2022年4月アーカイブ

インドのRelianceは4月26日、UAEのAbu Dhabi Chemicals Derivatives Company RSC Ltd (TA'ZIZ) との間で、RuwaisのTA'ZIZ Industrial Chemical Zoneで20億ドルを投じて、クロルアルカリ / EDC / PVC工場を建設するJVを設立する契約を締結した。

TA'ZIZはAbu Dhabi National Oil Co (ADNOC)と国営ファンドのADQのJVである。

生産能力は、クロルアルカリが94万トン、EDCが110万トン、PVCが36万トンと報じられている。いずれも同国で最初のもの。

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アブダビのRuwaisにはADNOCの油田(ADNOC Onshore)、同製油所、Abu Dhabi Polymers (Borouge)、Ruwais Fertilzerがある。

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)
2010/6/15 
UAEのBorouge、石油化学第三期計画進展

ADNOC と ADQはAbu Dhabi Chemicals Derivatives Company RSC Ltd (TA'ZIZ) を設立、RuwaisにTA'ZIZコンプレックスをつくり、グローバルスケールで多くの化学製品を生産することを計画している。

TA'ZIZ コンプレックスは3つのゾーンに分かれる。(下図の08と09)

 TA'ZIZ Industrial Chemicals Zone  ワールドスケールの化学品の生産、ほとんどが同国初である。

アンモニア、クロルアルカリ、EDC、PVC、メタノール、エラストマー、イソプロピルアルコール、無水マレイン酸

 TA'ZIZ Light Industrial Zone  上記の製品を使用し、下記の消費財を生産

  • Non-metallic pipes (PE, PP, PVC and etc.)
  • Pipe fittings (PE, PP and etc.)
  • Catalyst production
  • Plastics Recycling
  • Plastics masterbatches/compounding
  • Fiberglass and applications
  • Heavy duty bags
  • Shrink hood films

 TA'ZIZ Industrial Services Zone ユーティリティ、ロジスティック、各種サービス

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ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。詳細な理由は明らかになっていないが、ポーランドがガス購入でルーブル決済を拒否し、ロシアが圧力を強めた可能性がある。

また、ポーランド内務省は4月26日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)や、Gazpromを含めたロシア企業50社を対象に制裁を科すと発表した。資産凍結や、ポーランドへの入国禁止などが含まれる。この制裁とロシア産天然ガスの供給停止が関係あるかは不明。

付記 報道(5/5 BSフジ・プライムニュース)によると、ポーランド側が自らベラルーシからのパイプラインを閉めて、ロシア天然ガスの購入を停止したとのこと。

付記 

Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。

ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。

Gazpromは、「制裁対象者の利益となる取引や支払いが禁止された。Gazpromの場合はEuRoPol GAZが所有するガスパイプラインの使用が禁止される」と説明した。

ポーランドはベラルーシ経由のYamal Europeパイプラインでガスプロムからガスを輸入してきた。

なお、ウクライナを経由するパイプラインは現在も稼働しており、ウクライナも天然ガスを購入し続けているとされる。

Nordstream 2 は完成したが、認可をうけておらず、稼働していない。

2021/11/13


ポーランド政府は、一定のガス貯蔵量を確保しているほか、他国からの液化天然ガス(LNG)などの代替手段もあるため、国内供給は「安定している」としている。ただ、これまでロシア産ガスは国内消費の約5割を占めており、今後、産業用などの利用制限が必要となってくる可能性もある。

ロイター通信によると、ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。
ブルガリアのエネルギー省は4月26日、ロシアからのガス供給停止に対し「状況に対応するための措置を講じた」と主張した。同国ではこれまでガス輸入の約9割をロシアに頼ってきた。

ブルガリアはTurkStream pipelineを経由してロシアの天然ガスを購入している。

2020/1/10 トルコストリーム開通 


ウクライナ侵攻後では、ロシアが天然ガス供給を停止するのは初めてで、経済制裁などを強める欧州に揺さぶりをかける狙いがありそうだ。

ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好的と指定した国がロシアから天然ガスを購入する際には通貨ルーブルでの支払いしか認めない方針を示した。

欧州などの取引企業がガスを買う場合、国営ガス会社Gazprom傘下のGazprombank にユーロなどの外貨建てとルーブル建ての両方の決済口座を開設する必要がある。Gazprom は4月1日、需要家に指示した。

Gazprombankは口座に振り込まれた外貨を市場で売却し、ルーブルを買い入れる。その後、同行が取引企業の口座からルーブル建てで代金をGazpromに送金する仕組みをつくる。

2022/4/4 ロシア、天然ガス代のルーブル払い義務化 

欧州連合(EU)の欧州委員会は契約でドルやユーロでの支払いを規定している場合は応じるべきではないとの見解を示しており、ポーランドはルーブル決済を拒否している。

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ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。

買い手が直接ルーブルで払う場合は各国の市中で多額のルーブルを入手するのは困難だが、この場合は問題ない。

欧州委員会は、代金の支払いのためルーブルを買い、Gazpromに支払うのは契約条件違反で、ロシア制裁にも違反するとしている。

しかし、上図の通りであれば自らルーブルを買う必要はない。Gazprombankにルーブル口座を設定すること自体(元の契約にはない)を拒否するということであろうか。

住友金属鉱山は4月25日、インドネシア共和国Southeast Sulawesi ProvinceKolaka市Pomalaa地区でのニッケル製錬所建設Pomalaa Project事業化検討を進めてきたが、これを中止すると発表した。

2012 年に PT Vale Indonesiaと共同でPre-Feasibility Studyを開始し、2018 年からは 最終的な事業化調査を進めてきた 。

PT Vale Indonesiaの株主は、Vale Canada Limited 43.79%、国営PT Indonesia Asahan Aluminium(Inalum) 20.00%、住友金属鉱山 15.03%その他 21.18%
Inalum は2020年10月に主要各株主から譲渡を受けた。

2020/6/25 住友金属鉱山、インドネシアのニッケル事業会社の株式の一部を売却

新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、 許認可の取得手続きが難航、更に、ビジネスを早期に収益化するため迅速な建設や予算削減を求めるVale Indonesiaと、工期や採算の調整を慎重に進めたい住友金属鉱山で方向性の相違が生じ、Valeが第三者との協業の検討を始めたため、検討を中止せざるを得ないとの判断に至った。

住友金属鉱山の2021年の中期経営計画では、長期ビジョンとして「世界の非鉄リーダーを目指す」とし、ターゲットとして、ニッケル生産量15万トン/年としている。

また、大型プロジェクトの推進として、電池材料(正極材)生産能力増強とこのPomalaaニッケル精錬プロジェクトを挙げている。
(他に
チリ銅鉱山
Quebrada Blanca Phase2 とカナダのCôté金開発プロジェクト

ニッケル、コバルトは車載用二次電池の正極材に使用される。

ニッケル精錬に関しては、同社は世界に先駆け高圧硫酸浸出法(High Pressure Acid Leach:HPAL)実用化に成功した。従来は製錬の対象とならない低品位のニッケル酸化鉱から、ニッケルやコバルトといったメタルを回収できるプロセスで、未利用資源の有効活用という側面からも注目されている。

ニッケル鉱石は、フィリピンとインドネシアが2大産出国で、有力鉱山はアジアを中心に分布してい るが、地球上に存在するニッケル資源の多くは低品位酸化鉱と呼ばれるニッケル含有量のきわめて少ない鉱石である。

現在、フィリピンのコーラルベイニッケルとタガニートHPALでは、MS(Mixed Sulfide)と呼ばれるニッケルとコバルトの混合硫化物を生産、これを原料として日本のニッケル工場と播磨事業所で製錬を行ない、電気ニッケルや電気コバルト、硫酸ニッケルなどを製造し、正極材にしている。

鉱山 HPAL 能力
(千トン)

出資

鉱山所有
住友金属鉱山 三井物産 双日 Nickel Asia
Rio Tuba鉱山 Coral Bay Nickel 30→36 54% 18% 18% 10% Nickel Asia 60%
Taganito鉱山 Taganito HPAL 20 62.5%→75% 15.0% 22.5%→10% Nickel Asia 65%
Sulawesi Pomalaa 40


Nickel Asiaは
フィリピン最大手のニッケル鉱山会社 で、住友金属鉱山は2009年8月に16.5%出資、同年12月に25%に増やした。

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

住友金属鉱山では、Pomalaaプロジェクトを長期ビジョンの1つである「ニッケル 15万トン体制」の実現に向けたニッケル資源戦略の中心に据えていた。

同社では、この結果は遺憾だが、中期経営計画に掲げた「事業連携(ニッケル-電池)のバリューチェーン強化」ならびに製品の安定供給に向け、今後も資源の安定確保に努めていくとしている。

中国人民銀行(中央銀行)は4月25日、銀行の外貨預金準備率の引き下げを発表した。5月15日から現行の9%から8%とする。

人民元の下落に歯止めを掛けるための措置とみられ、「金融機関が外貨資金を利用する能力を改善する」ための措置と説明した。金融機関が人民元を売って外貨を買う動きを弱める。

上海などの主要都市のロックダウンを受けた経済見通しの悪化、米との金利差縮小で、人民元は3月2日の6.3107元を天井に下落に転じ、先週は2015年以来の大幅下落を記録、4月25日 に1年ぶりの安値の1ドル=6.5544元で通常取引を終えていた。

人民元は2020年5月から急上昇したが、これに対し中国人民銀行は外貨預金準備率を2021年6月15日から5%から7%に引き上げ (2007年に4%から5%に高めて以来、14年ぶり)、更に2021年12月15日からは9%に引き上げていた。


なお、これは外貨預金の準備率であり、一般の預金準備率は4月25日に0.25ポイント引き下げ(地方商業銀行は 0.50ポイント引き下げ)ている。

台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀(Morris Chang)の発言が波紋を呼んでいる。

4月14日にThe Brookings Institution and Center for Strategic and International Studies の会合にゲストとして呼ばれた。

テーマは「半導体の生産は米国に戻り得るか」"Can semiconductor manufacturing return to the US?" というもの。

https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2022/04/Vying-for-Talent-Morris-Chang-20220414.pdf

初めに、彼の経歴を説明した。

 1931年 中国寧波生まれ、香港育ち、第二次大戦で重慶に移住、戦後上海に移るが、共産軍の上海占領で再度、香港へ
 1949年訪米、Harvardへ。1年でM.I.T に移る。卒業後、Texas Instrumentに入社
 Texas Instrument では最終、CEO、COOに次ぐNo.3に昇進、世界全体の半導体事業を担当
 その後、同社が消費者事業に中心を転換、半導体事業は競争力を失った。

 52歳の時に同社を辞め、General Instruments の社長に就任、Trump Towerに住んだ。
 General Instrumentsは小企業を買収、大きく育てて売却する会社で、面白くなく、1985年に退職。

