2019年6月アーカイブ

トランプ大統領と習近平国家主席は6月29日、大阪市内で会談した。

両首脳は昼前から約1時間にわたって会談。通信機器最大手、華為技術(Huawei)への米商務省による制裁や、北朝鮮の核開発問題を巡っても意見を交わしたとみられる。

会談では、習主席が、「中米関係の発展に関する根本的な問題について意見を交わし、協調、協力、安定を基調とした中米関係を推進したい。」「中国と米国は協力すれば共に利益を得られ、戦えば共に傷つく」とし、「両国関係を発展させる根本的な問題について意見を交わしたい」と語りかけた。

トランプ大統領は通商協議について「少しつまずいたが、我々はまた近づいている。きっと公正な合意がまとめられる。ものすごくいい成果を期待している」「公正な貿易を実現できれば、米中は歴史をつくることができる」と応じた。

会談で、中米が平等と相互尊重に基づいて経済貿易協議を再開することで合意した。米側は、中国の輸出品に再び新たな関税を上乗せしないと表明、両国の経済貿易チームは具体的な問題について討議する。

会談終了後、トランプ大統領は「素晴らしい会談だった。期待以上といえるだろう。協議は再開する」と記者団に語った。
米中首脳会談に続いて開いたトルコとの首脳会談の冒頭で、「(両国関係は)再び軌道に戻った」と語った。


トランプ大統領はHuaweiへの事実上の禁輸措置に関連し「アメリカ製品をこれからも売ることを認めていきたい」と述べ、米企業によるHuaweiへの部品販売などを認める考えを示した。
「大量の米国製品がHuaweiのさまざまな製品に使われており、取引を続けてもかまわないと思っている」と述べた。「安全保障上問題がないところは、装備・設備などを売ってもいい」とし、この問題については「今後どうなるのか見極めたい」と語った。

付記

米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は6月30日、Huaweiに対する制裁緩和について、禁輸対象リストに同社を残し続けると明らかにした。

「一般的な恩赦ではない」と説明した。米商務省は「Entity List」に引き続き掲載する。米国製品などを輸出する企業に対しては、汎用品の取引にのみ輸出許可を出す。


ーーー

トランプ大統領はこの後、韓国を訪問するが、ツイッターで出来れば北朝鮮の金委員長に挨拶したと述べた。

After some very important meetings, including my meeting with President Xi of China, I will be leaving Japan for South Korea (with President Moon).
While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!

ジャパンディスプレイ(JDI)は6月27日、中国の嘉実基金管理から合計522億円のコミットメントレターを受領したと発表した。
JDIの需要家の米国のAppleからの支援の出資100百万ドルを含んでいる。

但し、この総額はこれから出資を募るもので実現するかどうかは未定である。また中国政府からの介入がないことを前提にしている。

この時点では、香港のOasis Management からの150百万ドル については連絡なしとしていたが、翌28日に出資決定の通知を受領したと発表した。
いろいろの条件がついている。

嘉実基金管理は不足の場合、追加で200百万ドルをだすとしていたが、これについては触れていない。

全部がうまくいっても、85~117億円がまだ不足する。

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JDI は6月18日、都内で株主総会を開いたが、その席で、台湾勢が抜けた穴を埋めるため、香港ヘッジファンドのオアシス・マネジメントなどと「800億円はきちんとした形で調達できるよう交渉している」と述べた。いずれも6月27日までに機関決定する予定としていた。

2019/6/20 ジャパンディスプレイ 株主総会

その時点での計画は以下の通り。

中台連合の支援
 ①出資  420億円
 ②CB-1  180億円
 小計   600億円
 ③CB-2  200億円
 合計    800億円

台湾のTPK Holding は離脱(通知済)
同じく
Cosgrove Global も離脱予想(未通知)→その後離脱通知

新たに香港のOasis Management が150百万ドル(160億円)

中国の嘉実基金管理
 当初の190百万ドル(210億円)+200億円を、
200百万ドル(220億円)+200億円に。

 不足の場合、更に200百万ドル(220億円)

以上により、合計800億円


JDIは通知期限の6月27日夜、以下の発表を行った。

1) 中国の嘉実基金管理から下記のコミットメントレターを受領
  ① 200百万ドルを300百万ドル(322億円)に変更
     追加の100百万ドルはAppleから支援を受けて行うもの

  ② 200億円

  合計 522億円だが、いずれも投資家から出資を募るもので、出資を確保できない可能性がある。
  また、いずれも、中国政府からの介入がないことを条件としている。

2) Oasisについては連絡なし。

3) 当面必要な①出資+②CB-1の600億円に対し、現在の手当ては322億円で278億円不足、OASISが参加しても 117億円不足で、鋭意協議中。

4) 先にAppleから支援があったが、更に追加された。

前回:前受金に対する債権相殺を2年間にわたり、半額繰り延べ
今回:3/4に相当する金額を繰り延べ


6月28日に以下の追加発表を行った。

1) Oasisから、150百万米ドル(約161億円)~180百万米ドル(約193億円)の出資の内部の機関決定がなされた旨の報告を受けた。

2) 下記の条件付き:

JDIの主要顧客(Apple)から製品の購入中止又は購入量の大幅な削減の検討又は決定に関する通知を受けていないこと、
出資が完了するまでの間において、JDI株式の終値が30円を下回ったことがないこと
③ 今回の調達資金(Oasis分を含む)が
600億円以上であること

まとめると、次の通り で、85~117億円がまだ不足する。また、これらはいずれも条件付きであり、実際に払い込みが済むまでは安心できない。
また、Oasisの条件の、Appleからの購入量の削減については大丈夫だろうか。白山工場の一時停止
(今後の休止の可能性も)などからみると、Appleから購入量の大幅削減の通知を受けているのではないのだろうか。

当初案

2019/6/17 JDI 発表

6/27 JDI発表

状況 あり得る
ケース
台湾 TPK Holding
宸鴻集団
230百万ドル
(250億円)
離脱 通知受領
Cosgrove Global 130百万ドル
(140億円)
機関決定の通知 未受領
  →
離脱 通知
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
190百万ドル
(210億円)
190百万ドルについては200百万ドルに増
200百万ドル
(220億円)

自社 200百万ドル
Apple 100百万ドル
 (計 322億円)

(CB-2)     200億円 200億円についても機関決定。 200億円

200億円
不足の場合、更に出資 200百万ドル
(220億円)

未定

香港 Oasis Management 離脱社代替 150百万ドル  150百万ドル
(160億円)
150180百万米ドル
(約161億円~193億円)
合計 800億円 800億円 683億円~715億円



付記  7月12日発表

 1) Harvestは追加で100百万ドル出す。
 2) 為替レートなどで合計が800億円未達の場合、差額をOasisが出す。
 3) 
臨時株主総会を8月29日を目処に開催


米製薬大手AbbVieは6月25日、 しわ取り薬「Botox」のアイルランドの製薬会社 Allerganを約630億ドルで買収すると発表した。

Allerganの株主は1株当たりAbbVie株 0.8660株と現金120.30ドルを受け取る。1株当たりの買収額は合計で1株188.24ドルと、前日の終値に45%上乗せした水準となる。

債務を含む買収総額は830億ドル。 新しいAbbVieは旧AbbVie株主が83%、Allergan株主が17%所有することとなる。

AbbVie は、主力の関節リウマチ治療薬「Humira」が欧州で安価の後発薬の競争にさらされ、主要市場の米国では2023年に特許が切れることから、ポートフォリオの多様化を迫られていた。

Humira(Adalimumab:ADA)は遺伝子組換えによって作られたヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤。

米国で2002年に、日本では2008年に承認され、 世界80カ国で約37万人の患者に投与されている。
TNF阻害薬としては「レミケード」、「エンブレル」に次いで3剤目の生物学的製剤で、「レミケード」同様に抗体によってTNFαの働きを阻害する。関節で過剰に産生されているTNFαの働きを阻害する事によって関節リウマチの痛みの改善だけでなく、関節破壊進行を抑え る。

買収により、Humiraの比重が薄まるとともに、成長分野の製品を取り込む。

ーーー

AbbVie Inc.は米国の製薬会社で、2013年初めに、米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生した。

同社はアイルランドの製薬大手Shire Pharmaceuticalsに買収提案をしていたが、Shireは2014年7月、買収で合意した。

しかし、AbbVie は2014年10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の
抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断した。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる    

AbbVie は2015年3月4日、同業のPharmacyclics Inc を210億ドルで買収することで合意したと発表した。

これにより、AbbVie はPharmacyclicsの血液癌治療薬 Imbruvica ®(一般名:ibrutinib)を手に入れる。

AbbVieは
世界ナンバー1のブロックバスターの関節リウマチ薬Humira ®に依存している (2014年の総売上高の60%を占める) が、2016年の特許切れにより2017年頃から販売の減少が予想されており、今回の買収で癌分野へパイプラインを広げ、これに備える。

2015/3/9 米国の製薬会社 AbbVie、同業のPharmacyclics Inc を210億ドルで買収

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Allergan はWatsonによるActavis、ActavisによるAllerganと、二度にわたる買収で、いずれも買収された会社の社名を新社名にしている。

本社を税率の低いアイルランドに移すため、Pfizerが買収したが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなり、断念した。
最近、Carl Icahnが同社の株を大量に取得したとされる。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦
2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収
2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

Allergan Plc は2016年9月20日、バイオ医薬品大手の米Tobira Therapeutics Inc. を最大16億9500万ドルで買収することで合意したと発表した。

2016/9/23 Allergan、バイオ薬大手のTobira Therapeuticsを買収 

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新しいAbbVieの状況は次の通り。(2018年ベース:百万ドル) 

旧AbbVie 旧Allergan 新AbbVie
売上高 32,753 15,787 48,540
うちHumira 19,936 19,936
  比率  61% 41%
営業損益 6,383 -6,248
純損益 5,687 -5,143

Allerganの2016年の純損益は 14,695百万ドル

Humiraの比重が薄まるとともに、成長分野の製品を取り込む。

新会社の主要製品:

このうち、旧Allergenの製品は次の通り。


米国から攻撃を受けている中国のHuawei が
米モバイル通信大手の
Verizon Communications に対し、10億ドル以上の特許使用料の支払いを要求していることが分かった。


米紙などが6月12日、消息筋の言葉を引用して、「Huaweiの知的財産権担当役員が2月にVerizonに書簡を送 り、特許料を支払うべきだと通知した」と報じた。両社の代表が6月初めにニューヨークで会い、問題となった一部の特許について議論したことも分かった。

HuaweiはVerizonに対して、コアネットワーク装置、有線インフラ、モノのインターネット技術など、自社の230件以上の特許使用料の支払いを要求しており、全体特許使用料は10億ドル以上に上るという。


一般に特許権者はいつでも特許料の請求をできる。HuaweiはVerizonが自社特許を使用していることを認識していたが、ビジネス上の理由でこれまで請求していなかった。

HuaweiがVerizonに支払い要求の通知をしたのは、米司法省がHuawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した後である。

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米上下両院は2018年8月、HuaweiやZTEなど計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

カナダ司法省は2018年12月1日、Huawei の創業者 任正非の娘である孟晩舟副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。

2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴


Huaweiは3月7日、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる「2019年度米国防権限法」が米国の憲法違反だとして、テキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した。

米政府はこの後、Huaweiへの攻撃を強めている。

Trump 大統領は5月15日、米企業が安全保障上リスクがある企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。名指しはしていないが、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。

米商務省は同日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリストに中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)を追加したと発表した。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

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米国政府の圧力で各国で次世代通信規格「5G」のネットワークからHuaweiを排除する動きが広がっているが、Huaweiなどの中国企業が開発した技術が5Gネットワークの中心である。

Wall Street Journalによると、Huaweiは5G分野で、巨額の研究開発費と、5Gの基本構造を策定する世界各地の会議への積極的な貢献で強力な存在となっている。

5G関連で主要メーカーが保有する標準必須特許(Standard Essential Patents)は次の通り。(IPリティックス:2019/2/4現在)

社名 件数
Huawei 中国 1,529
Nokia フィンランド 1,397
Samsung 韓国 1,296
中興通訊(ZTE) 中国 1,208
Ericsson スウェーデン 812
Qualcomm USA 787
LG Electronics 韓国 744
Intel USA 550
電気通信科学技術研究所(CATT) 中国 545
シャープ 日本 468

広東欧珀移動通信(Oppo)を加えると、5Gに関する全標準必須特許のうち中国勢は36%を占める。

中国が保有する特許には5Gの端末の構成部品、基地局、自動運転車の技術などあらゆる製品に関わる技術が含まれている。専門家によると、世界の通信会社はHuawei製品が禁止される可能性のある地域で事業を行っている企業も含め、5Gネットワークを導入する際にはこの技術の使用許諾を得るためにHuaweiにロイヤルティーを支払わなければならない。


Huaweiが5G特許で反撃に出たのを懸念し、共和党のMarco Rubio上院議員はツイッターで、「Huaweiは特許ゴロになった。特許で米国に報復しようとしている」と述べた。

Huawei has become a patent troll. This is an attempt by them to retaliate against the U.S. by setting the stage for baseless, but costly, patent claims.

Huawei is using the tactics of patent trolls to attack U.S. companies in retaliation for Trump administration national security actions against them.
We should not allow China government backed companies to improperly use our legal system against us.

上院議員はHuaweiが米国で特許料を取ることができないようにする法案を提出した。米国特許商標庁が認めた特許に関し、米国のWatch lists に載った企業に対しては法の下での救済を制限するというもの。

これを聞いてHuaweiのCEOはCNBCに対し、「こんな法律が通れば法治国家としての米国のイメージが傷つく」と述べた。

物流大手FEDEX CORPORATION(旧称 Federal Express :FedEx) は6月24日、米商務省を提訴した。

商務省が定めた禁輸リストにより、毎日輸送する「大量の貨物を監視すること」を強いられていると訴えている。

https://about.van.fedex.com/wp-content/uploads/2019/06/FedExComplaintAsFiled.pdf

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米商務省は5月15日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

輸出管理法のに基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にHuawei を追加した。

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

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訴状の概要は以下のとおり。

FedEx は毎日、約1500万の荷物を引き受けている。そのため、45万人のチーム、2150の拠点、13の航空機の拠点、679機の飛行機、650の空港、39の地上拠点、600の地上設備、18万台の自動車を持ち、220か国以上にわたり事業を行っている。

FedExのような輸送業者は、(HuaweiをEntity List に載せた)Export Control Reform Act of 2018 とExport Administration Regulationsに縛られている。

それによると、荷物の送り主か受取人が "Entity List" に載っているかどうかを調べるため、発送前に名前と住所をチェックすることが必要となる。

しかし、この法律では、FedExのような輸送業者にはできないことを求めている。例えば、許可なしでは輸出できないモノを含んでいるかどうかを確認することを求めている。荷物が許可が必要かどうかなど、一般の輸送業者には判断不能である。

しかし、この法律は輸送業者に需要家が法律に違反していないかどうかをチェックする責任を負わせており、やらないとペナリティを課すこととなっている。
(CEOによると、
1日に扱う貨物は約1500万個にもなるが、一つでも違反が発覚すれば、1個あたり25万ドルの罰金を支払わねばならないという。)

毎日、何百万もの荷物の中味をチェックさせられる。実際にも、経済的にも、多くの場合に法律的にも不可能なのに。
需要家は荷物を封をして送ってくる。仮にやればプライバシー違反である。しかも免責条項はない。

以下、詳細に記載した後で、裁判所に以下のことを求めている。

a) 商務省が原告に本命令をすることを永久に禁止

b) Export Administration Regulationsの規定を原告に適用するのは違法であると宣言すること。

c) 原告にコストと費用(弁護士費用を含む)を支払うこと。

d) 適当と思われる追加の救済策

ーーー

Huaweiは5月24日、FedExを利用して日本から中国へ送った同社の小包2つが本来の目的地に届かず、米国へ送られていたことを明らかにした。
FedExはほかにも、ベトナムから香港とシンガポールのHuawei支部に送られることになっていた小包2つも米国に転送しようとしており、そのうち1つはすでに回収されたが、もう1つは未回収だという。Huaweiはこれら4つの小包には書類しか入っておらず、技術関連の情報は入っていないとしたと伝えた。

FedExはこの誤配送を謝罪し、「不注意に誤配送」されたことを「後悔している」と表明した。同社はこの出来事は外部からの圧力によるものではないとした。

中国国営通信の新華社は6月1日、中国当局が調査に乗り出すことを決めたと伝えた。調査理由について、中国の顧客の「合法的な権益を著しく損ねた」としている。

中国商務省は5月31日に、中国企業の正当な利益を損ねる外国企業をリスト化する方針を示しており、FedExがこれに載ると推測されている。

ーーー

FedExは6月23日、もう一つのミスを発表した。ルールを読み誤った過剰反応と見られる。

技術情報誌の記者がHuawei P30 スマホを米国の同僚に発送した。FedExはこれを発送者に返送し、米国とHuawei及び中国政府との問題で輸送できないと伝えた。

その後、FedExは公式に、Huawei製品はHuaweiとブラックリストに載っているHuaweiの子会社以外には輸送すると述べた。

Huaweiは、同社は現在、FedExもUPSも利用していないと述べ、同社製品を輸送しないのはFedExの権利にはないとし、報復すると述べた。

中国の外務部は詳細な説明を求めている。


米国は6月24日、イランへの大規模な追加制裁を発表した。ハメネイ師のほか、同師直属のイラン革命防衛隊の幹部8人を対象に指定した。国家元首に制裁に科すのは極めて異例。

指定されると米国での保有資産が凍結され、米企業との取引も禁じられる。制裁対象と取引をした第三国の企業や人物も米国の制裁対象になる可能性があり、イランと外国企業の取引を難しくする効果がある。

ポンペオ米国務長官は「テロを誘発し、核兵器や弾道ミサイルを開発する資金源を絶つ」と狙いを説明した。

トランプ大統領は、制裁によりハメネイ師と同師の組織は金融リソースにアクセスできなくなると説明。「イランの最高指導者は同政権による敵対的行為に究極的に責任を負う」と述べた。

イラン革命防衛隊の幹部8人は、弾道ミサイルプログラムや国際海域での商船に対する「嫌がらせや妨害工作」など、「地域での悪意ある活動」を指揮したとしている。

トランプ大統領はツイッター(後記)の最後でこう述べている。

The U.S. request for Iran is very simple - No Nuclear Weapons and No Further Sponsoring of Terror!

