2020年6月アーカイブ


日本の
厚生労働省は5月7日、Remdesivirを「特例承認」した。


米シェール開発大手のChesapeake Energyは6月28日、連邦破産法11条(Chapter 11) に基づく会社更生手続きをテキサス州南部地区の連邦破産裁判所に申請したと発表した

新型コロナウイルスの影響による原油相場の下落で経営が悪化した。原油相場下落による破綻としては米国最大の業者である。

同社は積極的な事業拡大で抱え込んだ重い債務負担に苦しんでいた。

3月末時点の負債総額は95億ドルで、6月の金利支払いが出来ず、本年に返済期限がくる長期債が1ドル当たりたった5セントで取引されており、Chapter 11 申請はむしろ遅すぎると見られている。

同社は5月にSECに提出した資料で、新型コロナの影響で資本市場へのアクセスが制限され、「年内に期限を迎える社債の償還資金が手当てできない可能性がある」と説明、Chapter 11の適用申請を検討しているとしていた。

同社では既に債権者の大半との間で負債を約70億ドル削減することで合意しており、さらに事業の続行のために925百万ドルのつなぎ融資(debtor-in-possession financing )を確保している。

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同社は1989年に Aubrey McClendonとTom L. Ward(いずれも当時29歳)が創業し、オクラホマ州で採掘を開始した。創業当時から水圧破砕法や水平採掘法などを次々と導入し,急速に生産量を伸ばした。技術革新に加え,借入金で財務レバレッジをかけつつ,全米各地の農家から土地の採掘権を借り入れる手法で保有埋蔵量を増やし続けた。

現在、下記のシェール田で操業している。(%は2019年の生産量の割合)

Marcellus (33%)、Haynesville Shale(24%)、Eagle Ford Group (21%)、Brazos Valley(8%)、Powder River Basin (8%)、Mid-Continent (4%)

同社の損益状況は下記の通り。(百万ドル) 2020年のみ、3か月の業績。

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020/1Q
売上高 23,125 12,764 7,872 9,496 10,231 8,489 2,541
営業損益 3,477 -18,919 -4,411 1,139 382 -31 -8,227
金利 -89 -317 -296 -426 -633 -651 -145
税引前損益 3,200 -19,098 -4,589 955 218 -639 -8,326
当期純損益 1,273 -14,856 -4,915 813 133 -416 -8,319

同社は2020年3月末で3,924百万ドルの債務超過となった。2019年末の純資本は4,401百万ドルであった。

2014年と比較し、最近の売上高は大幅に減少している。

2018-19年は支払利息が営業損益を上回っている。2019年は営業損益も赤字となった。
2020年は最初の3か月だけで8,227百万ドルの赤字となった。

同社の売上高の約半分が自社掘削分で、残りは転売(Marketing)となっている。

2019年の自社掘削分の売上高は下記の通り。(百万ドル)

原油 2,543
天然ガス 1,782
NGL 192
4,517

天然ガス価格とWTI原油価格の推移は下記の通り。天然ガスと原油の価格変動で同社の損益は大きく変動する。

米国では原油と天然ガスの価格は連動していない。それぞれの需要(原油は主にガソリン、天然ガスは火力発電等)により動く。

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同社は算出ガスの一定量を提供するという金融取引で資金を調達していたが、2012年に同社の借入金は162億ドルに達し、株主は経営トップのリスク志向や支出への意欲について懸念するようになった。

Chesapeake Energy は2012年5月1日、創業者で会長兼CEOの Aubrey K. McClendonが会長職を辞すると発表した。

その後、同社は資産売却を続けた。

2014/11/7 Chesapeake Energy、シェール鉱区の一部を売却

Bayerは6月24日、2018年6月に買収したMonsantoの訴訟の大半を決着させたと発表した。除草剤 Roundupの発癌問題、除草剤dicamba の飛散による農産物被害問題、Monsantoが製造していたPCBの水質汚染問題などである。

Roundup訴訟では将来の訴訟分も含め、101~109億ドルを支払う。dicamba訴訟では4億ドル、PCB訴訟では8億2千万ドルを支払う。

支払は内部留保分とAnimal Health部門売却収入で賄う。

Bayerは2019年8月20日、米国の Elanco Animal Health との間でBayerのAnimal Health 事業を売却する契約を結んだと発表した。2020年央に取引を完了する。

売却額は76億米ドルで、うち53億ドルは現金で、残り23億ドルはElanco株で決済する。Bayerは受け取ったElanco株式を時間をかけて売却する意向。

2019/8/27 Bayer、Animal Health事業をElancoに売却 

1) Roundup

BayerによるMonsanto買収直後の2018年8月10日に、カリフォルニアの陪審員がモンサントの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。Roundup については、全米で7月末で約 8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。

原告は学校の校庭の管理人で、30年以上にわたって除草剤を扱ってきたが、非ホジキンリンパ腫にかかっており、医者は2020年まではもたないだろうとしている

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」を長年使用し、喉に悪性リンパ腫を患った男性がモンサント側を相手取って訴えていた裁判で、ラウンドアップががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

これらを含め合計3件で陪審員による多額の懲罰的賠償評決があり、それらを裁判官が大幅に減額した。

原告   陪審員 裁判官判断
1 校庭の管理人   カリフォルニア 2018/8/10 Superior Court 2018/10/23
損害賠償 39百万ドル 39百万ドル
懲罰的損害賠償 250百万ドル 39百万ドル
2 Edwin Hardeman   カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16
損害賠償 527万ドル 527万ドル
懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
3 Pilliod 夫妻   カリフォルニア 2019/5/13 Superior Court 2019/7/25
損害賠償 55百万ドル 17 百万ドル
懲罰的賠償 20億ドル 69百万ドル 
陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反

2019/7/27 モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害裁判、裁判官が陪審の懲罰的賠償を大幅減額 

今回の解決は、訴訟分とまだ訴訟に入っていない分を合わせて約125千件のうち、約75%を包含するものである。将来の訴訟分も含めるメカニズムになっている。

現在の訴訟分については88~96億ドルを支払い、予想される将来の訴訟については12億5千万ドルを引き当てる。

Bayer内部では承認済で、最終的にカリフォルニア連邦地裁の判事の承認が必要となる。Bayerは責任も不正行為も認めていない。


なお、既に1審が終わっている3件はこれに含まれず、控訴審で審議される。

2番目の裁判では、1審で「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断を裁判官は否定せず、有罪にした。

米EPAと司法省は12月20日の控訴審で、friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。

このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。

EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こし、一審の裁判官もこれを認めたもの。

EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。

控訴審の裁判官は

IARC は'probable carcinogen' としたが、カリフォルニア州の 'known to the state of California to cause cancer' とするのはミスリーディングである。

IARC以外は全て、glyphosateには発癌性はない、又は、発癌性を示す十分な証拠はないとしている。

2) 除草剤dicamba 訴訟

Bayer(旧 Monsanto)とBASFの除草剤で収穫被害を受けたとして、米国の農業従事者が両社を相手取って起こしている係争で、ミズーリ州の連邦裁判所の陪審団は2020年2月15日、総額265百万ドルの損害賠償を命じた。うち15百万ドルが損害に対するもので、残り250百万ドルが懲罰的賠償である。

ミズーリ州最大の桃の栽培業者のBader Farmsが訴えていたもので、近在の農家が散布した除草剤ジカンバ(Dicamba) の影響で桃が枯れ、2000年代初めに平均して162千ブッシェルあった収穫が2018年には12千ブッシェルまで減り、廃業に追い込まれたとして、20.9百万ドルの損害賠償を求めて訴えていた。

2020/2/26 BayerとBASFによる除草剤被害で米裁判所が損害賠償命令

同様の被害を受けたとして多くの原告が訴えている。

Bayerはミズーリ地裁で争っている2015~2020農業年度の被害について和解する。Bayerは共同被告のBASFも参加することを願っている。

同社は同剤とその散布技術(VaporGrip™) の安全性と有効性に自信を持っており、これを使う農家の教育・訓練を高めるとしている。

3) PCBによる水質汚染

Monsantoは1977年に止めるまでPCBを合法的に生産していた。

PCBにより被害を受けたとする地方政府のクラスアクションで、650百万ドルを支払う。

別途、New Mexico, Washington, District of Columbiaの司法長官に対し、PCB被害に対し合計170百万ドルを支払う。

なお、2003年8月に、旧Monsantoがアラバマ州で健康への危険を隠蔽しながら河川にPCBを投棄したとの住民訴訟に対し和解が行われ、Solutia、Monsanto、Pharmacia の3社が不正行為を認めないまま総額6億ドルの賠償を行なうこととなり、Solutia はそのうち5千万ドルを負担した。


中国通信機器大手、華為技術(Huawei)は6月25日、英ケンブリッジに研究・製造拠点を設置すると発表した。

光ファイバーによる通信の主要な技術を研究する。

第1期の建設は2017年から計画していたが、このたび地元議会で承認された。10億ポンド(約1300億円)の巨額投資で、400人程度の雇用を生むといい、将来的にHuaweiの光ファイバー通信事業の国際本部にするという。

英国は今年、一部の高速通信規格「5G」の通信網への華為製品の使用を認めたが、米国の圧力で採用の見直しを表明している。新拠点の発表は、英国内の議論に影響を与える可能性もある。

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英国のボリス・ジョンソン政権は2020年2月初めに、次世代通信規格「5G」通信網でHuawei製品の一部使用を認める一方、英国市場におけるHuawei製品の割合に35%という上限を設ける決定を下した。上限の導入は2023年になる見込み。

米国は安全保障上の理由で同社製品の完全排除を同盟国に求めていたが、これに応じないことになる。

同社製品はコスト面だけでなく性能の評価も高く、英国をはじめとする欧州では携帯通信のネットワークに組み込まれている。英国の通信会社はすでにHuawei製品をアンテナなど基地局の一部に使っている。もし完全な排除となれば交換コストがかさむため、通信会社は排除しないよう英政府に働きかけていた。

上限の設定で英通信大手各社は5G通信網に向けた投資計画の見直しを余儀なくされる。

BTは「35%という上限を守るには、5億英ポンドのコストが掛かる見込みだ」と発表した。

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米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

2020/5/18 米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

英国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)はこれを受け、「米国が最近、中国に対して制裁措置を追加したことを受け、Huawei製品に対するさまざまなリスクについて考慮しながら、さらなる検討を行う予定だ」と発表した。

英国政府は、「最も重要なのは、英国のネットワークのセキュリティと回復力だ。米国がHuaweiに対して制裁措置を追加したことで、英国内のネットワークにさまざまな影響が及ぶ可能性があるため、NCSCが注意深く検討しているところだ」と述べた。

2023年までに英国の次世代モバイルネットワークから完全に排除される可能性がある。

Huaweiを排除するとなれば、英国政府が2020年2月初めに発表した政策が完全に覆される。
英国と中国との関係悪化が深刻化する。BTやVodafone、EE、Threeなどの英国通信事業者に技術的、経済的な大混乱が生じる恐れがある。

例えばBTは、10年以上前からモバイルネットワークと光ファイバー拡張の両方におけるインフラ需要の大半をHuaweiに依存してきた。
Huawei機器をベースとした数千台規模のFTTC(Fiber To The Curb)やVDSL2キャビネットなどの他、加入者の建物に設置されたフルファイバーの光加入者網終端装置(Optical Network Terminal)も置き換えることになる。また、技術リソースを転換する必要もあるため、膨大なコストが生じるだけでなく、新サービスの導入も大幅に遅れる。

こうした動きを受け、Huaweiは5月23日、「英政府は1月に5Gネットワーク建設への参加を認めた。英国がネットワークのセキュリティと回復力を高めていくためには、最良の技術と幅広い選択肢、イノベーション、多くのサプライヤーが必要であるためだ。英国で20年以上事業を行う民間企業としてネットワーク接続を維持できるよう支援する」と述べた。

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ドイツのメルケル首相率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)の議員は2020年2月、党指導部がまとめた次世代通信規格「5G」網構築に関する政策方針書を支持した。

同方針書は、海外メーカーの規制強化を勧告しているが、Huawei の排除は見送っている。 安全問題について、下記の通り述べている。

豊富なリソースを持つ国家であれば、どのような機器メーカーの通信網にも潜入できる。
包括的な技術検査を行っても、セキュリティーリスクを完全に排除することはできない。最小化することが精一杯だ。
5G網の盗聴に対する防衛手段が全くないわけではない。強力な暗号とエンドツーエンド暗号化を利用すれば、通信とデータ交換の機密性を確保することができる。

ドイツ最大の通信事業会社ドイツテレコムは6月17日、5G市場を拡大するため、中国のHuaweiとスウェーデン通信機器大手のエリクソン2社と5G契約を締結したことを発表した。

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米国商務省は6月15日に新しい規定を発表し、米国企業がHuawei と 5G基準の制定で協力することを容認した。

第5世代移動通信システム(5G)などの国際標準規格の策定を念頭に置いた措置である。

2020/6/19 米商務省、米企業のHuawei との5G基準協力を容認


エア・ウォーターは6月26日、グループ会社で歯髄関連事業を企画・推進するアエラスバイオが歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始すると発表した。

同社と連携するRD歯科クリニック」の再生医療等提供計画が厚生労働省にて受理された。

髄再生治療は、自らの不歯から歯髄を採取し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯神経を喪失した歯に移植することにより歯髄を再生する治療で、世界で初めての取り組みとなる。

今秋に、歯髄幹細胞を培養後に管理が徹底した保管施設で液体窒素に入れて長期間冷凍保存する歯髄幹細胞バンク事業」も立ち上げる

エア・ウォーターは2011年に歯科関連事業に本格参入2018年にアエラスバイオ社を設立して歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療の事業着手した。

アエラスバイオ(英語表記:Aeras Bio Inc.)はエア・ウォーター70%、歯愛メディカル30%。
歯愛メディカルは国内最大手の歯科用品通販業者で、エア・ウォーターは2016年10月に資本業務提携し、創業家から約95億円で39.9%の株式を取得した

RD歯科クリニック(RDとはRegenerative Dentistryの略)は、神戸市のエア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸4階にある。
中島美砂子院長は元国立長寿医療研究センター研究所幹細胞再生医療研究部長で、歯髄再生研究の第一人者。

エア・ウォーターの医療関連事業では、医療用ガスや病院設備工事などの高度医療分野事業基盤を強化する一方、高齢社会の進展に伴って、今後の市場成長が期待できる歯科関連や衛生材料などのくらしの医療分野への事業領域の拡大にも注力しているが、中島氏を迎え、20195月より「エア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸」内で歯髄幹細胞の培養・加工・保存を受託するための設備を設置するとともに、歯髄再生技術の確立を目指し研究・開発に取り組み、安全性や有効性の検証を進めてきた。

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歯髄幹細胞を用いた再生医療:

体内組織には「幹細胞」が存在、その幹細胞を移植する再生医療が注目されている。

歯の中の神経組織(歯髄)の中には、「歯髄幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在しており、親知らずなどの歯や乳歯から採取することができる。

歯髄幹細胞を用いた再生医療とは、虫歯などにより抜髄治療を行った歯の根管部を完全に除菌したのち、自己の歯から採取した歯髄幹細胞を培養加工し、その細胞を根管部へ移植し、歯髄を再生する再生医療技術の一つ

虫歯に対しては、一般的には痛んだ歯髄を除去して詰め物をする抜髄治療を実施し、その後さらに悪化した場合は抜歯治療を行う。
抜髄すると、が折れる可能性が高まるほか、細菌に対する防御反応や歯髄組織の一部を修復する機能を喪失する

抜髄治療は、国内では年間600万症例ほどが行われてるが、「歯髄再生治療」はそれに代わる新しい治療法となる。

歯髄再生治療の流れは次の通り。
RD歯科クリニックにて、親知らずなどの歯を抜歯
②不用歯をアエラスバイオ社の歯髄培養センターへ輸送し、歯髄を取り出し、歯髄幹細胞を培養増殖する。
RD歯科クリニックにて、その歯髄幹細胞を薬剤と組み合わせ、抜髄した歯に移植
④歯髄幹細胞が分泌する物質のはたらきにより、歯の周囲組織にある幹細胞が歯の内部に集まり、血管や神経が伸びてきて、1か月ほどで歯髄が再生され、歯の感覚が戻ってくる。
⑤6か月~1年ほどで歯髄の周辺組織(象牙質)も再生され、 (エナメル質は再生されないため)
最終的に冠や詰め物を入れて歯の上部を修復し、自分の歯で噛めるようになる。

治療にかかる費用は抜歯費用、移植費、検査費等を含めて500,000700,000程度で、不用歯の抜歯後、か月かけて幹細胞の培養増殖った後、移植を行い、年後に治療終了となる。


AstraZenecaは日本政府と、AstraZenecaとオックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンの日本への導入に向けた具体的な協議を進めることに合意した。

安倍晋三首相は6月14日、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の番組で、新型コロナウイルスのワクチン確保のため、開発を進めている米バイオ企業 Moderna、英製薬大手 AstraZenecaの両社と交渉していることを明らかにした。

AstraZenecaのワクチンについて「相当スピード感を持って開発が進んでいるとうかがっている」と紹介 した。

「これが完成した暁にはしっかりと日本も確保できるように交渉をしている」と述べた。

付記

厚生労働相は8月7日、AstraZenecaから日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意したと発表した。開発が成功すれば、来年1~3月にまず3千万回分が供給される。接種回数はまだ決まっていないが、1回か2回とみられる。(WHO資料では1回接種で、その場合、1億2千万人分となる。)
ワクチンは原液を輸入するほか、国内メーカーに原液の製造を委託し、国内で供給するという。



これについて、第一三共と明治ホールディングスが6月26日にそれぞれ発表した。

第一三共は6月26日、このワクチンの国内における製剤化(バイアル充填、包装、保管等)などについてAstraZenecaと協議を進めることに合意したと発表した。


製剤化は、子会社の第一三共バイオテックがAstraZenecaから原液供給を受けて実施する予定で、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の設備の活用も検討する。

第一三共は、現在実施中のナファモスタット吸入製剤や遺伝子(mRNA)ワクチンの研究開発を推進するとともに、AstraZenecaと協議のうえワクチンの国内安定供給に必要な準備を進めていく。

付記

ブラジル政府は6月27日、AstraZenecaとオックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンの供給を受けると発表した。

12月から供給を受け、臨床試験で有効性が確認できれば、1億回分のワクチンを確保できるという。
輸入に加え、技術提供を受けてブラジル国内での製造も目指す。

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明治ホールディングスは同日、傘下のMeiji Seika ファルマとKMバイオロジクスが、アストラゼネカ㈱が日本へ導入予定の新型コロナウイルスワクチンの国内安定供給に向けた協議を進めることに合意したと発表した。

KMバイオロジクスがAstraZenecaから原液の提供を受けて製剤化(バイアル充填・包装)した後、Meiji Seika ファルマが保管・配送を行い、アストラゼネカ㈱と協力して国内流通に必要な準備を行う。

Meiji Seika ファルマとKMバイオロジクスは、新型インフルエンザの流行に備えてKMバイオロジクスが既に保有している5700万人分のワクチン製剤化設備と、Meiji Seika ファルマのワクチン流通・供給スキームに加え、長年の開発を通じて培ってきた技術を有効活用し、一刻も早く同ワクチンをお届けするため尽力するとしている。

併せて、KMバイオロジクスによる全粒子不活化ワクチンの開発も加速する。

明治ホールディングスは2009年4月1日に、明治製菓と明治乳業が設立した共同持株会社で、2011年4月に、事業再編により、食品事業を㈱明治、薬品事業をMeiji Seikaファルマ㈱とした。

KMバイオロジクスの前身は、戦前熊本医科大学にワクチン、抗血清、診断抗原等の製造・供与を目的に設置されていた実験医学研究所を母体として1945年に設立された財団法人化学及血清療法研究所である。

2017年に医薬品製造販売業、新生児マススクリーニング事業を明治グループに譲渡することを決定、2018年に明治ホールディングスの連結子会社として、KMバイオロジクスが設立された。

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第一三共とKMバイオロジクスは独自のワクチンを開発中。

厚労省によると、日本医療研究開発機構(AMED)が支援しているワクチン開発状況は以下のとおり。

基本情報 取り組み状況 目標と対応 生産体制の見通し
組換えタンパクワクチン
感染研/UMNフ ァーマ/塩野
遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤 ワクチンの候補を作製
動物を用いた有効性評価を開始予定
有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す 塩野義が開発主体
mRNAワクチン
東大医科研/第一三共
メッセンジャーRNAを人に投与する注射剤
人体の中で
コロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了
動物を用いた有効性評価を実施中
有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す
DNAワクチン
阪大/アンジェス/タカラバイオ
DNAを人に投与する注射剤
人体の中で
DNAからmRNAを介しコロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了
動物を用いた有効性評価を実施中
最短7月から臨床試験開始の意 タカラバイオが生産予定
不活化ワクチン
KMバイオロジクス/東大医科研/感染研/基盤研
不活化したコロナウイルスを人に投与する従来型のワクチン コロナウイルスが増殖するかを確認中 2020年度中に非臨床試験終了を目指す
ウイルスベクターワクチン
(ID
ファーマ/感染)
コロナウイルスの遺伝情報を持ったセンダイウイルス投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される 動物を用いた有効性評開始予定 最短で9月から臨床試験開始の意向

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AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。

AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。

2020/5/22 アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ 

AstraZenecaは6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表した。

1) 同社は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携し、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。

2) インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。うち4億回分は年末までに供給する。
  このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

3) AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給 

AstraZenecaは自社で10億回分、インドのSerumへのライセンスで10億回分の合計20億回分を生産する。

自社のうち、3億回分は米国、1億回分は英国、3億回分はCEPI/Gavi 向け、残り3億回分は「ワクチン同盟」向け
インドのSII製造分の10億分はインド向け及びGAVI経由で低所得国向けとなる。

これから見ると、同社の当面の生産分は「ワクチン同盟」への供給で、完売したことになる。

日本向けがいつ頃から始まり、量がどの程度なのか不明である。


韓国外交部は6月23日、外交部長官が世界遺産委員会事務局長に日本の端島(軍艦島)など近代産業施設の世界文化遺産登録取り消しを検討してほしいという書簡を発送した明らかにした。

康長官は前日に送った書簡で、「第44回世界遺産委員会で関連施設に対し日本の忠実な後続措置履行を促す決定文が採択されるよう協力してほしい」としながら「世界文化遺産登録取り消しの可能性も検討してほしい」と要請した。


当局者によると、世界遺産委員会の規定上、登録の取り消しは遺産が毀損されたか保全に問題がある場合のみに可能だが、登録時に行った約束を履行しなかった場合も取り消しが可能かを確認するため書簡を発送したという。

日本政府は2015年7月の世界文化遺産決定時に、「該当施設で本人の意志に反する労役があったという点を含め歴史を知らせる情報センターを作る」と文書で公言したが約束は守られなかった。

6月14日に軍艦島をはじめとする明治時代の産業化施設23カ所の歴史を知らせる産業遺産情報センターが新宿に開設されたが、ここには強制徴用被害を否定し日本の産業化の成果を浮き彫りにする内容だけが入れられた としている。

報道官は「日本が自ら約束した後続措置を忠実に履行するためのあらゆる案を講じたい」とした。

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ユネスコの世界遺産委員会は2015年7月5日、長崎県の端島(軍艦島)など全国23施設の「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を全会一致で決めた。

しかし、それまでに日本と韓国の間で揉めに揉めた。

韓国政府は、「明治日本の産業革命遺産」の23施設のうち7施設について、「戦時中に強制徴用された労働者がいた」と主張し、登録に反対した。

その後、韓国側は6月の日韓外相会談で、徴用工を含む「歴史の全容」を施設の説明を加えれば反対しない姿勢を示し、事態は決着したかにみえた。

しかし、委員会の開幕後、再び対立が表面化した。

意見陳述で韓国側が徴用工の歴史に言及するのに加え、「強制労働」という表現を使おうとした。

日本側は当時は法令に沿った動員がされたとし、韓国での損害賠償請求訴訟など元徴用工をめぐる動きに悪影響を及ぼす恐れがあるとして修正を要請し、韓国側が反発、折り合いがつかなくなった。

調整が難航し、当初予定された7月4日の審議は先送りされた。

一時は次回への延期の懸念もあった。他の各国も採決でどちらかに投票するのを嫌った。

最終的に調整の結果、韓国側が発言案を修正し、日本側も次のように述べ、合意に達した。

日本側は徴用工について、本人の意思に反したという意味の「against their will」という表現を使って、植民地時代に朝鮮半島から連れてこられたと言及、厳しい環境で労働を強いられたなどとも述べた。また、こうした歴史を記憶するために、適切に対応すると表明した。

日本の佐藤 地(クニ)ユネスコ大使(女性初の局長級)は下記の発言を行った。(外務省発表)

議長、

日本政府を代表しこの発言を行う機会を与えていただき感謝申し上げる。

日本政府としては、本件遺産の「顕著な普遍的価値」が正当に評価され、全ての委員国の賛同を得て、コンセンサスで世界遺産登録されたことを光栄に思う。

日本政府は、技術的・専門的見地から導き出されたイコモス(国際記念物遺跡会議)勧告を尊重する。特に、「説明戦略」の策定に際しては、「各サイトの歴史全体について理解できる戦略とすること」との勧告に対し、真摯に対応する。

より具体的には、日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である。

日本は、インフォメーションセンターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む所存である。
日本政府は、本件遺産の「顕著な普遍的価値」を理解し、世界遺産登録に向けて協力して下さったベーマー議長をはじめ、世界遺産委員会の全ての委員国、その他関係者に対し深く感謝申し上げる。

外務省注

【注1】「意思に反して連れて来られ(brought against their will)」と「働かされた(forced to work)」との点は、朝鮮半島出身者については当時、朝鮮半島に適用された国民徴用令に基づき徴用が行われ、その政策の性質上、対象者の意思に反し徴用されたこともあったという意味で用いている。
【注2】「厳しい環境の下で (under harsh conditions)」との表現は、「戦争という異常な状況下」、「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」との当時の労働者側の状況を表現している。

当日の岸田外務大臣の談話は下記の通り。

1 本5日、ドイツのボンで開催されている第39回ユネスコ世界遺産委員会において、我が国が世界遺産に推薦していた「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が、世界遺産一覧表に記載されることが決定されました。誠に喜ばしいことであり、関係者の皆様と共にこの決定を歓迎し、祝意を表したいと思います。

2 本件は、1850年代から1910年にかけて、我が国における製鉄・製鋼、造船、石炭産業といった重工業の産業化に中心的役割を担った遺産群として、高く評価されました。試行錯誤の中、非西洋で初めて産業化に成功した先人達の努力に心から敬意を表するとともに、今回の決定により、同遺産群の果たした世界的役割が一層広く世界に知られる契機となることを期待します。

3 本件の登録決定後、我が国は、世界遺産委員会の責任あるメンバーとして、国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告に真摯に対応していく姿勢を示すため、発言を行いました。この発言は、これまでの日本政府の認識を述べたものであり、1965年の韓国との国交正常化の際に締結された日韓請求権・経済協力協定により、いわゆる朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりありません。

4 今後とも、同遺産群を含めた日本の資産について、世界中の方々に世界遺産としての価値を御理解いただけるよう、関係省庁と連携し、その魅力を更に世界に発信してまいります。

ーーー

新宿区にある総務省 第2庁舎別館内の産業遺産情報センターが6月15日に一般公開された。(3月31日に開所式を行ったが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、これまで臨時休館していた。)

韓国側は産業遺産情報センターでは強制徴用を否定する証言と資料を展示し、韓国政府は日本が約束した措置を履行していないとして強く抗議してい る。

産業遺産情報センターは前日の14日、東京特派員共同取材団に「当時、朝鮮人と日本人は皆、同じ日本人だったので差別はなかった」という証言映像を紹介したという。

菅官房長官は6月22日の定例会見で、「我が国は今まで世界遺産委員会の決議と勧告を真剣に受け入れ、約束した措置を含めてこれを誠実に履行してきた」と 述べ、「日本政府は引き続き適切に対応していく」とした。


大阪大学発のバイオ企業アンジェスは625、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、大阪市立大学医学部付属病院で治験を行うと発表した。


アンジェスは5月25日にワクチン投与で抗体ができることを動物実験で確認したと発表している。
6月24日 に大阪市立大病院の治験審査委員会が承認した。

験者募集会社等を通じて被験希望者の募集を開始し、被験希望者の同意、登録をもって、臨床試験を進めることになる。

新型コロナワクチンを人に投与する国内初の治験となる。

ーーー

アンジェスは本年3月に大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

タカラバイオがその製造を担うが、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造でタカラバイオ社の協力体制に加わった。

臨床試験と並行して準備を進め、20213月末までの20万人分のワクチン製造、および、その後の大量生産に向けて動いている。

2020/5/22 アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

中国医薬集団(China National Pharmaceutical Group Corporation:Sinopharm)傘下の中国生物技術(China National Biotec Group :CNBG) は、開発中の新型コロナウイルス不活化ワクチン候補の第3相臨床試験をアラブ首長国連邦(UAE)で開始したと発表した。

6月23日に北京市と武漢市、Abu Dhabiをつないだテレビ会議が開かれ、協力協定が結ばれた。新型コロナ不活化ワクチンの第3相臨床試験が実施されるのは世界初となる。

同ワクチンは既に中国国内で第1、2相の審査を終え、重篤な副作用もみられず、優れた安全性を示す記録が得られた。異なる方法と用量で28日の間隔を空けて2回投与したところ、いずれも高力価の抗体ができ、被験者の体内における中和抗体の陽転率も100パーセントに達した。

なお、CNBGは武漢にWuhan Institute of Biological Products、北京にBeijing Institute of Biological Productsを持ち、それぞれで別の不活性化ワクチンを開発しておりともにWHOのクチン開発状況で臨床試験段階にある10件のなかに含まれている。今回のは武漢のもの。

2020/6/3 中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ

第3相臨床試験は多数の患者が必要で、中国では新規感染者が少ないため、感染者が増えている海外で試験を行う。

中国CanSino Biologics(康希諾生物)はカナダのDalhousie UniversityのCanadian Centre for Vaccinology で実施する。

 2020/5/26 中国CanSino Biologicsの新型コロナウイルスワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認

Sinopharmはアブダビの人工知能(AI)・クラウドコンピューティング関連企業であるGroup 42 と組んで治験を実施する。今後、同社とワクチンの現地生産でも協力するとしている。

Sinopharmは既にバイオセーフティ基準に合致した大規模生産設備を北京に建設した。大量生産が始まれば、年に1億2千万個の生産が出来る。
武漢にも工場を建設中で、完成すれば年に1億個の生産が可能である。

トランプ大統領は6月22日、新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けた米国人の雇用確保を理由に、一部の非移民ビザ希望者の入国を年末まで停止する大統領令に署名した。

大統領は4月22日に、特定の外国人移住希望者による米国への入国は国益に弊害をもたらすとし、該当する移民希望者に対し60日間の入国停止を行う内容の 大統領令に署名した。

永住権を取得した移民は直ちにほぼ全ての業界で働くことが可能となるため、既に新型コロナウイルスの影響で不利な状況あるいは失業している米国民との競争が不可避となることを挙げている。

規制対象外になる例としては、新型コロナウイルス感染の治療や、感染拡大に対応する目的で移入国しようとする医師や看護師、その他医療関連の専門家、その配偶者と21歳未満の未婚の子供、EB-5投資永住権プログラムビザで入国する者、米国市民の配偶者、米国市民の21歳未満の子供などを挙げている。

今回、この入国停止措置を12月31日まで延長するとともに、入国停止の対象者を一部の非移民ビザ(下記)の取得希望者に拡大する。12月31日以降も、必要に応じて継続される可能性がある。

米政府高官は、今回の措置によって、52万5千人分の米国民の雇用が確保されると強調した。

対象ビザ(いずれも帯同する家族を含む):

  1. 特殊技能職(H-1B)もしくは熟練・非熟練労働者(H-2B)
  2. 交流訪問者(J)で、インターン、研修生、教師、キャンプカウンセラー、オペア (有給のチャイルドケアプログラム)、夏季就労プログラム参加者
  3. 企業内転勤者(L)

なお、合法的な永住者、米国人の配偶者・子、米国の食糧サプライチェーンに不可欠な一時的な労働・サービスの提供者、米国の国益に資すると判断した場合などには適用されない。

米国では25万人の外国人労働者が農業で雇用されているが、入国制限で労働者不足になっている。

国土安全保障省と農務省は4月15日、新型コロナウイルスの影響を受ける中で、国内の食糧供給を維持することを目的に、H-2Aビザ(季節農業労働者)の要件を一時的に緩和した。
外国からの入国制限のため労働者の確保に懸念がある場合、移民局が申請を受理すれば、既に有効なH-2Aビザを保有して米国に滞在している外国人労働者を雇用することが出来る。
H2-Aビザ保有者は、一時的に滞在可能期間の上限3年を超えても滞在が許可される。

今回の措置は、IT企業で働くインド人技術者などの流入阻止が主眼にあるが、日本企業の転勤や採用にも影響が及ぶ。

米国務省によると、2019会計年度(2018年10月~2019年9月)に発給したH-1Bビザは新規・更新合わせて18万8000件超で、このうちインド人が7割と最も多く、次いで中国人が2割弱を占めた。

Lビザは日本企業の駐在員派遣に影響が出る。今回規制対象となったビザを受け取った日本人は計2万人規模に上るという。

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友金属鉱山は6月22日、同社が20.1%出資するインドネシアのニッケル事業会社PT Vale Indonesiaの株式の一部を、インドネシアの国有の鉱工業企業の持株会社PT Indonesia Asahan Aluminium (Inalum)に売却すると発表した。59.2%を所有するカナダのVale Canada Limitedも同様に売却する。

Vale Indonesia(旧称 International Nickel Indonesia)は1996年にインドネシア政府と鉱業事業契約を締結したが、2014年10月に契約改正を行った。
この契約は2025年12月に満了する予定であり、同社が2025年以降も操業を継続するためには鉱業事業許可を取得する必要がある。

そのための条件の一つとして同社への出資の40%をインドネシア資本とする必要がある。このため、下記の通りとする。

出資比率:

現在 今回取引 取引後
Vale Canada(カナダ) 59.2% -14.9% 44.3%
住友金属鉱山(日本) 20.1% -5.1% 15.0%
外国資本合計 (79.3%) (-20.0%) (59.3%)
その他(インドネシア) 20.7% 20.0%
Inalum (インドネシア) +20.0% 20.7%
インドネシア資本合計 (20.7%) (+20.0%) (40.7%)
再計 100% 100%

住友金属鉱山の譲渡金額は約106億円。

ーーー

インドネシアのニッケル事業会社PT Vale Indonesiaは旧称 International Nickel Indonesia(PT Inco)で、1960年代にカナダのInco Ltd が設立した。

Inco Ltd の前身はカナダのSudbury地域でニッケル生産を行う米国企業 International Nickel Companyで、他企業の買収などを通してニッケル・銅・PGM(白金族金属)の生産シェアを拡大し、1961年にはマニトバ州のThompson鉱山のフル生産を開始し、ロシアのNorilsk Nickel に次いで世界第2位のニッケル生産企業となった。

1960年代後半にインドネシアでのニッケル事業に参入し、PT Incoを設立、1970年代後半にはニッケル生産を開始し、Incoのカナダ以外での主力となった。

1988年に住友金属鉱山が権益20%を取得し、参入した。

2006年10月にブラジルの資源大手のValeが180億ドルでPT Incoを買収、Inco LtdはVale Canadaとなった。また、PT IncoはPT Vale Indonesiaとなった。

住友金属鉱山のニッケル事業については下記参照


2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

同社とVale Canada(旧Inco Ltd)との関係は下記参照

2016/4/6 住友金属鉱山と三井物産、ニューカレドニアのニッケル事業から撤退 

ーーー

今回20%を買収したPT Indonesia Asahan Aluminium (Inalum)は日本とインドネシアのアルミ精錬のJVとして設立された。

日本の企業連合とインドネシア政府は2013年12月9日、日本側が全保有株を同政府に5億5670万ドルで売却するとの合意文書に調印した。
合弁は解消され、インドネシアが事業を国有化した。

2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退 

Inalumは2017年に政府の方針で、国有の鉱工業企業の持株会社となった。

2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport Indonesiaの株式の51%を取得  

ツイッターは6月23日、米首都ワシントンでデモ隊に対し力を行使すると警告したトランプ大統領の投稿について、「攻撃的」コンテンツを禁じる自社の規則に違反したとして、非表示にした上で警告文を追加した。

但し、「公共性があると判断した」として、「表示」マークをクリックすると読めるようにした。


「私が米国の大統領である限り、ワシントンDCに『自治区』が存在することは決してない。設置を試みる者は、厳しい力の行使を受けることになるだろう!」というもの。

このツイートは、6月22日夜にホワイトハウス近くのラファイエット広場で抗議者たちと警察当局が衝突したことを受けてのもので、ツイッター側は「悪意のある行動、具体的には、特定可能なグループに対する危害の脅威」であるとし、同社のポリシーに違反するとした。但し、公共性を認め、読みたい人には読めるようにした。

ツイッターは2020年5月26日にトランプ大統領が、カリフォルニア州で進められている郵送投票に対して「郵送投票は実質詐欺のようなものであることは明らかだ」としたのに対し、"Get the facts about mail-in ballots"(郵送投票についての事実を知って!)との注意書きを付けている。


自治区(Autonomous Zone)は最初にシアトルでつくられ、全国に広がろうとしている。大統領はワシントンDCでの設置の動きを牽制した。

5月25日にミネソタ州で白人警官が黒人男性を死なせた事件を機に抗議活動が広がり、地域によってはデモ隊と警察の衝突が起きた。

シアトルでもデモ隊と警察の小競り合いが続き、Capitol Hill 地区のシアトル警察East Precinct署が抗議活動の中心的な場所となった。

市警は6月8日、この警察署から大半の警察官を撤退させた。これを受け、抗議活動参加者たちが デモ隊と警察隊の間に置かれていたバリケードを利用し、周辺の交通を遮断。6ブロックを通行止めにし、スピーチやダンス、映画の上映などを行っている。

抗議活動を続ける市民は、「Capitol Hill」という地域の名前にちなんで、一帯を「Capitol Hill Autonomous Zone:CHAZ)」、または「Capitol Hill Organaixed Protest:CHOP」と呼んでいる。


トランプ大統領はこれに激怒し、知事(民主党)と市長をツイッターで罵っている。「町を取り戻さないなら、自分がやるぞ、これはゲームではない」とした。

付記 地元警察は7月1日、デモ隊を強制的に排除した。

東芝は6月22日、保有するキオクシアホールディングス(旧称東芝メモリ)の株式の売却を進め、売却で得た資金の半分以上を株主への還元にあてる方針を明らかにした。

東芝は、2015年の会計問題以降の5年間で、7事業、3兆円の事業を切り離し、事業ポートフォリオの見直しを精力的に進めてきた。この2年間でも 、米国LNG事業、英国原子力発電所新規建設事業などのノンコア事業を切り離すとともに、政策保有株式160円、機能会社3社210億円、不動産等288億円など事業外資産売却を進めて きた。

また、東芝メモリの売却資金で総額7,000億 円の自己株式取得を実行し大規模な株主還元を行なった。


東芝が保有するキオクシアホールディングス株式(議決権比率
40.2%)に関しては、車谷CEOも2018年4月のCEO就任時には「4割という出資比率は悪くない」と保持する方針を示していた。

しかし、メモリ 事業を 東芝グループにおいて運営する経営戦略上の意図はなく、株式の現金化の可能な方策について継続的に検討して いる。

今回、この現金化がなされた際には、手取金純額の過半を原則として株主還元に充当することを 明らかにした。

同日の取締役会で剰余金の配当等の決定権限の行使に関する方針(株主還元方針について決議した。

従来の方針には、「平均連結配当性向30%以上の実現を基本とし、適正資本水準を超える部分については自己株式の取得を含む株主還元の対象と する」としているが、今回、以下を付記した。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響に備え当面は財務の安定性を重視しますが、将来のキオクシアホールディングス の株式売却から得られる手取金純額の過半を原則として株主還元に充当ることを意図しております。 」

なお、システムLSI事業、プリンティング事業等のモニタリング対象事業については、聖域を設けずあらゆる施策を検討していくとしている。

ーーー

東芝は2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、譲渡価額は2兆円。

2018年6月1日に譲渡が完了した。

東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億
円分(総数の約40.8%)取得し、その結果、約40.2%の議決権を取得した。

Apple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの需要家4社が(議決権無しで)4,155億円を出資している。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

東芝メモリは2019年5月31日、日本政策投資銀行による出資とメガバンク3行からの借り入れで、6月末までに総額1兆2000億円を調達すると発表した。3行は1000億円の追加融資枠も設定する。

東芝メモリは設備投資に充てる成長資金を確保するため、2019年11月以降に新規株式公開(IPO)を検討しているが、「取引先が株式を持つ現状では上場審査に不利」とされる。

このため、Appleなど4社が持つ優先株を買い戻しておく必要がある。

今回の調達資金 1.2兆円(他に融資枠1千億円)で Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却する。
残りの資金で金融機関からの借入金 6千億円を返済する。現金700億円が手元に残ることとなる。

単位:億円) 出資 合計 転換
社債
借入金 再計 今回 処理後
議決権 優先株
東芝 40.2% 1,096 2,409 3,505     3,505   3,505
HOYA 9.9% 270   270     270   270
(日本側) (50.1%) (1,366) (2,409) (3,775)     (3,775)   (3,775)
Bain 49.9% 1,361 759 2,120     2,120   2,120
SK Hynix     2,660 2,660 1,290   3,950   3,950
(Bain / SK) (49.9%) (1,361) (3,419) (4,780) (1,290)   (6,070)   (6,070)
Apple ほか4社
(買戻し額)
    4,155 4,155     4,155

-4,155
(-5,300)

0

金融機関           6,000 6,000

-6,000
9,000

9,000
日本政策投資銀行               3,000 3,000
INCJ
(産業革新機構)
              0  
合計 2,727 9,983 12,710 1,290 6,000 20,000 1,845 21,845
(今回のCash 増)             700


2019/4/5 東芝メモリ、1.3兆円調達

東芝メモリは2019年10月1日付で社名を「キオクシア㈱」に変更した。

キオクシア(旧称 東芝メモリ)は2020年5月14日、2020年3月期の連結決算概要を発表した。

キオクシアは旧東芝メモリを時価(交渉価格)で買収したため、簿価との差が出る。
この処理(PPA:Purchase Price Allocation) で大きな負担(2022年3月期までに各年1,000億円程度償却)が出るが、製品価格の値下がりで一般の営業損益でも赤字となり、最終損益で1667億円の赤字となった。