 Texas Instrumentの時に台湾に工場を作ったことがあり、台湾政府の関係者がIndustrial Technology Research Instituteにリクルート。
 ITRI で半導体を開発、TSMCが設立された。

 

その後、本題の"Can semiconductor manufacturing return to the US?" に入った。

TSMCはワシントン州のCamasに工場を持つが、今回、アリゾナ州 Phoenix に工場建設を決めた。

8-inch Fabs(200mm) WaferTech L.L.C.(ワシントン州 Camas) 
12-inch GIGA FABs(300mm) 建設中 アリゾナ州 Phoenix

まず、ワシントン州の工場の経験について述べた。

まず、製造の人材が欠けている。(There's a lack of manufacturing talents to begin with.)
米国ではこれは大した問題でないかも分からないが、米国で半導体を生産する場合には大問題だ。
オレゴン(実際はワシントン州)では25年かかった。台湾から技術者を送り、改善を図り、なんとかなった。

しかし、コスト差は変わらない。同じ製品で台湾より50%高い。それでもなんとか黒字だが、台湾とは比べ物にならない。
1997年に始めた際にはコストは台湾と同じと思っていた。ナイーブ過ぎた。
数年やって、仕方ないと受け入れた。それでも儲かっているから続けているが、増設はしない。

話題は建設するアリゾナ工場に移る。

Arizonaはスケールがもっと大きい。規模も大きく、技術ももっと先端のものだ。米国政府に言われて決めた。実際には私は退任しており、現在の会長が決めた。

米国は国内で半導体の生産を増やそうとしているが、たった数百億ドルの補助金を考えている。(議会は5年間で520億ドルの補助金の法案を審議中)
そんな額では十分でない。無駄に終わると考えている。なんとか工場を作るだろうが、単位当たりコストは高い。世界市場で、TSMCのような工場と競争しえない。

米国と台湾がもっと関係を深め、共同でやっていくのはどうかとの質問に対し、政治問題に関わりたくないとし、中国との関係を問われると次のように答えた。

状況が変わることを望んでいる。現在、すでにHuaweiへの出荷を禁じられている。1年以上もだ。以前は世界の誰にも出荷できたが、そんな時代は過ぎ去った。もっと悪化しないことを望んでいる。

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発言の理由の一つは、米政府が約束した補助金の法律がいまだに通っていないことへの不満である。

バイデン米大統領は2021年2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整える。

2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合 

米政府は、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルの補助金を決めた。

TSMCもSamusungもIntel も、これを確認したうえで新工場建設を発表している。

米上院は2021年6月8日、拡大する中国の影響力に対抗することを目的とした異例の超党派法案 United States Innovation and Competition Act を可決したが、半導体・通信機器の生産・研究の強化に5年間で約540億ドル(うち20億ドルは、深刻な供給不足に陥っている自動車向け半導体に充当)が含まれている。

2021/6/11 米上院、対中包括法案を可決

しかし、この法案は「中国対抗法案」との位置づけで、新興技術の研究開発や台湾の支援強化など様々な条項を盛り込んだため、下院との法案すり合わせに時間がかかった。

米下院は本年1月25日にようやく、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案The America COMPETES Act of 2022 を公表した。上院と同様、5年間で520億ドルの補助金を含む。

今後は下院で法案を可決したうえで、上下院で法案の一本化をまとめ、それぞれが議決することが必要で、いつ通るか不明である。

2022/2/1 米下院、半導体補助金法案を公表

なお、IntelのPat Gelsinger CEOが2021年は12月1日に、「米国政府は(TSMCのような外資ではなく) Micron TechnologyやTexas Instruments、Intelといった米国の半導体メーカーにこそ優先的に補助金を支給し支援をすべきだ」と述べた。

この時も張氏は「米国は、もう昔のような半導体が強い国に戻ることは不可能だ」と発言し、米への不満をあらわにしている。

日立製作所が、物流大手で株式の39%を保有する日立物流の株式を売却する方向で調整を進めていると各紙が報じた。

米大手ファンドのKKRに売却に向けた優先交渉権を与えた。優先交渉権は4月28日まで。ほかの投資ファンドもこれまで買収交渉に参加しており、交渉が最終的にKKRでまとまるかは不透明な面も残る。

交渉がまとまり次第、KKRは6000億円超を投じ、日立物流のTOBに乗り出す。KKRがTOBを実施すれば日立物流と日立製作所は賛同する見通し。

日立はKKRの買収後も1割の株式は保有し続け、物流システムなどでの協業は継続する。今回の売却で日立は2000億円前後の資金を得る模様。

付記 

KKRは4月28日、日立物流株をTOBで取得すると発表した。TOB価格は1株8913円。

日立製作所は4月28日、売却を発表した。

KKRのTOBには応じない。
日立物流の自己
株式取得じて売却する(譲渡価額2,220 億円)
総額 100 億円公開買付者親会社議決権付株式取得(議決権比率 10)
 これにより、KKRが日立物流の100%を取得した場合、うち10%は日立が所有することとなる。

20233月期連結決算におけるその収益として、事業再編等利益約 1400計上

日立は日立物流の株の59.01%を保有していたが、宅配大手の佐川急便を傘下に持つ「SGホールディングス」との経営統合を目指し、2016年5月に株式の29%をSGホールディングスに譲渡した。
世界で戦う日本企業の競争力向上に寄与するべく、両社の強み融合をめざした戦略的施策実現を企図した。(日立 30.01%、SG 29.00%)

しかし、SGホールディングスは 新型コロナウイルスの影響で物流業界を取り巻く環境が大きく変化し、期待された国際物流での相乗効果が薄れたたとし、2020年9月29日付で保有する日立物流株の一部を売却し、持ち分比率を15.27%に引き下げ た。売却分の一部を日立が買い戻したと見られる。
 (日立39.91%, SG 15.27%)

SGホールディングスは2021年4月15日、持分比率の変更を目的として、保有する日立物流の一部株式を市場外取引で売却した。
 (日立 39.91%、SG9.8%)

日立物流はその後も国際的な総合物流グループの形成に向けた提携などの模索を続けていた。

SGホールディングスへの株式売却は下記の非中核事業売却の一環であり、SGとの統合計画は元に戻ったが、売却を進める方向には変わりはない。

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日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針である。

非中核分野を次々に売却していった。上記のSGホールディングスとの統合を目指し、59.01%保有の日立物流の株式の一部をSGホールディングスに売却したのはその一環である。

2009年に上場子会社は22社あった。

2009年に日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス、日立プラントテクノロジー、日立マクセルを完全子会社とすべく、TOBを実施。いずれも上場廃止。

2014年に日立メディコと、2016年に日立モバイルと、株式交換を行ない、上場廃止。

2018年にクラリオンを売却した結果、2019年には日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ (2020/2 日立ハイテクに改称)の4社に減った。

2020年には上場4子会社のうちの日立化成株式を51.29%全てを 昭和電工に譲渡した。

2019/12/2 日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

日立製作所は約53%の株式を保有する上場子会社の日立金属を売却すると報道されていたが、米投資ファンドのBain Capital と日本産業パートナーズ、ジャパンインダストリアルソリューションズのコンソーシアムが独占交渉権を得たことが分かった。日立は持株全てを売却する。この場合、日立化成の場合と同様、上限なしのTOBとなる。

日立製作所は2021年11月30日、保有する日立金属の株式を売却する時期について、当初予定していた2022年3月期から2023年3月期に後ずれすると発表した。日立は日立金属株に対する公開買い付け(TOB)を2021年11月下旬に開始する予定だったが、一部の国で競争法に基づく手続きなどが完了していないという。

日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。

これにより日立製作所は以前の重工業企業から変身する。

2021/4/15 日立製作所、米GlobalLogicを買収、日立金属を売却 & 付記

日立製作所は2021年4月7日、上場子会社である日立ハイテクの完全子会社化に向けてのTOB(@8000円、総額5311億円)が成立したと発表した。買い付け予定株数の下限以上となったため、応募株式の全部を買い付ける。日立ハイテク株の保有比率は51.73%から90.55%に高まる。TOB成立により、日立ハイテク株は2020年5月18日に上場廃止となった。

今回、最後に残った上場会社の日立建機の持株の一部を売却し、子会社から持分法適用会社とする。

これで、2009年に22社あった日立の上場子会社はすべて無くなる。

2022/1/19 日立製作所、日立建機の株式を一部売却

インドネシアのPertaminaなど国営企業4社で設立したIndonesia Battery Corporation (IBC)は4月14日、2つの統合バッテリー計画の基本契約に調印した。ニッケル採掘から電池までのバリューチェーンを構築する。

Indonesia Battery Corporation(IBC)はインドネシアの国営4社:石油の Pertamina、電力のPLN、鉱業持株会社のMIND ID(Mining Industri Indonesia)、国営ニッケル・金鉱山のPT Aneka Tambang(ANTAM)が2021年に25%ずつの出資で設立した。

第一は、世界最大手の中国の電池会社 寧徳時代新能源科技(CATL)の子会社であるPT Ningbo Contemporary Brunp Lygend (CBL)との契約である

国営鉱業持株会社のMIND ID(Mining Industri Indonesia)の所有の1社でニッケルなど非鉄金属を扱うPT Aneka Tambang Tbk (ANTAM)を含めた3社で統合EVバッテリー計画の基本契約に調印した。

同プロジェクトにはニッケル採掘・加工から、EVバッテリー素材、EVバッテリー製造、バッテリーリサイクルまでを含んでいる。 能力は10GWhとされる。

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実現すれば、寧徳時代新能源科技(CATL) にとって海外で2つ目の工場となる。

寧徳時代新能源科技(CATL)は2022年4月4日、ドイツのリチウムイオン電池工場におけるバッテリーセルの製造許可を地元当局から取得した。

子会社 CATT(Contemporary Amperex Technology Thuringia)がドイツ中部のチューリンゲン州にある工業団地エアフルター・クロイツに建設する。

ドイツの自動車メーカーに電池を供給する予定で、生産能力は、まずは年間8GWhとし、将来的には14GWhまで拡大する。2022年末までに建設を完了し、生産を開始する見込み。

なお、BASFは2021年9月16日、CATLと協力のための戦略的提携を発表した。リチウムイオン電池用の正極材と蓄電池リサイクルでの協力で、(1)蓄電池の持続可能なバリューチェーンの構築、(2)CATLの欧州でのビジネス展開協力、(3)両社の気候中立目標達成への寄与を目指す。

第二は韓国の LG Energy Solution主導のコンソーシアムとの契約で、これもPT Aneka Tambang Tbk (ANTAM)を含めたもの。

LG Energy Solutionのコンソーシアムメンバーは、LG Energy Solution、LG Chem、LX International (旧 LG商事)、POSCO Holdings、中国のZhejiang Huayou Cobalt 浙江華友コバルト) である。