圧力を強めて交渉のテーブルに着くよう迫るが、イラン側は対決姿勢を一段と鮮明にしている。


ホルムズ海峡でのタンカー攻撃を受け、緊張が高まっているが、トランプ大統領はツイッターで、「なぜ米国が他国のために無報酬で航路を守っているのか。 中国や日本などの国々は、いつも危険な旅をしている自国の船舶を守るべきだ」と述べた。

「米国は世界最大のエネルギー生産国になった。そこにいる必要すらない」としている。

China gets 91% of its Oil from the Straight, Japan 62%, & many other countries likewise.

So why are we protecting the shipping lanes for other countries (many years) for zero compensation.

All of these countries should be protecting their own ships on what has always been a dangerous journey.

We don't even need to be there in that the U.S. has just become (by far) the largest producer of Energy anywhere in the world!

The U.S. request for Iran is very simple - No Nuclear Weapons and No Further Sponsoring of Terror!


しかし、米国は、ホルムズ海峡に依存する原油輸出国のサウジアラビアを保護する義務を持っている。

1971年8月15日、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止した。

ニクソンはキッシンジャーをサウジに派遣し、以下の交渉を行わせた。

・米はサウジを防衛する。どんな兵器も売る。サウジ王家を未来永劫に保護する。   
・見返りに
①サウジの石油販売を全てドル建てにする。
      ②サウジの貿易黒字で米国財務省証券を購入する。

サウジはこれを受け入れ、1974年に調印された。
その後、OPECの他のメンバーもドル建て取引を採用し、ドルが世界通貨となった。

これが「ペトロダラー」システムで、これまで金との兌換が必要なため、無制限なドル印刷は出来なかったのに対し、ほぼゼロコストでドルを無制限に印刷し、輸入決済に充てることが出来るようにな った。

2015/8/10 "The Colder War"


発言を受け、与党・共和党のリンゼー・グラム上院議員は6月24日、ツイッターで「海上航路での安全な航行は常に安全保障上の国益だ」と強調した。関係国の負担増は必要としつつも米国も安全確保に関与を継続すべきだとの考えを示した。

ポンペオ国務長官も、中東地域の航行の自由を「最重要だ」と強調し、米国の関与継続が必要との認識を示した。

ーーー

米ブルームバーグ通信は6月24日、トランプ大統領が最近、日米安保条約破棄の可能性について、私的に言及したと報じた。

関係者3人の話として伝えたところによれば、トランプ氏は有事の際に米国が日本を支援する義務を負う一方、日本側にその義務はないと主張し、日米関係をこれまでより相互的なものとすることを望んでいるという。

付記 Trump大統領は6月26日、テレビのインタビューで日米安保に不満を表明した。


If Japan is attacked, we will fight World War III.
We will go in and protect them with our lives and with our treasure.
We will fight at all costs, right?

But if we are attacked, Japan doesn't have to help us at all.
They can watch on a Sony television the attack.
So, there's a little difference, OK?

米中貿易摩擦が高まりを見せるなか、Appleは6月17日、Robert Lighthizer 米国通商代表に対して公開書簡を送付した。

米国が中国からの輸入品 約3000億ドルに対し最大25%の関税をかける第4弾制裁に反対するもの。


内容は次の通り。

今回の案ではAppleの主要製品( iPhone, iPad, Mac, AirPods, AppleTV)の全てと米国で修理に使用する部品やバッテリーが含まれている。また、モニターやキーボードのようなアクセサリーも含まれている。

我々は政府に対し、これら製品に関税を掛けないよう、強く要請する。

Tariff Code Apple Products
8517120050 iPhone
8471300100 MacBook, iPad, iPod Touch
85176200 Apple Watch, AirPods, HomePod, BeatsWL, AirPort, Time Capsule
8471490000 iMac
8517700000 iPhone repair parts
8525501000

8528520000
8471602000
8518302000
9113908000
AppleTV

Computer Monitors/MB Monitor Modules
Keyboards
Wired headphones/earphones
Wired speakers
8507600020 Batteries, battery cases


(Appleの経済的貢献)

Appleは米国で最大の雇用者の1つである。直接従業員、製造・販売面での協力会社の従業員、成長するアプリケーション分野で生計を立てる米国人を含めて50州全てで200万以上の雇用に責任を持っている。

2018年に減税案が通り、我々は米国経済に対し、5年間で3500億ドル以上の直接貢献を行う意向を表明し、それを実行しつつある。いくつかの新しい拠点を開き、米国で新たな雇用をつくった。

Appleはまた、政府への米国最大の納税企業であり、さらに地方の固定資産税やSales tax、従業員の税で毎年数十億ドルを払っている。

最後に、Apple製品は米国の家庭、学生、企業、政府組織、学校、病院などで、連絡、教育、健康改善、創造などのために使われている。

(関税の影響)

Apple製品への米国の関税はAppleの米国経済への貢献を減らす結果となる。

米国の関税は、Appleのグローバルな競争力への重荷となる。グローバル市場で競合する中国企業は米国市場ではあまり活動しておらず、米国関税の影響を受けない。米国企業以外の競合企業も同様である。このため、米国の関税は我々のグローバルな競争相手に塩を送ることとなる。

(結論)

我々はこの関税案を進めないよう、強く要請する。

ーーー

Appleは、関税が掛けられた場合、値上げするのかどうかについては触れていない。

政府への関税取り止め要請とは別に、Appleは主要取引先に対し中国での集中生産を回避するよう要請したという。日本経済新聞が報じた。

米中貿易戦争の激化と中国の人件費高騰を受けリスクを分散する目的で、Apple向けの中国生産のうち15~30%を海外に分散するよう検討を促した。
Appleの調達額は10兆円を超え、同社製品の9割超は中国で生産されているとされる。

日経アジアレビューによると、アップルから要請を受けた主要取引先は、iPhoneの組み立てを行っている台湾の鴻海精密工業、和碩聯合科技(Pegatron)、緯創資通(Wistron)のほか、MacBookを生産する広達電脳(Quanta Computer)、iPadを生産する仁宝電脳工業(Compal)、 AirPodsを生産する英業達(Inventec)など。

メキシコ、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが有力な候補地に挙がっている。

ーーー

Dell Technologies、HP、Intel、Microsoft の4社は6月17日、USTRに共同で書簡を送った。

米国の主要イノベーターとして知的財産保護の重要性を認識しており、アンフェアは知財慣行への政府の対応には感謝するが、ラップトップコンピューターやタブレットに対する今回の関税引き上げ案は中小企業、幅広い消費者、デバイスの製造業者を含めた多くの米国企業を不相応に傷つけることになる。同時に、それらへの関税はUSTRが是正しようとしている中国の貿易慣行を是正することにならず、逆に、米国の技術的リーダーを傷つけ、革新を行い、グローバル市場で競争する力を弱めることとなる。

このため、これら製品を除外することを要請するとし、以下の背景説明をしている。

I.  4社は主導的イノベーターであり、雇用を創っている。

II.  関税は米国の企業、消費者、学校を不相応に傷つける。

米国のラップトップメーカーは米国消費者を満足させるため、中国に頼っている。

 1) 消費者への害

Consumer Technology Association の試算では、米国の価格は少なくとも19%(平均価格のラップトップで1台 120ドル程度)上昇する。
価格に敏感な消費者は購入を止め、古いものを使ったり、使うのを止めるかも知れない。

予算が決まっている学校は大変だ。学校での1人1台がやれなくなる。

 2) 中小企業への害

米国には3千万の中小企業があり、米国の雇用の半分を占めるが、業務の効率化のためラップトップを使っている。

 3) イノベーションへの害

ラップトップのメーカーも著しく傷つけ、米国が技術面で引っ張っていく能力を害する。

関税をフルには負担できず、値上げせざるを得ないが、値上げで需要が減少する。

長期的に革新能力を失い、米国の技術面でのリーダーシップを維持できなくなる。

米国以外の競争相手は、米国市場でのシェアが少ないため、被害も少なく、相対的競争力が増すことになる。

III. 関税は中国のアンフェアな知財慣行の是正に役立たない。


米商務省は6月21日、輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にスーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加した。

付記

米商務省のBureau of Industry and Security (BIS) は8月13日、中国国有の原子力発電最大手、中国広核集団 とその子会社をEntity List (事実上の禁輸リスト)に加えると発表した。

米国の原子力技術を軍事転用しているとして、米国製品の販売を阻止する。原発は中国がハイテク産業育成策「中国製造2025」で掲げる重点分野 で、米政権は禁輸措置などを駆使して中国ハイテクへの締め付けを強めている。

Entity Listに載ったのは下記の各社:

China General Nuclear Power Corporation (CGNPC) 別名China Guangdong Nuclear Power Corporation
China General Nuclear Power Group
China Nuclear Power Technology Research Institute Co. Ltd.
Suzhou Nuclear Power Research Institute Co. Ltd.



Entity
List 対象は、これまでは、大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用したのは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)、本年5月15日の華為技術(Huawei)の2つである。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

実は、2015年2月18日に中国のスーパーコンピューター関連4社が、米国製の部品を使ったスパコンで核爆発演習、兵棋演習をサポートしているとして指定されている。

National Supercomputing Center Changsha (NSCC-CS)、National Supercomputing Center Guangzhou (NSCC-GZ)、
National Supercomputing Center Tianjin (NSCC-TJ)、
国防科技大学(National University of Defense Technology:NUDT)

このうちの 国防科技大学(NUDT) は、Entity List に載り、禁輸対象になっているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入しているとされ、今回湖南国防科技大学が追加指定された。

今回、中国政府系のスパコン大手の曙光信息産業のほか、米半導体大手Advanced Micro Devices (AMD)と合弁を組む天津海光先進技術投資有限公司(THATIC)など計5社と関連会社が指定された。

商務省は、スパコンが「核爆発のシミュレーション」などの軍事目的に利用されていると指摘。無錫江南については、中国人民解放軍の傘下にある研究施設が所有者で「中国軍の近代化を使命としている」とした。

AMDの合弁会社 Hygon と HMC もリストに含まれている。

米国は核開発への影響を懸念して2015年にXeonプロセッサの中国での販売を禁止し、さらにCPUの設計開発製造に関する技術の中国への移転にも制限をかけている。
そのため、単純に中国内でx86互換CPUを製造するのは困難。

AMDとTHATICは合弁で海光微電子技術有限公司(HMC)と成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)を設立。まずHMC(AMDが51%出資する子会社)にx86に関連する知的財産の利用権を与え、さらにHMCがこの知的財産権の利用ライセンスをHygonに与えてHygonがチップを設計。続いてこの設計をHygonがHMCに売却し、HMCがチップを生産。これをHygonが販売するという形でこの問題を解決したという。
HMCはAMDが51%出資しておりAMDの傘下企業と見なされるため、こういったスキームが可能になった。

しかし、今回はこれらJV2社も指定された。AMDは今後両社に技術を供与できない。

今回のリスト

天津海光先進技術投資有限公司(THATIC) Chengdu Haiguang Integrated Circuit 成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)
Chengdu Haiguang Jincheng Dianlu Sheji
Chengdu Haiguang Microelectronics Technology 海光微電子技術有限公司(HMC)
Chengdu Haiguang Wei Dianzi Jishu
Higon Higon Information Technology
Haiguang Xinxi Jishu Youxian Gongsi
THATIC
Tianjing Haiguang Advanced Technology Investment
Tianjing Haiguang Xianjin Jishu Touzi Youxian Gongsi
Sugon(曙光信息産業)
 中国政府系のスパコン開発大手
 中国科学院が出資
Dawning
Dawning Information Industry
Sugon Information Industry
Shuguang
Shuguang Information Industry
Zhongke Dawn
Zhongke Shuguang
Dawning Company
Tianjin Shuguang Computer Industry.
無錫江南計算技術研究所
(
Wuxi Jiangnan Institute of Computing Technology)
Jiangnan Institute of Computing Technology
JICT
(既に指定)
 
国防科技大学(NUDT)
(追加)
 湖南国防科技大学


無錫江南計算技術研究所のスーパーコンピューターの「神威太湖之光」は、6月17日発表のスパコン計算速度の世界ランキングで3位に入った。
首位は米のOak Ridge National Laboratoryの「Summit」、2位は同じく米のLawrence Livermore National Laboratoryの「Sierra」で、日本からは産業技術総合研究所の「AI橋渡しクラウド(ABCI)」の8位が最高。東京大・筑波大の「オークフォレスト・パックス」は16位、理化学研究所「京」は20位だった。


国防科技大学(NUDT) は既に指定されているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入しているとして、湖南国防科技大学を追加指定した。


今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出、再輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、中国などへの輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
(イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上)


次期英首相を選ぶ保守党党首選は、ジョンソン前外相とハント外相が決選投票に駒を進めた。

議員による選挙で、最低 8人の推薦を受けて立候補した10人のうち得票数が17票未満の候補がふるい落とされ、2回目は得票33未満が落とされる。その後はそれぞれ最下位を落とし、最終的には候補を2人に絞り込 む。

その後、党員の郵便による決選投票で7月22日の週に新党首を選出する。

付記 新党首は7月23日に発表、首相就任は7月24日午後。

議員の投票結果は次の通り。(Fは女性)

候補 6/13 6/18 6/19 6/20 決戦
Boris Johnson 前外相 メイ首相の離脱協定に反発して外相を辞任 114 126 143 157 160
Jeremy Hunt 外相 国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派 43 46 54 61 77
Michael Gove 環境相 メイ首相の離脱協定を支持 37 41 51 59 落選 75
Sajid Javid 内務相 残留派 → 欧州懐疑派 23 33 38 落選 34
Rory Stewart 国際開発相 残留派→ Brexitを受け入れ 19 37

落選

27
Dominic Raab Brexit担当相 国民投票の前からEUからの離脱を訴え 27

落選

30
Matt Hancock 保健相 メイ首相の離脱協定を支持 20

撤退

Andrea Leadsom (F) 前下院院内総務 EU離脱派の中心的存在、政府方針に反対し辞職


11
Mark Harper 元院内幹事長 残留→ メイ首相の離脱協定支持 10
Esther McVey (F) 前雇用・年金相 離脱派。メイ首相の離脱協定に反発し辞職 9


ジョンソン氏とハント氏は全国16万人の保守党員に向け、向こう1カ月かけて選挙活動を展開する。郵送による投票で次期党首を選ぶ。

保守党サイトによる党員への世論調査では62%がジョンソン氏を支持。ハント氏への支持は11%にとどまる。情勢に大きな変化がなければ、強硬離脱派のジョンソン首相が誕生する確率が高くなっている。

ジョンソン氏は10月31日の期限までに離脱を果たす決意をこれまでに示しており、離脱期限を再度遅らせるくらいなら合意なしの離脱を望むと言明してきた。
ただ、ここ数日は言い回しを軟化させ、18日の討論では10月末での離脱を保証することを拒んだ。


ハント氏は秩序立った離脱のためなら離脱期限の延期もいとわない考えだが、EU離脱の撤回よりは合意なしの離脱を選ぶと言明している。

ーーー

党首(首相)が決まってから、離脱 の具体案を決定し、(当然メイ首相がEUと協議して決めた離脱協定案とは異なるため、)新たにEUと協議する必要がある。
(EUは協定案が最終であり、修正には応じないとしている。)

そのうえで、下院で承認を得る必要があるが、党内の反対派と野党の反対で簡単に通るとは思えない。

仮に合意なき離脱となれば、EUは監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念しており、アイルランド共和国と英国の北アイルランドとの国境を越える貿易に関税をかけ、通関手続きや食品・動物の検疫を実施するために対策が必要としている。

しかし、再度国境管理が行われると、1998年4月10日のベルファスト合意(聖金曜日協定)で収拾した北アイルランド紛争の再発が懸念される。

このため、なんらかの対策をEUと合意する必要がある。

2019/4/6 合意なき離脱の場合のアイルランドの扱い 

離脱期限の10月末が近づくなか、5月24日のメイ首相の党首辞任(6月7日付)の表明後、2か月もかけて次期党首(=首相)を選ぶというのはどういうことだろうか。

ブラジルのコングロマリットでゼネコン最大手のOdebrecht SA (Braskemの親会社)が985億レアル(約2兆7,580億円)の負債を抱えて、6月17日にブラジルの法的再建手続きである裁判上の再生手続き(Recuperacao Judicial)の申し立てを行った。

ブラジル史上最大の負債額と報じられている。再生手続き開始が決定されれば、同社は60日以内に再生計画を提出しなければならない。

Odebrecht グループは2014年に政治家や国内大手企業を巻き込む汚職事件「ラバ ・ジャット」に加担していたことが発覚した。2014年以降、業務の一部が停止に追い込まれ、多くの失業者を出すなど国内経済への影響が大きかった。

