationは、LG Chemと同様、米国と中国と極東、そして欧州というEVマーケットのシェア9割を占める地域をカバーする。

下記の通り、北米でVolkswagenグループへの供給が決まっている。

Commerce工場は112万2000平方メートルの敷地に新設され、来年初めに着工して2022年に完成する予定。年間 9.8GWhの規模で建設される。

新工場が完成すればSK Innovationは韓国(忠清南道瑞山市)とハンガリーKomárom )、中国(常州)を含めて「グローバルの四角生産体制」を構築することになる。

新工場は、瑞山工場(4.7GWh)の2倍を超える規模で、常州工場(7.5GWh)と、2022年に完成予定のKomárom工場(7.5GWh)を合わせれば、全体の生産能力は約30GWhに増える。

稼働 建設
韓国(忠清南道瑞山市) 4.7GWh
中国(常州) 7.5GWh
ハンガリー(Komárom 7.5GWh
米国(Commerce 9.8GWh
合計 12.2GWh 17.3GWh
総計

29.5GWh


SK Innovationは
韓国中西部の瑞山の主力工場に約2000億ウォンを投じて7つ目の生産ラインを設けた。年産能力は2018年後半に2割増えて容量4.7GWhに拡大した。


SK Innovationは2017年11月30日、
ハンガリーにEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると発表した。投資額は8400億ウォン(約840億円)。約43万平方メートルの敷地に年間容量7.5GWhのリチウムイオン電池工場を建てる。1回のフル充電で500キロメートル走行可能なEVに搭載可能な新型の電池を生産するとみられる。

ハンガリーではSamsung SDIが2017年5月にグドゥ(Goed)市に、蔚山と中国の西安とに次ぐ3つ目の工場を新設した。

Volkswagenグループは2018年11月13日、SK Innovationから電池セルを調達すると発表した。SKIから調達した電池は、北米および欧州で販売するVWグループの電動車に搭載する予定。

VWグループへの電池サプライヤーは、LG Chem、Samsung SDI、中国CATL(寧徳時代新能源科技)の3社にSK Innovationが加わり、これで4社目となる。

当面、LG ChemとSamsung SDIが担っている欧州向けEVの電池サプライヤーにSKIが加わることになるが、2022年からは北米向けの需要にも対応する。Commerce工場から供給する。

なお、CATL(寧徳時代新能源科技)はVWの中国での戦略的パートナーであり、2019年から中国向けEV電池の供給を始めることが決まっている。

ーーー

自動車用バッテリーでは、韓国の3社が競っている。

LG Chem は11月28日、ポーランドのヴロツワフ(Wroclaw)工場の増設に571百万ドルを投じることを決めた。ポーランドの能力を現在の年間10万個から30万個に引き上げる。

稼働 建設
韓国(梧倉〉 10万個=6GWh
中国(南京) 5万個=3GWh
米国(Holland 3万個=1.8GWh
ポーランド(Wroclaw) 10万個=6GWh 20万個=12GWh
合計 28万個=16.8GWh 20万個=12GWh
総計

48万個=28.8GWh

米国工場については下記参照。

2013/2/15 LGの米リチウムイオン電池工場への批判

2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止 

ポーランドでは子会社の LG Chem Wroclaw Energy で生産している。

付記

LG化学は2018年10月23日、南京の電気自動車バッテリーの第2工場の起工式をに開催した。2023年までに2兆1000億ウォンを段階的に投資し、高性能電気自動車バッテリー(走行距離320km基準)50万台以上の生産能力を確保する計画。2019年末から1段階の量産を開始する。

LG化学は2019年1月10日、1兆2,000億ウォン(約1,155億円)を投じ、中国南京のバッテリー工場を増強すると発表した。
投資額のうち、半分の6000億ウォンは車載電池、残りはスマホやパソコン向け電池の生産ラインに投じる。


Samsung SDIは2017年5月にハンガリーのグドゥ(Goed)市に、蔚山5万と中国の4万とに次ぐ3つ目の工場を新設した。

稼働
韓国(蔚山 5万台
中国(西安 4万台
ハンガリー(Goed 5万台
合計 14万台


なお、Samsung SDI は11月29日、ミシガン州Auburn Hills に62百万ドルを投じて電気自動車用バッテリープラントを建設することを明らかにした。