90億ドルを投資し、ニッケルから最終製品までの電池のバリューチェーンを完成させる。

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2021年7月末に、LG Energy Solution と現代自動車が共同で、インドネシアの首都ジャカルタ近郊にEV向けニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム酸リチウム正極(NCMA正極)を採用したリチウムイオン電池セル生産工場を建設することを発表した。

投資金額は両者の折半で合計11億ドル。2024年から、年間10ギガワット時(GWh)(EV15万台相当)の電池セルを生産する。



インドネシアの国営4社が設立した
Indonesia Battery Corporation (IBC)が中国のCATL、韓国の LG Energy Solutionとそれぞれ協働するもので、両計画を合わせた投資額は150億ドルに達する。

担当大臣は、インドネシアがEVバッテリーのグローバルリーダーの一つになる重要な一歩であると述べた。

インドネシアは電池の主要原料であるニッケルで豊富な埋蔵量 (2100万トンとされる)を持ち、国内に関連産業を集積させて車載電池やEVを主要な輸出品目に育てる思惑がある。

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参考

MIND IDはIndonesia Asahan Aluminiumの持株会社機能を独立させたもので、これにより、Indonesia Asahan Aluminiumはグループの事業会社となった。

アサハンアルミ(Inalum)はインドネシア国有のアルミニウム精錬会社であるが、2017年に政府の方針で、国有の鉱工業企業の持株会社となった。

2017年11月の政令で、非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTAM) 、錫のTimah Tbk PT (TINS)、石炭のBukit Asam (PTBA)の政府持ち株がアサハンアルミに譲渡された。
各社固有の経営資源と技術の相乗効果を狙う。

インドネシアのジョコ大統領は2018年7月12日、米鉱山大手 Freeport-McMoRan Inc.の現地法人 PT Freeport Indonesiaの株式の51%を国営鉱業大手のPT Indonesia Asahan Aluminium:Inalumが取得すると明らかにした。 世界第2の銅鉱山のGrasberg鉱山を取得する。

2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport Indonesiaの株式の51%を取得

大阪大学の妻木範行教授らの研究グループは4月18日、ヒトのiPS細胞から椎間板の中心組織(軟骨様髄核組織)を作って、同じ組織を切り取ったネズミに移植したところ再生し、椎間板の変性を防ぐことができたと発表した。

椎間板は背骨のすき間でクッションの役割を果たしているが、加齢などにより変形したり、無くなったりすると腰痛を引き起こす原因になる。

椎間板の中心部分を構成する組織が髄核で、脊椎にクッション性と可動性を与える。髄核の変性・消失は腰痛の原因になり、変性した髄核は治らない。再生治療が期待されているが、移植して髄核の代わりをする、即ち置換するような組織はなかった。

今回、研究グループは、髄核と軟骨の遺伝子発現を単一細胞レベルで網羅的に調べることにより、髄核の中の軟骨様髄核組織の性質を明らかにした。

椎間板は、中心部の髄核とそれを取り囲む線維輪で構成される。髄核は髄核細胞と髄核細胞が作る細胞外マトリックスからなる。

髄核の細胞外マトリックスの粘弾性・流体特性が、脊椎にクッション性と多方向への可動性をもたらす。また、細胞外マトリックスは、髄核細胞に適切な環境を提供することにより髄核細胞の分化に貢献している。

そして、ヒトiPS細胞を分化誘導することによって、遺伝子発現プロファイルが軟骨様髄核組織に似た組織(hiPS-Cart)を用意し、脊椎の髄核を摘出した動物モデルに移植した。

移植したヒトhiPS-Cartは少なくとも6ヶ月の長期にわたって生着し、椎間板の変性を防ぐことが明らかになった。力学試験により、移植組織は正常椎間板に近い力学特性を持つことが分かった。

さらに、移植後も椎間板の低酸素環境に順応した細胞分化をすることが分かった。髄核を置換する役割を果たしたことを示唆している。


日本では、約1300万人が腰痛を患い、その20-40%は椎間板変性が原因となっている。椎間板変性は、多くの場合において髄核の変性・消失から始まると考えられている。

研究グループは有効性や安全性を確認する実験を経て、3年後をめどに臨床研究を行いたいとしている。

2022年3月30日に国際科学誌「Biomaterials」に掲載された。

"Human iPS cell-derived cartilaginous tissue spatially and functionally replaces nucleus pulposus"

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逆に、椎間板の中心部分にある髄核や外側の線維輪の一部が突出することで脊椎周辺の神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす疾患が腰椎椎間板ヘルニアである。
椎間板ヘルニアや黄色靱帯(脊柱管の後方にある椎弓の間を結ぶ靱帯)が厚くなることで脊柱管を圧迫して狭くし(狭窄)、それによって脊柱管のなかの神経が圧迫を受けるのが脊柱管狭窄症である。


腰椎椎間板ヘルニアの治療には、手術をする方法と、保存療法(鎮痛剤薬、神経ブロック注射、温熱療法、牽引療法等)があったが、根本治療となる薬物療法は存在しなかった。

生化学工業は2013年1月、腰椎椎間板ヘルニアを適応症とするSI-6603(一般名:コンドリアーゼ)について厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表した。

2018年3月23日に承認、5月22日に薬価収載され、8月1日に科研製薬より発売された。

コンドリアーゼは、髄核の構成成分であるグリコサミノグリカン(GAG:コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等)を特異的に分解するコンドリアーゼという酵素を利用した注射薬で、椎間板内に直接投与することにより、GAGを分解して髄核を縮小させることで、神経への圧迫を減少させる。

タンパク質を分解しないため、血管や神経などの周辺組織に影響を与えないとされる。

2014/6/11 生化学工業、椎間板ヘルニア治療薬を開発 

厚生労働省の専門部会は4月18日、米 Novavax, Inc. の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補であるTAK-019(販売名は「ヌバキソビッド筋注」)の製造販売を承認ことを了承した。厚労省は近く承認する。国内で4種類目の新型コロナワクチンとなる。


付記 厚労省は4月19日、これを正式に承認した。


ウイルス由来のたんぱく質の一部を培養技術で増やし投与する「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプで、ワクチン未接種者は18歳以上を対象に、3~4週間間隔で2回、筋肉内に注射する。3回目の追加接種で使う場合は、2回目から一定の間隔をあける。1、2回目で別のワクチンの接種を受けた人に3回目でノババックス製を打つ交互接種も認める。

2~8度での冷蔵保存が可能で、輸送・管理がしやすいのが特徴。

米国などで約2万5000人を対象に行われた最終段階の治験では、発症予防効果は90.4%で、安全性の懸念は認められなかったとする。
武田は国内でも約200人を対象に実施し、海外同様良好な結果が得られたとしている。

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Novavax, Inc. から技術提供を受けた武田薬品工業が2021年12月16日、厚生労働省へ製造販売承認を申請した。特例対象となる米国、英国、カナダ、ドイツ、フランスのいずれでも未承認なので、通常承認の申請をおこなった。
日本での申請
直後の12月20日にEUの欧州委員会が承認している。 (これは特例対象にはならない)
米国では食品医薬品局(FDA)での審査が続いている。

提携概要:

- Novavaxが新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- NovavaxがアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成

武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備し、ワクチン原液から充填・包装まで製造する。

2021/9/9 武田薬品、Novavaxのワクチンを日本政府に供給 


ノババックスのワクチンの特長(2022/3/24 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料)



FDAは4月14日、呼気サンプルからコロナ感染を検出する「InspectIR COVID-19 Breathalyzer」の緊急使用認可を発表した。

InspectIR Systemes, LLC製のこの呼気検査機器は機内持ち込み手荷物ほどの大きさで、医療従事者が病院やクリニック、移動型検査場で使用できる。3分以内に結果が分かるという。

2409人を対象とした研究では、検査の感度(陽性サンプルを正しく識別する確率)は91.2%、特異度(陰性サンプルを正しく識別する確率)が99.3%だった。

また、ウイルス陽性が4.2%しかない集団で 陰性的中度(negative predictive value:検査結果が陰性と出た人のうち、真に疾患を有していない人の割合)が99.6%であった。

オミクロン変異体に焦点を当てた追跡臨床研究で同様の結果が出た。

この検査器は、ガスクロマトグラフィーガス質量分析(GC-MS)手法を使用して、化学物質の混合物を分離および識別し、呼気中のSARS-CoV-2感染に関連する5つの揮発性有機化合物(VOC)を迅速に検出する。

なお、FDAは、陽性だった場合はPCR検査で確認する必要があるとしている。

InspectIR Systemes, LLCによると、開発経緯は次の通り。

2018年にUniversity of North Texas のGuido Verbeck 教授は呼気からのアルコールや薬物を検出する機器を開発した。

Verbeck 教授らと テキサス州FriscoのInspectIR Systemは同年8月、opioid中毒が蔓延するなか (2016年の死者は42,249人)、呼気を分析することにより薬物使用を発見するシステムの商業化で協力することを決めた。

この技術をCOVID-19に応用した。2020年5月に臨床試験を開始した。(当時のテスト方法では偽陽性や偽陰性が多く出た。)

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東京大学の研究チームはこのたび、海洋生物からヒントを得て、超強力 な水中接着剤の開発に成功したと発表した。

一般的な接着剤は、被着体表面の水和水が接着剤と被着体間の相互作用を阻害するため、水中で接着強度が大幅に低下する。

東京大学大学院工学系研究科の江島広貴准教授らのグループは海洋生物の接着機構にヒントを得て、水中でも接着強度10 MPaを超える、超高強度水中接着剤の開発に成功した。

本接着剤は湿潤環境下においても高い接着強度を発揮できるため、手術用接着剤などへの応用が期待される。

4月13日に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。


沿岸土木工事、船舶、歯科、外科手術などの分野において多くのニーズがあるが、 上記の通り、水中接着は技術的困難が伴う。

しかし、海洋生物では、例えば、ムラサキイガイは海岸で岩に固着して生息しているが、水中接着タンパク質を長い進化の過程で獲得してきた。この接着原因タンパク質として、DOPAを多量に含むタンパク質ファミリーが同定されている。

これをヒントに、2017年に米国の研究者により、ポリスチレン骨格に2個の水酸基を導入すると優れた水中接着剤(接着強度 3 MPa)になることが報告され、2020年には3個の水酸基を導入することで4 MPaの水中接着強度を達成した。

今回、研究チームは、さらに多くのフェノール性水酸基(4個および5個)を導入した高分子を合成することに世界で初めて成功し、10 MPa(メガパスカル)以上の水中接着強度を達成した。

フェノール性水酸基数が増えるほど基材表面への吸着に有利になることが示唆された。 一方で、水中接着剤は疎水的であることが必要だが、フェノール性水酸基数が増えると高分子鎖はより親水的になる。

今回、一つのスチレンユニット上に4個および5個という多数のフェノール性水酸基をもつモノマーを新たに設計・合成し、疎水性モノマーと共重合することで、疎水性を損うことなく、これまでより多数のフェノール性水酸基を高分子鎖上に導入することに成功した。