ブラジル連邦警察2014317日に国営石油公社Petrobrasをめぐる汚職事件への捜査通称ラバジャット捜査Operação Lava Jato=Car Wash)を開始した。

同事件ではPetrobrasが長年にわたって常習的に取引先企業との契約で水増し請求をさせそこから捻出した裏金を政党や有力政治家に繰り返し渡していたとされ政財界を巻き込むブラジル史上最大の汚職事件となった

Odebrecht は贈賄側として軒並み汚職事件に関与したとされ201567月にはOdebrecht および そのCEO起訴された2008年からOdebrechtの経営に当たっていた Marcelo Bahia Odebrechtは19年の懲役刑を受けた。

さらに逮捕された幹部が司法取引に応じて行った証言から中南米等諸外国の大統領有力政治家への贈賄も明らかになり汚職の構図が国境を越えて根深いものであることがわかった

20161221日に米国司法省が報告を発表しOdebrecht および子会社Braskemなどが2001~2016年にわたり中南米ブラジルアルゼンチンベネズエラコロンビエクアドルペルーパナマグアテマラメキシコドミニカ共和国フリカのポルトガル語圏アンゴラモザンビーク) の計12か国において100以上総額33.4億ドルに及ぶ公共事業受注の便宜を図ってもらう見返りとして少なくとも総額78,800万ドルの賄賂を渡していたことが明らかになった 。

Odebrechtは米国で贈賄工作を行いスイスの銀行口座を用いて裏金の出入金を繰り返していたことから米国の外国汚職防止法Foreign Corrupt Practices Actに抵触するとして摘発された 。
同社は米国司法省と35.6億ドルOdebrecht 26.0億ドルBraskem 9.6億ドルの制裁金を20年かけて米国ブラジルスイスの司法当局に支払うことを定めた起訴猶予合意を締結した。

 正大学経済学季報第67巻第4 オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響  


Odebrecht は1944年創業で、創業50年の1994年には21カ国で事業を行い、従業員3万4千人の企業に成長 、2013年には従業員19万3千人を抱えるに至った。

だが、事件により、事業契約見直しや罰金徴収など、様々な形で影響を受け、現在の従業員は4万8千人 に減っている。

グループ内での貸し借りも含めた負債が985億レアルに上り、経営破綻に陥った 。諸銀行への負債は510億レアルで、内145億レアルはBraskemの株式が担保だという。

再生申請で交渉の対象となる負債額は836億レ アルで、この額には司法取引で命じられた罰金は含まれていない。

Odebrecht や債権者の銀行の多く は再生申請回避の意向であったが、連邦貯蓄銀行が負債取立を強行しようとし、民事再生申請となった。

今年5月には、子会社で砂糖・エタノール製造のAtvos Agroindustrial Participacoes SAが民事再生を申請した。
石油・ガス関連の
Ocyan(旧称 Odebrecht Oil & Gas)は司法外手続きで50億レアルの負債返済に関する合意を成立させたが、6月にはLyondellBasell が昨年来交渉してきたBraskem買収を取り止め(後記)、経営建て直しへの道を狭めた。

なお、今回の再生申請には下記の子会社等は含まれていない。

Braskem、建設事業のOEC(旧称Odebrecht Engineering & Construction)、石油のOcyan(旧称Odebrecht Oil & Gas)、造船のEnseada、物流のOdebrecht Transport 、住宅建設の Incorporadora ORなど。

ーーー

Braskemの株主は次の通りで、OdebrechtとPetrobrasが共同で意思決定をすることとなっている。 

議決権 全体
Odebrecht 50.1% 38.3% 共同意思決定
Petrobras 36.1% 36.1%
その他 2.9% 25.6%

「その他」に議決権 0.96%をもつ双日が含まれる。

国営石油会社Petrobras SAは2016年1月に Braskem の持株 36.1% を売却することを決めた。

Petrobrasは1300億ドルに上る負債を圧縮し、資金繰りを確保するため、2016年に140億ドルの資産売却を検討していた。

問題は、Braskemの主株主のOdebrecht とPetrobrasが意思決定を共同で行っており、Petrobrasの持分売却の条件に、Odebrechtが売却先をパートナーとして受け入れることが含まれており、Odebrechtが決定を保留していることで売却交渉が止まったままになった。

2016/3/21 Petrobras のBraskem 売却構想 

オランダの化学大手 LyondellBasellは2018年6月15日、ブラジルのOdebrechtとの間で、同社傘下のBraskemの取得を巡り独占的な買収交渉に入ったと発表した。交渉は初期段階で、合意に至るかは不明と説明している。

その後、売却価格や取引の全体の仕組みなどで交渉が続き、売却への期待でBraskemの株価は1年で16%上昇した。

本件は本年3月時点で、予想より時間がかかりそうと報じられた。

Lyondell側はBraskemが2017年Annual Report を米国SECに提出するまでは契約を結ばないと決めているが、Braskemの監査会社が同社の内部管理の評価を終えていないため、まだ提出できないでいる。
結局、5月15日までに提出できなかった。同社の米国預託証券(ADR)はNY証券取引所で上場廃止になる。

また、BraskemとPetrobrasの間のナフサの長期供給契約の締結が遅れている。Petrobrasの新CEOは前任者のまとめた契約書にまだサインしていない。

Odebrechtは当初、Braskem の株とLyondellBasellの株とを交換する予定であったが、Odebrechtの財政が悪化し、現金が必要になった。
これにより、新たにLyondellとの交渉が必要になる。

Lyondell はOdebrechtとの間で合意を得た後に、共同で意思決定をしているPetrobrasと交渉を始める必要がある。


そして LyondellBasellは 6月4日、Braskem買収に関するOdebrechtとの交渉を終了したと発表した。

「LyondellBasellとBraskemの統合は両社の力、製品ポートフォリオ、販売地域を補完しあい、素晴らしいものだ。しかしながら、慎重に検討した結果、交渉を続けないことで一致した」としている。

LyondellBasellの現状

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Basell と Lyondell Chemical は2007年7月17日、Basell が Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意したと発表した。

2007/7/18 Basell Lyondell を買収

Lyondell は旧Lyondell (PO、SM、MTBEPGTDIなど)とMillenium(酸化チタン、酢酸、VAM)、および両社のJVEquistar (エチレン、プロピレン、EOGPE)が合併したもので、その後、酸化チタン事業はサウジのNational Titanium Dioxide Company に売却している。

経緯については 2007/2/26 Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生参照

Basell の成立の経緯は下図の通りで、2005年にBASFShell Basell Access Industriesに売却した。


LyondellBasell の扱う製品は下記の通り。 

 同社 2017 Data Bookから

Olefins

Polyolefins

単独プラント(千トン)

Americas Others Total
Ethylene 5,400 2,900 8,300
Propylene 2,300 2,700 5,000
Butadiene 400 300 700
PP 1,800 5,400 7,200
HDPE 1,800 1,900 3,700
LDPE 600 1,300 1,900
LLDPE 500 500
Catalloy 300 300 600
PP compound 300 300
PB-1 resins 50 50

千トン
PO 2,300
SM 2,700
TBA 2,800
Oxyfuels 3,200
PG 400
PG ethers 200
Butandiol 200
Methanol 1,400
酢酸 600
VAM 300
EO 400
EG 300
Ethanol 200

JV (能力:千トン)

JV 立地 Partner Lyondell
share
C2 C3 HDPE LDPE PP PP
Compound
Indelpro Mexico Alfa 49% 600
Al-Waha Saudi Sahara Petrochemical 25% 500 500
Baswll Orlen Poland Orlen 50% 300 100 400
HMC Polymers Thailand PTT 29% 300 800
PolyPacific 豪/Malaysia Mirlex 50% 100
PolyMirae 韓国 Daelem/SunAllomer 50% 700
SEPC Saudi Tasnee/Sahara 25% 1,000 300 400 400
SPC Saudi Tasnee 25% 500 700 40
JV 立地 Partner Lyondell
share
PO SM Methanol
U.S.PO JV USA Covestro 1,200
European PO JV Netherlands Covestro 50% 300 700
Ningbo ZRCC China ZRCC 19% 300
0% 600
La Porte Methanol USA Linde 81% 500

2016/8/26 LyondellBasell、サンアロマーから撤退


ジャパンディスプレイ(JDI)は6月18日、都内で株主総会を開いた。

取締役5人の選任と、補欠監査役1人の選任の2つの議案はすべて賛成多数で可決されたが、支援に名乗りを上げていた台中3社連合の一角が離脱するなど二転三転する再建案に株主から批判が相次ぎ、経営陣は弁明に追われた。

ジャパンディスプレイは、台中連合の各社が6月14日に支援の内部機関決定を行うとの発表をしていたが、6月14日夕刻、まだ通知を受け取っていないと発表した。

JDIは17日、台湾タッチパネル大手の宸鴻光電科技から交渉離脱の通知を受けたと発表した。

2019/6/17 ジャパンディスプレイ、苦境に

10月に社長に就く菊岡稔・常務執行役員は、台湾勢が抜けた穴を埋めるため、香港ヘッジファンドのオアシス・マネジメントなどと「800億円はきちんとした形で調達できるよう交渉している(下表の右参照)」とし、他にも「国内事業会社を中心としたグループや海外の事業会社から(出資の)意向表明を受けている」と説明した。

しかし、いずれも確約ではなく、各社が今後機関決定するというだけである。

JDIは4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。

当初予定では6月18日のJDIの定時株主総会で最終的に承認を受ける予定だったが、台中連合が金融支援に必要な機関決定を延期すると相次ぎ表明した。

JDIは5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。Apple及びINCJによる支援を材料に説得した。

しかし、台中連合各社は期限の6月14日に機関決定をせず、うち1社は離脱を表明した。

このように、これまでのJDIの発表はいずれも実現していない。

今回の案も各社が6月27日までに機関決定を諮るというだけで、決まったものではない。また、仮に決まっても、なんらかの条件がつく可能性もある。

また、仮に決まっても、中国勢がメインとなった場合、米国からなんらかのクレームがつく可能性もある。

その間、資金の外部流出は続いており、仮に今回の案が実現しても、更なる資金手当てが必要である。

ーーー

JDI資本計画

台中連合(Suwa) INCJ
普通株式 420億円
転換型優先株式 1,020億円
第2回CB 180億円
第3回CB 200億円
合計 800億円 1,020億円
総計

1,820億円

台中連合の状況

付記  台湾のCosgrove Global(富邦グループ)からも交渉離脱の通知

内訳

2019/6/17 JDI 発表

億円 比率 百万$ 状況 あり得る
ケース
台湾 TPK Holding
宸鴻集団
タッチパネル大手 250 31.25% 230 離脱 通知受領
Cosgrove Global 一族富邦金控が運用・管理する投資会社 140 17.50% 130 機関決定の通知 未受領
  →離脱 通知
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
中国最大の資産運用会社 Harvestグループ のプライベートエクイティ投資を行う運用会社 410 51.25% 390 190百万ドルについては200百万ドルに増、6/27までに機関決定
200億円についても機関決定。

200百万ドル
(215億円)
200億円
不足の場合、更に200百万ドル出資、
6/27までに機関決定
200百万ドル
(215億円)
Oasis Management 離脱社代替 150百万ドル 
6/27までに機関決定
150百万ドル
(160億円)
合計 800 750 800億円



         

シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めた。

シャープは堺市に大型テレビ用液晶パネル工場を建設し、2009年10月に稼働させたが、ソニーへの販売を狙い、ソニーとの合弁会社シャープディスプレイプロダクトとして分離した。
その後、ソニーは離脱し、現在は
鴻海精密工業の郭台銘会長の資金運用会社が53.05%を所有している。(社名は堺ディスプレイプロダクトに改称)

シャープは液晶パネルを自社の亀山工場でも生産するが、ガラス基板が小さく、大型パネルの生産性に課題がある。
堺工場は世界最大級のガラス基板を備える。

シャープが堺工場を再び傘下に収めれば、大型パネルの生産効率が向上するとともに、高精細な映像表現ができるシャープ独自の「IGZO」技術を使うことも可能となり、中韓メーカーのパネルとの差別化につながることとなる。

ーーー

経緯は下記の通り。

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資 9.88% 669億円
(これは中止となり、その後2016年3月30日に鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。)

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%
鴻海グループのシャープ本体への出資は一時中止となったが、この投資は行われた。)

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなる。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘 37.61SIO International Holdings Limited)
凸版 9.54
大日本 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

現状の出資関係は次の通り。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

シャープ本体への鴻海グループの出資は次の通り。

Honhai Precision Industry 26.14%
FOXCONN (Far East) 18.41%
FOXCONN Technology 13.00%
SIO International 7.36% 
合計 64.91%



国際石油開発帝石(INPEX)は6月16日、インドネシアのアラフラ海Masela 鉱区Abadi LNGプロジェクトの改定開発計画について、インドネシア府当局と基本合意書を締結した

基本合意書は、概念設計(Pre-FEED)作業終了後に実施した改定開発計画に関する協議においてロジェクトの経済性確保するため政府当局と事前に合意した事項を規定したもの

今後政府当局との間で、改定開発計画提出及び承認、生産分与契約の修正及び延長等の手続きを開始する。

国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の権益を取得、その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2010年12月に第一次として LNG年産250万トンFLNG方式で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。

その後の変遷で年産950万トン規模 の陸上LNG計画で再スタートする。

同社の 上田社長は10年弱の遅れについて「全体ではプラスの面の方が大きい」との認識を示した。
2018年に生産を始めたオーストラリアの大型LNG事業からの技術やノウハウの移行が可能である点などを理由に挙げた。

豪州プレリュードFLNGプロジェクトは2019年3月にコンデンセートの出荷を開始、2019年6月にLNGの出荷を開始した

2018/12/28 国際石油帝石、豪州プレリュードFLNGプロジェクトの生産開始 

アバディLNGプロジェクトの概要

鉱区 インドネシア共和国マセラ鉱区
鉱区期限 現行鉱区期限2028年に、期間追加(7年)を申請中、更に延長(20年)を申請予定。
20551115日までを申請予定)
鉱区面積 2,503平方キロメートル
水深 400~800メートル
鉱区位置 マルク州サムラキ市沖合約150キロメートル

生産規模 天然ガス 総生産量LNG換算)年産1,050万トン
 ・
LNG年産950万トン規模
 ・
鉱区周辺地域の現地需要向けパイプラインガス供給予定
コンデンセート 日量最大約
3.5万バレル規模
権益比率 インペックスマセラアラフラ海石油65%(オペレーター
SHELL
35%


インペックスマセラアラフラ海石油はINPEX 51.93%、石油天然ガス・金属鉱物資源機構 48.07%

その他 20176月にインドネシア政府からNational Strategic Projectに、
さらに
9月にはPriority Infrastructure Projectに認定


LNGプラントの設置場所については触れていないが、2015年9月にインドネシア政府の
海洋担当調整省はガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運ぶ案を主張しており、ここであると思われる。


経緯は次の通り。

国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の権益を取得した。

その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2000年に掘削した試掘第1号井によりAbadi ガス田を発見した。その後、6坑の評価井掘削を含むガス田評価作業を実施し、同ガス田にはLNG開発に十分な天然ガス埋蔵量を確認した。

2010年12月に第一次として LNG年産250万トンFLNG方式浮体式LNG生産施設)で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。

参加権益比率はINPEXが90%(オペレーター)で、 インドネシアの有力エネルギー企業PT Energi Mega Persada社の子会社PT EMP Energi Indonesia(EMPI)が10%となったが、2013年6月にEMPIの権益を買収し、INPEXが65%(オペレーター)、Shell 35% の体制となった。

その後、天然ガス埋蔵量の増大が確認され、2014年にLNG能力を3倍の750万トンに拡大したFLNG方式での「改定開発計画」の承認を申請した。

申請を受けたインドネシア政府の内部で意見が分かれた。

2015年9月に海洋担当調整省は陸上案を主張した。

Abadiガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運び、陸上でLNGにすれば、建設費は160億ドルで、洋上の場合の220億ドルにくらべ、60億ドルの節約になるとコストダウンになるだけでなく、近辺の地域の経済発展にも役立つと主張した。

エネルギー鉱物資源省と石油·ガス上流レギュレータは、 洋上なら148億ドルで、陸上より45億ドル安いと主張し た。

ジョコ大統領は2016年3月23日、陸上に建設すべきだとする政府方針を決定した。

INPEXは4月1日にインドネシア政府より陸上LNGによる開発計画の検討を求める内容の通知を受領した。

2016/3/29 国際石油開発帝石、インドネシア政府方針でLNG計画を大幅変更へ


その後、LNG価格は世界的に大きく下落し、計画の存続に疑念が生じた。

Inpexはその後、政府当局経済性確保を含めた協議を続け、その結果を踏まえて2018年3月に年産950万トン規模を想定する陸上LNGPre-FEED作業開始の決定に至った。

ジャパンディスプレイは、台中連合の各社が6月14日に支援の内部機関決定を行うとの発表をしていたが、6月14日夕刻、まだ通知を受け取っていないと発表した。

「通知内容により関係者との再協議を要する場合は、速やかに協議を行い、その結果が決定次第開示する」としている。

企業連合のうち、台湾の1社が支援見送りを決めたことが分かったと報じられている。JDIの経営が想定以上に悪化していることなどから、出資をめぐる条件が折り合わなかった。
JDIは17日、台湾タッチパネル大手の宸鴻光電科技から交渉離脱の通知を受けたと発表した。

6月18日には定時株主総会を開く。元々、台中連合による支援はこれには間に合わず、追って臨時総会を開くとしていたが、経営不安は解決すると説明する予定であった。
先行きが不明のままで、どうするのだろうか。