Bayerは11月29日、合理化策を発表した。

6月7日にBayer のMonsanto 買収が完了した。買収額は総額625億ドル。

買収したMonsantoの除草剤 Roundup について、カリフォルニアの陪審員が8月10日に、発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。
しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

Monsanto の買収完了で今後の事業の方向を明確化するとともに、大規模な合理化を打ち出し、株式市場にアピールする。

合理化の内容は次の通りで、競争力を強化し、2022年にはMonsanto買収に伴うシナジー(10.4億ユーロ)を含め、年間26億ユーロの貢献を見込む。

人員削減は2021年末までに行う。

合理化 人員整理
(2021年末までに)
除却損
コア
事業
Pharmaceuticals ・イノベーションの加速、社内R&Dのリストラ
・血友病事業:ドイツWuppertalの第Ⅷ因子設備を
 使わず、米Berkeleyの組換え第Ⅷ因子設備に集中
R&D 900
Wuppertal(第Ⅷ因子設備) 350
Wuppertal設備
   6億ユーロ
Consumer Health ・外部での開発が有利と思われる製品の切り離し
 スキンケア (Coppertone™)、
 フットケア (Dr. Scholl's™) など
改組 1,100 Merckからの買収製品、滇虹集団、その他、合計27億ユーロ
Crop Science ・Monsanto事業との統合 Monsantoとの統合 4,100
Animal Health ・処分を検討(やり方は今後決める)
Corporate 5,500~6,000
Currenta (60%持分) ・処分を交渉する。
合計 約 12,000


1) Pharmaceuticals、Consumer Health、Crop Science をコア事業とし、強化を図る。

Pharmaceuticalsでは、R&Dのリストラを行う。血友病関連では従来法設備を廃棄する。

Consumer Healthではスキンケア、フットケア製品などを切り離す。

付記

Dr.Scholl ブランドは北米とラテンアメリカではBayerが所有(Merck & Co. から買収)。Bayerは2019年7月、米の投資会社Yellow Wood Partnersに売却した。

その他の地域はReckitt Benckiserが所有していたが、2014年7月にドイツのprivate equity会社のAureliusが買収した。

Merck & Co. から買収したConsumer Care製品や買収した中国の漢方薬メーカー滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)、その他の除却損を計上する。

2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収 

2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収 

Crop Scienceでは買収したMonsantoの事業との統合を成功させる。統合により4,100名の人員減を行う。

特別損失を控除する前のシナジー効果を2022年で10.4億ユーロとみている。(うち、コストのシナジーが8.7億ユーロ)

2) 非コアとした Animal Health は処分する。処分方法は今後検討する。

3) 本社機能、補助機能、ビジネスサービスなど  5,500~6,000の人員削減

4) Currenta GmbH & Co.   持分60%の処分

Bayerはドイツに、Leverkusen、Dormagen、Krefeld-Uerdingenの3つのChempark を持つ。石油化学等が中心である。

Bayer AGと、Bayerから分離したLanxess AG が共同で使用しているため、Chemparkの運営(用役、環境、安全、保安、分析、教育、その他のサービス)をBayer 60%、Lanxess 40% のJVのCurrenta GmbHで行ってきた。このJVはChemparkの外の需要家にもサービスを提供している。

Bayer は2014年に、Life Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力することとし、 MaterialScience事業を別会社として上場させることを決め、2015年9月1日、Covestro として分離独立した。

2015/9/2 Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立

MaterialScience事業の分離で、今やこれらのChemparkの中でBayerが占める割合は大きく減少し、Currenta GmbH の60%を保有するのは正当化できないとする。

ーーー

買収したMonsantoの除草剤 Roundup の発がん性が疑われた訴訟は、今回の有罪判決に続き、米国各地で判決が出る。欧米メディアは賠償額が総額1兆円を超える可能性もあると報じている。

今回発表したリストラ策は株価の下支えだけではなく、巨額の賠償金に備える狙いもあるとみられる。

トランプ米大統領と習近平中国・国家主席は12月1日、G20出席のため訪問中のBuenos Airesで夕食会形式で首脳会談を開き、米国が中国への追加関税を猶予することを決めた。


ホワイトハウスの発表は下記の通り。

トランプ大統領は、2000億ドル分の中国製品について、2019年1月1日に追加関税を25%に引き上げるのを止め、当面 10%に留める。

トランプ米政権は2018年9月17日、中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表した。


家具や家電などに10%の関税を上乗せする。当初計画の25%上乗せを先延ばしにすることにより、米企業が代替サプライチェーンを探すなど対応策を講じるための時間的猶予を与える。中国が対米黒字削減や国内産業保護策の見直しなど、踏み込んだ政策変更に応じない場合、2019年以降は25%に引き上げる。