本接着剤は手術用接着剤などへの応用が期待される。

エンビジョンAESCグループは4月14日、米ケンタッキー州Bowling GreenのKentucky TransparkでEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると明らかにした。
投資額は20億ドルで、生産能力は立ち上げ時で年30ギガワット時を想定、年内にも着工し、2025年の稼働を目指す。

従来よりも高性能な車載電池を独自動車大手Mercedes-Benzグループなど、複数の自動車世界大手へ供給する。

中国の遠景科技集団は2022年3月16日、傘下の車載電池メーカーのエンビジョンAESCが、ドイツの高級車大手Mercedes-Benzと車載電池の供給契約を結んだと発表した。

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エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は2019年4月1日、事業を開始した。

中国の再生可能エネルギー関連企業の Envision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。

日産自動車は2018年8月3日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision Group(遠景能源集団) に譲渡する契約を締結したと発表した。

日産自動車は当初、2017年8月8日に中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表したが、その後中止し、Envision Groupに売却した。

日産が売却したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を前身とする新会社エンビジョンAESCジャパン、日産がエンビジョングループに譲渡した米英のバッテリー会社や、NECが同グループに売却した電池の電極を製造するNECエナジーデバイスも加わる。

2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡


エンビジョンAESは2019年4月1日、中国の無錫に新工場を開設すると発表した。2020年に稼働し、2023年をめどに生産能力を20ギガワット時に引き上げる。2019年内に開発拠点も新設する。

AESCジャパンは2021年8月4日、茨城県の茨城中央工業団地に新工場を建設すると発表した。投資額は500億円。茨城県の20億円の補助金などを活用する。
生産能力は年間6ギガワット時で、将来的には生産能力年間18ギガワット時まで引き上げる。10月に着工し、2024年に量産開始を目指す。

エンビジョンAESCとRenault Groupは2021年6月、戦略的提携を結び、フランスに大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設すると発表した。

2024年に9GWh、2030年までに24GWhのバッテリー生産能力を持つギガファクトリーをフランスのDouaiに建設する。最大20億ユーロを投資して、将来の新型EVのルノー『R5』を含めたEV向けに、最新かつコスト競争力のあるバッテリーを生産する。

別途、Renault はフランスのスタートアップ企業Verkorに20%出資、フランスのDunkerque市に2026年までにギガファクトリーを稼働させる。生産能力は2025年に16ギガワット時(GWh)、2030年に50GWhとなる

日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。

稼働当初、9GWhで生産を開始する予定で、2030年までに最大25GWhへ生産能力を増強、最終的には、35GWhまで拡張することを想定している。

同社の能力(現状及び計画)は下記の通り。

日本 神奈川

2.6GWh/yr

英国 Sunderland 1.9GWh/yr
米国 Smyrna/TN 3.0GWh/yr
中国 無錫 20GWh/yr
日本 茨城 6→18GWh/yr
米国 Kentucky 30GWh/yr
フランス Douai 9→24GWh/yr
英国 Sunderland 9→25→35GWh/yr


これらの計画で、同社の世界の能力は約150GWh となり、2026年までに300GWhにするという目標に向かい前進する。

BioNTech SEは2月16日、アフリカでのワクチン供給改善の次の一歩に進んだと発表した。

"BioNTainer"と名付けたコンテナーシステムでのターンキイ方式によるmRNA製造設備を披露した。式典にはセネガル、ガーナ、ルワンダの大統領やWHOのTedros 事務局長などが出席した。

"BioNTainer"システムは、mRNA生産モデュールとワクチン生産モデュールから成るが、それぞれ6つのコンテナーに収まっている。

各コンテナーはISOサイズの2.6m x 2.4m x 12mである。これでワクチンの製剤までを行ない、充填・包装はローカルアパートナーに引き継がれる。

2つのBioNTainerはそれぞれがクリーンルームで、BioNTechの技術が使用されている。

アフリカ諸国の必要とするmRNA-baseワクチンの生産を目標とし、Pfizer-BioNTech のCOVID-19 ワクチンのほか、BioNTech が開発、認可を狙っているマラリアワクチン、結核ワクチンなども対象とする。

Pfizer-BioNTech のCOVID-19 ワクチンの場合、1つのシステムでを年間50百万人分の生産ができる。

アフリカでのこの方式での生産は、セネガル、ルワンダ、南アで計画されており、最初の設備の建設は2022年央に始まる予定。


一方、Modernaも2021年10月にアフリカで年間5億回分のワクチンを生産することを検討していると発表した。5億ドルの投資を考えており、立地の選択をまもなく開始するとしている。

第一三共は4月9日、テキサス州東部地区連邦地方裁判所 の陪審が、同社の抗がん剤 ENHERTU ®(トラスツズマブ デルクステカン) Seagen Inc.の米国特許No.10,808,039'039 を侵害しているとの評決を下したと発表した。

本剤は、新規の薬物トポイソメラーゼI 阻害剤を、独自のリンカーを介して、HER2発現がん(乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんなど)を対象とする抗HER2抗体に結合させた抗体薬物複合体ADCである。

がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める。

トポイソメラーゼI 阻害剤は、癌細胞のDNAの2重らせん構造のうち1本を切断し、異常な細胞増殖を抑えることでがん細胞を殺す。


第一三共は2019年に抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携すると発表し た。

両社は日本を除く全世界において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化する。第一三共は本剤の製造及び供給に責任を持つ。

日本を除く全世界での開発・販売等の費用と利益は両社で折半する。

売上計上は、日本、米国、及び第一三共が拠点を有する欧州及びその他地域の複数国では第一三共が、中国、豪州、カナダ、ロシア及びその他地域ではAstraZenecaが行う。

AstraZenekaは第一三共に下記の対価を支払う。

契約一時金 13.5億米ドル
開発マイルストン達成等で  最大 38億米ドル
販売マイルストン達成で  最大 17.5億米ドル
支払総額 最大 69億米ドル

両社は2019年12月23日、ENHERTU®(トラスツズマブ デルクステカン)について、米国食品医薬品局より「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として販売承認を取得したと発表した。

2019/4/1  第一三共、抗がん剤でAstraZenecaと戦略的提携、最大で69億ドル受領  

両社は本年1月28日、米国食品医薬品局より「トラスツズマブを含む前治療を受けたHER2陽性の局所進行または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん」を適応として販売承認を取得したと発表した。米国で2つ目の承認となる。


第一三共はこのADCについて、抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

しかし、米国のSeagen Inc(旧称 Seattle Genetics, Inc.)が第一三共のADC技術が、同社の保有する米国'039 許」に抵触するとして、2020年10月にテキサス州東部地区連邦地方裁判所に提訴した。

第一三共は、2008年7月からSeattle Genetics, Inc.抗体薬物複合体(「ADC」)の共同研究を実施したが、新薬開発の成果がでないとして2015年6月に関係を解消していた。

2019年にSeattle Geneticsから第一三共のADC品に関する特定の知的財産権の帰属を主張して異議の通知をうけた。しかし、ADCの共同研究は現在の第一三共のADC品とは全く異なるため、同社の主張は根拠がないと考えており、デラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起した経緯がある。

これを受け、第一三共は2020年12月に'039特許 そのものが無効であるとして米国特許商標庁に特許付与後レビュー(Post Grant Review:PGR)の開始を請求 、米国特許商標庁は'039 特許の有効性を審査するため、本年4月7日にPGRの開始を決定した。

今回、陪審員は'039特許の故意侵害があったと認定、陪審審理に至るまでの期間のSeagen社の損害額が41,820千ドルであると判断した。

Seagen社は2024年の'039特許の期間満了までの売上に対するロイヤリティ支払い命令を出すよう、裁判所に求めている。

裁判所は現在のところ、懲罰賠償やロイヤリティ支払いについて判断していない。

第一三共では、今回の陪審評決に承服できないとして、PGRの手続きに加え、陪審評決について陪審審理後の申し立てや控訴を含むあらゆる選択肢を検討するとしている。

Seagen側は別途、第一三共に対し、第一三共が使用する技術の所有権に関し、調停に持ち込んでいるとしている。第一三共の製品のリンカーや他のADC技術がSeagen社のADC技術の改良であり、2008年の両社の提携契約で所有権は自動的にSeagenに帰属するとしている。

但し、第一三共は調停については触れていない。

建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害をめぐる神奈川第二陣訴訟で、神奈川県の元労働者ら62人と国の和解が4月8日、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で成立した。


建設現場でのアスベスト(石綿)対策を国が怠ったため肺がんや中皮腫になったとして、県内の建設労働者と遺族64人が国と建材メーカー43社に16億9700万円余りの損害賠償を求めた「建設アスベスト神奈川第2陣訴訟」で、横浜地裁は2017年10月24日、原告39
に総額3億円を払うよう、国と建材メーカー2社(ニチアス、ノザワ)に命じる判決を言い渡した。

この控訴審で東京高裁2020年8月28日一審横浜地裁判決を変更、国と新たにエーアンドエーマテリアルを加えたメーカー3社の賠償責任を認め、原告64人に計約9億6千万円の支払いを命じた。

一審横浜地裁判決が労働関係法令で保護対象となる「労働者」に該当しないとしていた、個人事業主「一人親方」に対する国の賠償責任も新たに認定した。


本件の上告を受け、最高裁第二小法廷は2022年2月9日、メーカーに対する原告側の上告を受理しない決定をした。メーカー3社の上告(下記を除く)も却下した。
これにより、2審・東京高裁判決のうち、ニチアス、エーアンドエーマテリアル、ノザワの3社に約4億9000万円の賠償を命じた判断が確定した。

建物の解体作業に従事するなどした原告5人と、メーカー3社のうちエーアンドエーマテリアルとニチアスから意見を聞く弁論を3月28日に開くと決めた。2審では解体従事者らに対する2社の賠償責任を認めており、結論を見直す可能性がある。

この決定は、建材メーカーの責任割合を高い水準で認めた東京高裁判決を最高裁で確定したことに大きな意味がある。

国と原告間の訴訟は継続するが、最高裁が昨年5月に先行訴訟の判決で国の責任を認めたことを受け、各地で順次和解が成立しており、同様に協議が進む見通しであった。

今回、原告と国の和解が成立したもの。

弁護団によると、2021年5月の最高裁判決に基づき、国と原告側が結んだ基本合意に沿ったもので、国が総額約5億2100万円を支払うなどとするもの。

建物の解体作業に従事するなどした原告5人と、メーカーのエーアンドエーマテリアルとニチアスとの訴訟は、同小法廷で6月3日に判決が言い渡される。

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最高裁判所第1小法廷は、2021年5月17日、建設アスベスト訴訟4事件(神奈川第1陣、東京第1陣、京都第1陣、大阪第1陣)において、国及び建材メーカーらの責任を認める判決を言い渡した。