2020/5/22 キオクシア(旧称 東芝メモリ)の2020年3月期決算

東芝では、キオクシアの上場時期については「2018年6月から3年以内の上場を目指す方針に変わりはない」としているが、事業環境の悪化から赤字に転落しており、急激な改善は見込めない。
当初想定していたような条件で上場ができるであろうか。


そんななかで、競争相手の韓国のサムスン電子は6月1日、京畿道平沢市の「平沢キャンパス」に8兆ウォン(約7000億円)を投資し、NAND型フラッシュメモリーの生産ラインを建設すると発表した。
昨年7月に世界で初めて量産に成功した世界最先端の第6世代積層NAND型フラッシュメモリー(V-NAND)を来年下期から量産する。

サムスンは現在、中国・西安市にもNAND型フラッシュメモリーの生産ラインを増設している。

サムスン電子は2019年12月13日、西安工場(陝西省西安市)に80億ドルを投資することを明らかにした。第5世代のNAND型フラッシュメモリーの生産能力を高める。2021年に稼働する見通し。

西安工場はサムスンが海外に持つ唯一の半導体メモリー工場。同工場に追加投資をして生産設備を増やし生産能力を拡大する。

韓国では、「新型コロナウイルスと米中通商摩擦で世界の半導体市場に不確実性が高まる中、果敢な先行投資で後発メーカーとの差をさらに広げようという伝統的なサムスン式半導体戦略」とみられている。

EUは6月16日、Appleが自社のアプリ販売サービス App Storeを利用するアプリの開発業者などに対して支配的な地位を利用して公正な競争を妨げた疑いがあるとし 、また、電子決済サービスApple Payをめぐっても競合他社の特定の商品について利用を制限していた疑いがあるとして本格的な調査を始めることを明らかにした。

1) App Store rules:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_20_1073

App Storeは、Appleが運営するiPhone、iPod touch、iPad向けアプリケーションのダウンロードサービス。

EUは、他のアプリ開発業者がアプリを供給する仕組みが競争ルールに違反しているかどうかを調べる。

iPhone やiPad のユーザーは現在、他の開発業者のアプリケーションをApp Store経由でのみダウンロードできる。

問題点は2つ。

① Appleのアプリ購入システム
"IAP"を使う必要があり、Appleは開発業者に30%のコミッションを課している。開発業者はこの分をユーザーに転嫁せざるを得ない。 

② ユーザーは音楽やe-book、オーディオブックを開発業者のウエブサイトなどから購入できるが、Appleは開発業者に対し、それらの購入方法をユーザーに知らせることを禁止している。

2019年3月11日にApple MusicのコンペティターであるスウェーデンのSpotifyが、Appleと開発者との間のライセンス契約のルールに関して欧州委に訴えた。
2020年3月には
Apple Books appと競合する e-book とaudiobookのディストリビューターも同様の 不満を欧州委に伝えた。

2) Apple Payhttps://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_1075

電子決済サービス「Apple Pay」は唯一のNFC (近距離無線通信)技術を用いた非接触支払方法である。

一部のケースでAppleが他のサービスを提供する企業の利用を拒否したり、「iPhone」の近距離通信機能の利用を制限したりしている疑いがあり、競争をゆがめている可能性があるとする。


EUの競争政策担当のExecutive Vice-President Margrethe
Vestagerは次のように述べた。

今や、Appleが、iPhones や iPadsのユーザーにアプリを販売するルールを決めている。

新型コロナウイルスの影響で電子決済は一層広がりを見せていて、消費者がより利益を受けられるようにすることが重要だ。

新たな決済技術によって消費者は選択の幅が広がり、質や価格、イノベーションなどの恩恵を受けることが可能になったが、それをAppleの措置が阻害しないことが重要だ。

ソフトバンクグループは6月23日、持ち分法適用会社のT-Mobile US 株を売却すると発表した。

同社所有の304,314千株(全体の24%)のうち、198,324千株をT-Mobile USに売却する。具体的な売却価格は今後公表する予定だが、市場価格ベースでは約210億ドルとなる。

合わせて、T-Mobile US の43%の株主のDeutsche Telekomは、ソフトバンクグループの残り持株のうち101,492 千株について株式購入オプションを受領する。

このオプションが実施された後のソフトバンクグループ持株は4,800千株となる。

ソフトバンクグループは72020323、今後1年にわたって最大4.5兆円の保有資産を売却または資金化する方針を発表した。最大2兆円の自己株式取得にくわえ、残額を負債の償還、社債の買入れ、現預金残高に充当する。

今回の取引は当該プログラムの一環として行うもの

ーーー

ソフトバンクグループ2020年2月21日、傘下の米携帯電話4位 Sprintと3位のDeutsche Telekom傘下の T-Mobileの合併手続きが早ければ4月1日にも完了する見込みだと発表した。

T-Mobilは2020年4月1日、Sprintとの合併が完了したと発表した。


2020/2/24 SprintとT-Mobile、合併条件修正で合意

アリゾナ州のトラックメーカーNikola Motorは6月4日、米NASDAQ市場に上場を果たした。

同社は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のトラックを開発する2014年創業のスタートアップ企業で、まだ生産工場を持っていない。

韓国のハンファ(ソーラーパネルメーカーとして)、独ボッシュ、伊CNH Industrial などから初期投資を受けている。

今回の上場は、ナスダック市場に上場している特別買収目的会社のVectoIQ Acquisitionとの逆さ買収によるもの。

VectoIQ Acquisitionは元GM副会長のSteve Girskyによって設立された特別買収目的会社(SPAC)で、ハイテク輸送分野への投資を本業としている。

VectoIQ Acquisitionが6月3日にNikola Motorを33億ドルで買収、Nikola Motorが存続会社となり、Nikola Corporationに改称した。

上場初日の6月4日の取引終了時の株価は33.75ドルで、時価総額は約120億ドルになった。
6月9日には79.73ドルに上がり、時価総額が約288億ドルに高騰した。33億ドルと評価された会社が8.7倍になった。(6月19日終値は65.51ドル)

Nicolaの創業者兼CEOのTrevor MiltonNikola Motorの株式の40%を保有しており、上場後の持ち分は、30%以上になるとされている。

CEOは、「上場により新たな資金を調達し、強固なビジネスモデルを確立する。当社はエネルギーや輸送分野を根本から変えていく」と宣言した。

ーーー

Nikolaの社名は、同じ電気自動車メーカーのTeslaと同様、19世紀中期から20世紀中期の電気技師、発明家のNikola Teslaから採っている。

Nikola Teslaはクロアチア生まれで、1884年にアメリカに渡りエディソンのもとで働くが1年後に独立した。

交流電動機やテスラ変圧器を発明、回転界磁型の電動機から発電機を作り上げ、ナイアガラの滝発電所からの送電に応用し高圧電流を発生させ効率の高い電力輸送を実現させた。

1880年代にNikola TeslaとGeorge Westinghouseは交流送電を主張、直流送電を主張するEdisonと争った。その後、交流変圧器が進化したことで、電圧変換が容易な交流送電が圧倒的に有利となった。

この争いは上映中の映画「エジソンズ・ゲーム」(原題:The Current War)で描かれている。

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Nikolaは自動車業界での経験がゼロのエンジニアを中心に採用し、従来の概念に囚われない技術開発を推し進めている。水素燃料電池トラックの評価は非常に高い。

2014年の創業以来、同社は水素を活用した電動のビジョンをパワースポーツに、最近ではピックアップトラックに広げてきた。

まだ工場を建設中だが、既に約14,000台の電動トラックの受注を獲得しており、納車を完了すれば100億ドルの売上が見込める。

Milton CEOは、「1人のセールスマンも雇わずに100億ドル規模の受注を勝ち取った」としている。

これまでに Nicola One (sleeper semi-truck)、Nicola Two (day cab semi-truck)、Nicola Tre ( cabover semi-truck) を発表している。

2020年2月に、ピックアップトラックBadgerを発表した。自動車メーカー(社名明らかにせず)に委託し、6月中に発売する。

「BADGER」は、リチウム電池と水素8kgを使った120kWの水素燃料電池を搭載しており、ピークHPは906馬力で航続距離は約965km、そして時速0~100kmに到達するまでたったの2.9秒とされる。
価格は安くて6万ドルから、以降オプションに応じて9万ドルになると見られる。

Nicola Oneは水素燃料電池だが、以降は全てリチウム電池と水素燃料電池併用の「hydrogen-electric hybrid truck」である。

CEOは「2種類を組み合わせた方が、効率良く電源を制御できる」とその理由を説明している。

NicolaはNicolaへの出資者であるイタリアのCNH Industrial 傘下の商用車メーカー Iveco と組み、2021年3月までに Ivecoのドイツ工場でNicola Tre の生産を始める。

Nicola Two Nicola Badger


Nicolaは並行して、米国中に大規模な水素ステーションのネットワークを構築する ことを計画している。
炭素排出量を削減するために、再生可能電力で水を電気分解して水素を生成する 。

同社は最近、ノルウェーのNel Hydrogenから3000万ドル分の機器を購入し、太陽光発電によって水から水素を発生させるプラントを建設する計画を発表した。この施設で、1日あたり40トンの水素を生み出すことを目指す


同社の基本ビジネスモデルは7年間のリース契約である。

Nikolaは2018年5月にビール大手のAnheuser-BuschからFCトラック800台のリース利用について受注 した。受注額は100億米ドルで、燃料費込みの契約である。

Anheuser-Buschのゼロエミッション化計画に基づくもので、Bud Lightなどのビールを米ミズーリ州セントルイスの醸造所から卸売業者までNicola Twoで輸送、そこからの配送は中国のBYDの電気自動車(EV)トラックで行う。Nicolaは2019年10月に21台を試験的に納入した。

米通商代表部(USTR)のRobert Lighthizer代表は6月17日、下院歳入委員会の公聴会で証言し、Mnuchin米財務長官がデジタル税を巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。

「さまざまな国が歳入を増やす最も簡単な方法は他国の企業に課税することだと決めている状況にあり、それが米企業に降りかかっている 。米国はそれを許さない」と述べた。米テクノロジー企業の収益に課税しようとする各国と合意に至らなかったという。

但し、交渉の余地を認めた。

英 Financial Times は先に、Mnuchin財務長官が6月12日の書簡で欧州に米国の決定を通知したと報じていた。

財務省の報道官は声明で、各国政府が新型コロナウイルス対応と経済再開に集中できるよう、米国は「協議の一時停止」を提案していると述べた。

フランス経済・財務省の報道官は、同国が書簡を受け取ったことを電子メールで明らかにし、政府として他のEU諸国と共に対応に取り組んでいると述べた。

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デジタル課税を巡る議論は経済協力開発機構(OECD)を中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している

OECDは2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。

一部の利益とそれに対する課税権を多国籍企業の市場がある国・地域に割り当てることを提案している。

対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)

対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。

通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)
従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。
超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税

「2020年までに合意に達することができなければ、各国が一方的措置を執るリスクが高まり、すでに脆弱なグローバル経済にさらにマイナスの影響を及ぼすことになる。それを座視するわけにはいかない」としている。

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題 

Mnuchin米財務長官は2019年12月3日付でOECDのグリア事務総長に 書簡を送った。

「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」 とし、改革案に強い懸念を示した

国際課税ルールの改革を大筋で受けれ入れているものの、既存もしくは新しい課税ルールいずれを適用するかは多国籍企業に選択肢を与えるべきと主張し、「セーフハーバー(適用免除)制度」を提案した。

これは骨抜きであり、他国にとっては許容しがたいものである。

米国にとっては、問題になっているのはAmazon、Google などほんとんどが米国企業であり、これらに対する課税は米国が行うべきで、他国の課税は国益に反するとの立場である。
これらの会社が他国で利益を出しながら、恒久的施設を持たない方法によりそれらの国の課税を妨げているという事実を無視している。


国際的な合意がとれないまま、多くの国が独自のデジタル課税を実施又は計画している。


米通商代表部(USTR)は2020年6月2日
Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。
不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。

フランスでは2019年7月にDigital Services Tax法案が成立し、トランプ大統領はフランス産ワインに関税を課すことをほのめかした。(のち、暫定合意)

2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討


塩野義製薬は6月22日、日本大学、群馬大学、東京医科大学との間で新型コロナウイルス迅速診断法に関するライセンス契約で合意したと発表した。
今後、
公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、本診断法の実用化に向けて取り組むとしている。

検査キットが診断に使われると判断すれば、厚労省に薬事承認を申請し、今秋の実用化を目指す。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を診断する検査法としては、鼻腔や咽頭、唾液から採取した検体からウイルスの核酸を検出するPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)や抗原検査キット等が用いられているが、これらの検査法では、専用測定器の必要性や、測定の簡便性、迅速性、検体採取時の医療従事者の感染リスク等、依然として多くの課題が残っている。

日本大学、群馬大学、東京医科大学の共同研究チームは、これまでにない全く新しい革新的核酸増幅法(SATIC法:Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes法)によるウイルス迅速診断法の開発に成功した。

日本大文理学部の桑原正靖教授(元群馬大大学院准教授)と東京医科大の河島尚志主任教授との共同研究によるもので、日本大学、東京医科大学が5月14日に発表した。

SATIC法は、特定の遺伝子のみならず、変異遺伝子、さらにはタンパク質や代謝物などの生体内分子も、簡便な手法で特異的かつ高感度に測定できる技術で、COVID-19やインフルエンザウイルス感染症等の検査時点での感染の有無を短時間で簡便に知ることが可能である。

特長は次のとおり:

・ SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染の有無を、検出機器を必要とせず目視で容易に判定可能

・ 検体採取から25分程度で判定可能

・ 偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR法と同等の高い感度  

・ 鼻咽頭ぬぐいの綿棒のみでなく、唾液や喀痰からの検出が可能。
  患者の侵襲性が低く、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減される。
  唾液の場合、患者本人による検体採取も可能

・ サンプル中のごく微量のウイルスを検出することが可能 


SATIC法とは:


特長:

PCR検査に必要な核酸(遺伝子)の抽出作業が不要で、検体をそのまま前処理液と混合し95℃で2分処理することにより、測定の準備ができる。

遺伝子を増幅させるとき、PCR検査では高温と低温のサイクルを多くの場合2時間程度繰り返す必要があるが、新検査法では37℃で20~25分程度にて行える 。

陽性のときは試験管内のナノ磁性ビーズが凝集するため、目で見て判定できる。

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基本原理:

検査試薬の内容:
 環状DNA鋳型1&2 とそれぞれのプライマリー
 デオキシヌクレオシド三リン酸(DNAポリメラーゼの基質)
 DNAポリメラーゼ
 独自開発したG4の蛍光染色薬(ThT-HE)


検査対象が陽性の場合、蛍光染色薬(ThT-HE)が光る。

1段目の反応の詳細


付記 発表ではこれ以上の技術的な説明はない。以下、素人の解釈。   

COVID-19のゲノムは元々、RNAである。 (PCRでは逆転写でDNAにすることが必要)

ウイルスなど環状構造を持つ核酸を鋳型とする生化学反応には、DNAポリメラーゼが作用するローリングサークル型複製反応がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/57/1/57_005/_pdf


SATICはこれを利用するもので、環状DNA鋳型1は一部をCOVID-19のRNAに合うように設計しておく。

RNAがくっつくとプライマリー1が作動を開始、当初の設計通り反応が進み、最後にグアニン四重鎖と
蛍光染色薬が結合する。

PCRのように、逆転写が必要でなく、DNAの増幅も必要でない。


ロシアのシベリア地方にある火力発電所施設から大量の軽油が流出し、付近の河川が汚染された事故を受けて、プーチン大統領は6月3日、同地方に非常事態を宣言 、 当局者の報告の遅れの「不手際」を批判した。

クラスノヤルスク地方の工業都市ノリリスク市郊外で5月29日、ニッケル生産の世界最大手のNorilsk Nickel の子会社 Norilsk-Taimyr Energyの第三火力発電所で燃料タンクが損傷し、推定2万トンの軽油が流出した。

..
 北側からの撮影

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国の環境監視当局によると、軽油1万5000トンが付近の川に、6000トンが土壌に流出したという。

地元の環境保護専門家らが、許容値の80~116倍の高濃度汚染を検知したとしている。

これまでのところ、事故原因は特定されていないが、発電所は永久凍土の上に建設されており、近年の温暖化の影響で地盤が沈下していることが懸念されていたという。

検事総長は不安定な土地に建てられた建造物の点検を命じた。

油が流れ込んだアンバルナヤ川には応急処置としてオイルフェンスが展張されたが、汚染された川の水が北極海へ流出することが危惧された。 
流れ出たディーゼル燃料は、北極海に注ぐピャシノ湖に到達した。ピャシノ湖にはNorilsk Nickelの鉱山がある。

グリーンピースによると事故の規模は、1989年にアラスカ州で起きたエクソンモービルの流出事故に匹敵するという。
世界自然保護基金(WWF)は、河川の汚染による漁業などの損害は1300万ドルを超えると推定している。 

捜査当局は6月10日、環境法令違反の疑いで発電所の所長ら職員3人を逮捕した。

汚染除去に当たる国営パイプライン会社Transneft Siberiaの幹部によると、現場近くの状況は安定しているものの、軽油流出が原因で死んだとみられる鳥などの動物の死骸が見つかった。

同幹部は「少なくとも8日から10日間にわたり、アンバルナヤ川からディーゼル燃料を取り除く予定だ」と説明。「完全に浄化するには何年もかかるだろう」と述べた。

住友化学は6月18日、同社が開発した樹脂製蓄熱材「ヒートレージ®」が、このたび、建材メーカーから販売されたシート状潜熱蓄熱建材に採用されたと発表した。

同社は2016年に熱を蓄える機能を備えた樹脂「ヒートレージ®」を開発した。

分子構造を設計する際に一定の温度で「相変化」が起きる特徴を持たせた。
この樹脂に熱を加えると、内部の結晶の構造が変化しながら、熱を蓄える。
熱を蓄えた状態から冷却すると、今度は熱を放出しながら徐々に元の構造に戻っていく。

従来の低分子系蓄熱剤は温度が上がると、固体から液体に変る。
このため、蓄熱して液化した場合に樹脂が漏洩しないよう、アルミパックやプラスチック、カプセルなどの容器に封入する必要がある。


「ヒートレージ®」は蓄熱する温度域においても固体の形状を維持する。熱を蓄えた状態では樹脂を触った感触がやや柔らかくなるものの、形状を保持する性質が高い。
熱を蓄えた状態から冷却すると、熱を放出しながら徐々に元の構造に戻っていく。


「ヒートレージ®」は相変化を利用して、20~50℃の範囲内の所望の特定温度域で熱の出し入れをするように設計された樹脂で、 一般の樹脂と同様、押出や射出、紡糸などの成形加工を容易に行うことができる。

蓄熱しても、液化して漏洩することがないため、容器に封入する必要がない。そのため、蓄熱材成形品の切断や釘打ちといった加工の自由度を高めることができる。

通常の樹脂と同様、射出成型機での加工に対応する。発泡剤を混ぜると発泡樹脂にできるなど、通常の樹脂材料と同じような加工ができる。粒状のペレット状で出荷する。

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一般的に、潜熱蓄熱建材は冬期に限定した目的で使用されている。

冬季において昼間の熱を潜熱蓄熱建材て蓄熱して、日射による室温の温度上昇(オーバーヒート) を抑え、夜に放熱することで夜の暖房負荷低減と室温の安定化 が可能になる。


 日本潜熱蓄熱建材協会

しかし、夏期では日中の屋根面の表面温度は外気温に対して非常に高温になり、室内温度の上昇につながる。一度室内空間に入った熱は夜間も逃げにくいといった課題もある。


住友化学は、建材メーカーとともに、日本の家屋の弱点の一つである夏期の屋根の熱遮断能力不足を克服するための材料として「ヒートレージ®」を活用できないか検討を進めてきた。

その結果、屋根材料の発泡プラスチック系断熱材の中間に「ヒートレージ®」を配置することで、夏期日射ピーク時には室内侵入熱を大幅に削減する効果があり、さらに一日を通して、冷房負荷の軽減と省エネルギー効果が得られるため、今回の採用に至った。


「ヒートレージ®」を用いた製品が社会で実装・ 販売されることは、今回が初めて。

同社では、建材用途以外でも、さまざまな分野で省エネルギー化や人々の暮らしの快適性向上に寄与すると考えている。

例えば、シート状または綿状にして自動車のルーフや内装材に用いることで、家屋の屋根材の場合と同様に省エネルギー性や快適性を高める 。
服飾では、衣服内気候を快適に保ち、心地良さを継続させることが可能になる。

これからも市場の潜在ニーズを発掘することで、既存事業の枠を超えた新たなアプリケーションへの展開などにつながる新規製品・技術を開発し、サステナブルな社会の実現に貢献できるソリューションを提供して いくとしている。

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カネカは6月18日、特殊樹脂製潜熱蓄熱材を用いたシート状の潜熱蓄熱建材「パッサーモシート」を開発し、6月から販売を開始したと発表した。

「パッサーモシート」は、特殊樹脂製潜熱蓄熱材を使用し、厚さ約1mmのシート状に押出成形した潜熱蓄熱建材。

屋根部に「パッサーモシート」と押出法ポリスチレンフォーム断熱材(「カネライトフォーム」)などを組み合わせて使用することで、屋外からの熱を「パッサーモシート」が蓄熱し熱の流入を抑え、夏期日中の日射ピーク時の室内への熱流入を削減する。加えて、夜間には蓄熱した熱を屋外に排熱することで、一日を通して冷房負荷を軽減し、省エネに貢献する。