なお、シャープの戴正呉会長兼社長は6月14日、日本経済新聞の取材で、ジャパンディスプレイの支援も「要請があれば検討する」と述べたとされる。

シャープの再建を巡っては、経産省の意向を受けた産業革新機構と鴻海が争った。

経産省には、革新機構がシャープに出資した上で液晶部門を分離させてジャパンディスプレイと統合させる 意向があったとされる。

支援の内容の差と、会社の解体を嫌う経営陣の意向から鴻海に決まった。

ーーー

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。

JDIでは台中連合の金融支援を確定させるべく、関係各社に協力を要請し、下記の協力を得た。

1) Apple社:当面の財務強化に対する協力として、前受金に対する債権相殺金額を、2年間にわたり 、従来の合意条件に対して半額繰り延べ。発注の増量についても真摯に協議。

2) 現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構) 資金面の協力を強化

以上の協力を得たのを受け、台中連合は総額800億円の支援について、6月14日に各社の内部機関決定を行う旨、連絡してきた。

JDIの定時株主総会(6月18日)での承認は間に合わないが、年内に行う臨時株主総会で承認を得て、実行する。

2019/6/3  ジャパンディスプレイ、支援が進展 

この各社の内部機関決定がまだなされていない。

ーーー

ジャパンディスプレイ(JDI) は5月15日、2019年3月期の決算を発表した。

特別損失で白山工場資産減損 747億円を含む752億円を計上した。

同時に、同社は構造改善策を実施することを発表した。

・ 1,000人規模の早期既報退職を上期中に募集
・ 役員報酬及び管理職等の賞与減額等

構造改革費用は約100億円、効果は年間ベースで約200億円と見ている。

2019/5/17  ジャパンディスプレイ、5年連続赤字



JDIは6月12日、この構造改革の実施と、合わせて執行体制の刷新に関する発表を行った。

上記の発表後、具体的内容を検討してきたが、6月12日開催の取締役会において、 下記を決議したとしている。

1) 今後の需要の大幅回復の見込みが立たないモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止 及び茂原工場後工程ラインの閉鎖
2)人員削減
3) 役員報酬及び社員給与
等の削減
4) 執行体制の刷新

1) 工場停止

従来取り組んでいる車載・ノンモバイル事業の強化を継続する一方で、バイル事業については縮小し、生産及び一部生産設備の集約を図る

スマートフォン向けディスプレイ
の生産拠点の一つである白山工場においては、時稼働を停止
モバイル事業用の後工程生産の縮小のため、 茂原工場後工程ラインを

同社の工場は下記の通り。

元の持ち主 今回決定 簿価
石川工場 東芝モバイル(松下電器)
白山工場 JDIとして新設
Appleからの前受け金で建設
2016/12 稼働  2019/7~2019/9 停止
9月末までに再稼働の判断
約1000億円
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)
東浦工場 ソニーモバイル
茂原工場 日立ディスプレイズ 2019年夏から有機EL量産開始 2019/9
後工程ライン(V2ライン)閉鎖
生産設備の除売却
約3億円
能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→ 産業革新機構に譲渡
→ JOLEDに
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖

参考 海外工場

Suzhou JDI Electronics 江蘇省蘇州市 素尼移動顕示器(蘇州)を買収
Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得
Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子
Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州) 2018/5 株式持分を全て譲渡
Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器 2018 中国企業に売却

白山工場の再稼働等の判断は9月末までに行う。

なお、 今後の顧客需要の動向により、白山工場の資産についての減損損失400500億円を特別損失として計上する可能性がある。

また、白山工場の再稼働を行わなかった場合には、追加の特別損失として、工場運営に係る違約金や補助金返済等100200億円が発生する可能性がある。

付記  2019/9/13 「2019/10以降も稼働停止継続」と発表 

「白山工場の一時稼働停止決定後、顧客からの受注拡大に努めるとともに、顧客の需要動向を注視してまいりましたが、現時点では、稼働の再開により利益を創出するだけの需要増は見込めておりません。
一方、
Harvest Tech Investment Managementから将来のOLEDディスプレイの量産拠点の候補として白山工場を活用する案が示されており、その可能性についても協議を開始しております。
こうした状況を踏まえ、当社は当面の間、白山工場の稼働停止を継続することといたしました。

また、茂原工場後工程ラインにつきましては、2019年8月末までに生産を終了しております。」

白山工場は液晶パネルのみで、需要回復は望めない。有期ELへの転用には少なくとも数百億円規模の投資が必要とされる。

ーーー

白山工場は第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場で、1,700億円を投じて建設し、3年前に完成したばかり。前年度に減損損失を計上したとはいえ、休止の件はこれまで出ていなかった。

台中連合が6月14日の内部機関決定に踏み切ったのには、Appleが発注の増量についても真摯に協議するとしたのも一つの理由であろう。

工場を停止するのは、Appleからの注文がほとんどないことを意味する。JDIは今回、白山工場の再稼働を行わなかった場合についてさえ触れている。
そのような状況で台中連合が出資するであろうか。


問題は、JDIと Apple の契約である。
この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。(今回、一部条件緩和)

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

工場を停止したままで返済を続けるのは困難である。

この投資は社内で異論が浮上する中、革新機構から派遣された社外取締役が決定を主導したとされる。液晶から有機ELへの移行という技術トレンドを読み誤った。

また、Appleのために、Appleの資金で建てた工場であり、本来なら、Take or Pay 条項を入れるべきであった。何の条件もなしに義務だけというのは考え難い。

そもそもは、テレビ用液晶パネルが競争力を失った時点で、中小型ならやっていけるとした判断自体が無理であったようだ。

2) 人員削減

(1)国内における希望退職者の募集

募集人数1,200
募集対象者:2020年3月31日時点で40歳以上の社員JOLED出向者、海外出向者含む)
 (注
1白山工場組織V2ライン及び西日本オフィスの各拠点における勤務者については、年齢の制限を設けない
 (注
22019年6月1日現在の国内社員及び出向者の数 4,635

退職希望者には退職金規則に定める退職金に加え、退職特別加算金を支給する。また、希望者に対しては再就職の支援を行う。

(2)海外販売子会社における人員の削減

スマートフォン向けディスプレイを主として販売する中国の海外販売子会社において、数十名程度の人員削減を実施

早期割増退職金として90億円の特別損失を計上する。人員削減で年間200億円のコスト削減を図る。

3) 役員報酬、管理職給与及び一般社員賞与等の減額等

4) 執行体制の刷新

9月30日辞任 代表取締役社長社長執行役員CEO 月﨑義幸
10月1日就任 取締役会長 社外取締役 橋本孝久
社長執行役員 CEO 常務執行役員CFO 菊岡稔


英国のメイ首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙で、6月13日に党所属の下院議員313人による1回目の投票を行った。

最低 8人の推薦を受けて立候補した10人のうち得票数が17未満の候補がふるい落とされ、上位者が18日の2回目投票に進む。ここでは得票33未満が落とされる。

19日と20日にはそれぞれ最下位を落とし、最終的には候補を2人に絞り込み、十数万人いる党員の郵便にによる決選投票で7月22日の週に新党首を選出する。

新党首はエリザベス女王の承認を受け、メイ氏から首相の座を正式に引き継ぐ。

1回目で3人がふるい落とされた。

候補 6/13 6/18 6/19 6/20 決戦
Boris Johnson 前外相 メイ首相の離脱協定に反発して外相を辞任 114
Jeremy Hunt 外相 国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派 43
Michael Gove 環境相 メイ首相の離脱協定を支持 37
Dominic Raab Brexit担当相 国民投票の前からEUからの離脱を訴え 27
Sajid Javid 内務相 残留派 → 欧州懐疑派 23
Matt Hancock 保健相 メイ首相の離脱協定を支持 20
Rory Stewart 国際開発相 残留派→ Brexitを受け入れ 19
Andrea Leadsom (F) 前下院院内総務 EU離脱派の中心的存在、政府方針に反対し辞職

落選

11
Mark Harper 元院内幹事長 残留→ メイ首相の離脱協定支持 10
Esther McVey (F) 前雇用・年金相 離脱派。メイ首相の離脱協定に反発し辞職 9

(F) は女性


誰が党首(=首相)になっても、議会で一つの方向に決めるのは難しい。

「離脱の延期は最長 10/31 までとする」となっており、残り時間は少ない。

今回トップのジョンソン前外相は2016年の国民投票で離脱派の急先鋒となったが、他に手段がなければ正式な合意なしでも離脱する意向を示している。

中国のSinopecは6月9日、ロシアの石化大手SiburのAmur Gas Chemicals Complex 計画に40%出資する契約を締結した。

SinopecはSiburに10%出資している。

Sinopecは2015年12月17日、Siburに10% 出資した。

2015/9/9 Sinopecのロシア進出 

Amur Gas Chemicals Complex (AGCC) はロシアのAmur RegionのSvobodny市の近くに建設を計画している石化計画である。

Svobodny市は、西シベリアのガス田からウラジオストックまでをつなぐパイプライン Eastern Pipeline から中国へガスを送るパイプラインの分岐点にある。

ロシアと中国は2014年11月9日、プーチン大統領と中国の習近平国家主席の立ち会いのもと、ロシアのシベリア産天然ガスを西シベリアの国境経由で中国に送るパイプライン計画の覚書など17の合意文書に署名した。

2014/11/15 ロシア、中国向けに二本目の天然ガスパイプライン 

Gazpromは2014年5月にChina National Petroleum Corporation (CNPC) との間で年間380億m3の天然ガスを30年間供給する契約を締結しており、2019年12月にガスの供給が始まる。

西シベリアからの天然ガス輸送が始まり、Amur Gas Chemicals Complex 計画も実現する。

この計画はGazprom単独のAmur Gas Processing Plant (GPP) と一体となるものである。

原料 製品
Amur Gas Processing
Plant(GPP)
Gazprom 天然ガス 420億m3/年
(Power of Siberiaで西シベリアから輸送)
メタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘリウム :外販

エタン:GCCへ

最終6系列
2系列は2021年稼働
Amur Gas Chemicals Complex (GCC) Sibur

Sinopec
 40%出資
エタン(GPPから)
  200万トン/年
エチレン 150万トン/年
HDPE/LLDPE 50万トン/年
HDPE/LLDPE 50万トン/年
HDPE     50万トン/年
ブテン-1
PE販売先は、中国、東南アジア

2018年3月時点での報告によると、Amur GCC は2020年に建設を開始し、2024年に運転を開始するとなっている。

東レは血液1滴から様々な癌を発見する検査キットについて、2019年中に厚生労働省に製造販売の承認を申請する。日本経済新聞が報じた。


国立がん研究センターなどと2014年に始めた研究プロジェクト「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」がこのほど終了し、その成果を事業化する。

癌ができると血液中に増える「マイクロRNA」を検出する手法で、東レはこれを検出する遺伝子解析チップを開発した。独自の素材や加工技術を生かし、従来に比べ100倍の感度で検出できるため、血液1滴分、50マイクロリットル程度あれば検査できる。癌の有無の判定精度も95%以上という。

本年4月8日に厚生労働省が第四回の先駆け審査指定制度の指定品目として発表しており、早期の承認が期待できる。

DNAチップによる膵臓・胆道癌検査キットMI-004(仮称)(東レ株式会社)

予定効能:血清から抽出したRNA中のマイクロRNAの発現パターン解析(膵臓癌・胆道癌の診断の補助)
指定理由:
血清中のマイクロRNAの発現量の組み合わせを数値化し、膵臓癌・胆道癌の診断フローに用いる検査システムは、世界的にも実用化された事例がなく、画期性が高い。
膵臓癌は最新がん統計(2017年)において年間死亡数3.4人、3年生存率15%と極めて予後が悪い癌であり、胆道癌もまた年間死亡数1.8万人に及ぶ難治性の癌である。
開発の過程において健康成人と膵臓癌・胆道癌患者を感度80%、特異度80%で鑑別するアルゴリズム及び閾値が得られている。また、初期の膵臓癌患者において、既存の腫瘍マーカーであるCA19-9 と比較して感度が高いことが示唆されている。これらに加え、従前の腫瘍マーカー検査とは異なるプロファイルに基づくことも勘案すると、膵臓癌・胆道癌が疑われ精密検査が必要とされる患者の選択に寄与し、治療成績の向上に資することが期待できる。
国内で臨床性能試験を実施し、世界に先駆けて本邦において承認申請予定。

承認されれば、数万円で複数のがんを一度に調べられる見通し。

ーーー

マイクロRNAは生体高分子であるリボ核酸(RNA)の一種で、人間ではこれまでに2655種類が見つかっている。 分子のサイズの塩基数は18から25で、極めて小さい。

マイクロRNAは、エクソソームと呼ばれる粒子に入って血液中に放出される。その数は1mLあたり約5000億個とされる。

最近の研究で、マイクロRNAは癌等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになってる。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗癌剤の感受性の変化や転移、癌の消失等の病態の変化に相関するため、全く新しい疾患マーカーとして期待されている。

NEDOは2014年に、国立がん研究センター(研究部門と臨床部門)や東レなどと共に、マイクロRNAを使って健康診断などで簡便に癌や認知症を検査できる世界最先端の診断機器・検査システムの開発(体液中マイクロRNA測定技術基盤開発)プロジェクトに着手した。

概要は次の通り。


国立がん研究センター及び国立長寿医療研究センターのバイオバンクに保存されている数十万検体の血清から、13種類の癌及びアルツハイマー病等の認知症について、疾患の早期発見マーカーや、医療現場で必要とされる様々な疾患マーカーの探索を網羅的に行い、確度の高い疾患マーカーを得る。

13種類の癌は、胃癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、肉腫、神経膠腫。

研究に不可欠な対照群として、長寿医療研究センターのバイオバンクに登録されている認知症などで癌ではない検体を調べる。

さらに、日本発のバイオツール技術によって高感度・高精度なマイクロRNA疾患マーカー検出ツールを開発することにより、一部欧米に先んじられている検査・診断分野の開発における日本の地位を引き上げる。

ーーー

2019年2月までに5万3000検体を解析した。その結果、下記のように高い精度でがん患者と健常者を識別でき、1次スクリーニングの検査方法として有用であることが示された。

感度 特異度
女性の乳癌 97% 92%
卵巣がん 99% 100%
膵臓がん 98% 94%
大腸がん 99% 89%
「感度」とは、病気の人を正しく病気だと識別できる割合
「特異度」とは病気でない人を正しく病気でないと識別できる割合


卵巣癌など、癌の種類によっては、良性疾患を癌と判定してしまう場合がある。この場合も癌の可能性があることを患者に伝え、検査を勧めることができるので価値はある。

1次スクリーニングだけでなく、前立腺癌や乳癌などで、他の標準的な検査によって癌の疑いが強まった患者に対し、マイクロRNA検査を行うことで、苦痛が大きい検査を受ける頻度を下げることができるといった成果も示されている。

13種類の癌を一気に判別する手法も検討されている。
これまでに集積した患者のマイクロRNAプロファイルをDeep Learning に投入したところ、13種類のがんと健常の計14グループを高い精度で識別することができた。


認知症におけるマイクロRNAの有用性も検討された。認知症患者約5000人の血液中マイクロRNAを調べ、その結果を機械学習にかけた結果、3大認知症と呼ばれるアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体認知症を十分な精度で判別することに成功した。

血液中のマイクロRNAにより、脳卒中の発症者を高精度で識別できることも分かったとしている。

ーーー

現在、既に、血液検査による腫瘍マーカー検査が行われている。

癌細胞から微量な蛋白質が分泌されることがあり、これが腫瘍マーカーとよばれる。これを検出することで癌の存在する可能性や種類を知ることができる。

腫瘍マーカーの値は良性の疾患や加齢、感染症、薬物の喫煙などの影響で高くなることもあり、逆に癌であっても腫瘍マーカーの値が高くならない場合もある。
検査の数値が高いからといって癌が確実に存在するわけではなく、反対に検査の数値が低いからといって完全に癌を否定できるものではない。ひとつの判断材料であるとされている。

次のようなものがある。

https://www.kureha-hosp.jp/health_care/shuyomarker/



今回の東レのマイクロRNAによる検査は、「感度」、「特異度」 から、これらとはかなり信頼度が異なるようだ。





自公政権は2004年の年金制度改革関連法成立時に「100年安心の年金」をアピールした。

この制度では、①「保険料は 、国民年金で1万6900円(2004年度水準の価格)以上には引き上げません」、②「モデル世帯の受け取る厚生年金は、現役世代の給料の50%以上を確保します」 、これを100年先まで維持するというもので、年金だけで生活できることを保障するものではない。

「100年安心」という言葉が誤解を生んだ。

「100年安心」は公明党と坂口力厚労相(公明党)が主張した用語である。

当時の「公明党についてのQ&A」では以下の通り述べている。

公明党と坂口厚生労働大臣はこのような観点にたって、100年先までを展望した「年金100年安心プラン」を提案致しました。

坂口大臣がこれまで役所が絶対手をつけなかった「年金積立金」(147兆円)を取り崩し、将来の世代が受け取る年金額の底上げに使うことを認めさせたからです。取り崩す最大の理由は、「団塊の世代とその子どもたちの年金受給が終わる2060年ごろまでの年金財政が最も苦しいので、その時に積立金を給付費に使いたい」からです。同プランではこの積立金を2100年時点で1年分約25兆円が残るようにします。