最高裁第一小法廷が担当する4件のうち、横浜分を除く3件は既に判決が出ているが、いずれも理由なしで原告または被告側の上告を却下し、一部の賠償が確定していた。
また高裁判決の一部については判断をせず、その後に弁論を開き、双方の意見を聴取した。

一人親方への責任、メーカーの責任、屋外作業者への責任で、判断が分かれていた。

今回、4件について最高裁としての判断を下したもので、裁判官5人全員一致の意見である。

(国の責任)

国は石綿の吹き付け作業を禁じた1975年10月1日には、肺がんや中皮腫の危険性を認識していたと指摘した。
建設事業者に労働者への防じんマスク着用を義務付けたり、建材に危険物と表示するようメーカーを指導したりすることを怠ったとし、国が石綿使用を原則禁止した2004年9月30日までの29年間を違法と判断した。

(メーカーの責任)

メーカーが警告表示なしに建材を販売し、元労働者らに石綿を吸わせる結果になった点も違法と認定した。

労働者は複数の現場で作業するため、 「複数の企業が個別にどの程度の影響を与えたかは不明」だが、シェアの高いメーカーの製品は現場に届いた可能性が高いなどとして各社の共同不法行為(民法719条1項後段類推適用)を認め、「各社は連帯して損害賠償責任を負う」とした。

下記のシェア上位企業10社を対象とし、メーカーごとの責任の範囲や賠償額については、高裁で審理することを命じた。

エーアンドエーマテリアル、神島化学工業、日鉄ケミカル&マテリアル、大建工業、太平洋セメント、
ニチアス、日東紡績、日本バルカー工業、ノザワ、エム・エム・ケイ

(救済対象)

労働者のほか、労働法令では労働者とみなされない個人事業主の「一人親方」についても、「労働者と同等に保護されるべきだ」として救済対象に含めた。
一人親方を救済しないことは「合理性を欠き、違法」だと結論付けた。

屋内作業者が対象となる。解体工 については国の責任は認めたが、メーカー責任は認めず。
(メーカーの場合、仮に警告表示していたとしても、解体時には警告を認識できないため、被害は回避できない。)

主に屋外で作業していた元労働者への責任は「国やメーカーが危険を認識できたとは言えない」として認めなかった。
屋外作業でのアスベスト濃度について、「規制値を下回っていたとするデータもある」などとして訴えを全面的に退けた。
 
    建材メーカー
対象職種 屋内作業者
解体工
屋外工 


2021/5/19 最高裁、建設アスベスト訴訟で 国と企業の責任認める


これを受け翌5月18日、菅首相は総理官邸で原告団・弁護団と面会して謝罪し、国と建設アスベスト訴訟原告団、建設アスベスト訴訟全国弁護団会議及び建設アスベスト訴訟全国連絡会との間で基本合意書を締結した。

最高裁判決において、労働安全衛生法に基づく規制権限行使が不十分であったことが国家賠償法の適用上違法と判断されたことを厳粛に受け止め、被害者及びその遺族の方々に深くお詫びするとし、以下を取り決めた。

ア 国は、係属中の訴訟について、
 ① 「1975年10月1日から2004年9月30日までの間に屋内作業に従事した者」又は
   「1972年10月1日から1975年9月30日までの間に吹付作業に従事した者」で
 ② 「石綿関連疾患に罹患した者又はその相続人」に対し
 ③ 民法724条所定の期間制限に抵触していない限り
  病気の軽重に応じて一人550万円から最大1300万円の和解金(喫煙等による減額あり)、和解金の10%の弁護士費用、
  長期間の訴訟対応の負担を考慮した解決金総額30億円を支払う。
イ また未提訴の被害者に対しても、国は一人550万円から最大1300万円を支払うとともに、
ウ 今後石綿被害を発生させないための対策や医療体制の確保、被害者に対する補償について、さらに継続的な協議を行うこと

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000793515.pdf


これ以降、この基本合意書に基づく和解が順次なされている。

米厚生省のCenters for Medicare & Medicaid Services(CMS)は4月7日、米Biogenがエーザイと共同開発したアルツハイマー病治療薬ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)のMedicare(高齢者・障害者向け医療保険制度)適用対象について、特定の臨床試験に参加する患者に制限する計画を最終決定した。

これにより、アルツハイマー病患者の大半は
ADUHELMへのアクセスを事実上阻まれる。これの撤回を働き掛けていたBiogenにとり、今回の最終決定は打撃となった。

ただ、CMSの当局者は、将来の大規模試験で臨床的利点が明確に示され、米食品医薬品局(FDA)から完全な承認を得たアルツハイマー病治療薬については、Medicareの適用対象をより幅広くするとしている。

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米食品医薬品局(FDA)は2021年6月7日、エーザイと Biogenが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approval)したと発表した。

従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

2021/6/8 エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認

しかし、有効性への疑義などから普及が進んでいない。

米食品医薬品局(FDA)のJanet Woodcock長官代行は2021年7月9日、ADUHELMについてFDAの承認手続きに疑義が生じたとして、米保健福祉省の監査部門に調査を要請したと発表した。

2021/7/12 FDA、アルツハイマー新薬承認手続きにつき調査を要請

Centers for Medicare & Medicaid Servicesは2022年1月11日、ADUHELM脳内の有害タンパク質、アミロイドを標的とする他のアルツハイマー病治療薬のMedicareの適用を臨床試験に参加している患者に制限する提案を公表した。この決定は暫定的なもので、今後30日間パブリックコメントを募る期間が設けられ、最終決定は4月に下される見込みとされた。

CMSは年間費用が28,200ドルに上るADUHELMを給付対象とする前に、効果に関する追加のエビデンスを求めている。

FDAは2021年6月にベネフィットを確認する追加試験の実施を条件に「迅速承認」制度の下で承認したが、CMS当局者はそのリスクバランスについて異なる見解を示唆し、ランダム化試験の参加者だけに適用を制限するという、最も厳しい基準の1つを採用した。

当局者は、アルツハイマー病患者にとって助けになり得る一方で、副作用をもたらす可能性もあることが徹底的な分析で判明したとし、副作用として考えられる症状には頭痛やめまい、転倒のほか脳出血もあり得るとした。 「われわれの最大の目標は、恩恵が分からない医療介入で生じかねない副作用からメディケア受給者を守ることだ」と述べた。

これを受け、Biogenは「この決定はFDAが承認した治療に対し、特に十分な医療を受けられない患者のアクセスを大きく制限することになる」とコメントした。

今回、CMSはこの案を最終決定した。「現時点で症状改善を示す十分な根拠がない」と理由を説明している。

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エーザイは2022年3月15日、ADUHELMについて、2023年1月以降は共同開発・販売から手を引き、販売額に応じた収入を得る契約に切り替えると発表した。

BiogenはADUHELMに関し、全世界における単独での意思決定権および商業化権を持つ。エーザイは、ADUHELMに関して、ロイヤルティの受領以外に、いかなる経済的権利・義務も有しない。

エーザイは同じく両社で共同開発する次期候補薬BAN2401に経営資源を集中させる。

2022/3/18 エーザイとBiogen、アルツハイマー病治療薬の提携契約を変更    

米議会は4月7日、ロシアと、侵攻に協力したベラルーシに対し、世界貿易機関(WTO)ルールに基づく「最恵国待遇(MFN)」を取り消す法案と、ロシア産原油の輸入禁止法案を可決した。


米議会下院は3月17日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア
と、侵攻に協力したベラルーシの製品に高い関税を課す制裁法案(Suspending Normal Trade Relations with Russia and Belarus Act)を賛成多数で可決した。

但し、この法案にはGlobal Human Rights Act の人権条項が折り込まれているのが問題となった。人権侵害の外国人(any foreign person)への制裁で、ロシアとベラルーシ以外の外国人も全て対象となる。

下院では民主党と共和党がことごとく鋭く対立するなかで、両党が賛成したが、共和党議員8人 のみ反対した。

反対した共和党議員8人も、正常貿易関係の断絶には同意するが、法案に含まれた人権関連制裁条項が、大統領に過度な権限を与えるとして反対票を投じた。

Andy Biggs 議員は、大統領がこの条項を「中絶の権利の反対者」を罰することに利用することを懸念すると述べた。

上院では民主党のシューマー院内総務は、ウクライナ政府を支援するため、全会一致での早期可決を呼び掛けたが、人権を巡る条項について、範囲が広すぎるとの懸念が一部の共和党議員の間で浮上し、議決できないでいた。

ロシア産原油の輸入禁止法案についても下院は3月10日に可決しているが、上院はまだ可決していなかった。しかし、バイデン大統領は3月8日に、追加経済制裁としてロシア産の原油やLNG、石炭などの輸入を禁止する大統領令に署名し、即日発効しているため、支障はない。

2022/3/30 米上院、 対ロシア制裁法案の審議遅れ

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今回、ロシアとベラルーシの最恵国待遇を取り消す法案については、Global Magnitsky Human Rights Accountability Actの名で知られる法律で対象となる人権侵害を" gross human rights violations(重大な人権侵害)"から "serious human rights abuse(深刻な人権侵害)" に修正し、対象となる人権侵害の範囲を狭くすることで折り合いがついた。

法案によると、成立の翌日以降、ロシアとベラルーシからの輸入に対して、米国の品目別関税率表のコラム2に記載の関税率が適用されることになる。
(コラム2とは、米国が正常貿易関係を与えていない国に対する関税率を記したもので、これまではキューバと北朝鮮のみが対象となっていた。)

法案は大統領に対して2024年1月1日まで、コラム2記載の関税率を引き上げる権限を与えている。ロシアの主要な輸出品目の天然資源については、コラム2の関税率が低い場合も多いため、そのままでは制裁の意味をなさないとの認識から加えられた。

ロシア産原油の輸入禁止法案は、既に大統領令で実施されているものを法制化するものである。

上院は両法案について100 対 0 の賛成で通し、下院に再送付した。

下院では前者については420対3、後者については413対9の賛成多数で可決した。

近くバイデン大統領の署名を経て成立する。

米上院は4月7日、バイデン大統領が連邦最高裁判事に指名したKetanji Brown Jackson(51歳)の就任を賛成53、反対47で承認した。

白人以外では4人目の、黒人女性として初の、最高裁判事になる。女性としては6人目で、現役女性が4人となる。


バイデン大統領は1月27日、米最高裁の
Stephen Breyer 判事(83歳)の引退を発表、2月25日に後任として、首都ワシントンの連邦高裁判事のKetanji Brown Jackson(51歳) を指名した。