2018/9/20 米国、対中関税第3弾を9月24日発動 


これに対し中国は、金額はまだ合意できていないが、非常に多くの農産物、エネルギー、工業製品その他を米国から購入し、貿易のインバランスを減らす。
中国は米国の農家から直ちに農産物を購入し始めることに同意した。

両国は直ちに、(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪 (窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、90日以内に結論を得ることで合意した。

この間に合意できない場合、追加関税は25%に引き上げられる。

付記 
トランプ大統領は対中協議の責任者にアメリカ合衆国通商代表(USTR) のLighthizer 代表を指名した。政権きっての対中強硬派。90日は12月1日起算で、2019年2月末までの短期交渉となる。

(その他の事項)

習首席は、麻薬(強オピオイド)のFentanyl を規制物質とすることに同意した。米国に販売した場合、中国法で重刑に処せられる

大統領と主席は、北朝鮮に関して大きな進展があったこと、両者は金正恩委員長とともに、核のない朝鮮半島にすべく努力することで意見の一致を見た。大統領は金委員長に対する friendship and respect を表明した。

主席は、以前に承認しなかった米Qualcommによるオランダの NXP Semiconductors 買収について、再申請されれば承認すると述べた。

本年4月、米Qualcommによるオランダの NXP Semiconductors 買収を巡り、中国商務部は承認にはさらなる是正が必要だと指摘した。

7月26日午前0時が中国当局の承認を得る期限とされていたが、承認が得られず、Qualcommは買収を断念した。

2018/4/24 中国商務部、QualcommによるNXP買収の承認に慎重


トランプ大統領は、この会談を、米中の限りない可能性を示す素晴らしい、生産的な会合と呼んだ。



第一三共は11月30日、ヒト用の感染症予防・治療ワクチンの研究開発、製造、販売を行っている子会社の北里第一三共ワクチンの吸収合併を含む再編スキームを決議したと発表した。


概要は次の通り。

北里第一三共ワクチンの生産機能を2018年8月に設立した第一三共バイオテックに移管し、安定生産と品質レベルの向上を図る。

第一三共を存続会社、北里第一三共ワクチンを消滅会社とし、北里第一三共ワクチンを第一三共へ吸収合併することにより、北里第一三共ワクチンの生産以外の事業(研究開発、信頼性保証、販売等)並びに同社製品の製造販売承認を第一三共に承継する。

再編の時期は2019年4月1日とする。


経緯は次の通り。

第一三共は、1961年に北里研究所と提携し、ワクチン販売を開始した。

両社は2011年4月に、第一三共51%、北里研究所49%出資でワクチン専門の開発・製造発売会社
北里第一三共ワクチンを設立した。

北里研究所のワクチンの製造・研究開発機能を継承し、ヒト用の感染症予防・治療ワクチンの研究開発、製造、販売を行ってきた。

参考 2011/8/26 新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金

2012年3月2日、GSK Biologicals(ベルギー)、GSK Japan、第一三共はワクチン事業における戦略的提携として、折半出資による合弁会社ジャパンワクチンの設立の契約を締結したと発表した。

日本の医療ニーズに合致したワクチンの迅速な供給を実現するべく、GSKと第一三共が、ワクチンの後期臨床開発、マーケティング、営業機能を担う新会社を設立することとした。

ジャパンワクチンは7月2日に事業活動を開始した。

北里研究所と第一三共との合弁、北里第一三共ワクチンは存続する。

2012/3/6 第一三共とグラクソ・スミスクライン、ワクチン事業で戦略的提携

北里第一三共ワクチンは2015年6月および2017年9月に財務基盤の強化を図る目的で募集株式の発行を行い、第一三共がその総数を引き受け、同社の議決権比率を93.3%とした。

第一三共は、2017年11月30日、第一三共グループにおけるワクチン事業の基盤強化を図ることを目的に、北里研究所が保有する北里第一三共ワクチンの全株式を取得、北里第一三共ワクチンを完全子会社化した。

第一三共は、2018年4月27日の取締役会において、北里第一三共ワクチンを生産に特化した機能子会社とする再編方針を決定した。


これに基づき、今回の決定を行った。


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