これは大変な抜本改革です。坂口大臣と役所との激しい対立もありました。しかし、これによって年金の給付水準を「現役世代の平均収入の50%以上、できれば55%程度」を確保できるわけです。現在の水準は59%です。積立金を維持する従来の方式だと、少子化が現状程度 (1.39) なら現役平均収入の52.8%、少子化が進行した場合 (1.10) は47.8%と給付が5割を割り込んでしまいます。一方、積立金を使う同プランでは、少子化が進行しても51.2%、少子化が現状程度であれば54.5%を確保できます。なお同プランでは政府は5年ごとに向こう95年間の年金財政を見直して計画を作り直し、2100年以降も積立金が底をつかないようにします。

さらに同プランでは、厚生年金は保険料を将来も「年収の20%以内(労使折半)」に抑えること、国民年金は国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げ、将来も納めた保険料の1.7倍以上の年金が受けられる「月1万8千円台までにとどめる」ことにします。このような「保険料固定方式」によって負担が過度にならないようにします。

http://www.takeuchi-yuzuru.com/koumei.htm



厚労省は次のように説明している。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei01/dl/zu08.pdf


しかし、2004年の国会審議でこれが正しくないことが明らかにされた。

① 「保険料は国民年金で1万6900円(2004年度水準の価格)以上には引き上げません」

これは賃金上昇がないとした場合のことで、名目賃金が上がれば保険料も上がるのに、政府はそのデータをふせていた。

法案が前提にしている賃金上昇率(2009年度以降、毎年2.1%)で計算すると、2017年度は月額20,860円、27年度には25,680円にもなる 。

② 「モデル世帯の受け取る厚生年金は、現役世代の給料の50%以上を確保します」

これは国民のなかでは一握りのモデル世帯(夫がサラリーマンで40年厚生年金に加入、妻が専業主婦)のみ。
そのモデル世帯も「給付50%」が確保されるのは年金受給から短期間に限ってのことで、名目賃金の上昇にともなって比率は下がり、やがて50%割れになる。

公明新聞も2004年5月20日にはこれを認めている。

キヤノンは2016年3月に東芝から医療機器子会社東芝メディカルを買収したが、両社は米国司法省から Hart-Scott-Rodino Act が規定する事前の通知義務に違反したとして訴えられ、罪を認めて罰金を払うことで解決した。

両社はそれぞれ罰金として250万ドルを支払う。加えて同法に基づくコンプライアンスプログラムを実施し、監査を受け、報告を行う。

付記

欧州委員会は6月27日、キヤノンに28百万ユーロの罰金を課した。通知義務違反と承認前の買収を問題にした。

ーーー

キヤノンは2016年3月17日、東芝の医療機器子会社、東芝メディカルシステムズを買収する契約を結んだと発表した。
3月9日に東芝から独占交渉権を得て協議を続け、合意したもの。買収額は6655億円で3月17日に決済した。

日本の
独禁法第10条では、(株式取得で)一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、取得してはならないとしており、第10条2項で、会社が他の会社の株式取得する際、一定の基準に当たる場合には、公正取引委員会に事前に届出しなければならないとされている。

しかし、東芝は、債務超過を避けるためには、2016年3月期に売却益 5900億円を計上する必要があり、各国の審査を待っていては間に合わない。

このため、下記の手続きをとった。

A種類株(議決権あり)20株を特別目的会社(株主は東芝とキヤノンのいずれからも独立した第三者の3人)のMSホールディングに譲渡(対価 98,600円)

B種類株(議決権なし)1株と新株予約権をキヤノンに譲渡(対価 6,655億円)
B種類株には議決権はないが、組織再編などの重要事項について拒否権を行使できる条項あり)

独禁法第10条2項の規定は、具体的には、取得後の議決権の数の割合が新たに20%又は50%を超えることとなる場合となっている。
議決権は第三者のMSホールディングが保有するため、条文の上からは公取委の承認前の株式取得は認められることになる。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手

東芝メディカルの議決権の対価がたった10万円で、キヤノンは議決権無しの株と新株予約権に6,655億円も払うというのは通常は考えられず、わざわざこういう手続きを取る他の理由も考えられない。また、議決権無しの株には重要事項に対する拒否権があ る。各国の承認を得れば直ちにキヤノンが議決権を100%取得する。

事前に承認を得るという規定を避けるための便法であることは明白である。

公取委は2016年6月30日、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得について、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認められたので、排除措置命令を行わない旨の通知を行い、審査を終了したと発表した。

しかし、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、両者に対し異例の注意を行った。

また、今後、企業結合を計画する者が仮にこのようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められるとした。

日本の独禁法の規定の文言上は「株式取得」にはならないが、制度の趣旨を逸脱するものであると明言しており、今後は認めないとしている。

2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認

中国商務省は2017年1月4日、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの買収に関連し、キヤノン (佳能)に30万元(約500万円)の 罰金を科す「行政処罰決定書」をウェブサイトで公表した。

独占禁止法に基づく買収の事前届け出義務違反を問題とするもので、競争制限はないとして買収自体は認めている。

2017/1/6 中国、東芝メディカル買収でキヤノンに罰金の行政処分

今回は、米司法省がこれを問題視したもの。

DowDupont 分離完了 

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DowDuPont Inc.は6月1日、農業部門をCorteva, Inc.として分離し、社名をDuPont de Nemours, Inc. に改称した。Specialty Productsの会社となる。

DowDuPont Inc.は4月1日にMaterial Science事業をDowとして分離している。

これにより、2017年9月1日にDowとDuPontが合併してできたDowDupontの再編成が完成した。

2018/3/15 DowDupont の新体制とLiveris 会長兼CEOの引退


新しい3社は、以前のDow及びDuPontの事業を 下記の通り引き継いだ。色塗り部分は当初案を見直したもの。

社名 Corteva Dow DuPont
事業 Agriculture Material Science Specialty Products
本社 Wilmington, Delaware Midland,
Michigan
Wilmington, Delaware

Dow
Agricultural Sciences    
Performance Plastics    
Performance Materials & Chemicals    
Infrastrucrure Solutions    
  Building Solutions  
Water and Process Solutions  
Consumer Solutions  
  Consumer Care    
Pharma and Food Solutions  
Microbial Control  
Automotive Systems    
  adhesives and fluids platforms  
Silicones    
  Several silicones-based businesses  
Electronic Materials    
 
旧DuPont Agriculture    
Performance Materials    
  Performance Polymers  
Elec & Communications    
Nutrition & Health    
Industrial Biosciences    
Safety & Protection    

2017/9/16 DowDuPont、新組織の見直し完了

金融庁は6月3日、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理を発表した。

高齢夫婦無職世帯(夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦)が30年間、ほぼ年金に頼る生活を送った場合、毎月の不足額の平均は約5万円で、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる」と指摘している。

公的年金を老後の収入の柱とする一方、年金が減る可能性にも触れ(「公的年金の水準については、今後調整されていくことが見込まれている」)、若いうちから投資などをして自ら資産形成するよう促している。

( )部分は原案では「今後実質的に低下」となっていたとのこと。他部門からのクレームで「官庁的表現」に変更した。

自公政権は2004年の年金制度改革関連法成立時に「100年安心の年金」をアピールした経緯があり、 非難の声がおこった。

付記 年金「100年安心」は、与党が2004年の年金法改正時において喧伝してきたことで、その意味は、100年後であっても現役の平均手取り収入の50%の年金給付水準を確保するというもの。

野党は6日、金融庁の担当者らから意見を聴取した。金融審議会は投資信託などの運用による資産形成が重要だと指摘したが、野党議員は「政府が自己責任の投資を促すのはおかしい」と批判した。

麻生金融担当相は7日の閣議後会見で、一部の表現が「不適切だ」と述べた。 「公的年金は老後の生活設計の柱。持続可能な制度を作っている」と指摘。今回の金融庁の報告書は、「さらに豊かな老後を送るために資産運用の重要性」を説いたものだと説明した。

麻生氏は6月10日の国会の質疑で、「冒頭部分は読んだが、全体は読んでいない」と答えた。

ーーー

付記

麻生太郎金融担当相は6月11日の閣議後の記者会見で、金融庁の報告書について、「正式な報告書としては受け取らない」と述べ、受理しない考えを明らかにした。

報告書は金融審議会(首相の諮問機関)がまとめたもので、金融審議会の総会を経て麻生金融担当相に提出される予定だったが、事実上の撤回に追い込まれた。審議会の報告書が受理されないのは異例の事態。

「公的年金制度が崩壊するかのように受け止められたが、高齢者の生活は多様で、年金で足りる人もいればそうでない人もいる。公的年金は老後の生活をある程度賄うことができるという政治スタンスは変わらない」と強調し、試算について「誤解を招く」と指摘した。

ーーー

報告書の目次は下記の通り。

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化
(1) 人口動態等:長寿化、単身世帯等の増加、認知症の人の増加
(2) 収入・支出の状況
(3) 金融資産の保有状況
(4) 金融環境に対する意識

2.基本的な視点及び考え方
(1) 長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要
(2) ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々
(3) 公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動
(4) 認知・判断能力の低下は誰にでも起こりうる

3.考えられる対応
(1) 個々人にとっての資産の形成・管理での心構え
(2) 金融サービスのあり方
(3) 環境整備:
    資産形成・資産承継制度の充実、金融リテラシーの向上、アドバイザーの充実、高齢顧客保護の在り方


問題となっている「毎月の不足額の平均は約5万円」は総務省家計調査(2017年)をそのまま使っている。

今回報告の図が見にくいため、元資料(内容は全く同じ)の図を使うと下記の通り。


 高齢夫婦無職世帯(
夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支 -2017年-
  


この部分の結論

「老後の生活においては年金などの収入で足らざる部分は、当然保有する金融資産から取り崩していくこととなる。65歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯で2,252万円となっている。 」

「 収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。」

「支出については、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である。 」

「早い時期から生涯の老後のライフ・マネープランを検討し、老後の資産取崩しなどの具体的なシミュレーションを行っていくことが重要であるといえる。 」

「 なお、米国では75以上の高齢世帯の金融資産はここ20年ほどで3倍ほどに伸びている。米国では、市況が好調だったことに加え、401(k)プラン等の制度的な後押しもあり、現役期から資産形成を実行し且つ継続するとともに、そのような世代が歳を重ねるに従い、高齢世帯の資産が増加していったと推察される。この点、わが国でも後述するつみたてNISAiDeCo等が整備され、個人が長期の資産形成を行うに際して、制度的な環境が整いつつある。 」

ーーー

上の数字は総務省家計調査(2017年) のものであり、「夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」の平均実績である。
不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円が不足することとなるが、金融資産の平均保有状況は2,252万円のため、これの取り崩しで賄えることとなる。

実際には、年金が月に19万円以下の夫婦も多い。赤字はもっと多い。

金融資産については65~69歳の世帯で、ごく少数の富裕層ははるかに多額を保有する(1億円以上は0.66%)一方、1200万円未満が49%、うち150万円未満が全体の15%という財務省の資料もある。(財務省財務総合政策研究所「高齢者の貯蓄の実態」)

従って、大多数にとっては、通常の場合でも「100年安心の年金」ではない。老人ホームなどの介護費用などがかかると一層苦しくなる。

やはり、この報告は「100年安心の年金」ではないので、自分で若いうちから投資をしておけと言っているのは確かであろう。

麻生金融担当相の発言の「さらに豊かな老後を送るための資産運用」ではなく、「普通の生活をしたうえでの赤字の穴埋めのための資産運用」が必要ということになる。

ーーー

年金に関係のない金融庁が年金を取り上げたのは、個人資産を預金から株式投資に切り替えさせ、株式投資を活発化させようとの意図によるとされる。

ゼロ金利のため預金利子収入は家計に寄与しないので株式で、ということで、資料では「国内外の株式・債券に積立・分散投資」した場合の収益率を実績で2~8%とし、100万円が20年後に185~321万円になったとしている。

但し、当然リスクがあるため、完全に自己責任ということになる。投資先企業が倒産すれば、なけなしの資産がゼロになる。

世界経済の変動は大きく、考えてもいない企業が大きな損失を計上する可能性がある。ほとんどの人が東京電力の福島原発事故、シャープの液晶事業の破綻、東芝の米国原発事業の破綻を事前には予想していなかった。経済の分からない人に自分の責任で株を選べというのはひどい。

リスク覚悟で投資をする人は別だが、国民全体に今後の生活費の年金の不足分を株に頼れというのは無責任である。

トランプ大統領は6月7日、メキシコからの全輸入品に対する5%の関税発動を「無期限」で見送るとツイッターで発表した。メキシコが米国への不法移民流入を防ぐための対策を取ることで合意した。

詳細は国務省が発表するとしている。

I am pleased to inform you that The United States of America has reached a signed agreement with Mexico.

The Tariffs scheduled to be implemented by the U.S. on Monday, against Mexico, are hereby indefinitely suspended.
Mexico, in turn, has agreed to take strong measures to stem the tide of Migration through Mexico, and to our Southern Border.

This is being done to greatly reduce, or eliminate, Illegal Immigration coming from Mexico and into the United States.

Details of the agreement will be released shortly by the State Department. Thank you!

ーーー

トランプ米大統領は5月30日、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に関税を課すと表明した。

米国を脅かす非常事態に対応するため、大統領に商業活動を規制する権限を与える「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、関税を課するもので、メキシコが対策を取るまで、下記の通り、順次税率を引き上げる。

6月10日から 5%、7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%とし、問題解決までこれを維持する。

2019年6月1日 米政権、メキシコからの全輸入品に関税、移民問題解決まで毎月税率引き上げ


これについては、与党の共和党の議員も適用阻止を求め、メキシコ政府との交渉で解決策を見いだすようここ数日間、トランプ米政権に要請してきた。

共和党上院議員の大半は国境対策強化を強いる手段として関税を使うことに反対しており、大統領としての法的権限の選択を疑問視し、関税発動の阻止へ議会で行動することを検討している。


しかしトランプ大統領は6月4日夜のツイッターで、6月10日にメキシコからの輸入品すべてに5%の関税賦課を始めるとの警告は「はったりではない」と言明。面目を保つために安易に合意をまとめることには一切関心がないと明確にした。

Can you imagine Cryin' Chuck Schumer (民主党上院総務)saying out loud, for all to hear, that I am bluffing with respect to putting Tariffs on Mexico.

What a Creep. He would rather have our Country fail with drugs & Immigration than give Republicans a win. But he gave Mexico bad advice, no bluff!


ーーー
メキシコのエブラルド外相は6月5日~6日に関税措置の撤回に向けてペンス米副大統領、ポンペオ国務長官らと会談した。

この結果、今回の合意に達した。

国務省の発表(U.S.-Mexico Joint Declaration は次の通り。

中米からメキシコを経由して米国に入る移住者の急増で、両国は、人道的な緊急事態と安全保障の問題を早期に解決する必要性を認識する。両国は直ちに共同で永続的な解決を目指し協力する。

1)メキシコ側

移住者を抑えるため前例のない手段を取る。国家警備隊を国境を中心に全国に配置する。移住を斡旋、アレンジする組織や違法な資金・輸送ネットワークを潰すべく決定的手段を取る。
メキシコと米国は情報交換や共同行動など、相互協力を強化する。

2)  Migrant Protection Protocols(トランプ政権が2019年1月より開始した移民政策 )

「メキシコから米国に到着した外国人で、明らかに許可されない者と退去手続き中の者」は、裁判所による手続きの間、メキシコに送還し、待機させるというもの。
トランプ大統領は2018年12月の発表時「メキシコ残留」政策と呼んでいた。

2019年1月にカリフォルニア州サン・イーサイドロの難民申請者から適用を開始し、その後、カレクシコやエルパソにエリアを拡大していた。

米国は直ちにMigrant Protection Protocolsを国境全体で実施する。
メキシコとの国境を越えて難民申請をするものは直ちにメキシコに戻され、そこで申請結果を待つ。

メキシコは、それらのものが申請を待つ間、メキシコに入るのを人道的見地から認める。職やヘルスケア、教育の面倒を見る。

米国は出来る限り早く申請の結論を出す。

3) これらの対策が効果が出ない場合、再度協議し、90日以内に結論を出す。

4) 地域戦略

メキシコのロペスオブラドール大統領は、移民の北上を抑えるため、貧困に悩むメキシコ南部やホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの開発支援でメキシコと協力するようトランプ米大統領に働き掛けてきた。

2018年12月18日に両国はこの必要性を認める声明を出し、米国は同地域の開発に数十億ドル規模の投資を行うこととした。

今回、両国はこの声明を確認し、メキシコがこの目的達成のためにエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスとともに行うなうComprehensive Development Plan を歓迎する。

ーーー

トランプ大統領の追加関税を使った脅迫外交がひとまず成功した。

しかし、米国が密入国の流入を阻止できないのをメキシコが阻止できるとは考えにくい。実際に流入が減らなかった場合に再び問題が再燃する恐れがある。

付記

メキシコのエブラルド外相は6月10日、米と合意した不法移民対策が45日間で中間評価されることを明らかにした。米側に不十分と判断されれば追加措置を取り、最終的に90日間で追加関税発動の是非を含めた結論が出される。



英国の下院補欠選挙

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6月6日に下院補欠選挙が行われ た。

多数の候補が乱立し、欧州議会選挙で躍進したNigel FarageのBrexit党の候補が初の下院議員になるか (Brexit党は上院・下院に議席無し)と見られたが、結果は僅差で労働党候補が当選した。保守党候補は3位になった。

補欠選挙が終わるのを見届け、メイ首相は6月7日、与党・保守党の党首から退いた。 (後任党首が決まるまで、首相の地位に留まる。)