2022/3/1 米最高裁判事に黒人女性を指名

最高裁判事の承認については、上院司法委員会で聴聞会を経て上院への人事案送付を議決し、上院本会議で採決する。

上院司法委員会が民主、共和両党議席が11対11、上院本会議は50対50で拮抗している。

司法委員会は4月4日に採決したが、党派に沿い、賛成11、反対11であった。

司法委の議決が同数の場合は、上院運営規則で本会議が決定を代行することができるが、その本会議も民主、共和議席が同数である。

仮に本会議も50対50の場合、上院議長として副大統領が投票できるかどうかが問題となる。上院の「助言と承認」に関しては副大統領に投票の権限がないという説があるが、これまでにこの事態は発生していない。

今回の採決では共和党からMitt Romney議員など3議員が賛成に回り、民主党の票と合わせて賛成票が過半数を超えた。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 3 48 2 53
反対 47 47
合計 50 48 2 100



最高裁判事の上院での承認については、下記の経緯により過半数で行われる。

2013年にオバマ大統領が指名した公職者承認案のほとんどを共和党がフィリバスターで妨害した。

このため、民主党は2013年11月21日、手続き票決の可決定足数を60票から51票に引き下げる法案(「核オプション」)を賛成52票、反対48票の僅差で成立させた。

但しこの時点では、最高裁判事は終身制で影響力が大きいことなどから、最高裁判事の承認は規則変更の対象外とし、60議席の条件を維持した。

米上院本会議は2017年4月7日、トランプ大統領が保守派のNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事を最高裁判事に指名した人事を 54 対 45 の賛成多数で承認した。

承認は、「核オプション」(nuclear option)と呼ばれる禁じ手を使って行われた。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認



Breyer
判事は6月下旬に退任するとみられており、Jackson判事はその後、就任する。最高裁判事の構成は保守派6人、リベラル派3人で変わらない。

 性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ヒスパニック Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
             
Stephen Breyer 男性 1938/8 ユダヤ系 Bill Clinton 1994年8月3日 リベラル
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden   リベラル

1789年の最高裁設立以来、白人以外の最高裁判事はわずか3人で、今回で4人となる。

1967年 Thurgood Marshall アフリカ系男性
1991年 
Clarence Thomas  アフリカ系男性(現役)
2009年 Sonia Sotomayor  ヒスパニック系女性(現役)

今回  Ketanji Brown Jackson アフリカ系女性

女性としては6人目で、現役が4名となる。

1人目は1981年指名のSandra Day O'Connor 判事、2人目は1993年指名のRuth Bader Ginsburg 判事。

東芝は4月7日、取締役会を開き、社外取締役で構成する特別委員会を設置し、株式非公開化を含む戦略的選択肢を検討することを決めた。買収を検討する投資家との交渉にも関与し、最良の非公開案を特定するという。

既報の通り、米投資ファンドのBain Capitalが東芝の買収を検討しており、株式の非公開化を前提にした提案の策定を進めている ことが判明している。

2022/4/5 Bain Capital が東芝の買収を検討 

2分割案を主導してきた戦略委員会は解散、2分割案を前提としていたエレベーター事業等の売却手続きも中断する。

ーーー

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

インフラサービス Co.デバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。

しかし、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。

これに合わせ、キオクシアに対し、できるだけ早期のIPOを正式に要請するとともに、当初の「インフラサービスCo.」のうち、ビルソルーション(東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリア)、及び当初の「東芝本体」の東芝テックは、注力事業との関係性が弱く、「非注力事業」とした。

ビル3社については、成長ポテンシャルを実現できるパートナーとの再編や外部資本の導入によって価値を顕在化すべきと判断した。

東芝テックについては、同社自身の中長期の成長プランを促進すべく、実務上可能な限り短期のうち同社と協働する とした。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し


しかし、3月24日の東芝の臨時株主総会で会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。

2022/3/25 東芝株主総会、2分割案を否決 

「2分割案」でビルソルーション3社と東芝テックを「非注力事業」とし、早期の売却対象としたのは、実は、物言う株主(アクティビスト)を満足させようと編み出された側面が強かった。

東芝の大株主は、東芝経営陣が分割案にこだわる場合の条件として複数の事業売却によって株主還元の原資を捻出するよう求めていた という。


今回、2分割案そのものが否定され、そのための条件であった売却益の計上は不要になったため、売却交渉は一旦白紙に戻し、改めてこれらの事業をどうするかを協議する。

なお、空調子会社の東芝キヤリアについて、既に売却契約を締結しており、戻せない。

JV相手の米空調大手Carrier Corporation に保有する株式60%のうち55%を2月7日に譲渡し、保有比率は5%になった。売却額は約1,000億円。

東芝は1998年に世界最大の空調設備機器メーカーである米国Carrier Corporation との間で、 空調設備機器分野におけるグローバルな戦略的事業提携を行ない、1999年4月に東芝60%、米社40%出資で日本に東芝キャリアを設立した。

Carrier CorporationはUnited Technologies Corporationの空調設備事業部門会社で、 世界最大の空調設備機器メーカーとして、大型空調設備機器やコールドチェーン製品等を主製品とする。
東芝は小型エアコンや業務用マルチエアコン等を空調設備機器の主製品としていた。

ーーー

ビルソルーション(東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリア)のうち、東芝エレベーターについては、多くの企業が関心を寄せているとされる。

コスモエネルギーHDの実質的な筆頭株主に村上世彰氏が率いる投資会社シティインデックスイレブンスがなったことが、同社が4月5日に関東財務局に提出した大量保有報告書で明らかになった。

シティインデックスは3月29日までに株式市場で約438万株(発行済み株式の5.14%)を取得した。村上氏の長女、野村絢氏も新株予約権付社債(転換社債=CB)を約57万株分取得、合計で5.81%となる。

「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」を目的としている。

同社株6.49%を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に次ぐ株主となった。

コスモの筆頭株主は、アラブ首長国連邦(UAE) のアブダビ政府のファンドの Infinity Alliance Limited で、20.76%を保有していたが、同ファンドが非化石燃料の産業に投資を振り向ける方針に転換、2021年8月10日に株式の一部を売却、出資比率は15.70%となった。

コスモは本年3月9日、Infinity Alliance Limited が持分 15.70%を全て売却すると発表した。コスモはInfinity Alliance がこの株式全てを海外市場で売却することを承認した。

2022/3/12 UAE、コスモの全持ち株を売却

シティインデックスはInfinity Allianceが放出した株を市場で買い集めたとみられる。


シティインデックスは別途、富士石油の株を順次買い増ししており、2021年12月には8.99%を所有している。 投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこととしている。

富士石油は、旧富士石油とアラビア石油の共同持株会社「AOCホールディングス」が旧富士石油を吸収合併し、改称したもの。

富士石油の大株主は2021年3月末時点では次のとおりとなっている。

JERA(東京電力/中部電力) 8.85%
Kuwait 石油公社 7.52%
Saudi 政府 7.52%
出光興産 6.66%
住友化学 6.54%

出光興産は2018年7月10日、創業家(持株28.48%)のうちの、長男の出光正和氏(同1.16%)と同氏が社長を務める資産管理会社の日章興産(同13.04%)との間で統合等に関する合意書を締結したと発表した。

「物言う株主」として知られる村上世彰氏が、出光の株を1%弱取得し、株主として創業家を説得したとされる。

2018/7/11 出光と昭和シェル、来年4月に統合 


村上氏にはコスモHDの株式を大量に保有することで石油元売りの再編を主導したい狙いがあるのではとされている。

日本の石油精製の状況は下図のとおり。各社の精製能力の内訳

残る再編はコスモと富士の合併か? 



経済産業省はロシア・ウクライナ情勢を踏まえ、3月18日に「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」を設置した。

対策を講じる必要のある物資として次を挙げた。

・石油、LNG 石炭(一般炭・原料炭)
・半導体製造プロセス用ガス

・パラジウム(触媒用途等)

・合金鉄(ステンレス・鉄鋼製造用)

経済産業省は3月31日、初会合を開き、ロシアのウクライナ侵攻の影響で調達難が懸念される重要物資7品目の安定供給策をまとめた。

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220331013/20220331013-1.pdf

各製品の依存度と対策は次の通りで、いずれの製品も抜本的な対策は見当たらない。


1-1 石油

対策:

OPEC中心に増産の働きかけ
主要消費国との連携
使用量低減対策
JOGMEC等の開発支援

1-2 LNG

対策:

産ガス国への働きかけ
JOGMEC等の開発支援
需給状況の常時把握
緊急対応策
Carbon Neutral燃料への転換支援

1-3 石炭

対策:

石炭使用量低減対策
産炭国への働きかけ


2.半導体製造用ガス:ネオン、クリプトン、キセノン

 製鉄所等に酸素、窒素を供給する大型空気分離装置から副生

別情報では、ウクライナがネオンの70%、 クリプトンの40%、キセノンの30%を占める。

2022/3/22 ウクライナ問題、半導体生産に影響

対策:

供給源の多元化
リサイクル装置導入に向けた政策支援
素材メーカーによる製造設備投資に向けた支援
日米を中心とした同盟国・有志国間でのサプライチェーン協力枠組み


3. パラジウム   自動車用排ガス触媒、歯科用銀歯、電子機器メッキ用

2022/3/24 ロシアのウクライナ侵攻でパラジウム危機、自動車業界に大きな影響


対策:

増産要請、リサイクル拡大
省パラジウム技術開発
JOGMECによる鉱山開発(南ア)支援


4. 合金鉄  鉄鋼生産に不可欠の添加剤で、鉄の耐熱性や耐食性を向上させる。

対策:

国内外の製造業者に増産要請
JOGMECが日系企業とともに鉱山開発、精錬に出資計画

米投資ファンドのBain Capital が東芝の買収を検討しており、株式の非公開化を前提にした提案の策定を進めている ことが判明した。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが2021年4月7日に東芝買収を提案したが、協議をしないまま、中断した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

今回、東芝の筆頭株主旧村上ファンド出身者がシンガポールで設立したEffissimo Capital Managementは、Bain Capitalが東芝株を公開買い付け(TOB)した場合、保有株をすべて応募する方針であることが、Effissimoが3月31日に関東財務局へ提出した変更報告書で明らかになった。Effissimoは3月24日付で東芝株を9.90%保有している。

記載内容は下記の通り。

提出者は、Bain Capital Private Equity, LPに対し、2022年3月24日付確認書において、大要、以下のとおり確認している。

(1)関係当局の許認可が取得できる等の一定の前提条件の下で、Bain Capital又はその関係会社がその投資助言を行う投資ファンドが保有するエンティティが、発行者の普通株式を対象とする公開買付けを開始した場合、提出者の保有する発行者の普通株式の全てを応募させること

(2)本公開買付け又はその成立と競合、矛盾若しくは抵触し、又はそのおそれのある一切の行為を行わないこと

Effissimo がBainに対し上記の約束をしたということは、Bain の買収提案額を聞かされており、その額が同社にとって有利であると判断したからであろう。また、(2)については、それ以上の条件を出すところはないとの想定をしていると思われる。