熱材の相変化を利用して、20~50℃の範囲内の特定温度域で熱の出し入れをするように設計されており、押出成形したシートは、従来とは異なり、蓄熱する温度域において固体の形状を保つ。



SK Materials はこのたび、純度99.999%の超高純度フッ化水素ガスの量産を始めた。

同社は2019年末、超高純度フッ化水素ガスの試作品開発に成功し、慶尚北道の栄州工場に15トン規模の生産施設を作るなど国産化作業を進めてきた。
2023年まで国産化率を70%まで引き上げることを目標としている。

日本の素材メーカーが輸出してきた「イレブンナイン」と比べて品質は劣るものの、半導体ウエハーの洗浄など生産工程の一部で導入が始まったとしている。

SKグループは、素材の国産化過程で確保した力量などを中小企業共生協力と連携させて国内半導体生態系を強化するために寄与していくと明らかにした。

なお、韓国の化学メーカー ソウルブレーン Soulbrain Co.,Ltd)は純度「99.999%以上」の液体フッ化水素の量産を始めている。



日本政府は
2019年7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。7月4日より、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の大韓民国向け輸出及びこれらに関連する製造技術の移転について、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行う 。

フッ化水素は半導体洗浄、エッチングに使用される。ステラケミファや森田化学工業が生産し、日本が9割程度の高いシェアを握る。

2019/7/3 政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表 

韓国は9月11日、日本の半導体材料に対する輸出管理の厳格化がWTO協定に違反するとしてに日本を提訴した。

韓国政府は2019年11月22日、日本との協議再開に伴い、WTOの紛争解決手続きを中断した。

韓国の産業通商資源部は2020年6月2日、「韓国政府は、昨年11月22日に暫定停止していた日本の3品目輸出制限措置について、WTOの紛争解決手続を再開することを決定した」と述べた。

2020/6/6 韓国との関係:WTOへの提訴手続き再開と日本製鉄資産差し押さえ問題 


一方で韓国はこれら製品の自製を促進している。

韓国産業通商資源部の長官は1月8日にDuPont社長と面会し、「日本の輸出規制措置を解決する上で一部進展があった」が、根本的な解決策とは見なしがたいとし、主要な材料や部品に関する技術競争力確保と供給元の多角化に引き続き取り組んでいくと強調した。

DuPontは1月9日、韓国で先端半導体製造に必要なフォトレジスト(感光材)を生産すると発表した。

2020/1/11 DuPont、韓国でレジスト生産へ

日本のメーカーも、韓国の国産化推進方針に乗り、半導体部材の現地生産を進めている。

関東電化が韓国の天安工場で硫化カルボニルの製造を開始
太陽ホールディングスがドライフィルム型ソルダーレジストの現地生産を発表(現在は北九州工場から輸出)
東ソー・クォーツは半導体製造装置向け石英ガラス製品の現地生産を発表。最新設備を導入し、2020年度中に生産開始。
ADEKAは鹿島工場で生産する半導体材料の一部の現地生産を検討
東京エレクトロンは、サムスン電子の最先端メモリ半導体工場がある京畿道平沢に大規模な顧客サポートセンターを竣工した。今後、部品生産の可能性もある。

本ブログは2019年7月3日のブログで、次の通り述べた。

長期的には、韓国は重要原料については自製を図るだろう。その場合、日本企業は需要を失うこととなる。

日本は禁じ手を使ってしまった。日本はフッ化物の原料の蛍石を中国からの輸入に頼っていることも勘案しておく必要がある。


米連邦最高裁は6月18日、幼少時に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を猶予する措置「DACA」について、トランプ政権による撤廃を認めない判断を示した。

判決は5対4で、判決文を執筆したロバーツ長官に加え、リベラル派の4人が支持に回った。

性別 年齢 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 70歳 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Ruth Bader Ginsburg 女性 85歳 ユダヤ系 Bill Clinton 1993年8月10日 リベラル
Stephen Breyer 男性 80歳 ユダヤ系 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  (Chief) 男性 63歳 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 68歳 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 64歳 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 58歳 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 51歳 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 53歳 白人系 2018年10月6日 保守

最高裁がトランプ政権の主張を認めない判断を下したのは今週2度目で、6月15日には、LGBTQ(性的少数者)について、公民権法に基づき保護されるとの判断を示していた。

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DACA制度は、子供の頃に親に連れられ入国した不法移民強制送還を免除する制度で、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)の受領者は「ドリーマー」と呼ばれ、全米で約80万人いると推定されている。強制送還が免除され、就労許可、social security numberの付与が可能。

DACAは民主党のオバマ前政権が2012年に取り入れた。

セッションズ司法長官は2017年9月5日、制度が憲法に違反することを理由にDACAを撤廃すると発表した。対象者の在留資格は2018年3月までは保護されるが、新たな申請は認めないとした。
制度が、議会を通った法律ではなく、大統領令で決まったことが問題であるため、議会に代替の法律をつくる猶予を与えた


2017/9/6 新たな不法移民問題

これに対し、カリフォルニア州の連邦地裁は2018年1月9日、制度の撤廃について一時差し止めを命じた。

トランプ政権は、控訴裁を飛ばして最高裁の判断を求めたが、米連邦最高裁は2018年2月26日、トランプ政権の訴えを退けた。

救済措置は打ち切りが3月5日に迫っていたが、カリフォルニア州の連邦地裁による一時差し止め命令は効力が全米に及ぶため、司法手続きや議会での対応が続く間は引き続き有効となる。

2018/3/1 米最高裁、地裁によるDACA制度撤廃の一時差し止め命令の最高裁判断を求めた政権側の要請を却下 

米カリフォルニア州の連邦控訴裁判所(高裁)は2018年11月8日、撤廃差し止めを命じた連邦地裁の判断を支持し、トランプ政権による撤廃を認めない判断を下した。

政権側は最高裁に訴えた。

連邦最高裁判所で2019年11月12日、口頭弁論が開かれた。

今回の決定で、ロバーツ長官は多数意見で、「DACAやその撤廃が妥当な政策かどうかについては判断しない」とし、「合理的な説明の提示を求める手続き上の要件を関係機関が順守したかどうかのみを扱う」とした。政府の制度廃止の理由は不十分だとしている。

この判断の結果、DACAの対象者は引き続き、就労許可や強制送還からの一時保護を受ける資格の更新が可能になる。

ニューヨークタイムズは、今回の判決は、トランプ政権がDACA廃止をするためには、下級審により強固な理由を提供しなくてはならないことを意味しているとし、手続きは数カ月を要すると考えられ、11月の大統領選挙後まで宙に浮いた状態になるだろうと見通しを述べている。


トランプ大統領は、異例の手続き(
Neil Gorsuchのケース)などにより保守系の2名を指名し、5:4の多数を占めたのに、保守系判事が反対に回って敗訴するのが続き、頭にきている。

トランプ大統領はツイッターで次のように述べた。

最高裁が下した恐ろしい、政治色の強い判断は、誇りをもって共和党員や保守派を自任する人々の顔面に散弾銃を発射するようなものだ。

DACAだけでなく、聖域都市、国税調査とその他のことに関する昨今の連邦最高裁判所の判決が示しているのはたった一つ、最高裁に新しい判事が必要だということだ。

もし急進左翼の民主党が権力を握るならば、修正第2条(武器保有権)や中絶禁止、安全な国境、信仰の自由や他の多くのものが終わりを迎える。  

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These horrible & politically charged decisions coming out of the Supreme Court are shotgun blasts into the face of people that are proud to call themselves Republicans or Conservatives. We need more Justices or we will lose our 2nd. Amendment & everything else. Vote Trump 2020!

Do you get the impression that the Supreme Court doesn't like me?

The recent Supreme Court decisions, not only on DACA, Sanctuary Cities, Census, and others, tell you only one thing, we need NEW JUSTICES of the Supreme Court. If the Radical Left Democrats assume power, your Second Amendment, Right to Life, Secure Borders, and Religious Liberty, among many other things, are OVER and GONE!

The DACA decision, while a highly political one, and seemingly not based on the law, gives the President of the United States far more power than EVER anticipated. Nevertheless, I will only act in the best interests of the United States of America!

As President of the United States, I am asking for a legal solution on DACA, not a political one, consistent with the rule of law. The Supreme Court is not willing to give us one, so now we have to start this process all over again.

I will be releasing a new list of Conservative Supreme Court Justice nominees, which may include some, or many of those already on the list, by September 1, 2020.
If given the opportunity, I will only choose from this list, as in the past, a Conservative Supreme Court Justice based on decisions being rendered now, this list is more important than ever before (Second Amendment, Right to Life, Religous Liberty, etc.) - VOTE 2020!...

(最高裁判事は
死去または自ら引退するまで身分が保証されている。上で述べているのは死亡又は引退で欠員が生じた場合の名簿)

米国商務省は6月15日に新しい規定を発表し、米国企業がHuawei と 5G基準の制定で協力することを容認した。
6月18日のFederal Register に掲載した。

Release of ''Technology'' to Certain Entities on the Entity List in the Context of Standards Organizations AGENCY


米商務省は2019年5月15日、制裁対象のイランとの金融取引に関わったとして、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List にHuawei と子会社を追加した。

2019/8/21 米、Huawei 禁輸強化

米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は2020年5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

2020/5/18 米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

商務省は今回、この指定を修正した。

Huawei と114の子会社はEntity Listに載ったが、米国企業も参加する重要な国際標準化機構に依然として参加している。

国際標準は製品開発に重要で、米国企業がこれに参加し、米国基準が十分に考慮されることが米国の技術面でのリーダーシップ上で必要である。

HuaweiがEntity Listに載った後、国際標準化機構は米国企業が引き続き参加するのかどうかを明確にするよう求めている。

今回、規程を変更し、Huaweiへの特定技術の開示が「国際標準化機構における標準の修正や開発」に貢献する場合、その特定技術をライセンス無しでHuaweiとその子会社に開示することを認める。

商務省によると、米国企業はHuaweiと接触する際に事前に許可証を取得する必要はない。

ロス米商務長官は6月17日、新規則について、第5世代移動通信システム(5G)などの国際標準規格の策定を念頭に置いた措置との認識を示した。

修正は状況を明確にしているだけで、Huaweiを助けているのではない。
均衡の取れた国際標準規格の策定を容易にすることを目指している。
5Gの幅広い普及を確実にする上で一助となる、と述べた。

同時に、Huaweiを巡る国家安全保障上の懸念は依然存在すると述べた。

スパイは現実的な問題だ。
5Gを巡り、Huaweiに関する国家安全保障上の懸念は残存する、としている。

Huaweiは6月16日に「Huaweiの態度は一貫している。当社は米メーカーを含む技術分野の同業者と新技術の基準をめぐり率直で誠実な議論と交流を進め、人類社会の科学技術の進歩に寄与していきたい」とのコメントを発表した。

米連邦最高裁判所は6月15日、雇用における人種や性別などによる差別を禁じた1964年の公民権法 ( Civil Rights Act of 1964 ) は、雇用者が同性愛者や心と体の性が一致しないトランスジェンダーなど性的マイノリティーの従業員に差別をすることも禁じているとの判断を初めて示した。

LGBT: Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender

これに Queer、Questioning(セクシャリティを決めかねているというアイデンティティをもつ人)を加え、LGBTQ も使われる。

9人の判事(保守5人、リベラル4人)のうち、トランプ大統領指名の保守のNeil Gorsuch判事が賛成意見を書き、同じく保守のJohn Roberts 長官と4人のリベラル系判事の計6名が賛成、保守3名が反対した。

アメリカの調査会社によると、2017年の時点でアメリカの成人の4.5%が性的マイノリティーの人たちで、連邦最高裁判所の判断は少なくとも数百万人に影響するものとみられている。

AppleのCEOで同性愛者であることを明らかにしているTim Cookは「最高裁判所の判断に感謝している。LGBTの人々は、職場で、そして社会のあらゆるところで平等に処遇されるべきだ」とのコメントを発表した。

トランプ大統領はこれまで、「公民権法の規定は性的少数者に及ばない」などと主張していたが、最高裁判断を受け、「驚いた人もいたようだ。最高裁の判断には従っていく。とても力強い判断だ」と述べた。

アメリカのメディアは2015年に連邦最高裁判所が男性どうしや女性どうしが結婚する同性婚を認めたことに続き、性的マイノリティーの権利を保護する歴史的な判断だと伝えている。

米連邦最高裁判所は2015年6月26日、同性婚の権利は男女の結婚と同様、法の下の平等をうたう合衆国憲法によって保障されており、同性婚を禁止する州法は違憲に当たるとの歴史的判断を示した。
オハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシーの4州の州法が同性婚を禁じていたが、その合憲性についてオハイオの連邦高裁が2014年11月に禁止を支持する判断を下し、最高裁に判断が委ねられた。

保守4人が禁止は合憲とし、リベラル4人が違憲で、保守系中道のAnthony Kennedy 判事が違憲に回った。

Anthony Kennedy 判事は判決文のなかで「結婚を望む同性愛者は、孤独な生活を余儀なくされたり(婚姻という)文明上最古の制度の一つから締め出されるべきでないとの願いを寄せている。すなわち彼らは法の下の平等と尊厳を希求しているのであって、合衆国憲法はこれを保障するものである」と述べた。


1964年の公民権法成立の時点ではこのLGBT問題は存在しておらず、議会が同性愛者やトランスジェンダーの労働者の保護を考えていなかったことは確実である。

しかし、Neil Gorsuch判事は当時の議会の意図や公民権法成立の経緯などは考えず、"sex" という言葉だけを問題視した。

「誰かが同性愛者やトランスジェンダーだからと、それを理由に個人を解雇する雇用者は、その人が別の性だったら問題視しなかったはずの特徴や行動を理由に、その人を解雇することになる。同性愛者やトランスジェンダーを差別することは、その人を性をもとに差別することになる」とした。

一方、同じくトランプ大統領指名のBrett Kavanaugh判事は反対意見で性差別と性的指向の差別は異なると指摘し、 公民権法には現時点で性的指向に関する規定がないことから、議会で決めることであるとし、多数意見は議会の役割を奪うもので立法権の侵害であると主張した。

最高裁判断の元となったのは、同性愛者やトランスジェンダーであることを理由に解雇されたと主張した3件の訴訟だった。

1) 職場で6年間、男性として振る舞っていたAが女性の服を着て仕事をすると言い張ったとして解雇された。雇用主の葬儀会社は、「生物学的な性別に適した」服装規定に従ってもらいたかったと裁判書類で主張したが、下級審は原告の訴えを認めた。

2) ニューヨークのスカイダイビング指導者だったBは一緒にダイビングをしていた女性客に対し、自分は100%同性愛者だから接近して体が触れても大丈夫だと冗談を言い、解雇された。

会社側は、客に個人情報を明かしたため解雇したのであり、同性愛者だから解雇したのではないと主張したが、下級審は訴えを認めた。

3) ジョージア州で児童福祉のコーディネーターとして働いていたCは同性愛者のソフトボール・リーグに参加し、性的指向を明らかにしたところ、解雇された。

雇用者のクレイトン郡は、「郡職員にふさわしくない行為」の結果だと主張した。

アトランタの連邦裁判所は原告敗訴とした。

ーーー

現在の最高裁の構成は下記の通り。最高裁裁判官は終身制で、本人が死去または自ら引退するまで、弾劾裁判によって罷免される場合(過去に例なし)を除いては生涯にわたってその身分を保証される。

 性別 年齢 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 70歳 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Ruth Bader Ginsburg 女性 85歳 ユダヤ系 Bill Clinton 1993年8月10日 リベラル
Stephen Breyer 男性 80歳 ユダヤ系 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  (Chief) 男性 63歳 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 68歳 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 64歳 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 58歳 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 51歳 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 53歳 白人系 2018年10月6日 保守


経緯

  保守派 リベラル派
以前  保守系中道 のKennedyがswing 4 ← 1 → 4
2016 Scalia 判事死去 3 ← 1 → 4
2017 Gorsuch 就任 4 ← 1 → 4
2018 Kennedy 引退、Kavanaugh指名 5 4

Johnson & Johnson は6月10日、開発を進めている新型コロナウイルスのワクチン候補の遺伝子組換Ad26.COV2-S の 1/2a 臨床試験開始を当初の9月から7月半ばに繰り上げると発表した。

同社は2020年1月、新型コロナウイルスの遺伝子配列を入手するとすぐに、有望なワクチン候補を調査する取り組みを開始した。

合衆国保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)と提携し、ワクチンの探査、開発、臨床試験に共同で10億ドル以上を支出することを決めた。

子会社Janssen Pharmaceutical Companies の研究チームは、Harvard Medical SchoolのBeth Israel Deaconess Medical Centerと共同で、JanssenのAdVac® 技術(アデノウイルスベクターの開発と生産を基盤にしたテクノロジー)とPER.C6®テクノロジー(ワクチンの生産性を高める)を使用して複数のワクチン候補を作製し、テストした。

その後、複数の学術機関の科学者と共同でワクチンの構成体をテストし、COVID-19のリードワクチン候補 として遺伝子組換Ad26.COV2-S (2つの予備候補あり)を同定した。

遺伝子組み換え技術を使ったペプチドワクチンで、植物や昆虫、動物細胞にウイルス抗原タンパクや、一部のペプチドをつくらせて精製した後、ワクチンとして投与するもの。

当初の予定では、Phase 1 臨床試験を9月に実施、年末までに安全性と有効性のデータを得るとしていた。

臨床試験前のデータが有望なものであることから、予定を早め、1/2a 臨床試験(安全性、反応原性、免疫性を確認)を7月中旬に米国とベルギーで開始する。

安全性と有効性が確認できれば2021年中に10億回分以上を世界に供給することを考えており、ワクチンの製造能力の増強(米国での新設と他国での増強)を行うとともに、世界中に供給するため、複数のグローバルパートナーと協議を進めている。 能力増強は同社のリスクで既に開始しており、not-for-profit basis での供給を考えているとしている。

Johnson & Johnsonは20年以上にわたり、抗ウイルス薬とワクチンの製造設備に数十億ドルを投資してきた。

AdVac®およびPER.C6®技術を活用使用して、自社のエボラワクチンを開発・製造しており、ジカ、RSV、およびHIVワクチンについては第II相または第III相の臨床開発段階にある 。

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既報の通り、WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。

このなかで、臨床試験段階にあるもの10件あるが、そのうち、中国が5件、中国以外は5件である。

  Platform Type of candidate vaccine Developer
1 NonReplicating Viral Vector ChAdOx1-S University of Oxford/AstraZeneca
2 NonReplicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector CanSino Biological Inc./Beijing Institute of Biotechnology
3 RNA LNP- encapsulated mRNA 米 Moderna/NIAID
4 Inactivated Inactivated Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm
5 Inactivated Inactivated Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm
6 Inactivated Inactivated + alum Sinovac
7 Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 米 Novavax Research & Development
8 RNA 3 LNP-mRNAs BioNTech/Fosun Pharma/Pfizer
9 Inactivated Inactivated Institute of Medical Biology, Chinese Academy of Medical Sciences
10 DNA DNA plasmid vaccine with electroporation 「INO-4800」 米 Inovio Pharmaceuticals


2020/6/3 中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ

英オックスフォード大は6月16日、抗炎症作用のある一般的なステロイド剤デキサメタゾンが、新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らすのに効果的だとする臨床試験の結果を公表した。

これを受けて英国の保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症の標準治療に午後からデキサメタゾンを含めると表明した。同薬に効果がある可能性が最初に明らかとなった3か月前から、備蓄を開始していた。

付記

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。7月21日に判明した。
効果が検証され国内で使用が認められた治療薬は、5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。

既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。

デキサメタゾンはすでに抗炎症剤として、ぜんそくや皮膚炎など様々な症状の治療に使われている。

本年3月に英国の175の病院で11,500人以上の患者を対象とした 臨床試験 RECOVERY (Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy) が開始され、ステロイド剤デキサメタゾンもテストされた。

抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」も調べたが、心臓疾患や致死率の悪化につながるという懸念から、試験を中止した。

2,104人の患者に1日6mgのdexamethasoneを10日間与えた。それと、通常の処理だけの患者4,321人と比較した。

28日後の死亡率は下記の通り。

通常の処理 dexamethasone処方
人工呼吸器をつけた患者 41%   28% 
酸素吸入の患者 25%   20% 
軽症者 13%   変化なし

呼吸補助を必要としない軽症の患者には効果がないもよう。

研究を主導するPeter Horby教授は次のように述べている。

酸素治療を必要とする患者の生存率を改善する効果は明らかで、デキサメタゾンはこうした患者の標準治療になるはずだ。デキサメタゾンは安価ですぐに使用でき、世界中で命を救えるだろう。

Martin Landray教授の発言:

人工呼吸器を使う患者の8人に1人、酸素供給治療を受ける患者の20-25人に1人が、デキサメタゾンで救えることが分かった。

これはきわめて明確なメリットだ。最大10日間、デキサメタゾンを投与するという治療法で、費用は患者1人あたり1日約5ポンドに過ぎない。1週間投与で35ポンド(約4700円)で人ひとりの命が救える。しかもこれは、世界中で手に入る薬だ。状況が許す限り、新型コロナウイルスで入院中の患者にはただちに投与を開始すべきだ。