2月17日にウェールズを選挙区とするベテラン労働党議員が死去したが、この後任については4月5日の補欠選挙で労働党候補が当選し、議席を維持している。

今回は議員の死亡によるものではなく、リコール制度で免職となった議員の補欠選挙である。

英国では2015年3月にリコール法が発効した。

議員が懲役刑に科せられたか、または最低10日間に渡って議会から停職処分を受けた際に、有権者はリコール請求を行なうことができる。

これらの場合、リコール請求のための署名が集められ、10%を越える有権者が署名すれば、議員の欠員が正式に公示され、次に補欠選挙がおこなわれる。

リコール対象となったのはイングランド東部のPeterborough 選挙区の労働党女性下院議員Fiona Onasanya である。

2017年7月に制限速度が30マイルのところで41マイルで運転をしていて捕まった。運転しながらスマホを操作していたことも分かった。

しかし、警察に対し、スピード違反をしていないと主張した。

2018年の裁判で、警察に嘘をついてスピード違反を免れようとした司法妨害の罪で有罪とされた。
控訴したが却下され、2019年1月29日に懲役3か月となった。

労働党は2019年1月に、前年12月に遡り、党から除名した。

選挙区でリコール請求が行われ、必要な10%を超える27.6%が署名し、成立した。下院は5月1日に議席が空席になったことを発表、6月6日の補欠選挙が公示された。

中国の国家市場監督管理総局( State Administration for Market Regulation :SAMR) は6月4日、Ford Motorの中国合弁会社の長安フォード(Chongqing Changan Automobile:Changan Ford Motor )が価格つり上げにより独占禁止法に違反したとして、162.8 百万人民元(約2360万ドル)の制裁金支払いを命じた。

2013年以降、重慶市での自動車販売で「最低再販売価格を設定していた」と指摘し、「販売業者の自主的な価格設定を阻み、公平な競争と正当な消費者の利益を害した」と非難した。


従来、中国の独禁法は下記の体制で実施されてきた。

反壟断委員会(国務院直属) 独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整
実務
機関
発展改革委員会価格調査局 価格独占行為の調査・処分
商務部反独占局 事業者結合行為
国家工商行政管理総局
(工商総局)
独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限(価格独占を除く)

2018年3月、中国の「構造改革」の一環として、独禁法関連の 各機能と、品質検験権益総局(輸出入品質検査検疫を除く)、食品薬品監督管理総局の機能が新設の国家市場監督管理総局に移管された。国務院直属機構である。

長安フォードはFord と長安汽車(Changan Auto)の50/50JV。

罰金額はJVの昨年の重慶市での売上の4%に相当する。

長安フォードは当局の決定を尊重し、ディーラーとともに対策を講じたとしている。「今後も自由でフェアな競争環境に貢献すべく努める」としている。

業界関係者は、中国では各社は自社製品の最終価格を守るため努力しており、最低価格設定は珍しくはないとしている。


今回の摘発について、米国と中国の貿易紛争に絡める筋が多い。

昨年5月にはFord とLincoln車が税関で異常に時間がかかったことがあった。

既報の通り、中国商務部は5月31日、中国企業の利益を損ねる「信頼できない外国企業等」(不可靠實體のリストを作成する方針を明らかにした。

中国当局は、米物流大手 Fedex が華為技術(Huawei)の小包を無断で米国へ転送したことについて「顧客の合法的な権利と利益を著しく損ね、中国の法律と規制に違反した」とする声明を出し、捜査に乗り出した。Fedexは誤配だったと説明し、謝罪している。


千代田化工建設は6月6日、イタリアSaipem S.p.A.及び 米国McDermott International Inc.と 共同で、モザンビーク共和国におけるLNG計画(Anadarkoが主導するモザンビーク・オフショア・エリア1 の共同事業者が計画)EPC(設計・調達・建設工事) 業務を受注したと発表した。

千代田化工は米国のCameron LNGなどで巨額の赤字を計上しており、本年2月に受注した米国のGolden Pass LNG輸出基地の設計・調達・建設業務では千代田の負うスコープは基本的に設計と調達に限定した

今回も、Saipem社およびMcDermott社が実施する設計のレビューを主とする技術的なサポート業務に限っている。

付記 三井物産は6月19日、最終投資決断を行ったと発表した。

ーーー

モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まった。

モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われている。

全体図   Area 1

  

三井物産は2008年2月、米国大手独立系石油・ガス開発会社 Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意した。

権益保有者は以下の通りであったが、その後異動があった。

当初 当時 現在
Anadarko (オペレーター) 76.5% 36.5% 26.5% ONGCに 10% 譲渡
Mitsui E&P 20% 20%
モザンビーク国営石油会社
ENH Rovuma Área
15% 15% 15%
ONGC Videsh
Oil and Natural Gas Corp (インド)
10%
(+6%)
Anadarkoより
(Beas Rovuma)
Beas Rovuma Energy Mozambique
(ONGC and state-run Oil India )
10% Videocon より
(ONGC60%、Oil India 40%)
Oil India(インド) (4%) (Beas Rovuma)
Videocon (インド) 10% Beas Rovumaへ
BPRL Ventures Mozambique(インド)Bharat PetroResources Limited (BPRL) 10% 10%
Artumas Group(現 Wentworth Resources) 8.5%
PTTEP Mozambique Area 1
PTT Exploration & Production (タイ)
8.5% 8.5%


この鉱区の最大の権益を持ち、オペレーターを務めるAnadarko Petroleumは2012年12月、隣接するArea 4のオペレーターのEni との間で共同開発の覚書を締結したと発表した。両グループは天然ガスの開発は連系はしつつも個別に行なうが、LNG生産設備建設は共同で行う。

概要
Area 1 海底天然ガス田 推定可採資源量
17~30兆立方フィート超
LNGプラント LNG年産2,000万トン
当初LNG年産500万トン×2系列
追加2系列
(Area 4との合計)
生産開始 2018年(予定)

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発 

ーーー

当初、2018年にも生産を開始する予定であったLNGプラントはその後も着工されていなかった。

このたび、Anadarkoは着工を決定した。

Anadarkoは5月8日 次の発表を行った。

資金の目途がつき、販売先が確保され、その他も順調である。モザンビーク大統領とAnadarkoのCEOは、 Mozambique LNG project の最終投資決定を6月18日に発表することとなった。

今回千代田化工等が受託した内容は、LNG設備 2系列 合計能力1288万トンと、用役、インフラ設備となっている。

当初計画では500万トンx2系列とArea 4 分の追加2系列となっていた。今回は、Area 4 分は切り離したとみられる。更に1系列分の能力を500万トンから644万トンに増やしている。

ーーー

Anadarkoは2019年2月5日、2つのLNG売買契約を締結したと発表した。

1つ目の売買契約は、2018年6月の基本合意に基づく東京ガスと英国ガス大手 Centricaの共同調達で、LNG生産開始から2040年初頭まで年間260万トンのLNGを供給する。

2つ目の売買契約は、Shellの子会社との間で締結された。13年間にわたり、年間200万トンのLNGが売買されることになる

今回の発表に先立ち、2月1日に、中国海洋石油集団(CNOOC)と、13年間にわたり年間150万トンのLNGを供給する契約を締結している。

2018年2月にはフランス電力会社EDFと年間120万トンを、2018年10月に東北電力とも年間28万トンの売買契約を締結している。

LNG長期契約は年間750万トンに積み上がり、残りのLNG売買契約も近い将来に見込まれているとしている。

メイ首相は5月24日、6月7日に辞任すると表明した。

直ぐに辞任しなかった理由は、トランプ米大統領の訪英(6月3~5日)と下院補欠選挙(6月6日)があるためである。

これを終え、6月7日に保守党党首を辞任する。保守党はこの後、新党首を選び、新党首が首相となる。

ーーー

トランプ大統領は6月3日から5日まで、国賓として英国を訪問した。訪英前に英国では日本での歓迎の模様が詳しく報じられた。

到着前から、いろいろ物議を醸した。

ロンドンのSadiq Khan市長がトランプ大統領について「丁重に迎えるべきではない」と述べたのに対し、「完全な負け犬」とツイートした。

Sadiq Khan, who by all accounts has done a terrible job as Mayor of London, has been foolishly "nasty" to the visiting President of the United States, by far the most important ally of the United Kingdom.
He is a stone cold loser who should focus on crime in London, not me.
Kahn reminds me very much of our very dumb and incompetent Mayor of NYC, de Blasio, who has also done a terrible job - only half his height.
In any event, I look forward to being a great friend to the United Kingdom, and am looking very much forward to my visit. Landing now!

訪英を前に、英国のBrexit 党首のNigel Farage氏と、離脱強硬派で保守党党首選に立候補するBoris Johnson前外相を「友人」と呼び、両氏を大いに尊敬していると述べた。

記者団とのやり取りのなかで、訪英中に二人に会うのかと聞かれ、「多分ね。二人は友人だ。いい奴だ。面白い奴だ」と述べた。
欧州議会選でのBrexit党の勝利に触れ、「Nigel の大勝利だ。ゼロだったのが32%も取った。よくやった」と付け加えた。
Johnsonについては、「友人だ。しかし 党首選での応援はしない。私のすることではない。しかし尊敬しているよ」とした。

元女優で米国出身のメーガン妃は、ヘンリー王子と婚約する以前の2016年の米大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補を支持し、トランプ大統領について「女性差別主義者」などと語 り、もしトランプが大統領になれば、カナダに移住すると述べた。
トランプ大統領は英サン紙のインタビューでメーガン妃について「嫌な人だ("nasty")」とコメントした。

記事が掲載された翌日には「嫌な人だとは言ったことはない。フェイクニュース・メディアによるでっち上げだ」などと自らの発言を否定したが、サン紙はインタビューの録音データを公開してトランプ大統領のうそが暴かれた。

5月に第1子アーチーを出産したメーガン妃は「産休のため」として晩さん会には出席しなかった。

6月3日にバッキンガム宮殿で女王と会見し、同日夜、バッキンガム宮殿での晩さん会に出席した。

王室の歓迎に感謝のツイッター、Brexit後の米英FTAに期待を示した。

Could not have been treated more warmly in the United Kingdom by the Royal Family or the people.
Our relationship has never been better, and I see a very big Trade Deal down the road.
"This trip has been an incredible success for the President." (Laura Ingrahamの発言を引用)

6月4日にメイ首相との首脳会談を行った。

トランプ米大統領はBrexit後の英国に「とてつもない」貿易協定を提供すると約束した。

英国の国民皆医療保険制度の「国民保健サービス(NHS)も含めて「あらゆることが交渉の対象になる」と述べたが、会見後のインタビューで大統領はNHSについては取り消した。「誰かに質問されて、あらゆることが交渉の対象だと答えた。その通りなので。けれどもNHSは貿易の一部だとは思わない。それは貿易じゃない」と述べた。

会談後の記者会見での発言内容:

  • Brexit交渉を現段階まで進めたメイ首相は「とても良くやった」し、「たぶん彼女の方が僕より交渉はうまい」
  • Brexitは「実現するし、たぶん実現すべきだ」。なぜならイギリスは「偉大な、偉大な国で、自分たちならではのアイデンティティーを求めているので」
  • Brexit後に米英が締結をめざすFTAについて、「途方もない可能性がある。(両国の貿易が)今の2~3倍になる可能性がある」
  • 米英両国は、「イランが決して核兵器を開発せず、テロ活動の支援と関与を確実にやめるよう」強い意志で関わっていく。
  • 米英は中国の通信機器大手 Huaweiへの姿勢で食い違っているが、両政府間の情報共有手段を保全するため合意に到達するだろう。
  • 保守党党首選については、ボリス・ジョンソン前外相は「よくやるだろう」し、ジェレミー・ハント外相も同様だが、自分はマイケル・ゴーヴ環境相のことは「知らない」。

労働党のコービン党首から会談の申し出があったが、断ったことを明らかにし、「僕は物事を実現する人は好きで尊敬するが、それと同じくらい、批判ばかりする人は本当に嫌いだ」と述べた。

一方、滞在先のアメリカ大使公邸で、ブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首と会談した。以前から交流があり、訪英直前に「ファラージ氏をBrexit交渉の席に着かせるべきだ」と発言している。


トランプ米大統領に対し、市民らが大規模な抗議デモを行った。ロンドンでは4日も雨の中、数千人が参加した。

大統領はツイッターで歓迎の群衆だとしている。

I kept hearing that there would be "massive" rallies against me in the UK, but it was quite the opposite.
The big crowds, which the Corrupt Media hates to show, were those that gathered in support of the USA and me. They were big & enthusiastic as opposed to the organized flops!

最終日の6月5日は南部ポーツマスでノルマンディー上陸作戦の75周年記念式典(D-Day 75)に参加 した。エリザベス女王や各国首脳(ドイツのメルケル首相を含む)が出席した。

ツイッター:

As we approach the 75th Anniversary of D-Day, we proudly commemorate those heroic and honorable patriots who gave their all for the cause of freedom during some of history's darkest hours. #DDay75



トランプ大統領の攻撃に対する中国の反撃が始まった。

1. 制裁関税

米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。

これを受け、中国は6月1日に 米国からの輸入品に対する税率を引き上げた。

  • 2493品目について関税率を10%から25%に引き上げ。一部機械部品や天然ガス、スキンケア製品など
  • 1078品目については10%から20%に引き上げ。一部機械、光学機器など
  • 974品目については5%から10%に引き上げ。板ガラス、レーザー、制御弁など
  • 595品目については5%の税率を維持。自動車部品は引き続き対象外

これについて、中国国務院関税税則委員会は5月13日に公告を発表している。

2019年6月1日午前0時より、すでに追加関税が実施されている600億ドル分相当のリストに掲載された米国製品の一部について、関税率を25%、20%、10%のいずれかに引き上げることを決定した。
すでに5%の関税が上乗せされている品目については、引き続き5%を上乗せする。

中国が調整を行い追加関税措置を執るのは、米国の一国主義、保護貿易主義への対応だ。中国は、米国が二国間経済貿易交渉の正しい軌道に戻り、中国とともに努力し、中国と向き合って進み、相互尊重を基礎とした互恵ウィンウィンの合意への到達を目指すことを願う。

 2019/5/15 米中、関税引き上げ合戦

トランプ大統領はCameron LNGの出荷開始を祝したが、中国を主たる輸出先の一つとみなしていたLNGの関税も25%に上げられた。

米側は残りの3000億ドル分についても追加関税を課すべく、準備をしている。

しかし、中国の米国からの輸入は残り少しであり、追加関税での報復は出来ない。後述のレアアースや、中国政府が大量に保有する米国債などが噂の対象となっている。

ーーー

2. 「信頼できない企業リスト」

中国商務部は5月31日、中国企業の利益を損ねる「信頼できない外国企業等」(不可靠實體のリストを作成する方針を 明らかにした。

現在、世界の経済発展は、不確定要素、不安定要素が増え、一国主義、保護貿易主義が台頭し、多国間貿易体制は深刻な危機に直面しており、正常な国際貿易活動が妨害を受けている。

一部の外国の企業は、非商業的な目的で、正常な市場の規則や契約の精神に反して、中国企業に対して、封じ込み、供給停止及びその他の差別的措置を講じて、中国企業の正当な権益を損ない、中国の国家安全や利益を脅かしているほか、世界の産業チェーン、サプライチェーンの安全をも脅かし、世界経済に打撃をもたらし、関連の企業や消費者の利益を損なっている。

国際貿易規則や多国間貿易体制を守り、一国主義、保護貿易主義に反対し、中国の国家安全、社会の公共利益、企業の合法的権益を守るために、中国政府は「信頼できな い企業リスト」を構築することにした。

非商業目的で、中国の企業等に対して、封じ込みや供給停止またはその他の差別的措置を講じたり、中国企業や関連の産業に対して実質的な損害を与えたり、中国の国家安全を脅かしたり、脅かす可能性のある外国法人、その他の組織、または個人をリストに盛り込む。

リストに載った企業などに対しては必要な措置を取る。詳細は近く発表する。

れについて、商務部安全・管制局は6月1日、「中国政府は、企業等をリストに加えるかどうか決定する際に、4つの要素から総合的に判断する」とした。

(1)企業等が中国の企業等に対する封じ込め、供給停止、およびその他の差別的な措置を講じた行為があったか。
(2)その企業等の行為は非商業的な目的に基づくものか。また、市場規則と契約の精神に反しているか。
(3)その企業等の行為が、中国企業または関連産業に実質的な損害をもたらしているか。
(4)その企業等の行為が中国の国家安全に脅威または潜在的な脅威をもたらしているか。

リストに加えられた企業や個人であっても、リストへの追加後に正当な調査の手続きが実施され、企業や個人には弁明の権利も与えられる。

中国の報道では、リスト作成は5つの意味を持つ。

1) 警告:リストに載った企業は、中国との関係が制限される。

2) 米国への対抗:

米国はHuaweiを対象に、①米国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を米企業が使うことを禁止、②Huaweiに対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を取った。
米国は他の中国企業も狙っている。これを放置すれば、好き勝手にやられる。米国への対抗策である。    
    2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策

3) 中国企業の保護

4) 第三国企業への警告:米中企業が自国の法律に従うのはやむをえないがとし、関係ない企業が追随するのを警告 
   これについては、英国企業で日本企業(ソフトバンク)子会社のARMを挙げている。
   自国の法律で規制されていないのに、何故Huaweiを差別するのかとしている。

5) 放置すれば、外国の企業が中国から全て出てしまう。


中国商務部の報道官は前日の記者会見で、「中国は米アップル社に何らかの規制を加えて、米国が華為技術(Huawei)を攻撃したことへの報復手段とするのか」との 質問に対し、次のように答えた。