そうであれば、早期の高値での売り抜けを狙う他の多くの投資家も賛成すると思われる。

Bainは「現時点で何ら決定した事実はない」とコメント。東芝の非公開化は解決すべき課題が多いとした上で、経営陣や日本政府、金融機関など利害関係者と慎重に対話を重ねる必要があるとした。

東芝の臨時株主総会でグループ全体を2分割する案が否決されたが、非公開化については改正外為法や各国の競争法など、実現には課題が多い。

原子力事業を持つ東芝は2020年に施行した改正外為法で重点審査の対象となっており、財務省と経済産業省が事前審査することになる。

東芝はWestinghouseからは撤退したが、東芝エネルギーシステムズに原子力事業部を持ち、原子力プラントの建設・メンテナンス・再稼動対応から福島第一原発の廃炉対応、廃止措置対応、燃料サイクル、 さらには次世代炉や高速炉などの未来に向けたエネルギー開発など、幅広い事業領域に積極的に取組んでいる。

東北電力の女川・東通、東電の福島・柏崎刈羽、中部電力の浜岡原発は主に東芝が担当している。

半導体や防衛関連の技術もあり、安全保障の観点から技術流出の恐れも懸念される。

ーーー

東芝は2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表したが、売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、譲渡価額は2兆円であった。

Bain Capital は2120億円を出資、うち議決権付き株式は1,361億円で49.9%を占める。(残りの40.2%は東芝、9.9%はHOYA)

今回、本体の東芝の買収を検討している。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好的と指定した国がロシアから天然ガスを購入する際には通貨ルーブルでの支払いしか認めない方針を示した。

関係閣僚とのオンラインの会議で西側の各国がロシアの外貨準備を凍結したことを批判し「このような状況でドルやユーロなどの外貨でわれわれの商品の支払いを受ける意味はない」と述べた。

2022/3/26 プーチン大統領、ロシアの天然ガス購入をルーブル支払いに

プーチン大統領は3月31日、「非友好国」の企業に対し、ロシア産天然ガスの購入に自国通貨ルーブルの支払いを義務付ける大統領令に署名した。

付記

ロシアのペスコフ大統領報道官は4月3日、天然ガス以外の輸出品についても、自国通貨ルーブルでの支払いを日本や米国、欧州などの輸入国に求めるとの見通しを示した。

テレビ演説で、「天然ガスを購入するには、外国企業はロシアの銀行にルーブル建ての口座を開かなければならない。天然ガスの代金はこの口座を通して払われる」と述べた。その上で、「支払いがなければ、買い手の不履行とみなす。慈善事業を行うつもりはなく、既存契約は止まる」と主張した。 

大統領令によると、当面対象となるのは、ロシア国営Gazpromのパイプラインを通じた「気体状」の天然ガス。日本が輸入する「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)は対象外とみられる。

日本はLNGの輸入の約8%をロシアに頼っている。ほとんどがサハリン2のLNGだが、岸田首相は3月31日の衆院本会議で、サハリン2(とサハリン1)について撤退はしない方針を表明した 。

シェルはサハリン2から撤退を表明しているが、首相は「自国で権益を有し、長期かつ安価なLNGの安定供給に貢献しており、エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクトだ」と強調した。

萩生田経済産業相は同日の閣議後会見で、サハリン1、2に加え、ロシア北極圏のLNG事業「アークティックLNG2」からも撤退しない方針を示した。

欧州などの取引企業がガスを買う場合、国営ガス会社Gazprom傘下のGazprombank にユーロなどの外貨建てとルーブル建ての両方の決済口座を開設する必要がある。Gazprom は4月1日、需要家に指示した。

Gazprombankは口座に振り込まれた外貨を市場で売却し、ルーブルを買い入れる。その後、同行が取引企業の口座からルーブル建てで代金をGazpromに送金する仕組みをつくる。

欧州連合(EU)は3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。

しかし、ロシア最大手のSberbank PJSCと、ガス大手Gazpromが出資するGazprombank は含まれていない。日本も同様である。
これらを除外すれば石油、天然ガスなどの取引が出来なくなり、欧州経済への影響が大きいことを判断したとみられる。

米国もGazprombankについては新規借り入れを禁止するということに止まっている。

2022/3/4 EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除


西側諸国がウクライナ侵攻で制裁に踏み切ったことへの事実上の報復措置で、 ロシアからガスを購入している欧州各国は「契約には決済通貨を定めた条項がある」と反発している。

G7は3月28日に開いたエネルギー相会合で、ルーブル払いの拒否で一致、ドイツのショルツ首相は、プーチン氏に今後もユーロなどで支払いを続ける意向を伝えたという。

付記 ハンガリーのオルバン首相は4月6日、ロシアから輸入する天然ガスの取引代金について、ロシアの通貨ルーブルで支払う方針を明らかにした。

EUはガス消費量の約4割をロシアからの輸入に依存している。

今回の新たな仕組み(各国はユーロで支払い、Gazprombank がルーブルに交換してGazpromに支払う)は、事実上、外貨での支払いを容認しているとの見方もある。

ルーブルの対米ドル相場は3月初めのロシア大手7行のSWIFT除外で急落していたが、その後、戻し、4月1日には一時2月23日以来の高値となる 1ドル=80.3325ルーブルまで上昇した。

ーーー

独政府は3月30日、天然ガス供給に関する「早期警戒」を宣言した。天然ガスのルーブル払い拒否によるロシアからのガス輸入の中断や停止に備えるものである。

早期警戒は、ガスに関する緊急事態計画の3段階の最初の措置である。この段階では政府の介入はない。

1. EARLY WARNING PHASE
2. ALARM PHASE
3. EMERGENCY PHASE

Robert Habeck 経済相は声明で、当面の供給は確保されており、当局は市場運営者と共にガス供給を注意深く監視していると説明、しかし事態の悪化に備えて予防策を強化する必要があるとし「早期警戒宣言により危機管理グループが招集された」と明らかにした。

しかし、BASFは天然ガスがカットされた場合の工場操業への影響について警告を発した。現在の天然ガスの需要の半分を満たさない場合、同社最大のLudwigshafe コンビナートの操業を止める必要があるとしている。

Frankfurter Allgemeine 紙とのインタビューでBASF CEO のMartin Brudermuller は、ロシアからのエネルギー途絶はドイツ経済を過去75年以上のうちで最悪の不況に陥らすと警告した。

4~5年経てばロシアのガスから独立することも可能かも分からないが、それまでについてはLNG輸入での代替は不十分である。ロシアの天然ガスはドイツの消費の55%を占めており、これが一夜にして切られると、被害は取り返しのつかないものとなる。ドイツ経済は第二次大戦以来最悪の危機に陥り、特に中小企業の多くにとって終わりを意味する。

BASFの場合、ガスの供給が最大需要量の50%以下になった場合、Ludwigshafen コンビナートで生産を大幅に落とすか、完全にシャットダウンせねばならない。

ドイツ人は事態の重要性を認識していない。天然ガスを切られると職を失うことを意味する。

アンモニアを例にとると、BASFは既にアンモニアや肥料の生産を落とさざるを得なくなっているが、肥料の生産国のロシアに頼れないため、2023年には肥料不足から食糧が不足し、価格が急騰、アフリカなどの貧困国では主食の購入が難しくなるだろうとしている。

原油市場が高止まりするなか、産油国に対する増産要請が高まっているが、OPECプラスは3月31日の会合で 5月も大幅増産を見送った。

付記 OPECプラスは5月5日、6月も43.2万バレルの減産縮小にとどめた。

G7は3月24日の首脳声明でOPECに対し、一層の増産を求めたが、OPECプラスは会合後に出した声明で、現在の価格変動の大きさは「市場のファンダメンタルズ(基礎的条件)が引き起こしたものではなく、地政学的な要因によるものだ」との考えを表明した。


OPECプラスは2021年
7月18日の閣僚協議で、協調減産を8月から毎月日量40万バレルずつ縮小すると決めた。減産縮小は2021年7月の約580万バレルの減産が解消するまで続け、「22年9月末までに生産調整を終了するよう努める」とした。

今回もこの姿勢を崩していない。減産を少しだけ縮小するだけで、未だに減産しており、大幅増産による価格引き下げは全く考えていない。

5月については43.2万バレルの減産縮小を行なった。40万バレルでないのは、メンバー5カ国についてベースの基準生産量を変更したためである。

サウジとロシア:10.549 million bpd、UAE:3.04 million bpd、Kuwait:2.694 million bpd、Iraq:4.461 million bpd.


原油価格は年初は$76/bbl であったが、連日値上がりし、3月1日に$100を超え、3月7日には一時$130を超えた。現在も$100程度を維持している。

しかし、OPECプラスは増産を見送っている。

一つにはロシアがサウジと並んでOPECプラスの中心メンバーであり、OPECメンバーとしてはロシアとの協調関係を崩したくないためである。

記者会見で「OPECプラスからロシアを排除するべきではないか」との問いに、サウジのエネルギー相は「我々は政治を協議の部屋には持ち込まない」と答えた。

それよりも大きな理由は脱炭素の動きである。将来、石油離脱が起こるのは予定されており、需要が減れば価格が下がるのは当然のことである。そのため、産油国としては売れるうちに高値で売り、今のうちに財政再建、健全化を図ろうとしている。

当面はこの価格水準のままで推移すると思われる。

ーーー

バイデン米大統領は3月31日、高止まりしているガソリン価格の抑制を狙い、今後6カ月間にわたって戦略石油備蓄を1日当たり平均100万バレル追加で放出すると発表した。計1億8000万バレルに相当する。

米国以外の放出規模が「3000万~5000万バレルになるだろう」と述べた。


バイデン米政権は2021年11月23日、日本や中国、インド、韓国、英国と協調して、今後数カ月かけて戦略石油備蓄を5000万バレル放出すると発表した

日本政府はバイデン政権の要請を受けて石油の国家備蓄の一部を放出する方針を決めた。その量は420万バレル(67万kl)と報じられた。

日本の石油の備蓄放出としては、2011年6月にリビア情勢の悪化を受けて民間備蓄から出したのが最後で、国家備蓄からの放出は初めてとなる。

付記 過去の民間備蓄放出
    1979年 第二次オイルショック
    1991  湾岸戦争
    2005  米国ハリケーン
    2011  東日本震災、リビア情勢

2021/11/25 石油国家備蓄、各国が放出



国際エネルギー機関(IEA)は2022年3月1日、日米などの加盟国が備蓄している石油を計6000万バレル協調放出すると発表した。

米国は3000万バレルを放出、日本はこれに次ぐ750万バレルを放出する。民間の石油会社に義務づける備蓄量を国内需要の70日分から66日分に4日分引き下げた。


付記

IEAは4月6日、合計6000万バレルの石油備蓄を追加で放出することを決めた。期間は不明だが、半年間なら日量30万バレル台の供給となる
米国の計1億8000万バレルの独自放出も含めると総計2億4000万バレルになる。