世界保健機関(WHO)のTedros 事務局長も「酸素治療や人工呼吸器が必要な患者の死亡率を下げることが示された最初の治療法だ」と歓迎する談話を出した。

安倍晋三首相は6月14日、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の番組で、新型コロナウイルスのワクチン確保のため、開発を進めている米バイオ企業 Moderna、英製薬大手 AstraZenecaの両社と交渉していることを明らかにした。

Modernaのワクチン開発の現状について「すごく早ければ、年末ぐらいには接種できるようになるかもしれない。12月から来年の前半にはおそらく供給できるようになるのではないかと言われている」と指摘し、AstraZenecaについても「相当スピード感を持って開発が進んでいるとうかがっている」と紹介 した。

「これが完成した暁にはしっかりと日本も確保できるように交渉をしている」と述べた。

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WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。このなかで、臨床試験段階にあるもの10件、その以前の段階にあるもの121件を記載している。

2020/6/3 中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階 参照

ワクチンの開発を巡っては両社と中国の CanSino Biologicsが先行している。

2020/5/19 米 Moderna、新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 

2020/5/22 アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ

2020/5/26 中国CanSino Biologicsの新型コロナウイルスワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認

3社は第II相の治験中で、これから数千人の参加者に対する第Ⅲ相を開始する段階である。

そのなかで、Modernaのワクチンはたんぱく質の遺伝情報を運ぶ「メッセンジャーRNA(mRNA)」を投与して体内に抗原を作り出し、免疫反応を起こさせる もの。世界で実用化されたことのない新たなタイプで、安全性や有効性をどうやって確認するかについても「手探り状態」で、審査基準もできていないとされる。

COVID-19が収まってきた地域では数千人を対象とした治験を行うのは難しい。CanSinoはカナダのNational Research Council of Canadaと組んで治験を行う。

日本の企業で、第Ⅱ相までいっているところはない。

首相は2社が手がけるワクチンについて「完成した暁にはしっかりと日本も確保できるよう交渉している」とし、「日本でも製造することになると思う」と語った。

しかし、厚労省幹部は「首相が言う『年末』は海外での生産時期の目安であり、国内で接種できる時期ではない」と説明。国内での接種開始は、早くとも来年前半以降としている。

ーーー

世界各社がワクチン製造に走っているが、日本が海外企業からワクチンそのものを購入したり、製造ライセンスを受けて国内で生産するのは簡単ではない。

世界の各国がワクチン確保に向け、動いている。

1) トランプ米政権は新型コロナウイルスワクチンの迅速な開発に向け、第2次世界大戦時の原子爆弾開発プロジェクト「マンハッタン計画」のように官民を総動員する「爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)」をつくった。

年内に米国民の大半に十分なワクチンを提供することを目指すもので、民間の製薬会社と政府省庁、軍が共同で取り組むことによって、ワクチン開発に要する時間を最大8カ月短縮し、2021年1月までに3億人分のワクチン提供を目指す。

米生物医学先端研究開発局(BARDA)は各国のメーカーに多額の資金を援助している。

AstraZenecaは、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにしており、既に米国から3億回分のワクチンを受注している。

2) トランプ米大統領がドイツのCureVacに数十億ドルの財政支援を提示し、ワクチンに対する独占権を米国に渡すよう懐柔したとの報道があった。

これを受け、EUの欧州委員会は3月16日、欧州でのコロナウイルス蔓延に対応するため、ワクチンの開発・生産の促進のためにCureVacに80百万ユーロを供与すると発表した。

2020/3/19 米国がコロナウイルスワクチン技術独占を画策? 

ドイツ政府は6月15日、CureVacに対して、3億ユーロを出資し株式の23%を取得すると発表した。有力なワクチン開発企業をつなぎ留め、ワクチンの国内調達の可能性を広げるため で、アルトマイヤー経済相は「これらの重要な研究成果や技術はドイツと欧州に必要なもので、産業政策として大きな意味がある」と意義を強調した。

3) ドイツ、フランス、イタリア、オランダのEU4か国は「ワクチン同盟」を結成した。

AstraZenecaは6月13日、新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで「ワクチン同盟」と合意したと発表した。同社は「利益なし」で、年末までに納入を始める 。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと発表、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。


4)
このままでは、自国でワクチンを開発できない低・中所得国が取り残されることとなる。

このため、WHOなどは4月24日、COVID-19の診断、治療、ワクチンの開発、製造と平等なアクセスを促進するための地球規模のプラットフォームとして、「COVID-19関連製品へのアクセス促進枠組み」を設立した。

その一環として感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスがある。前者は途上国への供給を前提に、ワクチンの開発資金を供与するもので、後者は低・中所得国にワクチンを供給するもので、いずれも日本も出資している。

AstraZenecaは6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表した。

感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携し、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。

インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。うち4億回分は年末までに供給する。
  このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給

AstraZenecaは自社で10億回分、インドのSerumへのライセンスで10億回分の合計20億回分を生産するが、上記3)の「ワクチン同盟」への供給で、完売したことになる。

自社のうち、3億回分は米国、1億回分は英国、3億回分はCEPI/Gavi 向け、残り3億回分は「ワクチン同盟」向け
インドのSII製造分の10億分はイン向け及びGAVI経由で低所得国向けとなる。

5) 厚労省は6月2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定している。

この発表では、日本医療研究開発機構が支援しているワクチン開発状況を示しているが、まだ進んでいない。

また、海外での開発で、日本政府がCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)に資金を拠出し、CEPI支援してワクチン開発を列挙しているが、そもそもCEPIに拠出する目的は、途上国へのワクチン提供を通じて、①途上国を通じてウイルスが再度日本に侵入するのを防ぐ、②日本経済、世界経済への更なる下押しを未然に防ぐ、③国際的な協力構築に向けリーダーシップを発揮、としており、ワクチンの供給を優先的に受けるためのものではない。

2020/6/4 厚労省、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化で「加速並行プラン」

考えられるのはライセンスを受けての生産であるが、来年早々にでも接種を始めるためには、ライセンス契約の交渉を始めていなければならない。


ジョンソン英首相とEUの欧州委員会のUrsula von der Leyen 委員長、Charles Michel EU大統領(常任議長)、David Sassoli 欧州議会議長が6月15日午後にテレビ会談を行った。

ジョンソン首相は移行期間の延長を求めないと伝えた。この結果、離脱協定の規定の通り、移行期間は12月31日に終了する。

離脱協定によると、移行期間の延長は1回に限り、1年あるいは2年の期間でされるが、そのためには、6月30日までに双方で合意・決定する必要がある。

これを踏まえて首脳らは、来月から交渉を加速させる必要があるとの認識で一致、自由貿易協定の基礎となる方針について暫定的な合意を得ることも模索する。

ーーー

EUと英国は5月15日、第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。

2020/5/28 英国、FTAなしのEU離脱準備 

6月の交渉も6月6日に成果なしで終了した。

問題は、EUが突き付けた2つの事項である。

EUの欧州委員会は2月3日、英国との交渉の基本方針案を公表した。

関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めることを明確にした。

英国が過度な規制緩和で不当に競争力を高めて、域内企業が競争上、不利になることを恐れ、「非常に野心的な貿易協定を提案する用意がある」としつつ、「競争を開かれた公平なものにする必要がある」と、関税・数量割り当てゼロのFTAは、これら 「公正な競争環境の確保」(Level Playing Field)の徹底した履行義務が条件としている。

また、英領海での加盟国の漁業権確保をFTAに盛り込むことも条件としている。

前者は実質的なEU残留であり、離脱の意味が無くなる。後者は英国にとって主権の問題である。

EU側がこれに固執する限り、交渉期間を延長してもまとまる可能性は少ない。

また、延長の移行期間中は英国はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる 。

2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航

6月11日、ジョンソン英首相とEUの欧州委員会のフォンデアライエン委員長、ミシェルEU大統領(常任議長)、サッソリ欧州議会議長が6月15日午後にテレビ会談を行うと発表。

6月12日、英国のゴーブ内閣府担当相は、FTAなど新たな関係構築に向けた交渉について、年末としている期限を延長しない方針をEU側に正式に通告した。

英国は当初から、6月に交渉が英国の望む方向へと進んでいるかを見極め、交渉を継続するか 、合意なしに12月31日に離脱する準備に「集中する」かを決定する方針としていた。

6月12日、英政府とEUは、将来関係を巡る交渉を6月から7月にかけて集中的に実施すると発表した。週1回の交渉ラウンドを6月29日に開始し、7月27日の週まで計5回継続する。

上記の通り、英国は、6月時点で進展がなければ、交渉を継続せず、合意なしに12月31日に離脱する準備に「集中する」ことを決定するとしていた が、今後も努力を続けることとした。

6月15日のトップ会談は年末期限を延長しないこと、しかし今後も交渉を続けることを確認した。


ただし、EUが基本条件で妥協しない限り、FTAの年内合意は困難とみられている。

英国は既に離脱の準備を進めている。

英国は5月19日に、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表を発表し、FTA無しの離脱の準備を進めている。

離脱後の本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、英国は5月20日に、北アイルランドに税関を設置しないと発表している。

2020/5/28 英国、FTAなしのEU離脱準備


韓国国会は2019年10月28日の本会議で、英国とのFTAの批准同意案を可決した。英国がEUを離脱した場合、自動的に発効される。

英国はこれまでチリ、アイスランド、ノルウェー、スイス、カリブ海諸国、東南部アフリカ市場共同体、イスラエルなど38カ国と13件のFTAを締結している。アジア諸国のうち、英国とのFTA批准を完了したのは韓国が初めて。

2019/9/5 韓国、韓英FTAをBrexit前に批准へ

米英両政府は5月5日から、2国間のFTAの交渉を開始した。

日英両政府は6月9日、両国間のFTA締結に向けた交渉を正式に開始した。英国のEU離脱移行期間が終わる2020年末までに妥結・批准し、2021年1月1日の発効を目指す。

英国は交渉開始に先立つ5月12日に交渉方針を発表、両国間の自由なデータ移転などを含むデジタル貿易などで、日EU・EPAを上回る野心的な取り決めを目指すとしている。他方、物品貿易では交渉目的の中で、農産品や繊維製品などで対日輸出拡大を目指す考えを表明している。

日本側では農産品の輸入数量割り当てや、自動車・同部品などの英国輸入関税の早期撤廃などが争点となる。

武田薬品は6月11日、アジア・パシフィックの国々のみで販売する一部のノンコアの一般用医薬品及び医療用医薬品を、バイオ医薬品企業である韓国のCelltrion Inc.に譲渡する契約を締結したと発表した。

一時金として現金2億6,600万米ドルを受け取り、マイルストン支払いとして最大1,200万米ドルを追加で受け取る可能性がある。

譲渡する製品には、循環器領域、糖尿病領域、一般内科領域における様々な一般用医薬品および医療用医薬品が含まれており、オーストラリア、香港、マカオ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾およびタイで販売されているものに限定される。

譲渡する製品群には、世界的な新薬ネシーナ、アクトス(以上、糖尿病治療薬)、イダービ(高血圧治療薬)など専門医薬品のほか、かぜ薬のホワイトゥベン(Whituben)、口内炎治療薬のアルボチルなど韓国の消費者に知られている一般医薬品も含まれている。

セルトリオンは当面、武田薬品と製造供給契約を結び、製品供給を受ける。
今後技術移転プロセスを経て、セルトリオンの生産拠点で今回買収した製品群を生産し、国内外に供給する。

譲渡対象製品の2018年度の売上合計は約1億4,000万米ドルであった。

武田薬品は、この一方で、成長新興国において複雑かつ希少な疾患に対する革新的治療薬へのフォーカスをさらに強化する。
また、ノン・コア資産売却で、財務基盤の強化と、シャイアー社買収後の迅速なレバレッジ低下に取り組む。

売却先の韓国のCelltrion Inc.は、低分子医薬品、バイオシミラー、革新的新薬の研究開発および製造に特化したバイオ医薬品企業で、1999年12月に Nexol,Inc.として設立された。

2002年に米国のバイオ医薬会社 VaxGenが48%出資、Nexolが13%、残りをその他数社が出資してCelltrion を設立し、2005年に韓国仁川にバイオ医薬品の工場を建設した。
(VaxGenは2010年にdiaDexus, Inc. に買収されたが、diaDexusは2016年に倒産した。)

2009年にCelltrion Healthcareに社名変更

2013年にグローバル製薬市場をリードする欧州で 世界初の抗体バイオシミラーであるRemsima®を発売

日本化薬は2018年3月、Celltrion Healthcareと共同で開発してきたトラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオシミラーの日本での製造販売承認取得を発表した。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃癌の効能・効果で承認されたもので、韓国と欧州ではCelltrionが承認を取得している。

日本化薬は他に、インフリキシマブ(関節リウマチ治療薬)のバイオシミラーも同様の形で日本国内市場に投入している。

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武田薬品は2019年1月8日付でShire 買収を完了したが、同時に武田薬品とShireのノンコア事業の売却を進めてきた。

2019年5月、Shireの下記事業を売却する契約を締結した。

後者のEthiconはJohnson & Johnsonの子会社で、J&Jは米国で唯一承認を受けたfibrin sealant patch "Evarrest" を持っており、FTCが懸念を表した ことから、買収をギブアップした。

売却先 2018 Sales 売却対価
ドライアイの兆候・症状の治療薬「Xiidra®5%」 Novartis 3億8,800万米ドル 34億米ドルの一時金
最大19億米ドルのマイルストン
手術用パッチ剤「TachoSil® Ethicon 約1億5,500万米ドル 4億米ドルの一時金

付記 2020/9

手術用パッチ剤「TachoSil®」 Corza Health, Inc. 3億5,000万ユーロ
製造は引き続き、オーストラリアの武田施設で行なう。

2019年11月、ロシア、ジョージア、独立国家共同体の国々に限定されたノンコアの一般用医薬品および医療用医薬品をドイツのSTADA Arzneimittel AGに総額6.6億米ドルで譲渡する契約を締結

同じく、中近東・アフリカ(エジプト、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦など)で販売する一部の医療用医薬品・一般用医薬品約30製品のポートフォリオを、スイスの製薬企業Acino社へ2億米ドル以上で譲渡する契約を締結した。

2020年3月には、ラテンアメリカ(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、パナマ、ペルー)におけるノン・コア一般用医薬品、医療用医薬品をHypera Pharma社に8億2,500万米ドルで譲渡する契約を締結した。

Hypera Pharma社は、ブラジルで最大の製薬企業で、特許を有する医療用医薬品、一般用医薬品およびブランドジェネリック医薬品におけるリーディングカンパニー。

2020年4月には、欧州で販売する一般用医薬品および医療用医薬品ポートフォリオの一部、ならびにデンマークおよびポーランドに所在する2つの製造拠点を、デンマークの製薬企業Orifarm Groupに最大約6億7,000万米ドルで譲渡する契約を締結した。

様々な一般用医薬品や食品サプリメントのほか、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、ポーランド、フィンランド、スウェーデン、バルト諸国およびオーストリアを中心に販売する呼吸器、抗炎症、循環器、内分泌領域の医療用医薬品の一部が含まれる。

これらのポートフォリオの2018年度の売上高は、約2億3,000万ドル。

これまでのブログを整理した。

1. 抗ウイルスRNAポリメラーゼ阻害剤

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものである。

それに対し、レムデシビルやアビガンはウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

RNAウイルスが増殖する際にはRNA依存性RNAポリメラーゼの働きが必要となる。この働きを阻害する。

①のRemdesivirは体内で代謝を受けてその活性型GS-441524に変わる。GS-441524はウイルスのRNAポリメラーゼを混乱させて、ウイルスRNA産生の減少を引き起こす。

②のアビガンは細胞内に取り込まれた後、細胞内酵素により代謝・変換され,ファビピラビル・リボフラノシル三リン酸体となって,RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害する。

①②ともウイルス増殖を防ぐもので、感染初期に効果があるが、
①は静脈内投与の点滴注射薬のため、錠剤を摂取できない重症患者用に、②は錠剤のため初期の患者用に使われている。

③は異なる作用でRNAポリメラーゼを阻害する。亜鉛はRNAポリメラーゼをシャットダウンするが、亜鉛は簡単には細胞内に入り込めない。クロロキンは細胞壁にゲートを開き、亜鉛イオンが細胞内に入り込めるようにする。

付記 FDAは6月15日、③の緊急使用許可を取り消した。「治療効果がない可能性があり、投与により得られる効果よりも、リスクの方が大きいとの結論に至った」としている。

一般名 製品名 企業 当初の対象
Remdesivir Veklury Gilead Sciences エボラ出血熱 米FDA:2020/5/1に症状の重い入院患者に投与する緊急使用を許可
厚労省:これを受け、
5月7日に「特例承認」
Favipiravir アビガン(Avigan 富山化学
現・富士フイルム富山化学
新型・再興インフルエンザ感染症 COVID-19 用は未登録

2014/3/24 新型インフルエンザ用で製造販売承認(販売制限あり、未販売)

Chloroquine
リン酸
クロロキン
Resochin、Lariago、
Chloroquine等
抗マラリア薬、抗アメーバ薬

米FDA:2020/3/28 緊急使用許可

付記 6/15 緊急使用許可取り消し

ヒドロキシ
クロロキン
Plaquenil Sanofi 抗マラリア剤
全身性・皮膚エリテマトーデス治療薬

2. プロテアーゼ阻害薬

アビガン等はウイルスが細胞内に入ってから増殖するのを防ぐものだが、これはウイルスが細胞に入るのを防止する。

ウイルスが人体に感染するには細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要である。

Sタンパク質はヒト細胞由来のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)によりS1とS2に切断される。S1が受容体であるACE2受容体に結合する。
もう一方の断片S2はヒト細胞表面のセリンプロテアーゼのTMPRSS2で適当な大きさに切断され、その結果膜融合が進行する。

プロテアーゼ阻害薬は受容体と結合したSタンパク質の開裂を強力に阻止し、細胞内に入るのを阻止する。

CamostatはTMPRSS2を妨げる働きを持つことが知られている。

⑦は、ウイルスのタンパク質が分子インポーチン(輸送タンパク質)と結合して核内移行するのを抑制する。

一般名 製品名 企業 当初の対象
Oopinavirと
Ritonavir 合剤
Kaletra AbbVie Inc. HIV感染症
Nafamostat フサン 日医工
(鳥居製薬から承継)
急性膵炎
Camostat フオイパン錠 小野薬品等 慢性膵炎における急性症状の緩解
Ivermectin ストロメクトール MSD
販売 マルホ
腸管糞線虫症の経口駆虫薬、疥癬、毛包虫症の治療薬


①~⑤ 
2020/3/30 新型コロナ治療薬「アビガン」承認へ

 2020/4/27 「イベルメクチン」新型コロナに効果か 大村智特別栄誉教授と米Merck社の共同研究(ノーベル賞)


3. 
コロナウイルスの増殖を抑える?

コロナウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージ等に感染し局所の炎症を惹起すると考えられる。

の持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある肺傷害の治療に有効であることが期待されている。副作用が最も少ない。

一般名 製品名 企業 当初の対象
Ciclesonide オルベスコ 帝人ファーマ 気管支喘息の吸入ステロイド薬

4. サイトカインストーム防止

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は、この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

転写因子であるNF-kBとSTAT3の協調作用により、インターロイキン6(IL-6)の増幅回路(IL-6アンプ)が活性化され、炎症性サイトカインの産生が異常に増加するサイトカインストームが発生することによりが発症するという仕組みを提唱した。

⑨のIL6 阻害薬(ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 )が有望視される。他にもいろいろある。

一般名 製品名 企業 当初の対象
Tocilizumab
(遺伝子組換え)
アクテムラ 中外製薬 関節リウマチ等

2020/5/6 COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム

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神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究 」について、611日 の厚生科学審議会再生医療等評価部会了承されたと発表した。

「網膜色素変性」は、遺伝子のキズが原因で光を感じる組織である網膜が少しずつ障害を受ける病気で、人口約5000人に1人の割合で患者がいるとされている。

特徴的な症状は、夜盲(暗いところでものが見えにくい)、視野狭窄(視野が狭い)、視力低下の3つ。失明するおそれもある。

京都大iPS細胞研究所(CiRA)が「iPS細胞ストック事業」で備蓄しているiPS細胞を使い、大日本住友製薬が網膜シートを作成する。

これを網膜色素変性患者の網膜下に移植し、網膜組織の生着、視機能の回復を目指す 。

今回の臨床研究はその第一歩として安全性の確認を主な目的とする。腫瘍ができたり、拒絶反応が起きたりしないか、安全性を1年後に評価する。

予定症例数を2症例と限定しており、参加者については現在通院中の患者から定し 、公募は行わない 。

実施体制は下記の通り。

ーーー

網膜黄斑部には錐体細胞と杆体細胞が並んでいる。

錐体細胞 杆体細胞
 明るいところで働く  薄暗いところで働く
 色や形を識別する  明暗や形を識別する
 黄斑(中心窩)に密集  周辺に多数分布
 感光色素:ヨドプシン  感光色素:ロドプシン
 明順応  暗順応


「網膜色素変性」は、下図の通り、
杆体細胞が変性してなくなるもので、周辺の視野や暗い中で光を感じる働きが失われる。


図は https://mainichi.jp/premier/health/articles/20181024/med/00m/010/006000c

ーーー

今回のiPS細胞による網膜再生は眼科におけるiPS細胞による再生の3例目である。

① 網膜色素上皮細胞(RPE細胞)

理化学研究所のと先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。

網膜色素上皮細胞=RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、主な機能は、血液網膜バリア、貪食能、栄養因子の分泌など。これの異常が加齢黄斑変性である。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを移植用器具を用いて網膜下へ移植する。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

② 角膜

大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家 iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー トの first-in-human 臨床研究」計画が3月5日、厚生労働省の 厚生科学審議会 再生医療等評価部会で、患者への同意の説明文書の内容などに修正を求める条件付きで了承された。

2019/3/8 厚労省、iPS細胞の角膜移植臨床研究計画を了承 

③ 網膜  今回

米連邦準備制度理事会(FRB)は6月10日の公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%のまま据え置く方針を決定した。

「現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる」とした。

失業率は本年は9.3%、来年は6.5%と予想し、一部の楽観論に対して慎重な見方を示した。

経済が足元の状況を乗り切り、最大雇用と物価安定の目標達成に向け軌道に乗ったと自信をもてるようになるまで、この目標レンジを維持するとしている。

FRBの正副議長や理事、地区連銀総裁による参加者17人が、2022年までの政策方針と景気見通しをそれぞれ提示したが、そのうち15人がゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで維持すると表明した。

なお、トランプ大統領が主張しているマイナス金利に関しては「効果が不透明」(パウエル議長)と明確に否定している。

また、家計と企業の信用の流れを支えるために、今後数カ月は少なくとも現状のペースで国債、住宅および商業不動産ローン担保証券の保有を増やすとした。

3月に再開した量的緩和政策は、購入枠を「必要とされる量」としてきたが、米国債は月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も月400億ドル、合計月1200億ドルを当面の目安とすることとした。

ーーー

米連邦準備理事会(FRB)は3月15日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を抑えるため、政策金利を一気に1%引き下げ、事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決定した。 前月末から一気に1.50%下げた。

これにより、政策金利は0%~0.25%となったが、今回、これを2022年末までは続ける。

   
2018/3  1.50%~1.75%
2018/6  1.75%~2.00%
2018/9  2.00%~2.25%
2018/12  2.25%~2.50%
2019/7 2.00%~2.25%
2019/9  1.75%~2.00%
2019/10

1.50%~1.75%

2020/3/3

1.00%~1.25%

2020/3/15

 0.00%~0.25%


2020/3/16 米FRB、政策金利引き下げ 事実上ゼロ金利導入

3月15日の理事会では、これに加え、財務省証券などの債券を少なくとも7,000億ドル買い増す、いわゆる資産買い入れ策の再開も併せて発表した。
向こう数か月、財務省証券を少なくとも5,000億ドル、モーゲージ担保証券(RMBS)を少なくとも2,000億ドル、合計で少なくとも7,000億ドル買い増すとした。

3月17日には企業の資金繰りを抜本的に支援するため、企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー(CP)を買い入れる緊急措置を発動すると発表した。

更に、FRBは3月23日に臨時の連邦公開市場委員会を開き、米国債や住宅ローン担保証券の買入量をさきに決めた7,000億ドルから「必要量」に切り替え、当面無制限とするとした。

今回のFOMCでは、月1,200億ドル(米国債:月800億ドル、住宅ローン担保証券:月400億ドル)を当面の目安とすることとした。


LG Chemは6月10日、液晶ディスプレイ用偏光板事業を中国の素材メーカー寧波杉杉 (Ningbo Shanshan Co)に11億ドルで売却する条件付き契約を締結したと発表した。自動車向け等の一部偏光板事業は売却対象外となる。

詳細は追って発表するとしているが、報道では、まず杉杉が70%、LG化学が30%出資する合弁会社を設立し、3年後をメドに残りの持ち分も杉杉側に売却する 。

LG Chem の南京と広州にある偏光板工場は売却し、韓国・梧倉工場は有機ELパネル偏光板や自動車向け液晶パネル偏光板の生産拠点として 残す。

寧波杉杉は衣料品のメーカーだが、リチウムイオン電池の材料も生産する。今回、このために31 億人民元 (約438 百万ドル) の増資を発表した。

ーーー

偏光板は液晶ディスプレイを構成する中核素材の一つで、バックライトから発する光を一方向に透過させ、他の方向の光は遮断する役割をする光学フィルム。

LG Chemの説明資料から:


LG Chemは、大型偏光板分野で世界1位の競争力を 持ち、一時は世界市場で27%のシェアを占めていた。

しかし、韓国ではLGディスプレーやサムスン電子が液晶事業を縮小しており、最近は中国の競合企業の低価格競争で収益性が落ちていることから、事業から撤退して有機ELに資源を集中する。

液晶パネル産業では2015年ごろから京東方科技集団(BOE)ら中国のパネルメーカーが政府資金を背景に巨額投資を続けており、 今回のLG Chemの偏光板事業の中国企業への売却で、中国勢がパネルの上流にも乗り出す。

ーーー

LG Chemは最近「脱液晶戦略」を推進してきた。

本年2月に液晶用カラーフィルター感光材事業を江蘇雅克科技(Yoke Technology)に580億ウォンで売却した。液晶ガラス基板事業も撤退を決めた。(売却を決めたが、買い手が付かずそのまま撤退した。)

偏光板事業も昨年下半期から売却に向けた本入札を進め今回売却を決めたもの。

逆に今後は有機EL事業に集中する。

同社では、「有機ELを中心に核心競争力を確保するのに集中しており、偏光板事業は韓国の梧倉工場で生産される有機EL偏光板を主力事業に育成する計画」と する。

姉妹会社である LG Display と LG electronics も有機EL技術の開発を進めている。

LG Chemは2019年3月29日、DuPontから有機ELの次世代技術である「soluble OLED技術」を買収したと発表した。溶液状の有機EL材料をインクジェットプリント技術を用いてパネルに定着させる方式で、既存の蒸着方式に比べて材料の損失率を低減させることができる。また、色再現率も向上させられる。LG Chemは同技術に関する約540件の特許と、DuPontの研究・生産設備を取得した。

2019年9月には、有機発光ダイオード技術と材料の開発および製造業者であり、ディスプレイおよび照明産業へのサービスのプロバイダーでもあるUniversal Display Corporation(UDC)と次世代OLED発光層の開発のためのパートナーシップを締結した。

OLEDでの発光層は、注入された電子と正孔が結合して光を出す重要な物質である。特定の色を発光するドーパント 材と、これが光を出すことができるよう支援するホスト材で構成される。

LG化学が開発してきたホスト材は低電圧でも電荷を輸送して寿命が優れている。UDCの燐光ドーパントプログラムは、優れた効率、高色再現、長寿命が特徴である。2つの物質を合わせると、発光層の色再現性能を最大限に引き出すことができる。 ホスト 材とドーパント材を互いに提供し、2つの材料間の最適な組み合わせを見つけることにした。

韓国の朴槿恵前政権下での国政介入事件で、前大統領、朴槿恵被告と共謀し財閥から賄賂を受け取ったとして収賄罪などに問われた女性実業家、崔順実被告に対する上告審の判決公判が6月11日、韓国最高裁で開かれた。最高裁は上告を棄却し、懲役18年の実刑とした2審判決が確定した。

確定判決には崔被告への罰金200億ウォン(約18億円)、追徴金約63億ウォンも含まれている。

経緯は下記の通り。

朴槿恵被告 崔順実被告
一審 2018年4月6日 ソウル中央地裁
懲役24年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑判決
 2018/4/6 朴前大統領に懲役24年の実刑判決
2018年2月13日
懲役20年、罰金180億ウオンの実刑判決
 
2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑
二審 2018年8月24日、ソウル高裁
懲役25年、罰金200億ウォン
同左
懲役20年、罰金200億ウォン
最高裁 2019年8月29日
差戻し
大統領在任中の収賄罪は、公職選挙法の規定に従い、他の罪と分けて判決を宣告する必要あり。収賄は認定。
同左
差戻し
強要罪のうち一部は無罪にすべきだと判断

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し

差戻し二審 2020年7月10日予定
検察は5月20日、懲役35年などを求刑
2020年2月14日 ソウル高裁
懲役18年と罰金200億ウォン、追徴金約63億ウォン
最高裁 2020年6月11日
上告棄却。懲役18年の実刑と罰金200億ウォン、
追徴金約63億ウォンの2審判決が確定


なお、崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2018年2月5日開かれた。

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2018/2/5 サムスントップ釈放 

大法院(最高裁)は2019年8月29日、第二審の判決【懲役2年6ヵ月・執行猶予4年】を破棄し、差し戻した。

大法院は李副会長から朴槿恵前大統領への賄賂の金額を86億8081万ウォンと認定した。

韓国の
特定経済犯罪加重処罰等に関する法律によると、横領金額が50億ウォン以上の場合、無期懲役または懲役5年以上の懲役に処せられる。

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し

現在、差し戻し審が進んでおり、今夏にも結審する見通し

差戻し審では、第一審と同じ懲役5年か、それ以上の実刑判決が宣告される可能性が高く、再び収監される可能性もある。

トランプ米大統領は6月5日、EUと中国が米国産ロブスターに対する関税を撤廃しなければ、対抗措置として関税を発動すると警告した。

メーン州で面会した漁業関係者が「隣のカナダはEUと貿易協定を結んでいるのでロブスターに関税がかからず、我々は不利だ」と不満を伝えると、「欧州や中国がロブスターへの関税をやめなければ、我々も関税を課す」と述べた。

EUに対しては、「EUが早急に関税を撤廃しなければ、EUから輸入する自動車に同等プラス("equivalent-plus")の関税を課す」と述べた。 中国に対しては、追加関税対象となる中国製品(中国にとって大事なもの)を特定するようナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)に指示とした。

トランプ大統領は同時に、オバマ前大統領が課したメイン州海岸沖の5000平方マイルの海域での漁業制限を直ちに撤回する命令にサインした。

メイン州ロブスター商工会議所会長は、「メイン州には許可証を持ったロブスター養殖業者が約4500人おり、2018年のロブスター産業の雇用者は約1万~1万2千人ほどだった。中国市場への再進出が私たちロブスター関係者の長期的な経済成長にとって非常に重要だ」と話す。

メーン州は小さな州だが、トランプ大統領は2016年の前回の大統領選で僅差で敗北しており、重要視している。

ーーー

(EU)

EU市場は米国のロブスター輸出の15~20%を占め、2億ドルの市場である。

これまでカナダとは市場を分けており、カナダ産は主に北欧、米国産は南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)が主であった。

カナダ・EU包括的経済連携協定(CETA)が2017年9月21日に暫定適用が開始され、カナダ産ロブスターはこれまでの関税 1ポンド当たり約1ユーロがゼロとなり、競争力が高まった。

この結果、カナダ産ロブスターは南欧でも米国産の市場を奪うようになった。

FTAを締結して関税を下げるのは当たり前のことであり、米国もEUとFTAを結べば、同様の優遇が受けられる。それを不当として制裁関税をかけるというのはおかしい。

トランプ大統領は2018年にもEUの自動車に追加関税をかけると脅している。

米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

これに対し、EU側は米国産の大豆とLNGの調達を減らすと対抗した。

結局、トランプ米大統領は7月25日に、訪米中のJean-Claude Juncker 欧州委員長と会談し、関税引き下げに向け EUと協力することで合意したと述べた。

米国は2019年5月17日、輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると正式発表した。

2019/5/20 米、輸入自動車・部品の通商拡大法232条の判断延期

今回も、脅しは効かないだろう。

(中国)

10年前までは中国のロブスター輸入は少額であった。その後、ミドルクラスが増えた中国では、ロブスターは新たなステータスシンボルとなり、輸出は毎年倍増してきた。

アメリカ海洋漁業局によれば、2019年前半の中国へのロブスターの輸出は、前年比で量にして82%、金額では79%も減少した。
2019年上半期のカナダ産ロブスターの対中輸出量は約1万3600トンに上り、2018年全体の輸出量とほぼ同じだった。

カナダ・ロブスター協会では、中国のロブスター消費は近年増加しているが、いまのように輸出が絶好調なのは、米国への中国の追加関税がなければありえなかっただろうしている。

米国産の輸出減は自業自得である。

トランプ米政権は2018年6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、中国による知財侵害の被害額と同規模の500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した。

これを受け、中国商務省は2018年6月16日、報復措置として、659品目、総額500億ドル規模の米国製品や農水産品に25%の追加関税を課すと正式発表した。 ロブスターはこれに含まれた。

米国は第二次、第三次、第四次と制裁を引き上げ、中国も対抗した。

米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。2020年1月15日、「第一段階貿易合意」の署名を行った。

米国は1次~3次の2500億ドル相当分の25%関税は据え置き、中国もこれに対応する1100億ドル相当分の関税を(9月11日除外分を除き)据え置いた。

この結果、米国産ロブスターへの25%追加関税は残ったままである。

2019/12/16 米中貿易協議、第1段階で合意 


今回のトランプ大統領が問題視するロブスター関税は、自らが発動した中国品への追加関税への対抗であり、半年前に自らの判断で据え置きを認めたものである。

タカラバイオの米国子会社Takara Bio USA, Inc.は6月8日、米国の医療関連企業bioSyntagma, Inc. のグループと組んで、PCR検査の効率を大幅に上げる手法を開発したと発表した。

同社のSmartChip real-time PCR装置、チップ、試薬を使うもので、稼働時間2時間で5,184件を同時に検査できる。

bioSyntagmaは米政府に緊急使用許可を申請中で、6月中にも承認される見通しという。

2018年に研究用に開発したSmartChip real-time PCR装置を新型コロナ用に転用した。

Rocheの装置は一度に4,128件を検査できるが、検査に24時間かかるという。

タカラバイオによると、SmartChip real-time PCR 装置の働きは下図の通り。10~30分で5,184件のサンプルをチップに分け、10~30分でそれぞれに反応液を分注、2時間で検査する。



bioSyntagma はアリゾナ州立大学からスピンオフした企業で、遺伝子から病気をみつける Molecular Fingerprint® (分子指紋)を開発している。Takara BioのSmartChipテクノロジーを使っており、新型コロナ用で協力した。

同社は検査会社のP2 Diagnosticsと提携して活動している。


米国はグローバルな供給網の脱中国を目標に「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」構想を推進している。

キース・クラック米国務次官(経済担当)は6月5日、韓国の李泰鎬外交部第2次官との電話会談で米国が主導する新しい経済同盟構想「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」について説明した。

「EPNは世界で考えを同じくする国や企業と市民社会で構成され、民主的価値観に基づいて運営される」と説明した。 米国は韓国をはじめ日本やインド、オーストラリアなど友好国の参加を考えているという。

EPNは米国が世界経済の覇権競争の中で、中国を孤立させるために親米国家で構成する経済ブロックを意味する。
中国をグローバル生産体系から孤立させるための構想で、自由陣営内で国民を保護するサプライチェーンを拡大して多角化することとされ、一種の「反中経済同盟」である。

現時点ではまだ構想段階で、具体的な内容の言及はなかったが、「関心を持ってほしい」との要請をしたという。

米国と中国の間でバランスを取らなければならない韓国政府としては、「反中国」の性格が強いEPNへの参加が負担にならざるを得ず、慎重に検討する。

日本政府はどうするのだろうか。

EPNとは無関係と思われるが、4月30日に成立した 2020年度補正予算サプライチェーン改革【2,486億円】が含まれている。

(1) サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金 【2,200億円】
生産拠点等を日本国内に整備する場合などに、当該生産拠点等に係る建物や設備の導入に係る経費を補助。

(2) 海外サプライチェーン多元化等支援事業 【235億円】
日本・ASEANのサプライチェーンを強靭化するため、製品・部素材の生産拠点の複線化を行う場合などに、設備導入等に係る経費を補助。


ーーー

トランプ政権は反中国の姿勢を強めている。膨大な対中貿易赤字が一向に減らないことを問題視し、米国の失業と結びつけている。中国が組織的に米国の知財を盗用しているともする。
今回の新型コロナウイルスの蔓延に際し、必要な医薬品やサーマルカメラなどの多くが中国依存であることが懸念に拍車をかけた。

Trump氏は大統領選挙戦中、最大の貿易赤字相手国である中国への強硬姿勢を鮮明にしていた。

Trump大統領は2017年4月18日、連邦政府機関に米国製品の調達を優先するよう求める"Buy American"、高度な技術を持つ外国人労働者を対象とするビザの審査を厳格化する"Hire American"の大統領令を出した。「労働者を守り、雇用を守るという力強いシグナルを世界に送る」と「米国第一」の姿勢を改めて強調した。

2017/4/22 Trump大統領、"Buy American"、"Hire American"の大統領令 

トランプ米大統領は2017年8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

2017/8/18 米大統領、通商法301条で対中調査指示

トランプ大統領は2018年3月7日のツイッターで「貿易赤字を1000億ドル減らす計画の策定を求めた。

2018/3/19 トランプ政権、貿易赤字解消に躍起、対中貿易赤字1000億ドル削減を要請 

トランプ大統領は2018年3月22日、米通商代表部(USTR)に中国の知財侵害に制裁関税を課すよう指示する大統領令に署名した。

2018/3/23 トランプ大統領、中国の知財侵害に制裁関税を指示

USTRは2018年4月3日、通商法301条に基づき、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。

中国がこれに対抗、米国は第二次、第三次、第四次と制裁を引き上げた。

米国の対中制裁関税:

  当初 2019/8/23 発表 10/11 12/13
①~③
2500億ドル
① 340億ドル  2018/7/6  25% 2019/10/1 30%予定
(→10/15に延期)
 
引き上げ延期 
(25%維持)
25%据え置き
② 160億ドル 2018/8/23  25%
③ 2000億ドル 2018/9/24   10%
→2019/5/10 25%
④ 3000億ドル 一般  1200億ドル 2019/9/1  10% 9/1  15% 7.5%に引き下げ
消費財 1600億ドル 2019/12/15 10% 12/15 15% 予定 発動見送り


2019/8/2 トランプ大統領、9月1日に対中関税第4弾 ツイートで表明


米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。2020年
1月15日、「第一段階貿易合意」の署名を行った。

合意は知財、通貨、貿易拡大など7項目で、中国は米国からモノとサービスの輸入を2017年比で2年で2000億ドル増やす。

2020/1/17 米中「第一段階貿易合意」に署名 

並行して、米国は安保上懸念がある企業を列挙したEntity Listへの中国企業の追加やHuawei排除などで、中国企業の締め付けを強めている。

2019/8/21 米、Huawei 禁輸強化

ーーー

米国は米国のサプライチェーンで中国が重要な大きな部分を占めているのに危機感を感じ、全省庁を挙げてどうすれば中国から移せるかを検討している。税優遇や補助金などが対策の一部となる。

生産を中国から米国に移し、雇用を増やすのが最大の目標であるが、生産を中国から友好国に移し、中国依存を減らすことも狙う。

「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」構想は、信頼できるパートナーと世界サプライチェーンを構築するというものである。

その一つが、2019年11月に米政府がタイ・バンコクのインド・太平洋ビジネスフォーラムで発表した「Blue Dot Network(BDN)」である。中国の「一帯一路」に対抗するもの。

米国・オーストラリア・日本の民間開発庁が協力してアジア・太平洋地域に進出する企業を支援するという構想。

米金融開発庁(DCF)が600億ドルを支援し、米輸出入銀行は1,350億ドルほどの貸出保証を行う。

米国の海外民間投資公社(Overseas Private Investment Corporation)とオーストラリア外務貿易省、日本の国際協力銀行(JBIC)が計画を主導する。

「公共部門と民間部門を結び付け、オープンかつ包括的な枠組みで、グローバルインフラ開発のために、高品質で信頼できる標準を促進する。」

支援基準では「途上国の主権を守り、過剰債務に陥らないように、地域の労働者に仕事を提供する」ことなどを強調。過剰な投融資で返済に窮した国がインフラを奪われる「債務のわな」が問題となっている中国の支援と異なることをアピールした。


本年5月15日、世界第1位の半導体ファウンドリーの台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が米国のアリゾナに最先端の半導体工場を建設する計画を発表した。

米国の連邦・州政府からの支援を受けて総額約120億ドルを投じ、2021年から建設を始め、24年に量産を開始する。

TSMCは、半導体の受託生産で世界シェアの約5割を占め、Apple の「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)もTSMCが全量生産する。

TSMCの半導体工場は台湾に集中しているが、南京に先端半導体の工場を建設し、2018年から稼働している。米国に有する工場は世代が古い工場である。

回路線幅 5ナノの製品を生産し、生産能力はウエハー換算で月2万枚。

この発表の前にWall Street Journal が、ホワイトハウスがTMSCやIntel と米国内に半導体工場を建設するための話し合いをしていると報じていた。


なお、米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。

米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

2020/5/18 米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

ノーベル医学生理学賞受賞者の本庶佑・京大特別教授は6月5日、「オプジーボ」の特許をめぐり、小野薬品工業に対し、特許使用料の配分226億円余りを求める訴訟を今月中旬に大阪地裁に起こすと発表した。

本庶博士は従来から「オプジーボ」の特許の対価について小野薬品と争っているが、今回はそれとは別で、Merckの「キイトルーダ」の特許侵害訴訟での和解でメルク社が支払う特許使用料の配分に関するもの。

従来の経緯は下記の通り。

2003/7 本庶博士と小野薬品が「PD-1阻害による癌治療法」について特許出願

2006/10 本庶博士と小野薬品が特許使用料契約締結 

小野薬品が独占使用、本庶博士は対価を受け取る。

本庶博士は当初、京大に出願を要請したが、当時、京大には知財を扱う専門人材やノウハウがなく資金も不十分だったため、本庶博士本人が、小野薬品と共同出願した 。
当時の契約は本庶博士が弁護士を雇わずに署名したもの。