中国は、在中国のすべての外資系企業の合法的権利は中国政府によって保護されると繰り返し強調してきた 。中国は揺るぎなく改革を深化させ、開放を拡大し、さまざまなタイプの企業のために安定した、公平で、透明な、予測可能な世界でも一流のビジネス環境を創出するよう引き続き努力していく 。

ーーー

3. 「中米経済貿易協議に関する中国側の立場」白書

中国国務院新聞弁公室は6月2日、中米経済貿易協議の基本状況を全面的に紹介し、中国の中米経済貿易協議に対する政策的な立場を明らかにすることを目的とした「中米経済貿易協議に関する中国側の立場」白書を発表した。

中米経済貿易貿易協議の基本的な状況を包括的に紹介し、中米経済貿易貿易協議に対する中国の政策スタンスを明確にするために、中国政府はこの白書を発表した としている。

内容は次の通り。

中米経済貿易関係は、両国間の外交関係の確立、 両国間の経済貿易関係の発展、協力分野の拡大、そして協力のレベルの継続的改善により、両国にとって有益であるだけでなく、世界全体に利益をもたらす相互利益関係が形成される。

発展段階と経済システムの段階が異なるため、両国は必然的に経済協力と貿易協力に違いと摩擦を抱くことになる。
中米経済貿易関係の発展の過程で、多くのねじれや変化、困難があったが、合理的かつ協力的なやり方で、両国は対話と協議を通して問題を解決し、矛盾を解決し、違いを狭め 、より成熟した関係をつくってきた。

現在の米国政府が2017年に就任して以来、関税の適用やその他の手段を脅かし、しばしば主要な貿易相手国との経済的および貿易的摩擦を引き起こしてい る。

2018年3月以降、米国政府が一方的に開始した中米経済と貿易の摩擦に対応して、中国は国と国民の利益を断固として擁護するために効果的な措置を講じなければな らなかった。
同時に、中国は対話と協議を通じて紛争を解決し、米国との経済および貿易に関する複数回の協議を行い、二国間の経済および貿易関係の安定化に努めるという基本的見地を常に遵守してきた。

中国の態度は一貫して明確である。中米の協力は有益であり、戦いは害を及ぼ す。協力は双方にとって唯一の正しい選択だ。

両国間の経済的・貿易的差異および摩擦に関して、中国は相互に有益で双方にとって好都合な合意を解決し促進するために協力的アプローチを採用することをいとわない。
しかし、中国は戦うことを厭わず、戦うことを恐れず、そして必要ならば戦わなければな らない。

米国の財務省とUSTRは6月3日、これについて共同声明を発表した。

米中貿易交渉の性質と歴史を誤って伝え、責任のなすり合いに持ち込もうとしていることに失望した。

中国の交渉担当者は概ね合意がまとまっていた重要項目を「撤回」した。重要項目には合意履行に関する規定が含まれていた。

われわれが中国側からの詳細かつ履行可能な合意を要求するのは、中国の主権に対する脅威には全くなっていない。むしろ、議論された問題は通商協定に共通するもので、維持することのできない根強い貿易赤字につながっているシステミックな問題への対処に必要だ。

(報道によると、米国側は中国に法律の制定を要求し、内政干渉という中国国内の反発で撤回したという。中国側は調印して初めて「合意」であり、それまでのやり取りに過ぎず、修正はあり得ることとしている。)

ーーー

4.レアアース

中国商務部の報道官は5月30日の記者会見で、「中国はレアアースの対米輸出の禁止を検討しているのか」との質問に対し、 以下のように答えた。

中国は世界最大のレアアース材料供給国として、これまでずっと開放、協同、共有の方針を堅持しながらレアアース産業の発展を推進してきた。国内需要へのサービス提供を基礎とした上で、中国は世界各国のレアアース資源に対する正当なニーズに対応したいと考えている 。

しかしながら、いかなる国でも中国から輸出されたレアアースを使用して製造した製品で、中国の発展を押さえ込み、圧力をかけようとするなら、感情的にも理屈的にも受け入れることはできない。

鄧小平元国家主席はかつて、「中東には石油があり、中国にはレアアースがある」(中東有石油、中国有稀土)と述べた。
習近平国家主席は5月20日にレアアースの産地にある江西省の会社を訪れ「レアアースは重要な戦略資源だ」と強調した。

国家発展改革委員会は6月4日、レアアースの専門家と会合を開き、専門家は生産から加工、輸出までの全工程を審査するシステムを設けて輸出管理を強化すべきだと提言し、委員会は提言を盛り込んだ措置を早期に打ち出す方針を示したと報道されている。

中国はレアアースの世界の生産の7割を占め、米国は輸入の8割を中国に依存する。

米商務省はこのほどレアアースに関する報告書を発表した。トランプ大統領が2017年12月に出した大統領令を受けて作成したもの

A Federal Strategy to Ensure Secure and Reliable Supplies of Critical Minerals

ウラン、チタン、レアアース各種を含む鉱物35種類を「米経済と国家安全保障にとって決定的に重要」な鉱物に指定。
現代生活に不可欠なもので、米国への供給が途絶えないよう、連邦政府は前例のない措置を講じる。

「同盟諸国との投資・貿易」を通じた供給改善や、連邦政府所有地など国内での採掘許可の円滑化を含めた措置を勧告。さらに、国内での鉱物探査を促進するため、地図
作成やデータ収集の改善計画も挙げている。

下記について大統領に報告することを求めている。

(i) "a strategy to reduce the Nation's reliance on critical minerals;
(ii) an assessment of progress toward developing critical minerals recycling and reprocessing technologies, and technological alternatives to critical minerals;
(iii) options for accessing and developing critical minerals through investment and trade with our allies and partners;
(iv) a plan to improve the topographic, geologic, and geophysical mapping of the United States and make the resulting data and metadata electronically accessible, to the extent permitted by law and subject to appropriate limitations for purposes of privacy and security, to support private sector mineral exploration of critical minerals; and
(v) recommendations to streamline permitting and review processes related to developing leases; enhancing access to critical mineral resources; and increasing discovery, production, and domestic refining of critical minerals."



但し、レアアースを貿易紛争の手段として使うのは問題である。

2010~11年に領土問題で日中関係が悪化した際、中国は日本に対するレアアースの輸出を制限した。日本企業は調達難に見舞われが、日本企業の「脱レアアース」技術の開発が進んだことにより、需要が急減した。

「世界が1年で必要なレアアースの量は12万トンに過ぎず、非常に少ない量であり、多くの国 が低価格で買い入れて大量に備蓄している」と指摘する学者がいる。


厚生労働省は5月29日、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の総会を開き、癌患者の遺伝情報から最適な治療薬を選ぶ「 癌ゲノム医療」への保険適用を初めて決めた。

癌ゲノム医療とは、癌の組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ(癌遺伝子パネル検査)、遺伝子変異を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療。

イレッサは、当初、全ての手術不能非小細胞肺癌を対象に保険適用が承認された。
その後、
EGFR遺伝子の異常が有る非小細胞肺癌のみに有効であることが証明され、効能効果が変更された。


今回保険診療の対象になるのは「癌遺伝子パネル検査」で、中外製薬とシスメックスがそれぞれ保険適用の希望を申請していた。

中外製薬 FoundationOne CDx 癌ゲノムプロファイル

固形癌患者の腫瘍組織検体から抽出したゲノムDNAの遺伝子変異情報を解析するプログラム

主たる機能は、包括的なゲノムプロファイルの提供、すなわち、324のがん関連遺伝子の変異等(塩基置換、挿入/欠失、コピー数異常、再編成)の検出結果、マイクロサテライト不安定性の判定結果、及びTumor Mutational Burdenスコアの情報提供にある。

シスメックス OncoGuide NCC オンコパネルシステム (国立癌研究センターとシスメックスが開発)

固形がん患者由来の腫瘍組織及び同一患者由来の非腫瘍細胞成分より抽出されたゲノムDNA を検体として用い、解析プログラムにより、腫瘍組織由来の塩基配列と非腫瘍細胞成分由来の塩基配列とのペア解析を行うことにより、遺伝子異常(変異: SNV、InDel、増幅: CNA、融合: Fusion)の一括検出、及び合計変異出現率(TMB:腫瘍変異負荷)の算出を行なうことで、腫瘍組織の包括的なゲノムプロファイルを取得する。

癌治療では癌の遺伝子変異をもとに薬を選ぶ。これまでは一度の検査で少数の遺伝子しか調べられなかったが、 今回のものはいずれも一度に100種類以上の遺伝子を調べることができる。最適な薬が早く見つかる可能性が高くなる。

厚労省が昨年12月に国内販売を承認した。

薬を選ぶまでの医療費は56万円だが、保険適用で患者の自己負担は1割か3割で済む。高額療養費制度を利用すれば、負担はさらに抑えられる。

対象は固形癌(血液癌以外の癌)のうち、手術や抗癌剤での治療が効かなかった人や、治療法がない希少癌や小児癌などの患者で、ピーク時には年に計約2万6000人が利用し、販売額は年計150億円規模と見込まれる。




 
千代田化工建設は6月3日、第1系列からLNGの出荷を開始したと発表した。


トランプ大統領はツイッターで自慢した。(2週間前に現場を訪問している。)

BIG NEWS! As I promised two weeks ago, the first shipment of LNG has just left the Cameron LNG Export Facility in Louisiana.
Not only have thousands of JOBS been created in USA, we're shipping freedom and opportunity abroad!

ーーー

三菱商事は5月14日、キャメロンLNGプロジェクトが現地時間5月14日にLNGの生産を開始したと発表した。

第1系列は4月15日に試運転の最終段階で天然ガスの充填が開始された。



2018/11/14 千代田化工建設、米国LNG計画で850億円の追加工事 

2019/5/9 千代田化工建設、大幅赤字に、三菱商事が支援へ

トランプ大統領は同日、施設を訪問し演説を行った。

大統領は自身が進めてきた税制改革、新たな液化施設建設およびパイプライン敷設に対して許可を出し続けてきたことが、米国がエネルギー面で輸入に依存しない独立的な立場をつくり上げ、雇用を創出したことを強調し、温暖化対策に基づく化石エネルギーの削減は雇用を奪うもので、とりわけオバマ政権下で進められたグリーン・ニューディール政策について否定的な見解を述べた。

日本企業がこのプロジェクトに参加していることは、大統領が登壇する直前にSempra Energy のCEOから紹介された。

同日の大統領のツイッター:

With incredible grit, skill, and pride, the 7,000 workers here at Sempra Energy are helping lead the American Energy Revolution. They are not only making our nation WEALTHIER but they are making America SAFER by building a future of American Energy INDEPENDENCE!

 


メルケル独首相の大連立政権を支える国政第2党、ドイツ社会民主党(SPD)のAndrea Nahles党首が6月2日、党首を辞任する考えを示した。

SPDは欧州議会選で歴史的な大敗を喫した。欧州議会選で過去最低の15.8%の得票にとどまり、緑の党に抜かれて第3党に転落していた。

ナーレス氏は同日朝「職務の執行に必要な支持がもはや得られない」との考えを示した。

大連立を維持する立場を保ってきた同氏の辞任はメルケル政権にとって打撃となる。

欧州議会選挙のドイツの結果

今回 前回
議席
増減
議席 得票率
キリスト教民主同盟 (CDU) CDU/CSU

下院
連立
与党

23 22.6 29 -6
キリスト教社会同盟 (CSU) 6 6.3 5 1
ドイツ社会民主党(SPD) 16 15.8 27 -11
緑の党 21 20.5 11 10
自由民主党(FDP) 5 5.4 3 2
ドイツのための選択肢(AID) 11 11.0 7 4
左派党 5 5.4 7 -2
その他 9 12.9 7 2
合計 96 100 96 0

ーーー

2017年9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。

自由民主党(FDP)や緑の党と進めていた連立協議が11月19日、決裂し、2018年3月になってようやく、第2党の社会民主党(SPD)と続けてきた大連立交渉がまとまり、メルケル氏はわずかの差で首相に選ばれた。

下院の勢力図は下記の通り。

キリスト教民主同盟 (CDU) キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
246 連立
与党
399

(首相選出投票)
賛成 364
(過半数 +9)
(与党全数 -35)

反対 315
棄権  9
欠席 21

キリスト教社会同盟 (CSU)
ドイツ社会民主党(SPD) 153
緑の党 67  

野党

 
310
自由民主党(FDP) 80
ドイツのための選択肢(AID) 92
左派党 69
無所属 2
合計 709   計 709
過半数は355

2018/3/17 メルケル首相 再選 


当時、社会民主党では1/3が連立に反対していた。今回、党首が変ると、連立から離脱する動きも出てくると思われ、
その場合はメルケル政権の崩壊や議会の解散・総選挙につながる可能性がある。



ドイツで2018年10月14日に実施された保守の牙城のバイエルン州(英語ではBavaria州)の議会選挙で、メルケル政権を支える保守与党、キリスト教社会同盟(CSU)が歴史的な大敗を喫した。

CSUの得票率は前回2013年の47.7%から37.7%に下がり、68年ぶりの低さとなった。連邦議会下院で連立を組むドイツ社会民主党も惨敗し、両党を合わせても過半数を下回る。

逆に緑の党と、極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が大躍進した。

2018/10/17 独与党、バイエルン州で大敗 メルケル政権に打撃


今後、総選挙となった場合、
キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が政権を失う可能性もある。

欧州議会選挙は5月23日~26日に行われた。欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、国別に議席数が決まっている。

英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席で、英国は10月末にはEUから離脱するが、規定上、選挙を行った。
英国では5月23日に実施され、Brexit党が29名で最多数となった。与党と労働党は惨敗した。

2019/5/29 欧州議会選挙で英国の与党と最大野党が敗北

欧州議会では、出身国での所属政党ではなく、イデオロギーが近似する議員で会派を作っている。

選挙の結果は下記の通りで、欧州政治の分極化を浮き彫りにした。

これまでの主流の欧州人民党(中道右派)と社会民主進歩同盟(中道左派)が大きく議席を失い、初めて過半数を割り込んだ一方、同じ親EUの欧州自由民主同盟が大きく伸びた。

EU懐疑派では、イタリアの極右「同盟」やフランスの極右「国民連合」、ドイツの極右「ドイツのための選択肢」などの入る、EUとの対峙も辞さない強硬な懐疑派がいずれも伸長した。
しかし、懐疑派の極左は席を失って、全体ではあまり変わらず、EU懐疑派が独り勝ちして欧州統合に強くブレーキがかかる事態はひとまず回避した。

今後は親EU派が結束できるかが焦点となる。

今回 前回 増減
欧州人民党(EPP) 中道右派 179 215 -36 戦後欧州の安定を支えてきた。
初めて過半数を割り込んだ。
社会民主進歩同盟(S&D) 中道左派 153 190 -37
欧州自由民主同盟(ALDE&R) 中道 105 70 35 「最も議席数を伸ばしたのは、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党でも極右でもなく、われわれ親EUグループだ」
欧州緑グループ・欧州自由同盟
(Greens/EFA)
69 50 19
(親EU 合計) (506) (525) -19
欧州保守改革G (ECR) EU懐疑派 63 74 -11
国家と自由のヨーロッパ(ENF) 極右 58 39 19 イタリアの極右「同盟」やフランスの極右「国民連合」
(それぞれ国内で第1党を獲得している。)
自由と直接民主主義のヨーロッパ
(EFDD)
54 46 8 ドイツの極右「ドイツのための選択肢」、英・独立党、伊・五つ星等など
欧州統一左派・北方緑の左派同盟
(GUE/NGL)
極左 38 52 -14
(EU懐疑派 合計) (213) (211) (2)
無所属 8 15 -7
未定(新規当選など) 24 0 24
合計 751 751 0


今後、 今秋にそろって任期切れを迎える欧州連合(EU)機関トップ(欧州委員長、大統領、欧州議会議長、ECB総裁など)の後任選びが本格化 する。これらを一体で決めるため、各国で綱引きが行われる。

欧州議会選挙を受け、EUは5月28日に非公式首脳会議を開き、10月末に5年の任期が切れるJean-Claude Juncker 欧州委員長の後任選びなどについて協議した。

これまでは欧州議会の第一会派が擁立する「筆頭候補」が選任されたが、今回は従来方法を見直し、筆頭候補が自動的に選ばれる方式を採らないことを確認した。

今回の選挙では、親EUの二大会派が議席を減らす一方で、右勢力や「緑の党」が伸長し、多極化が進んだ。
EUの意思決定がより困難になることを懸念し、欧州委員長には、首脳らと欧州議会の双方から幅広い支持を得られる人選が必要との認識で一致した。

今回は特に、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が対抗している。

欧州委員長の候補には、下記の名が挙がっている。

出身 現職 会派
Manfred Weber ドイツ 欧州議員 欧州人民党
(中道右派)
組織トップの経験なし

Frans Timmermans

オランダ 欧州委
第一副委員長
欧州社会・進歩連盟
(中道左派)
ユンケル委員長右腕
Margrethe Vestager デンマーク  欧州委員
(競争政策) 
欧州自由民主同盟
(リベラル)
米のIT大手と対決
初の女性委員長狙う
Michel Barnie フランス Brexit
主席交渉官
欧州人民党
(中道右派)


メルケル首相は最大会派欧州人民党のWeber欧州議員を推すが、マクロン大統領は、「カリスマ性と経験ある人物がふさわしい」と主張、それを満たす候補として他の3人を挙げている。





経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。

同社は4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。

台中連合のSuwa Investment Holdings, LLCと 、800億円の出資契約を締結する。(出資比率は台湾紙の情報 6/19 JDI)