日本は1/4の1500万バレルを追加で協調放出する。



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40年前の1982年4月1日に塩ビの共販会社の第1号として、第一塩ビ販売が営業を開始した。

1983年5月24日に産構法(特定産業構造改善臨時措置法)が1988年6月30日を期限とする時限立法として施行された。目玉は設備処理とポリオレフィンの共販会社である。

しかし、塩ビ業界はこれに先立ち、共販会社を設立していた。石油化学の産構法の先駆けとなるものである。

塩ビの共販会社は業界の自主的な動きとして、公取委の承認を得て設立され、ポリオレフィンの共販会社は産構法に基づき設立された。

ちょうど10年前に本ブログは「塩ビ共販誕生から30年」を、その1年後に「産構法30年」(5回連載)を書いた。

塩ビ共販会社と産構法の背景、内容については下記をご覧ください。

2012/4/3  塩ビ共販誕生から30年

2013/3/28 産構法30年

産構法前後の石油化学業界の動きの詳細については日本の石油化学最近40年史参照

ここでは、産構法と共販会社の意義について述べる。

高杉良の「局長罷免 小説通産省」には、産構法の立法に辣腕を振るった 通産省の内藤正久基礎化学品課長について、以下の通り書かれている。

石油化学工業の中核部門であるエチレンセンター13社の社長で編成された石油化学産業調査団が欧米に派遣されたのは、ランブイエ・サミットの7年後である。

同調査団は、欧州の石油化学事情を調査することを目的としていたが、これはあくまでおもて向きで、不況の脱出策を協議することが本来の狙いであった。
利害対立が激しく、メーカー間の相互信頼関係が著しく損なわれていた中で、斎藤(内藤正久基礎化学品課長)は各社首脳を精力的に訪問し、調査団の必要性について説いた。斎藤の水際立った根回しの見事さを青山( 架空の通産省職員)はすぐ近くでつぶさに見ていたのである。

住之江化学の堤武夫社長(住友化学 土方武社長)を団長とする大型ミッションが最初の訪問地フランクフルトに向けて成田空港を発ったのは昭和57年10月2日のことだ。一行は随員を含めて総勢20名、副団長は光陵油化の吉岡正雄社長(三菱油化 吉田正樹社長)と昭栄化学の西本康之社長(昭和電工 岸本泰延社長)。通産省から斎藤ほか2名が参加した。

斎藤の存在なくして調査団はあり得なかったし、その後の石油化学工業の再生、収益改善など望むべくもなかった、といま青山は確信をもって断言できる。

一行は2週間にわたってフランクフルト、ブラッセル、パリ、ロンドンなどを回り、西独BASF社、オランダDSM社、CEFIC(欧州化学工業連盟)、EC委員会、フランス政府工業省、英BPケミカルズ、ICI社などの首脳と意見を交換する一方、円卓会議を頻繁に開催し、不況対策について話し合った。

調査団の帰国後、各社の首脳間に相互信頼感が芽生え、過剰エチレン設備等の廃棄、ポリエチレン、ポリプロピレンなどポリオレフィンの共同販売会社の設立など抜本的な構造改善対策が次々に打ち出され、構造不況に陥っていた石油化学工業は急速に立ち直ってゆく。

当時、苦境に陥りながらも、エチレン設備の廃棄にはほとんどが反対し(最終的に「休止」を認めた)、出光石化の場合は新設備を着工しようとしていた(最終的に着工を1年半延期)。業界での自主的な設備カルテルは無理であった。産構法での設備カルテルも内藤課長の努力なしでは出来なかったかも分からない。

また文末に記したが、「産構法精神」は1995年頃まで続き、業界の安定に役立った。

しかし、産構法により、「構造不況に陥っていた石油化学工業は急速に立ち直った」というの は正しくない。

下図のとおり、1986年に能力が減り、1987年には需給ギャップはなくなった。これは産構法の効果である。

しかし、その後、需要は急増し、各社は能力を増やしている。

需要増は産構法によるものではなく、原油価格の急落によるものである。一時60,000円/klまであがったナフサ価格は、一気に15,000円/klまで下がった。

これにより需要は急増した。

通産省は、業界の経営状況が安定し今後環境の激変がない限り構造不況に陥ることはないとの判断から、期限(1988年6月30日)に先立ち、1987年9月16日にエチレンについて産構法の特定産業指定を取り消し、同時にポリオレフィンと塩ビ樹脂製造業の指示カルテルも取り消した。

石油化学工業が立ち直ったのは、原油価格の下落によるものである。

上の「PVC能力&需要推移」グラフにみられるように、他の石化製品も同様だが、需要の伸びを受け、各製品は能力を増強(休止設備の再稼働、新設備の建設)を行なった。

そして1990年以降の需要の減で再び、需給ギャップが広がり、各社は苦しむことになった。

最終的に、事業統合を経て、2000年頃から「選択と集中」により、事業撤退が相次ぎ、 少なくともメーカー数は減ることになる。

産構法は正式には特定産業構造改善臨時措置法であるが、「多数企業の小規模設備の乱立」という石油化学の「産業構造の改善」を目指したものではない。

実は、これを目指したものがあった。1961年の特振法:特定産業振興臨時措置法案である。貿易自由化や資本自由化という外資参入の危機感から、通商産業省企業局長・佐橋滋が立案し、同局第一課長・両角良彦らと共に推し進めた国内産業向けの合理化構想の法案である。

主要産業を2~3社に集約して競争力を持たそうというもので、実現していたら今のホンダはなかったといわれている。

反対が強く、審議もされずに廃案となった。

城山三郎が小説「官僚たちの夏」でこれを書いている。(佐橋滋:風越信吾、両角良彦:牧順三)

政府による産業構造の改善などは、現在の中国などを別として、もともと無理である。

産構法は単に既存のメーカーの設備をそれぞれ一時的に削減するもので、「産業構造の改善」を目指したものではない。

この時代に、各社は赤字に苦しんだが、それでも石油化学から撤退したのは日産化学だけである。

同社は1988年に石化からの撤退を決めた。
塩ビについては東洋曹達とのJVの「千葉ポリマー」を解散し、設備を東洋曹達(四日市)に移管した。HDPEについては、日産丸善ポリエチレン から撤退した。

「設備処理」は、ごく短期間の官製の設備カルテルである。

「共販会社」はどうであろうか。

実は、塩ビとポリオレフィンの共販会社は、その言葉から一般に考えられるもの(下図のように各社の製品を共同で販売する)とは異なる。

実態は下図のように、共同販売事務所会社である。 表面上は、共販会社の各営業部であるが、実態は各社の営業部隊が一つの事務所に同居しているというものである。

下図のように、A社からの出向社員は、共販会社の各営業部の社員だが、元々のA社の需要家のみにA社の製品のみを販売する。

売上高も費用(出向社員の労務費、旅費、交際費等々)もすべてA社に帰属する。

事務所費用や管理部の費用などは売上高比率で負担する。

対外的には、各社を統合した共販会社であることを示すため、統一のブランド(例えば 新第一塩ビは「ダイイチPVC」)を使用した。

しかし、同一事務所で隣り合って勤務するため、値引きによる拡販などはやれない。値上げの場合、一つの会社であるので同一共販内での値上げ協議、決定は独禁法に関係ない。
全体としても アウトサイダーはおらず、全体で4社(共販)しかないので、同一歩調を取りやすい。

その意味で、共販体制は販売カルテルであると言える。

各共販会社は、生産の受委託による流通合理化などは進めた。

そのなかで、第一塩ビ販売は、各社の技術を出し合って技術改良や共同研究を行い、それまでになかった内部ジャケット重合層技術を開発、共同でプラントを建設している。

産構法体制は実体は官製の設備カルテル、販売カルテルである。


産構法の終了後、需要が減少すればまた、昔の繰り返しになることが懸念された。(実際、そうなった。) 

しかし、産構法が終了した後、再度カルテルに戻ることは認められない。このため、今後とも産構法の精神を維持しようとして、2つの対応が取られた。

①設備投資の「デクレア方式」(事前報告制度)

産構法終了により今後は設備カルテルは認められなくなったが、新増設の乱立をおさえるため、新増設に当たっては事前に通産省に報告し公表する制度がつくられた。

具体的には
  ・3万トン/年以上の新増設は着工の6ヵ月前、
  ・3万トン/年以上の設備を改造する場合は着工の3ヵ月前、
  ・休止設備を再開する場合は稼働開始の3ヵ月前に通産省に報告して公表する。

実際には通産省が業界の意向を尊重し、業界の反対の強いものについては「事前報告」を受け付けないという例もあった。

②共販制度の維持

公取委は産構法の終了をもって共販会社も解散すべきだと強く主張した。米国の市場開放要請の中に共販制度も参入障害とする指摘があったことも、これを後押しした。

しかし業界では共販制度が価格競争を防ぐ重要な手段として継続を主張、きっかけが産構法であったとしても(塩ビ共販はそれ以前)、商法上誕生した株式会社であり、生産・流通・販売の合理化のためにも必要とした。

最終的に公取委は、他の共販メンバーとの提携をしないこと、生産・流通・販売の合理化の進展状況を毎年報告することを求めた。

この時期、設備の増強に当たっては単独では大規模設備の増設は難しいことから共同生産方式が取られたが、上記の制約により、共販メンバー同士の合弁による共同生産が行われた。更に共販会社としての行動であることを示すために、合弁生産会社に一部共販会社が出資するという形態を取った。

共販制度は1995年まで続いた。1982年の第一塩ビ販売のスタートから13年も続いたことになる。

産構法終了時に公取委は共販会社について、他の共販メンバーとの提携をしないという条件を付けていたが、これに基づき、1995~96年にすべて解散した。

1995年6月に新第一塩ビがスタートした。第一塩ビ販売が解散し、日本ゼオン、住友化学、徳山曹達が新会社を設立、呉羽化学は単独企業に戻った。共販制度が崩れた。

1996年4月に大洋塩ビが営業開始した。共同塩ビ販売の東ソーと、日本塩ビ販売の三井東圧と電気化学の3社合弁であり、両共販会社は1995年末に解散した。

1996年4月の三菱化学(中央塩ビ販売)と東亞合成(日本塩ビ販売)の提携発表を機に残る中央塩ビ販売も1996年7月末に解散し、塩ビ共販はすべて解散した。

ポリオレフィン共販では、三菱化学誕生で1994年9月にダイヤポリマーが解散した。
エースポリマーの昭和電工と三井日石ポリマーの日本石油化学が1995年10月に日本ポリオレフィンの営業を開始した。三井石油化学(三井日石ポリマー)と宇部興産(ユニオンポリマー)が両社のPP事業を統合して1995年10月からグランドポリマーの営業を開始した。
エースポリマーは1995年6月、三井日石ポリマーとユニオンポリマーは9月に解散した。

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