本庶博士によると、対価は約0.75%という。

本庶博士は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になったとされる。

当時はがんの免疫療法が「海の物とも山の物ともわからないという扱い」で、業界関係者はごく初期の特許の料率が1ケタになることは珍しくないとしている。

2011/10 本庶博士が上乗せを要請、交渉開始。

2013  小野薬品が書面で改定案提示

現行契約 小野薬品提案
小野薬品の売り上げ 0.75% 2%
Bristol-Myers Squibbから入る特許料 10%
Merckから入る特許料 40%


本庶博士は「安すぎる」として合意せず、交渉を続けたが、小野薬品が一方的に撤回した。

2014/9 小野薬品、オプジーボ発売

2014年9月の販売開始から2018年12月までの4年の売上高約2890億円に対し、小野薬品からの支払は約26億円。

本庶博士は受け取りを拒否し、小野薬品は法務局に供託している。

2014/9 同じ抗PD-1抗体であるMerck のキイトルーダ(Keytruda)の特許侵害訴訟で、小野薬品が本庶博士に協力を要請

本庶博士によると、小野薬品が受け取るロイヤルティーなどの40%相当額を支払う「約束」があったと主張。
今回、小野薬品が既に支払った1%分を除く39%分(約226億円)の支払いを求める。

2017/1 小野薬品とMerckが和解

小野薬品発表

小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS) が保有する用途特許および物質特許が有効であることを確認
Merckの「
キイトルーダ®」の販売を許諾する
Merck
当社およびBMS社に対し62500万ドルの頭金を支払い201711日から20231231日まではキイトルーダの全世界売上の6.5%202411日から20261231日までは2.5%をロイヤルティとして支払う 。
頭金およびロイヤルティは当社に25%、BMS社に75%の割合で分配

2018/10 ノーベル医学生理学賞受賞決定

2018/11 小野薬品が本庶博士に対し申し入れ

対価の上乗せという枠組みではなく、将来の基礎研究の促進や若手研究者の育成に資するという趣旨から京都大学への最大300億円の寄付を検討。

本庶博士は拒否

2019/4 本庶博士記者会見、対価引き上げを要求

本庶博士は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になった。「用途特許ならば5~10%が常識的なレベルだ」(代理人弁護士)

代理人は①小野薬品の売り上げ、②ブリストルから入る権利使用料、③同様の薬を開発した別企業から入る使用料の3種類の一部を本庶博士が受け取るべきだと主張、仮に試算すると、現時点で約830億円になるとし、「今後さらに増える」と強調 した。

若手研究者を支援する1千億円規模の基金を作り、対価を基金に投じるとしている。

なお、特許料増額交渉は発売3年前の2011年からしており、後出しジャンケンではないとした。

2019/5 小野薬品が反論、契約の見直しは拒否、別途京大への寄付を検討

2011年に本庶教授から当社に要請のあった契約の見直しに対しても誠意をもって話し合いを続けてきたが、合意に至らず、2018年11月に本庶教授に対し、対価の上乗せという枠組みではなく、将来の基礎研究の促進や若手研究者の育成に資するという趣旨から京都大学への寄付を検討している旨、申し入れた。

今後は、本庶教授との話し合いを継続するとともに、基礎研究の促進や若手研究者の育成のための寄付について慎重に検討する。

ーーー

今回は、Merck のキイトルーダ(Keytruda)の特許侵害訴訟で、小野薬品が本庶博士の協力を要請した際に、小野薬品が受け取るロイヤルティーなどの40%相当額を支払う「約束」があったとし、小野薬品が既に支払った1%分を除く39%分(約226億円)の支払いを求める。

2013年の小野薬品の改定提案に、Merckから入る特許料 40%となっている。

これは一般の特許料の配分とは異なり、協力の対価と考えられ、今回の本庶博士の要求を裏づけすると思われる。

これは、2019/4の記者会見での要求の一部であり、他に①小野薬品の売り上げ、②ブリストルから入る権利使用料の分が残っている。



なお、Massachusettsの米国地裁は2019年5月17日、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学 の本庶佑・特別教授が開発した癌の治療薬「オプジーボ」の特許について、ハーバード大学医学部の主要関連医療機関の一つである Dana-Farber Cancer Instituteの研究者 Gordon Freeman と Clive Woodの2人を共同発明者として認める判決を出した。

2019/5/25 米地裁、オプジーボの発明者に米学者2名を追加

本庶博士は控訴を決め、第2審の知財専門の巡回裁判所での審理に移るものと思われる。本件のその後についてはフォローできていない。

仮に本庶博士の敗訴となれば、特許料の配分交渉が更に複雑となる。

OPECプラスのエネルギー担当閣僚は6月6日、テレビ会議を開き、現行の減産の1カ月延長を決めた。

4月12日の合意では下記の通りであった。

2020/5~6 2020/7~12 2021/1~2022/4
2020/4/12決定 970万バレル

770万バレル

580万バレル


2020/4/13 OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意

今回、6月に下記の自主的追加減産をすることが分かった。

Saudi Arabia (1 mb/d); UAE (100 tb/d); Kuwait (80 tb/d) ; Oman (10-15 tb/d)
Several countries, such as Norway and Canada

今回、下記を決めた。

1) 7月の減産量を日量960万バレルとする。

  5~6月の減産を継続するが、メキシコ(減産義務 10万バレル)が7月に離脱

2) 割り当てられた減産量を守らず、生産超過にある参加国(イラク、ナイジェリアなど)は7~9月に減産を拡大し、超過分を相殺


付記 サウジは別途行っていた自主的追加減産 100万バレル/日を6月末で終了すると発表した。

付記 OPEC Plus は7月15日、8~12月の減産幅を予定通り日量770万バレルとすることで合意した。



現在の市況は下図の通り。

OPECプラスのリーダーのサウジとロシアは、歳入の観点から原油価格の急落は避けたい一方、米シェール企業の生産再開を誘う50ドルを大きく上回る事態は避けたい、との思惑では一致している。

AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。

AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。

2020/5/22 アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ 

ワクチンは資金力のある先進国に優先的に供給され、開発途上国には行かないのではと懸念された。


しかし、AstraZenecaは6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表した。

1) 同社は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携し、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。

2) インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。うち4億回分は年末までに供給する。このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

以上により、生産能力は20億回分となり、自社製造のうち3億回分は米国、1億回分は英国、3億回分はCEPI/Gavi 向け、残り3億回分は不明。
インドのSII製造分はインドとGAVI経由で低所得国向けとなる。

合計生産 20億回分のうち、少なくとも13億回分は低・中所得国向けとなる。


付記

AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと表明、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。
今後はEU欧州委員会とも連携を深める。


ーーー

4月24日、WHOとビル&メリンダ・ゲイツ財団、CEPI、GAVI、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)、ユニットエイド(三大感染症に関わる医薬品の価格低下や安定供給などに取り組んでいる国際機関)、ウェルカム・トラスト(英国の民間財団)が、COVID-19の診断、治療、ワクチンの開発、製造と平等なアクセスを促進するための地球規模のプラットフォームとして、「COVID-19関連製品へのアクセス促進枠組み」(Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator)を設立した。

低・中所得国を含め世界中にワクチンをフェアに供給することを狙いとする。

今回のCEPIとGaviとの提携による低・中所得国向けのワクチン供給は、「COVID-19関連製品へのアクセス促進枠組み」の最初のケースである。


感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスの内容は下記の通り。

CEPI (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations) は、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。
日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが拠出

GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)は、子どもの予防接種プログラムの拡大を通じて、世界の子どもの命を救い、人々の健康を守ることをミッションとする。
2016-2020年のGaviへの日本の貢献は9,500万ドル。


    https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0331/shiryo_01-2.pdf

中国の李克強総理は6月4日にオンラインで開催された「グローバル・ワクチン・サミット」でスピーチを行った。

中国は現在、新型コロナウイルスのワクチン・治療薬・検査試薬研究の難関攻略を急いでいる。中国はワクチン開発の国際協力を重視しており、先般EU等が発起した新型コロナウイルス感染症対策の国際寄付総会に参加した。引き続き各者と協力を強化していきたい。

GAVIアライアンスは中国と良好な協力を保ち続けており、以前中国側のワクチン接種と国際的応用を支えるために出資した。今回の新型コロナウイルス感染症の流行という試練を前に、中国政府はGAVIアライアンスの資金調達のために寄付を行い、中国の研究機関やワクチン生産企業とアライアンスの協力強化を促し、ワクチンの普及においてGAVIアライアンスが重要な役割を発揮することを支持したい。我々は同舟相救い、手を携えて1日も早く感染症に打ち勝ちたい。

ーーー

厚労省は6月2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。

国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定した。

ワクチン候補として、日本医療研究開発機構(AMED)が支援している国産ワクチン5件と、日本政府がCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)に資金を拠出し、CEPI支援して海外のワクチン9件(AstraZenecaのこのワクチンを含む)を挙げている。

2020/6/4 厚労省、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化で「加速並行プラン」

海外分については、恐らく自国が最優先で、余分があれば今回の例のように低・中所得国に回される可能性がある。

国産ワクチンの開発が遅れた場合、日本での接種が遅れる恐れがある。

韓国政府は6月2日、日本が韓国向け輸出規制を解除するかどうかの回答を最後まで出さなかったことで、世界貿易機関(WTO)への紛争解決手続きを再開すると発表した。

日本政府は2019年7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える。安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する。

2019/7/3  政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表 

韓国は9月11日、日本の半導体材料に対する輸出管理の厳格化がWTO協定に違反するとしてに日本を提訴した。WTOは貿易紛争の処理を二審制にしており、まず2国間で解決方法をさぐる協議が起点となる。

10月11日の協議は平行線をたどった。

2019/10/8 韓国向け半導体材料 輸出規制の状況

韓国政府は2019年11月22日、日本との協議再開に伴い、WTOの紛争解決手続きを中断した。

経済産業省は12月20日、韓国向けの輸出管理を厳格化していた半導体材料3品目のうち、レジスト(感光材)の管理措置を緩和した。


韓国の産業通商資源部は6月2日、「韓国政府は、昨年11月22日に暫定停止していた日本の3品目輸出制限措置について、WTOの紛争解決手続を再開することを決定した」と述べた。

これに先立って韓国政府は日本に対して、5月31日まで輸出規制を解除するかどうかについて立場を明らかにしてほしいと要請したが、回答を得られなかった。
このため、日本政府に問題解決の意志がなく、当初WTO手続き停止の条件だった両国間の正常的会話が進んでいないと判断した。

韓国政府は近く、WTOにパネル設置を要請して提訴手続きを再開する。「WTOへの提訴を通じて、日本措置の不当性を国際社会に知らせたい」としている。
ただし、日本との二国間対話も続けていくと付け加えた。

これについて茂木外相は、「韓国が一方的に紛争解決手続きの再開を決めたのは残念だ。輸出管理の見直しは、両国対話の中で行われなければならない」と述べた。

なお、手続きが再開されても1審の判定までは通常2年かかり、現在WTO上級委員7人中6人が空席(WTO紛争解決手続きに対する強い不満を持つ米国が上級委員の選考プロセスを阻止)なので、上訴機構が機能停止している。

ーーー

韓国大法院(最高裁)が元徴用工訴訟で日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた問題で、大邱地方法院浦項支院は6月1日、日本製鉄に韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達した。

大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で、被害者の勝訴を確定した。

朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者が損害賠償を求めた裁判で、韓国大法院は2018年10月30日、新日鉄住金に対して1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPNR (POSCO-NIPPON STEEL RHF Joint Venture) の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

しかし、日本側はこの判決を拒否したまま判決関連書類を受領しなかった。
日本政府は、韓国の大法院判決は日韓請求権協定違反との立場で韓国政府に対応を求めている。

今回の「公示送達」は裁判所が書類を公開掲示した後、一定期間が過ぎれば訴訟当事者に書類が伝えられたとみなす制度で、公示送達期限である8月4日午前0時を越えた時点で、裁判所は押収された日本製鉄の国内資産に対して現金化命令を下すことができるようになる。ただし、裁判所は日本戦犯企業に対する尋問手続きを進めると明らかにしたことから、尋問書発送のための公示送達などの追加手続きが続くと見られる。

付記

日鉄は8月4日、同日午前0時に効力が発生した資産差し押さえ命令に対して即時抗告を行う予定だと明らかにした。 日鉄は8月11日までに抗告することができた。

「国家間の正式な合意である日韓請求権協定により、『完全かつ最終的に解決された』と理解している。・・・日韓両国政府による外交交渉の状況等も踏まえ、適切に対応していく。差し押さえ命令に対しては即時抗告を行う予定だ」との談話を出した。

付記

大邱地裁浦項支部は8月13日付で即時抗告を認めない決定を出した。「理由がない」と同支部が判断した。即時抗告の是非の判断は三審制で行われるため最終決定ではない。

今後は二審に相当する大邱地裁で審理される。韓国メディアは、即時抗告に関する手続き完了まで通常は数カ月かかると伝えており、年内の支払い完了は困難。

また、売却命令が出たとしても、実際に資産売却が終わるまでには時間がかかるとみられる。

強制徴用に関連し、日本企業に公示送達決定が下されたのは今回が初めて 。

茂木外相は韓国の外交部長官との電話会談で、資産現金化問題に対して「深刻な状況を招く」と警告した。

日本企業では他に2社の資産が差し押さえられている。

三菱重工業:2つの商標権と6つの特許権、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円)相当
不二越:韓国内の合弁企業「大成・NACHI油圧工業」の株式7万6500株で、約7億6500万ウォン(約6840万円)相当


この問題の解決のため、韓国国会の文喜相議長が2019年末に解決法案を提出した。

法案は日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を設け、裁判所や韓国政府が認めた元徴用工らに慰謝料を支給する内容で、企業や個人に寄付を強要しない方針を明記し、受給者は企業への請求権を放棄したとみなす規定を盛り込んだ。

しかし、法案は原告や市民団体の反対で審議にも至らぬまま、韓国憲法の規定により国会会期末の5月29日で廃案となった。

英国のジョンソン首相は6月3日付の英紙タイムズに寄稿し、 中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」を施行した場合、イギリスは移民規則を変更し、香港人数百万人に対して「英市民権を獲得する道」を開く方針だと述べた。イギリスは香港との関係を維持せざるを得ないとしている。

中国の国家安全法制は司法および政治の独立性を謳歌してきた香港の自治を「大幅に損なう」だろう。

その場合、何百万という香港市民にイギリスのビザを提供するほか「選択肢はない。」

中国が同法を施行した場合、英国海外市民旅券(BNO)を保有する香港人に認めているビザなしの英国滞在期間を、現行の6カ月から12カ月に延長する。

現在、約35万人の香港人がBNOを保有している。ほかに約260万人に取得資格がある。

BNO保有者には今後、就労を含め、これまで以上の権利が与えられることとなる。

これにより、「BNO保有者には英市民権を獲得する道が開かれる可能性がある」。


中国全人代は
5月28日、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「国家安全法」を香港に導入する方針を採択した。今夏にも具体的な法整備を行う。

トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

2020/6/1 トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

ジョンソン首相は香港の自治の崩壊に備えて住民を広く受け入れる姿勢を強調し、国家安全法に抗議する姿勢を明確にした。

ラーブ外相は6月2日、安全保障上の機密情報を共有する"Five Eyes" ---- イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド ---- に、香港市民にビザを発給するよう頼んだと議会に伝えた。


これに対し、中国は6月3日、英国に対し、中国の問題に「干渉するのを止める」よう求めた。

中国外務省の報道官は「我々は英国に対し、一歩退き、冷戦時代のメンタリティーと植民地時代のマインドセットを捨てて、香港は中国に返還されたという事実を認識し、尊重するよう忠告する」と語った。
「香港の問題と中国の内政問題に干渉するのを今すぐ止めないと、英国はしっぺ返しを食らうことになる」と加えた。

ジョンソン首相の報道官は次のように反論した。

「首相が述べた通り、英国は香港の『一国二制度』の下での成功を願っているだけだ」

「中国がこの国家安全法を推し進めれば、それは国連に登録されている法的拘束力のある共同声明に基づく義務に直接抵触することになる」

共同声明は1984年12月19日に中国の趙紫陽総理とイギリスのサッチャー首相が北京で署名した。両国は1985年5月27日に批准公文を交換し、国際連合事務局で登録したことで声明は発効した。

中国の香港政策の方針について、中国は一国二制度をもとに、中国の社会主義を香港で実施せず、香港の資本主義の制度は50年間維持されるとした。

ーーー

香港が英領であった時代には、香港人にはBDTC旅券(British Dependent Territories Citizen)が発行されていた。

1997年の香港返還により、BDTCは無効となった。

現在、2種類の旅券がある。

1) 中華人民共和国香港特別行政区が発行するHKSARHong Kong Special Administrative Region旅券(青色)

2) 英国が発行する英国海外市民(BNO=British National Overseas)旅券=赤色

なお、他に香港から中国に入るための中国公安局が発行するIDカード「回郷証」(Home Return Permit)がある。香港の居住権があれば基本的に取得でき、有効期間は10年(18才以下の場合は3年)。

香港住民が中国本土へ行く場合は国内移動とみなされ、HKSARパスポートでは入境できない。 中国はBNO旅券を認めていない。
中国への入境は自由ではなく、「回郷証」が必要である。

1997年の香港返還に際して、「一国二制度」の下で、香港市民は英国海外領国民ではなくなり、中国国民となった。

しかし英国は、1997年返還までの間にBNO旅券を300万人以上の香港市民に発給した。1997年の返還前の香港に居住、申請した人は、現在でもBNO旅券を保有・更新することができる。
但し、BNO旅券を持つ香港人から生まれた子供は1997年6月30日以降に生まれた場合は取得できない。

BNO旅券は実際には英国の旅券でなく、英国政府が発行する渡航文書(Travel document)である。英国入国の際に外国人同様の入国審査を受けなければならない。

なお、日本政府は、HKSAR旅券とBNO旅券保有者にビザ免除を認めている。

Eli Lilly は6月1日、新型コロナウイルス治療のための抗体療法について、米国の入院患者を被検者として、世界初となる第1段階の臨床試験を開始したと発表した。

カナダのバイオテクノロジー企業の AbCellera と共同で開発した。

AbCelleraは米国で新型コロナウイルス感染症から回復した患者の血液試料を入手し、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のワクチン研究センターと共同で有望な抗体を見つけ出した。
その後、Ely Lillyが3か月でウイルスが持つスパイク状のタンパク質構造に対応した IgG1 モノクローナル抗体 LY-CoV555を開発した。

今回の臨床試験は安全性や忍容性を検証するもので、 NYU Grossman School of Medicine 附属病院とロサンゼルスの Cedars-Sinai病院などに入院している新型コロナウイルス感染症患者を対象に実施している。結果は6月下旬に判明する見通し。

同社ではその後、入院していない患者を対象に試験を行う。

臨床試験で同療法の新型コロナウイルスに対する有効性が実証されれば、今年秋までに実用化できる可能性があるとしている。

ーーー

抗体療法については、他に2件が開発中。

米Regeneron Pharmaceuticalsは2月4日、米保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)との既存の契約を拡大し、新型コロナウイルスに対する新たな抗体医薬の開発を行うことになったと発表した。

3月17日、COVID-19の予防、または治療に用いる抗体カクテル療法の開発を速やかに開始すると発表した。
新型コロナウイルスのウイルス抗体を多数特定した。特定した抗体から2種類の有力な抗体を選定し、これを混合したカクテル抗体を4月中旬までに生産、夏の終わりまでに月20万程度の生産を目指す。

同社はまた、新型コロナ感染症の重篤患者を対象にSanofiと共同で、リウマチ治療薬のヒト型抗IL-6受容体モノクローナル抗体製剤「ケブザラ」(一般名サリルマブ)の試験を行っていることを明らかにした。

ーーー

GlaxoSmithKline は4月6日、Vir Biotechnologyに2億5,000万ドルを出資し、新型コロナウイルスによって引き起こされる肺炎を治療・予防する複数の医薬品とワクチンを共同開発すると発表した。

最も先進的なのは、Virが開発したVIR-7831およびVIR-7832という2種類の抗体を使用するアプローチで、両社は今後3~5カ月以内に第2相臨床試験を開始する。

韓国のバイオ医薬品大手のSamsung Biologicsは4月10日、 Vir Biotechnology から新型コロナウイルスの治療薬のモノクローナル抗体を受託生産する契約を結んだ。

2020/4/16 Samsung Biologics、Vir Biotechnologyの新型コロナ治療薬候補を受託生産 


米通商代表部(USTR)は6月2日
Digital Services Tax巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。


フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。
米国は7月10日、フランスのデジタル課税によって米IT大手が打撃を受けるかどうか、通商法301条に基づいて調査すると発表した。

フランスのマクロン大統領は2019年8月26日、フランスの「デジタル課税」を巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。 フランスのデジタル課税と経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。

2019/7/31 フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題

今回、フランスに続き対象を広げる。外国の不公正な慣行に一方的措置を取る権限を与えた「通商法301条」に基づき調べ、各国のデジタル税が不当に米国企業を差別していると認定すれば、追加関税を含む制裁措置を発動する。

対象は下記の通りで、Federal Register に記載されている。(〇:実施、:検討)

Austria 2020/1/1、オンライン広告サービスに5%のDigital Services Tax
Brazil Digital Services Taxを検討
Czech Republic 7%のDigital Services Taxを検討
EU 2018年の提案に沿う案を検討
India 2020/4/1、2%のDigital Services Tax
Indonesia 本年初め、electronic transaction tax 手続き後、実施。
Italy 2020/1/1、3%のDigital Services Tax
Spain 3%のDigital Services Taxを検討
Turkey 2020/3/1、7.5%のDigital Services Tax(15%まで引き上げ可能)
UK 2%のDigital Services Taxを検討


各国の状況の詳細:

Austria: In October 2019, Austria adopted a DST that applies a 5% tax to revenues from online advertising services. The law went into force on January 1, 2020. The tax applies only to companies with at least €750 million in annual global revenues for all services and €25 million in in-country revenues for covered digital services.