    出資比率  
台湾 TPK Holding 宸鴻集団 41.8% 250億円 31.25% タッチパネル大手
Cosgrove Global 23.6% 140億円 17.50% 一族富邦金控が運用・管理する投資会社
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
34.5% 410億円 51.25% 中国最大の資産運用会社 Harvestグループ のプライベートエクイティ投資を行う運用会社

普通株式:420億円
新株予約権付社債:180億円+200億円 合計 380億円(うち最後の200億円は資金需要により判断)
総計:800億円

2019/4/15 ジャパンディスプレイ、台湾・中国のグループから金融支援800億円受け入れ 



同社は
5月15日、2019年3月期の決算を発表したが、最終損益は1,094億円の赤字となり、5年連続赤字となった。この結果、資本勘定は債務超過寸前となった。

2019/5/17 ジャパンディスプレイ、5年連続赤字 

当初予定では6月18日のJDIの定時株主総会で最終的に承認を受ける予定だったが、台中連合が金融支援に必要な機関決定を延期すると相次ぎ表明しており、間に会わず、改めて臨時総会を開く見通し 。

JDIの業績悪化や、米国と中国の紛争による今後の見通しが不透明なことから、仮に台中連合からの資本注入が出来なくなれば、資金繰りが苦しくなると見られた。

ーーー

JDIでは台中連合の金融支援を確定させるべく、関係各社に協力を要請し、下記の協力を得た。

1) Apple社(最大需要家で、その受注が死命を決する。多額の前受け金を受領しており、返済義務が重荷)

当面の財務強化に対する協力として、前受金に対する債権相殺金額を、2年間にわたり 、従来の合意条件に対して半額繰り延べ 。

当面の発注の増量についても真摯に協議する

2) 現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構)

750億円の優先株の引き受けで Debt-to-equity を行う 。
770億円の長期貸付で既存の債務(INCJが債務保証)を返済する。
 以上について、内訳を変更(総額は変わらず、優先株を1020億円に、長期貸付を500億円に)

4月19日に200億円のブリッジローン

当初案では今後も負債で残る予定であった上記ブリッジローン(200億円)全てとINCJからの劣後特約付貸付(300億円)のうちの247億円について、JDIが持つ有機ELディスプレイのJOLEDの株式15%全てで代物弁済する。

この結果、INCJからの長期貸付500億円が追加されるが、これまでの同社の負債合計2020億円のうち、劣後特約付貸付の残り53億円を除く全てが無くなる。

以上の協力を得たのを受け、台中連合は総額800億円の支援について、6月14日に各社の内部機関決定を行う旨、連絡してきた。

JDIの定時株主総会(6月18日)での承認は間に合わないが、年内に行う臨時株主総会で承認を得て、実行する。


変更後の支援の概要は次の通り。

 ① 当初案では今後も残る予定のINCJからの債務447億円をJOLED株式で代物返済

 ② INCJの支援1520億円のうち、長期貸付金を270億円減らし、優先株を270億円増やす。

 以上により、負債残は1270億円から553億円に717億円減り、資本増強は最終1550億円から1820億円に270億円増える。
(JOLED持株が無くなる。)

ーーー

とりあえず、台中連合が近く内部機関決定を行うことを決めたが、まだ安心できない。まだ機関決定はしておらず、下記の懸念がある。

・米中摩擦の激化のなか、中国の嘉実基金管理自身がAppleへの供給企業に出資するかどうか。3社社内に反対が出ないか。

・米中摩擦が激化するなか、対米外国投資委員会(CFIUS)がApple への供給元のJDIに中国企業の嘉実基金管理が参加するのを問題にするかどうか。

 逆に中国政府がそのJDIへの嘉実基金管理の出資を認めるか。

・今後のAppleからの発注の見通し、JDIの損益見通しを元に、台中連合が引き続き支援を続けるか。
   

ドイツのメルケル首相は5月30日、アメリカのハーバード大学の卒業式で演説した。

演説はトランプ米大統領の名前に一言も触れずに、大統領と米政権を痛烈に批判する内容だった。通商や移民、気候変動に至るまで、トランプ氏と衝突した政策を列挙し、首相が誰について話しているのか、聴衆は明確に理解し、 拍手喝采した。


同大学ホームページから

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最初に、旧東ドイツで育った 自らの体験に触れ「ベルリンの壁が文字どおり目の前に立ちはだかり、私の機会を制限した」と述べた。

それが、1989年にポーランド、ハンガリー、チェコ、東ドイツで人々が立ち上がり、壁を壊した。私を含め誰も可能と思わなかったことが事実となった。

30年前に何事も変わらないことはないということを自身で経験した。「何ごとも変えることができる(nothing has to stay the way it is)」 これをまず、皆さんに伝えたい。

次に、世界に立ちはだかる問題を取り上げた。

「気候変動」は宇宙の自然資源にとり脅威であり、これは人間により引き起こされたものだ。2050年までに気候中立(climate neutrality)を達成するよう全力を尽くす。
しかし、改善はみんなでやって可能になる。皆さんに伝えたい2番目は、我々の行動は一方的でなく多角的、国ごとではなく他国的、孤立主義でなく外に目を向けるということだ。
Multilateral rather than unilateral.  Global rather than national.  Outward-looking rather than isolationist

保護主義や貿易摩擦は自由な国際貿易を危険にさらし、我々の繁栄の基礎を台無しにする。

技術は限りない可能性を与えるかもしれない。しかし、技術に対するルールを決めているか? 技術が我々の行動を決めていないだろうか?人間を尊厳ある、多面的な個人として見ているか、それとも単に消費者やデータソース、監視対象としてしか見ていないのではないか?

もし、他人の目で世界を見れば、難しい問題に答えが見つかる。衝動で行動せず、ちょっと立ち止まって考えるのだ。

最も重要なのは、自分自身に正直であることだ。嘘を事実とし、事実を嘘とすり替えるな。

個人の自由は与えられたものではない。民主主義は当たり前と思うものではない。自由も繁栄も同じだ。
しかし、我々を取り囲む壁を壊し、外に出て、新しいことを取り込む勇気を持つなら、全てが可能だ。
"But if we break down the walls that hem us in, if we step out into the open and have the courage to embrace new beginnings, everything is possible."

最後に、この願いを皆さんに残したい。「無知と偏狭の壁をぶち壊せ、何ごとも変えることができる」。
"Tear down walls of ignorance and narrow-mindedness, for nothing has to stay as it is."

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"Tear down walls" は、彼女自身の経験のほか、1987年6月12日にレーガン大統領がブランデンブルク門でのベルリン750周年記念式典のスピーチで発した言葉 Tear down this wall! に因むもので、この演説の2年後にベルリンの壁は崩壊した。

同時にトランプ大統領のメキシコとの壁を皮肉っている。

Fiat Chrysler Automobiles (FCA) は5月27日、Renaultに経営統合を提案したと発表した。

統合比率は1対1と対等とし、統合による工場閉鎖は行わない。

付記 

FCAは6月6日、ルノーとの経営統合提案を撤回した 。5日夜にルノーの取締役会で承認が得られなかったことを受け、ルノーに通知した。
ルノーの筆頭株主である仏政府の介入により、望んでいた条件での統合は難しいと判断した。

発表:It has become clear that the political conditions in France do not currently exist for such a combination to proceed successfully.

オランダの持株会社(統合会社)の傘下にRenaultとFCAを置く。両社の株主には統合会社の株式が配分される。
統合会社の取締役は計11人で、FCAとルノーから各4人、日産から1人を出す形になる。

統合会社はイタリアやニューヨークの株式市場などに上場する。

以下の点が伝えられている。

フランス政府は現在、ルノー株15%を保有する筆頭株主で、フランスには同国企業の株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」があるが、オランダに本社を置く統合会社の株式については同法は適用されない。

日産が現在ルノー株15%を保有しているが、統合が実現した場合の日産の持ち分は7.5%になる。

ルノーは現在、日産株の約43%を保有して議決権を持っているため、日産が保有する15%のルノー株には議決権がないが、統合後の新会社では議決権が復活することになる。
(フランス
会社法では、40%以上の出資を受ける企業は出資元の議決権を持てないが、オランダ法にはこの規定はない。)


仏ルノーは5月29日、日産自動車、三菱自動車とトップ会談を開き、統合協議を進めることに賛同を求めた。
日産は「反対ではない」としながらも、日産としてのスタンスを固めるには「まだつめなければならないことが多い」と述べた。

関係者によると、FCAのエルカン会長が日産自動車の西川社長兼最CEO、三菱自動車の益子会長兼CEOに、仏ルノーとの経営統合について直接会って説明したいとの書簡を送った。


年間販売台数は、合計870万台になる。ルノーと連合を組む日産と三菱を加えると、年間販売は約1500万台となり、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車の約1千万台を大きく引き離し世界トップとなる。

統合が実現すれば、両社は電気自動車技術や、インターネットとつながるコネクテッドカーなど複数分野で協業を模索する。

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Fiat Chryslerと、Renaultの歴史は次の通り。

1)Fiat Chryslerは2014年10月12日に、FiatとChrysler が合併して設立された。Fiat 創業者のAgnelli の投資会社が、株式の約3割(議決権ベースで4割以上)を保有する。

1-a) Fiat

1899年にトリノで創業

1960s~1980sに相次ぎ買収を行った。Autobianchi 、Ferrari 、Abarth、Lancia、Alfa Romeoなど。

石油ショックや、その前後の左翼勢力による慢性的な労働争議により経営が不安定化

2000年にGMと提携するが、2005年にGMが一方的に解消、違約金15.5億ドルを受け取る。

2005年頃から業績回復

2009年にChryslerに20%出資(将来的に35%まで引き上げること、米政府の公的資金完済後には最大51%を取得して子会社化できる条項あり)。

その後、持株比率を58.5%に引き上げ、2014年1月に残りのUAWの持株41.5%を買い取り、Chryslerを完全子会社化し、2014年10月に統合

1-b) Chrysler

1925年にWalter ChryslerがChrysler Corporation設立、その後、Big Threeの一つに成長。

1970年代後半には深刻な経営危機、1978年に元Ford Morter社長のLee Iacoccaが社長就任

1985年 三菱自動車と提携し、Diamond Star Mortorsを設立、1988年 イリノイ州新工場で共同生産開始。

その後、1993年に三菱自動車がDiamond Star Mortorsを買い取り、以降は三菱自動車の北米事業部門となる。

1987年、ルノー傘下のAmerican Motorsを買収 (Jeep Cherokeeがヒット)

1998年に、Daimler-Benz AGと合併し、Daimler-Chryslerとなる。事実上Daimler-Benzによる買収

2007年5月、Daimler-Benzとの競業体制解消
 Chrysler部門は「Chrysler LLC」とし、株の80.1%をCerberus Capital Management, L.P.が買収
 Daimler-BenzはDaimlerに改称

2009年4月にDaimlerは残り株式をCernerusに売却

2009年4月30日、Chapter 11 の適用申請

Cerberus の持株は事実上失効
新たに、UAWが55%、Fiatが20%、米国政府が8%、カナダ政府が2% 出資。

同年6月10日法的手続きが完了

2014年1月、Fiatは株式保有率を58.5%にまで引き上げていたが、UAWの医療保険基金が持つ残り41.5%を買い取り、Chryslerを完全子会社化すると発表。

2014年10月12日に統合

2) Renault S.A

1898年にフランス人技術者のLouis Renaultとその兄弟が設立

1979年 に アメリカ第4の自動車会社 American Motors を買収

1987年にAmerican MotorsをChryslerに売却

1993年 - スウェーデンのVolvoとの合併を発表するがその後白紙撤回

1999年、日産自動車を事実上の傘下に収めることを発表。

その後同社と相互に資本提携しRenaultが日産自動車の株を44.4%、日産自動車がRenaultの株の15%を所有する。Renaultが日産自動車に経営陣を送り込む。

2016年、日産自動車が三菱自動車工業の筆頭株主となる。

2010年4月7日、Renault・日産アライアンスとDaimlerは戦略的提携を発表。株式の交換による相互出資も発表。
Renault・日産アライアンスがDaimler株を3.1%、DaimlerがRenault株及び日産株を各3.1%保有する。


トランプ米大統領は5月30日、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に関税を課 すと表明した。

米国を脅かす非常事態に対応するため、大統領に商業活動を規制する権限を与える「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、関税を課するもので、メキシコが対策を取るまで、下記の通り、順次税率を引き上げる。

6月10日から 5%、7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%とし、問題解決までこれを維持する。

ーーー

付記 大統領は6月7日、メキシコからの全輸入品に対する5%の関税発動を「無期限」で見送るとツイッターで発表した。メキシコが米国への不法移民流入を防ぐための対策を取ることで合意した。

I am pleased to inform you that The United States of America has reached a signed agreement with Mexico.

The Tariffs scheduled to be implemented by the U.S. on Monday, against Mexico, are hereby indefinitely suspended.
Mexico, in turn, has agreed to take strong measures to stem the tide of Migration through Mexico, and to our Southern Border.

This is being done to greatly reduce, or eliminate, Illegal Immigration coming from Mexico and into the United States. Details of the agreement will be released shortly by the State Department. Thank you!

ーーー

大統領は5月30日夜のツイッター投稿で、関税は6月10日に発効し、不法移民がメキシコを通って米国に流入するのが止まるまで続くと述べた。 問題が解決するまで順次税率を引き上げるとした。

On June 10th, the United States will impose a 5% Tariff on all goods coming into our Country from Mexico, until such time as illegal migrants coming through Mexico, and into our Country, STOP.

The Tariff will gradually increase until the Illegal Immigration problem is remedied, at which time the Tariffs will be removed.

Details from the White House to follow.

同日、ホワイトハウスから大統領声明が発表された。
  
Statement from the President Regarding Emergency Measures to Address the Border Crisis


内容は次のとおり。

 状況:

メキシコからの不法移民の大量流入が国民生活のあらゆる面で害を与えている。

メキシコ政府の協力が積極的でなく、米国の安全と経済に脅威を与えている。不法移民の米国流入を止め、出身国に送還できるのに。
米国は何十年も苦しんでいるのに、メキシコは放置している。米国の納税者にとりアンフェアな事態である。

メキシコは対策を取らねばならない。

 対応:

緊急事態への対応のため、「国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)」で与えられた権限を行使する。

メキシコからの全ての輸入品に5%の関税を課する。有効な対策で問題が和らいだと判断すれば(大統領のみの判断)、関税は取りやめる。

問題が続けば、7月1日に10%に引き上げる。同様に毎月引き上げ、10月1日には25%に引き上げる。問題解決までは永久に25%となる。

メキシコが対策を取らなければ、関税は高いままで、メキシコに移った企業は米国に戻り、米国で生産することになる。米国に戻れば関税を払う必要はなくなる。

これまで米国は貯金箱("piggy bank")で、みんなが取る一方だった。これからは、米国の利益のために立ち上がる。

米国はこれまでメキシコに親切だった。メキシコにすぐお返しをしてほしい。不法移民を送り込む窓口として国境を使うのをやめて欲しい。

大統領として最大の義務は米国と米国民の防衛である。主権が脅かされるのを黙って見ていない。

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米国のメキシコからの輸入は2018年で3465億ドルで、中国に次ぎ2番目。

米国は中国に対しては現在、2500億ドルの輸入品に25%の追加関税をかけている。(残り約3000億ドルについても6月末以降実施としている)

これを上回る輸入品に、当初は5%に始まり、10月1日からは25%をかけるというもの。しかも全輸入品である。

メキシコからの輸入品は、自動車関連や電気製品、食料品が中心で、自動車関連は1281億ドルで4割弱を占める。

トヨタ、日産、ホンダ、マツダは4社で133万台を生産し、69万台を米国に輸出している。高関税が課されると大きな影響を受ける。

生産 対米輸出
トヨタ  15万台 14万台
ホンダ 21万台 13万台
日産 80万台 35万台
マツダ 18万台 7万台
合計 133万台 69万台

米国とカナダ、メキシコは昨年、NAFTA(North American Free Trade Agreement)の改正で合意し、「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement)」に変更した。

自動車については、数量規制を導入したが、一応の決着を見ていた。

カナダ、メキシコからの乗用車輸入にそれぞれ年260万台の数量枠を設け、枠内であれば高関税を課さない。
米国で人気が高い小型トラックは輸入制限の対象から外す。

自動車部品でもメキシコに年1080億ドルの輸入枠を設ける。

自動車関税ゼロ  条件

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%

自動車関税ゼロ 限度 乗用車 年260万台
小型トラック 対象外
自動車部品関税ゼロ 年間1080億ドル限度

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

このUSMCAは、米国では民主党が賛成せず、カナダとメキシコは米国の鉄鉱・アルミ製品への追加関税措置に反対して、批准に至っていない。

米国は5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。
カナダ、メキシコも、米農産物などにかけてきた報復関税を取りやめることで合意した。

これにより、進展するものと思われた。

2019/5/20 米、カナダ・メキシコへの鉄鋼・アルミ関税を撤廃 

今回の米国の一方的な措置により、メキシコが反発するのは必至で、USMCAの批准にも影響を与える。

米政府は、今回の対メキシコ関税計画はUSMCAとは無関係で、貿易紛争の一端ではなく、移民問題に関わるものだ。メキシコから十分な協力が得られたとホワイトハウスが判断すれば、関税は発効しないか、いったん発効後も速やかに撤回されるとしている。

メキシコのセアデ外務次官(北米担当)は、次のように述べた。

トランプ大統領の対メキシコ関税発表は予想していなかった 。米国は関税についてメキシコ政府に何も伝えてこなかった。

米国と話し合うまでは報復しないが、関税賦課が現実となれば、極めて深刻なものになろう 。

  米国との貿易戦争は望まない が、いつまでも手をこまぬいていない。

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