BASFがドイツのSpecialty chemical のメーカーのCognisにTOBをかけるとの噂が流れている。対価は30億ユーロにもなるとされている。
Cognisについては、BASFのほか、潤滑油メーカーのLubrizolも買収に意欲を持ち、交渉を始めた。
特に CognisのCare Chemicals (ヘア・ボディ・オーラルケア剤、スキンケア剤、ホームケア洗剤など)は石油・ガスを直接原料とする製品に比べ景気変動に余り左右されないため、各社の関心の的となっている。
BASFによれば、高級化粧品の需要が回復に向かっており、パーソナルケア化学品市場の回復に力を与えている。
BASFはヘアケア、日除け製品、増粘剤などを開発しており、ケア関連の化学品で34億ユーロの売り上げがある。
Lubrizol はAdditives部門とAdvanced Materials部門を持つが、後者ではEngineered polymersに加え、Consumer Specialtiesを扱っており、ローションやシャンプーなどのパーソナルケア製品の増粘剤の最大のメーカーでもある。
同社はパーソナルケア分野での拡大を目指している。
Lubrizolの市場価値は65億ドルで、アナリストによれば、30億ドル程度の買収をしても、投資適格格付けを維持できる。
Cognisのオーナーは売り急いではいない。上場も検討している。
BASFやLubrizolのほか、DuPont、Croda International、Solvay、DSM なども関心を示しているといわれている。
ーーー
Cognis はドイツのHenkel KGaA の化学部門であったが、1999年にHenkel は強力ブランドと先進技術に全面的に集中するため、化学部門の放出を決定、100%子会社のCognis を設立した。
2001年11月、投資会社3社Permira Funds、GS Capital Partners、SV Life Sciences Fundsが買収し、現在に到っている。
現在のHenkel の事業は次の3つ。
Laundry & Home Care、Cosmetics/Toiletries、Adhesive Technologies
Cognisは2006年にグローバルの油脂化学事業(脂肪酸、グリセリン、油田用化学品、プラスチック添加剤)をマレーシアのGolden Hope Plantations との50/50JVのCognis Oleochemicals (M) に移管した。
Golden Hope Plantations は2007年にKumpulan Guthrie及びSime Darby と合併し、Sime Darbyとなった。
ゴムのプランテーション、不動産、自動車、エネルギーなど多岐にわたる事業を行っている。
2008年11月に、CognisはCognis Oleochemicalsの持分をタイのPTT Chemical に売却、現在はCognis OleochemicalsはPTTとSime Darby の50/50JVのEmery Oleochemicalsとなっている。
Cognisは3つの戦略的事業単位(SBU)を持つ。
(1)Care Chemicals
Hair/Body/Oral Care
ヘア・ボディ・オーラルケア剤、 シャンプーコンディショニング剤原料、ヘアカ ラー剤原料、口腔洗浄剤原料
Skin Care
化粧水・乳液原料、メイク落とし原料、UV ケア化粧品原料、リキッドファンデーション原料
Home Care
台所用洗浄剤原料、柔軟材原料、柔軟仕上剤原料
Industrial & Institutional Cleaning
Silicates
(2)Nutrition & Health
Food & Beverages
栄養補助食品素材
Dietary Supplements
機能性食品素材 (機能性食品原料、栄養補助食品原料)
Pharmaceuticals & Healthcare
医薬品原料 (一般用医薬品原料、医薬品添加物)
Food additives
食品添加物 (色素原料・乳化剤等の食品添加物、品質改良剤)
(3)Functional Products
Coatings
Lubricants
AgroSolutions
Mining & Ion-Transfer Technology
最近の業績は以下の通り。(百万ユーロ)
|
売上高 |
|
Adjusted EBITDA |
2009 |
2008 |
増減 |
|
2009 |
2008 |
増減 |
Care Chemicals |
1,457 |
1,684 |
-227 |
|
212 |
204 |
8 |
Nutrition & Health |
325 |
346 |
-21 |
|
54 |
65 |
-11 |
Functional Products |
786 |
948 |
-162 |
|
100 |
88 |
12 |
Others |
16 |
23 |
-7 |
|
-2 |
-6 |
4 |
Total |
2,584 |
3,001 |
-417 |
|
364 |
351 |
13 |
|
|
|
|
|
|
|
|
EBIT |
|
|
|
|
195 |
192 |
3 |
金利(net) |
|
|
|
|
-130 |
-212 |
82 |
Tax |
|
|
|
|
-40 |
-29 |
-11 |
中止事業損益 |
|
|
|
|
- |
-14 |
14 |
Net Profit |
|
|
|
|
25 |
-63 |
88 |
ーーー
Lubrizol Corporationは1928年に米国オハイオ州クリーブランド市の郊外に設立された。
最初の製品Lubri-Graphは、自動車の重ね板バネのキシミ音を低減するために開発したもので大ヒット商品となった。
そのすぐ後に自動車のエンジン油も商品化し、これらの技術から添加剤の分野に特化した。
1998年はBP ケミカルからAdibis 潤滑油・燃料添加剤事業を買収している。
その後、パーソナルケア部門に進出した。
2003年にDow Chemical から、その子会社 Amerchol のパーソナルケア事業の一部を買収。
2004年に英Avecia から添加剤事業を買収。
同年に米BFGoodrich のPerformance Materials部門が独立したNoveon を18.4億ドルで買収した。
BFGoodrich は1896年に世界初の空気入り自動車用タイヤを開発した。
1940年には合成ゴムを使用したタイヤを米国市場に初めて投入、1947年には初のチューブレスタイヤを発売している。
同社は1986年に自動車タイヤ事業をフランスの Michelinに売却した。 Michelinは現在もBFGoodrich ラベルでタイヤを販売している。
BFGoodrich は2000年11月、Performance Materials事業を投資家グループに14億ドルで売却すると発表した。
同事業は2001年2月にPMD Groupとして独立し、同年7月に Noveon Incと改称した。
BFGoodrichはこれにより航空・防衛産業企業への変身を完了した。
現在、Lubrizolは潤滑油・添加剤の Lubrizol Additives 部門と、Lubrizol Advanced Materials部門を持っている。
Lubrizol Advanced Materials部門は次の製品を扱う。
(1) Noveon Consumer Specialties
personal care、home care、pharmaceutical、pet food formulations
(2) TempRite Engineered Polymers
Chlorinated polyvinyl chloride (CPVC) resins and compounds
(3) Estane Engineered Polymers
熱可塑性ウレタン樹脂
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
最近のコメント