EU:   2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り

India: In March 2020, India adopted a 2% DST. The tax only applies only to non-resident companies, and covers online sales of goods and services to, in India. The tax applies only to companies with annual revenues in excess of approximately Rs. 20 million (approximately US$ $267,000). The tax went into effect on April 1, 2020.

Indonesia: Earlier this year, Indonesia adopted an electronic transaction tax that targets cross-border, digital transactions. Further implementing measures are required for the new tax to go into effect.

Italy: Italy has adopted a DST. The measure includes a 3% tax on revenues from targeted advertising and digital interface services. This tax applies only to companies generating at least €750 million in global revenues for all services and €5.5 million in in-country revenues for covered digital services. The tax applies as of January 1, 2020.

2019/12/30 イタリア、デジタル課税を導入、フランスに追随

Turkey: Turkey has adopted a DST. The measure applies a 7.5% tax to revenues from targeted advertising, social media and digital interface services. The tax applies only to companies generating €750 million in global revenues from covered digital services and TL20 million in in-country revenues from covered digital services. The Turkish President has authority to increase the tax rate up to 15%. The law went into effect on March 1, 2020.

ーーー

デジタル課税を巡る議論は経済協力開発機構(OECD)を中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している

ムニューシン米財務長官は2019年12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。





厚労省は6月2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。

国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定 した。

ワクチン開発は通常、基礎研究→臨床試験→薬事申請・生産体制整備→薬事承認・生産開始と、実用化に数年を要する。

「加速並行プラン」では、臨床試験の段階で民間のリスクを政府が負担し、資金を投入して生産体制整備に着手する。審査・承認の過程も大幅に短縮する。

但し、この場合でも、大量供給できるまでには「生産開始後半年~1年程度」かかるとしている。国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定しているが、実際には、出来たとしてもごく一部にとどまると思われる。

政府は今年度第2次補正予算案で製造ラインの整備費を基金化し約1400億円を計上し、1件200億~300億円をめどに5件程度を公募で選定する。

厚生労働省は2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定。最終的に国民全員に接種することを念頭に、国費を投じて製造ラインを整備するとした。

 公明党が国会内で開いたプロジェクトチームで示した。ワクチン開発は通常、基礎研究▽安全性の確認を含めた薬事承認▽生産――と、実用化に数年を要する。通常は臨床試験が終わり実用化のめどが立ってから着手する製造ラインの整備について、プランは研究中から政府が資金を投入し、審査・承認の過程も大幅に短縮するとした。一方でワクチンの生産体制が整った後も、大量供給できるまでには「生産開始後半年~1年程度」かかるとした。

 政府は今年度第2次補正予算案で製造ラインの整備費を基金化し約1400億円を計上。補正予算の成立後、1件200億~300億円をめどに5件程度を公募で選定する。

ーーー

既報の通り、WHOによると臨床試験段階にあるものは10件だが、日本のものは含まれていない。

厚労省によると、日本医療研究開発機構(AMED)が支援しているワクチン開発状況は以下のとおり。

基本情報 取り組み状況 目標と対応 生産体制の見通し
組換えタンパクワクチン
感染研/UMNフ ァーマ/塩野
遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤 ワクチンの候補を作製
動物を用いた有効性評価を開始予定
有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す 塩野義が開発主体
mRNAワクチン
東大医科研/第一三共
メッセンジャーRNAを人に投与する注射剤
人体の中で
コロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了
動物を用いた有効性評価を実施中
有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す
DNAワクチン
阪大/アンジェス/タカラバイオ
DNAを人に投与する注射剤
人体の中で
DNAからmRNAを介しコロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了
動物を用いた有効性評価を実施中
最短7月から臨床試験開始の意 タカラバイオが生産予定
不活化ワクチン
KMバイオロジクス/東大医科研/感染研/基盤研
不活化したコロナウイルスを人に投与する従来型のワクチン コロナウイルスが増殖するかを確認中 2020年度中に非臨床試験終了を目指す
ウイルスベクターワクチン
(ID
ファーマ/感染)
コロナウイルスの遺伝情報を持ったセンダイウイルス投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される 動物を用いた有効性評開始予定 最短で9月から臨床試験開始の意向

2020/5/22 アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

このほかAMEDで、基礎研究段階の開発を支援(新潟大・東京都医学総合研究所・慶応大・東大・長崎大)


海外での開発で、
日本政府がCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)に資金を拠出し、CEPI支援してワクチン開発主体は以下のとおり。

これらについて、日本で早期に生産できるのかどうか不明。

ワクチンの種類 CEPIが支援する開発主体と状況
抗原を注射して免疫を付けるタイプ 組換えタンパクワクチン Novavax第1/2相臨床試験を開始

Novavaxは、専有のナノ粒子技術を適用して作製したCOVID-19のワクチン候補(NVX-CoV2373)に関する第1/2相臨床試験を5月20日に開始したと発表した。
同試験は、CEPIから3億8800万ドルの資金を得て行われている。
Clover Biopharmaceuticals Australia2か月以内に豪での第1臨床試験の被験者募集を開始したとしている
ペプチドワクチン Queensland大学/GSK
遺伝子を注射して人体コロナウイルの抗原をつくり免疫をつけるタイプ mRNAワクチン Moderna/国立アレルギー感染症研究所:第1相臨床試験の中間結果を公表2臨床験を202053相臨床試験を2020年初夏に開始予定ロンザ社(スイス)と提携

2020/5/19 Moderna、新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 
CureVac
DNAワクチン InovioPharmaceuticals第1相臨床試験を開始

INOVIOとGeneOne Life Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。
ウイルスベクター オックスフォード大第1相臨床試験を完了結果は未公表第2/3相臨床試験を開始アストラゼネカと提携

2020/5/22 アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ
香港大学
パスツール研究所/テーミス社MSD社の子会社/ピッツバーグ大学


CEPI (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations) とは、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギー政府が関わる。





中国工程院 の責任者はこのほど、「中国は、新型コロナウイルスワクチンの研究開発分野で世界の先頭集団におり、現時点までにすでに5種類のワクチンが第2期臨床試験段階に入った」と述べた。

「RNAワクチンや不活化ワクチンなど、中国では現在、5種類のワクチンがすでに第2期臨床試験段階に入っている。研究開発のスピードは少しも遅くはない。ウイルスの開発にはかなり長期間を必要とするのは当然ではあるが、非常に効率性が高いワクチンについては、かなり慎重に選択を進めなければならないため、時間もかかる。だが、現在の進捗状況から、今年の年末までには、危機的な状況をめぐる問題は、ほとんど解決できると予想している。」

これは事実である。

WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。

  DRAFT landscape of COVID-19 candidate vaccines - 30 May 2020

このなかで、臨床試験段階にあるもの10件、その以前の段階にあるもの121件を記載している。

臨床試験段階にあるものは次の10件で、うち中国関係が5件である。

Platform Type of candidate vaccine Developer
1 NonReplicating Viral Vector ChAdOx1-S University of Oxford/AstraZeneca
2 NonReplicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector CanSino Biological Inc./Beijing Institute of Biotechnology
3 RNA LNP- encapsulated mRNA Moderna/NIAID
4 Inactivated Inactivated Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm
5 Inactivated Inactivated Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm
6 Inactivated Inactivated + alum Sinovac
7 Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M Novavax Research & Development
8 RNA 3 LNP-mRNAs BioNTech/Fosun Pharma/Pfizer
9 Inactivated Inactivated Institute of Medical Biology, Chinese Academy of Medical Sciences
10 DNA DNA plasmid vaccine with electroporation 「INO-4800」 Inovio Pharmaceuticals


No.1  
2020/5/22 アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ

No.2  2020/5/26 中国CanSino Biologicsの新型コロナウイルスワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認

No.3  2020/5/19 Moderna、新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認  

No.4 & No.5  中国国営製薬会社Sinopharm GroupのCOVID-19予防不活化ワクチン

No.6 Sinovac Biotech(北京科兴生物制品有限公司

2020年4月16日、中国Sinovac Biotechと米国のDynavax TechnologiesはCOVID-19の予防ワクチンを共同開発すると発表した。
Sinovacが開発する不活化ワクチン候補にDynavaxのアジュバントCpG1018を適用する。

No.7 Novavax

米Novavaxは、専有のナノ粒子技術を適用して作製したCOVID-19のワクチン候補(NVX-CoV2373)に関する第1/2相臨床試験を5月20日に開始したと発表した。
同試験は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)から3億8800万ドルの資金を得て行われている。

No.8  2020/5/7 ファイザー、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を米国で開始

No.9  Chinese Academy of Medical Sciences  不活化EV71ワクチン

No.10  INOVIO

INOVIOとGeneOne Life Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。

ーーー

床試験以前の段階にあるものを121件挙げているが、日本関連は下記のものがみられるが、極めて少ない。

Platform Type of candidate vaccine Developer
DNA DNA plasmid vaccine 大阪大学/アンジェス/タカラバイオ 2020/5/22 アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発
Inactivated TBD 大阪大学/BIKEN/NIBIOHN 阪大微生物病研究所と阪大微生物病研究会(BIKEN財団)、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)
Protein Subunit VLP-recombinant protein + Adjuvant 大阪大学/BIKEN/NIBIOHN
RNA LNP-encapsulated mRNA 東大/第一三共 日本医療研究開発機構(AMED)感染症実用化研究事業・新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業で実施中の「新型コロナウイルス(2019-nCoV)の制圧に向けての基盤研究」に参画

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サムスン電子の李在鎔副会長は5月26日、取り調べを受けるため、ソウル中央地検に出頭、17時間に及ぶ聴取を受けた。

地検は5月29日にも再度呼び出して聴取した。

付記 

検察は6月4日、李在鎔副会長らについて、資本市場法違反(不正取引及び相場操作行為)や偽証などの容疑で逮捕状を請求した。  
ソウル中央地裁は6月9日未明、「被疑者を拘束する必要性が不十分」として、サムスン電子副会長に対する検察の逮捕状請求を棄却した。

付記 

韓国の検察捜査審議委員会は6月26日、検察に対し、本件捜査を中断し不起訴にするよう勧告した。強制力はないが、検察の捜査に影響を及ぼす。下記の贈賄の裁判には関係しない。

付記 韓国のソウル中央地検は9月1日、李在鎔サムスン電子副会長を株価操作などの罪で在宅起訴した。

検察が勧告に従わずに起訴に踏み切ったことで、裁判は最長1年半かかり、最終的に最高裁が判断する事態となれば、決着までさらに2年を要することもあり得る

ーーー

朴槿恵前政権で起こった国政介入事件で朴前大統領と長年の知人の崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2018年2月5日開かれた。

控訴審は2017年12月27日に結審したが、検察側は懲役12年を求刑していた。

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2018/2/5 サムスントップ釈放 

大法院(最高裁)は2019年8月29日、第二審の判決【懲役2年6ヵ月・執行猶予4年】を破棄し、差し戻した。

大法院は李副会長から朴槿恵前大統領への賄賂の金額を86億8081万ウォンと認定した。

韓国の
特定経済犯罪加重処罰等に関する法律によると、横領金額が50億ウォン以上の場合、無期懲役または懲役5年以上の懲役に処せられる。

現在、差し戻し審が進んでおり、今夏にも結審する見通し

差戻し審では、第一審と同じ懲役5年か、それ以上の実刑判決が宣告される可能性が高く、再び収監される可能性もある。

ーーー

今回は2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程における背任、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などサムスン経営権継承を巡る一連の疑惑である。検察は本件を3年以上先延ばしにしていた。

争点は次の3つ。

1.サムスン物産・第一毛織の合併の違法性
2.
第一毛織子会社のSamsung BioLogicsの4兆5000億ウォン粉飾会計疑惑
3.李副会長が関与したのか

検察は、2015年のサムスン電子と第一毛織の合併と、その後のSamsung BioLogicsの会計基準変更が李副会長の安定的な経営権継承を目的としていたとみている。
不正が疑われる行為の企画・実行者を突き止める一方、李氏を頂点とするグループ首脳部がどこまで報告を受け、指示を出していたかを探る考えである。

Samsung Group の持株会社 第一毛織(Cheil Industries Inc.) が2014年12月18日に上場した。

李一族が45.56%を保有する。第一毛織は三星生命、三星電子を保有する。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 

2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) となった。

新しいSamsung C&T はSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。

李一族 → Samsung C&T → 三星生命 → 三星電子

問題は第一毛織とサムスン物産の合併比率で、当時李副会長はサムスン物産の株式は保有しておらず、第一毛織の株式価値が高いほど、李副会長には有利となる。

合併時にサムスン物産の株式1株の価値は第一毛織の株式0.35株と計算された。

検察はグループが組織的に、第一毛織の価値を高く、サムスン物産の価値を低く設定し、サムスン物産の株主に被害を与えた背任の疑いがあるとみている。

合併前のサムスン物産の株価上昇を抑えるとする当時のサムスン未来戦略室の報告書 を確保した。
サムスン物産のカタールでの発電所工事受注など好材料を合併後の7月末に公表したこともそうした方針に沿ったものと見る。

ヘッジファンドのElliot Managementなどが反対したが、国民年金公団などの賛成で承認した。 賛成は69%強で、必要な2/3にギリギリであった。
この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがある。

詳細は 2017/1/20 ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず 

もう一つの争点はSamsung BioLogicsの粉飾会計疑惑である。

Samsung BioLogicsは第一毛織の主な子会社であり、この企業価値が高いほどサムスン物産と第一毛織の「1対0.35」という合併比率が正当性を持つことになる。

検察はSamsung BioLogicsが当時、子会社Samsung Bioepisの負債を隠し、企業価値を水増ししたとみている。

Samsung BioLogicsは2012年、米製薬会社Biogenとの合弁会社 Samsung Bioepisを設立した。

出資比率はSamsung BioLogicsが85%、Biogen が15%であったが、Biogenは設立契約で 「50%マイナス1株」までの追加出資の権利を保有している。

コールオプションは負債として扱われるが、Samsung BioLogicsはこのコールオプションの存在を隠していた。

2014年に初めて公表し、Biogenがオプションを行使した場合に支配力が失われかねないとして、2015年にSamsung Bioepis を子会社から関係会社に変更した。

子会社から関係会社に変更する場合には、帳簿価格ではなく、市場価格で評価する。Samsung BioLogicsは2015年12月に、企業価値を3兆ウォンと見積もりながら8兆ウォンと評価し、4兆8086億ウォンの会計上の利益を得た。

Samsung BioLogics は2016年10月に株式公開(IPO)を控えていたが、債務超過の可能性があり、粉飾を行ったとみられる。

金融委員会の証券先物委員会は2018年11月14日、Samsung BioLogicsが傘下のSamsung Bioepisの企業価値を意図的に過大申告していたと指摘した。

会計規則を「故意」に破ったとの判断を示し、Samsung BioLogicsの外部監査法違反での検察告発と代表取締役の解任勧告、課徴金80億ウォン賦課などの制裁を議決した。

Samsung BioLogicsの上場廃止の恐れがあったが、韓国取引所は2018年12月10日、上場維持を発表し、11日に株式売買が再開された。

2018/11/16 韓国の証券先物委員会、Samsung BioLogicsの粉飾を認定

サムスン側は「当時の会計処理は合併後の2015年末に行ったもので、合併とは無関係に行われた」としている。コールオプションの隠蔽は合併前で、問題となり得る。

中央地検は経営権継承を巡る不正疑惑に関し、当時グループの司令塔だった未来戦略室(現在は廃止)への李副会長の指示・報告内容を調べている。

朴槿恵前大統領の贈収賄事件の裁判で、大法院全員合議体(大法廷)はサムスン内部に李副会長のための「組織的継承作業」が存在していたと認定した。しかし、継承作業の違法性や李副会長がその過程に関与していたかについては判断しなかった。

李副会長は今回、検察の取り調べに対し、「継承作業について指示したり、報告を受けたりしたことはない」として、容疑を否認したとされる。


トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

ーーー

香港の「憲法」である香港基本法の23条は、香港特別行政区が「国家への反逆、国家の分裂、反乱の扇動、中央政府の転覆、国家機密の不正な取得を禁止し、外国の政治組織が香港で政治活動を行ったり香港の政治団体が外国の政治団体と関係を持ったりすることを禁止する 」法制定を求めており、香港は2003年に法律制定を進めようとしたが、反対が強く、撤回され、現在もまだ制定されていない。

今般、中国全人代は、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「国家安全法」を香港に導入する方針を5月28日に採択した。習近平指導部は今夏にも具体的な法整備を行う。

香港には中国本土の法律は原則適用されないが、 例外として全人代が定めた法律でありながら香港にも適用可能な「全国性法律」がある。香港基本法の18条において「全人代は香港特別行政区基本法委員会と香港特別行政区政府に意見を尋ねた後に全国性法律を追加または削除ができる 」と定められている。但し、「国防、外交などに限定される」とも定められている。

現在、13の全国性法律がある。

建国記念日、国旗、国歌など国家の儀礼的なことを定めた法律が5つ、
領海やEEZに関する法律が3つ、
外交特権・領事特権に関する条例が2つ、
国籍法、
人民解放軍を置く法的根拠となる香港特別行政区駐軍法、
外国の中央銀行に法的特権を認める法律

今回、2015年に施行された中国の国家安全法を全国性法律として追加する形ではなく、新たに全人代が 「香港国家安全法」を作る。

次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。

  • 分離独立行為:中国からの離脱
  • 反政府行為:中央政府の権力あるいは権威の弱体化
  • テロ行為:人への暴力や脅迫
  • 香港に干渉する外国勢力による活動

香港が香港基本法23条で決められている法制定を実施していないため、基本法18条に基づき全人代が全国性法律を追加するという形態をとっている。

中国は今回の法制定の基本原則は下記の通りとしている。

第1に、国家の安全を断固として維持する。
第2に、「一国二制度」の制度体系を堅持し、完全なものにする。
第3に、法に基づく香港統治を堅持する。
第4に、外国の干渉に断固反対する。
第5に、香港市民の合法的権益をしっかりと保障する。

ーーー

1997年7月1日に、香港がイギリスから中国に返還され、中国の特別行政区となった。 50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持することが約束された。香港には「高度な自治」が認められ、言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由などが保障された。

米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States-Hong Kong Policy Act)の効力が発生した。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

なお、米国と中国の関係悪化を受け、2019年9月25日に「香港人権・民主主義法案」が可決された。優遇措置の前提である「一国二制度が守られている」状態かどうかを毎年検証することが米国政府に義務付けられ、検証の結果、一国二制度が継続されていないという結論になれば、優遇措置が見直される可能性がある。

今回、大統領は、米政府の対応は犯罪人引き渡しから輸出規制にわたる「香港を巡る広範な合意」が対象で、「例外はほとんどない」とし、「米国の措置は力強く、意味があるものとなる」と語った。ただ、こうした措置を実施する期限は示さなかった。

香港にも中国本土と同じ関税率が適用され、対中追加関税も上乗せされる 可能性がある。 また、米投資家が香港から資金を引き揚げたり、米ドルと香港ドルの交換が規制されたりする事態も懸念される。

中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は香港経由である。香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。


トランプ大統領はこのほか、次の点に言及した。

新型コロナウイルスへの対応などをめぐって「中国寄り」と批判してきたWHOに対し、米国が求めてきた改革を行わなかったと指摘し「関係を断絶する」と断言、脱退の意向を表明した。
WHOへの資金拠出を他の国際公衆衛生活動に振り向けるとも語った。 

中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を隠蔽し 、WHOへの報告義務を無視し、その後もWHOが世界に誤った情報を出すよう、圧力をかけた。
米国が年間4億5千万ドルを拠出し、中国は4千万ドルしか拠出していないにもかかわらず、中国がWHOを完全に支配している。
改革を求めたが、彼らは動くことを拒んだ。我々はWHOとの関係を終了させる。

香港の自治侵害にかかわった一部の中国・香港政府高官への制裁

一部の留学生・研究者へのビザ発給停止

「安全保障上の理由」としており、中国軍と協力する研究機関や企業に所属する中国人らが対象となる模様

具体的には中国の軍・民融合戦略を実行する機関と関連する大学院以上の中国国籍者のF(留学生)およびJ(訪問学者)ビザを利用した米国入国を遮断する。
AIなど民間先端技術を活用して人民解放軍を現代化する「軍・民融合」推進大学・研究機関所属や、これら機関で研究した後に米国に入国した中国人留学生と研究員の約3000人も追放される可能性がある。

米国民が中国企業に投資するリスクを回避するための方法を検証

「投資会社は、共有する規則の下で運営されていない中国企業に投資する不当な隠れたリスクに顧客をさらしてはならない」

金融市場に関する作業部会に「米国の投資家保護を目的に、米株式市場に上場する中国企業のそれぞれの慣習」を検証するよう指示した。

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